説明

多核シームレスカプセル並びに多核シームレスカプセルの製造方法及び製造装置

【課題】複数個の核が独立内封され見た目や食感に優れた多核シームレスカプセルを容易かつ安価に提供する。
【解決手段】多核シームレスカプセルSCは、外皮膜9内に芯液1を封入したシームレスカプセルとなっている。芯液1は、微小なシームレスカプセルにて形成された核カプセル31を多数含んだカプセル分散液となっている。カプセル分散液は、大豆油等の食用油脂を分散媒体としており、その中に、薬剤や香料等をゼラチンの外皮膜に封入した核カプセル31が多数分散されている。核カプセル31内には、成分等が異なる物質が封入されており、異なる複数種類の物質が同一カプセル内に融和することなく混在している。核カプセル31の色を多色化すると、カプセルの外観も様々に変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる成分や性質、効能を有する物質を含んだ核を複数個封入した多核シームレスカプセルに関し、特に、シームレスカプセルにて形成した核を複数個封入した多核シームレスカプセル関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬品や食品、機能性食品、健康食品などの分野では、薬剤や香料、香辛料等の充填物質を、ゼラチンや寒天等を含む皮膜によって被覆したシームレスカプセルが広く用いられている。このようなシームレスカプセルには、単一の充填物質を被覆したものの他、異なる成分等よりなる核を1個または複数個封入したものも存在しており、例えば、特許文献1には、軟カプセルの内部にさらに軟カプセルを内包させた多重軟カプセルが記載されている。そこでは、シームレスカプセルの一種である軟カプセル内に、1またはそれ以上の軟カプセルが封入されており、同心状の多重ノズルから、内外カプセルの芯液や皮膜液を吐出させ、それらを冷却液中にて固化させることにより多重軟カプセルを形成している。
【0003】
また、特許文献2には、カプセル内に、成分の異なる充填物質からなる複数の核を独立密封したシームレスカプセルが記載されている。この場合も、内外管からなる多重ノズルが使用され、外管ノズル内には、核形成用の小径内管ノズルが複数個配置されている。各内管ノズルからは異なる成分の充填物質が吐出され、外管ノズルからは外皮膜物質が供給され、これにより、核形成用と外皮形成用の複合ジェット流がノズルから押し出される。この複合ジェット流は、冷却液の断続流によって個々のカプセルに分離され、複数個の核を内包した多核シームレスカプセルが形成される。
【0004】
一方、特許文献3には、水にも油にも難溶な有効成分を油中に懸濁させた内封液を、親水性の外皮にて内封したシームレスカプセルが記載されている。この場合、内封液には前述のような目に見えるような核は存在しないが、平均粒子20μ以下の有効成分がカプセル内に封入されており、当該シームレスカプセルも、極めて微小な核を複数個封入したシームレスカプセルとも考えられる。
【特許文献1】特開昭59-131355号公報
【特許文献2】特開昭61-151119号公報
【特許文献3】特開平9-155183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前述のような多核シームレスカプセルは、例えば、特許文献1では、軟カプセル内に1またはそれ以上の軟カプセルを封入する旨記載されているが、そこで記載されている方式では、実施例のように1個の核カプセルは封入可能ではあるが、複数個の核カプセルを封入できない。従って、特許文献1の方式では、実際に多核シームレスカプセルを形成するのは困難である。また、特許文献1の方式では、核カプセルが押し出される衝撃によって皮膜液のジェットを切る構成のため、外内カプセル径に差がある場合(特に、内カプセルがかなり小さい場合)は、内カプセルがうまく切断されず、粒径にバラツキが生じたり、完全に独立した内カプセルが形成できないなどの問題があった。
【0006】
また、特許文献2の方式では、内カプセルの形成に際し、ノズル先端では核物質のゲル化が十分に進んでいないため、カプセル形成時に、核カプセル同士や核カプセルと皮膜とが付着しやすい。このため、特許文献2の場合も、完全に独立した内カプセルをうまく形成できないという問題がある。特に、特許文献2の方式では、冷却液の断続流によってカプセル外周から衝撃を与えて個々のカプセルを切断形成するため、その衝撃により、内部の核カプセル同士が非常に付着しやすく、その点が大きな課題となっていた。さらに、特許文献1の方式も含め、カプセル製造に際し、特殊なノズルが必要となり、設備コストが嵩むという問題もあった。
【0007】
一方、特許文献3の方式では、既存の多重ノズル装置にて懸濁内封液のシームレスカプセルを形成できるが、内封核が目に見える状態の多核シームレスカプセルを形成することができない。多核シームレスカプセルでは、成分等が異なる物質を封入できる点以外にも、見た目の美しさや面白さも特徴のひとつであり、特に、食品の場合には、プチプチとした食感という別の観点も存在する。しかしながら、特許文献3のような懸濁液内封方式ではこれらの観点を満たすことはできず、また、カプセル内に親油性の成分は封入できないため、その分、用途が限定されるという問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、複数個の核が独立内封され見た目や食感に優れた多核シームレスカプセルを容易かつ安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の多核シームレスカプセルは、外皮膜内に内層液を封入したシームレスカプセルであって、前記内層液は、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液であることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、シームレスカプセルの内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を用いることにより、核カプセルが多数分散封入された多核シームレスカプセルを容易に製造できる。このような多核シームレスカプセルでは、核カプセル内に成分や性質、効能等が異なる物質を封入しておくことにより、異なる複数種類の物質を同一カプセル内に混在させることができる。また、その際、各物質は核カプセル内に保持されているため、シームレスカプセル内で混じり合うこともなく、各々独立した核としてカプセル内に封入される。さらに、シームレスカプセル内に散在する核カプセルの色調を変えたり、色自体を変えて多色化したりすることもでき、カプセルの外観を様々に変化させることもできる。
【0011】
前記多核シームレスカプセルにおいて、前記カプセル分散液内に、異なる物質を封入した複数種類の核カプセルを分散させても良い。また、前記核カプセルの平均粒子径を0.5mm〜1.5mmとしても良い。さらに、前記核カプセルを油脂分散媒体中に分散させ、前記核カプセルと前記分散媒体の比重を0.80〜1.0としても良い。
【0012】
本発明の多核シームレスカプセル製造方法は、ノズルから複層の液滴を硬化液中に吐出し、前記液滴の少なくとも表面部分を硬化させてシームレスカプセルを製造するカプセル製造方法であって、前記液滴の内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を供給し、前記液滴の外層液として、シームレスカプセルの外皮膜形成液を供給することを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、シームレスカプセルを製造するに際し、ノズルから吐出される複層の液滴の内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を供給することにより、核カプセルが多数分散封入された多核シームレスカプセルを容易に製造できる。
【0014】
本発明の多核シームレスカプセル製造装置は、ノズルから複層の液滴を硬化液中に吐出し、前記液滴の少なくとも表面部分を硬化させてシームレスカプセルを製造するカプセル製造装置であって、前記ノズルと接続され、前記液滴の内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を供給する内層液供給装置と、前記ノズルと接続され、前記液滴の外層液として、シームレスカプセルの外皮膜形成液を供給する外層液供給装置と、前記ノズルに対し振動を付与する加振手段とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、シームレスカプセルを製造するに際し、ノズルから吐出される複層の液滴の内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を供給する内層液供給装置を設けたことにより、核カプセルが多数分散封入された多核シームレスカプセルを容易に製造できる。
【0016】
前記多核シームレスカプセル製造装置において、前記内層液供給装置として、前記カプセル分散液を貯留可能な液容器と、前記液容器に気密状態で取り付けられ、前記液容器内に空気を供給する第1管路と、前記液容器に気密状態で取り付けられ、一端側が前記液容器内の前記カプセル分散液中に配置され、他端側が前記ノズルと接続された第2管路とを有するものを使用しても良く、これにより、カプセル詰まりなく内層液を安定供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多核シームレスカプセルによれば、外皮膜内に内層液を封入したシームレスカプセルの内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を用いたので、例えば、核カプセル内に成分や性質、効能等が異なる物質を封入しておくことにより、異なる複数種類の物質を同一カプセル内に混在させることが可能となる。また、その際、各物質が核カプセル内に保持されるため、シームレスカプセル内で混じり合うことがなく、各々独立した核としてカプセル内に封入することができる。さらに、シームレスカプセル内に散在する核カプセルの色調を変えたり、色自体を変えて多色化したりすることもでき、カプセルの外観を様々に変化させることも可能となる。
【0018】
本発明の多核シームレスカプセル製造方法によれば、ノズルから複層の液滴を硬化液中に吐出して硬化させるシームレスカプセル製造方法にて、液滴の内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を供給するようにしたので、核カプセルが多数分散封入された多核シームレスカプセルを容易に製造することが可能となる。
【0019】
本発明の多核シームレスカプセル製造装置によれば、ノズルから複層の液滴を硬化液中に吐出して硬化させるシームレスカプセル製造装置にて、液滴の内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を供給する内層液供給装置を設けたので、核カプセルが多数分散封入された多核シームレスカプセルを容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例である多核シームレスカプセルの外観を示す説明図、図2は、本発明の一実施例であるシームレスカプセル製造装置の構成を示す説明図である。図1に示すように、本発明におけるシームレスカプセルSCは、芯液(内層液)1を外皮膜9内に封入した一般的な構成となっているが、従来のシームレスカプセルとは異なり、芯液1内に微小なシームレスカプセルからなる核カプセル31が多数含まれている。
【0021】
図1のシームレスカプセルSCは、図2のシームレスカプセル製造装置にて形成される。図2のシームレスカプセル製造装置は、特許文献3と同様に、多重構造のノズル4を有しており、このノズル4から流路管11内に液滴を吐出してシームレスカプセルSCを製造する。当該シームレスカプセル製造装置では、芯液1は、芯液供給装置2から芯液供給管3を介してノズル4に供給される。芯液供給装置2内には芯液1が貯留されており、芯液1は、カプセルの製造状況に応じて適宜補充される。芯液1を被覆する外皮膜形成用の皮膜液(外層液,外皮膜形成液)5は、ギヤポンプ等を用いた皮膜液供給ポンプ6から供給される。皮膜液供給ポンプ6は、皮膜液5が貯留された皮膜液用タンク7と接続されている。皮膜液5は、皮膜液供給ポンプ6によって、皮膜液用タンク7から皮膜液供給管8を介してノズル4に供給される。
【0022】
流路管11の上端入口部には、硬化用液10の流入部11Aが設けられている。流入部11Aには、ポンプ22より管路23を介して硬化用液10が供給される。当該シームレスカプセル製造装置は液中ノズル式となっており、流入部11Aの入口部24内にはノズル4が挿入設置されている。ノズル4からは、カプセル形成用液体である芯液1と皮膜液5が吐出される。ノズル4には加振装置15により振動が付与されており、吐出された液体は振動により適宜切断され、皮膜液5が芯液1の全周囲を被覆した多層液滴25(以下、液滴25と略記する)を形成する。そして、この液滴25が硬化用液10内を移動しつつ冷却硬化され、シームレスカプセルSCが形成される。
【0023】
流路管11は曲折形状の筒体として形成され、略J字形の流入部11Aと、流入部11Aと入れ子式に接合された逆J字形の流出部11Bとから構成されている。流入部11Aと流出部11Bは、嵌合部11Cにて密封状態で嵌合固定されている。なお、嵌合部11Cにおいて流入部11Aと流出部11Bを互いに上下方向に相対移動可能に接合しても良い。これにより、流入部11Aの液面と流出部11Bの液面との高さの差Δhが調節可能となり、流路管11内における硬化用液10の流速を調節できる。
【0024】
流入部11Aの上端部には、ノズル4に臨んで円筒状の入口部24が設けられている。流出部11Bの出口端下方には、略漏斗形状の分離器12が配設されている。分離器12内には、シームレスカプセルSCは通過させず、かつ硬化用液10のみを通過させるメッシュ13が張設されている。この分離器12により、流路管11から一緒に流出したシームレスカプセルSCと硬化用液10が分離される。分離器12にてシームレスカプセルSCから分離された硬化用液10は、下方の分離タンク14の中に回収される。分離タンク14内の硬化用液10は、ポンプ16により管路17を経て冷却タンク18に圧送される。硬化用液10は、冷却タンク18内にて冷却器21により所定の温度に冷却される。冷却タンク18内の硬化用液10は、ポンプ22によって流路管11に戻される。
【0025】
ここで、当該シームレスカプセル製造装置では、芯液1として、平均粒子径1mm程度(好ましくは、0.5mm〜1.5mm)の核カプセル31を含んだカプセル分散液が使用される。核カプセル31は、ビタミン等の薬剤や、香料、香辛料、ミネラル、エキス類などをゼラチンの外皮膜に封入した微小なシームレスカプセルであり、図2のような装置を用いてシームレスカプセルSCと同様に形成される。芯液1は、大豆油などの食用油脂を分散媒体とし、その中に核カプセル31を多数分散させた溶液であり、カプセル分散媒体としては、例えば、大豆油や菜種油、ぶどう油、オリーブ油、MCT(Medium Chain Triglyceride)などの食用油脂が使用される。
【0026】
なお、核カプセル31と分散媒体の比重は0.80〜1.0が好ましい。また、芯液1には、シームレスカプセルSCの外皮膜内面にゼラチン皮膜の核カプセル31が癒着してしまうのを防止するため、レシチンが0.1重量%程度添加されている。
【0027】
一方、皮膜液5としては、ゼラチンなどの親水性物質が使用される。皮膜液5には、ゼラチンの他、寒天等の海藻由来多糖類、ペクチン等の植物系物質、キサンタンガム等の微生物由来物質、メチルセルロース等の繊維系物質、澱粉加水分解物などを使用することもでき、これは、核カプセル31の外皮膜も同様である。本実施例では、皮膜液5にゼラチンを使用しており、図2の装置では、皮膜液5を溶液状態でノズル4に供給するため、皮膜液供給管8の外側に加熱器が装着されている。なお、皮膜液5には、可塑剤として、グリセリンやソルビット、エチレングリコール等の水溶性多価アルコールや、その水溶性誘導体を含ませても良い。
【0028】
図3は、芯液1をノズル4に供給するための芯液供給装置2の構成を示す説明図である。前述のような芯液1は、その中に核カプセル31を含んでいるため、通常使用されるギヤポンプやスクリューフィーダ型のスネークポンプでは、内部にカプセルが詰まってしまい、芯液1をノズル4に安定供給することができない。そこで、本発明者は、図3のような芯液供給装置2を考案し、これにより、カプセル詰まりなく芯液1を安定供給することが可能となった。
【0029】
図3に示すように、芯液供給装置2は、フラスコ状の液容器32にエア供給管(第1管路)33と芯液供給管(第2管路)3を取り付けた構成となっている。液容器32の上端には、容器を密封するための封止栓34が取り付けられており、エア供給管33と芯液供給管3はこの封止栓34に気密状態で固定されている。エア供給管33は、封止栓34内を通って液容器32内に延び、芯液1の液面より上方の空間に開口している。エア供給管33は、エアポンプ35と接続されており、エアポンプ35からはエア供給管33を介して液容器32内に圧縮空気を供給できるようになっている。一方、芯液供給管3は、封止栓34から芯液1内まで延びており、その一端側は芯液1内にて開口している。芯液供給管3の他端側は、ノズル4に接続されている。
【0030】
液容器32内には、核カプセル31が含まれた芯液1が貯留されており、芯液1は、カプセル製造状況に応じて適宜補充される。なお、液容器32に、芯液1を補充供給する芯液補充管を設けても良く、その場合、芯液補充管は、例えば、封止栓34や液容器32の側面や底面等に、液容器32内の気密性を保持可能な形で設置される。また、液容器32の底面には、撹拌部材として、マグネティックスターラ36が配されている。マグネティックスターラ36は、回転電磁石を有する駆動ユニット(図示せず)によって、容器外部から回転駆動される。これにより、芯液1は常時撹拌され、核カプセル31が芯液1内に均等に分散される。
【0031】
このようなシームレスカプセル製造装置では、次のようにしてシームレスカプセルが製造される。まず、ノズル4に対し芯液1と皮膜液5を供給する。前述のように、芯液1は芯液供給装置2から芯液供給管3を介して、また、皮膜液5は皮膜液供給ポンプ6から皮膜液供給管8を介してノズル4に供給される。その際、芯液供給装置2には、エアポンプ35から圧縮空気が供給され、その圧力によって芯液がノズル4に圧送される。すなわち、エアポンプ35から液容器32内に圧縮空気が供給されると、エア供給管33から液容器32の上方空間に圧縮空気が流入し、芯液1の液面がその圧力を受ける。この圧力により、芯液1中の芯液供給管3内に芯液1が押し出され、芯液供給管3を介してノズル4側に供給される。なお、芯液供給管3の内径(4mm程度)は、核カプセル31の外径(1mm程度)よりもかなり大きいため、管内にカプセルが詰まることはない。
【0032】
ノズル4に供給された芯液1と皮膜液5はノズル先端部から噴出し、流路管11内の硬化用液10中に球形の液滴25が形成される。この液滴25は、流路管11内にて冷却され、皮膜液5が硬化してシームレスカプセルSCとなる。その後、シームレスカプセルSCは、流出部11Bの出口端から分離器12のメッシュ13の上に硬化用液10と共に流下する。シームレスカプセルSCはメッシュ13で硬化用液10から分離され、適当な量に達した時にバッチ式に図示しない製品回収容器の中に回収される。一方、硬化用液10はメッシュ13を通過して分離タンク14の中に回収される。
【0033】
このようにして形成されたシームレスカプセルSCは、ゼラチン等の皮膜液5が硬化した外皮内に芯液1が封入されたシームレスカプセルとなる。この場合、芯液1内には核カプセル31が多数含まれており、シームレスカプセルSCは、核カプセル31の粒が多数存在する形となる。従って、本発明のシームレスカプセルSCでは、核カプセル31内に成分や性質、効能等が異なる物質を封入しておくことにより、異なる複数種類の物質を同一カプセル内に混在させることが可能となる。また、その際、各物質は核カプセル31内に個別に保持されるため、シームレスカプセルSC内で融和することもなく、異なる複数種類の物質を各々独立した核としてカプセル内に封入することが可能である。
【0034】
さらに、当該シームレスカプセルSCでは、シームレスカプセルSC内に散在する核カプセル31の色調を変えたり、色自体を変えて多色化したりすることもできる。このため、様々な外観を持つカプセル(例えば、図1のように2色(赤や青など)の粒々が浮かぶ透明カプセル)なども作成でき、見た目が良く、意匠的にも優れた美しいカプセルを容易に製造することも可能である。加えて、本発明のシームレスカプセルSCは、特殊なノズルが不要なため、図2のように既存の設備を流用でき、多大な設備投資を行うことなく製造可能である。
【0035】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0036】
例えば、前述の実施例では、液容器32としてフラスコ状のものを示したが、容器形状はこれには限定されず、エア供給管33と芯液供給管3が気密状態で取り付けられる容器であれば良く、容器形状は任意である。また、芯液1の分散媒体や、皮膜液5の材料、核カプセル31の内容部や外皮材料などは、前述の物質には限定されず、シームレスカプセルSCの用途・機能に応じて他の物質を適宜使用することが可能である。さらに、前述の実施例では、ノズル4への液供給管3,8を、芯液用と皮膜液用の2本設けた構成としたが、内側に芯液、外側に皮膜液を流通させる二重管を用いても良い。
【0037】
一方、前述の実施例では、芯液供給装置としてフラスコタイプのものについて説明したが、芯液供給装置の形態はそれには限定されず、例えば、図4のようなピストンタイプの装置を用いても良い。図4の芯液供給装置41は、シリンジポンプと呼ばれる注射器型のポンプであり、円筒状のシリンジ容器42と、シリンジ容器42内に配された押し子43とを備えた構成となっている。シリンジ容器42は、図示しない架台に載置されており、その先端部(図中右端)42aには、芯液供給管3が接続される。
【0038】
押し子43は、ピストン43aとロッド43bを備えており、ロッド43bの端部にはフランジ43cが設けられている。フランジ43cは、ネジ棒44に取り付けられたホルダ45に当接している。ホルダ45は、ホルダガイド46によって、軸方向に移動自在に支持されており、ネジ棒44の回転に伴って軸方向に移動する。ネジ棒44は、減速ギヤ47を介して、モータ48によって回転駆動される。
【0039】
このような外皮液供給装置41では、まず、シリンジ容器42内に、核カプセル31を多数含んだ芯液1を吸引し貯留する。すなわち、図示しない容器に別途貯留されている芯液1(核カプセル31を多数含む)内に挿入し、押し子43を引いてシリンジ容器42内に芯液1を吸い込む。次に、芯液1が収容されたシリンジ容器42を架台にセットし、その際、押し子43のフランジ43cをホルダ45に当接させる。シリンジ容器42をセットした後、モータ48を適宜駆動させる。モータ48が駆動されると、ネジ棒44が回転し、それに伴ってホルダガイド46が軸方向に移動してフランジ43cが押圧される。これにより、押し子43がシリンジ容器42内に押し込まれ、先端部42aから芯液供給管3に芯液1が押し出され、核カプセル31と共にノズル4に供給される。
【0040】
シリンジポンプを用いた芯液供給装置41では、吐出量は、押し子43を押す速度、すなわち、モータ48の回転数に依存する。このため、モータ回転数を制御することにより、ポンプ吐出量を自在に制御でき、流量の制御を高精度で行うことができる。但し、シリンジ容器42の体積が一般に余り大きくないため(大きいものでも200ml程度)、芯液供給装置41は、原料が少ない場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例である多核シームレスカプセルの外観を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例であるシームレスカプセル製造装置の構成を示す説明図である。
【図3】図2のシームレスカプセル製造装置にて、芯液をノズルに供給する芯液供給装置の構成を示す説明図である。
【図4】芯液供給装置の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 芯液(内層液)
2 芯液供給装置
3 芯液供給管(第2管路)
4 ノズル
5 皮膜液(外層液,外皮膜形成液)
6 皮膜液供給ポンプ
7 皮膜液用タンク
8 皮膜液供給管
9 外皮膜
10 硬化用液
11 流路管
11A 流入部
11B 流出部
11C 嵌合部
12 分離器
13 メッシュ
14 分離タンク
15 加振装置
16 ポンプ
17 管路
18 冷却タンク
21 冷却器
22 ポンプ
23 管路
24 入口部
25 液滴
31 核カプセル
32 液容器
33 エア供給管(第1管路)
34 封止栓
35 エアポンプ
36 マグネティックスターラ
41 芯液供給装置
42 シリンジ容器
42a 先端部
43 押し子
43a ピストン
43b ロッド
43c フランジ
44 ネジ棒
45 ホルダ
46 ホルダガイド
47 減速ギヤ
48 モータ
SC シームレスカプセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外皮膜内に内層液を封入したシームレスカプセルであって、
前記内層液は、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液であることを特徴とする多核シームレスカプセル。
【請求項2】
請求項1記載の多核シームレスカプセルにおいて、前記カプセル分散液は、異なる物質を封入した複数種類の核カプセルを有することを特徴とする多核シームレスカプセル。
【請求項3】
請求項1又は2記載の多核シームレスカプセルにおいて、前記核カプセルの平均粒子径が0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする多核シームレスカプセル。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の多核シームレスカプセルにおいて、前記核カプセルは油脂分散媒体中に分散されてなり、前記核カプセルと前記分散媒体の比重が0.80〜1.0であることを特徴とする多核シームレスカプセル。
【請求項5】
ノズルから複層の液滴を硬化液中に吐出し、前記液滴の少なくとも表面部分を硬化させてシームレスカプセルを製造するカプセル製造方法であって、
前記液滴の内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を供給し、
前記液滴の外層液として、シームレスカプセルの外皮膜形成液を供給することを特徴とする多核シームレスカプセル製造方法。
【請求項6】
ノズルから複層の液滴を硬化液中に吐出し、前記液滴の少なくとも表面部分を硬化させてシームレスカプセルを製造するカプセル製造装置であって、
前記ノズルと接続され、前記液滴の内層液として、シームレスカプセルにて形成された核カプセルを複数個含むカプセル分散液を供給する内層液供給装置と、
前記ノズルと接続され、前記液滴の外層液として、シームレスカプセルの外皮膜形成液を供給する外層液供給装置と、
前記ノズルに対し振動を付与する加振手段とを有することを特徴とする多核シームレスカプセル製造装置。
【請求項7】
請求項6記載の多核シームレスカプセル製造装置において、前記内層液供給装置は、
前記カプセル分散液を貯留可能な液容器と、
前記液容器に気密状態で取り付けられ、前記液容器内に空気を供給する第1管路と、
前記液容器に気密状態で取り付けられ、一端側が前記液容器内の前記カプセル分散液中に配置され、他端側が前記ノズルと接続された第2管路とを有することを特徴とする多核シームレスカプセル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−120571(P2009−120571A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298404(P2007−298404)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【出願人】(000101651)アリメント工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】