説明

多層共押出し管

約240℃〜280℃の溶融温度を有する第1の半芳香族半結晶ポリアミドおよび熱安定剤を有する外側層と、100℃以上のガラス転移を有する第2の半芳香族半結晶ポリアミドを有する内側層とを有する多層共押出し管が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半芳香族半結晶ポリアミドの2つ以上の層を有する多層共押出し管に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、その機械的特性および耐化学性のために、多くの厳しい用途に用いるのに魅力的な材料である。これらの用途の多くが高温での使用を伴う。例えば、ダクト、ファンおよびファンシュラウド、マニホルド、管等の自動車エンジン室に用いる構成要素は、高温での操作を必要とする。これらの用途の全てにおいて、構造および構成要素は、高温で、剛性、強度および耐クリープ性等のそれらの機械的特性を保つのが望ましい。
【0003】
半結晶ポリマーの特性の温度による変化は、そのガラス転移温度に支配される。これが、分子がガラス状態からゴム状態へ転移するときのポリマーの分子構造の温度特性である。ガラス状態のポリマーが呈す剛性および強度等の機械的特性は、概して、ゴム状態におけるものよりも非常に高い。
【0004】
高温で、ポリマー部分の熱酸化分解速度は速く、これによって、機械的特性が速い速度で失われる。分解によって、空気に露出される表面は全て表面脆化が生じる。表面脆化は、管およびパイプの物理的特性に深刻な影響を与える。外部湾曲および屈曲荷重は、典型的に、表面で高い応力集中を生じるからである。
【0005】
ポリアミドの酸化分解を阻止するための一般的な方法は、ポリマーマトリックス全体に分散した熱安定剤を低レベルで用いるものである。ポリアミドに用いる熱酸化安定剤は、概して、次の3つのグループに分類される。(i)芳香族アミンをベースとする有機安定剤、(ii)リンベースの化合物と組み合わせることもあるヒンダードフェノールをベースとする有機安定剤ならびに(iii)銅およびハロゲン化合物をベースとする無機安定剤。有機安定剤は、揮発または分解する傾向があるため、300℃に近い、またはそれ以上の温度で処理する必要のあるポリアミドへ組み込むのは不適であることが多い。銅をベースとする無機安定剤もまた、こうした高温では分解反応につながるため、不適である。ポリマーメルトを周囲条件に露出することを伴う押出し、ブロー成形、鋳造、フィルム成形等のプロセスでは特に当てはまる。
【0006】
米国特許第5,219,003号明細書には、自動車エンジン燃料を搬送するのに好適で、少なくとも2つの相互に相溶性のあるポリアミドでできた3つの層を含む、低温耐衝撃性のある管が開示されている。内側および外側層は、衝撃改質剤を含有し、中間層は、実質的になにも含有していない。
【0007】
米国特許第7,122,255号明細書には、脂肪族および半芳香族ポリアミドを含み、高温で、長期にわたってその機械的特性をより良好に保つことができる少なくとも3つの層を含む多層ポリアミド複合体物品が開示されている。脂肪族ポリアミドを含む層は、任意選択により、酸化安定剤を含有していてもよい。物品は、熱交換器に組み込まれた管の形態であってもよい。
【0008】
高使用温度での機械的特性の保持の改善と、熱分解に対する安定性を同時に与えるポリアミドで製造された管が必要とされている。さらに、管の厚さを貫いた組成および物理的特性に変化のある管は、共押出し処理に有用かつ利用可能となり得る。しかしながら、共押出しプロセスにおいて、大幅に異なる熱特性を有する様々なポリマー組成物に必要とされる熱処理における変化は、大きな製造上の問題につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、複数のポリアミドの層を含む多層共押出し管およびこれらの物品を製造する方法を提供して、一般的に入手可能な熱安定剤のポリアミドへの組み込み、高使用温度での管の機械的特性の保持および共押出し管の製造の課題に関連する問題に同時に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書には、
A)第1の半芳香族半結晶ポリアミドおよび銅熱安定剤を含む第1のポリマー組成物を含む外側層であって、前記第1の半芳香族半結晶ポリアミドが
a)(i)8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および6〜12個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン
からなる群から選択されるモノマーから誘導される少なくとも1つの繰り返し単位と、
b)(ii)10〜14個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸および6〜12個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン、ならびに
(iii)6〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つのラクタムおよび/またはアミノカルボン酸
からなる群の1つ以上から選択されるモノマーから誘導される少なくとも1つの繰り返し単位と
から実質的になる
外側層と、
B)第2の半芳香族半結晶ポリアミドを含む第2のポリマー組成物を含む内側層と
を含む多層共押出し管であって、
前記第1の半芳香族半結晶ポリアミドは、約240℃〜280℃の溶融温度を有し、前記第2の半芳香族半結晶ポリアミドは、ISO−6721−3法を用いた動的機械分析により測定すると、100℃以上のガラス転移温度を有する多層共押出し管が開示され、請求されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に規定された多層管の外側層は、第1の半芳香族半結晶ポリアミドと銅熱安定剤を含む第1のポリマー組成物を含む。本発明に有用な第1の半芳香族半結晶ポリアミドは、芳香族基を含有するジカルボン酸モノマーから誘導される1つ以上のコポリマー、ターポリマーまたは高級ポリマーである。芳香族基を含有するモノマーとしては、テレフタル酸およびその誘導体ならびにイソフタル酸およびその誘導体が例示される。好ましくは、第1の半芳香族半結晶ポリアミドを製造するのに用いるジカルボン酸モノマーの約40〜約80モルパーセントが、芳香族基を含有するモノマーであり、より好ましくは、モノマーの約50〜約80モルパーセントが、芳香族基を含有する。第1の半芳香族半結晶ポリアミドを製造するのに用いる残りのジカルボン酸モノマーは、デカン二酸、ドデカン二酸およびテトラデカン二酸等の10〜14個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族ジカルボン酸から選択される。第1の半芳香族半結晶を製造するのに有用なジアミンは、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカンをはじめとする6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンである。第1の半芳香族半結晶ポリアミドを製造するのに用いるその他の繰り返し単位は、11−アミノドデカン酸、カプロラクタムおよびラウロラクタム等の1つ以上のラクタムまたはアミノ酸から選択される。
【0012】
第1の半芳香族半結晶ポリアミドは、約240℃〜280℃、好ましくは、約250℃〜280℃の溶融温度を有する。本明細書で定義した溶融温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の走査速度(窒素下)で求めたポリアミドの融点である。融点は、DSCの第1の加熱サイクルにおける融解転移の最大吸熱点と定義される。
【0013】
第1の半芳香族半結晶ポリアミドは、好ましくは、少なくとも約40μ当量/gのアミン末端、より好ましくは、少なくとも約50μ当量/g、さらに好ましくは、少なくとも約60μ当量/gのアミン末端を有する。アミン末端は、フェノール/メタノール/水混合物(容量で50:25:25)中ポリアミドの2パーセント溶液を、0.1Nの塩酸で滴定することにより求めてもよい。終点は、電位差滴定または電気伝導度で求めてもよい。(Kohan,M.I.Ed.,Nylon Plastics Handbook,Hanser:Munich,1995;p.79およびWaltz,J.E.;Taylor,G.B.Anal.Chem.,1947,19,448−50を参照のこと)。
【0014】
外側層の半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸総含量を基準として、60〜約80モル%のテレフタル酸含量を有する、デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンデカンジアミドおよびデカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミドからなる群から選択されるグループIのポリアミドと、酸繰り返し単位の合計を基準として、50〜約80モル%のテレフタル酸含量を有する、ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンデカンジアミド、ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンドデカンジアミド、ノナメチレンテレフタルアミド/11−アミノウンデカンアミド(PA9T/11)、ノナメチレンテレフタルアミド/ラウリルラクタム、デカメチレンテレフタルアミド/−アミノウンデカンアミド(PA10T/11)およびデカメチレンテレフタルアミド/ラウリルラクタムからなる群から選択されるグループIIのポリアミドとからなる群から選択してもよい。グループIIのポリアミドでいう「酸繰り返し単位の合計」とは、テレフタル酸、その他脂肪族二酸およびアミノ−カルボン酸をベースとする繰り返し単位と、ポリアミド中のラクタム繰り返し単位の合計を指す。
【0015】
多層管の内側層は、第2の半芳香族半結晶ポリアミドを含む第2のポリマー組成物を含む。本発明において有用な第2の半芳香族半結晶ポリアミドは、上に開示したとおり、芳香族基を含有するジカルボン酸モノマーから誘導される1つ以上のホモポリマー、コポリマー、ターポリマーまたは高級ポリマーである。好ましくは、第2の半芳香族半結晶ポリアミドを製造するのに用いるジカルボン酸モノマーの約70〜約100モルパーセントが、芳香族基を含有するモノマーであり、より好ましくは、ジカルボン酸モノマーの約80〜約100モルパーセントが、芳香族基を含有する。第2の半芳香族半結晶ポリアミドを製造するのに用いる残りのジカルボン酸モノマーは、アジピン酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸およびテトラデカン二酸等の6〜14個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族ジカルボン酸から選択される。第2の半芳香族半結晶ポリアミドを製造するのに有用なジアミンは、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカンおよび1,12−ジアミノドデカンをはじめとする6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンである。第2の半芳香族半結晶ポリアミドを製造するのに用いるその他の繰り返し単位は、11−アミノドデカン酸、カプロラクタムおよびラウロラクタム等の1つ以上のラクタムまたはアミノ酸から選択される。
【0016】
第2の半芳香族半結晶ポリアミドは、
c)(iv)8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および6〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン
からなる群から選択されるモノマーから誘導される少なくとも1つの繰り返し単位と、任意選択により
d)(v)6〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および6〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミンおよび
(vi)6〜20個の炭素原子を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸
からなる群から選択されるモノマーから誘導される1つ以上の繰り返し単位と
から実質的になってもよい。
【0017】
第2の半芳香族半結晶ポリアミドは、ISO−6721−3法を用いた動的機械分析により測定すると、100℃以上、好ましくは、125℃以上のガラス転移温度を有する。ガラス転移は、タンデルタ曲線の頂点で測定される。
【0018】
様々な実施形態において、第2の半芳香族半結晶ポリアミドは、270℃、280℃、290℃以上、300℃以上の溶融温度を有する。溶融温度は、上に開示したとおり、DSCにより測定される。
【0019】
内側層の半芳香族ポリアミドは、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6、T/D、T)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6、T/6、I)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6、6/6、T/6、I)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(カプロラクタム)(ポリアミド6、T/6)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9、T)およびポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10、T)からなる群から選択してもよい。
【0020】
内側層に対する熱要件に適合する有用な第2の半芳香族半結晶ポリアミドの選択を表1に示す。当業者であれば、Tgの測定は、やや不正確なプロセスであるため、表1に示した数は概算であり、例示のために与えられていることが容易に分かるであろう。
【0021】
【表1】

【0022】
以下の略記を表1では用いてある。
HMD ヘキサメチレンジアミン
2−MPMD 2−メチル−1,5−ペンタンジアミン
TPA テレフタル酸
AA アジピン酸
DMD デカメチレンジアミン
カプロ ε−カプロラクタム
DDA デカン二酸
IPA イソフタル酸
6T HMDおよびTPAから形成されたポリマー分子単位
DT 2−MPMDおよびTPAから形成されたポリマー分子単位
66 HMDおよびAAから形成されたポリマー分子単位
10T DMDおよびTPAから形成されたポリマー分子単位
9T 1,9−ジアミノノナンおよびTPAから形成されたポリマー分子単位、
6 ε−カプロラクタムから形成されたポリマー分子単位
【0023】
内側層用の半芳香族ポリアミドは、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6、T/D、T)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6、T/6、I)からなる群から選択してもよい。好ましい実施形態において、内側層用の第2の半芳香族半結晶ポリアミドは、少なくとも1つの脂肪族ジアミン(iv)が6個の炭素原子を有する繰り返し単位(c)から実質的になる。
【0024】
内側層用の第2のポリマー組成物は、125℃で測定したとき、800MPaを超える、好ましくは、1000MPaを超える、より好ましくは、1200MPaを超える引張弾性率を有していてもよい。本明細書で定義される引張弾性率は、ISO527−2/1B/1法により求められる。曲げ弾性率を用いて、内側層の剛性を定義することができる。曲げ弾性率は、典型的に、引張弾性率より約10〜25%低い値である。このように、1000MPaの引張弾性率は、典型的に、約750〜900MPaの曲げ弾性率に対応する。あるいは、曲げ弾性率は、ISO178−75法を用いて直接測定することができる。
【0025】
内側層用の好ましい半芳香族ポリアミドは、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6、T/D、T)である。このポリアミドは、E.I.du Pont de Neumours(Wilmington,DE)より入手可能なZytel(登録商標)HTN501として市販されている。
【0026】
外側層に用いる第1のポリマー組成物は、銅熱安定剤を含む。好ましくは、銅熱安定剤は、第1のポリマー組成物の総重量を基準として、約0.1〜約1.0重量パーセントのCu(I)、Cu(II)またはこれらの混合物から選択される銅種、好ましくは、約0.3〜約1.0重量パーセントの銅種を含む。銅種の上記の重量パーセント範囲は、銅種のみの重量を含み、対イオン、例えば、ハロゲン化物、酢酸、酸化物等の重量を含むものではない。対イオン重量は、第1のポリマー組成物の合計重量の計算に含まれる。一実施形態において、銅種は、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、フッ化銅、チオシアン酸銅、硝酸銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、カプリン酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅、アセチルアセトン酸銅および酸化銅からなる群から選択される。銅種は、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅およびフッ化銅から選択されるハロゲン化銅であってもよい。好ましい銅種は、ヨウ化銅である。
【0027】
外側層に用いる第1のポリマー組成物は、約0.1〜約1.0重量パーセントのLiI、NaI、KI、MgI2、KBrおよびCaI2から選択される金属ハロゲン化物塩をさらに含んでいてもよい。好ましい金属ハロゲン化物は、KIまたはKBrである。
【0028】
外側層に用いる第1のポリマー組成物はまた、溶融化合等の従来の組み込み手段により、できる限り均一に、ポリアミドの体積全体に分散された他の熱安定剤を任意選択により含有していてもよい。これらのポリアミドの低い融点および対応した低溶融処理温度によって、それ自体が過剰に分解または揮発しない、組み込み工程中または管の製造に必要な後の処理中に、ポリアミドの過剰の分解を生じないようにして、熱安定剤を組み込むことができる。
【0029】
用いてもよい銅熱安定剤以外の熱安定剤は、GachterおよびMuller編Plastics Additives Handbookに記載されている。適切な熱安定剤としては、約0.5〜2重量パーセントの充填量で好ましくは用いられるN,N’−ジナフチル−p−フェニレンジアミンまたはN−フェニル−N’−シクロヘキシル−p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン、および0.3〜2重量パーセントの充填量で好ましくは用いられるN、N’−ヘキサメチレン−ビス−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド等のヒンダードフェノールが挙げられる。
【0030】
内側層用の第2の半芳香族半結晶ポリアミドは、高温でそれらの物理的特性を維持する高融点およびガラス転移温度を有する。しかしながら、高融点は、高処理温度を必要とし、銅熱安定剤を用いると、典型的に、ポリアミド物理的特性が過度に低下する。内側層に用いる第2のポリマー組成物は、好ましくは、Cu熱安定剤を含有しないのが好ましい。原子吸光分析により求める分析が、100ppm未満の銅種を示すとき、第2のポリマー組成物は、Cu熱安定剤を含有しないと考えられる。
【0031】
ポリアミド樹脂の衝撃強度または靭性の改善については長いこと関心がもたれてきた。ポリアミド成形物品に影響する粉砕または脆性破壊に抗することは、いずれの成形物品にとっても望ましい特徴である。脆性的(延性的でなく)に破壊の影響を与えるという傾向がいくらかでもあると、かかる物品の有用性が大いに限定される。延性材料の破壊には、大量の近接する材料で引裂きがより多くなされるという特徴があり、分子転位のほとんどない鋭い凹凸のない破壊よりも亀裂や引裂き端部が生じる。良好な延性を有する樹脂は、衝撃による亀裂の伝播に対して抵抗性がある。
【0032】
このように、外側層に用いる第1のポリマー組成物および内側層に用いる第2のポリマー組成物中の好ましい任意の成分は、ポリマー強化剤である。ポリマー強化剤の一種は、ポリマー、典型的には、必ずしもエラストマーでないが、ポリアミド(および、任意選択により、存在するその他のポリマー)と反応し得る官能基に付加して、強化していないポリアミドに対して改善された衝撃強度を備えた化合多相樹脂を生成するものである。ポリアミドと反応し得る官能基としては、カルボキシル(−COOH)、金属中和カルボキシル、アミン、無水物、エポキシおよび臭素がある。ポリアミドには、通常、カルボキシル(−COOH)およびアミン基が存在するため、これらの官能基は、通常、カルボキシルおよび/またはアミン基と反応し得る。かかる官能基は、通常、小分子を既に存在するポリマーにグラフト化するか、またはポリマー強化分子が共重合により生成されるときは、所望の官能基を含有するモノマーを共重合することにより、ポリマー強化剤へ「付加」する。グラフト化の一例を挙げると、無水マレイン酸を、遊離基グラフト化技術を用いて、炭化水素ゴムへグラフト化してもよい。得られるグラフト化ポリマーは、無水カルボン酸および/またはそれに付加したカルボキシル基を有する。
【0033】
様々な添加剤がポリアミド樹脂に添加されて、強度および延性が改善されてきた。例えば、1979年11月13日発行のEpsteinによる米国特許第4,174,358号明細書には、ポリアミドに接合する選択したランダムコポリマーを添加することにより、衝撃強度および延性を改善することが記載されている。1990年5月12日発行のEpsteinによる米国特許第5,112,908号明細書には、ポリアミドのための特定のポリマー強化剤において、ポリアミドとの接合を促進する部位(「グラフト部位」)は、好ましくは金属中和カルボキシル、近接カルボキシル(すなわち、金属中和カルボキシルモノマー単位に近接するカルボン酸モノマー単位)、無水物またはエポキシ官能基として存在するであろうが、スルホン酸またはアミン等の他の官能部位も有効となり得ることが教示されている。これらの部位は、必要なグラフト化を行う量で存在するであろう。
【0034】
好ましいポリマー強化剤は、エチレン、プロピレン、1,4−ヘキサジエン、および、任意選択により、ノルボルナジエンのコポリマーであり、前記コポリマーは、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、エステルのアルキル基が1〜3個の炭素原子を有する前記酸のモノアルキルエステルからなる部類から選ばれる不飽和モノマーにグラフト化している。例えば、かかるモノマーの1つは、Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)から入手可能なTRX301である。
【0035】
他の種類のポリマー強化剤は、特定の種類のイオン基を含有するイオノマーである。本明細書で用いる「イオノマー」という用語は、ポリマー鎖に付加した無機塩基を備えたポリマーのことを指す(Encyclopedia of Polymer Science and Technology,2nd ed.,H.F.Mark and J.I.Kroschwitz eds.,vol.8,pp.393−39)。ポリアミド強化剤として作用するイオノマーは、ポリアミドと必ずしも反応しないイオン基を含有するが、ポリアミドメルト中のイオン(例えば、リチウム、亜鉛、マグネシウムおよびマンガンイオン)の溶解度に起因して、これらのイオン基とのポリアミドの相溶性により強化される。この種類の好ましいポリマー強化剤は、式RCH=CH2を有するアルファ−オレフィンから誘導される単位のイオノマーであり、式中、RはHまたは1〜8個の炭素原子を有するアルキルであり、単位の0.2〜25モルパーセントが、アルファ、ベータ−エチレン化不飽和モノ−またはジカルボン酸から誘導され、前記単位の酸基の少なくとも10%が、1〜3を含む価数の金属イオンにより中和されている。好ましくは、イオノマーは、Li+、Zn+2、Mg+2および/またはMn+2等の金属イオンにより少なくとも10%中和された、エチレンおよびアクリルまたはメタクリル酸のコポリマーであろう。例えば、かかるポリマーの1つは、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)より入手可能なDuPont(商標)Surlyn(登録商標)樹脂シリーズである。
【0036】
上述したポリマー強化剤に加えて、2つのハロゲン化エラストマー、すなわち、ハロゲン化イソブチレン−イソプレンコポリマーおよび臭化ポリ(イソブチレン−コ−4−メチルスチレン)が、ポリアミドの有効な強化剤として認識されている。後者は、Exxon Mobil Chemical(Houston,Texas,USA)よりExxpro(商標)ポリマーとして市販されている。ポリアミドへの接合は、そのベンジル臭素と、ポリアミドアミン末端基またはアミド基との反応によると考えられている[Li,D.;Yee,A.F.;Powers,K.W.;Wang,H.C.;Yu,T.C.,Polymer,34,4471−(1993)]。
【0037】
第1のポリマー組成物は、第1のポリマー組成物の総重量を基準として、約2〜約50重量パーセントのポリマー強化剤をさらに含んでいてもよい。他の実施形態において、第1のポリマー組成物は、10〜50重量パーセント、10〜約40重量パーセント、および10〜約30重量パーセントのポリマー強化剤を含んでいてもよい。
【0038】
第2のポリマー組成物は、第2のポリマー組成物の総重量を基準として、約2〜約50重量パーセントのポリマー強化剤をさらに含んでいてもよい。他の実施形態において、第2のポリマー組成物は、10〜50重量パーセント、10〜約40重量パーセント、および10〜約30重量パーセントのポリマー強化剤を含んでいてもよい。
【0039】
第1のポリマー組成物および第2のポリマー組成物は、第1のポリマー組成物の総重量を基準として、約2〜約50重量パーセントのポリマー強化剤を両方含んでいてもよい。他の実施形態において、第1および第2のポリマー組成物は、10〜50重量パーセント、10〜約40重量パーセント、および10〜約30重量パーセントのポリマー強化剤を含んでいてもよい。
【0040】
ポリマー強化剤は2つ以上のポリマーの混合物を含んでいてもよく、そのうち少なくとも1つは、上述した反応性官能基またはイオン基を含有していなければならない。その他は、かかる官能基またはイオン基を含有していてもいなくてもよい。例えば、本明細書に記載した組成物に用いる好ましいポリマー強化剤は、無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン/プロピレン/ヘキサジエンターポリマーおよびDow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)より入手可能な無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン/1−オクテンコポリマーであるEngage(登録商標)8180等のエラストマーポリエチレンの混合物を含む。
【0041】
第1および/または第2のポリマー組成物は、任意選択により、潤滑剤、流動性改良剤、銅熱安定剤以外の熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料およびUV安定剤等からなる群から選択される0〜20重量パーセントの1つ以上の有機添加剤を、それらが、共押出し管の物理的特性または表面特性に悪影響を及ぼさない限りは、含んでいてもよい。
【0042】
本明細書に記載した第1および/または第2のポリマー組成物は、典型的な溶融混合技術により製造することができる。例えば、成分は、単軸または二軸押出し機またはニーダーに添加して、通常のやり方で混合してもよい。材料混合後、それらは、押出し機に供給するのに好適なペレットまたはその他粒子へと形成(切断)してもよい。銅種、フィラー、可塑剤および潤滑剤(離型剤)等の成分のいくつかを押出し機の1つ以上の下流点に添加して、フィラー等の固体の磨滅を減じ、かつ/または分散を改善し、かつ/または比較的熱に不安定な成分の熱履歴を減じ、かつ/または揮発性成分の蒸発による損失を減じてもよい。
【0043】
本発明はまた、多層共押出し管の製造方法も提供する。多層共押出しプロセスにおいて、個別の押出し機を用いて、各種のポリアミドを押出す。押出し機の温度設定およびその他処理条件は、押出しているポリアミドにそれらが適切なものとなるように調整される。これによって、高融点ポリアミドの、好適な温度での押出しを可能としながら、押出し工程中、低融点ポリアミドが通常の処理温度より高い温度に露出されるのが排除される。
【0044】
押出しストリームからの別個のメルトは、適正に設計されたダイで一緒に組み合わされ、所望の多層配置で配置される。内側層に用いる半芳香族ポリアミドに必要な高処理温度でダイを維持する必要があるだけである。ダイにおける滞留時間が非常に短いため、低融点安定化ポリアミドにおける望ましくない分解の影響が大幅に小さくなる。ダイは、様々な形状での多層押出し物を与えるように設計することができる。押出し物は、冷却または急冷タンクで固化することができる。
【0045】
必要に応じて、高温での物理的特性の保持の程度を最適化するには、物品にインラインまたは別個のアニール工程を施すことにより、内側層の結晶化度を増大してもよい。アニール工程は、物品を、内側層のポリアミド組成物のガラス転移温度よりやや高い温度まで、短く再加熱することを含むことができ、必要であれば、酸素を含まない環境で行うことができる。
【0046】
本発明は、本明細書に記載した実施例および比較例を参照するとよく理解できるであろう。
【実施例】
【0047】
方法
動的機械分析
ガラス転移(Tg)は、ISO−6721−3法を用いて、METRAVIB VA4000動的機械分析器(Lyon,France)を用いて求めた。Tgは、タンデルタ曲線の頂点で測定された。
【0048】
示差走査熱量計(DSC)
「標準モード」で操作される示差走査熱量計、TA Instruments Q1000 MDSC(変調DSC)を用いて、ポリアミド樹脂の融点を求めた。融点は、10℃/分の走査速度を用いて、溶融吸熱の頂点で測定した。
【0049】
静水破壊圧力
手動操作送水ポンプを備えたBarbee破壊圧力測定機器(Barbee,Inc.(Chula Vista,CA))を測定に用いた。管の破損する最大圧力を、破壊圧力として記録した。
【0050】
23℃破壊試験については、長さ30cmの管片の一端を、まず、他端は開いたままに保って、Swagelok(登録商標)取付け具を用いて、ポンプホースの放出側に取り付けた。揚水して、管片の内側の空気と置換した。管が充填されたら、閉鎖端部のSwagelok取付け具で管の開放端部に蓋をした。ポンプを操作することにより、破壊が生じるまで、管片を加圧した。
【0051】
125℃破壊試験については、長さ30cmの管片の一端を、Swagelok取付け具を用いて、ポンプホースの放出側に取り付けた。管の他端は、閉鎖端部Swagelok(登録商標)取付け具で蓋をした。このように、空気は、管内に存在している。管片を、オーブンの側部にある開口部を通して、空気循環オーブン内側に配置した。この開口部は、それ以外は、断熱片を用いて密封した。ポンプと、ある程度の長さの接続ホースはオーブン外であった。試験片を配置する前、オーブンを所望の試験温度である125℃まで予熱した。管片をオーブンに、試験温度になって安定するまで、少なくとも1時間入れた。管片を、ポンプの操作により加圧した。次に、ポンプにより出た水圧を圧縮し、管片内側の温風を加圧して、破壊させた。この方法は、加圧中室温の水による管片の冷却を良好に防ぐと判断された。
【0052】
管の引張強度
管試料の引張強度を、Instron試験機を用いて、23〜125℃の範囲のいくつかの温度で求めた。長さ8mの片を、試験機の2つのグリップ間で5cmのゲージ距離で用いた。管片の端部を、特別に設計されたV−溝ジョーを用いてグリップで保持し、短い円柱スチールピンを、管の端部に挿入して、グリップにある管の圧迫および破砕を防いだ。試験は、50mm/秒の試験機クロスヘッド速度を用いて実施し、応力歪曲線を生成した。
【0053】
機械的特性
ISO527−2/1B/1を用いて引張弾性率を求めた。
【0054】
ISO179/1eUを用いて、ノッチ付きシャルピー衝撃特性を求めた。
【0055】
空気加熱老化(AOA)
組成物を、厚さ4mmの引張バーへ成形した。引張バーを、以下の表に示した時間にわたって、135℃で循環空気オーブンに入れた。オーブンの位置の影響を、回転式コンベヤーでバーを連続的に回転させることにより平均化した。指定した時間の終わりに、引張バーをオーブンから取り出し、ISO527−2/1B/1に従って、引張強度および伸びを試験した。
【0056】
材料
C−ブラックとは、ポリアミド6に分散した25重量パーセントのカーボンブラック組成物のことを指す。
【0057】
HS7.1.0.5は、7部のヨウ化カリウム、1部のヨウ化銅(I)および0.5部のジステアリン酸アルミニウムからなる熱安定剤であり、Shepherd Chemical Co.(Shepherd Norwood,4900 Beech Street,Norwood,Ohio 45212)から購入した。
【0058】
ポリアミドA、65/35モル比の10T/1010のコポリアミドは、以下の手順を用いて調製した。
【0059】
10Lのオートクレーブに、テレフタル酸(1199.5g)、セバシン酸(786.3g)、1,10−ジアミノデカン(2017.1g)、1重量パーセントの次亜リン酸ナトリム(35.0g)を含有する水溶液、28重量パーセントの酢酸(95.0g)を含有する水溶液、1重量パーセントのCarbowax8000(10.2g)を含有する水溶液および水(2500g)を入れた。オートクレーブ攪拌器を5rpmに設定し、中身を、窒素で10psiにて10分間パージした。攪拌器を50rpmに設定し、圧力制御バルブを300psigに設定し、オートクレーブを加熱した。圧力は45分以内に300psigに達し、中身の温度が265℃に達するまで、さらに90分間保持した。次に、圧力を、約45分間にわたって0psigまで減じた。この間に、中身の温度は285℃まで上がった。オートクレーブの圧力を、真空にすることにより、5psiaまで減じ、そこに20分間保持した。次に、オートクレーブを、70psigの窒素で加圧し、溶融ポリマーをストランドへと押出し、冷水で冷却して、ペレットへと切断した。得られたコポリアミドの固有粘度(IV)は1.09dl/gであった。この場合、IVは、m−クレゾール中0.5%溶液で、25℃で測定した。示差走査熱量計(DSC)により測定したところ、ポリマーの融点は274℃であった。上記の手順に従って調製したいくつかのポリマーのバッチをドライブレンドして、アミン末端が平均65μ当量/gおよびIVが1.08dL/gのポリアミドAを与えた。
【0060】
ポリアミドBは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)より入手可能な、IVが0.85〜0.91および融点が約300℃の6T/DT50/50のモル比のコポリアミドであるZytel(登録商標)HTN501である。
【0061】
ポリアミド10/10は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)より入手可能な、融点が約200℃のZytel(登録商標)RS LC1000BK樹脂である。
【0062】
ポリアミド6/12は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)より入手可能な、融点が約218℃のZytel(登録商標)158NC010樹脂である。
【0063】
Acrawax C離型剤は、Lonza Chemicalsより供給される。
【0064】
Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY)より供給されるChimassorb(登録商標)944(ポリ[[6−[(1,1,3,33−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]])。
【0065】
Egage(登録商標)8180は、Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)製の42重量パーセントのコモノマーによるエチレン/1−オクテンコポリマーである。
【0066】
Irganox(登録商標)1010は、Ciba Specialty Chemicals,Inc.(Tarrytown,NY)製の酸化防止剤である。
【0067】
Irganox(登録商標)1098は、Ciba Specialty Chemicals,Inc.(Tarrytown,NY)製の酸化防止剤である。
【0068】
Irgafos12UV光安定剤は、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY)より入手可能である。
【0069】
NylostabS−EED(登録商標)安定剤とは、Clariantより入手可能な熱および光安定剤のことを指す。
【0070】
Rilsan(登録商標)AESNO TLポリアミド12は、Arkema,Inc.より入手可能である。
【0071】
TRX301とは、1.8重量パーセントの無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン/プロピレン/ヘキサジエンターポリマーのことを指し、Dow Chemical(Midland,Michigan,USA)より購入した。
【0072】
実施例1
この実施例は、二層共押出し管の形成を示すものである。
【0073】
外側層および内側層に用いるポリアミド組成物を表2に示す。外側層は、銅系熱安定剤を含有していた。銅系熱安定剤は内側層に存在していなかった。内側層に用いたポリアミドBの融点は約300℃、DMAにより測定したガラス転移温度は140℃であった。
【0074】
【表2】

【0075】
比較例C−1
融点が約171℃およびガラス転移が約40℃のRilsan(登録商標)AESNO TLポリアミド12樹脂を、平均壁厚が約0.99mmの単層8.06mmOD管へ押出した。
【0076】
外側層(第1のポリマー組成物)および内側層(第2のポリマー組成物)の実施例1の物理的特性を、比較例C−1に用いた組成物のものと共に、表3に示す。125℃で測定した内側層(第2のポリマー組成物)についての引張特性は、外側層(第1のポリマー組成物)またはC−1よりも大幅に高く、23℃における内側層の靭性は、C−1の靭性より大幅に良好である。
【0077】
【表3】

【0078】
2層を有する壁のある管を作製するために、2層構成で設定された単体の多層管ヘッドへ各ポリマーを供給する45mmのスクリューを備えた2台のMaillefer押出し機からなる多層押出しプロセスにより多層管を得た。各押出し機バレルの温度は、特定のポリマー組成物に対応すべく調節した。内側層ポリマーを供給するバレルは、320℃に設定し、外側層ポリマーのバレルは、第1のポリマー組成物の溶融温度より約20℃高く設定した。これは、用いるポリマーに応じて、220℃〜280℃であった。ヘッド温度は、310℃〜320℃に設定した。ダイ温度は、310℃〜320℃に設定した。ダイ直径は、16.95mmであり、先端径は、12.7mmであった。管外径用の選別機は、8.7mmの内径を有していた。内径は約6mmであり、押出し速度および管延伸比により制御した。押出し管は、真空タンクにおいてその寸法へ形成され、次に水浴を通過させて、牽引機により牽引することにより固化した。線速度は、約12m/分であった。外側層の厚さは、0.5mmであった。内側層の厚さは、0.5mmであった。
【0079】
比較例C−2
実施例1の外側層を、平均壁厚が約0.84mmの単層8.4mmOD管へ押出した。
【0080】
比較例C−3
実施例1の内側層を、平均壁厚が約0.1.07mmの単層8.57mmOD管へ押出した。
【0081】
実施例1の多層管および比較例C−1〜C−3管の物理的特性を表4に示す。破壊圧力特性を表5に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
結果から、実施例1の共押出し管は、125℃で、ポリアミド12樹脂(C−1)または外側層のみ(C−2)よりも優れた破壊圧力特性を有しているのが分かる。結果から、さらに、実施例1の共押出し管は、ポリアミド12樹脂(C−1)および外側層のみ(C−2)に勝る引張弾性率を有し、実施例1の引張弾性率は、内側層のみ(C−3)に匹敵することが分かる。
【0085】
比較例C−4
多層管は、外側層として、融点が約200℃のポリアミド10/10および内側層組成物ポリアミドBを用いて多層押出しプロセスにより提供された。
【0086】
比較例C−5
多層管は、外側層として、融点が約218℃のポリアミド6/10および内側層組成物ポリアミドBを用いて多層押出しプロセスにより提供された。
【0087】
C−4およびC−5の外側表面平滑度によれば、外側層は均一性に非常に乏しく、見栄えが悪いことを示した。一方、実施例1では、外側層は、非常に高い表面均一性を示した。これにより、溶融温度がそれぞれ200℃〜218℃で、240℃〜280℃の範囲の指定範囲より低い半芳香族半結晶ポリアミドを含むC−4およびC−5の外側層厚さは、均一な多層管とするには、適切に制御できないことが分かった。
【0088】
実施例2
表6に重量部で示した外側層組成物および内側層組成物の引張試験片に、135℃で3000時間超の空気加熱老化(AOA)を行った後、引張試験測定を様々な時間で行った。
【0089】
【表6】

【0090】
表8に示す結果から、内側層は、3000時間の老化後、破断歪パーセントの大幅な減少を示すことが分かる。これは、破断歪の僅か9.4パーセントの保持に相当する。表7に示した結果から、ポリアミド10、T/10、10の外側層は、3000時間老化後、パーセント破断歪の約75パーセントを保持することが分かる。
【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
実施例2によれば、ポリアミド10、T/10、10を外側層として有する多層管は、熱老化で、高い%の破断歪を保持することが予測されるであろうことが分かる。すなわち、内側層が空気に露出されなければ、管は可撓性を維持することが予測されるであろう。このように、管は、高AOA熱安定性と、ポリアミド10、T/10、10の単層に対して改善された破壊圧力という組み合わせを有するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)第1の半芳香族半結晶ポリアミドおよび銅熱安定剤を含む第1のポリマー組成物を含む外側層であって、前記第1の半芳香族半結晶ポリアミドが
a)(i)8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および6〜12個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン
からなる群の1つ以上から選択されるモノマーから誘導される少なくとも1つの繰り返し単位と、
b)(ii)10〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および6〜12個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン、ならびに
(iii)6〜20個の炭素原子を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸
からなる群の1つ以上から選択されるモノマーから誘導される少なくとも1つの繰り返し単位と
から実質的になる
外側層と、
B)第2の半芳香族半結晶ポリアミドを含む第2のポリマー組成物を含む内側層と
を含む多層共押出し管であって、
前記第1の半芳香族半結晶ポリアミドが、約240℃〜280℃の溶融温度を有し、前記第2の半芳香族半結晶ポリアミドが、ISO−6721−3法を用いた動的機械分析により測定すると、100℃以上のガラス転移温度を有する多層共押出し管。
【請求項2】
前記第2の半芳香族半結晶ポリアミドが、
c)(iv)8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および6〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン
からなる群から選択されるモノマーから誘導される少なくとも1つの繰り返し単位と、
任意選択により、
d)(v)6〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および6〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミンおよび
(vi)6〜20個の炭素原子を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸
からなる群から選択されるモノマーから誘導される1つ以上の繰り返し単位と
から実質的になる請求項1に記載の多層共押出し管。
【請求項3】
前記第2の半芳香族半結晶ポリアミドが、270℃を超える溶融温度を有する請求項1に記載の多層共押出し管。
【請求項4】
前記第2の半芳香族半結晶ポリアミドが、125℃以上のガラス転移温度を有する請求項1に記載の多層共押出し管。
【請求項5】
前記銅熱安定剤が、前記第1のポリマー組成物の重量を基準として、約0.1〜約1.0重量パーセントのCu(I)、Cu(II)またはこれらの混合物から選択される銅種を含む請求項1に記載の多層管。
【請求項6】
前記第2のポリマー組成物が、Cu熱安定剤を含有しない請求項1に記載の多層管。
【請求項7】
前記外側層半芳香族ポリアミドが、前記ジカルボン酸総含量を基準として、60〜約80モル%のテレフタル酸含量を有する、デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンデカンジアミドおよびデカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミドからなる群から選択されるグループIのポリアミドと;前記酸繰り返し単位の合計を基準として、50〜約80モル%のテレフタル酸含量を有する、ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンデカンジアミド、ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンドデカンジアミド、ノナメチレンテレフタルアミド/11−アミノウンデカンアミド(PA9T/11)、ノナメチレンテレフタルアミド/ラウリルラクタム、デカメチレンテレフタルアミド/−アミノウンデカンアミド(PA10T/11)およびデカメチレンテレフタルアミド/ラウリルラクタムからなる群から選択されるグループIIのポリアミドとからなる群から選択される請求項1に記載の多層管。
【請求項8】
前記第2の半芳香族半結晶ポリアミドが、前記少なくとも1つの脂肪族ジアミン(iv)が6個の炭素原子を有する繰り返し単位(c)から実質的になる請求項2に記載の多層共押出し管。
【請求項9】
前記内側層半芳香族ポリアミドが、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド、ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド、ヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(カプロラクタム)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)およびポリ(デカメチレンテレフタルアミド)からなる群から選択される請求項1に記載の多層管。
【請求項10】
前記第1のポリマー組成物が、約2〜約50重量パーセントのポリマー強化剤をさらに含む請求項1に記載の多層管。
【請求項11】
前記第2のポリマー組成物が、2〜約50重量パーセントのポリマー強化剤をさらに含む請求項1または10に記載の多層管。

【公表番号】特表2012−529396(P2012−529396A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515029(P2012−515029)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037681
【国際公開番号】WO2010/144383
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】