説明

多数個取り配線基板

【課題】配線基板領域ごとに、電子部品の通電状態を個別に確認できる多数個取り配線基板を提供する。
【解決手段】中央部に複数の配線基板領域1aが縦横に配置され、外周部にダミー領域1bが配置されて、複数の絶縁層が積層された母基板1と、配線基板領域1aに設けられ、それぞれ一部が配線基板領域1aの表面に露出した第1の配線導体2および第2の配線導体3と、縦方向に配置された配線基板領域1aの複数の第1の配線導体2同士を接続する複数の第1のめっき用配線4と、横方向に配置された配線基板領域1aの複数の第2の配線導体5同士を接続し、第1のめっき用配線4とは異なる絶縁層に配置された複数の第2のめっき用配線5と、ダミー領域1b設けられ、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5に電気的に接続された共通導体とを備えた多数個取り配線基板である。各配線基板領域の電子部品への通電状態を個別に確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央部に電子部品を搭載するための配線基板領域が配置された多数個取り配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や水晶振動子等の電子部品を搭載するための配線基板は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成る絶縁基板に、タングステンやモリブデン等の金属粉末メタライズから成る配線導体が配設されることによって形成されている。そして、このような配線基板上に電子部品を搭載するとともに、電子部品の各電極をはんだやボンディングワイヤ等の電気的接続手段を介して対応する配線導体に電気的に接続することによって電子装置が作製される。
【0003】
このような配線基板は、近年の電子装置の薄型化および小型化の要求に伴い、その大きさが小さくなってきており、複数の配線基板を効率よく製作するために、中央部に複数の配線基板領域が縦横に配列された、いわゆる多数個取り配線基板とし、これを各配線基板領域の境界に沿って分割することによって作製するということが行なわれている。
【0004】
また、このような多数個取り配線基板においては、配線基板領域に上記の配線導体が形成されており、複数の配線基板領域を取り囲むように外周部にダミー領域が設けられている。このダミー領域には、各配線基板領域の配線導体に電気的に接続された、めっき用配線と枠状のめっき用導体が形成されている。この多数個取り配線基板をめっき浴に浸漬して、めっき用配線とめっき用導体とを介して各配線導体に電流を供給することで、電解めっき法によって配線導体の露出した表面にめっき層を被着させる。
【0005】
そして、各配線基板領域に電子部品を搭載して、電子部品と配線導体とを電気的に接続した後、個々の配線基板領域毎に分割することによって、複数の電子装置が同時に製作される(例えば、特許文献1を参照。)。
【0006】
また、各配線基板領域に電子部品として発光素子を搭載した発光装置用の多数個取り配線基板の場合、各配線基板領域に発光素子を搭載して樹脂等によって封止した後、各配線基板領域の境界に沿って分割する前に、配線導体に電流を流して、発光素子を発光させて個々の発光装置の状態を確認することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−165003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、多数個取り配線基板の配線導体に電流を流した際、めっき用配線および枠状のめっき用導体によってすべての配線基板領域の配線導体が電気的に接続されているため、例えば、各配線基板領域に電子部品として発光素子を搭載した場合であれば、搭載された複数の発光素子に電流が流れて、複数の発光素子が同時に発光してしまう。このため、各配線基板領域に搭載されたそれぞれの発光素子の光が弱くなり、分割して個々の発光装置とした際に所望の光を発する発光装置となっているかを確認することができなかった。また、発光素子の光を強くするために、多数個取り配線基板の配線導体に高電圧を加えたり、高電流を流したりすると、発光素子が破損してしまうことがあった。
【0009】
本発明は、上記の従来技術の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、それぞれの配線基板領域ごとに、電子部品の電気的な接続状態を個別に確認することができる多数個取り配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の多数個取り配線基板は、中央部に複数の配線基板領域が縦横の並びに複数配置されているとともに、外周部にダミー領域が配設されて、複数の絶縁層が積層された母基板と、前記配線基板領域に設けられた、それぞれ一部が前記配線基板領域の表面に露出した第1の配線導体および第2の配線導体と、縦方向に配置された前記配線基板領域の複数の前記第1の配線導体同士を接続する複数の第1のめっき用配線と、横方向に配置された前記配線基板領域の複数の前記第2の配線導体同士を接続する。前記第1のめっき用配線が配置された絶縁層とは異なる絶縁層に配置され、複数の第2のめっき用配線と、前記ダミー領域に設けられた、前記第1のめっき用配線および前記第2のめっき用配線に電気的に接続された共通導体と、を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多数個取り配線基板によれば、縦方向に配置された配線基板領域の複数の第1の配線導体同士を接続する複数の第1のめっき用配線と、横方向に配置された配線基板領域の複数の第2の配線導体同士を接続し、第1のめっき用配線が配置された絶縁層とは異なる絶縁層に配置された複数の第2のめっき用配線と、ダミー領域に設けられた、第1のめっき用配線および第2のめっき用配線に電気的に接続された共通導体とを備えていることから、縦方向に配置された第1のめっき用配線および横方向に配置された第2のめっき用配線と共通導体とをダミー領域で分離することによって、第1のめっき用配線と第2のめっき用配線とを電気的に独立させることができる。このように第1のめっき用配線と第2のめっき用配線とが電気的に独立した状態で、各配線基板領域に電子部品を搭載して、電子部品の電極と第1の配線導体および第2の配線導体とを電気的に接続した後、第1めっき用配線と第2のめっき用配線との間に電流を流せば、個々の配線基板領域の第1の配線導体と第2の配線導体との間に電流を流すことができるので、各配線基板領域の電子部品の状態を個別に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明の多数個取り基板の実施の形態の一例を示す上面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図2】(a)は図1における多数個取り配線基板の下面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図3】(a)は図1における多数個取り配線基板を、分離予定線に沿って分離した形態の一例を示す上面図であり、(b)は(a)の下面図である。
【図4】(a)は本発明の多数個取り基板の実施の形態の他の例を示す上面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図5】(a)は図4における多数個取り配線基板の下面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図6】(a)は本発明の多数個取り基板の実施の形態の他の例を示す上面図であり、(b)は(a)の下面図である。
【図7】(a)は本発明の多数個取り基板の実施の形態の他の例を示す上面図であり、(b)は(a)の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多数個取り配線基板について、添付の図面を参照しつつ説明する。図1から図7において、1は母基板、1aは配線基板領域、1bはダミー領域、2は第1の配線導体
、3は第2の配線導体、4は第1のめっき用配線、5は第2のめっき用配線、6はめっき用枠体、7はめっき用端子、8は分離予定線、9は分割予定線、10は電子部品、11は凹部、12は接触パッドである。
【0014】
図1,図2および図4〜図7に示す例の多数個取り配線基板は、母基板1の中央部に複数の配線基板領域1aが縦横の並びに配置され、母基板1の外周部にダミー領域1bが設けられている。中央部に配線基板領域1aが複数配列された配線母基板は、配線基板領域1aを個々に分割することによって複数の小型の配線基板(図示せず)を良好に作製することが可能な多数個取り配線基板となる。なお、図1,図2および図4〜図7に示す例においては、母基板1の中央部に、縦方向に5列および横方向に4列の計20個の配線基板領域1aが配列されている。各配線基板領域1aには、それぞれ第1の配線導体2と第2の配線導体3とが配置されている。第1の配線導体2は、縦方向に伸びるように配置された第1のめっき用配線4と電気的に接続され、第2の配線導体3は、横方向に伸びるように配置された第2のめっき用配線5と電気的に接続されている。第1のめっき用配線4と第2のめっき用配線5とは、ダミー領域1bに共通導体として設けられためっき用枠体6に電気的に接続されている。
【0015】
本発明の多数個取り配線基板は、中央部に複数の配線基板領域1aが縦横の並びに配置されているとともに、外周部にダミー領域1bが配設されて、複数の絶縁層が積層された母基板1と、配線基板領域1aに設けられた、それぞれ一部が配線基板領域1aの表面に露出した第1の配線導体2および第2の配線導体3と、縦方向に配置された配線基板領域1aの複数の第1の配線導体2同士を接続する複数の第1のめっき用配線4と、横方向に配置された配線基板領域1aの複数の第2の配線導体3同士を接続し、第1のめっき用配線4が配置された絶縁層とは異なる絶縁層に配置された複数の第2のめっき用配線5と、ダミー領域1bに設けられた、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5に電気的に接続された共通導体としてめっき用枠体6とを備えている。
【0016】
このような本発明の多数個取り配線基板によれば、上記構成としたことによって、縦方向に配置された第1のめっき用配線4および横方向に配置された第2のめっき用配線5と、めっき用枠体6とを、ダミー領域1bで分離することによって、第1のめっき用配線4と第2のめっき用配線5とを電気的に独立させることができる。このように第1のめっき用配線4と第2のめっき用配線5とが電気的に独立した状態で、各配線基板領域1aに電子部品10を搭載して、電子部品10の電極と第1の配線導体2および第2の配線導体3とを電気的に接続した後、第1めっき用配線4と第2のめっき用配線5との間に電流を流せば、個々の配線基板領域1aの第1の配線導体2と第2の配線導体3との間に電流を流すことができるので、各配線基板領域1aの電子部品10の状態を個別に確認することができる。例えば、図3に示す例のように、各配線基板領域1aに電子部品10として発光素子を搭載して、発光素子の電極と第1の配線導体2および第2の配線導体3とを電気的に接続した後、第1めっき用配線4と第2のめっき用配線5との間に電流を流せば、各配線基板領域1aの発光素子の発光状態を個別に確認することができる。
【0017】
母基板1は、セラミックスもしくは樹脂等の絶縁材料からなる絶縁層が複数積層されたものである。母基板1がセラミックスからなる場合は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,炭化珪素質焼結体,窒化珪素質焼結体,ガラスセラミックス等の材料を用いることができる。また、母基板1が樹脂からなる場合は、例えば、エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂,アクリル樹脂,フェノール樹脂,ポリエステル樹脂,四フッ化エチレン樹脂を始めとするフッ素系樹脂や、ガラスエポキシ樹脂のように、ガラス繊維から成る基材に樹脂を含浸させたものを材料として用いることができる。このような母基板1の中央部に、第1の配線導体2および第2の配線導体3が形成された、図1〜図7に示す配線基板領域1a(破線の分割予定線9で囲まれた領域)が縦
横の並びに配置されている。また、母基板1の外周部にダミー領域1bが設けられている。ダミー領域1bには、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5,めっき用枠体6,めっき用端子7が形成されている。またダミー領域1bは、母基板1となる後述の生成形体や多数個取り配線基板の加工時や搬送時の位置決め、固定等を行なうための領域としても用いることができる。
【0018】
また、母基板1は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等のセラミック原料粉末に適当な有機バインダーおよび溶剤,可塑剤,分散剤等を添加混合して得たセラミックスラリーを従来周知のドクターブレード法等のシート成形方法を採用してシート状に成形してセラミックグリーンシートを得、しかる後、セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じてこれを複数枚積層して、母基板1となる生成形体を作製して、約1500〜1800℃の温度で焼成することで製作される。
【0019】
また、母基板1は、樹脂から成る場合は、所定の母基板1の形状に成形できるような金型を用いて、トランスファーモールド法やインジェクションモールド法等によって成形することによって作製することができる。また、例えば、ガラスエポキシ樹脂のように、ガラス繊維から成る基材に樹脂を含浸させたものであってもよく、この場合は、ガラス繊維から成る基材にエポキシ樹脂の前駆体を含浸させ、このエポキシ樹脂前駆体を所定の温度で熱硬化させることによって作製することができる。
【0020】
また、母基板1の配線基板領域1aには、図4および図5に示す例のように、必要に応じて、電子部品10が搭載される凹部11を形成しておいてもよい。母基板1がセラミックスからなる場合であれば、凹部11は、母基板1用の複数のセラミックグリーンシートのいくつかに、凹部11用の貫通孔を金型やパンチングによる打ち抜き方法、レーザ加工方法等によって形成しておくことによって形成することができる。
【0021】
凹部11の形状としては、平面視で四角形状等の多角形状、円形状、楕円形状等の円形状等とすることができる。また、図4および図5に示す例のように、平面視で円形状とし、凹部11の内周面を開口側が大きくなるように傾斜させておくと、例えば、電子部品10として発光素子を搭載する場合であれば、発光素子の発光する光を凹部11の内周面で良好に反射させて外部に放出させることができる。
【0022】
第1の配線導体2および第2の配線導体3は、母基板1の一方主面に形成され、電子部品10の電極に接続される接続電極となるもの、母基板1の他方主面に形成され、外部回路基板の配線導体に接続するための外部端子電極となるもの、母基板1の内部に形成され、接続電極、外部端子電極を互いに接続する貫通導体等の内部配線導体となるものがある。
【0023】
第1の配線導体2および第2の配線導体3は、母基板1がセラミックスからなるときには、絶縁基板や凹部11の表面に配置される場合は、母基板1用のセラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷法等の印刷手段によってメタライズペーストを印刷塗布し、母基板1用の生成形体とともに焼成することによって形成する。また、第1の配線導体2および第2の配線導体3が、母基板1を貫通して上下に位置する第1の配線導体2同士や第2の配線導体3同士を電気的に接続する貫通導体を含む場合は、貫通導体となる部分を形成するためのメタライズペーストの印刷塗布に先立って母基板1用のセラミックグリーンシートに金型やパンチングによる打ち抜き方法またはレーザ加工等の加工方法によって貫通孔を形成し、この貫通孔にメタライズペーストをスクリーン印刷法等の印刷手段によって充填しておき、母基板1となる生成形体とともに焼成することによって形成する。メタライズペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段によって混
合および混練することで作製する。また、セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり、焼成後の母基板1との接合強度を高めたりするためにガラスやセラミックスの粉末を添加してもよい。貫通孔に充填するメタライズペーストは、有機バインダーや有機溶剤の種類や添加量によって、充填に適した、セラミックグリーンシートの表面に印刷するメタライズペーストよりも高い粘度に調整すればよい。
【0024】
また、第1の配線導体2および第2の配線導体3は、母基板1が樹脂から成る場合には、銅(Cu),金(Au),アルミニウム(Al),ニッケル(Ni),クロム(Cr),モリブデン(Mo),チタン(Ti)およびそれらの合金等の金属材料から成る。例えば、ガラスエポキシ樹脂から成る樹脂シート上に第1の配線導体2および第2の配線導体3の形状に加工した銅箔を転写し、銅箔が転写された樹脂シートを積層して接着剤で接着することによって形成する。内部導体のうち、樹脂シートを厚み方向に貫通する貫通導体は、導体ペーストの印刷やめっき法によって樹脂シートに形成した貫通孔の内面に被着形成するか、貫通孔を充填して形成すればよい。また、金属箔や金属柱を樹脂成形によって一体化させたり、絶縁基板にスパッタリング法,蒸着法等,めっき法等を用いて被着してもよい。
【0025】
第1のめっき用配線4は、縦方向に配置された配線基板領域1aの複数の第1の配線導体2同士を電気的に接続し、縦方向の最外部に位置する配線基板領域1aの第1の配線導体2とめっき用枠体6とを電気的に接続している。また、第2のめっき用配線5は、横方向に配置された配線基板領域1aの複数の第2の配線導体3同士を電気的に接続し、横方向の最外部に位置する配線基板領域1aの第2の配線導体3とめっき用枠体6とを電気的に接続している。
【0026】
また、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5は、図1および図2に示す例では、母基板1の両主面に配置されているが、図4および図5に示す例のように、母基板1の内部に配置されていても構わない。このような場合には、第1のめっき用配線4と第2のめっき用配線5とを母基板1のそれぞれ異なる絶縁層間に配置しておけばよい。第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5が、母基板1の表面に配置されている場合、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5の露出する表面にもめっき層が被着されるので、多数個取り配線基板を分割予定線9に沿って分割する際に、めっき層の伸びやめっき屑の飛散等が発生することがあるが、母基板1の内部に、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5を配置しておくことによって、めっき層の伸びやめっき屑の飛散を抑制することができるので好ましい。また、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5が、母基板1の内部に配置されている場合は、めっき用配線を、めっきを被着する前に形成された分割溝の形成されない層間に配置しておくことによって、分離予定線8および分割予定線9に沿って分割溝を形成することができる。第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5は、必要に応じて、一方が母基板1の表面に配置され、他方が母基板1の内部に配置されていてもよく、めっき用配線が配置されていない方の主面には、めっき層を被着する前に、分離予定線8および分割予定線9に沿って分割溝を形成することができる。
【0027】
めっき用端子7は、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5と、めっき用の電源またはめっき用の電源に接続された治具とを電気的に接続するためのものである。図1,図2および図4〜図7に示す例では、めっき用端子7は、母基板1の外辺に設けた切り欠きの内面に形成され、配線基板領域1aを囲む枠状の共通導体であるめっき用枠体6を介して第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5に電気的に接続されている。これらのめっき用端子7は、セラミックグリーンシートを金型等で打ち抜いて、切り欠きとなる貫通孔を形成した後、その貫通孔の内面に、第1の配線導体2および第2の配線導体3用のメタライズペーストと同様のメタライズペーストを印刷塗布して、焼成すること
によって形成することができる。
【0028】
また、めっき用端子7は、図1,図2および図4〜図7に示す例では、母基板1の側面に形成した切り欠きの内面に形成しているが、ダミー領域1bに母基板1を厚み方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔の内面に形成しても構わない。
【0029】
めっき用枠体6は、ダミー領域1bに配置され、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5に電気的に接続されている。図1,図2および図4〜図7に示す例においては、めっき用枠体6は、母基板1の両主面にそれぞれ形成されているが、母基板1のいずれか一方主面にのみ形成されていても構わないし、母基板1の内部に配置されていても構わない。めっき用枠体6は、図1,図2および図4〜図7に示す例のように、複数形成していると、めっき用端子7から第1の配線導体2および第2の配線導体3までの電流経路を小さくして、第1の配線導体2および第2の配線導体3の露出する表面に被着されるめっき層の厚みのばらつきを低減することができる。また、めっき用枠体6を複数形成する場合、これらのめっき用枠体6同士を貫通導体等によって電気的に接続して、めっき用枠体6の抵抗値を小さくして、第1の配線導体2および第2の配線導体3の露出する表面に被着されるめっき層の厚みばらつき等を低減することができる。
【0030】
めっき用枠体6を母基板1の両主面に形成する場合、それぞれの配線基板領域1aの第1の配線導体2および第1のめっき用配線4の抵抗値と、第2の配線導体3および第2のめっき用配線5の抵抗値とが大きく異なる場合、一方主面のめっき用枠体6と他方主面のめっき用枠体6とで、幅や厚み、配置、材料等を異ならせて、めっき用枠体6から第1の配線導体2までの抵抗値とめっき用枠体6から第2の配線導体3までの抵抗値とが同程度となるようにしても構わない。これによって、第1の配線導体2の露出する表面と第2の配線導体3の露出する表面に被着されるめっき層の厚みのばらつきを低減することができる。
【0031】
なお、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5ならびにめっき用枠体6は、上述の第1の配線導体2および第2の配線導体3と同様の材料および方法で形成することができる。
【0032】
めっき用端子7と第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5とを電気的に接続するための共通導体は、枠状に限らず、例えば、平面視で第1のめっき用配線4の上下のダミー領域の少なくとも一方に、第1のめっき用配線4と接続されて配置され、第2のめっき用配線5の左右のダミー領域の少なくとも一方に、第2のめっき用配線4と接続されて配置されていてもよい。このような場合は、第1のめっき用配線4に接続された共通導体および第2のめっき用配線5に接続された共通導体は、めっき用端子7に電気的に接続されていればよい。また、第1のめっき用配線4に接続された共通導体および第2のめっき用配線5に接続された共通導体は、母基板1の内部に形成した配線によって電気的に接続されていてもよい。
【0033】
そして、第1の配線導体2および第2の配線導体3の露出する表面にめっき層を被着する際には、母基板1を電解めっき用のめっき浴に浸漬するとともに、めっき用端子7をめっき用の電源に接続して第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5に電流を供給する。
【0034】
また、図1,図2および図4〜図7に示す例のように、共通導体としてめっき用枠体6を形成して場合には、めっき用端子7を4つの角部の近傍にそれぞれ1つずつ設けていると、複数の配線基板領域1aのそれぞれに供給される電流のばらつきを低減して、配線基板領域1a毎の第1の配線導体2および第2の配線導体3の露出された表面に被着される
めっき層の厚みばらつきを低減させることができる。
【0035】
第1の配線導体2および第2の配線導体3の露出する表面に被着されるめっき層は、ニッケル,金,銀等の、耐蝕性に優れる金属,接続部材の接続性に優れる金属または光の反射率の高い金属からなるものであり、例えば、第1の配線導体2および第2の配線導体3のそれぞれに直接被着された厚さ1〜10μm程度のニッケルめっき層(図示せず)と、そのニッケルめっき層の上に被着された厚さ0.1〜3μm程度の金めっき層または0.1〜5μm程度の銀めっき層(図示せず)とから成る。このようなめっき層を形成することによって、第1の配線導体2および第2の配線導体3が腐食することを効果的に抑制することができる。また、金めっき層を最表層として被着させた場合は、電子部品10と第1の配線導体2または第2の配線導体3との固着や、第1の配線導体2または第2の配線導体3とボンディングワイヤ等の接続部材(図示せず)との接合や、第1の配線導体2または第2の配線導体3と外部電気回路基板の配線導体との接続を強固にすることができる。また、銀メッキ層を最表層として被着させた場合は、光の反射率が高く、電子部品10として発光素子を搭載した場合、発光素子より放射された光を良好に反射することができる。
【0036】
そして、配線基板領域1aごとに電子部品10を搭載し、電子部品10と第1の配線導体2および第2の配線導体3とを電気的に接続する。電子部品10は、ICチップやLSIチップ等の半導体素子,発光ダイオードなどの発光素子,水晶振動子や圧電振動子等の圧電素子または各種センサ等である。
【0037】
電子部品10は、例えば、電子部品10がフリップチップ型の発光素子である場合には、はんだバンプや金バンプ、または導電性樹脂(異方性導電樹脂等)等の接合材を介して、発光素子の電極と第1の配線導体2および第2の配線導体3とを電気的および機械的に接続することによって搭載される。また、バンプによって接合した後に発光素子と配線基板との間にアンダーフィルを注入してもよい。
【0038】
また、例えば、電子部品10がワイヤボンディング型の発光素子である場合には、ガラス,樹脂またはろう材等の接合剤によって発光素子を固定した後、ボンディングワイヤ等の接続部剤を介して発光素子の電極と第1の配線導体2および第2の配線導体3とを電気的に接続することによって搭載される。
【0039】
また、例えば、電子部品10が水晶振動子等の圧電素子である場合には、導電性樹脂等の接合材によって、圧電素子の固定および圧電素子の電極と配線導体との電気的な接続を行なう。
【0040】
なお、電子部品10は、金属やセラミックス,ガラス,樹脂等からなるキャップ状あるいは板状の蓋体によって封止される。蓋体としては、母基板1の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有するものが好ましく、例えば母基板1が酸化アルミニウム質焼結体から成り、金属から成る蓋体を用いる場合であれば、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金やFe−Ni−Co(鉄−ニッケル−コバルト)合金等から成るものを用いればよい。電子部品10が発光素子である場合には、ガラスや樹脂等からなる透光性のキャップ状または板状の蓋体だけでなく、ガラスや樹脂等からなる透光性のレンズ、あるいはレンズが取り付けられたキャップ状または板状の蓋体を用いてもよい。
【0041】
また、必要に応じて、電子部品10をエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂によって被覆しても構わない。例えば、電子部品10が発光素子から成る場合には、蛍光体を含有した樹脂を用いて、発光素子から発光される光を蛍光体によって波長変換させるようにしてもよい。
【0042】
配線基板領域1aごとに電子部品10を搭載した後、図3に示す例のように、多数個取り配線基板を配線基板領域1aとめっき用枠体6との間の分離予定線8で分離することによって、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5とめっき用枠体6とを分離して、縦方向に配置された第1のめっき用配線4と横方向に配置された第2のめっき用配線5とを電気的に独立させる。縦方向に配置された第1のめっき用配線4の1つと横方向に配置された第2のめっき用配線5の1つとを選択して電流を流すことによって、第1のめっき用配線4の1つと第2のめっき用配線5の1つとが交差する配線基板領域1aの、第1の配線導体2と第2の配線導体3とに電気的に接続された電子部品10に電流を流すことができる。電子部品10として、例えば、発光素子を用いる場合であれば、配線基板領域1aごとに発光素子を発光させて発光状態を確認することができる。
【0043】
多数個取り配線基板を分離予定線8で分離する方法としては、分離予定線8上に分割溝を形成しておき、この分割溝に沿って撓折して分割する方法、またはスライシング法等によって配線基板領域1aの外縁に沿って切断する方法等を用いることができる。分割溝は、母基板1用の生成形体にカッター刃を押し当てたり、スライシング装置によって生成形体の厚みより小さく切込んだりすることによって形成するか、焼成後にスライシング装置によって母基板1の厚みより小さく切込むことによって形成することができる。
【0044】
また、上記のように分離予定線8で分離した多数個取り配線基板を、配線基板領域1aの外縁の分割予定線9に沿って分割することによって、複数の発光装置が作製される。発光素子が搭載された多数個取り配線基板を複数の発光装置に分割する方法としては、分離予定線8で分離した場合と同様の方法を用いることができる。
【0045】
分離予定線8上および分割予定線9上の両方に分割溝を形成する場合、分離予定線8上に形成した分割溝の深さは、分割予定線9上に形成した分割溝の深さよりも深くしておくと、分離予定線8で分離するときに、分割予定線9で分割されることを低減できるので有効である。
【0046】
また、図6および図7に示す例のように、母基板1の表面に、第1のめっき用配線4および第2のめっき用配線5の幅よりも幅広の接触パッド12を形成していても構わない。接触パッド12を形成することによって、電源とより良好に接続できる。また、接触パッド12は、母基板1の同一主面に導出しておくと、それぞれの接続パッド12と電源とが接続していることを確認するのに有効である。なお、接触パッド12は、母基板1の主面に、上述の第1の配線導体2および第2の配線導体3と同様の材料および方法で形成することができる。
【0047】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、第1の配線導体2または第2の配線導体3は、配線基板領域1aの境界に形成した切り欠きの内面に導体を塗布したり、切り欠きを導体で充填して形成した、いわゆるキャスタレーション導体としても構わない。
【0048】
また、第1の配線導体2または第2の配線導体3は、各配線基板領域1aに複数形成されたものであっても構わない。例えば、図7に示す例では、第1の配線導体2を共通電極として1つ形成し、第2の配線導体3を個別電極として3つ形成している。また、配線基板領域1aに複数の電子部品10を搭載してもよく、複数の電子部品10のそれぞれに対応する第1の配線導体2と第2の配線導体3を形成すればよい。
【0049】
また、各配線基板領域1aに第1の配線導体2または第2の配線導体3のいずれかが複数形成される場合、これらの配線導体に接続される複数のめっき用配線を、ダミー領域1b上で1つの接触パッド12に接続されるようにしていてもかまわない。これによって、1
つの接触パッド12に電源を接触させることで、複数の第1の配線導体2または第2の配線導体3に同時に電流を流すことができ、電子部品10として発光素子を搭載した場合に、1つの配線基板領域1aに搭載された複数の発光素子を同時に発光させる発光装置としての状態を確認することができる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・・母基板
1a・・・配線基板領域
1b・・・ダミー領域
2・・・・第1の配線導体
3・・・・第2の配線導体
4・・・・第1のめっき用配線
5・・・・第2のめっき用配線
6・・・・めっき用枠体
7・・・・めっき用端子
8・・・・分離予定線
9・・・・分割予定線
10・・・・電子部品
11・・・・凹部
12・・・・接触パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に複数の配線基板領域が縦横の並びに複数配置されているとともに、外周部にダミー領域が配設されて、複数の絶縁層が積層された母基板と、前記配線基板領域に設けられた、それぞれ一部が前記配線基板領域の表面に露出した第1の配線導体および第2の配線導体と、縦方向に配置された前記配線基板領域の複数の前記第1の配線導体同士を接続する複数の第1のめっき用配線と、該第1のめっき用配線が配置された絶縁層とは異なる絶縁層に配置された、横方向に配置された前記配線基板領域の複数の前記第2の配線導体同士を接続する複数の第2のめっき用配線と、前記ダミー領域に設けられた、前記第1のめっき用配線および前記第2のめっき用配線に電気的に接続された共通導体と、を備えていることを特徴とする多数個取り配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249526(P2011−249526A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120573(P2010−120573)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】