説明

多層フレキシブル配線板

【課題】構成を簡素化でき、製造工程を簡略化できるとともに、耐屈曲性や耐屈折性に優れ、かつ薄型化が容易な多層フレキシブル配線板を提供すること。
【解決手段】本発明の多層フレキシブル配線板は、絶縁基板14と、絶縁基板14の両面に設けられた一対の導電層15、16と、一対の導電層15、16上にそれぞれ設けられた一対の絶縁層17、19と、一対の絶縁層17、19上にそれぞれ設けられ、めっき及び/又は導電ペーストにより、一対の導電層とカバーレイを介さずに電気的に接続された少なくとも1層の外層回路L3(18)、L4(20)と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板内において、カバーレイを介さずに複数層の導電層を接続可能な多層フレキシブル配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末機などでは、多層フレキシブル配線板やリジッドフレックス配線板が採用されている。多層フレキシブル配線板やリジッドフレックス配線板は、部品実装を必要とするリジッド部と、折り曲げ、または屈曲性を必要とするフレキシブル部と、を有している。これらの一例としては、特許文献1、2に多層フレキシブル配線板の構造や製造方法が開示され、特許文献3、4、5にリジッドフレックス配線板の構造や製造方法が開示されている。
【0003】
従来、多層フレキシブル配線板やリジッドフレックス配線板を用いた4層基板の製造工程は、複雑な工程を経て製造されている。特に、多層フレキシブル配線板では、フレキシブル部の形成に必要な中空構造を形成する工程、リジッドフレックス配線板では、フレキシブル部を作るための外層剥がしの工程が、非常に複雑な工程となっている。そのため、多くの工数や材料を必要とし、コストアップや品質不安定さの大きな要因となっている。
【0004】
図6(a)〜図6(e)は、多層フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す図である。多層フレキシブル配線板は、数種類の構造があり、その製造工程は、構造に応じて若干異なる。ここでは、最も代表的な両面フレキシブル配線板(以下両面FPC)2枚を積層した構造を有する多層フレキシブル配線板の製造工程を説明する。
【0005】
図6(a)に示すように、まず、絶縁基板101の両面に導電層102、103が形成された2つの両面FPC基板(基板A、基板Bとする)を用意する。次いで、図6(b)に示すように、基板Aの導電層102、及び基板Bの導電層103に、サブトラクティブ法などにより内層回路L1(基板A)、L2(基板B)の形成を行う。次いで、図6(c)に示すように、基板Aの内層回路L1形成面、及び基板Bの内層回路L2形成面、にポリイミドフイルムなどを使ったカバーレイ104、105をラミネートして絶縁処理を行う。次に、図6(d)に示すように、層間接着剤106(ガラスエポキシからなるプリプレグでも良い)を使用し、内層回路L1、L2形成面が内側となるように、基板Aのカバーレイ104と基板Bのカバーレイ105とを積層接着する。ここで、カバーレイ104とカバーレイ105との接着時には、金型等を使って層間接着剤106のない中空部R1(フレキシブル部となる部分)を形成できるようにして接着する。そのため、積層接着時には、層間接着剤106の位置合わせの精度が必要となる。
【0006】
次に、貫通スルホール107の穴あけ(一般的にはドリル加工)、及びブラインドビアホール108、109の形成(一般的には、コンフォーマルマスク法によるレーザー加工)を施した後、銅めっきにより内層回路L1、L2間、あるいは各層間を電気的に接続する。この時、層間接着剤106の影響により、銅めっきによる層間の電気的接続の信頼性を損なう場合がある。
【0007】
次に、図6(e)に示すように、サブトラクティブ法などにより外層回路L3、L4の形成を行う。ここでは、基板Aの導電層103を外層回路L3、基板Bの導電層102を外層回路L4に形成する。次いで、カバーコート110(またはカバーレイ)により、外層回路L3、L4の絶縁処理、及び部品実装や電気的接点となる外層の導体露出面へのめっき処理や防錆処理を行う。最後に穴あけ加工や外形加工を行い、電気的検査や外観検査を行った後、完成品となる。
【0008】
図7(a)〜(e)は、リジッドフレックス配線板の製造方法の概略を示す図である。リジッドフレックス配線板は、多層フレキシブル配線板と同様に数種類の構造とその製造工程がある。ここでは、最新の量産技術であるビルドアップ工法によるリジッドフレックス配線板の製造工程について説明する。
【0009】
図7(a)に示すように、まず、絶縁基板111の両面に導電層112、113が形成された両面基板を用いて、スルホールめっきやブラインドビアめっき(不図示)を施して導電層112、113を接続する。次いで、図7(b)に示すように、サブトラクティブ法で両面基板の両面に内層回路(L1、L2)を形成する。次いで、図7(c)に示すように、カバーレイ114、115をラミネートして絶縁処理を施した両面FPCをコア基板として使用する。
【0010】
次に、図7(d)に示すように、コア基板のカバーレイ114の上面及びカバーレイ115の下面にそれぞれ未硬化の層間接着剤116、117を仮固定する。ここで、フレキシブル部R2、R3となる部分は、あらかじめ金型等を使って層間接着剤116、117を除去しておく必要がある。そのため積層時には、層間接着剤116、117の位置合わせ精度も必要となる。
【0011】
次に、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁樹脂118と、この絶縁樹脂118の一方の面に銅箔119を有する片面銅貼り基板を層間接着剤116の上面に積層し、加圧加熱硬化する。次いで、同様に、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁樹脂118と、この絶縁樹脂120の一方の面に銅箔81を有する片面銅貼り基板を層間接着剤117の下面に積層し、加圧加熱硬化する。この銅箔119、121がそれぞれ外層回路L3、L4となる。次に、貫通スルホール82穴あけ(一般的にはドリル加工)、及びブラインドビアホール123、124形成(一般的にはレーザー加工)を施した後、銅めっきにより内層回路L1、L2−銅箔119、121、並びに各内層回路L1−内層回路L2間、及び各銅箔119−銅箔121間を電気的に接続する。この時、層間接着剤116、117の影響により、銅めっきによる層間の電気的接続の信頼性を損なう場合がある。
【0012】
次に、図7(e)に示すように、サブトラクティブ法などにより銅箔119、121を外層回路L3、L4に形成する。次いで、カバーコート125(またはカバーレイ)にて外層回路L3、L4の絶縁処理、及び部品実装や電気的接点となる外層回路L3、L4の導体露出面にめっき処理や防錆処理を行う。次に、穴あけ加工や外形加工を行う。次いで、フレキシブル部R2、R3にある外層回路L3、L4をルーター加工等により層間接着剤まで切り込み、治具等を用いて外層を剥がす。最後に電気的検査や外観検査を行った後、完成品となる。
【0013】
従来の多層フレキシブル配線板及びリジッドフレックス配線板では、基板の層間接着剤としてネガ型感光性樹脂をベースフィルムに使用する例が開示されている(特許文献6、7、8)。また、従来の多層フレキシブル配線板及びリジッドフレックス配線板のフレキシブル部は片側面のみの配線となり、配線密度が高くなるが、このような絶縁材では、誘電率(@1MHz)が3.7〜4.2と大きく、信号伝達の高速化が困難であった。
【0014】
特許文献9には、両面FPCの両側に、接着剤と銅箔を予めラミネートした樹脂付き銅箔(RCC)を積層したリジッドフレックス配線板が開示されている。このリジッドフレックス配線板は、適度な反発性を有し、容易に折り曲げることができるが、次のような欠点がある。
【0015】
携帯電話のヒンジ部等、耐屈曲性(摺動屈曲性/IPC試験)が要求される部位では、フレキシブル部を片面配線、かつ片面カバーレイ構造(導体をセンターに対称構造)にする必要がある。特許文献9に開示されたリジッドフレックス配線板は、片面配線ができても片面カバーレイ構造にすることは困難であり、耐屈曲性が不足する。
【0016】
また、フレキシブル配線板を折り曲げて装着する部位では、何回か折り曲げることにより断線しない程度の耐折性が要求されるが、6層以上の構造有するフレキシブル配線板では、最外層部の剥がし工程が必要となり、工程が複雑になり、生産性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2006−299209号公報
【特許文献2】特開2006−179679号公報
【特許文献3】特許第4237726号公報
【特許文献4】特許第4021472号公報
【特許文献5】特許第4024846号公報
【特許文献6】特開2002−198623号公報
【特許文献7】特許第2900785号公報
【特許文献8】特開昭63−34937号公報
【特許文献9】特開2009−111033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、多層フレキシブル配線板においては、フレキシブル部を形成するために、層間接着剤を用いる際に予め金型等で中空部を確保して積層する必要がある。また品質的にもこの層間接着剤はスルホールめっきやブラインドビアホールめっき時に信頼性の面で悪影響を及ぼす場合がある。また屈曲性を出すためには、中空部の内層回路の絶縁を確保するためカバーレイ層を用いる必要があり、コストアップの要因になっている。
【0019】
また、リジッドフレックス配線板各層においては、フレキシブル部の屈曲性を向上させるために、層間接着剤を用いる際に予め金型等でフレキシブル部となる中空部を確保して積層する必要がある。また品質的にもこの層間接着剤はスルホールめっきやブラインドビアホールめっき時に信頼性の面で悪影響を及ぼす場合がある。また外層の回路形成、カバーコート、表面処理終了後に、ルーター加工等により外層を剥がす工程が必要であるためにコストアップの要因になっている。
【0020】
このように、多層フレキシブル配線板、及びリジッドフレックス配線板は、共にその製造工程が複雑であり、かつその構造が複雑であるためにコストダウンが困難であった。また、品質の安定性にも課題があった。
【0021】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、構成を簡素化でき、製造工程を簡略化できるとともに、耐屈曲性や耐屈折性に優れ、かつ薄型化が容易な多層フレキシブル配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を克服するため、本発明者らは鋭意研究した。その結果、めっき及び/又は導電ペーストにより、カバーレイを介さずに内層回路及び外層回路を接続する構成とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0023】
本発明の多層フレキシブル配線板は、絶縁基板と、前記絶縁基板の両面に設けられた一対の導電層と、前記一対の導電層上にそれぞれ設けられた一対の絶縁層と、前記一対の絶縁層上にそれぞれ設けられ、めっき及び/又は導電ペーストにより、前記一対の導電層とカバーレイを介さずに電気的に接続された少なくとも1層の外層回路と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明の多層フレキシブル配線板は、絶縁基板と、前記絶縁基板の片面に設けられた導電層と、前記導電層上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられ、めっき及び/又は導電ペーストにより、前記導電層とカバーレイを介さずに電気的に接続された少なくとも1層の外層回路と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明の多層フレキシブル配線板は、絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられ、絶縁層を介して配置された少なくとも3層の導電層とを有する多層フレキシブル基板と、前記多層フレキシブル基板の両面に設けられた一対の絶縁層と、前記一対の絶縁層上に設けられ、めっき及び/又は導電ペーストにより、前記少なくとも3層の導電層とカバーレイを介さずに電気的に接続された少なくとも1層の外層回路と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記絶縁層内において、前記絶縁層が部分的に除去された構造を有することが好ましい。
【0027】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記絶縁層は、ポジ型感光性樹脂組成物を含んでなることが好ましい。
【0028】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記絶縁層において、部分的に除去される前記絶縁層が片側のみであり、且つ、少なくとも前記部分的に除去される絶縁層がポジ型感光性樹脂組成物を用いて得られたことが好ましい。
【0029】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記ポジ型感光性樹脂組成物は、少なくともアルカリ可溶性樹脂及びキノンジアジド化合物を含んでなることが好ましい。
【0030】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記アルカリ可溶性樹脂は、少なくともポリアミド酸構造を有することが好ましい。
【0031】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記アルカリ可溶性樹脂は、ポリアミド酸構造及びポリイミド構造を有することが好ましい。
【0032】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記アルカリ可溶性樹脂が、ポリアルキレンエーテル構造及び/又はシロキサン構造を有することが好ましい。
【0033】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記ポジ型感光性樹脂組成物が、さらに、溶解抑止剤を含むことが好ましい。
【0034】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記溶解抑止剤が、アミド化合物又はウレア化合物であることが好ましい。
【0035】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記ポジ型感光性樹脂組成物が、さらにリン化合物を含有することが好ましい。
【0036】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記リン化合物が、リン酸エステル化合物及び/又はホスファゼン化合物であることが好ましい。
【0037】
本発明の多層フレキシブル配線板においては、前記絶縁層が、前記アルカリ可溶性樹脂を含む前記ポジ型感光性樹脂組成物から得られ、且つ、前記アルカリ可溶性樹脂の炭酸ナトリウム水溶液への溶解速度が0.04μm/sec以上であり、前記ポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗工、加熱による脱溶剤後に得られる膜厚30μmの感光層に対して1000mJ/cm以下の活性光線を照射した場合、前記感光性樹脂組成物から構成される感光層の活性光線照射部の炭酸ナトリウム水溶液への溶解速度が0.22μm/sec以上であり、活性光線未照射部の残膜率が90%以上であり、更に、活性光線未照射部の該感光層を200℃で加熱することにより得られる該絶縁層の弾性率が0.2〜1.5GPa、誘電率3.5以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、構成を簡素化でき、製造工程を簡略化できるとともに、耐屈曲性や耐屈折性に優れ、かつ薄型化が容易な多層フレキシブル配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の構成の一態様を示す模式的な断面図であり、(b)は、本発明の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板において、補強板の一例を示す図である。
【図2】(a)〜(g)は、本発明の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板において、金属ペーストを用いた場合における製造工程の概略を示す図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の他の構成例を示す図である。
【図5】(a)〜(g)は、本発明の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板において、6層構造の多層フレキシブル配線板の構成の一例を示す図である。
【図6】(a)〜(e)は、従来の多層フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す図である。
【図7】(a)〜(e)は、従来のリジッドフレックス配線板の積層構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
多層フレキシブル配線板及びリジッドフレックス配線板においては、コスト低減のため、製造工程の簡略化とともに、品質の安定が望まれている。一般的な多層フレキシブル配線板及びリジッドフレックス配線板においては、内層回路と外層回路との間にカバーレイが設けられている。このカバーレイは、内層回路と外層回路との間の絶縁性を確保するために用いられ、内層回路と外層回路との間は、スルホール及びブラインドピアホールにより電気的に接続されている。
【0041】
また、多層フレキシブル配線板やリジッドフレックス配線板においては、カバーレイを介して内層回路と外層回路とを接続するため、カバーレイとカバーレイとの間又はカバーレイと外部回路とを接着する層間接着剤が必要である。このような層間接着剤として用いられているものとしては、露光により硬化するネガ型感光性樹脂が主に用いられている。
【0042】
多層フレキシブル配線板やリジッドフレックス配線板が用いられる携帯電話などの分野では、多層フレキシブル配線板及びリジッドフレックス配線板の屈曲性が要求されている。一般的な多層フレキシブル配線板及びリジッドフレックス配線板においては、屈曲性を確保するため、フレキシブル部において層間接着剤を除去することが必要とされている。
【0043】
本発明者らは、多層フレキシブル配線板やリジッドフレックス配線板の構造に着眼し、その構造の簡素化及び製造工程の簡略化について鋭意研究した。まず、内層回路と外層回路との間に設けられるカバーレイに着眼し、多層フレキシブル配線板の構造の簡素化について種々検討を行った。その結果、カバーレイを用いなくとも多層フレキシブル配線板が構成可能であること、及びカバーレイを用いないことにより、層間接着剤を用いずに多層フレキシブル配線板が構成可能であり、多層フレキシブル配線板における製造工程を大幅に簡略化できること、を見出した。
【0044】
さらに、本発明者らは、カバーレイを用いない上記多層フレキシブル配線板の構成において、内層回路と外層回路との間に用いられる絶縁層を所定の組成にすることにより、外層回路と絶縁層との接着強度を向上でき、層間接着層としても用いることができることを見出した。更に上述したカバーレイを用いない構造とし、さらに絶縁層としてポジ型感光性樹脂を所定の割合用いることにより、露光、現像により容易に絶縁層を除去してフレキシブル部を容易に形成できること、などを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0045】
すなわち、本発明は、フレキシブル基板上に順に設けられた内層回路及び外層回路を、カバーレイを介さずに接続することにより、構成を簡素化でき、製造工程を簡略化できるとともに、耐屈曲性や耐屈折性に優れる多層フレキシブル配線板を実現するものである。
【0046】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板の構造の一例を示す模式的な断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る多層フレキシブル基板は、内層回路L1、L2及び外層回路L3、L4を含む2つのリジッド部11a、11bと、このリジッド部11aとリジッド部11bとの間に形成されたフレキシブル部12とを有する。リジッド部11a、11b及びフレキシブル部12は、コア層としての両面フレキシブル基板13上に一体形成されている。
【0047】
リジッド部11a、11bは、両面フレキシブル基板13の絶縁基板14の一方の面上に形成された導電層15及び他方の面上に形成された導電層16とを有する。導電層15及び導電層16は、エッチングなどによりそれぞれパターニングされて内層回路L1及びL2となっている。絶縁基板14の一方の面側の導電層15上には、絶縁層17を介して、導電層18が形成されている。一方、絶縁基板14の他方の面側の導電層16上には、絶縁層19を介して導電層20が形成されている。導電層18及び導電層20は、エッチングなどによりそれぞれパターニングされて導電層18が外層回路L3となり、導電層20が外層回路L4となっている。
【0048】
すなわち、リジッド部11a、11bは、カバーレイを介さずに絶縁基板14の一方の面側には、内層回路L1/絶縁層17/外層回路L3を含む積層構造が形成され、絶縁基板14の他方の面側には、内層回路L2/絶縁層19/外層回路L4を含む積層構造が形成されている。このように、カバーレイを介さずに内層回路L1、L2及び外層回路L3、4を含む積層構造を形成できるので、多層フレキシブル基板の構成を簡素にすることができ、製造工程を簡略化することができる。また、カバーレイを用いずに多層フレキシブル配線板を構成できるので、多層フレキシブル配線板を薄型化できる。このため、より高密度配線が可能な多層フレキシブル配線板を実現することができる。なお、外層回路L3は、カバーコート21に被覆され、外層回路L4がカバーコート22に被覆されている。
【0049】
フレキシブル部12は、多層フレキシブル基板の絶縁層17又は絶縁層19の一部を部分的に除去して形成される。このフレキシブル部12を形成することにより、屈曲性及び/又は柔軟性が向上する。
【0050】
絶縁層17、19は、ポジ型感光性樹脂組成物を主に含有して構成され、内層回路L1、L2と外層回路L3、L4との間を絶縁するとともに、外層回路L3、L4を接着する。このように、本実施の形態においては、絶縁層17、19が内層回路L1、L2と外層回路L3、L4との間を絶縁するカバーレイとしての機能と、外層回路L3、L4を接着する層間接着剤としての機能とをともに有するので、カバーレイ及び他の層間接着剤を使用することが無い。これにより、構成を簡素化できるとともに、後述する製造工程を簡略化することができる。また、多層フレキシブル配線板の一方の面側の絶縁層17、19の少なくともフレキシブル部12が部分的にポジ型感光性樹脂組成物を含有することにより、後述するエッチング工程において、フレキシブル部12の絶縁層17、19の一部を容易に除去できるため、好ましい。
【0051】
また、本発明においては、絶縁層17、19は、層間接着剤としても作用する。このため、露光した部分を現像除去できる特性が必要であり、ポジ型感光性を有することが好ましい。
【0052】
なお、本発明において、絶縁層17、19のポジ型感光性樹脂の含有量は、絶縁層17、19全体の質量に対し、40質量部〜99質量部の範囲が好ましい。ポジ型感光性樹脂の含有量が40質量部以上であれば、絶縁性、接着性、弾性率の観点から好ましく、99質量部以下であれば、現像性の観点から好ましい。
【0053】
多層フレキシブル配線板の製造工程において、絶縁層17、19には、銅層のエッチング処理やブラインドビアホール形成時のデスミア処理への耐性が必要であり、その点でもポジ型感光性が好ましい。
【0054】
また絶縁層17、19は、多層フレキシブル配線板のフレキシブル部での柔軟性を付与するために、低弾性率であることが好ましい。弾性率としては、0.2〜1.5の範囲であることが好ましい。
【0055】
より好ましくは、本発明においては、絶縁層17、19がアルカリ可溶性樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物から得られ、且つ、該アルカリ可溶性樹脂の炭酸ナトリウム水溶液への溶解速度が0.04μm/sec以上であり、該ポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗工、加熱による脱溶剤後に得られる膜厚30μmの感光層に対して1000mJ/cm以下の活性光線を照射した場合、該感光性樹脂組成物から構成される感光層の活性光線照射部の炭酸ナトリウム水溶液への溶解速度が0.22μm/sec以上であり、活性光線未照射部の残膜率が90%以上であり、更に、活性光線未照射部の該感光層を200℃で加熱することにより得られる該絶縁層の弾性率が0.2〜1.5GPa、誘電率(@1MHz)が3.5〜2.5である。このような組成をとることにより、絶縁層を露光して除去する工程において、光感度が高く、高生産性を示し、且つ、露光部分と未露光部分の界面がシャープとなるので好ましい。
【0056】
アルカリ可溶性樹脂の炭酸ナトリウム水溶液への溶解速度が0,04μm/sec以上であり、且つ、感光性樹脂組成物から構成される感光層の活性光線照射部の炭酸ナトリウム水溶液への溶解速度が0.22μm/sec以上であり、活性光線未照射部の残膜率が90%以上であれば、現像時に未露光部の絶縁層の溶出がより抑制されて好ましい。弾性率が0.2GPa〜1.5GPaであれば、基板の反りがなく、且つ、柔軟性に優れる。誘電率(@1MHz)で3.5〜2.5、好ましくは、3.2〜2.5であれば、配線の信号伝達の信頼性に優れる。
【0057】
絶縁層17、19の材料としては、ポジ型感光性樹脂組成物が用いられる。絶縁層17、19の形成は、ポジ型感光性樹脂組成物を基板に塗布しても良いし、一旦、フィルムに成膜してから基板にラミネートしても良い。得られた半硬化状態の絶縁層を必要に応じて露光現像し、さらに加温して硬化させることで絶縁層が形成される。
【0058】
本発明においては、ポジ型感光性樹脂組成物は、少なくともアルカリ可溶性樹脂及びキノンジアジド化合物を含んで成る。アルカリ可溶性樹脂としては、例えばノボラック樹脂、アクリル樹脂、スチレンとアクリル酸との共重合体、ヒドロキシスチレンの重合体、ポリビニルフェノール、ポリα−メチルビニルフェノール、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂などが挙げられる。
【0059】
なお、本発明において、絶縁層17、19のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、絶縁層17、19全体の質量に対し、40質量部〜99質量部の範囲が好ましい。アルカリ可溶性樹脂の含有量が40質量部以上であれば、絶縁性、接着性、弾性率の観点から好ましく、99質量部以下であれば、現像性の観点から好ましい。
【0060】
アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ可溶性を有するために分子鎖中にカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。さらに200℃以下の加熱後に得られる絶縁層の耐熱性や柔軟性の観点より、分子中にカルボキシル基を有する(以下、カルボキシル基含有)ポリイミド、ポリイミド前駆体、分子中にカルボキシル基を有する(以下、カルボキシル基含有)ポリベンゾオキサゾール、分子中にカルボキシル基を有する(以下、カルボキシル基含有)ポリベンゾオキサゾール前駆体が好ましい。また脱溶剤後の露光部での絶縁層溶解除去のため、炭酸ナトリウム現像の観点から、ポリイミド前駆体がより好ましく、下記一般式(1)で表されるポリアミド酸、分子中にカルボキシル基を有する(以下、カルボキシル基含有)ポリアミド酸エステル構造を有するポリマーが更に好ましい。
【0061】
【化1】

(R1は4価の有機基である。R2、R3は水素又は炭素数1〜炭素数20の有機基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R4は2価〜4価の有機基である。R5、R6は水素又は炭素数1〜炭素数20の有機基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R2及びR3が水素でないとき、m+n>0かつn>0であり、R5は水素又は炭素数1〜炭素数20の有機基、R6は水素である。R2、R3の少なくとも一方が水素のときm+n≧0であり、かつR5、R6は水素又は炭素数1〜炭素数20の有機基であって、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0062】
本発明に係るアルカリ可溶性樹脂として、下記一般式(2)で表されるポリアミド酸がさらに好ましい。
【0063】
【化2】

(R7は炭素数2以上である4価の有機基を示し、R8は炭素数2以上の2価の有機基を示す。)
【0064】
本発明に用いられるポリイミド前駆体は、好ましくは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合させて製造されるが、その使用されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとしては、例えば、以下に示すものがある。
【0065】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸ニ無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンニ無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物などを挙げられる。
【0066】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボンサン二無水物、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0067】
これらのテトラカルボン酸二無水物の内、加熱処理を経て形成される絶縁層の柔軟性を高める観点から、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’−オキシジフタル酸ニ無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステルが好ましい。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても良い。
【0068】
ジアミンとしては、具体的には、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(4'−アミノフェノキシ)ペンタン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(γ−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン、下記一般式(3)で表されるジアミノシロキサン化合物などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0069】
【化3】

(式中、R9は炭素数1以上30以下の炭化水素基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。R10は、炭素数1以上30以下である2価の有機基を表し、それぞれ同じであっても異なっても良い。aは、2以上30以下の整数である。)
【0070】
また本発明で使用するジアミンには、鎖状ポリエーテルを分子構造内に有するジアミンを用いることも好ましく、下記一般式(4)、または下記一般式(5)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0071】
【化4】

(式中、bは1〜50の整数を表し、R11はそれぞれ独立に炭素数2〜10のアルキレン基を表す。)
【0072】
【化5】

(式中、R12、R13、R14、R15、R16はそれぞれ独立して炭素数1〜炭素数20のアルキレン基を表し、それぞれ独立して炭素数1〜炭素数5のアルキル基を1個以上、有していても良い。c、d、eはそれぞれ独立して0以上の整数を表す。)
【0073】
上記一般式(4)で表されるジアミンの具体例としては、例えばポリテトラメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、両末端が、p−アミノ安息香酸エステル基のものが好ましく、その中でも、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートが好ましく用いられる。また、ジアミンを2種以上使用しても良い。上記一般式(4)で表されるジアミンは、全ジアミンに対して前記一般式(4)で表されるジアミンを25モル%〜55モル%含む。好ましくは25モル%〜50モル%、より好ましくは30モル%〜50モル%である。25モル%以上であれば、柔軟性を示し、55モル%以下であれば、耐溶剤性と耐熱性に優れる。
【0074】
また上記一般式(5)で表されるジアミンの具体例としては、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキシオクタン等のポリオキシエチレンジアミンや、ポリオキシプロピレンジアミン、そのほか長さの異なるオキシアルキレン基を含むものなどのポリオキシアルキレンジアミン等が挙げられる。ポリオキシアルキレンジアミン類としては米ハンツマン社によるジェファーミンEDR−148、EDR−176などのポリオキシエチレンジアミン、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000などのポリオキシプロピレンジアミン、HK−511、ED−600、ED−900、ED−2003、XTJ−542などの異なるオキシアルキレン基をもつものなどの市販品が、使用例として挙げられる。特に、中でも比較的分子量の低いEDR−148、D−230、D−400、HK-511などは比較的高いガラス転移温度をもつポリマーとなり得るため、耐熱性、耐薬品性が必要な用途で使用することができる。一方、比較的分子量の高いD−2000などは柔軟性、低沸点溶媒溶解性等に優れる。また、純度が高いものを用いた方がポリアミド酸として高分子量のものを得やすく、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98.5%以上である。
【0075】
上記一般式(5)で表されるジアミンは、全ジアミンに対して25モル%〜60モル%であることが好ましい。さらに好ましくは25モル%〜50モル%、より好ましくは30モル%〜50モル%である。25モル%以上であれば、柔軟性を示し、60モル%以下であれば、耐溶剤性と耐熱性に優れる。
【0076】
これらのジアミンの内、加熱処理を経て形成される絶縁層の柔軟性を高める観点から、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(4'−アミノフェノキシ)ペンタン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(γ−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン、式(3)で表されるジアミノシロキサン化合物、鎖状ポリエーテルを分子構造内に有する上記一般式(4)、または上記一般式(5)で表される化合物が好ましい。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても良い。
【0077】
また、本発明におけるポリイミド前駆体は、ポリアミド酸構造に加えて、ポリイミド構造を有していることも好ましい。イミド率は0%〜99.9%の範囲内が好ましく、0%〜90%の範囲内がより好ましく、0%〜80%の範囲内が更に好ましい。
【0078】
次にポリイミド前駆体の製造方法について述べる。ポリイミド前駆体は、最新ポリイミド〜基礎と応用〜 日本ポリイミド研究会編 pp4〜pp49などに記載の公知の方法で容易に合成することができる。具体的には、低温から100℃以下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとを反応させジエステルを合成し、その後に縮合剤の存在下、ジアミンと反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとを反応させジエステルを合成し、その後、残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、次いでジアミンと反応させる方法などがある。低温から100℃以下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法が好ましい。
【0079】
反応は有機溶媒中で行うことが好ましい。このような反応において用いられる溶媒として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0080】
この反応における反応原料の濃度は、通常、2質量%〜60質量%、好ましくは5質量
%〜50質量%、さらに好ましくは10質量%〜45質量%である。
【0081】
重合させる酸二無水物とジアミンとのモル比は、0.8〜1.2の範囲内である。この範囲内の場合、分子量を上げることができ、伸度等にも優れる。好ましくは0.9〜1.1、より好ましくは0.95〜1.05である。
【0082】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、5000以上100000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。重量平均分子量は10000以上60000以下がより好ましく、20000以上50000以下が最も好ましい。重量平均分子量が5000以上100000以下であると樹脂組成物を用いて得られる絶縁層の反りが改善され、柔軟性、及び耐熱性に優れる。
【0083】
イミド構造を導入するには、上記で得られたポリイミド前駆体を好ましくは100℃〜400℃に加熱して熱イミド化するか、または無水酢酸等のイミド化剤を用いて化学イミド化することにより、ポリアミド酸構造に対応する繰り返し単位構造を有するポリイミドが得られる。加熱してイミド化する場合、副生する水を除去するために、共沸剤(好ましくは、トルエンやキシレン)を共存させて、ディーンシュターク型脱水装置を用いて、還流下、脱水を行うことも好ましい。
【0084】
また、80℃〜220℃で反応を行うことにより、ポリイミド前駆体の生成と熱イミド化反応を共に進行させて、ポリイミドを得ることも好ましい。すなわち、ジアミン成分と酸二無水物成分とを有機溶媒中に懸濁または溶解させ、80℃〜220℃の加熱下に反応を行い、ポリイミド前駆体の生成と脱水イミド化とを共に行わせることにより、ポリイミドを得ることも好ましい。
【0085】
さらにイミド構造の導入方法の一つとして、ポリアミド酸−ポリイミドブロック体を製造するには、最初に酸二無水物末端オリゴマーを合成し、続いて上記オリゴマーとモノマーとを重合させる方法が挙げられる。
【0086】
最初の酸二無水物末端オリゴマーの合成は、酸二無水物とジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、酸二無水物末端オリゴマーのポリアミド酸を合成する。この際の当量数は、酸二無水物>ジアミン化合物とする。80℃以下、好ましくは50℃以下の反応温度で、1〜12時間付加重合反応させて、酸二無水物末端オリゴマーのポリアミド酸を得る。この際の当量数は、酸二無水物>ジアミン化合物であり、酸二無水物/ジアミン化合物の比は、1より大きく10以下が好ましく、1.1以上5以下であることがより好ましく、1.3以上3以下であることが特に好ましい。
【0087】
次に得られたポリアミド酸は、脱水環化され酸二無水物末端オリゴマーとなる。脱水環化する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、トルエン、およびキシレン等の還流による熱環化法、または、無水酢酸と、ピリジン等の芳香族3級アミンとによる化学環化法等を使用することができる。
【0088】
続いて上述の方法で合成された酸二無水物末端オリゴマーとポリアミド酸構造を形成するジアミンとを付加重合反応させる。具体的には、上記酸二無水物末端オリゴマーとジアミンとを有機溶媒中で、0.5時間〜12時間付加重合反応させる。このときの反応温度は、100℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。なお、ジアミンの添加の工程で、ジアミンと共に酸無水物を添加することも好ましい。最終組成における酸二無水物とジアミンとのモル比が、0.8〜1.2の範囲内となるように調整する。
【0089】
さらにポリアミド酸−ポリイミドブロック体として、ポリイミドブロックに、上記の一般式(3)で表される鎖状シロキサン構造を分子構造内に有するジアミン、及び/または上記一般式(4)または上記一般式(5)で表される鎖状ポリエーテルを分子構造内に有するジアミンを導入して、これらのジアミンの末端をイミド構造に変換することも、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を向上させることが出来るため、好ましい。
【0090】
ポリイミド前駆体のポリマー主鎖の末端が、モノアミン誘導体またはカルボン酸誘導体からなる末端封止剤で末端封止されることも好ましい。ポリイミド前駆体のポリマー主鎖の末端が封止されることで、貯蔵安定性に優れる。
【0091】
モノアミン誘導体からなる末端封止剤としては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノベンズアルデヒド、p−アミノベンズアルデヒド、m−アミノベンズアルデヒド、o−アミノベンズニトリル、p−アミノベンズニトリル、m−アミノベンズニトリル、2−アミノビフェニル、3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル、4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセンなどの芳香族モノアミンを挙げることができ、この中で好ましくはアニリンの誘導体が使用される。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0092】
カルボン酸誘導体からなる末端封止剤としては、主に無水カルボン酸誘導体が挙げられ、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物などの芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸無水物の中で、好ましくは無水フタル酸が使用される。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0093】
本発明において、ポリイミド前駆体は、主鎖中のポリアミド酸構造以外に、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基を有することも好ましい。例えば、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有するジアミンを共重合させても良いし、ジアミン末端のポリイミド前駆体と分子構造中にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有する酸無水物と反応させることによっても、酸無水物末端のポリイミド前駆体とカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有するアミン化合物を反応させることによっても、得ることができる。
【0094】
分子構造中にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有する酸無水物としては、トリメリット酸無水物などのカルボキシル基含有酸無水物、などが挙げられる。
【0095】
分子構造中にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有するアミン化合物としては、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸などが挙げられる。
【0096】
ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基に由来する部位の導入率については、現像性を向上させる目的で、得られる絶縁層の柔軟性を損なわない範囲で決定される。好ましくは、0.5mol%以上、10mol%以下である。
【0097】
次に本発明のキノンジアジド化合物について記載する。
キノンジアジド化合物は、キノンジアジド構造を含有する化合物であるが、キノンジアジド構造を含有する化合物としては、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類が挙げられる。具体的には、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのトリヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,2’,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのテトラヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,2’,3,4,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,3,4,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのペンタヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,3’,4,4’,5’,6−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3’,4,4’,5’,6−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのヘキサヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,5’,6,6’,7,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどの(ポリヒドロキシフェニル)アルカン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類などが挙げられる。溶解抑止能の観点から、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類が好ましく、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル類、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル類が感光性コントラストの観点からより好ましい。なかでも下記一般式(6)で示すキノンジアジド化合物(A)(Qは下記式(7)で表される構造又は水素原子である。)が特に好ましい。
【0098】
【化6】

【0099】
【化7】

【0100】
本発明に係る感光性樹脂組成物における感光剤として、キノンジアジド化合物(A)は、上記一般式(6)における3個のQのうち、平均2.9個が上記一般式(7)で表される構造になっているものを指す。
【0101】
本発明に係る感光性樹脂組成物における感光剤の量としては、本発明に係るポリイミド前駆体100質量部に対し、感光性コントラストの観点から、1質量部以上50質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。1質量部以上であれば、未露光部の溶解抑止が充分である傾向にあるため好ましい。50質量部未満であれば、感度が充分に高い傾向にあるため好ましい。
【0102】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ現像液への溶解性を抑止する目的で、溶解抑止剤を含む。本発明に係る溶解抑止剤とは、カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基と水素結合する化合物をいう。アルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基が溶解抑止剤と水素結合することで現像液から遮蔽され、溶解を抑止することが可能となる。
【0103】
カルボキシル基と水素結合する基を有する化合物としては、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、アミド化合物、ウレア化合物などが挙げられる。アルカリ水溶液への溶解抑止効果及び保存安定性の観点より、アミド化合物、ウレア化合物が好ましい。
【0104】
アミド化合物としては、例えば、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、N,N−ジメチルブチルアミド、N,N−ジブチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチロキサミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、サリチルアミド、サリチルアニリド、アセトアニリド、2’−ヒドロキシフェニルアセトアニリド、3’−ヒドロキシフェニルアセトアニリド、4’−ヒドロキシフェニルアセトアニリドが挙げられる。
【0105】
中でも、加熱硬化後の絶縁層の低Tg化の観点より、芳香族水酸基を含有するアミド化合物がより好ましい。具体的には、4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、3’−ヒドロキシフェニルアセトアニリド、4’−ヒドロキシフェニルアセトアニリドが挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0106】
ウレア化合物としては、例えば、1,3−ジメチルウレア、テトラメチルウレア、テトラエチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、3−ヒドロキシフェニルウレアが挙げられる。中でも、加熱硬化後の絶縁層の低Tg化の観点より、芳香族水酸基を含有するウレア化合物がより好ましい。具体的には3−ヒドロキシフェニルウレアが挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0107】
本発明に係る溶解抑止剤は、アミド化合物を用いる場合、アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸1molに対して、溶解抑止効果発現の点から0.1mol〜1.5mol以下を配合することが好ましく、0.15〜1.0mol配合することがより好ましい。
【0108】
本発明に用いられる溶解抑止剤は、ウレア化合物を用いる場合、アルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基1molに対して、溶解抑止効果発現の点から0.1mol〜1.5mol以下が好ましい。溶解抑止効果発現及びアルカリ現像後のキュアで得られるポリイミドの機械物性の観点から、0.15mol〜0.5mol配合することがより好ましい。
【0109】
また、アミド化合物とウレア化合物との両方を用いる場合には、アミド化合物とウレア化合物の総量が、溶解抑止効果の観点から、アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸1molに対して、0.1mol〜1.5molの範囲が好ましい。
【0110】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、現像性の向上のため、リン化合物を含有することが好ましい。リン化合物は、構造中にリン原子を含む化合物であれば限定されない。このような化合物として、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物などが挙げられる。
【0111】
リン酸エステル化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどの脂肪族炭化水素基を置換基とするリン酸エステル、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート(以下、TBXPと略称する)などの酸素原子を含む脂肪族有機基を置換基とするリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族有機基を置換基とするリン酸エステル化合物などが挙げられる。これらの中で、現像性の観点からTBXP、トリイソブチルホスフェートが好ましい。
【0112】
ホスファゼン化合物としては、下記一般式(8)、下記一般式(9)で表される構造などが挙げられる。
【0113】
【化8】

【0114】
【化9】

【0115】
上記一般式(8)及び上記一般式(9)で表されるホスファゼン化合物におけるR17、R18、R19、及びR20は、炭素数1以上20以下の有機基であれば限定されない。炭素数1以上であれば、難燃性が発現する傾向にあるため好ましい。炭素数20以下であれば、ポリイミド前駆体と相溶する傾向にあるため好ましい。この中で、難燃性発現の観点から、炭素数6以上18以下の芳香族性化合物に由来する官能基が特に好ましい。このような官能基として、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基などのフェニル基を有する官能基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基を有する官能基、ピリジン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾールなどの含窒素複素環化合物に由来する官能基、などが挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて1種類でも2種類以上の組み合わせで用いても良い。この中で、入手の容易さからフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−シアノフェニル基、を有する化合物が好ましい。
【0116】
上記一般式(8)で表されるホスファゼン化合物におけるXは、3以上25以下の整数であれば限定されない。3以上であれば、難燃性を発現し、25以下であれば、有機溶剤に対する溶解性が高い。この中で特に、入手の容易さから3以上10以下であることが好ましい。
【0117】
上記一般式(9)で表されるホスファゼン化合物におけるYは、3以上10000以下の整数であれば限定されない。3以上であれば、難燃性を発現し、10000以下であれば、有機溶剤に対する溶解性が高い。この中で特に、入手の容易さから3以上100以下が好ましい。
【0118】
上記一般式(9)で表されるホスファゼン化合物におけるA及びBは、炭素数3以上30以下の有機基であれば限定されない。この中で、Aは−N=P(OC、−N=P(OC、(OCOH)、−N=P(OC)(OCOH)、−N=P(OCOH)、−N=P(O)(OC)、−N=P(O)(OCOH)が好ましい。Bは−P(OC、−P(OC(OCOH)、−P(OC(OCOH)、−P(OC)(OCOH)、−P(OCOH)、−P(O)(OC、−P(O)(OCOH)、−P(O)(OC)(OCOH)などが好ましい。リン化合物は、1種類でも2種類以上の組み合わせで用いても良い。
【0119】
本発明の感光性樹脂組成物においてリン化合物の添加量は、ポリイミド前駆体100質量部に対し、感光性などの観点から、50質量部以下が好ましい。硬化体の難燃性の観点から、45質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
【0120】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じてポリイミド前駆体、感光剤、及び/又はリン化合物が均一に溶解及び/又は分散しうる溶媒を含むことができる。溶媒としては、前述のポリイミド前駆体の合成に用いる溶媒を使用することができる。
【0121】
本発明に係るポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を構成する溶媒は、本発明に係るポリイミド前駆体を均一に溶解及び/又は分散させうるものであれば限定されない。このような溶媒として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上9以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、安息香酸メチルのような炭素数3以上9以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数2以上9以下のエーテル化合物、炭素数3以上9以下のエステル化合物、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上10以下の含窒素化合物が挙げられる。また、必要に応じて、1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。ポリイミド前駆体の溶解性の観点から、トリエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0122】
本発明に係るポリイミド前駆体と溶媒とからなる樹脂組成物におけるポリイミド前駆体の濃度は、樹脂成型体が製造される濃度であれば、特に制限されない。作製する樹脂成型体の膜厚の観点からポリイミド前駆体の濃度が1質量%以上、樹脂成型体の膜厚の均一性からポリイミド前駆体の濃度は90質量%以下が好ましい。得られる絶縁層の膜厚の観点から、2質量%以上、80質量%以下がより好ましい。
【0123】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、さらに架橋剤を配合することも好ましい。これにより、キュア時にアルカリ可溶性樹脂の分子量を増加させることが可能となる。架橋剤として、例えば、前記のジアミン化合物のカーボネート保護基やカルバメート保護基を有するものが好ましい。架橋剤の配合量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部添加することが好ましい。
【0124】
本発明に係る感光性樹脂組成物には、その性能に悪影響を及ぼさない範囲で、その他化合物を含むことが出来る。具体的には、密着性向上のための複素環化合物などが挙げられる。
【0125】
本発明における複素環化合物とはヘテロ原子を含む環式化合物であれば限定されない。ここで、本発明におけるヘテロ原子には、酸素、硫黄、窒素、リンが挙げられる。
【0126】
本発明における複素環化合物とは、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールのようなイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールのようなN−アルキル基置換イミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなどの芳香族基含有イミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどのシアノ基含有イミダゾール、イミダゾールシランなどのケイ素含有イミダゾールなどのイミダゾール化合物、5−メチルベンゾトリアゾール、1−(1’,2’−ジカルボキシエチルベンゾトリアゾール)、1−(2−エチルヘキシアミノメチルベンゾトリアゾール)などのトリアゾール化合物、5−フェニルテトラゾールなどのテトラゾール化合物、2−メチル−5−フェニルベンゾオキサゾールなどオキサゾール化合物などが挙げられる。
【0127】
本発明におけるその他化合物の添加量は、ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.01質量部以上、30質量部以下であれば限定されない。0.01質量部以上であれば十分に密着性が向上する傾向にあり、30質量部以下であれば感光性等への悪影響がない。
【0128】
また、その他の具体的に添加剤としては、密着性向上剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、可塑剤、ワックス類、充填剤、顔料、染料、発泡剤、消泡剤、脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、レベリング剤、分散剤、エチレン性不飽和化合物などが挙げられる。
【0129】
本発明において、ポジ型感光性樹脂組成物は、前記の成分を常法により混合して調製することができる。具体的には、例えば、撹拌装置及び加熱装置を備えたライカイ機、三本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、これらの混合装置を適宜2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0130】
本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物は、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スピンコート等により、配線を有する基板に全面塗布され、乾燥後、露光・現像してパターン形成し、熱硬化して、耐熱性・電気絶縁性等に優れた絶縁層として用いられる。
【0131】
また、本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物で構成されたドライフィルムを用いる場合は、感光性樹脂組成物の溶液を任意の方法でポリエチレンテレフタレートフィルムや金属フィルムなどの任意のキャリアフィルム上に塗布した後に乾燥し、ドライフィルム化して、キャリアフィルムとドライフィルムとを有する積層フィルムとする。また、ドライフィルム上に、低密度ポリエチレンフィルムなど任意の防汚用のフィルムや保護用のフィルムを少なくとも一層設けて積層フィルムとしても良い。このドライフィルムを、熱ラミネート法、熱プレス法、熱真空ラミネート法、熱真空プレス法など任意の方法で配線を有する基材上にラミネートする。このようにして、配線を有する基材と、この配線を覆うように前記基材上に形成され、本発明に係る感光性樹脂組成物を露光・現像してなる物質で構成された絶縁層と、を具備する多層フレキシブルプリント配線板を作製することができる。
【0132】
このように、本実施の形態においては、カバーレイ及び層間接着剤を用いずに多層フレキシブル配線板を構成できるので、多層フレキシブル配線板の大幅な薄型化が可能となり、このため、より高密度配線が可能となるとともに、フレキシブル性を向上させることができる。
【0133】
なお、このように薄型化した多層フレキシブル配線板を用いる場合には、図1(b)に示すように、必要に応じて、補強板を用いることが有効である。図1(b)に示す例においては、多層フレキシブル配線板の一方のリジッド部であるカバーコート22上に補強板接着材23を介して補強板24を介して接合している。このように、補強板24を接着することにより、リジッド部の剛直性を維持することができ、電子部品などの実装性を向上させることができる。
【0134】
次に、図2(a)〜図2(g)を参照して、本発明の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の製造方法について説明する。コア層となるカバーレイが無い両面フレキシブル基板(両面FPC)は、銅箔などの導電体の不必要な部分を選択的に除去することにより導体パターンを形成する方法であるサブトラクティブ法などの従来技術によって形成される。まず、図2(a)に示すように、絶縁基板14上の銅箔(導電層15、16)をサブトラクティブ法を用いて回路パターン(内層回路L1、L2)を形成する。次いで、絶縁基板14両面の内層回路L1、L2との間を、穴径が0.1mm〜0.3mm程度であるスルホールめっきやブラインドビアめっきにより電気的に接合する。ここで、スルホールめっきとは、配線板の各層を接続するために絶縁基板14の全層を貫通する垂直に穿った穴(スルホール)に対し、穴の内側に導体をめっきにより形成されるものである。ブラインドビアとは、特定の層間のみを接続するビアである。これらはドリルによる穴開け、レーザー加工、エッチング加工、銅箔をエッチングした後のレーザー加工によって形成される。めっきは孔の壁面に無電解めっきを施した後、電気めっきにより銅などの金属層を形成する方法等により形成される。この両面FPCは多層板としてフレキシブル部となる部分では、後工程で層間接着剤を除去するために片側の配線を避ける場合が多い。
【0135】
次に、図2(b)に示すように、絶縁層17、19(層間接着剤)を上下の内層回路L1、L2上に積層し、更に外層回路L3、L4を形成するための銅箔(導電層18、20)を積層する。導電層18、20の積層は熱プレス法でもよく、ラミネート法を用いてもよい。導電層18、20としては、通常12μm〜35μmの厚みの電解銅箔、あるいは圧延銅箔が使われる。ここでは、絶縁層17、19(層間接着剤)と銅箔(導電層18、20を予めラミネートしたもの(RCC)も用いても良い。ここで、絶縁層17、19(層間接着剤)の厚みは回路形成した導体の厚みより10μm〜20μm程厚い方が望ましい。導体が18μmの場合は、28μm〜38μmが望ましい。なお、この段階では、接着剤は完全に硬化していない状態である。通常、150℃以下で、好ましくは120℃以下で、より好ましくは100℃以下で印刷後に乾燥処理または加温下でラミネートを行う。
【0136】
次に、図2(c)に示すように、外層回路L3、L4と内層回路L1、L2を接続するためのブラインドビアをコンフォーマル法によりレーザー加工で層間接着剤の樹脂を部分的に除去して形成する。一般的には、COレーザーやYAGレーザーが用いられる。しかる後に、銅めっきを施すことによりブラインドビアを形成し外層回路L3、L4と内層回路L1、L2とを電気的に接続する。レーザー加工で形成する穴径は、0.07mm〜0.3mm程度が適切である。
【0137】
次に、図2(d)に示すように、フレキシブル部となる部分の面側(両面FPC上に配線が無い側)の導電層20を回路形成時と同じエッチング方式により除去する。エッチング液としては通常、塩化第二鉄水溶液または塩化第二銅水溶液が用いられる。
【0138】
次に、図2(e)に示すように、導電層20をマスクとして、エッチングで除去された導電層20の部分に紫外線照射した後、アルカリ液でフレキシブル部の層間接着剤を現像溶解により除去する。紫外線照射量は、500mJ/cm以上、好ましくは800mJ/cm以上、より好ましくは1000mJ/cm以上である。アルカリ液としては、苛性ソーダや炭酸ソーダ水溶液が好ましく、1%程度の炭酸ソーダ水溶液がより好ましい。しかる後に、層間接着剤(銅箔がエッチングされていない部分であって、未露光のため、現像されていない部分)を加熱硬化し、層間接着剤でできたカバーレイ層が得られる。加熱温度は150℃以上、好ましくは180℃以上、200℃以下の範囲である。
【0139】
次に、図2(f)に示すように、サブトラクティブ法及びフォトリソグラフィー技術を用いて回路パターンを印刷後、導電層18、20をエッチングして外層回路L3、L4を形成する。
【0140】
次に、図2(g)に示すように、外層回路L3、L4の回路面にエポキシ系樹脂を10μm〜30μmの厚みでコーティングした後、フォトリソグラフィー技術で導体露出が必要な部分を開口させたカバーコート、または接着剤を20μm〜40μmの厚みで塗布した12μm〜25μmの厚みのポリイミドフイルム、を予め金型で導体露出が必要な部分を打抜き除去した後、回路面に接着プレスしてカバーコート21、22を形成する。このカバーコート21、22により、外層回路L3、L4の絶縁処理を行う。ここでは、絶縁層17、19に用いたポジ型感光性樹脂をカバーコートとして用いることも好ましい。
【0141】
次に、部品実装や電気的接点となる外層の導体露出面には、電解金めっき、無電解金めっき、電解半田めっき等のめっき処理や、導体露出面でイミダゾ−ル系皮膜を形成して防錆効果を持たせた防錆処理を行う。次いで、一般的には金型やNCドリルを用いて、製品が使われるときに必要となる穴あけ加工や外形加工を行う。最後に電気的検査や外観検査を行った後、完成品となる。
【0142】
なお、上述した多層フレキシブル配線板の構成及び製造方法では、外層回路L3、L4の接着をスルホールやブラインドビアを介した銅めっきによる層間接続構造としたが、層間接続は、例えば、導電ペーストを用いてもよい。図3(a)〜図3(e)は、導電ペーストを導電層(層間接着剤)中に充填する場合の製造工程の概略を示す図である。ここでは、図2(a)〜図2(g)に示した製造工程との相違点を説明し、その他の工程の説明を省略する。
【0143】
まず、図3(a)に示すように、絶縁基板14の両面に導電層15、16を備える両面フレキシブル基板を用いて内層回路L1、L2形成する。次いで、内層回路L1、L2をスルホールやブラインドビアなどにより接続する。次いで、絶縁基板14上の導電層15、16の上に絶縁層(層間接着剤)17、19を積層する。ここで、本例においては、絶縁層(層間接着剤)17、19を積層する際に、絶縁層17、19の内層回路L1、L2に対応する位置に導電ペースト23を使用する。次に、絶縁層17、19上に銅箔18、20を積層する。このように、導電層18、20を導電ペースト23を介して内層回路L1、L2と積層することにより、内層回路L1外層回路L3となる銅箔18との間、及び内層回路L3と外層回路L4となる銅箔20との間の電気的接続を得ることができる。このように、本例においては、カバーレイを介さずに内層回路L、L2及び外層回路L3、L4を積層するので、スルホール及びブラインドビアなどを形成することなく内層回路L1と外層回路L3との間、及び内層回路L2と外層回路L4との間の電気的接続を得ることができる。このため、より構成を簡素化できるとともに、製造工程を簡略化することができる。
【0144】
なお、上述した例においては、両面フレキシブル基板13をコア層として用いて多層フレキシブル基板を構成する例について説明したが、本発明においては、他の構成のフレキシブル基板を用いても多層フレキシブル基板を構成することができる。その一例としては、片面だけに回路導体パターンがある片面フレキシブル配線板、及び3層以上の多層構造の回路導体パターンを有する多層フレキシブル配線板などを用いることができる。
【0145】
図4(a)は、片面フレキシブル基板をコア層として用いて形成した多層フレキシブル配線板の一例を示す図である。図4(a)に示すように、本例においては、絶縁基板43の一方に導電層44を有する片面フレキシブル基板を用いて形成している。片面フレキシブル基板の導電層44には、絶縁層45を介して導電層46が積層され、導電層44は内層回路L1に形成され、導電層46が外層回路L3に形成されている。外層回路L3と内層回路L1とは、めっき、又は導体ペーストにより電気的に接続されている。このようにして、片面フレキシブル基板の片面に一層以上の外層回路が設けられた多層フレキシブルプリント配線板とすることができる。このように片面フレキシブル基板を用いて多層フレキシブル配線板を構成することにより、リジッド部41a、41bに対し、特にフレキシブル部42の厚さを薄くすることができ、フレキシブル性の高い多層フレキシブル配線板を構成することができる。
【0146】
図4(b)は、3層以上の多層構造の回路導体パターンを有するフレキシブル基板をコア層として用いて形成した多層フレキシブル配線板の一例を示す図である。本例においては、絶縁基板53上の一方の面に導電層54/絶縁層55/導電層56の順に積層され、他方の面に導電層57が積層されたフレキシブル基板を用いる。このフレキシブル基板を用いて、絶縁基板53の一方の面側の導電層56に絶縁層58、導電層59の順に積層し、他方の面側の導電層57に絶縁層60、導電層61の順に積層する。絶縁基板53の一方の面側の導電層54、56、59は、それぞれ絶縁基板53側から、内層回路L1、外層回路L3及び最外層回路L5となり、3層の導電パターンが形成されている。また、絶縁基板53の他方の面側の導電層57、61は、絶縁基板53側から内層回路L2、外層回路L4となり、2層の導電パターンが形成されている。内層回路L1、L2、外層回路L3、L4、及び最外層回路L5は、めっき、又は導体ペーストにより電気的に接続されている。このようにして、多層フレキシブル基板の両面に各々一層以上の外層回路を有する多層フレキシブルプリント配線板とすることができる。
【0147】
また、本発明においては、上述した4層の導電層からなる多層フレキシブル配線板に限定されず、6層やそれ以上の導電層が積層された多層フレキシブル配線板を製造することもできる。図5(a)〜(g)は、6層の導電層L1〜L6を備えた多層フレキシブル配線板の製造工程の一例を示す図である。この場合、図5(a)、(b)に示すように、4層の導電層L1〜L4からなる多層フレキシブル配線板までは、図2(a)〜(g)と同様の工程で製造する。
【0148】
次に、図5(c)に示すように、絶縁基板14の一方の面側の内層回路L3の上に絶縁層71を積層し、この絶縁層71の上に、導電層72を積層する。この導電層72が最外層回路L5となる。次いで、絶縁基板14の他方の面側の内層回路L4の上に絶縁層73を積層し、この絶縁層73の上に導電層74を積層する。この導電層74が最外層回路L6となる。
【0149】
次に、図5(d)に示すように、多層フレキシブル基板のフレキシブル部となる部分の導電層72、74銅箔をエッチングにより除去する。次いで、図5(e)に示すように、絶縁層71、73をエッチングにより除去してフレキシブル部を形成する。
【0150】
次に、図5(f)に示すように、リジッド部の導電層72、74をエッチングにより、パターニングして最外層回路L5、L6を形成する。最後に、図5(g)に示すように、最外層回路L5、L6上にカバーコート75、76を形成して6層の導電層を備える多層フレキシブル配線板を製造する。
【0151】
上述したように、フレキシブル配線板を折り曲げて装着する部位では、複数回折り曲げても断線しない程度の耐折性が要求さえる。本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板においては、図5(g)に示すように、フレキシブル部においても両面配線構造とすることができる。また、絶縁層71、73は、エッチングによって容易に除去することができるので、フレキシブル部の耐折性を更に向上させることができる。
【0152】
このように、本実施の形態によれば、カバーレイと同等の絶縁性能を有し、かつポジ型感光性を有する樹脂を含む絶縁層(層間接着剤)を用いることにより、カバーレイや層間接着剤を用いることなく多層フレキシブル配線板を構成することができる。これにより、従来の多層フレキシブル配線板における中空構造の形成工程や、リジッドフレックス配線板の外層剥がしなどの工程を簡略又は省略することができる。また、カバーレイや層間接着剤を用いないので、多層フレキシブル配線板を薄型化できるとともに、耐屈曲性や耐折性を向上させることができる。
【0153】
また、本実施の形態によれば、絶縁層(層間接着剤)としてポジ型感光性樹脂を用いることにより、製造工程において、必要に応じて外層を剥がすことが可能となる程度の適度の接着力を得ることができる。すなわち、外層の銅箔部を回路形成時と同様にエッチング工程で除去したのち、残存した銅箔部をマスクとして、接着剤層を露光・現像することにより、接着剤層を除去することが可能となった。このため、露光の際の位置合わせが不要となり、更に生産性を向上できる。
【0154】
さらに、本実施の形態によれば、多層フレキシブル配線板のない層部に、カバーレイ及び層間接着剤を用いることが無いので、スルホールめっきやブラインドビアめっき時の層間接続の信頼性を向上させることができる。
【0155】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0156】
〔アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解試験〕
アルカリ可溶性樹脂の溶解特性の評価は以下の手順により実施した。
真空吸着及び加熱できる塗工台(マツキ科学社製)を予め60℃に加熱しておき、その上にポリエステルフィルム(R−310−25、三菱ポリエステル社製)を敷き、真空吸着させることで前記ポリエステルフィルムを貼り付けた。上記ポリエステルフィルム上にギャップが250μmのアプリケーター(マツキ科学社製)を用いて、アルカリ可溶性樹脂を塗布した。60℃、30分の条件で脱溶剤を行った後、乾燥機(SPH−201、エスペック社製)で95℃、20分の条件で脱溶剤を行った。
【0157】
得られたフィルムを、40℃に加温した1wt%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、30秒毎に1度の割合で10秒間揺動させた。フィルムが完全に溶けるまでに要した時間を溶解時間とし、アルカリ可溶性樹脂の炭酸ナトリウム水溶液に対する溶解速度を、溶解前の膜厚(μm)を溶解時間(sec)で除し、100を掛けることで算出した。
【0158】
〔ポジ型感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性試験〕
ポジ型感光性樹脂組成物から得られる感光層の作製及び残膜率の測定は、以下の手順により実施した。
【0159】
銅をラミネートしたガラスエポキシ基板(厚さ:0.4mm 松下電工社製)の表面をジェットスクラブイン(石井表記社製)によりスクラブ研磨(研磨材:サクランダムRF220、日本研削研粒社製)した。得られた基板に感光性ポリアミド酸組成物を滴下し、脱溶剤後の膜厚が30μmになるように高さを調整したYBA型ベーカーアプリケーター(ヨシミツ精機社製)を用いて塗工した。塗工後、ホットプレート(シャルマンホットプレートHHP−412、アズワン社製)に試料を置き、95℃で10分間の条件で脱溶剤を行った。
【0160】
脱溶剤後、直径100μmの円孔パターンのあるパターンマスク(東京プロセスサービス社製)を装着したマスクアライナー(MA−10、ミカサ社製)を用いて、露光量1000mJ/cm(UV350nm校正)の条件で紫外線照射を行った。
【0161】
得られたフィルムを、40℃に加温した1wt%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、30秒毎に1度の割合で10秒間揺動させた。露光部分の感光層が完全に溶けるまでに要した時間を溶解時間とし、露光部の炭酸ナトリウム水溶液に対する溶解速度を、溶解前の膜厚(μm)を溶解時間(sec)で除し、100を掛けることで算出した。
【0162】
触針式表面形状測定器(DEKTAK、アルバック社製)を用いて、未露光部の現像前の膜厚と現像後の膜厚を測定した。現像後の膜厚を現像前の膜厚で除し、100を掛けることで残膜率を算出した。
【0163】
〔弾性率〕
感光性樹脂組成物を用いて約30μmの膜厚になるように銅箔上に成膜した。続いて120℃で1時間、180℃で1時間熱処理し、その後FeCl溶液で銅箔部分を溶解させ、水道水で水洗後、室温で1日乾燥させてフィルムを得た。得られたフィルムを5mm×100mmに切り出し、試験片とした。得られた試験片を引っ張り試験機(RTG−1210/エー・アンド・デイ社製)にて測定した。
【0164】
〔誘電率〕
ソーラトロン社製の126096W型インピーダンス測定装置を用いて誘電率を測定した。
【0165】
〔試薬〕
用いた試薬を挙げる。シリコーンジアミン(KF−8010)(信越化学工業社製)、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル(TMEG)(新日本理化社製)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−N)(三井化学社製)、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート(TBXP)(大八化学社製)、ホスファゼン化合物(FP−100)(伏見製薬所社製)、トルエン(和光純薬工業社製、有機合成用)、γ―ブチロラクトン(和光純薬工業社製)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬工業社製)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(和光純薬工業社製)、炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製)は特別な精製を実施せずに、反応に用いた。
【0166】
[調製例1]
三口セパラブルフラスコに1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−N)(20g)、γ―ブチロラクトン(220g)を入れ、均一溶液になるまで攪拌した。次に、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル(TMEG)(28g)を加え、氷冷しながら1時間、その後室温で24時間攪拌することでポリアミド酸溶液(i)を得た。このポリアミド酸溶液は5μm開口径のテフロン(登録商標)フィルターで加圧ろ過して使用した。この樹脂のアルカリ溶解速度は0.13μm/secであった。
【0167】
ポリアミド酸溶液(i)(10g)、ポリアミド酸のカルボン酸に対して0.5当量の3’−ヒドロキシフェニルアセトアニリド(0.26g)、ポリアミド酸に対して20重量部のキノンジアジド化合物(A)(0.42g)を50mlガラス瓶に入れ、ミックスローター(MR−5、アズワン社製)により均一になるまで攪拌し、ポジ型感光性樹脂組成物(I)を得た。得られたポジ型感光性樹脂組成物(I)から得られるフィルムの物性について、露光部のアルカリ溶解速度は0.31μm/sec、残膜率は98%、弾性率は1.5GPa、誘電率(@1MHz)は3.2であった。結果を下記表1に示す。
【0168】
[調製例2]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、γ―ブチロラクトン(42.0g)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(18.0g)、トルエン(20.0g)、シリコーンジアミン(KF−8010、21.36g(17.09mmol))、TMEG(40.00mmol)を入れ、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で30分間加熱撹拌した。共沸溶媒であるトルエンを除去した後に、25℃まで冷却し、続いてAPB−N(18.64mmol)を加え25℃で5時間撹拌した。撹拌後にポリマー固形分濃度30質量%となるようにγ―ブチロラクトン/トリエチレングリコールジメチルエーテルの混合溶媒を加え、ポリアミド酸溶液(ii)を得た。このポリアミド酸溶液は5μm開口径のテフロン(登録商標)フィルターで加圧ろ過した使用した。この樹脂のアルカリ溶解速度は0.15μm/secであった。
【0169】
ポリイミド前駆体溶液(ii)(100質量部)に対して、キノンジアジド化合物A(20質量部)、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート(TBXP)(10質量部)、ホスファゼン化合物(FP−100)(7質量部)を混合し、ポジ型感光性樹脂組成物(II)を調整した。得られたポジ型感光性樹脂組成物(II)から得られるフィルムの物性について、露光部のアルカリ溶解速度は0.22μm/sec、残膜率は96%、弾性率は0.9GPa、誘電率(@1MHz)は2.9であった。結果を下記表1に示す。
【0170】
[調製例3]
1Lのセパラブルフラスコに4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸(72.4g)とN,N−ジメチルアミノピリジン(3.7g)のDMAc(600g)の溶液に室温で塩化チオニル(75.0g)を滴下し、1時間撹拌した。1Lのセパラブルフラスコに2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(109.9g)をDMAc(300g)に溶解したものにこの溶液を0℃で加え、室温下6時間撹拌した。これをDMAc(1000g)で希釈した後、水に撹拌しながら滴下し、析出したポリマーを濾過した後40℃で真空乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。このポリマー10gをγ−ブチロラクトン(4.6g)に加え、ミックスローターを用いて均一になるまで攪拌することで、γ−ブチロラクトンを溶媒としたポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂溶液(iii)を得た。このアルカリ可溶性樹脂溶液は5μm開口径のテフロン(登録商標)フィルターで加圧ろ過した使用した。この樹脂のアルカリ溶解速度は0.03μm/secであった。
【0171】
得られたポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂溶液(iii)を用いて、調製例2と同様にしてポジ型感光性樹脂組成物(III)を得た。得られたポジ型感光性樹脂組成物(III)から得られるフィルムの物性について、露光部のアルカリ溶解速度は0.10μm/sec、残膜率は96%、弾性率は2.2GPa、誘電率(@1MHz)は3.3であった。結果を下記表1に示す。
【0172】
【表1】

【0173】
[実施例1]
携帯電話等に使われる部品実装部や屈曲部を有する4層多層フレキシブル配線板を製造した実施例を以下に示す。両面FPC(L1、L2層とする)の加工は、サブトラクティブ法により回路形成工程まで完了させた。両面FPBの導電層L1、L2の電気的接合は、穴径が0.1mm〜0.3mm程度であるスルホールめっきやブラインドビアめっきにより行った。この両面FPCは多層板としてフレキシブル部となる部分では、後工程で層間接着剤を除去するために片側の配線を避けるように形成した。
【0174】
次に、絶縁層(層間接着剤)を上下の回路面に積層し、さらに外層回路(L3、L4層)を形成するための銅箔を積層した。ここでは、銅箔は12μm〜35μmの厚みの電解銅箔を使用した、なお、圧延銅箔を用いてもよく、絶縁層(層間接着剤)と銅箔とを予めラミネートしたもの(RCC)も用いてもよい。ここで、絶縁層(層間接着剤)の厚みは回路形成した導体の厚みより10μm〜20μm程厚い方が望ましい。(導体が18μmの場合は28μm〜38μm)なお、この段階では、層間接着剤は完全に硬化していない状態である。従来の多層フレキシブルプリント配線板では、上下の回路面にカバーレイを積層した後、層間接着剤を積層していたが、本実施例においては、層間接着剤がカバーレイとしての性能(下記表2に示す)を有しているため、カバーレイ積層プレス工程(4層フレキシブル配線板の場合2回、4層リジッドフレックス配線板の場合1回)を省略することができた。下記表2に示すように、本実施例に係る層間接着剤は、従来のカバーレイを同等の性能を示した。
【0175】
【表2】

【0176】
次に外層回路(L3、L4)と内層回路(L1、L2)とを接続するためのブラインドビアをコンフォーマル法によりレーザー加工で層間接着剤の樹脂を部分的に除去して形成した。レーザーとしては、COレーザーやYAGレーザーが通常用いられる。しかる後に、銅めっきを施すことによりブラインドビアを形成し、電気的接続を行った。レーザー加工で形成する穴径は、0.07mm〜0.3mm程度が適切である。
【0177】
次に、フレキシブル部となる部分の片側(両面FPCの配線が無い側)の銅箔を回路形成時と同じエッチング方式により除去した。次に、同面側に銅箔をマスクとして、銅箔をエッチングした部分に、1000mJ/cmの紫外線照射した後、1質量%の炭酸ソーダ等のアルカリ液でフレキシブル部の層間接着剤を現像溶解により除去した。しかる後に、層間接着剤(銅箔がエッチングされていない部分であって、未露光のため、現像されていない部分)を180℃で1時間、加熱硬化し、層間接着剤でできたカバーレイ層を作製した。この段階において、フレキシブル部は層間接着剤をカバーレイとして機能するため、従来のカバーレイのような接着剤層を持たない薄肉の片面フレキシブル配線板構造となり、優れた耐屈曲性を発揮した。
【0178】
次に、サブトラクティブ法により、フォトリソグラフィー技術を用いて回路パターンを印刷後、表裏の銅箔をエッチングして外層回路(L3、L4)を形成した。次に、外層回路(L3、L4)の回路面にエポキシ系樹脂を10μm〜30μmの厚みでコーティングした後、フォトリソグラフィー技術で導体露出が必要な部分を開口させたカバーコート、または、接着剤を20μm〜40μmの厚みで塗布した12μm〜25μmの厚みのポリイミドフイルムを予め金型で導体露出が必要な部分を打抜き除去した後、回路面に接着プレスしたカバーレイにて外層の絶縁処理を行った。
【0179】
部品実装や電気的接点となる外層の導体露出面には、電解金めっき、無電解金めっき、電解半田めっき等のめっき処理や、導体露出面でイミダゾ−ル系皮膜を形成して防錆効果を持たせた防錆処理を行う。次に一般的には金型やNCドリルを用いて、製品が使われるときに必要となる穴あけ加工や外形加工を行う。最後に電気的検査や外観検査を行った後、4層フレキシブル配線板が得られた。
【0180】
本実施例に係る多層フレキシブル配線板では、カバーレイ層を取り除いているために、下記表3に示すように、層厚みが小さく、電子機器の薄型化に大きな効果が得られることが分かった。各層の厚さについて下記表3に示す。表3に示すように、一般的な多層フレキシブル配線板の厚さが273μmであったのに対し、本実施例で得られた多層フレキシブル配線板の膜厚は、カバーレイなどを用いていないので、168μmと大幅に薄型化できた。
【0181】
【表3】

【0182】
下記表4に耐折性と耐屈曲性の結果を示す。片面の層間接着剤層を有しない片面配線板では、両面配線板に比べて、耐折性と耐屈曲性が優れることが分かる。ここで、片面の層間接着剤層を有しない片面配線板とは、屈曲性あるいは柔軟性を増すためにフレキシブル部の配線がない側の層間接着剤層を除去した配線板を言い、両面配線板とは、層間接着剤層を除去せずに両側に層間接着剤層を有する配線板をいう。
【0183】
[実施例2]
次に6層フレキシブル配線板の実施例について説明する。
まず、両面FPCをサブトラクティブ法により回路形成工程まで完了させた。両面FPCの両面の導電層(内層回路L1、L2)の電気的接合は、穴径が0.1mm〜0.3mm程度であるスルホールめっきやブラインドビアめっきにより行った。本実施例では、この両面FPCが多層フレキシブル配線板のフレキシブル部となる部分で両面配線となるように形成した。
【0184】
次に、絶縁層(層間接着剤)を上下の内層回路L1、L2に積層し、更に外層回路(L3、L4)を形成するための銅箔を積層した後、一般的には熱プレス等を用いて接着剤を加熱硬化させた。なお、層間接着剤と銅箔を予めラミネートしたもの(RCC)も用いても良い。ここで、層間接着剤の厚みは回路形成した導体の厚みより10μm〜20μm程厚い方が望ましい。(導体が18μmの場合は28μm〜38μm)ここで用いる層間接着剤としては、必ずしも本発明に係る層間接着剤である必要はなく、各種層間接着剤を用いることができる。
【0185】
次に外層回路(L3、L4)と内層回路(L1、L2)を接続するためのブラインドビアをコンフォーマル法によりレーザー加工で層間接着剤の樹脂を部分的に除去して形成した。レーザーとしては、COレーザーやYAGレーザーなどが用いられる。しかる後に、銅めっきを施すことによりブラインドビアを形成し電気的接続を行った。なお、レーザー加工で形成する穴径は、0.07mm〜0.3mm程度が適切である。
【0186】
次に、サブトラクティブ法により、フォトリソ技術を用いて回路パターンを印刷後、表裏の銅箔をエッチングして外層回路(L3、L4)を形成した。フレキシブル部となる部分では、後の工程で層間接着剤を除去する必要があるため、配線を避けることが望ましい。
【0187】
次に、本発明による層間接着剤を上下の外層回路(L3、L4)の回路面に積層し、更に最外層回路(L5、L6)を形成するための銅箔を積層した。なお、層間接着剤と銅箔を予めラミネートしたもの(RCC)も用いても良い。ここで、層間接着剤の厚みは回路形成した導体の厚みより10μm〜20μm程厚い方が望ましい。(導体が18μmの場合は28μm〜38μm)なお、この段階では、接着剤は完全に硬化していない状態である。
【0188】
次に、フレキシブル部となる部分の両側(FPCの配線が無い部分)の銅箔を回路形成時と同じエッチング方式により除去した。次に、両面から銅箔をマスクとして、銅箔をエッチングした部分に紫外線照射した後、苛性ソーダ等のアルカリ液でフレキシブル部の層間接着剤を現像溶解し除去した。しかる後に、層間接着剤を加熱硬化し、本発明に係る層間接着剤で構成されたカバーレイ層が完成した。この段階において、フレキシブル部は、本発明に係る層間接着剤をカバーレイとした、従来のカバーレイのような接着剤層を持たない両面フレキシブル配線板構造となり、優れた耐折性を発揮する事も可能となる。
【0189】
次に、サブトラクティブ法により、フォトリソ技術を用いて回路パターンを印刷後、表裏の銅箔をエッチングして表裏の最外層回路(L5、L6)を形成する。次に最外層回路(L5、L6)部に一般的には、回路面にエポキシ系樹脂をコーティングした後、フォトリソ技術で導体露出が必要な部分を開口させたカバーコート、または一般的には、接着剤を塗布したポリイミドフイルムを予め金型で導体露出が必要な部分を打抜き除去した後、回路面に接着プレスしたカバーレイにて最外層の絶縁処理を行った。
【0190】
部品実装や電気的接点となる外層の導体露出面には、電解金めっき、無電解金めっき、電解半田めっき等のめっき処理や、導体露出面でイミダゾ−ル系皮膜を形成して防錆効果を持たせた防錆処理を行う。次に、金型やNCドリルを用いて、製品が使われるときに必要となる穴あけ加工や外形加工を行う。最後に電気的検査や外観検査を行った後、完成品となる。
【0191】
下記表4に耐折性と耐屈曲性の結果を示す。片面の層間接着剤層を有しない片面配線板では、両面配線板に比べて、耐折性と耐屈曲性が優れる。ここで、片面の層間接着剤層を有しない片面配線板とは、屈曲性あるいは柔軟性を増すためにフレキシブル部の配線がない側の層間接着剤層を除去した配線板を言い、両面配線板とは、層間接着剤層を除去せずに両側に層間接着剤層を有する配線板をいう。
【0192】
[実施例3]
次にスルホールやブラインドビアを介した銅めっきによる層間接続の替わりに、導電ペーストを層間接着剤の中に充填して層間接続を取る製造方法(メタルペースト法)で4層フレキシブル配線板を作製した実施例について説明する。
【0193】
まず、両面FPCをサブトラクティブ法により回路形成工程を実施した。両面FPC上の内層回路L1、L2の電気的接合は、スルホールめっきやブラインドビアめっきにより実施した。この両面FPCは、フレキシブル部となる部分では、後工程で層間接着剤を除去するために片側の配線を避けることが望ましい。
【0194】
次に、予め本発明に係る層間接着剤に、導電ペーストを所定の位置(L1−L3、L2−L4接続ポイント)に充填した後、上下の回路面に積層し、更に外層回路(L3、L4層)を形成するための銅箔を積層した。ここで、層間接着剤の厚みは、回路形成した導体の厚みより10μm〜20μm程厚い方が望ましい。(導体が18μmの場合は28μm〜38μm)なお、この段階では、接着剤は完全に硬化していない状態である。導電ペーストの充填は、予め本発明による層間接着剤の所定の位置に、一般的にはレーザー加工で穴あけした後、スクリーン印刷法で導電ペーストを充填する。
【0195】
次に、フレキシブル部となる部分の片側(両面FPCの配線が無い側)の銅箔を回路形成時と同じエッチング方式により除去した。次に、同面側に銅箔をマスクとして、銅箔をエッチングした部分に紫外線照射した後、苛性ソーダ等のアルカリ液でフレキシブル部の層間接着剤を現像溶解により除去した。しかる後に、層間接着剤(現像されていない部分)を180℃で1時間、加熱硬化し、層間接着剤でできたカバーレイ層を作製した。
【0196】
次に、サブトラクティブ法により、フォトリソ技術を用いて回路パターンを印刷後、表裏の銅箔をエッチングして外層回路(L3、L4)を形成した。次に、外層部に一般的には、回路面にエポキシ系樹脂をコーティングした後、フォトリソ技術で導体露出が必要な部分を開口させたカバーコート、または一般的には、接着剤を塗布したポリイミドフイルムを予め金型で導体露出が必要な部分を打抜き除去した後、回路面に接着プレスしたカバーレイにて外層回路(L3、L4)の絶縁処理を行った。
【0197】
部品実装や電気的接点となる外層の導体露出面には、電解金めっき、無電解金めっき、電解半田めっき等のめっき処理や、導体露出面でイミダゾ−ル系皮膜を形成して防錆効果を持たせた防錆処理を行った。次に、金型やNCドリルを用いて、製品が使われるときに必要となる穴あけ加工や外形加工を行った。最後に電気的検査や外観検査を行った後、4層の多層フレキシブル配線板が得られた。
【0198】
下記表4に耐折性と耐屈曲性の結果を示す。片面の層間接着剤層を有しない片面配線板では、両面配線板に比べて、耐折性と耐屈曲性が優れる。ここで、片面の層間接着剤層を有しない片面配線板とは、屈曲性あるいは柔軟性を増すためにフレキシブル部の配線がない側の層間接着剤層を除去した配線板を言い、両面配線板とは、層間接着剤層を除去せずに両側に層間接着剤層を有する配線板をいう。
【0199】
【表4】

【0200】
以上説明したように、本発明によれば、カバーレイの性能を有する層間接着剤を用いることにより、従来のカバーレイ層や製造工程を省略できる多層フレキシブル配線板を実現できる。この層間接着剤は主にポジ型感光性樹脂組成物を用いて得られる。この層間接着剤がポジ型感光性であるので、その製造工程の中で必要に応じて外層を容易に剥がすことが可能となった。すなわち、外層の銅箔部を回路形成時と同様にエッチング工程で除去し、しかる後に、銅箔部をマスクとして接着剤層を露光・現像することにより除去することが可能となった。また品質的な面でも、多層フレキシブル配線板の場合は、内層のカバーレイ層を除去できる。また、リジッドフレックス配線板においてもカバーレイ層が不要となることから、スルホールめっきやブラインドビアめっき時の層間接続の信頼性を向上させることができる。このため、カバーレイ層を除去することができるので、大幅に薄肉化でき、より高密度配線が可能となった。また、補強板を張り合わせることにより、薄肉化した場合においても、部品実装等への悪影響を抑制することができる。また、本発明では、スルホールやブラインドビアを介した銅めっきによる層間接続の替わりに、導電ペーストを層間接着剤の中に充填して層間接続を取る方法も可能である。ポジ型感光性の特長を生かした外層の除去も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明は、リジッドフレックス配線板や多層フレキシブル配線板など、各種フレキシブルプリント配線板に用いることができる。
【符号の説明】
【0202】
11a、11b、41a、41b、51a、51b リジッド部
12、42、52 フレキシブル部
14、43、53、101、111 絶縁基板
15、16、18、20、44、46、54、56、57、59、61、72、74、
102、103、112、113 導電層
17、19、45、55、58、60、71、73 絶縁層
21、22、75、76、110 カバーコート
23 補強版接着剤
24 補強板
104、105、114、115 カバーレイ
106、116、117 層間接着剤
107、122 スルホール
108、109、123、124 ブラインドビアホール
118、120 絶縁樹脂
119 銅箔
L1、L2 内層回路
L3、L4 外層回路
L5、L6 最外層回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板の両面に設けられた一対の導電層と、前記一対の導電層上にそれぞれ設けられた一対の絶縁層と、前記一対の絶縁層上にそれぞれ設けられ、めっき及び/又は導電ペーストにより、前記一対の導電層とカバーレイを介さずに電気的に接続された少なくとも1層の外層回路と、を備えたことを特徴とする多層フレキシブル配線板。
【請求項2】
絶縁基板と、前記絶縁基板の片面に設けられた導電層と、前記導電層上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられ、めっき及び/又は導電ペーストにより、前記導電層とカバーレイを介さずに電気的に接続された少なくとも1層の外層回路と、を備えたことを特徴とする多層フレキシブル配線板。
【請求項3】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられ、絶縁層を介して配置された少なくとも3層の導電層とを有する多層フレキシブル基板と、前記多層フレキシブル基板の両面に設けられた一対の絶縁層と、前記一対の絶縁層上に設けられ、めっき及び/又は導電ペーストにより、前記少なくとも3層の導電層とカバーレイを介さずに電気的に接続された少なくとも1層の外層回路と、を備えたことを特徴とする多層フレキシブル配線板。
【請求項4】
前記絶縁層内において、前記絶縁層が部分的に除去された構造を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項5】
前記絶縁層は、ポジ型感光性樹脂組成物を含んでなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項6】
前記絶縁層において、部分的に除去される前記絶縁層が片側のみであり、且つ、少なくとも前記部分的に除去される絶縁層がポジ型感光性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項7】
前記ポジ型感光性樹脂組成物は、少なくともアルカリ可溶性樹脂及びキノンジアジド化合物を含んでなることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項8】
前記アルカリ可溶性樹脂は、少なくともポリアミド酸構造を有することを特徴とする請求項7に記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項9】
前記アルカリ可溶性樹脂は、ポリアミド酸構造及びポリイミド構造を有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項10】
前記アルカリ可溶性樹脂が、ポリアルキレンエーテル構造及び/又はシロキサン構造を有することを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項11】
前記ポジ型感光性樹脂組成物が、さらに、溶解抑止剤を含むことを特徴とする請求項7から請求項10のいずれかに記載の多層フレキシブル基板。
【請求項12】
前記溶解抑止剤が、アミド化合物又はウレア化合物であることを特徴とする請求項11記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項13】
前記ポジ型感光性樹脂組成物が、さらにリン化合物を含有することを特徴とする請求項7から請求項12のいずれかに記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項14】
前記リン化合物が、リン酸エステル化合物及び/又はホスファゼン化合物であることを特徴とする請求項13記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項15】
前記絶縁層が、前記アルカリ可溶性樹脂を含む前記ポジ型感光性樹脂組成物から得られ、且つ、前記アルカリ可溶性樹脂の炭酸ナトリウム水溶液への溶解速度が0.04μm/sec以上であり、前記ポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗工、加熱による脱溶剤後に得られる膜厚30μmの感光層に対して1000mJ/cm以下の活性光線を照射した場合、前記感光性樹脂組成物から構成される感光層の活性光線照射部の炭酸ナトリウム水溶液への溶解速度が0.22μm/sec以上であり、活性光線未照射部の残膜率が90%以上であり、更に、活性光線未照射部の該感光層を200℃で加熱することにより得られる該絶縁層の弾性率が0.2〜1.5GPa、誘電率3.5以下であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の多層フレキシブル配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−96984(P2011−96984A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252337(P2009−252337)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】