説明

外用剤

【課題】ディスコティック液晶化合物の新規な用途又は新しい外用剤を提供する。
【解決手段】本発明の外用剤は、ディスコティック液晶化合物を含むものであり、ここでディスコティック液晶化合物は、好ましくは、下記の一般式(I)の化合物である。


(式中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルコキシ基又は、アルキレンオキシド基を連結基として有するアルコキシ基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク(円盤)状のコアに比較的長い側鎖が複数個結合した化合物であるディスコティック液晶は、特徴的な光学的特性や電子特性を有し、液晶表示装置や有機EL等の電子材料に用いられている。このようなディスコティック液晶化合物には、6置換ベンゼン誘導体、フタロシアニン及びポルフィリン誘導体、トリフェニレン誘導体、トリクセン誘導体、ピリリウム誘導体、シクロヘキサン誘導体、トリアジン誘導体等が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
また、中心部に疎水基、周辺部に親水基を持つディスコティック化合物であって、水中では疎水基部分が重なり、シリンドリカルな構造をとる自己集合型の化合物も知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
一方、皮膚にはバリアー機能が備えられており、水分を保持して健康な皮膚を保つようになっている。この皮膚の水分保持力を補うため、保湿を目的とした皮膚外用剤や保湿剤が数多く知られている。
保湿剤としては、保湿効果以外に肌荒れを改善する効果も有するグリセリンや、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール等のポリオール類が知られている。また、スキンケア効果のある(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテル(例えば、特許文献4参照)や、特定のアルキレンオキシド誘導体を含む皮膚外用剤(例えば、特許文献5)なども知られている。
【0004】
また、皮膚は紫外線に晒されることが多いため、紫外線から皮膚を保護するために各種の紫外線吸収剤が開発されている。これらの紫外線吸収剤は、紫外線を受けて分子内の電子のエネルギー準位が上昇して励起状態となることで、紫外線を吸収する。このような紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、ヒダントイン誘導体、トリアジン誘導体(例えば、特許文献6〜8)等が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−155010号公報
【特許文献2】特開2005−208524号公報
【特許文献3】特開2007−131765号公報
【特許文献4】特開平10−259112号公報
【特許文献5】特開2004−083541公報
【特許文献6】特開平8−337574号公報
【特許文献7】特開平10−59833号公報
【特許文献8】特開平10−175838号公報
【非特許文献1】J. Phys. Chem. B (2002), Vol.106, pp.6638-6645
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスコティック液晶化合物は上記のように特徴的な性質から種々の電子材料に用いられているが、その性質を充分に応用されているとは言い難い。
本発明の目的は、ディスコティック液晶化合物の新規な用途を提供するものである。
また本発明の目的は、新しい外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の外用剤は、以下のものである。
[1] ディスコティック液晶化合物を含有する外用剤。
[2] 前記ディスコティック液晶化合物が、部分構造として、少なくとも一つの親水基をもつ[1]に記載の外用剤。
[3] 前記ディスコティック液晶化合物が、部分構造として、トリフェニレン構造をもつことを特徴とする[1]又は[2]に記載の外用剤。
[4] 前記ディスコティック液晶化合物が、下記の一般式(I)のトリフェニレン誘導体である[1]〜[3]のいずれかに記載の外用剤。ただし、式中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルコキシ基、又はアルキレンオキシド基を有するアルコキシ基を表す。
【0008】
【化1】

【0009】
[5] エマルジョン組成物である[1]〜[4]のいずれかに記載の外用剤。
[6] 水性組成物である[1]〜[4]のいずれかに記載の外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ディスコティック液晶化合物の新規な用途が提供される。また本発明によれば、新しい外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の外用剤は、ディスコティック液晶化合物を含有するものである。
ディスコティック液晶化合物とは、ディスコティック液晶相を示し得る液晶化合物である。ディスコティック液晶相は、円盤状分子の中心コアが分子間力で柱状に積み重なった柱状相(columnar phase)と、円板状分子が乱雑に凝集したディスコティックネマティック相と、カイラルディスコティックネマティック相に大別できることが知られている。本発明に用いるディスコティック液晶化合物の種類については特に制限されないが、中でも、保湿性の観点から、単独でディスコティックネマティック相に転移し得るディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。また、ディスコティックネマティック相に転移し得る2種以上のディスコティック液晶性化合物の混合物も、同様に好ましい。
【0012】
本発明においてディスコティック液晶化合物は、部分構造として少なくとも1つの親水基を有するものであることが、水溶性の観点から好ましい。このような化合物は、水中で円盤形状に広がり、中心部に疎水基、周辺部に親水基を持つため、水中では疎水基部分が重なり、シリンドリカルな構造をとること、また、親水基周辺に水を取り込むことができる。(J. Phys. Chem. B 2002, 106, 6638-6645参照)。
【0013】
このようなディスコティック液晶化合物としては、例えば、ベンゼン、トリフェニレン、トリアジン、トルキセン、フタロシアニン、ポルフィリン、アントラセン、アザクラウン、シクロヘキサン、β−ジケトン系金属錯体、ヘキサエチニルベンゼン、ジベンゾピレン、コロネン及びフェニルアセチレンマクロサイクル等の各構造を部分構造として有する各誘導体挙げることができ、トリフェニレン誘導体又はトルキセン誘導体を有するものであることが保湿性の観点から好ましく、トリフェニレン誘導体を有するものであることが更に好ましい。これらを分子の中心である母核化合物として、側鎖が放射状に置換された構造によりディスコティック液晶化合物が形成される。本発明では、これらの化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
母核化合物に連結する側鎖としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基が挙げられ、側鎖中に部分構造として親水基又は疎水基を含んでいてもよく、水溶性の観点から少なくとも一つの親水基を側鎖中に有することが好ましい。側鎖は、母核化合物に対して複数存在してもよく、複数存在する場合には、これらは同一であっても異なっていてもよい。また個々の側鎖全体の炭素数は、化合物の安定性及び保湿性の観点から、例えば1〜40とすることができる。
【0015】
側鎖としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基の炭化水素基を有する場合、これらの炭化水素基の炭素数は、例えば、1〜20とすることができ、外用剤としての安定性と保湿性の観点から好ましくは、1〜16とすることができる。
【0016】
親水基としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、どのような親水基でもよいが、特にはノニオン性の親水基が好ましい。この親水基は、保湿性の観点から例えば炭素数1〜30とすることができる。
ノニオン性の親水基としてはアルキレンオキシド基、グリセリル基などが好ましい。アルキレンオキシド基としては、炭素数1〜3のアルキレンオキシド基が好ましく、例えばエチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基を挙げることができる。これらのアルキレンオキシド基及びグリセリル基は、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ポリグリセリル基などのように繰り返し単位として含まれていてよい。この場合の繰り返し数は1〜20、好ましくは1〜10とすることができる。
疎水基としては、アリール基、複素環基を挙げることができる。これらのアリール基又は複素環基の炭素数は、例えば1〜20とすることができる。
【0017】
これらは更に置換基で置換されていてもよく、置換基の代表例としてアルコキシ基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子が挙げられる。更に側鎖中に、例えばエーテル基、エステル基、カルボニル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、アミド基のような官能基を有していてもよい。
【0018】
これらのディスコティック液晶化合物のHLB値は、外用剤の形態に応じて適宜設定することができる。即ち、本発明におけるディスコティック液晶化合物は、油相(油性成分)、水相(水性成分)のいずれに含まれていてもよいが、添加相との相溶性の観点から、油相添加時にはHLB値が小さいこと(化合物中の親油基の割合が大きいこと)が好ましく、水相添加時には、HLB値が大きいこと(化合物中の親水基の割合が大きいこと)が好ましい。
具体的には、油相添加時には、HLB値15以下とすることが好ましく、10以下とすることがより好ましい。一方、水相添加時には、HLB値8以上とすることが好ましく、15以上とすることがより好ましい。なお、本発明においてHLB値はグリフィン法にて算出したものとする。
【0019】
このようなディスコティック液晶化合物としては、保湿性の観点から、下記の一般式(I)で示されるトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(I)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルコキシ基又は、アルキレンオキシド基を連結基として有するアルコキシ基を表す。なお、ここで「連結基として有する」との表現は、トリフェニレン部分を母核化合物としR、R、R、R、R及びRを側鎖として表現した場合、上記「側鎖中に有する」と同義である。またR、R、R、R、R、Rの少なくとも一つは、少なくとも一つの親水基を有することが保湿性の観点から好ましい。
【0022】
、R、R、R、R及びRがアルコキシ基の場合は、置換されていても、未置換であってもよい。またR、R、R、R、R及びRの炭素数は、置換基がある場合には置換基を含めて1〜20とすることができ、保湿性の観点から好ましくは1〜16とすることができる。R、R、R、R、R及びRの置換基としては、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、エーテル基、エステル基、カルボニル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、アミド基を挙げることができる。
【0023】
連結基として含まれるアルキレンオキシド基としては、炭素数1〜3のアルキレンオキシド基が好ましく、例えばエチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基を挙げることができる。これらのアルキレンオキシド基は、繰り返し単位として含まれていてよい。この場合の繰り返し数は1〜20、保湿性の観点から好ましくは1〜10とすることができる。
これらの連結基は、更に置換されていてもよく、このような置換基としては水酸基、メチル基などを挙げることができる。
【0024】
一般式(I)のR、R、R、R、R及びRとしては、アルコキシ基又はアルキレンオキシド基を連結基として有するアルコキシド基であることが保湿性の観点から好ましく、R、R、R、R、R、Rの少なくとも一つがアルキレンオキシド基を連結基として有するアルコキシ基であることが特に好ましい。
以下に一般式(I)で表される化合物の例を示すが、これに限定されない。またこれらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
以下の例示化合物のうち、保湿性の観点から、(I−3)〜(I−13)の例示化合物が特に好ましい。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
また本発明の他の好ましいディスコティック液晶化合物としては、以下の一般式(II)で示されるトリアジン構造を部分構造として有するトリアジン誘導体を挙げることができる。
【化3】

【0028】
一般式(II)中、X、X及びXは、それぞれ独立に、−CO−、−NR−、−NR−CO−、−NR−SO−、(ここでRは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−COO−、−S−、−SO−、−SO−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、R11、R12、及びR13 は、それぞれ独立に、アルコキシ基又はアルキレンオキシド基を連結基として有するアルコキシ基を表し、l、m、及びnは、それぞれ独立に、1〜5の整数を表す。
ここで「連結基として有する」との表現は、トリアジン部分を母核化合物とし、R11、R12及びR13を側鎖として表現した場合、上記「側鎖中に有する」と同義である。
またR11、R12、R13がそれぞれ複数存在する場合には、これらは同一であっても異なっていてもよい。また個々のR11、R12、R13全体の炭素数は、例えば1〜30とすることができる。
【0029】
前記一般式(II)中、X、X及びXは、保湿性の観点からそれぞれ独立に、−NR−、−NR−CO−、−NR−SO−、−O−又は−S−であることが好ましく、−NR−、−O−又は−S−であることが特に好ましく、−NR−であることが最も好ましい。ここでX、X及びXにおけるRは、水素原子であることが好ましい。
【0030】
11、R12、R13におけるアルコキシ基は、置換されていても、未置換であってもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、置換基を含む場合には置換基を含めて、保湿性の観点から1〜20が好ましく、1〜16がさらに好ましく、1〜8が特に好ましい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、及びブトキシが含まれる。
【0031】
アルコキシ基の置換基としては、以下の基を挙げることができる。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、アリール置換アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、スルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、アルキル置換ウレイド基、アリール置換ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基及びシリル基を挙げることができる。置換基は、アルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基及びアシルオキシ基が好ましく、アルキル基、ヒドロキシル基及びアルコキシ基が特に好ましい。
【0032】
アルコキシ基の連結基としては、アルキレンオキシド基等を挙げることができ、水溶性の観点からアルキレンオキシド基が好ましい。連結基として含まれるアルキレンオキシド基は、炭素数1〜3のものであることが好ましく、上記アルキル基及びアルコキシ基の炭素数とは別に、このアルキレンオキシド基の繰り返し単位は、保湿性の観点から1〜20とすることが好ましく、1〜10とすることが更に好ましい。アルキレンオキシド基は置換されていてもよく、このような置換基としては水酸基を挙げることができる。
【0033】
l、m及びnは、それぞれ独立に、2又は3であることが好ましい。l、m及びnが、2以上の整数の場合、複数個のR11、R12、及びR13 は、互いに異なっていてもよい。
【0034】
一般式(II)で表されるトリアジン誘導体としては、下記一般式(IIb)で表される化合物が保湿性の観点から特に好ましい。
【0035】
【化4】

【0036】
式(IIb)において、X、X、及びXは、それぞれ独立に、−NH−、−NH−CO−、−NH−SO−、−O−又は−S−であり、L11、L12、L13、L14、L15、及びL16 は、それぞれ独立に、下記式(III)又は(IV)で表される二価の連結基であり、そして、R14、R15、R16、R17、R18、及びR19は、それぞれ独立に、アルキル基である。
【0037】
【化5】

【0038】
前記一般式(III)及び(IV)において、pは、1〜12の整数である。qは、1〜8の整数であることが好ましく、2〜6の整数であることがさらに好ましい。
前記アルキル基は置換されていてよく、分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜16であることがさらに好ましく、1〜12であることが特に好ましい。
アルキル基の置換基としては、前記一般式(II)における、R11、R12及びR13で表されるアルコキシ基の置換基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
以下に、一般式(II)で表される化合物の例を示す。
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
上記一般式(II)で表されるトリアジン誘導体は、公知の方法、例えば特開2002−20363号公報に記載の方法によって容易に合成することができ、一般式(III)及び(IV)で表される化合物は、一般的なヒドロキシ基のアルキル化反応、エステル化反応、及びエーテル化反応等を組み合わせることによって容易に合成することができる。
【0043】
本発明におけるディスコティック液晶化合物は、前述したように2種以上を組み合わせて使用してもよいが、前記一般式(I)の化合物と一般式(II)の化合物とを組み合わせて使用することが保湿性の観点から好ましい。
この場合、一般式(I)の化合物と一般式(II)の化合物との配合比は特に制限されることはない。
【0044】
本発明の外用剤は、特に皮膚外用剤であることが好ましく、上記ディスコティック液晶化合物を含むものであれば、水性組成物、油性組成物、エマルジョン組成物のいずれの形態であってもよい。特に、その保湿性の観点から、化粧品組成物であることが好ましく、化粧品組成物としては、水性組成物、油性組成物、エマルジョン組成物のいずれであってもよい。
【0045】
水性組成物の例としては、化粧水、美容液、水性ジェル等が挙げられ、油性組成物としては、クレンジングオイル、油性ジェル等が挙げられる。また、エマルジョン組成物の例としては、クリーム、乳液、サンスクリーン等があり、エマルジョンの形態としては、O/W,W/Oの他、多層エマルジョン(W/O/W,O/W/O)などが挙げられる。
【0046】
本発明におけるディスコティック液晶化合物の外用剤における含有量としては、外用剤の形態、エマルジョン組成物の場合には添加相によって異なるが、一般に、外用剤全質量に対して0.001質量%〜10.0質量%とすることができ、安定性の観点から0.001質量%〜5.0質量%とすることができる。
【0047】
本発明の外用剤が水性組成物である場合には、通常用いられる水性媒体に上記ディスコティック液晶化合物を含有することができる。
ここで用いられる水性媒体としては、通常用いられる水、アルコール、植物抽出水などを挙げることができる。
水性組成物における上記ディスコティック液晶化合物は、保湿効果をより効果的に発揮させる観点から、水性組成物全質量に対して0.001質量%〜5.0質量%とすることが好ましい。
【0048】
本発明の外用剤がエマルジョン組成物である場合には、上述したように、水相、油相又はこれらの双方に上記ディスコティック液晶化合物を含有することができる。
特に、水相に添加する場合には、製剤全体の質量に対して0.001質量%〜3.0質量%とすることが好ましく、一方、油相に添加する場合には、製剤の全質量に対して0.001質量%〜2.0質量%とすることが好ましい。
また、本発明におけるエマルジョン組成物は如何なる乳化方法で製造してもよく、乳化方法によらず、本発明による効果を発揮することができる。
【0049】
本発明の外用剤が油性組成物である場合には、通常用いられる油性媒体に上記ディスコティック液晶化合物を含有することができる。
ここで用いられる油性媒体としては、特に制限されることはなく、天然動植物油脂、半合成油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油、フッ素系油剤等をあげることができる。
油性組成物における上記ディスコティック液晶化合物は、保湿効果をより効果的に発揮させる観点から、油性組成物全質量に対して0.001質量%〜5.0質量%とすることが好ましい。
【0050】
本発明における外用剤は、水性組成物、油性組成物、エマルジョン組成物の形態に応じて、各組成物に通常含まれる他の成分を適宜含有することができる。
このような他の成分としては、油剤(天然動植物油脂、半合成油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油、フッ素系油剤等)、ゲル化剤、金属セッケン、乳化剤、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性)、粉体(無機粉体、有機粉体、顔料等)、アルコール類(高級アルコール、多価アルコール、ステロール等)、水溶性高分子(動植物系、微生物系、合成系)、皮膜形成剤、樹脂、防腐剤、抗菌剤、香料、精油、塩類、水(精製水、温泉水及び深層水)、pH調整剤、清涼剤、保湿剤、抗炎症剤、美白剤、細胞賦活剤、肌あれ改善剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、抗脂漏剤、アミノ酸類、核酸関連物質、酵素、ホルモン類、包接化合物、植物抽出物、動物及び微生物由来の抽出物等を挙げることができる。これらの他の成分の添加量も、外用剤の形態に応じて通常用いられる添加量とすればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0051】
<化合物の合成>
(1) トリフェニレン誘導体の合成
化合物No.(I−7)の合成は、以下のようにして合成した。
化合物No.(I−7c)(8.0g、0.033モル)、化合物No.(I−7a)(1.71g、5.0ミリモル)及び炭酸カリウム(3.87g、0.028モル)をジメチルアセトアミド(30mL)に懸濁させた後、115℃で4時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え飽和食塩水で抽出した後、溶媒留去して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=4/1)により精製し、黄色油状物の化合物No.(I−7)を1.2g得た。これは理論収量の20%に相当する。
H−NMR(CDCl):δ7.9(s,6H),4.4(t,12H),4.0(t,12H),3.8(m,12H),3.7(m,12H),3.6(m,12H),3.5(m,12H),3.3(s,18H).
【0052】
【化6】

【0053】
化合物(I−13)及び(I−18)は、上記化合物(I−7)と同様にして合成した。
(2) トリアジン誘導体の合成
化合物No.(II−9)の合成は、以下のようにして合成した。
化合物No.(II−9c)(3.1g、3.8ミリモル)、塩化シアヌル(0.18g、1.0ミリモル)及び炭酸カリウム(0.5g、3.6ミリモル)をメチルエチルケトン(30mL)に懸濁させた後、2時間加熱還流した。反応液に酢酸エチルを加え飽和食塩水で抽出した後、溶媒留去して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=10/1)により精製し、黄色油状物の化合物No.(II−9)を2.0g得た。これは理論収量の79%に相当する。
H−NMR(CDCl):δ7.3(s,3H),7.1(d,3H),6.9(m,6H),4.2(m,12H),3.8(m,12H),3.6(m,72H),3.4(q,12H),1.6(m,12H),1.4(m,108H),0.8(t,18H)
【0054】
【化7】

【0055】
化合物(II−33)は、特開2002−20363号記載の方法に準じて合成した。
【0056】
<乳化組成物の作製>
下記表6の処方でクリームを作製した。
化合物(I−7)、(I−13)及び(I−18)と、化合物(II−9)及び(II−33)は、それぞれ表6記載の各相に添加し、油相、水相をそれぞれ80℃で加熱した後、油相を撹拌しながら水相を徐々に添加し、撹拌しながら冷却し、エマルジョン組成物を作製した。
【0057】
【表6】

【0058】
<閉塞性評価>
50mLバイアルビン(スクリューバイアル SV−50A(日電理化硝子社製);蓋に直径26mmの孔を開けて使用)に純水25mLを入れ、ろ紙(アドバンテック製)をビンの上にのせ蓋をする。上記で作製したそれぞれの乳化組成物0.06gをむき出しになっているろ紙部分に塗布した。25℃、湿度40%で3日間放置後(サンプルの質量変動がない状態)、質量を測定(M1)、更にその24時間後の質量を測定(M2)し、下記式により、水分蒸散量を求めた。
水分蒸散量(g)= M1−M2
【0059】
結果を表7に示す。水分蒸散量が小さいほど、閉塞性が高いことを意味する。
本発明のディスコティック液晶化合物を含有するエマルジョン組成物(クリーム)は、確かに閉塞性が向上することがわかった。特に、水相に添加する方が閉塞性がより良好であることがわかった。さらに、本発明のディスコティック液晶化合物を含有するエマルジョン組成物(クリーム)は、保湿成分であるコラーゲンを含有したクリーム(比較例2)と比較しても閉塞性が優れていることがわかった。また、本発明のディスコティック液晶化合物を含有する化粧水、美容液に関しても、同様の結果が得られる。
従って、本発明によれば保湿性に優れた外用剤を提供することができる。
【0060】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスコティック液晶化合物を含有する外用剤。
【請求項2】
前記ディスコティック液晶化合物が、部分構造として、少なくとも一つの親水基をもつ請求項1に記載の外用剤。
【請求項3】
前記ディスコティック液晶化合物が、部分構造として、トリフェニレン構造をもつことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外用剤。
【請求項4】
前記ディスコティック液晶化合物が、下記の一般式(I)のトリフェニレン誘導体である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の外用剤。
【化1】


(式中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルコキシ基又は、アルキレンオキシド基を連結基として有するアルコキシ基を表す。)
【請求項5】
エマルジョン組成物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の外用剤。
【請求項6】
水性組成物である請求項1〜請求項4のいずか1項に記載の外用剤。

【公開番号】特開2009−269830(P2009−269830A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119175(P2008−119175)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】