説明

外用剤

【課題】
血管収縮剤であるdl−塩酸メチルエフェドリン及び抗菌剤であるイソプロピルメチルフェノールを同時に配合した外用剤は、経時的に発生する着色が問題であり、製品化が困難であった。本発明では、この経時的に発生する着色を抑制することを課題とする。

【解決手段】
dl−塩酸メチルエフェドリン及びイソプロピルメチルフェノールを同時に配合した外用剤にパルミチン酸イソプロピルやミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸アルキルエステルを添加することにより、経時的な着色が抑制され、長期間安定な外用剤を提供することが可能となった。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、dl−塩酸メチルエフェドリンを配合した外用剤に関し、更に詳しくは、dl−塩酸メチルエフェドリン及びイソプロピルメチルフェノールを同時に配合した外用剤の経時的な着色を抑制し、実用的に長期にわたり安定に保つことのできる外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
dl−塩酸メチルエフェドリンは、交感神経興奮作用、気管支拡張作用、鎮咳作用を有するため(非特許文献1参照)、感冒薬や咳止め等に汎用されている成分である。例えばリン酸ジヒドロコデイン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、グアヤコールスルホン酸カリウム、塩化リゾチーム、キキョウ乾燥エキス、キョウニンエキス及びケイヒとの配合薬等が市販されている(非特許文献2参照)。また、血管収縮剤として外用痔疾用薬製造(輸入)承認基準(非特許文献3参照)にも収載されており、痔疾患時の止血効果に実績がある成分である。例えば酢酸ヒドロコルチゾン、リドカイン、乾燥硫酸アルミニウムカリウム 、塩酸クロルヘキシジン、アラントイン、ビタミンA油及び酢酸トコフェロールとの配合薬が市販されている(非特許文献4参照)。
【0003】
一方、イソプロピルメチルフェノールは、殺菌、防腐、防黴剤としてクリーム剤等の外用剤に使用される成分である(非特許文献5参照)。殺菌剤として外用痔疾用薬製造(輸入)承認基準(非特許文献3参照)にも収載されており、酢酸ヒドロコルチゾン、塩酸ナファゾリン、酸化亜鉛、リドカイン及びアラントインとの配合薬が市販されている(非特許文献6参照)。
それぞれの成分を単独で外用剤に処方しても、特に経時変化は認められないが、両成分を同時に外用剤に配合した場合、経時変化が起こり、褐色に着色する。
外用剤に配合した成分の着色を抑制する手段としては、コウジ酸の着色を特定の天然植物油を配合することにより抑制した皮膚外用剤(特許文献1、2参照)、安定化剤としてチオ硫酸ナトリウムを配合してインドメタシンの着色を抑制した皮膚外用剤(特許文献3参照)が知られている。しかしながら、dl−塩酸メチルエフェドリンとイソプロピルメチルフェノールを同時に配合した外用剤の着色を抑制する技術は知られていなかった。

【特許文献1】特開平7−17824号公報
【特許文献2】特開平7−196442号公報
【特許文献3】特開2000−72672号公報
【非特許文献1】第14改正 日本薬局方解説書 C−994(廣川書店)
【非特許文献2】「セピーせき止め顆粒 添付文書」ゼリア新薬工業株式会社
【非特許文献3】薬発第277号薬務局長通知(平成7年)
【非特許文献4】「エスジールAE軟膏 添付文書」エスエス製薬株式会社
【非特許文献5】化粧品原料基準第二版注解I−93(薬事日報社)
【非特許文献6】「ドルマインG軟膏 添付文書」ゼリア新薬工業株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
dl−塩酸メチルエフェドリン及びイソプロピルメチルフェノールを単独で外用剤に処方しても、特に経時変化は認められないが、両成分を同時に外用剤に配合した場合、経時変化が起こり、褐色に着色する。本発明は、dl−塩酸メチルエフェドリン及びイソプロピルメチルフェノールを同時に配合した外用剤の経時的な着色を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意研究を実施した結果、dl−塩酸メチルエフェドリン及びイソプロピルメチルフェノールを同時に配合した外用剤に、脂肪酸アルキルエステルを添加することにより、経時的な着色を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(a)dl−塩酸メチルエフェドリン、(b)イソプロピルメチルフェノール及び(c)脂肪酸アルキルエステルを配合した外用剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、dl−塩酸メチルエフェドリン及びイソプロピルメチルフェノールを同時に配合した外用剤に脂肪酸アルキルエステルを添加することにより、長期間着色が抑制された外用剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のdl−塩酸メチルエフェドリンは、通常の医薬品に使用されるものであればよく、例えば日本薬局方収載品を使用することができる。dl−塩酸メチルエフェドリンの濃度は、0.005〜0.5%(w/w)が好ましく、特に0.05〜0.2%(w/w)が好ましいが、適宜増減させて含有させることが可能である。
【0008】
本発明のイソプロピルメチルフェノールは、通常の医薬品に使用されるものであればよい。イソプロピルメチルフェノールの濃度は、好ましくは0.01〜3.0%(w/w)、特に好ましくは0.02〜2.0%(w/w)とすることがよい。
【0009】
本発明で使用する脂肪酸アルキルエステルとしては、炭素数10〜20の高級脂肪酸のアルキルエステルがあげられる。好ましい脂肪酸は炭素数12〜18の高級脂肪酸で、直鎖又は分岐炭化水素基、ヒドロキシル基等を有するものも使用できる。
脂肪酸アルキルエステルの例として、脂肪酸部位がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソトリデカン酸、イソノナン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等があげられ、これらの高級脂肪酸と炭素数1以上のアルコールとのエステルが使用される。特に日本薬局方通則で定める常温において液状であるものが好ましい。具体的には、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、オリーブオレイン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピルなどがあげられる。
脂肪酸アルキルエステルの濃度は、0.05〜20.0%(w/w)が好ましく、特に1.0〜20.0%(w/w)が好ましいが、脂肪酸アルキルエステルの種類や目的に応じて適宜増減させて含有させることが可能である。
【0010】
本発明の外用剤としては、油脂性軟膏剤、水溶性軟膏剤、クリーム剤(乳剤性軟膏剤)リニメント剤、ローション剤が挙げられ、このうち、油脂性軟膏剤、クリーム剤が好ましく使用される。この外用剤中には、前述のdl−塩酸メチルエフェドリン、イソプロピルメチルフェノールおよび脂肪酸アルキルエステル以外に、必要に応じて他の基剤および有効成分、添加剤を加えることができる。
【0011】
本発明の外用剤に使用される基剤は、ワセリン、プラスチベース、パラフィン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、サラシミツロウ、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セタノール、ステアリン酸、ベヘニン酸、シリコーン油などの油脂性基剤、水、マクロゴール、エタノール、メチルエチルケトン、綿実油、オリーブ油、落花生油などの溶剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどの乳化剤、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グアーガム、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸、アルブミンなどの増粘剤、オキシベンゾン、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、尿素、ショ糖、エリスリトール、ソルビトールなどの保湿剤、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、デヒドロ酢酸ナトリウム、p−クレゾールなどの防腐剤であり、剤形に応じて適宜選択して使用する。
【0012】
本発明の外用剤に使用される有効成分は治療目的によって更に追加することが可能である。例えば、吉草酸酢酸プレドニゾロン、酢酸ヒドロコルチゾン等のステロイド剤、ブフェキサマク、ジクロフェナック、ケトプロフェン、インドメタシン、グリチルレチン酸などの非ステロイド消炎鎮痛剤、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェニルピラリン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤、酸化亜鉛などの収斂剤、塩酸クロルヘキシジンなどの殺菌剤、アスコルビン酸ナトリウム、塩酸ピリドキシン、トコフェロール、酢酸トコフェロールなどのビタミン剤、クロタミトンなどの鎮痒剤、トルナフタート、ビホナゾール、硝酸ミコナゾールなどの抗真菌剤、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリンなどの血管収縮剤、アラントインなどの創傷治癒剤、メントール、ボルネオール、カンフル、ハッカ油、ユーカリ油などの清涼化剤などが挙げられる。このうち、酸化亜鉛、アラントイン、酢酸ヒドロコルチゾン、メントール、ハッカ油又はユーカリ油から選ばれた1種以上を配合した場合、本発明の効果がより顕著に現れる。
このようにして得られた本発明の外用剤は、長期間の保存によっても着色が抑制され、性状の変化が少なく安定な製剤を提供することが可能である。
【0013】
本発明の外用剤は通常、以下の操作によって調製するが、本発明を達成することができる調製方法であれば良く、特に限定はされない。例えば、イソプロピルメチルフェノールをパルミチン酸イソプロピルに加熱溶解し、dl−塩酸メチルエフェドリンを分散させ、ワセリン等の軟膏基剤を加え、必要に応じて他の薬剤を添加した後、練合しながら冷却し、適当なアルミチューブ等に充填することによって油脂性軟膏剤を得る。
【実施例】
【0014】
以下に実施例及び比較例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
(実施例1)
白色ワセリン43.35g及び固形パラフィン8gを70〜80℃で溶融し、それにジブカイン0.25g、ジフェンヒドラミン0.2g、ステアリルアルコール4g、セタノール2g及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート5gを加え、1液とする。パルミチン酸イソプロピル5gにイソプロピルメチルフェノール0.2gを加熱溶解し、流動パラフィン28gを加え、dl−塩酸メチルエフェドリン0.5g及び酢酸ヒドロコルチゾン0.5gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これに酢酸トコフェロール3.0gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0016】
(実施例2)
白色ワセリン67.4gを70〜80℃で溶融し、それにリドカイン3.0gおよびセトステアリルアルコール8gを加え、1液とする。ミリスチン酸イソプロピル3gにイソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱溶解し、流動パラフィン16gを加え、dl−塩酸メチルエフェドリン0.1g及びグリチルレチン酸0.2gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これに酢酸トコフェロール2g及びL−メントール0.2gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0017】
(実施例3)
白色ワセリン63.4gを70〜80℃で溶融し、それにリドカイン3g、ステアリルアルコール2g及びセタノール2gを加え、1液とする。パルミチン酸イソプロピル3gにイソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱溶解し、流動パラフィン20gを加え、dl−塩酸メチルエフェドリン0.5g、酢酸ヒドロコルチゾン0.5g、アラントイン1g及び酸化亜鉛4gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これにユーカリ油0.5gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0018】
(実施例4)
白色ワセリン51.45g及び固形パラフィン6gを70〜80℃で溶融し、それにリドカイン2g及びセタノール9gを加え、1液とする。セバシン酸ジエチル1g及びイソステアリン酸イソプロピル4gにイソプロピルメチルフェノール0.5gを加熱溶解し、流動パラフィン25gを加え、dl−塩酸メチルエフェドリン0.3g、酢酸プレドニゾロン0.25gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これにl−メントール0.5gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0019】
(実施例5)
白色ワセリン12g及びプラスチベース23gを約80℃で溶融し、それにカルボキシエチルセルロース21.3gを加え、1液とする。パルミチン酸イソプロピル2gにイソプロピルメチルフェノール0.2gを加熱溶解し、流動パラフィン30gを加え、dl−塩酸メチルエフェドリン0.5g、マレイン酸クロルフェニラミン1g及び酸化亜鉛10gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0020】
(実施例6)
白色ワセリン66gを70〜80℃で溶融し、それにリドカイン1g及びステアリルアルコール6gを加え、1液とする。イソオクタン酸セチル4gにイソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱溶解し、流動パラフィン17.15g及びクロタミトン5gを加え、dl−塩酸メチルエフェドリン0.1g、吉草酸酢酸プレドニゾロン0.15gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これに酢酸トコフェロール0.5gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0021】
(実施例7)
白色ワセリン15g、ステアリルアルコール8g、セタノール14g、メチルパラベン0.1g及びプロピルパラベン0.1gを加熱溶解し、1液とする。パルミチン酸イソプロピル2gにイソプロピルメチルフェノール0.2gを加熱溶解し、流動パラフィン10gを加え、酢酸プレドニゾロン0.5gを分散させ、1液と混和し、2液とする。加温した精製水35.95gに塩酸ジブカイン0.25g、塩酸ジフェンヒドラミン0.2gおよびdl−塩酸メチルエフェドリン0.2gを溶解し、プロピレングリコール12g及びラウリル硫酸ナトリウム1.5gを加え、攪拌分散させて3液とする。2液と3液を混和させた後、80℃に保温し、減圧下、ホモミキサー回転数3000rpmで30分間乳化させ、攪拌冷却後、アルミチューブに充填してクリーム剤とした。
【0022】
(実施例8)
白色ワセリン4g、ステアリルアルコール8g、セタノール6g、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル3g、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル3g及びプロピルパラベン0.1gを加熱溶解し、1液とする。ミリスチン酸イソプロピル10gにイソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱溶解し、酢酸デキサメタゾン0.03gを分散させ、これに、流動パラフィン7g及びクロタミトン5gを添加し、攪拌混和し、1液と混和し、2液とする。加温した精製水48.97gに塩酸ジフェンヒドラミン1.0gおよびdl−塩酸メチルエフェドリン0.1gを溶解し、キサンタンガム0.2gを加え、攪拌分散させて3液とする。2液と3液を混和させた後、80℃に保温し、l−メントール3.5gを添加した後、減圧下、ホモミキサー回転数3000rpmで30分間乳化させ、攪拌冷却後、アルミチューブに充填してクリーム剤とした。
【0023】
(実施例9)
ミリスチン酸イソプロピル20gに精製ラノリン16gおよびイソプロピルメチルフェノール0.5g、メチルパラベン0.1g及びプロピルパラベン0.1gを加え、加熱溶解し、1液とする。セトステアリルアルコール4.5gおよびラウリル硫酸ナトリウム0.5gを混和し、加熱融解した後、0.2gの精製水を添加し、110℃まで加熱し、冷却し、2液とする。加温した精製水52.3gに塩酸リドカイン2g、マレイン酸クロルフェニラミン0.3g、dl−塩酸メチルエフェドリン0.5gを加え、攪拌溶解させて3液とする。1液と2液および3液を混和させた後、80℃に保温し、dl−カンフル3gを添加した後、減圧下、ホモミキサー回転数3000rpmで30分間乳化させ、攪拌冷却後、アルミチューブに充填してクリーム剤とした。
【0024】
(実施例10)
白色ワセリン4.5g、ステアリルアルコール4g、セタノール2g、ベヘニン酸2g、酢酸トコフェロール0.5g、ジフェンヒドラミン1g、リドカイン0.5g、プロピルパラベン0.1gを加熱溶解し、1液とする。パルミチン酸イソプロピル2gにイソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱融解し、流動パラフィン5.5gにモノステアリン酸グリセリン4g、ステアリン酸ポリオキシル40 4gを加え、攪拌溶融し、酸化亜鉛5gを添加し、攪拌分散させ2液とする。加温した精製水49.2gにdl−塩酸メチルエフェドリン0.2gを溶解し、1,3−ブチレングリコール5g、濃グリセリン10g、セチル硫酸ナトリウム 0.1g、キサンタンガム0.3gを加え、攪拌分散させて3液とする。1液と2液および3液を混和させた後、80℃に保温し、減圧下、ホモミキサー回転数2000rpmで40分間乳化させ、攪拌冷却後、アルミチューブに充填してクリーム剤とした。
【0025】
(比較例1)
白色ワセリン43.35g及び固形パラフィン8gを70〜80℃で溶融し、それにジブカイン0.25g、ジフェンヒドラミン0.2g、ステアリルアルコール4g、セタノール2g及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート5gを加え、1液とする。流動パラフィン33gにイソプロピルメチルフェノール0.2gを加熱融解し、dl−塩酸メチルエフェドリン0.5g及び酢酸ヒドロコルチゾン0.5gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これに酢酸トコフェロール3.0gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0026】
(比較例2)
白色ワセリン67.4gを70〜80℃で溶融し、それにリドカイン3.0gおよびセトステアリルアルコール8gを加え、1液とする。流動パラフィン19gにイソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱融解し、dl−塩酸メチルエフェドリン0.1g及びグリチルレチン酸0.2gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これに酢酸トコフェロール2g及びl−メントール0.2gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0027】
(比較例3)
白色ワセリン63.4gを70〜80℃で溶融し、それにリドカイン3g、ステアリルアルコール2g及びセタノール2gを加え、1液とする。流動パラフィン23gにイソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱融解し、dl−塩酸メチルエフェドリン0.5g、酢酸ヒドロコルチゾン0.5g、アラントイン1g及び酸化亜鉛4gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これにユーカリ油0.5gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0028】
(比較例4)
白色ワセリン51.45g及び固形パラフィン6gを70〜80℃で溶融し、それにリドカイン2g及びセタノール9gを加え、1液とする。流動パラフィン30gにイソプロピルメチルフェノール0.5gを加熱融解し、dl−塩酸メチルエフェドリン0.3g、酢酸プレドニゾロン0.25gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これにL−メントール0.5gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0029】
(比較例5)
白色ワセリン12g及びプラスチベース23gを約80℃で溶融し、それにカルボキシエチルセルロース21.3gを加え、1液とする。流動パラフィン32gにイソプロピルメチルフェノール0.2gを加熱融解し、dl−塩酸メチルエフェドリン0.5g、マレイン酸クロルフェニラミン1g及び酸化亜鉛10gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0030】
(比較例6)
白色ワセリン66gを70〜80℃で溶融し、それにリドカイン1g及びステアリルアルコール6gを加え、1液とする。流動パラフィン21.15gにイソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱融解し、及びクロタミトン5gを加え、dl−塩酸メチルエフェドリン0.1g、吉草酸酢酸プレドニゾロン0.15gを添加し、攪拌分散させて2液とする。1液と2液を混和させた後、加熱溶融し、これに酢酸トコフェロール0.5gを添加し、減圧下、攪拌冷却後、アルミチューブに充填して油脂性軟膏剤とした。
【0031】
(比較例7)
白色ワセリン15g、ステアリルアルコール8g、セタノール14g、メチルパラベン0.1g及びプロピルパラベン0.1gを加熱溶解し、1液とする。イソプロピルメチルフェノール0.2gを加熱溶解し、流動パラフィン12gを加え、酢酸プレドニゾロン0.5gを分散させ、1液と混和し、2液とする。加温した精製水35.95gに塩酸ジブカイン0.25g、塩酸ジフェンヒドラミン0.2gおよびdl−塩酸メチルエフェドリン0.2gを溶解し、プロピレングリコール12g及びラウリル硫酸ナトリウム1.5gを加え、攪拌分散させて3液とする。2液と3液を混和させた後、80℃に保温し、減圧下、ホモミキサー回転数3000rpmで30分間乳化させ、攪拌冷却後、アルミチューブに充填してクリーム剤とした。
【0032】
(比較例8)
白色ワセリン4g、ステアリルアルコール8g、セタノール6g、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル3g、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル3g及びプロピルパラベン0.1gを加熱溶解し、1液とする。イソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱溶解し、酢酸デキサメタゾン0.03gを分散させ、これに、流動パラフィン17g及びクロタミトン5gを添加し、攪拌混和し、1液と混和し、2液とする。加温した精製水48.97gに塩酸ジフェンヒドラミン1.0gおよびdl−塩酸メチルエフェドリン0.1gを溶解し、キサンタンガム0.2gを加え、攪拌分散させて3液とする。2液と3液を混和させた後、80℃に保温し、l−メントール3.5gを添加した後、減圧下、ホモミキサー回転数3000rpmで30分間乳化させ、攪拌冷却後、アルミチューブに充填してクリーム剤とした。
【0033】
(比較例9)
流動パラフィン20gに精製ラノリン16gおよびイソプロピルメチルフェノール0.5g、メチルパラベン0.1g及びプロピルパラベン0.1gを加え、加熱溶解し、1液とする。セトステアリルアルコール4.5gおよびラウリル硫酸ナトリウム0.5gを混和し、加熱融解した後、0.2gの精製水を添加し、110℃まで加熱し、冷却し、2液とする。加温した精製水52.3gに塩酸リドカイン2g、マレイン酸クロルフェニラミン0.3g、dl−塩酸メチルエフェドリン0.5gを加え、攪拌溶解させて3液とする。1液と2液および3液を混和させた後、80℃に保温し、dl−カンフル3gを添加した後、減圧下、ホモミキサー回転数3000rpmで30分間乳化させ、攪拌冷却後、アルミチューブに充填してクリーム剤とした。
【0034】
(比較例10)
白色ワセリン4.5g、ステアリルアルコール4g、セタノール2g、ベヘニン酸2g、酢酸トコフェロール0.5g、ジフェンヒドラミン1g、リドカイン0.5g、プロピルパラベン0.1gを加熱溶解し、1液とする。イソプロピルメチルフェノール0.1gを加熱融解し、流動パラフィン7.5gにモノステアリン酸グリセリン4g、ステアリン酸ポリオキシル40 4gを加え、攪拌溶融し、酸化亜鉛5gを添加し、攪拌分散させ2液とする。加温した精製水49.2gにdl−塩酸メチルエフェドリン0.2gを溶解し、1,3−ブチレングリコール5g、濃グリセリン10g、セチル硫酸ナトリウム 0.1g、キサンタンガム0.3gを加え、攪拌分散させて3液とする。1液と2液および3液を混和させた後、80℃に保温し、減圧下、ホモミキサー回転数2000rpmで40分間乳化させ、攪拌冷却後、アルミチューブに充填してクリーム剤とした。
【0035】
〔試験例〕
(実施例および比較例の外観安定性試験)
上記の方法で製造した実施例及び比較例の各外用剤の製造直後、50℃の苛酷条件下で8週間保存後および40℃相対湿度75%条件下で6箇月間保存した。その検体をアルミチューブから1cm程度押し出し、白色の紙に採取し、肉眼で外観の着色(褐変)を観察した。結果を表1及び表2に示した。なお、着色(褐変)の判定基準は、着色(褐変)が全く認められないものを−、若干認められるものを±、認められるものを+、著しい着色(褐変)が認められるものを++とした。なお、製造直後においては、実施例、比較例のいずれにおいても変化は認められなかった。

【0036】
表1は50℃で8週間保存した場合の実施例と比較例の外観安定性を対比した表である。
【表1】

【0037】
表2は40℃で6ヶ月間保存した場合の実施例と比較例の外観安定性を対比した表である。
【表2】

【0038】
表1及び表2より明らかなように、実施例の外用剤は、比較例の外用剤に比べて、保存による着色が抑制されていることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)dl−塩酸メチルエフェドリン、(b)イソプロピルメチルフェノール及び(c)脂肪酸アルキルエステルを配合した外用剤。
【請求項2】
(c)脂肪酸アルキルエステルがパルミチン酸アルキルエステル、ミリスチン酸アルキルエステル、オレイン酸アルキルエステル、セバシン酸アルキルエステル、イソステアリン酸アルキルエステル、リノール酸アルキルエステル又はステアリン酸アルキルエステルから選ばれた1種以上である請求項1記載の外用剤。
【請求項3】
(c)脂肪酸アルキルエステルがパルミチン酸イソプロピル及び/またはミリスチン酸イソプロピルである請求項1記載の外用剤。
【請求項4】
請求項1に(d)酸化亜鉛、アラントイン、酢酸ヒドロコルチゾン、メントール、ハッカ油又はユーカリ油から選ばれた1種以上を配合した外用剤。
【請求項5】
(a)dl−塩酸メチルエフェドリンの濃度が0.005〜0.5%(w/w)である請求項1から4記載の外用剤。
【請求項6】
(b)イソプロピルメチルフェノールの濃度が0.01〜3.0%(w/w)である請求項1から4記載の外用剤。
【請求項7】
(c)脂肪酸アルキルエステルの濃度が0.05〜20.0%(w/w)である請求項1から4記載の外用剤。
【請求項8】
油脂性軟膏剤又はクリーム剤である請求項1から7記載の外用剤。
【請求項9】
(a)dl−塩酸メチルエフェドリンと(b)イソプロピルメチルフェノールの配合剤において、(c)脂肪酸アルキルエステルを添加することにより、保存後の着色を抑制する方法。


【公開番号】特開2006−36675(P2006−36675A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217759(P2004−217759)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000108339)ゼリア新薬工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】