説明

多層プリント配線板

【課題】 高周波特性が優れ、機械的強度、衝撃強度に優れたプリント配線板を提供する。
【解決手段】 下記に示すA層の片面又は両面に、下記に示すB層を積層した多層プリント配線板。
A層:エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和エステル系樹脂及びビスマレイミド型ポリイミド系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物からなる1層又は2層以上で構成される層B層:シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂を40重量%以上含む樹脂組成物からなる1層もしくは2層以上で構成される層

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気、電子分野に用いられる多層プリント配線板に関し、詳しくは、高周波特性、機械的強度などに優れた多層プリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話や種々のAV機器、パソコンのような電子機器が発達し、それらは我々の生活に供され深く浸透しつつあるが、これらの電子機器には、その基本部品としてプリント配線板が多用されている。かかるプリント配線板においては、電子回路における演算速度の速さという点から電子信号の伝達速度が速いこと、また発生するエネルギーロスの低減という観点から電気信号の伝達ロスが少ないこと等が要求されるが、これらの性能は、プリント配線板の本体部分をなす樹脂のもつ電気特性に深く関係している。即ち、樹脂の持つ誘電率や誘電損失の大小が電気信号の伝達速度や電気信号ロスに大きく影響を与えるものであり、特に高周波帯におけるこれらの値はできるかぎり小さいことが望まれている。また、電子部品の製作時における耐ハンダ特性や耐熱性等、また成形材料として要求される強度等の機械物性も樹脂に要求される大きな要素である。
【0003】従来、そのような樹脂としては、フッ素系樹脂,エポキシ系樹脂,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂,ポリアリーレンスルフィド樹脂等が用いられてきたが、フッ素系樹脂においては射出成形性が良好でなく、また高価であるという問題や、エポキシ系樹脂における電気特性の不十分さや、ポリオレフィン系樹脂における耐熱性の低さ等の問題が指摘されてきた。
【0004】一方、プリント配線板をより一層高性能化することも要求されており、そのため基板寸法を短小化し、さらに高密度化を図る目的で、プリント配線板の本体を構成する樹脂成形体層を単層ではなく多層にすることが試みられてきた。
【0005】しかし、情報通信ネットワークの高度化により、無線系のモバイル通信メディアは準マイクロ波以上の高周波帯となり、また情報を送受信する端末機器が、極度に小型化、軽量化が進んだ中で総合的な性能、即ち、誘電率が低いなど優れた高周波特性を有し、かつ、機械的強度、衝撃強度に優れたプリント配線板が見出せないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような状況下で高周波特性が優れ、機械的強度、衝撃強度に優れたプリント配線板を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有する多層プリント配線板が、上記本発明の目的を効果的に達成しうることを見出し本発明を完成したものである。すなわち、本発明の概要は以下の通りである。
〔1〕 下記に示すA層の片面又は両面に、下記に示すB層を積層した多層プリント配線板。
【0008】A層:エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和エステル系樹脂及びビスマレイミド型ポリイミド系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物からなる1層又は2層以上で構成される層B層:シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂(以下SPSということがある。)を40重量%以上含む樹脂組成物からなる1層もしくは2層以上で構成される層〔2〕 A層とB層の断面方向の総厚み比が200:1〜1:1である前記〔1〕に記載の多層プリント配線板。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の発明の実施の形態について説明する。本発明の多層プリント配線板は、A層の片面又は両面に、B層を積層した多層プリント配線板であって、A層がエポキシ系樹脂組成物、フェノール系樹脂組成物、不飽和エステル系樹脂組成物及びビスマレイミド型ポリイミド系樹脂組成物から選ばれた少なくとも1種の樹脂組成物からなる1層又は2層以上で構成される層である。
【0010】本発明におけるA層として用いる樹脂は上記の通りであるが、各樹脂組成物の内容は以下の通りである。
〔A−1〕エポキシ系樹脂系組成物本発明で用いるエポキシ系樹脂組成物とは、エポキシオリゴマー、硬化剤、必要に応じて、補強材を基本に構成され、これに難燃剤、可塑剤に代表される様々な添加剤が任意に加えられ、硬化させたもの(エポキシ硬化体)の総称をいう。
【0011】エポキシ硬化体としては製造原料(エポキシオリゴマー)の種類から、グリシジルエーテル型硬化体、グリシジルエステル型硬化体、グリシジルアミン型硬化体があり、グリシジルエーテル型硬化体の原料となるエポキシオリゴマーとしては例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル(例えば、油化シェルエポキシ社製エピコート154),オルソクレソーンノボラックグリシジルエーテル(例えば、油化シェルエポキシ社製エピコート180S65)などがあり、グリシジルエステル型硬化体の原料となるエポキシオリゴマーとしては例えば、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステルなどが挙げられ、またグリシジルアミン型硬化体の原料となるエポキシオリゴマーとしては例えば、テトラグリシジルジアミニジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアモノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。これらの中で、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのビスフェノールA型エポキシオリゴマー、フェノールノボラックグリシジルエーテル、オルソクレソーンノボラックグリシジルエーテル、DPPノボラックグリシジルエーテルなどのノボラック型エポキシオリゴマーまたはこれらを変性したもの、及びこれらの併用からなるエポキシ硬化体が好ましい。なお、これらのエポキシオリゴマーは1種のみを単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸などが挙げられる。これらの中でイソホロンジアミンに代表されるジアミン系硬化剤が好ましく用いられる。なお、これらの硬化剤は1種のみを単独で用いてもできるし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】また補強材としてはガラスファイバー、ガラスクロス、紙などが挙げられる。これらの中でガラスクロスが好ましく用いられる。なお、これらの補強材は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、これらからなるエポキシ硬化体よりなる層は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】〔A−2〕フェノール系樹脂組成物本発明で用いるフェノール系樹脂組成物とは、フェノール類モノマー、アルデヒド、必要に応じて補強材を基本に構成され、これに難燃剤、可塑剤に代表される様々な添加剤が任意に加えられ、硬化させたもの(フェノール硬化体)の総称をいう。
【0015】フェノール類モノマーとしては例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、p−ターシャリーブチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、またはこれらを変性したものなどが挙げられる。これらのフェノール類モノマーは1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドが多く用いられる。また補強材としてはガラスファイバー、ガラスクロス、紙などが挙げられる。これらの中でガラスクロスが好ましく用いられる。なお、これらの補強材は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、これらからなるフェノール硬化体よりなる層は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】〔A−3〕 不飽和ポリエステル系樹脂組成物本発明で示す不飽和ポリエステル系樹脂組成物とは、主鎖にエステル結合(−COO−)と不飽和結合(−C=C−)とを持つ不飽和ポリエステルプレポリマ−と、必要に応じて補強材を基本に構成され、これに難燃剤、可塑剤に代表される様々な添加剤が任意に加えられ、硬化させたものの総称である。
【0018】主鎖にエステル結合と不飽和結合とを持つ不飽和ポリエステルプレポリマ−は、不飽和二塩基酸を含む二塩基酸と多価アルコ−ルの重合反応によって得られ、不飽和二塩基酸としては例えば、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはこれらを変性したものなどが挙げられる。これらの不飽和二塩基酸は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。また二塩基酸としては例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セパシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブルム無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ヘット酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸またはこれらを変性したものなどが挙げられる。これらの二塩基酸は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールジヒドロキシプロピルエーテルまたはこれらを変性したものなどが挙げられる。これらの多価アルコールは1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】また補強材としてはガラスファイバー、ガラスクロス、紙などが挙げられる。これらの中でガラスクロスが好ましく用いられる。なお、これらの補強材は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、これらからなる不飽和ポリエステル硬化体よりなる層は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】〔A−4〕ビスマレイミド型ポリイミド系樹脂組成物本発明で用いる「ビスマレイミド型ポリイミド系樹脂組成物」とは、芳香族ジアミンと無水マレイン酸から合成されるビスマレイミドモノマ−と、必要に応じて補強材を基本に構成され、これに難燃剤、可塑剤に代表される様々な添加剤を任意に加えて硬化させたものの総称をいう。補強材としてはガラスファイバー、ガラスクロス、紙などが挙げられる。これらの中でガラスクロスが好ましく用いられる。なお、これらの補強材は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】このビスマレイミド型ポリイミド系樹脂組成物の具体例については、市販品として、例えば、三井ガス化学社製のBTレジンやチバガイギ−社製のXU292などがある。
【0023】なお、これらからなるビスマレイミド型ポリイミド系樹脂組成物よりなる層は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の多層プリント配線板は上述のA層とともに、SPSを40重量%以上含む組成物からなる1層もしくは2層以上で構成されるB層からなっている。
【0024】B層のSPS含有量が40%未満であると、耐熱性、高周波特性が失われる可能性があるので好ましくない。SPSの含量としては、さらには45重量%以上が好ましく、特に50重量%以上が好ましい。
【0025】SPSを40重量%以上含む組成物は、SPS以外に、SPS以外の熱可塑性樹脂、ゴム状弾性体、無機充填材、及び酸化防止剤、核剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、帯電防止剤等の添加剤を配合することができる。
【0026】SPSを40重量%以上含む組成物の構成材料は以下のものが挙げられる。
〔B−1〕SPS本発明で用いるSPSにおけるシンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素- 炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができるが、本発明に言うSPSとは、通常はラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、若しくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ( ハロゲン化スチレン) 、ポリ( ハロゲン化アルキルスチレン) 、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体およびこれらの混合物、あるいはこれらを主成分とする共重合体を指称する。なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)などがあり、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)などがある。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)など、またポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メチキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)などがある。
【0027】なお、これらのうち特に好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリープチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
【0028】そして、本発明のプリント配線板のB層に用いるSPSの分子量は、10万〜100万のものが好適に用いられる。このようなSPSは、例えば不活性炭化水素溶媒中または溶媒の不存在下に、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体( 上記スチレン系重合体に対応する単量体) を重合することにより製造することができる( 特開昭62―187708号公報) 。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については特開平1−46912号公報、これらの水素化重合体は特開平1−178505号公報記載の方法などにより得ることができる。なお、SPSは1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】〔B−2〕 SPS以外の熱可塑性樹脂SPS以外の熱可塑性樹脂としては、直鎖状高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ポリブテン、1,2−ポリブタジエン、4−メチルペンテン、環状ポリオレフィンをはじめとするポリオレフィン系樹脂、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂、AS樹脂をはじめとするポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6をはじめとするポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル、PPSまたはこれらを変性したもの等公知のものから任意に選択して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂の中でポリプロピレン、及びアタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂、AS樹脂をはじめとするポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル、フマル酸変性ポリフェニレンエーテル、マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルが特に好ましく用いられる。なお、これらの熱可塑性樹脂は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】〔B−3〕ゴム状弾性体本発明で用いるゴム状弾性体の具体例としては例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、またはエチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレン オクテン共重合体系エラストマー等のオレフィン系ゴム、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。このうち特に、SBR、SEB、SBS、SEBS、SIR、SEP、SIS、SEPS、コアシェルゴム、EPM、EPDM、エチレン オクテン共重合体系エラストマーまたはこれらを変性したゴムが好ましく用いられる。なお、これらのゴム状弾性体は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】〔B−4〕 無機充填材本発明で用いる無機充填材としては繊維状のものと、粒状、粉状のものがある。繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ウイスカー等が挙げられる。形状としてはクロス状、マット状、集束切断状、短繊維、フィラメント状、ウィスカー等があるが、集束切断状の場合、長さが0.05mm〜50mm、繊維径が5〜20μmのものが好ましい。一方、粒状、粉状充填材としては、例えばタルク、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、シリカ、マイカ、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、オキシサルフェーと、酸化スズ、アルミナ、カオリン、炭化ケイ素、金属粉末、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ等が挙げられる。
【0032】上記のような各種充填材の中でも、炭素繊維、炭酸カルシウム、及びガラス充填材、例えばガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスフィラメント、ガラスファイバー、ガラスロビング、ガラスマットが好ましく、これらの中でも特にガラス充填材が好ましく、ガラスファイバーが更に好ましい。
【0033】また、上述の充填材としては表面処理したものが好ましい。表面処理に用いられるカップリング剤は、充填材と樹脂との接着性を良好にするために用いられるものであり、いわゆるシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等、従来公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。中でもγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン、エポキシシラン、イソプロピルトリ(N−アミドエチル,アミノエチル)チタネートが好ましい。
【0034】また、上記のカップリング剤とともにガラス用フィルム形成性物質を併用することができる。このフィルム形成性物質には、特に制限はなく、例えばポリエステル系、ポリエーテル系、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、酢酸ビニル系等の重合体が挙げられる。なお、これらの無機充填材は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】〔B−5〕 酸化防止剤本発明で用いる酸化防止剤としてはリン系、フェノール系、イオウ系等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの酸化防止剤は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔B−6〕 核剤本発明で用いる核剤としてはアルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)をはじめとするカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウムをはじめとするリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等、公知のものから任意に選択して用いることができる。これら核剤についれは、市販品として、例えば旭デンカ社製のNA11やNA21、大日本インキ社製のPTBBA−AL等がある。なお、これらの核剤は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる
【0036】〔B−7〕 可塑剤本発明で用いる可塑剤としてはポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの可塑剤は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔B−8〕 離型剤本発明で用いる離型剤としてはポリエチレンワックス、シリコーンオイル、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸金属塩等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの離型剤は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔B−9〕 難燃剤、難燃助剤本発明で用いる難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化シンジオタクチックポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルをはじめとする臭素化ポリマー、臭素含有ジフェニルアルカン、臭素含有ジフェニルエーテルをはじめとする臭素化芳香族化合物等公知のものから任意に選択して用いることができる。また、難燃助剤としては三酸化アンチモンをはじめとしたアンチモン化合物、その他公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの難燃剤および難燃助剤は1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】次に、本発明のSPSを40重量%以上含む組成物を得るには、上記成分を常温で混合、あるいは溶融混練など様々な方法でブレンドすればよく、その方法は特に制限はされない。これらの混合 混練方法の中でも二軸押出機を用いた溶融混練が好ましく用いられる。二軸押出機を用いた溶融混練においては、270〜350℃での混練が好ましい。混練温度が270℃より低いと樹脂の粘度が高すぎるため、生産性が低くなる可能性があり好ましくなく、350℃を超えると樹脂が熱分解する可能性があるため好ましくない。
【0038】本発明の多層プリント配線板は、予めシ−トに形成されたA層の片面に、1層又は2層以上からなるB層を積層したものでも、該A層の両面に1層又は2層以上からなるB層を積層した(B層)−(A層)−(B層)でもよい。(B層)−(A層)−(B層)にすると高周波特性がさらに向上する点で(A層)−(B層)より優れている。
【0039】上記の多層プリント配線板の製造方法は、特に制限はないが、エポキシ系樹脂系組成物などのA層を熱硬化プレスにより作成した後、あらかじめ射出・押出し・紙すき成形法で作製しておいたSPS層(シート状)をプレス熱融着させる方法、あらかじめ作製しておいたA層をインサートし、直接射出成形によってB層を形成させる方法、耐熱性のある熱硬化性接着剤、エポキシ系接着剤を介してA層とB層を積層する方法などが挙げられる。
【0040】本発明の多層プリント配線板は、A層とB層の断面方向の総厚み比が200:1〜1:1、さらには100:1〜2:1であることが好ましい。A層とB層の断面方向の総厚み比が200:1を超えてB層が薄いと高周波特性が不十分になり、一方、A層が薄いと機械的強度が低く取扱が困難になって不都合である。
【0041】なお、各層の厚さは、A層は0.5〜2mm、B層は0.5mm以下、さらには100μm以下、特に10〜70μmにすることが好ましい。
【0042】
【実施例】本発明について、更に、実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例,比較例で用いた評価方法,原料は、以下の通りである。
〔評価方法〕
(1)曲げ強度測定方法ASTM D790に準拠して実施した。
(2)4GHzの誘電率測定方法ASTM D150に準拠して実施した。
(3)リフロー耐熱モデル試験方法プリント基板を温度250℃のオーブン中に20秒間入れ、外観を目視観察して耐熱性を評価した。
〔用いた原料〕
(1)シンジオタクチックポリスチレン■Mw=230,000,Mw/Mn=2.20(1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒とし、150℃でGPC法にて測定したポリスチレン換算値)
(2)ポリスチレン(GPPS)
出光石油化学製 HH30(3)ゴム弾性体■SEBSタイプエラストマー:シェル社製クレイトンG1651(4)ゴム弾性体■SEPSタイプエラストマー:クラレ社製セプトン2104(5)ゴム弾性体■エチレン オクテン共重合体系エラストマ−:デュポン・ダウエラストマー社製 ENGAGE8150(6)SPS以外の熱可塑性樹脂■製造例1と同様にして製造されたフマル酸変性ポリフェニレンエーテル(FAPPO)
(7)酸化防止剤■チバガイギー社製 Irganox1010(8)酸化防止剤■旭デンカ社製 PEP36(9)難燃剤■1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン:エチル社製SAYTEX8010(10)難燃助剤■三酸化アンチモン :日本精鉱社製 PATOX−M(11)ハロゲン捕捉剤■協和化学社製 DHT−4A
【0043】〔製造例1:フマル酸変性ポリフェニレンエーテルの製造〕ポリフェニレンエーテル(固有粘度0.45dL/g、クロロホルム中、25℃) 1kg、フマル酸30g、ラジカル発生剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン( 日本油脂、ノフマーBC) 20gをドライブレンドし、30mm二軸押出機を用いてスクリュー回転数200rpm、設定温度300℃で溶融混練を行った。この時樹脂温度は約331℃であった。ストランドを冷却後ペレット化しフマル酸変性ポリフェニレンエーテルを得た。変性率測定のため、得られた変性ポリフェニレンエーテル 1gをエチルベンゼンに溶解後、メタノールに再沈し、回収したポリマーをメタノールでソックスレー抽出し、乾燥後IRスペクトルのカルボニル吸収の強度および滴定により変性率を求めた。この時、変性率は1.45重量%であった。
〔製造例2〕シンジオタクチックポリスチレン■を90重量部、ゴム弾性体■を2重量部、ゴム弾性体■を2重量部、ゴム弾性体■を6重量部、SPS以外の熱可塑性樹脂■を2重量部、難燃剤■を23重量部、難燃助剤■を4重量部、ハロゲン捕捉剤■を1重量部、酸化防止剤■を0.1重量部、酸化防止剤■を0.1重量部をドライブレンドした後、二軸押出機を用いシリンダー温度290℃で溶融混練を行い、得られたストランドを水槽を通し冷却した後、ペレット化した。(SPS含有率69重量%)
得られたペレットを用い、30mm単軸押出機を用いてシリンダー温度290℃、ダイス温度300℃、ロール温度80℃で、T−ダイキャスト成形を行って、厚み100μmのフィルムを得た。
〔製造例3〕シンジオタクチックポリスチレン■を45重量部、ポリスチレン(GPPS)を55重量部、ゴム弾性体■を2重量部、ゴム弾性体■を2重量部、ゴム弾性体■を6重量部、SPS以外の熱可塑性樹脂■を2重量部、難燃剤■を23重量部、難燃助剤■を4重量部、ハロゲン捕捉剤■を1重量部、酸化防止剤■を0.1重量部、酸化防止剤■を0.1重量部をドライブレンドした後、二軸押出機を用いシリンダー温度290℃で溶融混練を行い、得られたストランドを水槽を通し冷却した後、ペレット化した。(SPS含有率32重量%)
得られたペレットを用い、30mm単軸押出機を用いてシリンダー温度290℃、ダイス温度300℃、ロール温度80℃で、T−ダイキャスト成形を行って、厚み100μmのフィルムを得た。
【0044】〔実施例1〕市販のガラスクロス−エポキシ基板、FR- 4(厚み1.0mm)をA層とし、その片面にエポキシ系接着剤を介して、B層として製造例2のフィルムを2層積層し、1.2mm厚みの基板を得た。A層は、1.0mm,B層は、0.2mmである。それを用いて、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例2〕B層として製造例2のフィルムをA層のFR−4の両面に1 層づつ積層し、1.2mm厚みの基板を得た以外は実施例1と同様にした。A層は、1.0mm、B層は各0.1mmである。結果を表1に示す。
【0045】〔比較例1〕A層としの市販のFR−4(ガラスクロス−エポキシ基板、厚み1.2mm)について上記評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例2〕B層として製造例2の材料を用い、特開平9−12746の実施例1に記載の方法で0.2mm厚みのプリプレグを作成し、該プリプレグをプレス方法(300℃)で6層積層し、1.2mm厚みのプリント基板を得た。それを用いて、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例3〕B層として製造例3のフィルムを用いた以外は実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】


【0047】
【発明の効果】本発明の多層プリント配線板は、誘電率が低いなど優れた高周波特性を有し、かつ、機械的強度、衝撃強度に優れたプリント配線板である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記に示すA層の片面又は両面に、下記に示すB層を積層した多層プリント配線板。
A層:エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和エステル系樹脂及びビスマレイミド型ポリイミド系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物からなる1層又は2層以上で構成される層B層:シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂を40重量%以上含む樹脂組成物からなる1層もしくは2層以上で構成される層
【請求項2】 A層とB層の断面方向の総厚み比が200:1〜1:1である請求項1に記載の多層プリント配線板。

【公開番号】特開2001−168536(P2001−168536A)
【公開日】平成13年6月22日(2001.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−345836
【出願日】平成11年12月6日(1999.12.6)
【出願人】(000183657)出光石油化学株式会社 (26)
【Fターム(参考)】