外装型電磁波シールド建造物
【課題】外装型とすることにより、建造物全体や、階層建物の少なくとも複数階全体を外装型の電磁波シールド空間として構築することができ、コストを削減でき、工期を短縮できるようにする。
【解決手段】建造物のカーテンウォール構造の外壁において、前記カーテンウォール構造の外壁は、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル1、導電性アルミ製窓枠4、及びその窓枠4開口部内に設けられる電磁波シールドガラス5により外装面が形成され、対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面において、前記導電性金属パネル1、導電性窓枠4、及び電磁波シールドガラス5が導電状態で接続されて電磁波シールド外装面が形成され、この電磁波シールド外装面が電磁波シールド空間の壁面を構成している。
【解決手段】建造物のカーテンウォール構造の外壁において、前記カーテンウォール構造の外壁は、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル1、導電性アルミ製窓枠4、及びその窓枠4開口部内に設けられる電磁波シールドガラス5により外装面が形成され、対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面において、前記導電性金属パネル1、導電性窓枠4、及び電磁波シールドガラス5が導電状態で接続されて電磁波シールド外装面が形成され、この電磁波シールド外装面が電磁波シールド空間の壁面を構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装型電磁波シールド建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代における情報化社会においては、インターネット、携帯電話、BS放送、デジタル放送、無線などのさまざまな電波が空間を飛び回っている。このような電波の使用は、今後さらに増えることが予想される。
しかし、このことは同時に、以下のような弊害を及ぼすことになる。例えば、建物内部に高度情報化対応の電算システム機器、OA機器などを設置している場合は、建物外部からの電波により、誤動作、データの消失などの問題が生じる可能性がある。建物内で従来の配線式内線電話ではなく、PHS方式や無線方式による内線電話を構築する場合は、外部よりの電波によって通信が影響を受ける可能性がある。劇場、スタジオなどのような音響、映像電波が飛び交う場所でも同様の可能性がある。さらに、建物内部で非常に機密性の高い情報を電波として飛び回らせている場合は、それらの情報が建物外部に漏れ、機密性の維持が図れないという問題を生じる可能性がある。
そこで、このような問題を解決するため、建物内部を電磁波シールド空間とする必要が生じてくる。そして、建物内部を電磁波シールド空間とする方法としては、建物のある階を対象として、その床、壁、天井等、6面全てを導電性の部材で覆い、これらをアースするという方法が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この方法は内装型の電磁波シールド法と言うべきものであり、その壁面の処理においては、外壁の内部にもう一重に設けた内壁に対し、あるいは外壁の内面に対し、電磁波シールド材を接着剤あるいは金物で人的に貼り付け、この壁面に貼り付けた電磁波シールド材を床に貼り付けた電磁波シールド材と接続するという作業が必要となる。さらに、床に貼り付ける電磁波シールド材は、床以外の部分、例えば、鉄骨階段などへ作業員により貼り付けることが必要となる。
したがって、コストがかかり、しかも工期は長くなるため、建造の各階すべてを電磁波シールド空間とする上での大きな負担となっている。また、この方法は、内壁を改修することを要するため、既存建物の内部を電磁波シールド空間とする場合、内部を使用しながら改装を行うわけにはいかず、改修に着手すること自体を躊躇させるとの問題もある。
そこで、本発明の第1の課題は、個別空間ごと電磁波シールド空間を構成するのではなく、しかも内装型でなく、外装型とすることにより、建造物全体や、階層建物の少なくとも複数階全体を外装型の電磁波シールド空間として構築することができ、コストを削減でき、工期を短縮できるようにすることにある。
他の課題については、後述の作用効果との関係で明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
建造物のカーテンウォール構造の外壁において、
前記カーテンウォール構造の外壁は、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル、導電性アルミ製窓枠、及びその窓枠開口部内に設けられる電磁波シールドガラスにより外装面が形成され、
対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面において、前記導電性金属パネル、導電性窓枠、及び電磁波シールドガラスが導電状態で接続されて電磁波シールド外装面が形成され、この電磁波シールド外装面が電磁波シールド空間の壁面を構成していることを特徴とする外装型電磁波シールド建造物。
【0005】
(請求項1〜3の作用効果)
従来例では、図47に示すように、電磁波シールド材2の取り付けを、電磁波シールド空間とする階を個別にその床スラブ12a、天井スラブ12b及び外壁内面に行っていた。
しかるに、本発明では、図3に例示されるように、建造物(階層建物を含む)の外装面全体、または必要の階層の外装面を導電性として電磁波シールド空間の壁面を構成しているので、電磁波シールド材2の取り付け面積を大幅に減少し、電磁波シールド材2の使用量が減るとともに、工期が短縮されるので、コストが著しく下がる。しかも、改装の場合には、各フロア内での居住や勤務を阻害することなく、改装が可能である。
また、外装面の形成に際して、カーテンウォール構造の外壁とし、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル、導電性アルミ製窓枠、及びその窓枠開口部内に設けられる電磁波シールドガラスにより構成する形態が提供される。しかるに、これらの外装面の構成部材相互を導電状態で接続すると電磁波シールド面とすることができる。
従来は、電磁波シールドガラスを設けるとしても、アルマイト皮膜を施したアルミ製窓枠は導電性を有しないとの固定観念があったために窓枠に対して導電させることは行っておらず、電磁波シールドガラスは、窓枠や金属パネルを介在させることなく、導電性帯び材またはシート材を床に敷設した電磁波シールド材と接続していた。したがって、電磁波シールドガラスはフィックスであることが要求される。
この従来例に対して、アルマイト皮膜を施したアルミ製窓枠もしくは開口部枠と、導電性金属パネルと、電磁波シールドガラスもしくは導電性面板とを、導電性シール材、導電性バッカー、導電性ガスケットなどの接続材を用いて、通常の外壁面の施工形態で組み立てたとしても、満足できる電磁波シールド性能を有することが判明した。
このために、導電性帯び材またはシート材を床に敷設した電磁波シールド材と接続するとしても、床に敷設した電磁波シールド材を外装面の構成部材と導電状態で接続すれば、導電性帯び材またはシート材を室内から目立たないようにできる。その結果、階を跨って対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面を導電性とすることができる。
【0006】
以下に本発明の態様を列挙する。
<態様1>
階層建物の複数階が前記電磁波シールド空間とされたものであって、
前記電磁波シールド空間とされる最下階の床スラブ全体、及び電磁波シールド空間とされる最上階の天井スラブまたは屋上全体に、スラブ用電磁波シールド材が取り付けられ、
これらが前記壁面と導電状態で接続されて、
前記電磁波シールド空間が構成されている外装型電磁波シールド階層建物。
(作用効果)
図4及び図5に例示されているように、階層建物について、必要な階分のみを電磁波シールド空間とすることができる。
【0007】
<態様2>
カーテンウォール構造の外壁及び屋上を有し、
前記カーテンウォール構造の外壁は、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル、導電性窓枠、及びその窓枠開口部内に設けられる電磁波シールドガラスにより外装面が形成され、
対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面において、前記導電性金属パネル、導電性アルミ製窓枠、及び電磁波シールドガラスが導電状態で接続されて電磁波シールド外装面が形成され、この電磁波シールド外装面が電磁波シールド空間の壁面を構成しており、
前記屋上には電磁波シールドシート及び笠木が設けられ、
前記電磁波シールドシートと笠木とが、しかも笠木と前記壁面とが導電状態で接続されて、
前記電磁波シールド空間が構成されている外装型電磁波シールド建造物。
(作用効果)
屋上と外壁とを笠木を介して導電性に接続することで、電磁波シールド空間を構成できる。
【0008】
<態様3>
外壁を電磁波シールド状態にするものであって、
隣接する導電性金属パネル相互間に、導電性気水密部材を設け、隙間の気水密を図るとともに導電状態に接続してある、外装型電磁波シールド建造物の外壁構造。
(作用効果)
隣接する導電性金属パネル相互間に、導電性気水密部材を設けることで、隙間の気水密と導電状態との両者を満足させることができる。
【0009】
<態様4>
外壁を電磁波シールド状態にするものであって、
導電性金属パネルと窓枠との間に、導電性気水密部材を設け、隙間の気水密を図るとともに導電状態に接続してある、外装型電磁波シールド建造物の外壁構造。
(作用効果)
導電性金属パネルと窓枠との間に、導電性気水密部材を設けることで、隙間の気水密と導電状態との両者を満足させることができる。
【0010】
<態様5>
導電性型材に長手方向の中空部を形成した後、前記中空部内は他の部位に比較して導電性が高い状態とし、その後前記中空部の壁を長手方向に破断し、外部に露出した溝部を形成し、この溝部内面を電磁波シールド用の導電面とする外装型電磁波シールド建造物用型材の製造方法。
(作用効果)
一般にカーテンウォールにおけるガラス支持部材としては、アルミまたはアルミ合金製で表面にアルマイト皮膜又は焼き付け塗装処理が施されるものを使用する頻度が高い。この点、従来、この種のアルミ製窓枠素地自体は高導電性であるが、アルマイト皮膜などの表面処理を施すと非導電性となってしまうと考えられていた。したがって、この面から窓枠を導電部材とすることが想到されなかったものと考えられる。
しかし、導電性型材に長手方向の中空部を形成した型材を使用する場合、この型材にアルマイト皮膜処理を行うと、中空部内はアルマイト皮膜が生成されないので、アルマイト皮膜生成部に比較して高い導電性を示す。その結果、その後前記中空部の壁をこのまま破断(切断をも含む)するか、予め長手方向に沿って形成した薄肉部にて破断し、外部に露出した溝部となし、この溝部内面を電磁波シールド用の導電面とすることにより、その溝部内に電磁波シールドガラスを嵌め込めば、窓枠との導電状態を簡易に確保できる。この導電性の高い溝部は、導電接続が確実であり、より高い電磁波シールド性能が要求される場合に有効である。
【0011】
<態様6>
四周を囲んだ導電性型材内に電磁波シールドガラスを組み込み、前記型材の内面と前記電磁波シールドガラスの導電材料との間を、導電性詰め材により導電状態に接続した外装型電磁波シールド建造物の窓部構造。
(作用効果)
導電性詰め材を用いることにより、型材の内面と前記電磁波シールドガラスの導電材料との間を導電状態に接続することができる。
【0012】
<態様7>
隣接する電磁波シールドガラスのそれぞれが、その周縁部に配置される導電性ガスケットにより保持され、隣接する電磁波シールドガラス相互が前記導電性ガスケットを介して導電状態に接続されている外装型電磁波シールド建造物の窓部構造。
(作用効果)
ガラスをガスケット主体で保持する形態においては、そのガスケットを導電性とすることにより、電磁波シールドガラスを隣接させたとしても、相互に導電状態に接続することが可能である。
【0013】
<態様8>
導電性窓枠内において間隔を置いて室内外に2枚の電磁波シールドガラスを嵌めこみ、各電磁波シールドガラスと前記窓枠とを導電状態に接続した外装型電磁波シールド建造物の窓部構造。
(作用効果)
導電性窓枠内において間隔を置いて室内外に2枚の電磁波シールドガラスを嵌め込むと、一枚では電磁波シールド効果が低いとしても、窓自体では所要の電磁波シールド性能を容易に確保できる。
【0014】
<態様9>
耐火材の少なくとも片面に導電性金属板を設けて複合板とし、この複合板をカーテンウォールの腰部に配置し、前記複合板を保持する導電性保持部材に対して導電状態に接続した外装型電磁波シールドカーテンウォールの腰部構造。
(作用効果)
カーテンウォールにおいては、腰部に耐火材が必要であるところ、耐火材の少なくとも片面に導電性金属板を設けて複合板とし、この複合板をカーテンウォールの腰部に配置することで、複合板を保持する導電性保持部材に対して導電状態に接続すれば、容易に導電状態を確保できる。
【0015】
<態様10>
耐火材の少なくとも片面全体に電磁波シールドシートまたは電磁波シールドテープを設けて電磁波シールド面材との複層板とし、この複層板をカーテンウォールの腰部に配置し、前記複層板を保持する導電性保持部材に対して導電状態に接続したことを特徴とする電磁波シールドカーテンウォールの腰部構造。
(作用効果)
態様9と同様に容易に導電状態を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外装型とするものであるから、建造物全体や、階層建物の少なくとも複数階全体を電磁波シールド空間として構築することが容易にでき、コストを削減でき、工期を短縮できるようになる。
また、導電性を確保するに際して、外壁部分の構造に工夫を施し、簡易にかつ施工性に優れた施工が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
<電磁波シールド空間とするための概要>
実施の形態においては、図1及び図3に示すように、建物内部全体を電磁波シールド空間とすることや、あるいは図2、図5及び図6に示すように、連続した所定の階(この例では2階から4階を電磁波シールド空間とする場合を示す。)を電磁波シールド空間とすることができる。そして、このように電磁波シールド空間とする形態は、既存の建物を改装する場合も、新築するに際してでも適用することができる。また、建物の構造としては、鉄骨造でもコンクリート造でもよい。図において、3は電磁波シールドガラス窓、1は導電性金属パネル部分を示す。
鉄骨造建物の連続した所定の階を電磁波シールド空間とする場合を示すのが図5であり、コンクリート造建物の連続した所定の階を電磁波シールド空間とする場合を示すのが図6である。このように連続した所定の階を電磁波シールド空間とする場合、外壁に対する作業の他は、最下階の床スラブ12a及び最上階の天井スラブ12bに電磁波シールド材2を取り付け、外壁に取り付けられた部材、導電性金属パネル1、窓枠、電磁波シールドガラス3と電気的に接続すれば足りる。ただ、新たに建物を建築するについて、電磁波シールド空間とする階が定まらない場合は、後日の作業を容易にするため、全ての床スラブ及び屋上スラブに電磁波シールド材を取り付けておくことができる。
【0018】
<開口部が備わる外壁に対する作業>
建物外壁に図1及び図2に示したような開口部3が備わる場合、建物側面の作業としては、図7及び図20に示すように、建物の外壁を、カーテンウォール用の金属パネル1で覆い、外壁に備わる開口部3に、金属製のガラス支持枠4を取り付け、このガラス支持枠4に電磁波シールドガラス5を取り付ける。
この作業は、既存の建物、新築建物あるいは外壁のある、なしで異ならない。ただ、既存の建物について既に金属パネル等が使用されている場合は、既存の金属パネルを利用してもよい。
【0019】
<金属パネル・ガラス支持部材と電磁波シールド材の接続>
そして、前記金属パネル1・前記ガラス支持枠4と前記電磁波シールド材2は、以下のように取り付けられる。
まず、建物が鉄骨造の場合は、図7及び図9に示すように、電磁波シールド材2として、床スラブ12a(天井スラブについては、屋上以外においては、床スラブと同様である。なお、屋上部の作業は後述する。)に備わるデッキプレート13を利用する。このデッキプレート13は、コンクリート止め14及び導電体20を介し、金属パネル1・ガラス支持枠4と電気的に接続する。この点、前記導電体20を、図8に示すように、床スラブ12aの途中でデッキプレート13と接続するよう構成してもよいが、この方法だと、床スラブ12aを中間で切る必要が生じ、構造的に難しいものとなる。したがって、コンクリート止め14を利用した形態が望ましい。
他方、建物がコンクリート造の場合は、図10及び図20に示すように、床スラブ12aの表面に電磁波シールド材2を貼り付け、この電磁波シールド材2は、導電体20を介し、金属パネル1・ガラス支持枠4と電気的に接続する。
この場合、電磁波シールド材2としては、金属製シートや金属製不織布などを、導電体20としては、金属メッシュ、金属膜、金属製不織布などを使用できる。
【0020】
<屋上部の作業>
以上に対し、電磁波シールド空間とする階として、建物最上階を含む場合は、床スラブあるいは天井スラブに対する作業の場合と異なり、屋上スラブに対する作業として次のような作業を行う。
特に、本実施の形態では、まず、図11、図12及び図21に示すように、前記金属パネル1と、電磁波シールド材2の他、屋上階パラペット導電性金属笠木15を利用する場合を示す。この場合、金属パネル1と屋上階パラペット金属笠木15との目地間、及び屋上階パラペット金属笠木15と電磁波シールド材2との目地間には、それぞれ導電性の目地材6を備え、電気的に接続する。
図11及び図21は、屋上スラブ外断熱工法に対応するものであり、屋上スラブ12c直上に断熱層18を設ける場合である。この場合は、建物が鉄骨造の場合(図11)、あるいはコンクリート造の場合(図21)、いずれにおいても断熱層18の上に電磁波シールド材2を貼り付け、その上から防水層及び押さえコンクリート17を設けることになる。
他方、図12は、屋上スラブ内断熱工法に対応するものであり、屋上スラブ12c直下に断熱層18を設ける場合である。この場合は、屋上スラブ12cに直接、電磁波シールド材2を貼り付け、その上から防水層及び押さえコンクリート17を設けることになる。
屋上スラブ外断熱工法、屋上スラブ内断熱工法いずれの場合においても、押さえコンクリート17の上に電磁波シールド材2を貼り付けることが考えられるが、この方法だと耐候性上、上部に何らかの保護材が必要となる。また、押さえコンクリート17を設けない露出防水によるのであれば、屋上スラブ12cに直接、電磁波シールド材2を貼り付け、その上にから露出防水処理を施すことになる。
以上の他にも屋上部の作業としては、種々の形態が考えられるが、例えば、図13に示すように、鉄骨造の屋根を折板19とする場合は、この折板19と屋上階パラペット金属笠木15との目地間に、導電性の目地材6を備え、電気的に接続する。
以上で使用する目地材6としては、導電性カーボンを混入したシリコンシーリング、導電性を有するシリコン系のガスケット、又は、金属メッシュを巻き込んだバッカー、又は、金属膜、又は、金属不織布等がある。
【0021】
<金属パネルどうしの接続>
ところで、前記金属パネル1は、1枚で外壁全てを覆うということが困難であるため、実際には、複数枚を接続して建物外壁全体を覆うことになる。
そこで、金属パネル1どうしの接続の方法であるが,まず、金属パネル1として、切板タイプのものを使用する場合は、図14及び図15に示すように、金属パネル1,1に、金属四方枠21,21を取り付け、金属四方枠21,21の目地間にシール材41と導電性バッカー材43及び、導電性ガスケット45を備える。これにより、金属パネル1,1が電気的に接続される。また、シール材41と導電性バッカー材43により水密性が、導電性ガスケット45により気密性が確保される。
他方、金属パネル1として、曲げ板タイプのものを使用する場合は、図17及び図18に示すように、弁当箱状に曲げられた金属パネル1,1の目地間にシール材41と導電性バッカー材43を、目地底に導電性ガスケット45を備える。これによる効果は、金属パネル1として、切板タイプのものを使用する場合と同様である。
【0022】
<金属パネルとガラス支持部材の接続>
このように電気的に接続される金属パネル1は、さらに開口部に備わるガラス支持枠4と以下のように接続する。
まず、金属パネル1として、切板タイプのものを使用する場合は、図16に示すように、金属パネル1に、金属四方枠21を取り付け、この金属四方枠21とガラス支持枠4の目地間にシール材41と導電性バッカー材43及び、導電性ガスケット45を備える。これにより、金属パネル1とガラス支持枠4が電気的に接続される。また、シール材41と導電性バッカー材43により水密性が、導電性ガスケット45により気密性が確保される。
他方、金属パネル1として、曲げ板タイプのものを使用する場合は、図19に示すように、弁当箱状に曲げられた金属パネル1とガラス支持枠4との目地間に、シール材41と導電性バッカー材43を、目地底に導電性ガスケット45を備える。これによる効果は、金属パネル1として、切板タイプのものを使用する場合と同様である。
【0023】
<ガラス支持部材と電磁波シールドガラスの接続>
このようにして金属パネル1と接続されるガラス支持枠4は、さらに電磁波シールドガラス5と接続する。
まず、ガラス支持構造を乾式とする場合は、図32に示すように、電磁波シールドガラス5の床側端部に導電性シート44を、建物室外側に導電性ガスケット45を設ける。これにより、電磁波シ−ルドガラス5とガラス支持枠4とが、導電性シート44と、導電性ガスケット45を介して、電気的に接続される。また、導電性ガスケット45により、水密性が確保される。
他方、ガラス支持構造を湿式とする場合は、図33及び図34に示すように、電磁波シールドガラス5の床側端部に導電性シート44を、建物室外側に導電性ガスケットスペーサー46を設ける。これにより、電磁波シ−ルドガラス5とガラス支持枠4とが、導電性シート44と、導電性ガスケットスペーサー46を介して、電気的に接続される。
以上で使用する電磁波シールドガラス5としては、複層ガラスにおいて、内側ガラスの室外面、外側ガラスの室内面、あるいはこれらの各面に、電磁波シールド性を示す金属膜を施したもの、合わせガラスの中間層に電磁波シールドシートを挟み込んだもの、一般ガラスの室内面に電磁波シールド性フィルムを設けたものなどを挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。
【0024】
<外壁としてガラスカーテンウォールを使用する方法>
以上では、外壁に金属パネルを取り付ける場合を示したが、この他にも、外壁として電磁波シールドガラスからなるカーテンウォールを使用するということが考えられる。
この場合、建物側面の作業としては、図35及び図36に示すように、電磁波シールドガラス5を、導電性ガスケット45で固定するということになる。
他方、カーテンウォールとして電磁波シールドガラスを使用する場合において、一部の電磁波シールドガラスを開閉式としたい場合は、図37及び図38に示すように、開閉式の電磁波シールドガラス5を導電性ガスケット45で固定し、さらに、無目材23と障子框22、障子框22と縦枠24、及び縦枠24と方立27との目地間に、気密性を持った導電性ガスケット45,45,45を備える。
【0025】
<単窓として取り付ける構造>
また、導電性金属パネルに開口部を設け、ガラス支持枠と電磁波シールドガラス5により、窓を構成できる。この場合、図39及び図40に示すように、金属パネル16と金属製のガラス支持枠4との目地間に、シール材41と導電性バッカー材43を備える。これにより、金属パネル16とガラス支持枠4とが電気的に接続される。
また、このガラス支持枠4は、電磁波シールドガラス5を固定する導電性ガスケット45によって、電磁波シールドガラス5と電気的に接続される。
【0026】
<並列窓とする方法>
ところで、以上で使用する電磁波シールドガラスは、電磁波シールド性が40db以上の高性能のものである必要があるが、以下では、電磁波シールド性が25db〜30db程度の低性能のものである場合を示す。
この場合は、図41及び図42に示すように、低性能電磁波シールドガラス31を2枚平行並列に設置することにより、電磁波シールド性能を向上させる。低性能電磁波シールドガラス31,31に備わる電磁波シールド処理面31a,31aと金属製のガラス支持枠4、障子框22の目地間には、導電性ガスケット45,45が備わる。これによって、低性能電磁波シールドガラス31,31とガラス支持枠4、障子框22とは、電気的に接続される。
そして、この場合、室内側の低性能電磁波シールドガラス31は、メンテナンス用に、片開き式、あるいは内上げ式等の開閉式としておくことを推奨する。その方法としては、低性能電磁波シールドガラス31に備わる電磁波シールド処理面31aと障子框22との目地間に、気密性能をもった導電性ガスケット45を備える。これによって、低性能電磁波シールドガラス31と障子框22は電気的に接続される。そして、この障子框22もまた、導電性ガスケット45によって、下枠26及び縦枠24と電気的に接続される。
現状において、電磁波シールド性が40db以上の高性能の電磁波シールドガラスは、製造工程の複雑さから非常に高価なものとなっている。したがって、本形態のように低性能電磁波シールドガラスをある距離をおいて並列に設置すれば、安価に40db以上の電磁波シールド性を確保することができる。また、内部にブラインド32を設置することでオフィス,病院などの窓際空間の負荷を低減できる。さらに、ガラスが2重に設置されているため遮音効果も期待できる。
【0027】
<外壁構造を耐火式とする方法>
外壁構造を耐火式とする場合は、図43及び図44に示すように、開口部に設けるガラスを一般ガラス33とすることができる。この場合、硅酸カルシウム板、ロックウール等からなる耐火材34に、アルミ、スチール、ステンレス等からなる金属パネル1を取り付け、これを電磁波シールドパネルとして、一般ガラス33の裏面に配置する。そして、この電磁波シールドパネルは、導電性ガスケット45によって、方立27及び無目材23,23と電気的に接続する。
前記電磁波シールドパネルとしては、図45及び図46に示すように、耐火材34の表面に電磁波シールドシート29及び電磁波シールドテープ30を貼ったものを使用してもよい。
【0028】
<アルミ製窓枠について>
本実施の形態で使用するアルミ製ガラス支持部材(ガラス支持枠4)は、図26に示すように、電磁波シールドガラスを嵌め込む部分に、型材の長手方向に沿って平行に2条の薄肉部35A,35Aを形成することで剥ぎ取り部35を形成しておき、ガラス支持枠4表面にアルマイト皮膜(焼き付け塗装でもよい)等の通常の表面処理を加えたものである。しかしながら、中空部は表面処理に際してアルマイト皮膜が生成されないので、このガラス支持枠4は、使用時において剥ぎ取り部35を剥ぎ取ると、アルミ素地に近い高電通面36を生じる。この剥ぎ取り部35は、図27に示すように、導電性ガスケットを嵌め込む部分にも、また、図28に示すように、電磁波シールド材を嵌め込む部分にも設けるのが好適である。
図26に示すガラス支持枠4に電磁波シールドガラスを嵌め込む場合は、図29に示すように、電磁波シールドガラス5の床側端部に導電性シート44を備え、さらに、この導電性シート44とガラス支持枠4の間に導電性ガスケット45を備える。これにより、電磁波シールドガラス5とガラス支持枠4とが、導電性シート44、導電性ガスケット45及びアルミ枠の素地に近い高電通面36とによって、電気的に接続される。また、図27に示すガラス支持枠4に電磁波シールドガラスを埋め込む場合は、図30に示すように、電磁波シールドガラス5とガラス支持枠4とを、電磁波シールドガラス5の床側端部に備わる導電性シート44と、導電性ガスケット45と、アルミ枠の素地に近い高電通面36とによって、電気的に接続する。さらに図28に示すガラス支持枠4に電磁波シールドガラス5を埋め込んだ場合は、図31に示すように、電磁波シールド材2とガラス支持枠4とを、アルミ枠の素地に近い高電通面36と、導電性ガスケット45とによって電気的に接続する。
【0029】
<ガスケットの形態について>
図22〜25は、曲げ板タイプの金属パネルどうしを接続する場合に使用する導電性ガスケットの形態と現場接続部の形状を示す。導電性ガスケット45は+型、T型形成材を用いて、工場にて一体接続し、図22に示すような網目状形態とする。ガスケットの端部であり現場において接続する部分は、図23に示すように、導電性のシリコンなどの導電体によって凹形状と凸形状となっており、接続後は図24に示すように、2つのガスケットの端部が嵌合し一体となる。図25は、この導電性ガスケット45によって、金属パネル1,1を導電状態に接続した場合を示すものである。
【実施例1】
【0030】
アルミパネルと、アルミ製のガラス支持部材についてアルマイト処理(14μ以上)、またはアルミの複合皮膜(9+7μ)の皮膜処理後のものとを使用して、アルミパネル目地間、アルミパネルとアルミ製ガラス支持部材との目地間を導電性目地材にて接続した場合、表1〜表4に示すように、200MHZ〜3GHZにおいて40db〜50dbの電磁波シールド性能を確保できることを確認した(表1〜表4参照)。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】階層建物の全体を電磁波シールド空間とした場合の概念斜視図である。
【図2】階層建物の連続する複数階を電磁波シールド空間とした場合の概念斜視図である。
【図3】階層建物の全体を電磁波シールド空間とした場合の概念縦断面図である。
【図4】階層建物の連続する複数階を電磁波シールド空間とした場合の概念縦断面図である。
【図5】鉄骨造階層建物の連続する複数階を電磁波シールド空間とした場合の概念縦断面図である。
【図6】コンクリート造階層建物の連続する複数階を電磁波シールド空間とした場合の概念縦断面図である。
【図7】鉄骨造建物を電磁波シールド空間とする場合の、最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続を示した概念斜視図である。
【図8】鉄骨造建物の電磁波シールド空間とする最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続について、床スラブを切断する場合を示した縦断面図である。
【図9】鉄骨造建物の電磁波シールド空間とする最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続について、コンクリート止めを利用した場合を示した縦断面図である。
【図10】コンクリート造建物の電磁波シールド空間とする最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続について示した縦断面図である。
【図11】鉄骨造建物の屋上部の処理について、屋上スラブ外断熱工法とする場合の縦断面図である。
【図12】鉄骨造建物の屋上部の処理について、屋上スラブ内断熱工法とする場合の縦断面図である。
【図13】屋上部の処理について、鉄骨造の屋根が折板の場合の縦断面図である。
【図14】切り板タイプの金属パネルどうしの接続を示した縦断面図である。
【図15】切り板タイプの金属パネルどうしの接続を示した横断面図である。
【図16】切り板タイプの金属パネルとガラス支持部材の接続を示した縦断面図である。
【図17】曲げ板タイプの金属パネルどうしの接続を示した縦断面図である。
【図18】曲げ板タイプの金属パネルどうしの接続を示した横断面図である。
【図19】曲げ板タイプの金属パネルとガラス支持部材の接続を示した縦断面図である。
【図20】コンクリート造建物を電磁波シールド空間とする場合の、最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続を示した概念斜視図である。
【図21】コンクリート造建物の屋上部の処理を示した縦断面図である。
【図22】曲げ板タイプの金属パネルどうしを接続する場合に用いる導電性ガスケットを示した断面図である。
【図23】曲げ板タイプの金属パネルどうしを接続する場合に用いる導電性ガスケットの接続部分を示した断面図である。
【図24】曲げ板タイプの金属パネルどうしを接続する場合に用いる導電性ガスケットを接続した場合の断面図である。
【図25】曲げ板タイプの金属パネルどうしを導電性ガスケットで接続した場合の断面図である。
【図26】電磁波シールドガラスが嵌合する部分を高電通面とした、金属製のガラス支持部材を示した断面図である。
【図27】導電性ガスケットが嵌合する部分を高電通面とした、金属製のガラス支持部材を示した断面図である。
【図28】電磁波シールド材が嵌合する部分を高電通面とした、金属製のガラス支持部材を示した断面図である。
【図29】図26のガラス支持部材に電磁波シールドガラスを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図30】図27のガラス支持部材に導電性ガスケットを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図31】図28のガラス支持部材に電磁波シールド材を取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図32】乾式のガラス支持部材に電磁波シールドガラスを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図33】湿式のガラス支持部材に電磁波シールドガラスを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図34】湿式のガラス支持部材に電磁波シールドガラスを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図35】外壁をガラスカーテンウォールとする場合を示す縦断面図である。
【図36】外壁をガラスカーテンウォールとする場合を示す横断面図である。
【図37】外壁を開閉式ガラスカーテンウォールとする場合を示す縦断面図である。
【図38】外壁を開閉式ガラスカーテンウォールとする場合を示す横断面図である。
【図39】外壁を金属パネルとする場合を示す縦断面図である。
【図40】外壁を金属パネルとする場合を示す横断面図である。
【図41】電磁波シールドガラスを並列に備える場合を示す縦断面図である。
【図42】電磁波シールドガラスを並列に備える場合を示す横断面図である。
【図43】外壁を金属パネルと耐火材からなる電磁波シールドパネルとした場合を示す縦断面図である。
【図44】外壁を金属パネルと耐火材からなる電磁波シールドパネルとした場合を示す横断面図である。
【図45】外壁を電磁波シールドシートと耐火材からなる電磁波シールドパネルとした場合を示す縦断面図である。
【図46】外壁を電磁波シールドシートと耐火材からなる電磁波シールドパネルとした場合を示す横断面図である。
【図47】従来例の電磁波シールド空間を構成する場合の概念縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…導電性金属パネル、2…電磁波シールド材、3…電磁波シールドガラス窓(開口部)、4…ガラス支持枠(ガラス支持部材)、5…電磁波シールドガラス、6…導電性目地材、11…窓、12a…床スラブ、12b…天井スラブ、12c…屋上スラブ、13…デッキプレート、14…コンクリート止メ、15…屋上階パラペット金属笠木、16…金属パネル、17…押さえコンクリート、18…断熱層、19…折板、20…導電体、21…金属四方枠、22…障子框、23…無目材、24…縦枠、25…上枠、26…下枠、27…方立、29…電磁波シールドシート、30…電磁波シールドテープ、31…低性能電磁波シールドガラス、31a…電磁波シールド処理面、32…ブラインド、33…一般ガラス、34…耐火材、35…剥ぎ取り部、36…高電通面、41…シール材、43…導電性バッカー材、44…導電性シート、45…導電性ガスケット、46…導電性ガスケットスペーサー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装型電磁波シールド建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代における情報化社会においては、インターネット、携帯電話、BS放送、デジタル放送、無線などのさまざまな電波が空間を飛び回っている。このような電波の使用は、今後さらに増えることが予想される。
しかし、このことは同時に、以下のような弊害を及ぼすことになる。例えば、建物内部に高度情報化対応の電算システム機器、OA機器などを設置している場合は、建物外部からの電波により、誤動作、データの消失などの問題が生じる可能性がある。建物内で従来の配線式内線電話ではなく、PHS方式や無線方式による内線電話を構築する場合は、外部よりの電波によって通信が影響を受ける可能性がある。劇場、スタジオなどのような音響、映像電波が飛び交う場所でも同様の可能性がある。さらに、建物内部で非常に機密性の高い情報を電波として飛び回らせている場合は、それらの情報が建物外部に漏れ、機密性の維持が図れないという問題を生じる可能性がある。
そこで、このような問題を解決するため、建物内部を電磁波シールド空間とする必要が生じてくる。そして、建物内部を電磁波シールド空間とする方法としては、建物のある階を対象として、その床、壁、天井等、6面全てを導電性の部材で覆い、これらをアースするという方法が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この方法は内装型の電磁波シールド法と言うべきものであり、その壁面の処理においては、外壁の内部にもう一重に設けた内壁に対し、あるいは外壁の内面に対し、電磁波シールド材を接着剤あるいは金物で人的に貼り付け、この壁面に貼り付けた電磁波シールド材を床に貼り付けた電磁波シールド材と接続するという作業が必要となる。さらに、床に貼り付ける電磁波シールド材は、床以外の部分、例えば、鉄骨階段などへ作業員により貼り付けることが必要となる。
したがって、コストがかかり、しかも工期は長くなるため、建造の各階すべてを電磁波シールド空間とする上での大きな負担となっている。また、この方法は、内壁を改修することを要するため、既存建物の内部を電磁波シールド空間とする場合、内部を使用しながら改装を行うわけにはいかず、改修に着手すること自体を躊躇させるとの問題もある。
そこで、本発明の第1の課題は、個別空間ごと電磁波シールド空間を構成するのではなく、しかも内装型でなく、外装型とすることにより、建造物全体や、階層建物の少なくとも複数階全体を外装型の電磁波シールド空間として構築することができ、コストを削減でき、工期を短縮できるようにすることにある。
他の課題については、後述の作用効果との関係で明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
建造物のカーテンウォール構造の外壁において、
前記カーテンウォール構造の外壁は、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル、導電性アルミ製窓枠、及びその窓枠開口部内に設けられる電磁波シールドガラスにより外装面が形成され、
対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面において、前記導電性金属パネル、導電性窓枠、及び電磁波シールドガラスが導電状態で接続されて電磁波シールド外装面が形成され、この電磁波シールド外装面が電磁波シールド空間の壁面を構成していることを特徴とする外装型電磁波シールド建造物。
【0005】
(請求項1〜3の作用効果)
従来例では、図47に示すように、電磁波シールド材2の取り付けを、電磁波シールド空間とする階を個別にその床スラブ12a、天井スラブ12b及び外壁内面に行っていた。
しかるに、本発明では、図3に例示されるように、建造物(階層建物を含む)の外装面全体、または必要の階層の外装面を導電性として電磁波シールド空間の壁面を構成しているので、電磁波シールド材2の取り付け面積を大幅に減少し、電磁波シールド材2の使用量が減るとともに、工期が短縮されるので、コストが著しく下がる。しかも、改装の場合には、各フロア内での居住や勤務を阻害することなく、改装が可能である。
また、外装面の形成に際して、カーテンウォール構造の外壁とし、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル、導電性アルミ製窓枠、及びその窓枠開口部内に設けられる電磁波シールドガラスにより構成する形態が提供される。しかるに、これらの外装面の構成部材相互を導電状態で接続すると電磁波シールド面とすることができる。
従来は、電磁波シールドガラスを設けるとしても、アルマイト皮膜を施したアルミ製窓枠は導電性を有しないとの固定観念があったために窓枠に対して導電させることは行っておらず、電磁波シールドガラスは、窓枠や金属パネルを介在させることなく、導電性帯び材またはシート材を床に敷設した電磁波シールド材と接続していた。したがって、電磁波シールドガラスはフィックスであることが要求される。
この従来例に対して、アルマイト皮膜を施したアルミ製窓枠もしくは開口部枠と、導電性金属パネルと、電磁波シールドガラスもしくは導電性面板とを、導電性シール材、導電性バッカー、導電性ガスケットなどの接続材を用いて、通常の外壁面の施工形態で組み立てたとしても、満足できる電磁波シールド性能を有することが判明した。
このために、導電性帯び材またはシート材を床に敷設した電磁波シールド材と接続するとしても、床に敷設した電磁波シールド材を外装面の構成部材と導電状態で接続すれば、導電性帯び材またはシート材を室内から目立たないようにできる。その結果、階を跨って対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面を導電性とすることができる。
【0006】
以下に本発明の態様を列挙する。
<態様1>
階層建物の複数階が前記電磁波シールド空間とされたものであって、
前記電磁波シールド空間とされる最下階の床スラブ全体、及び電磁波シールド空間とされる最上階の天井スラブまたは屋上全体に、スラブ用電磁波シールド材が取り付けられ、
これらが前記壁面と導電状態で接続されて、
前記電磁波シールド空間が構成されている外装型電磁波シールド階層建物。
(作用効果)
図4及び図5に例示されているように、階層建物について、必要な階分のみを電磁波シールド空間とすることができる。
【0007】
<態様2>
カーテンウォール構造の外壁及び屋上を有し、
前記カーテンウォール構造の外壁は、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル、導電性窓枠、及びその窓枠開口部内に設けられる電磁波シールドガラスにより外装面が形成され、
対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面において、前記導電性金属パネル、導電性アルミ製窓枠、及び電磁波シールドガラスが導電状態で接続されて電磁波シールド外装面が形成され、この電磁波シールド外装面が電磁波シールド空間の壁面を構成しており、
前記屋上には電磁波シールドシート及び笠木が設けられ、
前記電磁波シールドシートと笠木とが、しかも笠木と前記壁面とが導電状態で接続されて、
前記電磁波シールド空間が構成されている外装型電磁波シールド建造物。
(作用効果)
屋上と外壁とを笠木を介して導電性に接続することで、電磁波シールド空間を構成できる。
【0008】
<態様3>
外壁を電磁波シールド状態にするものであって、
隣接する導電性金属パネル相互間に、導電性気水密部材を設け、隙間の気水密を図るとともに導電状態に接続してある、外装型電磁波シールド建造物の外壁構造。
(作用効果)
隣接する導電性金属パネル相互間に、導電性気水密部材を設けることで、隙間の気水密と導電状態との両者を満足させることができる。
【0009】
<態様4>
外壁を電磁波シールド状態にするものであって、
導電性金属パネルと窓枠との間に、導電性気水密部材を設け、隙間の気水密を図るとともに導電状態に接続してある、外装型電磁波シールド建造物の外壁構造。
(作用効果)
導電性金属パネルと窓枠との間に、導電性気水密部材を設けることで、隙間の気水密と導電状態との両者を満足させることができる。
【0010】
<態様5>
導電性型材に長手方向の中空部を形成した後、前記中空部内は他の部位に比較して導電性が高い状態とし、その後前記中空部の壁を長手方向に破断し、外部に露出した溝部を形成し、この溝部内面を電磁波シールド用の導電面とする外装型電磁波シールド建造物用型材の製造方法。
(作用効果)
一般にカーテンウォールにおけるガラス支持部材としては、アルミまたはアルミ合金製で表面にアルマイト皮膜又は焼き付け塗装処理が施されるものを使用する頻度が高い。この点、従来、この種のアルミ製窓枠素地自体は高導電性であるが、アルマイト皮膜などの表面処理を施すと非導電性となってしまうと考えられていた。したがって、この面から窓枠を導電部材とすることが想到されなかったものと考えられる。
しかし、導電性型材に長手方向の中空部を形成した型材を使用する場合、この型材にアルマイト皮膜処理を行うと、中空部内はアルマイト皮膜が生成されないので、アルマイト皮膜生成部に比較して高い導電性を示す。その結果、その後前記中空部の壁をこのまま破断(切断をも含む)するか、予め長手方向に沿って形成した薄肉部にて破断し、外部に露出した溝部となし、この溝部内面を電磁波シールド用の導電面とすることにより、その溝部内に電磁波シールドガラスを嵌め込めば、窓枠との導電状態を簡易に確保できる。この導電性の高い溝部は、導電接続が確実であり、より高い電磁波シールド性能が要求される場合に有効である。
【0011】
<態様6>
四周を囲んだ導電性型材内に電磁波シールドガラスを組み込み、前記型材の内面と前記電磁波シールドガラスの導電材料との間を、導電性詰め材により導電状態に接続した外装型電磁波シールド建造物の窓部構造。
(作用効果)
導電性詰め材を用いることにより、型材の内面と前記電磁波シールドガラスの導電材料との間を導電状態に接続することができる。
【0012】
<態様7>
隣接する電磁波シールドガラスのそれぞれが、その周縁部に配置される導電性ガスケットにより保持され、隣接する電磁波シールドガラス相互が前記導電性ガスケットを介して導電状態に接続されている外装型電磁波シールド建造物の窓部構造。
(作用効果)
ガラスをガスケット主体で保持する形態においては、そのガスケットを導電性とすることにより、電磁波シールドガラスを隣接させたとしても、相互に導電状態に接続することが可能である。
【0013】
<態様8>
導電性窓枠内において間隔を置いて室内外に2枚の電磁波シールドガラスを嵌めこみ、各電磁波シールドガラスと前記窓枠とを導電状態に接続した外装型電磁波シールド建造物の窓部構造。
(作用効果)
導電性窓枠内において間隔を置いて室内外に2枚の電磁波シールドガラスを嵌め込むと、一枚では電磁波シールド効果が低いとしても、窓自体では所要の電磁波シールド性能を容易に確保できる。
【0014】
<態様9>
耐火材の少なくとも片面に導電性金属板を設けて複合板とし、この複合板をカーテンウォールの腰部に配置し、前記複合板を保持する導電性保持部材に対して導電状態に接続した外装型電磁波シールドカーテンウォールの腰部構造。
(作用効果)
カーテンウォールにおいては、腰部に耐火材が必要であるところ、耐火材の少なくとも片面に導電性金属板を設けて複合板とし、この複合板をカーテンウォールの腰部に配置することで、複合板を保持する導電性保持部材に対して導電状態に接続すれば、容易に導電状態を確保できる。
【0015】
<態様10>
耐火材の少なくとも片面全体に電磁波シールドシートまたは電磁波シールドテープを設けて電磁波シールド面材との複層板とし、この複層板をカーテンウォールの腰部に配置し、前記複層板を保持する導電性保持部材に対して導電状態に接続したことを特徴とする電磁波シールドカーテンウォールの腰部構造。
(作用効果)
態様9と同様に容易に導電状態を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外装型とするものであるから、建造物全体や、階層建物の少なくとも複数階全体を電磁波シールド空間として構築することが容易にでき、コストを削減でき、工期を短縮できるようになる。
また、導電性を確保するに際して、外壁部分の構造に工夫を施し、簡易にかつ施工性に優れた施工が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
<電磁波シールド空間とするための概要>
実施の形態においては、図1及び図3に示すように、建物内部全体を電磁波シールド空間とすることや、あるいは図2、図5及び図6に示すように、連続した所定の階(この例では2階から4階を電磁波シールド空間とする場合を示す。)を電磁波シールド空間とすることができる。そして、このように電磁波シールド空間とする形態は、既存の建物を改装する場合も、新築するに際してでも適用することができる。また、建物の構造としては、鉄骨造でもコンクリート造でもよい。図において、3は電磁波シールドガラス窓、1は導電性金属パネル部分を示す。
鉄骨造建物の連続した所定の階を電磁波シールド空間とする場合を示すのが図5であり、コンクリート造建物の連続した所定の階を電磁波シールド空間とする場合を示すのが図6である。このように連続した所定の階を電磁波シールド空間とする場合、外壁に対する作業の他は、最下階の床スラブ12a及び最上階の天井スラブ12bに電磁波シールド材2を取り付け、外壁に取り付けられた部材、導電性金属パネル1、窓枠、電磁波シールドガラス3と電気的に接続すれば足りる。ただ、新たに建物を建築するについて、電磁波シールド空間とする階が定まらない場合は、後日の作業を容易にするため、全ての床スラブ及び屋上スラブに電磁波シールド材を取り付けておくことができる。
【0018】
<開口部が備わる外壁に対する作業>
建物外壁に図1及び図2に示したような開口部3が備わる場合、建物側面の作業としては、図7及び図20に示すように、建物の外壁を、カーテンウォール用の金属パネル1で覆い、外壁に備わる開口部3に、金属製のガラス支持枠4を取り付け、このガラス支持枠4に電磁波シールドガラス5を取り付ける。
この作業は、既存の建物、新築建物あるいは外壁のある、なしで異ならない。ただ、既存の建物について既に金属パネル等が使用されている場合は、既存の金属パネルを利用してもよい。
【0019】
<金属パネル・ガラス支持部材と電磁波シールド材の接続>
そして、前記金属パネル1・前記ガラス支持枠4と前記電磁波シールド材2は、以下のように取り付けられる。
まず、建物が鉄骨造の場合は、図7及び図9に示すように、電磁波シールド材2として、床スラブ12a(天井スラブについては、屋上以外においては、床スラブと同様である。なお、屋上部の作業は後述する。)に備わるデッキプレート13を利用する。このデッキプレート13は、コンクリート止め14及び導電体20を介し、金属パネル1・ガラス支持枠4と電気的に接続する。この点、前記導電体20を、図8に示すように、床スラブ12aの途中でデッキプレート13と接続するよう構成してもよいが、この方法だと、床スラブ12aを中間で切る必要が生じ、構造的に難しいものとなる。したがって、コンクリート止め14を利用した形態が望ましい。
他方、建物がコンクリート造の場合は、図10及び図20に示すように、床スラブ12aの表面に電磁波シールド材2を貼り付け、この電磁波シールド材2は、導電体20を介し、金属パネル1・ガラス支持枠4と電気的に接続する。
この場合、電磁波シールド材2としては、金属製シートや金属製不織布などを、導電体20としては、金属メッシュ、金属膜、金属製不織布などを使用できる。
【0020】
<屋上部の作業>
以上に対し、電磁波シールド空間とする階として、建物最上階を含む場合は、床スラブあるいは天井スラブに対する作業の場合と異なり、屋上スラブに対する作業として次のような作業を行う。
特に、本実施の形態では、まず、図11、図12及び図21に示すように、前記金属パネル1と、電磁波シールド材2の他、屋上階パラペット導電性金属笠木15を利用する場合を示す。この場合、金属パネル1と屋上階パラペット金属笠木15との目地間、及び屋上階パラペット金属笠木15と電磁波シールド材2との目地間には、それぞれ導電性の目地材6を備え、電気的に接続する。
図11及び図21は、屋上スラブ外断熱工法に対応するものであり、屋上スラブ12c直上に断熱層18を設ける場合である。この場合は、建物が鉄骨造の場合(図11)、あるいはコンクリート造の場合(図21)、いずれにおいても断熱層18の上に電磁波シールド材2を貼り付け、その上から防水層及び押さえコンクリート17を設けることになる。
他方、図12は、屋上スラブ内断熱工法に対応するものであり、屋上スラブ12c直下に断熱層18を設ける場合である。この場合は、屋上スラブ12cに直接、電磁波シールド材2を貼り付け、その上から防水層及び押さえコンクリート17を設けることになる。
屋上スラブ外断熱工法、屋上スラブ内断熱工法いずれの場合においても、押さえコンクリート17の上に電磁波シールド材2を貼り付けることが考えられるが、この方法だと耐候性上、上部に何らかの保護材が必要となる。また、押さえコンクリート17を設けない露出防水によるのであれば、屋上スラブ12cに直接、電磁波シールド材2を貼り付け、その上にから露出防水処理を施すことになる。
以上の他にも屋上部の作業としては、種々の形態が考えられるが、例えば、図13に示すように、鉄骨造の屋根を折板19とする場合は、この折板19と屋上階パラペット金属笠木15との目地間に、導電性の目地材6を備え、電気的に接続する。
以上で使用する目地材6としては、導電性カーボンを混入したシリコンシーリング、導電性を有するシリコン系のガスケット、又は、金属メッシュを巻き込んだバッカー、又は、金属膜、又は、金属不織布等がある。
【0021】
<金属パネルどうしの接続>
ところで、前記金属パネル1は、1枚で外壁全てを覆うということが困難であるため、実際には、複数枚を接続して建物外壁全体を覆うことになる。
そこで、金属パネル1どうしの接続の方法であるが,まず、金属パネル1として、切板タイプのものを使用する場合は、図14及び図15に示すように、金属パネル1,1に、金属四方枠21,21を取り付け、金属四方枠21,21の目地間にシール材41と導電性バッカー材43及び、導電性ガスケット45を備える。これにより、金属パネル1,1が電気的に接続される。また、シール材41と導電性バッカー材43により水密性が、導電性ガスケット45により気密性が確保される。
他方、金属パネル1として、曲げ板タイプのものを使用する場合は、図17及び図18に示すように、弁当箱状に曲げられた金属パネル1,1の目地間にシール材41と導電性バッカー材43を、目地底に導電性ガスケット45を備える。これによる効果は、金属パネル1として、切板タイプのものを使用する場合と同様である。
【0022】
<金属パネルとガラス支持部材の接続>
このように電気的に接続される金属パネル1は、さらに開口部に備わるガラス支持枠4と以下のように接続する。
まず、金属パネル1として、切板タイプのものを使用する場合は、図16に示すように、金属パネル1に、金属四方枠21を取り付け、この金属四方枠21とガラス支持枠4の目地間にシール材41と導電性バッカー材43及び、導電性ガスケット45を備える。これにより、金属パネル1とガラス支持枠4が電気的に接続される。また、シール材41と導電性バッカー材43により水密性が、導電性ガスケット45により気密性が確保される。
他方、金属パネル1として、曲げ板タイプのものを使用する場合は、図19に示すように、弁当箱状に曲げられた金属パネル1とガラス支持枠4との目地間に、シール材41と導電性バッカー材43を、目地底に導電性ガスケット45を備える。これによる効果は、金属パネル1として、切板タイプのものを使用する場合と同様である。
【0023】
<ガラス支持部材と電磁波シールドガラスの接続>
このようにして金属パネル1と接続されるガラス支持枠4は、さらに電磁波シールドガラス5と接続する。
まず、ガラス支持構造を乾式とする場合は、図32に示すように、電磁波シールドガラス5の床側端部に導電性シート44を、建物室外側に導電性ガスケット45を設ける。これにより、電磁波シ−ルドガラス5とガラス支持枠4とが、導電性シート44と、導電性ガスケット45を介して、電気的に接続される。また、導電性ガスケット45により、水密性が確保される。
他方、ガラス支持構造を湿式とする場合は、図33及び図34に示すように、電磁波シールドガラス5の床側端部に導電性シート44を、建物室外側に導電性ガスケットスペーサー46を設ける。これにより、電磁波シ−ルドガラス5とガラス支持枠4とが、導電性シート44と、導電性ガスケットスペーサー46を介して、電気的に接続される。
以上で使用する電磁波シールドガラス5としては、複層ガラスにおいて、内側ガラスの室外面、外側ガラスの室内面、あるいはこれらの各面に、電磁波シールド性を示す金属膜を施したもの、合わせガラスの中間層に電磁波シールドシートを挟み込んだもの、一般ガラスの室内面に電磁波シールド性フィルムを設けたものなどを挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。
【0024】
<外壁としてガラスカーテンウォールを使用する方法>
以上では、外壁に金属パネルを取り付ける場合を示したが、この他にも、外壁として電磁波シールドガラスからなるカーテンウォールを使用するということが考えられる。
この場合、建物側面の作業としては、図35及び図36に示すように、電磁波シールドガラス5を、導電性ガスケット45で固定するということになる。
他方、カーテンウォールとして電磁波シールドガラスを使用する場合において、一部の電磁波シールドガラスを開閉式としたい場合は、図37及び図38に示すように、開閉式の電磁波シールドガラス5を導電性ガスケット45で固定し、さらに、無目材23と障子框22、障子框22と縦枠24、及び縦枠24と方立27との目地間に、気密性を持った導電性ガスケット45,45,45を備える。
【0025】
<単窓として取り付ける構造>
また、導電性金属パネルに開口部を設け、ガラス支持枠と電磁波シールドガラス5により、窓を構成できる。この場合、図39及び図40に示すように、金属パネル16と金属製のガラス支持枠4との目地間に、シール材41と導電性バッカー材43を備える。これにより、金属パネル16とガラス支持枠4とが電気的に接続される。
また、このガラス支持枠4は、電磁波シールドガラス5を固定する導電性ガスケット45によって、電磁波シールドガラス5と電気的に接続される。
【0026】
<並列窓とする方法>
ところで、以上で使用する電磁波シールドガラスは、電磁波シールド性が40db以上の高性能のものである必要があるが、以下では、電磁波シールド性が25db〜30db程度の低性能のものである場合を示す。
この場合は、図41及び図42に示すように、低性能電磁波シールドガラス31を2枚平行並列に設置することにより、電磁波シールド性能を向上させる。低性能電磁波シールドガラス31,31に備わる電磁波シールド処理面31a,31aと金属製のガラス支持枠4、障子框22の目地間には、導電性ガスケット45,45が備わる。これによって、低性能電磁波シールドガラス31,31とガラス支持枠4、障子框22とは、電気的に接続される。
そして、この場合、室内側の低性能電磁波シールドガラス31は、メンテナンス用に、片開き式、あるいは内上げ式等の開閉式としておくことを推奨する。その方法としては、低性能電磁波シールドガラス31に備わる電磁波シールド処理面31aと障子框22との目地間に、気密性能をもった導電性ガスケット45を備える。これによって、低性能電磁波シールドガラス31と障子框22は電気的に接続される。そして、この障子框22もまた、導電性ガスケット45によって、下枠26及び縦枠24と電気的に接続される。
現状において、電磁波シールド性が40db以上の高性能の電磁波シールドガラスは、製造工程の複雑さから非常に高価なものとなっている。したがって、本形態のように低性能電磁波シールドガラスをある距離をおいて並列に設置すれば、安価に40db以上の電磁波シールド性を確保することができる。また、内部にブラインド32を設置することでオフィス,病院などの窓際空間の負荷を低減できる。さらに、ガラスが2重に設置されているため遮音効果も期待できる。
【0027】
<外壁構造を耐火式とする方法>
外壁構造を耐火式とする場合は、図43及び図44に示すように、開口部に設けるガラスを一般ガラス33とすることができる。この場合、硅酸カルシウム板、ロックウール等からなる耐火材34に、アルミ、スチール、ステンレス等からなる金属パネル1を取り付け、これを電磁波シールドパネルとして、一般ガラス33の裏面に配置する。そして、この電磁波シールドパネルは、導電性ガスケット45によって、方立27及び無目材23,23と電気的に接続する。
前記電磁波シールドパネルとしては、図45及び図46に示すように、耐火材34の表面に電磁波シールドシート29及び電磁波シールドテープ30を貼ったものを使用してもよい。
【0028】
<アルミ製窓枠について>
本実施の形態で使用するアルミ製ガラス支持部材(ガラス支持枠4)は、図26に示すように、電磁波シールドガラスを嵌め込む部分に、型材の長手方向に沿って平行に2条の薄肉部35A,35Aを形成することで剥ぎ取り部35を形成しておき、ガラス支持枠4表面にアルマイト皮膜(焼き付け塗装でもよい)等の通常の表面処理を加えたものである。しかしながら、中空部は表面処理に際してアルマイト皮膜が生成されないので、このガラス支持枠4は、使用時において剥ぎ取り部35を剥ぎ取ると、アルミ素地に近い高電通面36を生じる。この剥ぎ取り部35は、図27に示すように、導電性ガスケットを嵌め込む部分にも、また、図28に示すように、電磁波シールド材を嵌め込む部分にも設けるのが好適である。
図26に示すガラス支持枠4に電磁波シールドガラスを嵌め込む場合は、図29に示すように、電磁波シールドガラス5の床側端部に導電性シート44を備え、さらに、この導電性シート44とガラス支持枠4の間に導電性ガスケット45を備える。これにより、電磁波シールドガラス5とガラス支持枠4とが、導電性シート44、導電性ガスケット45及びアルミ枠の素地に近い高電通面36とによって、電気的に接続される。また、図27に示すガラス支持枠4に電磁波シールドガラスを埋め込む場合は、図30に示すように、電磁波シールドガラス5とガラス支持枠4とを、電磁波シールドガラス5の床側端部に備わる導電性シート44と、導電性ガスケット45と、アルミ枠の素地に近い高電通面36とによって、電気的に接続する。さらに図28に示すガラス支持枠4に電磁波シールドガラス5を埋め込んだ場合は、図31に示すように、電磁波シールド材2とガラス支持枠4とを、アルミ枠の素地に近い高電通面36と、導電性ガスケット45とによって電気的に接続する。
【0029】
<ガスケットの形態について>
図22〜25は、曲げ板タイプの金属パネルどうしを接続する場合に使用する導電性ガスケットの形態と現場接続部の形状を示す。導電性ガスケット45は+型、T型形成材を用いて、工場にて一体接続し、図22に示すような網目状形態とする。ガスケットの端部であり現場において接続する部分は、図23に示すように、導電性のシリコンなどの導電体によって凹形状と凸形状となっており、接続後は図24に示すように、2つのガスケットの端部が嵌合し一体となる。図25は、この導電性ガスケット45によって、金属パネル1,1を導電状態に接続した場合を示すものである。
【実施例1】
【0030】
アルミパネルと、アルミ製のガラス支持部材についてアルマイト処理(14μ以上)、またはアルミの複合皮膜(9+7μ)の皮膜処理後のものとを使用して、アルミパネル目地間、アルミパネルとアルミ製ガラス支持部材との目地間を導電性目地材にて接続した場合、表1〜表4に示すように、200MHZ〜3GHZにおいて40db〜50dbの電磁波シールド性能を確保できることを確認した(表1〜表4参照)。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】階層建物の全体を電磁波シールド空間とした場合の概念斜視図である。
【図2】階層建物の連続する複数階を電磁波シールド空間とした場合の概念斜視図である。
【図3】階層建物の全体を電磁波シールド空間とした場合の概念縦断面図である。
【図4】階層建物の連続する複数階を電磁波シールド空間とした場合の概念縦断面図である。
【図5】鉄骨造階層建物の連続する複数階を電磁波シールド空間とした場合の概念縦断面図である。
【図6】コンクリート造階層建物の連続する複数階を電磁波シールド空間とした場合の概念縦断面図である。
【図7】鉄骨造建物を電磁波シールド空間とする場合の、最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続を示した概念斜視図である。
【図8】鉄骨造建物の電磁波シールド空間とする最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続について、床スラブを切断する場合を示した縦断面図である。
【図9】鉄骨造建物の電磁波シールド空間とする最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続について、コンクリート止めを利用した場合を示した縦断面図である。
【図10】コンクリート造建物の電磁波シールド空間とする最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続について示した縦断面図である。
【図11】鉄骨造建物の屋上部の処理について、屋上スラブ外断熱工法とする場合の縦断面図である。
【図12】鉄骨造建物の屋上部の処理について、屋上スラブ内断熱工法とする場合の縦断面図である。
【図13】屋上部の処理について、鉄骨造の屋根が折板の場合の縦断面図である。
【図14】切り板タイプの金属パネルどうしの接続を示した縦断面図である。
【図15】切り板タイプの金属パネルどうしの接続を示した横断面図である。
【図16】切り板タイプの金属パネルとガラス支持部材の接続を示した縦断面図である。
【図17】曲げ板タイプの金属パネルどうしの接続を示した縦断面図である。
【図18】曲げ板タイプの金属パネルどうしの接続を示した横断面図である。
【図19】曲げ板タイプの金属パネルとガラス支持部材の接続を示した縦断面図である。
【図20】コンクリート造建物を電磁波シールド空間とする場合の、最下階の床スラブ部分と外壁部分との接続を示した概念斜視図である。
【図21】コンクリート造建物の屋上部の処理を示した縦断面図である。
【図22】曲げ板タイプの金属パネルどうしを接続する場合に用いる導電性ガスケットを示した断面図である。
【図23】曲げ板タイプの金属パネルどうしを接続する場合に用いる導電性ガスケットの接続部分を示した断面図である。
【図24】曲げ板タイプの金属パネルどうしを接続する場合に用いる導電性ガスケットを接続した場合の断面図である。
【図25】曲げ板タイプの金属パネルどうしを導電性ガスケットで接続した場合の断面図である。
【図26】電磁波シールドガラスが嵌合する部分を高電通面とした、金属製のガラス支持部材を示した断面図である。
【図27】導電性ガスケットが嵌合する部分を高電通面とした、金属製のガラス支持部材を示した断面図である。
【図28】電磁波シールド材が嵌合する部分を高電通面とした、金属製のガラス支持部材を示した断面図である。
【図29】図26のガラス支持部材に電磁波シールドガラスを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図30】図27のガラス支持部材に導電性ガスケットを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図31】図28のガラス支持部材に電磁波シールド材を取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図32】乾式のガラス支持部材に電磁波シールドガラスを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図33】湿式のガラス支持部材に電磁波シールドガラスを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図34】湿式のガラス支持部材に電磁波シールドガラスを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図35】外壁をガラスカーテンウォールとする場合を示す縦断面図である。
【図36】外壁をガラスカーテンウォールとする場合を示す横断面図である。
【図37】外壁を開閉式ガラスカーテンウォールとする場合を示す縦断面図である。
【図38】外壁を開閉式ガラスカーテンウォールとする場合を示す横断面図である。
【図39】外壁を金属パネルとする場合を示す縦断面図である。
【図40】外壁を金属パネルとする場合を示す横断面図である。
【図41】電磁波シールドガラスを並列に備える場合を示す縦断面図である。
【図42】電磁波シールドガラスを並列に備える場合を示す横断面図である。
【図43】外壁を金属パネルと耐火材からなる電磁波シールドパネルとした場合を示す縦断面図である。
【図44】外壁を金属パネルと耐火材からなる電磁波シールドパネルとした場合を示す横断面図である。
【図45】外壁を電磁波シールドシートと耐火材からなる電磁波シールドパネルとした場合を示す縦断面図である。
【図46】外壁を電磁波シールドシートと耐火材からなる電磁波シールドパネルとした場合を示す横断面図である。
【図47】従来例の電磁波シールド空間を構成する場合の概念縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…導電性金属パネル、2…電磁波シールド材、3…電磁波シールドガラス窓(開口部)、4…ガラス支持枠(ガラス支持部材)、5…電磁波シールドガラス、6…導電性目地材、11…窓、12a…床スラブ、12b…天井スラブ、12c…屋上スラブ、13…デッキプレート、14…コンクリート止メ、15…屋上階パラペット金属笠木、16…金属パネル、17…押さえコンクリート、18…断熱層、19…折板、20…導電体、21…金属四方枠、22…障子框、23…無目材、24…縦枠、25…上枠、26…下枠、27…方立、29…電磁波シールドシート、30…電磁波シールドテープ、31…低性能電磁波シールドガラス、31a…電磁波シールド処理面、32…ブラインド、33…一般ガラス、34…耐火材、35…剥ぎ取り部、36…高電通面、41…シール材、43…導電性バッカー材、44…導電性シート、45…導電性ガスケット、46…導電性ガスケットスペーサー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物のカーテンウォール構造の外壁において、
前記カーテンウォール構造の外壁は、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル、導電性アルミ製窓枠、及びその窓枠開口部内に設けられる電磁波シールドガラスにより外装面が形成され、
対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面において、前記導電性金属パネル、導電性窓枠、及び電磁波シールドガラスが導電状態で接続されて電磁波シールド外装面が形成され、この電磁波シールド外装面が電磁波シールド空間の壁面を構成していることを特徴とする外装型電磁波シールド建造物。
【請求項1】
建造物のカーテンウォール構造の外壁において、
前記カーテンウォール構造の外壁は、導電性の骨組み部材を支持部材として、導電性金属パネル、導電性アルミ製窓枠、及びその窓枠開口部内に設けられる電磁波シールドガラスにより外装面が形成され、
対象の電磁波シールド高さ範囲の外装面において、前記導電性金属パネル、導電性窓枠、及び電磁波シールドガラスが導電状態で接続されて電磁波シールド外装面が形成され、この電磁波シールド外装面が電磁波シールド空間の壁面を構成していることを特徴とする外装型電磁波シールド建造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【公開番号】特開2007−56668(P2007−56668A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275625(P2006−275625)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【分割の表示】特願2000−300769(P2000−300769)の分割
【原出願日】平成12年9月29日(2000.9.29)
【出願人】(500045062)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【分割の表示】特願2000−300769(P2000−300769)の分割
【原出願日】平成12年9月29日(2000.9.29)
【出願人】(500045062)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】
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