多層配線基板およびその製造方法
【課題】 簡素な構成で多層配線基板における広い周波数帯域に亘るノイズを低減できる多層配線基板を提供する。
【解決手段】 グランド層141と電源層15との間に形成された高容量層121と、電源層15とグランド層142との間に形成された高容量層122とを有している。高容量層121および122は、それらの電気容量が互いに異なっている。多層配線基板10は、電源層15を兼用した互いに電気容量の異なる2つのキャパシタを内蔵している。
【解決手段】 グランド層141と電源層15との間に形成された高容量層121と、電源層15とグランド層142との間に形成された高容量層122とを有している。高容量層121および122は、それらの電気容量が互いに異なっている。多層配線基板10は、電源層15を兼用した互いに電気容量の異なる2つのキャパシタを内蔵している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板に関し、特に、多層配線基板のノイズ対策のために、電源層とグランド層の間にコンデンサ機能を具備した多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やノート型パーソナルコンピュータ等の携帯型電子機器の小型軽量化と高機能化が求められている。それに伴い、半導体用基板やLSIパッケージ等に使用される回路基板については、高密度配線、小型軽量化と併せて、伝送速度の高速化が求められている。
【0003】
しかし、信号速度が高くなるにつれて低速では問題にならなかったノイズが情報の伝達を妨げるという問題が生ずる。伝送速度の高速化のためには、ノイズを低減させるような回路基板の設計が必要である。
【0004】
従来、多層配線基板上にデカップリングコンデンサを実装して電気的ノイズを削減する方法が一般的にとられてきた。
【0005】
図1に従来の多層配線基板の斜視図を示す。
【0006】
図1の多層配線基板80は、回路基板に用いられる絶縁材料から成る電気容量が低い低容量層811および812と、電気容量値が低容量層811および812よりも高い高容量層82とを備えている。低容量層811および812はそれぞれ、多層配線基板80の裏面側と、多層配線基板80のLSIチップなどの電子部品60が実装される表面側とに配置されている。多層配線基板80上には、LSIチップの電源ノイズを低減する目的でデカップリングコンデンサ90が実装されている。
【0007】
図2は、図1の多層配線基板におけるライン2−2に沿った断面図である。
【0008】
多層配線基板80の表面側および裏面側の低容量層811および812上に配置された導電層が信号層831および832である。信号層831および832は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。2つの信号層の間には下から低容量層811、電源層85、高容量層82、グランド層84、低容量層812の順に積層されている。LSIチップなどの電子部品60は、グランド層ビア87、電源ビア88を介して、グランド層84、電源層85のそれぞれに接続される。
【0009】
しかし、信号伝送周波数の高周波数化が近年ますます進んでおり、それに伴い基板に実装されるコンデンサの数も増大してきている。コンデンサの多用は、部品間の最短配線を不可能なものとし、同期をとることを難しくするなど、配線設計を困難なものとしており、また、回路基板の小型化を妨げ、コスト増加を引き起こしている。
【0010】
このため、近年では、LSIパッケージ等の多層配線基板中に高誘電率材料から成る層を設け、コンデンサとして機能する構成をLSIパッケージ等に内蔵させることにより、電気的ノイズを削減させる方法が提案されている。このような手法は、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されている。この方法では、LSI直下にコンデンサを配置できるため、基板上に実装されたデカップリングコンデンサに比べてLSIとコンデンサとの間を非常に短い線路で接続でき、回路の寄生インダクタンス成分を低減させ得るため、LSI電源のノイズを低減することができる。
【0011】
【特許文献1】実開平7−10979号公報
【特許文献2】特開2002−217545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1に開示された多層配線基板では、多層配線基板内に内蔵された高誘電率材料で除去しきれない周波数帯域のノイズに対しては、結局、基板上やLSIパッケージ上へデカップリングコンデンサを追加する必要があるという問題があった。
【0013】
また、特許文献2に開示された多層配線基板では、電源層とグランド層とから成る一電源層対毎に容量層を有しているがために全体の層数が多く、複雑な構成であり、回路基板の小型化を十分に達成することはできない。
【0014】
それ故、本発明の課題は、簡素な構成で多層配線基板における広い周波数帯域に亘るノイズを低減できる多層配線基板を提供することである。
【0015】
本発明の他の課題は、上記のような多層配線基板を容易に製造できる多層配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、第1〜第3の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層とを有し、前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なることを特徴とする多層配線基板が得られる。
【0017】
本発明によればまた、第1〜第4の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層と、前記第3の導電層と前記第4の導電層との間に形成された第3の絶縁層とを有し、前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なることを特徴とする多層配線基板が得られる。
【0018】
本発明によればさらに、第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層を有し、前記内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、前記外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なることを特徴とする多層配線基板が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層と、前記外側導電層の一方の上に第3の絶縁層を介して形成された付加的外側導電層とを有し、前記内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、前記外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、前記付加的外側導電層は、電源層またはグランド層であり、前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なることを特徴とする多層配線基板が得られる。
【0020】
さらに、本発明によれば、多層配線基板の製造方法であって、第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程とを有し、前記第1および前記第2の容量層は、それらの電気容量が互いに異なり、さらに、前記第1の部材の一方の面上に前記第2の部材の導電層の無い面が突き合わさるようにプレス成形によって積層する工程を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、多層配線基板の製造方法であって、第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程と、第3の容量層の片面に導電層を形成して第3の部材を生成する工程とを有し、前記第1、前記第2、および前記第3の容量層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なり、さらに、前記第1の部材の一方の面上に前記第2の部材の導電層の無い面が突き合わさると共に、該第1の部材の他方の面上に前記第3の部材の導電層の無い面が突き合わさるように、プレス成形によって積層する工程を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による多層配線基板は、広い周波数帯域に亘るノイズを低減でき、かつデカップリングコンデンサの個数を減らすか、無くすことができる。
【0023】
本発明による多層配線基板はさらに、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素である。
【0024】
また、本発明による多層配線基板の製造方法は、上記のような多層配線基板を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明による多層配線基板は、第1〜第3の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、第2の導電層と第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層とを有し、第1および第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なっている。
【0026】
また、本発明による多層配線基板は、第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層を有し、内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、第1および第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なっている。
【0027】
即ち、本発明による多層配線基板は、2つ以上のコンデンサ機能を奏する構成を、多層基板内に内蔵している。このため、広い周波数帯域に亘るノイズを低減でき、かつデカップリングコンデンサの個数を減らすか、無くすことができる。
【0028】
さらに、本発明は、間に容量を持つ絶縁層を有する電源層とグランド層との電源層対の少なくとも一方が、他の電源層対に兼用される構成である。このため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素である。
【0029】
また、本発明による多層配線基板の製造方法は、第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程と、第1の部材の一方の面上に第2の部材の導電層の無い面が突き合わさるようにプレス成形によって積層する工程とを有している。尚、第1および第2の容量層は、それらの電気容量が互いに異なっている。このため、上記のような多層配線基板を容易に製造できる。
【実施例】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施例による多層配線基板およびその製造方法について詳細に説明する。
【0031】
[第1の実施例]
図3は、本発明の第1の実施例による多層配線基板の斜視図である。
【0032】
多層配線基板10は、回路基板に用いられる絶縁材料であってこれを挟む導電層間の電気容量値が低い低容量層111および112と、導電層間の電気容量値が低容量層111および112よりも高い2つの高容量層121および122とを備えている。
【0033】
低容量層111および112は、多層配線基板10の裏面側と、多層配線基板10のLSIチップなどの電子部品60が実装される表面側とに配置されている。
【0034】
また、高容量層121および122は、互いに容量が異なり、また隣接して配置される。
【0035】
図4は、図3の多層配線基板のライン4−4に沿った断面図である。
【0036】
多層配線基板10の裏面側および表面側の低容量層111および112上に配置された導電層が信号層131および132である。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。2つの信号層131および132の間には下から順に、低容量層111、グランド層141および142、高容量層121、電源層15、高容量層122、グランド層142、低容量層112の順に積層されている。
【0037】
尚、信号層131および132、グランド層141および142、電源層15は、銅箔としてよいが、これに限らず、多層配線基板の導電層に一般に用いられる材料を使用してもよい。
【0038】
このように、本発明の多層配線基板10は、電源層15を電気容量が互いに異なる高容量層121および122で挟み込み、それをさらにグランド層141および142で挟み、低容量層111および112を介してそれをさらに信号層131および132で挟むように積層され形成されたものである。
【0039】
尚、信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。信号層131および132の電源配線と電源層15との間には、電源ビア18が形成されている。また図示していないが表面側の信号層131および132の信号配線と、裏面側の信号層131および132の信号配線との間にビアが形成されてもよい。尚、図4に示すように2つの信号層131および132の平面視で同じ位置にグランド配線および電源配線が存在するようにし、グランドビア17、電源ビア18が多層配線基板10を貫いて形成されて2つの信号層131および132上のグランド配線および電源配線に接続されるようにしてもよい。
【0040】
グランド層141および142および電源層15は、基本的にグランドビア17、電源ビア18等との干渉を避けた最大限の範囲に形成されている。
【0041】
低容量層111および112の絶縁材料の誘電率は、例えば比誘電率が2〜5程度である。低容量層111および112の絶縁材料は、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥したものを用いているが、これに限られるものではない。例えば比誘電率4.2の材料を用い、厚さを200μmとすると、単位面積あたりの電気容量は、0.2pF/mm2程度である。
【0042】
高容量層122の電気容量は、高周波のノイズを吸収する小容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定する。コンデンサの電気容量Cは、下記(1)式で定義されるように、電極面積Aと誘電体の比誘電率εrに比例し、電極間距離dに反比例する。
【0043】
C=ε0・εr・A/d ・・・(1)
(ε0:真空の誘電率)
【0044】
そこで例えば、低容量層111および112の絶縁材料と同じ比誘電率4.2の材料を用いて厚さを50μmとすることにより、電気容量を0.78pF/mm2とする。
【0045】
高容量層121の電気容量は、電源リップル電圧などを吸収する大容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定し、望ましくは2pF/mm2以上に設定する。本実施例では、高容量層121の絶縁材料として、高容量層122よりも高誘電率化したものを用いる。例えば高容量層122のエポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーを充填したものを用い、比誘電率を16とし、厚さを50μmとすることにより、高容量層121の電気容量は2.8pF/mm2とする。
【0046】
本実施例ではこのように、高容量層121および122に使用される誘電材料の電気容量が互いに異なる。この効果について図5を参照して説明する。
【0047】
図5は、図3および図4の多層配線基板を用いて、周波数に対するインピーダンスの変化をシミュレーションした例を示す図である。信号層15、高容量層122、およびグランド層142による第1キャパシタは、400MHz付近でインピーダンスが最も低くなる。一方、信号層15、高容量層121、およびグランド層141による第2キャパシタは、1MHzでインピーダンスが最も低くなった。そして、この両者をもつ本実施例による多層配線基板は、1MHz付近と400MHz付近での2箇所の周波数で低いインピーダンスを示した。このように、異なる誘電率の第キャパシタを共存させると、各々の周波数帯域においてノイズ削減効果が得られることが示された。
【0048】
また、本実施例は、間に高容量層122を有する電源層15とグランド層141のうちの電源層15が、間に高容量層121を有する他の電源層対に兼用される構成であるため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【0049】
次に、本実施例の変形例について説明する。図6は、本発明の第1の実施例の変形例の多層配線基板の断面図である。図3および図4と同一符号は同一或いは同等構成要素を示す。
【0050】
本変形例では、高容量層122と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを薄くすることにより、高容量層122よりも電気容量の大きい高容量層121’を形成している点で図3および図4の例と異なる。
【0051】
高容量層121’は、低容量層111および112および高容量層122の絶縁材料と同じ比誘電率4.2の材料を用い、例えば、厚さを25μmとし、電気容量を1.56pF/mm2としている。このような構成により、層によって誘電率が異なる絶縁材料を使用せず、各層が同じ絶縁材料で構成されるため、低容量層111および112ならびに2つの高容量層121’および122の熱膨張係数等が同じになり、信頼性の点で優位性がある。
【0052】
次に、本実施例の多層配線基板の製造方法について図7(a)〜(d)を参照して説明する。
【0053】
(工程1)
各層の絶縁性部材の両面または片面に銅箔をつけた樹脂付き銅箔を準備する。
【0054】
即ち、図3および図4に示された実施例による基板を製造するべく、図7(a)に示されるように、第1の部材としてのコア材(両面銅箔付き樹脂部材)A103と、第2の部材としての銅箔付き樹脂部材A102と、第3の部材としての銅箔付き樹脂部材A101と、第4の部材としての銅箔付き樹脂部材A104とをそれぞれ準備する。
【0055】
銅箔付き樹脂部材A101は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ200μmの材料の片側に銅箔A131をつけたものである。銅箔付き樹脂部材A102は、エポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーを充填してガラスクロスに含浸乾燥した比誘電率16、厚さ50μmの部材A121の片側に銅箔A141をつけたものである。コア材A103は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ50μmの部材A122の両面に銅箔A15およびA142をつけたものである。銅箔付き樹脂部材A104は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ200μmの部材A112の片側に銅箔A132をつけたものである。
【0056】
尚、図6に示された変形例による基板を製造する場合には、銅箔付き樹脂部材A102に代えて、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ25μmの部材の片側に銅箔をつけた樹脂付き銅箔を準備する。
【0057】
銅箔A15、A141およびA142、ならびにA131およびA132は全て、エッチングにより回路形成されている。
【0058】
(工程2)
図7(b)に示されるように、工程1で準備されたコア材A103と銅箔付き樹脂部材A102をプレス成形により積層する。
【0059】
(工程3)
図7(c)に示されるように、2つの銅箔付き樹脂部材A101およびA104を用いて、工程2で積層された材料をさらにビルドアップにより下および上から積層する。
【0060】
工程1〜3で銅箔5枚が積層され、5層基板ができる。銅箔A15は図4における電源層15に相当し、銅箔A141およびA142は、図4におけるグランド層141および142に相当する。銅箔A131およびA132は、図4における信号層131および132に相当する。
【0061】
(工程4)
図7(d)に示されるように、積層後にはグランドビア17、電源ビア18等が形成され、信号層131および132となる銅箔A131およびA132と、グランド層141および142となる銅箔A141およびA142または電源層となる銅箔A15とが接続される。その後、LSIチップなどの電子部品60が銅箔A132上に実装されボンディングワイヤで接続される。
【0062】
以上説明したように、本発明の多層配線基板は、高容量層となる絶縁性部材の両面または片面に銅箔をつけた樹脂付き銅箔を準備し、銅箔に回路形成し、プレス成形し、さらに低容量層となる樹脂付き銅箔をビルドアップしてグランドビア、電源ビア等を形成することにより、1層ずつ順に形成していくよりも効率的に容易に製造できる。
【0063】
[第2の実施例]
次に、3種類の異なる高容量層が組み込まれた多層配線基板の第2の実施例について図8を用いて説明する。
【0064】
図8は本発明の第2の実施例による多層配線基板の断面図である。
【0065】
多層配線基板20は、回路基板に用いられる絶縁材料で比較的誘電率が低いものを導電層で挟んだ低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い3つの高容量層121、122、および123とを備えている。
【0066】
低容量層111および112は、多層配線基板20のLSIチップなどの電子部品60が実装される表面側と、多層配線基板20の裏面側に配置されている。
【0067】
また高容量層121、122、および123は、互いに容量が異なり、また隣接して配置される。
【0068】
多層配線基板20の表面側および裏面側の低容量層111および112上に配置された導電層が信号層131および132である。信号層132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。
【0069】
高容量層123と低容量層112との間の導電層、および高容量層121と122との間の導電層がグランド層142、141である。また高容量層122と123との間の導電層、および高容量層121と低容量層111との間の導電層が電源層152、151である。尚、信号層131および132、グランド層141および142、電源層151および152は、銅箔としてよいが、第1の実施例の信号層、グランド層、電源層と同様に、これに限らず、多層配線基板の導電層に一般に用いられる材料を使用してもよい。
【0070】
このように、本実施例には、第1の実施例の構成が2つ組み込まれており、電源層152を電気容量が互いに異なる高容量層122および123で挟み込み、それをさらにグランド層141および142で挟んだ第1構成と、グランド層141を電気容量が互いに異なる高容量層121および122で挟み込み、それをさらに電源層151および152で挟んだ第2構成との2つの部分が、第1の実施例の構成に相当する。
【0071】
尚、信号層131および132のグランド配線と2つのグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。信号層131および132の電源配線と電源層151および152との間には、電源ビア18が形成されている。また表面側の信号層132の配線と、裏面側の信号層131の配線との間にビアが形成されてもよい。尚、本実施例においても図8に示すように2つの信号層131および132の同じ位置にグランド配線および電源配線が存在するようにし、グランドビア17、電源ビア18が多層配線基板20を貫いて形成されてグランド配線および電源配線に接続されるようにしてもよい。
【0072】
また、本実施例でも、グランド層141および142および電源層151および152は、基本的にグランドビア17、電源ビア18等との干渉を避けた最大限の範囲に形成されている。
【0073】
低容量層111および112の絶縁材料の誘電率は、第1の実施例と同様に例えば比誘電率が2〜5程度である。低容量層111および112の絶縁材料は、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥したものを用いてられるが、これに限られるものではない。例えば、比誘電率4.2の材料を用い、厚さを200μmとすると、単位面積あたりの電気容量は、0.2pF/mm2程度である。
【0074】
高容量層123の電気容量は、高周波のノイズを吸収する小容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定する。例えば、第1の実施例の高容量層122と同様に、低容量層111および112の絶縁材料と同じ比誘電率4.2の材料を用い、厚さを50μmとし、電気容量を0.78pF/mm2とする。
【0075】
高容量層122の電気容量は、電源リップル電圧などを吸収する大容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定し、望ましくは2〜5pF/mm2に設定する。本実施例では、高容量層121の絶縁材料として、高容量層122よりも高誘電率化したものを用いる。例えば第1の実施例の高容量層121と同様に、高容量層122のエポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーを充填したものを用い、比誘電率を16とし、厚さを50μmとすることにより、高容量層121の電気容量は2.8pF/mm2とする。
【0076】
高容量層121の電気容量は、さらに大容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定し、望ましくは5pF/mm2以上に設定する。本実施例では、高容量層121の絶縁材料として、高容量層122よりも高誘電率化したものを用いる。例えば高容量層123のエポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーをさらに多く充填したものを用い、比誘電率を40とし、厚さを30μmとすることにより、高容量層121の電気容量は11pF/mm2とする。
【0077】
本実施例ではこのように、高容量層121、122、および123のうちの少なくとも二者の電気容量が互いに異なるため、複数の周波数帯域においてノイズ削減効果が得られることが示された。
【0078】
尚、本実施例について、高容量層122、123の代わりに高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを厚くすることにより、高容量層121よりも電気容量の小さい高容量層を形成してもよい。また高容量層122、123の代わりに高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを薄くしたもの、厚くしたものを用いてもよい。このような構成により、高容量が同じ絶縁材料で構成されるため、各層の熱膨張係数等も同じで、信頼性の点で優位性がある。
【0079】
本実施例においては、間に高容量層123を有するグランド層142と電源層152との電源層対のうちの電源層152が、間に高容量層122を有する他の電源層対に兼用されている。さらに、間に高容量層122を有する電源層152とグランド層141との電源層対のうちのグランド層141が、間に高容量層121を有するさらに他の電源層対に兼用されている。このため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【0080】
次に、本実施例の多層配線基板の製造方法について図9(a)〜(d)を参照して説明する。
【0081】
(工程1)
各層の絶縁性部材の両面または片面に銅箔をつけた樹脂付き銅箔を準備する。即ち、図9(a)に示されるように、第1の部材としてのコア材(両面銅箔付き樹脂部材)A203と、第2の部材としての銅箔付き樹脂部材A202と、第3の部材としての銅箔付き樹脂部材A204と、第4の部材としての銅箔付き樹脂部材A201と、第5の部材としての銅箔付き樹脂部材A205とをそれぞれ準備する。
【0082】
銅箔付き樹脂部材A201は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ200μmの部材A111の片側に銅箔A131をつけたものである。銅箔付き樹脂部材A202は、エポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーを充填してガラスクロスに含浸乾燥した比誘電率16、厚さ50μmの部材A121の片側に銅箔A151をつけたものである。コア材A203は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ50μmの部材A122の両面に銅箔A141およびA152のついたものである。銅箔付き樹脂部材A204は、エポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーをさらに多く充填してガラスクロスに含浸乾燥した比誘電率40、厚さ30μmの部材A123の片側に銅箔A142をつけたものである。銅箔付き樹脂部材A205は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ200μmの部材A112の片側に銅箔A132をつけたものである。
【0083】
銅箔は全て、エッチングにより回路形成されている。
【0084】
(工程2)
図9(b)に示されるように、工程1で準備されたコア材A203と銅箔付き樹脂部材A202、A204をプレス成形により積層する。
【0085】
(工程3)
図9(c)に示されるように、2つの銅箔付き樹脂部材A201、A205を用いて、工程2で積層された材料をさらにビルドアップにより上下から積層する。
【0086】
工程1〜3で銅箔6枚が積層され、6層基板ができる。銅箔A141およびA142は、図8におけるグランド層141および142に相当する。銅箔A151およびA152は、電源層151および152に相当する。銅箔A131およびA132は、図8の信号層131および132に相当する。
【0087】
(工程4)
図9(d)に示されるように、積層後にはグランドビア17、電源ビア18等が形成され、信号層131および132となる銅箔A131およびA132と、グランド層141および142となる銅箔A141およびA142または電源層151および152となる銅箔A151およびA152とが接続される。その後、LSIチップなどの電子部品60が信号層132となる銅箔A132に実装されボンディングワイヤで接続される。
【0088】
以上説明したように、本発明の多層配線基板は、高容量層となる絶縁性部材の両面または片面に銅箔をつけた樹脂付き銅箔(もしくは銅箔付き樹脂部材)を準備し、銅箔に回路形成し、プレス成形し、さらに低容量層となる樹脂付き銅箔をビルドアップしてグランドビア、電源ビア等を形成することにより、1層ずつ順に形成していくよりも効率的に容易に製造できる。
【0089】
[第3の実施例]
図10は、本発明の第3の実施例による多層配線基板の断面図である。
【0090】
本発明の第3の実施例は、図4に示された第1の実施例の電源層とグランド層を入れ替えた様な構造を有している。このため、第1の実施例と同一或いは同等構成要素には、図10において同符号を付すと共に、詳細な説明を省略する。
【0091】
図10を参照すると、本発明の第3の実施例による多層配線基板30においては、2つの信号層131および132間に、下から低容量層111、第1の電源層15、高容量層121、グランド層14、高容量層122、第2の電源層16、低容量層112の順に積層されている。
【0092】
低容量層111および112は、多層配線基板30の裏面側と、LSIチップなどの電子部品61、62が実装される多層配線基板30の表面側とに配置されている。
【0093】
信号層131および132は、グランド配線、第1および第1電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層14との間には、グランドビア17が形成されている。第1電源配線と第1の電源層15との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層16との間には、第2の電源ビア182が形成されている。
【0094】
電源の種類が豊富なLSIパッケージにおいて、異種電源間に異なる高容量層を入れて、各電源毎に異なる周波数帯域のノイズ削減効果を得ることができる。例えば、第1の電源層15を通る電源V1で動作するLSIチップ61の回路の動作周波数が1GHzである一方、第2の電源層16を通る電源V2で動作するLSIチップ62の回路の動作周波数が100MHzである場合、ノイズの周波数帯域も異なる。そこで、異なる容量の絶縁層(高容量層121と122)を設けることで、それぞれの周波数帯域に対応可能である。
【0095】
尚、本実施例においても、高容量層122と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを薄くすることにより、高容量層122よりも電気容量の大きい高容量層121を形成してもよい。逆に、高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを厚くすることにより、高容量層121よりも電気容量の小さい高容量層122を形成してもよい。このような構成により、異なる容量が同じ絶縁材料で構成されるため、各層の熱膨張係数等も同じで、信頼性の点で優位性がある。
【0096】
また、本実施例も、間に高容量層121を有する第1の電源層15とグランド層14との電源層対の一方であるグランド層14が、間に高容量層122を有する他の電源層対に兼用される構成であるため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【0097】
[第4の実施例]
図11は、本発明の第4の実施例による多層配線基板の断面図である。
【0098】
本発明の第3の実施例は、図8に示された第2の実施例の電源層とグランド層を入れ替えた様な構造を有している。このため、第2の実施例と同一或いは同等構成要素には、図11において同符号を付すと共に、詳細な説明を省略する。
【0099】
図11を参照すると、多層配線基板40は、回路基板に用いられる絶縁材料で比較的誘電率が低いものを導電層で挟んだ低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い3つの高容量層121、122、および123とを備えている。高容量層121、122、および123は、互いに容量が異なり、また隣接して配置される。
【0100】
低容量層111および112は、多層配線基板40の裏面側と、多層配線基板40のLSIチップなどの電子部品61、62が実装される表面側とに配置されている。
【0101】
高容量層123と低容量層112との間の導電層、および高容量層121と122との間の導電層が第1の電源層15である。また高容量層122と123との間の導電層、および高容量層121と低容量層111との間の導電層がグランド層142、141である。
【0102】
多層配線基板40の表面側および裏面側の低容量層22上に配置された導電層が信号層131および132である。信号層132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品61、62と接続される。
【0103】
信号層131および132は、グランド配線、第1および第1電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層142、141との間には、グランドビア30が形成されている。第1電源配線と第1の電源層15との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層16との間には、第2の電源ビア182が形成されている。
【0104】
本実施例には第3の実施例の構成が2つ組み込まれているとも言える。グランド層142を電気容量が互いに異なる高容量層122および123で挟み込み、それをさらに第1の電源層15と第2の電源層16とで挟んだ第1構成と、第1の電源層15を電気容量が互いに異なる高容量層121および122で挟み込み、それをさらにグランド層142、141で挟んだ第2構成との2つの部分が第3の実施例の構成に相当する。
【0105】
本実施例ではこのように、高容量層121、122、および123のうちの少なくとも二者の電気容量が互いに異なるため、複数の周波数帯域においてノイズ削減効果が得られる。
【0106】
尚、本実施例についても、高容量層122および123の代わりに高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを厚くすることにより、高容量層121よりも電気容量の小さい高容量層を形成してもよい。また、高容量層122、123の代わりに高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを薄くしたもの、厚くしたものを用いてもよい。このような構成により、高容量が同じ絶縁材料で構成されるため、各層の熱膨張係数等も同じで、信頼性の点で優位性がある。
【0107】
さらに、本実施例においては、間に高容量層123を有する第2の電源層16とグランド層142との電源層対のうちのグランド層142が、間に高容量層122を有する他の電源層対に兼用されている。さらに、間に高容量層122を有するグランド層142と第1の電源層15との電源層対のうちの第1の電源層15が、間に高容量層121を有するさらに他の電源層対に兼用されている。このため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【0108】
[第5〜第9の実施例]
図12(a)〜(e)は、本発明の第5〜第9の実施例による多層配線基板の断面図である。
【0109】
これらの実施例において、図1〜図11に示された第1〜第4の実施例と同一部または同様部については、詳細な説明を省略する。
【0110】
図12(a)を参照すると、本発明の第5の実施例による多層配線基板50aは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、電源層151〜153と、グランド層141および142とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、電源層151、高容量層121、グランド層141、高容量層122、電源層152、高容量層123、グランド層142、高容量層124、電源層153、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0111】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0112】
多層配線基板50aの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。
【0113】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。電源配線と電源層151〜153との間には電源ビア18が形成されている。
【0114】
図12(b)を参照すると、本発明の第6の実施例による多層配線基板50bは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、第1の電源層15と、2つの第2の電源層161および162と、グランド層141および142とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、第1の電源層15、高容量層121、グランド層141、高容量層122、第2の電源層161、高容量層123、グランド層142、高容量層124、第2の電源層162、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0115】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0116】
多層配線基板50bの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品61、62と接続される。
【0117】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。第1電源配線と第1の電源層15との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層161および162との間には、第2の第2の電源ビア182が形成されている。
【0118】
図12(c)を参照すると、本発明の第7の実施例による多層配線基板50cは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、2つの第1の電源層151および152と、第2の電源層16と、グランド層141および142とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、第1の電源層151、高容量層121、グランド層141、高容量層122、第1の電源層152、高容量層123、グランド層142、高容量層124、第2の電源層16、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0119】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0120】
多層配線基板50cの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品61、62と接続される。
【0121】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。第1電源配線と第1の電源層151および152との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層16との間には、第2の電源ビア182が形成されている。
【0122】
図12(d)を参照すると、本発明の第8の実施例による多層配線基板50dは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、電源層151および152と、グランド層141〜143とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、グランド層141、高容量層121、電源層151、高容量層122、グランド層142、高容量層123、電源層152、高容量層124、グランド層143、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0123】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0124】
多層配線基板50dの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。
【0125】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141〜143との間には、グランドビア17が形成されている。電源配線と電源層151および152との間には、電源ビア18が形成されている。
【0126】
図12(e)を参照すると、本発明の第9の実施例による多層配線基板50eは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、第1の電源層15と、第2の電源層16と、グランド層141〜143とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、グランド層141、高容量層121、第1の電源層15、高容量層122、グランド層142、高容量層123、第2の電源層16、高容量層124、グランド層143、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0127】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0128】
多層配線基板50eの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品61、62と接続される。
【0129】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141〜143との間には、グランドビア17が形成されている。第1電源配線と第1の電源層15との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層16との間には、第2の電源ビア182が形成されている。
【0130】
第5〜第9の実施例ではこのように、高容量層121〜124のうちの少なくとも二者の電気容量が互いに異なるため、複数の周波数帯域においてノイズ削減効果が得られる。
【0131】
尚、第5〜第9の実施例についても、各容量層の形成厚さに応じて所望の容量を得てもよい。この場合、高容量が同じ絶縁材料で構成されるため、各層の熱膨張係数等も同じで、信頼性の点で優位性がある。
【0132】
さらに、第5〜第9の実施例においても、重なり合う電源層対間で電源層またはグランド層を兼用しているため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0133】
以上説明した実施例に限定されることなく、本発明は、当該特許請求の範囲に記載された技術範囲内であれば、種々の変形が可能であることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】従来の多層配線基板の斜視図である。
【図2】図1中のライン2−2に沿った多層配線基板の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例による多層配線基板の斜視図である。
【図4】図3中のライン4−4に沿った多層配線基板の断面図である。
【図5】図3および図4の多層配線基板を用いて、周波数に対するインピーダンスの変化をシュミレーションした例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施例の変形例による多層配線基板の断面図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施例およびその変形例の多層配線基板の製造方法を示した断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例による多層配線基板の断面図である。
【図9】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施例の多層配線基板の製造方法を示した断面図である。
【図10】本発明の第3の実施例による多層配線基板の断面図である。
【図11】本発明の第4の実施例による多層配線基板の断面図である。
【図12】(a)〜(e)は、本発明の第5〜9の実施例の変形例による多層配線基板の断面図である。
【符号の説明】
【0135】
10、10’、20、30、40、50a〜50e 多層配線基板
111、112 低容量層
121、121’、122、123、124 高容量層
131、132 信号層
141、142 グランド層
15、152、16 電源層
17 グランドビア
18 電源ビア
60、61、62 電子部品
90 デカップリングコンデンサ
A101〜A104、A201〜A205 銅箔付き樹脂部材
A111、A112、A121、A122、A123 部材
A131、A132、A141、A142、A15、A151、A152 銅箔
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板に関し、特に、多層配線基板のノイズ対策のために、電源層とグランド層の間にコンデンサ機能を具備した多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やノート型パーソナルコンピュータ等の携帯型電子機器の小型軽量化と高機能化が求められている。それに伴い、半導体用基板やLSIパッケージ等に使用される回路基板については、高密度配線、小型軽量化と併せて、伝送速度の高速化が求められている。
【0003】
しかし、信号速度が高くなるにつれて低速では問題にならなかったノイズが情報の伝達を妨げるという問題が生ずる。伝送速度の高速化のためには、ノイズを低減させるような回路基板の設計が必要である。
【0004】
従来、多層配線基板上にデカップリングコンデンサを実装して電気的ノイズを削減する方法が一般的にとられてきた。
【0005】
図1に従来の多層配線基板の斜視図を示す。
【0006】
図1の多層配線基板80は、回路基板に用いられる絶縁材料から成る電気容量が低い低容量層811および812と、電気容量値が低容量層811および812よりも高い高容量層82とを備えている。低容量層811および812はそれぞれ、多層配線基板80の裏面側と、多層配線基板80のLSIチップなどの電子部品60が実装される表面側とに配置されている。多層配線基板80上には、LSIチップの電源ノイズを低減する目的でデカップリングコンデンサ90が実装されている。
【0007】
図2は、図1の多層配線基板におけるライン2−2に沿った断面図である。
【0008】
多層配線基板80の表面側および裏面側の低容量層811および812上に配置された導電層が信号層831および832である。信号層831および832は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。2つの信号層の間には下から低容量層811、電源層85、高容量層82、グランド層84、低容量層812の順に積層されている。LSIチップなどの電子部品60は、グランド層ビア87、電源ビア88を介して、グランド層84、電源層85のそれぞれに接続される。
【0009】
しかし、信号伝送周波数の高周波数化が近年ますます進んでおり、それに伴い基板に実装されるコンデンサの数も増大してきている。コンデンサの多用は、部品間の最短配線を不可能なものとし、同期をとることを難しくするなど、配線設計を困難なものとしており、また、回路基板の小型化を妨げ、コスト増加を引き起こしている。
【0010】
このため、近年では、LSIパッケージ等の多層配線基板中に高誘電率材料から成る層を設け、コンデンサとして機能する構成をLSIパッケージ等に内蔵させることにより、電気的ノイズを削減させる方法が提案されている。このような手法は、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されている。この方法では、LSI直下にコンデンサを配置できるため、基板上に実装されたデカップリングコンデンサに比べてLSIとコンデンサとの間を非常に短い線路で接続でき、回路の寄生インダクタンス成分を低減させ得るため、LSI電源のノイズを低減することができる。
【0011】
【特許文献1】実開平7−10979号公報
【特許文献2】特開2002−217545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1に開示された多層配線基板では、多層配線基板内に内蔵された高誘電率材料で除去しきれない周波数帯域のノイズに対しては、結局、基板上やLSIパッケージ上へデカップリングコンデンサを追加する必要があるという問題があった。
【0013】
また、特許文献2に開示された多層配線基板では、電源層とグランド層とから成る一電源層対毎に容量層を有しているがために全体の層数が多く、複雑な構成であり、回路基板の小型化を十分に達成することはできない。
【0014】
それ故、本発明の課題は、簡素な構成で多層配線基板における広い周波数帯域に亘るノイズを低減できる多層配線基板を提供することである。
【0015】
本発明の他の課題は、上記のような多層配線基板を容易に製造できる多層配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、第1〜第3の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層とを有し、前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なることを特徴とする多層配線基板が得られる。
【0017】
本発明によればまた、第1〜第4の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層と、前記第3の導電層と前記第4の導電層との間に形成された第3の絶縁層とを有し、前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なることを特徴とする多層配線基板が得られる。
【0018】
本発明によればさらに、第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層を有し、前記内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、前記外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なることを特徴とする多層配線基板が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層と、前記外側導電層の一方の上に第3の絶縁層を介して形成された付加的外側導電層とを有し、前記内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、前記外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、前記付加的外側導電層は、電源層またはグランド層であり、前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なることを特徴とする多層配線基板が得られる。
【0020】
さらに、本発明によれば、多層配線基板の製造方法であって、第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程とを有し、前記第1および前記第2の容量層は、それらの電気容量が互いに異なり、さらに、前記第1の部材の一方の面上に前記第2の部材の導電層の無い面が突き合わさるようにプレス成形によって積層する工程を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、多層配線基板の製造方法であって、第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程と、第3の容量層の片面に導電層を形成して第3の部材を生成する工程とを有し、前記第1、前記第2、および前記第3の容量層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なり、さらに、前記第1の部材の一方の面上に前記第2の部材の導電層の無い面が突き合わさると共に、該第1の部材の他方の面上に前記第3の部材の導電層の無い面が突き合わさるように、プレス成形によって積層する工程を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による多層配線基板は、広い周波数帯域に亘るノイズを低減でき、かつデカップリングコンデンサの個数を減らすか、無くすことができる。
【0023】
本発明による多層配線基板はさらに、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素である。
【0024】
また、本発明による多層配線基板の製造方法は、上記のような多層配線基板を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明による多層配線基板は、第1〜第3の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、第2の導電層と第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層とを有し、第1および第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なっている。
【0026】
また、本発明による多層配線基板は、第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層を有し、内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、第1および第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なっている。
【0027】
即ち、本発明による多層配線基板は、2つ以上のコンデンサ機能を奏する構成を、多層基板内に内蔵している。このため、広い周波数帯域に亘るノイズを低減でき、かつデカップリングコンデンサの個数を減らすか、無くすことができる。
【0028】
さらに、本発明は、間に容量を持つ絶縁層を有する電源層とグランド層との電源層対の少なくとも一方が、他の電源層対に兼用される構成である。このため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素である。
【0029】
また、本発明による多層配線基板の製造方法は、第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程と、第1の部材の一方の面上に第2の部材の導電層の無い面が突き合わさるようにプレス成形によって積層する工程とを有している。尚、第1および第2の容量層は、それらの電気容量が互いに異なっている。このため、上記のような多層配線基板を容易に製造できる。
【実施例】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施例による多層配線基板およびその製造方法について詳細に説明する。
【0031】
[第1の実施例]
図3は、本発明の第1の実施例による多層配線基板の斜視図である。
【0032】
多層配線基板10は、回路基板に用いられる絶縁材料であってこれを挟む導電層間の電気容量値が低い低容量層111および112と、導電層間の電気容量値が低容量層111および112よりも高い2つの高容量層121および122とを備えている。
【0033】
低容量層111および112は、多層配線基板10の裏面側と、多層配線基板10のLSIチップなどの電子部品60が実装される表面側とに配置されている。
【0034】
また、高容量層121および122は、互いに容量が異なり、また隣接して配置される。
【0035】
図4は、図3の多層配線基板のライン4−4に沿った断面図である。
【0036】
多層配線基板10の裏面側および表面側の低容量層111および112上に配置された導電層が信号層131および132である。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。2つの信号層131および132の間には下から順に、低容量層111、グランド層141および142、高容量層121、電源層15、高容量層122、グランド層142、低容量層112の順に積層されている。
【0037】
尚、信号層131および132、グランド層141および142、電源層15は、銅箔としてよいが、これに限らず、多層配線基板の導電層に一般に用いられる材料を使用してもよい。
【0038】
このように、本発明の多層配線基板10は、電源層15を電気容量が互いに異なる高容量層121および122で挟み込み、それをさらにグランド層141および142で挟み、低容量層111および112を介してそれをさらに信号層131および132で挟むように積層され形成されたものである。
【0039】
尚、信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。信号層131および132の電源配線と電源層15との間には、電源ビア18が形成されている。また図示していないが表面側の信号層131および132の信号配線と、裏面側の信号層131および132の信号配線との間にビアが形成されてもよい。尚、図4に示すように2つの信号層131および132の平面視で同じ位置にグランド配線および電源配線が存在するようにし、グランドビア17、電源ビア18が多層配線基板10を貫いて形成されて2つの信号層131および132上のグランド配線および電源配線に接続されるようにしてもよい。
【0040】
グランド層141および142および電源層15は、基本的にグランドビア17、電源ビア18等との干渉を避けた最大限の範囲に形成されている。
【0041】
低容量層111および112の絶縁材料の誘電率は、例えば比誘電率が2〜5程度である。低容量層111および112の絶縁材料は、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥したものを用いているが、これに限られるものではない。例えば比誘電率4.2の材料を用い、厚さを200μmとすると、単位面積あたりの電気容量は、0.2pF/mm2程度である。
【0042】
高容量層122の電気容量は、高周波のノイズを吸収する小容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定する。コンデンサの電気容量Cは、下記(1)式で定義されるように、電極面積Aと誘電体の比誘電率εrに比例し、電極間距離dに反比例する。
【0043】
C=ε0・εr・A/d ・・・(1)
(ε0:真空の誘電率)
【0044】
そこで例えば、低容量層111および112の絶縁材料と同じ比誘電率4.2の材料を用いて厚さを50μmとすることにより、電気容量を0.78pF/mm2とする。
【0045】
高容量層121の電気容量は、電源リップル電圧などを吸収する大容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定し、望ましくは2pF/mm2以上に設定する。本実施例では、高容量層121の絶縁材料として、高容量層122よりも高誘電率化したものを用いる。例えば高容量層122のエポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーを充填したものを用い、比誘電率を16とし、厚さを50μmとすることにより、高容量層121の電気容量は2.8pF/mm2とする。
【0046】
本実施例ではこのように、高容量層121および122に使用される誘電材料の電気容量が互いに異なる。この効果について図5を参照して説明する。
【0047】
図5は、図3および図4の多層配線基板を用いて、周波数に対するインピーダンスの変化をシミュレーションした例を示す図である。信号層15、高容量層122、およびグランド層142による第1キャパシタは、400MHz付近でインピーダンスが最も低くなる。一方、信号層15、高容量層121、およびグランド層141による第2キャパシタは、1MHzでインピーダンスが最も低くなった。そして、この両者をもつ本実施例による多層配線基板は、1MHz付近と400MHz付近での2箇所の周波数で低いインピーダンスを示した。このように、異なる誘電率の第キャパシタを共存させると、各々の周波数帯域においてノイズ削減効果が得られることが示された。
【0048】
また、本実施例は、間に高容量層122を有する電源層15とグランド層141のうちの電源層15が、間に高容量層121を有する他の電源層対に兼用される構成であるため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【0049】
次に、本実施例の変形例について説明する。図6は、本発明の第1の実施例の変形例の多層配線基板の断面図である。図3および図4と同一符号は同一或いは同等構成要素を示す。
【0050】
本変形例では、高容量層122と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを薄くすることにより、高容量層122よりも電気容量の大きい高容量層121’を形成している点で図3および図4の例と異なる。
【0051】
高容量層121’は、低容量層111および112および高容量層122の絶縁材料と同じ比誘電率4.2の材料を用い、例えば、厚さを25μmとし、電気容量を1.56pF/mm2としている。このような構成により、層によって誘電率が異なる絶縁材料を使用せず、各層が同じ絶縁材料で構成されるため、低容量層111および112ならびに2つの高容量層121’および122の熱膨張係数等が同じになり、信頼性の点で優位性がある。
【0052】
次に、本実施例の多層配線基板の製造方法について図7(a)〜(d)を参照して説明する。
【0053】
(工程1)
各層の絶縁性部材の両面または片面に銅箔をつけた樹脂付き銅箔を準備する。
【0054】
即ち、図3および図4に示された実施例による基板を製造するべく、図7(a)に示されるように、第1の部材としてのコア材(両面銅箔付き樹脂部材)A103と、第2の部材としての銅箔付き樹脂部材A102と、第3の部材としての銅箔付き樹脂部材A101と、第4の部材としての銅箔付き樹脂部材A104とをそれぞれ準備する。
【0055】
銅箔付き樹脂部材A101は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ200μmの材料の片側に銅箔A131をつけたものである。銅箔付き樹脂部材A102は、エポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーを充填してガラスクロスに含浸乾燥した比誘電率16、厚さ50μmの部材A121の片側に銅箔A141をつけたものである。コア材A103は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ50μmの部材A122の両面に銅箔A15およびA142をつけたものである。銅箔付き樹脂部材A104は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ200μmの部材A112の片側に銅箔A132をつけたものである。
【0056】
尚、図6に示された変形例による基板を製造する場合には、銅箔付き樹脂部材A102に代えて、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ25μmの部材の片側に銅箔をつけた樹脂付き銅箔を準備する。
【0057】
銅箔A15、A141およびA142、ならびにA131およびA132は全て、エッチングにより回路形成されている。
【0058】
(工程2)
図7(b)に示されるように、工程1で準備されたコア材A103と銅箔付き樹脂部材A102をプレス成形により積層する。
【0059】
(工程3)
図7(c)に示されるように、2つの銅箔付き樹脂部材A101およびA104を用いて、工程2で積層された材料をさらにビルドアップにより下および上から積層する。
【0060】
工程1〜3で銅箔5枚が積層され、5層基板ができる。銅箔A15は図4における電源層15に相当し、銅箔A141およびA142は、図4におけるグランド層141および142に相当する。銅箔A131およびA132は、図4における信号層131および132に相当する。
【0061】
(工程4)
図7(d)に示されるように、積層後にはグランドビア17、電源ビア18等が形成され、信号層131および132となる銅箔A131およびA132と、グランド層141および142となる銅箔A141およびA142または電源層となる銅箔A15とが接続される。その後、LSIチップなどの電子部品60が銅箔A132上に実装されボンディングワイヤで接続される。
【0062】
以上説明したように、本発明の多層配線基板は、高容量層となる絶縁性部材の両面または片面に銅箔をつけた樹脂付き銅箔を準備し、銅箔に回路形成し、プレス成形し、さらに低容量層となる樹脂付き銅箔をビルドアップしてグランドビア、電源ビア等を形成することにより、1層ずつ順に形成していくよりも効率的に容易に製造できる。
【0063】
[第2の実施例]
次に、3種類の異なる高容量層が組み込まれた多層配線基板の第2の実施例について図8を用いて説明する。
【0064】
図8は本発明の第2の実施例による多層配線基板の断面図である。
【0065】
多層配線基板20は、回路基板に用いられる絶縁材料で比較的誘電率が低いものを導電層で挟んだ低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い3つの高容量層121、122、および123とを備えている。
【0066】
低容量層111および112は、多層配線基板20のLSIチップなどの電子部品60が実装される表面側と、多層配線基板20の裏面側に配置されている。
【0067】
また高容量層121、122、および123は、互いに容量が異なり、また隣接して配置される。
【0068】
多層配線基板20の表面側および裏面側の低容量層111および112上に配置された導電層が信号層131および132である。信号層132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。
【0069】
高容量層123と低容量層112との間の導電層、および高容量層121と122との間の導電層がグランド層142、141である。また高容量層122と123との間の導電層、および高容量層121と低容量層111との間の導電層が電源層152、151である。尚、信号層131および132、グランド層141および142、電源層151および152は、銅箔としてよいが、第1の実施例の信号層、グランド層、電源層と同様に、これに限らず、多層配線基板の導電層に一般に用いられる材料を使用してもよい。
【0070】
このように、本実施例には、第1の実施例の構成が2つ組み込まれており、電源層152を電気容量が互いに異なる高容量層122および123で挟み込み、それをさらにグランド層141および142で挟んだ第1構成と、グランド層141を電気容量が互いに異なる高容量層121および122で挟み込み、それをさらに電源層151および152で挟んだ第2構成との2つの部分が、第1の実施例の構成に相当する。
【0071】
尚、信号層131および132のグランド配線と2つのグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。信号層131および132の電源配線と電源層151および152との間には、電源ビア18が形成されている。また表面側の信号層132の配線と、裏面側の信号層131の配線との間にビアが形成されてもよい。尚、本実施例においても図8に示すように2つの信号層131および132の同じ位置にグランド配線および電源配線が存在するようにし、グランドビア17、電源ビア18が多層配線基板20を貫いて形成されてグランド配線および電源配線に接続されるようにしてもよい。
【0072】
また、本実施例でも、グランド層141および142および電源層151および152は、基本的にグランドビア17、電源ビア18等との干渉を避けた最大限の範囲に形成されている。
【0073】
低容量層111および112の絶縁材料の誘電率は、第1の実施例と同様に例えば比誘電率が2〜5程度である。低容量層111および112の絶縁材料は、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥したものを用いてられるが、これに限られるものではない。例えば、比誘電率4.2の材料を用い、厚さを200μmとすると、単位面積あたりの電気容量は、0.2pF/mm2程度である。
【0074】
高容量層123の電気容量は、高周波のノイズを吸収する小容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定する。例えば、第1の実施例の高容量層122と同様に、低容量層111および112の絶縁材料と同じ比誘電率4.2の材料を用い、厚さを50μmとし、電気容量を0.78pF/mm2とする。
【0075】
高容量層122の電気容量は、電源リップル電圧などを吸収する大容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定し、望ましくは2〜5pF/mm2に設定する。本実施例では、高容量層121の絶縁材料として、高容量層122よりも高誘電率化したものを用いる。例えば第1の実施例の高容量層121と同様に、高容量層122のエポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーを充填したものを用い、比誘電率を16とし、厚さを50μmとすることにより、高容量層121の電気容量は2.8pF/mm2とする。
【0076】
高容量層121の電気容量は、さらに大容量のデカップリングコンデンサを代用できるような容量に設定し、望ましくは5pF/mm2以上に設定する。本実施例では、高容量層121の絶縁材料として、高容量層122よりも高誘電率化したものを用いる。例えば高容量層123のエポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーをさらに多く充填したものを用い、比誘電率を40とし、厚さを30μmとすることにより、高容量層121の電気容量は11pF/mm2とする。
【0077】
本実施例ではこのように、高容量層121、122、および123のうちの少なくとも二者の電気容量が互いに異なるため、複数の周波数帯域においてノイズ削減効果が得られることが示された。
【0078】
尚、本実施例について、高容量層122、123の代わりに高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを厚くすることにより、高容量層121よりも電気容量の小さい高容量層を形成してもよい。また高容量層122、123の代わりに高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを薄くしたもの、厚くしたものを用いてもよい。このような構成により、高容量が同じ絶縁材料で構成されるため、各層の熱膨張係数等も同じで、信頼性の点で優位性がある。
【0079】
本実施例においては、間に高容量層123を有するグランド層142と電源層152との電源層対のうちの電源層152が、間に高容量層122を有する他の電源層対に兼用されている。さらに、間に高容量層122を有する電源層152とグランド層141との電源層対のうちのグランド層141が、間に高容量層121を有するさらに他の電源層対に兼用されている。このため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【0080】
次に、本実施例の多層配線基板の製造方法について図9(a)〜(d)を参照して説明する。
【0081】
(工程1)
各層の絶縁性部材の両面または片面に銅箔をつけた樹脂付き銅箔を準備する。即ち、図9(a)に示されるように、第1の部材としてのコア材(両面銅箔付き樹脂部材)A203と、第2の部材としての銅箔付き樹脂部材A202と、第3の部材としての銅箔付き樹脂部材A204と、第4の部材としての銅箔付き樹脂部材A201と、第5の部材としての銅箔付き樹脂部材A205とをそれぞれ準備する。
【0082】
銅箔付き樹脂部材A201は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ200μmの部材A111の片側に銅箔A131をつけたものである。銅箔付き樹脂部材A202は、エポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーを充填してガラスクロスに含浸乾燥した比誘電率16、厚さ50μmの部材A121の片側に銅箔A151をつけたものである。コア材A203は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ50μmの部材A122の両面に銅箔A141およびA152のついたものである。銅箔付き樹脂部材A204は、エポキシ樹脂中にチタン酸バリウム系の高誘電率フィラーをさらに多く充填してガラスクロスに含浸乾燥した比誘電率40、厚さ30μmの部材A123の片側に銅箔A142をつけたものである。銅箔付き樹脂部材A205は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸乾燥した比誘電率4.2、厚さ200μmの部材A112の片側に銅箔A132をつけたものである。
【0083】
銅箔は全て、エッチングにより回路形成されている。
【0084】
(工程2)
図9(b)に示されるように、工程1で準備されたコア材A203と銅箔付き樹脂部材A202、A204をプレス成形により積層する。
【0085】
(工程3)
図9(c)に示されるように、2つの銅箔付き樹脂部材A201、A205を用いて、工程2で積層された材料をさらにビルドアップにより上下から積層する。
【0086】
工程1〜3で銅箔6枚が積層され、6層基板ができる。銅箔A141およびA142は、図8におけるグランド層141および142に相当する。銅箔A151およびA152は、電源層151および152に相当する。銅箔A131およびA132は、図8の信号層131および132に相当する。
【0087】
(工程4)
図9(d)に示されるように、積層後にはグランドビア17、電源ビア18等が形成され、信号層131および132となる銅箔A131およびA132と、グランド層141および142となる銅箔A141およびA142または電源層151および152となる銅箔A151およびA152とが接続される。その後、LSIチップなどの電子部品60が信号層132となる銅箔A132に実装されボンディングワイヤで接続される。
【0088】
以上説明したように、本発明の多層配線基板は、高容量層となる絶縁性部材の両面または片面に銅箔をつけた樹脂付き銅箔(もしくは銅箔付き樹脂部材)を準備し、銅箔に回路形成し、プレス成形し、さらに低容量層となる樹脂付き銅箔をビルドアップしてグランドビア、電源ビア等を形成することにより、1層ずつ順に形成していくよりも効率的に容易に製造できる。
【0089】
[第3の実施例]
図10は、本発明の第3の実施例による多層配線基板の断面図である。
【0090】
本発明の第3の実施例は、図4に示された第1の実施例の電源層とグランド層を入れ替えた様な構造を有している。このため、第1の実施例と同一或いは同等構成要素には、図10において同符号を付すと共に、詳細な説明を省略する。
【0091】
図10を参照すると、本発明の第3の実施例による多層配線基板30においては、2つの信号層131および132間に、下から低容量層111、第1の電源層15、高容量層121、グランド層14、高容量層122、第2の電源層16、低容量層112の順に積層されている。
【0092】
低容量層111および112は、多層配線基板30の裏面側と、LSIチップなどの電子部品61、62が実装される多層配線基板30の表面側とに配置されている。
【0093】
信号層131および132は、グランド配線、第1および第1電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層14との間には、グランドビア17が形成されている。第1電源配線と第1の電源層15との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層16との間には、第2の電源ビア182が形成されている。
【0094】
電源の種類が豊富なLSIパッケージにおいて、異種電源間に異なる高容量層を入れて、各電源毎に異なる周波数帯域のノイズ削減効果を得ることができる。例えば、第1の電源層15を通る電源V1で動作するLSIチップ61の回路の動作周波数が1GHzである一方、第2の電源層16を通る電源V2で動作するLSIチップ62の回路の動作周波数が100MHzである場合、ノイズの周波数帯域も異なる。そこで、異なる容量の絶縁層(高容量層121と122)を設けることで、それぞれの周波数帯域に対応可能である。
【0095】
尚、本実施例においても、高容量層122と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを薄くすることにより、高容量層122よりも電気容量の大きい高容量層121を形成してもよい。逆に、高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを厚くすることにより、高容量層121よりも電気容量の小さい高容量層122を形成してもよい。このような構成により、異なる容量が同じ絶縁材料で構成されるため、各層の熱膨張係数等も同じで、信頼性の点で優位性がある。
【0096】
また、本実施例も、間に高容量層121を有する第1の電源層15とグランド層14との電源層対の一方であるグランド層14が、間に高容量層122を有する他の電源層対に兼用される構成であるため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【0097】
[第4の実施例]
図11は、本発明の第4の実施例による多層配線基板の断面図である。
【0098】
本発明の第3の実施例は、図8に示された第2の実施例の電源層とグランド層を入れ替えた様な構造を有している。このため、第2の実施例と同一或いは同等構成要素には、図11において同符号を付すと共に、詳細な説明を省略する。
【0099】
図11を参照すると、多層配線基板40は、回路基板に用いられる絶縁材料で比較的誘電率が低いものを導電層で挟んだ低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い3つの高容量層121、122、および123とを備えている。高容量層121、122、および123は、互いに容量が異なり、また隣接して配置される。
【0100】
低容量層111および112は、多層配線基板40の裏面側と、多層配線基板40のLSIチップなどの電子部品61、62が実装される表面側とに配置されている。
【0101】
高容量層123と低容量層112との間の導電層、および高容量層121と122との間の導電層が第1の電源層15である。また高容量層122と123との間の導電層、および高容量層121と低容量層111との間の導電層がグランド層142、141である。
【0102】
多層配線基板40の表面側および裏面側の低容量層22上に配置された導電層が信号層131および132である。信号層132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品61、62と接続される。
【0103】
信号層131および132は、グランド配線、第1および第1電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層142、141との間には、グランドビア30が形成されている。第1電源配線と第1の電源層15との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層16との間には、第2の電源ビア182が形成されている。
【0104】
本実施例には第3の実施例の構成が2つ組み込まれているとも言える。グランド層142を電気容量が互いに異なる高容量層122および123で挟み込み、それをさらに第1の電源層15と第2の電源層16とで挟んだ第1構成と、第1の電源層15を電気容量が互いに異なる高容量層121および122で挟み込み、それをさらにグランド層142、141で挟んだ第2構成との2つの部分が第3の実施例の構成に相当する。
【0105】
本実施例ではこのように、高容量層121、122、および123のうちの少なくとも二者の電気容量が互いに異なるため、複数の周波数帯域においてノイズ削減効果が得られる。
【0106】
尚、本実施例についても、高容量層122および123の代わりに高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを厚くすることにより、高容量層121よりも電気容量の小さい高容量層を形成してもよい。また、高容量層122、123の代わりに高容量層121と同じ誘電率の絶縁材料の厚さを薄くしたもの、厚くしたものを用いてもよい。このような構成により、高容量が同じ絶縁材料で構成されるため、各層の熱膨張係数等も同じで、信頼性の点で優位性がある。
【0107】
さらに、本実施例においては、間に高容量層123を有する第2の電源層16とグランド層142との電源層対のうちのグランド層142が、間に高容量層122を有する他の電源層対に兼用されている。さらに、間に高容量層122を有するグランド層142と第1の電源層15との電源層対のうちの第1の電源層15が、間に高容量層121を有するさらに他の電源層対に兼用されている。このため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【0108】
[第5〜第9の実施例]
図12(a)〜(e)は、本発明の第5〜第9の実施例による多層配線基板の断面図である。
【0109】
これらの実施例において、図1〜図11に示された第1〜第4の実施例と同一部または同様部については、詳細な説明を省略する。
【0110】
図12(a)を参照すると、本発明の第5の実施例による多層配線基板50aは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、電源層151〜153と、グランド層141および142とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、電源層151、高容量層121、グランド層141、高容量層122、電源層152、高容量層123、グランド層142、高容量層124、電源層153、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0111】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0112】
多層配線基板50aの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。
【0113】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。電源配線と電源層151〜153との間には電源ビア18が形成されている。
【0114】
図12(b)を参照すると、本発明の第6の実施例による多層配線基板50bは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、第1の電源層15と、2つの第2の電源層161および162と、グランド層141および142とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、第1の電源層15、高容量層121、グランド層141、高容量層122、第2の電源層161、高容量層123、グランド層142、高容量層124、第2の電源層162、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0115】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0116】
多層配線基板50bの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品61、62と接続される。
【0117】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。第1電源配線と第1の電源層15との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層161および162との間には、第2の第2の電源ビア182が形成されている。
【0118】
図12(c)を参照すると、本発明の第7の実施例による多層配線基板50cは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、2つの第1の電源層151および152と、第2の電源層16と、グランド層141および142とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、第1の電源層151、高容量層121、グランド層141、高容量層122、第1の電源層152、高容量層123、グランド層142、高容量層124、第2の電源層16、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0119】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0120】
多層配線基板50cの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品61、62と接続される。
【0121】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141および142との間には、グランドビア17が形成されている。第1電源配線と第1の電源層151および152との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層16との間には、第2の電源ビア182が形成されている。
【0122】
図12(d)を参照すると、本発明の第8の実施例による多層配線基板50dは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、電源層151および152と、グランド層141〜143とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、グランド層141、高容量層121、電源層151、高容量層122、グランド層142、高容量層123、電源層152、高容量層124、グランド層143、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0123】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0124】
多層配線基板50dの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品60と接続される。
【0125】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141〜143との間には、グランドビア17が形成されている。電源配線と電源層151および152との間には、電源ビア18が形成されている。
【0126】
図12(e)を参照すると、本発明の第9の実施例による多層配線基板50eは、低容量層111および112と、低容量層111および112よりも電気容量の高い4つの高容量層121〜124と、第1の電源層15と、第2の電源層16と、グランド層141〜143とを備えている。つまり、下から、信号層131、低容量層111、グランド層141、高容量層121、第1の電源層15、高容量層122、グランド層142、高容量層123、第2の電源層16、高容量層124、グランド層143、低容量層112、および信号層132が順に積層されている。
【0127】
高容量層121〜124のうちの少なくとも二者間は、互いに容量が異なっている。
【0128】
多層配線基板50eの表面側および裏面側の低容量層111および112上には、信号層131および132が配されている。信号層131および132は、ボンディングワイヤを介して表面に実装されたLSIチップなどの電子部品61、62と接続される。
【0129】
信号層131および132は、グランド配線、電源配線、信号配線を含んでいる。グランド配線とグランド層141〜143との間には、グランドビア17が形成されている。第1電源配線と第1の電源層15との間には、第1の電源ビア181が形成されている。第2電源配線と第2の電源層16との間には、第2の電源ビア182が形成されている。
【0130】
第5〜第9の実施例ではこのように、高容量層121〜124のうちの少なくとも二者の電気容量が互いに異なるため、複数の周波数帯域においてノイズ削減効果が得られる。
【0131】
尚、第5〜第9の実施例についても、各容量層の形成厚さに応じて所望の容量を得てもよい。この場合、高容量が同じ絶縁材料で構成されるため、各層の熱膨張係数等も同じで、信頼性の点で優位性がある。
【0132】
さらに、第5〜第9の実施例においても、重なり合う電源層対間で電源層またはグランド層を兼用しているため、それぞれ独立した複数の電源層対を有する従来の構造よりも全体の層数が少なく、構造が簡素であるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0133】
以上説明した実施例に限定されることなく、本発明は、当該特許請求の範囲に記載された技術範囲内であれば、種々の変形が可能であることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】従来の多層配線基板の斜視図である。
【図2】図1中のライン2−2に沿った多層配線基板の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例による多層配線基板の斜視図である。
【図4】図3中のライン4−4に沿った多層配線基板の断面図である。
【図5】図3および図4の多層配線基板を用いて、周波数に対するインピーダンスの変化をシュミレーションした例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施例の変形例による多層配線基板の断面図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施例およびその変形例の多層配線基板の製造方法を示した断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例による多層配線基板の断面図である。
【図9】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施例の多層配線基板の製造方法を示した断面図である。
【図10】本発明の第3の実施例による多層配線基板の断面図である。
【図11】本発明の第4の実施例による多層配線基板の断面図である。
【図12】(a)〜(e)は、本発明の第5〜9の実施例の変形例による多層配線基板の断面図である。
【符号の説明】
【0135】
10、10’、20、30、40、50a〜50e 多層配線基板
111、112 低容量層
121、121’、122、123、124 高容量層
131、132 信号層
141、142 グランド層
15、152、16 電源層
17 グランドビア
18 電源ビア
60、61、62 電子部品
90 デカップリングコンデンサ
A101〜A104、A201〜A205 銅箔付き樹脂部材
A111、A112、A121、A122、A123 部材
A131、A132、A141、A142、A15、A151、A152 銅箔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第3の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層とを有し、
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なることを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらを構成する絶縁体の誘電率が互いに異なる請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの厚さが互いに異なる請求項1または2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
第1〜第4の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層と、前記第3の導電層と前記第4の導電層との間に形成された第3の絶縁層とを有し、
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なることを特徴とする多層配線基板。
【請求項5】
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらを構成する絶縁体の誘電率が互いに異なる請求項4に記載の多層配線基板。
【請求項6】
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの厚さが互いに異なる請求項4または5に記載の多層配線基板。
【請求項7】
第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層を有し、
前記内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、
前記外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なることを特徴とする多層配線基板。
【請求項8】
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらを構成する絶縁体の誘電率が互いに異なる請求項7に記載の多層配線基板。
【請求項9】
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの厚さが互いに異なる請求項7または8に記載の多層配線基板。
【請求項10】
第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層と、前記外側導電層の一方の上に第3の絶縁層を介して形成された付加的外側導電層とを有し、
前記内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、
前記外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、
前記付加的外側導電層は、電源層またはグランド層であり、
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なることを特徴とする多層配線基板。
【請求項11】
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらを構成する絶縁体の誘電率が互いに異なる請求項10に記載の多層配線基板。
【請求項12】
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの厚さが互いに異なる請求項10または11に記載の多層配線基板。
【請求項13】
多層配線基板の製造方法であって、
第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、
第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程とを有し、
前記第1および前記第2の容量層は、それらの電気容量が互いに異なり、
さらに、前記第1の部材の一方の面上に前記第2の部材の導電層の無い面が突き合わさるように、プレス成形によって積層する工程を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項14】
多層配線基板の製造方法であって、
第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、
第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程と、
第3の容量層の片面に導電層を形成して第3の部材を生成する工程とを有し、
前記第1、前記第2、および前記第3の容量層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なり、
さらに、前記第1の部材の一方の面上に前記第2の部材の導電層の無い面が突き合わさると共に、該第1の部材の他方の面上に前記第3の部材の導電層の無い面が突き合わさるように、プレス成形によって積層する工程を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項1】
第1〜第3の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層とを有し、
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なることを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらを構成する絶縁体の誘電率が互いに異なる請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの厚さが互いに異なる請求項1または2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
第1〜第4の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に形成された第1の絶縁層と、前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に形成された第2の絶縁層と、前記第3の導電層と前記第4の導電層との間に形成された第3の絶縁層とを有し、
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なることを特徴とする多層配線基板。
【請求項5】
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらを構成する絶縁体の誘電率が互いに異なる請求項4に記載の多層配線基板。
【請求項6】
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの厚さが互いに異なる請求項4または5に記載の多層配線基板。
【請求項7】
第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層を有し、
前記内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、
前記外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの電気容量が互いに異なることを特徴とする多層配線基板。
【請求項8】
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらを構成する絶縁体の誘電率が互いに異なる請求項7に記載の多層配線基板。
【請求項9】
前記第1および前記第2の絶縁層は、それらの厚さが互いに異なる請求項7または8に記載の多層配線基板。
【請求項10】
第1および第2の絶縁層で挟まれ、さらに2つの外側導電層で挟まれた内側導電層と、前記外側導電層の一方の上に第3の絶縁層を介して形成された付加的外側導電層とを有し、
前記内側導電層は、電源層およびグランド層のうちの一方であり、
前記外側導電層は、電源層およびグランド層のうちの他方であり、
前記付加的外側導電層は、電源層またはグランド層であり、
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なることを特徴とする多層配線基板。
【請求項11】
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらを構成する絶縁体の誘電率が互いに異なる請求項10に記載の多層配線基板。
【請求項12】
前記第1、前記第2、および前記第3の絶縁層のうちの少なくとも二者は、それらの厚さが互いに異なる請求項10または11に記載の多層配線基板。
【請求項13】
多層配線基板の製造方法であって、
第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、
第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程とを有し、
前記第1および前記第2の容量層は、それらの電気容量が互いに異なり、
さらに、前記第1の部材の一方の面上に前記第2の部材の導電層の無い面が突き合わさるように、プレス成形によって積層する工程を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項14】
多層配線基板の製造方法であって、
第1の容量層の両面に導電層を形成して第1の部材を生成する工程と、
第2の容量層の片面に導電層を形成して第2の部材を生成する工程と、
第3の容量層の片面に導電層を形成して第3の部材を生成する工程とを有し、
前記第1、前記第2、および前記第3の容量層のうちの少なくとも二者は、それらの電気容量が相互に異なり、
さらに、前記第1の部材の一方の面上に前記第2の部材の導電層の無い面が突き合わさると共に、該第1の部材の他方の面上に前記第3の部材の導電層の無い面が突き合わさるように、プレス成形によって積層する工程を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−165857(P2007−165857A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291246(P2006−291246)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]