説明

外観検査装置、および、検査対象物の検査領域抽出方法

【課題】配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどが混在する画像の中から検査領域を正確に抽出することで精度良い検査を行うことができる外観検査装置を提供する。
【解決手段】プリント基板2を検査する外観検査装置1において、プリント基板2の表面画像を取得する画像取得手段31と、プリント基板2を形成する際に使用された複数の設計データを記憶させる記憶手段33と、この設計データで囲まれた領域を膨張処理させる膨張処理手段34と、この膨張処理された領域の内側領域と画像取得手段31によって取得された画像の重複領域を抽出する重複領域抽出手段36とを備え、当該重複領域抽出手段36によって抽出された領域と基準データとを比較することで良否判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の形成状態を検査する外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、外観検査装置を用いて物品の形成状態を検査する場合、画像取得手段を用いて検査対象物の画像(以下、「被検査画像」という)を取得し、また、あらかじめ記憶手段に記憶されていた基準データとこの被検査画像とを比較することによって取得された画像の形成状態を判定する。これをプリント基板の検査について説明すると、プリント基板を検査する場合、まず、表面に設けられた配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどの画像を取得し、その画像をA/D変換して画像メモリに格納する。ここで、配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどの画像を取得する場合は、取得された画像から所定の輝度幅毎の画像を抽出し、配線パターンやパッド、レジスト、シルクごとの各検査領域の画像を抽出する。具体的には、低輝度領域からレジストの塗布された領域を抽出し、また、高輝度領域からシルクの印刷された領域を抽出する。そして、このように抽出された検査領域に対応して設けられた基準データを用い、その検査領域ごとに独自の検査手法や閾値などを用いて検査を行うようにしている(特許文献1など)。
【0003】
ところで、このような基準データを記憶手段に記憶させておく場合、CADデータを利用することがある。例えば、下記の特許文献1には、プリント基板の製造時に使用されたCADデータを基準データとして検査する方法が開示されている。この特許文献1に記載された検査方法を図10を用いて詳細に説明すると、この検査方法で検査する場合、まず、検査対象物の画像を取得し、その画像から配線パターンなどのエッジを抽出する。一方、記憶手段に、あらかじめその検査対象物を形成する際に使用されたCADデータを第一のマスタパターンとして記憶させておく。そして、このCADデータで(第一のマスタパターン)を縮小処理することで第二のマスタパターンM1を生成し、また、そのCADデータ(第一のマスタパターン)を膨張処理することで第三のマスタパターンM2を生成する。なお、ここで膨張処理して第三のマスタパターンM2を生成する場合において、隣接して複数の配線パターンが設けられている場合は、その膨張処理されたそれぞれの間における領域(すなわち、配線パターンの存在しない部分)が第三のマスタパターンM2の領域となる。そして、このように各マスタパターンM1、M2を記憶させた状態で、これらのマスタパターンM1、M2とエッジ画像を位置合わせし、それぞれ重なり合った部分を抽出し、この重なり合った部分を不良部分として検出する。図10においては、縮小処理領域内で重なり合ったの部分90が欠けを示しており、また、膨張領域の外側領域と重なり合った部分91が突起を示している。そして、この重なり合った領域を欠けや突起の存在する不良箇所として判定するようにしている。
【特許文献1】特開平10−141930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、検査対象物から画像を取得する場合、光の照射角度や光の波長によって画像の取得状態が変化してしまうことがある。例えば、図3(b)に示すように、レジストの開口部にパッドが設けられている状態をカメラで撮像すると、光の照射角度によっては、レジスト23の開口部23aの縁部23bで光が反射してしまい、パッド22の輝度と同じ輝度になってしまう。また、図8に示すようにレジスト23の薄い領域23dとレジスト23内の配線パターン21が同じ輝度になったり、あるいは、パッドの近傍にシルクが設けられている場合、パッドの縁部が反射してシルクと同じ輝度になってしまうことがある。これ以外にも、スルーホールの縁部やパッドの縁の反射、シルクの印刷の薄さなどによって本来取得する予定のない画像がノイズとして含まれてしまうことがある。このような場合に、上述のように取得された画像とCADデータの縮小領域と膨張領域の外側領域から不良部分を抽出したのでは、その膨張領域の外側に存在するノイズを不良箇所として判定しまい、虚報が増えてしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、検査領域を正確に抽出することで精度高い検査を行うことができる外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、検査対象物の形成状態を検査する外観検査装置において、検査対象物の表面画像を取得する画像取得手段と、検査対象物を形成する際に使用された設計データを記憶する記憶手段と、当該設計データを膨らまし処理して得られた領域の内側領域と前記画像取得手段によって取得された画像の重複領域を抽出する重複領域抽出手段と、当該重複領域抽出手段によって抽出された重複領域と基準データとを比較することで良否判定する判定手段とを備えるようにしたものである。
【0007】
このようにすれば、例えば、仮に、レジストの開口部の縁部が反射してパッドと同じ輝度を有することになっても、パッドの膨張された設計データと重複する領域を抽出するようにしたので、レジストの開口部の縁部におけるノイズを除去することができる。これにより、正確にパッド領域のみを抽出して虚報を減らすことができるようになる。また、設計データで囲まれた領域を膨らまし処理するので、検査対象物の画像と完全に位置合わせしなくてもその内側の検査領域を容易に抽出することができ、しかも、設計データを膨らますことによって、例えば、仮に、パッドや配線パターンに突起や太りがあった場合であっても、その突起や太りの領域も抽出することができるようになる。
【0008】
さらには、複数種類の設計データを組み合わせ、その組み合わせによって得られた領域の内側領域と前記画像取得手段によって取得された画像領域との重複領域を抽出する。
【0009】
そして、このように設計データを組み合わせるとき、一の設計データによって得られた領域から他の一の設計データによって得られた領域を除外し、その除外によって得られた残りの領域を検査領域とする。
【0010】
このようにすれば、例えば、図9に示すように、配線パターンの上にレジストが塗布され、さらにその上にシルクが塗布されている場合に、設計データにおける配線パターンの領域からシルクの印刷領域を除外することで、配線パターンと誤認を生じやすいシルクの領域を除外することができ、これによって虚報を減らすことができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、設計データを膨らまし処理して得られた内側領域と検査対象物から取得された画像とを重ね合わせ処理し、その重複領域から検査領域を抽出するようにしたので、検査領域の画像にノイズが含まれている場合であっても、これを除去して正確に検査領域のみを抽出することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態における外観検査装置1の概要を示したものであり、図2は、その外観検査装置1の機能ブロック図を示したものである。また、図3、図4および図8、図9は、被検査画像から検査領域であるパッド22、配線パターン21などの領域を抽出する状態を示したものである。
【0013】
外観検査装置1の概要について説明すると、この外観検査装置1は、検査対象物であるプリント基板2をピックアップしてステージ11上に載置させるピックアップ機構12と、ステージ11上に載置されたプリント基板2を移動させ、その途中で表面画像を取得する画像取得部13とを備えてなる。この画像取得部13は、プリント基板2に光を照射する発光部13aと、その反射光を受光する受光部13bとを備え、プリント基板2に斜めから光を照射し、その反射光をプリント基板2の真上で受光する。14は回収部であり、良品と判定されたプリント基板2と不良と判定されたプリント基板2とに振り分けて回収する。
【0014】
この外観検査装置1において、画像取得部13によって取得された画像は、A/D変換され、画像メモリ30(図2参照)に一旦格納される。そして、この画像メモリ30に格納された画像から各輝度ごとに配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24(図9)などの各検査領域の画像を抽出し、また、記憶手段33に格納された設計データに基づく領域を膨らまし処理し、その膨らまし処理された膨らまし領域と重ね合わせる。そして、その重ね合わされた重複領域を抽出し、その重複領域とあらかじめ記憶手段33に格納させていた基準データとを比較することによって検査対象物の良否を判定するようにしたものである。以下に、本実施の形態における外観検査装置1の詳細について説明する。なお、次に述べる各手段は、外観検査装置1に組み込まれたCPUやROM、RAMなどの記憶装置に格納されたプログラムとを協働して実現される。
【0015】
図2において、画像取得手段31は、受光部13bによって取得された画像をA/D変換し、256階調の輝度値で表された画像として画像メモリ30に記憶される。このとき、画像メモリ30には、配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24などの混在した画像となる。ここで、取得された画像のうち、シルク24が最も高い輝度となり、次いで、露出した配線パターン21やパッド22、配線パターン21上に塗布されたレジスト23領域、ベース上に塗布されたレジスト23が順に低い輝度となる。
【0016】
画像抽出手段32は、この画像取得手段31によって取得された画像をもとに各検査領域の画像を抽出する。各検査領域の画像を抽出する場合、例えば、第一の輝度幅から比較的明るい検査領域の画像を抽出し、また、第二の輝度幅から中間的な輝度を有する検査領域の画像を抽出する。また、第三の輝度幅から比較的暗い検査領域の画像を抽出する。より具体的には、第一の輝度幅として、輝度200から輝度255までの輝度幅の画素を抽出してシルク24を含む画像を抽出し、また、第二の輝度幅として、輝度90から輝度150までの輝度幅の画素を抽出して露出した配線パターン21やパッド22などの金属を含む画像を抽出する。また、第三の輝度幅として、輝度40から輝度80までの輝度幅の画素を抽出してレジスト23の塗布された配線パターン21を含む画像を抽出し、また、第四の輝度幅として、輝度20から輝度40までの輝度幅の画素を抽出し、プリント基板2上に塗布されたレジスト23を含む画像を生成する。なお、これらの輝度値や輝度幅についてはこれらの値に限定されるものではなく、種々変更することができる。
【0017】
この画像抽出手段32によって検査領域を含む画像を抽出すると、図3(a)に示すように、レジスト23の開口部23aにパッド22が存在している画像を取得した場合、開口部23aの縁部23bが光の照射角度によって反射してしまい、パッド22と同じ輝度の有する画像として図3(b)に示すような画像になることがある。このとき、この画像をそのままパッド22の検査領域の画像として基準データと比較したのでは、開口部23aの縁部23bをパッド22と認識してしまい、不良箇所として出力されてしまうことになる。そこで、このように抽出された画像から縁部23bのノイズを除去して正確にパッド22の検査領域を抽出すべく設計データを使用する。
【0018】
記憶手段33には、あらかじめプリント基板2の各製造工程で使用された複数の設計データが格納される。この設計データは、例えば、配線パターン21やパッド22などの金属領域を形成するための第一の設計データ、レジスト23の塗布領域を設定するための第二の設計データ、シルク24を印刷するための第三の設計データなどによって構成されるが、これ以外に、スルーホールを形成するための設計データや、スリットを形成するための設計データを含むようにしてもよい。
【0019】
膨張処理手段34は、記憶手段33に格納された設計データを読み出し、設計データで囲まれた領域の膨張処理を行う。この膨張処理では、配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24などの領域を外側に向けて数画素ずつ膨張させて膨張領域を生成する。図4に、この膨張処理について示す。図4や図3において、斜線で囲まれた実線領域は第一の輝度幅から取得されたプリント基板2の画像であり、22はパッド、21はパッド22のネック部分に形成された配線パターン、27はその配線パターン21に形成された太り、28は配線パターン21に形成された細り28である。また、25はパッド22に形成された突起、26はパッド22の欠けである。ここで、太り27とは、相対的に他の部分よりも長い幅において厚くなった部分をいい、細り28とは、長い幅において他の部分よりも薄くなった部分をいう。また、突起25とは、短い幅において他の部分よりも突出した部分をいい、欠け26とは、短い幅において他の部分より内側に切れ込んだ部分をいう。また、図4(a)において、23cの領域はレジスト23の開口部23aの縁部23bで反射した領域を示しており、また、図中の破線は、第一の設計データである配線パターン21やパッド22の領域を膨張処理した膨張領域(以下、第一膨張領域22aという)を示している。この図から分かるように、第一輝度幅によって取得された画像と第一膨張領域22aの画像を位置合わせすれば、図4(b)に示すように、第一膨張領域22aの内側領域は実際のパッド22の領域を囲むことになり、レジスト23の開口部23aの縁部23bはその内側領域から除外された状態となる。
【0020】
位置合わせ手段35は、配線パターン21やパッド22を含む第一輝度領域と配線パターン21とパッド22のみからなる第一設計データを膨張処理した第一膨張領域22aとの位置合わせする。同様に、レジスト23やシルク24を含む第n輝度領域(n=1、2、3…)の画像とレジスト23やシルク24からなる第m設計データ(m=1,2、3…)を膨張処理した第m膨張領域との位置合わせする。この位置合わせに際しては、検査対象であるプリント基板2の図示しない基準マークを抽出し、その基準マークを用いて第n輝度領域の画像と第m膨張領域を有する画像との位置合わせする。また、プリント基板2が膨張もしくは縮小している場合は、第n輝度領域の画像を膨張もしくは縮小処理してから位置合わせを行う。
【0021】
そして、重複領域抽出手段36では、このように位置合わせ処理された画像から第n輝度領域の画像と第m膨張領域の内側領域の重複領域を抽出する。図4(a)の例では、第一輝度領域のうちパッド22やそのネック部分からなる画像と、第一設計データである配線パターン21やパッド22の第一膨張領域22aの画像とが重ね合わさっているので、図4(b)に示すように縁部23cの画像が除去された画像が抽出される。このときパッド22に突起25や欠け26、あるいは、パッド22のネック部に太り27や細り28が存在していても、膨張処理された第一膨張領域22aの範囲内にそれらの突起25や欠け26、太り27や細り28が存在する場合は、その突起25なども抽出することができる。ただし、膨張範囲を小さくしておくと、突起25がその膨張領域からはみ出てしまうため、不良と判定できる範囲を超える大きさで膨張させるようにする。膨張処理を行うに際して、例えば、小さな突起25や太り27に対しても厳しく不良とする場合は、比較的膨張率を小さく設定しておいてノイズによる影響を小さくする。また、多少の位置ずれなどに対しても良品と判定すべき場合は、膨張率を大きく設定しておき、その大きな膨張領域内での良否を判定する。すなわち、各設計データごとに膨張範囲を変えるようにしておく。
【0022】
判定手段37は、このように抽出された重複領域における画像データと、あらかじめ記憶手段33に格納されている基準データと比較することにより、その検査領域の形成状態の良否を判定する。この良否の判定に際しては、好ましくは、配線パターン21やパッド22に対しては比較的厳しい判定を行い、また、ある程度の位置ずれや印刷不良などが許されるシルク24に関しては、比較的緩やかな判定を行うようにする。
【0023】
この基準データを記憶手段33に格納する場合、目視検査によって良品と判定されたプリント基板2から画像を取得し、各輝度幅(第一の輝度幅〜第四の輝度幅)の画像を抽出して、図5(a)に示すような各画像ごとのヒストグラムを生成する。そして、そのヒストグラムの平均値をから大きく外れる輝度の基準画素数を設定しておき、例えば、輝度P1〜輝度P2までの矩形状の画素数(第一基準画素数S1)と、輝度P3〜P4までの矩形状の画素数(第二基準画素数S2)を記憶させておく。そして、この基準画素数S1、S2を用いて検査領域の対応する輝度幅の画素数と比較して良否を判定する。
【0024】
また、第二の方法としては、プリント基板2の設計データを用いることもできる。この基準データを記憶手段33に記憶させる場合は、複数の製造工程のうち、各製造工程で使用される配線パターン21やパッド22を生成するための第一設計データ、レジスト23の領域を設定するための第二設計データ、シルク24を印刷するための第三設計データをそれぞれ記憶手段33に入力し、基準データとして記憶させる。
【0025】
判定手段37は、これらの基準データと重複領域の画像データとを用いてその重複領域における形成状態の良否を判定する。
【0026】
この判定処理を前記第一の方法の基準データを用いて行う場合について説明すると、まず、配線パターン21やパッド22の金属露出領域を検査する場合、被検査画像と第一膨張領域との内側における重複領域を抽出し、その抽出によって得られた画像における輝度と画素数のヒストグラムを生成する。この生成されたヒストグラムを図5に示すと、図において、横軸は輝度値を示しており、P1は配線パターン21やパッド22の領域を抽出する際に使用された第一輝度幅の下側輝度値、P4はその第一輝度幅における上側輝度値を示している。このヒストグラムにおいては、輝度平均を中心として正規分布をなしているが、配線パターン21やパッド22に突起25や太り27を有するとヒストグラムが全体的に明るい側へシフトし、また、配線パターン21やパッド22に欠け26や細り28を有している場合は、ヒストグラムが全体的に暗い側へシフトする。そして、このシフト具合に応じて配線パターン21やパッド22の形成状態を判定すべく、あらかじめ記憶手段33に暗い側における基準画素数(第一の基準画素数S1)と明るい側における基準画素数(第二の基準画素数S2)を記憶させておき、この輝度幅内における画素数と比較する。そして、被検査画像におけるその輝度幅の画素数がいずれか一方の基準画素数S1、S2よりも多い場合は不良であると判定する。図5(b)においては、被検査画像におけるヒストグラムが明るい側へシフトし、第二基準画素数S2を超える画素数が輝度P3からP4の間に存在するため、不良であると判定される。
【0027】
次に、第二の方法で基準データを記憶した場合における判定手段37の処理について説明する。第二の方法で記憶された基準データを用いた検査を行う場合も、同様に、第一輝度幅の画像と第一膨張領域の内側重複領域を抽出する。そして、その重複領域の画像とあらかじめ記憶手段33に記憶された設計データとの比較を行う場合、設計データには輝度情報が含まれていないため、図6に示すように、重複領域をある直線でカットして得られる線分長と設計データの同じ領域の線分長とを比較し、それらの差が所定の閾値の範囲内であるかに基づいて良否を判定する。そして、このように判定された良否結果に基づいて判定結果を出力し、プリント基板2をそれぞれの回収部14bに回収させる。
【0028】
次に、このように構成された外観検査装置1における検査方法について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0029】
まず、プリント基板2を検査する場合、あらかじめ基準データを記憶手段33に格納させておき、この状態で、プリント基板2の表面画像を取得する(ステップS1)。そして、A/D変換処理を行って一旦画像メモリ30に格納し(ステップS2)、第n輝度幅(n=1、2…)内の輝度を有する画素からなる画像をそれぞれ抽出する(ステップS3)。これにより、第一輝度幅からシルク24や他の白い輝度を有する画像を抽出し、また、第二輝度幅からパッド22や露出した配線パターン21などのようにシルク24より輝度の低い画像を抽出し、さらに、第三輝度幅からレジスト23の塗布された配線パターン21を含む輝度の画像を抽出する。また、第四輝度幅からプリント基板2のベース上に塗布されたレジスト23の画像を抽出する。このとき、各輝度幅から概ねシルク24や配線パターン21、パッド22、レジスト23の塗布された配線パターン21、ベース上のレジスト23の画像を抽出することができるが、パッド22のスリ傷やレジスト23の塗布量、シルク24の印刷の厚み、あるいは、光の照射角度によってノイズが含まれることになる。
【0030】
次に、このように抽出された各検査領域(シルク24の領域、配線パターン21やパッド22の領域、レジスト23の塗布された配線パターン21の領域、ベース上のレジスト23の領域)からノイズを除去して目的の検査領域を抽出すべく、記憶手段33に格納されていた設計データのうち、検査領域に対応する第n設計データを読み出し(ステップS4)、これを膨張処理を行う(ステップS5)。そして、この膨張処理された画像と検査対象物から取得された第n輝度幅の画像との位置合わせを行った後(ステップS6)、重複領域を抽出する(ステップS7)。これにより、図3(a)に示すように、レジスト23の開口部23aにパッド22が存在する場合、図4(b)に示すように、開口部23aの縁部23bのノイズが除去される。そして、このように抽出された重複領域を検査対象物の検査領域として基準データと比較して良否判定を行い(ステップS8)、その判定結果に基づいて振り分け回収を行う(ステップS9)。
【0031】
<第二の実施の形態>
次に、レジストの塗布された配線パターン21の形成状態を検査する場合について説明する。図8は、プリント基板2上に形成された配線パターン21であり、23はレジストである。この図において、配線パターン21の上にレジスト23が塗布されているものとする。また、図8において、26は配線パターン21上の欠けであり、25は配線パターン上の突起であり、23dはレジストの塗布状態にムラを生じている部分である。このようにレジスト23の塗布状態にムラ23dを生じていると、レジスト23の表面に凹凸を生じ、その凹凸部分で光の照射角度によって明るくなってしまうことがある。そして、そのムラ23dの輝度と配線パターン21の輝度がほぼ同じになれば、第三の輝度幅で取得された画像にレジスト23のムラ23dがノイズとして被検査画像に含まれてしまう(図8(b))。
【0032】
そこで、第二の実施の形態においても第一の実施の形態と同様に、第三の輝度幅で取得された画像から、設計データを用いてノイズを除去し、配線パターン21の画像のみを抽出する。具体的には、膨張処理手段34を用いて配線パターン21の設計データを膨張処理し、その領域(以下、「第三膨張領域」という)の内側領域と第三の輝度幅で取得された画像との位置合わせを行った後に、それぞれの重ね合わさった重複領域を抽出する。すると、図8(c)に示すように、レジスト23のムラ23dの部分が除去されて配線パターン21のみが抽出される。そして、この抽出された配線パターン21の領域からヒストグラムを生成し、このヒストグラムにおける輝度P1からP2の画素数と、輝度P3からP4までの画素数を計数するとともに、あらかじめ記憶手段33に格納させておいた基準となる配線パターンのヒストグラムの第一の基準画素数S1と第二の基準画素数S2と比較し、第一の基準画素数S1と第二の基準画素数S2よりも画素数が多い場合は不良であると判定する。
【0033】
<第三の実施の形態>
次に、第二の実施の形態において、さらに、レジスト23の上にシルク24が印刷されている場合における配線パターン21の検査方法について説明する。
【0034】
図9において、21は配線パターンであり、23はその上に塗布されたレジスト、24はそのレジスト23の上に印刷されたシルク24である。このようにシルク24が印刷されていると、その下層に設けられたレジスト23や配線パターン21の形成状態を検査することができない一方、シルク24の印刷状態や色によっては、レジスト23下層の配線パターン21とほぼ同じ輝度になることがある。このように、印刷状態の悪いシルク24とレジスト23下層の配線パターン21がほぼ同じ輝度になれば、第三の輝度幅で取得された画像にノイズが含まれてしまうことになる(図9(b))。
【0035】
そこで、第三の実施の形態でも同様に、第三の輝度幅で取得された画像から、設計データを組み合わせてシルク24の領域を除去し、配線パターン21の画像のみを抽出する。具体的には、第一の実施の形態と同様に、膨張処理手段34を用いて配線パターン21の設計データを膨張処理するとともにシルク24の設計データを膨張処理し、配線パターン21の膨張領域からシルク24の膨張領域を除去する。そして、この組み合わせ処理された設計データと被検査画像の第三の輝度幅で取得された画像とを位置合わせした後、それぞれの重ね合わさった内側の重複領域を抽出する。すると、図9(c)に示すように、シルク24が除去された配線パターン21の領域のみが抽出される。そして、この抽出された配線パターン21の領域からヒストグラムを生成し、このヒストグラムにおける輝度P1からP2の画素数と、輝度P3からP4までの画素数を計数するとともに、あらかじめ記憶手段33に格納させておいた基準となる配線パターンのヒストグラムの第一の基準画素数S1と第二の基準画素数S2と比較し、第一の基準画素数S1と第二の基準画素数S2よりも画素数が多い場合は不良であると判定する。このとき、シルク24の下側は検査されないことになるが、シルク24の下層は画像を取得することができないため、シルク24を虚報として出力しないようにシルク24を除去する。
【0036】
このように上記実施の形態によれば、検査対象物の表面画像を取得する画像取得手段31と、検査対象物を形成する際に使用された設計データを記憶させる記憶手段33と、この設計データを膨らまし処理した領域の内側領域と画像取得手段31によって取得された画像の重複領域を抽出する重複領域抽出手段36と、当該重複領域抽出手段36によって抽出された領域と基準データとを比較することで良否判定する判定手段37とを備えようにしたので、図3や図4に示すように、レジスト23の開口部23aの縁部23bとその開口部23a内のパッド22が反射したとしても、第一設計データに基づいたパッド22領域のみを抽出することができるようになる。これにより、正確にパッド22領域のみを抽出して検査を行うことができるようになる。また、図8や図9に示すように、取得された画像に含まれるノイズを除去して本来の検査領域のみを抽出することができる。また、膨らまし処理された内側の領域を抽出するので、被検査画像と完全に位置合わせしなくても検査領域を容易に抽出することができるようになり、また、パッド22や配線パターン21に突起25や太り27があった場合であっても、その突起25や太り27の領域も抽出することができるようになる。
【0037】
さらには、プリント基板2の製造工程で使用される複数種類の設計データを膨らまし処理した後に組み合わせ処理し、検査対象となる領域に対応する領域のみを抽出して、その領域の内側と被検査画像の領域との重複領域を抽出するようにしたので、何層も重なって印刷などが行われている場合であっても虚報を減らすことのできる検査領域のみを抽出することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0039】
すなわち、上記実施の形態では、所定の輝度幅によって配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24などの検査領域を抽出するようにしているが、第一の画像抽出手段32でRGBなどの属性値を用いて各検査領域を抽出するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、設計データとしてプリント基板2の各製造工程で使用される設計データを用い、後に、この設計データを膨張処理するようにしているが、これをあらかじめ膨張処理して設計データとして記憶させておくようにしてもよい。この場合、本発明との関係において、膨張処理された後のデータが設計データとなる。
【0041】
さらに、上記実施の形態では、設計データを膨張処理して重複領域を抽出するようにしているが、膨張処理することなく、製造工程時に使用された設計データそのものを使用して重複領域を抽出するようにしてもよい。この場合、パッド22の突起25や太り27を抽出することができなくなるが、設計データと第一輝度幅の重複領域を抽出し、それ以外の領域(すなわち、図3(b)の縁部23bの領域)を除去した後、第一輝度幅の画像のみを検査領域として使用する。
【0042】
また、上記実施の形態では、プリント基板2の形成状態を検査する場合について説明したが、プリント基板2の検査に限定されるものではなく、液晶パネルや半導体ウエハ、瓶のひび割れ、物品の表面に印刷された文字の形成状態などを検査する外観検査装置1について適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態を示す外観検査装置の概要を示す図
【図2】同形態における機能ブロックを示す図
【図3】同形態におけるプリント基板の表面のレジスト開口部分を示す図
【図4】図3におけるパッドの領域を膨張処理した状態を示す図
【図5】同形態における判定に使用されるヒストグラムと基準データを示す図
【図6】同形態における基準データを生成する際に使用される線分データを示す図
【図7】同形態における外観検査装置の処理を示すフローチャート
【図8】本発明の他の実施の形態を示す検査領域を抽出する状態を示す図
【図9】本発明の他の実施の形態を示す検査領域を抽出する状態を示す図
【図10】従来における配線パターンの検査方法を示す図
【符号の説明】
【0044】
1・・・外観検査装置
11・・・ステージ
12・・・ピックアップ機構
13・・・画像取得部
14・・・発光部
14a・・・受光部
14b・・・回収部
2・・・プリント基板
21・・・配線パターン
22・・・パッド
23・・・レジスト
23a・・・開口部
23b・・・縁部
24・・・シルク
25・・・突起
26・・・欠け
27・・・太り
28・・・細り
30・・・画像メモリ
31・・・画像取得手段
32・・・第一の画像抽出手段
33・・・記憶手段
34・・・膨張処理手段
35・・・位置合わせ手段
36・・・重複領域抽出手段
37・・・判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の形成状態を検査する外観検査装置において、
検査対象物の表面画像を取得する画像取得手段と、
検査対象物を形成する際に使用された設計データで囲まれた領域を膨らまし処理する膨張処理手段と、
当該膨らまし処理された領域の内側領域と前記画像取得手段によって取得された画像領域の重複領域を抽出する重複領域抽出手段と、
当該重複領域抽出手段によって抽出された重複領域と基準データとを比較することで検査対象物の良否判定する判定手段とを備えたことを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
検査対象物の形成状態を検査する外観検査装置において、
検査対象物の表面画像を取得する画像取得手段と、
検査対象物を形成する際に使用された複数の設計データを組み合わることによって得られた領域の内側領域と前記画像取得手段によって取得された画像領域の重複領域を抽出する重複領域抽出手段と、
当該重複領域抽出手段によって抽出された重複領域と基準データとを比較することで良否判定する判定手段とを備えたことを特徴とする外観検査装置。
【請求項3】
前記設計データを組み合わせることによって得られた領域が、一の設計データで囲まれた領域から他の一の設計データで囲まれた領域を除外して得られた領域である請求項2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
検査対象物の表面に形成された検査領域を抽出する検査領域抽出方法において、
検査対象物の表面画像を取得するステップと、
検査対象物を形成する際に使用された設計データで囲まれた領域を膨らまし処理し、当該膨らまし処理によって得られた領域の内側領域と前記取得された画像領域との重複領域を抽出するステップとを備え、当該重複領域と基準データとを比較することで検査対象物の良否を判定するようにしたことを特徴とする検査領域抽出方法。
【請求項5】
検査対象物の表面に形成された検査領域を抽出する検査領域抽出方法において、
検査対象物の表面画像を取得するステップと、
検査対象物を形成する際に使用された複数種類の設計データを組み合わせることによって得られた領域の内側領域と前記取得された画像領域の重複領域を抽出するステップとを備え、当該重複領域と基準データとを比較することで検査対象物の良否を判定するようにしたことを特徴とする検査領域抽出方法。
【請求項6】
前記設計データを組み合わせることによって得られた領域が、一の設計データで囲まれた領域から他の一の設計データで囲まれた領域を除外して得られた領域である請求項5に記載の検査領域抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−292226(P2008−292226A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136293(P2007−136293)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構の委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(597028081)株式会社メガトレード (27)
【Fターム(参考)】