説明

多層プリント配線板およびその製造方法

【課題】 少ない工数で簡易に製造することが可能であり、製造コストの低廉化を実現することのできる多層プリント配線板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 絶縁性基板1を所定の位置に設定された折り曲げ線21に沿って折り曲げて重ね合わせ熱融着することで、複数層に積層してなる絶縁層21、22、23を形成すると共に、絶縁性基板1に設けた導体層5、6、7、17のうち絶縁層21、22、23同士の間に挟み込まれた部分の導体層5、6をインナー導体層とし、かつ絶縁層21、23の表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面上の部分の導体層7、17をアウター導体層とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体実装パッケージ用配線板のような小型・高密度実装に好適な多層プリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置のさらなる高性能化・小型化に伴って、半導体チップ等の実装に供されるTABテープなどのプリント配線板についても、配線の高密度化・小型化・薄型化等が益々強く要請されるようになってきている。
その要請に対応するため、従来から主に2つの方策が提案・検討されている。
その一つは、プリント配線板の面内配線ライン幅およびピッチを、いわゆるファイン化する、というものである。これは現在までこの半導体実装パッケージ分野をはじめとして広く一般にプリント配線板製造業において開発努力が継続されているが、信頼性の確保の問題や、配線板材料による種々の制約、特に導体層(導体パターン)を形成するための銅箔など導体材料の厚さの制約に起因して、40μmピッチ前後が現実的に量産可能なパターン加工の限界となっている。
他の一つは、プリント配線板を多層化し、導体層間をスルーホールやビアなどの導通孔によって接続することで、配線密度のさらなる向上を達成する、というものである。この方策によれば、個々の導体層における配線密度はさほど高くなくても、複数層で配線を引き回すことができるので、それら複数層の導体層全体では、多数の配線を形成することができ、高い配線密度が達成可能となる。
【0003】
従来のプリント配線板の製造技術では、ガラスエポキシ基板などのいわゆるリジッド基板を積層して多層プリント配線板を作製することが一般に行われている。また、近年ではTABテープ等のフレキシブル基板についても、同様の手法による多層化が提案されている。
【0004】
一例として、1−2−1ビルドアップ法について概観すると、まず内層となる絶縁性基板の両面に銅箔を貼り合わせてなる、いわゆる銅張配線基材(銅張積層基材)に、レーザーまたはマイクロドリルによってスルーホールまたはブラインドビア等の孔を設けた後、無電解めっきまたは電解めっきを施すことにより、層間導通を確保する。そしてその両面の銅箔をフォトエッチング法によってパターン加工して、導体パターン等を形成する。この導体パターンが、製品として完成した後にインナー導体層(第2層および第3層の導体層)となる。
その内層となるインナー導体層が形成された銅張配線基材の表裏両面に、熱硬化性樹脂付き銅箔をそれぞれ貼り合わせ、熱プレス処理によってそれらを積層して4層配線板の積層構造を成す。そして第1層から第2層以下の所望の各層へと達するスルーホールやビアなどの孔を穿ち設け、その孔に銅めっきを施して層間導通を確保する。引き続いて、フォトエッチング法によって外層(第1導体層および第4導体層)の導体パターンを形成し、その後、外層上にソルダーマスクを形成する。そしてワイヤーボンディングなど半導体チップとの接合のために供される電極部やマザーボードとの接合に供される電極部等に金めっきを施して、半導体実装パッケージ用の4層プリント配線板が完成する(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−342686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の技術によるプリント配線板およびその製造方法では、煩雑な積層工程が必須であり、また高精度の微細な機械的加工が要求される極めて煩雑な層間接続用導通孔(ビアやスルーホール等)の形成工程が必要である。またそれら煩雑な工程を多くの工数に亘って精確に行わなければならない。このような要因から、上記のビルドアップ工法をはじめとする従来の多層プリント配線板およびその製造方法では、スループットの向上が困難であり、また製造歩留りの向上が困難であるという問題があった。
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、少ない工数で簡易かつ確実に製造することが可能であり、延いてはスループットの向上および製造歩留りの向上を達成して製造コストの低廉化を実現することのできる多層プリント配線板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の多層プリント配線板は、一枚の連続した熱可塑性樹脂からなる絶縁性基板を折り曲げて重ね合わせることで複数層に積層してなる絶縁層と、前記積層してなる絶縁層同士の間に内層として設けられたインナー導体層と、前記積層してなる絶縁層の表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面上に外層として設けられたアウター導体層と
を備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明の第2の多層プリント配線板は、上記第1の多層プリント配線板において、前記絶縁性基板の厚さが、75μm以下であることを特徴としている。
【0009】
本発明の第3の多層プリント配線板は、上記第1または第2の多層プリント配線板において、前記絶縁性基板が、所定の位置に設定された折り曲げ線にて折り曲げられたものであり、かつ前記折り曲げ線に沿って、当該折り曲げ線の長さの85%〜100%の長さを有すると共に当該絶縁性基板の厚さの10倍以上の幅を有する折り曲げ位置規定パターンを、前記絶縁性基板に設けてなることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の第1の多層プリント配線板の製造方法は、一枚の連続した熱可塑性樹脂からなる絶縁性基板の表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面上に貼り付けられた導体材料をパターン加工して導体層を形成する工程と、前記絶縁性基板を所定の位置に設定された折り曲げ線に沿って折り曲げて重ね合わせ熱融着することで、複数層に積層してなる絶縁層を形成すると共に、前記導体層のうち前記絶縁層同士の間に挟み込まれた部分の導体層をインナー導体層とし、かつ前記絶縁層の表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面上の部分の導体層をアウター導体層とする工程とを含むことを特徴としている。
【0011】
本発明の第2の多層プリント配線板の製造方法は、上記第1の多層プリント配線板の製造方法において、前記絶縁性基板の厚さを、75μm以下とすることを特徴としている。
【0012】
本発明の第3の多層プリント配線板の製造方法は、上記第1または第2の多層プリント配線板の製造方法において、前記導体材料をパターン加工する工程で、前記折り曲げ線に沿って、当該折り曲げ線の長さの85%〜100%の長さを有すると共に前記絶縁性基板の厚さの10倍以上の幅を有する折り曲げ位置規定パターンを、前記絶縁性基板上に設けておき、前記絶縁性基板を折り曲げる工程で、前記折り曲げ位置規定パターンに沿って前記絶縁性基板を折り曲げることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁性基板を所定の位置に設定された折り曲げ線に沿って折り曲げて重ね合わせることで、複数層に積層してなる絶縁層を形成すると共に、絶縁性基板に設けた導体層のうち絶縁層同士の間に挟み込まれた部分の導体層をインナー導体層とし、かつ
絶縁層の表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面上の部分の導体層をアウター導体層とするようにしたので、従来の各層ごとに個別の銅張配線基材をパターン加工して積層していた構造およびその製造方法と比較して、飛躍的に少ない工数で簡易に、多層プリント配線板を製造することが可能となり、その製造コストの低廉化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本実施の形態に係る多層プリント配線板およびその製造方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る多層プリント配線板の積層構造を示す断面図、図2は、その絶縁性基板を折り曲げる工程を示す図、図3は、折り曲げ位置規定パターンの形状・設定およびその作用について模式的に示す図である。また図4は、他の実施の形態を示す断面図である。
【0015】
この多層プリント配線板は、図2および図1に示すように、絶縁性基板1と、折り曲げ部(折り曲げ線)2と、熱可塑性樹脂面3、4と、導体層5、6、7、17と、マイクロビア8と、折り曲げ位置規定パターン12(12−1,12−2)、13とを、その主要部として有している。
【0016】
絶縁性基板1は、一枚の連続した細長状(帯状)の熱可塑性樹脂製のTABテープ基材(フィルム)で、その幅方向を3等分する2箇所の位置にそれぞれ設定された2本の折り曲げ部2−1、2−2に沿って折り曲げられて熱融着等により重ね合わされることで、3層の絶縁層21、22、23を構成している。
この絶縁性基板1の厚さは、後述する折り曲げの際にその折り曲げ位置の精度や折り曲げ易さを確保することが必要であるが、75μm以上と余りにも厚くすると、折り曲げ位置の精度が許容範囲から逸脱する確率が高くなる。従って、絶縁性基板1の厚さは75μm以下とすることが望ましい。
また、この絶縁性基板1の材質としては、後述する折り曲げ工程で、高精度に所定の位置にて折り曲げることができ、かつその折曲げた状態で重ね合わせて加熱プレスすることにより確実に積層構造を形成することができるようにするために、例えば液晶ポリマーやPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などのような、柔軟で折り曲げが容易な熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。
【0017】
第2導体層5、および第3導体層6は、それぞれ絶縁層21と絶縁層22との間、および絶縁層22と絶縁層23との間に配置された、いわゆるインナー導体層となっている。
また、第1導体層17は絶縁層21の表面上(熱可塑性樹脂面14上)に設けられ、第4導体層7は絶縁層23の表面に設けられて、いずれもいわゆるアウター導体層となっている。
それら第1導体層17、第2導体層5、第3導体層6、第4導体層7によって、この多層プリント配線板は、4層積層配線板の構造となっている。
【0018】
折り曲げ位置規定パターン12、13は、絶縁性基板1の表面に、折り曲げ部2−1、2−2に近接して沿った帯状のパターンとして設けられたものである。
その長さは、折り曲げ部2−1、2−2の長さ(換言すれば絶縁性基板1の全長)の85%〜100%である。これは、長さを85%未満にすると、絶縁性基板1の折り曲げの
際に、その折り曲げ位置の精度が許容範囲から逸脱する確率が高くなるが、85%以上とすることによってその精度を極めて良好なものとすることが可能となるからである。なお折り曲げ位置規定パターン12、13の長さの上限は、折り曲げ位置規定パターン12、13が絶縁性基板1上に設けられるものであり、長ければ長いほどよいのであるから、折り曲げ部2の長さすなわち絶縁性基板1の全長の100%であることは言うまでもない。
また、その幅は、絶縁性基板1の厚さの10倍以上に設定されている。この幅について
も、絶縁性基板1の折り曲げの際に、その折り曲げ位置の精度が許容範囲から逸脱する確
率が高くなるが、絶縁性基板1の厚さの10倍以上とすることによって、折り曲げ位置の
精度を極めて良好なものとすることが可能となるからである。
【0019】
マイクロビア8は、第2導体層5、第3導体層6、第4導体層7の層間接続を確保するためのブラインドビアであり、例えばレーザーまたはマイクロドリルによって穿ち設けたビア穴15に銅めっき9を充填して形成されている。このマイクロビア8が第4導体層7〜第3導体層6のビアキャプチャパッド16〜第2導体層5を確実に通るように設けられるためには、絶縁性基板1の折り曲げの位置が正確であることが必要となる。そのような絶縁性基板1の正確な折り曲げを確実に実現することができるように、またその他にも異なった導体層同士の導体パターン(配線)の位置関係が正確に設計通りとなるように、絶縁性基板1の折り曲げの際のガイドとして、上記のような折り曲げ位置規定パターン12、13が設けられているのである。
層間接続としては、その他に第1導体層17と第2導体層5との層間接続を確保するためのブラインドビア24が形成されている。
【0020】
そして、この多層プリント配線板の最外層つまり第1導体層が配置されている絶縁層21の表面および絶縁層23の表面には、はんだ保護層10が形成され、また第1導体層17や第4導体層7におけるはんだ保護層10で覆われていない部分の表面には、ニッケル・金めっき11等の表面処理が施されている。
【0021】
次に、この多層プリント配線板の製造方法の主要部について、特に絶縁性基板の折り曲げ工程を中心として説明する。
厚さ75μm以下の一枚の熱可塑性樹脂からなる絶縁性基板1の表裏両面に貼り付けられた銅箔を、例えばフォトエッチングプロセスによってパターン加工して、絶縁性基板1の表裏両面のうちの一方の面上には、第1導体層17、第4導体層7、および折り曲げ位置規定パターン12、13を形成し、他方の面上には、第2導体層5、第3導体層6、および折り曲げ位置規定パターン12、13を形成する。
【0022】
その後、図2に示したように、折り曲げ部2−1、2−2に沿って、折り曲げ位置規定パターン12(12−1、12−2)、13をこの折り曲げの際のガイドとして用いて、絶縁性基板1をいわゆる3つ折り状に折り曲げて重ね合わせ、熱プレスによって熱融着させることにより、この多層プリント配線板における4層積層構造の主要部を一気に形成することができる。
【0023】
さらに具体的には、折り曲げ部2−1に沿って絶縁性基板1を折り曲げて重ね合わせ熱融着することで、上記のフォトエッチングプロセスにより銅箔がエッチング除去されて絶縁性基板1の表面を剥き出しにしてなる熱可塑性樹脂面3を、第2導体層5に対面させて熱融着すると共に、同様に折り曲げ部2−2に沿って絶縁性基板1を折り曲げて重ね合わせ熱融着することで、上記のフォトエッチングプロセスにより銅箔がエッチング除去されて絶縁性基板1の表面を剥き出しにしてなる熱可塑性樹脂面4を、第3導体層6に対面させて熱融着する。このようにして、絶縁層21と絶縁層22との間に第2導体層5が、また、絶縁層22と絶縁層23との間に第3導体層6が、それぞれインナー導体層として形成されたこととなる。また、積層構造の最外層には、第1導体層17および第4導体層7が、それぞれ形成されたこととなる。
【0024】
ここで、この折り曲げ工程においては、折り曲げ位置の精度が低いと、例えばビア穴15とそれが貫通するように設けられることが要請される第3導体層6のビアキャプチャパッド16との位置関係がずれてしまい、甚だしくは層間接続不良となる虞がある。またその他にも、異なった導体層同士における配線パターンの位置関係が正しい設定位置からず
れてしまう虞もある。
そこで、所望の設定通りの位置の折り曲げ部2に沿って絶縁性基板1を正しく折り曲げることができるようにするために、上記のような幅および長さを有する折り曲げ位置規定パターン12、13を、折り曲げ部2に沿って設けておき、絶縁性基板1を折り曲げる際には、その折り曲げのために外部から加えられる折り曲げ力(曲げモーメント)を、折り曲げ位置規定パターン12、13の有する材料力学的な曲げ剛性および捩れ剛性によって、折り曲げ部2へと集中させることにより、絶縁性基板1が正しい設定位置である折曲げ部2に沿って折れ曲がることができるようにする。また、このときの折り曲げ位置の精度は、絶縁性基板1の厚さに対して顕著な相関関係があり、ある程度の厚さ以上になると著しく低下するので、絶縁性基板1の厚さについても上記のような厚さに設定するようにしている。
【0025】
図3(a)に模式的に示した一例では、絶縁性基板1の下面に、折り曲げ予定の線である折り曲げ線21に沿って絶縁性基板1の長手方向(図3では矢線30で示してある)に伸びた折り曲げ位置規定パターン12−1、12−2が設けられている。折り曲げ線21は、帯状の絶縁性基板1の長手方向(30)に沿って長く伸びた1条の線である。折り曲げ位置規定パターン12−1、12−2は、折り曲げ線21の直下で狭いスペースが設けられていることで、互いに分離されている。また、絶縁性基板1の上面には、インナー導体層となる導体層27が設けられている。
その絶縁性基板1を、外部から曲げモーメント20を加えることで、折り曲げ線21に沿って、いわゆる「谷折り」方向に折り曲げて行く。そして折り曲げた左右2つの面を重ね合わせ、熱プレス等によって熱融着する。このとき、折り曲げ位置規定パターン12−1、12−2の存在によって、絶縁性基板1の折れ曲がりは、折り曲げ線21に沿った折り曲げ部2の位置でしか実際上起こらないこととなる。換言すれば、この折り曲げ部2の位置を逸脱して折れ曲がりが起こる確率は極めて低いこととなる。このようにして、正確かつ確実に、所定の折り曲げ線21に沿って絶縁性基板1を折り曲げて重ね合わされる面同士を熱融着して、図3(b)に示したような所望の積層構造を形成することができる。
【0026】
上記のような正確な折り曲げを実現するためには、個々の折り曲げ位置規定パターン12が絶縁性基板1の樹脂折り曲げ変形抗力に負けない十分な機械的(材料力学的)な強度を有していることが必要である。そのような観点から、折り曲げ位置規定パターン12の幅を絶縁性基板1の厚さの10倍の大きさとすることが望ましく、またその長さを絶縁性基板1の折り曲げ全長の85%以上とすることが望ましいことは既述の通りである。
【0027】
このようにして絶縁性基板1を折り曲げて積層構造を形成した後、ビア穴15等の穴を、レーザーショットによって絶縁性基板1に穿ち設け、無電解銅めっき法などによりそのビア穴15等に銅めっき9を施して、マイクロビア8等を形成する。
その後、必要に応じて、回路保護用のはんだ保護層10を設け、金ニッケルめっき11等の表面処理を施して、この多層プリント配線板の主要部が完成する。
【0028】
図4は、他の(第2の)実施の形態の多層プリント配線板の積層構造の主要部を示す断面図である。ここで、図4では、上記で説明した図1、2と同様の部位については、同じ符号を付して示している。
この多層プリント配線板では、内層の絶縁層22の表裏に配置される第2導体層5と第3導体層6とを接続するベリードビア18を有している。このベリードビア18は、絶縁性基板1を折り曲げる前に、絶縁性基板1の内層の絶縁層22となる部分(図2では折り曲げ部2−1と折り曲げ部2−2との間に広がる領域)に、ベリードビア18となる穴を穿ち設け、その穴に銅めっき9等によって層間接続のための導通を確保しておき、その後、絶縁性基板1を折り曲げ、重ね合わせて熱融着し、引き続いて外層と内層との間での層間接続のためのマイクロビア8(ブラインドビア)を設けて、その積層構造の主要部を作
製してなるものである。
【0029】
この構造(および製造方法)によれば、上記の実施の形態で説明したものと比較してベリードビアを形成するために穿設する穴の数の分だけレーザーまたはマイクロドリルによる穴のショット数が多くなるが、所望の導体層同士を接続するためのビアの位置を、その導体層の上下に設けられるビアの位置とは独立して設定することができるので、設計の自由度がさらに高くなるという極めて有効な利点がある。また、全ての穴は絶縁性基板1の厚さを貫通する深さで統一されることになり、個々の穴ごとにそれらを穿ち設ける深さを個別に設定する必要がなくなるので、その穴開けの設定等をさらに簡易に行うことが可能となるという利点もある。
【0030】
なお、上記の実施の形態では、絶縁性基板1の長手方向に伸びる折り曲げ部2(折り曲げ線21)に沿って、例えばバッチプレスによって絶縁性基板1をその幅方向に折り曲げて積層する場合について説明したが、この他にも、折り曲げ部2は絶縁性基板1の幅方向を横断するように設けて、絶縁性基板1をその長手方向に折り曲げて積層するような設定とすることも可能である。このようにすることにより、いわゆるロールツーロールプロセス(Roll to Roll Process)で製造することが可能となる。
また、上記の実施の形態では、絶縁性基板1を3つ折りにして絶縁層を3層とし、それら絶縁層の外層に2層および内層に2層の合計4層の導体層を有する4層積層構造の配線板とする場合について説明したが、これ以外にも、例えば絶縁性基板1を2つ折りにして絶縁層を2層積層とし、それら絶縁層の外層に2層および内層に1層の合計3層の導体層を有する3層積層構造の配線板とすることも可能である。あるいは、4つ折りやさらに多数回折り曲げるようにして、5層以上の多層積層構造の配線板とすることなども可能である。
また、上記の実施の形態では、折り曲げ位置規定パターン12を絶縁性基板1の一方の面(山折り側で外層となる面)に設けると共に、他方の面(谷折り側で内層となる面)に折り曲げ位置規定パターン13を設けることで、折り曲げ位置規定パターン12による折り曲げの位置のガイド作用を、折り曲げ位置規定パターン13によってさらに増強するようにしたが、折り曲げ位置規定パターン12だけでも十分なガイド作用が得られる場合には、折り曲げ位置規定パターン13は省略することも可能である。
また、上記の実施の形態では、内層である第2導体層5および第3導体層6は配線パターンを有するものとしたが、それら内層はほぼ全面ベタの導体箔からなるグランド層や電源層とすることも可能である。その他、導体パターンの種々のバリエーションや導通穴の形態の種々のバリエーションが可能であることは勿論である。
【実施例】
【0031】
上記の実施の形態で説明したような4層積層構造の多層プリント配線板を製造した。
絶縁性基板1としては、厚さ25μmの液晶ポリマーからなるTABテープ用フィルムを使用した。このTABテープ用フィルムの幅は150mmである。従って、3つ折りに折り曲げて積層した後の多層プリント配線板としての幅は、約50mmとなる。
各導体層5、6、7、17を形成するための銅箔の厚さは9μmとし、これをパターン加工して形成される折り曲げ位置規定パターン12、13の幅は、1.5mm(1500μm)とした。その長さは、絶縁性基板1のTABテープ用フィルムの全長に亘るものとした。
【0032】
このような絶縁性基板1の表裏の銅箔をパターン加工した後、上記の実施の形態で説明した方法で折り曲げ位置規定パターン12、13を利用して絶縁性基板1を折り曲げて、本実施例の多層プリント配線板を製造した。
その製造工程では、絶縁性基板1のTABテープ用フィルムへのビア穴開けのためのレーザーショット工程の簡易化・工数の低減化を図ることができ、また積層工程および各導
体層のパターン加工工程等の大幅な簡易化・工数低減化を図ることができたので、従来の製造方法と比較して、約30%のスループット向上が達成された。そしてこれによって製造コストの大幅な削減(低廉化)が実現可能となった。また、上記第2の実施の形態で説明した製造方法および構造を採用した場合では、約12%のスループット向上が達成できた。
【0033】
このように、本発明に係る多層プリント配線板およびその製造方法によれば、従来よりも大幅に少ない工数で簡易かつ確実に多層プリント配線板を製造することが可能となり、延いてはその製造コストの低廉化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る多層プリント配線板の積層構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る多層プリント配線板の製造工程における、絶縁性基板を折り曲げる工程を示す図である。
【図3】折り曲げ位置規定パターンの形状・設定およびその作用について模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る多層プリント配線板の、他の(第2の)実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 絶縁性基板
2 折り曲げ部
3、4 熱可塑性樹脂面
5 第2導体層
6 第3導体層
7 第4導体層
8 マイクロビア
9 銅めっき
10 はんだ保護層
12 折り曲げ位置規定パターン(外層側)
13 折り曲げ位置規定パターン(内層側)
15 ビア穴
16 ビアキャプチャパッド
18 ベリードビア
21、22、23 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の連続した熱可塑性樹脂からなる絶縁性基板を折り曲げて重ね合わせることで複数層に積層してなる絶縁層と、
前記積層してなる絶縁層同士の間に内層として設けられたインナー導体層と、
前記積層してなる絶縁層の表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面上に外層として設けられたアウター導体層と
を備えたことを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】
請求項1記載の多層プリント配線板において、
前記絶縁性基板の厚さが、75μm以下である
ことを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項3】
請求項1または2記載の多層プリント配線板において、
前記絶縁性基板が、所定の位置に設定された折り曲げ線にて折り曲げられたものであり、
かつ前記折り曲げ線に沿って、当該折り曲げ線の長さの85%〜100%の長さを有すると共に当該絶縁性基板の厚さの10倍以上の幅を有する折り曲げ位置規定パターンを、前記絶縁性基板に設けてなる
ことを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項4】
一枚の連続した熱可塑性樹脂からなる絶縁性基板の表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面上に貼り付けられた導体材料をパターン加工して導体層を形成する工程と、
前記絶縁性基板を所定の位置に設定された折り曲げ線に沿って折り曲げて重ね合わせ熱融着することで、複数層に積層してなる絶縁層を形成すると共に、前記導体層のうち前記絶縁層同士の間に挟み込まれた部分の導体層をインナー導体層とし、かつ前記絶縁層の表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面上の部分の導体層をアウター導体層とする工程と
を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の多層プリント配線板の製造方法において、
前記絶縁性基板の厚さを、75μm以下とする
ことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の多層プリント配線板の製造方法において、
前記導体材料をパターン加工する工程で、前記折り曲げ線に沿って、当該折り曲げ線の長さの85%〜100%の長さを有すると共に前記絶縁性基板の厚さの10倍以上の幅を有する折り曲げ位置規定パターンを、前記絶縁性基板上に設けておき、
前記絶縁性基板を折り曲げる工程で、前記折り曲げ位置規定パターンに沿って前記絶縁性基板を折り曲げる
ことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−103376(P2008−103376A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282192(P2006−282192)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】