説明

多層型毛髪化粧料

【課題】においの安定性に優れた、洗い流さないタイプの酸性の毛髪化粧料の提供。
【解決手段】油層及び水層を含み、水層のpH(20質量倍希釈,25℃)が2〜5.5であり、油層が下記(a)〜(e)から選ばれる香料成分を含有する洗い流さないタイプの多層型毛髪化粧料。
(a)式R1-COOR2で表される総C数3〜18のエステル
〔R1はH原子、又はC−C結合の間にO若しくはN原子が挿入されていてもよいC1-12炭化水素基;R2はC−C結合の間にO原子が挿入されていてもよいC1-15炭化水素基〕
(b)総C数4〜18のアセタール
(c)総C数15〜17の大環状ラクトン又は大環状エーテルラクトン
(d)総C数14〜15の大環状ジエステル
(e)フェニルアセトアルデヒド、インドール及び4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドから選ばれる化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い流さないタイプの多層型毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘアカラー等による化学処理や、ブロー等による物理処理の影響で、毛髪表面のキューティクルの剥離や、毛髪内部脂質の流出による毛髪内部の空洞化などが起こり、結果として、毛髪がパサつく、指通りが悪い、髪がまとまらない、ツヤがなくなるといったことが生じると言われている。
【0003】
これらの課題を解決する手段の一つとして、毛髪の内部に働きかけることにより毛髪の改質を試みた、特定の有機酸と有機溶剤を用いた水性の毛髪化粧料が知られている(例えば、特許文献1〜3)。しかしながら、これらの水性毛髪化粧料が効果を発揮する酸性条件下では、特定の香料の安定性が悪いという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平6-172131
【特許文献2】特開平6-298625
【特許文献3】特開平7-112921
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、においの安定性に優れた、洗い流さないタイプの酸性の毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、毛髪化粧料を多層型の剤型とし、その油層に特定の香料を配合することにより、香料成分を安定に配合できることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、少なくとも油層及び水層を含み、水層を水で20質量倍に希釈したときの25℃におけるpHが2〜5.5であり、油層が下記(a)〜(e)から選ばれる1種以上の香料成分を含有するものである洗い流さないタイプの多層型毛髪化粧料を提供するものである。
(a)一般式(1)で表される総炭素数3〜18のエステル
1-COOR2 (1)
〔式中、R1は水素原子、又は炭素−炭素結合の間に酸素原子若しくは窒素原子が挿入されていてもよい直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R2は炭素−炭素結合の間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数1〜15の炭化水素基を示す。〕
(b)総炭素数が4〜18のアセタール
(c)総炭素数が15〜17の大環状ラクトン又は大環状エーテルラクトン
(d)総炭素数が14〜15の大環状ジエステル
(e)フェニルアセトアルデヒド、インドール及び4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドから選ばれる化合物
【発明の効果】
【0008】
本発明の洗い流さないタイプの毛髪化粧料は、においの安定性に優れ、毛髪に塗布した際に香り立ちが良く、適度な強さの香りが髪に残り、更には油剤臭、酸臭及び有機溶剤臭に対するマスキング効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
〔油層〕
・香料成分
本発明の多層型毛髪化粧料の油層には、香料成分(a)〜(e)を配合する。
【0010】
香料成分(a)の一般式(1)で表される総炭素数3〜18のエステルとしては、テルペン系エステル、脂肪族エステル、芳香族エステルが挙げられる。
【0011】
(a)のうちテルペン系エステルとしては、蟻酸シトロネリル、蟻酸ゲラニル、蟻酸リナリル、蟻酸ネリル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸イソボロニル、酢酸リナリル、酢酸エチルリナリル、酢酸テトラヒドロリナリル、酢酸ネリル、酢酸ターピニル、酢酸テトラヒドロゲラニル、酢酸ノピル、酢酸セドリル、酢酸ベチベリル、プロピオン酸シトロネリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ネリル、プロピオン酸ターピニルなどが挙げられる。
特に酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸イソボロニル、酢酸リナリル、酢酸ネリル、酢酸ターピニル、酢酸セドリル、酢酸ベチベリルが好ましい。
【0012】
(a)のうち脂肪族エステルとしては、蟻酸シス-3-ヘキセニル、蟻酸α,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチル(IFF商品名アファルメート)、蟻酸オキシオクタリン、酢酸プレニル、酢酸シス-3-ヘキセニル、酢酸ジヒドロトリシクロデセニル、酢酸エチル、酢酸ヘキシル、酢酸イソアミル、酢酸アミル、酢酸o-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸トランス-2-ヘキセニル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸イソノニル、プロピオン酸シス-3-ヘキセニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、アセト酢酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、2-メチル酪酸エチル、メチル2-ノニノエート(メチルオクチンカーボネート)、シス-3-ヘキセニルメチルカーボネート(IFF商品名リファローム)、2,2-ジメチルプロピオン酸3-メチル-3-ブテニル(花王商品名ロミラット)、2-メチルペンタン酸エチル(ジボダン商品名マンザネート)、カプロン酸アリル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル(IFF商品名フラクトン)、2-メチル吉草酸2-メチルバレリル(花王商品名ペラナット)、エナント酸アリル、アリルシクロヘキシルグリコレート、2-エチルカプロン酸エチル(花王商品名イロチル)、シクロへキサンプロピオン酸アリル、メチルシクロオキチルカーボネート(花王商品名ジャスマシクラット)、3,5,5-トリメチルカプロン酸エチル(花王商品名メルサット)、2-シクロヘキシルプロピオン酸エチル(花王商品名ポアレネート)、エチル2-t-ブチルシクロヘキシルカーボネート(花王商品名フロラマット)、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イルカルボキシレート(花王商品名フルテート)、ジヒドロジャスモン酸メチル、ジャスモン酸メチルなどが挙げられる。
特に酢酸シス-3-ヘキセニル、酢酸エチル、酢酸ヘキシル、酢酸イソアミル、酢酸アミル、酢酸o-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸トランス-2-ヘキセニル、酢酸トリシクロデセニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、アセト酢酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、2-メチル酪酸エチル、2-メチルペンタン酸エチル(ジボダン商品名マンザネート)、カプロン酸アリル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル(IFF商品名フラクトン)、2-メチル吉草酸2-メチルバレリル(花王商品名ペラナット)、エナント酸アリル、アリルシクロヘキシルグリコレート、シクロへキサンプロピオン酸アリル、3,5,5-トリメチルカプロン酸エチル(花王商品名メルサット)、2−シクロヘキシルプロピオン酸エチル(花王商品名ポアレネート)、エチル2-t-ブチルシクロヘキシルカーボネート(花王商品名フロラマット)、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イルカルボキシレート(花王商品名フルテート)、ジヒドロジャスモン酸メチルが好ましい。
【0013】
(a)のうち芳香族エステルとしては、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、酢酸ベンジル、酢酸シンナミル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸パラクレジル、酢酸フェニルエチル、酢酸スチラリル、プロピオン酸フェニルエチル、プロピオン酸スチラリル、プロピオン酸ベンジル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ酪酸フェニルエチル、イソ酪酸フェノキシエチル、サリチル酸アミル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、サリチル酸シクロヘキシル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸メチル、サリチル酸フェニルエチル、サリチル酸ベンジル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、アンスラニル酸メチル、メチルアンスラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸フェニルエチル、桂皮酸メチル、フェニルグリシド酸エチル、ジヒドロキシジメチル安息香酸メチル(IFF商品名ベラモス)、メチルフェニルグリシド酸エチル(アルデヒドC-16)などが挙げられる。
特に酢酸ベンジル、酢酸シンナミル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸フェニルエチル、酢酸スチラリル、イソ酪酸フェニルエチル、イソ酪酸フェノキシエチル、サリチル酸アミル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、サリチル酸シクロヘキシル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、安息香酸ベンジル、アンスラニル酸メチル、メチルアンスラニル酸メチル、桂皮酸メチル、ジヒドロキシジメチル安息香酸メチル(IFF商品名ベラモス)、メチルフェニルグリシド酸エチル(アルデヒドC-16)などが好ましい。
【0014】
香料成分(b)の総炭素数が4〜18のアセタールとしては、アセトアルデヒドジエチルアセタール、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、アセトアルデヒドエチルシス-3-ヘキセニルアセタール、アセトアルデヒドエチルフェニルエチルアセタール、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセタール、オクチルアルデヒドグリコールアセタール、オクタナールジメチルアセタール、ヘプタナールエチレングリコールアセタール、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、ヒドロキシシトロネラールジエチルアセタール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、フェニルアセトアルデヒドエチレングリコールアセタール、フェニルプロピルアルデヒドプロピレングリコールアセタール、ヒドラトロピックアルデヒドメチルアセタール、4,4,6-トリメチル-2-ベンジル-1,3-ジオキサン、2-ブチル-4,4,6-トリメチル-1,3-ジオキサン、テトラヒドロインデノ-m-ジオキサン(シムライズ商品名インドフロール)、ジメチルテトラヒドロインデノ-m-ジオキシン(シムライズ商品名マグノラン)、2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサン(ジボダン商品名カラナール)、5-メチル-5-プロピル-2-(1-メチルブチル)-1,3-ジオキサン(花王商品名トロエナン)、2,4,6-トリメチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン(シムライズ商品名フロロパール)等が挙げられる。
特に、アセトアルデヒドジエチルアセタール、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、アセトアルデヒドエチルシス-3-ヘキセニルアセタール、アセトアルデヒドエチルフェニルエチルアセタール、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、フェニルアセトアルデヒドエチレングリコールアセタール、フェニルプロピルアルデヒドプロピレングリコールアセタール、ヒドラトロピックアルデヒドジメチルアセタール、テトラヒドロインデノ-m-ジオキサン(シムライズ商品名インドフロール)、ジメチルテトラヒドロインデノ-m-ジオキシン(シムライズ商品名マグノラン)、2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサン(ジボダン商品名カラナール)、5-メチル-5-プロピル-2-(1-メチルブチル)-1,3-ジオキサン(花王商品名トロエナン)、2,4,6-トリメチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン(シムライズ商品名フロロパール)が好ましい。
【0015】
香料成分(c)の総炭素数が15〜17の大環状ラクトン又は大環状エーテルラクトンの例としては、シクロペンタデカノライド(曽田香料商品名ペンタライド)、ヘキサデカノリド、シス-9-シクロヘキサデセノライド(セントライド)、7-シクロヘキサデセノライド(アンブレットライド)、オキサシクロヘキサデセン-2-オン(フィルメニッヒ商品名ハバノライド)、10-オキサヘキサデカノライド(高砂香料工業商品名オキサライド)、11-オキサヘキサデカノライド(ジボダン商品名ムスクR1)、12-オキサヘキサデカノライド(ジボダン商品名セルボライド)等が挙げられる。
特に7-シクロヘキサデセノライド(アンブレットライド)、オキサシクロヘキサデセン-2-オン(フィルメニッヒ商品名ハバノライド)、シクロペンタデカノライド(曽田香料商品名ペンタライド)が好ましい。
【0016】
香料成分(d)の総炭素数が14〜15の大環状ジエステルとしては、エチレンブラッシレート、エチレンドデカンジオエート(高砂香料工業社商品名ムスクC-14)が挙げられ、特にエチレンブラッシレートが好ましい。
【0017】
香料成分(e)は、フェニルアセトアルデヒド、インドール及び4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド(リラール)から選ばれる。
【0018】
これら香料成分(a)〜(e)は、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。香料成分(a)〜(e)の配合量は、香りの強さに応じて、毛髪化粧料全体に対して0.001〜3.0質量%が好ましく、更には0.01〜1.0質量%、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。
【0019】
本発明の毛髪化粧料には、香料成分(a)〜(e)に加え、更にこれら以外の香料成分、例えば『香料と調香の基礎知識』(中島基貴編著,産業図書株式会社,1995年6月21日初版)記載の、合成香料、天然香料、調合ベースなどを、着香剤として配合することが出来る。
【0020】
合成香料としては、リモネン、α-ピネン、β-ピネンなどの炭化水素;リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、メントール、フェニルエチルアルコールなどのアルコール;エトキシメチルシクロドデシルエーテル(花王商品名ボアザンブレンフォルテ)、3α,6,6,9α-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン(花王商品名アンブロキサン)などのエーテル;デシルアルデヒド、シトラール、α-ヘキシルシンナミックアルデヒドp-t-ブチル-α-メチルヒドロキシシンナミックアルデヒド(IFF商品名リリアール)などのアルデヒド;メチルイオノン、β-イオノン、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン(IFF商品名イソEスーパー)、ダマセノンなどのケトン;6-アセチルヘキサテトラリン(PFW商品名トナライド)、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン(IFF商品名ガラクソリド)などが例示される。
【0021】
また、天然香料としては、オレンジ、レモン、ライム、ベルガモット、ラベンダー、ラバンジン、ペパーミント、スペアミント、ハッカ、パチョリなどの精油や、オリバナム、エレミ、ベンゾイン、ペルーバルサム、トルーバルサムなどのレジノイド等が例示される。
【0022】
・高重合シリコーン
油層には、高重合シリコーンを配合することが好ましい。高重合シリコーンとしては、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、ジメチコノール(ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン)、アミノ変性シリコーンが挙げられる。
【0023】
高重合シリコーンの数平均重合度は、1000〜20000であるが、2000〜15000が好ましい。高重合シリコーンの配合量は、髪への伸ばしやすさ、なめらかさ、まとまりの観点から、本発明の毛髪化粧料全体に対して0.5〜15質量%が好ましく、更には1〜10質量%、更には2〜8質量%、特に3〜7質量%が好ましい。また、高重合シリコーンの油層に対する配合量は、同様な観点から、3〜80質量%、更には5〜65質量%、特に9〜50質量%が好ましい。
【0024】
高重合シリコーンの市販品の具体例としては、SH200-1,000,000cs(東レ・ダウコーニング社;高重合ジメチコン)、TSF451-100MA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社;高重合ジメチコン)、BY11-026(東レ・ダウコーニング社;高重合ジメチコンの低粘度シリコーンによる希釈溶液)、KF9008(信越化学工業社;高重合ジメチコンの環状シリコーンによる希釈溶液)、BY22-050A(東レ・ダウコーニング社;高重合ジメチコンのアニオンエマルション)、BY22-060(東レ・ダウコーニング社;高重合ジメチコンを低粘度シリコーンで希釈した溶液のカチオンエマルション)、BY22-020(東レ・ダウコーニング社;高重合ジメチコンを軽質流動イソパラフィンで希釈した溶液のカチオンエマルション)、KM904(信越化学工業社;高重合ジメチコンを低粘度シリコーンで希釈した溶液のカチオンエマルション)、DC1501 Fluid(東レ・ダウコーニング社;高重合ジメチコノールの環状シリコーンによる希釈溶液)、DC1503 Fluid(東レ・ダウコーニング社;高重合ジメチコノールの低粘度ジメチコンによる希釈溶液)、X-21-5849(信越化学工業社;高重合ジメチコノール)X-21-5666(信越化学工業社;高重合ジメチコノールの環状シリコーンによる希釈溶液)、X-21-5613(信越化学工業社;高重合ジメチコノールの低粘度ジメチコンによる希釈溶液)、TSF4705(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社;高重合アミノ変性シリコーン)が挙げられる。
【0025】
・揮発性油
油層の粘度を低下させ、さらに上記高重合シリコーンを溶解させるため、、油層には揮発性油を配合することが好ましい。揮発性油としては、揮発性のシリコーン及び炭化水素が挙げられる。なかでも、低沸点鎖状シリコーン油、低沸点環状シリコーン油、低沸点イソパラフィン系炭化水素等を用いることが好ましい。ここで低沸点とは、沸点が常圧において260℃以下であることをいう。
【0026】
低沸点鎖状シリコーンは次の一般式で表され、具体例としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン等、市販品としては、 KF-96A-5cs、KF-96L-2cs(信越化学工業社)等が挙げられる。
【0027】
【化1】

【0028】
〔式中、aは0〜5の整数を示す。〕
【0029】
環状シリコーンは次の一般式で表され、具体例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロへプタシロキサン等、市販品としては、KF994、KF995(信越化学工業社)等が挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
〔式中、bは3〜7の整数を示す。〕
【0032】
低沸点イソパラフィン系炭化水素としては、常圧における沸点が260℃以下である軽質流動イソパラフィン、イソドデカンの精製物、又は各種鎖長の脂肪族炭化水素の混合物等が挙げられる。市販品としては、IPソルベント(出光石油化学社)、Marukasol(同社)等が挙げられる。
【0033】
これらのうち、べとつきがなくさっぱりした使用感、仕上がり感を得るためには、揮発性シリコーン、特に環状シリコーンが好ましく、なかでもデカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンは、気密性容器の中で比較的安定的に存在することから好ましく使用される。また、しっとりとした使用感、仕上がり感を得るためには、揮発性炭化水素、特に低沸点イソパラフィン系炭化水素が好ましい。なかでも軽質流動イソパラフィン、特にイソドデカンが好ましい。これらの揮発性油は、水性毛髪化粧料の乾燥を高め、揮発により毛髪に高重合シリコーンの強固な化粧塗膜を形成するものである。
【0034】
揮発性油は、単独で又は2種以上を用いることができ、合計の配合量は、本発明の毛髪化粧料全体に対して5〜69.5質量%が好ましく、更には20〜60質量%、特に30〜50質量%が好ましい。更に高重合シリコーンと揮発性油の質量比は、油層と水層の混合性・分離性の最適化、髪への伸ばしやすさ、なめらかさ、まとまりのよさの観点から、高重合シリコーン:揮発性油=1:30〜3:1、更には1:20〜2:1、特に1:10〜1:1であることが好ましい。また、上記成分に加えてエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールを添加してもよい。
【0035】
・他のシリコーン
油層には、更に、コンディショニング効果の向上のため、高重合シリコーン及び揮発性シリコーン以外のシリコーンを配合することもできる。
【0036】
・油剤
油層には、更に、乾燥後の毛髪のまとまり感向上のため油剤を配合することができる。油剤としては、スクワレン、スクワラン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、流動パラフィン、シクロパラフィン等の炭化水素;ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボカド油、オリーブ油等のグリセリド;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、カルナウバロウ等のロウ;セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等の高級アルコール;ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸オレイル、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル;カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリル酸、イソパルミチン酸等の高級脂肪酸;その他イソステアリルグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテルなどが挙げられる。これらの中で、スクワレン、スクワラン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー等の分岐炭化水素が特に好ましい。
【0037】
油剤の配合量は、まとまりの良さや、べたつき感の無さの点から、本発明の毛髪化粧料全体に対して0.1〜10質量%が好ましく、更には0.5〜4質量%、特に1〜3質量%が好ましい。
【0038】
〔水層〕
水層には、炭素数2〜8の有機カルボン酸又はその塩を配合することが好ましい。有機カルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、レブリン酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。なかでもα-ヒドロキシ酸が好ましく、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、特にリンゴ酸、乳酸、クエン酸が好ましい。また、これらの塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、有機アミン化合物等との塩が挙げられる。
【0039】
有機カルボン酸又はその塩は2種以上を併用してもよく、また、少なくともリンゴ酸又はその塩を使用することが好ましい。有機カルボン酸又はその塩の配合量は、毛髪の内部改質(空洞補修など)効果、セット持ち向上効果、まとまり改善効果の点から、遊離酸換算量として、本発明の毛髪化粧料全体に対して0.5〜10質量%が好ましく、更には1〜8質量%、特に2〜6質量%が好ましい。
【0040】
・親水性有機溶剤
水層には、芳香族アルコール、N-アルキルピロリドン、アルキレンカーボネート、ポリプロピレングリコール、ラクトン及び環状ケトンからなる群より選ばれ、ClogPが−2〜3である親水性有機溶剤を配合することが好ましい。
【0041】
このような親水性有機溶剤としては、次の(イ)〜(ホ)に示すものが挙げられる。
【0042】
(イ) 一般式(2)で表される芳香族アルコール
【0043】
【化3】

【0044】
〔式中、R3は基R4−Ph−R5−(R4;水素原子、メチル基又はメトキシ基,R5;結合手又は炭素数1〜3の飽和若しくは不飽和の二価の炭化水素基,Ph;パラフェニレン基)を示し、Y及びZは水素原子又は水酸基を示し、p、q及びrは0〜5の整数を示す。ただし、p=q=0であるときは、Zは水素原子ではなく、またR3は基R4−Ph−ではない。〕
【0045】
(ロ) 窒素原子に炭素数1〜18のアルキル基が結合したN-アルキルピロリドン
【0046】
(ハ) 炭素数3〜4のアルキレンカーボネート
【0047】
(ニ) 数平均分子量100〜1000のポリプロピレングリコール
【0048】
(ホ) 一般式(3)、(4)又は(5)で表されるラクトン又は環状ケトン
【0049】
【化4】

【0050】
〔式中、Xはメチレン基又は酸素原子を示し、R6及びR7は相異なる置換基を示し、s及びtは0又は1を示す。〕
【0051】
これら親水性有機溶剤のうち、(イ)としては、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール等が挙げられる。(ロ)としては、N-メチルピロリドン、N-オクチルピロリドン、N-ラウリルピロリドン等が挙げられる。(ハ)としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。(ニ)の数平均分子量100〜1000のポリプロピレングリコールとしては、数平均分子量100〜500のもの、特に重合度2〜5のものが好ましい。(ホ)において、一般式(3)〜(5)中のR6及びR7としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシ基、フェニル基、スルホアルキル基、リン酸アルキル基、カルボキシアルキル基等が好ましく、なかでもγ-ラクトンの場合にはγ位、δ-ラクトンの場合にはδ位(すなわちヘテロ酸素原子の隣接メチレン)に置換した、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましい。また、化合物(3)〜(5)の水溶性を増大させたい場合には、R6又はR7としてスルホン酸基、リン酸基、カルボキシ基等の酸性基やこれらが置換したアルキル基を有するのが好ましい。(ホ)のうち、ラクトンとしては、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-カプロラクトン、δ-ヘプタノラクトン等が挙げられるが、ラクトンの安定性の点から、γ-ラクトン、特にγ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトンが好ましい。(ホ)のうち、環状ケトンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4-メチルシクロヘプタノン等が挙げられる。
【0052】
特に好ましい親水性有機溶剤として、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、プロピレンカーボネート及びポリプロピレングリコール(数平均分子量300〜500、特に400)が挙げられる。
【0053】
また、本発明で用いる親水性有機溶剤は、25℃で液体であることが好ましく、また浸透促進の点から、ClogPが−2〜3、特に−1〜2であることが好ましい。ここで、ClogPとは、オクタノール相と水相の間での物質の分配を表す尺度である、下式で定義されるオクタノール-水-分配係数(logP)の計算値をいい、ケミカルレビューズ,71巻,6号(1971)にその例が記載されている。
【0054】
logP=log([物質]Octanol/[物質]Water
【0055】
〔式中、[物質]Octanolは1-オクタノール相中の物質のモル濃度を、[物質]Waterは水相中の物質のモル濃度を示す。〕
【0056】
主な親水性有機溶剤のClogPを具体的に示すと、ベンジルアルコール(1.1)、2-ベンジルオキシエタノール(1.2)、2-フェニルエタノール(1.2)、1-フェノキシ-2-プロパノール(1.1)、ポリプロピレングリコール400(0.9)、炭酸プロピレン(-0.41)、γ-ブチロラクトン(-0.64)である。
【0057】
親水性有機溶剤は、2種以上を併用してもよく、またその配合量は、油層と水層の混合性・分離性の最適化、使用感、毛髪のツヤと改質効果の促進(弾性の向上、耐湿性の向上等)の点から、本発明の毛髪化粧料全体に対して0.05〜10質量%が好ましく、更には0.1〜5質量%、更には0.5〜4質量%、特に1〜3質量%が好ましい。
【0058】
有機カルボン酸又はその塩と親水性有機溶剤の質量比率は、毛髪の内部改質(空洞補修など)効果、セット持ち向上、まとまり改善効果などを効果的に発現させるために、有機カルボン酸又はその塩:親水性有機溶剤=10:1〜1:7、特に4:1〜1:3の範囲であることが好ましい。
【0059】
・水
水層中の水の含有量は、本発明の毛髪化粧料全体に対して10〜80質量%が好ましく、更には20〜60質量%、特に30〜50質量%が好ましい。
【0060】
・エタノール
水層には、更にエタノールを配合することができる。エタノールは、前記の親水性有機溶剤(ClogP=−2〜3)の可溶化あるいは安定分散に寄与する。エタノールの配合量は、本発明の毛髪化粧料全体に対して0.5〜20質量%、特に1〜15質量%が好ましい。また、エタノールと親水性有機溶剤の質量比率は、毛髪への有機カルボン酸又はその塩及び親水性有機溶剤の浸透促進の点から、エタノール:親水性有機溶剤=40:1〜2:1、特に20:1〜3:1の範囲であることが好ましい。
【0061】
・セットポリマー
水層には、更に、整髪性の向上、安定性、毛髪塗布時の付着性向上、感触改善、及び毛髪改質効果早期発現の観点から、セットポリマーを配合してもよい。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート(四級塩化)共重合体、ビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体等のポリビニルピロリドン系高分子化合物;メチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステル共重合体等の酸性ビニルエーテル系高分子化合物;酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体等の酸性ポリ酢酸ビニル系高分子化合物;(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体等の酸性アクリル系高分子化合物;N-メタクリロイルエチル-N,N-ジメチルアンモニウム・α-N-メチルカルボキシベタイン/メタクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体等の両性アクリル系高分子化合物;アクリルアミド・アクリルエステル系四元共重合体等の塩基性アクリル系高分子化合物;ヒドロキシプロピルキトサン、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン等のキチン・キトサン誘導体などが挙げられる。
【0062】
これらのセットポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、またその含有量は、本発明の毛髪化粧料全体に対して0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%が好ましい。
【0063】
・界面活性剤
水層には、溶剤の可溶化、分散性等を含めた系の安定性、及び感触向上の点から、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤のいずれをも使用できる。
【0064】
カチオン界面活性剤としては、次の一般式(6)で表される第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0065】
【化5】

【0066】
〔式中、R8及びR9は各々独立して水素原子、炭素数1〜28のアルキル基又はベンジル基を示し、同時に水素原子又はベンジル基となる場合、及び、炭素数1〜3の低級アルキル基となる場合を除く。Z-はアニオンを示す。〕
【0067】
ここでR8及びR9は、その一方が炭素数16〜24、更には16〜18のアルキル基、特に直鎖アルキル基であるのが好ましく、また他方は炭素数1〜3の低級アルキル基、特にメチル基であるのが好ましい。アニオンZ-としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;エチル硫酸イオン、炭酸メチルイオン等の有機アニオン等が挙げられ、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンが好ましい。
【0068】
カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、特に塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0069】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが特に好ましい。
【0070】
両性界面活性剤としてはイミダゾリン系、カルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系等が挙げられる。
【0071】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。
【0072】
上記界面活性剤のアニオン性残基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)を挙げることができる。
【0073】
また上記界面活性剤のカチオン性残基の対イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、メトサルフェートイオン、サッカリネートイオンを挙げることができる。
【0074】
これらのうち、感触の点から、カチオン界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、溶剤の可溶化、油剤の乳化、混合時の懸濁安定性等を含めた系の安定性の点から、その配合量は、本発明の毛髪化粧料全体に対して0.01〜5質量%、更には0.05〜3質量%、特に0.1〜1質量%が好ましい。また油層と水層の混合性・分離性の最適化、髪へのなめらかさの付与、髪への伸びやすさの観点から、親水性有機溶剤:界面活性剤の質量比は500:1〜1:10、更には100:1〜1:5、特に10:1〜1:2であることが好ましい。
【0075】
・水溶性高分子増粘剤
水層には、水溶性高分子増粘剤を配合することが好ましい。水溶性高分子増粘剤としては、多糖類、アクリル酸系高分子化合物、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、これらの誘導体等が挙げられる。特に多糖類及びアクリル酸系高分子化合物、並びにこれらの誘導体が好ましい。
【0076】
多糖類としては、例えばセルロース、グアーガム、セルロースガム、スターチ等が挙げられる。多糖類の誘導体としては、以下に示す置換基の一以上で置換されているものが好ましい。
【0077】
かかる置換基としては、ヒドロキシ基が置換していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基等の低級アルキル基;ヒドロキシ基が置換していてもよい総炭素数8〜40の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニルオキシ基、アルケニルオキシアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルオキシアルキル基、アルキルアリールオキシ基、アルキルアリールオキシアルキル基;炭素数10〜40の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテル基、炭素数10〜40の直鎖又は分岐のアルケニル基を有するアルケニルグリセリルエーテル基;ポリオキシエチレン基、ポリグリセリン基、スルホアルキル基、トリメチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウムアルキル基等が挙げられる。なお、これら置換基がヒドロキシ基を有する場合には、当該ヒドロキシ基は、更に他の上記置換基で置換されていてもよい。
【0078】
多糖類の誘導体の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸ナトリウム、ラウレス-13PG ヒドロキシエチルセルロース、ステアロキシPGヒドロキシエチルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム-10)、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム及びヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられる。
【0079】
アクリル酸系高分子化合物又はその誘導体の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アミド、カチオン化メタクリル酸ジエチル硫酸塩・カチオン化アクリル酸アミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体(ポリクオタニウム-52)、カチオン化メタクリロイルエチル重合体(ポリクオタニウム-37)等が挙げられる。
【0080】
これらの中でも、乳化能を有するポリマーが好ましく、具体的にはステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸ナトリウム、ラウレス-13PG ヒドロキシエチルセルロース、ステアロキシPGヒドロキシエチルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム-10)、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー等が好ましい。
【0081】
水溶性高分子増粘剤の配合量は、混合直後の混合状態を良好にし、かつ放置後の分離状態も良好にする観点から、本発明の毛髪化粧料全体に対して0.005〜5質量%が好ましく、更には0.01〜2質量%、特に0.05〜1質量%が好ましい。
【0082】
・多価アルコール
更に、水層には、多価アルコールを配合することができる。多価アルコールは、親水性有機溶剤の可溶化、安定分散に寄与し、また、親水性有機溶剤と相乗的に働き、ツヤや毛髪の改質効果の向上を促進する。多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられ、特にグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。多価アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、またその配合量は、本発明の毛髪化粧料全体に対して0.5〜5質量%、特に1〜3質量%が好ましい。
【0083】
・pH
水層は、毛髪のハリ・コシ、ツヤ向上、柔軟性、まとまり、しなやかさの付与などの性能発現の観点から、水で20質量倍に希釈したときの25℃におけるpHが2〜5.5に調整され、更にはpH2.5〜5、特にpH3〜4.5に調整されるのが好ましい。pHを上記範囲内に調整するためには、前述の有機カルボン酸のほか、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることが好ましい。
【0084】
水層は、毛髪塗布時のpHの変化を抑制し、有機カルボン酸と有機溶剤の毛髪への浸透を促進し、毛髪改質効果の早期発現、及び更なる効果感の向上のため、緩衝能が、0.001グラム当量/L以上0.2グラム当量/L未満であることが必要であり、好ましくは0.003グラム当量/L以上0.1グラム当量/L未満、更に好ましくは0.005グラム当量/L以上0.05グラム当量/L未満である。ここで、本発明における緩衝能とは、25℃における5質量%水溶液のpHを初期の値から1上昇させるのに要する塩基の濃度を尺度として次式により求められる値をいう。
【0085】
緩衝能=|dCB/dpH|
【0086】
〔式中、CBは塩基のイオン濃度(グラム当量/L)を示す。〕
【0087】
このような緩衝能は毛髪化粧料にpH緩衝剤等を添加することによって付与することができる。pH緩衝剤としては、pH2〜5.5の範囲で緩衝作用を有する有機酸又は無機酸と、その塩の組み合わせを用いることができる。有機酸としては、前述の有機カルボン酸が使用され、無機酸としては、例えばリン酸、硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、これらの酸の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などを挙げることができる。pH緩衝剤の配合量は、特に規定されるものではなく、緩衝能を与える化合物の種類によって異なる。例えば、主に緩衝能を与える化合物として、クエン酸ナトリウムを用いた場合は、約1質量%以上の濃度で配合される。
【0088】
〔その他の成分(油層、水層共通)〕
本発明の毛髪化粧料には、上記成分のほか、通常の毛髪化粧料に用いられる成分を目的に応じて適宜配合できる。このような成分としては、例えば抗フケ剤;ビタミン剤;殺菌剤;抗炎症剤;防腐剤;キレート剤;パンテノール等の保湿剤;染料、顔料等の着色剤;植物エキス;パール化剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;その他エンサイクロペディア・オブ・シャンプー・イングリーディエンツ〔ENCYCLOPEDIA OF SHAMPOO INGREDIENTS (MICELLE PRESS)〕に記載されている成分等が挙げられる。
【0089】
本発明の毛髪化粧料における、油層と水層の質量比は、毛髪に対するなめらかさ、つや、まとまりの付与と、毛髪の改質を両立させる点、また混合しやすさの点から、15:85〜70:30、特に30:70〜60:40であるのが好ましい。
【0090】
本発明の毛髪化粧料は、油層及び水層からなる二層型のほか、更に油層及び水層に溶解しないオイル層や乳化層、又は粉体層等を有する三層型以上であってもよい。また、本発明の毛髪化粧料は、ヘアスタイリング剤、洗い流さないヘアコンディショニング剤等として用いるのが好ましい。
【0091】
本発明の毛髪化粧料の効果は、混合直後が最も高いため、高い効果を発揮する時期を明瞭にするために、油層と水層の一方を着色、又は両方を別々の色で着色して、透明又は半透明容器に充填することが好ましい。これにより、混合の度合いを視覚的に判断することが可能となり、毛髪化粧料の効果を引き出しやすい。
【0092】
着色には染料が用いられ、酸性染料、塩基性染料が好ましく、特に酸性染料が好ましい。更に具体的には、酸性染料として青色1号、紫色401号、黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、赤色106号、黄色203号、アシッドオレンジ3等が挙げられ、塩基性染料としてベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックレッド76、ベーシックレッド51、ベーシックイエロー57、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31等が挙げられる。
【0093】
〔容器への充填〕
本発明の毛髪化粧料の油層と水層は、別個に調製し、2本ノズルの付いた充填機で容器に充填するのが好ましい。容器への充填手順は、下層となる水層を充填した後、上層となる油層を充填するのが好ましい。
【0094】
〔使用方法〕
更に本発明の毛髪化粧料は、使用前によく振って、油層と水層に分離が始まる前に手に取り出し、手のひらでよく伸ばしてから毛髪に塗布する。塗布後、加温あるいは自然乾燥することにより、有機カルボン酸及び親水性有機溶剤の毛髪内部への浸透を促進することができる。特に加温することが好ましく、加温には、ドライヤー、ヒーター、コテ等を使用することができる。温度としては、50℃以上、特に70℃以上が好ましい。
【実施例】
【0095】
実施例及び比較例
(製造方法)
・実施例(二層型毛髪化粧料;処方1又は2)
表2〜6に記載の各香料を、その香りの強さに応じて溶剤DPG(ジプロピレングリコール)にて希釈した後、表1の処方1又は処方2における未賦香油層に、最終濃度が二層型毛髪化粧料の0.1質量%となるよう添加した。
また、表8に記載の調合香料(フルーツ調香料HC)を、表1の処方1における未賦香油層に、最終濃度が二層型毛髪化粧料の0.1質量%となるよう添加した。
その油層を50mL規格ビン(透明)に9g量り取り、そこに表1の処方1の水層を11g加えたものを各2本調製した。
【0096】
・比較例(単層型毛髪化粧料;処方3)
表2〜6に記載の各香料を、その香りの強さに応じて溶剤DPG(ジプロピレングリコール)にて希釈した後、表1の処方3における未賦香組成物に、最終濃度が毛髪化粧料の0.1質量%となるよう添加した。その毛髪化粧料を50mL規格ビン(透明)に20gずつ量り取ったものを各2本調製した。
また、表8に記載の調合香料(フルーツ調香料HC)を、表1の処方3における未賦香組成物に、最終濃度が毛髪化粧料の0.1質量%となるよう添加したものを2本調製した。
【0097】
(評価方法)
各毛髪化粧料を5℃及び60℃の恒温層に各1本ずつ10日間保存した後、においの評価を行った。評価は5℃保存品を基準とし、60℃保存品のにおいの評価を専門パネラーにより、以下の評価基準で行った。
表2〜7に、各香料素材の名称・配合量、DPG配合量と共に、上記評価の結果を併せて示す。
【0098】
・におい安定性評価基準
A:5℃保存品と比較し、同等のにおいであり、非常に安定
B:5℃保存品と比較し、においが僅かに異なるが、ほぼ安定
C:5℃保存品と比較し、においが若干異なるが、かなり安定
D:5℃保存品と比較し、においがやや異なるが、安定
E:5℃保存品と比較し、においが異なり、不安定
F:5℃保存品と比較し、においが明らかに異なり、非常に不安定
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
【表7】

【0106】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも油層及び水層を含み、水層を水で20質量倍に希釈したときの25℃におけるpHが2〜5.5であり、油層が下記(a)〜(e)から選ばれる1種以上の香料成分を含有するものである洗い流さないタイプの多層型毛髪化粧料。
(a)一般式(1)で表される総炭素数3〜18のエステル
1-COOR2 (1)
〔式中、R1は水素原子、又は炭素−炭素結合の間に酸素原子若しくは窒素原子が挿入されていてもよい直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R2は炭素−炭素結合の間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数1〜15の炭化水素基を示す。〕
(b)総炭素数が4〜18のアセタール
(c)総炭素数が15〜17の大環状ラクトン又は大環状エーテルラクトン
(d)総炭素数が14〜15の大環状ジエステル
(e)フェニルアセトアルデヒド、インドール及び4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドから選ばれる化合物
【請求項2】
油層と水層の質量比が15:85〜70:30である請求項1記載の多層型毛髪化粧料。
【請求項3】
油層が、数平均重合度1000〜20000の高重合シリコーンを含有するものである請求項1又は2記載の多層型毛髪化粧料。
【請求項4】
油層が、揮発性油を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の多層型毛髪化粧料。
【請求項5】
水層が、炭素数2〜8の有機カルボン酸又はその塩を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の多層型毛髪化粧料。
【請求項6】
水層が、界面活性剤を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の多層型毛髪化粧料。
【請求項7】
水層が、水溶性高分子増粘剤を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の多層型毛髪化粧料。

【公開番号】特開2009−179624(P2009−179624A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22845(P2008−22845)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】