説明

多孔質材料およびその製造方法

三次元オープンセル格子を含み、水に溶解可能なポリマー材料10〜95重量%および界面活性剤5重量%未満を含有する、水に溶解可能または分散可能な多孔質体であって、前記多孔質体が(後述する)水銀ポロシメトリーで測定した場合に少なくとも約おp3ml/gの細孔容積を有する、多孔質体(ただし、前記多孔質体は0.2〜5mmの平均ビーズ直径を有する球形ビーズではないことを条件とする)に関する。また、この多孔質体の製造方法に関する。この製造方法は、ポリマー材料と任意の界面活性剤との液体媒体中の均質混合物を準備する工程と、前記液体媒体を急速凍結させるために有効な温度の液体寒剤を準備する工程と、前記液体媒体の凍結温度未満の温度で、前記液体媒体を急速凍結させるために有効な時間、前記液体媒体を前記液体寒剤で冷却する工程と、凍結した前記液体媒体を凍結乾燥させて、昇華により前記液体媒体を除去することにより多孔質体を形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体に溶解可能または分散可能な多孔質材料、および、そのような多孔質材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らの、同時係属している国際特許出願PCT/GB03/03226は、0.2〜5mmの範囲の平均ビーズ直径をもち、水溶性ポリマー物質の三次元オープンセル格子を含む、多孔質ビーズの形成について記載している。
【0003】
これらは、典型的には、高内部相エマルションから非水性分散相を除去することにより形成される「テンプレート」材料である。このビーズを凍結乾燥して、水性相のバルクを除去する。これにより、エマルションの「骨格」形態が後に残る。このビーズは、水に速やかに溶解し、乾燥前にエマルション内に分散させていた非水溶性の成分をビーズの溶解と同時に水に分散させることもできるという顕著な特性を有する。界面活性剤は、典型的には、乳化剤として存在する。
【0004】
パーソナルケア製品(例えば、脱臭剤、皮膚および毛のクリーニングまたはケア製品等)、または家庭用品(例えば、洗濯物のクリーニングまたはケア製品、または硬質表面および軟質表面のための住まいのクリーニングまたはケア製品等)において、疎水性物質を水性環境中に処方することが望ましい場合が多い。これらの物質は、その疎水性の性質のため、水性環境中に分散しにくいことが多い。このような物質の非制限的な例としては、トリクロサン(Triclosan(登録商標))(Irgasan(登録商標)としても知られている)、すなわち塩素化されたジフェニルエーテル化合物〔5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール〕が挙げられる。これは広く使用されている抗菌化合物であるが、中性のpHで水にごく微量しか溶解しない。特別な溶媒またはアルカリ性のpHを用いないでトリクロサンの溶液を速やかに形成する手段があれば有用であろう。
【特許文献1】国際特許出願PCT/GB03/03226号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビーズではなく、かつ、存在する界面活性剤の濃度が低い多孔質体の製造に関連する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面によれば、三次元オープンセル格子を含む、水性媒体に溶解可能または分散可能な多孔質体であって、
(a)水に溶解可能なポリマー材料 10〜95重量%、および
(b)界面活性剤 5重量%未満、
を含有し、
前記多孔質体が(以下に説明する)水銀ポロシメトリーで測定した場合に少なくとも約3ml/gの細孔容積を有する、
多孔質体(ただし、前記多孔質体は0.2〜5mmの平均ビーズ直径を有する球形ビーズではないことを条件とする)を提供する。
【0007】
本発明の別の側面によれば、前記多孔質体の製造方法であって、
以下の工程:
(I)(a)水性相、
(b)水非混和性の第二相、
(c)水性相に溶解可能なポリマー、
のエマルションを、その連続相が固体になる温度に冷却する工程、および
(II)その後、エマルションの連続相および分散相のバルクを除去する工程、
を含む、製造方法を提供する。
【0008】
冷却されたエマルションは、その相のバルクが除去される時にその構造を維持し、固体の、ポリマー含有格子を残す。このように形成された格子は、その成分の溶解を助ける、大きな表面積を特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明がよりよく理解され実施されるように、種々の好ましい特徴および具体的な実施例を参照しながら以下に説明する。
【0010】
〔水溶性ポリマー〕
ポリマー材料は、「水溶性」であると当業者に考えられる物質(すなわち、水中で均一溶液を形成する場合)である。水溶性ポリマーは、概して、ペンダント極性基またはペンダントイオン化可能基〔例えば、-C=O基、-OH基、-N(Rl)(R2) 基(式中、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、独立してHまたは(C1〜C4)アルキルである。)、-N(R3) (R4) (R5)+基(式中、R3、R4およびR5は、同一でも異なっていてもよく、独立してHまたは(C1〜C4)アルキルである。)、-CON(R6) (R7)基(式中、R6およびR7は、同一でも異なっていてもよく、独立してHまたは(C1〜C4)アルキルである。)、-CH2CH20-基、-CO2H基またはその塩、-S03H基またはその塩〕を疎水性であってもよい主鎖上に有する。
【0011】
水溶性ポリマー材料の例として:
・天然ポリマー(例えば、グアールガムもしくはローカストビーンガムなどの天然ガム、またはデキストランもしくはセルロースなどの多糖類);
・セルロース誘導体、例えば、キサンタンガム、キシログルカン、セルロースアセテート、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩類(例えば、ナトリウム塩−SCMC)、またはカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースおよびその塩類(例えば、ナトリウム塩);
・以下の表1に列挙したいずれか1種のモノマーのホモポリマー類;
・以下の表1に列挙した2種以上のモノマーから調製されたコポリマー類;および
・それらの混合物、
が挙げられる。
【0012】
表1
ビニルアルコール、
アクリル酸、
メタクリル酸、
アクリルアミド、
メタクリルアミド、
アクリルアミドメチルプロパンスルホネート類、
アミノアルキルアクリレート類、
アミノアルキルメタクリレート類、
ヒドロキシエチルアクリレート、
ヒドロキシエチルメチルアクリレート、
ビニルピロリドン、
ビニルイミダゾール、
ビニルアミン類、
ビニルピリジン、
エチレングリコール、
エチレンオキシド、
エチレンイミン、
スチレンスルホネート類、
エチレングリコールアクリレート類、
エチレングリコールメタクリレート類。
【0013】
ポリマー材料がコポリマーである場合は、統計コポリマー(これまでにランダムコポリマーとしても知られている)、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、または超分岐コポリマーであってよい。
【0014】
表1に列挙したもの以外のコモノマー類も、それらの存在が、得られるポリマー材料の水溶性もしくは水分散性を損なうことがない場合は、列挙されたものに加えて含まれうる。
【0015】
適切なホモポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド類(例えば、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド等)、ポリメタクリルアミド;ポリアクリルアミン類;ポリメチルアクリルアミン類(例えば、ポリジメチルアミノ−エチルメタクリレート、およびポリ−N−モルホリノエチルメタクリレート等)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ならびにこれらのエトキシル化誘導体が挙げられる。
【0016】
〔生成物の形態〕
本多孔質ポリマー体のかさ密度は、好ましくは、約0.01〜約0.2g/cm、より好ましくは約0.02〜約0.09g/cm、最も好ましくは約0.03〜約0.08g/cmの範囲である。
【0017】
水銀ポロシメトリーによって(以下に記載するように)測定した、本多孔質体の細孔容積は、好ましくは少なくとも約3ml/g、より好ましくは少なくとも約4ml/g、さらに好ましくは少なくとも約5ml/g、最も好ましくは少なくとも約6ml/g、である。例えば、細孔容積は、約3ml/g〜約30ml/g、好ましくは約4ml/g〜約25ml/g、より好ましくは約10ml/g〜約20ml/gであってよい。
【0018】
細孔容積は、本発明の多孔質体内の全気孔容積の(この一般的タイプの材料についての)非常に良好な尺度を提供する。
【0019】
本多孔質体は、粉末、ビーズ(0.2〜5mmの平均ビーズ直径を有する球形ビーズは除く)、もしくは成形体の形態であってよい。粉末は、ビーズ形態の多孔質体の粉末化、または製造工程の他の段階におけるものの粉末化によって調製することができる。
【0020】
好ましい形態は:
・ 数平均直径が0.2mm未満、より好ましくは1〜150ミクロンの範囲の粉末、
・ 0.2〜5mmの範囲のサイズの非球形粒子、および
・ 5mmより大きい粒子または物体、である。
【0021】
〔担体としての多孔質体〕
本発明の多孔質体は、ポリマー溶液を形成する手段としての実用性があるが、任意選択で、ポリマー体を水性媒体に分散すると分散されることになる疎水性物質をその格子内に含む。このような疎水性物質の水性媒体への分散は大幅に向上する。
【0022】
この疎水性物質は、水中油型のエマルションの不連続油相(それから格子が作られる)にこれらを溶解することにより格子内に組み込むことができる。
【0023】
本発明はまた、さらなる側面において、疎水性物質をその中に含む本発明の多孔質体を、水性媒体に曝すことによって得ることができる、水溶性ポリマーおよび疎水性物質を含む溶液もしくは分散液を含む。
【0024】
本発明の多孔質体を使用すると、この分散が容易になり、多くの場合において、疎水性物質を以前より効果的に分散させることを可能にする。このことは、疎水性物質の活性を大幅に向上させることができる。例えば、トリクロサンの場合、水中で粒子を分散させることができるが、トリクロサンの大部分は溶解しないままであり、したがって利用することができない。
【0025】
製品が使用される時点で、疎水性物質を分散することが必要とされる場合がある。この場合、本発明の多孔質体は、本発明の多孔質体を水性環境に曝すことによってこの製品を使用するまで製品中に含有され、使用時に水に溶解可能/分散可能な多孔質体格子が壊れ、疎水性物質を放出する。
【0026】
本発明の多孔質体は、製品(例えば、製品の製造中における、液体製品)中に疎水性物質を導入するために使用することができる。この場合、本発明の多孔質体の格子は、
本発明の多孔質体が製造の間に水性環境に接触したときに壊れ、製造されている製品中に疎水性物質をより容易に組み込むことができる形態で、疎水性物質を放出する。
【0027】
本発明の多孔質体は、物質を製品中に組み込むことができる場所にそれらを輸送するために使用してもよい。液体製品を多孔質体に変換することによって、多量の液体を輸送する必要が回避でき、大きなコスト削減と、液体で輸送された場合に潜在的に危険な物質のよりいっそう安全な輸送をもたらすことができる。液体形態で貯蔵または輸送した場合に潜在的に不安定な物質を、本発明の多孔質体中に組み込み、分解の危険をより少なくして貯蔵及び輸送することができる。
【0028】
潜在的に不安定な疎水性物質(例えば、ワクチン、ビタミン、または香料)の本発明の多孔質体中への組み込みは、それらを使用前の貯蔵時の分解から保護することができる。
【0029】
本発明の多孔質体をその中に用いることができる製品のいくつかの具体例を以下に示す。これらは例としてのみ示し、本発明の応用可能性を限定しようとするものではない。しかし、当業者は、本発明の多孔質体が、ここに具体的に例示していない他の分野における有用性を有することを理解するだろう。
【0030】
使用時に本発明の多孔質体から放出される疎水性物質には以下が含まれる:
・ 抗菌剤、例えば:トリクロサン、クリンバゾール、オクタピロックス、ケトコナゾール、フタルイミドペルオキシヘキサン酸(PAP)、第四級アンモニウム化合物、コロイダル銀、酸化亜鉛。
・ ふけ防止剤、例えば:ジンクピリチオン。
・ 美白剤、例えば:4−エチルレゾルシノール。
・ 蛍光剤、例えば:洗濯用製品において、布地(例えば、綿、ナイロン(登録商標)、ポリコットン、又はポリエステル)に用いるための2,5-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン。
・ スキンコンディショニング剤、たとえば、コレステロール。
・ 消泡剤、例えば、イソパラフィン。
・ ヘアコンディショニング剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、タンパク質加水分解物、ペプチド類、セラミド類および疎水性コンディショニングオイル(例えば、パラフィンオイルなどの炭化水素油および/またはミネラルオイル等)、脂肪エステル類(例えば、モノ−、ジ−及びトリ−グリセリド等)、シリコーン油類〔例えば、ポリジメチルシロキサン類(例えば、ジメチコーン)〕、ならびにそれらの混合物。
・ 衣類のコンディショニング剤〔例えば、窒素原子に1以上のエステル基で結合した、任意選択で置換されていてもよい(C8〜C24)アルキル(アルケニル)鎖1〜3個、好ましくは2個を有する第四級アンモニウム化合物〕;疎水性モノパーティクル類〔例えば、スクロースポリエステル(例えばテトラ牛脂脂肪酸スクロース)等〕;シリコーン類(例えばポリジメチルシロキサン)。
・増粘剤、例えば、疎水変性したセルロースエーテル類(例えば、変性ヒドロキシエチルセルロース類等)。
・ 染料、例えば、衣類、繊維、皮膚又は毛の色を変化させるための染料。
・ サンスクリーン剤などのUV保護剤〔例えば、オクチルメトキシシンナメート(Parsol MCX)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(Parsol 1789)およびベンゾフェノン−3(Uvinul M-40)、フェルラ酸等〕。
・ 漂白剤または漂白剤前駆体、例えば、6−N−フタルイミドペルオキシヘキサン酸(PAP)または光漂白性化合物。本発明の多孔質体から漂白剤を分散すると、漂白剤のより微細な分散をもたらし、漂白剤のより大きな粒子が衣類に接触する場合にみられるスポットダメージを低減する。
・ 抗酸化剤、例えば、疎水性ビタミン(例えば、ビタミンE、レチノール等)、ヒドロキシトルエンをベースとする抗酸化剤(例えば、イルガノックス等)、または市販されている抗酸化剤(例えば、Trolloxシリーズ等)。
・ 使用前に固形組成物として貯蔵されるが、動物又は穀物にスプレーするために液体にされる、殺虫剤、農薬、除草剤。
・ 香料又は香味料またはそれらの前駆体。
・ 薬学的または獣医学的活性物質。飲料(例えば水)とともに摂取する必要なしに消費者によって服用されうる医薬組成物に対するニーズがある。これらの組成物は口腔内の湿分と相互作用して活性成分を放出し、次にこれが消費者に摂取される。本発明の多孔質体中に薬学的もしくは獣医学的活性分子を組み込むことによって、このニーズにあう医薬組成物が調製できる。
・ 上述したものと同様の方法で薬学的および獣医学的活性成分を配合して、それらが鼻腔、目、肺、もしくは直腸内または皮膚上(活性成分が局所的に作用すること、あるいは経皮吸収されて全身的に作用することができる場所)に活性物質を放出できるようにすることができる。
・ 本発明の多孔質体の格子内に適切なポリマー材料を用いることにより、分散が起こる条件にまで条件(例えば、温度もしくはpH)が変化するまで、多孔質体がそのままで残っているようにすることができる。したがって、ある温度に達するまで、またはpHが適切な値に変化する(例えば、多孔質体が胃腸管を通過するときに変化する等)まで、分散を遅延させることができる。胃腸管内の酸性度は胃腸管後方で低下するので、多孔質体が高いpH条件に曝された場合にのみ疎水性活性物質を分散する多孔質体は、薬学的もしくは獣医学的活性物質が、胃をそのまま通過して、腸内でのみ放出されることを可能にする。
【0031】
本発明の多孔質体が、製品の製造時に製品中に疎水性物質を組み込むために用いられる場合の例には以下が包含される:
・ 疎水性物質、例えば、蛍光剤;酵素;漂白剤;疎水性ポリマー〔例えば、疎水性に変性されたポリアクリレート、シリコーン類、疎水性に変性されたポリビニルピロリドン、スルファアルキルポリサッカライド、ジャガー(Jaguar)およびJRポリマー類〕;脂肪アルコール類もしくは脂肪酸類;染料(例えば、洗濯製品の色を回復するための着色性染料もしくは黒色染料)等の導入。
・ 水溶性インクジェット用組成物の製造における、疎水性染料を含有する本発明の多孔質体の使用。
・ 様々な疎水性物質を含有する多孔質体の導入は、本発明の適切な多孔質体を用いることにより、所望する疎水性物質がその中に導入される単一のベース配合物を生産者が生産することを可能にさせる。
・ 格子が壊れてラテックスを形成するときに水中に分散する疎水性ポリマーを含有する多孔質体の使用。適切な疎水性ポリマーを含有し、衣類上に沈着されるようなラテックスそ使用すると、衣類に防しわ性もしくは容易にアイロンがけができる性質が賦与される。
【0032】
本発明の多孔質体は、格子内に水溶性物質を含有することができ、この水溶性物質はポリマー体が水性媒体中に分散されるときに分散される。水溶性物質は、格子が作られる水性媒体中に水溶性物質を溶解することによって格子中に組み込むことができる。
【0033】
適切な水溶性物質の例には以下が含まれる:
・ 水溶性ビタミン類(例えば、ビタミンC等)、
・ 水溶性蛍光剤〔例えば、4,4’−ビス(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム塩(Tinopal CBS-Xの商標名で販売されている)等〕、
・ 活性化された塩化水和アルミニウム、
・ 漂白用触媒として用いられる遷移金属錯体、
・ 水溶性ポリマー(例えば、イソフタル酸のポリエステル類)、ゲロール(gerol)、キサンタン・ガム、またはポリアクリラート類等;ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、または
・ これらの混合物。
【0034】
本発明の多孔質体は、ポリマー体が水性媒体中に分散されたときに非常に微細な粒子として分散される物質を格子内に含む。これらの物質は、そこから多孔質体が製造される液体媒体中にこれらの物質を溶解または分散させることによって格子内に組み込むことができる。粒子が1ミクロン未満、好ましくは0.5ミクロン未満であり、それらがスキンケア製品中に組み込まれた場合は、分散された多孔質体が皮膚に適用されるときに使用者によって粒子が感じられることはないだろう。
【0035】
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、本多孔質体に5重量%未満の濃度で存在する。この界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性イオン性であってよい。
【0036】
好適な非イオン性界面活性剤の例としては、エトキシル化トリグリセリド類;脂肪アルコールエトキシレート類;アルキルフェノールエトキシレート類;脂肪酸エトキシレート類;脂肪アミドエトキシレート類;脂肪アミンエトキシレート類;ソルビタンアルカノエート類;エチル化ソルビタンアルカノエート類;アルキルエトキシレート類;プルロニックス(登録商標);アルキルポリグリコシド類;ステアロールエトキシレート類、が挙げられる。
【0037】
好適な陰イオン性界面活性剤の例としては、アルキルエーテルサルフェート類;アルキルエーテルカルボキシレート類;アルキルベンゼンスルホネート類;アルキルエーテルホスフェート類;ジアルキルスルホスクシネート類;アルキルスルホネート類;石けん類;アルキルサルフェート類;アルキルカルボキシレート類;アルキルホスフェート類;パラフィンスルホネート類;二級n−アルカンスルホネート類;α−オレフィンスルホネート類;イセチオネートスルホネート類、が挙げられる。
【0038】
好適な陽イオン性界面活性剤の例としては、脂肪アミン塩類;脂肪ジアミン塩類;第四級アンモニウム化合物類;ホスホニウム界面活性剤;スルホニウム界面活性剤;スルホキソニウム界面活性剤、が挙げられる。
【0039】
好適な両性イオン性界面活性剤の例としては、アミノ酸(例えば、グリシン、ベタイン、アミノプロピオン酸等)のN−アルキル誘導体;イミダゾリン界面活性剤;アミンオキシド類;アミドベタイン類、が挙げられる。
【0040】
界面活性剤混合物を使ってもよい。しかし、界面活性剤が低い濃度(好ましくは、3重量%未満、より好ましくは1重量%未満)でしか存在しないか、全く存在しないことが好ましい。
【0041】
〔製造方法〕
上述したように、本多孔質体を調製するために好適な1つの方法は、以下の工程:ポリマーを含有する水中油型エマルションをその連続相が固体になる温度に冷却する工程、ならびに、その後、連続相および分散相のバルクを除去する工程、を含む。
【0042】
本発明のさらなる側面によれば、三次元オープンセル格子を含む、水に分散可能または溶解可能な多孔質体の製造方法であって、
前記多孔質体が、
(a)水に溶解可能なポリマー材料 10〜95重量%、および
(b)界面活性剤 5重量%未満、
を含有し、
前記多孔質体が(以下に説明する)水銀ポロシメトリーで測定した場合に少なくとも約3ml/gの細孔容積を有し(ただし、前記多孔質体は0.2〜5mmの平均ビーズ直径を有する球形ビーズではないことを条件とする)、
以下の工程:
(a)ポリマー材料の液体媒体中の均質混合物を準備する工程、
(b)前記液体媒体を急速凍結させるために有効な温度の液体寒剤を準備する工程、
(c)前記液体媒体の凍結温度未満の温度で、前記液体媒体を急速凍結させるために有効な時間、前記液体媒体を前記液体寒剤で冷却する工程、および
(d)凍結した前記液体媒体を凍結乾燥させて、昇華により前記液体媒体を除去することにより多孔質体を形成する工程、
を含む、製造方法を提供する。
【0043】
液体媒体中の界面活性剤の均質混合物は、好ましくは、ポリマー材料を含む連続水相と、不連続油相とを含有する、水中油型エマルションである。
【0044】
本多孔質体が粉末の形態であるべき場合は、液体媒体の冷却を、液体媒体を(好ましくは液体寒剤中に噴霧した形態で)スプレーすることにより行ってもよい。
【0045】
成形体形態の多孔質体は、本液体媒体を型に注ぎ、液体寒剤によってこの液体媒体を冷却することによって作ることができる。成形体を作成するための本発明の好ましい方法においては、液体寒剤で周囲を取り囲まれた予冷した型内に、液体媒体を注ぐ。
【0046】
凍結された液体媒体は、この凍結された液体媒体を高真空に曝すことによって凍結乾燥することができる。用いる条件は当業者に周知であり、適用する真空度と要する時間は、存在する凍結された液体媒体の全てが昇華によって除去されるようであるべきである。
【0047】
成形された多孔質ポリマー体の場合は、まだ型内にある凍結された液体媒体を用いて凍結乾燥を行ってもよい。あるいは、凍結された液体媒体を型から取り出し、その後凍結乾燥させてもよい。
【0048】
凍結乾燥工程は、本発明の多孔質体を得るために、最高で72時間前後まで行ってもよい。
【0049】
上記プロセスは、連続水相と、不連続油相とを含有する水中油型エマルションを用いることが好ましい。
【0050】
存在する場合には、界面活性剤は、エマルションの乳化剤として働くことができる。水中油型エマルション中の乳化剤としての使用に適した界面活性剤は、好ましくは、8〜18の範囲のHLB値を有する。
【0051】
水中油型エマルションの不連続油相は、連続相と非混和性の物質を含み、この物質は液体媒体を急速凍結させるために有効な温度よりも高い温度で凍結することが好ましく、かつ凍結乾燥段階で昇華によって除去可能であることが好ましい。
【0052】
エマルションの不連続油相は、以下の有機溶媒の1種以上から選択してもよい:
・ アルカン類(例えば、ヘプタン、n−ヘキサン、イソオクタン、ドデカン、デカン等);
・ 環式炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等);
・ ハロゲン化アルカン類、(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、フルオロトリクロロメタン、およびテトラクロエタン等);
・ エステル類(例えば、酢酸エチル等);
・ ケトン類(例えば、2−ブタノン等);
・ エーテル類(例えば、ジエチルエーテル等);
・ 揮発性環状シリコーン類(例えば、シクロメチコーン等);
およびこれらの混合物。
【0053】
好ましくは、この有機溶媒は、エマルションの約10〜95体積%、さらに好ましくは約20〜約60体積%を占める。好ましい溶媒はシクロヘキサンであり、なぜならシクロヘキサンの凍結温度は水の凍結温度よりも高く、シクロヘキサンの比熱容量は、水の比熱容量よりもずっと低いからである。このことはエマルションの急速凍結を引き起こす。
【0054】
好ましくは、液体寒剤は全ての成分の凍結温度より低い温度であることが好ましく、急速凍結を容易にするためにずっと低い温度であることが好ましい。この液体寒剤は、好ましくは、標準温度および標準圧力でガスまたは蒸気である物質の液化物質である。この液化液体寒剤は、液体媒体の凍結時に沸点になるか、あるいは外部冷却手段によってその沸点未満に冷却されてもよい。液体寒剤は、以下の群の1種以上から選択されてもよい:液体空気、液体窒素(b.p.-196℃)、液体アンモニア(b.p.-33℃)、液化希ガス(例えば、アルゴン)、液化ハロゲン化炭化水素(例えば、トリクロロエチレン)、クロロフルオロロカーボン(例えば、フレオン(RTM)等)、ヘキサン、ジメチルブテン、イソヘプタン、またはクメン。有機液体と固体二酸化炭素との混合物も、液体寒剤として使用することができる。適切な混合物の例として、クロロホルムもしくはアセトンと固体二酸化炭素(-77℃)、および、ジエチルエーテルと固体二酸化炭素(-100℃)、が挙げられる。
【0055】
液体媒体は凍結乾燥時に好ましくは真空下で除去され、再利用のために回収することが好ましい。非常に低い沸点、不活性さ、除去容易性、および経済性により、液体窒素が好ましい液体寒剤である。
【0056】
エマルションは、典型的には、当業者に周知の条件下で、例えば、磁気撹拌子、ホモジナイザー、または回転式機械式撹拌機を使用して調製される。
【0057】
製造される多孔質ポリマー体は、通常、2種のタイプの気孔を含む。一方は固体氷の昇華により生じる。他方の種類の気孔構造は、油相の昇華により生じる。
【0058】
本発明による多孔質体の製造方法を、例示のみを目的とし、添付する実施例を参照して、さらに具体的に説明する。
【実施例】
【0059】
[実施例1]−親水性ポリマー(PVA)と共に疎水性活性剤(トリクロサン)を使用。
エマルションは以下のように調製した:
ポリビニルアルコール(0.89g、M=9,000〜10,000)を水(12ml)に溶解して連続相を形成した。この水性溶液に、シクロヘキサン(12ml)中のトリクロサン(1.0g)を含む分散相を(RW11型 Basic IKA パドル撹拌機で)激しく撹拌しながら添加した。
【0060】
このエマルションを、トリガースプレーを用いて液体窒素中にスプレーし、得られた凍結した粉末を凍結乾燥して粉末を形成させた。この凍結乾燥器(Edwards Supermodulyo)を、平均真空度0.2mbarで使用し、−50℃で運転した。
【0061】
この粉末は、水に急速に溶解してトリクロサンの透明な「溶液」を形成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元オープンセル格子を含む、水性媒体に溶解可能または分散可能な多孔質体であって、
(a)水に溶解可能なポリマー材料 10〜95重量%、および
(b)界面活性剤 5重量%未満、
を含有し、
前記多孔質体が(以下に説明する)水銀ポロシメトリーで測定した場合に少なくとも約3ml/gの細孔容積を有する、
多孔質体(ただし、前記多孔質体は0.2〜5mmの平均ビーズ直径を有する球形ビーズではないことを条件とする)。
【請求項2】
前記多孔質体が、粉末、ビーズ、又は成形体の形態である、請求項1に記載の多孔質体。
【請求項3】
前記ポリマー材料が、以下の(コ)モノマー類:
アルケン類;ジエン類;ウレタン類;ビニルエステル類;スチレン系(コ)モノマー;アルキル(メタ)アクリラート類;アルキル(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル類;ビニルエーテル類;イミド類;アミド類;無水物類;エステル類;エーテル類;カーボナート類;イソチオシアナート類;シラン類;シロキサン類;スルホン類;芳香族および脂肪族アルコール類;芳香族および脂肪族酸類;芳香族および脂肪族アミン類、
の1種以上から合成されるホモポリマーもしくはコポリマーである、請求項1又は2に記載の多孔質体。
【請求項4】
前記ポリマー材料が、ポリビニルアルコールである、請求項3に記載の多孔質体。
【請求項5】
前記多孔質ポリマー体が、ポリマー格子内に組み込まれた水溶性物質および/または非水溶性物質を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質体。
【請求項6】
前記水溶性物質が、水溶性ビタミン類;水溶性蛍光剤;活性塩化水和アルミニウム;漂白触媒として使用される遷移金属錯体;水溶性ポリマー;ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);C8を超える鎖長を含む一級または二級アルコールのサルフェート、またはこれらの混合物から選択される、請求項5に記載の水溶性多孔質ポリマー体。
【請求項7】
前記非水溶性物質が、抗菌剤;抗ふけ剤;美白剤;蛍光剤;消泡剤;ヘアーコンディショニング剤;布帛コンディショニング剤;スキンコンディショニング剤;染料;UV保護剤;漂白剤もしくは漂白剤前駆体;抗酸化剤;殺虫剤;農薬;除草剤;香料もしくはその前駆体;香味料もしくはその前駆体;薬学的活性物質;疎水性ポリマー材料、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項5に記載の水溶性多孔質ポリマー体。
【請求項8】
三次元オープンセル格子を含む、水に分散可能または溶解可能な多孔質体の製造方法であって、
前記多孔質体が、非水性媒体に溶解可能または分散可能であり、
(a)水に溶解可能なポリマー材料 10〜95重量%、および
(b)界面活性剤 5重量%未満、
を含有し、
前記多孔質体が(以下に説明する)水銀ポロシメトリーで測定した場合に少なくとも約3ml/gの細孔容積を有し(ただし、前記多孔質体は0.2〜5mmの平均ビーズ直径を有する球形ビーズではないことを条件とする)、
以下の工程:
(a)ポリマー材料と任意の界面活性剤との液体媒体中の均質混合物を準備する工程、
(b)前記液体媒体を急速凍結させるために有効な温度の液体寒剤を準備する工程、
(c)前記液体媒体の凍結温度未満の温度で、前記液体媒体を急速凍結させるために有効な時間、前記液体媒体を前記液体寒剤で冷却する工程、および
(d)凍結した前記液体媒体を凍結乾燥させて、昇華により前記液体媒体を除去することにより多孔質体を形成する工程、
を含む、製造方法。
【請求項9】
前記液体媒体の冷却を、噴霧した油中水型エマルションを前記液体寒剤中にスプレーすることにより;油中水型エマルションの液滴を前記液体寒剤中に滴下することにより;または、油中水型エマルションを型に注ぎ、前記型中で前記エマルションを冷却することにより行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー材料が、以下の(コ)モノマー類:
アルケン類;ジエン類;ウレタン類;ビニルエステル類;スチレン系(コ)モノマー;アルキル(メタ)アクリラート類;アルキル(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル類;ビニルエーテル類;イミド類;アミド類;無水物類;エステル類;エーテル類;カーボナート類;イソチオシアナート類;シラン類;シロキサン類;スルホン類;芳香族および脂肪族アルコール類;芳香族および脂肪族酸類;芳香族および脂肪族アミン類、
の1種以上から合成されるホモポリマーもしくはコポリマーである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー物質が、ポリビニルアルコールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記均質混合物が油中水型エマルションである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記エマルションの不連続相が前記エマルションの10〜95体積%を占める、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エマルションの不連続相が前記エマルションの20〜60体積%を占める、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エマルションの不連続相が、アルカン類;環式炭化水素類;ハロゲン化アルカン類;エステル類;ケトン類;エーテル類;揮発性環状シリコーン類;およびそれらの混合物、から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔質体を水性媒体に曝すことによって得ることができる、ポリマー材料を含む溶液又は分散液。
【請求項17】
ポリマー格子内に非水溶性物質が組み込まれた請求項5に記載の多孔質体を、水性媒体に曝すことによって得ることができる、ポリマー材料、界面活性剤、および親水性物質を含む溶液もしくは分散液。

【公表番号】特表2007−519797(P2007−519797A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550307(P2006−550307)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000315
【国際公開番号】WO2005/073296
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】