説明

多層成形品の形成方法

本発明は、外層ポリマー粉末が離型フィルムによって外層粉末から切り離される内層のポリマー粉末とともに回転成形機に添加される異なる融点を有する2つのポリマーの多層品を形成するための回転成形法に関する。離型フィルムは、外層ポリマーよりも高い融点を有し、好ましくは、内層ポリマー及び外層ポリマーよりも高い融点を有する。ある実施形態例においては、離型層は(より高い融点を有する)内層粉末を封入した封入体又はバッグを形成する。他の実施形態例においては、離型フィルムは、絶縁空間と型の間にバリアを形成する。本発明の方法は、「ワンショット」の回転成形方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層ポリマー粉末が離型フィルムによって外層粉末から切り離される内層のポリマー粉末とともに回転成形機に添加される異なる融点を有する2つのポリマーの多層品を形成するための回転成形法に関する。離型フィルムは、外層ポリマーよりも高い融点を有し、好ましくは、内層ポリマー及び外層ポリマーよりも高い融点を有する。ある実施形態例においては、離型層は(より高い融点を有する)内層粉末を封入した封入体又はバッグを形成する。他の実施形態例においては、離型フィルムは、絶縁空間と型の間にバリアを形成する。本発明の方法は、「ワンショット」の回転成形方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
回転成形は、単純なものから複雑なプラスチック製品又は中空プラスチック製品の製造に使用する。成形には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)及びそれらの混合物などの様々な材料が使用できる。D. Annechini, E. Takacs and J. Vlachopoulos in ANTEC, vol. 1, 2001及び米国特許出願2005/0255264号明細書に示されるように、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)もしばしば使用される。
【0003】
属性の異なる2つのポリマー材料を混合するためには、しばしば多層回転成形品の形成が好まれる。現在のところ、多層品を製造するため商業的に使用可能な方法は2つあり、両方の方法とも第一層を形成した後に、第二層成分を手動で添加することを含む。第一の方法は、第一層を金型で成形する一方で、ポリマー粉末を冷却するために金型に添付された絶縁ドロップボックスを使用し、そして、適切な時期に、バルブを開け粉末を熱した金型に入れ、それから、回転させ第二層を形成する。第二の方法は、オーブンから金型を外し、第二層の材料を熱した又は冷却した金型に手動で添加し、その後、米国特許第4,988,549号明細書(ポリアミド層及びポリイソシアネート/エポキシド層)又は国際公開第2005/115753号パンフレット(ポリオレフィンなどのフルオロポリマー/非フルオロポリマー)に記載されているように第二層を回転成形する。しかしながら、少数の金型を所定のアームに置くための時間、又は「2つの」回転成形サイクルにおける添加時間のいずれかのために、これらの方法は両方とも成形の生産性を下げてしまう。そこで、多層回転成形品を効果的に製造するためのワンショット製造方法が必要となる。
【0004】
複数のワンショット製造方法がすでに多層回転成形品製造のために使用されている。国際公開第2004/045849号パンフレットには、最小径粒子であれば最も早く金型の壁面に達するという知見に基づき、ワンショット製造方法により多層品を形成する旨が開示されている。より小さい径の外層材料及びより大きい径の内層材料を使用することで、二層の回転成形品を製造することを可能としている。この文献は、又、145℃未満の融点を有する外層粉末及び145℃より大きい融点を有する内層粉末の混合物の使用についても開示している。また国際公開第2004/045849号パンフレットには、より小さい粒子径の粒子、大きい粒子径でありより低い融点を有する内層粒子、及び、高い融点を有する外層のブレンドを使用し、これらの方法を組み合わせる方法が開示されている。しかしながら、この方法では、クリーンな層分離を生じることはできず、オーバーラップ、及び層の分離が明確でない部分が多くの量生じる。第二層粉末の融解を遅らせて第二層を形成した場合、粗雑な内表面が形成される。特開昭48−74741号公報には、103℃のHDPE外層とポリアミド(PA)6.6粉末(Tm=260℃)を含む低密度ポリエチレン(LDPE、融点110℃)の使用について開示している。PE層が完全に形成する前に、これはPA粉末の放出に至り、貧弱な層分離を生じ、これらの材料は相溶性を有さないので、PE粒子を充填したPA層は貧弱なバリア性能及び貧弱な物理学的特性しか有さない。層の間の接着力は、純粋に機械的なものであり、化学結合ではないと記載されている。
【特許文献1】米国特許出願2005/0255264号明細書
【特許文献2】米国特許第4,988,549号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/115753号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/045849号パンフレット
【特許文献5】特開昭48−74741号公報
【非特許文献1】D. Annechini, E. Takacs and J. Vlachopoulos in ANTEC, vol. 1, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、粗雑な内表面を形成することなく層間に強力な化学結合を提供できる多層成形品を製造するためのシングルステップ回転成形方法が必要となる。
【0006】
バッグ材料は同じポリマーを使用する2つの層タンクを製造するために使用し、例えば、タンクは以下のように使用する:(1)異なる色を有する内層及び外層の両方のためのPE;又は(2)固体のPE外層及び発泡内層PE表面を有するタンク。両方の場合、PEバッグが使用され内側層を含み、そして、両方の層が同じポリマーで形成されるので、機械的完全性及びバリア特性についての懸念は生じない。
【0007】
驚くべきことに、離型フィルムによって内層ポリマー粉末から分離した外層ポリマー粉末を使用することで異なる融点を有する異なるポリマーの2又は3以上の分離層を有す物品を一つのステップの回転成形法で形成できることを見出した。適切な組成と融点を有する離型フィルムを適切な内層材料及び外層材料と結合させた場合に、良好な層分離及び異なる化学組成を有する2つの層間の強力な接着を有する優れた成形品を形成できる。層間の接着が良質のタンク又は容器を生み出すのに必要となる一方で、層分離は良質なバリア特性又は化学耐性にとって必要である。離型フィルムは、内層ポリマー粉末を含んだ封入体又はバッグの形で形成されても良く、又、離型フィルムは、金型中の絶縁空間との間のバリアとして提供されて良く、又、ドロップボックスへの離型機構として提供されても良い。本発明の製造方法で形成された物品は良好な層分離を示し、各層の機械的特性及びバリア特性を最大限発揮することができ、一方では、相関の化学相溶性又は化学反応性により強力な層間接着を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転成形機に
a)外層ポリマー粉末;及び
b)内層ポリマー粉末
を加えるステップを含む多層回転成形品の成形方法に関し、
当該方法において、
外層ポリマー粉末と内層ポリマー粉末は、離型フィルムによってお互いに分離し、
前記離型フィルムが、より高い融点を有するポリマー粉末と同じ化学成分ファミリーであるか、相溶性を有するか、又は、化学的に反応でき、
前記離型フィルムが、外層ポリマー粉末の融点より5℃以上高い融点を有する。
【0009】
本発明のある実施形態例によれば、より高い融点を有する樹脂が、フィルムにより金型から分離された絶縁空間中に含まれていても良い。フィルムは、より高い融点を有するポリマーと同じ化学ファミリー又は相溶性を有するか、又は、化学反応するものである。この実施形態例における離型フィルムは高い融点を有する材料の融点より5℃以上高い融点を有する。
【0010】
本発明は、さらに、外層及び内層、を含み良好な膜分離特性、良好な機械的特性、効果的なバリア特性、及び、平滑な成形表面を有する多層回転成形品に関し、多層回転成形品において、前記外層及び内層が化学的にお互い異なり、10℃以上の異なる融点を有するポリマーを含み、回転成形中に同じポイントで離型フィルムによって、内層ポリマー粉末から外層ポリマー粉末が分離し、前記離型フィルムは、より高い融点を有するポリマー層と同じ化学成分ファミリーであるか、又は、相溶性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は外層ポリマー粉末が離型フィルムによって外層粉末から切り離される内層のポリマー粉末とともに回転成形機に添加される異なる融点を有する2つのポリマーの多層品を形成するための回転成形法に関する。
【0012】
本願で使用する「粉末」は、ポリマー粉末、ペレット、ミクロペレット及びそれらのブレンドで、回転成形に使用できるものを指す。一般的には、粉末が好ましいが、ペレット、ミクロペレット及び他の形態のポリマーであっても使用できる。最大3重量%の添加剤をブレンドして、ポリマー粉末、ペレット、又はミクロペレットを乾燥させれば良い。
【0013】
離型フィルムは、内層ポリマー粉末を外層ポリマー粉末から分離するために使用する。離型フィルムは、内層ポリマー粉末を含んだ封入体又はバッグの形で形成されても良く、又、離型フィルムは、金型中の絶縁空間との間のバリアとして提供されて良く、又、金型に恒久的に又は一時的に取り付けられる絶縁空間と金型の間の膜若しくはバリアを構成しても良い。内層ポリマー粉末と離型フィルムの関係としては、離型フィルムが、外層ポリマー粉末の融点より5℃以上、好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上高い融点を有するようにすれば良い。内層ポリマー粉末が離型フィルムに封入されている場合、内層ポリマー粉末の融点より5℃以上、好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上低い融点を有すれば良い。
【0014】
離型フィルムが金型から内層粉末を含む絶縁空間を分離している場合、離型フィルムは、外層粉末の融点より5℃以上、好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上高い融点を有する。絶縁空間中のポリマー粉末は多層成形品の内層となり、外層ポリマーの融点より低いか、同じか、高い融点を示す。この方法であれば、多層成形品の内層としてより低い融点を有するポリマーを設置する機構を提供することができる。
【0015】
離型フィルムが、より低い融点を有するポリマーの融点に近すぎる融点を有する場合、第2層がリリースされる前に、外層が完全には形成されない結果、すぐに溶解し剥離してしまう。これにより、層分離機能が乏しくなり、外層材料が内層材料と混ざってしまう。離型フィルム材料(バッグ)が、より高い融点を有するポリマーの融点に近すぎる融点を有する場合、高い融点有する粉末が溶け始めるのとほとんど同時にフィルム/バッグが溶けるので、塊が生じてしまうことがある。
【0016】
離型フィルムは、内層ポリマーと相溶性があるもの又は同じ化学ファミリーのポリマー性材料から選択すれば良い。離型フィルムは、内層ポリマーと相溶性があるもの又は同じ化学ファミリーのブロックを有するブロックコポリマーであっても良い。より高い融点を有するポリマーは、より低い融点を有するポリマーと反応し化学結合を形成できなければならず、より低い融点を有するポリマーと相溶性がある必要がある。
【0017】
離型フィルムは、種々の粘度を有していても良い一方、離型フィルム材料の溶融粘度は、回転成形品中で欠損レベルに与える影響が大きい。溶融粘度が非常に高い時は、欠損は塊及び段差(バンプ)として回転成形品の内表面に見られる。離型フィルムの粘性が内層樹脂粉末の粘性と近い場合、スムースな内表面を有した最良の品質を有する回転成形品を製造することができる。
【0018】
さらに、より不都合な層分離を引き起こすようなクラッキングの発生がないので、金型の内部に回転でき、高い耐性及び引き裂き抵抗を有したバッグ材料は大きな成形品を成形するときに最良の信頼性を有する。
【0019】
離型フィルムは、典型的には、1〜8mm、好ましくは2〜5mm、最も好ましくは3〜5mmの厚さを有している。フィルムは出来るだけ回転成形される粉末の分子量に近い分子量を有していることが望ましい。従来技術に見られる50μmは、耐性が弱く回転成形には一般的に薄すぎる。最良の回転成形品の構造安定性を得るためには、75μmのバッグが好ましい。
【0020】
(典型的には内層を形成する)より高い融点を有するポリマー粉末は、より低い融点を有するポリマー層の融点より10℃以上、より好ましくは20℃以上高い融点を有するポリマー又はポリマー混合物であれば良い。離型フィルム封入体(バッグ)の場合、より高い融点を有するポリマーは、離型フィルムの融点より5℃以上、より好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上高い融点を有することになる。ポリマーは官能化(機能化)されていても良く、部分的に官能化(機能化)されていても良く、官能化(機能化)されていなくても良い。使用できるより高い融点を有するポリマーとしては、特に制限はないが、ポリアミド、コポリアミド、ポリエステル類(例えばポリブチレンテレフタレート)、フルオロポリマー(例えばポリフッ化ビニリデンポリマー)、コポリマー及びターポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、アクリルメタクリル酸ポリマー及びコポリマー、ポリアセタール、ポリエーテルブロックアミド、液晶ポリマー、ポリカーボネイト、アクリル、芳香族又は脂肪族ポリケトン、ポリエーテルケトン類、ポリエチレンビニルアルコール、ポリフェニレンスルフィド、並びにこれらのブレンド又はアロイが挙げられる。内層ポリマーとしては、離型フィルムの融点よりも高い温度で重合する単量体ポリマーであっても良い。内層ポリマーとしては、回転成形機中でそのまま重合されるPA6などでも良い。好ましいポリアミドとしては、PA6、PA11、PA12、PA6−6、ポリアミドジアミン並びにコポリアミド、PA6/12、6.9、6.10、PA6/11、PA6.6/11、ポリエーテルブロックアミド、PA6/6.6並びにそれらの混合物などが挙げられる。より高い融点を有するポリマー層としては、ポリアミドとポリオレフィンの混合物でも良く、ポリオレフィンは、官能化(機能化)されていても良く、官能化(機能化)されていなくても良い。ポリマーは耐衝撃性改質剤でも良い。
【0021】
(一般的に外層である)より低い融点を有するポリマー粉末は、離型フィルムの融点より5℃以上、より好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上低い融点を有するポリマー又はポリマー混合物であれば良い。外層ポリマーは回転成形により提供される熱可塑性又は感温性ポリマーであれば良い。熱可塑性ポリマーであればより好ましい。より低い融点を有するポリマー層は、一般的に、エチレン、プロピレン、ポリアミド、機能性フルオロポリマー、機能性ポリオレフィン、ポリエステル類、機能性アクリル、ポリエチレンテレフタレートまたはブチレンテレフタル酸塩、液晶ポリマー、ポリカーボネイト、アクリル、ポリアミド、芳香族又は脂肪族ポリケトン、ポリエーテルケトン類、ポリエチレンビニルアルコール、ポリフェニレンスルフィド、若しくはこれらの混合物、又は他のポリマーから選択されるホモポリマー又はコポリマーである。好ましくは、外層は、内層と結合を形成可能な反応種又は末端基を有するいくつかの機能性ポリマーを含むと良い。これは、官能化(機能化)されているポリマーとその混合物でも良く、官能化(機能化)されていないポリマーとその混合物でも良い。使用できる機能性ポリマーの例としては、機能性ポリオレフィン又は末端アミン材料である。機能性ポリオレフィンは、両極性及び/又は反応性を提供できる材料とグラフト化又は共重合化したポリオレフィンであり、従って、機能性ポリオレフィンは、近接する層の性質に左右される。ある実施形態例によれば、機能性ポリオレフィンは、酸、無水物、エポキシ官能基などの反応性(機能性)単位を含んだα−オレフィンポリマーである。グラフト化又は共重合化した、3元重合化したポリオレフィンとしては、グリシジル(メタ)アクリル酸などの不飽和エポキシド、又は、カルボン酸、若しくは、対応する塩類、(メタ)アクリル酸などのエステル、又は、その代わりに無水マレイン酸のようなカルボン酸の無水物などが挙げられる。アミン末端材料は、外層で使用することもでき、好ましくはポリアミドジアミン(PAdiNH2)から選択される。
【0022】
より低い融点を有するポリマーのうち好ましくは2重量%以上は機能性ポリマーである。外層を形成する場合、ポリマーは例えばPA6を回転成形機中でそのまま重合させても良い。ある実施形態例においては、70〜98重量%、好ましくは80〜95重量%のポリエチレン又はポリプロピレン(アイソタクチック又はシンジオタクチック)を含有し、2〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の機能性ポリオレフィンを含有する。
【0023】
多層組成物はその最終成形品に求められる特性に応じて内層外層を設計する。本発明で使用可能な外層/離型フィルム/内層組成物は、ポリアミド11粉末(内層)、修飾HDPE(外層)及びPEBA(ポリエーテルブロックアミド)熱可塑性エラストマーをベースとした強化離型フィルムである。PEBAは硬いポリアミドブロックと、柔らかいポリエーテルブロックを有するブロックコポリマーであり、従って、内層ポリマーと同じ化学ファミリーから出来ている。ポリアミド11/HDPEシステムで使用できる離型フィルムのさらなる例としては、アジピン酸ヘキサメチレンジアミン、ラクタム6及びラクタム12のコポリアミドが挙げられる。これについても外層と同じ化学ファミリーである。離型フィルムとしては、PA12、35D、40D、55D〜72Dの硬度を有したPEBAが効果的に作用することを見出した。これらのポリマーはラウリルラクタムなどのポリアミドから形成される硬いブロック、又は、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエステルから形成される柔らかいブロックを有する。さらに、コポリアミドは全て、離型フィルム/バッグ材料として、内層のPA11と共に、効果的に使用できる。最終的には、融点を適切に設定すれば、機能性ポリプロピレンコポリマーはバッグ材料として使用しても良く、ポリオレフィン外層と相溶できる適切な組成物を含有する一方で、ポリプロピレンはPA11と反応できる反応基を含むこととなる。
【0024】
多層のデザインの他の例としては、以下に限定されないが、以下のものを含む。
−外層として無水基を有した修飾HDPE、離型フィルムとしてTm=150℃のコポリアミド又はTm=145℃のPEBA、そして内層としてPA12、PA6、PA11/6.6コポリアミド又はPA11/PA12コポリアミド、
−外層としてエポキシ官能基を有した修飾HDPE、離型フィルムとしてTm=145℃のPVDF、内層として無水基を有した修飾PVDF、
−外層としてエポキシ官能基を有した修飾HDPE、離型フィルムとしてブロックコポリエステルエラストマー、内層としてポリブチレン又はポリブチレンテレフタレートポリエステル、
−外層としてポリオレフィンブレンド及び機能性ポリオレフィン、内層として無水マレイン酸でグラフト化されたポリフッ化ビニリデン又は無水マレイン酸でグラフト化されたポリフッ化ビニリデンのブレンド及び非機能性ポリフッ化ビニリデン。
【0025】
ワンショット回転成形方法によれば、典型的に伸ばす必要がある成形サイクルを伸ばす必要もなく、大きいドロップボックスも必要ないので、効果的な成形方法を提供することができる。成形方法は、内層を含んだ離型フィルムバッグ及び外層用の粉末を同時に金型に添加することを含む。その際、成形サイクルにおいては、内部空気温度ピーク(peak internal air temperature, PIAT)を適切なものとし、好ましくは収縮空間特性を減少させるための水と同じ水でサンプルを冷却する。
【0026】
択一的な別の方法においては、離型フィルム材料は金型に恒久的に又は一時的に取り付けられる絶縁空間への開口部の間にバリアを形成するために使用しても良い。フィルムは温度による剥離メカニズムにより、外層が形成された部分の内層粉末の内側を剥離させる。従って、フィルムは絶縁空間からの内層の導入に対するゲートのように作用する。ゲート材料として使用できる離型フィルムは、蒸気のバッグと同じ特性を有する。
【0027】
良好な層間結合を達成するために、本発明では、貧弱な層分離を導く機械的な内部ロックよりもむしろ、層間化学結合を利用する。境界で材料が全く混合しないように良好な層分離を達成するための機械的特性とバリア特性を達成するために、層は相溶性が必要であり、好ましくは結合を形成する必要がある。タンクの壁は、層間での化学結合のために簡単には層間剥離しない。内層が「バリア」材料であるとき、化学耐性が低い外層と混合しないために、良好な相分離は化学耐性も良くすることになる。
【0028】
内層を含んだ離型フィルムバッグを使用した場合のさらなる利点として、材料の扱いやすさが見出された。粉末がバッグ内に封入されているので、塵や他の取り扱いにおける危険性を回避することができる。
【0029】
本発明の方法で形成した成形品は、良好な膜分離、良好な機械的特性、効果的なバリア特性、及び、平滑な成形表面を有する。本発明で形成する多層成形品において、内層は、典型的には0.5〜10mm、好ましくは1〜3mmの層厚を有し、外層は1〜10mm好ましくは2〜6mmの層厚を有する。本発明で形成した成形品は、これに限定されないが、燃料タンク、油圧タンク、化学タンク、石油タンク及びボトルを含む。
【0030】
ある実施形態例においては、3層又は4層以上有した物品を2つの異なる融点を有する2つのバッグを使用して形成することができる。2つの異なる融点を有する2つの離型フィルムを2つの離型フィルムとして使用して3層構造を構築しても良い。又、成分が同じか異なる2つか3つ以上の離型フィルムバッグは、成形密度を改善するため、又は、2つか3つ以上の材料の混合物を成分とした層を得るために、使用しても良い。
【実施例】
【0031】
ワンショット成形実験を、STP Lab 40回転成形機で、35〜40メッシュのPA6又はPA11ポリアミド回転成形粉末を使用し、異なるグレードのポリエチレン及び異なるバッグ材料を使用して行った。この結果を表1に示す。
【0032】
全ての実験のオーブンの温度は575°F(300℃)とし、内部空気温度ピーク(peak internal air temperature)が、PA6を使用した場合、480°F(250℃)、PA11を使用した場合、420°F(215℃)となるようなサイクル時間とした。PA11及び中密度ポリエチレン(MDPE)に2.5mmのPEバッグを使用した実験では、多数の孔を含んだタンク壁しか得られず、整然とした層は存在せず、壁の殆どはPA及びPEの混合物であり、2層分離の利益は殆どなかった。これと比較して、実施例2は、化学耐性及びPA11のバリア特性を有した良好な層分離を得られた。さらに機能性ポリオレフィンを含有したポリオレフィンを使用したので、その相間の化学結合の存在により良好な接着性能を示した。
【0033】
実施例1並びに比較例2及び3
これらの実施例においては、PA6粉末を内層粉末とし、異なるMDPEと成形した。実施例1においては、内層と同じ化学成分ファミリーのコポリアミドA離型フィルムを使用した。実施例1においては、機能性ポリオレフィンを含んだDPO25を使用して、非常に良好な層分離及び非常に良好な接着性を有する。比較例2においては、通常の(機能化、官能化されていない)PEを使用し、同様の離型フィルムを使用した。層分離は依然良好であったが、層間の接着性がなかった。比較例3においては、特開昭48−74741号公報で開示されたPEフィルムをしようした。その融点は外層の融点に近い。このような場合、層分離が非常に乏しくなり、PEとPA層の混合した部分において多くの孔が存在する。化学反応又は化学的相溶性ではなく大部分は機械的混合によって2つの層間の接着が見られた。PA6層の完全性は失われた。
【0034】
実施例2及び3並びに比較例4、5及び6
比較例4、5及び6の実験と、PE離型フィルム及びPA11を使用し、内層に化学相溶性を有するバッグを使用した本発明の実施例2の結果を比較した。比較例6はPE離型フィルム及び機能性ポリオレフィンを含むポリオレフィンを使用した。良好な層分離の結果を得られた比較例はなく、PA11層の完全性も失われた。実施例2及び3は、本発明で達成でき得る良好な層分離が得られた。又、実施例2及び3は、良好な層間の接着性が得られた。本発明のこれらの実施例と比較例の顕微鏡写真を図1〜7に示した。明るい層がMDPE又は修飾MDPEである一方で、暗い層はPA11である。
【0035】
離型フィルム(バッグ)の融点が内層の融点と同じある時、良好な相分離が達成できることも見出した。しかしながら、タンクの内側層には大きな欠陥が見られた。
【0036】
以下の表1において、
−コポリアミドA(CoPA)は、融点を150〜155℃としたアジピン酸/ヘキサメチレンジアミン、ラクタム6及びラクタム12のコポリマーである離型フィルムであり、
−DP025は、グラフト化された無水マレイン酸官能基を有する機能性ポリオレフィンを15%含有するように修飾したメタロセンMDPEであり、
−DP043は、0.94g/ccの密度の機能化、官能化されていないメタロセンHDPEであり、
−MDPEはMDPEであり(Eqは635〜662)
−PEBA Bは、ラウリルラクタムの硬いブロック及びポリテトラメチレングリコールの柔らかいブロックを含み融点145℃の40ショア(shore)Dブロックコポリアミドポリエーテルである。
【0037】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0038】
図中、黒い層は、ポリアミド11であり、白い層はポリエチレンである。全ての写真は、光学顕微鏡の50倍で、タンクの多層の薄切横断面を使用して撮影した写真である。
【図1】本発明の実施例2において製造した物品の横断面の写真であり、良好な層分離特性を示している。
【図2】本発明の実施例3において製造した物品の横断面の写真である。ここで、PE層より明らかにPA11層が分離している。PA層中には、明白なPEはない。
【図3】ポリアミド層とポリエチレン層が混合した、比較例4において製造した物品の横断面の写真である。
【図4】PA11層に大きな孔がある比較例5において製造した物品の横断面の写真である。
【図5】PA11層に大きな孔がある比較例5において製造した物品の横断面の写真である。
【図6】PA11層に大きな孔がある比較例6において製造した物品の横断面の写真であり、PA11層及びPE層の間の混合量が多いことがわかる。
【図7】PA11層に大きな孔がある比較例6において製造した物品の横断面の写真であり、PA11層及びPE層の間の混合量が多いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転成形機に
a)外層ポリマー粉末;及び
b)内層ポリマー粉末
を加えるステップを含む多層回転成形品の成形方法であって、
外層ポリマー粉末と内層ポリマー粉末は、離型フィルムによってお互いに分離し、
前記離型フィルムが、より高い融点を有するポリマー粉末と同じ化学成分ファミリーであるか、相溶性を有するか、又は、化学的に反応でき、
前記離型フィルムが、外層ポリマー粉末の融点より5℃以上高い融点を有する方法。
【請求項2】
前記離型フィルムが、内層ポリマー粉末の融点より5℃以上低い融点を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記離型フィルムが、外層ポリマー粉末の融点より10℃以上高い融点を有し、内層ポリマー粉末の融点より10℃以上低い融点を有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記離型フィルムが、外層ポリマー粉末の融点より20℃以上高い融点を有し、内層ポリマー粉末の融点より20℃以上低い融点を有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記離型フィルムが、1〜8mmの厚さを有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記離型フィルムが、3〜5mmの厚さを有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記離型フィルムが、内層ポリマー粉末が完全に封入されたバッグ状又は他の封入体形状である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記離型フィルムが、金型に恒久的に又は一時的に取り付けられる絶縁空間への開口部の間にバリアを形成する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記離型フィルムが、外層の融点より5℃以上高い融点を有し、内層の融点より5℃以上低い融点を有する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記離型フィルムが、外層及び内層の両方の融点より5℃以上高い融点を有する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記外層ポリマー粉末が内層ポリマー粉末の融点より5℃以上高い融点を有し、前記外層ポリマー粉末が回転成形機に置かれ、前記融点の低い内層ポリマー粉末が絶縁空間に置かれる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記内層はPA11を含み、前記離型フィルムは、PA12;硬度35D〜72DであるブロックエーテルブロックアミドポリマーのPEBA;PA11とラクタム6、ラクタム12及びアジピン酸−ヘキサメチレンジアミンのコポリアミド、並びに、PA12とラクタム6、ラクタム12及びアジピン酸−ヘキサメチレンジアミンのコポリアミドからなる群から選択されるポリマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記外層ポリマー粉末がポリオレフィン及び機能性ポリオレフィンのブレンドを含み、前記内層ポリマー粉末が無水マレイン酸でグラフト化されたポリフッ化ビニリデン、無水マレイン酸でグラフト化されたポリフッ化ビニリデン及び非機能性ポリフッ化ビニリデンのブレンド、又は、その他の機能性フルオロポリマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
より低い融点を有するポリマー粉末が2重量%以上の機能性ポリマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記外層ポリマーが、70〜98重量%のポリエチレン又はポリプロピレンを含み、2〜30重量%の機能性ポリオレフィンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記外層ポリマーが、80〜95重量%のポリエチレン又はポリプロピレンを含み、5〜20重量%の機能性ポリオレフィンを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記内層ポリマー及び前記外層ポリマーが相溶可能であるか、化学結合を形成可能である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
外層及び内層、を含み良好な膜分離特性、良好な機械的特性、効果的なバリア特性、及び、平滑な成形表面を有する多層回転成形品であって、
前記外層及び内層が化学的にお互い異なり、10℃以上の異なる融点を有するポリマーを含み、回転成形中にあるポイントで離型フィルムによって、内層ポリマー粉末から外層ポリマー粉末が分離し、
前記離型フィルムは、より高い融点を有するポリマー層と同じ化学成分ファミリーであるか、又は、相溶性を有する多層品。
【請求項19】
前記離型フィルムが、外層ポリマー粉末の融点より10℃以上高い融点を有し、内層ポリマー粉末の融点より10℃以上低い融点を有する請求項18に記載の多層品。
【請求項20】
前記離型フィルムが、外層ポリマー粉末の融点より20℃以上高い融点を有し、内層ポリマー粉末の融点より20℃以上低い融点を有する請求項19に記載の多層品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−533252(P2009−533252A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505540(P2009−505540)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/065946
【国際公開番号】WO2007/121090
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】