説明

多層熱可塑性フィルム

固相重合処理により進行できる熱可塑性ポリマーを少なくとも1種の非類似熱可塑性ポリマー又は有機若しくは無機粒子状充填剤とブレンドする。このブレンドを固相重合処理し、固相重合前のブレンドの物理的若しくは化学的特性と異なる少なくとも1つの物理的若しくは化学的特性を示す改質ポリマーアロイ又は充填剤添加したポリマーブレンドを与える。改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドは、改質ポリマーアロイ若しくは充填剤添加ポリマーブレンドの溶融粘度と類似の溶融粘度を示す熱可塑性押出ポリマーの層と同時押出できる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、Niederstにより、2006年10月16日に出願され、発明の名称が「多層熱可塑性フィルム」である米国仮出願第60/829,644号の利益を主張し、当該出願の全てを本明細書に含める。
【技術分野】
【0002】
本発明は多層熱可塑性フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
多層熱可塑性フィルムを製造するのがしばしば困難である。熱可塑性フィルムは、例えば、隣接表面に対する適切な接着性、撥油性、撥水性、滑性若しくはその他の表面関連特性;貯蔵安定性;強度、耐衝撃性若しくは弾性;化学耐性、摩耗耐性若しくは耐候性;低価格;又はその他の所望の特性のような一以上の潜在的に相容れない特徴を必要とする場合がある。多層フィルムは、さらに、個々の層が互いに隣接するように形成(例、同時押出により)できなければならない。
【発明の概要】
【0004】
非類似ポリマー、又はポリマー若しくは充填剤を溶融ブレンドし、その後、当該ブレンドを固相重合処理に付すと、原ポリマー(類)、原ポリマー類の単純ブレンド、又は原ポリマー及び充填剤のブレンドの特性よりも一以上の優れた特性を示す改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドを与え得ることを見出した。理論に束縛されることを意図しないが、固相重合処理は、原ポリマー(類)のブロック又はセグメントを再配列し、固有の特性を持つ新たなポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーを与え得る。得られた改質ポリマーブレンドを使用して一層以上の多層熱可塑性フィルムを形成でき、当該熱可塑性フィルムは、改質しなければ、同時押出により形成することが困難である。商業的に望ましい押出速度において満足のいく熱可塑性多層フィルム同時押出は、個々の層が類似の溶融粘度、例えば、選択した押出温度及び押出速度において互いに約±15%内の溶融粘度を示さない限り困難であり得る。開示する改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドは、選択した押出温度及び押出速度で溶融粘度が一定の値を示す熱可塑性ポリマーと同時押出できる。すなわち、非類似のポリマー類又はポリマー及び充填剤を溶融ブレンドし、一定の値よりも低い溶融粘度を示すブレンドを形成し、当該ブレンドを固相重合処理に付し、溶融粘度が一定の値に充分に近づいた改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドを与えることができ、その結果、改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンド及び熱可塑性ポリマーを同時押出でき、改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンド及び熱可塑性ポリマーの同時押出層が多層フィルムを形成できる。
【0005】
一態様において、本発明は多層フィルムの形成方法を提供し、当該方法は、
a) 選択した温度及び押出速度で溶融粘度が一定の値を示す第1熱可塑性ポリマーを準備し、
b)) 固相重合により進行できしかも選択した温度及び押出速度において前記の値と充分に異なる溶融粘度を示し、その結果、第1及び第2熱可塑性ポリマーは同時押出して、独立して、自立した多層フィルム形成できない第2熱可塑性ポリマーを準備し;
c) 当該第2熱可塑性ポリマーと
i) 少なくとも1種の非類似熱可塑性ポリマー、又は
ii) 有機若しくは無機粒子状充填剤と
をブレンドし;
d) 第2熱可塑性ポリマーを固相重合させて、改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ブレンドを与え、前記選択した温度及び押出速度における前記改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ブレンドの溶融粘度が前記一定の値に充分に近く、その結果、改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ブレンドと第1熱可塑性ポリマーとが同時押出して独立した自立多層フィルムを形成可能となり;
e) 改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドの層及び第1熱可塑性ポリマーを同時押出し;そして
f) 同時押出した層を冷却し、独立した自立多層フィルムを形成する。
【0006】
別の態様では、本発明は、二層以上のポリマー層を含む独立した自立多層フィルムを提供し、少なくとも一層は熱可塑性ポリマー及び(i)少なくとも1種の非類似ポリマー又は(ii)有機若しくは無機粒子状充填剤を含む改質ポリマーアロイ若しくは充填剤添加ポリマーブレンドを含み、熱可塑性ポリマーを固相重合により進行させ、得られたブレンドの溶融粘度は固相重合前の溶融粘度よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】比較例1で使用した通りの、慣用熱可塑性ポリマー及び熱可塑性ポリマーブレンドについての260℃における見かけの剪断粘度対見かけの剪断速度の図表である。
【図2】実施例1で使用した通りの、慣用熱可塑性ポリマー及び固相重合処理した熱可塑性ポリマーブレンドについての260℃における見かけの剪断粘度対見かけの剪断速度の図表である。
【図3】比較例2で使用した通りの、2種の慣用熱可塑性ポリマーについての260℃における見かけの剪断粘度対見かけの剪断速度の図表である。
【図4】図3に示した熱可塑性ポリマーの2種の予備配合ブレンドについての260℃における見かけの剪断粘度対見かけの剪断速度の図表である。
【図5】実施例2で使用した通りの、図4に示したブレンドについてとブレンドを固相重合処理した後のブレンド中のポリマーの内の一つについての260℃における見かけの剪断粘度対見かけの剪断速度の図表である。
【図6】比較例3に使用した通りの、充填剤添加熱可塑性ポリマーについてと2種の固相重合処理した熱可塑性ポリマーブレンドとについての260℃における見かけの剪断粘度対見かけの剪断速度の図表である。
【図7】充填剤添加熱可塑性ポリマーを固相重合処理した後の図6で示した熱可塑性物質についての260℃における見かけの剪断粘度対見かけの剪断速度の図表である。
【図8】種々の2種類の独立した自立多層フィルムの略断面図である。
【図9】種々の2種類の独立した自立多層フィルムの略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「ポリマー」という用語は、ホモポリマー及び、ランダム、ブロック、グラフト若しくはその他の主鎖配列を有する、コポリマー並びにターポリマー及びそれより高次ポリマーを含む。「非類似ポリマー」という語句は、主鎖が異なる物質の配列を含有するポリマー(例えば、異なるモノマーからなるポリマー)及び主鎖が同じ物質の異なる配列を含有するポリマー(例えば、同じモノマーのランダム及びブロックコポリマー)について言及する。「類似ポリマー」という語句は、主鎖が同じ物質の同じ配列を含有するポリマーについて言及する。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)中の主鎖は異なるモノマーの配列であり、PET及びPEは非類似ポリマーである。未使用PET及びリサイクルPETは、主鎖が同じ物質の同じ配列を含有するポリマーであるが、典型的には、鎖長及び酸価が異なる。未使用及びリサイクルPETは類似ポリマーである。
【0009】
ポリマーに関して使用するとき、「進行できる」という用語は、固相重合処理により重量平均分子量を増加できるポリマーについて言及する。
「ブレンド」及び「ブレンドする」という用語は、2種類以上のポリマー、又はポリマー及び有機若しくは無機充填剤を合わせて、肉眼で見て少なくとも均質である混合物であるかそのような混合物にする方法に言及する。「溶融ブレンド」という用語は、ポリマーのブレンドにおいてポリマーの内の少なくとも一つのポリマーの溶融温度(Tm)又はそれ以上の温度で行った任意のブレンド処理に言及する。
【0010】
「独立した自立(freestanding, self-supporting)」という語句は、フィルムに関して使用するとき、室温において、フィルムを供給用リールからそれ自身により巻き出すことができ、慣用フィルム取扱装置を使用して巻取リールに巻き取ることができることを意味する。
【0011】
「固相重合処理」及び「固相重合処理する」という語句は、固体状にある間に、熱をかけることにより、ポリマーの重合を促進する(例えば、極限粘度を増加させる)方法に言及する。
【0012】
開示する方法は進行できる熱可塑性ポリマー等を含む。種々の進行できるポリマー類を使用できる。代表的な進行できるポリマー類には、縮合ポリマー及び付加ポリマー等があり、縮合ポリマーが好ましい。1種以上の酸無水物、ポリオール及び不飽和脂肪酸を一緒に反応させることにより製造するか、又は1種以上のポリオール及び油の混合物をエステル交換することにより製造するアルキドポリエステル類も使用できる。代表的な脂肪酸には、脱水ヒマシ脂肪酸類、リノレン脂肪酸類、リシノール脂肪酸類、大豆脂肪酸類等、及びそれらの副生物及びその組み合わせ等がある。代表的な油には、植物油、例えば、カノラ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、粉砕ナッツ油、アマニ油、落花生油、リシニン油、サフラワー油、ダイズ油、ヒマワリ油トール油、桐油、クルミ油、木材油等;動物脂肪、例えば、魚油、ラード、家禽脂肪、タロー等、及びそれらの副産物及び組合せ等がある。その他の進行できるポリマーにはポリエステル類やコポリエステル類、例えば、PET、ポリブチレンテトラフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)並びに当業者に慣用的である酸類及びジオール類からなるその他のエステル類;ポリラクトン類、例えば、ポリカプロラクトン;ポリメチルメタクリレート(PMMA);スチレン/マレイン酸無水物(SMA);ポリオキシメチレン(POM);ケトン類、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリアリールエーテルケトン(PAEK);熱可塑性フルオロポリマー類;ポリカルボネート(PC);ポリウレタン;ポリアリーレート(PAR);ポリフェニレンオキシド(PPO);ポリアミド類、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン6,12及びナイロン12;イミド類、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド類(PEI)及びポリアミドイミド(PAI);ポリフタルイミド;スルホン類、例えば、ポリスルホン(PSul);ポリアリールスルホン(PAS)及びポリエーテルスルホン(PES);ポリアミノ酸類;ポリジメチルシロキサン類;その混合物;そして固相重合を妨害しないその誘導体(例えば、ハロゲン置換ポリマー類のような適切に置換されたポリマー類)等がある。開示されるブレンドは進行できないポリマーも含むことができる(しかし、必須ではない)。進行できるポリマーとブレンドできる代表的な進行できないポリマー類には、ポリオレフィン類、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリブチレン(PB);スチレン類、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリα−メチルスチレン及びスチレン/アクリロニトリル(SAN);ビニル類、例えば、ポリビニルクロリド(PVC)及びポリビニルナフタレン(PVN);並びにその混合物等がある。進行できるポリマー類及び進行できないポリマー類の混合物にはエステル類及びオレフィン類(例えば、PET及びポリエチレン)の混合物等がある。好ましくは、非類似ポリマー類のブレンドにおける総てのポリマー類は熱可塑性であり、より好ましくは、非類似ポリマー類のブレンドにおける総てのポリマー類は進行できる熱可塑性である。しかし、所望の場合、熱可塑性ポリマー及び非熱可塑性(例えば、熱硬化性)ポリマーを使用できる。
【0013】
開示するポリマー類を含有するブレンドは、種々の割合でしかも任意の所望の順序で合わせることができる。例えば、第1及び第2非類似ポリマーのブレンドは、約99〜約1重量%の第1ポリマーおよび約1〜約99重量%の第2ポリマー、約95〜約5重量%の第1ポリマー及び約5〜約95重量%の第2ポリマー、約90〜約10重量%の第1ポリマー及び約10〜約90重量%の第2ポリマー、又は約80〜約20重量%の第1ポリマー及び約20〜約80重量%の第2ポリマーを含有できる。3種以上(例えば、3種又はそれ以上、4種又はそれ以上或いは5種又はそれ以上)の非類似ポリマーを、開示するブレンドを製造するために合わせることができる。典型的には、非類似ポリマーは、少なくとも1種以上の物理的又は化学的特性に関して異なる。このような特性の代表例には、分子量、密度、ガラス転移温度(Tg)、溶融温度(Tm)、極限粘度(IV)、溶融粘度(MV)、メルトインデックス(MI)、結晶度、ブロック若しくはセグメントの配列、反応部位の利用度、種々のガス若しくは液体に関する反応性、酸価、表面エネルギー、疎水性、疎油性(oliophobicity)、水分透過性若しくは酸素透過性、透明性、耐熱性、太陽光線若しくは紫外線エネルギーに対する抵抗性、金属若しくはプラスチックを含む支持体に対する接着性、及びリサイクル性等がある。溶融粘度は、非類似ポリマー類のブレンドを固相重合に付すことにより改質することのできる特に有用な特性である。前記固相重合を行うことにより、例えば、約200〜300℃の温度および約50〜500Pa・秒の剪断速度において約±50%を超え、約±10%を超え、又は約±5%を超えるまで融点が相違する非類似ポリマーから所望のポリマーアロイの製造ができる。絶対尺度で測定される特性について、非類似ポリマー特性は、例えば、約±5%まで、約±10%まで、約±15%まで、約±25%まで、約±50%まで、又は約±100%を超えてまで異なり得る。非類似ポリマー類は、フレーク、ペレット、粉末又は溶融体を含むいずれの都合の良い形態でよい。非類似ポリマー類は、場合により、ブレンドする前に乾燥できる。乾燥は、一定の場合では有利に回避もでき、したがって、処理時間や設備費用を適切に節約できる。
【0014】
開示する進行できる熱可塑性ポリマーは、代わりに、又はさらに有機若しくは無機粒子状充填剤とブレンドできる。種々の有機充填剤を使用でき、その中には、ポリマー粒子(例えば、ポリマーナノ粒子)、微粒化ポリテトラフルオロエチレンのような微粒化有機ポリマー類、ヒドロゲル類、コア−シェルポリマー系、シーズポリマー系(sheathed polymer system)及び当業者に周知のその他の有機充填剤等がある。種々の無機充填剤を使用することができ、その中には、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アンチモン及び酸化ジルコニウムのような金属酸化物(金属酸化物ナノ粒子を含む);硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫酸バリウム、及びリトポンのような金属硫化物及び硫酸金属;窒化ホウ素のような金属窒化物;ビスマスオキシクロライドのような金属オキシクロライド;シェンナ若しくはアンバーのようなクレーを含む地球化合物(earth compound)(クレーナノ粒子を含む);炭酸カルシウム;タルク;珪灰石;並びに当業者に周知のその他の無機充填剤等がある。開示する進行できる熱可塑性ポリマー及び充填剤は種々の割合で合わせることができる。例えば、ポリマー及び充填剤のブレンドは、約15〜約99.9重量%のポリマーおよび約85〜約0.1重量%の充填剤、約30〜約99.9重量%のポリマー及び約70〜約0.1重量%の充填剤、又は約50〜約99.9重量%のポリマー及び約50〜約0.1重量%の第2充填剤を含有できる。一例として、着色フィルムが、しばしば、例えば、食品包装用に使用され、明るい、白色着色が、食品関連製品の市場化に対して衛生上、清潔な環境の雰囲気を与える。例えば、一又は総てのフィルム層内に二酸化チタンのような白色化剤を添加することにより、適切に白色化した多層フィルムを得ることができる。必要な光学特性及び性能を達成するために、高濃度の顔料を必要とする場合がある(例えば、40重量%以上)。
【0015】
非類似ポリマー類の開示ブレンド又はポリマー及び充填剤の開示ブレンドは1種以上の補助剤を含有できる。代表的な補助剤には、溶媒、抗微生物剤、UV吸収剤、光安定剤、抗酸化剤、芳香剤及び接着促進剤等がある。これら及びその他の補助剤は当業者に明らかであろう。
【0016】
開示ブレンドは、当業者に周知の装置及び技術を使用して合わせることができる。溶融ブレンドが好適であるが、必須ではない。ブレンドは均一であることが望ましいが、均一が必須ではない。非類似ポリマー類又はポリマー及び充填剤のブレンドについて都合の良い一方法は、押出機、例えば、一軸スクリュー押出機又は多軸スクリュー押出機中で各成分を合わせる方法である。押出機は、その長手方向に沿って一箇所以上の位置で、例えば、ブレンド中の非類似ポリマーの少なくとも1種又は好ましくは総てのTmを超える温度に加熱できる。
【0017】
ブレンドを微細に分割(例えば、当業者に周知の装置及び技術を使用して、ペレット化、顆粒化又はフレークに製造する)でき、その後ブレンドを固相重合する。微細に分割したブレンドは、所望の場合、固相重合を行うことができるまで貯蔵でき、そして所望の場合、結晶度を上げるために加熱又は冷却のような任意の中間工程に付すことができる。
【0018】
固相重合は、当業者に周知の装置及び技術を使用して行うことができる。都合の良い一方法は、ブレンドの融点より低い温度又はその主要成分の融点より低い温度(例えば、約150〜約250℃、約170〜約220℃若しくは約180〜約210℃の温度)に加熱し、不活性又は非反応性雰囲気(例えば、アルゴン又は窒素)の適当に密封した容器中に、改質していないブレンドの特性と異なる少なくとも一つの物理的又化学的特性を示す改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドを与えるのに足る時間にわたって、ペレット化したブレンドを入れる方法である。このような時間は、例えば、約2〜約24時間、約5〜約20時間又は約8〜16時間である。
【0019】
改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドを、当業者によく知られている種々の装置を使用して多層フィルムを製造するのに使用できる。当該装置には、平フィルム押出ライン及び吹き込み(管状)フィルムライン等がある。押出されたフィルムは、所望の場合、冷ロールに対して形成できる。当該フィルムは、熱処理(熱硬化又はアニーリング)に延伸(例えば、長手方向延伸、横方向延伸(テンター)又は二軸延伸)、表面処理(例えば、コロナ処理)、金属化、並びにその他の処理又は当業者によく知られている変換工程に付すことができる。
【0020】
得られた多層フィルムは、当業者に良く知られている様々な用途に使用でき、当該用途には、包装用フィルム(例えば、冷凍、新鮮または熱食品)、建築用材料(例えば、ハウスラップ)及び装飾フィルム若しくはグラフィックフィルム等がある。完成フィルムの外面は、所望の場合、適切な接着剤を使用するか、適切な外部層を有するフィルム用熱積層処理(例えば、加熱したフィルム若しくは加熱した支持体)を使用して、別のフィルムか,又は別の支持体に接着する。
【0021】
図8は、多層フィルム80の略断面図を示し、未改質ポリマーからなるより厚い層82が改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーからなるより薄い層84に隣接する。得られる被覆物品が同様に図9の物品90であり、改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドからなるより薄い層92が未改質ポリマーからなるより厚い層94の上に在り、層94は、順に改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーからなるより薄い層96の上に在る。当業者は、その他の数や配置の層が可能であることを了解するであろう。本発明の多層フィルムは、例えば、二層、三層、四層、五層又はそれ以上の層(例えば、十層若しくは十一層)を含むこともできる。層の厚さは様々であることができ、例えば、約1マイクロメートル〜約10ミリメートル、約1マイクロメートル〜約1ミリメートル、又は約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルであることができる。種々の非類似熱可塑性押出ポリマーを使用でき、その中には、上述の種々の熱可塑性ポリマー類がある。非類似熱可塑性押出ポリマーは、改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンド中のいずれかのポリマーと異なるか又は同じであることができる。例えば、非類似熱可塑性押出ポリマーは、2成分ポリマーアロイ中の2種の非類似ポリマーのより高い方の溶融と同じであることができる。
【0022】
個々の層の溶融粘度は、選択した押出温度及び押出速度において、望ましくは、お互い約±15%、±10%又は±5%以内である。一層以上の同時押出された層の溶融粘度及びそれ故流量が別の同時押出層のそれと実質的に異なる場合、多層は1以上の点で欠陥を示し得る。典型的な市販ポリマーを多層フィルムを製造するために同時押出しするとき、一定の粘度要求に合致する物質の選択は完全に制限され得る。したがって、既存の同時押出系は、非常に接近して一致した溶融粘度ばかりでなく非常に類似したその他の物理的及び化学的特性をも有する物質からなる層を使用できる。かかる系は広範な性能特性を与えず、真の多層フィルム系のようなものではなく、単一物質からなる厚い単層のような性能を示す傾向がある。
【0023】
製造者は、一定の単層又は複数層において複数物質をブレンドすることにより、同時押出多層フィルムの性能特性を広くすることも探求もしてきた。このようなブレンドは、一層では達成できない化学的又は物理的特性の混合を与えることを意図する。層配合物(formulation)は、例えば、典型的には予備ブレンドされ(予備配合され)、次いでフィルム形成装置に加え、単一の異なる層を与える2種以上の物質を含有し得る。しかし、予備配合はブレンドした物質の粘度に有害な影響を与えることがあり、これは、おそらく、機械的剪断、熱、水分又は予備配合処理中にもたらされるその他の因子が原因と思われる。例えば、非常に類似した溶融粘度を示す2種類の物質を予備配合すると、得られたブレンドは、出発物質のいずれかの溶融粘度よりも相当低い溶融粘度を示すことがある。このような溶融粘度の低下は、同時押出多層フィルムが層中の物質の予備配合したブレンドを使用して形成できる程度を劇的に制限し得る。溶融粘度における類似の減少は、ポリマー及び粒子状充填剤を予備配合するときも観察され得る。
【0024】
開示方法は、市販供給製品から得ることのできない特性を有する独自のポリマーアロイ及び充填剤添加ポリマーブレンドの製造ができる。ポリマーアロイの1以上の特性は、例えば、純(neat)出発物質やその単純ブレンド品の対応する特性では得られないか優れている。したがって、開示方法は、溶融配合方法を介して合わされる数種の出発物質をして、最終製品において最終使用者により望まれるいくつかの特性を有するが、しかし、そのような最終製品にも必要なその他の特性(例えば、適切な溶融流量)が欠けることがあり、単一の固体ペレットを形成し得る。このペレットの特性は、固相重合を使用して改質し、より満足のいく全特性を有し、しかも多層同時押出系におけるその他の層と適合性のある改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドを提供できる。
【実施例】
【0025】
下記の非限定的例で本発明をさらに例証する。例中、部及び百分率は特に指示しない限り重量基準である。
(比較例1)
ブレンドした第1及び第2ポリマー
KOSATM1101E 迅速−結晶性PET(“CPET”、Invista供給)の予備−乾燥試料(水分<100ppm、カールフィッシャー分析による)及びDYNAPOLTMP1500HV 部分結晶コポリエステル(Degussa供給)を50:50の比率で合わせ、ZSK二軸スクリュー押出機(Werner & Pfleiderer製)中で配合し、小さな円筒形のペレットにペレット化した。KOSA 1101E CPETはボトル用のグレードであり、0.8極限粘度数(IV)熱可塑性ポリマーであり、相当硬質で耐久性がある。DYNAPOL P1500HV コポリエステル樹脂は軟質であり、KOSA 1101E CPETよりも溶融粘度が相当低い。
【0026】
ペレット化ブレンドを、CONAIRTMドライヤー(CONAIR CORP製)を使用して乾燥し(水分<100ppm、カールフィッシャー分析による)、DYNISCOTMLCR7000キャピラリーレオメーターを使用して260℃における溶融粘度について分析した。乾燥KOSA 1101E CPET参照試料も分析した。図1は、参照試料(曲線1)及びブレンド(曲線2)についての粘度対剪断曲線を示す。下記の表1は、参照試料及びブレンドについての溶融流量及び剪断粘度の比較である。
【0027】
【表1】

【0028】
表1中のデータは、DYNAPOL P1500HVポリマーのブレンド中への包含は、ブレンドの溶融粘度が、100%KOSA PETよりも顕著に低くなり、許容できる同時押出の指針である±15%をはるかに上回った。ブレンドは、同時押出した多層フィルムにおけるKOSA PET層に隣接する層として使用できない。
【0029】
(実施例1)
固相重合処理に付したブレンドした第1および第2ポリマー
比較例1のペレット化ブレンドを16時間200℃で、約760mmHgの真空度条件下、固相重合に付した。得られたポリマーアロイペレットを乾燥させ、比較例の方法を使用して溶融粘度について分析した。乾燥KOSA 1101E CPET参照試料も分析した。図2は、参照試料(曲線1)及び固相重合したブレンド(曲線2)についての粘度対剪断曲線を示す。下記の表2は、参照試料及び固相重合したブレンドについての溶融流量、及び剪断粘度の比較である。
【0030】
【表2】

【0031】
表2のデータは、ブレンドの固相重合は、許容できる同時押出の溶融粘度指針に合致するのに足る観測溶融粘度も改良した。
(比較例2)
三層同時押出系
KOSA 1101E CPET(実施例1で使用した0.8dl/gIVポリエステル)及びEASTARTM6763 グリコール改質PET(Eastman Chemical Co.供給“PETG”、0.78dl/gIVポリエステル)の試料を乾燥させて、カールフィッシャー分析により約50ppmの水分値にし、260℃における溶融粘度について試験した。結果を図3に示すが、KOSA 1101E CPETについての粘度対剪断曲線(曲線1)及びEASTARTM6763 PETGについての粘度対剪断曲線(曲線2)を示す。溶融粘度測定を基準に、いずれかの物質の層、又は双方の物質のブレンドを含有する層は、充分に類似した一定の温度における溶融粘度及び剪断速度を示し、その結果、それらは同時押出できる。表3に示した配合はこの仮定を試験するために製造した。
【0032】
【表3】

【0033】
乾燥KOSA 1101E CPET及びEASTAR 6763 PETGポリマーからなるペレットを市販75mm二軸スクリュー押出機に265〜280℃の温度で供給することにより、最上層及び底層配合物を予備配合した。得られた押出したポリマーブレンドをペレットに形成し、結晶化させ、水分値が50ppm(カールフィッシャー分析)未満になるまで乾燥させ、260℃における溶融粘度について試験した。結果を図4に示すが、100%KOSA 1101E CPET中間層(曲線1)、75%KOSA 1101E CPET+25%EASTAR 6763 PETG最上層(曲線2)、及び25%KOSA 1101E CPET+75%EASTAR 6763 PETG底層(曲線3)について、粘度対剪断曲線を示す。データは、予備配合処理の間に最上層及び底層溶融粘度の実質的低下が起こり、しかも予備配合した最上層及び底層の溶融粘度がKOSA 1101E CPET中間層の溶融粘度よりも非常に低いことを示す。これら三層の満足のいく同時押出は、フィルム形成欠陥の遭遇無しには困難である。
【0034】
(実施例2)
固相重合処理中間層を有する三層同時押出系
実施例1の方法を使用して、比較例2ペレット化予備配合ブレンドを約760mmHgの真空度下、200℃で12時間固相重合処理に付した。得られた固相重合処理ポリマーアロイの260℃における溶融粘度を試験した。結果を図5に示すが、100%KOSA 1101E CPET中間層(曲線1)、固相重合処理した75%KOSA 1101E CPET+25%EASTAR 6763 PETG最上層(曲線3)、及び固相重合処理した25%KOSA 1101E CPET+75%EASTAR 6763 PETG底層(曲線2)について、粘度対剪断曲線を示す。データは、固相重合処理した最上層及び底層の溶融粘度は、KOSA 1101E CPET中間層の溶融粘度と密接に一致し、しかも、総ての三層を一緒の同時押出が成功裡に行くはずであることを示す。フィルムの試料は、鋼製支持体を約50〜300℃に加熱し、次いで、加熱した支持体に対してフィルムを押しつけることにより当該鋼製支持体に接合可能だった。
【0035】
(比較例3)
着色塗料
押出機を使用して、40wt% TiONATM188二酸化チタン(Millennium Chemicals製)を60wt% KOSA 1101E CPET中に予備配合し、実施例2で使用した中間層の白色版を与えた。予備配合工程は、得られた充填剤添加ポリマーブレンドの溶融粘度の実質的減少をもたらした。充填剤添加ポリマーブレンドをペレット化し、結晶化させ、乾燥させて、50ppm未満の水分値(カールフィッシャー分析による)にし、260℃における溶融粘度について試験した。結果を図6に示すが、60%KOSA 1101E CPET+40%二酸化チタン中間層(曲線3)、75%KOSA 1101E CPET+25%EASTAR 6763 PETG最上層(曲線1)、及び25%KOSA 1101E CPET+75%EASTAR 6763 PETG底層(曲線2)についての粘度対剪断曲線を示す。データは、予備配合工程の間に中間層において溶融粘度の顕著な減少が起こり、予備配合した最上層及び底層の溶融粘度が充填剤添加KOSA 1101E CPET中間層の溶融粘度を相当上回ったことを示す。フィルム形成欠陥の遭遇なしにはこれらの三層の満足した押出を行うことは困難であった。
【0036】
(実施例3)
固相重合処理した着色中間層を用いる三層同時押出系
実施例1の方法を使用して、比較例3ペレット化予備配合中間層組成物を約760mmHgの真空度条件下、190℃で16時間固相重合に付した。得られた固相重合処理充填剤添加ポリマーブレンドを260℃の溶融粘度について試験した。結果を図7に示すが、固相重合処理60%KOSA 1101E CPET+40%二酸化チタン中間層(曲線1)、固相重合処理75%KOSA 1101E CPET+25%EASTAR 6763 PETG最上層(曲線3)、及び固相重合処理25%KOSA 1101E CPET+75%EASTAR 6763 PETG底層(曲線2)についての粘度対剪断曲線を示す。データは、固相重合した最上層及び底層の溶融粘度は着色中間層の溶融粘度に接近して一致し、三層総ての同時押出が満足すべきものであることを示す。
【0037】
本発明の種々の修正及び変更は本発明を逸脱しないで当業者に明らかである。したがって、本発明は、上記例証的実施態様に制限されないことを了解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 選択した温度及び押出速度において溶融粘度が一定の値を示す第1熱可塑性ポリマーを準備し、
b)) 固相重合により進行でき、しかも選択した温度及び押出速度において前記一定の値と充分に異なる溶融粘度を示し、その結果、第1及び第2熱可塑性ポリマーは同時押出して、独立して、自立した多層フィルム形成できない第2熱可塑性ポリマーを準備し;
c) 当該第2熱可塑性ポリマーと
i) 少なくとも1種の非類似熱可塑性ポリマー、又は
ii) 有機若しくは無機粒子状充填剤と
をブレンドし;
d) 第2熱可塑性ポリマーを固相重合させて、改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ブレンドを与え、前記選択した温度及び押出速度における前記改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ブレンドの溶融粘度が前記一定の値に充分に近く、その結果、改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ブレンドと第1熱可塑性ポリマーとが同時押出して独立した自立多層フィルムを形成可能となり;
e) 改質ポリマーアロイ又は充填剤添加ポリマーブレンドの層及び第1熱可塑性ポリマー層を同時押出し;そして
f) 同時押出した層を冷却し、独立した自立多層フィルムを形成する
ことを含む多層フィルムの形成方法。
【請求項2】
第2熱可塑性ポリマーが縮合ポリマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2熱可塑性ポリマーがアルキドを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
非類似熱可塑性ポリマーが進行できる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
非類似熱可塑性ポリマーが進行できない請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の非類似熱可塑性ポリマーとをブレンドすることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第2熱可塑性ポリマーがポリエステルを含み、非類似熱可塑性ポリマーがコポリエステルを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2熱可塑性ポリマーがポリエチレンテレフタレートを含み、非類似熱可塑性ポリマーがコポリエステルを含み、そして、改質ポリマーアロイの溶融粘度が固相重合処理前のブレンドの溶融粘度よりも高い溶融粘度を示す請求項6に記載の方法。
【請求項9】
改質ポリマーアロイの溶融粘度は、約200〜300℃の温度及び約50〜500Pa−秒の剪断速度において第1熱可塑性ポリマーの約±15%の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
改質ポリマーアロイの溶融粘度は、約200〜300℃の温度及び約50〜500Pa−秒の剪断速度において第1熱可塑性ポリマーの約±5%の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第2熱可塑性ポリマーと有機粒子状充填剤とをブレンドすることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第2熱可塑性ポリマーと無機粒子状充填剤とをブレンドすることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
無機粒子状充填剤が金属酸化物を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ブレンド工程が溶融ブレンドを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
二層以上のポリマー層を含む独立した自立多層フィルムであって、少なくとも一層は熱可塑性ポリマー及び(i)少なくとも1種の非類似ポリマー又は(ii)有機若しくは無機粒子状充填剤を含む改質ポリマーアロイ若しくは充填剤添加ポリマーブレンドを含み、熱可塑性ポリマーを固相重合により進行させ、得られたブレンドの溶融粘度は固相重合前のブレンドの溶融粘度よりも大きい、前記二層以上のポリマー層を含む独立した自立多層フィルム。
【請求項16】
熱可塑性ポリマーが縮合ポリマーを含む請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項17】
熱可塑性ポリマーがアルキドを含む請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項18】
ブレンドが、熱可塑性ポリマー及び少なくとも1種の非類似ポリマーを含む請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項19】
熱可塑性ポリマーがポリエステルを含み、非類似ポリマーがコポリエステルを含む請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項20】
改質ポリマーアロイの溶融粘度は、約200〜300℃の温度及び約50〜500Pa−秒の剪断速度において非類似熱可塑性ポリマーの約±15%の範囲内である、請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項21】
ブレンドが熱可塑性ポリマー及び有機粒子状充填剤を含む請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項22】
ブレンドが熱可塑性ポリマー及び無機粒子状充填剤を含む請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項23】
無機粒子状充填剤が金属酸化物を含む請求項22に記載の多層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−506772(P2010−506772A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533467(P2009−533467)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/081407
【国際公開番号】WO2008/048934
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(503026211)ヴァルスパー・ソーシング・インコーポレーテッド (15)
【Fターム(参考)】