説明

多周波数共用アンテナ及びアンテナ装置

【課題】多周波共用アンテナを小型化する。
【解決手段】それぞれ異なる周波数で共振する複数のアンテナ素子を備えた多周波共用アンテナが、複数のアンテナ素子として、ダイポール素子12,13と、ループ状のアンテナ素子11と、を備えている。ループ状のアンテナ素子11は、複数のアンテナ素子のうち少なくとも最も低い周波数で共振するアンテナ素子である。ダイポール素子12,13は、ループ状のアンテナ素子11の外周側に配置され、ループ状のアンテナ素子11の内周側には非配置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多周波数共用アンテナ及びアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体通信等では、通信に使用される周波数帯として、800MHz帯、2.0GHz帯などの複数の周波数帯が割り当てられている。このため、1本のアンテナを複数の周波数で共用できれば有利である。特許文献1には、1本のアンテナを複数の周波数で共用できる多周波共用アンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−229337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の多周波共用アンテナは、それぞれ異なる周波数の電波を放射する複数のダイポール素子を有している。ダイポール素子は、素子長(ダイポール素子の長手方向長さ)として、通信周波数における1/2波長程度の長さを必要とする。
このため、複数のダイポール素子を有する多周波共用アンテナでは、ダイポール素子の素子長手方向において、通信に使用される複数の周波数における最大波長の1/2波長程度の長さを持つことになり、大型化しやすい。アンテナが大きくなると受風面積(荷重)が大きくなり、アンテナ取付支柱も強固なものが必要となるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来に比べて、小型化が可能な多周波共用アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、それぞれ異なる周波数で共振する複数のアンテナ素子を備えた多周波共用アンテナであって、前記複数のアンテナ素子として、ダイポール素子と、ループ状のアンテナ素子と、を含み、前記ループ状のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子のうち少なくとも最も低い周波数で共振するアンテナ素子であり、前記ダイポール素子は、前記ループ状のアンテナ素子の外周側に配置され、前記ループ状のアンテナ素子の内周側には非配置であることを特徴とする多周波共用アンテナである。
【0007】
複数のアンテナ素子をダイポール素子だけで構成した場合、最も低い周波数で共振するアンテナ素子が、大型化の原因となり、およそ1/2波長の大きさを持つことになる。一方、本発明によれば、大型化の原因となる最も低い周波数で共振するアンテナ素子を、ループ状のアンテナ素子で構成したため、小型化が可能である。
【0008】
(2)給電点から延びて形成され、前記複数のアンテナ素子それぞれに接続される線路を備え、前記線路は、前記ループ状のアンテナの内周側に設けられた給電点から、前記ループ状のアンテナ素子に至る第1線路と、前記第1線路を前記ループ状のアンテナ素子の外周側に延長させてダイポール素子に至るように形成された第2線路と、を備えているのが好ましい。この場合、アンテナの構成を簡素化できる。
【0009】
(3)前記ダイポール素子、前記ループ状のアンテナ素子、及び前記線路は、同一基板上に形成されているのが好ましい。
【0010】
(4)前記複数のアンテナ素子の背後に設けられた反射板と、前記反射板と前記ダイポール素子との間に配置された無給電素子と、を更に備えるのが好ましい。
【0011】
(5)他の観点からみた本発明は、前記(1)項記載の多周波共用アンテナを用いた水平偏波用の第1多周波共用アンテナと、前記(1)項記載の多周波共用アンテナを用いた垂直偏波用の第2多周波共用アンテナと、を備え、前記第1多周波共用アンテナは、垂直偏波は反射させないが水平偏波を反射させるよう形成された第1反射板を備え、前記第2多周波共用アンテナは、水平偏波は反射させないが垂直偏波を反射させるよう形成された第2反射板を備え、前記第1多周波共用アンテナ及び前記第2多周波共用アンテナは、前記第1反射板及び第2反射板の前後方向位置を異ならせることで、重なり合って配置されていることを特徴とするアンテナ装置である。この場合、前記多周波共用アンテナを重ねて配置することができる。
【0012】
(6)前記第1多周波共用アンテナのループ状のアンテナ素子は、そのループの途中に電気的に切断された第1切断部を有し、前記第2多周波共用アンテナのループ状のアンテナ素子は、そのループの途中に電気的に切断された第2切断部を有しているのが好ましい。
この場合、第1多周波共用アンテナ及び第2多周波共用アンテナの各ループ状のアンテナ素子のうち、一方のループ状のアンテナ素子に電流を流したときに、その電流の流れによって他方のループ状のアンテナ素子に誘導電流が流れるのを切断部により抑制することができる。これにより、第1多周波共用アンテナと第2多周波共用アンテナとが誘導電流により相互に干渉するのを抑制することができる。
【0013】
(7)前記第1多周波共用アンテナは、給電点から互いに異なる方向に延びるとともに互いに同一長さに形成され、かつ前記ループ状のアンテナ素子において互いに異なる箇所に接続される一対の線路素子を備え、前記第2多周波共用アンテナは、給電点から互いに異なる方向に延びるとともに互いに同一長さに形成され、かつ前記ループ状のアンテナ素子において互いに異なる箇所に接続される一対の線路素子を備え、前記第1多周波共用アンテナの一対の線路素子のうち、一方の線路素子と前記ループ状のアンテナ素子との接続点から前記第1切断部までの経路長さと、他方の線路素子と当該ループ状のアンテナ素子との接続点から当該第1切断部までの経路長さとが略同一長さに設定され、前記第2多周波共用アンテナの一対の線路素子のうち、一方の線路素子と前記ループ状のアンテナ素子との接続点から前記第2切断部までの経路長さと、他方の線路素子と当該ループ状のアンテナ素子との接続点から当該第2切断部までの経路長さとが略同一長さに設定されているのが好ましい。
この場合、第1及び第2切断部は、給電点から一方の線路素子を通過して第1及び第2切断部に至る経路長さと、給電点から他方の線路素子を通過して第1及び第2切断部に至る経路長さとが略同一長さとなる位置、すなわち元々電流が流れない位置にあるため、第1及び第2多周波共用アンテナは、切断部を有していても、切断部を有していない場合と同等のアンテナ特性を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多周波共用アンテナの小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る多周波共用アンテナの斜視図である。
【図2】第1実施形態のアンテナ本体の側面図である。
【図3】第1比較例に係る多周波共用アンテナの斜視図である。
【図4】第1実施形態のアンテナのVSWR特性である。
【図5】第1実施形態のアンテナの水平面指向性である。
【図6】第1比較例のアンテナのVSWR特性である。
【図7】第1比較例のアンテナの水平面指向性である。
【図8】第2実施形態に係る多周波共用アンテナの斜視図である。
【図9】第2実施形態のアンテナの模式的な側面図である。
【図10】第2実施形態のアンテナのVSWR特性である。
【図11】第2実施形態のアンテナの水平面指向性である。
【図12】第3実施形態の多周波共用アンテナの斜視図である。
【図13】第3実施形態のアンテナの模式的な側面図である。
【図14】第4実施形態のアンテナの模式的な側面図である。
【図15】第5実施形態のアンテナの模式的な側面図である。
【図16】アンテナ装置(第6実施形態)の斜視図である。
【図17】比較例の模式的な平面図である。
【図18】水平偏波用の第1多周波共用アンテナの斜視図である。
【図19】水平偏波用の第1多周波共用アンテナのVSWR特性である。
【図20】水平偏波用の第1多周波共用アンテナの水平面指向性である。
【図21】垂直偏波用の第2多周波共用アンテナの斜視図である。
【図22】アンテナ装置(第7実施形態)の斜視図である。
【図23】水平偏波用の第1多周波共用アンテナの斜視図である。
【図24】垂直偏波用の第2多周波共用アンテナの斜視図である。
【図25】水平偏波用の第1多周波共用アンテナの反射特性である。
【図26】垂直偏波用の第2多周波共用アンテナの反射特性である。
【図27】水平偏波用の第1多周波共用アンテナの水平面指向性である。
【図28】水平偏波用の第1多周波共用アンテナの垂直面指向性である。
【図29】垂直偏波用の第2多周波共用アンテナの水平面指向性である。
【図30】垂直偏波用の第2多周波共用アンテナの垂直面指向性である。
【図31】本発明の他の実施形態を示す多周波共用アンテナの斜視図である。
【図32】図31の変形例を示す多周波共用アンテナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
[1.第1実施形態及び第1比較例]
図1及び図2は、第1実施形態に係る多周波共用アンテナ1を示している。この多周波共用アンテナ1は、携帯電話などの移動端末との間で無線通信を行う基地局のアンテナ(送受信アンテナ)として好適に用いられる。なお、第1実施形態のアンテナ1は、水平偏波用であるが、垂直偏波用として用いることも可能である。
【0018】
多周波共用アンテナ1は、複数のアンテナ素子(放射素子)11,12,13を有するアンテナ本体10、複数のアンテナ素子11,12,13を有するアンテナ本体10の給電点15へ給電する給電部20、及び、アンテナ本体10の背後に設けられた反射板30を備えている。なお、給電部20は、反射板30の背後から反射板30を貫通して、給電点15に至るように配置される。
【0019】
複数のアンテナ素子11,12,13としては、800MHz、1.5GHz、2.0GHzの3つの周波数で共振し、それらの周波数の電波を放射するため、3種類設けられている。なお、アンテナ素子の数は、複数であれば特に限定されるものではない。
【0020】
複数のアンテナ素子11,12,13のうち、最も低い周波数(800MHz)に対応した第1アンテナ素子11は、ループ状のアンテナ素子(ループアンテナ素子)として形成されている。このループアンテナ素子11は、1波長ループアンテナである。つまり、第1アンテナ素子11の周長(ループ1周分の長さ)は、800MHzの約1波長(λ800M=356mm)分の長さを有している。
図示のループアンテナ素子11は、矩形状のループとして形成されており、短辺11aの長さが60mm、長辺11bの長さが118mmに設定されている。
なお、ループアンテナ素子11の具体的形状やその寸法は、特に限定されるものではなく、円形状又は楕円状のループなどの他の形状を採用することもできる。
【0021】
アンテナ本体10は、ループアンテナ素子である第1アンテナ素子11の内側(第1アンテナ素子11のほぼ中央)に、給電点15を有している。給電点15には、給電部(給電線)20が接続される。図示の給電線20は、平行2線タイプであるが、同軸ケーブルなどであってもよい。なお、給電部20では、複数の周波数の信号が、混在した状態で流れる。
図2に示すように、アンテナ本体10を構成するアンテナ素子11,12,13、給電点15、及び後述の線路16は、図2に示すように、平面状の基板10a上に形成されている。なお、図1では、基板10aは省略されている。
【0022】
複数のアンテナ素子11,12,13における他のアンテナ素子である第2及び第3アンテナ素子12,13は、ダイポール素子として形成されている。
【0023】
第2アンテナ素子12は、1.5GHzの周波数に対応したものである。第2アンテナ素子12は、ループアンテナ素子11である第1アンテナ素子11の両側に対をなして配置されている。ダイポール素子である第2アンテナ素子12は、その長手方向長さ(素子長)が、1.5GHzの波長(λ1.5G)の約1/2(=λ1.5G/2=102mm)である。
【0024】
第3アンテナ素子13は、2.0GHzの周波数に対応したものである。第3アンテナ素子13も、第1アンテナ素子11の両側に対をなして配置されている。ダイポール素子である第3アンテナ素子13は、その長手方向長さ(素子長)が、2.0GHzの波長(λ2.0G)の約1/2(=λ2.0G/2=78mm)である。
第3アンテナ素子13は、ループ状の第1アンテナ素子11と、ダイポール素子である第2アンテナ素子12との間に配置されている。
【0025】
アンテナ本体10は、給電点15から各アンテナ素子11,12,13に向けて延び、各アンテナ素子11,12,13に接続される線路16を備えている。線路16は、給電点15を起点として、アンテナ本体10の最外に位置する対の第2アンテナ素子12,12それぞれにまで至る。本実施形態の線路16は、直線状に形成されている。
線路16の全長(一方の第2アンテナ素子12から他方の第2アンテナ素子12までの長さ=第2アンテナ素子12,12の素子間隔)は、λ1.5G/2=102mmである。なお、給電点15から一方の第2アンテナ素子12までの長さ、及び、給電点15から他方の第2アンテナ素子12までの長さは、λ1.5G/4=51mmである。
【0026】
対の第3アンテナ素子13は、それぞれ、線路16上における、給電点15からλ2.0G/4=42mmの位置に設けられている。つまり、一方の第3アンテナ素子13から他方の第3アンテナ素子13までの長さ(第3アンテナ素子13,13の素子間隔)は、λ2.0G/2=84mmである。
【0027】
ループ状の第1アンテナ素子11は、複数のダイポール素子12,13のうち最も高い周波数(2.0GHz)に対応した対の第3アンテナ素子13,13の間に設けられている。
対の第3アンテナ素子13,13の間に設けられている矩形ループ状の第1アンテナ素子11は、その矩形短辺11aに沿った方向と、線路16の長手方向と、が一致するように形成されている。そして、矩形短辺11aの長さは、前述のように60mmである。
なお、線路16の長手方向に沿ってみたときに、給電点15からループ状の第1アンテナ素子11における対向する2点16c,16cそれぞれまでの距離は、矩形状ループの短辺の長さの1/2=30mmに等しい。
【0028】
第1実施形態の多周波共用アンテナ1のアンテナ本体10の全体の大きさは、線路16の長手方向に関しては、線路16の全長(第2アンテナ素子12,12の素子間隔=λ1.5G/2=102mm)で規定され、線路16の長手方向に直交する方向に関しては、矩形ループ状の第1アンテナ素子11の長辺長さ(=118mm)で規定される。
【0029】
仮に、800MHz、1.5GHz、2.0GHzの3つの周波数用のアンテナ素子をすべてダイポール素子で構成した場合、図1及び図2における対の1.5GHz用ダイポール素子(第2アンテナ素子)12,12のさらに両外側に、800MHz用ダイポール素子を設ける必要がある。
したがって、線路16の全長は、対をなす800MHz用ダイポール素子同士の間隔に等しくなる。その間隔は、λ800M/2=178mmであり、第1実施形態の線路16よりも長くなる。
また、800MHz用ダイポール素子の素子長は、λ800M/2=178mmであり、複数のダイポール素子の中で最も長くなる。
【0030】
したがって、複数のアンテナ素子をすべてダイポール素子で構成した多周波共用アンテナの場合、その大きさを規定するのは、800MHz用ダイポール素子の素子間隔と素子長となり、いずれも、λ800M/2=178mmである。その結果、多周波共用アンテナが大型化する。
【0031】
これに対し、第1実施形態の多周波共用アンテナ1では、複数のアンテナ素子をすべてダイポール素子で構成した多周波共用アンテナの場合において、その大きさを規定することとなる800MHz用のダイポール素子を廃止したため、小型化されている。
つまり、大型化の原因となる最小周波数(ここでは、800MHz)用のアンテナ素子11として、第1実施形態の多周波共用アンテナ1では、ダイポール素子ではなく、ループアンテナを用い、ダイポール素子12,13の内側に配置した。
これにより、線路16の長手方向両端に位置するはずの800MHz用ダイポール素子が存在しない分、線路16の長手方向におけるアンテナ本体10の大きさを小さくできる。
【0032】
また、第1実施形態のアンテナ1においても、線路16の長手方向に直交する方向における大きさを規定するのは、800MHz用の第1アンテナ素子11であるが、その長さは、矩形状の第1アンテナ素子11の長辺の長さである118mmである。これは、800MHzダイポール素子の素子長=178mmよりも短く、小型化されている。
【0033】
なお、矩形状の第1アンテナ素子11における短辺11aと長辺11bの長さの設定の仕方によっては、第1実施形態のアンテナ1において、線路16の長手方向に直交する方向における大きさを規定するのは、ダイポール素子12,13のなかで最も低い周波数(ここでは、1.5GHz)用の第2アンテナ素子12の素子長となることもある。
例えば、矩形状の第1アンテナ素子11の長辺(線路16に直交する辺)の長さを、第2アンテナ素子12の素子長λ1.5G/2=102mmよりも小さく設定した場合には、第2アンテナ素子12の素子長が、アンテナ1において、線路16の長手方向に直交する方向における大きさを規定することになる。
【0034】
対のダイポール素子13の間に配置されるループ状の第1アンテナ素子11は、ループ状でさえあれば、その形状は問われないため、設計の自由度が高く、有利である。
しかも、最も高い周波数(ここでは、2.0GHz)用の対のダイポール素子13の間隔が、狭い場合であっても、第1アンテナ素子11を、最も高い周波数用の対のダイポール素子13の間に配置することが可能である。
つまり、第1アンテナ素子11の形状として、線路16の長手方向における長さが比較的小さく、線路16の長手方向に直交する方向における長さが比較的大きくなる形状とすることで、最も高い周波数用の対のダイポール素子13の間隔が狭くても、それらのダイポール素子13の間にループ状のアンテナ素子11を配置することができる。
【0035】
より、具体的には、第1アンテナ素子11は、図1及び図2に示す矩形状のほか、短軸が線路16の長手方向にほぼ一致し、長軸が線路16の長手方向に直交する方向にほぼ一致する形状などとすることができる。
ただし、最も高い周波数(ここでは、2.0GHz)用の対のアンテナ素子13の間隔が、十分に広い場合には、線路16の長手方向における長さが比較的大きく、線路16の長手方向に直交する方向における長さが比較的小さくなる形状とすることも可能である。
【0036】
ここで、線路16のうち、給電点15からループ状の第1アンテナ素子11に至るまでの部分を第1線路16aというものとし、第1アンテナ素子11から第2アンテナ素子12に至るまでの部分を第2線路16bというものとする。
第1線路16aは、ループ状の第1アンテナ素子11の内周側に位置する給電点15から第1アンテナ素子11に至るために必要な線路である。
また、線路16全体は、給電点15から各ダイポール素子12,13に至るために必要な線路である。
【0037】
第1実施形態では、給電点15から各ダイポール素子12,13に至るために必要な線路16として、給電点15からループ状の第1アンテナ素子11に至るために必要な第1線路16aが利用されている。さらに、給電点15から各ダイポール素子12,13に至るために必要な線路16は、この第1線路16aを第1アンテナ素子11の外周側に延長した第2線路16bを形成することで構成されている。
つまり、第1実施形態では、給電点15から各ダイポール素子12,13に至るために必要な線路16の一部が、給電点15からループ状の第1アンテナ素子11に至るために必要な第1線路16aとして兼用されている。この結果、多周波共用アンテナ1の構成が簡素化されている。
【0038】
図3は、第1比較例に係る多周波共用アンテナ1を示している。第1実施形態及び第1比較例が相違する点は、矩形状の第1アンテナ素子11の形状である。第1比較例では、矩形状の第1アンテナ素子11は、正方形(89mm×89mm)に形成されている。第1比較例の第2アンテナ素子12の配置及び形状は第1実施形態と同様である。一方、第1比較例における2.0GHz用の対の第3アンテナ素子13,13が、矩形ループ状の第1アンテナ素子11の内周側に位置している。なお、第1比較例において、対の第3アンテナ素子13,13の素子間隔は84mmである。
【0039】
図4は、第1実施形態の多周波共用アンテナ1のVSWR特性を示し、図5は、第1実施形態の多周波共用アンテナ1の水平面指向性を示している。
また、図6は、第1比較例の多周波共用アンテナ1のVSWR特性を示し、図7は、第1比較例の多周波共用アンテナ1の水平面指向性を示している。
【0040】
図4に示すように、第1実施形態では、各周波数帯(800MHz帯、1.5GHz帯、2.0GHz帯)において、VSWRが2.00の近傍又はそれ以下となっており、アンテナとして良好な特性が得られている。一方、図6に示すように、第1比較例では、各周波数帯でVSWRが悪化している。
また、図5及び図7の比較から明らかなように、第1比較例では、ループ状の第1アンテナ素子11の内側に位置する第3アンテナ素子13についての0度方向の利得が、第1実施形態に比べて低下している。
【0041】
つまり、第1比較例のように、ループ状の第1アンテナ素子11の内側にアンテナ素子13を配置させると、アンテナ1の特性が劣化するのに対し、第1実施形態のように、ループ状の第1アンテナ素子11の内側には、他のアンテナ素子を非配置とし、外側だけに配置することで、良好な特性が得られる。
【0042】
[2.第2実施形態:無給電素子付アンテナ]
図8及び図9は、第2実施形態に係る多周波共用アンテナ1を示している。第2実施形態のアンテナ1は、第3アンテナ素子13と反射板30との間に、無給電素子41を配置したものである。図9に示すように、無給電素子41は、基板43上に形成されている。その基板43は、反射板30に取り付けられた支持部44によって、反射板30から所定の間隔をもって支持されている。なお、図8では、基板43及び支持部44は省略した。
第2実施形態において(第1実施形態も)、アンテナ本体10と反射板30との間隔は、800MHz用の第1アンテナ素子11が800MHz用であることを考慮して、70mmに設定されている(なお、理論的に適切な間隔は、λ800M/4=89mm)。
ここで、アンテナ本体10は、平坦な基板10aに設けられているため、第1アンテナ素子11以外の第2アンテナ素子12及び第3アンテナ素子13と、反射板30との間隔も70mmとなっている。しかし、この間隔は、第2アンテナ素子12及び第3アンテナ素子13にとっては、あまり適切な間隔ではない。
【0043】
そこで、図8及び図9に示すように、第3アンテナ素子13の背後に無給電素子41を配置することで、無給電素子41が第3アンテナ素子13の反射板として機能し、アンテナ1の特性が向上する。第3アンテナ素子13と無給電素子41との間隔は、例えば、λ2.0G/4に設定することができる。
第2実施形態では、図11に示すように、背後に無給電素子41を有する第3アンテナ素子(2.0GHz用)13についての0度方向の利得が向上していることがわかる。
また、無給電素子41は、第2アンテナ素子(1.5GHz用)12の反射板としても機能し得るため、図10に示すように、1.5GHz帯のVSWRが改善している。
【0044】
なお、第2実施形態において説明を省略した点は、第1実施形態と同様である。
【0045】
[3.第3実施形態:無給電素子付アンテナ]
図12及び図13は、第3実施形態に係る多周波共用アンテナ1を示している。第3実施形態のアンテナ1は、第3アンテナ素子13と反射板30との間の無給電素子41に加えて、第2アンテナ素子12と反射板30との間にも、無給電素子42を配置したものである。第2アンテナ素子12と無給電素子42との間隔は、例えば、λ1.5G/4に設定することができる。図13に示すように、両無給電素子41,42は、基板43a,43b上に形成されている。
【0046】
第2アンテナ素子12の背後に配置された無給電素子42は、第2アンテナ素子12の反射板として機能する。第1の無給電素子41は、第1の基板43a上に形成され、第2の無給電素子42は、第2の基板43b上に形成されており、各基板43a,43bは支持部44によって支持されている。第3実施形態においても、第1実施形態よりもアンテナ特性を改善することが可能である。
なお、第3実施形態において、説明を省略した点については、第1又は第2実施形態と同様である。
【0047】
[4.第4実施形態]
図14は、第4実施形態に係る多周波共用アンテナ1を示している。第1実施形態のアンテナ1では、同一平面内に第1〜第3アンテナ素子11,12,13が配置されていたが、第4実施形態では、各アンテナ素子11,12,13の周波数に応じて、反射板30から各アンテナ素子11,12,13までの距離が異なっている。これにより、第2及び第3実施形態のように無給電素子を設けなくても、良好なアンテナ特性が得られる。
なお、反射板30から各アンテナ素子11までの距離は、例えば、第1アンテナ素子11についてはλ800M/4、第2アンテナ素子12についてはλ1.5G/4、第3アンテナ素子13についてはλ2.0G/4に設定される。
【0048】
[5.第5実施形態]
図15は、第5実施形態に係る多周波共用アンテナ1を示している。第5実施形態では、第4実施形態と同様に、各アンテナ素子11,12,13の周波数に応じて、反射板30から各アンテナ素子11,12,13までの距離が異なっている。ただし、給電部20から第2アンテナ素子12及び第3アンテナ素子13へ延びる線路として、第1アンテナ素子用の線路16aとは別に、第2アンテナ素子12用の線路17と、第3アンテナ素子13用の線路18とが、それぞれ別個に設けられている。
なお、反射板30から各アンテナ素子11までの距離は、例えば、第1アンテナ素子11についてはλ800M/4、第2アンテナ素子12についてはλ1.5G/4、第3アンテナ素子13についてはλ2.0G/4に設定される。
【0049】
[6.第6実施形態:水平偏波及び垂直偏波に対応したアンテナ装置]
図16は、水平偏波及び垂直偏波に対応したアンテナ装置100を示している。アンテナ装置100は、機能的には、第3実施形態の多周波共用アンテナ1を二つ組み合わせたものに相当する。つまり、アンテナ装置100は、水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1と、水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1を前後方向軸まわりに90°回転させた垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2と、前後方向の位置をずらして組み合わせたものである。
【0050】
ここで、図17に示すように、3つのアンテナ素子11,12,13を、全てダイポール素子で形成した場合には、水平偏波及び垂直偏波に対応したアンテナ本体を、アンテナ素子同士の重なりを生じさせることなく、同一平面上に形成することができる。
一方、実施形態に係る多周波共用アンテナ1では、アンテナ素子13の内側に更に、ループアンテナ素子11が位置するため、水平偏波及び垂直偏波に対応させようとすると、ループアンテナ素子11,11同士が重なってしまい。同一平面に形成することができない。したがって、図16に示すように、水平偏波用のアンテナ本体10と、垂直偏波用のアンテナ本体10とを、前後方向(図16の上下方向)にずらして重ねる必要がある。
【0051】
2つのアンテナ本体10,10を前後方向にずらした場合において、単一の反射板30しか設けない場合、2つのアンテナ本体10,10のうちのいずれか一方は、反射板30との間の間隔が不適切になる。そこで、アンテナ装置100は、水平偏波用のアンテナ本体10及び垂直偏波用のアンテナ本体10にそれぞれ対応して、二つの反射板(第1反射板31及び第2反射板32)を備えている。
【0052】
ここで、図18は、図16のアンテナ装置100から、水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1だけを抜き出したものを示している。図18のアンテナ1−1は、第2実施形態に係るアンテナ1とほぼ同様であるが、異なる点は、水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1用の第1反射板31は、ダイポール素子12,13の長手方向(水平方向)に長く形成されたスリット31aを有している。これにより、第1反射板31は、垂直偏波は反射させないが水平偏波を反射させるものとなっている。
【0053】
図19及び図20に示すように、反射板31にスリット31aを形成した第1多周波共用アンテナ1−1の特性は、スリットのない第3実施形態に係るアンテナ1の特性とほぼ同様である。
【0054】
また、図21は、図16のアンテナ装置100から垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2だけを抜き出したものを示している(ただし、給電部20は省略)。垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2は、水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1を前後方向軸まわりに90°回転させたものに対応している。したがって、垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2用の第2反射板32は、ダイポール素子12,13の長手方向(垂直方向)に長く形成されたスリット32aを有している。これにより、第2反射板32は、水平偏波は反射させないが垂直偏波を反射させるものとなっている。
【0055】
したがって、アンテナ装置100は、2つの反射板31,32を備えていても、二つのアンテナ本体10それぞれからみると、単一の反射板だけが存在するのと同じ状況であるから、二つのアンテナ本体10それぞれにとって適切な位置に反射板を位置させることができる。
したがって、図16のアンテナ装置100のように、水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1と、水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1を前後方向軸まわりに90°回転させた垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2と、前後方向の位置をずらして組み合わせることができる。
【0056】
なお、図16のアンテナ装置100では、垂直偏波用のアンテナ1−2の各部材が、水平偏波用のアンテナ1−1の各部材よりも前方に位置するように重ねて配置されているが、前後逆配置であってもよい。
【0057】
また、給電部20は、第1反射板31に取り付けられており、第2反射板32のスリット32aを貫通している。給電部20は、水平偏波用のアンテナ本体10の給電点15に接続されているほか、さらに垂直偏波用のアンテナ本体10の給電点15にまで延びている。
【0058】
[7.第7実施形態:水平偏波及び垂直偏波に対応したアンテナ装置]
図22は、第7実施形態に係るアンテナ装置100を示している。本実施形態のアンテナ装置100は、第6実施形態と同様に、水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1を前後方向軸まわりに90°回転させた垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2と、前後方向の位置をずらして組み合わせたものである。
【0059】
ここで、第6実施形態に係るアンテナ装置100では、後側に配置された第1多周波共用アンテナ1−1のループアンテナ素子11に電流が流れると、その電流の流れによって磁界が発生し、前側に配置された第2多周波共用アンテナ1−2のループアンテナ素子11に誘導電流が流れる。そして、この誘導電流が流れると、その流れによって磁界が発生し、第1多周波共用アンテナ1−1のループアンテナ素子11にも誘導電流が流れることになる。このように、第6実施形態に係るアンテナ装置100では、前記誘導電流により相互に干渉することになり、各アンテナ1−1,1−2を単体で使用する場合に比べて、アンテナ特性が劣化する。
【0060】
そこで、本実施形態のアンテナ装置100は、前記誘導電流が流れるのを抑制するために、第1多周波共用アンテナ1−1及び第2多周波共用アンテナ1−2の各ループアンテナ素子(第1アンテナ素子)11が、そのループの途中2箇所に電気的に切断された第1切断部11−1及び第2切断部11−2をそれぞれ備えている。
【0061】
第1切断部11−1及び第2切断部11−2は、各ループアンテナ素子11の一部を切断することによって形成された隙間からなる。その隙間の間隔は、短絡するのを防止するとともにループの周長(本実施形態では1波長)が変化することによってアンテナ特性に悪影響を及ぼさない程度の長さであることが好ましい。本実施形態では、前記隙間の間隔は2〜3mmに設定されている。
【0062】
図23は、図22のアンテナ装置100から、水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1だけを抜き出したものを示している。図23のアンテナ1−1におけるアンテナ本体10は、第1実施形態と同様に給電点15から各アンテナ素子11,12,13に接続される線路16−1を備えている。この線路16−1は、給電点15から互いに逆方向(異なる方向)に直線状に延びて、各アンテナ素子11,12,13に接続される一対の線路素子16−1a,16−1bを備えている。両線路素子16−1a,16−1bは、互いに同一長さに形成されており、その長さは線路16−1の全長の1/2(=102/2=51mm)である。
【0063】
両線路素子16−1a,16−1bは、ループアンテナ素子11において互いに異なる箇所に接続されている。線路素子16−1aとループアンテナ素子11との接続点51から第1切断部11−1までの経路長さL1と、線路素子16−1bとループアンテナ素子11との接続点52から第1切断部11−1までの経路長さL2とは、略同一長さに設定されている。経路長さL1及びL2は、ループアンテナ素子11の長辺11bの1/2の長さ(=118/2=59mm)と、短辺11aの1/2の長さ(=60/2=30mm)とを合計した長さ、すなわち800MHzの波長(λ800M)の約1/4(=λ800M/4=89mm)である。
【0064】
図24は、図22のアンテナ装置100から、垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2だけを抜き出したものを示している。図24のアンテナ1−2におけるアンテナ本体10は、第1実施形態と同様に給電点15から各アンテナ素子11,12,13に接続される線路16−2を備えている。この線路16−2は、上述の線路16−1と同様の構成であって、給電点15から互いに逆方向(異なる方向)に直線状に延びて、各アンテナ素子11,12,13に接続される一対の線路素子16−2a,16−2bを備えている。両線路素子16−2a,16−2bは、互いに同一長さに形成されており、その長さは線路16−2の全長の1/2(=102/2=51mm)である。
【0065】
両線路素子16−2a,16−2bは、ループアンテナ素子11において互いに異なる箇所に接続されている。線路素子16−2aとループアンテナ素子11との接続点53から第2切断部11−2までの経路長さL3と、線路素子16−2bとループアンテナ素子11との接続点54から第2切断部11−2までの経路長さL4とは、略同一長さに設定されている。経路長さL3及びL4は、ループアンテナ素子11の長辺11bの1/2の長さ(=118/2=59mm)と、短辺11aの1/2の長さ(=60/2=が30mm)とを合計した長さ、すなわち800MHzの波長(λ800M)の約1/4(=λ800M/4=89mm)である。
【0066】
なお、図23及び図24の第1切断部11−1及び第2切断部11−2は、ループアンテナ素子11の一部を切断することによって形成された隙間からなるが、この隙間に電気的に切断する絶縁材を介在させたものであってもよい。
また、前記経路長さL1とL2,L3とL4は、それぞれ同一長さに設定されているが、第1切断部11−1及び第2切断部11−2を有していない場合と同等のアンテナ特性を実現することができれば、異なる長さに設定されていてもよい。
【0067】
図25(a)は、本実施形態の水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1の反射特性であり、図25(b)は、第6実施形態の水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1の反射特性である。また、図26(a)は、本実施形態の垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2の反射特性であり、図26(b)は、第6実施形態の垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2の反射特性である。
図25の(a)と(b)、図26の(a)と(b)をそれぞれ比較すると、本実施形態の反射特性は、第6実施形態の反射特性よりも原点(円グラフの中心部)に近づいており、反射特性が改善されているのが分かる。すなわち、反射特性の劣化原因となる誘導電流が各アンテナ1−1,1−2に流れるのを抑制していることが分かる。
【0068】
図27は、本実施形態の水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1の水平面指向性である。図27と図20の第6実施形態のアンテナ1−1の水平面指向性とを比較すると、本実施形態のアンテナ1−1の0度方向の利得が、第6実施形態のアンテナ1−1の0度方向の利得とほぼ同様であり、第1切断部11−1を有する本実施形態のアンテナ1−1が、第1切断部11−1を有しない場合と同等のアンテナ特性を実現していることが分かる。
【0069】
図28(a)は本実施形態の水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1の垂直面指向性であり、図28(b)は第6実施形態の水平偏波用の第1多周波共用アンテナ1−1の垂直面指向性である。図28の(a)と(b)とを比較すると、本実施形態のアンテナ1−1の0度方向の利得が、第6実施形態のアンテナ1−1の0度方向の利得とほぼ同様であり、第1切断部11−1を有する本実施形態のアンテナ1−1が、第1切断部11−1を有しない場合と同等のアンテナ特性を実現していることがわかる。
【0070】
図29(a)は本実施形態の垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2の水平面指向性であり、図29(b)は第6実施形態の垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2の水平面指向性である。また、図30(a)は本実施形態の垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2の垂直面指向性であり、図30(b)は第6実施形態の垂直偏波用の第2多周波共用アンテナ1−2の垂直面指向性である。図29の(a)と(b)、図30の(a)と(b)をそれぞれ比較すると、本実施形態のアンテナ1−2の0度方向の利得が、第6実施形態のアンテナ1−2の0度方向の利得とほぼ同様であり、第2切断部11−2を有する本実施形態のアンテナ1−2が、第2切断部11−2を有しない場合と同等のアンテナ特性を実現していることがわかる。
【0071】
以上、本実施形態のアンテナ装置100によれば、第1多周波共用アンテナ1−1及び第2多周波共用アンテナ1−2の各ループアンテナ素子11のうち、一方のループアンテナ素子11に電流を流したときに、その電流の流れによって他方のループアンテナ素子11に誘導電流が流れるのを第1及び第2切断部11−1,11−2により抑制することができる。これにより、第1多周波共用アンテナ1−1と第2多周波共用アンテナ1−2とが前記誘導電流により相互に干渉するのを抑制することができる。
【0072】
また、第1切断部11−1は、給電点15から一方の線路素子16−1aを通過して第1切断部11−1に至る経路長さL1と、給電点15から他方の線路素子16−1bを通過して第1切断部11−1に至る経路長さL2とが略同一長さとなる位置、すなわち元々電流が流れない位置にあるため、第1多周波共用アンテナ1−1は、第1切断部11−1を有していても、第1切断部11−1を有していない場合と同等のアンテナ特性を実現することができる。
【0073】
また、第2切断部11−2は、給電点15から一方の線路素子16−2aを通過して第2切断部11−2に至る経路長さL3と、給電点15から他方の線路素子16−2bを通過して第2切断部11−2に至る経路長さL4とが略同一長さとなる位置、すなわち元々電流が流れない位置にあるため、第2多周波共用アンテナ1−2は、第2切断部11−2を有していても、第2切断部11−2を有していない場合と同等のアンテナ特性を実現することができる。
【0074】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、ループ状に形成されるアンテナ素子は、複数備わっていても良い。すなわち、図31に示すように、最も周波数の低い周波数で共振する第1アンテナ素子11のほか、2番目に低い周波数で共振する第2アンテナ素子12もループ状に形成しておき、残りの第3アンテナ素子13をダイポール素子としてもよい。
さらに、その変形例として、図32に示すように、第1アンテナ素子11の一部を第2アンテナ素子12の一部として兼用してもよい。この場合、第2アンテナ素子12のループは、第1辺素子12a、第2辺素子12b、第3辺素子12c、第4辺素子12d1、第5辺素子12d2、第6辺素子12e、第7辺素子12f、第8辺素子12g、第9辺素子12h1及び第10辺素子12h2により形成される。第1〜第10辺素子12a〜12h2のうち、第2辺素子12b、第4辺素子12d1、第5辺素子12d2、第7辺素子12f、第9辺素子12h1及び第10辺素子12h2は、第1ループ素子11の一部であって、第2ループ素子12の一部として兼用されている。
【符号の説明】
【0075】
1 多周波数アンテナ素子
10 アンテナ本体
11 第1アンテナ素子(ループ状のアンテナ素子)
12 第2アンテナ素子(ダイポール素子)
13 第3アンテナ素子(ダイポール素子)
15 給電点
16 線路
16a 第1線路
16b 第2線路
20 給電部
30 反射板
31 第1反射板
32 第2反射板
41 無給電素子
42 無給電素子
100 アンテナ装置
1−1 第1多周波共用アンテナ
1−2 第2多周波共用アンテナ
11−1 第1切断部
11−2 第2切断部
16−1a 線路素子
16−1b 線路素子
16−2a 線路素子
16−2b 線路素子
51〜54 接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる周波数で共振する複数のアンテナ素子を備えた多周波共用アンテナであって、
前記複数のアンテナ素子として、ダイポール素子と、ループ状のアンテナ素子と、を含み、
前記ループ状のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子のうち少なくとも最も低い周波数で共振するアンテナ素子であり、
前記ダイポール素子は、前記ループ状のアンテナ素子の外周側に配置され、前記ループ状のアンテナ素子の内周側には非配置である
ことを特徴とする多周波共用アンテナ。
【請求項2】
給電点から延びて形成され、前記複数のアンテナ素子それぞれに接続される線路を備え、前記線路は、前記ループ状のアンテナの内周側に設けられた給電点から、前記ループ状のアンテナ素子に至る第1線路と、前記第1線路を前記ループ状のアンテナ素子の外周側に延長させてダイポール素子に至るように形成された第2線路と、を備えている
請求項1記載の多周波共用アンテナ。
【請求項3】
前記ダイポール素子、前記ループ状のアンテナ素子、及び前記線路は、同一基板に形成されている
請求項2記載の多周波共用アンテナ。
【請求項4】
前記複数のアンテナ素子の背後に設けられた反射板と、
前記反射板と前記ダイポール素子との間に配置された無給電素子と、
を更に備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の多周波共用アンテナ。
【請求項5】
請求項1記載の多周波共用アンテナを用いた水平偏波用の第1多周波共用アンテナと、
請求項1記載の多周波共用アンテナを用いた垂直偏波用の第2多周波共用アンテナと、
を備え、
前記第1多周波共用アンテナは、垂直偏波は反射させないが水平偏波を反射させるよう形成された第1反射板を備え、
前記第2多周波共用アンテナは、水平偏波は反射させないが垂直偏波を反射させるよう形成された第2反射板を備え、
前記第1多周波共用アンテナ及び前記第2多周波共用アンテナは、前記第1反射板及び第2反射板の前後方向位置を異ならせることで、重なり合って配置されている
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1多周波共用アンテナのループ状のアンテナ素子は、そのループの途中に電気的に切断された第1切断部を有し、
前記第2多周波共用アンテナのループ状のアンテナ素子は、そのループの途中に電気的に切断された第2切断部を有している
請求項5記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1多周波共用アンテナは、給電点から互いに異なる方向に延びるとともに互いに同一長さに形成され、かつ前記ループ状のアンテナ素子において互いに異なる箇所に接続される一対の線路素子を備え、
前記第2多周波共用アンテナは、給電点から互いに異なる方向に延びるとともに互いに同一長さに形成され、かつ前記ループ状のアンテナ素子において互いに異なる箇所に接続される一対の線路素子を備え、
前記第1多周波共用アンテナの一対の線路素子のうち、一方の線路素子と前記ループ状のアンテナ素子との接続点から前記第1切断部までの経路長さと、他方の線路素子と当該ループ状のアンテナ素子との接続点から当該第1切断部までの経路長さとが略同一長さに設定され、
前記第2多周波共用アンテナの一対の線路素子のうち、一方の線路素子と前記ループ状のアンテナ素子との接続点から前記第2切断部までの経路長さと、他方の線路素子と当該ループ状のアンテナ素子との接続点から当該第2切断部までの経路長さとが略同一長さに設定されている
請求項6記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−165355(P2012−165355A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147337(P2011−147337)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】