説明

多層プリント配線板

【課題】マイクロストリップライン及び(または)ストリップラインを備えた多層配線板のアートワーク設計を容易にする。
【解決手段】複数の導体パターン201〜203と複数の基準パターン301〜303とによりマイクロストリップラインML1〜ML3が構成された多層配線板において、導体パターン201〜203は、特性インピーダンスの如何に関わりなく、すべて同一の幅と同一の厚みとを有するように形成され、各導体パターンと対応する基準パターンとにより構成されるマイクロストリップラインML1〜ML3の特性インピーダンスを所定の値とするように、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応する基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚さが設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロストリップライン及び(または)ストリップラインを備えた多層配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波やミリ波を扱う高周波回路においては、例えば特許文献1に示されているように、電子部品を実装する配線板として、複数の誘電体誘電体層を積層した構造を有する多層基板に、マイクロストリップライン及び(または)ストリップラインを構成するように回路パターンを設けた多層配線板が用いられている。
【0003】
この種の多層配線板に設けられるマイクロストリップラインは、例えば、多層基板の積層方向の一端側の端面に形成されたマイクロストリップライン形成用導体パターンと、多層基板の層間または積層方向の他端側の端面に形成されてマイクロストリップライン形成用導体パターンに対向させられたマイクロストリップライン形成用基準パターンとにより構成される。一つの多層配線板にマイクロストリップラインが複数設けられる場合には、多層基板の積層方向の端面に複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンが形成され、これらの導体パターンにそれぞれ対応する複数のマイクロストリップライン形成用基準パターンが、多層基板の層間(内層)または積層方向の他の端面に形成される。
【0004】
また、ストリップラインは、多層基板の層間に形成されたストリップライン形成用導体パターンと、多層基板の層間または積層方向の端面に設けられて、ストリップライン形成用導体パターンを間にして多層基板の積層方向に対向させられた対をなす2つのストリップライン形成用基準パターンとにより構成される。一つの多層配線板に複数のストリップラインが設けられる場合には、多層基板の層間に複数のストリップライン形成用導体パターンが設けられるとともに、多層基板の層間または積層方向の端面に、これら複数のストリップライン形成用導体パターンにそれぞれ対応する複数対のストリップライン形成用基準パターンが設けられる。各対のストリップライン形成用基準パターンは、対応するストリップライン形成用導体パターンを間にして多層基板の積層方向に対向するように設けられ、各ストリップライン形成用導体パターンと対応する対のストリップライン形成用基準パターンとによりストリップラインが構成される。
【特許文献1】特開2002−57467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロストリップライン及びストリップラインを構成する回路パターンが設けられる多層配線板においては、各マイクロストリップライン及びストリップラインの特性インピーダンスを所望の値に設定する必要がある。マイクロストリップラインの特性インピーダンスは、マイクロストリップライン形成用導体パターンの幅及び厚さと、マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間の距離と、マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間に存在している誘電体の比誘電率との関数になる。
【0006】
同様に、ストリップラインの特性インピーダンスは、ストリップライン形成用導体パターンの幅及び厚さと、ストリップライン形成用導体パターンに対応する対のストリップライン形成用基準パターンの間に存在する誘電体層の厚さと、ストリップライン形成用導体パターンと対応するストリップライン形成用基準パターンの間に存在する誘電体の比誘電率との関数になる。
【0007】
このように、マイクロストリップライン及びストリップラインの特性インピーダンスを決める関数は多くの変数を有しているため、多層配線板に複数のマイクロストリップライン及び(または)ストリップラインを形成する場合に、そのアートワークの設計が面倒になるのを避けられなかった。
【0008】
またマイクロストリップラインを備えた従来の多層配線板では、マイクロストリップラインの特性インピーダンスに応じて、マイクロストリップライン形成用導体パターンの幅寸法を変えていたため、配線板を観察するだけで、各マイクロストリップラインの特性インピーダンスを推測することができ、第三者に回路を模倣され易いという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、マイクロストリップライン及び(または)ストリップラインを備えた多層配線板のアートワーク設計を容易にすることができるようにすることにある。
【0010】
本発明の他の目的は、マイクロストリップライン及び(または)ストリップラインを備えた多層配線板のアートワーク設計を容易にするとともに、その回路の模倣を困難にすることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の誘電体層を積層した構造を有する多層基板と、多層基板の積層方向の端面または層間に形成された複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンと、複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンにそれぞれ対応させて多層基板の層間または積層方向の端面に形成されて対応するマイクロストリップライン形成用導体パターンに対向させられた複数のマイクロストリップライン形成用基準パターンとを備えて、複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンと複数のマイクロストリップライン形成用基準パターンとにより、複数のマイクロストリップラインが構成され、少なくとも一つのマイクロストリップラインは他のマイクロストリップラインと異なる特性インピーダンスを有するように構成されている多層配線板を対象とする。
【0012】
本発明においては、多層基板の複数の誘電体層が、同一の比誘電率を有する誘電体材料により形成されて、複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンが、特性インピーダンスの如何に関わりなく、すべて同一の幅と同一の厚みとを有するように形成され、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとにより構成されるマイクロストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とするように、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚さが設定される。
【0013】
上記のように多層基板を構成する複数の誘電体層の比誘電率を同一とし、多層配線板に設けるマイクロストリップライン形成用導体パターンの幅を同一とし、厚さも一定として導体パターンを規格化すると、誘電体層の比誘電率と、導体パターンの幅及び厚さとを定数として扱って、特性インピーダンスを決定する関数の変数を、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚さだけとすることができるため、所望の特性インピーダンスを有するマイクロストリップラインを形成するためのアートワーク設計を容易にすることができる。
【0014】
また上記のように、すべてのマイクロストリップライン形成用導体パターンが同一の幅と同一の厚みとを有するようにしておくと、配線板を観察しただけでは。いかなる特性インピーダンスのマイクロストリップラインが形成されているのかを推測することができないため、回路を模倣され難いという利点が得られる。
【0015】
本発明はまた、複数の誘電体層を積層した構造を有する多層基板と、多層基板の層間に形成された複数のストリップライン形成用導体パターンと、複数のストリップライン形成用導体パターンにそれぞれ対応させて多層基板の層間または積層方向の端面に設けられて対応するストリップライン形成用導体パターンを間にして多層基板の積層方向に対向させられた複数対のストリップライン形成用基準パターンとを備えて、複数のストリップライン形成用導体パターンと複数対のストリップライン形成用基準パターンとにより複数のストリップラインが構成され、少なくとも一つのストリップラインは他のストリップラインと異なる特性インピーダンスを有している多層配線板を対象とする。
【0016】
この場合も、多層基板の複数の誘電体層は、同一の比誘電率を有する誘電体材料により形成される。複数のストリップライン形成用導体パターンが、特性インピーダンスの如何に関わりなく、すべて同一の幅と同一の厚みとを有するように形成され、各ストリップライン形成用導体パターンと対応する対のストリップライン形成用基準パターンとにより構成されるストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とするように、各対のストリップライン形成用導体パターンに対応する対のストリップライン形成用基準パターンの間に存在する誘電体層の厚さが設定される。
【0017】
更に本発明は、複数の誘電体層を積層した構造を有する多層基板と、多層基板の積層方向の端面または層間に形成された複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンと、複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンにそれぞれ対応させて多層基板の層間または積層方向の端面に形成されて対応するマイクロストリップライン形成用導体パターンに対向させられた複数のマイクロストリップライン形成用基準パターンとを備えて、複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンと複数のマイクロストリップライン形成用基準パターンとにより複数のマイクロストリップラインが構成されるとともに、多層基板の層間に形成された複数のストリップライン形成用導体パターンと、複数のストリップライン形成用導体パターンにそれぞれ対応させて多層基板の層間または積層方向の端面に設けられて対応するストリップライン形成用導体パターンを間にして多層基板の積層方向に対向させられた複数対のストリップライン形成用基準パターンとを備えて、複数のストリップライン形成用導体パターンと複数対のストリップライン形成用基準パターンとにより複数のストリップラインが構成され、少なくとも一つのマイクロストリップラインは他のマイクロストリップラインと異なる特性インピーダンスを有し、少なくとも一つのストリップラインは他のストリップラインと異なる特性インピーダンスを有するように構成されている多層配線板を対象とする。
【0018】
本発明においては、多層基板の複数の誘電体層が、同一の比誘電率を有する誘電体材料により形成されて、複数のマイクロストリップライン形成用導体パターン及び複数のストリップライン形成用導体パターンがすべて同一の幅と同一の厚みとを有するように形成され、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応する基準パターンとにより構成されるマイクロストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とするように、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚さが設定され、各ストリップライン形成用導体パターンと対応するストリップライン形成用基準パターンとにより構成されるストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とするように、各ストリップライン形成用導体パターンに対応する対のストリップライン形成用基準パターンの間に存在する誘電体層の厚さが設定される。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明では、多層基板の複数の誘電体層を同一の比誘電率を有する誘電体材料により形成するとともに、特性インピーダンスの如何に関わりなく、複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンに同一の幅及び同一の厚みを持たせて、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚さを設定するだけで、各マイクロストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とすることができるようにしたので、複数のマイクロストリップラインを有する多層配線板のアートワーク設計を容易にすることができる。
【0020】
本発明ではまた、多層基板の複数の誘電体層を同一の比誘電率を有する誘電体材料により形成するとともに、特性インピーダンスの如何に関わりなく、複数のストリップライン形成用導体パターンに同一の幅及び同一の厚みを持たせて、各ストリップライン形成用導体パターンに対応する対のストリップライン形成用基準パターンの間に存在する誘電体層の厚さを設定するだけで、各ストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とすることができるようにしたので、複数のストリップラインを有する多層配線板のアートワーク設計を容易にすることができる。
【0021】
また本発明によれば、すべてのマイクロストリップライン形成用導体パターンに同一の幅と同一の厚みとを持たせて、配線板を観察しただけではいかなる特性インピーダンスのマイクロストリップラインが設けられているのかを推測することができないようにしたため、回路を模倣され難いという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の第1の実施形態を示したもので、図1は斜視図、図2は縦断面図である。これらの図において、1は3層の誘電体層101、102及び103を積層した構造を有する多層基板である。本発明では、多層基板1を構成する誘電体層101、102及び103が比誘電率が等しい誘電体材料により構成されている。多層基板1の積層方向の一方の端面(多層基板の表面)には、多層基板1の長手方向に延びる3本の帯状のマイクロストリップライン形成用導体パターン201ないし203が形成されている。3本のマイクロストリップライン形成用導体パターン201ないし203にそれぞれ対応させて、多層基板1の層間または積層方向の端面に3つのマイクロストリップライン形成用基準パターン301ないし303が形成されて、これらの基準パターン301ないし303がそれぞれマイクロストリップライン形成用導体パターン201ないし203に対向させられている。
【0023】
図示の例では、第1層の誘電体層101と第2層の誘電体層102との間に導体パターン201に対応する基準パターン301が、また第2層の誘電体層102と第3層の誘電体層103との間に導体パターン202に対応する基準パターン302がそれぞれ形成され、これらの基準パターン301及び302の幅方向のほぼ中央に導体パターン201及び202がそれぞれ対向するように、基準パターン301及び302の位置と幅寸法とが設定されている。
【0024】
また多層基板1の他方の端面(裏面)に、導体パターン203に対応する基準パターン303が形成されている。図示の例では、基準パターン303がグランドパターン(アースパターン)となっていて、この基準パターン303が多層基板1の裏面のほぼ全体に亘るように設けられている。基準パターン301及び302は図示しないスルーホールを通して基準パターン303に接続され、基準パターン303がアース電位部に接続される。
【0025】
導体パターン202は、その途中で2つの部分202a及び202bに分断されていて、導体パターン202a及び202bの互いに対向する端部にそれぞれ電子部品を半田付けするためのランド202a1及び202b1が形成されている。ランド202a1及び202b1はそれぞれ導体パターン202a及び202bと同一の幅寸法と同一の厚み寸法とを有して、導体パターン202a及び202bからはみ出すことがないように設けられている。ランド202a1及び202b1には電子部品4の端子が半田5により接続されている。
【0026】
本実施形態においては、導体パターン201と基準パターン301とにより第1のマイクロストリップラインML1が、また導体パターン202と基準パターン302とにより第2のマイクロストリップラインML2がそれぞれ構成され、導体パターン203と基準パターン303とにより第3のマイクロストリップラインML3が構成されている。第1のマイクロストリップラインがML1ないし第3のマイクロストリップラインML3はそれぞれ異なる特性インピーダンスを持つように構成されている。
【0027】
本実施形態では、3つのマイクロストリップライン形成用導体パターン201ないし203が、すべて同一の幅と同一の厚みとを有するように形成され、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとにより構成されるマイクロストリップラインの特性インピーダンスを所定の値(所望の値)とするように、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚さが設定される。
【0028】
上記のように、すべての誘電体層の比誘電率を同じにするとともに、マイクロストリップライン形成用導体パターンの幅及び厚みを同じにして、マイクロストリップライン形成用導体パターンを規格化しておくと、マイクロストリップライン形成用導体パターンの幅及び厚さと、誘電体の比誘電率とを定数として扱い、特性インピーダンスを決定する関数の変数を、導体パターンと基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚さのみにすることができるため、アートワーク設計を簡単にすることができる。
【0029】
また上記のように構成すると、すべてのマイクロストリップライン形成用導体パターン201ないし203が同一の幅と同一の厚みとを有するため、外部から観察しただけでは、いかなる特性インピーダンスのマイクロストリップラインが設けられているのかを推測することができない。そのため、多層配線板に設けられている回路を容易に模倣することができないようにすることができる。
【0030】
図3は本発明の他の実施形態を示したものである。この例では、多層基板1が第1ないし第7の誘電体層101〜107からなっている。多層基板1の積層方向の一端1a側の端面(表面)にマイクロストリップライン形成用導体パターン201ないし203が形成され、第1の誘電体層101と第2の誘電体層102との間、第2の誘電体層102と第3の誘電体層103との間及び第5の誘電体層105と第6の誘電体層106との間にそれぞれ第1ないし第4の基準パターン301ないし304が形成されている。また多層基板1の積層方向の他端側の端面(裏面)に第5の基準パターン305が形成され、第6の誘電体層106と第7の誘電体層107との間、第4の誘電体層104と第5の誘電体層105との間及び第5の誘電体層105と第6の誘電体層106との間にそれぞれ第1のストリップライン形成用導体パターン401ないし第3のストリップライン形成用導体パターン403が形成されている。
【0031】
第1の基準パターン301及び第2の基準パターン302はそれぞれの幅方向のほぼ中央部が導体パターン201及び202に対向するように設けられている。第3の基準パターン303は、第2の基準パターン302に対向する部分と、第2の基準パターン302を越えて多層基板1の幅方向の他端1b側に延びる部分とを有し、第3の基準パターン303の第2の基準パターン302を越えて多層基板1の幅方向の他端1b側に延びる部分の幅方向のほぼ中央に導体パターン203が対向するように、第3の基準パターン303と導体パターン202との間の位置関係が設定されている。また第4の基準パターン304は多層基板1の幅方向の一端1a側から他端1b側に、第2の基準パターン302が設けられている部分まで延びるように設けられている。第5の基準パターン305は多層基板1の裏面全体に亘るように設けられている。
【0032】
図示の例では、第1のストリップライン形成用導体パターン401が、マイクロストリップライン形成用導体パターン201に相応する位置で第4の基準パターン304と第5の基準パターン305とに対向し、第2のストリップライン形成用導体パターン402が、マイクロストリップライン形成用導体パターン202に対応する位置で、第3の基準パターン303と第4の基準パターン304とに対向するように設けられている。またストリップライン形成用導体パターン403が、第3のマイクロストリップライン形成用導体パターン203に対応する位置で、第3の基準パターン303と第5の基準パターン305とに対向させられている。
【0033】
この例では、第1の基準パターン301ないし第3の基準パターン303がそれぞれマイクロストリップライン形成用導体パターン201ないし203に対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとなっていて、導体パターン201と基準パターン301、導体パターン202と基準パターン302及び導体パターン203と基準パターン303によりそれぞれマイクロストリップラインML1ないしML3が構成されている。
【0034】
また第4の基準パターン304及び第5の基準パターン305がストリップライン形成用導体パターン401に対応する1対のストリップライン形成用基準パターンとなっていて、ストリップライン形成用導体パターン401と第4の基準パターン304及び第5の基準パターン305とによりストリップラインSL1が構成されている。更に、第3の基準パターン303及び第4の基準パターン304がストリップライン形成用導体パターン402に対応する1対のストリップライン形成用基準パターンとなっていて、ストリップライン形成用導体パターン402と対の基準パターン303及び304とにより、ストリップラインSL2が構成されている。また第3の基準パターン303及び第5の基準パターン305がストリップライン形成用導体パターン403に対応する1対のストリップライン形成用基準パターンとなっていて、ストリップライン形成用導体パターン403と対の基準パターン303及び305とによりストリップラインSL3が構成されている。
【0035】
図示の例では、マイクロストリップライン形成用導体パターン202とストリップライン形成用導体パターン402との間が、基準パターン302及び303に接触しないように、両基準パターンに形成された孔302a及び303a内を貫通したスルーホール602により電気的に接続されている。また、第5の基準パターン305の導体パターン203に対応する位置に孔305aが設けられて、この孔305a内に位置させて、多層基板1の裏面に端子パターン703が形成され、マイクロストリップライン形成用導体パターン203とストリップライン形成用導体パターン403と端子パターン703とが、スルーホール603により電気的に接続されている。第3の基準パターン303のスルーホール603を貫通させる部分には、スルーホール603を逃がすための孔303bが形成されている。
【0036】
第5の基準パターン305はグランドパターンとなっていて、第1の基準パターン301ないし第4の基準パターン304が図示しないスルーホールを通して第5の基準パターン305に接続されている。
【0037】
本実施形態では、マイクロストリップライン形成用導体パターン201ないし203及びストリップライン形成用導体パターン401ないし403が同一の幅寸法と同一の厚み寸法とを有するように形成され、各マイクロストリップラインに所定の(所望の)特性インピーダンスを持たせるように、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚みが設定されている。
【0038】
同様に、各ストリップラインに所定の特性インピーダンスを持たせるように、各ストリップライン形成用導体パターンに対応する対のストリップライン形成用基準パターンの間に存在する誘電体層の厚みが設定されている。
【0039】
図3に示した実施形態において、誘電体層101ないし107の厚さは等しくてもよく、異なっていてもよい。また各マイクロストリップライン形成用導体パターンに対応する基準パターンは、各マイクロストリップライン形成用導体パターンに対向する部分が十分な面積を有するように設けられていればよく、各ストリップライン形成用導体パターンに対応する対の基準パターンは、各ストリップライン形成用導体パターンに対向する部分が十分な面積を有するように設けられていればよい。各ストリップライン形成用導体パターンと対応する対の基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚みは等しくてもよく、等しくなくてもよい。図3に示した例では、ストリップライン形成用導体パターン401とストリップライン形成用基準パターン(第5の基準パターン)305との間に存在する誘電体層107の厚みが、ストリップライン形成用導体パターン401とストリップライン形成用基準パターン(第4の基準パターン)304との間に存在する誘電体層106の厚みよりも薄く設定されている。この場合、ストリップラインSL1の特性インピーダンスは、誘電体層106の厚みと誘電体層107の厚みとの和(基準パターン304と305との間に存在する誘電体層の厚み)を調整することにより、所望の値に設定される。
【0040】
図示の例では、マイクロストリップライン形成用導体パターン201と基準パターン301との間に存在する誘電体層の厚さよりも、マイクロストリップライン形成用導体パターン202と基準パターン302との間に存在する誘電体層の厚さが厚く設定されて、マイクロストリップラインML2の特性インピーダンスがマイクロストリップラインML1の特性インピーダンスよりも大きく設定されている。またマイクロストリップライン形成用導体パターン202と基準パターン302との間に存在する誘電体層の厚さよりもマイクロストリップライン形成用導体パターン203と基準パターン303との間に存在する誘電体層の厚さが厚く設定されていて、マイクロストリップラインML3の特性インピーダンスがマイクロストリップラインML2の特性インピーダンスよりも大きく設定されている。
【0041】
またストリップラインSL1の導体パターン401に対応する対の基準パターン304及び305の間に存在する誘電体層の厚さが、ストリップラインSL2の導体パターン402に対応する対の基準パターン303及び304の間に存在する誘電体層の厚さよりも薄く設定されていて、ストリップラインSL1がストリップラインSL2よりも小さい特性インピーダンスを持つように構成されている。更に、ストリップラインSL3の導体パターン403に対応する対の基準パターン303及び305の間に存在する誘電体層の厚さが,ストリップラインSL2の導体パターン402に対応する対の基準パターン303及び304の間に存在する誘電体層の厚さよりも厚く設定されていて、ストリップラインSL3がストリップラインSL2よりも大きい特性インピーダンスを持つように構成されている。
【0042】
図3に示した実施形態では、マイクロストリップライン形成用導体パターン及びストリップライン形成用導体パターンが共に同一の幅寸法と同一の厚み寸法とを有するようにしたが、マイクロストリップライン形成用導体パターンの幅寸法及び厚み寸法と、ストリップライン形成用導体パターンの幅寸法及び厚み寸法とを異ならせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を概略的に示した斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の構成を概略的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 多層基板
101〜107 多層基板を構成する誘電体層
201ないし203 マイクロストリップライン形成用導体パターン
301ないし305 基準パターン
ML1ないしML3 マイクロストリップライン
SL1ないしSL3 ストリップライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層を積層した構造を有する多層基板と、前記多層基板の積層方向の端面または層間に形成された複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンと、前記複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンにそれぞれ対応させて前記多層基板の層間または積層方向の端面に形成されて対応するマイクロストリップライン形成用導体パターンに対向させられた複数のマイクロストリップライン形成用基準パターンとを備えて、前記複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンと複数のマイクロストリップライン形成用基準パターンとにより複数のマイクロストリップラインが構成され、少なくとも一つのマイクロストリップラインは他のマイクロストリップラインと異なる特性インピーダンスを有している多層配線板において、
前記複数の誘電体層は、同一の比誘電率を有する誘電材料からなり、
前記複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンは、特性インピーダンスの如何に関わりなく、すべて同一の幅と同一の厚みとを有するように形成され、
各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとにより構成されるマイクロストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とするように、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚さが設定されていること、
を特徴とする多層配線板。
【請求項2】
複数の誘電体層を積層した構造を有する多層基板と、前記多層基板の層間に形成された複数のストリップライン形成用導体パターンと、前記複数のストリップライン形成用導体パターンにそれぞれ対応させて前記多層基板の層間または積層方向の端面に設けられて対応するストリップライン形成用導体パターンを間にして前記多層基板の積層方向に対向させられた複数対のストリップライン形成用基準パターンとを備えて、前記複数のストリップライン形成用導体パターンと複数対のストリップライン形成用基準パターンとにより複数のストリップラインが構成され、少なくとも一つのストリップラインは他のストリップラインと異なる特性インピーダンスを有している多層配線板において、
前記複数の誘電体層は、同一の比誘電率を有する誘電体材料からなり、
前記複数のストリップライン形成用導体パターンは、特性インピーダンスの如何に関わりなく、すべて同一の幅と同一の厚みとを有するように形成され、
各ストリップライン形成用導体パターンと対応するストリップライン形成用基準パターンとにより構成されるストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とするように、各対のストリップライン形成用基準パターンの間に存在する誘電体層の厚さが設定されていること、
を特徴とする多層配線板。
【請求項3】
複数の誘電体誘電体層を積層した構造を有する多層基板と、前記多層基板の積層方向の端面または層間に形成された複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンと、前記複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンにそれぞれ対応させて前記多層基板の層間または積層方向の端面に形成されて対応するマイクロストリップライン形成用導体パターンに対向させられた複数のマイクロストリップライン形成用基準パターンとを備えて、前記複数のマイクロストリップライン形成用導体パターンと複数のマイクロストリップライン形成用基準パターンとにより複数のマイクロストリップラインが構成されるとともに、前記多層基板の層間に形成された複数のストリップライン形成用導体パターンと、前記複数のストリップライン形成用導体パターンにそれぞれ対応させて前記多層基板の層間または積層方向の端面に設けられて対応するストリップライン形成用導体パターンを間にして前記多層基板の積層方向に対向させられた複数対のストリップライン形成用基準パターンとを備えて、前記複数のストリップライン形成用導体パターンと複数対のストリップライン形成用基準パターンとにより複数のストリップラインが構成され、少なくとも一つのマイクロストリップラインは他のマイクロストリップラインと異なる特性インピーダンスを有し、少なくとも一つのストリップラインは他のストリップラインと異なる特性インピーダンスを有するように構成されている多層配線板において、
前記複数の誘電体層は、同一の比誘電率を有する誘電体材料からなり、
前記複数のマイクロストリップライン形成用導体パターン及び前記複数のストリップライン形成用導体パターンは、特性インピーダンスの如何に関わりなく、すべて同一の幅と同一の厚みとを有するように形成され、
各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応する基準パターンとにより構成されるマイクロストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とするように、各マイクロストリップライン形成用導体パターンと対応するマイクロストリップライン形成用基準パターンとの間に存在する誘電体層の厚さが設定され、
各ストリップライン形成用導体パターンと対応するストリップライン形成用基準パターンとにより構成されるストリップラインの特性インピーダンスを所定の値とするように、各ストリップライン形成用導体パターンに対応する対のストリップライン形成用基準パターンの間に存在する誘電体層の厚さが設定されていること、
を特徴とする多層配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−135248(P2009−135248A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309727(P2007−309727)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】