説明

多層配線基板

【課題】 表面配線導体と貫通導体との接続部にクラックや剥がれが発生して信頼性が低下するのを抑制することができる多層配線基板を提供する。
【解決手段】 本発明の多層配線基板は、絶縁層11、12、13が複数積層された絶縁基体1と、絶縁層11、12、13を貫通する貫通導体2(21、22、23)と、絶縁基体1の表面に設けられた表面配線導体3と、絶縁基体1の内部に設けられた内部配線導体4とを備え、最上層または最下層となる絶縁層11、13を貫通する貫通導体21、23は、表面配線導体3との接続端部に表面配線導体3と同じ成分を最も多く含み、表面配線導体3との接続端部から遠ざかるにしたがって表面配線導体3と同じ成分が徐々に少なくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体部品を実装した電子部品に用いられる多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体部品を多層配線基板に実装した電子部品の小型化の要求に対応するため、多層配線基板を小型化する必要がある。多層配線基板は、複数の絶縁層からなる絶縁基体と、絶縁基体の表面および内部に設けられた配線導体と、配線導体間を接続するための貫通導体等とで構成されていて、多層配線基板の小型化に伴い、配線導体、貫通導体等を微細化する必要がある。
【0003】
表面配線導体を微細化すると、絶縁基体との接合強度が低下することによる剥がれが発生するおそれがある。そこで、表面配線導体と絶縁基体との接合強度を調整するため、表面配線導体に絶縁基体の成分などを、量や種類を適宜調整して添加することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−138319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成では表面配線導体と貫通導体との間で熱膨張係数が異なるため、表面配線導体と貫通導体との接続部にクラックが発生したり、表面配線導体が貫通導体から剥がれてしまったりするおそれがある。今後、電子部品の小型化に伴う表面配線導体や貫通導体の微細化が進むと、表面配線導体と貫通導体との接続面積が小さくなり、より信頼性の低下が懸念される。
【0006】
また、用途に応じて、表面配線導体と貫通導体や内部配線導体とは、添加剤の量や種類の異なる導体が使用される場合がある。例えば、生体埋設用途として、表面配線導体には生体適合性のよい白金を用い、貫通導体や内部配線導体にはなるべく高価な白金を用いたくない場合がある。このような場合においても、表面配線導体とこれに接続された貫通導体との接続部にクラックが発生したり、表面配線導体が貫通導体から剥がれてしまったりするおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、表面配線導体と貫通導体との接続部にクラックや剥がれが発生して信頼性が低下するのを抑制することができる多層配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多層配線基板は、絶縁層が複数積層された絶縁基体と、前記絶縁層を貫通する貫通導体と、前記絶縁基体の表面に設けられた表面配線導体と、前記絶縁基体の内部に設けられた内部配線導体とを備え、最上層または最下層となる絶縁層を貫通する貫通導体は、前記表面配線導体との接続端部に前記表面配線導体と同じ成分を最も多く含み、前記表面配線導体との前記接続端部から遠ざかるにしたがって前記表面配線導体と同じ成分が徐々に少なくなっていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の多層配線基板は、前記最上層または最下層となる絶縁層を貫通する前記
貫通導体を積層方向に平行な断面で視たとき、前記表面配線導体と同じ成分からなる第1領域と該第1領域とは異なる成分からなる第2領域とを含み、前記第2領域を第1領域が取り囲むようになっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貫通導体と表面配線導体の接続部において、貫通導体と表面配線導体との熱膨張係数が近似することとなる。したがって、表面配線導体と貫通導体との接続部にクラックや剥がれが発生して信頼性が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示すA−A線断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の多層配線基板の製造方法の一例を工程順に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態の一例について説明する。
【0013】
図1は本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す概略断面図であり、図2は図1に示すA−A線断面図である。
【0014】
図1に示す多層配線基板は、絶縁層11、12、13が複数積層された絶縁基体1と、絶縁層11、12、13を貫通する貫通導体2(21、22、23)と、絶縁基体1の表面に設けられた表面配線導体3と、絶縁基体1の内部に設けられた内部配線導体4とを備え、最上層または最下層となる絶縁層11、13を貫通する貫通導体21、23は、表面配線導体3との接続端部に表面配線導体3と同じ成分を最も多く含み、表面配線導体3との接続端部から遠ざかるにしたがって表面配線導体3と同じ成分が徐々に少なくなっている。
【0015】
絶縁基体1は、複数の絶縁層11、12、13からなり、酸化アルミニウム質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,炭化珪素質焼結体,窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックス焼結体等のセラミック材料により形成されている。
【0016】
絶縁基体1の内部には、絶縁層11、12、13を貫通する貫通導体2(21、22、23)が設けられているとともに、内部配線導体4が設けられている。また、絶縁基体1の表面には表面配線導体3(上側表面配線導体31、下側表面配線導体32)が設けられている。
【0017】
貫通導体2(21、22、23)、表面配線導体3(上側表面配線導体31、下側表面配線導体32)および内部配線導体4は、主成分として、例えばタングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn),金(Au),銀(Ag),銅(Cu),パラジウム(Pd)および白金(Pt)のうち1種または2種以上を含み、絶縁基体1の形成材料等により使い分けることが可能である。ここで、主成分として銅,銀もしくは金を用いるのが、抵抗値を低くし高周波の信号を通りやすくすることから、好ましい。
【0018】
貫通導体2(21、22、23)、表面配線導体3(上側表面配線導体31、下側表面配線導体32)および内部配線導体4の主成分以外の副成分としては、例えばSiO−B系ガラス、SiO−B−Al系ガラス,SiO−B−Al−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)ガラス,SiO−Al−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は同じまたは異なって
Ca,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)ガラス,SiO−B−Al−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は上記と同じである)ガラス,SiO−B−M3O系(ただし、M3はLi、NaまたはKを示す)ガラス,SiO−B−Al−M3O系(ただし、M3は上記と同じである)ガラス,Pb系ガラス,Bi系ガラス等や、Al,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミックスが挙げられる。
【0019】
なお、表面配線導体3(上側表面配線導体31、下側表面配線導体32)および内部配線導体4においては、広面積のいわゆるベタパターンや線状のラインパターンが形成されるが、ラインパターンに比べてベタパターンにおける主成分となる導体の量を多くすることにより、ベタパターンの周辺における絶縁基体1のクラックの発生を抑制し、かつラインパターンの抵抗値を低く維持することができる。例えば、幅が50μmのラインパターンでは主成分となる導体の量は92乃至99質量%とし、ベタパターンでは主成分となる導体の量は85乃至95質量%とするのが好ましい。
【0020】
そして、最上層となる絶縁層11を貫通する貫通導体21は、表面配線導体3(上側表面配線導体31)との接続端部に表面配線導体3(上側表面配線導体31)と同じ成分を最も多く含み、表面配線導体3(上側表面配線導体31)との接続端部から遠ざかるにしたがって表面配線導体3(上側表面配線導体31)と同じ成分が徐々に少なくなっている。一方、最下層となる絶縁層13を貫通する貫通導体23は、表面配線導体3(下側表面配線導体32)との接続端部に表面配線導体3(下側表面配線導体32)と同じ成分を最も多く含み、表面配線導体3(下側表面配線導体32)との接続端部から遠ざかるにしたがって表面配線導体3(下側表面配線導体32)と同じ成分が徐々に少なくなっている。
【0021】
なお、貫通導体21、23における表面配線導体3と同じ成分とは、含まれている主成分および副成分が同じであるとともにその配合割合も同じであることをいう。
【0022】
このように、表面配線導体3が、貫通導体22や内部配線導体4とは異なる材料であっても、最上層となる絶縁層11に設けられた貫通導体21または最下層となる絶縁層13に設けられた貫通導体23を上述の構成とすることで、貫通導体21と上側表面配線導体31との接続部においてこれらの熱膨張係数が近似することになるとともに、貫通導体23と下側配線導体32との接続部においてこれらの熱膨張係数が近似することとなる。これにより、表面配線導体3と貫通導体21、23との接続部にクラックや剥がれが発生して信頼性が低下するのを抑制することができる。
【0023】
ここで、具体的な構成としては、最上層または最下層となる絶縁層11、13を貫通する貫通導体21、23を積層方向に平行な断面で視たとき、表面配線導体3と同じ成分からなる第1領域211、231と、第1領域211、231とは異なる成分からなる第2領域212、232とを含み、さらに例えば第1領域211、231が表面配線導体3の上に先細り形状(特に円錐状ないし円錐台状)に立設され、第2領域212、232が先細り形状の第1領域211、231と嵌合、または、図1および図2に示すように、第2領域212、232が内部配線導体4の上に先細り形状(特に円錐状ないし円錐台状)に立設され、第1領域211、231が先細り形状の第2領域212、232と嵌合するような形状、いわゆる雄雌の関係にある形状になっているものが挙げられる。このような構成によれば、アンカー効果により、表面配線導体3の剥がれを確実に抑制することができる。
【0024】
特に、図1および図2に示すように、表面配線導体3と絶縁基体1との接合強度を高め
るために表面配線導体3に絶縁基体1の成分を添加した場合において、表面配線導体3と同じ成分からなる第1領域211、231が第1領域211、231とは異なる成分からなる第2領域212、232を取り囲むようになっているのが好ましく、このような構成になっていることで、貫通導体21、23の側壁に絶縁層11、13との接合強度の高い第1領域211、231を配置し、この第1領域211、231を絶縁層11、13と接合させることができるため、貫通導体21、23と絶縁層21、23との間に隙間が形成されるのを抑制することができる。
【0025】
特に、第1領域211、231と第2領域212、232との境界が積層方向に平行な断面で視たときにV字状となっているのが好ましい。このようになっていることで、多層配線基板を実装した際の熱等によって第1領域211、231と第2領域212、232との境界の熱膨張係数差による水平方向の熱応力が発生した場合、水平方向の応力を境界面に平行な方向と垂直な方向とに分散することができる。また、第1領域211、231と第2領域212、232との境界面積を大きくすることができるため、接続信頼性を向上させることができる。
【0026】
なお、図1および図2に示す例では、最上層となる絶縁層11を貫通する貫通導体21は、上側表面配線導体31との接続端部に上側表面配線導体31と同じ成分を最も多く含み、上側表面配線導体31との接続端部から遠ざかるにしたがって上側表面配線導体31と同じ成分が徐々に少なくなっているとともに、最下層となる絶縁層13を貫通する貫通導体23は、下側表面配線導体32との接続端部に下側表面配線導体32と同じ成分を最も多く含み、下側表面配線導体32との接続端部から遠ざかるにしたがって下側表面配線導体32と同じ成分が徐々に少なくなっている構成となっているが、本発明は貫通導体21と貫通導体23のうちの一方のみがこのような構成になっているものであってもよい。
【0027】
以下、本発明の多層配線基板の製造方法の一例について説明する。
【0028】
まず、図3(a)に示すように、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の支持体41上に表層配線導体となる表面配線導体用導体ペースト42を塗布し、表面配線導体用導体ペースト42上には、貫通導体の第1領域となる第1領域用導体ペースト43を形成する。なお、図では便宜上、上下を逆に示している。
【0029】
表面配線導体用導体ペースト42および第1領域用導体ペースト43を形成する方法としては、印刷用のマスクの開口部から導体ペーストを塗布するスクリーン印刷法およびインクジェットやディスペンサー等の導体ペーストを直接描画する方法等のいずれの方法も適用することができる。スクリーン印刷法を用いる場合、たとえば比較的厚いメタルマスクを用いることにより、アスペクト比(高さ)の高い第1領域用導体ペースト43を形成でき、その高さ、大きさ、及び分布は適宜設定される。なお、スクリーン印刷法を用いて図3(a)に示すような円錐状ないし円錐台状に第1領域用導体ペースト43を形成するには、上面と下面とで貫通孔の開口径が異なり、上面から下面にかけて徐々に径が拡大するような形状のメタルマスクを用いればよい。また、ディスペンサーを用いて図3(a)に示すような円錐状ないし円錐台状に第1領域用導体ペースト43を形成するには、段階的に塗布面積を変えて塗布すればよい。
【0030】
表面配線導体用導体ペースト42および第1領域用導体ペースト43は、主成分となる導体粒子および主成分以外の副成分となる粒子等にバインダ樹脂および溶剤を調合して、加熱および混合することにより作製される。
【0031】
主成分となる導体粒子は、上述の金属粉末をアトマイズ法または還元法等により処理して製造されたものであり、必要により酸化防止または凝集防止等の処理を行なってもよい
。導体粒子が2種類以上の場合は、2種類以上の粉末を混合してもよいし、合金またはコーティング等により2種類以上の金属材料が一体となった粉末を用いてもよい。また、分級等により微粉末または粗粉末を除去して粒度分布を所望の分布に調整したものであってもよい。
【0032】
主成分以外の副成分となる粒子は、ガラス粉末やセラミック粉末をアトマイズ法により製造したものや、ボールミル等で粉砕処理したもの等を用いることができる。また、必要により酸化防止または凝集防止等の処理を行なってもよい。副成分となる粒子が2種類以上の場合は、2種類以上の粉末を混合してもよいし、コーティング等により2種類以上の絶縁材料が一体となった粉末を用いてもよい。また、分級等により微粉末または粗粉末を除去して粒度分布を所望の分布に調整したものであってもよい。
【0033】
導体ペーストに含まれるバインダ樹脂は、従来から導体ペーストに使用されているものが使用可能である。例えば、アクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体の他、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられるが、セラミックグリーンシートを積層する際の加熱温度により硬度の変化しにくい、熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1分子中に2個のエポキシ基を有し、好ましくは少なくとも1つのナフタレン骨格を有する。具体的にはナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ナフトール類またはフェノール、クレゾール、レジルシノール等のフェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ズルオキザール、アルカンジアール等のアルデヒド類と反応生成物であるノボラック型エポキシ樹脂が挙げられ、これらのエポキシ樹脂の1種類または2種類以上が持ちられる。
【0034】
バインダ樹脂の添加量としては、導体ペーストに用いる主成分および副成分の種類等により異なるが、焼成時に分解・除去されやすく、かつ主成分および副成分を良好に分散できる量であればよく、その目安としては主成分および副成分の合計100質量部に外添加で5乃至20質量部が望ましい。
【0035】
また、溶剤としては、テルピネオール,ブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等の可塑剤等が使用可能である。溶剤の量としては、上記バインダ量で適切な粘度になるように適宜調整する。
【0036】
そして、表面配線導体用導体ペースト42および第1領域用導体ペースト43を形成した支持体41上にセラミックスラリー44を形成する。
【0037】
セラミックスラリー44は、例えば酸化アルミニウム,酸化珪素および酸化カルシウム等の原料粉末をバインダ樹脂および溶剤とともに混練したものである。このセラミックスラリー44は、支持体41上に直接塗布してもよく、他の支持体に塗布したものを積層(転写)してもよい。
【0038】
次に、図3(b)に示すように、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の支持体45上に内部配線導体となる内部配線導体用導体ペースト46を塗布し、内部配線導体用導体ペースト46上に、貫通導体の第2領域となる第2領域用導体ペースト47を形成する。
【0039】
ここで、第2領域用導体ペースト47としては、第1領域用導体ペースト43とは導体粒子が異なるもの(例えば白金とタングステンなど)、第1領域用導体ペースト43に含まれる副成分となる粒子の種類や比率が異なるものなどが挙げられる。なお、内部配線導体用導体ペースト46および第2領域用導体ペースト47を形成する方法は、表面配線導体用導体ペースト42および第1領域用導体ペースト43を形成する方法と同様である。
【0040】
このとき、第2領域用導体ペースト47の乾燥後の硬度を第1領域用導体ペースト43の乾燥後の硬度よりも高くしておくことで、後述する積層工程において、第2領域用導体ペースト47が第1領域用導体ペースト43に突き刺さるように積層することができる。
【0041】
ここで、硬度とは、JIS14577に規定された超微小硬度計を用いた測定値のことである。セラミックスラリー44の乾燥後の硬度が1乃至4MPa、第1領域用導体ペースト43の乾燥後の硬度が0.01乃至0.7MPaの場合、第2領域用導体ペースト47の乾燥後の硬度が5乃至500MPa程度であれば、第2領域用導体ペースト47で突き刺した際に、第2領域用導体ペースト47にクラック等が発生せず、第1領域用導体ペースト43を突き刺すことができる。
【0042】
なお、ペーストに添加する溶剤の中で、可塑剤(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート)は乾燥後のペーストの硬度を低下させる効果があるため、内部配線導体用導体ペースト46および第2領域用導体ペースト47の可塑剤添加量を表面配線導体用導体ペースト42および第1領域用導体ペースト43の可塑剤添加量と比較して少なくすることで、内部配線導体用導体ペースト46および第2領域用導体ペースト47の硬度を高くすることができる。
【0043】
また、内部配線導体用導体ペースト46および第2領域用導体ペースト47の揮発する溶剤量を、表面配線導体用導体ペースト42および第1領域用導体ペースト43の揮発する溶剤量より少なくすることにより、乾燥後の密度を低くすることができるので、より貫通しやすくすることができる。
【0044】
さらに、使用する導体材料等にもよるが、バインダ樹脂量については、少ない方が上記乾燥により揮発する溶剤量を多くした場合と同様に少ない方が密度が低下する傾向にあるので、表面配線導体用導体ペースト42および第1領域用導体ペースト43のバインダ量を少なくするのが好ましい。
【0045】
次に、図3(c)に示すように、図3(a)で作成した成形体と図3(b)で作成した成形体とを、第1領域用導体ペースト43の形成された側と第2領域用導体ペースト47の形成された側とを向かい合わせて積層する。その後、支持体41と支持体45とを剥離して、セラミックグリーンシートを作製する。
【0046】
積層する際には、支持体41の他方主面に当て板として寸法や変動の少ない、例えばステンレス板、真鍮板などの金属板、ポイリミド樹脂板等を配置し、支持体45の他方主面より加圧したときに弾性的に変形する、例えばブタジエン、ネオプレン等のゴム製のローラで加圧することにより、第2領域用導体ペースト47が第1領域用導体ペースト43に突き刺さりやすくなることから、好ましい。
【0047】
次に、図3(d)に示すように、図3(c)の工程によって作製されたセラミックグリーンシートおよび貫通孔に貫通導体用導体ペーストの充填されたセラミックグリーンシートなどを組み合わせて積層したセラミックグリーンシート積層体48を作製する。
【0048】
このとき、セラミックグリーンシート同士が位置ずれしないように、また、複数のセラ
ミックグリーンシート1を確実に積層できるように押さえる程度の加圧(0.1〜1MPa)をして積層するのがよく、より精度よく確実な圧着が可能となる。
【0049】
最後に、このセラミックグリーンシート積層体を焼成することで、図1に示すような多層配線基板が得られる。
【0050】
焼成する工程は、有機成分の除去工程(脱脂工程)とセラミック粉末の焼結工程とから成る。有機成分の除去工程は、100〜800℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体を加熱することによって行ない、有機成分を分解、揮発させるものである。また、焼結工程における焼結温度は、セラミックスの組成により異なり、約800〜1600℃の範囲内で行なう。焼成雰囲気は、セラミック粉末および導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等適宜選択され、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
【0051】
なお、焼成して得られた多層配線基板は、その表面に露出した表面配線導体の表面に、表面配線導体の腐食防止、半田および金属ワイヤ等の外部の基板および電子部品等との良好な接続のために、Ni,Auのめっき層を施すとよい。
【0052】
以上の製造方法により、表面配線導体と貫通導体との接続部にクラックや剥がれが発生して信頼性が低下するのを抑制された多層配線基板が得られる。
【符号の説明】
【0053】
1:絶縁基体
11、12、13:絶縁層
2、21、22、23:貫通導体
211:第1領域
212:第2領域
3:表面配線導体
31:上側表面配線導体
32:下側表面配線導体
41、45:支持体
42:表面配線導体用導体ペースト
43:第1領域用導体ペースト
44:セラミックスラリー
46:内部配線導体用導体ペースト
47:第2領域用導体ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層が複数積層された絶縁基体と、前記絶縁層を貫通する貫通導体と、前記絶縁基体の表面に設けられた表面配線導体と、前記絶縁基体の内部に設けられた内部配線導体とを備え、最上層または最下層となる絶縁層を貫通する貫通導体は、前記表面配線導体との接続端部に前記表面配線導体と同じ成分を最も多く含み、前記表面配線導体との前記接続端部から遠ざかるにしたがって前記表面配線導体と同じ成分が徐々に少なくなっていることを特徴とすることを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記最上層または最下層となる絶縁層を貫通する前記貫通導体を積層方向に平行な断面で視たとき、前記表面配線導体と同じ成分からなる第1領域と該第1領域とは異なる成分からなる第2領域とを含み、前記第2領域を第1領域が取り囲むようになっていることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−230974(P2012−230974A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97328(P2011−97328)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】