多孔質発熱体、多孔質発熱素子及びガス分解素子
【課題】流動するガスを効率よく加熱することができるとともに、熱分解させることができ、さらに、単独であるいは他のガス分解装置と組み合わせて用いることができる多孔質発熱体、多孔質発熱素子及びガス分解素子を提供する。
【解決手段】連続気孔1bを有する金属多孔質体からなる多孔質発熱体1であって、発熱材料からなる外殻と、中空又は/及び導電性材料からなる芯部とを有する骨格10が、一体的に連続する3次元網目構造を構成している。
【解決手段】連続気孔1bを有する金属多孔質体からなる多孔質発熱体1であって、発熱材料からなる外殻と、中空又は/及び導電性材料からなる芯部とを有する骨格10が、一体的に連続する3次元網目構造を構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、多孔質発熱体、多孔質発熱素子及びガス分解素子に関する。詳しくは、ガスを流動させて加熱分解するガス分解装置に好適な多孔質発熱体、多孔質発熱素子及びガス分解素子に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、アンモニアは農業や工業に不可欠の化合物であるがヒトには有害であるため、水中や大気中のアンモニアを分解する種々の方法が知られている。高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、アンモニア水を噴霧するとともに空気流と接触させて空気中にアンモニアを分離し、次亜臭素酸溶液又は硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また、上記方法と同じプロセスで空気中にアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法(特許文献2)や、アンモニア含有排水を、触媒を用いて、窒素と水に分解する方法が提案されている(特許文献3)。さらに、半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれることが多く、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除去する必要がある。この目的のために、半導体装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。一方、エネルギや薬品等の投入なしに安価なランニングコストで有害ガスを分解するために、リン酸燃料電池でアンモニアを分解する、半導体製造装置等における廃ガス処理の方法も提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開2003−45472号公報
【特許文献5】特許第3238086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような中和剤等の薬液を用いる方法、特許文献2に記載されているような燃焼させる方法、特許文献3に記載されているような触媒を用いた熱分解反応による方法により、アンモニアを分解することはできる。ところが、これらの方法では、薬品や外部エネルギ(燃料)を必要とし、さらには、触媒を定期的に交換する必要があり、ランニングコストが大きくなるという問題がある。
【0005】
また、装置が大掛かりとなり、既存の設備に付加的に設ける場合には、スペースを確保するのが困難である。また、リン酸型燃料電池を、化合物半導体製造の排気中のアンモニアの除去に用いる装置についても、電解質が液体であるため、空気側とアンモニア側との仕切りをコンパクトにできず、装置の小型化が難しいという問題があった。
【0006】
上記問題を解決するため、特許文献5に記載されているように、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を採用することができる。上記筒状MEAの内側空間を、分解されるガスを含む気体が、軸方向に流動させられる。
【0007】
上記ガスを分解するには、ガスを含む気体の温度をできるだけ高めて、上記筒状MEAの第1の電極層(燃料極)に作用させるのが好ましい。高いガス分解性能を得るためには、筒状MEAを高温に、たとえば、800℃以上に保持する必要がある。このため、加熱容器内に上記筒状MEAを収容し、上記筒状MEAの全体を加熱するように構成されている。
【0008】
ところが、筒状MEAの内側電極の表面積が限られているため、大量のガスを処理するのは困難であり、ガスの流量を増加させると、ガス分解効率が低下する。しかも、上記ガスの流量を増加させると、上記筒状MEA内でガスの温度が低下して、分解効率がさらに低下するという問題も生じる。
【0009】
また、流量を増加させると、ガスが上記筒状MEA内で滞在する時間が減少する。このため、上記ガスを充分に加熱してから上記筒状MEAに作用させることができないという問題も生じる。
【0010】
本願発明は、ガスを効率よく加熱することができるとともに、熱分解させることができ、さらに、単独であるいは他のガス分解装置と組み合わせて用いることができる多孔質発熱体、多孔質発熱素子及びガス分解素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に記載した発明は、連続気孔を有する金属多孔質体からなる多孔質発熱体であって、発熱材料からなる外殻と、中空又は導電性材料からなる芯部とを有する骨格が、一体的に連続する3次元網目構造を構成しているものに関する。
【0012】
本願発明に係る発熱体は、連続気孔を有する多孔質状に形成されているため、上記気孔内でガスを流動させて、効率よく加熱することができる。
【0013】
しかも、上記多孔質発熱体は、骨格が3次元網目構造に形成されているため、気孔率をきわめて大きく設定することができる。これにより、気孔内におけるガスの流動抵抗が小さくなり、大量のガスを流動させて加熱することが可能となる。また、上記骨格は、一体的に連続するように形成されている。このため、繊維状の発熱体を充填して構成される多孔質発熱体のように、隣接する各繊維間の接触抵抗が生じることがなく、多孔質発熱体内各部における電気抵抗が大きく変化することはない。したがって、多孔質発熱体内の電流の流れに偏在が生じることが少なく、多孔質発熱体の全体を均一に加熱することが可能となる。
【0014】
上記骨格を形成する手法は特に限定されることはない。たとえば、請求項3に記載した発明のように、上記骨格を、3次元網目状樹脂の表面にめっき層又は金属コーティング層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成することができる。上記骨格の外殻を金属めっき層又は金属コーティング層から形成することにより、骨格の厚みを非常に薄くかつ均一に設定することが可能となる。これにより、大きな気孔率を備える多孔質発熱体を形成することが可能となる。
【0015】
上記芯部は、製造方法に応じて、中空又は/及び導電性材料を含んで構成される。たとえば、上述したように、上記骨格を、3次元網目状樹脂の表面にめっき層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成する場合、上記樹脂が消失した部分が中空状となる。また、上記メッキ層を設けるために上記3次元網目状樹脂の表面に導電性材料をコーティング等して導電化処理を施した場合には、上記導電性材料からなる表面導電化層が中空芯部の内周面に残存する場合がある。さらに、メッキ処理の後に熱処理等を施した場合は、外殻が収縮して、中空部分が消失する場合もある。なお、上記芯部の構造は、発熱体の全体において均一である必要はなく、部分によって異なっていてもよい。たとえば、芯部を構成する導電性材料が後の熱処理によって溶解して、発熱体内で偏在したり、一部の中空部が消失した状態であってもよい。なお、上記表面導電化層は、多孔質発熱体の所要の発熱性能を阻害しないように厚み等が設定される。
【0016】
請求項2に記載した発明のように、上記多孔質発熱体における上記3次元網目構造は、上記骨格を構成する複数の枝部が結節部に集合して一体的に連続しているとともに、一の結節部に集合する上記各枝部の外殻の厚みがほぼ一定となるように構成するのが好ましい。上記結節部では各骨格(枝部)からの電流が集中するため、一の結節部に集合する各枝部の電気抵抗が異なると、結節部周りの一部の枝部に過大な電流が流れて温度が上昇し、骨格が溶断したり劣化する恐れがある。一の結節部に集合する枝部の外殻の厚みをほぼ一定に設定することにより、一の結節部に集合する各骨格の電気抵抗に大きな差異が生じることがなくなり、一の結節部に集合する一部の骨格に過大な電流が流れることもなくなる。これにより、骨格の溶断や劣化を防止することが可能となる。
【0017】
多孔質発熱体の一の結節部に集合する枝部の外殻の厚みがほぼ一定であればよく、発熱体全体の外殻の厚みが一定であることまで要求されるものではない。たとえば、製造方法等によっては、外殻の厚みが、発熱体の表層部と内部で異なることが考えられる。この場合、表層部の結節部に集合する各枝部の外殻厚みと、内部の結節部に集合する枝部の外殻厚みが異なることになる。しかし、各結節部に集合する骨格の厚みがほぼ一定であれば、一部の枝部に過大な電流が流れることはなく、結節部近傍の骨格が溶断するのを防止することができる。また、結節部周りの骨格が均等な強度を備えるため、強度も確保することができる。
【0018】
また、請求項3に記載した手法により、外殻をめっき層やコーティング層から形成すると、一の結節部に集合する骨格の外殻の厚みをほぼ一定に形成することが可能となる。これにより、一の結節部周りの外殻の電気抵抗に大きな差異が生じることがなくなり、多孔質発熱体の全域を均一に加熱することができる。
【0019】
発熱体である上記外殻を構成する材料は、特に限定されることはない。たとえば、請求項4に記載した発明のように、Niを67〜95%と、Crを5〜33%とを含む合金から形成するのが好ましい。上記範囲の配合量に設定することにより、上記多孔質発熱体を効率よく発熱させることができる。なお、上記NiとCrの配合比を保持した状態で他の成分が配合されてもよい。
【0020】
外殻をコーティング層から形成する場合、発熱体を構成するNiとCrを含む材料を3次元網目状樹脂の表面に直接コーティングして焼成し、多孔質発熱体を形成することができる。一方、Ni−Cr合金のめっき層を直接形成するのは困難である。請求項5に記載した発明は、多孔質発熱体が、Niを主成分とする金属多孔質体に、Crを拡散させることにより合金化されているものである。
【0021】
請求項5に記載した発明は、まず、Niから多孔質体を形成し、この多孔質体を構成するNiの表面から、Crを拡散させて発熱体として機能するNi−Cr合金としたものである。
【0022】
Niは、めっき処理しやすいため、上記骨格を容易に形成することができる。また、骨格の厚みや気孔率の異なる種々の金属多孔質体を容易に構成できる。そして、このNi多孔質体をCr合金化することによって、所要の電熱特性を備える種々の発熱体を構成できる。
【0023】
上記Ni多孔質体を、Cr合金化する手法は特に限定されることはない。たとえば、上記Ni多孔質体を、Cr源粉末の加熱により発生させた拡散浸透成分ガスと還元性希釈ガスとの混合ガス中で熱処理することにより、Ni多孔質体をNi−Cr合金とすることができる。
【0024】
また、請求項6に記載した発明のように、Niによって形成された第1の外殻に、Crで形成された第2の外殻を積層形成し、所定の熱処理を行うことにより、上記第1の外殻と上記第2の外殻とを互いに拡散させて合金化し、上記多孔質発熱体とすることができる。
【0025】
上記多孔質発熱体を発熱させるには、多孔質体内に通電する必要がある。一方、気孔率が高いと、配線を充分な接続面積を介して接続するのは困難である。また、配線の接続強度を確保するのも困難である。通電するための配線と多孔質発熱体との間の接続面積が小さいと、配線近傍における電流値が局所的に大きくなってその部分の発熱量が大きくなり、多孔質発熱体や配線を傷める可能性がある。
【0026】
上記不都合を回避するため、請求項7に記載した発明のように、請求項1から請求項6に記載した多孔質発熱体を用いて発熱部を形成し、上記発熱部に、所定の面積で接続されるとともに電流を導入するリード部を設けることにより、多孔質発熱素子を構成するのが好ましい。
【0027】
多孔質発熱体に充分な接続面積を介して接続されるリード部を設けることにより、多孔質発熱体の全体に通電して発熱させることが可能となる。また、上記リード部に配線を接続するだけで、多孔質発熱体に効率よく通電することができるため、取扱性も向上する。上記リード部の形態や上記接続面積は、多孔質発熱体の形態や寸法等に応じて設定することができる。たとえば、導電性を有する所定面積の金属製導電板を上記多孔質発熱体の所定面積にわたって圧接あるいは溶接して、上記リード部を設けることができる。
【0028】
また、上記リード部を、上記多孔質発熱体に接続される導電性の金属多孔質体を備えて構成することができる。たとえば、上記多孔質発熱体と同様の気孔率を備える金属多孔質体を、上記多孔質発熱体の所定面積にわたって接続するとともに、この金属多孔質体に対して配線を接続することにより、上記多孔質発熱体内に電流を円滑に供給することができる。上記金属多孔質体は、多孔質発熱体の所定の面積にわたって所定圧力で接触させ、あるいは溶接することにより、上記多孔質発熱体に接続することができる。
【0029】
上記リード部を構成する金属多孔質体は、通電しても発熱しない導電性材料から形成するのが好ましい。たとえば、Ni、銅等の電気抵抗の小さい金属多孔質体から上記リード部を形成することができる。さらに、上記金属多孔質体から上記リード部を形成すると、上記リード部における冷却効果を期待できる。これにより、多孔質発熱体から配線等に伝導される熱量を減少させることが可能となり、配線等に作用する温度を低下させることができる。また、上記リード部に配線等を容易に接続することも可能となり、多孔質発熱素子の取扱性も向上する。
【0030】
請求項9に記載した発明のように、上記リード部を構成する金属多孔質体の中間部を合金化することにより、上記発熱部と上記リード部とを一体的に形成することができる。たとえば、Niを用いて多孔質発熱体とリード部を構成する共通の骨格を、多孔質樹脂の表面にめっき層として形成する。次に、リード部を構成する部分にマスキング等を施して、発熱部に対応する部分にのみCrのめっき層を形成する。その後、多孔質樹脂を消失させて、熱処理を行うことにより、上記Ni骨格の一部をCr合金化して上記リード部とを一体的に形成することができる。
【0031】
上記構成を採用することにより、多孔質体を構成する同一の骨格が連続しているとともに、所要の部分を発熱させることのできる多孔質発熱素子を形成することができる。また、発熱部に効率よく通電することができるとともに、リード部に放熱性があるため、配線等に作用する温度を低下させることも可能となる。しかも、リード部に発熱部と同一の通気性を持たせることが可能となり、ガス分解素子等に好適なガス分解素子を構成できる。
【0032】
請求項10に記載した発明は、請求項1から請求項6に記載した多孔質発熱体と、上記多孔質発熱体を充填した容器と、上記発熱体に所定面積で接続されるとともに、上記容器外へ引き出される配線を有するリード部とを備え、上記リード部を介して通電することにより所定温度に設定した上記多孔質発熱体内に、分解に供せられるガスを流動させる、ガス分解素子に関するものである。
【0033】
本願発明に係るガス分解素子は、自体で発熱する多孔質発熱体内に、分解に供せられるガスが流動するように構成されているため、ガスを効率よく加熱して分解することが可能となる。本願発明に係るガス分解素子は、単独で、あるいは他のガス分解素子と組み合わせてガス分解装置を構成することができる。たとえば、筒状MEAを備えるガス分解素子と組み合わせて、効率のよいガス分解装置を構成できる。
【発明の効果】
【0034】
多孔質発熱体を均一に加熱できるため、大量のガスを効率よく加熱して、分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本願発明に係る多孔質発熱体の外観構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】本願発明に係る多孔質発熱体の結節部近傍の断面構造を模式的に示す図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本願発明に係る多孔質発熱体にリード部を設けて構成される多孔質発熱素子の概略断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る多孔質発熱素子の概略断面図である。
【図6】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図7】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図8】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図9】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図10】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図11】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図12】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図13】多孔質発熱体を容器に収容してガス分解素子を構成した断面図である。
【図14】図13に示すガス分解素子と他のガス分解素子を組み合わせて構成されるガス分解装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて具体的に説明する。
【0037】
図1は、本願発明に係る多孔質発熱体1の外観構造を示す電子顕微鏡写真である。多孔質発熱体1は、連続気孔1bを有する3次元網目構造を備える。図2に示すように、上記3次元網目構造は、三角柱状の骨格10が3次元に連続して連なった形態を備え、上記骨格を構成する複数の枝部12が結節部11に集合して一体的に連続する形態を備える。また、骨格10の各部は、図3に示すように、外殻10aと、中空状の芯部10bとを備えて構成される。なお、図2及び図3に示す実施形態では、上記外殻10aは、後に説明するように、メッキ層12aと表面導電化層12bとが、一体的に合金化されて発熱体として機能するように構成されている。
【0038】
上記多孔質発熱体1は、連続気孔1bを有する多孔質状に形成されているため、上記気孔1b内でガスを流動させて、効率よく加熱することができる。しかも、上記多孔質発熱体1は、3次元網目構造を採用することによって、気孔率をきわめて大きく設定することができる。このため、気孔内におけるガスの流動抵抗が低く、大量のガスを流動させて加熱することも可能となる。
【0039】
また、図2に示すように、上記3次元網目構造における一の結節部11に集合する上記枝部12の外殻10aの厚みtがほぼ一定に形成されている。一の結節部に集合する枝部(骨格)の外殻の厚みtがほぼ一定であるため、一の結節部に集合する各枝部12の電気抵抗に大きな差異が生じることがなくなるしたがって、一の結節部に集合する一部の枝部に過大な電流が流れることもなくなる。これにより、骨格の溶断や劣化を防止することが可能となる。
【0040】
なお、多孔質発熱体1の一の結節部11に集合する枝部12(骨格)の外殻10aの厚みがほぼ一定であればよく、発熱体全体の外殻の厚みが一定であることまで要求されるものではない。たとえば、製造方法等によっては、外殻の厚みが、発熱体の表層部と内部で異なることが考えられる。この場合、表層部の結節部に集合する各骨格の外殻厚みと、内部の結節部に集合する骨格の外殻厚みが異なることになる。しかし、一の結節部に集合する枝部の外殻の厚みがほぼ一定であれば、少なくとも各結節部周りの一部の枝部に過大な電流が流れることはなく、結節部近傍の骨格が溶断したり劣化するのを防止することができる。
【0041】
本実施形態に係る上記多孔質発熱体1は、少なくともNiとCrとを含む合金から形成されている。上記NiとCrの配合量は、所要の発熱量に応じて設定することができる。たとえば、上記多孔質発熱体1の上記外殻10を、Niを67〜95%と、Crを5〜33%とを含む合金から形成することができる。
【0042】
上記多孔質発熱体1は、種々の手法を用いて形成することができる。たとえば、多孔質発熱体を構成する材料を3次元網目状樹脂の表面に直接コーティングして焼成し、多孔質発熱体を形成することができる。また、上記骨格をめっきによって形成する場合、3次元網目状樹脂に導電化処理を施す工程と、3次元網目状樹脂に金属めっきを施す工程と、3次元網目状樹脂を除去する工程とを含んで構成することができる
【0043】
上記3次元網目状樹脂の形態として、樹脂発泡体、不織布、フェルト、織布等を用いることができる。上記3次元網目状樹脂を構成する素材は特に限定されることはないが、金属めっき等した後、加熱等によって消失させることができるものを採用するのが好ましい。また、加工性やハンドリング性を確保するため、柔軟性を有するものを採用するのが好ましい。特に、3次元網目状樹脂として樹脂発泡体を採用するのが好ましい。樹脂発泡体は、連続気孔を有する多孔質状であればよく、既知のものを採用できる。たとえば、発泡ウレタン樹脂、発泡スチレン樹脂等を採用することができる。発泡樹脂の気孔の形態や気孔率、寸法等は特に限定されることはなく、用途に応じて適宜設定することができる。
【0044】
めっき処理によって多孔質発熱体を形成する場合において、上記3次元網目状樹脂を導電化する処理は、各気孔の表面に上記骨格を構成する金属めっき層を設けるために行われるものであり、図2における表面導電化層12bを設けることができれば特に限定されることはない。たとえば、ニッケルを用いる場合には、無電解めっき処理、スパッタリング処理等を採用することができる。また、チタン、ステンレス等の金属やカーボンブラック、黒鉛等を採用する場合には、これらの微粉末にバインダを添加した混合物を、上記3次元網目状樹脂に含浸塗着する処理を採用することができる。
【0045】
上記めっき処理も特に限定されることはなく、公知のめっき法によって処理をすることができる。たとえば、ニッケルめっきを採用する場合、生産性、コスト等の観点から電気めっき法を採用するのが好ましい。電気めっきに用いるめっき浴として、公知あるいは市販のものを採用できる。
【0046】
上記めっき層の厚み(目付量)も特に限定されることはない。所要の気孔率や、強度を勘案して設定することができる。たとえば、100g/m2 〜2000g/m2 の目付量を採用することができる。
【0047】
上記めっき層を形成した後、上記3次元網目状樹脂を除去する工程が行われる。上記3次元網目状樹脂を除去する工程は、たとえば、ステンレスマッフル内で大気等の酸化性雰囲気において、上記めっき層を設けた多孔質体を、600℃〜800℃で熱処理することにより、上記3次元網目状樹脂を焼却除去することができる。
【0048】
高い発熱性能を得るため、Cr成分の配合量が多いNi合金から上記多孔質発熱体を形成するのが好ましい。Ni−Crの合金材料から上記めっき層を直接形成するのは困難である。このため、たとえば、Niめっき層とCrめっき層とを別々に形成し、その後合金化する手法を採用することができる。すなわち、3次元網目状樹脂に、上記手法によってまずNiめっき層を形成し、その上に、Crめっき層を積層形成する。その後、3次元網目状樹脂を除去し、さらに、所定の温度で熱処理することにより、上記Crめっき層とNiめっき層とを互いに拡散させて合金化することができる。
【0049】
上記Crめっき層の厚み(目付量)も特に限定されることはなく、たとえば、10g/m2 〜1000g/m2 の範囲で設定することができる。
【0050】
上記Crめっき層とNiめっき層とを積層形成した多孔質体を、ステンレスマッフル内でCOやH2 等の還元性ガス雰囲気のもとで800℃〜1000℃で熱処理することにより、上記Crめっき層とNiめっき層とを互いに拡散させてNi−Cr合金層を形成することができる。また、N2 やAr等の不活性ガス雰囲気では、カーボンマッフル内で1000℃〜1500℃に加熱して上記Crめっき層とNiめっき層とから合金層を形成することもできる。Niによって、図2及び図3に示す表面導電化層12bを設けた場合には、表面導電化層12bも上記合金化工程においてNi−Cr合金化されて全体が発熱体となる。
【0051】
上記工程を採用することにより、外殻のクロム濃度のばらつきが少なく、高い耐蝕性を有するとともに発熱特性の高い多孔質発熱体を形成することができる。また、めっき層によって外殻が構成されるため、外殻の厚み(断面積)を多孔質体内でほぼ均一に設定することが可能となる。このため、多孔質体内における電気抵抗のばらつきが少なくなり、通電することにより、多孔質体の全体を均一に加熱することができる。なお、上述した実施形態は、上記骨格を3次元網目状樹脂にめっきを施すことによって形成したが、粉体金属をコーティングし、その後、熱処理を施すことにより形成することもできる。この場合、Ni粉末とCr粉末とを含む粉体をコーティングした後、焼成することにより、一度でNi−Cr合金を形成することもできる。
【0052】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係る上記芯部は、中空状に形成されるが、これに限定されることはない。すなわち、上述した実施形態は、Niから形成された表面導電化層12bがCr合金化されたため外殻と一体化されたが、上記表面導電化層を別の導電性材料から形成する場合、芯部として残存する場合もある。たとえば、上記表面導電化層をチタンやカーボン等から形成するとともに、Niメッキによって骨格を形成した後Cr合金化した場合、上記表面導電化層10cが合金化されずに芯部として残存することになる。また、Niメッキ層をCr合金化する熱処理工程において、外殻が収縮して、中空の芯部が消失する場合もある。なお、上記表面導電化層は、多孔質発熱体の所要の発熱性能を阻害しないように厚み等が設定される。
【0053】
図1に示すように、本実施形態に係る多孔質発熱体1は、気孔率が非常に高いため、通電するための配線を接続するのが困難である。すなわち、多孔質発熱体1へ電流を導入する部分の接続面積が小さいと、この導入部近傍における電流値が局所的に大きくなって発熱量が大きくなり、配線等を傷める恐れがある。上記不都合を回避するために、多孔質発熱体1に広い面積で接続されるリード部を設けるのが好ましい。たとえば、導電性のある所定面積の金属板を多孔質発熱体に溶接等し、この金属板に配線を接続して通電することができる。
【0054】
図4に示す実施形態は、多孔質発熱部2aに、リード部3,4を設けて、多孔質発熱素子2を構成したものである。上記多孔質発熱素子2は、所定の断面積を有する長尺状の多孔質発熱体2aと、一端部が上記多孔質発熱体2aの端面に接続される金属多孔質体3a,4aと、この金属多孔質体3a,4aの他端部に接続された電極板3b,4bとを備えて構成される。上記電極板3b,4bに配線5を接続することにより、上記リード部3,4を介して上記多孔質発熱体2aに通電される。
【0055】
上記金属多孔質体3a、4aは、Ni,Cu等の電気抵抗が小さい材料から形成するのが好ましい。また、上記金属多孔質体3a、4aの形態も特に限定されることはない。たとえば、上記多孔質発熱体2aと同じ手法によって形成される金属多孔質体から構成することもできるし、他の形態の金属多孔質体から構成することもできる。
【0056】
上記多孔質発熱体2aと上記金属多孔質体3a,4aとの接続形態も特に限定されることはない。たとえば、所定の圧力を加えて圧接することができる。また、溶接により接続することもできる。接続面積は、多孔質発熱体の密度や流れる電流値等に応じて設定することができる。
【0057】
上記電極板3b,4bを構成する材料や接続方法も特に限定されることはない。たとえば、Ni板やCu板を、溶接により上記金属多孔質体3a,4aに接続することができる。
【0058】
上記リード部3,4を設けることにより、多孔質発熱体2aに対する接続面積を確保することが可能となり、広い面積を介して上記多孔質発熱体2aに通電することができる。このため、局所的に大きな電流が流れることがなくなり、多孔質発熱体を均一に加熱することができる。
【0059】
一方、上記金属多孔質体3a,4aは、電気抵抗を小さく設定することにより発熱しないように構成するのが好ましい。また、多孔質状であるため、多孔質発熱体2aから伝わる熱を放熱させることも期待できる。これにより、電極板3b,4bに高い温度が作用しないように設定することが可能となり、配線5を上記電極板3b.4bに容易に接続することができる。
【0060】
図5に、第2の実施形態に係る多孔質発熱素子202の概略構造を示す。この実施形態に係る多孔質発熱素子202は、Niで形成された金属多孔質体の中間部を、Cr合金化することにより、リード部203,204を構成する金属多孔質体203a,204aと多孔質発熱部202aとを一体形成するとともに、両端部に図2に示す実施形態と同様の電極板203b,204bを設けたものである。
【0061】
上記構成を採用することにより、別途形成した金属多孔質体を、多孔質発熱部2aに接続する必要がなくなる。しかも、上記リード部203,204を構成する金属多孔質体203a,204aと多孔質発熱部202aとが、同じ骨格構造を備えて構成されているとともに一体的に連続している。このため、これら部材の接続抵抗が発生することがなく、多孔質発熱部202aに効率よく通電することができる。
【0062】
上記構成の多孔質発熱素子202は、たとえば、図6〜図12に示す手法によって形成することができる。なお、図6〜図12は、上記多孔質発熱素子202を製造する手法を模式的に示したものである。まず、リード部203,204を構成する金属多孔質体203a,204aと多孔質発熱体202aとの共通の骨格を形成するため、図6に示す3次元網目状樹脂210を準備する。上記3次元網目状樹脂210は、上述した骨格を構成する中空の芯部に対応する部分210aと、連続気孔210bとを備えて構成されており、たとえば、ウレタン樹脂を所定の気孔率で発泡させることにより形成することができる。
【0063】
図7に示すように、上記3次元網目状樹脂210に、上述した手法によって表面を導電化処理した後、Niめっき層211を形成する。上記Niめっき層211は、上述したように、100g/m2 〜2000g/m2 の目付量で形成することができる。その後、図8に示すように、上記リード部を構成する部分204aに、上記Crめっき処理に対するマスキング層212を形成する。上記マスキング層212は、たとえば、エポキシ樹脂等で形成することができる。
【0064】
次に、図9に示すように、上記マスキング層212を設けた多孔質体に、上述した手法によって、Crめっき層213を設ける。上記マスキング層212を設けているため、上記多孔質発熱部202aに対応した領域にのみ上記Crめっき層213が形成される。これにより、上記発熱部202aを構成する部分に、Niめっき層とCrめっき層とが積層形成された複合めっき層220が形成される。
【0065】
上記マスキング層212を除去した後(図10)、上述した3次元網目状樹脂を除去する工程が行われ、図11に示すように、Niめっき層211とCrめっき層213とを備える複合めっき層220からなる3次元網目状の金属多孔質体214が形成される。
【0066】
上記複合めっき層220を備える上記金属多孔質体214を、ステンレスマッフル内でCOやH2 等の還元性ガス雰囲気のもとで800℃〜1000℃で熱処理することにより、上記Niめっき層211と上記Crめっき層213を構成する成分を互いに拡散させてNi−Cr合金化し、図12に示す金属多孔質体を構成することができる。図12に示すように、上記金属多孔質体は、中空の芯部201cと外殻201aとからなる骨格を備えている。
【0067】
上記手法を採用することにより、Niによって形成された金属多孔質体の中間部をNi−Cr合金化して、発熱部202aとこの両側にCr合金化されていない金属多孔質体203a,204aを設けた金属多孔質体を一体的に形成することができる。上記金属多孔質体203a,204aの両側に電極板203b,204bを設けることにより、図10に示す多孔質発熱素子202が形成される。
【0068】
なお、上記多孔質発熱素子202では、金属多孔質体を備えるリード部を形成したが、上記金属多孔質体203a,204aを形成することなく上記発熱部202aのみ形成し、この発熱部202aを構成する多孔質体に直接電極板203b,204bを溶接等してリード部を設けてもよい。
【0069】
図13に、本願発明に係る多孔質発熱素子を用いて形成したガス分解素子の断面を模式的に示す。
【0070】
ガス分解素子310は、長尺状の筒状容器309の内部に、多孔質発熱素子320を充填して構成される。上記筒状容器309は、少なくとも内面が電気絶縁性を備えるように構成される。たとえば、セラミックから形成された筒状容器を採用することができる。
【0071】
本実施形態に係る多孔質発熱素子320は、多孔質発熱体302と両側に設けられたリード部303,304とを備えて構成される。上記多孔質発熱体302は、第1の実施形態と同様に形成されたものであり、Ni−Cr合金から形成された3次元網目状の骨格302aと、連続気孔302bとを備えて構成される。
【0072】
上記リード部303,304は、上記多孔質発熱体302の両端部に接続される金属多孔質体303a,304aと、上記金属多孔質体303a,304aの外周部を囲むように配置された環状の電極部303b,304bとを備えて構成される。
【0073】
上記金属多孔質体303a,304aは、上記多孔質発熱体302の端面に圧接あるいは溶接される。また、上記電極部303b,304bも、上記金属多孔質体303a,304aの外周部に、圧接あるいは溶接されている。
【0074】
上記電極部303b,304bに接続される配線305が、上記容器309から引き出されて電源306に接続されており、この配線305によって、上記多孔質発熱素子320に通電される。
【0075】
本実施形態に係る多孔質発熱素子320は、リード部303,304を含む全体が多孔質であるため通気性が高い。また、上記電極部303b,304bも、上記筒状容器内のガスの流動を妨げないように、端部内周面に添着するように配置されている。このため、筒状容器309のガス導入口307を介してガスを筒状容器内に導入するとともに、上記多孔質発熱素子320の内部を軸方向に向けて流動させ、ガス排出口308から排出することができる。また、上記多孔質発熱体302は、全体がほぼ均等に加熱されるため、流動するガスを均一に加熱することができる。このため、非常に効率よくガスを分解することができる。しかも、外部に熱源を設ける必要がないため、エネルギ効率も非常に高い。
【0076】
図14に、第1のガス分解素子410と、筒状MEA510を備える第2のガス分解素子520とを組み合わせて構成したガス分解装置600の概略断面図を示す。なお、上記第1のガス分解素子410は、図11に示すガス分解素子と構成が同一であるので説明は省略する。
【0077】
上記第2のガス分解素子520は、内側ガスを流動させて分解する筒状MEA510と、上記筒状MEA510を保持するとともにこの筒状MEAの外周部に空気を流動させることのできる筒状容器509とを備えて構成される。
【0078】
上記筒状MEA510は、図示しない筒状の固体電解質層と、この固体電解質層の内周部に積層形成された第1の電極層と、上記固体電解質層の外周部に積層形成された第2の電極層とを備えて構成されている。
【0079】
上記筒状MEA510は、上記筒状容器509のガス流入口507とガス流出口508の間に接続されるようにして上記筒状容器509内に保持されている。上記筒状容器509の外周部には、空気を導入する空気導入口517と、上記筒状MEA510の外周部を流動した空気を排出する排出口518とを備える。
【0080】
上記ガス分解素子520の外周部には、図示しないヒータが設けられており、上記筒状MEA510及び上記空気が流動する空間を所定温度に加熱できるように構成されている。また、上記筒状MEA510の上記第1の電極層と上記第2の電極層の間には、図示しない配線が設けられており、この配線内に図示しない負荷装置が設けられる。
【0081】
上記第1のガス分解素子410と上記第2のガス分解素子520は、接続部500を介して連結されており、分解されるガスが、上記第1のガス分解素子410と上記第2のガス分解素子520に順次流動させられる。
【0082】
上記構成のガス分解装置600は、第1のガス分解素子410において加熱によりガスを分解する一方、上記第2のガス分解素子520では、上記第1のガス分解素子410で分解しきれなかったガスを電気化学的に分解するように構成したものである。
【0083】
たとえば、アンモニアガスを分解する場合、上記第1のガス分解素子において、2NH3→N2+3H2 のように、アンモニアガスが熱分解される。
【0084】
また、上記筒状MEA510の第1の電極層(アノード)において、
(アノード反応)「2NH3+3O2-→N2+3H2O+6e-」
の反応を生じさせる。より詳しくは、一部のアンモニアに、2NH3→N2+3H2の反応を生じ、この3H2が、酸素イオン3O2-と反応して3H2Oを生成する。
一方、上記筒状MEAの第2の電極層(カソード)では、
(カソード反応)「O2 +4e-→2O2-」
の反応を生じさせる。
上記電気化学反応の結果、電力が発生し、第1の電極層と第2の電極層との間
に電位差が生じ、上記配線に電流が流れる。これにより、上記配線内に接続したヒータ等の負荷に電力を供給することができる。
【0085】
上記第1のガス分解素子410と上記第2のガス分解素子520とを組合せてガス分解装置600を構成することにより、ガスを精度高く分解することが可能となる。
【0086】
本願発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
ガス分解装置等において、ガスを効率よく加熱することができるとともに、熱分解させることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 多孔質発熱体
10 骨格
10a 外殻
1b 連続気孔
2 多孔質発熱素子
2a 発熱部
3 リード部
3a 金属多孔質体
3b 電極板
4a 金属多孔質体
4b 電極板
5 配線
11 結節部
12 枝部
202 多孔質発熱素子
202a 発熱部
203 リード部
203a 金属多孔質体
203b 電極板
204a 金属多孔質体
204b 電極板
205 配線
【技術分野】
【0001】
本願発明は、多孔質発熱体、多孔質発熱素子及びガス分解素子に関する。詳しくは、ガスを流動させて加熱分解するガス分解装置に好適な多孔質発熱体、多孔質発熱素子及びガス分解素子に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、アンモニアは農業や工業に不可欠の化合物であるがヒトには有害であるため、水中や大気中のアンモニアを分解する種々の方法が知られている。高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、アンモニア水を噴霧するとともに空気流と接触させて空気中にアンモニアを分離し、次亜臭素酸溶液又は硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また、上記方法と同じプロセスで空気中にアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法(特許文献2)や、アンモニア含有排水を、触媒を用いて、窒素と水に分解する方法が提案されている(特許文献3)。さらに、半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれることが多く、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除去する必要がある。この目的のために、半導体装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。一方、エネルギや薬品等の投入なしに安価なランニングコストで有害ガスを分解するために、リン酸燃料電池でアンモニアを分解する、半導体製造装置等における廃ガス処理の方法も提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開2003−45472号公報
【特許文献5】特許第3238086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような中和剤等の薬液を用いる方法、特許文献2に記載されているような燃焼させる方法、特許文献3に記載されているような触媒を用いた熱分解反応による方法により、アンモニアを分解することはできる。ところが、これらの方法では、薬品や外部エネルギ(燃料)を必要とし、さらには、触媒を定期的に交換する必要があり、ランニングコストが大きくなるという問題がある。
【0005】
また、装置が大掛かりとなり、既存の設備に付加的に設ける場合には、スペースを確保するのが困難である。また、リン酸型燃料電池を、化合物半導体製造の排気中のアンモニアの除去に用いる装置についても、電解質が液体であるため、空気側とアンモニア側との仕切りをコンパクトにできず、装置の小型化が難しいという問題があった。
【0006】
上記問題を解決するため、特許文献5に記載されているように、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を採用することができる。上記筒状MEAの内側空間を、分解されるガスを含む気体が、軸方向に流動させられる。
【0007】
上記ガスを分解するには、ガスを含む気体の温度をできるだけ高めて、上記筒状MEAの第1の電極層(燃料極)に作用させるのが好ましい。高いガス分解性能を得るためには、筒状MEAを高温に、たとえば、800℃以上に保持する必要がある。このため、加熱容器内に上記筒状MEAを収容し、上記筒状MEAの全体を加熱するように構成されている。
【0008】
ところが、筒状MEAの内側電極の表面積が限られているため、大量のガスを処理するのは困難であり、ガスの流量を増加させると、ガス分解効率が低下する。しかも、上記ガスの流量を増加させると、上記筒状MEA内でガスの温度が低下して、分解効率がさらに低下するという問題も生じる。
【0009】
また、流量を増加させると、ガスが上記筒状MEA内で滞在する時間が減少する。このため、上記ガスを充分に加熱してから上記筒状MEAに作用させることができないという問題も生じる。
【0010】
本願発明は、ガスを効率よく加熱することができるとともに、熱分解させることができ、さらに、単独であるいは他のガス分解装置と組み合わせて用いることができる多孔質発熱体、多孔質発熱素子及びガス分解素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に記載した発明は、連続気孔を有する金属多孔質体からなる多孔質発熱体であって、発熱材料からなる外殻と、中空又は導電性材料からなる芯部とを有する骨格が、一体的に連続する3次元網目構造を構成しているものに関する。
【0012】
本願発明に係る発熱体は、連続気孔を有する多孔質状に形成されているため、上記気孔内でガスを流動させて、効率よく加熱することができる。
【0013】
しかも、上記多孔質発熱体は、骨格が3次元網目構造に形成されているため、気孔率をきわめて大きく設定することができる。これにより、気孔内におけるガスの流動抵抗が小さくなり、大量のガスを流動させて加熱することが可能となる。また、上記骨格は、一体的に連続するように形成されている。このため、繊維状の発熱体を充填して構成される多孔質発熱体のように、隣接する各繊維間の接触抵抗が生じることがなく、多孔質発熱体内各部における電気抵抗が大きく変化することはない。したがって、多孔質発熱体内の電流の流れに偏在が生じることが少なく、多孔質発熱体の全体を均一に加熱することが可能となる。
【0014】
上記骨格を形成する手法は特に限定されることはない。たとえば、請求項3に記載した発明のように、上記骨格を、3次元網目状樹脂の表面にめっき層又は金属コーティング層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成することができる。上記骨格の外殻を金属めっき層又は金属コーティング層から形成することにより、骨格の厚みを非常に薄くかつ均一に設定することが可能となる。これにより、大きな気孔率を備える多孔質発熱体を形成することが可能となる。
【0015】
上記芯部は、製造方法に応じて、中空又は/及び導電性材料を含んで構成される。たとえば、上述したように、上記骨格を、3次元網目状樹脂の表面にめっき層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成する場合、上記樹脂が消失した部分が中空状となる。また、上記メッキ層を設けるために上記3次元網目状樹脂の表面に導電性材料をコーティング等して導電化処理を施した場合には、上記導電性材料からなる表面導電化層が中空芯部の内周面に残存する場合がある。さらに、メッキ処理の後に熱処理等を施した場合は、外殻が収縮して、中空部分が消失する場合もある。なお、上記芯部の構造は、発熱体の全体において均一である必要はなく、部分によって異なっていてもよい。たとえば、芯部を構成する導電性材料が後の熱処理によって溶解して、発熱体内で偏在したり、一部の中空部が消失した状態であってもよい。なお、上記表面導電化層は、多孔質発熱体の所要の発熱性能を阻害しないように厚み等が設定される。
【0016】
請求項2に記載した発明のように、上記多孔質発熱体における上記3次元網目構造は、上記骨格を構成する複数の枝部が結節部に集合して一体的に連続しているとともに、一の結節部に集合する上記各枝部の外殻の厚みがほぼ一定となるように構成するのが好ましい。上記結節部では各骨格(枝部)からの電流が集中するため、一の結節部に集合する各枝部の電気抵抗が異なると、結節部周りの一部の枝部に過大な電流が流れて温度が上昇し、骨格が溶断したり劣化する恐れがある。一の結節部に集合する枝部の外殻の厚みをほぼ一定に設定することにより、一の結節部に集合する各骨格の電気抵抗に大きな差異が生じることがなくなり、一の結節部に集合する一部の骨格に過大な電流が流れることもなくなる。これにより、骨格の溶断や劣化を防止することが可能となる。
【0017】
多孔質発熱体の一の結節部に集合する枝部の外殻の厚みがほぼ一定であればよく、発熱体全体の外殻の厚みが一定であることまで要求されるものではない。たとえば、製造方法等によっては、外殻の厚みが、発熱体の表層部と内部で異なることが考えられる。この場合、表層部の結節部に集合する各枝部の外殻厚みと、内部の結節部に集合する枝部の外殻厚みが異なることになる。しかし、各結節部に集合する骨格の厚みがほぼ一定であれば、一部の枝部に過大な電流が流れることはなく、結節部近傍の骨格が溶断するのを防止することができる。また、結節部周りの骨格が均等な強度を備えるため、強度も確保することができる。
【0018】
また、請求項3に記載した手法により、外殻をめっき層やコーティング層から形成すると、一の結節部に集合する骨格の外殻の厚みをほぼ一定に形成することが可能となる。これにより、一の結節部周りの外殻の電気抵抗に大きな差異が生じることがなくなり、多孔質発熱体の全域を均一に加熱することができる。
【0019】
発熱体である上記外殻を構成する材料は、特に限定されることはない。たとえば、請求項4に記載した発明のように、Niを67〜95%と、Crを5〜33%とを含む合金から形成するのが好ましい。上記範囲の配合量に設定することにより、上記多孔質発熱体を効率よく発熱させることができる。なお、上記NiとCrの配合比を保持した状態で他の成分が配合されてもよい。
【0020】
外殻をコーティング層から形成する場合、発熱体を構成するNiとCrを含む材料を3次元網目状樹脂の表面に直接コーティングして焼成し、多孔質発熱体を形成することができる。一方、Ni−Cr合金のめっき層を直接形成するのは困難である。請求項5に記載した発明は、多孔質発熱体が、Niを主成分とする金属多孔質体に、Crを拡散させることにより合金化されているものである。
【0021】
請求項5に記載した発明は、まず、Niから多孔質体を形成し、この多孔質体を構成するNiの表面から、Crを拡散させて発熱体として機能するNi−Cr合金としたものである。
【0022】
Niは、めっき処理しやすいため、上記骨格を容易に形成することができる。また、骨格の厚みや気孔率の異なる種々の金属多孔質体を容易に構成できる。そして、このNi多孔質体をCr合金化することによって、所要の電熱特性を備える種々の発熱体を構成できる。
【0023】
上記Ni多孔質体を、Cr合金化する手法は特に限定されることはない。たとえば、上記Ni多孔質体を、Cr源粉末の加熱により発生させた拡散浸透成分ガスと還元性希釈ガスとの混合ガス中で熱処理することにより、Ni多孔質体をNi−Cr合金とすることができる。
【0024】
また、請求項6に記載した発明のように、Niによって形成された第1の外殻に、Crで形成された第2の外殻を積層形成し、所定の熱処理を行うことにより、上記第1の外殻と上記第2の外殻とを互いに拡散させて合金化し、上記多孔質発熱体とすることができる。
【0025】
上記多孔質発熱体を発熱させるには、多孔質体内に通電する必要がある。一方、気孔率が高いと、配線を充分な接続面積を介して接続するのは困難である。また、配線の接続強度を確保するのも困難である。通電するための配線と多孔質発熱体との間の接続面積が小さいと、配線近傍における電流値が局所的に大きくなってその部分の発熱量が大きくなり、多孔質発熱体や配線を傷める可能性がある。
【0026】
上記不都合を回避するため、請求項7に記載した発明のように、請求項1から請求項6に記載した多孔質発熱体を用いて発熱部を形成し、上記発熱部に、所定の面積で接続されるとともに電流を導入するリード部を設けることにより、多孔質発熱素子を構成するのが好ましい。
【0027】
多孔質発熱体に充分な接続面積を介して接続されるリード部を設けることにより、多孔質発熱体の全体に通電して発熱させることが可能となる。また、上記リード部に配線を接続するだけで、多孔質発熱体に効率よく通電することができるため、取扱性も向上する。上記リード部の形態や上記接続面積は、多孔質発熱体の形態や寸法等に応じて設定することができる。たとえば、導電性を有する所定面積の金属製導電板を上記多孔質発熱体の所定面積にわたって圧接あるいは溶接して、上記リード部を設けることができる。
【0028】
また、上記リード部を、上記多孔質発熱体に接続される導電性の金属多孔質体を備えて構成することができる。たとえば、上記多孔質発熱体と同様の気孔率を備える金属多孔質体を、上記多孔質発熱体の所定面積にわたって接続するとともに、この金属多孔質体に対して配線を接続することにより、上記多孔質発熱体内に電流を円滑に供給することができる。上記金属多孔質体は、多孔質発熱体の所定の面積にわたって所定圧力で接触させ、あるいは溶接することにより、上記多孔質発熱体に接続することができる。
【0029】
上記リード部を構成する金属多孔質体は、通電しても発熱しない導電性材料から形成するのが好ましい。たとえば、Ni、銅等の電気抵抗の小さい金属多孔質体から上記リード部を形成することができる。さらに、上記金属多孔質体から上記リード部を形成すると、上記リード部における冷却効果を期待できる。これにより、多孔質発熱体から配線等に伝導される熱量を減少させることが可能となり、配線等に作用する温度を低下させることができる。また、上記リード部に配線等を容易に接続することも可能となり、多孔質発熱素子の取扱性も向上する。
【0030】
請求項9に記載した発明のように、上記リード部を構成する金属多孔質体の中間部を合金化することにより、上記発熱部と上記リード部とを一体的に形成することができる。たとえば、Niを用いて多孔質発熱体とリード部を構成する共通の骨格を、多孔質樹脂の表面にめっき層として形成する。次に、リード部を構成する部分にマスキング等を施して、発熱部に対応する部分にのみCrのめっき層を形成する。その後、多孔質樹脂を消失させて、熱処理を行うことにより、上記Ni骨格の一部をCr合金化して上記リード部とを一体的に形成することができる。
【0031】
上記構成を採用することにより、多孔質体を構成する同一の骨格が連続しているとともに、所要の部分を発熱させることのできる多孔質発熱素子を形成することができる。また、発熱部に効率よく通電することができるとともに、リード部に放熱性があるため、配線等に作用する温度を低下させることも可能となる。しかも、リード部に発熱部と同一の通気性を持たせることが可能となり、ガス分解素子等に好適なガス分解素子を構成できる。
【0032】
請求項10に記載した発明は、請求項1から請求項6に記載した多孔質発熱体と、上記多孔質発熱体を充填した容器と、上記発熱体に所定面積で接続されるとともに、上記容器外へ引き出される配線を有するリード部とを備え、上記リード部を介して通電することにより所定温度に設定した上記多孔質発熱体内に、分解に供せられるガスを流動させる、ガス分解素子に関するものである。
【0033】
本願発明に係るガス分解素子は、自体で発熱する多孔質発熱体内に、分解に供せられるガスが流動するように構成されているため、ガスを効率よく加熱して分解することが可能となる。本願発明に係るガス分解素子は、単独で、あるいは他のガス分解素子と組み合わせてガス分解装置を構成することができる。たとえば、筒状MEAを備えるガス分解素子と組み合わせて、効率のよいガス分解装置を構成できる。
【発明の効果】
【0034】
多孔質発熱体を均一に加熱できるため、大量のガスを効率よく加熱して、分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本願発明に係る多孔質発熱体の外観構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】本願発明に係る多孔質発熱体の結節部近傍の断面構造を模式的に示す図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本願発明に係る多孔質発熱体にリード部を設けて構成される多孔質発熱素子の概略断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る多孔質発熱素子の概略断面図である。
【図6】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図7】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図8】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図9】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図10】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図11】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図12】図5に示す多孔質発熱素子の製造工程を示す図である。
【図13】多孔質発熱体を容器に収容してガス分解素子を構成した断面図である。
【図14】図13に示すガス分解素子と他のガス分解素子を組み合わせて構成されるガス分解装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて具体的に説明する。
【0037】
図1は、本願発明に係る多孔質発熱体1の外観構造を示す電子顕微鏡写真である。多孔質発熱体1は、連続気孔1bを有する3次元網目構造を備える。図2に示すように、上記3次元網目構造は、三角柱状の骨格10が3次元に連続して連なった形態を備え、上記骨格を構成する複数の枝部12が結節部11に集合して一体的に連続する形態を備える。また、骨格10の各部は、図3に示すように、外殻10aと、中空状の芯部10bとを備えて構成される。なお、図2及び図3に示す実施形態では、上記外殻10aは、後に説明するように、メッキ層12aと表面導電化層12bとが、一体的に合金化されて発熱体として機能するように構成されている。
【0038】
上記多孔質発熱体1は、連続気孔1bを有する多孔質状に形成されているため、上記気孔1b内でガスを流動させて、効率よく加熱することができる。しかも、上記多孔質発熱体1は、3次元網目構造を採用することによって、気孔率をきわめて大きく設定することができる。このため、気孔内におけるガスの流動抵抗が低く、大量のガスを流動させて加熱することも可能となる。
【0039】
また、図2に示すように、上記3次元網目構造における一の結節部11に集合する上記枝部12の外殻10aの厚みtがほぼ一定に形成されている。一の結節部に集合する枝部(骨格)の外殻の厚みtがほぼ一定であるため、一の結節部に集合する各枝部12の電気抵抗に大きな差異が生じることがなくなるしたがって、一の結節部に集合する一部の枝部に過大な電流が流れることもなくなる。これにより、骨格の溶断や劣化を防止することが可能となる。
【0040】
なお、多孔質発熱体1の一の結節部11に集合する枝部12(骨格)の外殻10aの厚みがほぼ一定であればよく、発熱体全体の外殻の厚みが一定であることまで要求されるものではない。たとえば、製造方法等によっては、外殻の厚みが、発熱体の表層部と内部で異なることが考えられる。この場合、表層部の結節部に集合する各骨格の外殻厚みと、内部の結節部に集合する骨格の外殻厚みが異なることになる。しかし、一の結節部に集合する枝部の外殻の厚みがほぼ一定であれば、少なくとも各結節部周りの一部の枝部に過大な電流が流れることはなく、結節部近傍の骨格が溶断したり劣化するのを防止することができる。
【0041】
本実施形態に係る上記多孔質発熱体1は、少なくともNiとCrとを含む合金から形成されている。上記NiとCrの配合量は、所要の発熱量に応じて設定することができる。たとえば、上記多孔質発熱体1の上記外殻10を、Niを67〜95%と、Crを5〜33%とを含む合金から形成することができる。
【0042】
上記多孔質発熱体1は、種々の手法を用いて形成することができる。たとえば、多孔質発熱体を構成する材料を3次元網目状樹脂の表面に直接コーティングして焼成し、多孔質発熱体を形成することができる。また、上記骨格をめっきによって形成する場合、3次元網目状樹脂に導電化処理を施す工程と、3次元網目状樹脂に金属めっきを施す工程と、3次元網目状樹脂を除去する工程とを含んで構成することができる
【0043】
上記3次元網目状樹脂の形態として、樹脂発泡体、不織布、フェルト、織布等を用いることができる。上記3次元網目状樹脂を構成する素材は特に限定されることはないが、金属めっき等した後、加熱等によって消失させることができるものを採用するのが好ましい。また、加工性やハンドリング性を確保するため、柔軟性を有するものを採用するのが好ましい。特に、3次元網目状樹脂として樹脂発泡体を採用するのが好ましい。樹脂発泡体は、連続気孔を有する多孔質状であればよく、既知のものを採用できる。たとえば、発泡ウレタン樹脂、発泡スチレン樹脂等を採用することができる。発泡樹脂の気孔の形態や気孔率、寸法等は特に限定されることはなく、用途に応じて適宜設定することができる。
【0044】
めっき処理によって多孔質発熱体を形成する場合において、上記3次元網目状樹脂を導電化する処理は、各気孔の表面に上記骨格を構成する金属めっき層を設けるために行われるものであり、図2における表面導電化層12bを設けることができれば特に限定されることはない。たとえば、ニッケルを用いる場合には、無電解めっき処理、スパッタリング処理等を採用することができる。また、チタン、ステンレス等の金属やカーボンブラック、黒鉛等を採用する場合には、これらの微粉末にバインダを添加した混合物を、上記3次元網目状樹脂に含浸塗着する処理を採用することができる。
【0045】
上記めっき処理も特に限定されることはなく、公知のめっき法によって処理をすることができる。たとえば、ニッケルめっきを採用する場合、生産性、コスト等の観点から電気めっき法を採用するのが好ましい。電気めっきに用いるめっき浴として、公知あるいは市販のものを採用できる。
【0046】
上記めっき層の厚み(目付量)も特に限定されることはない。所要の気孔率や、強度を勘案して設定することができる。たとえば、100g/m2 〜2000g/m2 の目付量を採用することができる。
【0047】
上記めっき層を形成した後、上記3次元網目状樹脂を除去する工程が行われる。上記3次元網目状樹脂を除去する工程は、たとえば、ステンレスマッフル内で大気等の酸化性雰囲気において、上記めっき層を設けた多孔質体を、600℃〜800℃で熱処理することにより、上記3次元網目状樹脂を焼却除去することができる。
【0048】
高い発熱性能を得るため、Cr成分の配合量が多いNi合金から上記多孔質発熱体を形成するのが好ましい。Ni−Crの合金材料から上記めっき層を直接形成するのは困難である。このため、たとえば、Niめっき層とCrめっき層とを別々に形成し、その後合金化する手法を採用することができる。すなわち、3次元網目状樹脂に、上記手法によってまずNiめっき層を形成し、その上に、Crめっき層を積層形成する。その後、3次元網目状樹脂を除去し、さらに、所定の温度で熱処理することにより、上記Crめっき層とNiめっき層とを互いに拡散させて合金化することができる。
【0049】
上記Crめっき層の厚み(目付量)も特に限定されることはなく、たとえば、10g/m2 〜1000g/m2 の範囲で設定することができる。
【0050】
上記Crめっき層とNiめっき層とを積層形成した多孔質体を、ステンレスマッフル内でCOやH2 等の還元性ガス雰囲気のもとで800℃〜1000℃で熱処理することにより、上記Crめっき層とNiめっき層とを互いに拡散させてNi−Cr合金層を形成することができる。また、N2 やAr等の不活性ガス雰囲気では、カーボンマッフル内で1000℃〜1500℃に加熱して上記Crめっき層とNiめっき層とから合金層を形成することもできる。Niによって、図2及び図3に示す表面導電化層12bを設けた場合には、表面導電化層12bも上記合金化工程においてNi−Cr合金化されて全体が発熱体となる。
【0051】
上記工程を採用することにより、外殻のクロム濃度のばらつきが少なく、高い耐蝕性を有するとともに発熱特性の高い多孔質発熱体を形成することができる。また、めっき層によって外殻が構成されるため、外殻の厚み(断面積)を多孔質体内でほぼ均一に設定することが可能となる。このため、多孔質体内における電気抵抗のばらつきが少なくなり、通電することにより、多孔質体の全体を均一に加熱することができる。なお、上述した実施形態は、上記骨格を3次元網目状樹脂にめっきを施すことによって形成したが、粉体金属をコーティングし、その後、熱処理を施すことにより形成することもできる。この場合、Ni粉末とCr粉末とを含む粉体をコーティングした後、焼成することにより、一度でNi−Cr合金を形成することもできる。
【0052】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係る上記芯部は、中空状に形成されるが、これに限定されることはない。すなわち、上述した実施形態は、Niから形成された表面導電化層12bがCr合金化されたため外殻と一体化されたが、上記表面導電化層を別の導電性材料から形成する場合、芯部として残存する場合もある。たとえば、上記表面導電化層をチタンやカーボン等から形成するとともに、Niメッキによって骨格を形成した後Cr合金化した場合、上記表面導電化層10cが合金化されずに芯部として残存することになる。また、Niメッキ層をCr合金化する熱処理工程において、外殻が収縮して、中空の芯部が消失する場合もある。なお、上記表面導電化層は、多孔質発熱体の所要の発熱性能を阻害しないように厚み等が設定される。
【0053】
図1に示すように、本実施形態に係る多孔質発熱体1は、気孔率が非常に高いため、通電するための配線を接続するのが困難である。すなわち、多孔質発熱体1へ電流を導入する部分の接続面積が小さいと、この導入部近傍における電流値が局所的に大きくなって発熱量が大きくなり、配線等を傷める恐れがある。上記不都合を回避するために、多孔質発熱体1に広い面積で接続されるリード部を設けるのが好ましい。たとえば、導電性のある所定面積の金属板を多孔質発熱体に溶接等し、この金属板に配線を接続して通電することができる。
【0054】
図4に示す実施形態は、多孔質発熱部2aに、リード部3,4を設けて、多孔質発熱素子2を構成したものである。上記多孔質発熱素子2は、所定の断面積を有する長尺状の多孔質発熱体2aと、一端部が上記多孔質発熱体2aの端面に接続される金属多孔質体3a,4aと、この金属多孔質体3a,4aの他端部に接続された電極板3b,4bとを備えて構成される。上記電極板3b,4bに配線5を接続することにより、上記リード部3,4を介して上記多孔質発熱体2aに通電される。
【0055】
上記金属多孔質体3a、4aは、Ni,Cu等の電気抵抗が小さい材料から形成するのが好ましい。また、上記金属多孔質体3a、4aの形態も特に限定されることはない。たとえば、上記多孔質発熱体2aと同じ手法によって形成される金属多孔質体から構成することもできるし、他の形態の金属多孔質体から構成することもできる。
【0056】
上記多孔質発熱体2aと上記金属多孔質体3a,4aとの接続形態も特に限定されることはない。たとえば、所定の圧力を加えて圧接することができる。また、溶接により接続することもできる。接続面積は、多孔質発熱体の密度や流れる電流値等に応じて設定することができる。
【0057】
上記電極板3b,4bを構成する材料や接続方法も特に限定されることはない。たとえば、Ni板やCu板を、溶接により上記金属多孔質体3a,4aに接続することができる。
【0058】
上記リード部3,4を設けることにより、多孔質発熱体2aに対する接続面積を確保することが可能となり、広い面積を介して上記多孔質発熱体2aに通電することができる。このため、局所的に大きな電流が流れることがなくなり、多孔質発熱体を均一に加熱することができる。
【0059】
一方、上記金属多孔質体3a,4aは、電気抵抗を小さく設定することにより発熱しないように構成するのが好ましい。また、多孔質状であるため、多孔質発熱体2aから伝わる熱を放熱させることも期待できる。これにより、電極板3b,4bに高い温度が作用しないように設定することが可能となり、配線5を上記電極板3b.4bに容易に接続することができる。
【0060】
図5に、第2の実施形態に係る多孔質発熱素子202の概略構造を示す。この実施形態に係る多孔質発熱素子202は、Niで形成された金属多孔質体の中間部を、Cr合金化することにより、リード部203,204を構成する金属多孔質体203a,204aと多孔質発熱部202aとを一体形成するとともに、両端部に図2に示す実施形態と同様の電極板203b,204bを設けたものである。
【0061】
上記構成を採用することにより、別途形成した金属多孔質体を、多孔質発熱部2aに接続する必要がなくなる。しかも、上記リード部203,204を構成する金属多孔質体203a,204aと多孔質発熱部202aとが、同じ骨格構造を備えて構成されているとともに一体的に連続している。このため、これら部材の接続抵抗が発生することがなく、多孔質発熱部202aに効率よく通電することができる。
【0062】
上記構成の多孔質発熱素子202は、たとえば、図6〜図12に示す手法によって形成することができる。なお、図6〜図12は、上記多孔質発熱素子202を製造する手法を模式的に示したものである。まず、リード部203,204を構成する金属多孔質体203a,204aと多孔質発熱体202aとの共通の骨格を形成するため、図6に示す3次元網目状樹脂210を準備する。上記3次元網目状樹脂210は、上述した骨格を構成する中空の芯部に対応する部分210aと、連続気孔210bとを備えて構成されており、たとえば、ウレタン樹脂を所定の気孔率で発泡させることにより形成することができる。
【0063】
図7に示すように、上記3次元網目状樹脂210に、上述した手法によって表面を導電化処理した後、Niめっき層211を形成する。上記Niめっき層211は、上述したように、100g/m2 〜2000g/m2 の目付量で形成することができる。その後、図8に示すように、上記リード部を構成する部分204aに、上記Crめっき処理に対するマスキング層212を形成する。上記マスキング層212は、たとえば、エポキシ樹脂等で形成することができる。
【0064】
次に、図9に示すように、上記マスキング層212を設けた多孔質体に、上述した手法によって、Crめっき層213を設ける。上記マスキング層212を設けているため、上記多孔質発熱部202aに対応した領域にのみ上記Crめっき層213が形成される。これにより、上記発熱部202aを構成する部分に、Niめっき層とCrめっき層とが積層形成された複合めっき層220が形成される。
【0065】
上記マスキング層212を除去した後(図10)、上述した3次元網目状樹脂を除去する工程が行われ、図11に示すように、Niめっき層211とCrめっき層213とを備える複合めっき層220からなる3次元網目状の金属多孔質体214が形成される。
【0066】
上記複合めっき層220を備える上記金属多孔質体214を、ステンレスマッフル内でCOやH2 等の還元性ガス雰囲気のもとで800℃〜1000℃で熱処理することにより、上記Niめっき層211と上記Crめっき層213を構成する成分を互いに拡散させてNi−Cr合金化し、図12に示す金属多孔質体を構成することができる。図12に示すように、上記金属多孔質体は、中空の芯部201cと外殻201aとからなる骨格を備えている。
【0067】
上記手法を採用することにより、Niによって形成された金属多孔質体の中間部をNi−Cr合金化して、発熱部202aとこの両側にCr合金化されていない金属多孔質体203a,204aを設けた金属多孔質体を一体的に形成することができる。上記金属多孔質体203a,204aの両側に電極板203b,204bを設けることにより、図10に示す多孔質発熱素子202が形成される。
【0068】
なお、上記多孔質発熱素子202では、金属多孔質体を備えるリード部を形成したが、上記金属多孔質体203a,204aを形成することなく上記発熱部202aのみ形成し、この発熱部202aを構成する多孔質体に直接電極板203b,204bを溶接等してリード部を設けてもよい。
【0069】
図13に、本願発明に係る多孔質発熱素子を用いて形成したガス分解素子の断面を模式的に示す。
【0070】
ガス分解素子310は、長尺状の筒状容器309の内部に、多孔質発熱素子320を充填して構成される。上記筒状容器309は、少なくとも内面が電気絶縁性を備えるように構成される。たとえば、セラミックから形成された筒状容器を採用することができる。
【0071】
本実施形態に係る多孔質発熱素子320は、多孔質発熱体302と両側に設けられたリード部303,304とを備えて構成される。上記多孔質発熱体302は、第1の実施形態と同様に形成されたものであり、Ni−Cr合金から形成された3次元網目状の骨格302aと、連続気孔302bとを備えて構成される。
【0072】
上記リード部303,304は、上記多孔質発熱体302の両端部に接続される金属多孔質体303a,304aと、上記金属多孔質体303a,304aの外周部を囲むように配置された環状の電極部303b,304bとを備えて構成される。
【0073】
上記金属多孔質体303a,304aは、上記多孔質発熱体302の端面に圧接あるいは溶接される。また、上記電極部303b,304bも、上記金属多孔質体303a,304aの外周部に、圧接あるいは溶接されている。
【0074】
上記電極部303b,304bに接続される配線305が、上記容器309から引き出されて電源306に接続されており、この配線305によって、上記多孔質発熱素子320に通電される。
【0075】
本実施形態に係る多孔質発熱素子320は、リード部303,304を含む全体が多孔質であるため通気性が高い。また、上記電極部303b,304bも、上記筒状容器内のガスの流動を妨げないように、端部内周面に添着するように配置されている。このため、筒状容器309のガス導入口307を介してガスを筒状容器内に導入するとともに、上記多孔質発熱素子320の内部を軸方向に向けて流動させ、ガス排出口308から排出することができる。また、上記多孔質発熱体302は、全体がほぼ均等に加熱されるため、流動するガスを均一に加熱することができる。このため、非常に効率よくガスを分解することができる。しかも、外部に熱源を設ける必要がないため、エネルギ効率も非常に高い。
【0076】
図14に、第1のガス分解素子410と、筒状MEA510を備える第2のガス分解素子520とを組み合わせて構成したガス分解装置600の概略断面図を示す。なお、上記第1のガス分解素子410は、図11に示すガス分解素子と構成が同一であるので説明は省略する。
【0077】
上記第2のガス分解素子520は、内側ガスを流動させて分解する筒状MEA510と、上記筒状MEA510を保持するとともにこの筒状MEAの外周部に空気を流動させることのできる筒状容器509とを備えて構成される。
【0078】
上記筒状MEA510は、図示しない筒状の固体電解質層と、この固体電解質層の内周部に積層形成された第1の電極層と、上記固体電解質層の外周部に積層形成された第2の電極層とを備えて構成されている。
【0079】
上記筒状MEA510は、上記筒状容器509のガス流入口507とガス流出口508の間に接続されるようにして上記筒状容器509内に保持されている。上記筒状容器509の外周部には、空気を導入する空気導入口517と、上記筒状MEA510の外周部を流動した空気を排出する排出口518とを備える。
【0080】
上記ガス分解素子520の外周部には、図示しないヒータが設けられており、上記筒状MEA510及び上記空気が流動する空間を所定温度に加熱できるように構成されている。また、上記筒状MEA510の上記第1の電極層と上記第2の電極層の間には、図示しない配線が設けられており、この配線内に図示しない負荷装置が設けられる。
【0081】
上記第1のガス分解素子410と上記第2のガス分解素子520は、接続部500を介して連結されており、分解されるガスが、上記第1のガス分解素子410と上記第2のガス分解素子520に順次流動させられる。
【0082】
上記構成のガス分解装置600は、第1のガス分解素子410において加熱によりガスを分解する一方、上記第2のガス分解素子520では、上記第1のガス分解素子410で分解しきれなかったガスを電気化学的に分解するように構成したものである。
【0083】
たとえば、アンモニアガスを分解する場合、上記第1のガス分解素子において、2NH3→N2+3H2 のように、アンモニアガスが熱分解される。
【0084】
また、上記筒状MEA510の第1の電極層(アノード)において、
(アノード反応)「2NH3+3O2-→N2+3H2O+6e-」
の反応を生じさせる。より詳しくは、一部のアンモニアに、2NH3→N2+3H2の反応を生じ、この3H2が、酸素イオン3O2-と反応して3H2Oを生成する。
一方、上記筒状MEAの第2の電極層(カソード)では、
(カソード反応)「O2 +4e-→2O2-」
の反応を生じさせる。
上記電気化学反応の結果、電力が発生し、第1の電極層と第2の電極層との間
に電位差が生じ、上記配線に電流が流れる。これにより、上記配線内に接続したヒータ等の負荷に電力を供給することができる。
【0085】
上記第1のガス分解素子410と上記第2のガス分解素子520とを組合せてガス分解装置600を構成することにより、ガスを精度高く分解することが可能となる。
【0086】
本願発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
ガス分解装置等において、ガスを効率よく加熱することができるとともに、熱分解させることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 多孔質発熱体
10 骨格
10a 外殻
1b 連続気孔
2 多孔質発熱素子
2a 発熱部
3 リード部
3a 金属多孔質体
3b 電極板
4a 金属多孔質体
4b 電極板
5 配線
11 結節部
12 枝部
202 多孔質発熱素子
202a 発熱部
203 リード部
203a 金属多孔質体
203b 電極板
204a 金属多孔質体
204b 電極板
205 配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気孔を有する金属多孔質体からなる多孔質発熱体であって、
発熱材料からなる外殻と、中空又は/及び導電性材料からなる芯部とを有する骨格が、一体的に連続する3次元網目構造を構成している、多孔質発熱体。
【請求項2】
上記3次元網目構造は、上記骨格を構成する複数の枝部が結節部に集合して一体的に連続しているとともに、一の結節部に集合する上記各枝部の外殻の厚みがほぼ一定である、請求項1に記載の多孔質発熱体。
【請求項3】
上記骨格は、3次元網目状樹脂の表面にめっき層又は金属コーティング層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成されたものである、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の多孔質発熱体。
【請求項4】
上記外殻は、Niを67〜95%と、Crを5〜33%とを含む合金から形成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多孔質発熱体。
【請求項5】
上記外殻は、Niを主成分とする金属多孔質体に、Crを拡散させることにより合金化されたものである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多孔質発熱体。
【請求項6】
上記外殻は、Niによって形成された第1の外殻に、Crで形成された第2の外殻を積層形成した後、所定の熱処理を行うことにより、上記第1の外殻と上記第2の外殻とを互いに拡散させて合金化することにより形成されている、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の多孔質発熱体。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載した多孔質発熱体から形成される発熱部と、
上記発熱部に、所定の面積で接続されるとともに電流を導入するリード部が設けられている、多孔質発熱素子。
【請求項8】
上記リード部を、上記多孔質発熱体に接続される導電性の金属多孔質体を備えて構成した、請求項7に記載の多孔質発熱素子。
【請求項9】
上記リード部を構成する金属多孔質体の中間部を合金化することにより、上記発熱部及び上記リード部が一体的に形成されている、請求項7又は請求項8のいずれかに記載の多孔質発熱素子。
【請求項10】
請求項1から請求項6に記載した多孔質発熱体と、
上記多孔質発熱体を充填した容器と、
上記発熱体に所定面積で接続されるとともに、上記容器外へ引き出される配線を有するリード部とを備え、
上記リード部を介して通電することにより所定温度に設定した上記多孔質発熱体内に、分解に供せられるガスを流動させる、ガス分解素子。
【請求項1】
連続気孔を有する金属多孔質体からなる多孔質発熱体であって、
発熱材料からなる外殻と、中空又は/及び導電性材料からなる芯部とを有する骨格が、一体的に連続する3次元網目構造を構成している、多孔質発熱体。
【請求項2】
上記3次元網目構造は、上記骨格を構成する複数の枝部が結節部に集合して一体的に連続しているとともに、一の結節部に集合する上記各枝部の外殻の厚みがほぼ一定である、請求項1に記載の多孔質発熱体。
【請求項3】
上記骨格は、3次元網目状樹脂の表面にめっき層又は金属コーティング層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成されたものである、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の多孔質発熱体。
【請求項4】
上記外殻は、Niを67〜95%と、Crを5〜33%とを含む合金から形成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多孔質発熱体。
【請求項5】
上記外殻は、Niを主成分とする金属多孔質体に、Crを拡散させることにより合金化されたものである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多孔質発熱体。
【請求項6】
上記外殻は、Niによって形成された第1の外殻に、Crで形成された第2の外殻を積層形成した後、所定の熱処理を行うことにより、上記第1の外殻と上記第2の外殻とを互いに拡散させて合金化することにより形成されている、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の多孔質発熱体。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載した多孔質発熱体から形成される発熱部と、
上記発熱部に、所定の面積で接続されるとともに電流を導入するリード部が設けられている、多孔質発熱素子。
【請求項8】
上記リード部を、上記多孔質発熱体に接続される導電性の金属多孔質体を備えて構成した、請求項7に記載の多孔質発熱素子。
【請求項9】
上記リード部を構成する金属多孔質体の中間部を合金化することにより、上記発熱部及び上記リード部が一体的に形成されている、請求項7又は請求項8のいずれかに記載の多孔質発熱素子。
【請求項10】
請求項1から請求項6に記載した多孔質発熱体と、
上記多孔質発熱体を充填した容器と、
上記発熱体に所定面積で接続されるとともに、上記容器外へ引き出される配線を有するリード部とを備え、
上記リード部を介して通電することにより所定温度に設定した上記多孔質発熱体内に、分解に供せられるガスを流動させる、ガス分解素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−169109(P2012−169109A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28382(P2011−28382)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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