説明

多価アジュバントディスプレイ

本発明は、3またはそれ以上のアジュバントと共有的に結合するポリマー骨格を含むアジュバント‐ポリマー構築物を提供し、そこで3またはそれ以上のアジュバントが、ペンダント側鎖にそれぞれ存在し、当該アジュバントが、直接的またはスペーサー基を介してのいずれかでポリマー骨格と結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジュバントを使用した免疫機構の刺激のための改善された技術に関する。当該発明は、特に、マルチディスプレイ形式でアジュバントを提示する新規アジュバント含有製品、これらの製品を含む組成物および予防接種におけるこれらの製品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アジュバントは、典型的に、例えば、ウィルス、細菌または菌類などの一般的な病原微生物の成分(またはアナログ)である。それらは、パターン受容体、スカベンジング受容体およびトル様受容体(TLRs)により通常、認識される。もっとも成功したアジュバントは、低い親和性であるが複数繰り返し提示により高い結合活性で、これらのレセプターと結合する。最良のアジュバントは、細菌すべて(または一部分解された細菌)または二本鎖ウィルスDNAの傾向がある。しかしながら、単一の同定可能で、そして好ましくは完全合成の成分を伴う、より確定した製剤について当該技術分野についての最近の動向がある。残念なことに、クリーンで、個別のそして単分散のアジュバントは、元の「汚い」製剤と同程度にまで生来の免疫機構を刺激することはない。現在の合成アジュバント、例えばイミキモド(imiquimod)およびPam2Cysなどは、処方および送達が困難である溶解性の低い低分子量薬剤である。
【0003】
当該技術分野について記載されたアジュバントの特定の例は、例えばUS6,149,222号に記載されたような合成アジュバントを含む。これらのアジュバントは、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマーで構成されるポリオキサマーであり、そしてそれらは、確定度の低い非イオン性相互作用によって多様な細胞表面上受容体を刺激する。US6,610,310号は、複数の負電荷の合成糖または他のポリマーで構成されるポリアニオン性合成ポリマーを記載する。そのような合成アジュバントは、しかしながら、一般的に結合活性が乏しく、そしてアジュバント活性が不十分である。
【0004】
送達を改善することを目的として、合成アジュバントを製剤に組み込むための努力がされている。例えば、US2005/0233105号は、低分子量合成アジュバントを含む製剤を記載する。しかしながら、これらの製剤は、ウィルスワクチンとのアジュバントの単なる混合物であり、そしてそれらは、合成アジュバントの本質的な活性を改善する手段を提供しない。
【0005】
同様に、WO2007/078879は、自己集合するリポソーム、ポリマー複合体および乳化した脂質を含む組成物を記載する。これらの組成物は、より自然な型のアジュバントを提示することを意図するが、それらは、処方することが困難でありそしてアジュバント材料の多くが、疎水性コア内にトラップされるため隔絶される。これらの製剤は、ある条件下で凝固し、そしてそれらの不安定性のため、それらは普通、投与のすぐ前に作成しなければならない。
【0006】
従って、免疫機構の改善された刺激を提供する合成アジュバントの設計について新規アプローチの必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従って3またはそれ以上のアジュバントに共有結合したポリマー骨格を含むアジュバント‐ポリマー構築物(construct)(また本明細書において、ポリマー‐アジュバント構築物と称する)であって、当該3またはそれ以上のアジュバントが、それぞれペンダント側鎖(pendant side chain)に存在し、当該アジュバントが、直接的またはスペーサー基を介してポリマー骨格に結合する、前記アジュバント‐ポリマー構築物を提供する。
【0008】
本発明者は、アジュバントが多価ディスプレイ形式で提示されるように、いくつかの小さなアジュバントをポリマーに結合することが、合成アジュバントのみの使用と比較して免疫刺激を増幅できることを見出した。このような複数のアジュバントの提示は、病原関連分子パターン(PAMPs)の暗示であり、受容体結合活性を改善し、そしてトル様受容体およびパターン認識受容体に対するより自然な提示を提供すると考えられる。それ以上に、アジュバントの多価ディスプレイは、レセプター架橋結合およびシグナル伝達を促進する。これらの要素すべてが、免疫刺激の増加に導き、そしてそれによって使用されるアジュバントの用量はより少なくなりそして副作用の減少を可能にする。このようにアジュバントをポリマー鎖に結合することはまた、アジュバント成分の分子サイズを増加し、そしてそれは、血流内への溶出を防止しそれによって標的以外の毒性を減少することを助ける。
【0009】
本発明の好ましい実施態様では、ポリマー骨格自体は、親水性であり、これは典型的な脂溶性アジュバントを可溶化することを助ける。これは、アジュバントの送達を容易にし、そして使用されるさらに単純な製剤を可能にする。さらなる利点は、受容体と相互作用できる分子数の増加であり、これは使用する用量を低下できる。
【0010】
本発明のアジュバント‐ポリマー構築物は、ワクチンと組み合わせて典型的に投与される。本発明はそれゆえ、ワクチンと結合する本発明のアジュバント‐ポリマー構築物を含むワクチンコンジュゲートをまた提供する。本発明のアジュバント‐ポリマー構築物またはワクチンコンジュゲートおよび医薬的に許容された担体または賦形剤を含む組成物もまた提供される。
【0011】
本発明は、また、それについて必要とする対象の免疫反応を刺激または賦活するための方法であって、本発明のアジュバント‐ポリマー構築物、ワクチンコンジュゲートまたは組成物の効果的で無毒な用量を前記対象に投与することを含む、前記方法を提供する。アジュバント‐ポリマー構築物または組成物が、ワクチンを含まない時、当該方法は、同時または別途に、ワクチン投与の工程をさらに含む。また、提供は、免疫反応刺激または賦活の方法について使用するための、本発明のアジュバント‐ポリマー構築物、ワクチンコンジュゲートまたは組成物もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、セラミドアナログの合成を示すスキームを提供する。
【図2】図2は、本発明によるポリマー‐アジュバント構築物の構造を示す。
【図3】図3aは、ポリマー‐アジュバント構築物の調製に使用するための反応性ポリマーの構造を示す。図3bは、セラミドアジュバントおよびペプチド抗原と結合する同様のポリマーを示す。
【図4】図4は、同様のポリマー上のTLR2アゴニストPam3Cysの複数提示の結果、より高い細胞刺激となることを示す。U937は、TLR2を含むTLR受容体の範囲を発現する単球様表現型のリンパ腫細胞株である。TLR2の刺激は、NfkBの賦活をもたらし、そしてそれらの細胞は、NfkBプロモーターの制御下のレポータープラスミド(ルシフェラーゼ)で形質導入される。試験物質の8時間曝露の後、細胞を、溶解しそしてルシフェラーゼ発現について分析した。すべての試験物質は、100ng/mlで加えた(注記:Pam3Cysポリマーコンジュゲートの5.22ngのみがPam3Cysである)。データにより、ポリマー結合Pam3Cysは、Pam3Cysそれ自体と比較して、そしてポジティブコントロールLPSと同等の顕著に高いレベルの刺激を示した。
【図5】図5は、同じポリマー上のTLR2アゴニストPam3Cysの複数提示の結果、より高い細胞刺激となることを示す。DCs由来の骨髄に、50ng/mlのPam2Cys(P2C)またはHPMAに結合したP2Cを24時間曝露した。細胞上清を、その後ELISAによってIL‐8を評価した。Pam2Cysの5質量%(2.5ng)が、50ng/mlのP2C‐pHPMAの試料に存在する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本明細書で使用されるアジュバントは、免疫機構を刺激しそしてワクチンに対する応答を増加する、それ自体なんらの特異的な抗原的効果を有しない薬剤である。
【0014】
本発明の構築物は、同じまたは異なるものでもよい少なくとも3のアジュバントを含む。ある好ましい実施態様において、3またはそれ以上のアジュバントは同じである。それぞれのアジュバントは、ペンダント側鎖でポリマー骨格に結合する。アジュバントは、それゆえポリマーの骨格自体の一部ではない。アジュバントの空間的関連配列(spatially‐associated array)が、すべての細菌またはウィルスの表面の「PAMP」エピトープ、またはそれらの成分、たとえば二本鎖ウィルスRNAにより精密に類似し、そして細胞受容体(単数または複数)に対してより大きな結合活性を導くため、これは、細胞受容体による認識のためのアジュバントのよりよい提示を提供する。
【0015】
少なくとも3のアジュバント、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10のアジュバントが、それぞれのポリマーに共有結合し、それぞれのアジュバントが典型的に分離したペンダント側鎖に存在している。典型的に、50までのアジュバントが、単一のポリマー骨格に存在する。ある実施態様において、少なくとも20のアジュバントがポリマー骨格上に存在する。
【0016】
アジュバントは、ワクチンに対して改善された免疫反応を促進するそれらの能力によって特徴づけられる広い範囲の構造を含んでもよい。アジュバントが結合するレセプターのある種類は、トル様レセプターである(TLRs;病原体の表面上の繰り返されたPAMP配列を認識するためのそれらの能力のために、また「パターンレセプター」としても知られる)。TLRsは、グラム陽性および陰性細菌、DNAおよびRNAウィルス、真菌および原生動物を含む病原体のさまざまな種類由来の保存された分子産物を認識する。TLR遺伝子は、いくつかの脊椎動物のゲノム中に認められており、そして多くの部分的および全長配列が利用できる。11のTLRsがヒトで同定され、同時に13のTLRsが、マウスゲノムを捜して見出せた。ヒトおよびマウスTLRファミリメンバーが、明確なリガンド特異性を有して、異なる分子構造を認識することが示されている。TLR1、TLR2、TLR4、TLR5およびTLR6は、形質膜にすべて局在して、細胞壁成分を認識する一方で、TLR3、TLR7、TLR8およびTLR9は、エンドソームのような細胞内区画に優先して発現し、そして核酸構造を認識する。異なるTLRsについてのリガンドの要件は、部分的に特徴づけられる:
TLR2ヘテロダイマー(主にTLR1またはTLR6とのヘテロダイマー)‐リポタンパク質、ペプチドグリカン、リポグリカン、リポテイコ酸、リポ多糖、ペプチドグリカン、チモサン
TLR5‐細菌性フラジェリン
TLR7‐イミダゾキノリン(imidazoquinoline)(イミキモド、ガルジキモド(gardiquimod))、CL264、ロキソリビン
TLR8‐一本鎖RNA、大腸菌RNA
TLR7/TLR8ヘテロダイマー‐CL075、CL097、ポリ(dT)、R848
TLR9‐DNAの非メチル化CpGアイランド、CpG含有オリゴヌクレオチドを含む
TLR4‐リポ多糖、モノホスホリルリピドA
TLR3‐二本鎖RNA
【0017】
TLRリガンドの例は:
‐イミキモド‐TLR7のリガンド
‐MALP‐2(マイコプラズマファーメンタンスから単離されたジアシル化リポペプチド)‐TLR6/TLR2のリガンド
‐ポルフィロモナス ジンジバリスリポ多糖、リポテイコ酸‐TLR2のリガンド
‐Pam3CSK4‐TLR1とTLR2のヘテロダイマーのリガンド
‐Pam2Cys‐TLR6とTLR2のヘテロダイマーのリガンド
‐Poly(I).Poly(C)‐TLR3のリガンド
を含む。
【0018】
TLRは、先天性の免疫細胞(DCs、マクロファージ、NK細胞)、獲得免疫細胞(TおよびBリンパ球)および非免疫細胞(上皮および内皮細胞、線維芽細胞)にも見出される。
【0019】
本発明の使用のために好ましいアジュバントは、リポグリカン、リポ多糖、リポアラビノマンナン、リポテイコ酸、ペプチドグリカン、天然および合成リポタンパク質およびリポペプチド、チモサン、グリコリピド、ポリイノシン‐ポリシチジル酸、モノホスホリルリピドA、TNFα、TNFペプチド、CD40リガンド、OX40、IL‐4、IL‐6、IL‐8、IL‐2、IL‐12、マンノース、GM‐CSF、IFN‐ガンマ、IFN‐α、フラジェリン、イミダゾキノリン化合物、グアノシン、二本鎖RAN(dsRNA)、一本鎖DNA(ssDNA)および細菌DNAまたは合成オリゴヌクレオチドの非メチル化CpG含有配列である。
【0020】
本発明のポリマー骨格は、合成または天然型ポリマーでもよい。本明細書で使用されるポリマーは、核酸、タンパク質またはスターチなどのバイオポリマー並びに合成ポリマーを含む。ある実施態様において、当該ポリマーは、核酸ではない。他の実施態様において、ポリマーは合成ポリマーである。
【0021】
ある実施態様において、ポリマーは、アジュバント構築物に水溶性を与える親水性のポリマーである。例えば、アジュバント‐ポリマー構築物は、少なくとも100μg/mL、例えば、少なくとも150μg/mLまたは少なくとも200μg/mLの水溶性を有してもよい。
【0022】
当該ポリマーは、それ自体生理活性があってもよく、例えば、当該ポリマーは、それ自体アジュバント特性を有してもよい。ある実施態様において、ポリマー自体、実質的に非アジュバント活性である(すなわち、ポリマー単独では、免疫刺激を増加しないであろう)。ポリマーのアジュバント活性の測定は、例えば、マウス膝窩リンパ節(PLN)測定法を使用し、実行してもよく、それにおいて、ポリマーを抗原と一緒にマウス後足裏に注射した。アジュバント活性は、抗原とともに研究下の物質を受け入れた動物中のPLN重量および細胞数と、当該物質なしの抗原を与えられた動物中のPLN重量および細胞数、および推定上のアジュバント単独を与えられた動物のPLN重量および細胞数のそれぞれの増加を比較することで、決定する。他の実施態様において、当該ポリマーは、生理活性がない。
【0023】
適当な合成ポリマーは、ビニル部分、例えば(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニル、ビニルエーテル、ビニルエステルおよびスチリル部分を有するモノマーに基づくそれらを含む。このカテゴリーにおけるモノマーの特定の例は、(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド、特に、N‐2‐ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)およびヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、およびビニルピロリドン(PVP)である。開環重合および開環メタセシスのための適当な環状モノマー、例えば、環状アミド、環状エステル、環状ウレタン、環状エーテル、環状アンハイドライド、環状スルフィド、環状アミンおよびモノ‐およびマルチ環状アルケンも、また使用できる。
【0024】
代替的なポリマー骨格は、核酸(例えば、polyI:polyC、polyA:polyU、一本鎖DNA、二本鎖DNA)、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール‐オリゴペプチド)、ポリ(アミノ酸)(例えば、ポリ[N‐(2‐ヒドロキシエチル)‐L‐グルタミン])、および多糖、例えばグリコーゲン、セルロース、デキストラン、シクロデキストリン、アルギン酸、ヒアルロン酸、ポリシアル酸、ポリマンナンまたはグルコースもしくはガラクトースに基づく他のポリマーなどを含む。さらに、ポリマー骨格として使用できる天然物は、ヘパリン、デキストランおよびスターチを含む。当該骨格は、エチレングリコール‐オリゴペプチドに基づく場合、オリゴペプチド基が、好ましくは1〜4のアミノ酸を含み、そしてペンダント側鎖が、ポリマー骨格のオリゴペプチド部分によって典型的に支えられる。
【0025】
典型的に、ポリマー骨格は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチリルモノマー、ビニルモノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー、シアル酸モノマー、マンノースモノマー、N‐(2‐ヒドロキシエチル)‐L‐グルタミン(HEG)モノマー、およびエチレングリコール‐オリゴペプチドモノマーから選択されるモノマー単位に基づく。好ましくは、ポリマー骨格が、N‐2‐ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、N‐(2‐ヒドロキシエチル)‐L‐グルタミン(HEG)、およびエチレングリコール‐オリゴペプチドから選択されるモノマー単位に基づくか、ポリシアル酸またはポリマンナンポリマーである。
HPMAに基づくポリマー骨格が、より好ましい。
【0026】
ポリマーの平均分子量は、典型的には、約1〜100kDa、例えば、少なくとも2kDa、より好ましくは少なくとも5kDaであり、そして80kDaまで、より好ましくは40kDaまでである。好ましいポリマーは、5〜40kDaの平均分子量である。
【0027】
ポリマー骨格は、アジュバントを含む3またはそれ以上のペンダント側鎖を有する直鎖ポリマーである。あるいは、ポリマー骨格自体は、分岐構造でもよい。例えば、樹枝状(dendritic)および櫛型(Comb)ポリマーが、予想される。
【0028】
いくつかの実施態様において、ポリマー骨格は、ハイドロゲルを形成するように更なるポリマーと架橋してもよい。ハイドロゲルは、好ましくは、加水分解に不安定または酵素(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ2または9)により分解できる。これは、アジュバントが、ハイドロゲル内で固定化され、そしてそのためアジュバントのリリースが制御される目的のためである。それゆえ、本発明の一つの好ましい特徴によると、本発明の工程は、架橋およびハイドロゲル形成(例えば、過剰に何も存在しない高濃度の薬剤)を促進するような条件下で、または架橋を促進するジアミンなどの試薬の存在下で、実行される。修飾されたアジュバントを含むハイドロゲルの形成は、一般的にSubr,V.,Duncan,R.and Kopeck,J.(1990)の“Release of macromolecules and daunomycin from hydrophilic gels containing enzymatically degradable bonds”,J.Biomater.Sci.Polymer Edn.,1(4)61‐278に記載された化学的手法を使用して遂行される。
【0029】
ポリマー骨格が核酸を含む場合、当該ポリマーは、二本鎖らせん構造を形成するために更なる核酸と結合してもよい。
【0030】
アジュバントは、ポリマー骨格と直接またはスペーサー基を介してのいずれで、結合してもよい。好ましい実施態様において、スペーサー基は存在し、アジュバント‐ポリマー構築物は以下のような構造:
P‐[S‐A]n
を有する。上記構造において、Pはポリマー骨格、Sはスペーサー基、Aはアジュバント、そしてnは3またはそれ以上である。
【0031】
スペーサー基は、同じかまたは異なってもよく、そしてオリゴ(アルコキシド)(例えば、2〜200の炭素原子の長さのpEG鎖);例えば、約20までのアミノ酸を有するオリゴペプチド;C1‐C12アルキル部分(例えば、C1‐C6アルキル部分、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、またはブチレン);C6‐C10アリール部分(例えばフェニル);そのようなアルキルとアリール部分の組み合わせ;ポリエステルおよびポリカーボネートから典型的に選択されてもよい。適当なポリエステルおよびポリカーボネートは、例えば、10〜30の炭素原子の鎖を有する。スペーサー基には、典型的に親水性でそして例えば還元性ジスルフィド結合、酸接触加水分解に感受性のある結合、または酵素分解によって切断可能な結合のような分解性の結合を取り入れてもよい。
好ましいスペーサー基は、オリゴ(アルコキシド)およびオリゴペプチドであり、特に、オリゴペプチドである。
【0032】
本発明の一つの実施態様において、スペーサー基は、オリゴペプチドである。好ましくは、オリゴペプチドは、10まで、例えば5までのアミノ酸を含む。より好ましくは、オリゴペプチドは、1〜4、例えば2または4のアミノ酸を含む。適当なオリゴペプチドは、‐Gly‐Phe‐Leu‐Gly‐、‐Gly‐Gly‐およびGlu‐Lys‐Glu‐である。
【0033】
他の実施態様において、スペーサー基は、分解性の結合を包含する。例えば、スペーサー基は、還元により切断可能であってもよく、例えば:
‐NH‐(CH22NHCO‐(CH22‐SS‐(CH22‐CO‐
である。あるいは、スペーサー基は、酸接触加水分解により切断可能であってもよい、例えば:
【化1】

式中、xおよびyは、1〜5の独立した整数、例えば1、2または3であり、そしてRは、例えばC1‐C8のアルキル基、例えばメチルまたはエチルである。
【0034】
nの値は、アジュバントを含むペンダント側鎖の数を表す。少なくとも3のアジュバントが、それぞれのポリマー分子上に存在し、ゆえにnは少なくとも3である。典型的に、50までのアジュバントが、単一のポリマー骨格上に存在し、ゆえにnは50までである。一つの実施態様において、少なくとも20のアジュバントが、ポリマー骨格上に存在する。
【0035】
本発明の一つの実施態様において、‐S‐A基は、少なくとも2mol%のアジュバント‐ポリマー構築物を含む。例えば、‐S‐A基は、少なくとも5mol%の当該構築物を含む。典型的に、‐S‐A基は、20mol%以下の当該アジュバント‐ポリマーを含み、例えば、10mol%までである。
【0036】
本発明のアジュバント‐ポリマー構築物は、アジュバント以外に官能基を持つペンダント側鎖を包含してもよい。そのような官能基は、直接的にポリマー骨格とまたはスペーサー基を介して結合してもよい。適当なスペーサー基は、上述されるスペーサー基である。存在してもよい官能基の例は、例えばアミン、ヒドロキシル、カルボキシルおよびオリゴ(アルキレン)基のような可溶化基である。
【0037】
本発明のアジュバント‐ポリマー構築物の例は、式P‐[S‐A]nの構築物であり、それにおいて、Pは、N‐2‐ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、N‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐グルタミン(HEG)、およびエチレングリコール‐オリゴペプチドから選択されるモノマー単位に基づくポリマーであるか、または、ポリシアル酸またはポリマンナンポリマーであり;Sは、‐Gly‐Phe‐Leu‐Gly‐、‐Gly‐Gly‐またはGlu‐Lys‐Glu‐であり;nは、3〜10であり;およびAは、上で規定したようなアジュバントである。
【0038】
本発明の構築物の合成のためのいくつかの異なる手法が、考えられる:
1.単純モノマーを、官能基化ポリマーと共重合して、ペンダント側鎖上に反応性基を有するポリマー骨格を作成し、続いてこれらの反応性基にアジュバントを付着する手法。
2.アジュバント、またはアジュバント‐スペーサー分子を官能基化して、重合可能基を取り込み、そして官能基化アジュバントまたはアジュバント‐スペーサーを重合混合物に付加する手法。
3.直接的またはスペーサー基を介してアジュバントを結合することによる天然または合成ポリマーのアダプター化(adaptation)する手法。
【0039】
合成されたポリマーの場合において、適当な重合技術は、フリーラジカル重合技術、例えば、従来のそして制御された技術、例えば、Scales,C.W.;vasilieva,Y.A.;Convertion,A.j.;Lowe,A.B.;McCormick,C.L.Biomacromolecules2005,6,1846‐1850;Yanjarappa,M.J.;Gujraty,K.V.;Joshi,A.;Saraph,A.;Kane,R.S.Biomacromolecules2006,7,1665‐1670;Convertine,A.J.;Ayres,N.;Scales,C.W.;Lowe,A.B.;McCormick,C.L.Biomacromolecules2004,5,1177‐1180に記載されるようなNMP(ニトロキシドを介したラジカル重合(nitroxide mediated radical polymerisation))、ATRP(原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerisation))、RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動(Reversible addition‐fragmentation chain transfer))または、シアノキシルに基づく重合のような従来のそして制御された技術を含む。これらの文献は、全体が、参照により本明細書に取り込まれている。環状モノマーは、開環重合または開環メタセシスを使用して重合され得る。
【0040】
関連のある教示が、‘Macromolecular design via reversible addition‐fragmentation chain transfer(RAFT)/xanthates(MADIX)polymerization.’Perrier,Sebastien;Takolpuckdee,Pittaya.J.Polym.Sci.,PartA:Polym.Chem.(2005),43(22),5347‐5393においてまた見出され、それは参照によって本明細書に取り込まれる。
【0041】
典型的に、共重合反応において開始剤は使用され、好ましくはAIBNである。反応は、一般的に有機溶媒、典型的にはDMSO中で起こる。反応は通常50℃〜70℃の温度、好ましくは約60℃で熱せられる。反応は、通常4〜8時間、好ましくは、5〜7時間、より好ましくは約6時間、上記特定の温度で熱せられる。このように得られたポリマーは、典型的にアセトン‐ジエチルエーテル(3:1)混合物中に沈殿され、ろ過され、アセトンおよびジエチルエーテルで洗浄され、真空乾燥される。このように得られたポリマーは、さらにメタノールを使用してセファデックス(sephadex(登録商標))‐LH20カラム中で精製される。
【0042】
重合反応のためのモノマーは、典型的に市販されているか、または、例えばKonak,et al,Langmuir,2008,24,7092‐7098に記載されるような既知の方法に似た方法によって調整されてもよい。
【0043】
上記合成(1)は、重合反応における官能基化モノマーの封入に関与する。そのような官能基化モノマーは、典型的にPG‐S‐FまたはPG‐F構造を有し、そこで、PGは、HPMAまたはメタクリルアミドのような重合可能なモノマー(適当なモノマーは上でさらに規定する)であり、Sは、上で規定したようなスペーサー基であり、そしてFは、官能基である。仮に所望すれば、2またはそれ以上の異なる官能基化モノマーの混合物を使用してもよい。
【0044】
この場合において、重合混合物は、非官能基化モノマーおよび官能基化モノマーの両方を含むであろう。官能基化モノマーは、典型的に、約20mol%までの量、例えば10mol%までの量についてポリマー鎖内に取り込まれる。好ましくは、官能基化モノマーは、少なくとも2mol%の量、例えば少なくとも5mol%の量について取り込まれる。
【0045】
適当な官能基Fは、それら上記のような可溶化基、および反応性基を含む。そのような可溶化基または反応性基の前駆体の保護基を使用してもよい。
【0046】
用語「反応性基」は、特に、他の分子の相補的反応性基、典型的に、アジュバント上の基とのカップリング反応またはリンキング反応に関し、著しい化学反応性を示す基を意味するために、本明細書で使用されることが理解されるであろう。
【0047】
反応性基は、アジュバントまたはワクチンまたは例えば可溶化基のような代替的な官能基の付着点として使用され得る。例えば、反応性基は、例えばアジュバント、ワクチン、または代替的な官能基を含む他の分子上の、アミノ基、チオール基、ヒドロキシ基、アルデヒド、ケトン、カルボン酸または糖基(sugar group)と共有結合を形成することができる。アジュバントまたはワクチンとの反応の場合において、アジュバントまたはワクチンは、官能基化性であってもよく、必要であれば、反応性基と共有結合を形成することができるそのような基を含んでもよい。
【0048】
一つの実施態様において、反応性基は、アミノ基と共有結合を形成できる。この実施態様において反応性基の適当な形は、酸クロリド、イソシアネート、イソチオシアネート、アシル‐チアゾリジン‐2‐チオン、マレイミド、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル(NHSエステル)、スルホ‐N‐ヒドロキシ‐スクシンイミドエステル(スルホ‐NHSエステル)、4‐ニトロフェノールエステル、エポキシド、2‐イミノ‐2‐メトキシエチル‐1‐チオグリコシド、シアヌル酸クロリド、イミダゾリルホルメート、サクシニミジルサクシネート、サクシニミジルグルタレート、アシルアザイド、アシルニトリル、ジクロロトリアジン、2,4,5‐トリクロロフェノール、アズラクトンおよびクロロホルメートを含む。そのような基は、アミンと容易に反応する。アシル‐チアゾリジン‐2‐チオンおよびスルホ‐NHSエステルが、好ましい。アシル‐チアゾリジン‐2‐チオンは、それらの高い反応性および水溶液中の相対的な安定性のため、好ましい。
【0049】
他の実施態様において、反応性基は、チオール基と共有結合を形成することができる。この実施態様における反応性基の適当な種類の例は、ハロゲン化アルキル、ハロアセトアミド、およびマレイミドである。
【0050】
他の実施態様において、反応性基は、ヒドロキシ基と共有結合を形成することができる。この実施態様における反応性基の適当な種類の例は、クロロホルメートおよび酸ハロゲン化物である。代替的に、ヒドロキシ基は、酸化剤、例えば過ヨウ素酸と、酸化することができ、その後ヒドラジン、ヒドロキシルアミンまたはアミンを含む反応性基と反応する。
【0051】
他の実施態様において、反応性基は、アルデヒドまたはケトン基と共有結合を形成することができる。この実施態様における反応性基の適当な種類の例は、ヒドラジド、セミカルバジド、脂肪族一級アミン、芳香族アミンおよびカルボヒドラジドを含む。
【0052】
他の実施態様において、反応性基は、カルボン酸と共有結合を形成することができる。これは、例えば、水溶性カルボジイミド、1‐エチル‐3‐(3‐ジエチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を使用しカルボン酸を活性化し、その後反応性基であるアミンと反応することによりもたらされる。
【0053】
他の実施態様において、反応性基は糖と反応して、共有結合を形成することができる。これは、例えば、ガラクトース酸化酵素を用いて糖を酵素介在酸化して、アルデヒドを形成し、その後反応性基としてヒドラジドのようなアルデヒド反応性化合物と反応することによってもたらされる。
【0054】
反応性基の好ましい例は、ニトロフェノールエステル(ONp)、N‐ヒドロキシサクシンイミド、チアゾリジン‐2‐チオン(TT)およびエポキシ基である。
【0055】
重合の後で、ポリマー内に取り込まれた反応性基は、アジュバントと直接的に反応し、または例えば可溶化基のような他の官能基に変換してもよい。代替的に、反応性基は、二つの代替的な反応性基を含む分子と部分的に反応して、異なる反応性官能基の存在を導いてもよい。これらの反応性基は、その後さらに二つの直交法(Orthogonal methods)を使用することにより修飾することができる。
【0056】
官能基化ペンダント側鎖を含む適当なポリマーの例は、WO98/19710に公開されそしてpolyHPMA‐GlyPheLeuGly‐ONp、polyHPMA‐GlyPheLeuGly‐NHS、polyHPMA‐Gly‐Gly‐ONp、polyHPMA‐Gly‐Gly‐NHS、poly(pEG‐オリゴペプチド(‐ONp))、poly(pEG‐GluLysGlu(ONp))、pHEG‐ONp、pHEG‐NHSを含む。これらの化合物の調製は、WO98/19710において公開されている。WO98/19710の内容は、参照として本明細書に含まれる。本発明において使用するために適当な、他のそのような官能基化ポリマーは、polyHPMA‐GlyPheLeuGly‐TT(ここでTTは、チアゾリジン‐2‐チオン)であり、WO2005/007798において記載された合成である。WO2005/007798の内容は、参照として本明細書に含まれる。
【0057】
本発明の構築物の合成のための代替的な方法論は、重合混合物について封入用のアジュバントの官能基化に関与する(上の合成(2))。この実施態様において、重合は典型的に上記のように、ただしPG‐S‐AまたはPG‐A構造を有する官能基化モノマーを使用して実行され、それにおいてPGおよびSは上で規定した通りであり、そしてAはアジュバントである。二またはそれ以上のそのような官能基化モノマーの混合物、または上記のような式PG‐S‐FまたはPG‐Fのそれらとそのような官能基化モノマーの混合物が、使用されてもよい。
【0058】
上記のように、官能基化モノマーは約20mol%までの、例えば10mol%の量で組み込まれる。好ましくは、官能基化モノマーは、少なくとも2mol%、例えば少なくとも5mol%の量で取り込まれる。
【0059】
さらなる実施態様において、本発明の構築物は、予め形成されたポリマー、例えば天然ポリマーのアダプター付加(上の合成(3))によって得られる。この場合において、ポリマー上の適当な反応性基は、場合によりスペーサー基を介して、アジュバント、そしてさらに任意の所望する官能基、例えば可溶化基を追加するために使用される。
【0060】
本発明の一つの実施態様において、ポリマー骨格は二またはそれ以上の異なるアジュバントを含む。この実施態様において、アジュバントは無作為に配列するか、または特定の配列でもよい。例えば、ポリマーは‐A‐B‐A‐B‐構造のブロックコポリマーを含んでもよく、それにおいて、Aはアジュバント(a)を含む一またはそれ以上のペンダント側鎖を有するポリマー部分であり、そしてBはアジュバント(b)を含む一またはそれ以上のペンダント側鎖を含むポリマー部分である。アジュバントのそのような選択された配列は、相乗的な効果を提供するであろう。
【0061】
本発明のさらなる実施態様において、ポリマー骨格および/またはペンダント側鎖上のスペーサー基は、分解できる。分解できる結合は、従ってポリマー骨格中におよび/または一またはそれ以上のペンダント側鎖内に存在してもよい。分解できる結合は、自発的にまたは特異的なきっかけとなる事象を通じてのいずれかで、インビボにおいて分解できる結合である。典型的に、分解できる結合は、次のエンドソームの取り込みに続く、エンドソームpHの降下による自発的な加水分解のために適合され、または細胞内還元性環境において還元的に切断される結合であってもよい。代替的に、分解できる結合を、特定の酵素による切断のために設計してもよい。
【0062】
生分解できる結合の使用は、ポリマー‐アジュバントコンジュゲートの分解を促進するために有利であり、そしてそれはアジュバント活性を制限し、そして結果として起こる排出を円滑にして、所望しない毒性を回避する。
【0063】
本発明で使用するいくつかのポリマーは、例えばいくつかの核酸のように、本質的に分解できる。代替的に、分解できる結合は、ポリマー骨格または側鎖内に取り込まれてもよい。そのような分解できる結合の例は、典型的に、例えば金属硫化物のような穏やかな還元状態または適当に選択された酵素を使用して切断されるジスルフィド結合;pH依存加水分解により切断されるヒドラゾン結合、シス‐アコニチル結合および他のエステル;または酵素的に切断できる結合を含む。
【0064】
酵素的に切断できる結合は、特定の酵素により切断するために設計され、そして典型的に、スペーサー基として本明細書に記載されるオリゴペプチドのような短いオリゴペプチドを含む。
【0065】
酵素的な分解可能性により与えられる不安定さは、選択された酵素により選択的に切断するために設計されたポリマー(または、ポリマーおよびアジュバントの結合)を可能にするために、望ましいであろう。そのような酵素は、標的部位に存在でき、標的部位においてきっかけとなる分解の可能性のある修飾されたアジュバントを与え、それによって、標的組織と相互作用のためのアジュバントを放出できる。酵素はまた、アジュバントの活性を賦活するために標的細胞の選択された細胞内区画中の修飾されたアジュバントの分解を引き起こせる細胞内酵素でもよい。代替的に、酵素切断部位は、適当な生理活性に応じて(例えば、メタロプロテアーゼを発現している浸潤性または転移性腫瘍細胞の出現)
修飾されたアジュバントの分解を促進するために設計されてもよい。さらなるバリエーションにおいて、修飾されたアジュバントを活性化できる酵素は、修飾されたアジュバントの必要とされる分解およびその後の組織とアジュバントの相互作用を仲介するために適当な時間または部位に投与されてもよい。
【0066】
本発明のアジュバント‐ポリマー構築物は、ワクチンの患者の免疫反応を賦活または刺激するためのワクチンと一体となってヒトまたは哺乳類対象に投与するために適当である。
【0067】
本発明と一緒に使用され得る適当なワクチンの例は、ウィルス、タンパク質、ペプチド、糖および核酸を含む。ワクチンは、予防的(疾患から接種者を守るために投与する)または治療的(存在する感染または疾患を攻撃する免疫機構を補助する)でもよい。一般的なワクチンは死んだまたは不活化した生物、それら由来の精製製品、合成ペプチド、組み換えタンパク質または標的生物の成分をエンコードした核酸ワクチンでもよい。
【0068】
いくつかのワクチンは、死滅微生物を含む‐これらは、化学薬品または熱で死滅させたもとは毒性のある微生物である。実例は、抗インフルエンザ、抗コレラ、抗腺ペスト、および抗A型肝炎ワクチンである。
【0069】
弱毒化ワクチンは、生、弱毒化ウィルス微生物を含む‐これらは、それらの毒性のある特性を無力にする条件の下、または広い免疫反応を生み出す近縁種であるが危険性のほとんどない生物を使用する条件の下、作られまたは培養された生きた微生物である。それらは、典型的により耐久性のある免疫学的な反応を誘発しそして健康な成人にとって好ましい型である。実例は、黄熱病、麻疹、風疹および流行性耳下腺炎を含む。生結核ワクチンは、感染性の株でないが「BCG」と呼ばれる関連株であり;米国において非常まれに使用される。
【0070】
さらなるワクチン種類の実例:毒素類‐これらは、(微生物自体よりもむしろ)これらが病気を引き起こす場合の不活化された毒素化合物である。毒素類に基づくワクチンの実例は、破傷風、ジフテリアを含む。すべての毒素類が、微生物用のワクチンではない;例えば、ニシダイヤガラガラヘビ(Crotalis atrox)毒素類は、ガラガラヘビ咬傷に対抗して、イヌに接種される。
【0071】
ペプチドワクチン‐例えばインフルエンザM2eペプチドなどの疾患タンパク質由来の抗原性エピトープを含んでいる合成ペプチドである。原則としては、どのペプチドも、単独または複数の複製(1‐20)のいずれかのポリマーを含んでいるアジュバント上に取り込まれることができる。好ましいペプチドは、ポリマーへの結合を可能にするために添加されるリジン残基以外のリジン残基を配列中に含まない。活性部位にリジン残基を含んでいるペプチドのために、システイン残基の側鎖を通じた代替的な結合が使用されてもよい。
【0072】
タンパク質サブユニットワクチン‐免疫機構に不活化したまたは弱毒化した微生物(「全作用(whole agent)」ワクチンを構成する)を導入すると言うよりも、その断片が免疫反応を引き起こす。特徴的な実例は、B型肝炎ウィルス(酵母中で産生される)の表面タンパク質のみから構成される抗B型肝炎ウィルスサブユニットワクチンおよびウィルスの主要なカプシドタンパク質から構成される抗ヒトパピローマウィルス(HPV)ウィルス様中空粒子(VLP)ワクチンを含む。
【0073】
コンジュゲートワクチン‐ある細菌は免疫原性の低い多糖外皮を有する。タンパク質(例えば毒)とこれらの外皮が結合することにより、あたかもそれがタンパク質抗原のように多糖を認識するための誘因とされ得る。この手法は、ヘモフィルスインフルエンザB型菌ワクチンについて使用される。
【0074】
組み換えワクチンは、レシピエントの細胞内の標的病原体の成分をエンコードする遺伝子を導入しおよび発現するための「トロイの木馬」として使用されるベクター(時に無害なウィルス、時にプラスミド)であり、たとえば樹状細胞のような抗原提示細胞内に含まれる。例えば、弱毒化したアデノウィルスベクターは、宿主細胞内の標的病原体(例えば、マラリア、結核、インフルエンザの成分)由来のタンパク質を発現するために使用され、レシピエントをどんな感染性物質にも曝露させることなしに、標的病原体に対抗した免疫反応の産生を付与する。同様の手法が、さまざまなウィルスベクター、とりわけアルファウィルスで使用される。
【0075】
一つの実施態様において、ワクチンは、ワクチンコンジュゲートを形成するために、アジュバント‐ポリマー構築物と結合する。ワクチンの非常に広い範囲は、このように結合してもよくペプチド、脂質、タンパク質、核酸および混合された組成物のワクチンを含む合成ワクチンを含んでもよい。ワクチンは、ウィルス、原虫、線虫、菌類、酵母または細菌を含む多くの標的に由来してもよく、または癌関連抗原に対抗して接種する予定であってもよい。ワクチンおよびポリマー‐アジュバントコンジュゲートの結合は、ワクチン成分の細胞間輸送を増大するための後の細胞との一体化に続く分解のために設計してもよい。そのような分解できる結合は、還元可能な結合、標的関連酵素により分解するための基質である結合の加水分解的に不安定な結合であってもよい。
【0076】
可能なワクチンの範囲は、明確に限定されないが:
・例えば、HおよびNタンパク質並びにM2を含む標準インフルエンザワクチンに使用されるインフルエンザペプチドおよびインフルエンザタンパク質
・gp120、gp41、gag、nefおよびpol由来のエピトープを含む、HIVに由来するペプチド
・HepB表面抗原
・CEA、MUC‐1および5T4のような癌抗原
・炭疽タンパク質、サブユニットおよびペプチド
・ノロウィルスタンパク質およびペプチド
・毒素類(上を参照)
・ペスト(エルシニア ペスティス)の多様な株由来のタンパク質、サブユニットおよびペプチド
・マラリア由来のタンパク質およびペプチド‐例えばスポロゾイト周囲抗原または合成TRAPエピトープストリング
・アデノウィルス、RSウィルス(respiratory syncytial virus)、アルファウィルス、ヘルペスウィルス、ワクシニアウィルス、麻疹、レオウィルスおよびレンチウィルスを含むウィルスおよびウィルス様中空粒子(VLPs)を含む。
【0077】
ポリマー‐アジュバント構築物およびワクチンのコンジュゲーションは、ワクチン上の基と結合できるポリマー‐アジュバント構築物上に一またはそれ以上の反応性基を提供することにより達成される。結合は、共有または例えば静電引力のような他の種類の相互作用によってもよい。典型的に、2以上の反応性基、例えば、少なくとも5の反応性基が、ワクチンおよびポリマー‐アジュバント構築物の間のいくつかの連結を形成するために提供される。
【0078】
ワクチンとポリマー‐アジュバント構築物の間の共有結合の場合、上で詳細に記載した反応性基が使用されてもよい。反応性基の正確な性質は、ワクチン上の利用可能な結合部位に依存するであろう。ウィルスワクチンと使用するための好ましい反応性基であって、ウィルスの表面上の部位と共有結合するであろう基の例は、N‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基、ニトロフェノールエステル(ONp)基およびチアゾリジン‐2‐チオン(TT)基を含む。
【0079】
ワクチンとの静電相互作用の場合、荷電基はワクチンの静電引力を促進するためにポリマー鎖内に取り込まれてもよい。
【0080】
一つの特定の実例において、標的病原体の遺伝子をエンコードするDNAを含んでいるアデノウィルスベクターに基づく組み換えワクチン粒子は、レシピエントの細胞内に病原体タンパク質が発現することに続いて、免疫反応を刺激する能力を増加するために、ポリマー‐アジュバントコンジュゲートで表面コーティング(surface‐coated)されてもよい。これを達成するために、ポリマー‐アジュバントコンジュゲートは、アデノウィルスベクターの表面に結合でき、表面でポリマーと結合しそしてそれによってウィルス粒子の表面上にアジュバントを存在するための基の補体と一緒に産生される。この実施例において、適当な反応性基はウィルス(例えば、NHS、ONP、TT基)または荷電基と共有結合を産生できる基である。
【0081】
ワクチン上の結合部位は、天然であってもよく、または導入されてもよい。結合部位を導入する場合に、これらはポリマー‐アジュバント構築物上の反応性基と相補的であるべきである。例えば、ウィルスベクターは、その表面タンパク質上の特異的な反応性基(フリーチオール基)を発現するために設計されてもよく、そして対応する反応性は、ウィルス粒子と直接共有結合できるためにポリマー‐アジュバント構築物(例えばマレイミド基)内に導入されてもよい。
【0082】
ポリマー‐アジュバント構築物およびワクチンの両方が、複数の相補的反応性基を有するとき、それらの結合の産物は、一緒に凝集または沈殿すらするかもしれない可能性がある。これは、アジュバントワクチンの局所的なデポー製剤を提供するために有用である一方、過度に成分の一つ(通常ポリマー‐アジュバント構築物)を使用することにより、架橋効果が小さくなるかもしれない。代替的に、ポリマー‐アジュバント構築物は、ただ一つの残りの反応性基と産生されてもよく、ワクチンと一価の結合を確実にする。一つの実施態様において、これはセミテレケリック(semitlechelic)反応ポリマーを産生することにより達成されてもよく、この場合それぞれのポリマー分子の一端は、反応性基と誘導体化されそしていくつかのアジュバントはポリマー鎖内に(誘導体化コモノマーとして)取り込まれる。末端の反応性基は、それはアジュバントと反応しないが、ワクチンとの複合物の結合のために使用され得るように選択される。
【0083】
代替的な実施例において、ワクチンとアジュバント‐ポリマー構築物は、医薬的に許容できる担体または賦形剤とともに、単一の組成物内に存在する。さらなる代替的な実施態様において、ワクチンおよびアジュバント‐ポリマー構築物は、二つの別々の組成物を提供するために分けて処方する。この後者の場合、二つの組成物は、同時にまたは別々に患者に投与してもよい。
【0084】
本発明は従って、医薬的に許容できる担体または賦形剤および随意にワクチンとともに、本発明のアジュバント‐ポリマー構築物またはワクチン複合体を含む組成物を提供する。好ましい組成物は、微生物由来の混入物およびパイロジェンを含まない。
【0085】
本発明の組成物は、多様な用量形態で投与用に処方されてもよい。従って、それらは、例えば水溶液または油性の懸濁液として経口により投与できる。本発明の組成物は、皮下静脈内、筋肉内、肋骨内、腹腔内、皮内、経皮、または点滴手法のいずれかの非経口投与用に処方されてもよい。経皮、および筋肉内投与が好ましい。本発明の組成物は、吸入器またはネブライザーを介してエアロゾルの形態で吸入による投与用に処方されてもよい。
【0086】
経口投与用の処方は、例えば、上で示した活性成分と一緒に、可溶化剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾したシクロデキストリン;賦形剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチまたはポテトスターチ;潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばスターチ、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;脱凝集剤、例えばスターチ、アルギン酸、アルギン酸塩またはスターチグリコール酸ナトリウム;発泡混合物(effervescing mixture);染料;甘味料;湿潤剤、レシチン、ポリソルベート、ラウリルサルフェート;および一般的に、医薬品処方において使用される無毒および薬理学的に不活性物質を含んでもよい。
【0087】
経口投与のための脂質分散は、溶解液、シロップ、エマルジョンおよび懸濁液でもよい。溶解液は、可溶化剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリンを含んでもよい。シロップは、担体として、例えばサッカロースまたはグリセリンおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールとサッカロースを含んでもよい。
【0088】
懸濁液またはエマルジョンは、担体として、例えば天然ゴム、アガー、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含んでもよい。筋肉内注射用の懸濁液または溶解液は、活性化合物と一緒に医薬的に許容できる担体、例えば滅菌水、オリーブオイル、オレイン酸エチル、グリコール例えばプロピレングリコール;可溶化剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリン、およびもし所望するなら、適当な量のリドカインヒドロコロイドを含んでもよい。
【0089】
静脈内用または点滴用の溶解液は、担体として、例えば滅菌水および可溶化剤、例えば、シクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリンまたは好ましくは、それらは殺菌、水性、生理食塩液の形態であってもよい、を含んでもよい。
【0090】
本発明のアジュバント‐ポリマー構築物の治療有効量が、対象に投与された。アジュバント多価ディスプレイは、以前に推薦されてきた非ポリマー結合アジュバントよりも低いアジュバント濃度の使用を可能にする。投与されるアジュバントの量は、従って等量または好ましくはポリマーと結合しないが同じアジュバントを使用する対応する処方のための用量以下である。本発明のアジュバント‐ポリマー構築物は、典型的に無毒の量で対象に投与される。ワクチンは、また治療的に有効でそして無毒な量について投与される。
【0091】
本発明のポリマーアジュバント構築物は、医薬の異なる分野の広い範囲についての免疫反応の賦活および刺激に有用である。本発明は、従って感染症、癌および自己免疫疾患の治療および予防のために並びにアレルギーおよび過敏症の治療のために有用である。
【0092】
感染症の例は、ウィルス、細菌、寄生虫および真菌からなる群から選択される病因によって引き起こされる感染症を含む。
【0093】
ウィルス感染症は、季節性インフルエンザ、鳥インフルエンザ、RSウィルス、ヒトパピローマウィルス、ウィルス性肝炎、HIV/AIDS、単純ヘルペス、水痘帯状疱疹、サイトメガロウィルス、デング熱、エボラ出血熱、手足口病、ラッサ熱、麻疹、マールブルグ出血熱、伝染性単核症、エプスタイン‐バーウィルス、流行性耳下腺炎、ノロウィルス、急性灰白髄炎、狂犬病、風疹、SARS、天然痘、西ナイル病、黄熱病、ロタウィルス、日本脳炎、コロラドダニ熱、風邪、ウィルス性脳炎、ウィルス性胃腸炎、ウィルス性髄膜炎、またはウィルス性肺炎であってもよい。
【0094】
細菌感染症は、細菌性髄膜炎、黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)、サルモネラ感染症、細菌性赤痢、カンピロバクター感染症、クラミジア感染、ライム病、肺炎球菌性肺炎、炭疽、ボツリヌス中毒、ブルセラ症、トラコーマ、結核、ネコひっかき病、コレラ、ジフテリア、発疹チフス、淋病、伝染性膿痂疹、レジオネラ症、ハンセン病、レプトスピラ症、リステリア症、類鼻疽、ノカルジア症、百日咳、ペスト、オウム病、Q熱、ロッキー山紅斑熱、猩紅熱、梅毒、破傷風、野兎病、腸チフス、チフス、細菌性尿路感染症、クラミジアトラコマチス、ヘリコバクターピロリーであってもよい。
【0095】
寄生虫感染症は、マラリア、トリパノソーマ症、住血吸虫症、嚢虫症、シャーガス病、ジアルジア症、カラアザール、リーシュマニア症、糸状虫症、アメーバ症、回虫症、バベシア症、肝吸虫症、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、自由生活性アメーバ感染、顎口虫症、小形条虫症、イソスポラ症、横川吸虫症、ハエ幼虫症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、蟯虫感染症、疥癬、テニア症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫症(Trichinellosis)、旋毛虫症(Trichinosis)、鞭虫症、トリコモナス症であってもよい。
【0096】
真菌感染症は、カンジダ症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストプラズマ症、足白癬であってもよい。
【0097】
癌の例は、大腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、乳癌、すい臓癌、卵巣癌、肝臓癌、皮膚癌、メラノーマ、胃癌、小細胞肺癌、サルコーマ、膀胱癌、食道癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、精巣癌、腎細胞癌、上咽頭癌、頭頸部癌、甲状腺癌、グリオーマ、星細胞腫、リンホーマ、白血病、骨髄増殖性疾患、網膜芽細胞腫、胎児性腫瘍または転移癌を含む。
【0098】
自己免疫疾患の例は、関節リウマチ、糖尿病、多発性硬化症、乾癬、クローン病、強直性脊椎炎、グレーブス病、ハシモト病、特発性粘液水腫、ギラン−バレー症候群、全身性エリテマトーデス、免疫性血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、線維筋痛症、重症筋無力症、サルコイドーシス、シューグレン症候群、川崎病、ルーゲーリック病、脱髄疾患、溶血性貧血、自己免疫性動脈炎、自己免疫性大腸炎、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性筋炎、自己免疫関節炎および自己免疫肝炎を含む。
【実施例】
【0099】
実施例1.ポリマー強化型アジュバントとしての使用のための可溶性ポリマー結合用化合物の合成
N‐Pam3Cys‐(N’‐Boc‐2,2’‐(エチレンジオキシ)ジエチルアミン)の合成(1)
【化2】

Pam3Cysを、モノBOC保護化ジアミンにカルボジイミドカップリングすることにより修飾した。Pam3Cys‐OH(95mg、104μmol)を、無水DCM(5ml)に溶解し、そしてPS‐カルボジイミド樹脂(1.33mmol/g、1.38mg、185μmol)に添加し、アルゴン下で5分間振とうした。N‐Boc‐2,2’‐(エチレンジオキシ)ジエチルアミン(33mg、132μmol)を、無水DCM(1ml)に添加し、そして16時間連続して振とうした。TLC(酢酸エチルのみ)では、残存しているPam3Cys‐OHは確認されなかった。樹脂を、ろ過で除去し、そして50mgのPS‐ベンズアルデヒド樹脂を、アミンスカベンジャーとして加えた。溶液を24時間振とうした後、ろ過しそして溶媒を減圧下で除去した。粗固体をカラムクロマトグラフィー(DCM中、0‐20%メタノールで勾配溶出、生産物のRf値0.6)で精製し、そして白色固体として単離した。
【0100】
N‐Pam3Cys‐(2,2’‐(エチレンジオキシ)ジエチルアミン)の合成(2)
【化3】

N‐Pam3Cys‐(N’‐Boc‐2,2’‐(エチレンジオキシ)ジエチルアミン)(83mg、73μmol)を、1/1のDCM/TFA(4ml)に溶解し、そして1時間穏やかに攪拌した。溶媒および過剰の酸を、トルエンとそしてその後ジエチルエーテルとの共沸により除去した。結果物の白色固体を、DCMと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の混合液中で溶解し、そして2時間勢い良く攪拌した。有機層を採取し、そして水相をDCM(2×10ml)で抽出した。抽出物を、纏め、MgSO4上で乾燥しそしてエバポレートし白色固体53mgを産生した。MS(ESI+)では実測1041.8m/zであり、[M+H+]では、1040.8を必要とした。
【0101】
セラミドアナログの合成(3)
セラミドアナログを、図1に示すスキームに従って調製した。
【0102】
実施例2.ポリマー‐コンジュゲートアジュバントの生産
複数のペンダントアミノ‐、ヒドロキシル‐、またはチオール‐反応性基を有するポリ[N‐(2‐ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]などの親水性ポリマーを、例えばN‐Pam3Cys‐(2,2’‐(エチレンジオキシ)ジエチルアミン)(2)などの免疫刺激分子または(3)などのセラミドアナログを有するように修飾できる。この例は、ポリ[HPMA][MA‐GG‐TT]の合成およびセラミドアナログとのそのコンジュゲーションに記載する(3)。
【0103】
多価アミノ反応性親水性コポリマーの合成
ポリ[N‐(2‐ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド3‐(N‐メタクリロイルグリシルグリシル)チアゾリジン‐2‐チオン]の合成
HPMA(1.00g、6.99mmol)、MA‐GG‐TT(234mg、0.77mmol)およびAIBN(200mg、1.21mmol)を全量10mlになるように無水DMSOに溶解した(約12.5質量%モノマー)。溶液を、アルゴンバブリングにより20分間脱気後、フラスコを密封し、そして60℃のオイルバス中で、6時間穏やかに攪拌した。この後、溶液をアセトン/エーテル(3/1)の無水混合液に滴加することにより、ポリマーを沈殿させた。当該粉を、遠心分離(15分、3000rpm)により分離し、アセトン/エーテル中で再懸濁、遠心分離および続いて真空下で乾燥した。TT含量を、メタノール中で紫外〜可視分子分光法(UV‐Vis.spectroscopy)により測定した。
【0104】
アミノを有するアジュバントの多価アミノ反応性コポリマーへの結合
コポリマーへのアジュバントの共有結合を、無水ジメチルスルホオキシド中で混合することにより得た。ポリマーコンジュゲートを、その後沈殿しそして乾燥した。余剰の反応性基を、加水分解により除き、そしてポリマーコンジュゲートを、透析により精製し、そして凍結乾燥した。結果物のコンジュゲートの構造を、図2に示す。
【0105】
実施例3.ワクチンとポリマー結合アジュバントの結合
この例について、ポリマー結合セラミド誘導体を、B型肝炎ウィルスのXタンパク質由来のペプチドであり細胞傷害性T細胞により認識されることが知られるAMSTTDLEAに結合した。
【0106】
セラミド‐ポリマーコンジュゲートを、反応条件および試薬の相対濃度は、沈殿時のポリマー上の自由反応性基の約1mol%を維持するために、反応時間、温度、および試薬の濃度の効果を比較することで至適化することを除き、以前の例で記載したように合成した。この物質を、乾燥し貯蔵した。
【0107】
GGGAMSTTDLEA構造を有し、ブロックされているカルボキシ末端およびフリーのアミノ末端を有するオリゴペプチドを、固相樹脂から切断により産生した。オリゴペプチドを、DMFに溶解し、そして1mol%反応性TT基を有するポリマー‐セラミドコンジュゲートと完全に反応させた。この試薬を、その後沈殿し、透析し、そして−20℃で貯蔵した。
【0108】
実施例4.正電荷ポリマーの、生分解結合を介したセラミドアジュバントへの、そしてオリゴペプチドワクチンへの結合
この例において、N‐(2‐ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)に基づくコポリマーは、四級アンモニウム基を有するモノマー(重合混合物中1.5mol%)およびチアゾリジン基で末端化されたジスルフィドを有する側鎖(生産物中3.4mol%、アジュバント中およびワクチン中の第一級アミンと反応するための)を含む。反応性ポリマーの構造を、図3aに示す。
【0109】
反応性ポリマーを他で記載したように、合成しそして特徴決定した(Subr V,Kostka L,Selby‐Milic T,Fisher K,Ulbrich K,et al.(2009)Coating of adenovirus type5 with polymers containing quaternary amines prevents binding to blood components.J Control Release 135:152‐158.)。それは、重量平均分子量77,200および数平均分子量32,200である。
【0110】
セラミドを、上に記載されるように結合し、1mol%チアゾリジン基が、これに続くペプチド抗原への共有結合を可能にするように、反応しないまま残す。この例において、ペプチド抗原は、肝炎ウィルスX抗原に由来し、そしてブロックされたカルボキシ末端およびフリーのアミノ末端を有する構造:GGGAMSTTDLEAを有する(図3b参照)。
【0111】
実施例5.ナノゲル結合アジュバントの調製
ナノゲルコア粒子を、以前報告したようにフリーラジカル沈殿重合により合成した(Blackburn et al.,Colloid Polym Sci.2008;286(5):563‐569)。熱相分離ポリマーの使用により、高単分散ナノゲルの合成用の沈殿重合の使用が可能となる。モル組成は、140mMの全モノマー濃度で、98%N‐イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAm)、2%N,N’‐メチレンビス(アクリルアミド)(BIS)である。溶液は、共焦点顕微鏡を介して視覚化するための蛍光性をナノゲルに付与するために、また少量(約0.1mM)のアクリルアミドフルオレセイン(AFA)を有する。典型的な合成において、NIPMAm、BIS、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS、全濃度8mM)のろ過された水性溶液100mlを、反応フラスコに加え、その後70℃に加熱した。溶液を、窒素ガスで置換し、そして温度が安定になるまで勢い良く攪拌した。AFAを加え、そして10分後、反応液中のAPSの終濃度が〜8mMになるように800mM過硫酸アンモニウム(APS)溶液1mlを加えることにより反応を開始した。溶液が濁ると、成功した開始を示す。反応を、窒素封入下で4時間続けても差し支えない。合成後、反応液を、少量の凝固物を除去するためワットマン濾紙でろ過した。
【0112】
コアナノゲル溶液10mlと0.0577gのSDSを、三口丸底フラスコに最初に加えそして窒素ガス下、70℃で熱した。97.5%NIPMAm、2%BIS、および0.5%N‐グリセルメタアクリルアミドのモル比を有する50mMモノマー溶液を、蒸留水39.5ml中に調製した。溶液を三口丸底フラスコに加え、そして連続的な攪拌の間、温度を70℃に安定した。0.05MのAPSの一定量0.5mlにより、反応を開始した。反応を、窒素ガス下で4時間続行した。合成の後、溶液をワットマン濾紙でろ過し、そしてナノゲルを遠心分離により精製した後、蒸留水に再懸濁した。
【0113】
アミン結合アジュバントとナノゲルコアのコンジュゲーション
酸官能基化ナノゲルを、最初にジシクロヘキシルカルボジイミドを使用してN‐ヒドロキシスクシンイミドを用いて酸官能基を活性化することにより、アミンを有するアジュバントと結合した。精製の後、アミンを有するアジュバントの添加は、ナノゲル表面と直接的に反応した。
【0114】
実施例6.HPMAコポリマーと結合したTLR2アゴニストPam3CysのNfkB‐ルシフェラーゼレポーター細胞を使用するインビトロでの活性評価
ポリマー‐Pam3Cysコンジュゲートのアジュバント活性を、NfkBプロモーター(U937‐luc)の制御下ルシフェラーゼを含むプラスミドに感染させたTHP‐1細胞をインビトロで使用して評価した。100ng/mlのLPS、100ng/mlのPam3Cys、100ng/mlのpHPMAまたは100ng/mlのpHPMA‐Pam3Cycに暴露する前に、U‐937luc細胞を、1e6/mlの濃度に培養した。8時間後細胞をペレットにし、溶解しそしてルシフェラーゼの発現を評価した(図4)。この研究において、使用したHPMAコポリマーは、約20kDaの平均分子量であり、そして5.22質量%Pam3Cysを含む(GCMS)。HPMAを、グリシン‐グリシンスペーサーによりPam3Cysと結合した。ポリマー結合アジュバントを、実施例1および2に記載した技術に従って調製した。データは、この物質のたった5.22ngがPam3Cysにも関わらず、Pam3Cys‐HPMA100ngからのルシフェラーゼシグナルが、Pam3Cysのみよりも24.1倍高いことを示した。分子あたりのPam3Cysの比活性は、ポリマーにより提供された場合、24.1×19.2の計算で、462倍高くなる。
【0115】
実施例7.マウス骨髄由来樹状細胞(BMDCs)を使用するHPMAと結合したTLR2アゴニストPam2Cysのインビトロ評価
BMDCsは、IL‐8を含む炎症性サイトカインの発現の結果としてTLR2アゴニストと反応することが知られている。本発明者らは、HPMAと結合する時のPam2Cysの作用強度を説明するために、このモデルを使用した。この実施例において、ポリマーは約80kDaでありそして5質量%Pam2Cysと一緒に調製した。グリシン‐グリシンスペーサーによりHPMAをPam2Cysと結合した。ポリマー結合アジュバントを、実施例1および2に記載の技術に従って調製した。BMDCsを、24時間、50ng/mlPam2Cysまたはポリマー結合Pam2Cysに暴露した。その後、上清を採取そしてELISAによりIL‐8の発現を測定した。図5は、HPMA上のPam2Cysの複数提示が、結果、それ自体のPam2Cysと比例して20倍低い量のリガンドとより高いレベルの樹状細胞活性を起こすことを示す。
【0116】
実施例8.ポリマー(HPMA)骨格を伴う抗原ペプチド(インフルエンザM2e)およびTLRアゴニスト(Pam3Cys)表示からなるワクチンコンジュゲート
インフルエンザM2eペプチド(SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSD)は、ウィルスの異なる株を超えて高度に保存される表面抗原である。それ自体乏しい免疫原性であるが、M2eは、しばしばアジュバントと共投与される。この実施例において、5質量%Pam3CysおよびペンダントGSGS側鎖上の1mol%自由反応性TT基を有する多価ポリHPMAを、オリゴペプチドのフリーのアミノ末端と(DMSO中で)完全反応した。フリーのオリゴペプチドを、カラムクロマトグラフィーにより除去した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3またはそれ以上のアジュバントと共有結合するポリマー骨格を含むアジュバント‐ポリマー構築物(construct)であって、3またはそれ以上のアジュバントが同一または相違し、そしてペンダント側鎖中にそれぞれ存在し、当該アジュバントが、直接的にまたはスペーサー基を介してのいずれかでポリマー骨格と結合している、前記構築物。
【請求項2】
前記ポリマー骨格が実質的にアジュバント活性を持たない、請求項1に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項3】
前記ポリマー骨格が少なくとも部分的に水溶性である、請求項1または2に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項4】
前記ポリマー骨格が、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチリルモノマー、ビニルモノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー、シアル酸モノマー、マンノースモノマー、N‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐グルタミン(HEG)モノマー、およびエチレングリコール‐オリゴペプチドモノマーから選択されるモノマー単位に基づく、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項5】
前記ポリマー骨格が、N‐2‐ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、N‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐グルタミン(HEG)、およびエチレングリコールから選択されるモノマー単位に基づくか、あるいはポリシアル酸またはポリマンナンポリマーである、請求項4に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項6】
前記アジュバントが、同一または相違し、そしてリポグリカン、リポ多糖、リポテイコ酸、ペプチドグリカン、合成リポタンパク質、チモサン、グリコリピド、ポリイノシン‐ポリシチジル酸、モノホスホリルリピドA、フラジェリン、イミダゾキノリン化合物、グアノシン、TNF‐α(またはペプチドの)、IL‐2、IL‐4、IL‐8、CD40、OX40、GM‐CSFおよび細菌DNA中のCpG含有配列または合成オリゴヌクレオチドから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項7】
前記ポリマー骨格および/またはスペーサー基(1または複数)が分解可能な結合を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項8】
前記ポリマーの重量平均分子量が5〜40kDaである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項9】
前記ポリマー骨格が、直接的またはスペーサー基を介してのいずれかで、10〜50のアジュバントと共有結合する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項10】
前記ポリマーが、分岐ポリマー、例えばデンドリマーまたは櫛型ポリマーである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項11】
前記ポリマーが、ハイドロゲルを形成するように架橋する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項12】
前記構築物がワクチンコンジュゲートを提供するためにワクチンと結合する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物。
【請求項13】
前記請求項1〜12のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物および医薬的に許容できる担体または賦形剤を含む、組成物。
【請求項14】
前記請求項1〜11のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物、医薬的に許容できる担体または賦形剤を含み、そしてさらにワクチンを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記請求項1〜12のいずれか一項で規定したようなアジュバント‐ポリマー構築物のあるいは前記請求項13または14で規定したような組成物の有効で、無毒な量を患者に投与することを含む、これを必要とする患者の免疫反応を刺激しまたは賦活するための方法であって、アジュバント‐ポリマー構築物または組成物が、ワクチンを含まないとき、当該方法がさらにワクチンの有効でそして無毒な量を前記患者に投与するための工程を含む、前記方法。
【請求項16】
免疫反応を刺激するまたは賦活する方法について使用するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載のアジュバント‐ポリマー構築物または請求項13または14に記載の組成物。
【請求項17】
前記アジュバント‐ポリマー構築物または組成物が、ワクチンを含まず、そして免疫反応を刺激するまたは賦活する前記方法が、追加的にワクチン投与を含む、請求項16に記載のアジュバント‐ポリマー構築物または組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−526092(P2012−526092A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509087(P2012−509087)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000915
【国際公開番号】WO2010/128303
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511140611)サイオクサス セラピューティクス リミティド (3)
【Fターム(参考)】