説明

外壁目地の2次防水部材、外壁目地の防水構造、及び外壁目地の防水構造施工方法。

【課題】 屋外側から外壁目地の奥に挿入することが可能であり、圧入後においても容易に位置の修正が可能である外壁目地の2次防水部材1を提供する。
【解決手段】 外壁目地の2次防水部材1は、外壁目地の屋内側に収納されて、該外壁目地から屋内側に水が浸入することを抑止する外壁目地の2次防水部材1であって、長尺な平板形状の部材で、その片面において長手方向に沿って設けられた1以上の溝部13を有する平板部材11と、弾性を有し長尺な一対の部材で、その長辺の一端が前記平板部材11の両側に沿ってそれぞれ接続され、前記平板部材11の前記溝部13が設けられた面側に屈曲する屈曲部14を有するヒレ部材12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁目地から屋内側に水が侵入することを抑止する外壁目地の2次防水部材、この外壁目地の2次防水部材を用いた外壁目地の防水構造、及びこの外壁目地の防水構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の互いに隣接する外壁パネル間に形成される外壁目地から建物内部に風雨などが侵入することを防ぎ、且つ建物の外観を良好に保つために乾式の外壁目地ガスケットが用いられる。この外壁目地ガスケットは、例えばポリ塩化ビニル等の水密性及び弾性を有する材料で形成され、外壁目地の幅よりもやや幅広の長手形状であって、屋外側から外壁目地に挿入して固定するものである。
【0003】
このような外壁目地ガスケットにおいては、防水性をさらに高めるために、例えば図10、図11(A)及び図11(B)に示すように、小突起111と小突片112を備えるハット形ジョイナー110と、前記小突片112と嵌合する小溝123を備える柱片122と覆片121からなる目地ガスケット120と、を具備する外壁目地用ジョイナー100が提案されている(特許文献1参照)。小突片112と小溝123は、互いに嵌合するように形成されており、図11(A)に示すように小溝123には粘着材124が充填されている。図10に示すように、ハット形ジョイナー110は、サインディングボード150と胴縁140の間に予め介在させておき、目地ガスケット120は外壁目地の屋外側から挿入される。外壁目地に挿入された目地ガスケット120の両側に突出しているリブ125により外壁目地の防水を図ると共に、小溝123は更に押し込まれることによってハット形ジョイナー110の小突片112と嵌合し、小溝123に充填された粘着材124が流出し周辺に充満することで図10に示す粘着材130となる。
【0004】
このように構成することで特許文献1における外壁目地ガスケットは、図10に示すように、目地ガスケット120の防水性による一次防水に加えて、ハット形ジョイナー110の小突起111がサインディングボード150の裏面に当接密着することによって二次防水を行うことができ、より防水効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平07−43333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような外壁目地ガスケットにおいては、ハット形ジョイナー110の幅が外壁目地の目地幅よりも広くなるので、ハット形ジョイナー110を屋外側から外壁目地の屋内側に挿入することは困難であり、サインディングボード150を胴縁140に取り付ける前に、若しくは胴縁140の取り付けと同時にハット形ジョイナー110を取り付ける必要がある。
【0007】
さらに、ハット形ジョイナー110はサインディングボード150の裏面に当接密着しているため、取り付け時に水平方向の位置ズレが生じた場合には、取り付け作業後の位置修正が困難であり作業性にも問題があった。
【0008】
以上の問題点に鑑み、本発明は屋外側から外壁目地の屋内側に容易に挿入することができ、挿入後においても容易に水平方向の位置ズレを修正することができ、さらに高い防水性能を有する外壁目地の2次防水部材、この外壁目地の2次防水部材を用いる外壁目地の防水構造、及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の外壁目地の2次防水部材は、外壁目地の屋内側に収納されて該外壁目地から屋内側に水が浸入することを抑止する外壁目地の2次防水部材であって、長尺な平板形状の部材で、その片面において長手方向に沿って設けられた1以上の溝部を有する平板部材と、弾性を有し長尺な一対の部材で、その長辺の一端が前記平板部材の両側に沿ってそれぞれ接続され、前記平板部材の前記溝部が設けられた面側に屈曲する屈曲部を有すヒレ部材と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の外壁目地の防水構造は、外壁目地よりもやや幅広に形成された弾性材料からなり、前記外壁目地に挿入されて保持される1次防水部材と、該1次防水部材より屋内側に設置される2次防水部材と、を備える外壁目地の防水構造であって、前記2次防水部材は、長尺な平板形状の部材でその屋外側面において長手方向に沿って設けられた1以上の溝部を有する平板部材と、弾性を有し長尺な一対の部材でその長辺の一端が前記平板部材の両側に沿ってそれぞれ接続され、前記平板部材の前記溝部が設けられた面側に屈曲する屈曲部を有するヒレ部材と、を具備し、前記外壁パネルと建物の構造躯体を構成する軸組との間に収納されるバックアップ材に前記平板部材が当接し、且つ前記ヒレ部材が隣接する2つの外壁パネルの端部内側面に圧接することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の外壁目地の防水構造は、前記バックアップ材は、建物の構造躯体に前記外壁パネルを取り付ける外壁パネル取付用金具であることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の外壁目地の防水構造施工方法は、長尺で平板形状の部材でありその片面に1以上の溝部が長手方向に沿って設けられた平板部材と、弾性を有し長尺な一対の部材でその長辺の一端が前記平板部材の両側に沿ってそれぞれ接続され、前記平板部材の前記溝部が設けられた面側に屈曲する屈曲部を有するヒレ部材と、を備える2次防水部材を、外壁目地に前記平板部材の前記溝部が設けられている面を屋外側に向けて挿入し、前記平板部材に設けられた前記溝部に位置ズレ修正工具の先端部を引っ掛けて前記2次防水部材を水平方向に移動させることで前記2次防水部材の水平方向の位置ズレを修正し、次に、前記外壁目地よりもやや幅広に形成された弾性材料からなる1次防水部材を屋外側から前記外壁目地に挿入しその弾性力によって前記外壁目地内で挟持されて防水することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の外壁目地の2次防水部材によると、ヒレ部材は弾性を有しているので、目地に挿入する際ヒレ部材は既に屈曲している方向にさらに屈曲し、屋外側から外壁目地の屋内側に容易に挿入することができる。また、ヒレ部材は隣接する2つの外壁パネルの端部内側面に圧接して高い2次防水性能を有する。また、挿入後であっても、平板部材に溝部が形成されているので、この溝部に位置ズレ修正工具の先端部を引っ掛けて、容易に水平方向の位置ズレを修正することができる。
【0014】
請求項2に記載の外壁目地の防水構造によると、2次防水部材はヒレ部材が弾性を有しているので、目地に挿入する際、ヒレ部材は既に屈曲している方向にさらに屈曲し、屋外側から外壁目地の屋内側に容易に挿入することができる。また、挿入後であっても平板部材に溝部が形成されているので、この溝部に位置ズレ修正工具の先端部を引っ掛けて、容易に2次防水部材の水平方向の位置ズレを修正することができる。さらに、平板部材が外壁パネルと建物の構造躯体を構成する軸組との間に収納されるバックアップ材に当接することで2次防水部材の屋内側への移動が規制されるので、ヒレ部材は弾性変形した状態で外壁パネルの端部内側面に高い圧力で圧接する。これにより外壁パネルの端部内側面とヒレ部材は密着し水を通さず高い防水効果を得ることができる。
【0015】
請求項3に記載の外壁目地の防水構造によると、建物の構造躯体に外壁パネルを取り付ける外壁パネル取付用金具をバックアップ材として用いるので別途バックアップ材を用意する必要が無く経済的であり、施工における手間が省けるという利点がある。また、従来であれば2次防水部材は外壁パネル取付用金具と外壁パネルの屋内側面の狭い収容空間を取り合っていたが、収容空間の狭さを逆に利用しヒレ部材を弾性変形させることで、高い圧接圧力を確保し優れた防水効果を得ることができる。
【0016】
請求項4に記載の外壁目地の防水構造施工方法によると、2次防水部材における平板部材の溝部が設けられている面を屋外側にして2次防水部材を挿入し、挿入後、屋外側から位置ズレ修正工具の先端部を平板部材に設けられた溝部に引っ掛けて操作することで2次防水部材の水平方向の位置ズレを修正でき、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】外壁目地の防水構造の全体構成を説明する外壁目地の水平断面図。
【図2】外壁目地の2次防水部材の一部省略斜視図。
【図3】外壁目地の2次防水部材の断面形状を説明する断面図。
【図4】外壁目地の1次防水部材の一部省略斜視図。
【図5】外壁目地に2次防水部材を挿入する工程を説明する一部省略断面図。
【図6】外壁目地に2次防水部材を挿入した状態を説明する一部省略断面図。
【図7】2次防水部材におけるヒレ部材の位置を修正する工程を説明する一部省略断面図。
【図8】2次防水部材におけるヒレ部材の位置を修正した状態を説明する一部省略断面図。
【図9】位置ズレ修正工具を用いて2次防水部材の水平方向の位置を修正する工程を説明する一部省略断面図。
【図10】従来の外壁目地の防水に用いられる外壁目地ガスケットの一例を示す図。
【図11】図10で示した外壁目地ガスケットのハット型ジョイナーと目地ガスケットを示す図。
【図12】外壁パネル取付用金具を用いて、軸組に外壁パネルを固定する工程を説明する一部省略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の防水構造、及び外壁目地の防水構造施工方法の最良の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。外壁目地の2次防水部材1及びこの2次防水部材1を用いる外壁目地の防水構造が用いられる外壁は、外壁パネル3が軸組4に外壁パネル取付用金具5を用いて固定されることで形成される。ここで軸組4とは、建物の構造躯体を構成するものである。
【0019】
次に、本実施形態の外壁目地の2次防水部材1について説明する。図2及び図3で示されるように、本実施形態の2次防水部材1は、長尺な平板形状の部材で、その片面において長手方向に沿って設けられた1以上の溝部13を有する平板部材11と、弾性を有し長尺な一対の部材で、その長辺の一端が前記平板部材11の両側に沿ってそれぞれ接続され、前記平板部材11の前記溝部13が設けられた面側に屈曲する屈曲部14を有するヒレ部材12と、を備えるものである。本実施形態においては、図3で示されるように、左右のヒレ部材12は、溝部13が設けられた面側に傾くように、平板部材11に接続されている。このように構成することで、幅の小さいヒレ部材12でも、図1で示される外壁パネル3の端部内側面32に圧接させることができる。また、平板部材11の溝部13が設けられていない面から設けられている面に向かう方向を上方とすれば、図3で示されるように、左右のヒレ部材12の平板部材11と接続されていない長辺の他端である縁部15は、平板部材11とヒレ部材12との接合部分の上方あたりに位置する。更に、左右のヒレ部材12間の幅は屈曲部14の位置において最大幅W1となる。この最大幅W1は平板部材11の幅より大きく、さらに外壁目地の目地幅W2よりも若干大きいことが好ましい(図3、図5参照)。2次防水部材1を外壁目地から挿入し屈曲部14が外壁目地内を通過する時に、外壁目地内の側壁と圧接して、2次防水部材1の位置を保持しながら挿入することができるからである。尚、図2及び図3においては、溝部13が5本設けられているが、これに限定されず、溝部13は1本以上であれば何本であっても良い。
【0020】
ここで、2次防水部材1の最適な各形状及び材質について例示する。外壁目地の目地幅W2が11mm程度である場合、ここへ容易に挿入できるように、平板部材11の幅は、7mm程度が好適である。また、外壁パネル取付用金具5は、外壁目地の屋内側において縦方向に所定の取付間隔を空けて設けられている。通常は1枚の外壁パネル3について4個前後である。そして、この外壁パネル取付用金具5を2次防水部材1のバックアップ材として用いる場合、この外壁パネル取付用金具5で、外壁目地の屋外側から押し込まれる2次防水部材1が屋内側に移動しないように規制することになる。したがって、その裏面がこの外壁パネル取付用金具5に当接する平板部材11は、外壁パネル取付用金具5が存在しない場所において弓なりに変形して屋内側に移動しないようにするため、弾性変形しない硬質の材料、若しくは弾性率の高い硬質の材料により形成されることが好ましい。また、屈曲部14における左右のヒレ部材12間の最大幅W1は、上述のように外壁目地の目地幅W2より若干大きいことが好ましいので、目地幅W2が11mmであれば、15mm程度が好適である(図3、図5参照)。さらに、平板部材11の溝部13が設けられていない面を基準面とした場合において、該基準面に対する縁部15の高さH1は、外壁パネル3の端部内側面32と、バックアップ材の最も屋外側にある面、すなわち本実施形態においては外壁パネル取付用金具5における操作部53の屋外側面との距離H2(以下、「収納空間距離」という。)より長いほうが好ましい(図3、図5参照)。縁部15の高さH1が該収納空間距離H2より長い方が、外壁パネル3の端部内側面32との圧接圧力が大きくなるからである。例えば、該収納空間距離H2が4mm程度であれば、縁部15の高さH1は5.8mm程度が好適である。
【0021】
次に、本実施形態の外壁目地の防水構造について説明する。図1で示されるように、本実施形態の外壁目地の防水構造は、隣接する外壁パネル3間の外壁目地に収容される1次防水部材2と、該1次防水部材2より屋内側に設置される前記2次防水部材1とを備えるものである。この2次防水部材1は、屋外側から外壁目地に挿入され図1で示されるように、外壁パネル取付用金具5の操作部53に当接する位置に収容される。また、1次防水部材2は図1で示されるように、2次防水部材1より屋外側における外壁目地内に収容される。また、2次防水部材1は平板部材11の溝部13が設けられる面を屋外側に向けて収容される。したがって、平板部材11の溝部13が設けられない面が、前記操作部53に当接することになる。これにより、2次防水部材1の屋内側への移動が規制され、収容される空間の狭さを逆に利用しヒレ部材12を弾性変形させることで、高い圧力でヒレ部材12の縁部15が外壁パネル3の端部内側面32に密着し、高い防水性能を得ることができる。また、このように配置することで、平板部材11の溝部13が設けられている面が屋外側へ向くので、2次防水部材1の挿入後1次防水部材2の挿入前に、屋外側から外壁目地に位置ズレ修正工具9を挿入しその先端部を溝部13に引っ掛けて、2次防水部材1を水平方向に移動させることができる。これにより、仮に外壁目地の中心軸と2次防水部材1との中心軸にズレがあったとしてもこれを修正することができる。
【0022】
1次防水部材2は、例えばポリ塩化ビニル等の水密性及び弾性を有する材料で形成され、図4で示すように長手形状であり、左右に目地幅より幅広のリブ21が形成されている。先端には凸条22が形成されており、この凸条22側から外壁目地に押し込んで挿入される。この時、リブ21は屋外側に向けて反るように弾性変形しているので、この弾性力によって外壁目地内で挟持され、且つ、外壁目地内の両壁に密着することで防水機能を発揮する。
【0023】
上述の例では外壁パネル取付用金具5をバックアップ材として、平板部材11の溝部13が設けられない面を外壁パネル取付用金具5の操作部53に当接するように2次防水部材1を配置したが、本願発明の外壁目地の防水構造はこれに限定されず、例えば、図示しないが隙間埋め材等の別の部材をバックアップ材として用いても良い。
【0024】
次に、本実施形態の防水構造施工方法について説明する。まず、外壁パネル取付用金具5により軸組4に外壁パネル3が取付けられた状態において、外壁目地の隙間から2次防水部材1を挿入する。2次防水部材1は挿入時において、弾性変形するヒレ部材12が図5で示すように屋外側に折れ曲がり外壁目地の隙間を通過することができる。そして、外壁目地を通り抜けた2次防水部材1は、外壁パネル取付用金具5の最も屋外側に突出している操作部53に、平板部材11の溝13が設けられていない面が当接するまで挿入される。この時、、図5に示すように、2次防水部材1を押し込むために長尺な工具7を用いると好適である。
【0025】
尚、前記工具7は図5に示される形状に限定されるものではなく、外壁目地の隙間に挿入できる程度の幅であり、且つ2次防水部材1をバックアップ材に当接するまで挿入できる程度の長さであれば如何なる形状、構成であっても良く、例えば既存のドライバー等の工具を用いても良い。
【0026】
上記の2次防水部材1を挿入する工程が完了すると、次に、左右のヒレ部材12の位置を修正する。挿入された2次防水部材1は図6のように、ヒレ部材12の縁部15が屋外側からみて外壁目地の内部に突出している状態である。この状態においては、ヒレ部材12の屈曲部14と縁部15との中間位置付近が外壁パネル3の端部内側面32と接触している。この状態でもある程度の圧力で接触しており、一定の防水性能を得ることはできるが、ヒレ部材12をより高い圧力で外壁パネル3の端部内側面32と密着させて防水性能を高めるために、左右のヒレ部材12を外壁パネル3の端部内側面32に押し込む。具体的には図7で示すように、工具8を用いてヒレ部材12の屈曲部14を外壁パネル3の端部内側面32に隠れるように押し込み、ヒレ部材12の縁部15が外壁パネル3の端部内側面32と接触するように修正する。この工具8は、図7で示すように、外壁目地内で動かせる程度の幅で、且つ部材として強度を有するものであれば如何なるものであっても良く、例えば既存のドライバー等の工具でも良い。また、上記の工具7と同じものであっても良く、この場合には部材として強度のある薄板状のものが最適である。
【0027】
上述のようにヒレ部材12の位置を修正した後の状態を図8に示す。このようにすることで、ヒレ部材12の縁部15は高い圧力で外壁パネル3の端部内側面32と密着し、優れた2次防水性能を有する外壁目地の防水構造を構成することができる。
【0028】
尚、上記のヒレ部材12の位置を修正する前の状態、すなわち図6で示されるようにヒレ部材12の屈曲部14と縁部15との中間位置あたりが外壁パネル3の端部内側面32と接触している状態であっても、ある程度の防水性能を有することから、本願発明における外壁目地の防水構造施工方法においては、上述のヒレ部材12の位置を修正する工程は必ずしも必要ではない。しかしながら、より高い防水性能を得るためには、かかる工程を行うことが好ましい。
【0029】
上記のヒレ部材12の位置を修正する工程が完了すると、次に、2次防水部材1の水平方向の位置ズレを修正する。図9に示すように、位置ズレ修正工具9を外壁目地に挿入して、平板部材11に設けられた溝部13に位置ズレ修正工具9の先端部を引っ掛けて、外壁目地の屋外側から位置ズレ修正工具9を操作することにより2次防水部材1を水平方向に移動させる。この位置ズレ修正工具9は、外壁目地内で動かせる程度の幅であり、部材として強度を有し、更にその先端部が溝部13に引っ掛かる形状のものであれば如何なるものであっても良く、例えば既存のドライバー等の工具を用いても良い。また、工具7及び工具8と同じものであっても良く、この場合は部材として強度のある薄板状のものが最適である。
【0030】
上述のような位置ズレ修正工具9を用いて2次防水部材1の中心軸と外壁目地の中心軸との水平方向における位置ズレを修正する。尚、図9においては、外壁目地の屋外側の角を用いてテコの原理で2次防水部材1を移動させているが、本願発明はこれに限定されるものではない。また、図9においては、平板部材11に5本の溝部13が設けられているので、施工者が位置ズレ修正工具9を外壁目地に挿入したときに、引っ掛け易い溝を適宜選んで操作すれば良い。
【0031】
次に、1次防水部材2を屋外側から外壁目地に挿入する。1次防水部材2は既に図4で示したように、ポリ塩化ビニル等の水密性及び弾性を有する材料で形成され、長手形状であり左右に目地幅より幅広のリブ21が形成され、先端に凸条22が形成されている。凸条22が設けられている側から外壁目地に挿入されると、リブ21が屋外側に向けて反るように弾性変形しその弾性力によって外壁目地内で挟持される。この1次防水部材2は、図1に示されるように、2次防水部材1より屋外側に収容される。
【0032】
次に、外壁パネル3、及び外壁パネル3の取り付け手順を説明する。外壁パネル3は矩形平板形状に形成された例えば樹脂系、セメント系、セラミック形、又は金属系のサインディング材である。図12に示されるように、この外壁パネル3は互いが隣接する端部の屋内側に、この外壁パネル3を軸組4に固定するための断面C型の金属枠31が外壁目地方向に開口して取り付けられている。外壁パネル取付用金具5は、軸組4から屋外方向に突出する基部51と、外壁パネル3の金属枠31を軸組4との間に挟持するパネル固定部52と、このパネル固定部52を回転動作させる操作部53と、隣接する軸組4の隙間に挿入される固定軸54と、外壁パネル取付用金具5を軸組4に固定する止め具55と、を備える。止め具55は固定軸54の先端に設けられる棒状の部材であり、固定軸54と垂直な面において回転自在に取り付けられている。また、外壁パネル取付用金具5は基部51を回転させることで基部51と止め具55との距離が伸縮自在となるように構成されている。このような外壁パネル取付用金具5を、軸組4が施工された後に、固定軸54の止め具55が設けられている側から隣接する軸組4の隙間に挿入する。挿入後、止め具55を回転させて軸組4の屋内側面に当接させ、その後基部51を回転させて止め具55を軸組4の屋内側面に圧接させることで軸組4に外壁パネル取付用金具5を固定する。外壁パネル3を取り付ける際には、軸組4に外壁パネル3の金属枠31を押し当てて、外壁パネル取付用金具5の操作部53を操作してパネル固定部52を回転させ、パネル固定部52と軸組4とで外壁パネル3の金属枠31を挟持して固定する。このとき、操作部53は隣接する外壁パネル3間の外壁目地の奥に位置するように構成されている。したがって、屋外側から外壁目地内にドライバーなどの工具を挿入しつつ操作することにより、外壁パネル3を屋外側から取り付けることができ、また、リフォームなどの際にも外壁パネル3を屋外側から取り外すことができる。本実施形態の外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の防水構造、及び外壁目地の防水構造施工方法は、上記のような隣接する外壁パネル3間の外壁目地に配置、構成及び施工され、外壁目地を通過して建物の屋内側に雨水等が浸入することを防止する。尚、本願発明における外壁パネル取付方法、及び外壁パネル取付用金具は上述の構成に限定されるものではなく、如何なる構成であっても良い。
【0033】
以上のように、本願発明に係る外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の2次防水構造、及び外壁目地の2次防水構造施工方法によれば、外壁パネル3を取り付けた後に2次防水部材1を施工し、仮に水平方向の位置ズレが生じた場合であっても、屋外側から容易に位置ズレの修正ができる。
【0034】
尚、本願発明の実施の形態は上記の形態に限ることなく、本願発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願発明に係る外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の防水構造、及び外壁目地の防水構造施工方法を用いると、外壁の外壁目地をより確実に防水することができる外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の防水構造、及び外壁目地の防水構造施工方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 2次防水部材
2 1次防水部材
3 外壁パネル
5 外壁パネル取付用金具(バックアップ材)
9 位置ズレ修正工具
11 平板部材
12 ヒレ部材
13 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁目地の屋内側に収納されて、該外壁目地から屋内側に水が浸入することを抑止する外壁目地の2次防水部材であって、
長尺な平板形状の部材で、その片面において長手方向に沿って設けられた1以上の溝部を有する平板部材と、
弾性を有し長尺な一対の部材で、その長辺の一端が前記平板部材の両側に沿ってそれぞれ接続され、前記平板部材の前記溝部が設けられた面側に屈曲する屈曲部を有すヒレ部材と、を備えることを特徴とする外壁目地の2次防水部材。
【請求項2】
外壁目地よりもやや幅広に形成された弾性材料からなり、前記外壁目地に挿入されて保持される1次防水部材と、
該1次防水部材より屋内側に設置される2次防水部材と、を備える外壁目地の防水構造であって、
前記2次防水部材は、長尺な平板形状の部材でその屋外側面において長手方向に沿って設けられた1以上の溝部を有する平板部材と、弾性を有し長尺な一対の部材でその長辺の一端が前記平板部材の両側に沿ってそれぞれ接続され、前記平板部材の前記溝部が設けられた面側に屈曲する屈曲部を有すヒレ部材と、を具備し、前記外壁パネルと建物の構造躯体を構成する軸組との間に収納されるバックアップ材に前記平板部材が当接し、且つ前記ヒレ部材が隣接する2つの外壁パネルの端部内側面に圧接することを特徴とする外壁目地の防水構造。
【請求項3】
前記バックアップ材は、建物の構造躯体に前記外壁パネルを取り付ける外壁パネル取付用金具であることを特徴とする請求項2に記載の外壁目地の防水構造。
【請求項4】
長尺で平板形状の部材でありその片面に1以上の溝部が長手方向に沿って設けられた平板部材と、弾性を有し長尺な一対の部材でその長辺の一端が前記平板部材の両側に沿ってそれぞれ接続され、前記平板部材の前記溝部が設けられた面側に屈曲する屈曲部を有すヒレ部材と、を備える2次防水部材を、外壁目地に前記平板部材の前記溝部が設けられている面を屋外側に向けて挿入し、
前記平板部材に設けられた前記溝部に位置ズレ修正工具の先端部を引っ掛けて前記2次防水部材を水平方向に移動させることで前記2次防水部材の水平方向の位置ズレを修正し、
次に、前記外壁目地よりもやや幅広に形成された弾性材料からなる1次防水部材を屋外側から前記外壁目地に挿入しその弾性力によって前記外壁目地内で挟持されて防水することを特徴とする外壁目地の防水構造施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−208393(P2011−208393A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75653(P2010−75653)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】