多数個取り配線基板の製造方法
【課題】製品領域に対し格子状に形成する分割溝によって破損したり、割れなどの不具合が生じにくい多数個取り配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックからなり、平面視が矩形の表面2および裏面3を有する複数の配線基板部1を縦横に隣接して併有する製品領域4と、同じセラミックからなり、製品領域4の周囲に位置する平面視が矩形枠状の表面2および裏面3を有する耳部5と、隣接する上記配線基板部1,1同士の境界、および製品領域4と耳部5との境界に沿って、表面2に平面視が格子状に形成された分割溝と、を備えた多数個取り配線基板の製造方法であって、グリーンシート積層体gsにおける耳部5の表面2上にレーザ光Lを遮蔽する遮蔽板10を配置する工程と、グリーンシート積層体gsの製品領域4および遮蔽板10にレーザ光Lを照射しつつ走査することで、製品領域4に分割溝を形成する工程と、を含む、多数個取り配線基板の製造方法。
【解決手段】セラミックからなり、平面視が矩形の表面2および裏面3を有する複数の配線基板部1を縦横に隣接して併有する製品領域4と、同じセラミックからなり、製品領域4の周囲に位置する平面視が矩形枠状の表面2および裏面3を有する耳部5と、隣接する上記配線基板部1,1同士の境界、および製品領域4と耳部5との境界に沿って、表面2に平面視が格子状に形成された分割溝と、を備えた多数個取り配線基板の製造方法であって、グリーンシート積層体gsにおける耳部5の表面2上にレーザ光Lを遮蔽する遮蔽板10を配置する工程と、グリーンシート積層体gsの製品領域4および遮蔽板10にレーザ光Lを照射しつつ走査することで、製品領域4に分割溝を形成する工程と、を含む、多数個取り配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックからなり、複数の配線基板部を縦横に隣接して併有する多数個取り配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セラミック製の配線基板は、セラミック製の多数個取り配線基板をその表面や裏面に設けた格子状の分割溝に沿って個々の配線基板に分割することで製作されている。そのため、グリーンシート積層体における製品領域内の切断予定位置に沿ってレーザ光を照射することで、所要断面形状の分割溝を有する分割用セラミック基板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された前記製造方法のレーザ光の照射による溝入れをグリーンシート積層体に施した場合、平面視で製品領域において格子状に形成された複数の分割溝の各端部が、かかる製品領域の外周側に位置する耳部の領域内にまで達してしまう場合がある。そのため、上記グリーンシート積層体の搬送時において該グリーンシート積層体が破損したり、焼成工程において焼成されたセラミック積層体が割れるなどの不具合を生じ得る、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276386号公報(第1〜7頁、図1〜4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、複数の配線基板部を併設した製品領域に対して格子状に形成する分割溝により破損したり、割れなどの不具合が生じにくい多数個取り配線基板の製造方法を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、多数個取り取り配線基板となるグリーンシートの製品領域に格子状の分割溝を形成し、且つ該製品領域を囲む耳部には上記分割溝の各端部が最小限で進入する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明による多数個取り配線基板の製造方法(請求項1)は、セラミックからなり、且つ平面視が矩形の表面および裏面を有する複数の配線基板部を縦横に隣接して併有する製品領域と、上記と同じセラミックからなり、上記製品領域の周囲に位置する平面視が矩形枠状の表面および裏面を有する耳部と、隣接する上記配線基板部同士の境界、および上記製品領域と耳部との境界に沿って、表面および裏面の少なくとも一方に平面視が格子状に形成された分割溝と、を備えた多数個取り配線基板の製造方法であって、グリーンシートにおける上記耳部の表面上および裏面上の少なくとも一方にレーザ光を遮蔽する遮蔽板を配置する工程と、上記グリーンシートの製品領域および遮蔽板にレーザ光を照射しつつ走査することで、上記製品領域に分割溝を形成する工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、前記グリーンシートの表面および裏面の少なくとも一方における前記耳部上に配置された遮蔽板および製品領域に対して、前記レーザ光が照射されつつ走査される。その結果、上記遮蔽板が配置された耳部を除く、製品領域内の配線基板部同士の境界、および該製品領域と耳部との境界に沿って、平面視が格子状の分割溝が形成されると共に、上記遮蔽板によりレーザ光から遮られた耳部には、分割溝が形成されなくなる。従って、耳部に分割溝の端部(一部)が形成されないか、極く僅かにのみ形成されるに留まるため、グリーンシートの搬送時における破損や、焼成工程における割れなどの不具合を防止できるので、セラミック製の多数個取り配線基板を効率良く製造することが可能となる。
【0008】
尚、前記グリーンシートは、追って前記セラミックシートとなるものであり、該グリーンシートには、大判で且つ単層のグリーンシート、あるいは大判で且つ複数のグリーンシートを積層したグリーンシート積層体が含まれる。
また、前記遮蔽板には、平面視が矩形枠状で単数または複数の開口部(貫通孔)を有する形態のほか、一つの製品領域の周囲を複数の遮蔽板で囲む複数組の平板の組み合わせも含む。上記複数の開口部は、互いに隣接して開設されている。
更に、前記レーザ光には、YAGレーザ、YVO4レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、あるいは半導体レーザなどが含まれる。
また、前記遮蔽板を配置する工程の前には、単数または複数のグリーンシートに貫通孔を明け、該貫通孔にビア導体を充填して形成し、上記グリーンシートの表面や裏面に導体層を形成する工程、更には複数のグリーンシートを積層してグリーンシート積層体を形成する工程が行われている。
更に、前記分割溝を形成する工程は、前記レーザ光を照射して分割溝を形成した後において、前記遮蔽板を除去する後工程を含んでいる。
加えて、前記分割溝を形成する工程の後には、分割溝が形成されたグリーンシートやグリーンシート積層体を焼成する工程と、得られたセラミック積層体などにおける配線基板部ごとの導体部分に金属メッキを施す工程と、が行われる。
【0009】
また、本発明には、前記遮蔽板を配置する工程において、かかる遮蔽板における前記製品領域側の端部と、該製品領域および耳部の境界に形成される分割溝との距離が、0.5mm以下となるように上記遮蔽板が配置される、多数個取り配線基板の製造方法(請求項2)も含まれる。
これによれば、上記分割溝の外側の位置でもレーザ光が遮られないので、該遮蔽板における製品領域側の端部と平行で且つ該端部に最接近する分割溝についても確実に形成することができる。しかも、製品領域の外側に位置する耳部の領域に進入する分割溝の各端部の長さは、平面視において0.5mm以下に抑制される。その結果、前記破損や割れなどの不具合を確実に防止することができる。
【0010】
尚、前記遮蔽板における製品領域側の端部とは、耳部の表面上などに配置された遮蔽板のうち、グリーンシートの製品領域に最接近する当該遮蔽板の辺、あるいは開口部を構成する何れかの内辺を指す。該遮蔽板には、口字形状が含まれる。
また、前記距離を0.5mm以下としたのは、耳部の領域内に進入する分割溝の長さが0.5mmを超えると、係る部位における耳部の強度が低下することに起因して、前記破損や割れおそれが生じ得るためである。
更に、前記0.5mm以下の距離は、遮蔽板における製品領域側の端部と、分割溝が形成される分割予定位置(分割溝の中心線)との間の距離としても良い。
加えて、前記距離の下限値には、0.2mmが推奨される。
【0011】
更に、本発明には、前記遮蔽板は、金属あるいはセラミックからなる、多数個取り配線基板の製造方法(請求項3)も含まれる。
これによれば、金属板を所要形状に打ち抜き加工するか、複数の所要形状にしたグリーンシートを積層して焼成した遮蔽板を、前記グリーンシートの耳部上に配置することで、該遮蔽板とグリーンシートの製品領域との双方に対して、連続してレーザ光を照射しつつ走査する前記分割溝の形成工程が行える。その結果、レーザ光が直に照射されるグリーンシートの製品領域に対して分割溝を形成できる共に、上記遮蔽板によりレーザ光から遮蔽された耳部では、該遮蔽板から外れた当該耳部の製品領域側に沿った部分のみに、長さ0.5mm以下の分割溝の端部だけを進入するに留められる。従って、前記破損や割れを確実に防止できる。
【0012】
尚、前記遮蔽板の厚みは、1.5mm以上(例えば、2.0mm)が推奨される。
また、前記遮蔽板を構成する金属には、使用するレーザの波長において吸収率の低い材料を選択する必要がある。例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)、ニッケル(ニッケル合金を含む)、および黄銅(銅−亜鉛合金、いわゆる真鍮)が推奨される。
更に、前記遮蔽板を構成するセラミックには、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどの高温焼成セラミックが推奨される。
【0013】
加えて、本発明には、前記遮蔽板は、格子枠状である、多数個取り配線基板の製造方法(請求項4)も含まれる。
これによれば、前記グリーンシートにおいて、複数の配線基板部を縦横に隣接して併設した平面視が矩形(正方形または長方形)である複数の製品領域を、該矩形と相似形で且つ該製品領域を囲み得る複数の開口部を有する遮蔽板を、上記グリーンシートの表面上などに配置することで、複数の製品領域に対して、前記分割溝を形成する工程を連続して行えるので、一層生産効率を向上せられる。
尚、前記格子枠状には、口の字形、日の字形、目の字形、あるいは田の字形などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の対象となるグリーンシート積層体を示す平面図。
【図2】上記グリーンシート積層体の耳部に遮蔽板を配置した工程を示す平面図。
【図3】図2中のX−X線矢視に沿った分割溝の形成工程を含む垂直断面図。
【図4】図3中の一部で且つ図3に続く分割溝の形成工程を示す拡大断面図。
【図5】図4に続く分割溝の形成工程を示す拡大平面図。
【図6】図5に続く分割溝の形成工程を示す図3と同様な垂直断面図。
【図7】図6中における分割溝の形成工程を示す拡大断面図。
【図8】図7中における分割溝の形成工程を示す拡大平面図。
【図9】図6〜図8に続く分割溝の形成工程を示す図6と同様な垂直断面図。
【図10】分割溝が形成されたグリーンシート積層体を示す垂直断面図。
【図11】分割溝が形成された上記グリーンシート積層体を示す平面図。
【図12】異なる形態の遮蔽板を示す平面図。
【図13】更に異なる形態の遮蔽板を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の対象となるグリーンシート積層体gsを示す平面図である。
予め、アルミナ粉末に樹脂バインダおよび溶剤などを適量ずつ配合してセラミックスラリとし、該セラミックスラリをドクターブレード法によってシート化して、複数のグリーンシート(図示せず)を製作した。
次に、上記複数のグリーンシートごとの所定の位置を打ち抜き、得られた貫通孔にWまたはMo粉末を含む導電性ペーストを充填して未焼成のビア導体(図示せず)を形成すると共に、上記複数のグリーンシートごとの表面および裏面の少なくとも一方における所定の位置に上記同様の導電性ペーストを印刷により配設して、未焼成の内部配線層あるいは表面配線層(何れも図示せず)を形成した。
次いで、上記ビア導体および配線層を有する複数のグリーンシートを、積層し且つ厚み方向に沿って圧着した。
【0016】
その結果、図1に示すように、平面視が正方形(矩形)の表面2および裏面3(図示せず)を有する複数の配線基板部1を縦横に隣接して併有する製品領域4と、該製品領域4の周囲に位置する平面視が矩形枠状の表面2および裏面3(図示せず)を有する耳部5と、上記配線基板部1,1間の境界および製品領域4と耳部5との境界となり平面視が格子状の分割予定面(位置)6と、を備えており、厚みが0.6mmのグリーンシート積層体gsが得られた。
尚、図1中で破線で示す分割予定面6は、グリーンシート積層体gsの厚み方向に沿って配置した仮想線である。また、各分割予定面6の両端には、製品領域4と耳部5との境界に沿った分割予定面6と直交し且つ耳部5の領域内に長さ0.5mm以下で進入する分割予定面6の端部7が延在している。更に、表面2および裏面3は、前記グリーンシート積層体gsの配線基板部1、製品領域4、および耳部5について、共通して用いるものとする。
【0017】
更に、図2に示すように、グリーンシート積層体gsにおける耳部5の表面2上に、平面視が矩形枠状の遮蔽板10を配置した。該遮蔽板10は、板厚が約2mmのアルミニウム合金板あるいはニッケル合金板からなり、平面視が正方形の枠本体11と、その内側に開設された平面視が正方形の開口部13とを備えている。かかる開口部13は、グリーンシート積層体gsの製品領域4を包囲する四つの辺12を有し、製品領域4と耳部5との境界に位置する分割予定面6と、各辺12との間には、0.5mm以下の距離sの隙間(幅)が位置するように設定されている。即ち、上記開口部13の各辺12は、当該遮蔽板10における製品領域4側の端部である。
尚、遮蔽板10の枠本体11における外側の各辺は、図3の垂直断面図で示すように、グリーンシート積層体gsの各側面8と一致するようにしたが、かかる側面8よりも外側に位置するようにしても良い。
【0018】
次に、図3中の左側に示すように、遮蔽板10と該遮蔽板10の開口部13内に露出するグリーンシート積層体gsの製品領域4の表面2に対して、これらの厚み方向に沿ってレーザ光Lを照射しつつ連続して、右側に向かって走査した。
上記レーザ光Lは、UV−YAG、YVO4、あるいは半導体などの発光源から照射され、集光レンズ9によって焦点Fをグリーンシート積層体gsの表面2付近に保ちつつ、一定の条件で照射された。例えば、YAGレーザ光Lを用いた場合、一定の送り速度(約100mm/秒)とし、形成すべき分割溝14の深さが約200μmで且つ開口部の幅が約50μmの場合、上記レーザ光Lの照射条件は、周波数:約30〜100Hz、繰り返し回数:2〜5回とした。尚、図3中やこれ以降の図中における白抜きの矢印は、上記レーザ光Lの走査方向を示す。
【0019】
図3に続く図4の部分拡大断面図で示すように、遮蔽板10の枠本体11を幅方向に沿って横切ったレーザ光Lは、該遮蔽板10の開口部13を形成する一つの辺12を通過した直後から、グリーンシート積層体gsの表面2に対して照射された。その結果、該レーザ光Lの放射エネルギによって、遮蔽板10の上記辺12に隣接するグリーンシート積層体gsの表面2には、球状面16を含む凹部17が、上記辺12に最接近する平行な分割予定面6と直交状にして形成された。上記球状面16は、遮蔽板10に遮られていたレーザ光Lが、グリーンシート積層体gsの表面2に対する放射エネルギを急激に増加したことにより形成されたものと推測される。
引き続いて、前記条件でレーザ光Lをグリーンシート積層体gsの製品領域4における中央側に向かって照射しつつ走査した。その結果、図4に続く図5の部分拡大平面図で示すように、遮蔽板10の開口部13における前記辺12と直角な方向に沿って、断面がV字形状で且つ直線状の底部15と、上記辺12に隣接する始端に球状面16とを有する分割溝14が形成された。
【0020】
更に、図6に示すように、前記条件でレーザ光Lをグリーンシート積層体gsの製品領域4を横切らせ、且つ遮蔽板10における反対側の枠本体11に照射しつつ走査した。その結果、遮蔽板10の開口部13において対向する一対の辺(端部)12,12間には、図6中で左右に4個が隣接する配線基板部1の表面2側を貫通する断面がV字形状で且つ直線状の底部15と、その両端にほぼ対称に位置する左右一対の球状面16とからなる分割溝14が形成された。
図6中の右側部分を拡大した図7の部分拡大断面と図8の部分拡大平面図とで示すように、製品領域4内で隣接する4個の配線基板部1の表面2に沿って、断面V字形状の分割溝14を形成したレーザ光Lは、遮蔽板10における右側の枠本体11に遮られると同時に、その放射エネルギが急激に減少した結果、開口部13における右側の辺(端部)12に隣接する位置にも球状面16が形成された。
【0021】
前記分割溝14の始端および終端に位置する球状面16は、遮蔽板10の各辺(端部)12から0.5mm以下の距離s内に位置していた。換言すると、グリーンシート積層体gsの製品領域4に形成された分割溝14は、底部15が一定の深さである断面V字状の部分のみからなるものであった。
尚、前記図3乃至図8で示したように、グリーンシート積層体gsの左右方向に沿った全ての分割予定面6に沿って、前記同様にレーザ光Lを照射しつつ走査することによって、各分割予定面6に沿って前記同様の分割溝14を形成した。
次に、図9に示すように、図示の前後方向に沿った各分割予定面6に沿って、前記と同様にしてレーザ光Lを順次または同時平行的に照射しつつ走査した。その後、上記遮蔽板10をグリーンシート積層体gsから除去した。
【0022】
その結果、図10の垂直断面図および図11の平面図に示すように、グリーンシート積層体gsの表面2において、製品領域4を構成する複数の配線基板部1ごとの四辺と、該製品領域4と耳部5との境界とに沿って、全体の平面視が格子状を呈し、耳部5の領域内には両端の球状面16のみが長さ0.5mm以下で進入しており、且つ縦横に直交する複数の分割溝14が格子状に形成された。
尚、図9,10において、遮蔽板10における製品領域4側の辺(端部)12と、製品領域4と耳部5との境界に沿って形成された分割溝14における外側の縁との間における距離(s)は、約0.50mmであった。
更に、分割溝14が表面2に形成された前記グリーンシート積層体gsは、アルミナの焼成温度で焼成する工程と、得られたセラミック積層体における配線基板部1ごとの導体部分(図示せず)にNiおよびAuなどの金属メッキを施す工程と、を順次施された。その結果、セラミックからなり、複数の配線基板部1を縦横に隣接して併有する多数個取り配線基板を得ることができた。
【0023】
前記分割溝14は、耳部5内において殆ど形成されていなかったので、以上の分割溝14の形成工程後における後工程ごとにおいて、焼成前のグリーンシート積層体gsが、破損や崩壊したりせず、焼成工程やその後におけるセラミック製の多数個取り配線基板が割れたりする不具合は、全く生じなかった。
以上のような多数個取り配線基板の製造方法によれば、前記遮蔽板10が配置された耳部5を除く、製品領域4内の配線基板部1,1間の境界、および該製品領域4と耳部5との境界に沿って、平面視が格子状の分割溝14が確実に形成できると共に、上記遮蔽板10によりレーザ光Lから遮られた耳部5には、分割溝14が形成されなかった。従って、耳部5に分割溝14の端部16のみが極く短い長さで形成されるに留まったので、グリーンシート積層体gsの搬送時における不用意な破損や、焼成時やその後における割れなどの不具合を確実に防止することができた。
尚、前記分割溝14は、グリーンシート積層体gsの裏面3側にも形成しても良い。
【0024】
図12は、平面視が長方形を呈するグリーンシート積層体gsの図示しない耳部5における表面2上に配置した異なる形態の遮蔽板10aを示す平面図である。
該遮蔽板10aも、前記同様のアルミニウム合金板などからなり、図12に示すように、左右一対の枠本体11と、各枠本体11の内側に位置する開口部13とを有し、隣接する開口部13,13間には、上記一対の枠本体11に共通する中桟11aが架設されており、平面視で全体が日の字(格子枠)形状を呈する。各開口部13は、上記グリーンシート積層体gsの各製品領域4を包囲する四つ辺12を有し、該製品領域4と耳部5との境界に位置する分割予定面6と、各辺12との間には、0.5mm以下の距離sが位置している。該距離sの耳部5には、各分割予定面6の両側の端部7が、0.5mm以下の長さで進入している。
以上のような遮蔽板10aによれば、前記遮蔽板10による効果に加えて、図12における左右方向に沿った各分割予定面6に沿って前記レーザ光Lを照射しつつ走査するに際し、左右一対の開口部13内の各分割予定面6に沿って連続して、上記前記レーザ光Lの走査を行うことができる。従って、溝加工の位置合わせ回数を低減して、二つの製品領域4を併有する比較的広めの面積の表面2および裏面3を有するグリーンシート積層体gsに対する前記分割溝14を形成する工程に用いるには、最適である。
【0025】
図13は、平面視が正方形を呈するグリーンシート積層体gsの図示しない耳部5における表面2上に配置した更に異なる形態の遮蔽板10bを示す平面図である。該遮蔽板10bも、前記同様のアルミニウム合金板などからなり、図13に示すように、左右および上下一対で且つ合計四つの枠本体11と、各枠本体11の内側に位置する前記同様の開口部13とを有し、隣接する開口部13,13間には、上記四つの枠本体11に共通する十字形の中桟11bが架設されており、平面視で全体が田の字(格子枠)形状を呈している。
以上のような遮蔽板10bによれば、前記遮蔽板10による効果に加え、図13の左右と上下方向に沿った各分割予定面6に沿って前記レーザ光Lを照射しつつ走査するに際し、左右一対と上下一対の開口部13内に露出する各分割予定面6に沿って連続して、上記前記レーザ光Lの走査を行える。従って、溝加工の位置合わせ回数を低減して、四つの製品領域4を併有する比較的大面積の表・裏面2,3を有するグリーンシート積層体gsに対する前記分割溝14を形成する工程に最適である。
【0026】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の対象には、前記同様の製品領域4および耳部5を表面2および裏面3に有する単層のグリーンシートも含まれる。
また、上記グリーンシートや前記グリーンシート積層体gsには、追って焼成した際に、ムライトや窒化アルミニウムなどの高温焼成セラミックや、低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミックとなる材料からなるものでも良い。
更に、前記配線基板部1は、平面視が長方形を呈する形態でも良く、これに伴って、製品領域4全体が平面視で長方形を呈する形態としても良い。あるいは、平面視が正方形である複数の前記配線基板部1を併有する製品領域4が平面視で長方形を呈する形態としても良い。
また、前記分割溝14は、グリーンシート積層体gsの裏面3側に対しても、表面2側の分割溝14と対称となるように形成しても良い。
加えて、前記配線基板部1は、その表面2に電子部品を実装するためのキャビティを有する形態であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、複数の配線基板部を併設した製品領域に対して格子状に形成する分割溝によって破損したり、割れなどの不具合が生じにくい多数個取り配線基板を効率良く製造し且つ提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1…………………………配線基板部
2…………………………表面
3…………………………裏面
4…………………………製品領域
5…………………………耳部
6…………………………分割予定面(位置)
10,10a,10b…遮蔽板
12………………………開口部の辺(遮蔽板における製品流域側の端部)
14………………………分割溝
gs………………………グリーンシート積層体
s…………………………距離
L…………………………レーザ光
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックからなり、複数の配線基板部を縦横に隣接して併有する多数個取り配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セラミック製の配線基板は、セラミック製の多数個取り配線基板をその表面や裏面に設けた格子状の分割溝に沿って個々の配線基板に分割することで製作されている。そのため、グリーンシート積層体における製品領域内の切断予定位置に沿ってレーザ光を照射することで、所要断面形状の分割溝を有する分割用セラミック基板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された前記製造方法のレーザ光の照射による溝入れをグリーンシート積層体に施した場合、平面視で製品領域において格子状に形成された複数の分割溝の各端部が、かかる製品領域の外周側に位置する耳部の領域内にまで達してしまう場合がある。そのため、上記グリーンシート積層体の搬送時において該グリーンシート積層体が破損したり、焼成工程において焼成されたセラミック積層体が割れるなどの不具合を生じ得る、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276386号公報(第1〜7頁、図1〜4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、複数の配線基板部を併設した製品領域に対して格子状に形成する分割溝により破損したり、割れなどの不具合が生じにくい多数個取り配線基板の製造方法を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、多数個取り取り配線基板となるグリーンシートの製品領域に格子状の分割溝を形成し、且つ該製品領域を囲む耳部には上記分割溝の各端部が最小限で進入する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明による多数個取り配線基板の製造方法(請求項1)は、セラミックからなり、且つ平面視が矩形の表面および裏面を有する複数の配線基板部を縦横に隣接して併有する製品領域と、上記と同じセラミックからなり、上記製品領域の周囲に位置する平面視が矩形枠状の表面および裏面を有する耳部と、隣接する上記配線基板部同士の境界、および上記製品領域と耳部との境界に沿って、表面および裏面の少なくとも一方に平面視が格子状に形成された分割溝と、を備えた多数個取り配線基板の製造方法であって、グリーンシートにおける上記耳部の表面上および裏面上の少なくとも一方にレーザ光を遮蔽する遮蔽板を配置する工程と、上記グリーンシートの製品領域および遮蔽板にレーザ光を照射しつつ走査することで、上記製品領域に分割溝を形成する工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、前記グリーンシートの表面および裏面の少なくとも一方における前記耳部上に配置された遮蔽板および製品領域に対して、前記レーザ光が照射されつつ走査される。その結果、上記遮蔽板が配置された耳部を除く、製品領域内の配線基板部同士の境界、および該製品領域と耳部との境界に沿って、平面視が格子状の分割溝が形成されると共に、上記遮蔽板によりレーザ光から遮られた耳部には、分割溝が形成されなくなる。従って、耳部に分割溝の端部(一部)が形成されないか、極く僅かにのみ形成されるに留まるため、グリーンシートの搬送時における破損や、焼成工程における割れなどの不具合を防止できるので、セラミック製の多数個取り配線基板を効率良く製造することが可能となる。
【0008】
尚、前記グリーンシートは、追って前記セラミックシートとなるものであり、該グリーンシートには、大判で且つ単層のグリーンシート、あるいは大判で且つ複数のグリーンシートを積層したグリーンシート積層体が含まれる。
また、前記遮蔽板には、平面視が矩形枠状で単数または複数の開口部(貫通孔)を有する形態のほか、一つの製品領域の周囲を複数の遮蔽板で囲む複数組の平板の組み合わせも含む。上記複数の開口部は、互いに隣接して開設されている。
更に、前記レーザ光には、YAGレーザ、YVO4レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、あるいは半導体レーザなどが含まれる。
また、前記遮蔽板を配置する工程の前には、単数または複数のグリーンシートに貫通孔を明け、該貫通孔にビア導体を充填して形成し、上記グリーンシートの表面や裏面に導体層を形成する工程、更には複数のグリーンシートを積層してグリーンシート積層体を形成する工程が行われている。
更に、前記分割溝を形成する工程は、前記レーザ光を照射して分割溝を形成した後において、前記遮蔽板を除去する後工程を含んでいる。
加えて、前記分割溝を形成する工程の後には、分割溝が形成されたグリーンシートやグリーンシート積層体を焼成する工程と、得られたセラミック積層体などにおける配線基板部ごとの導体部分に金属メッキを施す工程と、が行われる。
【0009】
また、本発明には、前記遮蔽板を配置する工程において、かかる遮蔽板における前記製品領域側の端部と、該製品領域および耳部の境界に形成される分割溝との距離が、0.5mm以下となるように上記遮蔽板が配置される、多数個取り配線基板の製造方法(請求項2)も含まれる。
これによれば、上記分割溝の外側の位置でもレーザ光が遮られないので、該遮蔽板における製品領域側の端部と平行で且つ該端部に最接近する分割溝についても確実に形成することができる。しかも、製品領域の外側に位置する耳部の領域に進入する分割溝の各端部の長さは、平面視において0.5mm以下に抑制される。その結果、前記破損や割れなどの不具合を確実に防止することができる。
【0010】
尚、前記遮蔽板における製品領域側の端部とは、耳部の表面上などに配置された遮蔽板のうち、グリーンシートの製品領域に最接近する当該遮蔽板の辺、あるいは開口部を構成する何れかの内辺を指す。該遮蔽板には、口字形状が含まれる。
また、前記距離を0.5mm以下としたのは、耳部の領域内に進入する分割溝の長さが0.5mmを超えると、係る部位における耳部の強度が低下することに起因して、前記破損や割れおそれが生じ得るためである。
更に、前記0.5mm以下の距離は、遮蔽板における製品領域側の端部と、分割溝が形成される分割予定位置(分割溝の中心線)との間の距離としても良い。
加えて、前記距離の下限値には、0.2mmが推奨される。
【0011】
更に、本発明には、前記遮蔽板は、金属あるいはセラミックからなる、多数個取り配線基板の製造方法(請求項3)も含まれる。
これによれば、金属板を所要形状に打ち抜き加工するか、複数の所要形状にしたグリーンシートを積層して焼成した遮蔽板を、前記グリーンシートの耳部上に配置することで、該遮蔽板とグリーンシートの製品領域との双方に対して、連続してレーザ光を照射しつつ走査する前記分割溝の形成工程が行える。その結果、レーザ光が直に照射されるグリーンシートの製品領域に対して分割溝を形成できる共に、上記遮蔽板によりレーザ光から遮蔽された耳部では、該遮蔽板から外れた当該耳部の製品領域側に沿った部分のみに、長さ0.5mm以下の分割溝の端部だけを進入するに留められる。従って、前記破損や割れを確実に防止できる。
【0012】
尚、前記遮蔽板の厚みは、1.5mm以上(例えば、2.0mm)が推奨される。
また、前記遮蔽板を構成する金属には、使用するレーザの波長において吸収率の低い材料を選択する必要がある。例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)、ニッケル(ニッケル合金を含む)、および黄銅(銅−亜鉛合金、いわゆる真鍮)が推奨される。
更に、前記遮蔽板を構成するセラミックには、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどの高温焼成セラミックが推奨される。
【0013】
加えて、本発明には、前記遮蔽板は、格子枠状である、多数個取り配線基板の製造方法(請求項4)も含まれる。
これによれば、前記グリーンシートにおいて、複数の配線基板部を縦横に隣接して併設した平面視が矩形(正方形または長方形)である複数の製品領域を、該矩形と相似形で且つ該製品領域を囲み得る複数の開口部を有する遮蔽板を、上記グリーンシートの表面上などに配置することで、複数の製品領域に対して、前記分割溝を形成する工程を連続して行えるので、一層生産効率を向上せられる。
尚、前記格子枠状には、口の字形、日の字形、目の字形、あるいは田の字形などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の対象となるグリーンシート積層体を示す平面図。
【図2】上記グリーンシート積層体の耳部に遮蔽板を配置した工程を示す平面図。
【図3】図2中のX−X線矢視に沿った分割溝の形成工程を含む垂直断面図。
【図4】図3中の一部で且つ図3に続く分割溝の形成工程を示す拡大断面図。
【図5】図4に続く分割溝の形成工程を示す拡大平面図。
【図6】図5に続く分割溝の形成工程を示す図3と同様な垂直断面図。
【図7】図6中における分割溝の形成工程を示す拡大断面図。
【図8】図7中における分割溝の形成工程を示す拡大平面図。
【図9】図6〜図8に続く分割溝の形成工程を示す図6と同様な垂直断面図。
【図10】分割溝が形成されたグリーンシート積層体を示す垂直断面図。
【図11】分割溝が形成された上記グリーンシート積層体を示す平面図。
【図12】異なる形態の遮蔽板を示す平面図。
【図13】更に異なる形態の遮蔽板を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の対象となるグリーンシート積層体gsを示す平面図である。
予め、アルミナ粉末に樹脂バインダおよび溶剤などを適量ずつ配合してセラミックスラリとし、該セラミックスラリをドクターブレード法によってシート化して、複数のグリーンシート(図示せず)を製作した。
次に、上記複数のグリーンシートごとの所定の位置を打ち抜き、得られた貫通孔にWまたはMo粉末を含む導電性ペーストを充填して未焼成のビア導体(図示せず)を形成すると共に、上記複数のグリーンシートごとの表面および裏面の少なくとも一方における所定の位置に上記同様の導電性ペーストを印刷により配設して、未焼成の内部配線層あるいは表面配線層(何れも図示せず)を形成した。
次いで、上記ビア導体および配線層を有する複数のグリーンシートを、積層し且つ厚み方向に沿って圧着した。
【0016】
その結果、図1に示すように、平面視が正方形(矩形)の表面2および裏面3(図示せず)を有する複数の配線基板部1を縦横に隣接して併有する製品領域4と、該製品領域4の周囲に位置する平面視が矩形枠状の表面2および裏面3(図示せず)を有する耳部5と、上記配線基板部1,1間の境界および製品領域4と耳部5との境界となり平面視が格子状の分割予定面(位置)6と、を備えており、厚みが0.6mmのグリーンシート積層体gsが得られた。
尚、図1中で破線で示す分割予定面6は、グリーンシート積層体gsの厚み方向に沿って配置した仮想線である。また、各分割予定面6の両端には、製品領域4と耳部5との境界に沿った分割予定面6と直交し且つ耳部5の領域内に長さ0.5mm以下で進入する分割予定面6の端部7が延在している。更に、表面2および裏面3は、前記グリーンシート積層体gsの配線基板部1、製品領域4、および耳部5について、共通して用いるものとする。
【0017】
更に、図2に示すように、グリーンシート積層体gsにおける耳部5の表面2上に、平面視が矩形枠状の遮蔽板10を配置した。該遮蔽板10は、板厚が約2mmのアルミニウム合金板あるいはニッケル合金板からなり、平面視が正方形の枠本体11と、その内側に開設された平面視が正方形の開口部13とを備えている。かかる開口部13は、グリーンシート積層体gsの製品領域4を包囲する四つの辺12を有し、製品領域4と耳部5との境界に位置する分割予定面6と、各辺12との間には、0.5mm以下の距離sの隙間(幅)が位置するように設定されている。即ち、上記開口部13の各辺12は、当該遮蔽板10における製品領域4側の端部である。
尚、遮蔽板10の枠本体11における外側の各辺は、図3の垂直断面図で示すように、グリーンシート積層体gsの各側面8と一致するようにしたが、かかる側面8よりも外側に位置するようにしても良い。
【0018】
次に、図3中の左側に示すように、遮蔽板10と該遮蔽板10の開口部13内に露出するグリーンシート積層体gsの製品領域4の表面2に対して、これらの厚み方向に沿ってレーザ光Lを照射しつつ連続して、右側に向かって走査した。
上記レーザ光Lは、UV−YAG、YVO4、あるいは半導体などの発光源から照射され、集光レンズ9によって焦点Fをグリーンシート積層体gsの表面2付近に保ちつつ、一定の条件で照射された。例えば、YAGレーザ光Lを用いた場合、一定の送り速度(約100mm/秒)とし、形成すべき分割溝14の深さが約200μmで且つ開口部の幅が約50μmの場合、上記レーザ光Lの照射条件は、周波数:約30〜100Hz、繰り返し回数:2〜5回とした。尚、図3中やこれ以降の図中における白抜きの矢印は、上記レーザ光Lの走査方向を示す。
【0019】
図3に続く図4の部分拡大断面図で示すように、遮蔽板10の枠本体11を幅方向に沿って横切ったレーザ光Lは、該遮蔽板10の開口部13を形成する一つの辺12を通過した直後から、グリーンシート積層体gsの表面2に対して照射された。その結果、該レーザ光Lの放射エネルギによって、遮蔽板10の上記辺12に隣接するグリーンシート積層体gsの表面2には、球状面16を含む凹部17が、上記辺12に最接近する平行な分割予定面6と直交状にして形成された。上記球状面16は、遮蔽板10に遮られていたレーザ光Lが、グリーンシート積層体gsの表面2に対する放射エネルギを急激に増加したことにより形成されたものと推測される。
引き続いて、前記条件でレーザ光Lをグリーンシート積層体gsの製品領域4における中央側に向かって照射しつつ走査した。その結果、図4に続く図5の部分拡大平面図で示すように、遮蔽板10の開口部13における前記辺12と直角な方向に沿って、断面がV字形状で且つ直線状の底部15と、上記辺12に隣接する始端に球状面16とを有する分割溝14が形成された。
【0020】
更に、図6に示すように、前記条件でレーザ光Lをグリーンシート積層体gsの製品領域4を横切らせ、且つ遮蔽板10における反対側の枠本体11に照射しつつ走査した。その結果、遮蔽板10の開口部13において対向する一対の辺(端部)12,12間には、図6中で左右に4個が隣接する配線基板部1の表面2側を貫通する断面がV字形状で且つ直線状の底部15と、その両端にほぼ対称に位置する左右一対の球状面16とからなる分割溝14が形成された。
図6中の右側部分を拡大した図7の部分拡大断面と図8の部分拡大平面図とで示すように、製品領域4内で隣接する4個の配線基板部1の表面2に沿って、断面V字形状の分割溝14を形成したレーザ光Lは、遮蔽板10における右側の枠本体11に遮られると同時に、その放射エネルギが急激に減少した結果、開口部13における右側の辺(端部)12に隣接する位置にも球状面16が形成された。
【0021】
前記分割溝14の始端および終端に位置する球状面16は、遮蔽板10の各辺(端部)12から0.5mm以下の距離s内に位置していた。換言すると、グリーンシート積層体gsの製品領域4に形成された分割溝14は、底部15が一定の深さである断面V字状の部分のみからなるものであった。
尚、前記図3乃至図8で示したように、グリーンシート積層体gsの左右方向に沿った全ての分割予定面6に沿って、前記同様にレーザ光Lを照射しつつ走査することによって、各分割予定面6に沿って前記同様の分割溝14を形成した。
次に、図9に示すように、図示の前後方向に沿った各分割予定面6に沿って、前記と同様にしてレーザ光Lを順次または同時平行的に照射しつつ走査した。その後、上記遮蔽板10をグリーンシート積層体gsから除去した。
【0022】
その結果、図10の垂直断面図および図11の平面図に示すように、グリーンシート積層体gsの表面2において、製品領域4を構成する複数の配線基板部1ごとの四辺と、該製品領域4と耳部5との境界とに沿って、全体の平面視が格子状を呈し、耳部5の領域内には両端の球状面16のみが長さ0.5mm以下で進入しており、且つ縦横に直交する複数の分割溝14が格子状に形成された。
尚、図9,10において、遮蔽板10における製品領域4側の辺(端部)12と、製品領域4と耳部5との境界に沿って形成された分割溝14における外側の縁との間における距離(s)は、約0.50mmであった。
更に、分割溝14が表面2に形成された前記グリーンシート積層体gsは、アルミナの焼成温度で焼成する工程と、得られたセラミック積層体における配線基板部1ごとの導体部分(図示せず)にNiおよびAuなどの金属メッキを施す工程と、を順次施された。その結果、セラミックからなり、複数の配線基板部1を縦横に隣接して併有する多数個取り配線基板を得ることができた。
【0023】
前記分割溝14は、耳部5内において殆ど形成されていなかったので、以上の分割溝14の形成工程後における後工程ごとにおいて、焼成前のグリーンシート積層体gsが、破損や崩壊したりせず、焼成工程やその後におけるセラミック製の多数個取り配線基板が割れたりする不具合は、全く生じなかった。
以上のような多数個取り配線基板の製造方法によれば、前記遮蔽板10が配置された耳部5を除く、製品領域4内の配線基板部1,1間の境界、および該製品領域4と耳部5との境界に沿って、平面視が格子状の分割溝14が確実に形成できると共に、上記遮蔽板10によりレーザ光Lから遮られた耳部5には、分割溝14が形成されなかった。従って、耳部5に分割溝14の端部16のみが極く短い長さで形成されるに留まったので、グリーンシート積層体gsの搬送時における不用意な破損や、焼成時やその後における割れなどの不具合を確実に防止することができた。
尚、前記分割溝14は、グリーンシート積層体gsの裏面3側にも形成しても良い。
【0024】
図12は、平面視が長方形を呈するグリーンシート積層体gsの図示しない耳部5における表面2上に配置した異なる形態の遮蔽板10aを示す平面図である。
該遮蔽板10aも、前記同様のアルミニウム合金板などからなり、図12に示すように、左右一対の枠本体11と、各枠本体11の内側に位置する開口部13とを有し、隣接する開口部13,13間には、上記一対の枠本体11に共通する中桟11aが架設されており、平面視で全体が日の字(格子枠)形状を呈する。各開口部13は、上記グリーンシート積層体gsの各製品領域4を包囲する四つ辺12を有し、該製品領域4と耳部5との境界に位置する分割予定面6と、各辺12との間には、0.5mm以下の距離sが位置している。該距離sの耳部5には、各分割予定面6の両側の端部7が、0.5mm以下の長さで進入している。
以上のような遮蔽板10aによれば、前記遮蔽板10による効果に加えて、図12における左右方向に沿った各分割予定面6に沿って前記レーザ光Lを照射しつつ走査するに際し、左右一対の開口部13内の各分割予定面6に沿って連続して、上記前記レーザ光Lの走査を行うことができる。従って、溝加工の位置合わせ回数を低減して、二つの製品領域4を併有する比較的広めの面積の表面2および裏面3を有するグリーンシート積層体gsに対する前記分割溝14を形成する工程に用いるには、最適である。
【0025】
図13は、平面視が正方形を呈するグリーンシート積層体gsの図示しない耳部5における表面2上に配置した更に異なる形態の遮蔽板10bを示す平面図である。該遮蔽板10bも、前記同様のアルミニウム合金板などからなり、図13に示すように、左右および上下一対で且つ合計四つの枠本体11と、各枠本体11の内側に位置する前記同様の開口部13とを有し、隣接する開口部13,13間には、上記四つの枠本体11に共通する十字形の中桟11bが架設されており、平面視で全体が田の字(格子枠)形状を呈している。
以上のような遮蔽板10bによれば、前記遮蔽板10による効果に加え、図13の左右と上下方向に沿った各分割予定面6に沿って前記レーザ光Lを照射しつつ走査するに際し、左右一対と上下一対の開口部13内に露出する各分割予定面6に沿って連続して、上記前記レーザ光Lの走査を行える。従って、溝加工の位置合わせ回数を低減して、四つの製品領域4を併有する比較的大面積の表・裏面2,3を有するグリーンシート積層体gsに対する前記分割溝14を形成する工程に最適である。
【0026】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の対象には、前記同様の製品領域4および耳部5を表面2および裏面3に有する単層のグリーンシートも含まれる。
また、上記グリーンシートや前記グリーンシート積層体gsには、追って焼成した際に、ムライトや窒化アルミニウムなどの高温焼成セラミックや、低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミックとなる材料からなるものでも良い。
更に、前記配線基板部1は、平面視が長方形を呈する形態でも良く、これに伴って、製品領域4全体が平面視で長方形を呈する形態としても良い。あるいは、平面視が正方形である複数の前記配線基板部1を併有する製品領域4が平面視で長方形を呈する形態としても良い。
また、前記分割溝14は、グリーンシート積層体gsの裏面3側に対しても、表面2側の分割溝14と対称となるように形成しても良い。
加えて、前記配線基板部1は、その表面2に電子部品を実装するためのキャビティを有する形態であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、複数の配線基板部を併設した製品領域に対して格子状に形成する分割溝によって破損したり、割れなどの不具合が生じにくい多数個取り配線基板を効率良く製造し且つ提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1…………………………配線基板部
2…………………………表面
3…………………………裏面
4…………………………製品領域
5…………………………耳部
6…………………………分割予定面(位置)
10,10a,10b…遮蔽板
12………………………開口部の辺(遮蔽板における製品流域側の端部)
14………………………分割溝
gs………………………グリーンシート積層体
s…………………………距離
L…………………………レーザ光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックからなり、且つ平面視が矩形の表面および裏面を有する複数の配線基板部を縦横に隣接して併有する製品領域と、
上記と同じセラミックからなり、上記製品領域の周囲に位置する平面視が矩形枠状の表面および裏面を有する耳部と、
隣接する上記配線基板部同士の境界、および上記製品領域と耳部との境界に沿って、表面および裏面の少なくとも一方に平面視が格子状に形成された分割溝と、を備えた多数個取り配線基板の製造方法であって、
グリーンシートにおける上記耳部の表面上および裏面上の少なくとも一方にレーザ光を遮蔽する遮蔽板を配置する工程と、
上記グリーンシートの製品領域および遮蔽板にレーザ光を照射しつつ走査することで、上記製品領域に分割溝を形成する工程と、を含む、
ことを特徴とする多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記遮蔽板を配置する工程において、かかる遮蔽板における前記製品領域側の端部と、該製品領域および耳部の境界に形成される分割溝との距離が、0.5mm以下となるように上記遮蔽板が配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記遮蔽板は、金属あるいはセラミックからなる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記遮蔽板は、格子枠状である、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項1】
セラミックからなり、且つ平面視が矩形の表面および裏面を有する複数の配線基板部を縦横に隣接して併有する製品領域と、
上記と同じセラミックからなり、上記製品領域の周囲に位置する平面視が矩形枠状の表面および裏面を有する耳部と、
隣接する上記配線基板部同士の境界、および上記製品領域と耳部との境界に沿って、表面および裏面の少なくとも一方に平面視が格子状に形成された分割溝と、を備えた多数個取り配線基板の製造方法であって、
グリーンシートにおける上記耳部の表面上および裏面上の少なくとも一方にレーザ光を遮蔽する遮蔽板を配置する工程と、
上記グリーンシートの製品領域および遮蔽板にレーザ光を照射しつつ走査することで、上記製品領域に分割溝を形成する工程と、を含む、
ことを特徴とする多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記遮蔽板を配置する工程において、かかる遮蔽板における前記製品領域側の端部と、該製品領域および耳部の境界に形成される分割溝との距離が、0.5mm以下となるように上記遮蔽板が配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記遮蔽板は、金属あるいはセラミックからなる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記遮蔽板は、格子枠状である、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−243883(P2012−243883A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110943(P2011−110943)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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