説明

多数の部位で改変されたSP1ポリペプチドおよびその使用

本発明は、そのいくつかの実施形態において、一般には材料科学に関連し、より具体的には、安定タンパク質1(SP1)の配列変化体に関連し、また、カーボンナノチューブの結合、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体に基づく複合ポリマーおよび複合ポリマー材料(例えば、布地など)の製造のためのその使用、ならびに、それらの使用、タイヤにおける導電性を高めるためのそれらの使用に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、一般には材料科学に関連し、より具体的には、安定タンパク質1(SP1)の配列変化体、その使用、およびこれらのSP1変化体に基づく新規で改良された複合材料に関連する。
【背景技術】
【0002】
安定タンパク質1(SP1)は、中央に空洞を有するリング形状ドデカマー粒子を形成する、ヨーロッパヤマナラシ(Populus tremula aspen)植物から単離されるホモオリゴマータンパク質である。SP1のオリゴマー形態は、プロテアーゼ(例えば、トリプシン、V8およびプロテイナーゼKなど)、高温、有機溶媒および高レベルのイオン性界面活性剤に対して抵抗性である並外れて安定な構造である。
【0003】
国際公開WO2002/070647、同WO2004/022697、米国特許出願公開第20030092624号、同第20050074763号および同第20060172298号ならびに米国特許第7253341号は、シャペロン様活性を有する新規な、変性剤に安定な、プロテアーゼ抵抗性の、ホモオリゴマーの安定タンパク質(SP)変化体、ならびに、これらの新規なSPの製造方法および精製方法を教示する。これらの文書はまた、各種SPをコードする核酸、各種SPをコードする核酸を単離する方法、各種SPを認識する抗体、また、巨大分子(例えば、タンパク質など)の安定化、リフォールディング、修復、凝集防止および解凝集のためのこれらのSPの使用、各種SPを含む融合タンパク質、融合タンパク質をコードする核酸構築物、ならびに、様々な方法および適用におけるそれらの使用を提供する。
【0004】
国際公開WO2007/007325[PCT/IL2006/000795]は、様々な物質との可逆的および共有結合性の分子会合を形成することができるSP1および改変されたSP1変化体ポリペプチド、それらを含む組成物、ならびに、それらの様々な使用を教示する。
【0005】
複合材料の製造におけるタンパク質の使用は、例えば、ナノバイオテクノロジーおよびナノ工学ならびに生体材料応用の分野では注目が増している。しかしながら、タンパク質構造およびタンパク質機能の天然に存在する多様性には感嘆させられる一方で、生体材料の二次加工が、天然タンパク質プールの入手性、非柔軟性、低い安定性および非特異的な結合によって本質的に制限される。
【0006】
タンパク質が界面に集まる。これは、実用的利点および欠点の両方であり得る性質である。ほとんどのタンパク質が大きい両親媒性分子であり、固有的に表面活性であるが、表面とのそれらの相互作用は推測することが困難である。タンパク質の吸着・脱着挙動を支配するパラメーターの予測および決定は、分子間力(例えば、クーロン力、ファンデルワールス力、ルイス酸・塩基の力、エントロピーに基づく影響(例えば、疎水性相互作用、立体配座エントロピーなど)および制限された運動性など)と、タンパク質の立体配座に影響を及ぼすタンパク質分子内の分子内力とが互いに影響し合うことによって複雑である。
【0007】
操作されたタンパク質は、ある程度の合成的柔軟性を、特異的な結合ドメインを提供することによって可能にし得る。しかしながら、ただ1種類だけのペプチド機能的ドメインの挙動はそこそこの精度で予測され得る一方で、多数のドメインを含む操作されたタンパク質の挙動を予測することは、より高次の組織化、増大したサイズおよび複雑なトポロジーのためにはるかにより困難である。同様に、ファージディスプレーなどの技術は、無機分子と結合する多くの有用なペプチドを提供しているが、結合特異性および標的認識を支配する機構は十分には理解されていない。
【0008】
カーボンナノチューブ強化複合材料
カーボンナノチューブはグラファイト炭素原子のナノスケールの中空円筒物である。カーボンナノチューブは、どの知られている材料の中でも最大のヤング率(剛性)、最大の熱伝導性、最大の電気伝導性および最大の電流密度をもたらし、一方で、低い密度を有する。カーボンナノチューブは、2つの形態で、すなわち、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブとして入手できる。単層カーボンナノチューブは、より強い、より柔軟な、より透明な、かつ、より良好な電気導体である傾向があり、また、より透明であるが、大きい製造コストのために、多層カーボンナノチューブが複合材料においてより広範囲に使用される。
【0009】
カーボンナノチューブがマトリックス材料に加えられるとき、複合材は、混合則のためにカーボンナノチューブの特性のいくつかを帯びることになる。しかしながら、カーボンナノチューブ複合材の理論的特性値は現時点では、完全に一体化した複合材を効率よく製造することができないために達成されない。
【0010】
ナノチューブおよびマトリックス材料の境界を挟んだ不十分な接合のために、カーボンナノチューブが広範囲の様々な用途において使用され得る前には、マトリックスへのカーボンナノチューブの配置、配向、固定、グラフト化および結合を操作するための方法が現在、必要であり、特に、そのような固定、グラフト化および結合が、金属を用いることなく行われる場合には必要である。
【0011】
したがって、非常に特異的な複合材料(例えば、カーボンナノチューブが一体化されたポリマーおよびポリマー布地など)の効果的な製造のために有用なカーボンナノチューブとの分子複合体を形成し得るSP1変化体が必要であることが広く認識されており、また、そのようなSP1変化体を有することは非常に好都合であると考えられる。
【0012】
タイヤ:ゴムは、その引張り強さおよび耐摩耗性を改善するためにカーボンブラックと共に一般に配合される。タイヤトレッドのゴム組成物は多くの場合、タイヤの転がり抵抗および走行性能(例えば、湿潤時特性)を改善するために、カーボンブラックに代わる強化剤としてのシリカと共に配合される。しかしながら、シリカ配合タイヤでは、配合ゴムの不良な導電性のために、車輌に帯電した静電気が、問題となる制御不良な放電現象を生じさせ、その結果、ラジオ雑音、電子回路部品への悪影響、短絡生成などを生じさせる。
【0013】
ゴムタイヤおよびタイヤトレッドの不良の導電性はまた、とりわけ使用期間中におけるタイヤの物理的特性および機能のパラメーターに関する詳細なリアルタイム情報を得ようとすることに対する障害でもある。熱伝導性は、タイヤ性能および安全性に対する非常に重要なパラメーターであり、これもまた、タイヤ製造において一般に使用される伝導性不良なゴム配合物およびフィラーによって制限される。
【0014】
タイヤの電気伝導性および熱伝導性を高める方法が提案されている。米国特許出願公開第2010078103号(Nakamura)は、蓄積した静電気を道路表面に放電するための連続する導電性経路をもたらすように形成される導電性ゴム材料からのタイヤ・カーカス・プライを含む空気タイヤを開示する。カーボンブラック強化ゴムが導電性ゴム材料として想定される。
【0015】
米国特許第7528186号(Halasa他)は、カーボンブラックおよびイオン伝導性化合物(例えば、テトラクロロアルミン酸塩;テトラフルオロホウ酸塩;チオシアン酸塩;チオサリチル酸塩、ホスホニウム、イミダゾリウム、ピロリジニウムおよびピリジニウムなど)を取り込む導電性ゴム材料から得られるタイヤトレッドを含む、導電性が強化された空気タイヤを開示する。
【0016】
米国特許第7337815号(Spadone)は、使用期間中の熱伝導性および道路への熱移動を改善するために、様々なカーボンブラック含有量のゴム配合物から作られるトレッドを有する空気タイヤを開示する。
【0017】
米国特許第7318464号(Hahn他)は、例えば、タイヤの状況に関する情報を伝えるために、タイヤ空洞の内側表面に接着剤接合される電気伝導性要素(例えば、ワイヤなど)を有する空気タイヤを開示する。
【0018】
米国特許第7284583号(Dheur他)は、タイヤマウントから道路接触面への最小電気抵抗の経路を提供するために、炭素繊維、金属フィラメントまたはそれらの組合せから作られ、ビードからトレッドにまで及ぶ電気伝導性コードを含む空気タイヤを開示する。
【0019】
米国特許第7131474号(Sandstrom)は、タイヤからトレッド全体にわたって道路までへの電気伝導性経路を提供するカーボンブラック高含有トレッド域を有する空気タイヤを開示する。
【0020】
米国特許第7581439号(Rensel他)は、タイヤの状態および性能に関する情報を含有する無線シグナルを収集および送信するための、導電性ポリマーから作製され得るミクロスケールのセンサーまたはセンサー層を取り込む空気タイヤを開示する。
【0021】
米国特許出願公開第20070028958号(Retti)は、導電性ストリップ(例えば、導電性ポリマー)およびエネルギー発生成分(例えば、ピエゾセラミックまたは集熱材料など)がタイヤのトレッドおよび/またはサイドウォールに組み込まれる電気エネルギー発生タイヤを開示する。
【0022】
米国特許出願公開第20090314404号(Rodgers他)は、タイヤの性能特性(例えば、転がり抵抗)を改変することができる少なくとも1つの活性な材料要素を有するタイヤを開示する。活性な材料が、作動化シグナルに応答して、剛性、弾性率、形状および/または大きさを変えることができる組成物として定義され、例えば、タイヤ構造様式において埋め込むために好適な形状記憶合金、電気活性ポリマー、ピエゾ電気材料、エレクトロレオロジーエラストマーなどである。
【0023】
米国特許出願公開第20060061011号(Kikuchi他)は、強化された熱伝導性およびタイヤからの強化された熱消散のために、配向カーボンナノチューブを組み込む複合材料から作られる空気タイヤまたはソリッドタイヤを開示する。
【0024】
しかしながら、強化された伝導性を有する要素(例えば、カーボンナノチューブなど)を組み込むそのような複合材料の製造方法およびタイヤ製造における使用は、本明細書中上記で述べられる欠点(マトリックスへのカーボンナノチューブの一体化、配置、配向、固定、グラフト化および結合における困難さ)に悩まされる。したがって、タイヤの電気伝導性および熱伝導性を高めるために、一体化されたカーボンナノチューブを含む改善された複合ポリマーおよび複合ポリマー布地を有することは好都合であると考えられる。
【発明の概要】
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、SP1ポリペプチドと、SP1ポリペプチドのN末端におけるカーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドとを含む単離されたキメラポリペプチドであって、SP1ポリペプチドが、
i)配列番号1に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられる、単離されたキメラポリペプチドが提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドは、配列番号10〜配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、SP1ポリペプチドは、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号14〜配列番号18および配列番号86のいずれかに示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カーボンナノチューブまたはグラファイト表面に非共有結合的に結合する示されるようなキメラポリペプチドを含む組成物が提供される。いくつかの実施形態によれば、キメラポリペプチドは、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号14〜配列番号18および配列番号86のいずれかに示される通りであり得る。いくつかの実施形態によれば、キメラポリペプチドは、配列番号8に示される通りである。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、SP1−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地を形成するために、ポリマー、布地またはポリマー布地に結合する少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体を含む組成物であって、前記SP1ポリペプチドが、示されるようなキメラSP1ポリペプチドである組成物が提供される。いくつかの実施形態によれば、キメラポリペプチドは、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号14〜配列番号18および配列番号86のいずれかに示される通りである。いくつかの実施形態によれば、組成物のキメラポリペプチドは、配列番号8に示される通りである。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、カーボンナノチューブ−SP1ポリペプチド複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地は、SP1−カーボンナノチューブ複合体化アラミド繊維を含む。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、カーボンナノチューブ−SP1ポリペプチド複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地は、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化アラミドの織布または不織布を含む。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、SP1ポリペプチドは、配列番号8に示される通りである。いくつかの実施形態によれば、組成物はさらに、SP1−CBD融合タンパク質を含む。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、SP1−CBD融合タンパク質は、配列番号86に示される通りである。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、組成物はさらに、エラストマー物質を含む。いくつかの実施形態によれば、エラストマー物質はゴムである。
【0035】
本発明のいくつかの局面によれば、示された組成物を含む成分を有する空気タイヤまたはセミ空気タイヤが提供される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記成分は、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地とともに形成される複合エラストマー物質である。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地は、カーボンナノチューブ−SP1複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地を有しないタイヤと比較した場合、改善された熱伝導性および電気伝導性を与える。
【0038】
本発明のいくつかの局面によれば、本明細書中上記で示されるようなタイヤを有する車輌を高速化するための方法であって、電流を、少なくとも1つの、SP1−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地に与えて、その結果、タイヤの温度を所望される温度に変化させるようにすること、および、車輌を高速化することを含む方法が提供される。
【0039】
本発明のいくつかの局面によれば、結合したSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体を含む布地基体材料を含む電気伝導性布地であって、電気伝導性布地の導電率が、前記結合したSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体を有しない布地基体材料の導電率よりも大きく、前記SP1ポリペプチドが、本明細書中上記で示されるようなキメラSP1ポリペプチドである電気伝導性布地が提供される。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、上記布地は、綿、ウール、絹、ナイロン、ポリエステル、アラミド、ポリプロピレンおよびエラステインからなる群から選択される織布または不織布である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの局面によれば、電気伝導性のポリマー、布地またはポリマー布地を製造するための方法であって、布地基体材料を提供すること;SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の組成物を調製すること、および、布地基体材料をSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の組成物により処理すること、および、布地基体材料を洗浄して、導電性SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の組成物の過剰量を除くこと、それにより、ポリマー、ポリマー布地または布地基体材料に導電性を与えることを含み、SP1ポリペプチドが、本明細書中上記で示されるようなキメラSP1ポリペプチドである方法が提供される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、SP1ポリペプチドと、SP1ポリペプチドのN末端におけるカーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドとを含むキメラポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、SP1ポリペプチドが、
i)配列番号1に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられる、単離されたポリヌクレオチドが提供される。同様に提供されるものが、単離されたポリヌクレオチドを、その組換え発現を行わせるために少なくとも1つのプロモーターに転写的に連結されて含む核酸構築物である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、所与の物質と結合することができる改変アミノ酸配列を有する少なくとも1つのSP1ポリペプチドを含むSP1ドデカマーを含む組成物であって、改変アミノ酸配列が、SP1ドデカマーの中央の空洞領域に対応するSP1ポリペプチドの領域に位置し、物質の結合がカオトロピック剤の存在下で高まり、組成物がさらに、カオトロピック剤を含み、かつ、SP1ポリペプチドが、
i)配列番号4に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられ、
かつ、カオトロピック剤がグアニジニウム塩酸塩であるとき、改変アミノ酸配列はNi結合Hisタグを含まない、組成物が提供される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変アミノ酸配列は、カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチド、ケイ素結合性ペプチドおよびセルロース結合性ドメインペプチドからなる群から選択される異種ペプチドを含むために改変される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドは、配列番号10〜配列番号13からなる群から選択される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケイ素結合性ペプチドは、配列番号5および配列番号19からなる群から選択される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、SP1ポリペプチドはN末端欠失を含む。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カオトロピック剤は、グアニジニウム塩酸塩、尿素および過塩素酸リチウムからなる群から選択される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、SP1ポリペプチドは、配列番号1〜配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号9および配列番号14〜配列番号18ならびに配列番号86のいずれかに示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、SP1ポリペプチドと、SP1ポリペプチドのN末端における配列番号5に示されるような異種のケイ素結合性ペプチドとを含む単離されたキメラポリペプチドであって、SP1ポリペプチドが、
i)配列番号4に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられる、単離されたキメラポリペプチドが提供される。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたキメラポリペプチドは、配列番号3または配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、所与の物質と結合することができる改変アミノ酸配列を有する少なくとも第1および少なくとも第2の非同一SP1ポリペプチドモノマーを含むヘテロマー組成物であって、第1および第2のSP1モノマーの改変アミノ酸配列が互いに非同一であり、SP1ポリペプチドが、
i)配列番号4に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられ、非同一モノマーがそれらの無機物質結合配列において異なる、ヘテロマー組成物が提供される。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変アミノ酸配列は、カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチド、ケイ素結合性ペプチド、SP1−CBD融合タンパク質およびシステイン置換体からなる群から選択される。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1および第2のSP1モノマーの改変配列は非同一の物質と結合する。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ヘテロマー組成物はドデカマーである。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、改変SP1ポリペプチドドデカマーと複合体化された第1の無機物質と、改変SP1ポリペプチドドデカマーと複合体化された第2の無機物質とを含む組成物であって、第1の無機物質および第2の無機物質がSP1ポリペプチドドデカマーの第1および第2の結合領域を介して複合体化され、かつ、SP1ポリペプチドが、
i)配列番号4に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられる、組成物が提供される。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列は、「HAFESTFES」(配列番号4の65〜73)、「VKH」(配列番号4の9〜11)および「KSF」(配列番号4の44〜46)からなる群から選択される。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたキメラポリペプチドは、配列番号3または配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1または第2の無機物質のうちの少なくとも一方が非共有結合性の結合によって改変SP1ポリペプチドドデカマーと複合体化する。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1または第2の無機物質のうちの少なくとも一方が共有結合性の結合によって前記改変SP1ポリペプチドドデカマーと複合体化する。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によれば、結合領域の少なくとも1つがカーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドであり、第2の結合領域がカーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドではない。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の無機物質の結合領域の少なくとも1つがカーボンナノチューブまたはグラファイト表面であり、第2の無機物質が、ポリマー、布地またはポリマー布地である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の結合領域がカーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドであり、第2の結合領域がケイ素結合性ペプチドである。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、SP1ポリペプチドドデカマーは、配列番号1〜配列番号3、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号14〜配列番号18および配列番号86のいずれかに示されるようなアミノ酸配列を有するSP1ポリペプチドを含む。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の無機物質がカーボンナノチューブまたはグラファイト表面である。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、物質を溶媒に分散させる方法であって、前記物質を、所定の様式で、本明細書中上記で示されるような組成物または単離されたキメラSP1ポリペプチドと接触させて、前記物質と、前記組成物または単離されたキメラSP1ポリペプチドとの間での複合体を形成させること、および
前記複合体を、溶液または懸濁物を形成するように溶媒と接触させること;
それにより、前記物質を前記溶媒に分散させること
を含む、方法が提供される。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態によれば、溶媒は水性溶媒または有機溶媒である。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態によれば、溶媒はエポキシである。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態によれば、物質はカーボンナノチューブである。
【0070】
別途定義される場合を除き、本明細書中で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料が本発明の実施形態の実施または試験において使用され得るが、例示的な方法および/または材料が下記において記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および例は例示にすぎず、必ずしも限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本特許または特許出願は、カラーで表示される少なくとも一つの図面を含む。カラー図面を有する本特許または特許出願のコピーは、必要な費用の支払いと要求により特許庁によって提供されるだろう。本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面および画像を参照して説明する。特に詳細に図面および画像を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面および画像について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0072】
【図1A−1B】図1A−図1Bは、背景技術において記載されるようなM43CΔNSP1(配列番号1)変異体およびL81CΔNSP1(配列番号2)変異体のコンピューター生成表示であり、図1Aは、タンパク質の内側のリングまたは細孔におけるチオール基(緑色)を示すM43CΔNSP1(配列番号1)変異体を示し、図1Bは、タンパク質の外縁におけるチオール基(赤色)を示すL81CΔNSP1(配列番号2)変異体を示す。
【0073】
【図2A−2B】図2A−2Bは、M43C SP1(配列番号1)変異体およびL81C SP1(配列番号2)変異体の発現実験および安定性実験のために行われたSDS−PAGEゲル泳動の写真であり、図2Aは、IPTG誘導前(レーン1)およびIPTG誘導後(レーン2)の総細菌抽出物からのM43C SP1(M43C SP1モノマーのバンドが実線により囲まれる);非煮沸の細菌可溶性画分(レーン3、ドデカマーのバンドが点線により囲まれる)、および、煮沸された細菌可溶性画分(レーン4、モノマーのバンドが実線により囲まれる);細菌の封入体(レーン5)、85℃で30分間の熱処理の後での細菌可溶性画分で、非煮沸物および煮沸物(それぞれ、レーン6およびレーン7);非煮沸および煮沸の精製タンパク質(それぞれ、レーン8およびレーン9);85℃、100℃およびプロテイナーゼkにさらされた安定性処理サンプル(それぞれ、レーン10、レーン11およびレーン12)のPAGEでの分離を示し、図2Bは、図2Aに示されるレーン1〜レーン5におけるサンプルと同じ条件にさらされたレーン1〜レーン5におけるサンプル;煮沸および非煮沸のリフォールディングされたタンパク質(それぞれ、レーン6およびレーン7);図2Aに示されるレーン8〜レーン12におけるサンプルと同じ条件にさらされたレーン8〜レーン12におけるサンプルによるL81C SPの分析を示す(kDa単位でのMWスケール)。
【0074】
【図3A−3C】図3A−3Cは、3つの超平坦な金表面の原子間力顕微鏡法フラッディングトポグラフィー画像であり、ただし、画像において、青色着色領域は露出金表面を示し、赤褐色領域はタンパク質被覆表面を示すが、金表面のそれぞれがSP1の異なる変化体により処理された:すなわち、ほんの1.5%の表面被覆率を示すだけである野生型SP1(図3A)、ほんの60%の表面被覆率を示すだけであるM43CΔNSP1(配列番号1)(図3B)、および、超平坦な金表面の98%の完全かつ均質な被覆率を示すL81CΔNSP1(配列番号2)(図3C)。
【0075】
【図4A−4B】図4A−4Bは、シリカ結合性ペプチドをリング形状タンパク質の内側細孔から広がる金色リボンとして示す、mtbSP変異体(配列番号3)のコンピューター生成グラフィック表示であり、図4Aは、シリカに結合することができないタンパク質の閉じた立体配座を示し、図4Bは、シリカ表面に結合することができる、GuHClの存在によって達成される開いた立体配座を示す。
【0076】
【図5A−5B】図5A−5Bは、mtbSP(配列番号3)の発現、特徴づけおよびSiO結合のSDS−PAGE分析の写真であり、図5Aにおけるレーン1〜レーン2はIPTG誘導前(レーン1)およびIPTG誘導後(レーン2)の総細菌溶解物を含有し、図5Aにおけるレーン3〜レーン4は煮沸(レーン3)および非煮沸(レーン4)の細菌可溶性画分を含有し、図5Aにおけるレーン5は細菌の封入体溶解物を含有し、図5Aにおけるレーン6〜レーン7は、熱処理(85℃で30分間)後の細菌可溶性画分で、煮沸物(レーン6)および非煮沸物(レーン7)を含有し、図5Aにおけるレーン8〜レーン9はプロテイナーゼk添加(レーン8)およびプロテイナーゼk非添加(レーン9)の細菌可溶性画分を含有し、図5Aにおけるレーン10〜レーン11はプロテイナーゼk添加(レーン10)およびプロテイナーゼk非添加(レーン11)の野生型SP1(配列番号4)を含有する。図5Bにおけるレーン1〜レーン2はSiO結合(レーン1)およびSiO非結合(レーン2)のmtbSP(配列番号3)を含有し、図5Bにおけるレーン3〜レーン4はSiO結合(レーン3)およびSiO非結合(レーン4)の野生型SP1(配列番号4)を含有し、図5Bにおけるレーン5〜レーン6は、mtbSP(配列番号3)と、SiO結合(レーン5)およびSiO非結合(レーン6)の野生型SP1(配列番号4)との混合物を含有し、図5Bにおけるレーン7〜レーン9は、結合したmtbSP(配列番号3)(レーン7)、野生型SP1(配列番号4)(レーン8)、および、それらの混合物(レーン9)を含有し、これらのすべてがPAGEでの分離の前に煮沸されなかった(kDa単位でのMW)。
【0077】
【図6A−6B】図6A−6Bは、GuHClの存在(白四角)またはGuHClの非存在(X)によるシリカ結合性ペプチドmTBP(配列番号5)(図6A)およびSP1シリカ結合性SP変化体mtbSP(配列番号3)タンパク質(図6B)のSiO結合の比較プロットを示す。
【0078】
【図7A−7C】図7A−7Cは、3MのGuHClの存在下においてSiOに結合するmTBペプチド(配列番号5)およびSP変化体mtbSPタンパク質(配列番号3)の解離定数分析(図7A〜図7B)およびスキャッチャード分析(図7C)の比較プロットを示し、mtbSPが正の協同的結合を明らかにすること(図7A)、および、mTBペプチド(配列番号5)が非協同的結合を明らかにすること(図7B)を示す。図7CはSiO結合のスキャッチャードであり、変化体タンパク質mtbSP(配列番号3)についてはK=0.3μMであること(白四角)、および、mTBペプチド(配列番号5)についてはK=86μMであること(黒菱形)を示す。
【0079】
【図8A−8H】図8A−8Hは、シリカ表面に結合した種々のSP1変異体の一連のAFMフラッディングトポグラフィー画像であり、3MのGuHClの存在下および非存在下におけるSiO表面に対するそれらの様々な親和性を示す。青色領域はむき出しの表面領域を表し、褐色領域はシリカ結合タンパク質を表す。図8A〜図8Dはそれぞれ、GuHClの非存在による野生型SP1(配列番号4)、L81CΔNSP1(配列番号2)変化体、M43CΔNSP1(配列番号1)変化体およびmtbSP1(配列番号3)変化体であり、これらのすべてが、SiOに対する低い非特異的結合(5%未満の表面被覆率)を示し、図8E〜図8Hはそれぞれ、3MのGuHClの存在下での野生型SP1(配列番号4)、L81CΔNSP1(配列番号2)変化体、M43CΔNSP1(配列番号1)変化体およびmtbSP1(配列番号3)変化体であり、mtbSP変化体のみが、低下した非特異的結合とともにSiO表面の完全な被覆を示す。
【0080】
【図9A−9B】図9A−9Bは、SP1変化体によるCNTの分散を例示する写真である。図9Aは、硬化させたLY5052エポキシ(1)、分散させた複合体TiSP1(mtbSP1、配列番号3)−CNT(約1%)を伴うエポキシLY5052(2)、および、非処理CNT(1%)を伴うエポキシLY5052(3)から作製されるモジュールの透明度を示す。2における暗いが、透明なサンプルには留意すること。図9Bは、分散された複合体TiSP1−CNT(約1%)(mtbSP1)を伴うエポキシLY5052の薄い切片のTEM像を示し、CNTが、硬化した重合エポキシに完全に分散されていることを示す。
【0081】
【図10A−10B】図10A−10Bは、KEVLAR繊維へのSP−1変化体およびSP−1変化体−CNT複合体の結合を例示する。図10Aは、KEVLARへのL3SP1(配列番号8)の結合を、洗浄された繊維のタンパク質アッセイによって検出されるような濃度の関数として明らかにするグラフである。図10Bは、超音波処理を伴う30mgのKEVLAR(商標)繊維とのL4−SP1(配列番号9)−CNT複合体のインキュベーション(180μg/mlのタンパク質、1000μg/mlのCNT;10mM NaPi、pH≒8)、大々的な洗浄および煮沸の後におけるKEVLAR(商標)に結合するSP1/CNTのSDS−PAGE分析を示す。20ulの総画分(レーン1)、非結合画分(レーン2)および抽出繊維画分(適用緩衝液(それぞれ40ul)において煮沸される)(レーン3)をSDS−PAGEに適用した。タンパク質ならびにCNTが明らかに繊維に結合することに留意すること。
【0082】
【図11A−11C】図11A−11Cは、アラミド繊維へのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の結合を例示する高分解能走査型電子顕微鏡法(HR−SEM)像である。リン酸ナトリウム緩衝液に分散されるSP1ポリペプチド(L3SP1、配列番号8)結合カーボンナノチューブ(CNT)をアラミド布地(Kevlarスタイル120平織)とインキュベーションし、撹拌し、すすぎ、一晩風乾した。1グラムの布地あたりおよそ7mgのCNTの結合が認められた。高分解能二次電子顕微鏡像を、高分解能低電圧SEM ULTRA(HR−SEM)を3keVの加速電圧で使用して得た。HR−SEM像についてのスケールが、パネル11A、パネル11Bおよびパネル11Cではそれぞれ、バー=10μm、1.0μmおよび0.1μmである。多量のCNTが布地表面に結合したこと(図11Cを参照のこと)、これにより、非常に増大した表面積、および、CNT間の密な接触がもたらされたことに留意すること。
【0083】
【図12A】図12Aは、炭素繊維材料へのSP−1変化体およびSP−1変化体/CNT複合体の結合を例示する。L3−SP−1(配列番号8)を浴型超音波処理機において1.5時間、50mgの炭素繊維(Sigmatex)とインキュベーションし(1gの炭素繊維あたり0mg、1mg、2mg、4mgおよび8mgのタンパク質)、その後、大々的な緩衝液洗浄を行った。洗浄された布地へのSP1結合をタンパク質アッセイによって求め(図12A)、562nmでの光学濃度によって求めた。結合した布地のSP1/布地(w/w)比が7mgタンパク質/g繊維(0.07%)にまで達することに留意すること。
【図12B−12C】図12B−12Cは、炭素繊維材料へのSP−1変化体およびSP−1変化体/CNT複合体の結合を例示する。図12Bは、溶液中のCNTの濃度に対してプロットされる(600nmにおける)透過率値の標準曲線である。図12Cは、L3SP1/CNT懸濁物における炭素繊維の超音波処理時間の増大による増大した透過率を示す(600nmにおける低下したOD、100倍希釈されたサンプル)。炭素繊維[L3SP1(配列番号8)により前処理された]を5時間、L3SP−1/CNT複合体とともに超音波処理した。溶液からのCNTの喪失(増大した透過率)は、L3−SP−1/CNT溶液からのCNTが炭素繊維布地に結合したことを示している。
【0084】
【図13A−13B】図13A−13Bは、MWCNT結合炭素布地の高分解能走査型電子顕微鏡法(HR−SEM)像であり、炭素繊維へのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の2段階結合を例示する。炭素繊維(Hexcel、平織スタイルK−70−P3000フィラメントヤーン)をCBD−SP1融合タンパク質(配列番号86)の溶液により処理し、大々的に洗浄し、SP1ポリペプチド(L3SP1、配列番号8)結合カーボンナノチューブ(CNT)懸濁物とインキュベーションし、洗浄し、一晩風乾した。布地表面のCNT含有量が約6mg/g布地であった。二次電子顕微鏡(HR−SEM)像(これは上記のように得られた)は、凝集を全く伴わない、布地へのSP1ポリペプチド結合カーボンナノチューブ(CNT)の広範囲かつ均質な結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、一般には材料科学に関連し、より具体的には、安定タンパク質1(SP1)の配列変化体に関連し、また、カーボンナノチューブの結合、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体に基づく複合ポリマーおよび複合ポリマー材料(例えば、布地など)の製造のためのその使用、ならびに、それらの使用、例えば、タイヤにおける導電性を高めるためのそれらの使用に関連する。
【0086】
具体的には、本発明は、無機物質と結合させ、無機物質を制御可能に露呈させるために、また、溶媒におけるそれらの分散を高めるために、また、無機物質を複合材料に取り込むための二機能性または多機能性の試薬として使用することができる。さらに、本発明のSP1変化体ポリペプチドのホモオリゴマー複合体またはヘテロオリゴマー複合体は、例えば、カオトロピック剤にさらすことによって、無機物質への結合を選択的に改変するために操作することができる。そのうえさらに、本発明は、高まった熱伝導性および電気伝導性を有する、一体化されたカーボンナノチューブをSP1変化体を介して取り込む複合ポリマー要素で、例えば、改善された転がり抵抗、静電気放電、熱消散、タイヤ状態のモニタリング、および、タイヤの物理的パラメーターの制御のために、タイヤに取り込むために使用することができる複合ポリマー要素に関する。
【0087】
本発明の原理および操作は、図面および添付の説明を参照して、よりよく理解することができる。
【0088】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が、次の記載において示されているか、または実施例によって例示されている詳細に限定されないことを理解すべきである。本発明は、ほかの実施態様も可能であるし、または様々な方法で実行または実施することができる。同様に、本明細書において用いられている表現および用語法は、説明を目的としており、限定的なものとみなすべきでないことも理解すべきである。
【0089】
SP1ポリペプチドは、熱およびほとんどの化学的変性剤による変性に対して抵抗性があり、プロテアーゼ消化に対して抵抗性があり、また、分子相互作用を安定化させることができ、三次元構造体を形成することができるヘテロオリゴマーおよびホモオリゴマーを形成する並外れて安定なポリペプチドである(Dgany他、JBC、2004、279:51516〜23;米国特許第7,253,341号(Wang他))。
【0090】
本発明者らは、結合性分子の結合特性を強化するために、また、融合された分子(例えば、酵素など)を安定化させるために、また、融合された分子の免疫学的性質を強化するか、または変化させるために、他のタンパク質分子または非タンパク質分子に融合されたSP1タンパク質を以前に発見している(米国特許第7,253,341号(Wang他))。SP1融合タンパク質は、米国特許第7,253,341号に開示されるように、遺伝子工学技術によって付加されたさらなるポリペプチド配列を有する組換えSP1分子と、化学的手段(例えば、架橋など)によって付加されたさらなる非タンパク質成分を有するSP1分子とを含む。本発明者らは、皮膚、毛髪、爪などを強化するためのSP1タンパク質の治療的使用をさらに開示している。
【0091】
PCT IL2006/000795は、薬物の分子複合体化、および、複合体化されたリガンドの送達、同様にまた、その制御放出のために、小分子、ペプチド、核酸フラグメント、無機ナノ構造物および他のリガンドとの分子複合体を形成するSP1およびSP1変化体を開示する。
【0092】
本発明は、SP1ポリペプチドと、異種の無機物質結合性ペプチドとを含むキメラポリペプチドが、様々な無機物質、分子および表面との非常に特異的かつ制御可能な複合体を形成し得るという発見に基づく。本発明のキメラSP1分子の三次元立体配座は多数コピーの無機物質結合性ペプチドの提示を可能にし、これにより、それらの標的分子に対するそれらのアビディティーを高め、また、改変および改善された結合強さをもたらす。このことは、本発明のキメラSP1ポリペプチドを、例えば、無機分子の分散および結合特性を高めるために、また、多機能性試薬として作用するために、また、複合材料の設計および製造のためにことのほか有用にする。
【0093】
したがって、本発明のキメラSP1ポリペプチドは、溶媒およびポリマーにおける溶解性不良な材料(例えば、カーボンナノチューブ)の分散、ならびに、複合体化されたキメラSP1−無機物質の結合による、無機材料、ポリマーおよび表面の改変を高めるために使用することができる。本発明のキメラSP1ポリペプチドは、高まった物理的特徴、例えば、改善された貯蔵弾性率、増大した引張り強さ、衝撃抵抗性、電気伝導性、光学活性、熱伝導性、表面相互作用性、磁気特性および電磁放射線吸収スペクトルなどを有する複合材料を製造するために使用することができる。例えば、キメラなSP1−カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドと複合体化されたカーボンナノチューブの、ポリマー(例えば、エポキシなど)における分散は、キメラSP1−カーボンナノチューブ複合体の優れた分散をもたらし、また、キメラなSP1−カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドと複合体化されたカーボンナノチューブを制御された条件のもとでポリマー(例えば、アラミド(例えば、Kevlar(登録商標)など)にさらすことにより、ポリマー表面へのキメラSP1−カーボンナノチューブ複合体の優れた制御可能な結合がもたらされ、これにより、電気伝導性および熱伝導性のポリマーおよびポリマー布地を製造することがもたらされる。
【0094】
カーボンナノチューブ(CNT)には、本発明によれば、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二重層カーボンナノチューブ(MWNT)、小直径カーボンナノチューブ(これは直径が約3.5nm未満である)、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、カーボンフィブリルおよびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。そのようなカーボンナノチューブは様々な経路により合成することができ、また、様々な長さ、直径、キラリティー(らせん性)および純度のものが可能である。そのようなカーボンナノチューブは内包的にドープすることができる。さらに、CNTサンプルの集団は、長さ、直径、キラリティーおよび/または電子的タイプに関して実質的に均一または不均一であり得る。いくつかの実施形態において、様々な努力が、ナノチューブを精製し、かつ/または、ナノチューブをタイプ毎に分離するために取られている。例えば、Chiang他、J Phys.Chem.B、2001、105:8297〜8301;および、Dyke他、J.Am.Chem.Soc.、2005、127:4497〜4509をそれぞれ参照のこと。SWNTタイプの議論については、Bachilo他、Science、2002、298:2361〜2366;および、Weisman他、Nano Lett.、2003、3:1235〜1238を参照のこと。
【0095】
本発明のキメラSP1ポリペプチドはまた、ケイ素系の化合物および材料(例えば、ガラスなど)を結合させるために、また、金属表面(例えば、金など)に結合させるために有用である。キメラSP1ポリペプチドの二機能的および多機能的な結合特性は、表面への均一な被覆(例えば、顔料および難燃剤など)を固定するためのそれらの使用を可能にする。本発明のキメラSP1ポリペプチドはまた、繊維に結合することができ、無機繊維および布地(例えば、アラミド(Kevlar(商標)およびTwaron(商標)など)、絹、ポリエステル、ガラス繊維、ポリアミド、綿および炭素繊維など)の物理的特性を改変するために使用することができる。特性のそのような変化を測定するためのアッセイの例が本明細書中下記に詳しく記載される。
【0096】
SP1ポリペプチドは、表面活性成分を提示するためのタンパク質足場として使用することができる。万能的なタンパク質足場は一般に、多数のループ構造またはアミノ酸配列を局所的表面領域において露呈させることができる立体配座的に安定な折り畳み実体を構成しなければならない。SP1は、それらの結合能に協同的様式で寄与する様々な成分を露呈させるために操作することができる。そのうえ、ペプチド暴露を、非特異的結合を減らす溶媒条件のもとで操作することができる。
【0097】
したがって、本発明の1つの局面によれば、SP1ポリペプチドと、異種の無機分子結合性ペプチドとを含む単離されたキメラポリペプチドであって、SP1ポリペプチドが、i)天然SP1(配列番号4)に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、ii)安定ダイマー形成能、および、iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列によって特徴づけられる、単離されたキメラポリペプチドが提供される。
【0098】
本明細書に使用される語句「SP1ポリペプチド」は、少なくとも下記の特徴的な性質を有するタンパク質を示す配列番号4に対して少なくとも65%の配列相同性を有する;安定なダイマーを形成することができ、10.00のプルラリティー、4の閾値、1.00の平均加重、2.91の平均マッチおよび−2.00の平均ミスマッチを使用してGCGのBest Fitアルゴリズム(Wisconsin Package Version9.1)を使用して決定されたとき、少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列を、配列番号1のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域に有する。一部の実施形態では、SP1ポリペプチドは、「HAFESTFES」(65〜73、配列番号1)、「VKH」(9〜11、配列番号1)および「KSF」(44〜46、配列番号1)の保存されたコンセンサス配列を有する。本発明の1つの実施形態によれば、「野生型」または「天然型」のSP1は、Wang他(PCT IL02/00174(2002年3月5日出願)の一部継続出願である米国特許出願第10/233409号(2002年9月4日出願、2007年8月7日に米国特許第7,253,341号発行)、これらはともに、全体が本明細書中に示されているものとして参考として組み込まれる)によって開示されるように、アスペンから得られるストレス関連のSP1タンパク質(配列番号4)である。
【0099】
1つの実施形態において、SP1タンパク質は、配列番号4に対して70%相同的、75%相同的、80%相同的、85%相同的、90%相同的、95%相同的、または、最大で100%相同的である。SP1ホモログが、ヨーロッパヤマナラシ以外の植物種において同定されていること、および、これらのSP1ホモログは、上記基準を満たすときには本発明との使用のために好適であり得ることが理解される。
【0100】
SP1ポリペプチドが、変性剤に安定で、煮沸に安定で、また、界面活性剤に安定であり、かつ、シャペロン様活性を有するとして特徴づけられている。本明細書中で使用される場合、表現「変性剤に安定な」は、水溶液における変性処理の後における大きな(50%を超える)構造的オリゴマー安定性を示す。変性処理には、煮沸、および、化学的変性剤(例えば、界面活性剤(例えば、SDS)、尿素またはグアニジニウム−HClなど)への暴露が含まれ得る。
【0101】
本明細書において用いられているような「煮沸安定」という語句は、サイズ分画アッセイによって決定された場合、実質的に100℃で水溶液中で、少なくとも10分間の処理後、大きい(50%以上)構造オリゴマー安定性のことを言う。
【0102】
本明細書において用いられているような「界面活性剤安定」という語句は、サイズ分画アッセイによって決定された場合、1/2,000モル比(モノマー:SDS)を含有する水溶液中の処理後のオリゴマータンパク質の大きい(50%以上)構造オリゴマー安定性のことを言う。
【0103】
本明細書および特許請求の範囲のセクションにおいて用いられているような「プロテアーゼ耐性」という語句は、37℃で少なくとも60分間、50μg/mlのプロテイナーゼKを含有する水溶液中での処理後の大きい(50%以上)安定性および物理的かつ機能的特性の保持のことを言う。
【0104】
本明細書において用いられているような「シャペロン様活性」という語句は、タンパク質のネイティブ折りたたみ、およびネイティブオリゴマー化を仲介し、不正確なタンパク質構造の形成を防ぎ、現存の不正確なタンパク質構造をもとの状態に戻し、部分的に変性されたタンパク質またはこれらのドメイン間に発生しうる不正確な相互作用を阻害することによって、ストレス関連損傷を制限する能力のことを言う。
【0105】
本明細書中で使用される場合、用語「単離された」または用語「実質的に純粋な」は、本発明のキメラSP1ポリペプチドの改変体として使用されるとき、それらが人の介入によって製造され、また、それらの天然のインビボ細胞環境から分離されることを意味する。一般に、そのように分離されたポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、それらが自然界では会合する他のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物または他の物質を実質的に含まない。
【0106】
キメラ体のSP1ポリペプチドは天然SP1(例えば、配列番号4)が可能であり、または、改変されたアミノ酸配列を有するSP1ポリペプチドが可能である。いくつかの実施形態において、改変されたSP1ポリペプチドは、天然SP1ポリペプチドの上記活性、例えば、pH安定性で、熱安定性で、かつ、変性剤およびプロテアーゼに抵抗性であるオリゴマーおよび複合体を形成する能力などを保持する(例えば、実施例2および実施例3、図5を参照のこと)。
【0107】
本明細書中上記で述べられるように、SP1変化体ポリペプチドは、特定の特性をSP1変化体に与えるために改変することができ、それにより、他の物質との分子複合体化および他の物質の放出をより効率的および制御可能にし、また、特定の条件に対して適合可能にする。Dgany他(JBC、2004、279:51516〜523)はSP1ポリペプチドにおける数多くの構造的に重要な領域を特定している。
【0108】
本明細書中で使用される用語「ペプチド」には、天然のペプチド(分解産物または合成的に合成されたペプチドまたは組換えペプチドのいずれか)、ペプチド模倣体(典型的には合成的に合成されたペプチド)そしてペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドが含まれ、これらは、例えば、ペプチドを体内でより安定化させる修飾、またはペプチドの細胞浸透能力を高める修飾を有し得る。そのような修飾には、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合の修飾(CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれるが、これらに限定されない。ペプチド模倣体化合物を調製するための方法はこの分野では十分に知られており、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載される(これは、全体が本明細書中に示されるように参考として組み込まれる)。これに関するさらなる詳細が本明細書中下記に示される。
【0109】
一部の実施形態では、キメラなSP1ポリペプチドには、側鎖に対する修飾、ペプチド合成時における非天然アミノ酸および/またはその誘導体の取り込み、ならびに、立体配座の制約をペプチドまたはそのアナログに負わす架橋剤および他の方法の使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
本発明によって意図される側鎖修飾の例には、アミノ基の修飾、例えば、アルデヒドとの反応、それに続く、NaBHを用いた還元による還元的アルキル化などによるアミノ基の修飾;メチルアセトイミダートによるアミジン化;無水酢酸によるアシル化;シアネートによるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸および無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;ならびに、ピリドキサール−5’−リン酸によるリシンのピリドキシル化、それに続く、NaBHを用いた還元が含まれる。
【0111】
アルギニン残基のグアニジン基を、2,3−ブタンジオン、フェニルグリオキサールおよびグリオキサールなどの試薬による複素環縮合生成物の形成によって修飾することができる。
【0112】
カルボキシル基を、O−アシルイソウレア形成によるカルボジイミド活性化、それに続く、例えば、対応するアミドへのその後の誘導体化によって修飾することができる。
【0113】
スルフヒドリル基を、様々な方法によって、例えば、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;システイン酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸または他の置換マレイミドとの反応;4−クロロメルクリベンゾアート、4−クロロメルクリフェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノールおよび他の水銀化合物を使用する水銀誘導体の形成;アルカリ性pHでのシアネートによるカルバモイル化などによって修飾することができる。
【0114】
トリプトファン残基を、例えば、N−ブロモスクシンイミドによる酸化、あるいは、2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミドまたはスルフェニルハリドによるインドール環のアルキル化によって修飾することができる。他方で、チロシン残基を、3−ニトロチロシン誘導体を形成するためのテトラニトロメタンによるニトロ化によって変化させることができる。
【0115】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾を、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化、または、ジエチルピロカルボネートによるN−カルボエトキシル化によって達成することができる。
【0116】
ペプチド合成時に非天然アミノ酸および誘導体を取り込む例としては、ノルロイシン、4−アミノ酪酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、t−ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプトン酸、2−チエニルアラニン、および/または、アミノ酸のD−異性体の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、α−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキル(例えば、メチル)である)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは、炭素原子において自然界で示される「通常」の側鎖である)によって置換することができる。
【0118】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合の任意のところに存在させることができ、そして同時に数カ所(2カ所〜3カ所)においてさえ存在させることができる。
【0119】
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)は、TIC、ナフチレンアミン(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどの合成された非天然型の酸に置換することができる。
【0120】
上述のことに加えて、本発明のペプチドは一以上の修飾されたアミノ酸または一以上の非アミノ酸モノマー(例えば脂肪酸、複合体炭水化物など)も含むことができる。
【0121】
用語「アミノ酸」には、20個の天然に存在するアミノ酸;インビボで多くの場合には翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含む);および他の非通常型アミノ酸(2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない)が含まれることが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、D−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方が含まれる。
【0122】
下記の表1および表2は、全ての天然に存在するアミノ酸(表1)および非通常型アミノ酸または修飾型アミノ酸(表2)を列挙する。
【0123】

【0124】



【0125】
本発明のペプチドは線状形態で利用されることができるが、環化がペプチドの特性をひどく妨害しない場合、ペプチドの環状形態もまた利用できることが理解される。
【0126】
本発明の1つの実施形態によれば、無機結合性ペプチドは、異種のケイ素結合性ペプチド、例えば、配列番号5に示されるようなRKLPDAA(mtb)である。1つの例示的な実施形態において、SP1ポリペプチドおよび異種のケイ素結合性ペプチド(mtb)を含む得られたキメラポリペプチドは、配列番号3に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0127】
別の実施形態において、結合性ペプチドは炭素繊維または炭素表面と結合する。したがって、キメラポリペプチドは、カーボンナノチューブおよび/またはグラファイト表面と結合するために使用することができる。したがって、本発明のさらなる局面によれば、SP1ポリペプチドと、カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドとを含むキメラポリペプチドが提供される。本発明のキメラポリペプチドとの使用のために好適なカーボンナノチューブ結合性ペプチドはこの技術分野では広く知られており、例えば、米国特許第7304128号(Jagoda他)に開示されるペプチドである。いくつかの実施形態によれば、カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドは、HWSAWWIRSNQS(配列番号10)、HSSYWYAFNNKT(配列番号11)、DYFSSPYYEQLF(配列番号12)またはSNQS(配列番号13)であり、キメラSP1ポリペプチドは、配列番号6、配列番号8、配列番号9および配列番号14〜配列番号18に示されるようなアミノ酸配列を有する。特定の実施形態において、カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドはSP1ポリペプチドのN末端に位置する。
【0128】
別の実施形態によれば、無機結合性ペプチドは、異種のチタン結合性ペプチド、例えば、RKLPDA(配列番号5)またはRALPDA(配列番号19)などである。
【0129】
無機物質(特に固体)と結合するペプチドは、計算生物学ツールを使用して設計することができ、多くの研究の主題となっている。SP1キメラ体における使用のために好適な数多くの無機物質結合性ペプチドモチーフが解明されている(例えば、Sarikaya他、Ann Rev Mater Res、2004;34:373〜408を参照のこと。これは、全体が本明細書中に示されるかのように参照によって組み込まれる)。
【0130】
いくつかの実施形態において、様々な材料に非特異的に結合するペプチドを本発明とともに使用することができる。これらには、特異的なイガイタンパク質(mfp1)に由来する反復したチロシンリッチモチーフ(この場合、チロシン残基はL−DOPA(L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)に変換されることがある(Holten−Andersen&Waite、J Dent Res、87(8):701〜709、2008)、例えば、AKPSYPPTYK(配列番号20)、AKPTYK(配列番号21)、PKISYPPTYK(配列番号22)、APPPAXTAXK(配列番号23)、ATPKPXTAXK(配列番号24)、PYVK(配列番号25)、AKPSPYVPTGYK(配列番号26)、GQQKQTAYDPGYK(配列番号27)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
さらに別の実施形態において、芳香族残基(Phe、Tyr、Trp、His)が非常に多いポリスチレン(PS)結合性ペプチドを本発明とともに使用することができる(Adey他、Gene、1995;14:27〜31;Ph.D.(商標)−C7C Phage Display Peptide Library Kit Manual、New England Biolab、New England Biolabのウエブサイトを参照のこと)。
【0132】
SP1ポリペプチドの改変は、例えば、表面との相互作用におけるタンパク質の機能性を高めることができる。したがって、本発明のさらにさらなる局面によれば、配列番号 に示されるようなアミノ酸配列を含む、アミノ酸置換M43Cを有する単離されたSP1ポリペプチドが提供される。本明細書中で詳述されるように、SP1のアミノ酸座標43におけるシステインの置換は、表面(例えば、平坦な金など)への高まった結合を有するSP1オリゴマー複合体をもたらした。
【0133】
本明細書中で使用される場合、キメラ(な)ポリペプチドは、一般には自然界においてただ1つだけのアミノ酸配列に一緒に見出されない2つ以上の部分を有するアミノ酸配列を示す。キメラSP1ポリペプチドは、SP1ポリペプチドと、無機分子(例えば、金属および他のイオンなど)に対する結合親和性を有する非SP1オリゴペプチドまたは非SP1ポリペプチドとを含み、SP1ポリペプチドおよび非SP1成分がペプチド結合によりつながれるポリペプチドとして本明細書中では定義される。
【0134】
本発明のキメラなポリペプチドおよびその修飾は、従来公知の様々な方法によって作られることができる。本発明のポリペプチドは、ペプチドまたはタンパク質合成の分野における当業者に既知の任意の技術によって合成することができる。固相ペプチド合成については、その多くの技術の要約が、J.M.StewartおよびJ.D.Young、Solid Phase Peptide Synthesis(W.H.Freeman Co.(San Francisco)、1963)に、また、J.Meienhofer、Hormonal Proteins and Peptides(第2巻、46頁、Academic Press(New York)、1973)に見出され得る。古典的な溶液合成については、G.SchroderおよびK.Lupke、The Peptides(第1巻、Academic Press(New York)、1965)を参照のこと。
【0135】
SP1ポリペプチドへの改変を、例えば、部位特異的(例えば、PCRに基づく)変異誘発またはランダム変異誘発(例えば、EMS)によって、エキソヌクレアーゼ欠失によって、化学的修飾によって、あるいは、異種のドメインまたは結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の融合によって導入することができる。本明細書中で詳述されるように、キメラポリペプチドを、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞(例えば、細菌細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞など)において発現させ、発現したキメラポリペプチドを、典型的な生化学的方法を使用する精製(例えば、免疫親和性精製、ゲル精製、発現スクリーニングなど)によって精製することによって得ることができる。他の広く知られている方法が、Deutscher他(Guide to Protein Purification:Methods in Enzymology、第182巻、Academic Press(1990);これは参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載される。
【0136】
組換えポリペプチドの翻訳後修飾(例えば、グリコシル化など)のためのシグナルもまた、コード配列に導入することができる。
【0137】
したがって、本発明の別の局面によれば、上記キメラポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0138】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、RNA配列、相補的ポリヌクレオチド配列(cDNA)、ゲノムポリヌクレオチド配列および/または混成ポリヌクレオチド配列(例えば、上記の組合せ)の形態で単離および提供される一本鎖核酸配列または二本鎖核酸配列を示す。
【0139】
用語「単離(された)」は、自然環境から、例えば、植物細胞から少なくとも部分的に分離されることを示す。
【0140】
本明細書中で使用される場合、表現「相補的ポリヌクレオチド配列」は、逆転写酵素または何らかの他のRNA依存性DNAポリメラーゼを使用するメッセンジャーRNAの逆転写から生じる配列を示す。そのような配列は続いて、DNA依存性DNAポリメラーゼを使用してインビボまたはインビトロで増幅することができる。
【0141】
本明細書中で使用される場合、表現「ゲノムポリヌクレオチド配列」は、染色体に由来する(染色体から単離される)配列を示し、したがって、ゲノムポリヌクレオチド配列は染色体の連続する一部分を表す。
【0142】
本明細書中で使用される場合、表現「混成ポリヌクレオチド配列」は、少なくとも一部が相補的であり、かつ、少なくとも一部がゲノム性である配列を示す。混成配列は、本発明のポリペプチドをコードするために要求されるいくつかのエキソン配列、同様にまた、それらの間に介在するいくつかのイントロン配列を含むことができる。イントロン配列は、他の遺伝子のものを含めて、任意の供給源のものが可能であり、典型的には、保存されたスプライシングシグナル配列を含む。そのようなイントロン配列はさらに、シス作用の発現調節要素を含むことができる。
【0143】
いくつかの実施形態において、SP1ポリヌクレオチド配列は、配列番号28に対して70%相同的、75%相同的、80%相同的、85%相同的、90%相同的、95%相同的、または、最大で100%相同的である。SP1ホモログ(配列番号29〜配列番号54)をコードするポリヌクレオチドが、上記基準を満たすときには本発明のSP1ポリペプチドを製造するために好適であり得ることが理解される。
【0144】
具体的な実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1〜配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号14〜配列番号18および配列番号86のいずれかに示されるようなアミノ酸配列を有する改変SP1ポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0145】
本発明のポリヌクレオチドは宿主生物における組換え発現のためにベクターに導入され得ることが理解される。本発明の別の局面によれば、本明細書中に記載される単離された核酸(例えば、上記キメラポリペプチドをコードする単離された核酸)を含む核酸構築物が提供される。
【0146】
好ましい実施形態によれば、本発明のこの局面による核酸構築物はさらに、ポリヌクレオチドの発現を調節するためのプロモーターを含む。そのようなプロモーターは、その下流側に存在する配列を転写するDNA依存性RNAポリメラーゼと結合するために働くので、転写のために要求されるシス作用の配列要素であることが知られている。
【0147】
本明細書中に記載されるポリヌクレオチドは本発明の必須要素である一方で、種々の状況において使用することができる。本発明のポリヌクレオチドと併せて使用される好まれるプロモーターは二次的に重要であり、任意の好適なプロモーターを含む。しかしながら、転写開始部位がオープンリーディングフレームの上流に位置することを確かめることが必要であることが当業者によって理解される。本発明の好ましい実施形態において、選択されるプロモーターは、宿主細胞が細菌、酵母、あるいは、植物または動物の高等細胞であろうとも、目的とする特定の宿主細胞において活性である要素を含む。
【0148】
本発明による構築物は好ましくはさらに、適切な選択マーカーを含む。本発明によるより好ましい実施形態において、構築物はさらに、複製起点を含む。本発明による別の最も好ましい実施形態において、構築物はシャトルベクターであり、この場合、シャトルベクターは大腸菌においてともに増殖することができ(この場合、構築物は適切な選択マーカーおよび複製起点を含む)、かつ、選ばれた生物の細胞における増殖またはゲノムにおける組み込みのために適合可能であり得る。本発明のこの局面による構築物は、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体が可能である。
【0149】
本発明の構築物は、それによってコードされるポリペプチドを、細菌(例えば、大腸菌、酵母細胞など)から高等細胞(例えば、植物の細胞など)にまで及ぶ様々な生物種において発現させるために使用することができる。発現は、安定的または一過性で選択することができる。
【0150】
植物の形質転換を達成するために、キメラSP1産生をコードする外因性ポリヌクレオチドが好ましくは、植物細胞または植物組織への外因性ポリヌクレオチドの導入および植物におけるキメラSP1ポリペプチドの発現を容易にするために役立つ核酸構築物(1つまたは複数)に含まれる。
【0151】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、異種の無機結合性ペプチド配列を有するキメラSP1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。配列番号55は、ケイ素酸化物結合性ペプチド配列RKLPDAAを含むキメラSP1ポリペプチドをコードする。配列番号56は、カーボンナノチューブ結合性ペプチド配列HWSAWWIRSNQSを含むキメラSP1ポリペプチドをコードする。配列番号57は、カーボンナノチューブ結合性ペプチド配列HSSYWYAFNNKTを含むキメラSP1ポリペプチドをコードする。配列番号58は、カーボンナノチューブ結合性ペプチド配列DYFSSPYYEQLFを含むキメラSP1ポリペプチドをコードする。配列番号59は、カーボンナノチューブ結合性ペプチド配列SNQSを含むキメラSP1ポリペプチドをコードする。配列番号60は、R23K置換を有するカーボンナノチューブ結合性ペプチド配列HWSAWWIRSNQSを含むキメラSP1ポリペプチドをコードする。配列番号61は、T22C置換を有するカーボンナノチューブ結合性ペプチド配列HWSAWWIRSNQSを含むキメラSP1ポリペプチドをコードする。配列番号62は、A24TおよびA27Tの変異を改善されたコドン使用法のために有するカーボンナノチューブ結合性ペプチド配列HWSAWWIRSNQSを含むキメラSP1ポリペプチドをコードする。配列番号63は、A24TおよびA27Tの変異を改善されたコドン使用法のために有し、かつ、R23K置換を有するカーボンナノチューブ結合性ペプチド配列HWSAWWIRSNQSを含むキメラSP1ポリペプチドをコードする。
【0152】
本明細書中で使用される場合、用語「異種(の)」は、天然SP1ポリペプチド配列の一部ではないペプチド配列を示す。いくつかの実施形態において、異種の配列は、SP1タンパク質配列と関連がない合成配列であることができる。
【0153】
他の実施形態において、異種の配列は、SP1と関連がない「外来」ポリペプチドに由来することができる。具体的な実施形態において、異種の配列はセルロース結合性ドメイン(CBD)ペプチドに由来する。例示的な、限定されないCBD−SP1融合タンパク質の産生、クローニングおよび組換え発現が、国際公開WO2004/022697に詳しく記載される(これは全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。驚くべきことに、SP1−CBD融合タンパク質が、大きい親和性で、カーボンナノチューブに対するのと同様に、繊維、布地および布地基体と結合することが発見された。したがって、本発明の1つの局面によれば、カーボンナノチューブと複合体化されたSP1−CBDキメラポリペプチドを含む組成物が提供される。
【0154】
カーボンナノチューブと複合体化されたSP1−CBDキメラポリペプチドは、カーボンナノチューブを、編織物、ヤーンおよび布地などに結合するために使用することができる。したがって、1つの実施形態において、SP1−CBDキメラポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地がさらに提供される。1つの実施形態において、SP1−CBDキメラポリペプチドは、クロストリジウム・セロボランス(Clostridium cellovorans)の結合性タンパク質のセルロース結合性ドメインを含む。別の実施形態において、SP1−CBDキメラポリペプチドは、配列番号87に示されるようなCBDドメインを含む。さらに別の実施形態において、SP1−CBDキメラポリペプチドは、SP1ポリペプチドと、CBDアミノ酸配列との間に配置されるペプチドリンカーを含む。1つの例示的な、限定されないリンカーが、配列番号89に示される通りである。さらに別の実施形態において、SP1−CBDキメラポリペプチドは配列番号86に示される通りである。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの局面によれば、電気伝導性のポリマー、布地またはポリマー布地を製造するための方法であって、布地基体材料を提供すること;SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の組成物を調製すること、布地基体材料をSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の組成物により処理すること、布地基体材料を洗浄して、導電性SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の前記組成物の過剰量を除き、それにより、ポリマー、ポリマー布地または布地基体材料に導電性を与えることを含み、SP1ポリペプチドが本発明のキメラSP1ポリペプチドである方法が提供される。いくつかの実施形態において、布地、ヤーンまたは編織物は、SP1−CBDキメラポリペプチドとの複合体を形成するようにSP1−CBDキメラポリペプチドを含む組成物にさらされ、その後、前記SP1−CBDキメラポリペプチド複合体化ヤーン−布地または編織物をCNTまたはSP1−CNT(例えば、SP1−L3−CNTなど)と接触させて、その結果、CNTまたはSP1−CNTを伴うSP1−CBDキメラポリペプチド複合体化ヤーン−布地または編織物を形成させるようにされる。
【0156】
本発明者らは、キメラSP1ポリペプチドで、アミノ酸残基43におけるメチオニンからシステインへの置換およびN末端における6アミノ酸の欠失を有し(これはM43CΔNSP1と名づけられる;配列番号1)、かつ、配列番号5の場合と同様にN末端のケイ素結合性タンパク質を有するもの(mTBペプチド)をコードするポリヌクレオチドをPCRによって調製し、クローン化し、このポリヌクレオチドを細菌において発現させている。発現したキメラSP1タンパク質を精製したとき、キメラSP1−ケイ素結合性タンパク質(mtbSP、配列番号3)は会合して、シリカおよび二酸化シリカと大きい親和性で結合するSP1オリゴマーになることが発見された(実施例2、図7A〜図7Cを参照のこと)。このキメラmtbSPオリゴマーはリング形状のホモドデカマーであり、これは、6個がリングのそれぞれの側にある12個のケイ素酸化物結合性ペプチドをその内側細孔に呈示する(図4を参照のこと)。キメラmtbSPポリペプチドは、ガラス表面およびガラス繊維、ならびに、シリカ化合物(例えば、炭化ケイ素、二酸化ケイ素および二酸化チタンなど)を含有する他の材料に結合することができ、また、そのようなケイ素含有材料の性質を改変するために使用することができる。例えば、このキメラSP1ポリペプチドは、シランにより被覆された炭素繊維に結合することができる。シランによる薄い被覆は、多くの適用のための一般的な慣例であり、例えば、シランが、炭素繊維、ガラス繊維およびポリアラミド繊維をポリマーマトリックスに接着するためのカップリング剤として使用され、また、キメラmtbSPは、その表面でのシラン酸化およびケイ素酸化物形成の結果としてそのような表面に結合する。
【0157】
ケイ素含有表面および/またはケイ素含有粒子へのキメラmtbSP1ポリペプチドの結合を様々な条件で行うことができる。これは、SP1キメラ体が様々な過酷な条件(熱、極端なpH、界面活性剤暴露およびプロテアーゼ暴露)における変性に対して非常に抵抗性であるからである。本発明の1つの実施形態によれば、この結合が、NaClおよびカオトロピック剤(例えば、グアニジン塩酸塩または尿素)の存在下、中性または中性付近(pH6.5)のpHで行われる。図6Aおよび図6Bに示されるように、ケイ素含有表面へのキメラmtbSP1ポリペプチドの特異的な結合が3MのGuHClの存在によって促進される。
【0158】
本発明のキメラSP1ポリペプチドはまた、カーボンナノチューブおよび/またはグラファイト表面と結合するために使用することができる。
【0159】
本発明者らは、配列番号10〜配列番号13(CNT結合性ペプチド)の場合のようにN末端のカーボンナノチューブ結合性タンパク質またはグラファイト表面結合性タンパク質を有するキメラSP1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがPCRによって調製され、クローン化され、細菌において発現させられたことを示している。精製されたとき、組換えキメラSP1−カーボンナノチューブ−グラファイト表面結合性タンパク質(L1−SP1CNT、L2−SP1−CNT、L3−SP1−CNTおよびL6−SP1−CNT、それぞれ、配列番号6、配列番号14、配列番号8および配列番号15)が会合して、カーボンナノチューブおよびグラファイト表面と大きい親和性で結合するSP1オリゴマーになることが発見された(実施例3および表2を参照のこと)。キメラSP1−CNTポリペプチドを発現する形質転換された細菌の粗抽出物はまた、著しく効果的な、熱およびプロテアーゼに安定なCNT親和性を示した(表3を参照のこと)。いくつかの実施形態において、キメラSP1ポリペプチドが封入体として細菌において発現される。キメラSP1−CNTポリペプチドまたはキメラSP1−CBD−CNTポリペプチドは、封入体として発現されるとき[L2(配列番号14)、L3(配列番号8)およびSP1−CBD(配列番号86)]、CNT結合能を有するキメラSP1ポリペプチドを得るために、6M尿素における封入体の溶解、および、低イオン強度の緩衝液を用いた尿素希釈によるタンパク質のリフォールディングによって再構成することができる。いくつかの実施形態において、リフォールディングされたポリペプチドはキメラSP1モノマーである。さらに他の実施形態では、封入体が、Trisma塩基(20mM)、NaOH(8mM)に溶解され、その後、高速遠心分離により、破片が除かれ、上清が水で希釈され、pHがpH=8.2に調節される。
【0160】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、カーボンナノチューブを、広範囲の様々な使用に適用され得る布地に織ることができることを提供する。種々の特徴を有するカーボンナノチューブは、他にない布地を作り出すために一緒に織ることができる。例えば、電気を絶縁するために役立つカーボンナノチューブを、着用者を電気ショックから遮蔽および保護する衣類を作り出すために、非常に電気伝導性のカーボンナノチューブと組み合わせることができ、または、非常に電気伝導性のカーボンナノチューブとの層状にすることができ、一方で、電気伝導性カーボンナノチューブを、静電気蓄積から保護するために布地において組み合わせることができる。同様に、熱伝導性カーボンナノチューブを、ヒートシンクまたは熱源につながれるときには使用者を厳しい熱環境から保護するために役立つ材料に編み込むことができる。
【0161】
一般に、布地の構造的配置により、カーボンナノチューブに関連する機械的特性、熱的特性、電気的特性、物理的特性および化学的特性が示され、また、SP1改変CNTは布地に取り込むことができる。本明細書中で使用される場合、ストランドまたは「繊維」は、ヤーンを規定するために一緒にまとめることができる。その後、これらのヤーンは、布地構造物配置を規定するために、互いに、および/または、随伴ヤーンと織り交ぜられる。他の実施形態によれば、繊維−CNT複合材(これはSP1変化体による媒介に起因して得られる)は、不織布およびシートを製造するために使用することができる。
【0162】
本発明のいくつかの実施形態によれば、キメラSP1−CNTポリペプチドは、多層カーボンナノチューブおよび単層カーボンナノチューブ、炭素繊維、ならびに、炭素表面またはグラファイト表面を含有する他の材料(例えば、炭素繊維など)に結合することができ、また、そのような炭素含有材料の性質を改変するために使用することができる。例えば、キメラSP1ポリペプチドは、さらなる強度を提供するために、複合材料へのそれらの取り込みの前に炭素繊維に結合させることができ、あるいは、他にない化学的特性、電気的特性および熱的特性を有する繊維および布地を提供するために、カーボンナノチューブを均一な様式で合成または天然の布地および布地前駆体(例えば、アラミド(Kevlar(商標)または綿など)に結合するために使用することができる。そのような布地および表面は、ある種のポリマー物質または樹脂と会合するカーボンナノチューブを含む層を含むことができる。
【0163】
ポリマー、布地またはポリマー布地の電気伝導性を増大させることは、ポリマー、布地またはポリマー布地の静電気特性を変化させ得ることが理解される。したがって、静電気が少ない、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地を、ポリマー、布地およびポリマー布地における静電気相互作用および静電気蓄積がそのような材料の機能における重要な要素である場合には使用することができる。したがって、本明細書のいくつかの実施形態によれば、結合したSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体を含む布地基体材料を含む電気伝導性布地が提供され、ただし、この場合、前記電気伝導性布地の導電率は、前記結合したSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体を有しない前記布地基体材料の導電率よりも大きい。本発明のさらなる実施形態によれば、下記の工程を含む、導電性のポリマー、布地またはポリマー布地を製造するための方法が提供される:布地基体材料を提供する工程;SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の組成物を調製する工程、および、前記布地基体材料をSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の前記組成物により処理し、前記布地基体材料を洗浄して、導電性SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の前記組成物の過剰量を除くことによって、導電性を、前記ポリマー、ポリマー布地または布地基体材料に与える工程。他の実施形態において、カーボンナノチューブを、布地、ヤーンまたはポリマーに結合するための本発明の方法のどれもが、布地、ヤーンまたはポリマーの導電性特性を高めるために使用することができる。
【0164】
いくつかの実施形態において、電気伝導性布地は、織布および不織布から選択される布地基体材料を含み、ただし、前記織布および不織布は、天然布地、合成布地、天然布地および合成布地の混合物、ならびに、無機材料布地から選択される。例示的な布地またはポリマーには、綿、ウールおよび絹が含まれるが、これらに限定されず、前記合成布地は、ナイロン、ポリエステル、アラミド、ポリプロピレンおよびエラステイン(Lycra(商標)−Spandex(商標))からなる群から選択される。本発明のSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地を使用する製造のために好適な、カーボンナノチューブを含む布地およびヤーンから作製される衣類、ロープ品、縫製品、成形品および織物品の例には、パラシュート、衣料品、寝袋、自転車部品および機材、スキー板などが含まれるが、これらに限定されない(さらなる詳細な例については、米国特許第7354877号(Rosenberger他)を参照のこと。これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0165】
本明細書中に提供される実施例7は、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー布地が機械的変形に対して応答性であること示す(表7を参照のこと)。したがって、本発明のSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地はまた、布地に加えられた機械的応力(圧力、張力、剪断、衝撃など)に対する応答においてそれらのコンダクタンスを変化させることができる布地または布地に基づく製造物を製造または作製するために使用することができる。そのような布地は、例えば、センサー、相互作用性衣類などを設計することにおいて有用であり得る。SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー布地が、さらなるパラメーター(例えば、水分(例えば、湿度)、温度など)に対して応答性であるように設計され得ることが理解される。
【0166】
1つの具体的な実施形態において、SP1およびキメラSP1ポリペプチドは、カーボンナノチューブと結合させるために使用され、得られたSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体はその後、タイヤの物理的特性(例えば、電気伝導性および/または熱伝導性)および機能を高めるために、カーボンナノチューブをゴムタイヤへの取り込みのためにポリマー(例えば、アラミド(例えば、Kevler(商標)など)に結合させるために使用される。
【0167】
本明細書中で使用される場合、表現「SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体」は、SP1ポリペプチドまたはキメラSP1ポリペプチドを、例えば、実施例1および実施例3で詳しく記載されるように、少なくとも1つのカーボンナノチューブに結合して含む組成物を示す。本明細書中で使用される場合、表現「SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブポリマー複合体」は、SP1ポリペプチドまたはキメラSP1ポリペプチドを、少なくとも1つのカーボンナノチューブに結合して、さらに、少なくとも1つのポリマー、ポリマー繊維またはポリマー布地に結合して含む組成物を示す。1つの実施形態において、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を含む。別の実施形態において、SP1−CBDキメラポリペプチドが、ポリマー、ポリマー布地またはポリマー繊維に結合させられ、SP1−カーボンナノチューブが、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ−ポリマー複合体、ポリマー布地複合体またはポリマー繊維複合体を形成するために、SP1−CBDキメラポリペプチドを介してポリマー、ポリマー布地またはポリマー繊維に結合する。そのような複合体は他の物質(例えば、ヤーン、ウール、絹および綿など)から形成され得ることが理解される。
【0168】
したがって、特許請求されるような本発明の1つの局面によれば、少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地を含む成分を有する空気タイヤまたはセミ空気タイヤが提供される。1つの実施形態において、タイヤ成分は、前記SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地とともに形成される複合エラストマー物質である。別の実施形態において、タイヤ成分は、例えば、トレッドの下側の強化ベルトにおけるように、複合エラストマー物質の層と、カーボンナノチューブ−SP1複合体化ポリマーの少なくとも1つの層とを含む。さらに別の実施形態において、タイヤ成分は、サイドウォール、キャップ/ベース構造様式のトレッドのトレッドベース、および、タイヤアペックスから選択される。
【0169】
カーボンナノチューブ複合体化ポリマーを、タイヤの任意の部分(例えば、トレッド、サイドウォール、内部ベルト、ビード、アペックスなど)の基礎マトリックス(例えば、ゴム)に組み込むことができる。ポリマー−マトリックス複合材を種々の様式でタイヤに組み込むことができる−タイヤの全要素をカーボンナノチューブ複合体化ポリマーから作製することができ、あるいは、ポリマー−マトリックス複合材をタイヤの基礎マトリックスの内側または外側の層としてタイヤに組み込むことができる。ポリマー−マトリックス複合材の組成は、タイヤまたはタイヤの一部分の所望される物理的特性に適するように変化させることができる。例えば、より薄いサイドウォール(これは道路表面と接触していない)を、伝導性がより低い、カーボンナノチューブ−ポリマーが少ないマトリックスから作製することが好都合であり得る。一方、より厚いトレッド、および/または、下に位置する強化ベルトを、カーボンナノチューブ−ポリマーの含有量が多いマトリックス複合材から構築し、これにより、道路−タイヤ境界でのより大きい熱伝導性および電気伝導性を与えることができる。タイヤにおける使用のために好適なアラミド−ゴム複合材およびアラミド−ゴム−カーボンブラック複合材を製造するための例示的な例が、例えば、米国特許出願公開第20040173295号(Zanzig他)に記載されるように、この技術分野では広く知られている。
【0170】
本発明のSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ−ポリマー複合体をタイヤマトリックスに組み込むことからもたらされる改善された熱伝導性および電気伝導性を有するタイヤ、具体的には、自動車用および航空機用のタイヤは、例えば、適切な電流をタイヤの導電性要素に加えることによって、従来のタイヤよりも効率的に加熱および冷却することができる。
【0171】
したがって、特許請求されるような本発明の1つの局面によれば、自動車用タイヤの電荷を変化させる方法であって、少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地を含むサイドウォール、キャップ/ベース構造様式のトレッドのトレッドベース、および、タイヤアペックスのうちの少なくとも1つを有するタイヤを得ること、そして、電流を前記少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地に加え、それにより、前記自動車用タイヤの電荷を変化させることを含む方法が提供される。1つの実施形態において、タイヤの電荷を変化させることにより、タイヤの温度が上がる。1つの実施形態において、タイヤはリムまたはホィールに取り付けられ、タイヤの電荷を変化させることが、タイヤが静止している間に達成される。別の実施形態において、タイヤはホィールまたはリムに取り付けられ、電荷を変化させることが、タイヤが回転している間に達成される。電流を回転中にタイヤまたはタイヤ成分に提供するための方法がこの技術分野では広く知られており、これらには、例えば、ホィールを介した電気的接続、および、タイヤに埋め込まれるブラシ接点などが含まれる。
【0172】
タイヤまたはタイヤ成分の温度を変化させるためのそのような方法は、静止しているタイヤを使用のために準備することにおいて、例えば、レース用車輌のタイヤを車輌の加速期間中および運転期間中の最適な性能のための所望される温度に暖めることにおいて有用であり得る。タイヤ温度は、例えば、自動車レースおよびオートバイレースでは特に重要なパラメーターである。そのうえさらに、タイヤ温度は、航空機においては、特に飛行機の着陸装置のタイヤにおいては、タイヤが着陸時のそれらの使用の直前まで極めて低い温度にさらされる場合、非常に重要である。着地前の着陸装置のタイヤの効率的な均一かつ迅速な加温は、本発明の方法によれば、タイヤ性能の改善および重量要件の緩和をもたらすことができるだけでなく、タイヤ不具合からのより大きな安全性をもたらすかもしれない。飛行機用タイヤにおける温度制御もまた、飛行機の離陸時および地上走行時における性能および安全性を改善することにおいて好都合であり得る。
【0173】
SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地は、冷却効果を、電流を加えたとき、ペルチエ効果に従って提供するために設計され得ることが理解される。したがって、さらに別の実施形態において、タイヤの温度を変化させることは、タイヤを冷却することであり得る。
【0174】
したがって、少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地を含むタイヤを有する車輌を高速化するための方法であって、電流を、前記少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地に与えて、その結果、前記タイヤの温度を所望される温度に変化させるようにすること、および、前記所望される温度のタイヤを有する前記車輌を高速化することを含む方法が提供される。
【0175】
特許請求されるような本発明のさらにさらなる実施形態には、静電気電荷蓄積を放電するための導電性経路を形成する少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー要素、複合体化布地要素または複合体化ポリマー布地要素を有するタイヤ(そのようなタイヤの構造様式の詳細については、例えば、米国特許出願公開第2010078103号(Nakamura)、米国特許第7528186号(Halasa)、米国特許第7284583号(Dheur他)および米国特許第7131474(Sandstrom)を参照のこと)、改善された熱伝導性および使用期間中の道路への熱移動を有する少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー要素、複合体化布地要素または複合体化ポリマー布地要素を有するタイヤ(そのようなタイヤの構造様式および使用の詳細については、例えば、米国特許第7337815号(Spadone)を参照のこと)、タイヤの状況および性能に関する情報(例えば、タイヤ圧、変形、トレッドおよびサイドウォールの摩耗および不具合、転がり抵抗など)を、使用期間中において、静止時および運転中に伝えることができる少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー要素、複合体化布地要素または複合体化ポリマー布地要素を有するタイヤ(そのようなタイヤの構造様式および使用の詳細については、例えば、米国特許第7318464号(Hahn他)および米国特許第7581439号(Rensel他)を参照のこと)、ならびに、カーボンナノチューブ−SP1複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地の導電性ストリップと、タイヤのトレッドおよび/またはサイドウォールに組み込まれるエネルギー発生成分(例えば、ピエゾセラミックまたは集熱材料など)とを有する電気エネルギー発生タイヤ(そのようなタイヤの構造様式および使用の詳細については、例えば、米国特許出願公開第20070028958号(Retti)および米国特許出願公開第20090314404号(Rodgers他)を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
いくつかの適用において、導電性ポリマーを組み込む材料が、異方性の特性、すなわち、不均一な導電性、例えば、特定の方向における低下する導電性の勾配などを示すことが望ましい。
【0177】
いくつかの実施形態において、キメラSP1ポリペプチドは可逆的または共有結合性の結合または分子会合により標的無機物質または化学的環境と相互作用する。本明細書中で使用される場合、表現「結合」または表現「分子会合」は、分子レベルで起こる化学的会合または物理的会合または両方を示す。例えば、結合または会合は、共有結合性の結合、非共有結合性の結合、疎水性相互作用などであることができる。
【0178】
いくつかの実施形態において、キメラSP1ポリペプチドは可逆的または共有結合性の結合または分子会合により標的無機物質または化学的環境と相互作用する。本明細書中で使用される場合、表現「結合」または表現「分子会合」は、分子レベルで起こる化学的会合または物理的会合または両方を示す。例えば、結合または会合は、共有結合性の結合、非共有結合性の結合、疎水性相互作用などが可能である。
【0179】
「可逆的会合」または「可逆的結合」は、本明細書中で定義される場合、具体的な条件に依存して、成分が元の会合前状態に戻ることができ、また、再会合することができる会合である。好ましくは、そのような会合および再会合はペプチド結合の形成および切断を含まない。例えば、本発明の改変SP1キメラポリペプチド−無機物質複合体の成分の可逆的結合は解離することができ、それにより、元の認識できる無機物質成分およびSP1キメラ成分に戻ることができる。
【0180】
本発明における使用のために好適である可逆的な分子会合または結合のタイプは、静電結合、水素結合、ファンデルワールス力、イオン相互作用またはドナー/アクセプター結合からなる群から選択される会合である。可逆的会合が、物質と、SP1ポリペプチドとの間における1つまたは複数の会合によって媒介され得る。例えば、可逆的会合は、複合体形成物質と、SP1ポリペプチドとの間における水素結合およびイオン結合の組合せを含むことができる。加えて、または、代替において、可逆的会合は、例えば、成分間、例えば、物質と、SP1ポリペプチドまたはSP1キメラポリペプチドとの間などの共有結合性または他の非共有結合性の相互作用との組合せが可能である。
【0181】
キメラSP1ポリペプチド、および、キメラSP1ポリペプチドを含む組成物は、結合した無機物質の溶媒中の分散を高めることが示されている。例えば、通常的には非常に不溶性のカーボンナノチューブが、キメラなカーボンナノチューブ結合性L1 SP1と複合体化されるとき、水性環境および有機環境の両方において最大で1000倍大きい濃度を伴って分散することが見出された(本明細書中下記の実施例3および実施例4を参照のこと)。本明細書中で使用される場合、用語「分散」は、溶媒および溶質を含む溶液または懸濁物を形成するために、溶質またはコロイドが溶媒に均等に分布および/または溶解され得ることを示す。すべての溶質が理論上、すべての溶媒に可溶性であることが理解される。しかしながら、溶解性が不良または無視できるほどの(非混和性の)溶質またはコロイドは、所与の溶媒に関して、何ら著しい濃度の溶液または懸濁物を形成しない。
【0182】
したがって、本明細書中で使用される場合、「分散を高める」は、溶媒との溶液または懸濁物における、溶質またはコロイドとして前記物質の濃度を増大させることを示す。好ましい実施形態において、物質は、疎水性物質、典型的には水に不溶性または溶解性不良な疎水性物質であり、溶媒は水性溶媒である。
【0183】
煮沸、プロテアーゼ消化および極端なpHに対するキメラSP1ポリペプチドオリゴマー複合体の安定性が、本明細書中下記の実施例2、実施例3および実施例4ならびに図2A〜図2Bおよび図5A〜図5Bに示される。L1−SP1キメラ体が溶液中でカーボンナノチューブと一緒にされ、何らかの遊離のL1 SP1および非結合のカーボンナノチューブを除くために洗浄およびろ過され、乾燥され、水性溶媒において再構成されたとき、L1−SP1と、カーボンナノチューブとの間の分子会合および複合体形成は、熱および高いpHのもとでさえ、カーボンナノチューブを水において非常に分散可能にした(本明細書中下記の実施例3を参照のこと)。さらに、キメラSP1−カーボンナノチューブ複合体は熱のもとで容易に乾燥され、貯蔵され、様々な溶媒(例えば、重合前のモノマー溶液など)において再構成され得る(本明細書中下記の実施例4を参照のこと)。
【0184】
標的無機物質と複合体化されたキメラSP−1ポリペプチドは様々な方法でポリマーに加えることができる。いくつかの実施形態において、キメラSP1および標的物質の複合体(例えば、L1−SP1−カーボンナノチューブ複合体)は大々的な超音波処理によって調製され、洗浄およびろ過され、限外ろ過透析によって濃縮される。得られる濃縮された複合体は凍結乾燥によって脱水されて微細な粉末にされ、その後、この粉末はモノマー溶液(例えば、エポキシ)と激しく混合され、その後、超音波処理され、分散されなかったSP1−標的物質複合体を除くために遠心分離される。代替において、キメラSP1および標的物質(例えば、カーボンナノチューブ)の複合体が大々的な超音波処理によって調製され、溶液がNaOHによりアルカリ性pH(およそpH12)に調節され、−20℃での50%エタノールにおけるキメラSP1−標的物質の沈殿化、遠心分離およびモノマー溶液との混合が、記載されるように行われる。モノマー溶液における分散された無機物質の濃度を、無機物質の懸濁に起因する光学濃度(透過率または吸光度)における変化によって、または、場合によっては、(キメラSP1複合体の添加に起因する)懸濁物におけるタンパク質濃度の測定によって測定することができる。機能的パラメーターもまた評価することができる。
【0185】
本発明のいくつかの実施形態によれば、無機物質結合性ペプチド成分を有する本発明のキメラSP1ポリペプチドと、標的無機物質とを含む組成物が提供される。そのような組成物は、いくつかの実施形態において、例えば、カーボンナノチューブに結合するL1SP1キメラ体(配列番号6)、ケイ素表面または二酸化ケイ素ビーズに結合するmtbSP(配列番号3)、および、炭素繊維に結合するL1SP1(配列番号6)などを含むことができる。キメラSP1オリゴマーの二機能的および多機能的な性質を考慮すると、本発明のいくつかの組成物はさらに、さらなる分子または物質(例えば、ポリマーなど)を含むことができる。したがって、例えば、いくつかの実施形態による組成物は、キメラSP1ポリペプチドまたはSP1オリゴマーを、カーボンナノチューブに結合して、例えば、エポキシポリマーに分散されて含むことができる(本明細書中下記の実施例4を参照のこと)。重合前のキメラSP1によるカーボンナノチューブのエポキシ溶液における優れたより均一な分散は、不透明性を伴うことなく、均等に分散された、CNT密度が大きいカーボンナノチューブ改変エポキシポリマーをもたらす。そのような液状エポキシ−キメラSP1−カーボンナノチューブ組成物は重合によって硬化させることができ、また、表面を被覆し、表面の物理的特性(例えば、伝導性)を変えるために使用することができ、成形品にし、所望される形状に注型し、仕上げすることなどができる。
【0186】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、改変されたSP1ポリペプチドドデカマーと複合体化された第1の無機物質と、この改変されたSP1ポリペプチドドデカマーと複合体化された第2の無機物質とを含む組成物であって、第1および第2の無機物質がSP1ドデカマーの第1および第2の結合領域を介して複合体化される組成物が提供される。いくつかの実施形態において、改変SP1ポリペプチドは、異種の無機物質結合性ペプチドを含むキメラSP1ポリペプチド(例えば、mtbSP1、L1−SP1、L6−SP1およびL3−SP1など)である。さらなる実施形態において、改変SP1は非共有結合性の結合によって第1および第2の無機物質と複合体化される。さらに他の実施形態において、第1および/または第2の無機物質は共有結合性の結合によって改変SP1と複合体化される。
【0187】
本発明の組成物は、非同一のSP1モノマーを含むヘテロ複合体SP1オリゴマー、あるいは、同一の改変SP1またはSP1キメラ体を含むホモ複合体SP1オリゴマーを含むことができる。本発明のいくつかの実施形態において、第1の無機物質がカーボンナノチューブであり、第2の無機物質がポリマー繊維である。他の実施形態において、第1の結合領域がカーボンナノチューブ結合性領域(例えば、配列番号10〜配列番号13のいずれか)であり、第2の結合領域がケイ素結合性領域(例えば、配列番号5)である。
【0188】
ケイ素を含有する表面および/または粒子へのキメラmtbSP1ポリペプチドの結合を様々な条件で行うことができる。これは、SP1キメラ体が様々な過酷な条件(熱、極端なpH、界面活性剤暴露およびプロテアーゼ暴露)における変性に対して非常に抵抗性であるからである。本発明のいくつかの実施形態によれば、結合が、NaClおよびカオトロピック剤(例えば、3Mグアニジン塩酸塩)の存在下、中性または中性付近(pH6.5)のpHで行われる。
【0189】
いくつかの実施形態において、本発明のキメラSP1ポリペプチドの機能を溶媒条件によって変えることができる。カオトロピック剤(例えば、GuHClなど)への暴露は、SP1オリゴマーにおける立体配座の変化を生じさせることができ、これにより、無機結合性ペプチド成分の、それらの標的分子に対する結合アビディティーを高めることができる。カオトロピック剤のそのような効果は、例えば、本発明のキメラSP1ポリペプチドの複合体形成の優れた特異性および使用の柔軟性をもたらす。図6Aおよび図6Bに示されるように、キメラmtbSP1ポリペプチドオリゴマーのケイ素含有表面への特異的な結合がGuHClの存在によって促進される。したがって、本発明のいくつかの局面によれば、SP1ドデカマーまたはSP1オリゴマーへの物質の結合を高める方法であって、当該物質をカオトロピック剤の存在下でSP1オリゴマーまたはSP1ドデカマーと接触させることを含む方法が提供される。本発明の方法との使用のために好適なカオトロピック剤の非網羅的列挙には、グアニジニウム塩酸塩、過塩素酸リチウムおよび尿素が含まれる。
【0190】
本明細書中で使用される場合、「カオトロピック剤」は、巨大分子(例えば、タンパク質、DNAまたはRNAなど)における三次元構造を破壊し、巨大分子を変性させる物質として定義される。
【0191】
キメラSP1ポリペプチドはカオトロピック剤と一緒に提供され得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、所与の物質と結合することができる改変アミノ酸配列を有する少なくとも1つのSP1ポリペプチドを含むSP1ドデカマーを含む組成物であって、前記改変アミノ酸配列が、SP1ドデカマーの中央の空洞領域に対応する前記SP1ポリペプチドの領域に存在し、前記物質の前記結合がカオトロピック剤の存在下で高まり、組成物がさらにカオトロピック剤を含む、組成物が提供される。本明細書中に記載されるように、カオトロピック剤は改変SP1ドデカマーの結合特性についての制御をもたらし、また、SP1ドデカマーをカオトロピック剤と一緒に提供することにより、例えば、標的無機分子に対する非常に選択的な結合がもたらされる。例えば、キメラポリペプチドmtbSP1のドデカマーを、下記で記載されるように、より大きいケイ素結合アビディティーのためにGuHCl(6M)と混合することができる。
【0192】
いくつかの実施形態において、アミノ酸配列改変はNi結合性Hisタグを含まない。他の実施形態において、アミノ酸配列改変は、カオトロピック剤がグアニジニウム塩酸塩であるとき、Ni結合性Hisタグを含まない。さらにさらなる実施形態において、アミノ酸配列改変はNi結合性ペプチドを含まない。なおさらにさらなる実施形態において、アミノ酸改変はHisタグを含まない。
【0193】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明のキメラSP1ポリペプチドおよびキメラSP1−無機物質複合体は、任意の標的無機化合物の表面被覆、ならびに/または、キメラSP1オリゴマーとの分子の結合および複合体化、導電性分子または半導体標的物質を使用するナノ回路網などのために、例えば、分子リンカーとして有用であり得る。いくつかの実施形態において、本発明のキメラSP1ポリペプチドまたはキメラSP1−標的物質複合体は導電性デバイス(例えば、電子デバイスなど)の成分として組み込むことができる。
【0194】
したがって、本発明は、その実施形態のいくつかおよびそれらの組合せを通して、無機物質(例えば、カーボンナノチューブなど)の、他の物質(例えば、ポリマー樹脂など)における分散をもたらすことによって、また、一方または両方の物質が、複合材料を形成するために、化学反応を過酷な条件のもとでさえ受けることを可能にすることによって、新しい複合材料を形成し、また、知られている複合材料の製造を改善する可能性を提供する。SP1変化体は、依然として分散物質に結合したままでありながら、ほとんどの過酷な反応条件に耐えることができ、それにより、樹脂におけるその分散性を高め、一方で、樹脂は重合反応を受け、硬化して、繊維、ヤーン、ストリップまたはフィルムを形成する。
【0195】
例えば、分散用媒体(樹脂)は液体状態の熱硬化性ポリマーである。例示的な熱硬化性ポリマーには、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂(例えば、KEVLAR(商標)など)、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂、ポリイミドおよびポリメタクリル酸メチルが含まれるが、これらに限定されない。他の試薬、硬化剤およびコポリマーが、脂肪族アミン、脂肪族環式アミン、芳香族アミン、ポリアミド、酸無水物、第三級アミンおよびそれらの組合せからなる群から選択され、それらは最終的には、液体状態の熱硬化性ポリマーを固化させるプロセスを加速させるために使用される。
【0196】
他の複合材料改変試薬には、ポリスルフィド系ゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリルゴムおよびそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されず、それらは最終的には、液体状態の熱硬化性ポリマーの性質を改善するために使用される。
【0197】
複合材料の化学的特性および機械的特性を同様に改変する例示的な希釈剤には、ジグリシジルエーテル、ポリグリシジルエーテル、ブチルエポキシプロピルエーテル660、アリルフェノールおよびそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0198】
フィラー試薬(これにより、機能性が複合材料に加えられる)が、アスベスト繊維、ガラス繊維、石英粉末、酸化アルミニウムおよびそれらの任意の組合せ(これらに限定されない)を含む群から選択され、それらは最終的には、例えば、液体状態の熱硬化性ポリマーの熱消散を改善するために使用される。
【0199】
複合材料を、SP1変化体−カーボンナノチューブ複合体を使用して調製する方法には、限定されないが、SP1変化体−カーボンナノチューブ複合体を、カーボンナノチューブ複合材を形成するために十分な条件のもとでポリマーと接触させることが含まれ、ただし、この場合、ポリマーがSP1変化体−カーボンナノチューブ複合体上に堆積させられる。1つの実施形態において、ポリマーが、溶液を形成するために溶媒に溶解され、SP1変化体−カーボンナノチューブと結合した基体が、ポリマー被覆されたナノ複合材料を形成するために溶液に浸けられる。使用される溶媒は、水、一般的な有機溶媒またはそれらの混合物が可能である。限定されない例示的な有機溶媒には、極性があまりない炭化水素溶媒、例えば、ペンタン系溶媒、ヘキサン系溶媒、石油エーテル、ベンゼンおよびトルエンなど;ならびに極性溶媒、例えば、エーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトンおよび四塩化炭素などが含まれる。別の実施形態において、SP1変化体−カーボンナノチューブ複合体はポリマーと機械的にブレンド混合される。さらに別の実施形態において、SP1変化体−カーボンナノチューブ複合体は溶融加工条件のもとでポリマーと混合される。様々な技術がナノ複合材料の形成のために好適である。これらには、射出成形、押出し、ブロー成形、熱成形、回転成形、注型およびカプセル封入およびカレンダー加工が含まれる。溶融加工において使用されるポリマーは好ましくは、熱可塑性ポリマーである。なおさらに別の実施形態において、複合材は、重合をSP1変化体−カーボンナノチューブ複合体の存在下で行うことによって形成される。
【0200】
天然に存在するポリマーと、合成ポリマーおよび/または合成コポリマーとはともに、カーボンナノチューブ複合材を調製するために使用することができる。天然に存在するポリマーには、天然ゴム、タンパク質、炭水化物、核酸が含まれるが、これらに限定されない。合成ポリマーには、縮合ポリマーおよび付加ポリマーが含まれ、これらは熱可塑性ポリマーまたは熱硬化ポリマーのどちらでも可能である。熱可塑性の縮合ポリマーには、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド−イミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリラートおよび液晶ポリエステルが含まれるが、これらに限定されない。限定されない例示的な熱可塑性ポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(N−ビニルピロリジン)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)およびポリ(フッ化ビニル)が含まれる。
【0201】
キメラSP1変化体は、一度に2つ以上の物質と、例えば、ケイ素およびCNT/グラファイト、または、金およびCNT/グラファイトなどと相互作用および結合するように設計されるので、これらの変化体は、結合した物質の一方または両方のタイプに由来する制御可能な導電性および半導電性を同様に有する複合材料を形成するための基礎として役立ち得る。そのような複合材料は、ミクロ電子工学分野における様々な適用のために使用することができる。
【0202】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、多くの関連する改変されたSP1タンパク質を含む組成物および方法並びにそれらの用途が開発されることが予想され、本発明の改変されたSP1タンパク質の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0203】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0204】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0205】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0206】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0207】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0208】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0209】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0210】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0211】
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0212】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0213】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【0214】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0215】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0216】
一般的な実験概念
下記に示される研究では、SP1変化体の結合特性(すなわち、様々な基体に対するSP1変化体の親和性およびアビディティー)を変化させ、また、様々な表面におけるSP1の固定化を制御するための2つの戦略が明らかにされる。親和性およびアビディティーは、非共有結合性相互作用の強さ、すなわち、特定の原子または分子が凝集または結合しやすい現象を記述するためにタンパク質生化学において使用される2つの用語である。
【0217】
用語「親和性」は、ただ1つだけの結合の強さを記述するために使用され、一方、用語「アビディティー」は、多重結合相互作用の親和性の総合強さを記述するために使用される。解離定数(Kd)または平衡定数は親和性定数の逆数であり、複合体がその成分分子にばらばらになるとき、または、塩がその成分イオンに解離するときのように、より大きい物体がより小さい成分に可逆的に分離(解離)する傾向を見積もる。解離定数は通常、Kdとして示され、親和性定数の逆数である。塩の特別な場合には、解離定数はまた、イオン化定数と呼ぶことができる。
【0218】
第1の戦略では、例えば、システイン残基に見出されるなどの固定用側鎖をドデカマータンパク質のリングの縁に配置し、得られる構築物の結合特性を、環形(リングの細孔または「穴」)の内側に配置される固定用側鎖を有するタンパク質構築物の結合特性と比較することを伴う。この戦略では、SP1の基本構造がその表面における特定の領域およびそれにおいて固定されるリガンドを表面暴露から保護できるかが明らかにされる。
【0219】
第2の戦略では、いくつかの結合性成分が遺伝子工学によってタンパク質の環形の内側細孔においてSP1ドデカマータンパク質に取り付けられる。これらの特異的親和性ペプチドをタンパク質の推定的な保護された部分に融合することによって、これらの結合性成分が、タンパク質の細孔から排除される大きい実体との結合のためにはあまり利用されないことが予想される。この実験戦略は、タンパク質の媒体の条件を変化させることの影響を調べるために、また、SP1モノマーの構造、したがって、ドデカマー全体の構造に影響を与え得る媒体に対する因子を入れることにより、媒体への結合性成分の露出度が制御され得ることを示すために設計される。したがって、構造変化因子(例えば、変性剤など)を加えることの結果は、結合性成分が媒体中で大きい実体と相互作用し、また、結合する能力を増大させ得る。化学的因子の添加および除去によって非結合性実体から結合性実体に切り替わる能力は化学的スイッチを構成する。
【0220】
化学的スイッチの概念が、いくつかの特異的親和性ペプチド(例えば、ケイ素結合性ペプチドなど)を内側の細孔位置においてSP1基本骨格のそれぞれに融合して、それにより、変性剤(例えば、グアニジニウム塩酸塩(GuHCl)など)の媒体中レベルに対して敏感であるケイ素結合性タンパク質スイッチを得ることによって明らかにされた。親和性ペプチドが、ペプチド−ファージ・ディスプレー・システムを使用して、Sanoおよび共同研究者らによって単離された[Sano,K.I.他、JACS、125、14234頁〜14235頁、2003;Sano,K.I.他、JACS、128、1717頁〜1722頁、2006;およびSano,K.I.他、Nano Lett.、7、3200頁〜3202頁、2007]。この6アミノ酸ペプチド(これは本明細書中およびこの技術分野ではmTBPとして示される)は、Ti、AgおよびSiの表面に結合するが、Au、Cr、Pt、Sn、Zn、CuまたはFeには結合しないことがSanoおよび共同研究者らによって報告された。
【0221】
したがって、SP1足場が、12コピーのmTBPヘキサペプチドを切換え可能な様式で呈示するように改変された。正の協同効果が、遊離ペプチドと比較した場合、ペプチドがSP1ドデカマー上に呈示されるときに明らかにされ、これには、遊離ペプチドの非特異的結合と比較して、融合ペプチドの非特異的結合における著しい低下が付随している。
【0222】
様々な材料に対する大きい親和性を有するSP1変化体の構築
国際公開WO2007/007325は、Sarikaya他[Ann.Rev.Mater.Res.、2004、34、373〜408]から改編された、無機のイオン性物質との複合体を形成するペプチドの限定されない列挙を提供する。これらの比較的短いペプチドは、SP1ポリペプチドの改変の一部としてのSP1タンパク質への融合のために好適である。種々の材料に対する大きい親和性を有するペプチドのさらに多くの例が文献には開示される。
【0223】
表3は、これに関連して使用されるSP1変化体、それらの結合能、それらの構築、変異またはN末端での挿入のために使用されるプライマー、SP1テンプレート、参考文献および成長条件/誘導を示す。すべての変異型タンパク質が、熱安定性、プロテアーゼ抵抗性および複合体形成に関して野生型SP1と類似する特徴を明らかにした。変異の標準的命名法が使用される:すなわち、最初のメチオニン残基を含む野生型配列を使用するアミノ酸位置。
【0224】

【0225】
L81C SP1(配列番号2)変化体が封入体IBとして発現される。IBを最初にIB洗浄緩衝液(20mM TrisHCl、2M尿素、pH8)により15分間洗浄し、次いで、14000gで15分間遠心分離した。ペレットを変性緩衝液(20mM TrisHCl(pH8)、6M尿素、10mMジチオスレイトール)に再懸濁し、5mg/mlのタンパク質濃度に希釈した。その後、変性させたタンパク質を、20mM TrisHCl(pH7)、1mM DTTに対する透析によって4日間リフォールディングした。
【0226】
金表面へのSP1変化体の結合
システインアミノ酸を介するタンパク質の金標識化は、広く知られている技術である。そのN末端が欠失されたSP1変化体を、N末端からの妨害を防止するために使用した(ΔNSP1、配列番号64)。システイン残基を中央空洞または縁のどちらかでタンパク質に導入した(表1を参照のこと)(それぞれ、M43CおよびL81C)。超平坦な金表面に対するこれら2つの変異体の結合親和性を動的モードの原子間力顕微鏡法(AFM)トポグラフィー画像化(Dulcinea顕微鏡、NanoTec、Madrid)によって求め、フラッディング画像分析技術を使用して、新しい変異体の表面被覆率を求めた。
【0227】
ケイ素酸化物表面へのSP1変化体の結合
M43CΔNSP1のN末端へのケイ素結合性ペプチド(RKLPDAA、配列番号5、Nano Lett.、2007、6、1579〜1579)の融合により、変化体mtbSP1(配列番号3)がもたらされる(表1および表2を参照のこと)。mtbSPシリカ結合のSDS−PAGE分析は、本明細書中下記で議論されるが、mtbSP1変化体がシリカビーズに結合し、一方、野生型SP1は結合しないことを示した。12コピーのこれらのペプチドの、SP1のN末端への融合は、融合された結合性ペプチドが露出し、基体に接近可能であるならば、より大きい結合アビディティーの結果として、遊離ペプチドと比較した場合、より大きい結合能をもたらすことが予想された。GuHCl、すなわち、カオトロピック剤(タンパク質変性剤)は、非常に安定なSP1複合体のN末端への一定の柔軟性を可能にし、結果的には、ケイ素結合性ペプチドを露出させ、それにより、シリカへのその結合を容易にすることが示唆された。mtbSPおよび遊離ペプチドの両方についての見かけの解離定数を本明細書中下記で示されるように求めた。mtbSP1変化体は、本明細書中下記で示されるように、遊離ペプチド(86μM)よりもはるかに低いKd値(0.3μM)を明らかにした。このことは、このペプチドがSP1足場に呈示されるとき、シリカに対するその親和性が2桁〜3桁増大することを意味する。
【0228】
SP1変化体によるカーボンナノチューブ(CNT)分散
下記に示される実施例は、CNTに結合することができ、それにより、これらのタンパク質被覆CNTの水性分散を可能にするCNT結合性ペプチドに融合されるSP1変化体を提供する。CNT結合性ペプチドとしてファージ・ディスプレー・ライブラリーから単離された短いペプチドのいくつかの例が文献には開示される。例えば、Nature materials、2003、2、196;Nano lett.、2006、6、40〜44;およびLangmuir、2004、20、8939〜8941を参照のこと。
【0229】
CNT分散実験のために使用された、N末端融合を有するSP1変化体のプラスミド構築物、発現および産生が、上記の表1に記載される。
【0230】
下記の表4は、これらの変化体の末端配列、同様にまた、それらの精製方法および精製段階、アルカラーゼによる消化に対するN末端感受性、ならびに、CNT分散のために要求されるSP1変化体濃度を示す。すべての変異型タンパク質が、熱安定性、プロテアーゼ抵抗性および複合体形成に関して野生型SP1と類似する特徴を明らかにした。アルカラーゼで処理されなかったサンプルと比較して分子量における変化が、SDSゲル適用緩衝液における非煮沸サンプルおよび煮沸サンプルの両方において認められた(それぞれ、複合体およびモノマー)。すべての場合において、アルカラーゼ処理されたSP1変化体の見かけ分子量が野生型の分子量よりも大きかった。このことは、付加アミノ酸のすべてではないが、その一部が除かれたこと、そして、それらは、発表された配列とは異なることを示している。
【0231】

【0232】
驚くべきことに、アルカラーゼによる処理およびN末端の部分的消化はそのCNT分散能を低下させない。これは恐らくは、それぞれの複合体において、すべてのN末端が消化されるとは限らず、また、L1変化体(配列番号6)複合体が二重のバンドとして現れるためである。例えば、アルカラーゼ処理されたL1−SP1のN末端配列決定およびMALDY−TOF分析では、8アミノ酸がプロテアーゼによって消化されたこと、および、N末端がSNQSであったが、消化はそのCNT分散能を低下させていないことが明らかにされた。この結論と一致して、SP1のN末端へのSNQSペプチドの挿入により、より低いCNT分散活性を有する、すなわち、L1(配列番号6)よりも低いCNT分散活性を有する変化体L6(配列番号15)がもたらされる(それぞれ、50〜100μg/ml対4μg/ml)。
【0233】
SP1変化体、CNTおよびアラミド(KEVLAR(商標))またはエポキシ樹脂の三元複合体
CNTを他の媒体(例えば、エポキシ樹脂など)に分散し、先進材料(例えば、KEVLAR(商標)など)に結合する本発明の実施形態のSP1変化体の能力が、本明細書中下記で詳しく示されるように研究され、明らかにされた。
【0234】
SP1変化体を、N末端を介してCNTと結合して、SP1/CNT複合体を形成することができ、その結果として、このSP1/CNT複合体は、露出した第一級アミンを介してエポキシ樹脂に結合することができる多機能性試薬としてのその能力について調べた。そのような試薬は、エポキシ樹脂における分散を含めて、CNTとの水界面を伴う多くの実用的適用において非常に有用であり得る。水および他の媒介溶媒は限外ろ過および凍結乾燥の組合せによって除くことができる一方で、これらのプロセスはエネルギー消費型であり、制御することが困難である。本明細書中に示されるプロセスは、SP1が、−20℃での2時間のインキュベーションの後、70%〜80%のエタノールの存在下で沈殿すること、また、CNTタンパク質複合体もまた同様に沈殿するという事実を利用する。沈殿したSP1/CNT複合体は水に容易に分散させることができる。凍結乾燥された沈殿SP1/CNT複合体は、下記で明らかにされるように、エポキシ樹脂に分散させることができる(実施例4を参照のこと)。
【0235】
加えて、CNTおよびアラミド(例えば、KEVLAR(商標)、DuPontによって開発され、防弾チョッキ、タイヤおよび光ファイバーケーブルなどにおいて使用される強靱な耐熱性アラミド繊維の商品名)が同様な様式でSP1変化体に結合するならば、タンパク質が、結合性部位を環形の両側に示すSP1の両側のドーナッツ形状に基づいて、これら2つの成分の相互接着を促進させるための接着性メディエーターとして働くかもしれないことが仮定された。
【0236】
材料および方法
細菌株および培養条件:
大腸菌株DH5αをクローニングのために使用し、大腸菌株BL21(DE3)を発現のために使用した。細胞の成長を、Luria Bertani培地(ΔNSP1、M43CΔNSP1およびL81CΔNSP1)、Terrificブロス(L1−SP1、L2−SP1、L3−SP1、L6−SP1)、あるいは、交換可能であるが、LuriaブロスまたはTerrifcブロスのどちらか(天然SP1、mtbSP1)のいずれかにおいて37℃で行った(28℃で成長したL1−SP1を除く)。イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)による誘導(天然SP1、mtbSP1、ΔNSP1、M43CΔNSP1、L81CΔNSP1、L1−SP1およびL6−SP1については1mM、L3−SP1については0.5mM、L2−SP1については0.1mM)の後、細菌をさらに4時間成長させ、その後、14000Xgでの15分間の遠心分離によって集めた。
【0237】
ベクター構築:
M43CΔNSP1変異体およびL81CΔNSP1変異体の両方を、ΔNSP1コード配列(配列番号7)テンプレート(これはMedalsy他[Nano lett.、8、473〜477、2008]によって以前に記載された)に対する部位特異的変異誘発を使用して構築した。この部位特異的変異誘発は、PfuTurbo DNAポリメラーゼまたはDeep−vent DNAポリメラーゼを用いて、Stratagene Quickchange(Stratagene、La Jolla、CA)プロトコルに従って行われた。
【0238】
部位特異的変異誘発のために使用されるプライマーは、M43CについてはC43(5’CTGCTCGATCTCATTCCAAGCTGTAAGAGTTTCAATTGGGGCACG3’)(配列番号65)であり、L81CについてはC81(5’GCAAGTCTGGTTTGCAAGAGTACTGCGATTCTGCTGCTCTTGCTG3’)(配列番号66)であった。
【0239】
mtbSP1変異体(配列番号3)を、M43CΔNSP1のコード配列(配列番号69)をテンプレートとして、下記の2つのプライマーを使用して構築した:mTBフォワードプライマー(5’AAAACATATGCGCAAACTTCCGGATGCGGCAACCAGAACTCCAAAGCTTG−3’)(配列番号67)およびSP1リバースプライマー(5’−AAAAGAGCTCTTAGTAAAGAAAGTAATCAATAAC−3’)(配列番号68)。
【0240】
L1−SP1CNT変異体(配列番号6)を、天然SP1のコード配列(配列番号28)をテンプレートとして、下記のプライマーを使用して構築した:フォワードプライマー(5’AAGGAGATATACAAAAACATATGCACTGGTCAGCATGGTGGATACGATCAAATCAATCAGCAACCAGAACTCCAAAG3’)(配列番号70)およびリバースプライマー(5’CTTTGGAGTTCTGGTTGCTGATTGATTTGATCGTATCCACCATGCTGACCAGTGCATATGTTTTTGTATATCTCCTT3’)(配列番号71)。
【0241】
L2−SP1CNT変異体(配列番号14)を、天然SP1のコード配列(配列番号28)をテンプレートとして、下記のプライマーを使用して構築した:フォワードプライマー(5’AGAAGGAGATATACAAAAACATATGCACTCATCATACTGGTACGCATTCAACAACAAAACAGCAACCAGAACTCCAAAGC3’)(配列番号72)およびリバースプライマー(5’GCTTTGGAGTTCTGGTTGCTGTTTTGTTGTTGAATGCGTACCAGTATGATGAGTGCATATGTTTTTGTATATCTCCTTCT3’)(配列番号73)。
【0242】
L3−SP1CNT変異体(配列番号12)を、天然SP1のコード配列(配列番号28)をテンプレートとして、下記のプライマーを使用して構築した:フォワードプライマー(5’ATACAAAAACATATGGATTATTTTTCATCACCATATTATGAACAATTATTTGCAACCAGAACTCC3’)(配列番号74)およびリバースプライマー(5’GGAGTTCTGGTTGCAAATAATTGTTCATAATATGGTGATGAAAAATAATCCATATGTTTTTGTAT3’)(配列番号75)。
【0243】
L6−SP1CNT変異体(配列番号15)を、天然SP1のコード配列(配列番号28)をテンプレートとして、下記のプライマーを使用して構築した:フォワードプライマー(5’AGAAGGAGATATACAAAAACATATGTCAAATCAATCAGCAACCAGAACTCCAAAGC3’)(配列番号76)およびリバースプライマー(5’GCTTTGGAGTTCTGGTTGCTGATTGATTTGACATATGTTTTTGTATATCTCCTTCT3’)(配列番号77)。
【0244】
L7−SP1CNT変異体(配列番号16)は、コドン使用法を改善するために、5Ileにおいてataからattへの、また、6Argにおいてcgaからcgtへの、挿入ペプチドをコードするヌクレオチド配列の変異を除いて、L1−SP1CNT配列と同一である。この変異型ポリペプチドを、“Stratagene”(La Jolla、CA)の“QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit”を使用して、下記のプライマーを使用して構築した:A24T変異体について、フォワードプライマー(5’−ACTGGTCAGCATGGTGGATTCGATCAAATCAATCAG−3’)(配列番号78)およびリバースプライマー(5’−CTGATTGATTTGATCGAATCCACCATGCTGACCAGT−3’)(配列番号79)。A27T変異体について、フォワードプライマー(5’−GTCAGCATGGTGGATTCGTTCAAATCAATCAGCAACC−3’)(配列番号80)およびリバースプライマー(5’−GGTTGCTGATTGATTTGAACGAATCCACCATGCTGAC−3’)(配列番号81)。
【0245】
L4−SP1CNT変異体(配列番号9)は、挿入ペプチドのR23Kの変異を除いて、L1−SP1CNT配列と同一である。この変異型ポリペプチドを、“Stratagene”(La Jolla、CA)の“QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit”を使用して、下記のプライマーを使用して構築した:R23K変異体について、フォワードプライマー(5’−TGACTCGGTTCAAGGATGAGATCACAAAAGAACAGATCGACA−3’)(配列番号82)およびリバースプライマー(5’−TGTCGATCTGTTCTTTTGTGATCTCATCCTTGAACCGAGTCA−3’)(配列番号83)。
【0246】
L5−SP1CNT変異体(配列番号17)は、挿入ペプチドのT22Cの変異を除いて、L1−SP1CNT配列と同一である。この変異型ポリペプチドを、“Stratagene”(La Jolla、CA)の“QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit”を使用して、下記のプライマーを使用して構築した:T22C変異体について、フォワードプライマー(5’−ACTCGGTTCAAGGATGAGATCTGCCGAGAACAGATCGACAACTAC−3’)(配列番号84)およびリバースプライマー(5’−GTAGTTGTCGATCTGTTCTCGGCAGATCTCATCCTTGAACCGAGT−3’)(配列番号85)。
【0247】
L8−SP1CNT変異体(配列番号18)は、コドン使用法を改善するために、5Ileにおいてataからattへの、また、6Argにおいてcgaからcgtへの、挿入ペプチドをコードするヌクレオチド配列の変異を除いて、L4−SP1CNT配列と同一である。この変異型ポリペプチドを、“Stratagene”(La Jolla、CA)の“QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit”を使用して、下記のプライマーを使用して構築した:A24T変異体について、フォワードプライマー(5’−ACTGGTCAGCATGGTGGATTCGATCAAATCAATCAG−3’)(配列番号78)およびリバースプライマー(5’−CTGATTGATTTGATCGAATCCACCATGCTGACCAGT−3’)(配列番号79)。A27T変異体について、フォワードプライマー(5’−GTCAGCATGGTGGATTCGTTCAAATCAATCAGCAACC−3’)(配列番号80)およびリバースプライマー(5’−GGTTGCTGATTGATTTGAACGAATCCACCATGCTGAC−3’)(配列番号81)。
【0248】
野生型SP1をPCR反応のためのテンプレートとして使用した(5’−ACTGGTCAGCATGGTGGATTCGATCAAATCAATCAG−3’)(配列番号78)およびリバースプライマー(5’−CTGATTGATTTGATCGAATCCACCATGCTGACCAGT−3’)(配列番号79)、また、天然SP1のコード配列(配列番号28)をテンプレートとした。
【0249】
すべての構築物がpET29a発現プラスミド(Novagen Inc.、Madison、WI、米国)に挿入された。
【0250】
タンパク質の精製およびリフォールディング:
遠心分離後、細胞ペレットを溶解緩衝液(50mM TrisHCL、1mM EDTA、10mM MgCl、pH8)に再懸濁し、パルス的バーストにより数分間、氷上で超音波処理した。変化体が可溶性タンパク質として発現され[mtbSP(配列番号3)、L1−SP1(配列番号6)、L6−SP1(配列番号15)]、または、封入体に凝集された[L2 SP1(配列番号14)およびL3−SP1(配列番号8)]。
【0251】
不溶性ペレットを14000Xgでの15分間の遠心分離によって分離した。その後、可溶性の変異タンパク質(M43CΔNSP1およびmtbSP1;L1−SP1;L2−SP1;L3−SP1;L6−SP1)を85℃で30分間熱処理し、プロテアーゼによって処理した(アルカラーゼ、Novozyme、10倍希釈:30分、40℃)。
【0252】
L81CΔNSP1(配列番号2)変異体の封入体を最初、IB洗浄緩衝液(20mM TrisHCL、2mM尿素、pH8)により15分間洗浄し、その後、14000Xgで15分間遠心分離した。ペレットを変性緩衝液(20mM TrisHCl、6M尿素、10mMジチオスレイトール、pH8)に再懸濁し、5mg/mlのタンパク質濃度に希釈した。その後、変性させたタンパク質をフォールディング緩衝液(20mM TrisHCl、1mM DTT、pH7)に対する透析によって4日間リフォールディングした。
【0253】
イオン交換FPLC:
Hitrap Q Sepharose XLカラム(1ml)(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ、米国)を使用して、タンパク質を精製した。サンプルを、20mMピペラジン(pH6.3)緩衝液を3ml/分の流速を使用してカラムに負荷した。溶出を、同じ緩衝液における1M NaClのグラジエントにより行い、27%〜33%の塩において特定した。
【0254】
mTBP付属体ペプチド:
mTBPペプチド(配列番号5)がBioSight ltd.(Karmiel、イスラエル)によって合成的に製造された。
【0255】
変異タンパク質の安定性特徴づけ:
3つの異なる安定性分析を野生型SP1(配列番号4)およびそれぞれの変異タンパク質に対して行った。
1.熱処理(H.T)、80℃で30分間;
2.煮沸処理(B.T.)、100℃で30分間;および
3.プロテイナーゼK(PK)によるタンパク質分解に対する抵抗性、酵素の50ug/mlの濃度において37℃で1時間。PKが5分間のB.T.によって除かれた。
【0256】
代替において、アルカラーゼが、安定性を求めるために使用された:アルカラーゼ(Novozyme、1:1000の希釈)を40℃で30分間加えた。反応を、アルカラーゼを80℃で30分間阻害することによって停止させた。
【0257】
すべての処理物は、処理後、14000Xgで15分間遠心分離され、SDS−PAGEによって分析された。
【0258】
シリカ結合:
mtbSP1(配列番号3)を、3MのGuHClとともに、または、伴うことなく、10mM MES(pH6.5)、150mM NaClにおいて10mgのシリカゲル(製造物番号:28860−8、Sigma−Aldrich、米国)と混合した。その後、溶液を室温において回転式振とう機で1時間インキュベーションした。その後、シリカを、GuHClを含まない同じ緩衝液により3回洗浄した。結合したタンパク質を、SDS−PAGEによるか、または、MicroBCA(商標)タンパク質アッセイキット(Pierce、Rockford、米国)を使用してタンパク質濃度を測定することによるかのどちらかによって分析した。
【0259】
表面の調製および結合:
ケイ素表面(0.5cm)を75℃の加熱イソプロパノールとともに20分間超音波処理し、3回蒸留水により洗浄し、乾燥窒素により乾燥した。処理された表面を3分間プラズマ清浄化し(Femto Inc.、Jettingen、ドイツ)、その後、サンプルを置いた。3MのGuHClを伴うか、または伴わない、6.5のpHのMES緩衝液における約2mg/mlのタンパク質の最終濃度における5μlのタンパク質サンプルを表面に20秒間置き、その後、3回蒸留水により静かに洗浄し、乾燥窒素により乾燥した。
【0260】
平坦の金表面の調製手順:金を蒸発させて、100nmの層を劈開雲母の上に0.5Å/秒の速度で形成させ、その後、5nmのチタンを、5e−7torrを超える真空度において2Å/秒の速度で堆積させる。蒸着サンプルをホットプレートの上で10分間〜15分間加熱し、15μlのエポキシ接着剤(301−2Epotech、Epoxy Technology Inc.、Bellerica、Mass、米国)を使用して、蒸着させた金をガラス表面に接着し、その後、85℃で3.5時間加熱し、続いて、一晩冷却する。使用前に、エポキシ層を、テトラヒドロフラン(THF)溶液(99%純度、Frutarom、Haifa、イスラエル)を使用して裂き、これにより、清浄な平坦な金表面を残す。6.5のpHでのMES緩衝液における約2mg/mlのタンパク質の最終濃度における5μlのサンプルを平坦な金表面に20秒間置き、3回蒸留水により静かに洗浄し、窒素乾燥する。
【0261】
SP1/CNT結合:
アラミドへのSP1/CNT結合を、3つの方法を使用して評価した:
1.布地へのその結合の前後における溶液(懸濁物)中のCNT含有量の差の測定。懸濁物のCNT含有量が、SP1/CNTを、(洗浄溶液と組み合わされる)布地とのそのインキュベーションの前後において、グアニジニウム塩酸塩(100mM)またはHCl(0.3%)を使用して懸濁物のサンプルから沈殿させ、ペレット化されたCNTを乾燥し、重量測定することによって求められる;
2.分光法:CNT含有量を、分光学的方法を使用して、すなわち、走査型電子顕微鏡下での高分解能(HR−SEM)における、CNTによって被覆される布地または表面の可視化による光透過率を使用して評価することができる;および
3.表面抵抗率−被覆された布地または表面のCNT含有量を、電流の流れに対する表面抵抗率を測定することによって評価することができる(この方法は、非処理布地が絶縁体または非常に不良な導体である場合にだけ関連性がある)。
【0262】
実施例1
SP1変異体の金標識化
タンパク質の金標識化を、システイン側鎖を介して達成することができる。しかしながら、野生型SP1(天然SP1)(配列番号4)はシステインアミノ酸をそのペプチド配列に有しておらず、したがって、平坦な金表面へのシステイン置換SP1タンパク質の結合を試験することによって、折り畳まれたオリゴマータンパク質構造における特定の領域の重要性を調べることができ、また、それらの利用可能性を決定することができる。その目的のために、2つの異なるSP1変異体を、標準的な部位特異的変異誘発技術を使用して構築した。第1の変異体において、タンパク質の内側のリング(細孔)に位置するメチオニン43をシステインにより置換した(変異体名:M43CΔNSP1、配列番号1)。第2の変異体において、タンパク質の外縁に位置するロイシン81をシステインにより置換した(変異体名:L81CΔNSP1、配列番号2)。
【0263】
図1A〜図1Bは、M43CΔNSP1変異体(配列番号1)およびL81CΔNSP1変異体(配列番号2)のコンピューター生成表示であり、図1Aは、タンパク質の内側のリングまたは細孔におけるチオール基を示すM43CΔNSP1変異体を示し、図1Bは、タンパク質の外縁におけるチオール基を示すL81CΔNSP1変異体を示す。
【0264】
図1A〜図1Bにおいて認められ得るように、M43C変異体におけるシステイン残基(矢印)は内側の細孔に向き、一方、L81C変異体におけるシステイン残基(矢印)はリング構造の縁から外の方を指す。
【0265】
これら2つの変異体を大腸菌から発現および精製した。これら2つの変異体は、熱安定性、プロテアーゼ抵抗性および複合体形成に関して天然SP1と類似する特徴を明らかにした(表1)。
【0266】
図2A〜図2Bは、M43C SP1変異体およびL81C SP1変異体の発現実験および安定性実験のために行われたSDS−PAGEゲル泳動の写真である。図2Aは、M43C SP1画分のSDS−PAGEゲル分析で、IPTG誘導前およびIPTG誘導後の総細菌タンパク質からのもの(図2A、それぞれ、レーン1〜2、SP1モノマーのバンドが実線により囲まれる)、煮沸を伴わない細菌可溶性画分からのもの(図2A、レーン3、オリゴマードデカマーのバンドが点線により囲まれる)および煮沸後の細菌可溶性画分からのもの(図2A、レーン4、モノマーのバンドが実線により囲まれる)を示す。図2A、レーン5は、細菌の封入体から得られるタンパク質を示す。図2A、レーン6およびレーン7は、85℃で30分間の熱処理の後での細菌可溶性画分から得られるタンパク質で、煮沸されたタンパク質(レーン7)および煮沸されないタンパク質(レーン6)を示す。図2A、レーン8〜レーン12は、精製タンパク質で、煮沸されたタンパク質(レーン9)および煮沸されないタンパク質(レーン8)、ならびに、安定性アッセイ:85℃(レーン10)、100℃(レーン11)およびプロテイナーゼk(レーン12)にさらされたサンプルを示す。図2BはL81C SPの分析を示す:レーン1〜レーン5におけるサンプルは、図2Aに示されるレーン1〜レーン5におけるサンプルと同じ条件にさらされた;煮沸および非煮沸のリフォールディングされたタンパク質(それぞれ、レーン6およびレーン7);レーン8〜レーン12におけるサンプルは、図2Aに示されるレーン8〜レーン12におけるサンプルと同じ条件にさらされた(kDa単位でのMW)。
【0267】
SDS−PAGE電気泳動(図2Aおよび図2B)における移動度から認められ得るように、変異型SP1タンパク質は、熱暴露およびプロテアーゼ消化に耐える能力が無傷のドデカマータンパク質と同じであることを示す。
【0268】
システイン単置換の位置効果を、本明細書中上記のように調製される超平坦な金表面に対するこれら2つの変異体の親和性を調べることによって分析した。動的モードの原子間力顕微鏡法(AFM)トポグラフィー画像化(Dulcinea顕微鏡、NanoTec、Madrid)を、これら2つのタンパク質による表面被覆率を求めるために使用して、同一条件(サンプル濃度、表面処理および堆積時間)のもとでの天然SP1と比較した。フラッディング画像分析技術[Horcas,I.R.他、Rev.Sci.Instrum.、2007、78、p013705]を使用して、新しい変異体の表面被覆率を求めた。結果が図3に示される。
【0269】
図3A〜図3Cは、3つの超平坦な金表面の原子間力顕微鏡法フラッディングトポグラフィー画像であり、ただし、画像において、青色着色領域は露出金表面を示し、赤褐色領域はタンパク質被覆表面を示すが、金表面のそれぞれがSP1の異なる変化体により処理された。天然SP1(配列番号4)(図3A)は不良な結合を明らかにし、ほんの1.5%の表面被覆率を達成しただけであり、一方、M43CΔNSP1(配列番号1)(図3B)は、ほんの60%の表面被覆率を達成しただけであった。L81CΔNSP1(配列番号2)(図3C)は、超平坦な金表面の98%の完全かつ均質な被覆を達成した。このことは、L81CΔNSP1のチオールが実際、周囲に露出し、表面に結合できることを示している。これらの結果は、タンパク質構造における種々の位置が結合のための特定の残基または配列の利用可能性に影響し、これにより、リガンド(例えば、金表面)へのSP1タンパク質結合を予測可能かつ制御可能な様式で改変できることをもたらすことを示す。
【0270】
実施例2
シリカ表面へのSP1変異体の結合
SP1の残基または配列に対するリガンドの結合が、SP1オリゴマーの三次元立体配座に影響を及ぼすことによって制御され得るかどうかを評価するために、M43CΔNSP1(配列番号1)を、ケイ素結合性ペプチドをその内側細孔に呈示するようにさらに操作した。ケイ素結合性ヘキサペプチドmTBP(配列番号5)をコードするポリヌクレオチドを、M43CΔNSP1遺伝子のN末端コード部分に読み枠を合わせて遺伝子融合し、得られるポリペプチドを大腸菌において発現させた。得られたタンパク質(mtbSP1、配列番号3)はリング形状のホモドデカマーであり、これは、6個がリングのそれぞれの側に存在する12個のケイ素酸化物結合性ペプチドをその内側細孔に呈示する(図4を参照のこと)。
【0271】
リガンドに対する変異型SP1の親和性が、タンパク質の化学的環境を変化させることによって改変され得る(切換えられ得る)か?図4A〜図4Bは、リング形状タンパク質の内側細孔から広がる金色リボンとしてシリカ結合性ペプチドを示すmtbSP変異体のコンピューター生成グラフィック表示である。図4Aは、シリカに結合することができないタンパク質の閉じた立体配座を示し、図4Bは、シリカ表面に結合することができる開いた立体配座を示す。開いた立体配座から、閉じた立体配座への「切換え」を、例えば、シリカ結合について、カオトロピック剤を使用して、または、いくつかの場合には、(Elma Transsonic Sonifierを使用する)超音波処理を使用して試みた。
【0272】
mtbSP変異体(配列番号3)を細菌の可溶性画分に発現させた。得られた変異型タンパク質を熱安定性およびプロテアーゼ抵抗性について天然SP1と比較した(表1)。
【0273】
図5A〜図5Bは、mtbSP(配列番号3)の発現、特徴づけおよびSiO結合のSDS−PAGE分析の写真である。mtbSPの発現の誘導(高分子量のバンド)がIPTG誘導前およびIPTG誘導後の総細菌溶解物から明らかである(図5A、それぞれ、レーン1およびレーン2)。細菌溶解物の可溶性画分を煮沸することにより(図5A、レーン3)、煮沸されていない可溶性画分において優勢な高分子量のオリゴマー形態(図5A、レーン4)と比較した場合、mtbSPモノマーの増大した提示がもたらされる。
【0274】
mtbSPを発現する細菌は非常に多くの封入体を有し、これは主にmtbSPモノマーを含有した(図5A、レーン5)。
【0275】
mtbSPの細菌可溶性画分の熱処理(85℃、30分間)はオリゴマー形成を損なわない(図5A、レーン6、熱処理+煮沸、レーン7、煮沸を伴わない熱処理)。mtbSPの細菌可溶性画分はまた、プロテイナーゼ抵抗性であった:図5A、レーン8およびレーン9は、mtbSPの細菌可溶性画分で、プロテイナーゼk処理されたものおよびプロテイナーゼk処理されなかったものをそれぞれ示し、天然SP1のプロテアーゼ抵抗性と類似していることを示す[図5A、レーン10=+プロテアーゼk、レーン11=プロテアーゼ非存在]。
【0276】
変異型mtbSP1におけるmTBPヘキサペプチド(配列番号5)の存在により、シリカ結合能がもたらされる。図5B、すなわち、シリカビーズとのインキュベーションの後におけるmtbSPおよび天然SP1のSDS−PAGE分析において認められ得るように、mtbSPタンパク質はシリカビーズに結合し、一方、天然SP1は結合しない。図5Bにおいて認められ得るように、mtbSPはシリカビーズと一緒に留まり(図5B、レーン1)、mtbSPが非結合画分からほとんど回収されず(図5B、レーン2)、一方、天然SP1はシリカビーズにおいて検出されず(図5B、レーン3)、主に非結合画分に留まっていた(図5B、レーン4)。混合されたmtbSPタンパク質および天然SP1タンパク質の調製物の結合のSDS−PAGE分析は、シリカビーズから放出される結合画分における、移動度がより小さい(上側バンド)mtbSPを示しただけであった(図5A、レーン5、レーン6(非結合画分)と比較して)。SDS−PAGE前の煮沸によって解離しないとき、結合mtbSP(図5B、レーン7)、天然SP1(図5B、レーン8)、および、mtbSPと、天然SP1との混合物(図5B、レーン9)はともに、主に高分子量のオリゴマー複合体として現れる。したがって、mtbSPはシリカビーズと結合し、一方、天然SP1はシリカビーズと結合することができない。
【0277】
シリカとのmtbSP1相互作用を特徴づけるために、また、化学的環境(溶媒)の変化がSP1のリガンド結合に影響を与えるかどうかを試験するために、mtbSP1(配列番号3)の結合を遊離mTBPシリカ結合性ペプチド(配列番号5)の結合と比較した。図6Aおよび図6Bは、カオトロピック剤(3M GuHCl)の存在下(白四角)または非存在下(X)における、シリカビーズに対するmtbSPの結合(図6B)および遊離mTBPヘキサペプチドの結合(図6A)を示す。シリカに対する遊離mTBPペプチドの結合はGuHClによって本質的に影響されなかった(図6A)が、GuHClはSP1結合mtbSP1のシリカ結合を大きく改善する(図6B)。GuHClに対する類似する応答が、金ナノ粒子へのM43C−SPのシステイン媒介結合に関して認められている[Medalsy,I.他、Nano lett.、2008、8、473〜477、これは全体が本明細書中に組み込まれる]。
【0278】
ただ1つだけの仮説に固執するつもりはないが、1つの可能性が、GuHCl(これはほとんどの場合においてタンパク質を変性させる)は、非常に安定なSP1複合体のN末端に対する一定の立体的柔軟性を可能にし、その結果、結合しているケイ素結合性ヘキサペプチドを周囲の環境に露出させ、これにより、シリカへのその結合を容易にするということである(図4Bを参照のこと)。そのような機構についてのさらなる証拠が、超音波処理がシリカ結合についてGuHClに取って代わり得ることを示すことによってもたらされた(データは示されず)。
【0279】
mtbSPおよび遊離mTBヘキサペプチドの解離定数をスキャッチャード分析で比較したとき、驚くべきことに、変異型mtbSP(配列番号3)(図7C、黒塗り菱形)が遊離mTBヘキサペプチド(図7C、白四角)の解離定数よりも数桁低い解離定数を有することが発見された。曲線のスキャッチャード分析(図7Aおよび図7B)は、タンパク質mtbSPについては0.3μMのKを示し、遊離mTBペプチドについては86μMのKを示し、また、mtbSPの正の協同的シリカ結合を示す。
【0280】
図7A〜図7Cにおいて認められ得るように、mtbSPについての0.3μMのKは、ペプチドについての86μMのKと比較した場合、mTBヘキサペプチドがSP1足場に呈示されるとき、シリカに対するその親和性が2桁〜3桁大きくなることを示している。このことが、正の協同効果を、遊離ペプチドではなく、mtbSPについて明らかにするスキャッチャード分析によって裏付けられる。
【0281】
遊離型の合成mTBPの観測された解離定数(86μM)は、mTBPはTBP−1の最も必要なアミノ酸のみを露呈させることを考慮すると、元のTBP−1ペプチドのKd(Sano他、Langmuir.、2005、21、3090〜3095)と良好に一致している。アビディティーが、mTBPをSP1ドデカマー表面に露呈させることによってほぼ3桁増大した。
【0282】
シリカ表面へのmtbSPドデカマーの結合に対するカオトロピック剤GuHClの影響(「切換え」)をさらに評価するために、SiO表面の原子間力顕微鏡法(AFM)画像化を行った。
【0283】
図8A〜図8Hは、シリカ表面に結合した種々のSP1変化体の一連のAFMフラッディングトポグラフィー画像であり、3MのGuHClの存在下または非存在下、あるいは、GuHClを伴わない、SiO表面に対する変わりやすい様々な結合を示す。AFM像において、青色領域はむき出しのシリカ表面を表し、褐色領域はタンパク質結合シリカ表面を表す。図8A〜図8Dはそれぞれ、天然SP1(配列番号4)、L81CΔNSP1変化体(配列番号2)、M43CΔNSP1変化体(配列番号1)およびmtbSP(配列番号3)である。GuHClの非存在下では、すべてがSiO表面の低い非特異的な結合(5%未満の表面被覆率)を示す。図8E〜図8Hもまた、それぞれ、3MのGuHClの存在下における天然SP1(配列番号4)、L81CΔNSP1変化体(配列番号2)、M43CΔNSP1変化体(配列番号1)およびmtbSP(配列番号3)である。GuHClの存在下では、AFM像は、mtbSPのみが、低下した非特異的結合を伴うSiO表面の完全な被覆を示すことを明瞭に示す。
【0284】
図8A〜図8Fにおいて認められ得るように、すべての変異体が、著しい差を何ら伴うことなく、1%〜7%の範囲での表面被覆率を示し、一方、GuHClは、mtbSP単層によるシリカの完全な表面被覆を可能にする。SP1足場の大きい安定性は、SP1足場により、隠れているペプチドが、ほとんどのタンパク質を変性させるであろう溶媒条件においてだけ露出させられることを可能にする。そのうえ、カオトロピック剤(例えば、GuHClなど)の使用は、図8A〜図8Bにおいて認められ得るように、表面への非特異的な結合を著しく低下させる。
【0285】
実施例3
SP1変化体によるカーボンナノチューブ(CNT)分散
材料および方法:
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を、Arkema Inc.(フランス;GRAPHISTRENGTH(商標)C100)またはBayer MaterialScience AG(ドイツ;Baytubes C150P)のどちらかから得た。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をTeijin,Ltd(ヤマグチ、日本)から得た。
【0286】
小規模製造のために、1.0mg〜1.3mgの間のMWNTを1mlのスクリューキャップ・ガラスチューブ(Fisherbrand、カタログ番号:03−338AA、サイズ:12x35mm、1/2DR)に計り取った。NaPi緩衝液(10mM;pH8.0)における1mlのタンパク質溶液を、事前に重量測定されたMWNTを含有するスクリューキャップ・ガラスチューブに加えた。得られた混合物を、Elma Transsonic Sonifierを使用して、80℃で2時間、超音波処理した。超音波処理サンプルを最初、20000Xgで20分間、Eppendorf遠心分離チューブで遠心分離した。上部上清の90パーセントを、底における沈降物を取ることを避けながら、ピペットを使用して分離し、別のEppendorf遠心分離チューブに移した。分離された上清サンプルを10倍希釈した。L2−SP1(配列番号14)によるCNT分散もまた、尿素を伴うか、または伴わないTris緩衝液(10mM;pH8.0)において試験した。
【0287】
大規模製造のために、400mgのMWCNTをガラスフラスコに計り取り、タンパク質溶液(NaPi緩衝液(10mM;pH8.0)において400ml)を加え、混合物を、ブースターホーム、1インチの平チップおよび温度制御ユニットを伴うMisonix4000Sonicator、または、Hielcher超音波処理機(UIP1000hd)を使用して、50℃未満の最大温度を維持しながら、260Wの出力設定で4時間超音波処理した。サンプルの完全な分散を得るために、超音波処理サンプルを、ほんの少量のペレットが形成されるまで20000Xgで20分間、Eppendorf遠心分離チューブで遠心分離した。未分散物をペレット化した後、上清は、同じ緩衝液で100倍希釈した後でさえ、CNTにより非常に暗かった。最後の工程が、Sorval SLA3000遠心分離器を使用する7000rpmでの60分間の上清の遠心分離であった。
【0288】
結果:
本明細書中上記の表2はCNT分散実験の結果を示す。表2に記載されるSP1変化体は熱に安定であり、また、一般にプロテアーゼ抵抗性である。しかしながら、アルカラーゼ(1000倍希釈)とのインキュベーションは、アルカラーゼにより処理されていないサンプルと比較して、分子量における変化を引き起こす。すべての場合において、アルカラーゼ処理されたSP1変化体の見かけ分子量は依然として、天然SP1の見かけ分子量よりも大きく、このことは、CNT結合性ペプチドに由来するアミノ酸のすべてではないが、その一部が除かれたことを示している。
【0289】
表2において認められ得るように、複数コピーのこれらのCNT結合性ペプチドをSP1のN末端に融合することにより、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を溶媒に分散するSP1の能力が改善され、一方、天然SP1タンパク質はMWCNTの分散を高SPタンパク質濃度(およそ1mg/ml)においてのみもたらすだけである。表2においてさらに認められ得るように、融合タンパク質は、はるかにより大きいCNT結合活性を有する。最大のCNT分散能が、L1(配列番号6)、すなわち、HWSAWWIRSNQSペプチド(配列番号10)がN末端に融合されるSP1ポリペプチドに関して認められ、これは比較的低い濃度(0.004mg/ml)でのMWCNT分散を可能にした。SP1と、それ以外のCNT特異的ペプチドとの融合であるL2(配列番号14)およびL3(配列番号8)[それぞれ、HSSYWYAFNNKTペプチド(配列番号11)およびDYFSSPYYEQLFペプチド(配列番号12)]もまた、天然SP1よりも大きいCNT分散活性をもたらした。L3−SP1、Hielcher超音波処理機を使用した場合、最大CNT濃度が、40mg CNT/gr布地、すなわち、4%であった。SP1の溶解性が150mg/mlもの高さであるならば、理論的には、最大CNT濃度は30%もの高さが可能である。
【0290】
変化体のL2−SP1(配列番号14)およびL3−SP1(配列番号8)は、封入体(IB)に見出される可溶性タンパク質および不溶性タンパク質の両方を形成するという点で、他のSP1変化体とは異なる。IBに見出されるタンパク質は尿素の存在下で溶解することができ、尿素希釈のときにリフォールディングする。適正に折り畳まれたL2−SP1は複合体を形成し、プロテアーゼ抵抗性であったが、IBからの溶解されたL2−SP1は複合体を形成せず、プロテアーゼ感受性であった。封入体から得られるL2−SP1およびL3−SP1はCNTを分散させることができるが、効率が可溶性タンパク質よりもはるかに低い(表2)。
【0291】
本明細書中上記の表2において認められ得るように、CNT分散のために要求される最小SP1濃度は、N末端に融合されるペプチドの配列に依存する。
【0292】
L1−SP1(配列番号6)の場合において、イオン交換精製されたタンパク質をアルカラーゼにより処理し、タンパク質は、MOLDY−TOFを使用するN末端配列決定および分子量決定を受けた。結果は、8個のアミノ酸がそのN末端からアルカラーゼによって消化され、これにより、タンパク質のN末端に融合されたSNQSペプチドが残っていることを示した。N末端におけるSNQSペプチドの挿入を有するSP1変化体(L6−SP1、配列番号15)が、アルカラーゼ処理されたL1−SP1と比較された場合、類似した特徴、すなわち、SDS−PAGEでの移動度およびCNT分散能を示したことは本明細書中では特筆される。
【0293】
これらのCNT特異的ペプチドに加えて、ケイ素/チタン酸化物結合性ペプチド(RKLPDAA)(配列番号5)の融合(これはSP1変化体のmtbSP1(配列番号3)をもたらす)は、天然SP1よりも低い濃度でCNT分散を促進させることが見出された。
【0294】
工業的適用のためには、タンパク質製造コストをできる限り低く保つこと、および、組換えタンパク質を発現する形質転換された細胞の粗抽出物に存在し得る他のペプチドが変化体SP1のCNT分散能を妨害しないことを確実にすることが好ましい。この面を検証するために、L1−SP1を発現させるために形質転換された細菌から得られる粗抽出物を熱処理およびプロテアーゼ処理の組合せにさらし、その後、表5に示されるように、CNT分散活性の保持または喪失について評価した。
【0295】

【0296】
表5において認められ得るように、80℃で120分までのL1−SP1の粗抽出物の熱処理、および、この変異体の調製期間中に使用されたタンパク質分解は、CNT分散能を消失させなかった。
【0297】
L1−SP1がCNTに結合し、複合体を形成することの直接的な実証が、CNTを伴うL1−SP1(配列番号6)のサンプル(L1−SP1/CNT)の懸濁物、CNTを伴わないタンパク質のサンプル(L1−SP1)、および、これらの2つのサンプルのろ液(0.22ミクロンのフィルター)を煮沸の前後で比較することによって得られた。煮沸サンプルおよび非煮沸サンプルの両方をSDS−PAGEによって分析した。
【0298】
煮沸されたL1−SP1はモノマー形態のバンドおよびトリマー形態のバンドとして検出された。一方、煮沸されないL1−SP1は高分子量の複合体としてのみ現れる。
【0299】
CNTの大きい画分がろ過によって除かれ、したがって、この画分は0.22ミクロンよりも長い。CNTの非存在下におけるSP1トリマーのバンドの割合は、ろ液および非ろ過サンプルの両方において、CNTの存在下で検出される割合よりも低かった。明らかにすべてのタンパク質が、SDS Tricineサンプル緩衝液との混合およびSDS−PAGE適用のときに解離したわけではなかった。
【0300】
L1−SP1(配列番号6)がCNTに結合するという別の目安が、mtbSP−SP1/CNT懸濁物および精密ろ過(0.2ミクロン)素通りの両方のタンパク質測定アッセイ(Bradfordタンパク質アッセイ)からもたらされ、これは、CNT複合体化後のタンパク質の約50%が0.2ミクロンの細孔サイズよりも大きく、フィルターによって保持されることを明らかにする(データは示されず)。
【0301】
SP1−CNT複合体の形成についてのさらにさらなる証拠がエタノール沈殿の結果において認められる(表3):複合体化されていないタンパク質は50%エタノールにより沈殿しないが、SP1−CNTは50%エタノールにより沈殿する。CNTがGuHCl(100mM)により同様に沈殿し、また、(HClまたは酢酸を加えることによる)酸性pHで沈殿する。しかしながら、一方で、GuHClは非複合体化タンパク質の沈殿化を誘導するのではなく、酸性pHが非複合体化タンパク質の沈殿化を誘導する(実施例6〜実施例8を参照のこと)。
【0302】
L1−SP1−CNT複合体の熱安定性、プロテアーゼ抵抗性およびアルカリ抵抗性:複合体の安定性を評価するために、L1−SP1/CNTを、pH8.0およびpH11の両方における熱処理(100℃;10分または80℃;30分)、または、pH8.0におけるタンパク質分解に供した。種々のpHにおけるL1SP1/CNTサンプルのインキュベーションの後、高速遠心分離(20分;20000Xg)および上清の10倍希釈を行った。熱アッセイおよびプロテイナーゼアッセイの結果は、SP1/CNT複合体が熱に安定であり、かつ、プロテアーゼ抵抗性であり、これにより、重要なポリマー化合物(例えば、エポキシなど)におけるその分散に先立つ複合体の経済的に望ましい加熱乾燥および加熱粉末化を可能にすることを明らかにする。
【0303】
SP1/CNT複合体の大きい耐久性は、水に容易に再分散させることができるSP1/CNT複合体の乾燥ペレットを得るための簡便な方法の開発を可能にした。このプロセスは、4%のCNTの最初の分散、その後、エタノールにおける3段階の洗浄および1:5希釈による沈殿化(最後は99%エタノール)、ならびに、真空ポンプを使用する脱水を含む。
【0304】
実施例4
エポキシ樹脂におけるSP1/MWCNT複合体の分散
タンパク質−エポキシ相互作用についての十分に研究されているモデルが、生物活性タンパク質(例えば、酵素など)の固定化のために使用されるエポキシ活性化ポリマー担体である。しかしながら、可溶性タンパク質は、中性pH値ではエポキシ基との反応性がほとんどない。エポキシにおけるSP1−CNT溶解性能力はpH依存性である:SP1−CNTは、pH8.0で乾燥されるときには沈殿し、また、10.5を超えるpHで乾燥されるときには、安定で、透明な、しかし、暗い溶液を形成する。
【0305】
SP1変化体、カーボンナノチューブおよびエポキシ樹脂の三元複合体を形成するための2つの例示的な一般的手順が本明細書中に記載される。
一般的プロトコル「A」:エポキシとのSP1/CNT相互作用を評価するために、
1.SP1/CNT(0.1%〜0.5%のCNT)を、本明細書中上記のような超音波処理を使用して水に分散させた;
2.高濃度のSP1/CNT懸濁物を、透析を使用して、限外ろ過(30kDaのカットオフ)およびpHを増大させるための緩衝液交換(NaPi(10mM;pH8.0)からNaCO(10mM;pH≒11)への)を使用して調製した。
3.脱水:乾燥した微細なSP1/CNTペレットを得るために、冷凍乾燥(凍結乾燥)をサンプルの脱水のために使用した。
4.SP1/CNTペレットを、1%(w/w)の濃度を得るために、10分間、エポキシ(Huntsman、LY5052)に激しく混合し、その後、260Wおよび70℃の最大温度での3時間の浴での超音波処理を行った。
5.遠心分離:その後、黒色混合物を遠心分離して(7000rpmで60分間、Sorvall SLA3000ローターを使用する)、分散されていないCNT/SP1を沈殿させる;および
6.CNT懸濁物の濃度を600nmでの透過の測定によって評価した。
【0306】
一般的プロトコル「B」は下記の工程を含む:
1.SP1/CNT(0.1%〜0.5%のCNT)を、本明細書中上記のような超音波処理を使用して水に分散させた;
2.NaOH(0.02Mの最終濃度)の添加によるpH調節;
3.エタノール沈殿:50%〜80%のエタノールに調節し、−20℃で2時間インキュベーションし、その後、7000rpmでの60分間の遠心分離を行う(Sorval遠心分離器でのSorvalローターSLA3000);
4.脱水:乾燥した微細なSP1/CNTペレットを得るために、冷凍乾燥(凍結乾燥)をサンプルの脱水のために使用した。
4.SP1/CNTペレットを、1%(w/w)の濃度を得るために、10分間、エポキシ(Huntsman、LY5052)と激しく混合し、その後、260Wおよび70℃の最大温度での3時間の浴での超音波処理を行った。
5.遠心分離:その後、黒色混合物を遠心分離して(7000rpmで60分間、Sorvall SLA3000ローターを使用する)、分散されていないCNT/SP1を沈殿させる;および
6.CNT懸濁物の濃度を600nmでの透過の測定によって評価した。
【0307】
その後、透明なエポキシを硬化剤添加のために重量測定し、7分間〜10分間混合し、真空デシケーターで脱気し、80℃での一晩(8時間超)の硬化のためにケイ素鋳型に注いだ。図9Aは、分散させた複合体TiSP1−CNTを伴うエポキシLY5052(サンプル2)(約1%)(mtbSP1、配列番号3)、および、非処理CNTを伴うエポキシLY5052(サンプル3)(1%)と比較される硬化させたLY5052エポキシ(サンプル1)から製造されるモジュールの写真を示す。写真は、SP1タンパク質によるCNT分散が、暗いが、透明なサンプルをもたらすことを示し、このことは、エポキシにおける良好な分散を示している。
【0308】
図9Bはまた、分散された複合体TiSP1−CNTを伴うエポキシLY5052(約1%)(mtbSP1、配列番号3)の薄い切片のTEM像を示し、硬化させた重合エポキシにおける完全に分散されたCNTを明瞭に示す。
【0309】
実施例5
アラミド(例えば、KEVLAR(商標))に対するSP1変化体の結合
材料科学者および材料技術者は、カーボンナノチューブを使用して超強靱かつ高性能なポリマー複合材料を作出する可能性によって興奮する。現在、CNT−ポリマー複合材を二次加工するすべての既存の方法は、複雑で、費用がかかる、時間を要求する加工技術、例えば、溶液注型、融解、成形、押出しおよびインサイチュー重合などを伴い、これらは、ナノチューブが、最終製造物(例えば、ヤーン、リボンまたはフィルム)の形成の前に、ポリマー溶液、溶融ポリマーに取り込まれるか、または、最初のモノマーと混合されることを余儀なくする。このことは、不溶性または温度感受性のポリマーには適していない。このようなポリマーは、融解することなく分解するからである。
【0310】
アラミドポリマー(例えば、KEVLAR(商標))は、様々な重要な適用(例えば、空気タイヤのトレッドおよびサイドウォール、防弾チョッキおよび車用装甲板など)を有する広く知られている高強度ポリマーである。しかしながら、アラミド(例えば、KEVLAR(商標))はどのような一般的な溶媒においても可溶性でなく、また、融点を有しないので、400℃を超えると分解する。結果として、アラミド(例えば、KEVLAR(商標))繊維は硫酸溶液からの湿式紡糸によって製造されなければならない。アラミド(KEVLAR(商標))へのSP1/CNT複合体の結合を、既に形成されたポリマー製造物(例えば、アラミド(KEVLAR(商標)ヤーンなど)へのカーボンナノチューブの効果的な加工後取り込みについて評価した。
【0311】
タンパク質を介する布地へのCNT結合は、その表面積を増大させ、これにより、繊維とのより良好な相互作用を可能にし、また、繊維間の架橋を誘導する。加えて、自身による繊維へのタンパク質結合は、タンパク質表面の反応基を介するポリマーとの相互作用を改善するかもしれない。CNTと結合するいくつかのSP1変化体がまた、構造用繊維に結合することが明らかにされる。
【0312】
材料および方法
種々の濃度(10mM NaP(pH≒8)における22μg/ml、44μg/mlおよび88μg/mlのサンプル)でのL3SP1溶液(配列番号8)を、回転式振とう機において25℃で16時間、100mgのアラミド(KEVLAR(商標))布地とインキュベーションし、その後、溶液が無色になるまで(これはCNTの非存在を示す)、かつ、タンパク質が洗浄液において全く検出されなくなるまで、同じ緩衝液により大々的に洗浄して、微量の非結合のタンパク質およびCNTを除いた。アラミド(KEVLAR(商標))へのCNT結合をアラミド(KEVLAR(商標))繊維の暗色化によって評価した。洗浄されたアラミド(KEVLAR(商標))へのSP1結合を、アラミド(KEVLAR(商標))を2mlのBCAタンパク質アッセイ試薬(Pierce、カタログ番号23227)と37℃で30分間反応し、562nmでの光学濃度を測定することによって求めた。結合したタンパク質の量を計算し、プロットした。結果が図10Aに示される。
【0313】
アラミドへのSP1/CNT結合を、上記で詳述されるように、沈殿化、光透過率(分光法、目視検査)および表面抵抗率によって評価した。
【0314】
結果
L3SP1/CNT複合体とのインキュベーションの後における結合繊維および非結合繊維の比較は、徹底した洗浄の後でさえ、CNTの多大な結合を示した(示されず)。BCAタンパク質アッセイもまた、SP1/布地(w/w)の比率がおよそ2mgタンパク質/g繊維(2/1000)であることを示した。並行した実験では、L−1−SP1(配列番号6)およびL−4 SP1(配列番号9)もまた、アラミド(KEVLAR(商標))に結合することが明らかにされた。L3−SP1/CNTとのインキュベーションの後、アラミド(KEVLAR(商標))繊維は色が濃くなった。このことは、大々的な洗浄の後でさえ、アラミド(KEVLAR(商標))繊維へのCNTの結合を示している。図10Bは、アラミド(KEVLAR(商標))に結合するSP1/CNTのSDS−PAGE分析を示し、CNTおよびタンパク質が繊維に結合することを明らかにする。30mgのアラミドを180/1000(w/w)のL4−SP1−CNT分散物とインキュベーションし、その後、浴での超音波処理(90分、30℃〜70℃の間に及ぶ温度)、繊維除去、(緩衝液を使用する)大々的な洗浄、および、煮沸(60ulにおいて10分)を行って、結合したタンパク質およびCNTを抽出することにより、結合したCNTだけでなく、結合したタンパク質を有する暗色化した繊維がもたらされた(図10B、レーン1〜レーン3)。
【0315】
アラミド(KEVLAR(商標))結合CNTの量の定量的測定を得るために、結合後の溶液に残留する非結合SP1/CNTの量を直接に評価することができる(下記の実施例6を参照のこと)。
【0316】
図11A〜図11CはMWCNT結合アラミド繊維の高分解能走査型電子顕微鏡観察像である。スケールバーは、11A、11Bおよび11Cにおいてそれぞれ、1μm、1.0μmおよび0.1μmである。
【0317】
CNT分散物(0.1%CNT(Arkema、コードC100)、L3SP1(配列番号8)を使用する)を撹拌(1h;25℃;150rpm)によってアラミド布地(KEVLARスタイル120平織 195デニール、58g/m平方;1gの布地あたり22mlの懸濁物)とインキュベーションし、その後、同じ緩衝液における大々的な洗浄、および、開放空気での一晩の乾燥を行った。布地上のCNT含有量が約9mg/g布地であった。結合CNTは表面積を劇的に増大させること、および、CNTは互いに密に接触しており、これにより、改善された電気伝導特性をもたらしていることに留意すること。図11Bおよび図11Cは、凝集を何ら示すことなく、アラミド繊維への均質な結合を示す。
【0318】
SP1−CNT−ポリマー繊維表面の電気抵抗率:SP1ポリペプチド−CNT複合体化アラミド布地の表面の抵抗率の測定は、驚くべきことに、非処理アラミド繊維の表面抵抗率が、SP1ポリペプチド結合CNTと複合体化されたとき、10オーム/平方よりも大きいが、抵抗率が10オーム/平方未満に低下することを示した。結合CNT濃度を変えることにより、SP1ポリペプチド−CNT複合体化アラミド布地の表面の抵抗率における対応する変化がもたらされた。すなわち、表面抵抗率が、CNT濃度における増大および溶解されたL3SP1封入体(IB)の使用のときにはともに、一層大きく低下する(下記の実施例6を参照のこと)。
【0319】
実施例6
カーボン布地へのSP1変化体の結合
カーボン布地は、航空宇宙分野および自動車分野において、同様にまた、帆船およびスポーツ設備において様々な重要な適用を有する広く知られている高強度材料であり、これらにおいては、その大きい強度対重量比が重要である。連続する炭素繊維/エポキシ複合材が、それらの優れた機械的特性に起因して構造的適用のために広範囲に使用されている。ポリマーはほとんどの場合、エポキシであり、しかし、他のポリマー、例えば、ポリエステル、ビニルエステルまたはナイロンなどもまた使用される。しかしながら、それらのマトリックス支配的特性(例えば、面内および層間の剪断特性など)はそれらの繊維支配的特性よりもはるかに弱く、したがって、これらの従来的複合材の利益を制限している。加えて、複合材が、引張り強さよりも低い長さ方向の圧縮強さ(マトリックス支配的特性)を示すことが知られている。
【0320】
タンパク質を介する布地へのCNT結合はその表面積を増大させ、このことは、繊維とのより良好な相互作用を可能にし、また、繊維間の架橋を誘導する。加えて、自身による繊維へのタンパク質結合は、タンパク質表面の反応基を介するポリマーとの相互作用を改善するかもしれない。CNTと結合するいくつかのSP1変化体がまた、構造用繊維に結合することが明らかにされる。
【0321】
材料および方法
SP1−CBDの溶解された封入体の製造:
SP1−CBDが、米国特許第7253341号(Wang他)に記載されるように、不溶性の封入体(IB)として細菌宿主において発現させられる。簡単に記載すると、108アミノ酸のSP1アミノ酸配列(配列番号88)をコードするSP1のcDNAを、クロストリジウム・セルロボランス(Clostridium cellulovorans)のセルロース結合性タンパク質Aの163アミノ酸のCBDドメインをコードするヌクレオチド配列(配列番号87)を有する発現ベクターにクローン化した。得られた核酸構築物は、ペプチドリンカー(配列番号89)を含むSP1−CBD融合タンパク質をコードした。クローニング後、得られたプラスミドを使用して、大腸菌株BL21(DE3)を形質転換した。組換えCBD−SP1融合タンパク質の合成を、IPTG(イソプロピル−D−チオガラクトシド)を細菌培養物の中期対数期に1mMの最終濃度に加え、その後、37℃でのさらに5時間のインキュベーションを行うことによってBL21(DE3)において誘導した。組換えSP1−CBD融合タンパク質(配列番号86)が封入体(IB)において検出され、封入体を単離および精製した。簡単に記載すると、SP1−CBDを含有するIBを、Trisma塩基(20mM)、NaOH(8mM)に溶解し(氷上で30分、1:200の比率(w/v))、その後、高速遠心分離(13000rpm、30分間)を行った。上清を水に1:10で希釈し、pHを(NaPi緩衝液(100mM、pH=6.8)を使用して)pH=8.2に調節した。
【0322】
炭素繊維へのSP1ポリペプチド−CNT複合体の結合
分析目的のために、50mgの炭素繊維(Sigmatex)を1mlのスクリューキャップ・ガラスチューブ(Fisherbrand、カタログ番号:03−338AA、サイズ:12x35mm、1/2DR)に計り取った。L3SP1溶液(配列番号8)(10mM NaP(pH≒8)における0、1、2、4および8(mg SP1/gCF)に対応する0、50、100、200および400(ug/ml))を、(Elma Transsonic Sonifierを使用して1.5時間)浴型超音波処理装置においてインキュベーションし(浴型超音波処理装置を運転している間、温度が20℃から60℃に上がった)、その後、同じ緩衝液による大々的な洗浄を行って、微量の非結合L3−SP1タンパク質を除いた。洗浄された布地へのSP1結合を、布地を2mlのBCAタンパク質アッセイ試薬(Pierce、カタログ番号23227)と37℃で30分間反応し、562nmでの光学濃度を測定することによって求めた。結合したタンパク質の量を計算し、プロットした。結果が図12Aに示される。図12AはBCAタンパク質アッセイを示し、また、SP1/布地(w/w)の比率が7mgタンパク質/g繊維(0.07%)にまで達することを示す。
【0323】
布地へのSP1/CNT複合体の結合のために、カーボン布地(Sigmatex、200g/平方メートル、19g)を、1時間、(Elma Transsonic Sonifierを使用して)浴型超音波処理装置においてL3SP1溶液(配列番号8){0.025(ug/ml);1(mg SP1/gCF)、10mM NaP(pH≒8)の0.8lに希釈されて}により前処理し、その後、前処理された布地を、5時間、浴型超音波処理装置においてL3−SP1/CNT溶液{10mM NaP(pH≒8)の0.8lにおける0.1%CNT L3−SP1/CNT(w/w)比率=0.05}により処理した。
【0324】
布地へのCNTの結合を、2つの方法を使用して評価した:
1.超音波処理の継続期間にわたる600nmでのL3−SP1/CNT懸濁物の透過率を測定する。この場合、透過率は溶液中のCNT濃度における低下を示し、したがって、布地へのその結合を示す。透過率の値はL3−SP1/CNT標準曲線に従ってCNT濃度と相関した(図14B)。図12Cは、超音波処理時間(0〜5時間)にわたる(600nmでの増大する透過率によって測定されるように、溶液からのCNTの)低下を示す。このことは、L3SP1−CNT複合体が布地に結合することを示している。この「減算」法によって測定されるときの最大CNT結合が4mg CNT/gr布地(0.4%)であった。
2.布地へのCNT結合を評価するためのより直接的な方法が、溶液を(冷凍乾燥を使用して)脱水した後における乾燥物重量測定である。結合前および結合後の乾燥物重量の差が計算された。これは、この方法によって測定されるときの最大CNT結合が、類似する3.6mg/gr布地(0.36%)であり、上記の「減算」法により測定して得られる結果と類似していたことを示している。
【0325】
上記で記載されるように、SP1およびSP1/CNT複合体は、超音波処理されない場合、限られた効率で炭素繊維と結合する。より大きい結合効率を、材料結合部位ドメインが露出する溶解されたSP1−CBD封入体を使用して達成することができる。炭素繊維をSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体への結合のために調製するために、炭素繊維(Hexcel、平織スタイルK−70−P3000フィラメントヤーン;193g/m平方;1gの布地あたり22mlの懸濁物)を、溶液(最終的なタンパク質濃度が0.2mg/mlであった)撹拌(1h;25℃;150rpm)において、溶解されたSP1−CBD融合タンパク質にさらし、その後、大々的に洗浄して、非結合の融合タンパク質を除いた。その後、SP1−CBD結合炭素繊維を撹拌(1h;25℃;150rpm)によってSP1ポリペプチド−CNT複合体の懸濁物(0.1%CNT(Arkema、コードC100)、L3SP1(配列番号8)の存在下)とインキュベーションし、その後、大々的な緩衝液洗浄および一晩の開放空気での乾燥を行った。布地に結合したCNT含有量が約6mg/g布地であった。
【0326】
実施例7
電気伝導性の編織物
従来の編織物(天然物および合成物の両方)はほとんど常に絶縁体(電気の不良な導体)である。絶縁体を導体に変換することにおける関心が、静電気遮蔽衣類または電磁遮蔽衣類を得るための必要性から、あるいは、画期的な電子的「スマート」編織物の製造のために生じている。
【0327】
「電子的/スマート編織物」はますます注目を集め続けている;それらは、センサー、アクチュエーターおよび制御ユニットを含有するが、依然として、快適な衣料品のために必要な特徴を保持する。それらは、受動的(すなわち、周囲の状態を感知することができる)または能動的(すなわち、特定の入力に応答/適合するためのセンサーおよびアクチュエーターの両方を含有する)のどちらであってもよい。本発明の方法に従った導電性編織物の製造のために好適な編織物のいくつかの限定されない例が、綿、ウールおよびアマのような天然材料、ならびに、エラステイン(ポリウレタン/ポリウレアコポリマー、例えば、SPANDEX、LYCRA)およびアラミド(KEVLAR)のような合成繊維であり、これらは、PPY(ポリピロール)またはPANi(ポリアニリン)のようなICP(固有的導電性ポリマー)およびCNT(カーボンナノチューブ)の添加を伴う。
【0328】
方法
カーボンナノチューブを2工程の手順で布地/編織物に結合させた。簡単に記載すると、L3SP1(配列番号8)およびSP1−CBD(配列番号86)を可溶性複合体および不溶性封入体(IB)の両方として発現させる。L3SP1のIBをTrisma塩基(20mM)、NaOH(8mM)に溶解し(氷上で30分、1:200の比率(w/v))、その後、高速遠心分離(13000rpm、30分間)を行った。上清を水に1:10で希釈し、pHを(NaPi緩衝液(100mM、pH=6.8)を使用して)pH=8.2に調節した。
【0329】
表6に示されるように、2工程の結合が、CNTを布地(例えば、アラミド(サイジングが行われない)、綿、ポリエステル、ポリアミドおよびエラステインなど)に結合させることにおいて効果的である。他の繊維、例えば、アラミド(KEVLARスタイル120平織、195デニール、58g/m平方)(これは航空機適用のために使用される)は、0.1%のL3−SP1/CNT溶液に浸けることによってCNTと結合する。そのようなCNT結合布地は非処理の布地よりも低い電気抵抗率を示し(表6)、これは、CNTの存在または非存在に明瞭に相関している(例えば、ポリアミドおよび綿を参照のこと)。布地を、SP1L3−IB(0.1mg/ml)を伴って、または伴うことなく、記載されるように調製した。
【0330】

【0331】

【0332】
まとめると、本明細書中に示される結果は、具体的に設計されたSP1変化体は広範囲の様々な無機分子との分子複合体を形成することができ、これにより、これらの分子の物理化学的特徴(例えば、溶媒における分散など)を高めることを示し、この場合、そのような分子複合体は、例えば、非常に特異的な複合材料(例えば、SP1ポリペプチド−CNT−アラミドの複合体布地、複合体ヤーンおよび複合体ポリマー布地など)およびCNT−ナノ構造物の製造において有用であり得る。
【0333】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0334】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
【0335】

【配列表フリーテキスト】
【0336】
配列番号1は、Sp1改変体変異体:アミノ酸2〜6欠失、M43C改変である。
配列番号2は、Sp1改変体変異体:アミノ酸2〜6欠失、L81C改変である。
配列番号3は、Sp1(2〜6欠失、M43C改変)のN′に融合されるmTBペプチドである。
配列番号5は、mTBペプチドである。
配列番号6は、L1−Sp1融合ポリペプチドである。
配列番号7は、デルタN′ Sp1コード配列である。
配列番号8は、L3−Sp1融合ポリペプチドである。
配列番号9は、L4−Sp1融合ポリペプチドである。
配列番号10は、L1ペプチドである。
配列番号11は、L2ペプチドである。
配列番号12は、L3ペプチドである。
配列番号13は、L6ペプチドである。
配列番号14は、L2−Sp1融合ポリペプチドである。
配列番号15は、L6−Sp1融合ポリペプチドである。
配列番号16は、L7−Sp1融合ポリペプチドである。
配列番号17は、L5−Sp1融合ポリペプチドである。
配列番号18は、L8−Sp1融合ポリペプチドである。
配列番号19は、例示的異種チタン結合ペプチドである。
配列番号20〜27は、無機物質に結合する例示的ペプチドである。
配列番号55は、mtbSPコード配列である。
配列番号56は、L1−Sp1コード配列である。
配列番号57は、L2−Sp1コード配列である。
配列番号58は、L3−Sp1コード配列である。
配列番号59は、L6−Sp1コード配列である。
配列番号60は、L4−Sp1コード配列である。
配列番号61は、L5−Sp1コード配列である。
配列番号62は、L7−Sp1コード配列である。
配列番号63は、L8−Sp1コード配列である。
配列番号64は、Sp1改変体変異体:アミノ酸2〜6欠失である。
配列番号65〜68,70〜85は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドである。
配列番号69は、M43CデルタN′ Sp1コード配列である。
配列番号86は、Sp1−CBDキメラポリペプチドである。
配列番号87は、CBDドメインである。
配列番号88は、Sp1ポリペプチドである。
配列番号89は、Sp1−CBD融合タンパク質ペプチドリンカーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SP1ポリペプチドと、前記SP1ポリペプチドのN末端におけるカーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドとを含む単離されたキメラポリペプチドであって、前記SP1ポリペプチドが、
i)配列番号1に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられる、単離されたキメラポリペプチド。
【請求項2】
前記少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列は、「HAFESTFES」(配列番号4の65〜73)、「VKH」(配列番号4の9〜11)、および「KSF」(配列番号4の44〜46)からなる群から選択される、請求項1に記載の単離されたキメラポリペプチド。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドは、配列番号10〜配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の単離されたキメラポリペプチド。
【請求項4】
前記SP1ポリペプチドは、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号14〜配列番号18および配列番号86のいずれかに示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の単離されたキメラポリペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のキメラポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5に記載の単離されたポリヌクレオチドを、その組換え発現を行わせるために少なくとも1つのプロモータに転写的に連結されて含む核酸構築物。
【請求項7】
カーボンナノチューブまたはグラファイト表面に非共有結合的に結合する、請求項1〜4のいずれかに記載のキメラポリペプチドを含む組成物。
【請求項8】
前記キメラポリペプチドは、配列番号8に示される通りである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
SP1−ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地を形成するために、ポリマー、布地またはポリマー布地に結合する少なくとも1つのSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体を含む組成物であって、前記SP1ポリペプチドが、請求項1〜4のいずれかに記載のキメラSP1ポリペプチドである、組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのSP1−ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体は、請求項7に記載の組成物を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記SP1−ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地は、SP1−ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化アラミド繊維を含む、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
前記SP1−ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地は、SP1−ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化アラミドの織布または不織布を含む、請求項9〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記SP1−ポリペプチドは、配列番号8に示される通りである、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
SP1−CBD融合タンパク質をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記SP1−CBD融合タンパク質は、配列番号86に示される通りである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
エラストマー物質をさらに含む、請求項9〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記エラストマー物質はゴムである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項9〜17のいずれかに記載の組成物を含む成分を有する空気タイヤまたはセミ空気タイヤ。
【請求項19】
前記成分は、前記SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地とともに形成される複合エラストマー物質である、請求項18に記載のタイヤ。
【請求項20】
前記SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地は、前記SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地を有しないタイヤと比較した場合、改善された熱伝導性および電気伝導性を与える、請求項18または19に記載のタイヤ。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかに記載のタイヤを有する車輌を高速化するための方法であって、電流を、前記少なくとも1つの、SP1−ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体化ポリマー、複合体化布地または複合体化ポリマー布地に与えて、その結果、前記タイヤの温度を所望される温度に変化させるようにすること、および、前記車輌を高速化することを含む方法。
【請求項22】
結合したSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体を含む布地基体材料を含む電気伝導性布地であって、前記電気伝導性布地の導電率が、前記結合したSP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体を有しない同じ布地基体材料の導電率よりも大きく、前記SP1ポリペプチドが、請求項1〜4のいずれかに記載のキメラSP1ポリペプチドである、電気伝導性布地。
【請求項23】
前記布地は、綿、ウール、絹、ナイロン、ポリエステル、アラミド、ポリプロピレンおよびエラステインからなる群から選択される織布または不織布である、請求項22に記載の電気伝導性布地。
【請求項24】
電気伝導性のポリマー、布地またはポリマー布地を製造するための方法であって、布地基体材料を提供すること、SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の組成物を調製すること、および、前記布地基体材料を前記SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の組成物により処理すること、および、前記布地基体材料を洗浄して、電気伝導性SP1ポリペプチド−カーボンナノチューブ複合体の組成物の過剰量を除くこと、それにより、前記ポリマー、ポリマー布地または布地基体材料に電気伝導性を与えることを含み、前記SP1ポリペプチドが、請求項1〜4のいずれかに記載のキメラSP1ポリペプチドである、方法。
【請求項25】
SP1ポリペプチドと、前記SP1ポリペプチドのN末端における配列番号5に示される異種のケイ素結合性ペプチドとを含む単離されたキメラポリペプチドであって、前記SP1ポリペプチドが、
i)配列番号4に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられる、単離されたキメラポリペプチド。
【請求項26】
前記少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列は、「HAFESTFES」(配列番号4の65〜73)、「VKH」(配列番号4の9〜11)、および「KSF」(配列番号4の44〜46)からなる群から選択される、請求項25に記載の単離されたキメラポリペプチド。
【請求項27】
配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する、請求項25に記載の単離されたキメラポリペプチド。
【請求項28】
配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するSP1ポリペプチドを含む単離されたポリペプチド。
【請求項29】
物質と結合することができる改変アミノ酸配列を有する少なくとも1つのSP1ポリペプチドを含むSP1ドデカマーを含む組成物であって、前記改変アミノ酸配列が、SP1ドデカマーの中央の空洞領域に対応する前記SP1ポリペプチドの領域に位置し、前記物質の前記結合がカオトロピック剤の存在下で高まり、組成物がさらに、前記カオトロピック剤を含み、かつ、前記SP1ポリペプチドが、
i)配列番号4に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられ、
かつ、前記カオトロピック剤がグアニジニウム塩酸塩であるとき、前記改変アミノ酸配列はNi結合Hisタグを含まない、組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列は、「HAFESTFES」(配列番号4の65〜73)、「VKH」(配列番号4の9〜11)、および「KSF」(配列番号4の44〜46)からなる群から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記改変アミノ酸配列は、カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチド、ケイ素結合性ペプチドおよびセルロース結合性ドメインペプチドからなる群から選択される異種ペプチドを含むために改変される、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドは、配列番号10〜配列番号13からなる群から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記ケイ素結合性ペプチドは、配列番号5および配列番号19からなる群から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
前記SP1ポリペプチドはN末端欠失を含む、請求項29〜33のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
前記カオトロピック剤は、グアニジニウム塩酸塩、尿素および過塩素酸リチウムからなる群から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項36】
前記SP1ポリペプチドは、配列番号1〜配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号9および配列番号14〜配列番号18ならびに配列番号86のいずれかに示されるアミノ酸配列を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項37】
物質と結合することができる改変アミノ酸配列を有する少なくとも第1および少なくとも第2の非同一SP1ポリペプチドモノマーを含むヘテロマー組成物であって、前記第1および第2のSP1モノマーの前記改変アミノ酸配列が互いに非同一であり、前記SP1ポリペプチドが、
i)配列番号4に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられ、前記非同一モノマーがそれらの無機物質結合配列において異なる、ヘテロマー組成物。
【請求項38】
前記少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列は、「HAFESTFES」(配列番号4の65〜73)、「VKH」(配列番号4の9〜11)、および「KSF」(配列番号4の44〜46)からなる群から選択される、請求項37に記載のヘテロマー組成物。
【請求項39】
前記改変アミノ酸配列は、カーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチド、ケイ素結合性ペプチド、SP1−CBD融合タンパク質およびシステイン置換体からなる群から選択される、請求項37に記載のヘテロマー組成物。
【請求項40】
前記第1および第2のSP1モノマーの前記改変配列は非同一の物質と結合する、請求項37に記載のヘテロマー組成物。
【請求項41】
ドデカマーである、請求項37〜40のいずれかに記載のヘテロマー組成物。
【請求項42】
改変SP1ポリペプチドドデカマーと複合体化された第1の無機物質と、前記改変SP1ポリペプチドドデカマーと複合体化された第2の無機物質とを含む組成物であって、前記第1の無機物質および第2の無機物質が前記SP1ポリペプチドドデカマーの第1および第2の結合領域を介して複合体化され、かつ、前記SP1ポリペプチドが、
i)配列番号4に対する少なくとも65%のアミノ酸相同性、
ii)安定ダイマー形成能、および
iii)配列番号4のアミノ酸9〜11、アミノ酸44〜46および/またはアミノ酸65〜73に対応する少なくとも1つの領域における少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列
によって特徴づけられる、組成物。
【請求項43】
前記第1または第2の無機物質のうちの少なくとも一方が非共有結合性の結合によって前記改変SP1ポリペプチドドデカマーと複合体化される、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記第1または第2の無機物質のうちの少なくとも一方が共有結合性の結合によって前記改変SP1ポリペプチドドデカマーと複合体化される、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
前記結合領域の少なくとも1つがカーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドであり、前記第2の結合領域がカーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドではない、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
前記第1の無機物質がカーボンナノチューブまたはグラファイト表面であり、前記第2の無機物質が、ポリマー、布地またはポリマー布地である、請求項42〜45のいずれかに記載の組成物。
【請求項47】
前記第1の結合領域がカーボンナノチューブ結合性ペプチドまたはグラファイト表面結合性ペプチドであり、第2の結合領域がケイ素結合性ペプチドである、請求項42〜45のいずれかに記載の組成物。
【請求項48】
前記SP1ポリペプチドドデカマーは、配列番号1〜配列番号3、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号14〜配列番号18および配列番号86のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するSP1ポリペプチドを含む、請求項42〜47のいずれかに記載の組成物。
【請求項49】
前記第1の無機物質がカーボンナノチューブまたはグラファイト表面である、請求項42〜48のいずれかに記載の組成物。
【請求項50】
物質を溶媒に分散させる方法であって、前記物質を、請求項1〜4,7,8,25,29および37のいずれかに記載の組成物または単離されたキメラSP1ポリペプチドと接触させて、前記物質と、前記組成物または前記単離されたキメラSP1ポリペプチドとの間での複合体を形成させること、および
前記複合体を、溶液または懸濁物を形成するように溶媒と接触させること;
それにより、前記物質を前記溶媒に分散させること
を含む、方法。
【請求項51】
前記溶媒は水性溶媒または有機溶媒である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記溶媒はエポキシである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記物質はカーボンナノチューブである、請求項50に記載の方法。

【図6A−6B】
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【図7A−7C】
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【図12A】
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【図12B−12C】
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【図1A−1B】
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【図2A−2B】
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【図3A−3C】
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【図4A−4B】
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【図5A−5B】
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【図8A−8H】
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【図9A−9B】
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【図10A−10B】
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【図11A−11C】
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【図13A−13B】
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【公表番号】特表2013−503625(P2013−503625A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527446(P2012−527446)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000705
【国際公開番号】WO2011/027342
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512055891)フルクルム エス.ピー. マテリアルズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】