説明

外気温推定装置

【課題】 正確に外気温を推定することができる外気温推定装置を提供する。
【解決手段】 外気温推定装置は、エンジンの冷却水の水温を検出する水温検出手段と、エンジンの吸気温を検出する吸気温検出手段と、エンジンの負荷を検出する負荷検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、水温と吸気温との温度差を算出し、温度差が所定値以下であるかどうかを判定する第1判定手段と、水温が設定温度以下であるかどうかを判定する第2判定手段と、温度差が所定値以下であると共に水温が設定温度以下である場合には、吸気温を初期外気温として取得する外気温取得手段と、検出された吸気温、車速及びエンジン負荷に基づいて推定外気温値を推定式から算出し、推定外気温値と初期外気温値とから、外気温を推定する外気温推定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外気温推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外気温を直接検出することなく外気温を推定することができるように、車両に外気温推定装置を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。外気温推定装置は、車両に通常設けられている各種センサを用いて外気温を推定するものであり、特許文献1では、エンジンの吸気温に基づいて外気温を推定している。推定された外気温は、例えばエアコンのコンプレッサーの駆動状態を変化させるために利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−291478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1に記載された発明では、外気温を検出するための検出手段を設けることなく、車両に通常設けられている各種センサに基づいて外気温を推定していることから、車両の製造コストを削減することができる。
【0005】
しかしながら、このような外気温推定装置では、例えば上り坂において車速が低速であってもエンジン負荷が大きい場合には、エンジンルーム内の温度が高くなるので正確に外気温を推定することができない。正確に外気温を推定することができないと、例えば推定された外気温値をエアコンの駆動に利用する場合には、暖房性能が低下してしまうなどの不都合が生じる場合が考えられる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、正確に外気温を推定することができる外気温推定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の外気温推定装置は、エンジンの冷却水の水温を検出する水温検出手段と、エンジンの吸気温を検出する吸気温検出手段と、エンジンの負荷を検出する負荷検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記水温と前記吸気温との温度差を算出し、該温度差が所定値以下であるかどうかを判定する第1判定手段と、前記水温が設定温度以下であるかどうかを判定する第2判定手段と、前記温度差が所定値以下であると共に前記水温が設定温度以下である場合には、検出された前記吸気温を初期外気温として取得する外気温取得手段と、検出された前記吸気温、前記車速及び前記エンジン負荷に基づいて推定外気温値を推定式から算出し、該推定外気温値と前記初期外気温値とから、外気温を推定する外気温推定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、検出された前記吸気温、前記車速及び前記エンジン負荷に基づいて推定外気温値を推定式から算出する外気温推定手段を備えることで、正確に外気温を推定することができる。さらに、この場合に前記温度差が所定値以下であると共に前記水温が設定温度以下である場合には、吸気温を初期外気温として取得する外気温取得手段を備えていることで、より正確に外気温を推定することが可能である。
【0009】
前記負荷検出手段が、エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、吸気圧を検出する吸気圧検出手段とからなり、検出された該エンジン回転数及び該吸気圧をエンジン負荷として前記外気温を推定する外気温推定手段とを備えることが好ましい。このようにエンジン負荷として、エンジン回転数及び吸気圧を用いることで、正確に外気温を推定することが可能である。
【0010】
前記外気温推定手段が、推定外気温値を所定時間毎に求めて、複数回の該推定外気温値の平均値である推定平均値を求め、この推定平均値と、前回推定した外気温値との差が閾値よりも大きい場合には、前回推定した外気温値に第1所定値を加算又は減算し、この推定平均値と、前回推定した外気温値との差が閾値よりも小さい場合には、該第1所定値よりも小さい第2所定値を前回推定した外気温値に加算又は減算して、外気温値を算出することが好ましい。このように平均値を求めることで、さらに推定値の誤差を減少させると共に、この推定値をさらに前回推定した外気温値と比較し調整することで、より正確に外気温を推定することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外気温推定装置によれば、正確に外気温を推定することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】外気温推定装置を説明するためのブロック図。
【図2】外気温推定装置による外気温推定の工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の外気温推定装置について、図1を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、車両Iには、エンジン1が設けられている。エンジン1の吸気管2の上流側には、吸気の温度を検出する吸気温センサ(吸気温検出手段)21と、吸気の圧力を検出する吸気圧センサ(吸気圧検出手段)22が設けられている。
【0015】
エンジン1の排気管3には、図示しない排気浄化装置が設けられている。また、エンジン1には、エンジン1を冷却するための冷却水が循環する冷却装置4が設けられている。冷却装置4には、冷却水の温度を検出する水温センサ(水温検出手段)23が設けられている。
【0016】
車両Iには、さらに車速を検出するための車速センサ(車速検出手段)24が設けられていると共に、エンジン1にエンジン回転数を検出する回転数センサ(回転数検出手段)25が設けられている。
【0017】
また、車両Iには、車両Iの外気温を推定する外気温推定装置10が設けられている。外気温推定装置10は、本実施形態では、車両の統合制御を行うECU5に設けられている。外気温推定装置10は、上述した各センサからの検出値がECU5内に入力されるので、これらの吸気温、車速、エンジン回転数及び吸気圧を取得して推定式から車両の走行状態及びエンジン1の負荷状態を検出し、これに基づいて車両Iの外気温を推定する。即ち、各センサからの検出値は通常車両の走行を制御するために用いられているものであり、本実施形態では、これらの通常用いられる検出値を用いて外気温を推定することで、外気温センサを設けず新たに部品を追加することなく外気温を正確に推定することができる。そして、推定された外気温値は、例えばエアコンコンプレッサ31に送出されて省エネ制御に用いられ、また、CVT32に送出されてクリップ制御に用いられたりする。外気温推定装置10について以下具体的に説明する。
【0018】
外気温推定装置10は、詳しくは後述する第1判定部11と、第2判定部12と、外気温取得部13と、外気温推定部14とを備える。外気温推定装置10は、エンジンスタート時(イグニッションスイッチオン時)に作動を開始する。外気温推定装置10が作動を開始すると、まず、第1判定部11及び第2判定部12が作動する。
【0019】
第1判定部11と第2判定部12とは、それぞれ、外気温の推定を行う際に、吸気温を外気温と推定してもよいかどうかを判定するために設けられている。
【0020】
第1判定部11は、前記冷却水温と前記吸気温との温度差を算出し、該温度差の絶対値が所定値(例えば10℃)以下であるかどうかを判定する。即ち、第1判定部11は、冷却水温と吸気温との差の絶対値が所定値以下であるかどうかを判定することにより、車両が冷態であるかどうかを判定する。即ち、エンジンの冷却水温と吸気温との差が所定値以下であれば、エンジンが冷態状態であることが分かる。このような冷態状態である場合には、後述するように吸気温を外気温として取得することができる。
【0021】
また、エンジンスタート時に、第2判定部12は、冷却水温が設定温度(例えば50℃)以下であるかどうかを判定する。冷却水温が設定温度以下である場合とは、つまりエンジンが冷態状態である場合である。冷却水温が設定温度以下であれば、エンジンが冷態状態であると判定できる。例えば走行中に上り坂が続くと、エンジン負荷が高まって冷却水の温度が上昇すると共に吸気温も上昇することが考えられるが、この場合にはエンジンが冷態状態ではなくても冷却水の水温と吸気温との差が小さいので、第1判定部11のみが設けられている場合にはエンジンが冷態状態であると判断してしまい、高い吸気温を外気温として取得してしまう。そこで、本実施形態においては、第1判定部11だけでなく第2判定部12を設け、車両が冷態であるかどうかをより正確に判断しているのである。即ち、本実施形態では、例えば走行中に上り坂が続きエンジン負荷が高まって冷却水の温度が上昇すると共に吸気温も上昇した場合には、第2判定部12により判定される条件により、吸気温を外気温と推定しないので、より正確に外気温を推定することができる。
【0022】
このように、本実施形態では、第1判定部11及び第2判定部12により、外気温の推定を行う際に、吸気温を外気温と推定してもよいかどうかを判定することができるので、車両が冷態であるかどうかをより正確に判定することができる。第1判定部11及び第2判定部12は、それぞれ判定結果を外気温取得部13に送出する。
【0023】
第1判定部11及び第2判定部12により、エンジンの冷却水温と吸気温との差が所定値以下であり、かつ、冷却水温が設定温度以下である場合との判定結果を得た場合には、吸気温を外気温とみなすことができるため、外気温取得部13は、吸気温を初期外気温値として取得する。このように、吸気温を外気温とみなすことができるかどうかの判定基準を厳しく設けることで初期外気温値の設定をより正確に行うことができ、その結果、この初期外気温値を用いて外気温値を正確に推定することができる。
【0024】
外気温取得部13は、エンジン1の冷却水温と吸気温との差が所定値よりも大きいか、又は、冷却水温が設定温度より高い場合には、外気温取得部13は、前回(即ちイグニッションオフ時に)記録した演算推定値を初期外気温値として取得する。外気温取得部13は、取得した初期外気温値を演算推定値として外気温推定部14に送出する。
【0025】
外気温推定部14は、この演算推定値を取得すると、初めに、車速が所定の速度となっているかどうかを判定する。所定範囲(例えば20km/h≦車速<150km/h)内に車速が含まれている場合には、エンジン1が過度に加熱されていないので、以下の外気温推定を正確に行うことが可能である。
【0026】
外気温推定部は、車速が所定の速度である場合には、現在の検出値に基づいて外気温推定を行う。なお、外気温推定部は複数回この外気温推定を行って、その平均値を算出する。
【0027】
外気温推定部は、各センサから取得した値を以下の推定式(1)に代入して、推定外気温値Tfを導出する。即ち、各センサからは、常にセンサの検出値が外気温推定部に入力されているので、この検出値を入力して推定式(1)において、Tiは吸気温、Vは車速、Neがエンジン回転数、Piは吸気圧である。また、以下の推定式(1)の各定数a〜hは重回帰分析により得られたものであり、各定数a〜hは車種毎に異なるものである。
【0028】

【0029】
このように推定式(1)により推定外気温値を求めることで、エンジン負荷についても考慮して、より正確に外気温を推定することができる。即ち、エンジン負荷について考慮しないとすれば、走行中に上り坂が続く場合にエンジンに負荷がかかって吸気温も外気温よりも高くなってしまう場合もあり、このような場合には、外気温推定に誤差が生じやすい。そこで、本実施形態では、エンジン負荷についても考慮すべく、エンジン回転数及び吸気圧についても検出値を利用して外気温推定を行っている。
【0030】
また、これらの変数についてのマップにより外気温推定を行うことも考えられるが、このようにエンジン負荷についても考慮するとすれば、変数が多く、マップでの処理が難しく、他方で変数が多いままでマップでの処理を簡易にしようとすれば、誤差が生じやすくなってしまう。従って、本実施形態のように外気温を重回帰分析で得られた車種毎の変数に基づいた推定式(1)により推定することが好ましいのである。
【0031】
外気温推定部は、所定回数(例えば60回)の外気温推定を行うと、推定外気温値の平均値を算出する。これにより、所定回数における推定外気温値の平均である平均推定値を得ることができる。
【0032】
そして、外気温推定部は、平均推定値と演算推定値との差を算出してその差が所定値以下であるかどうかを判定する。その差が所定値以下である場合には、平均推定値と演算推定値とは誤差が少ないので、平均推定値の方が演算推定値よりも小さい場合には演算推定値から0.25減算した値を演算推定値とする。平均推定値の方が演算推定値よりも大きい場合には、演算推定値に0.25加算した値を演算推定値とする。
【0033】
他方で、外気温推定部は、その差が所定値よりも大きい場合には、平均推定値の方が演算推定値よりも小さい場合には演算推定値から0.5減算した値を演算推定値とする。平均推定値の方が演算推定値よりも大きい場合には、演算推定値に0.5加算した値を演算推定値とする。
【0034】
このようにして、平均推定値と演算推定値との差を算出し、この差が所定値よりも大きいか否かにより演算推定値を調整することで、より外気温を正確に推定することができる。
【0035】
その後、外気温推定部は、記録する。この記録された演算推定値は、次回の演算時に利用される。そして、外気温推定部は、この演算推定値を外気温値として例えば車載のエアコンに出力する。
【0036】
このように、推定式に基づいて、エンジン負荷も考慮して推定外気温値を算出することで、より正確に外気温値を推定することができる。この場合に、さらに推定値の平均値を算出することで、より正確に外気温値を推定することができる。
【0037】
その後、外気温推定部14は、演算推定値を記録する。この演算推定値は、次回の演算時に利用される。そして、外気温推定部14は、この演算推定値を例えば車載のエアコンに出力する。外気温推定装置10は、イグニッションオフ時までこのような外気温の推定を続ける。
【0038】
このように、エンジン負荷も考慮した推定式に基づいて、推定外気温値を算出することで、正確に外気温値を推定することができる。この場合に、さらに推定外気温値の平均値を算出することで、より正確に外気温値を推定することができる。
【0039】
本実施形態の外気温推定装置による外気温推定方法について以下フローチャートを用いて説明する。
【0040】
初めに、エンジンがスタート、即ちイグニッションオンとなると、外気温推定装置が作動して制御が開始され、ステップS1に進む。
【0041】
ステップS1では、第1判定部と第2判定部とが車両が冷態であるかどうか、即ち冷却水温と吸気温との温度差の絶対値が所定値以下であるかどうか、かつ、冷却水温が設定温度以下であるかどうかを判定する。そして、冷却水温と吸気温との差の絶対値が所定値以下であり、かつ、冷却水温が設定温度以下である場合(YES)、ステップS2に進む。冷却水温と吸気温との差の絶対値が所定値より大きく、かつ、冷却水温が設定温度より高い場合、ステップS3へ進む。
【0042】
ステップS2では、外気温取得部が、吸気温を演算推定値として取得する。ステップS4へ進む。
【0043】
ステップS3では、外気温取得部が、前回記録された演算推定値を演算推定値として取得する。ステップS4へ進む。
【0044】
ステップS4では、外気温推定部が、車速が所定範囲内にあるかどうかを判定する。車速が所定範囲内にあると判定した場合には(YES)、ステップS5へ進む。車速が所定範囲内にないと判定した場合には(NO)、詳しくは後述するステップS14へ進む。
【0045】
ステップS5以下では、外気温推定部が、車速が所定範囲内にあることから、外気温の推定を行う。まず、外気温推定部が、ステップS5では、カウントnに1を加算する。ステップS6へ進む。
【0046】
ステップS6では、外気温推定部が、センサからの検出値に基づいてカウントn時における外気温を上述した推定式(1)に従って算出し、カウントn―1時における推定外気温値に加算する。即ち、外気温推定部により算出された推定外気温値は、積算されていく。ステップS7へ進む。
【0047】
ステップS7では、外気温推定部が、カウントnがNとなっているか、即ち満カウントとなっているかどうかを判定する。n=Nである場合には(YES)、ステップS8に進む。n=Nではない場合には(NO)、ステップS14に進む。
【0048】
ステップS8では、外気温推定部が、推定外気温値をNで除算することで、平均推定値を算出する。ステップS9へ進む。
【0049】
ステップS9では、外気温推定部が、平均推定値と、演算推定値との差の絶対値が所定値以下であるかどうかを判定する。所定値以下である場合には(YES)、ステップS10へ進む。所定値よりも大きい場合には(NO)、ステップS11へ進む。
【0050】
ステップS10では、外気温推定部が、平均推定値よりも演算推定値が大きいかどうかを判定する。演算推定値が大きい場合には(YES)、ステップS12へ進み、演算推定値から0.25を減ずる。平均推定値が大きい場合には(NO)、ステップS13へ進み、演算推定値に0.25を加算する。ステップS12、S13の処理が終了すると、カウントを0に戻し、共にステップS14へ進む。
【0051】
ステップS11では、外気温推定部が、平均推定値よりも演算推定値が大きいかどうかを判定する。演算推定値が大きい場合には(YES)、ステップS15へ進み、演算推定値から0.5を減ずる。平均推定値が大きい場合には(NO)、ステップS16へ進み、演算推定値に0.5を加算する。ステップS15、S16の処理が終了すると、カウントを0に戻し、共にステップS14へ進む。これらのステップS12、13、15、16のいずれかに該当することで、外気温推定部は、正確な外気温となる演算推定値を得ることができる。
【0052】
ステップS14では、外気温推定部が、算出された演算推定値を記録する。ステップS17へ進む。
【0053】
ステップS17では、外気温推定部は、得られた演算推定値を出力する。
【0054】
その後、処理はステップS4へ戻り、イグニッションオフとなるまで連続して処理が行われる。
【0055】
このように、本実施形態では、外気温推定部が、第1判定部及び第2判定部により判定を行うことで、より正確に吸気温を演算に用いることができる場合を判定することができる。また、推定式(1)を用いることで、正確に外気温を推定することができる。さらに、この推定された推定外気温値を平均して、外気温推定値の誤差を平坦化し、この値と演算推定値との差に応じて外気温推定値を補正することができるので、より正確に外気温を推定することができる。
【0056】
例えば、冷態状態の車両がイグニッションオン、即ちコールドスタートすると、ステップS1での判定を満たす(YES)場合には、吸気温を演算推定値として取得する(ステップS2)。取得した演算推定値は、外気温推定部に送出される。外気温推定部では、車速が所定の範囲内にあるかどうかを判断し(ステップS4)、範囲内にあれば(YES)、カウントを1増加させる(ステップS5)。これにより、カウントnは1となる。そして、推定式(1)により、外気温を推定する(ステップS6)。そして、ステップS7に進むと、n=1でありn=Nではないので、ステップS14に進み、演算推定値が記録され、この値を車両の所定の機器に出力する(ステップS17)。そして、ステップS4に戻る。
【0057】
ステップS4に戻り、車速が所定の範囲内にあるかどうかを判断し、範囲内にあれば(YES)、カウントを1増加させる(ステップS5)。これにより、カウントnは2となる。そして、推定式(1)により、外気温を推定し、カウントnが1である時の値に推定外気温値を加算したものをカウントn=2である場合の推定外気温値として記録する(ステップS6)。そして、ステップS7に進むと、n=2でありn=Nではないので、ステップS14に進み、演算推定値が記録され、この値を車両の所定の機器に出力する(ステップS17)。そして、ステップS4に戻る。これをn=N―1となるまで続け、再度ステップS4に戻る。
【0058】
ステップS4に戻り、車速が所定の範囲内にあるかどうかを判断し、範囲内にあれば(YES)、カウントを1増加させる(ステップS5)。これにより、カウントnはNとなる。そして、推定式(1)により、外気温を推定し、カウントnがN−1である時の値に推定外気温値を加算したものをカウントn=Nである場合の推定外気温値として記録する(ステップS6)。そして、ステップS7に進むと、n=Nであるので、ステップS8に進む。ステップS8で、積算された推定外気温値をNで除算して、平均推定値を得る。得られた平均推定値と、演算推定値との差を算出し、この差が所定範囲内にあるかどうかを判定する(ステップS9)。差が所定範囲内にある場合には(YES)、さらに平均推定値と演算推定値の大小関係を判定し(ステップS10)、演算推定値が平均推定値よりも大きければ、演算推定値から0.25を引算して、演算推定値とし、カウントを0に戻す(ステップS12)。その後、この演算推定値を記録し(ステップS14)、この値を車両の所定の機器に出力する(ステップS17)。そして、ステップS4に戻る。
【0059】
ステップS4に戻り、車速が所定の範囲内にあるかどうかを判断し、範囲内にあれば(YES)、カウントを1増加させる(ステップS5)。これにより、カウントnは1となり、以下、同様に外気温の推定を行う。
【0060】
このようにして、外気温推定値を車両の走行状態とエンジンの負荷状態に応じて算出することで、より正確に外気温推定値を算出することができる。この場合に、最初の外気温推定においては、車両が冷態状態にあるかどうかを正確に判定したうえで、外気温推定の初期値として吸気温を演算推定値として取得することで、コールドスタート時においても正確に外気温を取得することができる。さらに、平均値を求めることで、より推定式(1)により算出された推定外気温値の誤差を減少させ、より正確に外気温推定値を算出することができる。
【0061】
上述した実施形態では、外気温推定部によりステップS12、S13で演算推定値に加算又は減算した値が0.25であり、ステップS15、S16で演算推定値に加算又は減算した値が0.5であったが、これに限定されない。ステップS12、S13で演算推定値に加算又は減算した値がステップS15、S16で演算推定値に加算又は減算した値よりも小さく、かつ、誤差を生じさせないような値であればよい。
【0062】
上述した実施形態では、外気温推定部14は、外気温取得部13から判定結果が送出されるとすぐに外気温推定を行うように構成したが、これに限定されない。例えば、所定時間(例えば300秒)経過するまでは外気温推定を行わないように構成してもよい。
【0063】
上述した実施形態では、エンジン負荷として、エンジン回転数及び吸気圧を検出したが、これに限定されない。エンジン回転数、又は吸気圧のみを検出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 エンジン
2 吸気管
3 排気管
4 冷却装置
10 外気温推定装置
11 第1判定部
12 第2判定部
13 外気温取得部
14 外気温推定部
21 吸気温センサ
22 吸気圧センサ
23 水温センサ
24 車速センサ
25 回転数センサ
31 エアコンコンプレッサ
32 CVT
I 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの冷却水の水温を検出する水温検出手段と、
エンジンの吸気温を検出する吸気温検出手段と、
エンジンの負荷を検出する負荷検出手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記水温と前記吸気温との温度差を算出し、該温度差が所定値以下であるかどうかを判定する第1判定手段と、
前記水温が設定温度以下であるかどうかを判定する第2判定手段と、
前記温度差が所定値以下であると共に前記水温が設定温度以下である場合には、検出された前記吸気温を初期外気温として取得する外気温取得手段と、
検出された前記吸気温、前記車速及び前記エンジン負荷に基づいて推定外気温値を推定式から算出し、該推定外気温値と前記初期外気温値とから、外気温を推定する外気温推定手段とを備えることを特徴とする外気温推定装置。
【請求項2】
前記負荷検出手段が、エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、吸気圧を検出する吸気圧検出手段とからなり、
検出された該エンジン回転数及び該吸気圧をエンジン負荷として前記外気温を推定する外気温推定手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の外気温推定装置。
【請求項3】
前記外気温推定手段が、推定外気温値を所定時間毎に求めて、複数回の該推定外気温値の平均値である推定平均値を求め、
この推定平均値と、前回推定した外気温値との差が閾値よりも大きい場合には、前回推定した外気温値に第1所定値を加算又は減算し、
この推定平均値と、前回推定した外気温値との差が閾値よりも小さい場合には、該第1所定値よりも小さい第2所定値を前回推定した外気温値に加算又は減算して、外気温値を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の外気温推定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−255376(P2012−255376A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128635(P2011−128635)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】