説明

多孔板吸音体及びその製造方法

【課題】生産性に優れ、安価に製造できるとともに、経時変化等による劣化が抑制され、吸音特性及び外観特性に優れる多孔板吸音体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数の貫通孔21が形成された金属からなる多孔板2を備え、多孔板2の両面に貫通孔21の開口部21a、21bが各々形成されており、多孔板2の表面2aにおいて、貫通孔21の開口部21aの一部を開放するように孔部3aが配された第1印刷膜3が形成されており、多孔板2の裏面2bにおいて、貫通孔21の開口部21bを塞ぐように全面に第2印刷膜30が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔板吸音体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、防音設備等に用いられ、多孔板吸音体からなる吸音パネルや、多孔板吸音体と多孔質吸音材とを組み合わせた吸音パネル等が知られている。このような多孔板吸音体は、樹脂や金属材料からなる板に複数の微細な貫通孔が形成され、この貫通孔によって吸音特性が高められている。
【0003】
上述した多孔板吸音体を得るため、金属板に複数の貫通孔を形成する方法としては、針状の金型プレスによる加工や、ドリルによる孔開加工等の方法がある。
しかしながら、針状の金型プレスを用いた場合、金型等のプレス設備が高価であるとともに、1mm以下の微細なパターンとした場合、針状のピンが折れ易いためにメンテナンス費用が増大する。また、貫通孔のパターン変更を容易に行うことができないという問題がある。
また、ドリルによる孔開加工では、多孔板吸音体において金属板に形成される貫通孔数が約25万個/mと膨大であり、実施が現実的でなく、また、実施した場合でも製造コストが上昇するという問題がある。
【0004】
また、金属板に貫通孔を形成する方法して、フォトリソ工程を用いて、エッチング法によって金属板に孔開け加工を施す方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、特許文献1に記載された方法で金属板に貫通孔を形成する場合、フォトリソ設備(露光装置)が非常に高価であるとともに、マスク代が高額であるという問題がある。さらに、特許文献1に記載されたようなフォトリソ工程では、レジスト又はドライフィルム、現像液や剥離液等の消耗部材が高価であるため、多孔板吸音体の製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0005】
また、金属板に対してレーザー光線を照射することにより、金属板の一部を溶融、穿孔して貫通孔を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、特許文献2に記載の方法を用いた場合、レーザー設備が非常に高価であるとともに、上述のように、多孔板吸音体において金属板に形成される貫通孔数が約25万個/mと膨大であるため、実施が現実的でない。また、特許文献2に記載の方法で、レーザー光線を用いて孔開けを実施した場合には、製造コストが大幅に上昇するという問題がある。
【0006】
上述したような、従来の金属板に貫通孔を形成する方法は、何れも高精度の孔を多数個、再現性良く繰り返し形成するのに適している。しかしながら、上記方法で金属板に貫通孔を形成して多孔板吸音体を得た場合、貫通孔の仕様がオーバースペックとなり、コスト高を招く要因となっていた。
【0007】
一方、従来の多孔板吸音体は、貫通孔の内部に細かな塵埃等が侵入しやすいことから、貫通孔の内部に塵埃が付着し、吸音特性が低下するとともに、外観特性が劣化するという問題がある。また、各種表面処理及び塗装、並びに脱脂や熱処理等を施された金属板を用い、該金属板の表面に貫通穴を形成して多孔板吸音体を構成した場合、貫通孔の内壁には処理が施されていないため、貫通孔に侵入した塵埃が内壁に付着しやすいという問題がある。
【0008】
このような、貫通孔への塵埃の侵入の問題を解決するため、平板表面に等ピッチ又は不等ピッチで多数の貫通孔を設けて多孔板とし、多孔板表面に、細孔の開口部を覆うようにフィルムが設けられてなる多孔板吸音体が提案されている(例えば、特許文献3)。特許文献3に記載の多孔板吸音体によれば、多孔板に形成された貫通孔を塞ぐフィルムを設けた上記構成により、貫通孔内へのほこり等の侵入を防ぐことができるので、吸音特性や外観特性の低下を防止することができるというものである。
【特許文献1】特開平9−209175号公報
【特許文献2】特許第3160084号公報
【特許文献3】特開2003−041528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載の多孔板吸音体では、貫通孔を覆うのに薄いフィルムを用いる構成であり、フィルムに皺や破れ等が生じ易いので、このようなフィルムを多孔板の表面に貼り付けるのは困難である。また、フィルムを多孔板に固定せずに多孔板表面側に重ねるだけの構成とした場合、フィルムが破損し易く実用性に劣るという問題がある。また、フィルムを多孔板に固定せずに多孔板裏面側に重ねるだけの構成とした場合には、多孔板表面側が汚れ易くなるという問題がある。また、貫通孔を覆うフィルムを設ける際、粘着材又は接着剤等を用いてフィルムを多孔板の表面側に貼り合わせた場合には工程増となり、コストアップの要因になるとともに、上述のようなフィルムを板表面に貼り合わせる場合には、フィルムの特性上、点接着とされるため、強度特性が劣るという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献3の多孔板吸音体のように、貫通孔をフィルムによって塞いだ構成とした場合、フィルムは高価であるためにコストアップの要因となる。また、このようなフィルムは、経時変化によって皺や破れ、剥離等の劣化が生じやすく、この場合には貫通孔内に塵埃が侵入してしまうという問題があった。
【0011】
このように、従来の多孔板吸音体では、従来の方法を用いて金属板に貫通孔を形成した場合には、オーバースペックでコストアップとなるとともに生産性に劣り、また、塵埃の侵入による吸音特性及び外観特性の劣化が生じ、貫通孔を覆うフィルムを貼り付けたとしても、経時変化による劣化が避けられず、さらにコストアップの要因となるという大きな問題があった。
【0012】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、生産性に優れ、安価に製造できるとともに、経時変化等による劣化が抑制され、吸音特性及び外観特性に優れる多孔板吸音体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上述のような従来の多孔板吸音体の問題点について鋭意検討したところ、まず、多孔板吸音体においては、吸音作用を得るために必要な孔径分布の許容範囲が広いことから、孔径にばらつきが生じたり、歪な孔が含まれていたとしても、開口率が一定以上に確保されていれば、ほぼ同様の吸音効果が得られることが明らかとなった。
また、貫通孔に塵埃が侵入するのを防止するためには、貫通孔の開口部を覆うことが必要となるが、多孔板表面に印刷膜を形成することにより、経時変化が生じることなく優れた吸音特性及び外観特性を維持することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明の多孔板吸音体は、複数の貫通孔が形成された金属からなる多孔板を備え、該多孔板の両面に前記貫通孔の開口部が各々形成されており、前記多孔板の一方の面において、前記貫通孔の開口部の少なくとも一部を開放するように孔部が配された第1印刷膜が形成されており、前記多孔板の他方の面において、前記貫通孔の開口部を塞ぐように全面に第2印刷膜が形成されてなることを特徴とする。
また、本発明の多孔板吸音体は、複数の貫通孔が形成され、金属からなる多孔板を備え、該多孔板の両面に前記貫通孔の開口部が各々形成されており、前記多孔板の一方の面には第1印刷膜が、他方の面には第2印刷膜が各々形成され、これら第1印刷膜及び第2印刷膜は、前記多孔板に設けられた貫通孔の開口部に対して、少なくとも一部を開放するように孔部が配されるか、又は、塞ぐように形成されており、前記多孔板の一方の面において、前記第1印刷膜の孔部によって開口部が開放された貫通孔には、前記多孔板の他方の面側の開口部を塞ぐように第2印刷膜が形成されており、前記一方の面において、前記開口部を塞ぐように第1印刷膜が形成されている貫通孔は、前記他方の面側の開口部が前記第2印刷膜に設けられた孔部によって開放されてなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の多孔板吸音体においては、前記多孔板の厚さが50〜300μmの範囲であることが好ましい。
また、本発明の多孔板吸音体においては、前記貫通孔の径が100〜200μmの範囲であることが好ましい。
また、本発明の多孔板吸音体においては、前記孔部の開口率が、前記多孔板の一方の面又は他方の面に対して0.2〜20%の範囲とされていることが好ましい。
また、本発明の多孔板吸音体においては、前記第1印刷膜及び第2印刷膜の厚さが1〜10μmの範囲とされていることが好ましい。
また、本発明の多孔板吸音体においては、前記第1印刷膜及び第2印刷膜が、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂の内の何れかを含有する材料からなることが好ましい。
【0016】
次に、本発明の多孔板吸音体の製造方法は、金属板の一方の面に、複数の孔部が備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜を形成する工程と、前記金属板の他方の面に、ベタマスキングパターンからなる第2印刷膜を形成する工程と、前記金属板に対し、前記孔部を備える第1印刷膜が形成された一方の面側から、エッチング法によって複数の貫通孔を形成して多孔板とする工程と、が備えられていることを特徴とする。
また、本発明の多孔板吸音体の製造方法は、金属板の一方の面に、複数の孔部が備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜を形成する工程と、前記金属板の他方の面に、前記一方の面に形成された第1印刷膜の複数の孔部に対し、前記金属板を介して交互にずれて配される複数の孔部が備えられたマスキングパターンからなる第2印刷膜を形成する工程と、前記金属板に対し、前記第1印刷膜又は第2印刷膜が各々形成された一方の面及び他方の面の両面側から、エッチング法によって複数の貫通孔を形成して多孔板とする工程と、が備えられていることを特徴とする。
【0017】
上記本発明の多孔板吸音体によれば、多孔板の一方の面において、貫通孔の開口部の少なくとも一部を開放するように孔部が配された第1印刷膜が形成されており、多孔板の他方の面において、貫通孔の開口部を塞ぐように全面に第2印刷膜が形成されてなるので、貫通孔内への塵埃の侵入を防止でき、また、経時変化による劣化が抑制され、貫通孔による吸音作用が安定して得られる。さらに、多孔板が印刷膜によって保護されるので、手垢等が付着しにくく、また、多孔板に酸化しやすい金属材料を用いた場合でも変色を防止でき、良好な外観特性及び意匠性が得られる。
また、上記本発明の多孔板吸音体によれば、多孔板の一方の面において、第1印刷膜の孔部によって開口部が開放された貫通孔には、多孔板の他方の面側の開口部を塞ぐように第2印刷膜が形成されており、一方の面において、開口部を塞ぐように第1印刷膜が形成されている貫通孔は、他方の面側の開口部が第2印刷膜に設けられた孔部によって開放されてなるので、貫通孔内への塵埃の侵入をより効果的に防止でき、経時変化による劣化が抑制され、貫通孔による吸音作用がより安定して得られる。さらに、多孔板が印刷膜によって充分に保護されるので、手垢等が付着しにくく、多孔板の変色を防止でき、良好な外観特性及び意匠性が得られる。
また、貫通孔の径が100〜200μmの範囲とされているので、肉眼では孔が形成されているのが視認されず、良好な外観特性及び意匠性が得られる。
また、印刷膜に設けられる孔部の開口率が、印刷膜が形成される多孔板の一方の面又は他方の面に対して0.07〜2%の範囲とされているので、良好な吸音特性及び外観特性が得られる。
また、印刷膜の厚さが1〜10μmの範囲とされているので、貫通孔への塵埃の侵入を防止できる一方、音は印刷膜を透過し、貫通孔が開放されている場合と同等の吸音特性が得られる。
【0018】
また、上記本発明の多孔板吸音体の製造方法によれば、金属板の一方の面に、複数の孔部が備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜を形成する工程と、他方の面に、ベタマスキングパターンからなる第2印刷膜を形成する工程と、金属板に対し、前記孔部を備える第1印刷膜が形成された一方の面側から、エッチング法によって複数の貫通孔を形成して多孔板とする工程とが備えられているので、高価で大掛かりな設備を用いること無く、シンプルな工程を用いて、高効率で安価な方法で多孔板吸音体を製造することができる。さらに、マスキングパターン及びベタマスキングパターンが、そのまま多孔板上の印刷膜として用いられるので、貫通孔への塵埃の侵入を防止でき、経時変化による劣化が抑制され、安定した吸音作用を有する多孔板吸音体が、高効率で安価な方法で得られる。
【0019】
また、上記本発明の多孔板吸音体の製造方法によれば、金属板の一方の面に、複数の孔部が備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜を形成する工程と、金属板の他方の面に、一方の面に形成された第1印刷膜の複数の孔部に対し、金属板を介して交互にずれて配される複数の孔部が備えられたマスキングパターンからなる第2印刷膜を形成する工程と、金属板に対し、第1印刷膜又は第2印刷膜が各々形成された一方の面及び他方の面の両面側から、エッチング法によって複数の貫通孔を形成して多孔板とする工程とが備えられているので、上記同様、高価で大掛かりな設備を用いること無く、シンプルな工程を用いて、高効率で安価な方法で多孔板吸音体を製造することができる。さらに、上述のように交互に配された孔部が設けられたマスキングパターンが、そのまま多孔板上の印刷膜として用いられるので、貫通孔への塵埃の侵入をより効果的に防止でき、経時変化による劣化が抑制され、安定した吸音作用を有する多孔板吸音体が、高効率で安価な方法で得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記構成により、貫通孔への塵埃の侵入を効果的に防止でき、且つ、経時変化等による劣化が抑制され、優れた吸音特性及び外観特性に優れるとともに、低コストで生産性に優れる多孔板吸音体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る多孔板吸音体及びその製造方法の実施形態について、図1〜6を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明において参照する図は、多孔板吸音体等の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さ、寸法等は、実際の多孔板吸音体等の寸法関係と異なる場合がある。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る多孔板吸音体の第1の実施形態を示す断面模式図である。
図1に示す多孔板吸音体1は、複数の貫通孔21が形成された金属からなる多孔板2を備え、該多孔板2の表面(一方の面)2aに貫通孔21の開口部21aが、裏面(他方の面)2bに貫通孔21の開口部21bがそれぞれ形成されており、多孔板2の一方の面2aにおいて、貫通孔21の開口部21aの少なくとも一部を開放するように孔部3aが配された第1印刷膜3が形成されており、多孔板2の裏面2bにおいて、貫通孔21の開口部21bを塞ぐように全面に第2印刷膜30が形成され、概略構成されている。
【0023】
多孔板2は、上述したように、金属材料からなり、複数の貫通孔21が形成されてなる。
多孔板2の材質としては、ステンレス鋼や銅を含有する金属板の他、例えば、Al、Ni、Ni−Fe系合金等を含有し、後述のエッチング法によって貫通孔21を形成することが可能な金属板であれば、一般的な金属材料からなるものを適宜選択して用いることができる。これらの中でも、ステンレス鋼又は銅を含有する金属板を用いることが、高い強度特性や良好な外観特性、及び意匠性が得られる点から好ましい。
多孔板2の厚さは、50〜300μmの範囲とすることが好ましい。多孔板2の厚さが50μ未満だと、剛性が低すぎるため、商品としての実用化が困難となる。また、多孔板2の厚さが300μmを超えると、詳細を後述する貫通孔21の孔径を規定範囲(100〜200μm)とした場合の孔開け加工が困難になる虞がある。
【0024】
貫通孔21は、多孔板2の厚み方向に貫通して複数形成される微細な孔であり、多孔板2の表面2a側に開口部21aが、裏面2b側に開口部21bがともに開口している。
このような、多孔板2を厚み方向に貫通して複数の貫通孔21を設けることにより、音が多孔板を通過するのが可能な構成としている。また、これら貫通孔は、音を通過するとともに、音を吸音する作用がある。
【0025】
貫通孔21の開口径D(図3参照)としては、肉眼では視認が難しくなる程度の小径とすることが好ましく、具体的には100〜200μm(0.1〜0.2mm)の範囲の平均径とすることが好ましい。ここで、本実施形態で説明する貫通孔21の開口径Dとは、図3に示すように(図1も参照)、貫通孔21の開口部21a、21bの各径が多孔板2の表面2a側と裏面2b側とで異なる場合、小径とされた開口部の径のことであり、図1及び図3に示す例では、多孔板2の裏面2b側の開口部21bのことを言う。貫通孔21の開口径Dの平均が上記範囲内であれば、音の通過性及び吸音特性を有するとともに、多孔板2の外観の美観性を確保できることができる。
【0026】
また、貫通孔21の平面視形状としては、特に限定されないが、真円形状、楕円形状、矩形状等の何れであっても良く、適宜採用することができる。ここで、貫通孔を真円形状とした場合には、その直径が開口の径になり、楕円形状とした場合は、その直径が開口の径となり、また、矩形状とした場合にはその長辺の長さが開口の径となる。
【0027】
また、貫通孔21の断面形状としては、図1に示す例では、多孔板2の表面2a側が大径で開口し、裏面2b側が小径に開口し、内壁21cが略半円形状とされているが、この形状には限定されず、後述のエッチング法によって形成でき、両面側において所定の開口率を満足できるように開口された形状であれば、如何なる形状とされていても良い。例えば、多孔板2の両面の開口部が大径とされていても良いし、緩やかなテーパ状の貫通孔とされていても良い。
【0028】
ここで、貫通孔21の多孔板2上における開口率としては、0.2%〜20%の範囲であることが好ましい。ここで、貫通孔の開口率とは、図1に示す貫通孔21においては、多孔板2の背面2bの面積に対する貫通孔21の開口部21bの面積の割合である。この開口率が0.2%以上であれば、音が多孔板2を効率良く通過し、また、安定した吸音作用が得られる。また、開口率が20%以下であれば、貫通孔21が目立たず、多孔板吸音体の外観の美観性が損なわれる虞がない。
【0029】
また、多孔板2の表面2aには、多孔板の美観性を向上させるため、例えば、絵や模様等のデザインが施されていても良く、また、表面2aを鏡面仕上げとしても良い。
【0030】
第1印刷膜3は、上述したように、多孔板2の表面2a側に設けられ、貫通孔21の開口部21aの一部が開放されるように孔部3aが配されており、図1に示す例では、径方向において開口部21aの概ね半分程度が開放されるように形成されている。
また、第2印刷膜30は、多孔板2の裏面2bにおいて、貫通孔21の開口部21bを塞ぐように裏面2bの全面に形成される。
【0031】
第1印刷膜3及び第2印刷膜30の厚さは1〜10μmの範囲とされていることが好ましい。これら印刷膜の厚さが1μm未満だと、強度が不足して破れ易くなる。また、これら印刷膜、特に第2印刷膜30の厚さが10μmを超える場合、音が透過しにくくなり、多孔板2に形成された貫通孔21を音が通過できないため、吸音作用が得られなくなる。
【0032】
第1印刷膜3に形成される孔部3aの平均開口径d(図3参照)は、この平均開口径dと貫通孔21の開口径Dとの関係が、式(0.8D≦d≦1.2D)で表される範囲とされていることが好ましく、平均開口径d≒開口径Dの関係とされていることがより好ましい。孔部3aの平均開口径dと貫通孔21の開口径Dとの関係を上記範囲とした場合、開口径Dの好ましい範囲は100〜200μmなので、孔部3aの平均開口径dを80〜240μmの範囲とすることが好ましい。孔部3aの平均開口径dがこの範囲であれば、良好な吸音特性が得られるとともに、外観上において目視では孔が目立たず、優れた美観性が得られる。
ここで、上記平均開口径dが、上記式の左辺(0.8D)の数値未満だと、サイドエッチが大きくなり、貫通孔21の開口部21aに張り出す第1印刷膜の面積が大きくなるので、この第1印刷膜の強度が低下する。また、上記平均開口径dが、上記式の右辺(1.2D)の数値を超えると、第1印刷膜の孔部が必要以上に大きくなって目立ち、外観特性に影響を与える虞がある。
【0033】
また、第1印刷膜3に各々形成される孔部3aの開口率は、多孔板2の表面2a(又は裏面2b)の面積に対して、それぞれ0.2〜20%の範囲とされていることが好ましい。ここで、孔部3aの開口率とは、多孔板2の表面2a(又は背面2b)の面積に対する孔部3aの全開口面積の割合である。
上記孔部3aの開口率がそれぞれ0.2%以上であれば、音が多孔板吸音体を効率良く通過し、また、安定した吸音作用が得られる。また、開口率が20%以下であれば、孔部3a並びに貫通孔21が目立たず、多孔板吸音体の外観の美観性が損なわれる虞がない。
また、上述したように、各孔部の径は、上記式(0.8D≦d≦1.2D)で表される関係とされていることが好ましい。
【0034】
第1印刷膜3及び第2印刷膜30の材質としては、特に限定されず、耐久性に優れる建材外装向けの一般的な塗料を用いることができるが、中でも、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂又はシリコン樹脂等を含有する材料からなることが好ましい。例えば、これら印刷膜にフッ素樹脂を含有する材料を用いる場合には、外壁等の建材に使用されるようなフッ素樹脂塗料等を用いることができる(例えば、アレスフロン(登録商標):関西ペイント株式会社製等)。また、印刷膜にポリエステル樹脂を含有する材料を用いる場合には、例えば、油脂や、エポキシ樹脂等の他の樹脂が反応に加えられたアルキド樹脂を主成分とする材料を用いることができる(例えば、ソルレス(登録商標):浜二ペイント株式会社製等)。
印刷膜に上記材料を用いることにより、良好な外観特性及び意匠性が得られる。
【0035】
なお、本実施形態の第1印刷膜3及び第2印刷膜30は、対侯性、耐光性及び耐熱性の他、ステンレス鋼や銅等からなる多孔板2との密着性等、各種物性値に優れる材料を選択して用いることがより好ましい。
また、上記印刷膜は、多孔板2の表面2a側と背面2b側とで異なる厚さで構成しても良く、また、表背面をそれぞれ異なる材料から構成することもでき、適宜採用することが可能である。
【0036】
以下に、本実施形態の多孔板吸音体1の製造方法の一例について、図4(a)〜(d)に示す工程図を用いて説明する。
本実施形態の多孔板吸音体1の製造方法は、図4(a)に示す金属板20の表面20aに、複数の孔部3aが備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜3を形成する工程と(図4(b))、金属板20の裏面20bに、ベタマスキングパターンからなる第2印刷膜30を形成する工程と(図4(c))、金属板20に対し、孔部3aを備える第1印刷膜3が形成された表面20a側から、エッチング法によって複数の貫通孔21を形成して多孔板2とする工程と(図4(d))、が備えられている。
【0037】
まず、図4(a)に示すような、ステンレス鋼又は銅を含有する金属板20を用意し、この金属板20の表面20a及び背面20bに各種表面処理を施した後、従来公知の金属用塗料を用いて板材塗装を行い、次いで、脱脂処理等を施した後、紫外線照射又は熱処理によって乾燥させる。
【0038】
次いで、図4(b)に示すように、印刷版50を用いて、金属板20の表面20aに、上述したようなポリエステル樹脂等を含有する材質の塗料(符号P参照)を印刷した後、乾燥処理を施し、孔部3aが備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜3を形成する。
ここで、本実施形態では、印刷版50として、200μm径の塗布抜け(孔部)パターンを形成するために配列されたドット部50aが備えられ、該ドット部50a以外の場所が細かなメッシュ状(図示略)に形成され、このメッシュ状の部分を塗料Pが透過するように構成されたものを使用している。このような印刷版50を用いることにより、塗料Pが印刷版50を透過して金属板20の表面20a上に印刷され、第1印刷膜3が形成され、この際、ドット部50aの部分が塗布抜けの孔部3aとして形成される。
また、本実施形態では、マスキングパターンからなる第1印刷膜3を形成する方法としては、上述のような印刷版50を用いる方法には限定されず、形成する印刷膜の孔部の形状やパターンに応じた方法とすることができ、例えば、シルクスクリーンや謄写版を用いた方法、平版、孔版等の一般的な印刷方法を用いることができる。
【0039】
次いで、図4(c)に示すように、金属板20の裏面20b側にベタマスキングパターンからなる第2印刷膜30を形成する。印刷膜30は、上述したようなポリエステル樹脂等を含有する材料の塗料を、刷毛塗布法、スプレー塗布法、ロールコーター法の内の何れかの方法によって金属板20の裏面20b上に印刷した後、乾燥処理を施して形成する。この際の塗布回数としては、第2印刷膜30が目的の膜厚となるように、複数回として行なうことができる。
【0040】
なお、第1印刷膜3及び第2印刷膜30を、上述のような方法を用いて樹脂材料からなる塗料を印刷して形成する際には、塗布及び乾燥後の印刷膜が良好な成膜状態となるように、各種印刷条件を適宜設定することが好ましい。このような印刷条件としては、例えば、上記塗料の粘度や濃度、温度、使用される分散媒体や添加物等の他、金属板20の温度や表面処理状態等が挙げられる。また、印刷後の印刷膜の厚さは、塗布する樹脂材料の濃度及び粘度、金属板20及び樹脂材料の温度、塗布回数等によって制御することが可能である。
【0041】
次いで、図4(d)に示すように、金属板20に対し、第1印刷膜3が形成された表面20a側から、エッチング法を用いて、開口径が100〜200μmの微細な複数の貫通孔21を形成する。
金属板20をエッチングする際に用いるエッチング液としては、塩酸、硫酸又は硝酸等を含有する強酸性溶液を用いることが好ましい。また、エッチング方法としては、各印刷膜が形成された金属板20を上記エッチング液に浸漬させる方法か、或いは、スプレーを用いて、エッチング液を第1印刷膜3が形成された表面20a側から金属板20に吹き付ける方法で行なうことができ、何れの方法を採用しても良いが、サイドエッチングを少なくできる点でスプレーによる吹き付けでエッチングすることが好ましい。
このような工程によって金属板20に貫通孔21を形成し、図1に示すような多孔板吸音体を得ることができる。なお、この際、形成した貫通孔21の内壁面21cには、特に表面処理等を施す必要は無い。
【0042】
本実施形態の多孔板吸音体1は、例えば、所定の枠体(図6に示す符号Aを参照)等に取り付け、必要に応じてグラスウール等の多孔質吸音材が背後に配置された吸音パネルを構成することができる。
【0043】
また、本実施形態の多孔板吸音体1、又は多孔板吸音体1が用いられてなる吸音パネルを、防音処理を施す場所に設置した場合には、以下のような作用が得られる。
図1に示すような、多孔板2の表面2a側に孔部3bが設けられた第1印刷膜3が形成された多孔板吸音体1を用いる場合には、例えば、第2印刷膜30が形成された裏面2b側を音源側として配置する。この際、第2印刷膜30が設けられた裏面2b側からは、貫通孔21に塵埃が侵入することがなく、また、音源から発せられる音は第2印刷膜30を効果的に透過し、貫通孔21を通過するとともに、貫通孔21によって吸音される。また、第1印刷膜3が形成された表面2a側を音源側として配置することも可能である。
また、図6に示すような所定の枠体Aに多孔板吸音体1を取り付けた場合には、音源から発せられた音が、貫通孔21で吸音され、さらに、貫通孔21を通過した音が、多孔板吸音体1と枠体Aとの間に形成される背後空気層Bにおいて吸音される。
【0044】
以上説明したような本実施形態の多孔板吸音体1によれば、多孔板2の表面2aにおいて、貫通孔21の開口部21aの一部を開放するように孔部3aが配された第1印刷膜3が形成されており、多孔板2の裏面2bにおいて、貫通孔21の開口部21bを塞ぐように全面に第2印刷膜30が形成されてなるので、貫通孔21内への塵埃の侵入を防止でき、また、経時変化による劣化が抑制され、貫通孔21による吸音作用が安定して得られる。さらに、多孔板2が第1印刷膜3及び第2印刷膜30によって保護されるので、手垢等が付着しにくく、また、多孔板2に酸化しやすい金属材料を用いた場合でも変色を防止でき、良好な外観特性及び意匠性が得られる。
また、貫通孔21の開口径Dが100〜200μmの範囲とされているので、肉眼では孔が形成されているのが視認されず、良好な外観特性及び意匠性が得られる。
また、第1印刷膜3に設けられる孔部3aの開口率が、印刷膜が形成される多孔板の表面3aにおいて0.07〜2%の範囲とされているので、良好な吸音特性及び外観特性が得られる。
また、第1印刷膜3及び第2印刷膜30の厚さが1〜10μmの範囲とされているので、貫通孔21への塵埃の侵入を防止できる一方、音は印刷膜を透過し、貫通孔21が開放されている場合と同等の吸音特性が得られる。
また、第1印刷膜3及び第2印刷膜30が、フッ素樹脂又はポリエステル樹脂を含有する材料からなるので、良好な外観特性及び意匠性が得られ、また、経時変化が抑制される。
【0045】
また、本実施形態の多孔板吸音体1の製造方法によれば、金属板20の表面20aに複数の孔部3aが備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜3を形成する工程と、裏面20bにベタマスキングパターンからなる第2印刷膜30を形成する工程と、金属板20に対し、孔部3aを備える第1印刷膜3が形成された表面3a側から、エッチング法によって複数の貫通孔21を形成して多孔板2とする工程とが備えられているので、高価で大掛かりな設備を用いること無く、シンプルな工程を用いて高効率で安価な方法で多孔板吸音体を製造することができる。さらに、マスキングパターン及びベタマスキングパターンが、そのまま多孔板上の第1印刷膜3及び第2印刷膜30として用いられるので、貫通孔21への塵埃の侵入を防止でき、経時変化による劣化が抑制され、安定した吸音作用を有する多孔板吸音体1が、高効率で安価な方法で得られる。
【0046】
[第2の実施形態]
以下に、本発明に係る多孔板吸音体の第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施形態の多孔板吸音体1と共通する構成については、その詳しい説明を省略する。
図2の断面模式図に示す第2の実施形態の多孔板吸音体10は、多孔板12の表面12a及び裏面12bに各々形成された第1印刷膜31及び第2印刷膜32の各々に孔部31a、32aが設けられている点で、第1の実施形態の多孔板吸音体1と異なる。
【0047】
図2に示す多孔板吸音体10は、複数の貫通孔22、23が形成された金属からなる多孔板12を備え、該多孔板12の表面12aに貫通孔22の開口部22a及び貫通穴23の開口部23bが、裏面12bに貫通孔22の開口部22b及び貫通穴23の開口部23aがそれぞれ形成されている。また、多孔板12の表面12aに第1印刷膜31が、裏面12bに第2印刷膜32がそれぞれ形成され、これら第1印刷膜31及び第2印刷膜32は、多孔板12に設けられた開口部22a、22b、23a、23bの各々に対して、少なくとも一部を開放するように各々の孔部31a、32aが配されるか、又は、塞ぐように形成されている。ここで、多孔板12の表面12aにおいて第1印刷膜31の孔部31aによって開口部22aが開放された貫通孔22には、多孔板12の裏面12bの開口部22bを塞ぐように第2印刷膜32が形成されており、表面12aにおいて開口部23bを塞ぐように第1印刷膜31が形成されている貫通孔23は、裏面12bの開口部23aが第2印刷膜32の孔部32aによって開放されている。そして、図2の断面図に示す例では、多孔板12の表面12aにおいて、第1印刷膜31によって塞がれた開口部23bと第1印刷膜31の孔部31aによって開放された開口部22aとが交互に配され、裏面12bにおいて、第2印刷膜32によって塞がれた開口部22bと第2印刷膜32の孔部32aによって開放された開口部23aとが交互に配されている。
【0048】
本実施形態の多孔板吸音体10は、上述したように、多孔板12の表面12a及び裏面12bに各々形成された第1印刷膜31及び第2印刷膜32に、孔部31a又は孔部32aが各々設けられている。そして、多孔板12に形成された貫通孔22の開口部22a、22bの何れか一方が、また、貫通孔23の開口部23a、23bの何れか一方が、各印刷膜に設けられた孔部31a、32bによって開放された状態となっている。つまり、貫通孔22、23は、多孔板12の表面12a及び裏面12bの何れかの開口部において、何れかの印刷膜に塞がれた状態となっている。これにより、多孔板吸音体10は、第1の実施形態の多孔板吸音体1と同様に、貫通孔22、23への塵埃等の侵入を防止することができるため、経時変化によって吸音特性及び外観特性が劣化するのを抑制することが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態の多孔板吸音体10は、多孔板12の材質として、第1の実施形態の多孔板吸音体1と同じものを使用することができ、また、厚さや貫通孔の径等の好ましい寸法等も同様の範囲である。また、第1印刷膜31及び第2印刷膜32の材質も、第1の実施形態の多孔板吸音体1と同じものを使用することができ、厚さや孔部の径等の好ましい寸法等も同様の範囲である。
【0050】
以下に、本実施形態の多孔板吸音体10の製造方法の一例について、図5(a)〜(d)に示す工程図を用いて説明する。なお、以下の説明において、上述した多孔板吸音体1の製造方法と共通する工程については、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の多孔板吸音体10の製造方法は、図5(a)に示すような金属板20の表面20aに、複数の孔部31aが備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜31を形成する工程と(図5(b))、金属板20の裏面20bに、表面20aに形成された第1印刷膜31の複数の孔部31aに対し、金属板20を介して交互にずれて配される複数の孔部32aが備えられたマスキングパターンからなる第2印刷膜32を形成する工程と(図5(c))、金属板20に対し、エッチング法を用いて、第1印刷膜31が形成された表面20a側から複数の貫通孔22を形成するとともに、第2印刷膜32が形成された裏面20b側から、複数の貫通孔23を形成して多孔板12とする工程と(図5(d))、が備えられている。
【0051】
まず、図5(a)に示すような金属板20を用意し、上記同様の各種表面処理や塗装を施す。
次いで、図5(b)に示すように、まず、印刷版51を用いて、金属板20の表面20aに、上述したようなポリエステル樹脂等を含有する材質の塗料(符号P参照)を印刷した後、乾燥処理を施し、孔部31aが備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜31を形成する。
次いで、図5(c)に示すように、第1印刷膜31を形成する際と同様の方法により、印刷版52を用いて、金属板20の裏面20bに、表面20aに形成された第1印刷膜31の複数の孔部31aに対し、複数の孔部32aが交互にずれて配されたマスキングパターンからなる第2印刷膜32を形成する。
【0052】
次いで、図5(d)に示すように、金属板20に対しエッチング法を用いて、第1印刷膜31が形成された表面20a側から複数の微細な貫通孔22を形成するとともに、第2印刷膜32が形成された裏面20b側から貫通孔23を形成する。
このような工程により、金属板20に、開口径が100〜200μmの微細な複数の貫通孔22、23を形成し、図2に示すような多孔板吸音体10を得ることができる。
【0053】
上記構成とされた本実施形態の多孔板吸音体10によれば、多孔板12の表面12aにおいて、第1印刷膜31の孔部31aによって開口部22aが開放された貫通孔22には、多孔板12の裏面12b側の開口部22bを塞ぐように第2印刷膜32が形成されており、表面12aにおいて、開口部23bを塞ぐように第1印刷膜31が形成されている貫通孔23は、裏面12b側の開口部23aが第2印刷膜32に備えられた孔部32aによって開放されており、図2に示す例では、多孔板12の表面12aにおいて、第1印刷膜31によって塞がれた開口部23bと、第1印刷膜31の孔部31aによって開放された開口部22aとが交互に配され、また、裏面12bにおいて、第1印刷膜32によって塞がれた開口部22bと、第2印刷膜32の孔部32aによって開放された開口部23aとが交互に配されてなるので、図1に示す多孔板吸音体1と同様、貫通孔22、23内への塵埃の侵入をより効果的に防止でき、経時変化による劣化が抑制され、貫通孔22、23による吸音作用がより安定して得られる。さらに、多孔板12が第1印刷膜31及び第2印刷膜32によって充分に保護されるので、手垢等が付着しにくく、多孔板12の変色を防止でき、良好な外観特性及び意匠性が得られる。
【0054】
また、上記方法とされた本実施形態の多孔板吸音体10の製造方法によれば、金属板20の表面20aに、複数の孔部31aが備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜31を形成する工程と、裏面20bに、表面20a側に形成された第1印刷膜31の複数の孔部31aに対し、金属板20を介して交互にずれて配される複数の孔部32aが備えられたマスキングパターンからなる第2印刷膜32を形成する工程と、金属板20に対し、エッチング法によって、第1印刷膜31が形成された表面20a側から複数の貫通孔22を形成するとともに、第2印刷膜32が形成された裏面20b側から、複数の貫通孔23を形成して多孔板12とする工程とが備えられているので、第1の実施形態の多孔板吸音体1と同様、高価で大掛かりな設備を用いること無く、シンプルな工程を用いて、高効率で安価な方法で多孔板吸音体10を製造することができる。さらに、上述のように交互に配された孔部31a又は孔部32aが設けられたマスキングパターンがそのまま多孔板12上の第1印刷膜31又は第2印刷膜32として用いられるので、貫通孔22、23への塵埃の侵入をより効果的に防止でき、経時変化による劣化が抑制され、安定した吸音作用を有する多孔板吸音体10が、高効率で安価な方法で得られる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明に係る多孔板吸音体及びその製造方法について、実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0056】
本実施例では、下記表1に示す条件で、各材質の金属板の両面に樹脂塗料を印刷することにより、適宜孔部が備えられたマスキングパターンからなる各印刷膜を形成し、金属板に対して印刷膜上からエッチング処理を施すことにより、金属板に複数の貫通孔が形成された多孔板とすることにより、各実施例及び比較例の多孔板吸音体のサンプルを作製した。
そして、これら多孔板吸音体のサンプルを、平面視で600mm×600mmのパネル形状とし、図6(a)、(b)に示すようなステンレス鋼及びアルミニウム部材からなる枠体Aにねじ止め固定し、吸音パネルとした。この際、背後空気層の厚さは50mmとし、この背後空気層にはグラスウール等を充填せずに空の状態とした。
【0057】
そして、上記多孔板吸音体のサンプルを直径100mmに切り出し、背後空気層=50mm、音源周波数=1kHzにおける垂直入射吸音率の測定を、多孔板吸音体のサンプル作製直後と6ヶ月経過後の計2回行い、初期特性と経時変化について評価した。また、これと同時に、多孔板吸音体に印刷膜形成面から素手で触り、その後の外観変化の有無を、多孔板吸音体の表面から1mの距離の位置で目視確認した。
各実施例及び比較例の多孔板吸音体サンプル製造条件、及び垂直入射吸音率の測定結果の一覧を下記表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
[実施例1]
図4(a)に示すように、予めデザイン処理を施したステンレス鋼(SUS304)からなる厚さ0.1mm(100μm)の金属板を用意した。そして、スクリーン印刷法を用い、図4(b)に示すような、印刷版(符号50を参照)上にローラでポリエステル樹脂塗料(ソルレス(登録商標):浜二ペイント株式会社製)を連続塗布し、この状態とされた印刷版によって、金属板の表面(図中において符号20a側)にマスキングパターンとして印刷した後、乾燥処理を施し、孔部が設けられた厚さ1μmの第1印刷膜を形成した。
次いで、図4(c)に示すように、金属板の裏面側(図中において符号20b側)に対して、上記同様のポリエステル樹脂塗料をスプレーで塗布した後に乾燥処理し、厚さ1μmのベタマスキングパターンからなる第2印刷膜を形成した。次いで、図4(d)に示すように、金属板に対し、孔部が設けられた第1印刷膜が形成された表面(図中において符号20a)側からエッチングを行い、金属板に複数の貫通孔を形成して多孔板を製造した。この際、エッチング液として塩酸溶液を用いて、スプレー吹き付けによってエッチングを行なった。また、貫通孔の径は、最大径が0.3mm、最小径が0.1mmで平均開口径を0.2mmとし、ピッチを2mm、開口率を0.9%とした。以上のような方法により、実施例1の多孔板吸音体を作製した。
【0060】
そして、実施例1の多孔板吸音体を、図6に示すような枠体Aに取り付けた状態とし、上述した条件で垂直入射吸音率を測定するとともに、上述のような目視による外観確認を行なった。
実施例1における垂直入射吸音率の測定結果及び外観確認結果を表1に結果を示す。
【0061】
表1に示すように、実施例1の多孔板吸音体が取り付けられた吸音パネルは、サンプル作製直後の垂直入射吸音率が88%と非常に優れた特性を示し、また、6ヶ月経過後の垂直入射吸音率が90%と、経時変化による劣化は見られなかった。
また、実施例1の多孔板吸音体は、枠体Aに取り付けられて吸音パネルとされてから6ヶ月経過後に指で触った後の外観変化がほとんど無く、経時変化による劣化はみられなかった。
これは、本発明に係る実施例1の多孔板吸音体が、上記構成の各印刷膜及び貫通孔を設けることにより、貫通孔に塵埃等が侵入するのが防止され、経時変化で吸音特性及び外観特性の劣化が抑制されているためと考えられる。
またさらに、実施例1の多孔板吸音体は、上記方法で製造することにより、貫通孔を形成するためのエッチング処理に用いるマスキングパターンが、多孔板上の各印刷膜として形成されるものなので、材料が少なくて済み、また、製造工程を省力化でき、低コストで製造可能であることが確認できた。
【0062】
[実施例2]
実施例2では、ポリエステル樹脂塗料からなる各印刷膜の厚さを10μmとした点を除き、実施例1と同様にして多孔板吸音体を作製し、また、実施例1と同様の測定を行なった。
実施例2における垂直入射吸音率の測定結果及び外観確認結果を表1に示すとともに、図7(a)にサンプルを作製直後の垂直入射吸音率の特性グラフを示し、図7(b)に6ヶ月経過後の垂直入射吸音率の特性グラフを示す。
【0063】
表1に示すように、実施例2の多孔板吸音体が取り付けられた吸音パネルは、サンプル作製直後の垂直入射吸音率が88%と優れた特性を示し、また、6ヶ月経過後の垂直入射吸音率が87%と、経時変化による劣化がほとんど見られなかった。
また、実施例2の多孔板吸音体は、枠体Aに取り付けられて吸音パネルとされてから6ヶ月経過後に指で触った後の外観変化がほとんど無く、経時変化による劣化はみられなかった。
これは、実施例1と同様、実施例2の多孔板吸音体が、上記構成の各印刷膜及び貫通孔を設けることにより、貫通孔に塵埃等が侵入するのが防止され、経時変化で吸音特性及び外観特性の劣化が抑制されているためと考えられる。さらに、実施例1と同様、実施例2の多孔板吸音体は、上記方法で製造することにより、貫通孔を形成するためのエッチング処理に用いるマスキングパターンが、多孔板上の各印刷膜として形成されるものなので、材料が少なくて済み、また、製造工程を省力化でき、低コストで製造可能であることが確認できた。
【0064】
[実施例3]
実施例3では、金属板を銅板として多孔板を形成し、また、ポリエステル樹脂塗料からなる各印刷膜の厚さを5μmとした点を除き、実施例1と同様にして多孔板吸音体を作製し、また、実施例1と同様の測定を行なった。
実施例3における垂直入射吸音率の測定結果及び外観確認結果を表1に結果を示す。
【0065】
表1に示すように、実施例3の多孔板吸音体が取り付けられた吸音パネルは、サンプル作製直後の垂直入射吸音率が91%と非常に優れた特性を示し、また、6ヶ月経過後の垂直入射吸音率が90%と、経時変化による劣化がほとんど見られなかった。
また、実施例3の多孔板吸音体は、実施例1と同様、枠体Aに取り付けられて吸音パネルとされてから6ヶ月経過後に指で触った後の外観変化がほとんど無く、経時変化による劣化はみられなかった。
【0066】
[実施例4]
実施例4では、図5(a)に示すような、予めデザイン処理を施したステンレス鋼(SUS304)からなる厚さ0.1mm(100μm)の金属板を用意した。そして、スクリーン印刷法を用い、図5(b)に示すような、印刷版(符号51を参照)上にローラでポリエステル樹脂塗料(ソルレス(登録商標):浜二ペイント株式会社製)を連続塗布し、この状態とされた印刷版によって、金属板の表面(図中において符号20a側)に、孔部が設けられたマスキングパターンとして印刷した。次いで、同様の方法により、図5(c)に示すように、印刷版(符号52を参照)を用いて、金属板の裏面(図中において符号20b側)に、表面に形成された印刷膜の孔部に対して、交互にずれて配された孔部(符号32a参照)が設けられたマスキングパターンとして印刷した。そして、これら金属板の表面及び裏面に印刷したマスキングパターンに乾燥処理を施すことにより、各々5μmの厚さを有する第1印刷膜及び第2印刷膜とした。次いで、図5(d)に示すように、金属板に対し、孔部が備えられた各印刷膜が形成された表面及び裏面からからエッチングを行い、金属板に複数の貫通孔を形成して多孔板を製造した。この際、エッチング液として塩酸溶液を用いて、スプレー吹き付けによってエッチングを行なった。また、貫通孔の径は、最大径が0.3mm、最小径が0.1mmで平均開口径を0.2mmとし、ピッチを1mm、開口率を1.8%とした。
以上のような方法により、実施例4の多孔板吸音体(図2参照)を作製し、実施例1と同様の測定を行なった。
実施例4における垂直入射吸音率の測定結果及び外観確認結果を表1に示すとともに、6ヶ月経過後の垂直入射吸音率の特性グラフを図8に示す。
【0067】
表1に示すように、実施例4の多孔板吸音体が取り付けられた吸音パネルは、サンプル作製直後の垂直入射吸音率が56%となり、音響設計において実用上充分な垂直入射吸音率(50%以上)が得られた。
また、実施例4では、6ヶ月経過後の垂直入射吸音率が55%であり、実施例1と同様、経時変化による劣化はほとんど見られなかった。
また、実施例4の多孔板吸音体は、実施例1と同様、枠体Aに取り付けられて吸音パネルとされてから6ヶ月経過後に指で触った後の外観変化がほとんど無く、経時変化による劣化はみられなかった。
【0068】
[比較例1]
比較例1では、金属板に対してレーザー加工法により、表1に示す寸法の貫通孔を形成して多孔板とし、また、この多孔板の表面側及び裏面側の何れにも印刷膜を設けず、それ以外の点については、実施例1と同様にして多孔板吸音体を作製し、また、実施例1と同様の測定を行なった。
比較例1における垂直入射吸音率の測定結果を表1に結果を示すとともに、垂直入射吸音率の特性グラフを図9に示す。
【0069】
表1及び図9に示すように、比較例1の多孔板吸音体が取り付けられた吸音パネルは、サンプル作製直後の垂直入射吸音率が88%と比較的優れた特性を示したものの、6ヶ月経過後の垂直入射吸音率が40%と、非常に大きな劣化が見られた。これは、比較例1の多孔板吸音体が印刷膜を持たないことから、6ヶ月の間に多孔板の貫通孔に塵埃が侵入し、貫通孔による吸音作用が著しく低下したためと考えられる。
また、比較例1の多孔板吸音体は、枠体Aに取り付けられて吸音パネルとされてから6ヶ月経過後に素手で触った後の状態を目視確認したところ、多孔板表面に指紋痕がはっきりと残った状態となり、多孔板表面から1m離れた位置からも、指紋痕がはっきりと確認された。
またさらに、比較例1の多孔板吸音体は、レーザー加工法によって金属板に多数の貫通孔を形成する方法で作製したため、加工に時間がかかるとともに、レーザーを用いることで加工コストが上昇し、製造コストが顕著に増大することが確認された。
【0070】
[比較例2]
比較例2では、金属板に対してレーザー加工法により、表1に示す寸法の貫通孔を形成して多孔板とし、また、この多孔板の表面及び裏面に、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ5μmのシートを貼り合わせて多孔板吸音体を作製し、実施例1と同様の測定を行なった。
比較例2における垂直入射吸音率の測定結果を表1に結果を示す。
【0071】
表1に示すように、比較例2の多孔板吸音体が取り付けられた吸音パネルは、サンプル作製直後の垂直入射吸音率が88%であり、また、6ヶ月経過後の垂直入射吸音率が88%と、比較的良好な吸音特性が得られている。
しかしながら、比較例2の多孔板吸音体は、枠体Aに取り付けられて吸音パネルとされてから6ヶ月経過後に指で触った後の外観変化は目立たないものの、多孔板の表面に貼り合わせたフィルムの耐久性に難があり、経時変化による傷み等が確認された。
またさらに、比較例2の多孔板吸音体は、レーザー加工法によって金属板に多数の貫通孔を形成する方法で多孔板を作製し、これにフィルムを貼り合わせて製造したため、加工に時間がかかるとともに、加工コストや材料コストが上昇し、製造コストが顕著に増大することが確認された。
【0072】
[比較例3]
比較例3では、ポリエステル樹脂塗料からなる各印刷膜の厚さを15μmとした点を除き、実施例1と同様にして多孔板吸音体を作製し、また、実施例1と同様の測定を行なった。
比較例3における垂直入射吸音率の測定結果及び外観確認結果を表1に示すとともに、図10に、サンプルを作製直後及び6ヶ月経過後の垂直入射吸音率の特性グラフを示す。
【0073】
表1に示すように、比較例3の多孔板吸音体は、ポリエステル樹脂からなる各印刷膜が設けられているため、枠体Aに取り付けられて吸音パネルとされてから6ヶ月経過後の外観の変化がほとんど無く、経時変化による劣化はみられなかった。
しかしながら、比較例3の多孔板吸音体が取り付けられた吸音パネルは、表1及び図10に示すように、サンプル作製直後の垂直入射吸音率が35%と非常に低く、また、6ヶ月経過後の垂直入射吸音率が30%であった。これは、比較例3の印刷膜が15μmと厚すぎ、音が印刷膜を透過し難いため、貫通孔による吸音作用が得られなかったものと考えられる。
【0074】
以上の結果により、本発明で得られる多孔板吸音体が、貫通孔への塵埃の侵入を効果的に防止でき、また、経時変化等による劣化が抑制され、吸音特性及び外観特性に優れるとともに、低コストで生産性に優れていることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の多孔板吸音体の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の多孔板吸音体の他例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の多孔板吸音体の他例を示す断面模式図である。
【図4】本発明の多孔板吸音体の製造方法の一例を説明する模式工程図であり、(a)は板材に表面処理を行う工程を示し、(b)は金属板の表面側に孔部を有する第1印刷膜を形成する工程、(c)は金属板の裏側にベタマスキングパターンからなる第2印刷膜を形成する工程、(d)は金属板を表面側からエッチング処理して貫通孔を形成する工程である。
【図5】本発明の多孔板吸音体の製造方法の他例を説明する模式工程図であり、(a)は金属板に表面処理を行う工程を示し、(b)は金属板の表面側に孔部を有する第1印刷膜を形成する工程、(c)は金属板の裏側に孔部を有する第2印刷膜を形成する工程、(d)は金属板を表面及び裏面側からエッチング処理して貫通孔を形成する工程である。
【図6】本発明の多孔板吸音体の実施例を説明するための模式図であり、(a)は多孔板吸音体を枠体に取り付けた状態を示す断面図、(b)は(a)の平面図である。
【図7】本発明の多孔板吸音体の実施例を説明するための模式図であり、垂直入射吸音率の特性を示すグラフである。
【図8】本発明の多孔板吸音体の実施例を説明するための模式図であり、垂直入射吸音率の特性を示すグラフである。
【図9】本発明の多孔板吸音体の実施例を説明するための模式図であり、垂直入射吸音率の特性を示すグラフである。
【図10】本発明の多孔板吸音体の実施例を説明するための模式図であり、垂直入射吸音率の特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0076】
1、10…多孔板吸音体、2、12…多孔板、2a、12a…表面(多孔板の一方の面)、2b、12b…背面(多孔板の他方の面)、20…金属板、20a…表面(金属板の一方の面)、20b…裏面(金属板の他方の面)、21、22、23…貫通孔、21a、22a、23a、21b、22b、23b…開口部、3…第1印刷膜(第1の実施形態)、30…第2印刷膜(第1の実施形態)、31…第1印刷膜(第2の実施形態)、32…第2印刷膜(第2の実施形態)、D…貫通孔の径、d…孔部の径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が形成された金属からなる多孔板を備え、該多孔板の両面に前記貫通孔の開口部が各々形成されており、
前記多孔板の一方の面において、前記貫通孔の開口部の少なくとも一部を開放するように孔部が配された第1印刷膜が形成されており、
前記多孔板の他方の面において、前記貫通孔の開口部を塞ぐように全面に第2印刷膜が形成されてなることを特徴とする多孔板吸音体。
【請求項2】
複数の貫通孔が形成された金属からなる多孔板を備え、該多孔板の両面に前記貫通孔の開口部が各々形成されており、
前記多孔板の一方の面には第1印刷膜が、他方の面には第2印刷膜が各々形成され、これら第1印刷膜及び第2印刷膜は、前記多孔板に設けられた貫通孔の開口部に対して、少なくとも一部を開放するように孔部が配されるか、又は、塞ぐように形成されており、
前記多孔板の一方の面において、前記第1印刷膜の孔部によって開口部が開放された貫通孔には、前記多孔板の他方の面側の開口部を塞ぐように第2印刷膜が形成されており、
前記一方の面において、前記開口部を塞ぐように第1印刷膜が形成されている貫通孔は、前記他方の面側の開口部が前記第2印刷膜に設けられた孔部によって開放されてなることを特徴とする多孔板吸音体。
【請求項3】
前記多孔板の厚さが50〜300μmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔板吸音体。
【請求項4】
前記貫通孔の径が100〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の多孔板吸音体。
【請求項5】
前記孔部の開口率が、前記多孔板の一方の面又は他方の面の各々に対して0.2〜20%の範囲とされていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の多孔板吸音体。
【請求項6】
前記第1印刷膜及び第2印刷膜の厚さが1〜10μmの範囲とされていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の多孔板吸音体。
【請求項7】
金属板の一方の面に、複数の孔部が備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜を形成する工程と、
前記金属板の他方の面に、ベタマスキングパターンからなる第2印刷膜を形成する工程と、
前記金属板に対し、前記孔部を備える第1印刷膜が形成された一方の面側から、エッチング法によって複数の貫通孔を形成して多孔板とする工程と、が備えられていることを特徴とする多孔板吸音体の製造方法。
【請求項8】
金属板の一方の面に、複数の孔部が備えられたマスキングパターンからなる第1印刷膜を形成する工程と、
前記金属板の他方の面に、前記一方の面に形成された第1印刷膜の複数の孔部に対し、前記金属板を介して交互にずれて配される複数の孔部が備えられたマスキングパターンからなる第2印刷膜を形成する工程と、
前記金属板に対し、前記第1印刷膜又は第2印刷膜が各々形成された一方の面及び他方の面の両面側から、エッチング法によって複数の貫通孔を形成して多孔板とする工程と、が備えられていることを特徴とする多孔板吸音体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−233793(P2008−233793A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77044(P2007−77044)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】