説明

多孔質酸化チタン及びその製造方法

【課題】紫外線防御能、使用性、可視域での透明性が向上した多孔質酸化チタン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の多孔質酸化チタンは、多価アルコールを含むチタン塩溶液に、アルカリを添加した後、加熱加水分解することにより得られる。また、アルカリ添加後さらに酸を添加して加熱加水分解すること、あるいは加熱加水分解後さらに酸で加熱処理することもできる。多孔質酸化チタンの平均粒子径は0.01〜1.0μm、比表面積は50m/g以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質酸化チタン及びその製造方法に関し、特にその紫外線防御能、透明性、使用性等に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、屈折率が高く、隠蔽力、着色力、紫外線防御力に優れていることから、従来より、顔料として塗料、プラスチック、化粧料等に広く使用されている。紫外線防御剤としてこれらの製品基剤に含まれる酸化チタンは、紫外線防御能、透明性を追求した結果、平均一次粒子径が0.1μm以下の微粒子粉体が主流となっている。酸化チタンの製造方法としては、硫酸チタニルや四塩化チタンを水相中で加熱加水分解する方法や、中和加水分解する方法などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、微粒子粉体は粒子径が非常に小さいことから、吸油量が高く、凝集を起こしやすく、製品基剤系において分散し難いものであった。また、この微粒子粉体を含有する化粧料等はUV−B領域(280〜320nm)の紫外線防止効果は高いものの、可視域(400〜700nm)での透明性に劣り、実使用時においてもざらつきやのびの悪さ等の問題点を有していた。
【0004】
特許文献2には、チタン塩溶液を脂肪族アルコール存在下で加熱加水分解し、さらに酸で加熱処理することにより多孔質酸化チタン粉体が得られることが記載されている。
この多孔質酸化チタンは、紫外線防御効果、使用性、可視域での透明性において優れるものの、さらなる効果の向上が望まれるところであった。
【特許文献1】特開昭55−10428号公報
【特許文献2】特開2004−292266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記背景技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、紫外線防御能、使用性、可視域での透明性が向上した多孔質酸化チタン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討した結果、脂肪族アルコールを含有するチタン塩溶液にアルカリを添加して加熱加水分解することにより多孔質酸化チタンが得られ、この多孔質酸化チタンは紫外線防御能、可視域での透明性、使用性が非常に高いことを見出した。また、アルカリ添加後にさらに酸を添加したり、加熱加水分解後に酸加熱処理を行うことにより、さらに効果が向上することをも見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明にかかる多孔質酸化チタンの製造方法は、多価アルコールを含むチタン塩溶液に、アルカリを添加した後、加熱加水分解することを特徴とする。
本発明において、アルカリ添加後、さらに酸を添加して、加熱加水分解することが好適である。
また、アルカリをチタン塩に対して0.1〜1倍モル添加することが好適である。
また、酸をチタン塩に対して0.1〜1倍モル添加することが好適である。
また、加熱加水分解後、さらに酸で加熱処理することが好適である。
また、本発明において、多価アルコールがチタン塩に対して0.1〜5倍モルであることが好適である。
本発明にかかる多孔質酸化チタンは、前記何れかの方法により得られた、平均粒子径が0.01〜1.0μm、比表面積が50m/g以上である多孔質酸化チタンである。
また、本発明にかかる化粧料は、前記多孔質酸化チタンを配合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紫外線防御効果、透明性が非常に高く、使用性にも優れる多孔質酸化チタンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の多孔質酸化チタン粉体は、多価アルコールを含むチタン塩溶液に、アルカリを添加し、加熱加水分解することにより得られる。アルカリの添加により、得られた多孔質酸化チタンの紫外線防御効果及び透明性が向上する。
アルカリは特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、炭酸ナトリウム等が好適に用いられる。アルカリの添加量はチタン塩に対してモル比で0.1〜1であることが好適である。添加量が少なすぎるとその効果が十分に発揮されず、過剰に用いた場合には微粒子化が過度になり逆に凝集が強くなって紫外線防御効果や透明性が低下する。
アルカリ添加後は、十分に混合する。例えば、10〜40℃で10分〜24時間、好ましくは20〜40℃で10〜60分間攪拌する。
【0010】
また、アルカリ添加後にさらに酸を添加してから加熱加水分解すれば、紫外線防御効果が一層向上した多孔質酸化チタンを得ることができる。
このような酸としては特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸等が好適に用いられ、特に好ましくは塩酸である。酸の添加量はチタン塩に対してモル比で0.1〜1であることが好適である。添加量が少なすぎるとその効果が十分に発揮されず、過剰に用いた場合には酸による加水分解の抑制作用が働きすぎ、微粒子化が過度になり凝集が強くなる他、収率も低下する。
酸添加後は、十分に混合する。例えば、10〜40℃で10分〜24時間、好ましくは通常は20〜40℃で10〜60分間攪拌する。
【0011】
本発明においては、チタン塩溶液中に多価アルコールを存在させておく。多価アルコールを用いない場合には、上記のようなアルカリや酸を添加して加熱加水分解しても、得られた多孔質酸化チタンの紫外線防御効果や透明性は極めて低くなってしまう。
【0012】
多価アルコールとしては、特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール等が好適に用いられる。1価アルコールを用いても多孔質になるが、多価アルコールに比べてきれいな形状のものが得難い。多価アルコールとして特に好ましくはグリセリンである。
多価アルコールの添加量としては、通常はチタン塩に対しモル比で0.1〜5、好ましくは0.5〜2.5である。添加量が少なすぎても多すぎても良好な効果を発揮する多孔質酸化チタンを得ることが困難である。
多価アルコール添加後は、十分に混合する。例えば、10〜40℃で10分〜24時間、好ましくは20〜40℃で5〜20時間攪拌する。
【0013】
本発明において用いるチタン塩溶液の出発原料としては、特に限定されないが、硫酸チタン、硫酸チタニル、四塩化チタン等の無機チタン塩の水溶液が好適に用いられる。また、出発原料としてチタンテトライソプロポキシド等の有機チタン塩を使用することも可能である。チタン塩溶液の濃度は、0.1〜5mol/Lであることが好適である。
【0014】
加熱加水分解条件は、用いるチタン塩溶液や添加剤の種類や濃度等により適宜決定されるが、通常50〜100℃にて1〜12時間であることが好適である。
また、本発明においては、加熱加水分解後、さらに酸による加熱処理を行うことで、紫外線防御効果及び可視域での透明性が更に向上する。
酸加熱処理としては、例えば、加熱加水分解後、濾過残分を水中に再懸濁したスラリーに対して酸を添加し、あるいは、濾過残分を酸の水溶液に再懸濁し、加熱することにより行うことができる。
【0015】
このような酸としては、硫酸、硝酸、塩酸等が挙げられ、好ましくは塩酸である。該酸加熱処理における酸の添加量は、通常スラリー中のチタンに対してモル比で1〜8とすることができる。
加熱条件としては、用いる原料、添加剤、濃度等に応じて適宜決定すればよいが、通常は、前記加熱加水分解条件と同様の範囲である。
なお、酸加熱処理の後は、さらにアルカリで中和してから、濾過、水洗、乾燥を行うことが好ましい。また、必要であれば、乾燥後焼成してもよい。
【0016】
本発明で得られる酸化チタン粉体は、酸化チタンの一次粒子が集合した擬球状(概ね球状)の多孔質粒子である。その平均粒子径はSEM観察から0.01〜1μmの範囲であり、紫外線防御能と透明性の点から好ましくは0.03〜0.15μmである。比表面積(BET)は50m/g以上である。
【0017】
本発明の方法で得られる多孔質酸化チタン粉体は、透明性、紫外線防御効果が非常に高い。これは該酸化チタン粉体が多孔質であることに加え、基剤中での分散性がよくて凝集しにくいためではないかと考えられる。また、本発明の多孔質酸化チタン粉体は擬球状であり、ざらつきがなく使用性にも優れる。
【0018】
本発明においては、多価アルコールとともにカルボキシル基又はカルボニル基を有する物質を共存させてもよい。この場合、併用しない場合に比して多孔質粉体の粒径が小さくなる傾向がある。
このような物質としては、特に支障のない限り限定されないが、炭素数1〜22の脂肪族化合物が好適であり、代表的な例として脂肪族カルボン酸又はその誘導体等が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ステアリン酸等の一塩基酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸等の二塩基酸の他、あるいはそれ以上の多塩基酸も可能である。誘導体としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩等の塩、メチルエステル、エチルエステル等のエステル等が代表的であるが、アミノ酸、アミドなども特に支障のない範囲で使用可能である。カルボン酸又はその誘導体のうち、好ましいものとしてカルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステルが挙げられ、特に好ましいものとして酢酸が挙げられる。
【0019】
カルボキシル基又はカルボニル基を有する物質の添加量は、該化合物の種類やその他の条件によって適宜決定すればよいが、通常はチタンに対するモル比で0.1〜5であることが好適であり、より好ましくは0.5〜3である。添加量が少なすぎると効果が発揮されず、また、過剰に添加するとかえって粒子が細かくなりすぎ凝集を誘発する。
【0020】
また、酸化チタンは光、特に紫外線の照射によって光触媒として作用することが知られている。
その一方で、このような光触媒作用によって、何らかの基剤系に配合された場合、それら基剤中の他成分を変質させてしまう可能性もある。このような変質を回避するために表面処理を行うことができる。また、化粧料などにおいては撥水性付与のためにも表面処理を行うことが好適である。
【0021】
本発明に用いる表面処理としては特に限定されないが、例えばアルミニウム処理、シリコーン処理、脂肪酸石鹸処理、デキストリン脂肪酸エステル処理、フッ素処理等を行ってもよい。また、その他の金属種でさらに表面を被覆することにより、紫外線吸収特性を変化させることも期待できる。
【0022】
本発明の多孔質チタン粉体は、熱的、化学的にも安定であり、油分、水、粉末、界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、保湿剤、防腐剤、高分子、酸化防止剤、香料、各種薬剤等を本発明の持つ紫外線防御等の効果を損なわない質的、量的範囲で配合することが可能である。
【0023】
本発明の多孔質酸化チタン粉体を化粧料に配合して用いる場合、化粧料のとり得る形態は特に限定されず、例えば粉末状、クリーム状、スティック状、ペンシル状、液体状等、その用途に応じて各種形態をとることが可能であり、化粧下地、ファンデーション、白粉、頬紅、口紅、マスカラ、アイシャドー、アイライナー、クリーム、乳液、ローション等各種化粧料を提供することが可能である。これら化粧料は、本発明の多孔質酸化チタンとともに、通常化粧料に配合可能な成分を用いて、公知の方法により製造することができる。
【実施例】
【0024】
製造例1
1mol/Lの四塩化チタン水溶液1Lに92g(1mol)のグリセリンを添加し、40℃で攪拌した後、10g(0.25mol)の水酸化ナトリウムを添加し、更に40℃で30分間攪拌した。この溶液に35%塩酸26g(0.25mol)を添加し、40℃で30分間攪拌した後、90℃で3時間加熱加水分解を行い、濾過、水洗、乾燥によりアナターゼ型の酸化チタン粉体を得た。
SEM観察の結果、得られた粉体は酸化チタンの一次粒子が集合して形成された平均粒子径約70nmの多孔質擬球形粒子であることが確認された。また、比表面積は182m/gであった。
【0025】
製造例2
製造例1において、加熱加水分解後、さらに酸で加熱処理を行った。すなわち、1mol/Lの四塩化チタン水溶液1Lに92g(1mol)のグリセリンを添加し、40℃で攪拌した後、10g(0.25mol)の水酸化ナトリウムを添加し、更に40℃で30分間攪拌した。この溶液に35%塩酸26g(0.25mol)を添加し、40℃で30分間攪拌した後、90℃で3時間加熱加水分解を行った。
続いて得られたゾルを濾過した後、濾過残分を1.5mol/L塩酸500mLに超音波分散機にて分散させ、90℃で3時間攪拌した後、水酸化ナトリウムで中和、濾過、水洗、乾燥を行ってアナターゼ型の酸化チタン粉体を得た。
SEM観察の結果、得られた粉体は酸化チタンの一次粒子が集合して形成された平均粒子径約60nmの多孔質擬球形粒子であることが確認された。また、比表面積は343m/gであった。
【0026】
製造例3
製造例2において、アルカリ添加後に酸を添加せずに製造した。すなわち、1mol/Lの四塩化チタン水溶液1Lに92g(1mol)のグリセリンを添加し、40℃で攪拌した後、10g(0.25mol)の水酸化ナトリウムを添加し、更に40℃で30分間攪拌した。この溶液を90℃で3時間加熱加水分解を行った。
続いて得られたゾルを濾過した後、濾過残分を1.5mol/L塩酸500mLに超音波分散機にて分散させ、90℃で3時間攪拌した後、水酸化ナトリウムで中和、濾過、水洗、乾燥を行ってアナターゼ型の酸化チタン粉体を得た。
SEM観察の結果、得られた粉体は酸化チタンの一次粒子が集合して形成された平均粒子径約70nmの多孔質擬球形粒子であることが確認された。
【0027】
製造例4
製造例2において、塩酸の代わりに酢酸を用いて製造した。すなわち、1mol/Lの四塩化チタン水溶液1Lに92g(1mol)のグリセリンを添加し、40℃で攪拌した後、10g(0.25mol)の水酸化ナトリウムを添加し、更に40℃で30分間攪拌した。この溶液に酢酸60g(1mol)を添加し、40℃で30分間攪拌した後、90℃で3時間加熱加水分解を行った。
続いて得られたゾルを濾過した後、濾過残分を1.5mol/L塩酸500mLに超音波分散機にて分散させ、90℃で3時間攪拌した後、水酸化ナトリウムで中和、濾過、水洗、乾燥を行ってアナターゼ型の酸化チタン粉体を得た。
SEM観察の結果、得られた粉体は酸化チタンの一次粒子が集合して形成された平均粒子径約60nmの多孔質擬球形粒子であることが確認された。
【0028】
製造例5
製造例2において、塩酸とともに酢酸を用いて製造した。すなわち、1mol/Lの四塩化チタン水溶液1Lに92g(1mol)のグリセリンを添加し、40℃で攪拌した後、10g(0.25mol)の水酸化ナトリウムを添加し、更に40℃で30分間攪拌した。この溶液に35%塩酸26g(0.25mol)を添加し、40℃で攪拌した後、酢酸60g(1mol)を添加してさらに30分間攪拌した後、90℃で3時間加熱加水分解を行った。
続いて得られたゾルを濾過した後、濾過残分を1.5mol/L塩酸500mLに超音波分散機にて分散させ、90℃で3時間攪拌した後、水酸化ナトリウムで中和、濾過、水洗、乾燥を行ってアナターゼ型の酸化チタン粉体を得た。
SEM観察の結果、得られた粉体は酸化チタンの一次粒子が集合して形成された平均粒子径約60nmの多孔質擬球形粒子であることが確認された。
【0029】
比較製造例1
製造例2において、水酸化ナトリウム及び塩酸を添加せずに製造した。すなわち、1mol/Lの四塩化チタン水溶液1Lに92g(1mol)のグリセリンを添加し、40℃で攪拌した後、90℃で3時間加熱加水分解を行った。
続いて得られたゾルを濾過した後、濾過残分を1.5mol/L塩酸500mLに超音波分散機にて分散させ、90℃で3時間攪拌した後、水酸化ナトリウムで中和、濾過、水洗、乾燥を行ってルチル型の酸化チタン粉体を得た。
SEM観察の結果、得られた粉体は酸化チタンの一次粒子が集合して形成された平均粒子径約90nmの多孔質擬球形粒子であることが確認された。
【0030】
比較製造例2
製造例2において、グリセリンを添加せずに製造した。すなわち、1mol/Lの四塩化チタン水溶液1Lを40℃で攪拌した後、10g(0.25mol)の水酸化ナトリウムを添加し、更に40℃で30分間攪拌した。この溶液に35%塩酸26g(0.25mol)を添加し、40℃で30分間攪拌した後、90℃で3時間加熱加水分解を行った。
続いて得られたゾルを濾過した後、濾過残分を1.5mol/L塩酸500mLに超音波分散機にて分散させ、90℃で3時間攪拌した後、水酸化ナトリウムで中和、濾過、水洗、乾燥を行ってルチル型の酸化チタン粉体を得た。
SEM観察の結果、得られた粉体は酸化チタンの一次粒子が集合して形成された平均粒子径約2μmの無孔質不定形粒子であることが確認された。
【0031】
試験例1 透明性及び紫外線防御効果
製造例1〜5及び比較製造例1〜2の多孔質酸化チタン粉体について、以下の方法により透過率を測定し、可視域での透明性と紫外線防護効果を評価した。
すなわち、粉体2gをひまし油3g中、3本ローラーで十分に粉砕・分散し、得られた分散体をさらにひまし油で粉体濃度5質量%に希釈した。この分散物を石英ガラス上に膜厚5μmに塗布し、室温にて30分間乾燥した。形成された塗布膜について、分光光度計にて280〜800nmの透過率を測定し、下記基準で評価した。
【0032】
<可視域での透明性の評価基準>
◎:450nmでの透過率が90%以上
○:450nmでの透過率が85%以上90%未満
△:450nmでの透過率が80%以上85%未満
×:450nmでの透過率が80%未満
【0033】
<紫外線防御効果の評価基準>
◎:280nmでの透過率が5%未満
○:280nmでの透過率が5%以上10%未満
△:280nmでの透過率が10%以上15%未満
×:280nmでの透過率が15%以上
【0034】
【表1】

【0035】
表1のように、チタン塩溶液の加熱加水分解後さらに酸加熱処理した系においては、多価アルコール含有チタン塩溶液にアルカリを添加した場合やアルカリ及び酸を添加した場合(製造例2〜5)には、アルカリ及び酸を添加しなかった場合(比較製造例1)に比べて、透明性及び紫外線防御性が向上した。特に、アルカリ添加後に塩酸を添加することにより紫外線防御効果が非常に高くなった(製造例2、5)。
一方、多価アルコールを用いずにアルカリ及び酸のみを添加した場合には透明性、紫外線防御性ともに非常に低かった。
また、多価アルコール含有チタン塩溶液にアルカリ及び酸を添加して加熱加水分解した場合には、その後の酸加熱処理を行わなくとも、比較製造例1に比して高い透明性及び紫外線防御性が得られた(製造例1)。
【0036】
本発明にかかる多孔質酸化チタン粉体として、製造例2の走査電子顕微鏡(SEM)による観察図を図1に示す。図1のように、本発明にかかる多孔質酸化チタン粉体は、酸化チタン一次粒子が集合して擬球状に形成されている。
【0037】
以下、本発明の多孔質酸化チタン粉体を配合した化粧料について説明する。なお、配合量は質量%である。
[配合例1] O/W乳液型サンスクリーン
1. 多孔質酸化チタン粉体(製造例2) 10
2. 亜鉛華 5
3. ステアリン酸 2
4. セチルアルコール 1
5. ワセリン 5
6. シリコーン油 2
7. 流動パラフィン 10
8. グリセリルモノステアリン酸エステル(自己乳化型) 1
9. ポリオキシエチレン(25モル)モノオレイン酸エステル 1
10.ポリエチレングリコール1500 5
11.ビーガム 0.5
12.精製水 57.5
13.香料 適量
14.防腐剤 適量
【0038】
精製水にポリエチレングリコールを加え加熱溶解後、亜鉛華、ビーガムを加えホモミキサーで均一に分散し70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し加熱溶解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加えホモミキサーで均一に乳化分散し、乳化後かき混ぜながら35℃まで冷却する。以上のようにしてO/W乳液型サンスクリーン得た。
比較例として、製造例2の多孔質酸化チタン粉体の代わりに比較製造例1の多孔質酸化チタン粉体を用いて同様にサンスクリーンを製造した(比較配合例1)。
10名の専門パネルにより使用試験を行ったところ、使用感や仕上がりの素肌感、紫外線防御効果において、配合例1の方が比較配合例1よりも高い評価が得られた。
【0039】
[配合例2] パウダーファンデーション
1. 多孔質酸化チタン粉体(製造例1) 12
2. 雲母チタン 6
3. タルク 15
4. セリサイト 25
5. 酸化鉄 5
6. 球状ナイロン粉末 2
7. 球状PMMA粉末 4
8. 窒化ホウ素粉末 1
9. マイカ 残余
10.ポリエーテル変性シリコーン 0.5
11.セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
12.流動パラフィン 3
13.ジメチルポリシロキサン 1
14.ワセリン 2
15.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 2
16.トリイソオクタン酸グリセリン 0.5
17.防腐剤 適量
18.香料 適量
【0040】
上記1〜9の成分を均一に混合し、これに加熱溶解した10〜18の成分を加えて再び均一に混合し、容器に充填することによってパウダーファンデーションを調製した。
比較例として製造例2の多孔質酸化チタン粉体の代わりに比較製造例2の多孔質酸化チタン粉体を用いて同様にパウダーファンデーションを製造した(比較配合例2)。
10名の専門パネルにより使用試験を行ったところ、使用感や仕上がりの素肌感、紫外線防御効果において、配合例2の方が比較配合例2よりも高い評価が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例にかかる多孔質酸化チタン粉体の走査電子顕微鏡(SEM)による観察図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコールを含むチタン塩溶液に、アルカリを添加した後、加熱加水分解することを特徴とする多孔質酸化チタンの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、アルカリ添加後、さらに酸を添加して、加熱加水分解することを特徴とする多孔質酸化チタンの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、アルカリをチタン塩に対して0.1〜1倍モル添加することを特徴とする多孔質酸化チタンの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の方法において、酸をチタン塩に対して0.1〜1倍モル添加することを特徴とする多孔質酸化チタンの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の方法において、加熱加水分解後、さらに酸で加熱処理することを特徴とする多孔質酸化チタンの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の方法において、多価アルコールがチタン塩に対して0.1〜5倍モルであることを特徴とする多孔質酸化チタンの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の方法により得られた、平均粒子径が0.01〜1.0μm、比表面積が50m/g以上である多孔質酸化チタン。
【請求項8】
請求項7記載の多孔質酸化チタンを配合した化粧料。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−81366(P2008−81366A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263832(P2006−263832)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】