説明

外張り断熱用木ねじ

【課題】 木造住宅における外張り断熱構造用の木ねじにおいて、電動ドライバーでそれを螺着締結するとき、木ねじ11の頭部5が保持材16内部に異常に深く埋設しないようにすること。
【解決手段】 全長110mm以上の木ねじにおいて、ネジ部4の長さLを25mm〜35mmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木造家屋における外張り断熱用木ねじに関し、特に電動ドライバー等の動力駆動ドライバー等の動力駆動ドライバーでそれを柱等に螺着するものに関する。
【背景技術】
【0002】
木造家屋における外側断熱工法は図2に示す如く、断熱材13を柱1(または間柱、以下同じ)と通気胴縁2との間に介挿させ、通気胴縁2の端面側から木ねじ11を電動ドライバー、エアードライバ等の動力駆動ドライバーにより回転して、そのネジ部4を柱1に螺着締結するものである。そして、通気胴縁2に外壁12が固定されることにより、通気胴縁2のスペース分だけ断熱材13と外壁12との間に通気部14が形成され、それが上下方向に配置される。なお、多数の通気胴縁が上下に離間して、それらが水平方向に且つ互いに千鳥状に形成され、通気路が千鳥状に形成されたものも存在する。
その結果、図3に示す如く、空気流15が通気部14の下側から外壁12内に流入し、それが天井部から外部に流出するものである。あるいは、天井部から屋根の内側をとおり、外部に流出する。そのため、冬期に構造体表面に結露が付着することなく、木材の耐久性を向上させるものである。また、夏期には、外壁と断熱材との間に熱気がこもらず、冷房効果が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
外側断熱工法における断熱材13の厚みは、一例として、20mm、40mm、50mm、55mm、70mm、75mm、90mm、110mmが存在する。この断熱材の厚さに応じて、木ねじ長さは80〜200mmのものが存在する。そして、その木ねじの全長が長くなるにつれ、ネジ部長さが長くなる。たとえば、木ねじの全長が80mm、100mmの場合には、ネジ部長さが30mm程度である。木ねじの全長が110mmの場合には、ネジ部長さは40mm〜50mmとなる。また全長120mmでは40〜70mmとなり、全長130では45〜80mmとなる。さらに全長150mmの場合には、50〜90mmとなり、全長200mmでは60〜110mmとなる。また一般の木ねじでは、そのネジ部4の長さは、全長の3分の2程度である。
【0004】
ところが本発明者の実験によれば、木ねじの全長が110mmを超えると、それを電動ドライバー等の動力駆動ドライバーで柱等に脱着したとき、その螺着力が強すぎて、図6に示す如く、木ねじ11の頭部5が通気胴縁2に異常に深く埋設されたり、それを貫通したりすることがある。通常、その埋設を防ぐのために、適宜位置で電動ドライバー等の動力駆動ドライバーのスイッチを切っていた。しかし、うっかりすると、頭部の埋設が起る。すると、通気胴縁2と柱1との止着力が弱くなり、外壁12を通気胴縁2に保持させる保持力が低下する。
また、ネジ部4の長さを極端に短くすると、図7に示す如く、木ねじ11は途中で空回りし、その頭部5の端面が通気胴縁2表面から突出する。すると、通気胴縁2表面に外壁12を取り付ける際、外壁12表面に凹凸が生じる。
そこで本発明はこれらの問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、それぞれ木製の柱(1)または間柱と通気用胴縁(2)との間に断熱材(13)が介装された状態で、その通気用胴縁(2)と柱(1)または間柱との間を連結するものであって、その軸部(3)のネジ部(4)の外直径Dが5.5〜6.5mmで、その頭部(5)は略円錐台形状(皿頭)に形成され、その頭部端の直径Dが10〜12mmであり且つ、全長が110mm以上の外張り断熱用木ねじであって、電動ドライバー等の動力駆動ドライバーで前記柱等に螺着されるものにおいて、
その軸部(3)の先端部に形成されたネジ部(4)の長さLを25〜35mmとすることにより、木ねじを螺着する際、頭部(5)が通気用胴縁(2) を貫通し、またはそれが通気胴縁(2) の平面より2mmを超えて埋没することを防止すると共に、その頭部(5)の端面が通気胴縁(2) の平面から突出しないように構成したことを特徴とする外張り断熱用木ねじである。
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記頭部(5)の前記円錐台形部の斜面(5a)に複数のフレキ刃(6)が放射状に形成された外張り断熱用木ねじである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の外張り断熱用木ねじは、全長が110mm以上の外断熱用のものにおいて、ネジ部4の長さLを25〜35mmとしたので、電動ドライバー等の動力駆動ドライバーで柱等に螺着したとき、その頭部5が通気胴縁2を貫通したり、通気胴縁2の平面より2mmを超えて埋設することを防止できる。それとともに、その頭部の端面が通気胴縁2の平面から突出しないように形成することができる。それにより、通気胴縁2と柱1との接続を確実にするとともに、通気胴縁2の支持強度を高めることができる。
また、通気胴縁2表面に頭部5が突出しないので、そこに外壁12を精度よく取り付けることができる。これはネジ部4の長さLを25mm〜35mmとすることにより、そのネジ部4の締付け強さを異常に大きくせず、且つ頭部5が通気胴縁2表面から突出しない程度のものとしたことに基づく。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の外断熱用木ねじの一例を示す正面図および各断面図。
【図2】同木ねじの取付状態を示す断面説明図であって、図3におけるIII−III矢視断面図。
【図3】本発明の木ねじが使用される外側断熱構造の説明図。
【図4】木ねじ11の頭部5が通気胴縁2に埋設される様子を実験的に確認する説明図。
【図5】木ねじ11の通気部14による引抜力を実験的に測定する説明図。
【図6】従来の外張り断熱用木ねじの問題点を示す説明図。
【図7】木ねじ11のネジ部4長さを極端に短くした場合の問題点を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の外断熱用木ねじは、一例として図1に示す如く、軸部3の一端に略円錐台形状(皿頭)の頭部5が設けられ、その頭部5の円錐台形部の斜面5aに複数のフレキ刃6が放射状に(この例では6つ)形成されている。このフレキ刃6の突出量は極めて僅かであり、頭部5が通気胴縁2に回転しながら進入するとき、通気胴縁2を僅かに削りとる機能を有する。軸部3の頭部5側端部には小ネジ部10が設けられている。この小ネジ部10のねじ山は通常のねじに比べて極めて僅かである。この小ネジ部10は木ねじ11を柱1以外の場所に誤って取付けた場合、逆回転により木ねじ11を引き抜きやすくするためである。
【0009】
木ねじ11の先端部には、ドリル刃先端部8が設けられており、そのドリル刃先端部8を除いて軸部3の先端部には、ネジ部4が長さL設けられている。この長さLは、全長が110mm以上の木ねじ11において、25mm〜35mmである。この例ではネジ部4には部分的にノッチ7が形成されている。このノッチ7はネジ部4の一部に凹みを設けたものであり、その回転時に柱1を切削しやすくしたものである。
【0010】
図1において(b)は(a)の平面図、(c)はそのc−c断面図、(d)はd−d断面図、(e)はe−e断面図である。この例では、頭部5の端面には正方形の工具嵌着凹部9が形成されている。それが十字溝等であってもよい。また、ネジ部4の外直径Dは、5.5〜6.5mmであり、頭部5の端面の直径Dは10〜12mmである。
【0011】
次に、本発明の木ねじ11のネジ部4の長さLを25mm〜35mmとした根拠につき説明する。図4は通気胴縁2に木ねじ11を挿通し、その木ねじ11を軸方向下方に外力を加えて引張ったとき、木ねじ11の頭部5の端面が通気胴縁2表面からの埋設距離が0.5mm〜2mm以内である引張り力を求めるものである。実験によれば、その引張力は3000Nであることが確認された。この例において通気胴縁2の材質は一般的に使用される杉材であり、それを頭部5により支持する。そして、木ねじ11のネジ部4を把持材17で把持し、万能試験機にかけて矢印方向下方に引張ったものである。
【0012】
このとき頭部5が2mm以内の埋設力である3000Nの引張り力は、電動ドライバー等の動力駆動ドライバーの螺着作業において、次のことを意味する。図2で、木ねじ11を電動ドライバー等の動力駆動ドライバーで同図の如く柱1に螺着締結したとき、その螺着締結力が3000Nを超えると頭部5が通気胴縁2内に2mm以上埋設され、通気胴縁2と柱1との締結力が弱くなる。このネジ部4の螺着締結力はその長さLに比例する。
そこでネジ部4が3000Nの螺着締結力となる、ねじ部の長さLを次のようにして求めた。図5において木ねじ11の頭部5を保持材16で支持するとともに木ねじ11のネジ部4を柱1に螺着した。そして、その保持材16を、図において上方に万能試験機により引き上げたとき、木ねじ11が柱1から抜け出るネジ部4の長さLは平均的に30mmであった。このネジ部の長さを30mm以上とすれば、木ねじ11を柱1に電動ドライバー等の動力駆動ドライバーで螺着締結したとき、3000N以上の引張り力が木ねじ11に生じ、その頭部5は通気胴縁2に異常に埋設される。
【0013】
ところが、実験によれば柱1の材質および乾燥状態、その他により、その引張り力の力は+(−)15%程度異なる。そこで、本発明ではネジ部4の長さLを30mmの15%前後とし、それを25mm〜35mmとする。
次に、木ねじ11の長さLを上記範囲とし、その木ねじ11の全長を110mm〜200mmの各種のものを用意し、図2のように断熱材13を介して柱1と通気胴縁2との間を木ねじ11により電動ドライバー等の動力駆動ドライバーを介して螺着締結した。すると、木ねじ11は頭部5が通気胴縁2の表面から極めて僅か(1mm程度)埋設されたとき、木ねじ11が回転しつつもそれ以上頭部5が通気胴縁2に埋設されることはなかった。なお、外側断熱工法において木ねじ11には主として剪断力が加わり引抜力はほとんど加わらないので、ネジ部4が柱1内で空回りしても強度上の問題は生じない。
また、図1においては頭部5の斜面5aにフレキ刃6を設けたが、それがないものであっても同様の結果がでた。さらには小ネジ部10、ノッチ7が存在しないものにおいても同様の結果がでた。なお、この実施例において図1のDは5.5〜6.5mmとし、Dは10mm〜12mmとして行った。それらの範囲では略同様の結果が現れた。
【符号の説明】
【0014】
1 柱
2 通気胴縁
3 軸部
4 ネジ部
5 頭部
5a 斜面
6 フレキ刃
7 ノッチ
8 ドリル刃先端部
9 工具嵌着凹部
10 小ネジ部
【0015】
11 木ねじ
12 外壁
13 断熱材
14 通気部
15 空気流
16 保持材
17 把持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ木製の柱(1)または間柱と、通気用胴縁(2)との間に断熱材(13)が介装された状態で、その通気用胴縁(2)と柱(1)または間柱との間を連結するものであって、その軸部(3) のネジ部(4)の外直径Dが5.5〜6.5mmで、その頭部(5)は略円錐台形状(皿頭)に形成され、その頭部端の直径Dが10〜12mmであり且つ、全長が110mm以上の外張り断熱用木ねじであって、電動ドライバ等の動力駆動ドライバで前記柱等に螺着されるものにおいて、
その軸部(3)の先端部に形成されたネジ部(4)の長さLを25〜35mmとすることにより、木ねじを螺着する際、頭部(5)が通気用胴縁(2)を貫通し、またはそれが通気胴縁(2)の平面より2mmを超えて埋没することを防止すると共に、その頭部(5)の端面が通気胴縁(2) の平面から突出しないように構成したことを特徴とする外張り断熱用木ねじ。
【請求項2】
請求項1において、
前記頭部(5)の前記円錐台形部の斜面(5a)に複数のフレキ刃(6)が放射状に形成された外張り断熱用木ねじ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−84941(P2010−84941A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−125990(P2009−125990)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(500167928)東日本パワーファスニング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】