多様な癌の治療および検出のための組成物および方法
本発明は、癌細胞の増殖を抑制するための方法、さらには脳、肺、乳房、前立腺および結腸の癌を含むさまざまな癌の検出および治療のための方法を提供する。本方法は、癌細胞を、GDOX分子の生物活性を妨げる分子と接触させることを含む。1つの態様において、この分子はGDOXペプチドに対する抗体である。また別の態様において、この分子はGDOX核酸分子に対するアンチセンスヌクレオチド、またはGDOXペプチドもしくはGDOXペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンである。本発明はさらに、GDOX関連分子を用いる癌の検出および治療のための方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年7月2日に提出された米国特許出願第10/188,840号(そのすべての内容は参照として本明細書に組み入れられる)に対する優先権を請求する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は一般に、癌の検出および治療法に関する。本発明はより詳細には、治療標的および診断標的としての新規遺伝子GDOXおよびGDOX関連分子に関する。GDOX抗体およびアンチセンスヌクレオチドは、GDOXを発現する種々の癌の治療のためのワクチンおよび薬学的組成物に、さらには、このような癌の検出および悪性度の評価のための方法に用いることができる。本発明はさらに、癌の治療および検出に有用な分子を同定するための方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌および感染症は全世界を通じて保健上の重大な問題である。これらの疾患の発見および治療法には進歩がみられるが、予防または治療のためのワクチンもその他の普遍的に奏功する方法も現時点では得られていない。現在の治療法は一般に化学療法または外科手術と放射線療法との併用を基盤としているが、多くの患者には不十分であることがますます明らかになっている。
【0004】
癌は、癌遺伝子の活性化および/または腫瘍抑制遺伝子の不活性化を引き起こす、累積的な多数の遺伝子変異の結果である。細胞に増殖制御を無効化させて発癌を起こさせるのは、これらの重要な遺伝子およびそれらの下流エフェクターの差異を伴う(differential)発現である。癌において生じる病的変化は、それが単一の遺伝子変異または多数の遺伝的変化のいずれに起因するかにかかわらず、本質的には遺伝子発現の変化によって引き起こされる。星状細胞腫の悪性プログレッションにおいては、多数の遺伝子障害の蓄積が腫瘍化プロセスの基礎をなすことが示されている。これらの障害には、遺伝子p53、p16、RBおよびPTENの変異、さらにはCDK4およびEGFRの増幅が含まれる(Furnari, F.ら、Cancer Surv.、25: 233-275、1995;Cavenee, W.、Cancer.、70: 1788-93、1992)。これらの既知の遺伝的異常は最も悪性度の高い脳腫瘍である膠芽腫の形成においても詳細に報告されているが、悪性腫瘍の基礎をなす遺伝子発現の差異の程度に関する最近の知見からは、正常細胞と腫瘍細胞との間では数百種もの遺伝子転写物が大きく異なるレベルで発現されている可能性があることが明らかになっている(Zhang, L.ら、Science.、276: 1268-72、1997)。このため、これらの癌の複雑な分子的基盤の解明の促進を目的とする、脳の癌細胞およびその他の癌細胞で差異を伴って発現される新規遺伝子の同定には大きな需要がある。さらに、この取り組みには、差異を伴って発現されるこれらの遺伝子産物を特異的な標的とする治療法と組み合わせれば、直接的な臨床上の意義もある。
【0005】
現在はさまざまな方法が、差異を伴う特定の表現型と関連付けられる遺伝子を単離するために用いられている。サブトラクティブハイブリダイゼーション(subtractive hybridazation)法、ディファレンシャルディスプレイ(differential display)法(DD)、レプレゼンテーショナルディファレンス解析(representational difference analysis)法(RDA)、連続的遺伝子発現解析法(SAGE)およびサプレッションサブトラクティブ(suppression subtractive)ハイブリダイゼーション法(SSH)はいずれも、差異を伴って発現される配列のクローニングおよび同定を可能にする。これらの技術はいずれも組織中に豊富に存在するmRNAを同定するが、組織特異的なタンパク質を選別するものは皆無である。タンパク質を合成する能力だけではなくタンパク質産物の存在も実際に確認されるディファレンシャルスクリーニング法によって同定された分子に対しては未だに需要が存在する。さらに、免疫系によって認識される抗原決定基を有しており、有効な免疫応答を誘発しうる腫瘍関連タンパク質に対しても需要が存在する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、多様な癌の治療および検出のための組成物および方法を提供することにより、上記およびその他の需要を満たす。より詳細には、本発明は、GDOX関連分子、GDOX関連分子を含む組成物およびキット、ならびにGDOX関連分子を癌の治療および検出のために用いる方法を提供する。1つの態様において、本発明は、発現制御配列と機能的に結合したGDOXタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターを提供する。核酸分子は、意図した用途に応じて、GDOXタンパク質をセンスまたはアンチセンスのいずれの向きでコードしてもよい。GDOX関連分子の生産のために用いうる、このような発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。いくつかの態様において、核酸分子は検出可能なマーカーによって標識される、または薬学的に許容される担体とともに組成物中にある状態で提供される。
【0007】
本発明はさらに、配列番号:2のアミノ酸62〜65、68〜83、113〜136、129〜178、137〜155および/または159〜178を含む免疫原性GDOXペプチドを含む、GDOXポリペプチドも提供する。GDOXポリペプチドは、個々の用途に適したさまざまな形態で、例えば可溶性の形態、基質上に固定化された状態、または薬学的に許容される担体と組み合わせた状態で提供することができる。このようなGDOXポリペプチドに対する抗体も提供する。いくつかの態様において、抗体は検出可能なマーカーによって標識される、または薬学的に許容される担体とともに組成物中にある状態で提供される。
【0008】
本発明によって提供される方法には、癌細胞をGDOX分子の生物活性を妨げる分子と接触させることを含む、癌細胞の増殖を抑制するための方法が含まれる。生物活性には一般に、GDOXとGDOX抗体との特異的結合、またはGDOXポリヌクレオチドの発現が含まれる。提供される他の方法には、GDOX分子の生物活性を妨げる分子を対象に投与することによって癌を治療するための方法、癌を検出するための方法、および、エストロゲンアンタゴニストに対する感受性のある癌を同定するための方法が含まれる。癌を検出するための方法は、組織標本を、GDOX分子と特異的に結合する検出可能な分子と接触させること、および検出可能な分子の結合を検出することを含む。検出可能な分子の結合によって癌が示される。エストロゲンアンタゴニストに対する感受性のある癌を同定するための方法は、癌標本を、GDOX分子と特異的に結合する検出可能な分子と接触させること、および検出可能な分子の結合を検出することを含む。検出可能な分子の結合により、エストロゲンアンタゴニストに対する感受性のある癌が示される。検出可能な分子の例には、GDOXタンパク質に対する抗体、またはGDOX核酸分子と特異的にハイブリダイズするアンチセンスヌクレオチドが含まれる。代表的には、癌細胞は、脳、肺、前立腺、結腸もしくは乳房、またはGDOXの過剰発現を伴う他の任意の癌に由来する。脳の癌細胞の例には、膠芽腫、星状細胞腫または乏突起神経膠腫の細胞が含まれる。代表的なエストロゲンアンタゴニストにはタモキシフェンがある。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、さまざまなヒト癌で過剰発現される遺伝子GDOXの発見に基づく。GDOXは癌の治療および検出のための新規標的を提供する。さらに、本明細書に記載したデータは、GDOXに対する抗体およびアンチセンスヌクレオチドが、脳、乳房、肺、結腸および前立腺を含むさまざまな組織に由来する癌細胞の増殖を抑制するのに有効であることを示している。したがって、本発明は、さまざまな癌の検出、モニタリングおよび治療のための診断薬および治療薬としてのGDOX関連分子を提供する。
【0010】
定義
別に指定する場合を除き、本出願において用いられるすべての科学用語および技術用語は、当技術分野で一般に用いられているものと同じ意味を有する。本出願において用いる場合、以下の用語および語句は指定された意味を有する。
【0011】
本明細書で用いる場合、「ポリペプチド」には、タンパク質、タンパク質の断片、およびペプチドが、天然の源から単離したもの、組換え法によって作製したもの、または化学合成したものかを問わずに含まれる。本発明のポリペプチドは一般に少なくとも約6アミノ酸を含む。
【0012】
本明細書で用いる場合、「GDOX関連分子」には、GDOXポリペプチド、GDOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、GDOXポリペプチドをコードするものに対して相補的なポリヌクレオチド、GDOXポリペプチドを特異的に認識して結合する抗体が含まれる。
【0013】
本明細書で用いる場合、「GDOXの生物活性」は、GDOXとGDOX結合パートナー(GDOX受容体または抗体など)との特異的結合、GDOXポリヌクレオチドの発現、およびGDOX関連分子の増殖調節作用のことを指す。
【0014】
本明細書で用いる場合、「ベクター」は、目的の1つまたは複数の遺伝子または配列を宿主細胞に送達することが可能な、好ましくは発現させることが可能な、構築物のことを意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、裸のDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、プラスミドベクター、コスミドベクターまたはファージベクター、陽イオン性凝縮剤と会合したDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞などの特定の真核生物細胞が非制限的に含まれる。
【0015】
本明細書で用いる場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を指令する核酸配列のことを意味する。発現制御配列は、構成性もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーターでもよく、またはエンハンサーでもよい。発現制御配列は、転写させようとする核酸配列と機能的に結合している。
【0016】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖の形態にあるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの重合体のことを指し、別に限定しない限り、天然ヌクレオチドと類似した様式で核酸とハイブリダイズする天然ヌクレオチドの既知の類似体も含まれる。
【0017】
本明細書で用いる場合、「抗原提示細胞」または「APC」とは、抗原を処理してリンパ球に対して提示することができる細胞のことを意味する。APCの例には、マクロファージ、ランゲルハンス-樹状細胞、濾胞樹状細胞、B細胞、単球、線維芽細胞および線維細胞が非制限的に含まれる。樹状細胞が好ましいタイプの抗原提示細胞である。樹状細胞は多くの非リンパ性組織で認められるが、これは輸入リンパ管または血流を介してリンパ系器官のT依存性領域に移動することができる。非リンパ系器官にある樹状細胞には、ランゲルハンス細胞および間質性樹状細胞が含まれる。リンパ液中および血液中のものには、それぞれ輸入リンパ管ベール細胞および血中樹状細胞が含まれる。リンパ系器官にあるものにはリンパ系樹状細胞および相互連結(interdigitating)細胞が含まれる。
【0018】
本明細書で用いる場合、エピトープを提示するために「改変された(modified)」とは、自然な方法または組換え法によってエピトープを提示するように操作された抗原提示細胞(APC)のことを指す。例えば、APCは、単離された抗原(単独または混合物の一部として)に対する曝露により、ペプチドローディング(peptide loading)により、または1つもしくは複数のエピトープを含むポリペプチドを発現するようにAPCを遺伝的に改変することにより、改変することができる。
【0019】
本明細書で用いる場合、「腫瘍タンパク質」とは、腫瘍細胞によって発現されるタンパク質のことである。また、腫瘍タンパク質であるタンパク質は、イムノアッセイ法(ELISAなど)でも、癌患者から得た抗血清と検出可能な形で反応する。
【0020】
本明細書で用いる「免疫原性ポリペプチド」は、B細胞および/またはT細胞の表面抗原受容体によって認識される(すなわち、特異的に結合される)タンパク質の一部分である。このような免疫原性ポリペプチドは一般に、癌または感染症と関連のあるタンパク質の少なくとも5アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも10アミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも20アミノ酸残基を含む。ある種の好ましい免疫原性ポリペプチドには、N末端リーダー配列および/または膜貫通ドメインが除去されたペプチドが含まれる。また別の好ましい免疫原性ポリペプチドは、成熟タンパク質に比して、N末端および/またはC末端にわずかな欠失(例えば、1〜30アミノ酸、好ましくは5〜15アミノ酸)を含むと考えられる。
【0021】
本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される担体」には、有効成分と組み合わせた場合に成分の生物活性を保たせるとともに、対象の免疫系との反応性はない、任意の材料が含まれる。その例には、リン酸緩衝食塩液、水、水中油型乳濁液などの乳濁液、および種々のタイプの湿潤剤といった標準的な医薬用担体のうち任意のものが非制限的に含まれる。エアロゾル投与または非経口的投与のために好ましい希釈剤は、リン酸緩衝食塩液または生理的(0.9%)食塩水である。
【0022】
このような担体を含む組成物は、よく知られた従来の方法によって製剤化される(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、A. Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990を参照されたい)。
【0023】
本明細書で用いる「アジュバント」には、免疫応答を促進する目的で当技術分野で一般的に用いられるアジュバントが含まれる。アジュバントの例には以下のものが非制限的に含まれる:ヘルパーペプチド;水酸化アルミニウムゲル(alum)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;フロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MT);Merckアジュバント65(Merck and Company, Inc.、Rahway、NJ);AS-2(Smith-Kline Beecham);QS-21(Aquilla Biopharmaceuticals);MPLまたは3d-MPL(Corixa Corporation、Hamilton、MT);LEIF;カルシウム、鉄または亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオン性または陰イオン性に誘導体化された多糖類;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびクワイルA(quil A);ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン、または、サイトカイン(例えば、GM-CSFまたはインターロイキン-2、インターロイキン-7もしくはインターロイキン-12)および免疫刺激性DNA配列を含む免疫刺激複合体が非制限的に含まれる。いくつかの態様においては、ポリヌクレオチドワクチンなどを用いることにより、ヘルパーペプチドまたはサイトカインなどのアジュバントを、アジュバントをコードするポリヌクレオチドによって提供することもできる。
【0024】
本明細書で用いる「1つの(a)」または「1つの(an)」は、別に明示する場合を除き、少なくとも1つであることを意味する。
【0025】
本発明のポリヌクレオチド
本発明は、配列番号:2のアミノ酸1〜178、19〜21、53〜58、62〜65、65〜85、68〜83、113〜136、105〜128、118〜123、129〜178、137〜155、139〜141もしくは159〜178を含むポリペプチド、またはそれらの一部分もしくは他のバリアントといった1つまたは複数のGDOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。好ましいポリヌクレオチドは、GDOXポリペプチドをコードする、少なくとも15個の連続したヌクレオチド、好ましくは少なくとも30個の連続したヌクレオチド、より好ましくは少なくとも45個の連続したヌクレオチドを含む。このような配列のいずれかに対して完全に相補的なポリヌクレオチドも本発明に含まれる。ポリヌクレオチドは一本鎖(コードまたはアンチセンス)でも二本鎖でもよく、DNA(ゲノム性、cDNAまたは合成性)分子でもRNA分子でもよい。RNA分子には、イントロンを含んでいてDNA分子と一対一に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含まないmRNA分子が含まれる。そのほかのコード配列または非コード配列が、必然的ではないものの、本発明のポリヌクレオチドの内部に存在してもよく、ポリヌクレオチドが、必然的ではないものの、他の分子および/または支持材料と結合していてもよい。このようなGDOXポリヌクレオチドの部分は、組織標本におけるGDOX関連分子の増幅および検出のためのプライマーおよびプローブとして有用と考えられる。
【0026】
ポリヌクレオチドは、天然の配列(すなわち、GDOXポリペプチドまたはその一部分をコードする内因性配列)を含んでもよく、またはこのような配列のバリアントを含んでもよい。ポリヌクレオチドのバリアントは、天然のGDOXタンパク質と対比して、コードされるポリペプチドの免疫原性が減じないような1つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含む。バリアントは、天然のGDOXタンパク質またはその一部分をコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、最も好ましくは少なくとも約90%の同一性を示すことが好ましい。
【0027】
2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、下記のように最も高度な合致が得られるようにアラインメントを行った時に、2つの配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が同じであれば「同一である」と言われる。2つの配列の比較は一般に、配列類似性を有する局所領域の同定および比較のための比較域(comparison window)にわたって配列を比較することによって行われる。本明細書で用いる「比較域」とは、2つの配列の最適なアラインメントを行った後に同数の連続した位置を有する参照配列と比較しうる、少なくとも約20個、通常は30〜約75個、40〜約50個の連続した位置を有するセグメントのことを指す。
【0028】
比較のための配列の最適なアラインメントは、Lasergeneスイート・バイオインフォマティクス用ソフトウエア(DNASTAR, Inc.、Madison、WI)に含まれるMegalignプログラムをデフォールトのパラメーターで用いて行うことができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されたいくつかのアライメント方式を組み入れている:Dayhoff M.O. (1978)「A model of evolutionary change in proteins Matrices for detecting distant relationships」、Dayhoff M.O.(編)、「Atlas of Protein Sequence and Structure」中、National Biomedical Research Foundation、Washington DC Vol. 5、Suppl. 3、pp. 345-358;Hein J. (1990)「Unified Approach to Alignment and Phylogenes」pp. 626-645 Methods in Enzymology vol. 183、Academic Press, Inc.、San Diego、CA;Higgins, D. G.およびSharp, P. M. (1989) CABIOS 5: 151-153;Myers, E. W.およびMuller W. (1988) CABIOS 4:11-17;Robinson, E. D. (1971) Comb. Theor. 11:105;Santou, N.、Nes, M. (1987) Mol. Biol. Evol. 4: 406-425;Sneath, P.H.A.およびSokal, R. R. (1973)「Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy」、Freeman Press、San Francisco、CA;Wilbur, W.J.およびLipman、D.J. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 726-730。
【0029】
「配列同一性のパーセンテージ」は、最適なアラインメントが行われた2つの配列を少なくとも20個の位置を有する比較域にわたって比較することによって決定されることが好ましく、この際、比較域におけるポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、2つの配列の最適なアラインメントのために参照配列(付加も欠失も含まないもの)の20%またはそれ未満、通常は5〜15%または10〜12%の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。パーセンテージは、同一な核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列に存在する位置の数を決定して一致する位置の数を求め、一致する位置の数を参照配列における位置の総数(すなわち、比較域のサイズ)で除算し、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。
【0030】
バリアントは追加的または代替的に、天然の遺伝子またはその一部分もしくは相補物に対して実質的に相同であってもよい。このようなポリヌクレオチドバリアントは、中程度にストリンジェントな条件下で、天然のGDOXタンパク質(または相補的配列)をコードする天然に存在するDNA配列とハイブリダイズしうる。
【0031】
適した「中程度にストリンジェントな条件」には、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH 8.0)溶液中での予洗;50℃〜65℃、5×SSCでの一晩のハイブリダイゼーション;その後に0. 1%SDSを含む2×SSC、0.5×SSCおよび0.2×SSCのそれぞれにより65℃で20分間の洗浄を2回行うこと、が含まれる。
【0032】
本明細書で用いる「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は以下のものである:(1)洗浄のために低イオン強度および高温を用いる、例えば、50℃の0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤を用いる、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液とともに含むもの、pH 6.5、42℃;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストランを42℃で用い、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)、42℃および50%ホルムアミド、55℃で洗浄した後に、EDTAを含む0.1×SSC、55℃による高ストリンジェンシー洗浄を行う。当業者は、プローブ長などの要因に対応させるために温度、イオン強度などを必要に応じて調整するやり方を認識していると考えられる。
【0033】
遺伝暗号の縮重性の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が数多く存在することは当業者に理解されると考えられる。これらのポリヌクレオチドの中には、どの天然の遺伝子のヌクレオチド配列に対してもわずかな相同性しか有していないものがある。しかし、コドンの使用法の違いが理由で異なるポリヌクレオチドは、本発明により明確に想定されている。さらに、本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子も本発明の範囲に含まれる。対立遺伝子とは、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換などの1つまたは複数の変異の結果として変化した内因性遺伝子のことである。その結果生じるmRNAおよびタンパク質は、必然的ではないが、構造または機能が変化することがある。対立遺伝子は、標準的な技術(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベースの配列の比較)を用いて同定することができる。
【0034】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で知られた種々の技術のうち任意のものを用いて調製しうる。GDOXタンパク質をコードするDNAを、GDOXタンパク質mRNAを発現する組織から調製したcDNAライブラリーを用いて入手することもできる。したがって、ヒトGDOX DNAは、ヒト組織から調製したcDNAライブラリーから首尾良く入手することができる。GDOXタンパク質をコードする遺伝子を、ゲノムライブラリーから、またはオリゴヌクレオチドの合成によって入手することもできる。ライブラリーを、目的の遺伝子またはそれによってコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(GDOXに対する抗体、または少なくとも約20〜80塩基のオリゴヌクレオチド)によってスクリーニングすることができる。選択したプローブによるcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーのスクリーニングは、Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載されたものなどの標準的な手順を用いて行える。GDOXをコードする遺伝子を単離するための代替的な手段の一つは、PCR法を用いることである(Sambrookら、前記;Dieffenbachら、「PCR Primer: A Laboratoy Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995))。
【0035】
プローブとして選択するオリゴヌクレオチド配列は、偽陽性物が最小限に抑えられるように十分に長くかつ十分に非多義的(unambiguous)である必要がある。オリゴヌクレオチドは、スクリーニング対象のライブラリー中のDNAとのハイブリダイゼーション後にそれを検出しうるように、標識しておくことが好ましい。標識の方法は当技術分野で周知であり、これには、32P標識ATPなどの放射性標識、ビオチン化または酵素標識の使用が含まれる。中程度のストリンジェンシーおよび高ストリンジェンシーを含むハイブリダイゼーション条件は、Sambrookら、前記に提示されている。
【0036】
ポリヌクレオチドバリアントは一般に、化学合成、例えば固相ホスホルアミダイト化学合成によるものを含む、当技術分野で知られた任意の方法によって調製しうる。オリゴヌクレオチド依存性部位特異的変異誘発法(Adelmanら、DNA 2: 183、1983を参照)などの標準的な変異誘発法を用いて、ポリヌクレオチド配列に改変を導入することもできる。または、DNAが適したRNAポリメラーゼプロモーター(T7またはSP6など)を有するベクターに組み入れられる条件下で、RNA分子を、GDOXタンパク質またはその一部分をコードするDNA配列のインビトロまたはインビボでの転写によって作製することもできる。本明細書に記載の通り、コードされるポリペプチドの調製のためにある特定の部分を用いることもできる。追加的または代替的に、コードされるポリペプチドがインビボで生成されるように、ある部分を患者に投与することもできる(例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞に対して、GDOXポリペプチドをコードするcDNA構築物をトランスフェクトし、そのトランスフェクト細胞を患者に投与することによる)。
【0037】
任意のポリヌクレオチドを、インビボでの安定性を高めるためにさらに改変することもできる。考えられる改変には、5'末端および/もしくは3'末端への隣接配列の付加;骨格にホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエートまたは2' O-メチルを用いること;ならびに/または、イノシン、キューオシンおよびウィブトシンといった通常のものとは異なる塩基、さらにはアデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジンのアセチル化形態、メチル化形態、チオ化形態および類似の修飾形態を含めること、が非制限的に含まれる。
【0038】
確立された組換えDNA法を用いて、ヌクレオチド配列をさまざまな他のヌクレオチド配列と連結することができる。例えば、ポリヌクレオチドを、プラスミド、ファージミド、λファージ派生物およびコスミドを含む、さまざまなクローニングベクターのうち任意のものの中にクローニングすることもできる。特に関心が持たれるベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシークエンシングベクターが含まれる。ベクターは一般に、少なくとも1つの生物において機能する複製起点、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択マーカーを含むと考えられる。その他の因子は所望の用途に依存すると考えられ、これは当業者には明らかであると考えられる。
【0039】
ある種の態様においては、ポリヌクレオチドを、哺乳動物細胞への進入を可能にするため、およびその中での発現を可能にするために製剤化することもできる。このような製剤は、以下に述べるように、治療の目的に特に有用である。当業者は、標的細胞におけるポリヌクレオチドの発現を実現するには多くのやり方があること、および任意の適した方法を用いうることを認識していると考えられる。例えば、ポリヌクレオチドを、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、またはワクシニアウイルスもしくは他のポックスウイルス(例えば、鶏痘ウイルス)などの(ただし、これらには限定されない)、ウイルスベクターに組み入れることもできる。DNAをこの種のベクターに組み入れるための技術は当業者に周知である。レトロウイルスベクターにはさらに、ベクターに標的特異性を付与するために、選択マーカー(形質導入を受けた細胞の同定または選択を補助するため)および/またはターゲティング部分(moiety)の遺伝子、例えば、特定の標的細胞上にある受容体に対するリガンドをコードする遺伝子を導入すること、または組み入れることができる。ターゲティングを、当業者に知られた方法により、抗体を用いて実現することもできる。
【0040】
治療目的のその他の製剤には、コロイド分散系が含まれる。高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに、水中油型乳濁液、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。インビトロおよびインビボでの送達媒体として用いるのに好ましいコロイド系には、リポソーム(すなわち、人工的な膜小胞)がある。この種の系の調製および用法は当技術分野で周知である。
【0041】
アンチセンス分子
本発明のアンチセンス分子は、GDOX遺伝子の全体または断片に対して、実質的に相補的な、または好ましくは完全に相補的な配列が含まれる。GDOX遺伝子のコード配列内のオリゴヌクレオチドの断片もこれに含まれる。特定の遺伝子の新たに生成された核RNA転写物が転写用のmRNAへと成熟するのを防止するために、イントロンとエクソンとの境界にある配列に対して相補的なDNAまたはRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることができる。特定の遺伝子に対して相補的なアンチセンスRNAは、その遺伝子のmRNAとハイブリダイズしてその翻訳を阻止することができる。アンチセンス分子は、DNA、RNA、またはそれらの誘導体もしくはハイブリッド体でありうる。このような誘導体分子の例には、ペプチド核酸(PNA)およびホスホロチオエートを基盤とする分子(デオキシリボ核酸性グアニジン(DNG)またはリボ核酸性グアニジン(RNG)など)が非制限的に含まれる。
【0042】
アンチセンスRNAは、インビトロで合成された「すぐ使用できる(ready-to-use)」RNAとして、または転写後にアンチセンスRNAが生成される、細胞内に安定的にトランスフェクトされたアンチセンス遺伝子として、細胞に与えることができる。mRNAとのハイブリダイゼーションにより、ハイブリダイズした分子のRNアーゼHによる分解および/または翻訳複合体の形成の阻害が起こる。これはいずれも、元の遺伝子の産物が産生されるのを障害させる。
【0043】
本発明のアンチセンスRNA分子およびアンチセンスDNA分子ならびにリボザイムはいずれも、RNA分子の合成を目的とする当技術分野で知られた任意の方法によって調製しうる。これらには、固相ホスホルアミダイト化学合成といったオリゴヌクレオチドの化学合成のための技術が含まれる。または、RNA分子を、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロまたはインビボでの転写によって生成させることもできる。このようなDNA配列を、T7またはSP6といった適したRNAポリメラーゼプロモーターを有する多岐にわたるベクター中に組み入れてもよい。または、アンチセンスRNAを構成性または誘導性に合成するアンチセンスcDNA構築物を、細胞系、細胞または組織に導入することもできる。
【0044】
細胞内での安定性および半減期を増大させるために、DNA分子を改変することもできる。考えられる改変には、5'末端および/もしくは3'末端への隣接配列の付加、または、分子の骨格内にホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエートまたは2' O-メチルを用いることが含まれる。その他の改変には、キメラ性アンチセンス化合物を用いることが含まれる。本発明のキメラ性アンチセンス化合物は、2つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/またはオリゴヌクレオチド模倣物による複合構造物として形成されうる。このような化合物は当技術分野でハイブリッド体またはギャップマー(gapmer)としても言及されている。この種のハイブリッド構造の調製について教示している代表的な米国特許には、米国特許第5,700,922号および同第6,277,603号が非制限的に含まれる。
【0045】
本発明に従って用いられるアンチセンス化合物は、固相合成のよく知られた技術により、首尾良くかつルーチン的に作製しうる。このような合成のための装置は、例えばApplied Biosystems(Foster City、Calif.)を含む、いくつかの製造元から販売されている。当技術分野で知られたこのような合成のための任意の他の手段を追加的または代替的に用いてもよい。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体といったオリゴヌクレオチドを調製するための同様の技術も周知である。
【0046】
本発明のアンチセンス組成物には、DNA二重らせんにおけるホモプリンの局所的な連鎖を認識し、主溝におけるものと結合して三重らせんを形成することができるホモピリミジンで構成されたオリゴヌクレオチドが含まれる。Helen, CおよびToulme, J J.「Specific regulation of gene expression by antisense, sense, and antigene nucleic acids」、Biochem. Biophys Acta、1049: 99-125、1990を参照のこと。三重らせんの形成は、その特定の遺伝子がRNAポリメラーゼによる転写を受ける能力を妨げると考えられる。myc特異的オリゴヌクレオチドを用いた三重らせん形成が観察されている。Cooney, Mら、Science 241: 456-459を参照のこと。
【0047】
DNAまたはRNAのアンチセンス配列を細胞に送達することができる。これらの分子が特異的配列を認識する能力を損なわずに、その安定性を長期にわたらせ、機能を向上させるための化学的修飾がいくつか開発されている。これらには、DNアーゼによる分解に対する抵抗性を高めること(ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、α-アノマーを含む)、ソラレンなどの種々のインターカレート剤との共有結合によって結合パートナーに対する親和性を高めること、および、ポリリシンを含む種々の基との結合によって細胞による取り込みを増加させることが含まれる。これらの分子はmRNA中にコードされている特定の配列を認識し、それらのハイブリダイゼーションはこれらのメッセージの翻訳を妨げるとともにその分解を増加させる。
【0048】
転写および翻訳の阻害のための、オリゴヌクレオチド、その誘導体および類似体を含むアンチセンス組成物、結合プロトコール、ならびにアンチセンス戦略の概要は以下に記載されている:「Antisense Research and Applications」、Crooke, S.およびB. Lebleu編、CRC Press, Inc. Boca Raton Fla. 1993;「Nucleic Acids in Chemistry and Biology」、Blackburn, G.およびM. J. Gait編、IRL Press at Oxford University Press, Inc. New York 1990;ならびに「Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach」、Eckstein, F.編、IRL Press at Oxford University Press, Inc. New York 1991;これらはそれぞれ、参照として本明細書に組み入れられる、そこに引用されたすべての参考文献を含め、参照として本明細書に組み入れられる。
【0049】
GDOXポリペプチド
本明細書に記載のGDOXポリペプチドは任意の長さでよく、一般的には少なくとも約6アミノ酸長である。天然タンパク質および/または異種配列に由来する付加的な配列が存在してもよく、このような配列が、必然的にではないものの、さらにリガンド結合性、免疫原性または抗原性を有してもよい。好ましいポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基1〜178、19〜21、53〜58、62〜65、65〜85、68〜83、113〜136、105〜128、118〜123、129〜178、137〜155、139〜141または159〜178を含む。当業者は、それらの他の部分またはバリアントも癌の治療および検出に有用であると考えられることを認識していると考えられる。
【0050】
免疫原性ポリペプチドは一般に、Paul、「Fundamental Immunology」、第4版、663-665(Lippincott-Raven Publishers、1999)およびそこに引用された参考文献にまとめられているような、よく知られた技術を用いて同定しうる。このような技術には、ポリペプチドを、抗原特異的な抗体、抗血清および/またはT細胞の細胞株もしくはクローンと反応する能力に関してスクリーニングすることが含まれる。本明細書で用いる場合、抗血清および抗体は、それらが抗原と特異的に結合するならば(すなわち、それらがELISAまたは他のイムノアッセイ法でそのタンパク質と反応し、関連性のないタンパク質とは反応しないならば)、抗原特異的である。このような抗血清および抗体はよく知られた技術を用いて調製しうる。免疫原性ポリペプチドは、このような抗血清および/またはT細胞と、完全長ポリペプチドの反応性を実質的に下回らないレベルで反応する(例えば、ELISAおよび/またはT細胞反応性アッセイ法において)、天然タンパク質の一部分でありうる。このような免疫原性部分は、このようなアッセイ法において、完全長ポリペプチドの反応性と同程度であるかそれを上回るレベルで反応すると考えられる。このようなスクリーニングは一般に、HarlowおよびLane、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、1988に記載されたもののような、当業者に周知の方法を用いて行われる。例えば、ポリペプチドを固体支持体上に固定化し、患者の血清と接触させて、血清内の抗体を固定化されたポリペプチドと結合させる。続いて、結合しなかった血清を除去し、結合した抗体を、例えば、125I標識したプロテインAを用いて検出する。
【0051】
本発明のGDOXポリペプチドには、天然のGDOXタンパク質のバリアントが含まれうる。ポリペプチドの「バリアント」とは、本明細書で用いる場合、ポリペプチドの免疫原性が実質的に減じないような1つまたは複数の置換、欠失、付加および/または挿入がある点で、天然のGDOXタンパク質と異なるポリペプチドのことである。言い換えれば、バリアントが抗原特異的な抗血清と反応する能力は、天然タンパク質に比して高くても不変でもよく、または天然タンパク質に比して50%未満、好ましくは20%未満の減少があってもよい。このようなバリアントは一般に、以上のポリペプチド配列の1つを改変し、改変されたポリペプチドと抗原特異的な抗体または抗血清との反応性を本明細書に記載した通りに評価することによって同定しうる。好ましいバリアントには、N末端リーダー配列などの1つまたは複数の部分が除去されたものが含まれる。その他の好ましいバリアントには、わずかな部分(例えば、1〜30アミノ酸、好ましくは5〜15アミノ酸)が成熟タンパク質のN末端および/またはC末端から除去されたバリアントが含まれる。ポリペプチドのバリアントは、同定されたポリペプチドに対して好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の同一性(上記ようにして決定される)を示す。
【0052】
好ましくは、バリアントには保存的置換物が含まれる。「保存的置換物」とは、ペプチド化学の当業者であればポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標の性質が実質的に変化しないと考えるような、あるアミノ酸が類似した特性を有する別のアミノ酸に置換されたもののことである。アミノ酸置換物は一般に、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいて作製される。例えば、負に荷電したアミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる;正に荷電したアミノ酸にはリシンおよびアルギニンが含まれる;ならびに、類似した親水性値を有する非荷電極性頭部基を持つアミノ酸には、ロイシン、イソロイシンおよびバリン;グリシンおよびアラニン;アスパラギンおよびグルタミン;ならびにセリン、トレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが含まれる。保存的変化に相当しうるアミノ酸の他の群には以下のものが含まれる:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gIn、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。バリアントが、追加的または代替的に、非保存的な変化を含んでもよい。1つの好ましい態様において、バリアントポリペプチドは、5つまたはそれ未満のアミノ酸の置換、欠失または付加のために、天然のアミノ酸と異なる。バリアントを、追加的(または代替的)に、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造および疎水性親水性指標の性質に対してわずかしか影響を及ぼさない、アミノ酸の欠失または付加によって改変することもできる。
【0053】
ポリペプチドが、翻訳と同時にまたは翻訳後にタンパク質の移動を導くシグナル(またはリーダー)配列を、タンパク質のN末端に含んでもよい。ポリペプチドを、リンカーまたはその他の配列と、ポリペプチドの合成、精製もしくは同定を容易にするため(例えば、ポリ-FE)またはポリペプチドと固体支持体との結合を増強するために結合させてもよい。例えば、ポリペプチドを免疫グロブリンFc領域と結合させることができる。
【0054】
いくつかの態様においては、ポリペプチドを、組成物を投与する予定の同じ対象から精製する。これらの態様においては、腫瘍細胞または感染細胞の数を増やすことが望ましい場合がある。細胞のこのような増加は、インビトロまたはインビボで、例えばSCIDマウス系を用いて行いうると考えられる。SCIDマウス宿主でヒト対象の腫瘍を増殖させることなどにより、細胞を非ヒト細胞の存在下で増加させる場合には、ヒト細胞を、腫瘍内に浸潤している可能性のあるすべての非ヒト(例えば、マウス)細胞から精製するように注意を払う必要がある。精製するポリペプチドを得た同じ対象に対して組成物を投与するこれらの態様においては、限られた量の出発材料の有効性を最適化するために、いくつかのGDOXポリペプチドを精製することが望ましい場合もある。
【0055】
上記のDNA配列によってコードされる組換えポリペプチドは、当業者に知られたさまざまな発現ベクターのうち任意のものを用いて、DNA配列から容易に調製することができる。発現は、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターによる形質転換またはトランスフェクションを受けた任意の適した宿主細胞に行わせることができる。適した宿主細胞には、原核細胞、酵母細胞および高等真核細胞が含まれる。用いる宿主細胞は、大腸菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、またはCOSもしくはCHOなどの哺乳動物細胞の細胞株であることが好ましい。組換えタンパク質またはポリペプチドを培地中に分泌する適した宿主/ベクター系による上清を、市販のフィルターを用いてまず濃縮する。濃縮後に、濃縮物をアフィニティーマトリックス(affinity matrix)またはイオン交換樹脂などの適した精製マトリックスに対して適用する。最後に、組換えポリペプチドをさらに精製するために、1回または複数回の逆相HPLC工程を行うことができる。
【0056】
約100アミノ酸未満のみ、一般には約50アミノ酸未満のみを有する部分およびその他のバリアントを、当業者に周知の技術を用いる合成手段によって作製することもできる。例えば、このようなポリペプチドを、成長過程にあるアミノ酸鎖に対してアミノ酸を逐次的に添加するメリフィールド(Merrifield)固相合成法などの、市販の固相法の任意のものを用いて合成してもよい。Merrifleld, J. Am. Chem. Soc. 85: 2149-2146、1963を参照のこと。ポリペプチドの自動合成のための装置は、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division(Foster City、CA)から市販されており、製造元の指示に従って動作させることができる。
【0057】
ポリペプチドは、Perkin Elmer/Applied Biosystems Division 430Aペプチド合成装置により、FMOC化学物質をHPTU(O-ベンゾトリアゾールN,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)による活性化とともに用いて合成することができる。結合、固定化された表面との結合、またはペプチドの標識の方法を得るために、Gly-Cys-Gly配列をペプチドのアミノ末端に結合させることもできる。固体支持体からのペプチドの切断は以下の切断用混合物を用いて行いうる:トリフルオロ酢酸:エタンジチオール:チオアニソール:水:フェノール(40:1:2:2:3)。切断から2時間後に、ペプチドを冷メチル-t-ブチル-エーテル中で沈殿させる。続いて、ペプチドのペレットを0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む水中に溶解させ、C18逆相HPLCによる精製の前に凍結乾燥を行う。ペプチドを溶出させるには、水との0%〜60%アセトニトリル勾配(0.1%TFAを含む)を用いるとよい。純粋な画分の凍結乾燥の後に、エレクトロスプレー法またはその他の種類の質量分析法およびアミノ酸分析により、ペプチドの特徴を調べることができる。
【0058】
融合タンパク質
いくつかの態様において、本ポリペプチドは、本明細書に記載の複数のポリペプチドを含む、または本明細書に記載の少なくとも1つのポリペプチドおよび関連性のない配列を含む、融合タンパク質である。いくつかの態様において、融合タンパク質は、GDOXポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチドを含む。免疫原性ポリペプチドには、例えば、別の腫瘍タンパク質の全体または一部分が含まれうる。
【0059】
そのほかの融合パートナーを加えることもできる。融合パートナーは例えば、Tヘルパーエピトープ、好ましくはヒトによって認識されるTヘルパーエピトープの提供を補助することにより、免疫学的融合パートナーとしての役割を果たす。もう1つの例として、融合パートナーは、そのままの組換えタンパク質よりも高率にタンパク質を発現させることにより、発現増強因子としての役割を果たす。ある種の好ましい融合パートナーは、免疫学的でしかも発現を増強する融合パートナーである。タンパク質の溶解性を高めるため、またはタンパク質を所望の細胞内区画に向かわせるために、他の融合パートナーを選択することもできる。さらに別の融合パートナーには、タンパク質の精製を容易にするアフィニティータグが含まれる。
【0060】
融合タンパク質は一般に、化学的結合を含む、標準的な技術を用いて調製しうる。融合タンパク質は、発現系において非融合タンパク質よりも高いレベルでの産生が可能となるように、組換えタンパク質として発現させることが好ましい。簡潔に述べると、ポリペプチド構成要素をコードするDNA配列を別個に構成した上で、適切な1つの発現ベクター中に連結する。1つのポリペプチド構成要素をコードするDNA配列の3'末端を、ペプチドリンカーの存在下または非存在下で、第2のポリペプチド構成要素をコードするDNA配列の5'末端と連結させ、配列のリーディングフレームが同相となるようにする。これにより、両方の構成要素ポリペプチドの生物活性を保っている単一の融合タンパク質としての翻訳が可能になる。
【0061】
ペプチドリンカー配列は、第1および第2のポリペプチド構成要素を、各ポリペプチドがフォールディングによってその二次構造および三次構造を確実に形成するために十分な距離にわたって隔てるために用いうる。このようなペプチドリンカー配列は、当技術分野で周知の標準的な技術を用いて融合タンパク質に組み入れられる。適したペプチドリンカー配列は以下の要因に基づいて選択しうる:(1)柔軟な伸長性コンフォメーションをとる能力があること;(2)第1および第2のポリペプチド上の機能性エピトープと相互作用しうる二次構造をとらないこと;ならびに(3)ポリペプチドの機能性エピトープと反応する可能性のある疎水性残基および荷電残基を有していないこと。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、AsnおよびSer残基を含む。ThrおよびAlaといったその他のほぼ中性のアミノ酸をリンカー配列中に用いてもよい。リンカーとして有用に用いうるアミノ酸配列には、Marateaら、Gene 40: 39-46、1985;Murphyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 8258-8262、1986;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に記載されたものが含まれる。リンカー配列は一般に1〜約50アミノ酸長である。リンカー配列は、第1および第2のポリペプチドが、機能性ドメインの分離および立体的干渉の防止のために用いうる非必須アミノ酸領域をN末端に有している場合には必要でない。
【0062】
連結されたDNA配列は、適した転写調節因子または翻訳調節因子と機能的に結合されている。DNAの発現の原因となる調節因子は、第1のポリペプチドをコードするDNA配列の5'側に位置する。同様に、翻訳および転写の終結シグナルを終了させるために必要な終止コドンは第2のポリペプチドをコードするDNA配列の3'側に位置する。
【0063】
本発明のポリペプチドを関連性のない免疫原性タンパク質とともに含む融合タンパク質も提供される。この免疫原性タンパク質は記憶応答を誘発しうることが好ましい。このようなタンパク質の例には、破傷風菌、結核菌および肝炎関連のタンパク質が含まれる(例えば、Stouteら、New Engl. J. Med. 336: 86-91、1997を参照)。
【0064】
好ましい態様において、免疫学的融合パートナーは、グラム陰性菌B型インフルエンザ菌の表面タンパク質であるプロテインDである(国際公開公報第91/18926号)。プロテインD誘導体はこのタンパク質のほぼ3分の1(例えば、N末端の最初の100〜110アミノ酸)を含むことが好ましく、プロテインD誘導体を脂質化してもよい。ある種の好ましい態様においては、補足的な外因性T細胞エピトープを有するポリペプチドを得るため、および大腸菌における発現レベルを高める(すなわち発現増強因子として機能させる)ために、リポプロテインD融合パートナーの最初の109残基をN末端に含める。この脂質尾部により、抗原が抗原提示細胞に対して確実に最適に提示されることになる。他の融合パートナーには、インフルエンザウイルスの非構造性タンパク質であるNS I(ヘマグルチニン)が含まれる。N末端の81アミノ酸が用いられることが代表的であるが、Tヘルパーエピトープを含む異なる断片を用いることもできる。
【0065】
もう1つの態様において、免疫学的融合パートナーは、LYTAとして知られるタンパク質またはその一部分(好ましくはC末端部分)である。LYTAは、アミダーゼLYTAとして知られるN-アセチル-L-アラニンアミダーゼを合成する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)に由来する(これはLytA遺伝子によってコードされる;Gene 43: 265-292、1986)。LYTAは、ペプチドグリカン骨格内のいくつかの特定の結合を特異的に分解する自己溶菌酵素である。LYTAタンパク質のC末端ドメインは、コリンまたはDEARなどのいくつかのコリン誘導体に対する親和性の原因となっている。この性質は、融合タンパク質の発現のために有用な大腸菌C-LYTA発現プラスミドの開発に利用されている。C-LYTA断片をアミノ末端に含むハイブリッドタンパク質の精製が記載されている(Biotechnology 10: 795-798、1992を参照)。好ましい態様においては、LYTAの反復部分を融合タンパク質に組み入れる。反復部分は残基178から始まるC末端領域に認められる。特に好ましい反復部分は残基188〜305を含むものである。
【0066】
一般に、本明細書に記載のポリペプチド(融合タンパク質を含む)およびポリヌクレオチドは単離された状態にある。「単離された」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとは、その本来の環境から取り出されたもののことである。例えば、天然のタンパク質は、それが天然の系において共存する材料の一部またはすべてから分離されていれば、単離されている。好ましくは、このようなポリペプチドの純度は少なくとも約90%であり、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約99%である。ポリヌクレオチドは、例えば、それが天然の環境の一部ではないベクター中にクローニングされていれば、単離されているとみなされる。
【0067】
抗体
「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、特に、単独の抗GDOXモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニストおよび中和抗体を含む)および多エピトープ特異性を有する抗GDOX抗体組成物を対象として含む。本明細書で用いる「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体のことを指し、すなわち、個々の集団を構成する抗体は、微量に存在する可能性のある天然の変異を例外として同一である。
【0068】
本発明は、GDOXタンパク質およびGDOXポリペプチドと結合する抗体を提供する。最も好ましい抗体は、GDOXタンパク質とは特異的に結合するが、GDOXでないタンパク質およびポリペプチドとは結合しない(または弱くしか結合しない)と考えられる。特に想定している抗GDOX抗体には、モノクローナルおよびポリクローナル抗体のほか、これらの抗体の抗原結合ドメインおよび/または1つもしくは複数の相補性決定領域を含む断片が含まれる。本明細書で用いる場合、抗体断片は、標的と結合する免疫グロブリン分子の可変領域、すなわち抗原結合領域の少なくとも一部分と定義される。本発明の好ましい抗体および抗体断片は、GDOXタンパク質の以下の部分のうち一方または両方と特異的に結合する:
。
【0069】
本発明のGDOX抗体は、癌の診断アッセイ法および予後判定アッセイ法、ならびに画像化法において特に有用と思われる。細胞内で発現される抗体(例えば、一本鎖抗体)は、GDOXの発現が関係している癌、例えば進行性および転移性の脳悪性腫瘍、さらには肺、乳房、結腸または前立腺の癌などの治療において治療的に有用と思われる。同じく癌の治療のための治療方法として有用なものには、GDOXの機能を妨げる、または毒素もしくは治療分子の送達のためにGDOXを発現する細胞を標的とする、全身投与性のGDOX抗体がある。毒素または治療分子のこのような送達は、第2の分子をGDOX抗体またはその断片と結合させる既知の方法を用いて行いうる。同様に、このような抗体は、他の種類の癌において同じくGDOXが発現または過剰発現される範囲で、他の癌の治療、診断および/または予後判定にも有用と思われる。
【0070】
本発明はまた、GDOXポリペプチドの検出および定量のために有用なさまざまな免疫学的アッセイ法も提供する。このようなアッセイ系は一般に、GDOXを認識して結合することが可能な1つまたは複数のGDOX抗体を含み、さまざまな種類のラジオイムノアッセイ法、固相酵素免疫アッセイ法(ELISA)、酵素結合免疫蛍光アッセイ法(ELIFA)などを非制限的に含む、当技術分野で周知のさまざまな免疫学的アッセイ形式で行える。さらに、標識したGDOX抗体を用いる放射性シンチグラフィー画像化法を非制限的に含む、GDOXを発現している癌を検出しうる免疫学的画像化法も本発明によって提供される。このようなアッセイ法は、GDOXを発現している癌の検出、モニタリングおよび予後判定において臨床的に有用であると思われる。
【0071】
抗体の調製のための方法はさまざまなものが当技術分野で周知である。例えば、単離された形態または免疫複合体の形態にあるGDOXタンパク質、ペプチドまたは断片を用いて適した哺乳動物宿主の免疫処置を行うことにより、抗体を調製することができる(「Antibodies: A Laboratory Manual」、CSH Press、HarlowおよびLane編(1988);Harlow、「Antibodies」、Cold Spring Harbor Press、NY (1989))。さらに、GDOX GST-融合タンパク質といったGDOXの融合タンパク質を用いることもできる。もう1つの態様において、GDOXペプチドを合成して免疫原として用いてもよい。
【0072】
抗体または断片を、組換え手段による現行の技術を用いて作製することもできる。GDOXタンパク質の所望の領域と特異的に結合する領域を、複数の種に由来するキメラ抗体またはCDRグラフト化抗体に関連して作製することもできる。ヒト化抗体またはヒトGDOX抗体を作製することもでき、これらは治療的状況で用いるのに好ましい。非ヒト抗体CDRの1つまたは複数を対応するヒト抗体配列によって置き換えることによってマウス抗体およびその他の非ヒト抗体をヒト化するための方法は周知である(例えば、Jonesら、1986、Nature 321: 522-525;Riechmannら、1988、Nature 332: 323-327;Verhoeyenら、1988、Science 239: 1534-1536を参照)。同じく、Carterら、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 4285およびSimsら、1993、J. Immunol. 151: 2296も参照されたい。完全ヒトモノクローナル抗体の作製のための方法には、ファージディスプレイ法およびトランスジェニック法が含まれる(総説については、Vaughanら、1998、Nature Biotechnology 16: 535-539を参照されたい)。
【0073】
完全ヒトGDOXモノクローナル抗体を、大規模なヒトIg遺伝子コンビナトリアルライブラリーを用いるクローニング技術(すなわち、ファージディスプレイ)を用いて作製することもできる(GriffithsおよびHoogenboom、「Building an in vitro immune system: human antibodies from phage display libraries」、「Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications in Man」中、Clark, M.(編)、Nottingham Academic、pp 45-64 (1993);BurtonおよびBarbas、「Human Antibodies from combinatorial libraries」、同上、pp 65-82)。また、1997年12月3日に公開されたKucherlapatiおよびJakobovitsらの国際公開公報第98/24893号に記載されたように、完全ヒトGDOXモノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたトランスジェニックマウスを用いて産生させることもできる(同じくJakobovits、1998、Exp. Opin. Invest. Drugs 7(4):607-614も参照されたい)。この方法では、ファージディスプレイ技術では必要なインビトロ操作が必要なく、信頼性のある高親和性ヒト抗体を効率的に産生させることができる。
【0074】
GDOX抗体のGDOXタンパク質との反応性は、GDOXタンパク質、ペプチド、GDOX発現細胞またはその抽出物を適宜用いる、ウエスタンブロット法、免疫沈降、ELISAおよびFACS解析を含む、よく知られた数多くの手段によって確認しうる。
【0075】
本発明のGDOX抗体またはその断片を、検出可能なマーカーによって標識すること、または第2の分子と結合させることもできる。適した検出可能なマーカーには、放射性同位体、蛍光性化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が非制限的に含まれる。GDOX抗体と結合させるための第2の分子は、意図する用途に応じて選択することができる。例えば、治療用途の場合、第2の分子は毒素または治療薬でありうる。さらに、2つまたはそれ以上のGDOXエピトープに対して特異的な二重特異性抗体を、当技術分野で一般的に知られた方法を用いて作製することもできる。ホモ二量体性抗体を当技術分野で知られた架橋法によって作製することもできる(例えば、Wolffら、Cancer Res. 53: 2560-2565)。
【0076】
T細胞
免疫治療的組成物は、追加的または代替的に、GDOXポリペプチドに対して特異的なT細胞を含みうる。このような細胞は一般に、標準的な手順を用いてインビトロまたはエクスビボで調製することができる。例えば、T細胞を、患者の骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分から、Nexell Therapeutics、Irvine、CA(米国特許第5,536,475号も参照のこと)から販売されているISOLEX(商標)磁気的細胞選別システム;またはPan T Cell Isolation Kit、CD4+ T Cell Isolation KitおよびCD8+ T Cell Isolation Kitを含む、Miltenyi Biotec社のMACS細胞分離技術などの、市販の細胞分離システムを用いて単離することもできる(米国特許第5,240,856号;米国特許第5,215,926号;国際公開公報第89/06280号;国際公開公報第91/16116号および国際公開公報第92/07243号も参照のこと)。または、T細胞を、関係があるかまたは関係のないヒト、非ヒト哺乳動物、細胞系または培養物から得ることもできる。
【0077】
T細胞を、GDOXポリペプチド、GDOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはこのようなGDOXポリペプチドを発現する抗原提示細胞(APC)によって刺激してもよい。刺激は、ポリペプチドに対して特異的なT細胞の生成が可能となるのに十分な条件下および時間にわたって行われる。GDOXポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、特異的T細胞の生成を容易にするためのミクロスフェアなどの送達媒体内に存在することが好ましい。
【0078】
T細胞は、GDOXポリペプチドでコートされた標的細胞、またはGDOXポリペプチドをコードする遺伝子を発現している標的細胞をT細胞が死滅させるならば、そのポリペプチドに対して特異的であるとみなされる。T細胞の特異性は、さまざまな標準的な技術の任意のものを用いて高めることができる。例えば、クロム遊離アッセイ法または増殖アッセイ法では、溶解および/または増殖に関する刺激指数が陰性対照との比較で2倍を上回ることにより、T細胞の特異性が示される。このようなアッセイ法は、例えば、Chenら、Cancer Res. 54: 1065-1070、1994に記載された通りに行うことができる。
【0079】
T細胞の増殖の検出はさまざまな既知の技術によって行える。例えば、DNA合成速度の上昇を測定することにより(例えば、T細胞の培養物をトリチウム標識チミジンでパルス的に標識し、DNAに取り込まれたトリチウム標識チミジンの量を測定することにより)、T細胞の増殖を検出することができる。GDOXタンパク質(100ng/ml〜100μg/ml、好ましくは200ng/ml〜25μg/ml)と3〜7日間接触させると、T細胞の増殖は少なくとも2倍に増大するはずである。上記のように2〜3時間の接触させると、サイトカイン(例えば、TNFまたはIFN-γ)遊離レベルが2倍に上昇することによってT細胞の活性化が示されるような標準的なサイトカインアッセイ法を用いた測定により、T細胞の活性化が引き起こされるはずである(Coliganら、「Current Protocols in Immunology」、vol. 1、Wiley Interscience(Greene 1998)を参照のこと)。GDOXポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはポリペプチド発現性APCに応じて活性化されるT細胞は、CD4陽性(CD4+)および/またはCD8陽性(CD8+)であってよい。T細胞は標準的な技術を用いて増殖させることができる。
【0080】
好ましい態様において、T細胞は、患者、または関係があるかもしくは無関係のないドナーから得られ、刺激および増殖の後に患者に対して投与される。治療目的の場合、GDOXポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはAPCに反応して増殖するCD4+またはCD8+ T細胞の数をインビトロまたはインビボで増やすことができる。このようなT細胞のインビトロでの増殖はさまざまな方式で行える。例えば、T細胞を、添加したT細胞増殖因子(インターロイキン-2など)および/または刺激細胞の存在下または非存在下で、GDOXポリペプチドに対して再び曝露させることができる。または、GDOXポリペプチドの存在下で増殖する1つまたは複数のT細胞の数をクローニングによって増やすこともできる。細胞のクローニングのための方法は当技術分野で周知であり、これには限界希釈法が含まれる。
【0081】
薬学的組成物およびワクチン
本発明は、免疫原性組成物(すなわち、ワクチン)を含む、薬学的組成物中に組み入れられた、GDOXポリペプチド、ポリヌクレオチド、T細胞および/または抗原提示細胞を提供する。薬学的組成物は1つまたは複数のこのような化合物を含み、選択的には、生理的に許容される担体も含む。ワクチンは、1つまたは複数のこのような化合物、および、非特異的な免疫応答増強物質としての役割を果たすアジュバントを含む。アジュバントは外因性抗原に対する免疫応答を増強する任意の物質であってよい。アジュバントの例には、従来のアジュバント、生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクトチド(polylactic galactide))、免疫賦活性オリゴヌクレオチドおよびリポソーム(内部に化合物が組み入れられる;例えば、Fullerton、米国特許第4,235,877号を参照)が含まれる。ワクチンの調製に関しては、例えば、M. F. PowellおよびM.J. Newman編、「(Vaccine Design (the subunit and adjuvant approach)」、Plenum Press(NY、1995)を参照されたい。本発明の範囲に含まれる薬学的組成物およびワクチンは他の化合物を含んでもよく、それは生物活性があってもなくてもよい。例えば、他の腫瘍抗原の1つまたは複数の免疫原性部分が、融合ポリペプチドに組み入れられた状態または単独の化合物として、組成物またはワクチンの内部に存在してもよい。
【0082】
薬学的組成物またはワクチンは、ポリペプチドがインサイチューで生成されるように、本明細書に記載のポリペプチドの1つまたは複数をコードするDNAを含みうる。上記の通り、DNAは、核酸発現系、細菌性およびウイルス性発現系を含む、当業者に知られたさまざまな発現系のうち任意のものの内部に存在しうる。Rolland、Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15: 143-198、1998およびそこに引用された参考文献に記載されたものなどの、数多くの遺伝子送達法が当技術分野で周知である。適切な核酸発現系は、患者における発現のために必要なDNA配列(適したプロモーターシグナルおよび終結シグナル)を含む。細菌送達系は、ポリペプチドの免疫原性部分を細胞表面に発現する、またはこのようなエピトープを分泌する細菌(カルメット・ゲラン菌(Bacillus-Calmette-Guerrin)など)の投与を伴う。
【0083】
1つの好ましい態様において、DNAはウイルス発現系(例えば、ワクシニアウイルスまたは他のポックスウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルス)を用いて導入することができ、これには非病原性(欠損性)で複製能のあるウイルスの使用が含まれうる。適した系は例えば以下のものに開示されている:Fisher-Hochら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 317-321、1989;Flexnerら、Ann. N. Y. Acad Sci. 569: 86-103、1989;Flexnerら、Vaccine 8: 17-21、1990;米国特許第4,603,112号、同第4,769,330号および同第5,017,487号;国際公開公報第89/01973号;米国特許第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;欧州特許第0,345,242号;国際公開公報第91/02805号;Berkner-Biotecbniques 6: 616-627、1988;Rosenfeldら、Science 252: 431-434、1991;Kollsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 215-219、1994;Kass-Eislerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 11498-11502、1993;Guzmanら、Circulation 88: 2838-2848、1993;およびGuzmanら、Cir. Res. 73: 1202-1207、1993。このような発現系にDNAを組み入れるための技術は当業者に周知である。DNAは「裸の(naked)」状態であってもよく、これは例えば、Ulmerら、Science 259: 1745-1749、1993に記載され、Cohen、Science 259: 1691-1692、1993に総説がある。裸のDNAの取り込みは、細胞内に効率的に輸送される生分解性ビーズの表面にDNAをコーティングすることによって増加させることができる。
【0084】
当業者に知られた任意の適切な担体を本発明の薬学的組成物に用いうるが、担体の種類は投与の様式に依存すると考えられる。本発明の組成物は、任意の適した投与様式のために製剤化しうると考えられ、これには例えば、局所外用、経口、経鼻、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下、皮内または筋肉内投与が含まれる。皮下注射などの非経口的投与のための担体には好ましくは水、食塩水、アルコール、脂肪、蝋状物質または緩衝液が含まれる。経口投与のためには、以上の担体または固体担体の任意のもの、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムを用いうる。生分解性ミクロスフェア(例えば、乳酸グリコール酸重合体)を、本発明の薬学的組成物のための担体として用いることもできる。適した生分解性ミクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号および同第5,075,109号に開示されている。
【0085】
さらに、担体は、製剤のpH、容量オスモル濃度、粘度、透明性、色調、無菌性、安定性、溶解速度または匂いを改変または維持するための他の薬学的に許容される添加剤を含みうる。同様に、担体は、GDOX関連分子の安定性、溶解速度、放出、または脳血液関門を介した吸収もしくは浸透を改変または維持するためのさらに別の薬学的に許容される添加剤も含みうる。このような添加剤は、単回投与もしくは多回投与の形態での非経口的投与のため、または植え込んだポンプからの連続的もしくは定期的な注入によるCSF中への直接注入のために通常および慣例的に用いられている物質である。
【0086】
このような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝食塩水またはリン酸緩衝食塩液)、糖質(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸(グリシンなど)、抗酸化物質、キレート剤(EDTAまたはグルタチオンなど)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)および/または保存料も含みうる。
【0087】
または、本発明の組成物を凍結乾燥物として製剤化することもできる。よく知られた技術を用いて化合物をリポソーム中に封入することもできる。
【0088】
さまざまなアジュバントのうち任意のものを本発明のワクチンに用いることができる。ほとんどのアジュバントは、抗原を急速な異化作用から防御するように意図した物質(水酸化アルミニウムまたは鉱油など)、および免疫応答の賦活物質(リピドA、百日咳菌(Bortadella pertussis)または結核菌由来(Mycobacterium tuberculosis)のタンパク質など)を含む。適したアジュバントは、例えば、フロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);Merckアジュバント65(MerckおよびCompany, Inc.、Rahway、NJ);水酸化アルミニウムゲル(alum)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄または亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオン性または陰イオン性に誘導体化された多糖類;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびクワイルA(quil A)として販売されている。GM-CSFまたはインターロイキン-2、インターロイキン-7もしくはインターロイキン-12などのサイトカインもアジュバントとして用いうる。
【0089】
本明細書に提供するワクチンにおいて、アジュバント組成物は、主としてTh1型の免疫応答を誘導するように設計されることが好ましい。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN-α、IL-2およびIL-12)は、投与された抗原に対する細胞性免疫応答の誘導を促す傾向がある。対照的に、高レベルのTh2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10およびTNF-β)は体液性免疫応答の誘導を促す傾向がある。本明細書中に提供するワクチンの適用後に、患者はTh1型応答およびTh2型応答を含む免疫応答を維持すると考えられる。応答が主としてTh1型である1つの好ましい態様において、Th1型サイトカインのレベルはTh2型サイトカインのレベルを上回る程度に上昇すると考えられる。これらのサイトカインのレベルは標準的なアッセイ法を用いて容易に評価しうる。サイトカインファミリーに関する総説については、MosmannおよびCoffman、1989、Ann. Rev. Immunol. 7: 145-173を参照されたい。
【0090】
本明細書に記載の組成物を、持続放出製剤(すなわち、投与後に化合物の緩徐な放出を生じるカプセルまたはスポンジなどの製剤)の一部として投与することもできる。このような製剤は公知の技術を用いて一般に調製され、例えば、経口的、直腸内もしくは皮下移植により、または所望の標的部位(腫瘍の外科的切除部位など)への移植により、投与される。持続放出製剤は、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体を、担体マトリックス中に分散された、および/または律速性の膜に囲まれた貯蔵部内に包含された状態で含みうる。このような製剤の内部に用いるための担体は生体適合性があり、さらに生分解性であってもよい;製剤により、有効成分の比較的一定したレベルの放出が得られることが好ましい。持続放出製剤内に含まれる活性化合物の量は、移植の部位、放出の速度および予想期間ならびに治療または予防しようとする状態の性質に依存する。
【0091】
抗原提示細胞
腫瘍細胞を標的とする抗原特異的な免疫応答の生成を促進するために、さまざまな送達媒体のうち任意のものを薬学的組成物およびワクチンに用いることができる。送達媒体には、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球などの抗原提示細胞(APC)、および効率的なAPCとなるように遺伝的に改変しうるその他の細胞が含まれる。このような細胞は、必然的にではないが、抗原の提示能力を高めるため、T細胞応答の活性化および/もしくは維持のため、それ自体に抗腫瘍作用もしくは抗感染症作用を持たせるため、ならびに/またはレシピエントと免疫学的に適合させるため(すなわち、BLAハプロタイプの一致)に、遺伝的に改変することができる。APCは一般に、腫瘍および腫瘍周囲組織を含む、さまざまな生物性液体および臓器のうち任意のものから単離することができ、これは自己細胞、同種細胞、同系細胞または異種細胞のいずれでもよい。
【0092】
本発明のある種の好ましい態様では、樹状細胞またはその前駆細胞を抗原提示細胞として用いる。樹状細胞は非常に作用の強いAPCであり(BanchereauおよびSteinman、Nature 392: 245-251、1998)、予防的または治療的な免疫を誘発させるための生理的アジュバントとして有効なことが示されている(TimmermanおよびLevy、Ann. Rev. Med. 50: 507-529、1999を参照のこと)。一般に、樹状細胞はその典型的な形態(インサイチューで星状であり、インビトロで顕著な細胞質突起(樹状突起)が認められる)、ならびに、標準的なアッセイ法を用いた評価でB細胞(CD19およびCD20)、T細胞(CD3)、単球(CD14)およびナチュラルキラー細胞(CD56)の分子マーカーが存在しないことに基づいて同定しうる。当然ながら、樹状細胞を、インビボまたはエクスビボの樹状細胞には一般に認められない特定の細胞表面受容体またはリガンドを発現するように操作することもでき、このような改変樹状細胞を本発明では考慮している。樹状細胞に代わるものとして、分泌小胞を含む樹状細胞(エキソソームと呼ばれる)をワクチンに用いることもできる(Zitvogelら、1998、Nature Med. 4: 594-600)。
【0093】
樹状細胞および前駆細胞は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周囲組織浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血または任意の他の適した組織または液体から入手しうる。例えば、末梢血から収集した単球の培養物にGM-CSF、IL4、IL-13および/またはTNFαなどのサイトカインの配合物を添加することにより、樹状細胞をエクスビボで分化させることもできる。または、GM-CSF、IL-3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンドならびに/または樹状細胞の成熟および増殖を誘導する他の化合物の配合物を培地に添加することにより、末梢血、臍帯血または骨髄から収集したCD34陽性細胞を樹状細胞に分化させることもできる。
【0094】
樹状細胞は「未熟」および「成熟」細胞として分類することが好都合であり、これは詳細に特徴が判明している2つの表現型を区別する簡単なやり方である。しかし、この命名法は、可能性のあるすべての中間的な分化段階を除外するものとみなされるべきではない。未熟樹状細胞は抗原の取り込みおよびプロセシングを行う能力が高いAPCとして特徴づけられ、この能力はFcγ受容体、マンノース受容体およびDEC-205マーカーの高発現と相関している。成熟表現型は一般にこれらのマーカーの低発現を特徴とするが、クラスIおよびクラスII MHC分子、接着分子(例えば、CD54およびCD11)および補助刺激分子(例えば、CD40、CD80およびCD86)などのT細胞活性化の原因となる細胞表面分子は高発現される。
【0095】
APCに対しては一般に、GDOXポリペプチドまたはその免疫原性部分が細胞表面に発現されるように、GDOXポリペプチド(またはその一部分もしくは他のバリアント)をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトすることができる。本明細書に記載したように、このようなトランスフェクションをエクスビボで行い、続いてこのようなトランスフェクト細胞を含む組成物またはワクチンを治療目的に用いることができる。または、樹状細胞またはその他の抗原提示細胞を標的とする遺伝子送達媒体を患者に投与して、インビボでトランスフェクションを生じさせてもよい。インビボおよびエクスビボでの樹状細胞のトランスフェクションは、例えば、国際公開公報第97/24447号に記載されたもの、またはMahviら、ImmunologyおよびCell Biology 75: 456-460、1997に記載された遺伝子銃アプローチなどの、当技術分野で知られた任意の方法を用いて一般に行われる。樹状細胞に対する抗原の投入は、樹状細胞または前駆細胞を、GDOXポリペプチド、DNA(裸状またはプラスミドベクター内にあるもの)もしくはRNA;または抗原を発現する組換え細菌もしくはウイルス(例えば、ワクシニアウイルス性、鶏痘ウイルス性、アデノウイルス性またはレンチウイルス性のベクター)とともにインキュベートすることによって行いうる。投入の前に、ポリペプチドをT細胞を補助する免疫学的パートナー(例えば、担体分子)と共有結合させることもできる。または、樹状細胞に対して、非結合状態の免疫学的パートナーによるパルス刺激を単独でまたはポリペプチドの存在下で行ってもよい。
【0096】
治療法および予防法
処置には予防法および治療法が含まれる。予防法または治療法は、単一時点の単回の直接注射により、または単一もしくは複数の部位へ複数回の時点に行うことができる。投与を複数の部位にほぼ同時に行ってもよい。患者または対象には、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタおよびヒツジなどの哺乳動物が含まれる。対象は好ましくはヒトである。
【0097】
癌は、悪性腫瘍の存在を含む、当技術分野で一般に認められている基準を用いて診断しうる。薬学的組成物およびワクチンは、原発性腫瘍の外科的切除および/または処置(放射線療法または従来の化学治療薬の投与など)の処置の前または後のいずれに投与することもできる。
【0098】
ある種の態様において、免疫療法は能動的免疫療法であり、この場合の処置は、免疫応答修飾物質(本明細書に開示されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドなど)の投与により、内因性宿主免疫系を腫瘍または感染細胞に対して反応させるためのインビボ刺激に依拠している。
【0099】
また別の態様において、免疫療法は受動的免疫療法であり、この場合の処置は、抗腫瘍効果を直接的または間接的に媒介しうる腫瘍免疫反応性が確立された作用物質(エフェクター細胞または抗体)の送達を伴い、完全な宿主免疫系には必ずしも依存しない。エフェクター細胞の例には、以上に考察したT細胞のほか、Tリンパ球(CD8+細胞傷害性Tリンパ球およびCD4+ Tヘルパー腫瘍浸潤性リンパ球など)、キラー細胞(ナチュラルキラー細胞およびリンホカイン活性化キラー細胞など)、本明細書に提供するポリペプチドを発現するB細胞および抗原提示細胞(樹状細胞およびマクロファージなど)が含まれる。1つの好ましい態様においては、ポリペプチドを提示するように樹状細胞をインビトロで改変し、これらの改変APCを対象に投与する。本明細書に列挙したポリペプチドに対して特異的なT細胞受容体および抗体受容体をクローニングし、発現させ、他のベクターまたは養子免疫療法のためのエフェクター細胞に移入することもできる。本明細書に提供するポリペプチドを、受動的免疫療法のための抗体または抗イディオタイプ抗体の作製のために用いることもできる(上記および米国特許第4,918,164号における記載のように)。
【0100】
投与および投与量
組成物は任意の適した様式で、しばしば、薬学的に許容される担体とともに投与される。本発明の状況における対象への細胞の投与には適した方法があり、特定の細胞組成物の投与には複数の経路を用いうるが、特定の経路によって他の経路よりも迅速かつ有効な反応を得ることができる。
【0101】
患者に対して投与される投与量は、本発明の状況下では、患者にある期間にわたって有益な治療反応を生じさせる、または疾患の進行を抑制するのに十分である必要がある。したがって、組成物は、特異的抗原に対する有効な免疫応答を誘発するのに十分な量、および/または、疾患もしくは感染による症状および/もしくは合併症を緩和、軽減、治癒もしくは少なくとも部分的に停止もしくは予防するのに十分な量として、対象に投与される。これを達成するのに十分な量は「治療的有効量」と定義される。
【0102】
本明細書に開示する治療用組成物の投与の経路および頻度ならびに投与量は個人によって異なると考えられ、これは標準的な技術を用いて容易に確定しうる。一般に、薬学的組成物およびワクチンは、注射により(例えば、皮内、腫瘍内、筋肉内、静脈内または皮下)、鼻腔内(例えば、吸引による)または経口的に投与しうる。1〜10回の投与を52週間にわたって行うことが好ましい。6回の投与を1カ月間隔で行い、その後に追加免疫処置を定期的に行うことが好ましい。個々の患者に対して代替的なプロトコールが適切な場合もある。1つの態様においては、組成物の皮内注射を2回、10日間隔で行う。
【0103】
適した用量とは、上記のように投与した場合に、抗腫瘍免疫応答を促し、基礎(すなわち、非投与)レベルよりも少なくとも10〜50%高くすることができる化合物の量のことである。このような応答は、例えば、患者における抗腫瘍抗体を測定することにより、または患者の腫瘍細胞をインビトロで死滅させうる細胞溶解性エフェクター細胞のワクチン依存的な生成により、モニタリングが可能である。このようなワクチンはまた、ワクチン接種患者におけるワクチン非接種患者に比しての臨床成績の向上(例えば、完全寛解もしくは部分寛解の頻度の上昇、または無病生存期間の延長)をもたらす免疫応答を生じさせることもできる。一般に、1つまたは複数のポリペプチドを含む薬学的組成物およびワクチンに関して、1回分の投与物に存在する各ポリペプチドの量は宿主体重1kg当たり約100μg〜5mgの範囲である。適した容積は患者の大きさによって異なるが、一般的には約0.1mL〜約5mLの範囲と考えられる。
【0104】
一般に、適した投与量および治療レジメンにより、治療的および/または予防的な利益を得るのに十分な量の有効化合物が得られる。このような応答は、投与患者における非投与患者に比しての臨床成績の向上(例えば、完全寛解もしくは部分寛解の頻度の上昇、または無病生存期間の延長)を確かめることにより、モニタリングが可能である。腫瘍タンパク質に対する既存の免疫応答の増大は、臨床成績の向上と一般に相関する。このような免疫応答は一般に、標準的な増殖アッセイ法、細胞傷害性アッセイ法またはサイトカインアッセイ法を用いて評価することができ、これらは投与前後の患者から得た試料を用いて行うことができる。
【0105】
診断方法
本発明は、組織中の癌を検出するための方法であって、組織を、GDOX分子を認識して結合する分子と接触させることを含む方法を提供する。分子は例えば、GDOXペプチドに対する抗体、またはGDOX核酸分子に対するオリゴヌクレオチドプローブもしくはアンチセンス分子でありうる。組織は、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタおよびヒツジ組織などのように哺乳動物に由来するものでよい。組織はヒトのものであることが好ましい。組織には腫瘍標本、脳脊髄液またはその他の適した標本が含まれる。1つの態様において、本方法は、標本中のGDOXの存在を検出するGDOX抗体を用いるELISA型アッセイ法の使用を含む。当業者は、標本中のGDOX分子の検出によって組織中の癌を検出する方法に関して適した変法をさらに認識していると考えられる。この方法を、癌に対する治療を受けている患者の組織中のGDOXレベルのモニタリングに用いることもできる。GDOXを標的とする治療レジメンの初期治療または継続的治療に対しての適切さは、この方法を用いてGDOXレベルをモニタリングすることによって判定しうる。
【0106】
本発明はさらに、癌細胞の増殖を抑制する分子を同定するための方法も提供する。本方法は、候補分子をGDOX分子と接触させること、および候補分子がGDOX分子の生物活性を妨げるか否かを判定することを含む。GDOX分子の生物活性の阻害により、癌細胞の増殖を抑制する分子が示される。代表的なGDOX分子には抗体、タンパク質およびヌクレオチドが含まれる。
【0107】
キット
本明細書に記載の診断的および治療的な用途に用いるためのキットも本発明の範囲に含まれる。このようなキットは、バイアル、チューブなどの1つまたは複数の容器(容器のそれぞれは本方法に用いるための別個の要素の1つを含む)を収容するための運搬容器、パッケージまたは容器を含みうる。例えば、容器は、検出可能な、または検出可能なように標識しうるプローブを含みうる。プローブは、GDOXタンパク質またはGDOX遺伝子もしくはmRNAのそれぞれに対して特異的な抗体またはポリヌクレオチドでありうる。キットはまた、標的核酸配列の増幅用のヌクレオチドを含む容器および/または検出可能な標識、例えば、酵素標識、蛍光標識もしくは放射性同位体標識と結合したビオチン結合タンパク質、例えばアビジンもしくはストレプトアビジンなどのレポーター手段を含む容器も含みうる。キットは図2のアミノ酸配列の全体もしくは一部またはこのようなアミノ酸配列をコードする核酸分子を含みうる。
【0108】
本発明のキットは通常、上記の容器、ならびに緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジおよび使用上の指示が記載された添付文書を含む、商業上および利用者の観点から望ましい材料を含む1つまたは複数の他の容器を含むと考えられる。さらに、本組成物が特定の治療的または非治療的な用途に用いられることを示すための標示を容器の表面に用意することもでき、これは上記のもののような、インビトロまたはインビボでの使用のための指示も示しうる。指示および/またはその他の情報を、キットに同封される挿入物に含めることもできる。
【0109】
実施例
以下の実施例は、本発明を例示するため、ならびに当業者がそれを実行および利用することを補助するために提示される。これらの実施例は決して本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0110】
実施例1:新たな神経膠腫関連cDNAの同定
本実施例では、膠芽腫腫瘍組織と正常脳組織との間で差異を伴って発現される遺伝子産物を同定するためのcDNAサブトラクティブハイブリダイゼーション、レプレゼンテーショナルディファレンス解析法(RDA)およびディファレンシャル免疫吸着法(DIA)の使用に関して述べる。続いて、サブトラクティブアプローチのそれぞれによる候補クローンを、多数の腫瘍組織および非腫瘍ヒト脳組織でcDNAマイクロアレイハイブリダイゼーションを用いてスクリーニングし(Liau, L.およびYang, I.、Current Genomics. 3: 33-41、2002)、正常脳に比して脳腫瘍の方が常に発現レベルが高かった(5倍を上回った)遺伝子を選択した。
【0111】
方法
組織標本
ヒトの腫瘍性および非腫瘍性の脳標本からの組織試料を、カリフォルニア大学ロサンゼルス校医療センター(University of California at Los Angeles Medical Center)にて、施設内審査委員会の承認を得た上で、外科手術を受けた時点または剖検時に患者から入手した。組織はすべて直ちに液体窒素により急速凍結し、使用時まで-80℃で保存した。周辺標本を神経病理学者が検査し、組織学的な確認を行った。
【0112】
レプレゼンテーショナルディファレンス解析
多形性膠芽腫(GBM)腫瘍組織および非腫瘍性脳組織を同じ1例の患者から異なる時点に採取した。腫瘍標本を外科的切除の時点で入手し、同じ患者から、この男性が疾患の進行のために9カ月後に死亡した時点で対側の正常白質を入手した。両方の標本を同じように液体窒素により凍結し、-80℃で保存した。300mgの各組織からトライゾール(Trizol)(Gibco-BRL)を製造元のプロトコールに従って用いて全RNAを抽出した。30μgの全RNAから、Superscript IIを製造元(Gibco-BRL)による推奨の通りに用いるオリゴ(dT)プライミングによってcDNAを合成した。このcDNAのレプレゼンテーショナルディファレンス解析(RDA)を、以前に発表された方法(Hubank, M.およびSchatz, D.、Nucleic Acids Research. 22: 5640-5648、1994;Welford, S.ら、Nucleic Acids Research. 26: 3059-3065、1998)と同様に行った。RDAを3回実施し、連続した各回のテスター(tester):ドライバー(driver)比をそれぞれ1:100、1:500および1:5000とした。サブトラクトされたRDA産物をDpnIIで消化処理し、pZErO(Invitrogen)のBamHI部位へのショットガンクローニングを行った。挿入断片を1.2%アガロースゲル電気泳動によって確認したところ、500〜1500塩基対であることが判明した。
【0113】
ディファレンシャル免疫吸着法
多形性膠芽腫(GBM)腫瘍組織を手術の時点に直ちに液体窒素により急速凍結した。非腫瘍性脳組織を外傷に対する外科的切除例から入手して同じように凍結した。これには別々の患者からの組織標本を用いた。ディファレンシャル免疫吸着法(DIA)を以前に記載された方法を用いて行った(Liau, L.ら、Cancer Res. 60: 1353-1360、2000)。簡潔に述べると、両方の組織標本を食塩水中でホモジネート化し、可溶性材料を除去した。次に不溶性材料を少量の1%SDSで再び抽出した。腫瘍ホモジネートおよび正常脳ホモジネートの一定量をそれぞれCNBr活性化を用いたセファロースに供した。食塩水溶解性GBM腫瘍ホモジネートの残りの部分は完全フロイントアジュバント(CFA)とともに乳化し、ウサギの免疫処置に用いた;さらに界面活性剤による画分を不完全フロイントアジュバント(IFA)とともに抗GBM抗血清を産生させるための追加免疫処置のために用いた。この抗血清をGBM-セファロースカラムに通し、抗GBM抗体を溶出させた。
【0114】
正常脳抗原と結合する抗体および非特異的抗体を除くために、次に溶出液を正常脳アフィニティーカラムおよび正常ヒト血漿に対して繰り返し交差吸着させた。続いて最終的な抗体調製物の中和、濃縮、透析およびビオチン化を行った。これらのビオチン化抗体を、以前の記載の通りに構築したGBM cDNA発現ライブラリーのスクリーニングに用いた(Liau, L.ら、Cancer Res. 60: 1353-1360、2000)。陽性クローンを単離し、インビボ切り出しによりpZL1プラスミドベクター(Gibco-BRL)中にサブクローニングした。挿入断片を1.2%アガロースゲル電気泳動により確認した。
【0115】
配列および構造の解析
RDAによる最終的なディファレンス産物をDpnIIで消化処理し、pZErO-2ベクター(Invitrogen)のBamH1部位にクローニングした。DIA法によるサブトラクティブクローンを、インビボ切り出しによりpZL1プラスミドベクター(Gibco-BRL)中にサブクローニングした。二本鎖プラスミドDNAを両方のセットのベクターからミニプレップカラム(Qiagen)を用いて調製し、M13およびT7汎用プライマー(Promega)とともにdsDNAサイクルシークエンシングキット(Gibco-BRL)を製造元のプロトコールに従って用いてシークエンシングを行った。これらのヌクレオチド配列をBLASTプログラム(Altschul, S.ら、Nucleic Acids Res. 25、3389-3402、1997)を用いてGenBank中の既知の配列と比較し、推定されたアミノ酸配列に対して、PROFILE検索(Fischer, D.およびEisenberg, D.、Protein Science 5、947-955、1996;Gribskov, M.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84、4355-4358、1987)およびPROSITE検索(Bairoch, A.ら、Nucl. Acids Res. 25、217-221、1997)を用いて構造解析を行った。
【0116】
結果
23種のサブトラクティブ産物がcDNAサブトラクティブライブラリーから選択され、21種の遺伝子がRDAを用いて同定され、差異を伴って発現される28種のクローンがDIAによって単離された。これらのクローンの配列解析により、GDOXと命名された、15残基のポリ(A)+尾部を有するある共通の1276bp cDNAが、3種類のサブトラクティブクローニング法のいずれを用いた場合にも独立して同定された。公開データベースの検索では、過去に特徴が決定されているどの遺伝子との核酸相同性も当初検出されなかったが、近位ヒトX染色体のポジショナルクローニングによってXp11.23に最近マッピングされた、公開されていなかったmRNA(別名JM4、GenBankアクセッション番号AJ005896)との配列同一性が明らかになった(Strausberg, R. L.、J Pathol. 195: 31-40,2001;Strom, T. M.ら、Nature Genetics. 19: 260-263、1998)。
【0117】
GDOXと命名されたこの新規クローンの推定されたアミノ酸配列は178アミノ酸残基を含み、分子質量は19kDと予想される。PROFILEおよびPROSITE解析を用いた、該当するデータベース(SwissProt、Brookhaven Protein Data Bank、ProDomおよびGenPept)におけるGDOXの予想されるタンパク質構造のアミノ酸配列解析では、どの既知のタンパク質とも明らかな相同性は見いだされなかった。しかし、予想されるGDOX構造は、ロドプシンの7本のαヘリックス束と24%のアミノ酸同一性(Z-スコアは5.3標準偏差単位)を有する膜貫通ドメイン、およびヒトエストロゲン受容体のものと27%の同一性(Z-スコア=5.1)を有するリガンド結合領域と考えられる領域を有していた。さらに、プロテインキナーゼCリン酸化部位の可能性のある部位が残基19〜21および139〜141に予想され、N-ミリストイル化部位が残基53〜58および118-123にあることが推定された(図1A〜B)。
【0118】
図1Aは、GDOXのヌクレオチド配列(配列番号:1)および推定されるアミノ酸配列(配列番号:2)を示している。下線を施した領域は、GDOXの予想されるオープンリーディングフレーム(ORF)を対応するアミノ酸配列とともに示している。開始コドン(ATG)はヌクレオチド17で始まり、終止コドン(TAG)は553で終了する。プロテインキナーゼC(PKC)リン酸化部位と予想される部位(19〜21および139〜141)は枠で囲まれており、N-ミリストイル化部位と考えられる部位(53〜58および118〜123)は点線の枠で囲まれている。
【0119】
図1Bは、GDOX遺伝子産物の推定される構造を示した概略図である。GDOXは、細胞膜の内部にN末端およびC末端を有するU字状の膜貫通タンパク質であると予想される。この配列には2つの強力な膜貫通性ヘリックスが認められる。顕著な膜貫通セグメントのみを用いて構造モデルを検討した。この構造解析の概要は以下の通りである(合計スコア4184):
【0120】
実施例2:ヒト脳腫瘍組織におけるGDOXの発現
本実施例では、放射標識したGDOX cDNAを用いるノーザンブロット解析およびインサイチューハイブリダイゼーション解析、ならびにGDOX抗体を用いるウエスタンブロット解析による、腫瘍形成性脳組織と正常脳組織との間でのGDOX遺伝子の差異を伴う発現を示す。これらの結果は、GDOXが種々の神経膠腫で過剰発現され、正常精巣での発現および正常腎臓での極めて低レベルの発現を除いて、GDOXが正常脳でも検討した他の正常組織でも発現されないことを示している。さらに、この発現亢進は実際に細胞での過剰発現に起因し、腫瘍細胞の過多によるものではない。過剰発現はタンパク質レベルおよびRNAレベルの両方で認められた。
【0121】
方法
ノーザンブロット解析
トライゾール試薬(Gibco-BRL)を製造元の指示に従って用いて組織の全RNAを抽出し、10μg/レーンを1.2%変性アガロースゲルで分離した上で、10×SSCを用いてハイボンド(Hybond)膜(Amersham)に一晩かけて移行させ、UV架橋により非可逆的に固定した。プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションはExpressHyb溶液(Clontech)中にて65℃で行った。ランダムプライマーを製造元(NEB)のプロトコールに従って用いて、GDOX cDNAを含むプラスミドDNAから32P標識cDNAプローブを作製した。ハイブリダイゼーション後に、膜を洗浄し(2×SSC+0.1%SDS、37℃で20分間、その後に0.2×SSC+0.1%SDS、61℃で20分間)、X線フィルム(Kodak)に80℃で露光させた。続いてブロットのストリッピングを100℃の0.1%SDSで15分間行い、ゲルローディングおよびRNA完全性に関する対照とする目的で32P標識リボソーム18S cDNAによるリプロービングを行った。
【0122】
インサイチューハイブリダイゼーション
インサイチューハイブリダイゼーションは、以前に発表されたプロトコールに従って35S標識リボプローブを用いて行った(Kornblum, H.ら、J Neurosci Res 53: 697-717、1998;Kornblum, H.ら、Mol Brain Res 21: 107-114、1994)。簡潔に述べると、外科的に切除したヒト脳組織(腫瘍および非腫瘍性)を手術室からそのまま入手してイソペンタンで急速凍結した。凍結組織をクリオスタットで20μm厚の切片にし、4%パラホルムアルデヒドで後固定し、洗浄して-75℃で保存した。切片を洗浄し、アセチル化し、脱脂した上で、35S標識したセンスまたはアンチセンスGDOX cRNAプローブ(107cpm/ml)とともに60℃で一晩(18〜24h)インキュベートした。45℃でRNアーゼA(20μg/ml)処理を行った後に、切片をSSCにより濃度を徐々に下げながら洗浄し、風乾させた上でKodak NTB2(1:1希釈)によるエマルションオートグラフィー法のために浸漬処理を行った。エマルションに5週間露光させた後、スライドを現像し、ヘマトキシリンおよびエオシンによる対比染色を行った。
【0123】
ウエスタンブロット解析
2種類の合成ペプチド(GDOX配列137〜155および159〜178;それぞれ配列番号:3および4)をKLH(Research Genetics、Huntsville、AL)と結合させたものに対してポリクローナル抗体を産生させた。抗GDOX IgG画分をセファロース結合ペプチドを用いて単離し、pH 2.7のホウ酸緩衝液を用いて溶出させた。ヒトの神経膠腫脳組織および正常脳組織を1%SDSを含むPBS中にてホモジネート化し、標準的なブラッドフォードアッセイ法を用いてタンパク質濃度を定量した。各レーン当たり30μgの細胞ホモジネートをSDS/PAGE 12%ゲルで分離し、電気泳動によりニトロセルロース膜(Bio-Rad)に移行させた。膜をすすぎ洗いし、5%BSAでブロックした後に、1:500および1:1000の抗体希釈度を用いてポリクローナルウサギ抗GDOX抗体(とともに室温で1時間インキュベートした。続いてブロットを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合させたヤギ抗ウサギ二次抗体(Vector Laboratories)によりプロービングを行った。Vector ABC Elite染色試薬(Vector Laboratories)を製造元のプロトコールに従って用いてタンパク質を可視化した。
【0124】
結果
GDOXの1.3kb転写物は解析した21例のヒト神経膠腫のうち19例で発現されたが、正常脳標本では発現されなかった(図2A)。GDOX発現レベルはグレードに関連するのではなく腫瘍依存的であることが判明した。他の一連のヒト組織をGDOX発現に関して調べたところ、ノーザンブロットの長期露光(2週間)を行った場合に精巣および腎臓で比較的低レベルのmRNAが検出されたが、検討した他の末梢臓器では発現が認められなかった(図2B)。
【0125】
線状化プラスミド-cDNAをテンプレートとして用いて両方のストランドから作製した35S-リボプローブとのインサイチューハイブリダイゼーションを、さまざまな腫瘍性および非腫瘍性の脳標本に対して用いた。GDOXアンチセンスリボプローブは主として腫瘍組織の細胞増多領域とハイブリダイズし、正常脳組織とはハイブリダイズしなかった。GDOXプローブによって染色された細胞が同一であったことは、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いた対比染色によって裏づけられた。高倍率では、個々の細胞で正常グリア細胞に比して腫瘍細胞の内部では著しく高度のGDOXハイブリダイゼーションが認められ、このことから神経膠腫でみられる発現亢進パターンは腫瘍細胞の過多ではなく実際に細胞での過剰発現に起因することが示された。アンチセンス鎖cDNAから作製したセンス鎖リボプローブによる特異的ハイブリダイゼーションは観察されず、このことからアンチセンスプローブで得られた細胞性ハイブリダイゼーションがGDOX mRNAに対して特異的であることが示された。
【0126】
ウエスタンブロット解析では、解析した神経膠腫組織の全例(8例中8例)で約57kdの単一のバンドが検出されたが、正常脳標本では対応するバンドは認められなかった(3例中0例)(図3A)。同じバンドはヒトの精巣組織および腎臓組織でも認められたが、スクリーニングした他の臓器では認められなかった(図3B)。このように、ウエスタンブロットの結果はノーザンブロット解析により認められたGDOXの発現パターンと一致した。
【0127】
実施例3:GDOXの細胞内局在およびGFAPとの共発現
本実施例ではGDOXの細胞内局在について述べるとともに、その発現をグリア線維酸性タンパク質(GFAP)と比較する。U87細胞および初代ヒト膠芽腫細胞におけるGDOX発現の細胞内局在を明らかにするために、GDOXのC末端の免疫蛍光染色を、上の実施例2に記載したGDOXペプチド抗体を用いて行った。GDOXタンパク質は主として原形質膜に局在し(図4A)、コンピュータで作成した予想される構造から推論されるように(図1A〜B)、それが膜貫通タンパク質であることが示唆された。神経膠腫細胞におけるGDOXとの共発現を評価するために、抗GFAPモノクローナル抗体の添加による二重免疫蛍光染色を行った。U87細胞はカバーガラス上に播いた。発現されたGDOXを、抗GDOXペプチド抗体を用いた後にFITC結合二次IgGで染色する免疫蛍光法によって検出した。GFAPの発現は、抗GFAP抗体を用いた後にTRTTC結合二次抗体で染色することによって検出した。一次抗体の特異性は、二次抗体のみでは染色がみられないことによって確認した。GDOXおよびGFAPはいずれも同じ細胞に共存していたが、GFAPの発現は主として細胞質に認められた(図4B)。
【0128】
別の実験では、免疫蛍光顕微鏡検査により、透過化処理を行った細胞および透過化処理を行っていない細胞での細胞内局在をアッセイした。図5A〜Bは、免疫蛍光共焦点顕微鏡検査によってアッセイした、透過化処理を行っていない(図5A)または透過化処理を行った(図5B)初代ヒト膠芽腫細胞のGDOX細胞内局在を示した顕微鏡写真である。透過化処理を行った細胞ではGDOXタンパク質は主として核小体に局在し、このことから原形質膜から核への細胞輸送が示唆された。この核小体への局在はヒト膠芽腫組織切片の免疫組織化学染色でも確かめられた。図6A〜Bは、ヒトの腫瘍性脳組織(図6A)と非腫瘍性脳組織(図6B)の比較解析のためのGDOX抗体を用いた免疫組織化学染色を示した顕微鏡写真である。膠芽腫組織におけるGDOXの核小体への細胞内局在が注目される。
【0129】
実施例4:GDOXの染色体局在
本実施例では、GDOXのゲノム上の位置を特定するために体細胞ハイブリッドマッピングを用いた。種々のマウス-ヒトハイブリッドおよびハムスター-ヒトハイブリッドからなる市販の体細胞ハイブリッドマッピングパネルをCoriell Cell Repositories社(Camden、NJ)から入手した。ランダムプライマーを製造元(NEB)のプロトコールに従って用いてGDOX cDNAを含むプラスミドDNAから作製した32P標識cDNAプローブを用いて、サザンブロット解析を行った。
【0130】
図7は、体細胞ハイブリッドパネル中のヒト染色体DNAに対するGDOX cDNAのサザンブロット法の結果を示している。DNAハイブリダイゼーションにより、ヒトゲノムDNAおよび体細胞ハイブリッドNA10324由来のDNAとの間に予想されるサイズのバンドが示され、これがヒトX染色体を含むこのマッピングパネル中に示された唯一のハイブリッドであった。このため、GDOX遺伝子はヒトX染色体上に存在するように思われる。
【0131】
実施例5:トランスフェクトされたグリア細胞におけるGDOX発現の生物学的効果
GDOXがグリア細胞の腫瘍形成および/または増殖に役割を果たすか否かを明らかにするために、センスおよびアンチセンスGDOX構築物を作製し、マウスおよびヒトのグリア細胞株にトランスフェクトした。条件的不死化マウスグリア細胞株(CIMO;Bronstein, J.ら、J. Neurochem. 70: 483-491、1998;Jat, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 88: 5096-5100、1991)を用いて、インビトロでGDOXの過剰発現によって非腫瘍形成性グリア細胞の悪性転換が誘導されるか否かを検討した。CIMO細胞は、H-2Kb-tsA58トランスジェニックマウスから得た脳の初代培養物に由来する。
【0132】
細胞培養およびトランスフェクション
条件的不死化グリア細胞株(CIMO)は、以前に記載された通り(Bronstein, J.ら、J Neurochem 70: 483-491、1998;Jat, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 5096-5100、1991)、H-2Kb-tsA58トランスジェニックマウス(Charles River Laboratories、Wilmington、MA)の脳の初代培養物に由来する。これらのグリア細胞はインターフェロン-γ誘導性プロモーターの制御下にある温度感受性SV40ラージT抗原癌遺伝子を含み、このため、許容条件下(33℃、インターフェロン-γ存在下)では急速に増殖させ、非許容条件下(37℃、インターフェロン-γ非存在下)ではそうさせないことが可能である。これらの細胞を、5%ウシ胎仔血清(FCS)を加えたDMEMを入れたT75フラスコ内で5%CO中にて、33℃、IFN-γ存在下(許容条件)または37℃、INF-γ非存在下(非許容条件)で継代して維持した。ヒト膠芽腫細胞株U87はAmerican Type Culture Collection(Rockville、MD)から入手し、5%FCS、2mM L-グルタミンおよび抗生物質(100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン)を加えたDMEM中にて5%CO2下、37℃で維持した。
【0133】
これらのマウスおよびヒトの細胞株の両方に対して、下記のようにpBK-CMV発現ベクター中にセンスまたはアンチセンスの向きにクローニングしたGDOX cDNA断片をトランスフェクトした。センスベクターの構築のためには、pZL1ベクター(Gibco-BRL)中の完全長1276bp GDOX cDNAをNotIおよびSalI酵素で消化処理し、pBK-CMV(Gibco-BRL)のNotI部位およびSalI部位にサブクローニングした。アンチセンスベクターの構築のためには、完全長GDOX cDNAを含むpZL1ベクターをSmaIおよびXbaI酵素で消化処理し、取り出された断片をpBK-CMTのXbaI部位およびSmaI部位にアンチセンスの向きにサブクローニングした。対照に関しては、pBK-CMVプラスミド(空ベクター)およびpBK-CMT-GFAPプラスミド(ランダム配列)を同じく細胞にトランスフェクトした。CIMO細胞およびU87細胞のトランスフェクションは、細胞が集密度80%に達した時点でDOTAPを製造元の指示に従って用いて行った。トランスフェクションから1日後に細胞を継代し、血清を加えた培地中にて400μg/mlのG-418(Gibco-BRL)の存在下で選別した。この培地を最初は2日後に交換し、その後は3〜4日毎に交換した。14日後に、G418耐性細胞のコロニーを、上記のノーザンブロット解析によってGDOX発現の存在に関して調べた。改変細胞におけるGDOX発現の有無をウエスタンブロット解析によって確かめた(図8)。センス、アンチセンスおよび対照物をトランスフェクトしたU87細胞の形態的な表現型を調べた。位相差顕微鏡検査により、アンチセンスGDOXをトランスフェクトしたグリア細胞は対照細胞と同様に広がりを生じず、比較的丸みを帯びた形態を保つことが示された(図9A〜B)。これに対して、センス-GDOXをトランスフェクトした細胞はより多くの細胞質突起を有し、対照細胞よりも大きな斑状に増殖することが観察された。野生型対照U87細胞は屈折性が高く、細胞質突起を有する大きな斑状に増殖した(図9A)。アンチセンスGDOXをトランスフェクトした細胞は十分に成長せず、より丸みを帯びた形態であった(図9B)。
【0134】
さまざまな種類のトランスフェクト細胞の増殖速度を、[3H]チミジン取り込みを用いて測定した。細胞を12ウェルプレート(Corning)に5×104個/ウェル(5%FCSを加えたDMEM 2ml中)の密度でプレーティングした。5日後に培地を[3H]チミジン(1μCi/ml、比活性0.4Ci/mmol)を含む新たなDMEM培地と交換し、24時間インキュベートした。続いて細胞を氷冷リン酸緩衝食塩液(PBS)で洗浄し、DNAを5%トリクロロ酢酸で沈殿させた上で0.1%SDS中に溶解させた。取り込まれた放射能を液体シンチレーションカウンターによって定量した。アッセイ法は3回行い、そのたびに1条件当たり4ウェルを用い、3組の計測を行った。スチューデントのt検定を用いて増殖速度の差を統計学的に分析した。
【0135】
図10に示されているように、GDOX cDNAをトランスフェクトしたCIMO細胞では許容条件(33℃)および非許容条件(37℃)のいずれの下でも増殖能が顕著に増加した。空ベクター対照をトランスフェクトし、同様の条件下で培養した細胞に比して、GDOXをトランスフェクトしたCIMO細胞の増殖速度は9.5倍(37℃、p=0.0006)〜15倍(33℃、p<0.0001)であった(図10)。1分間当たりのカウント数(cpm)での結果を、空ベクター(pBK-CMV)をトランスフェクトした細胞の非許容条件(37℃)下での増殖の比率に対して標準化した。空ベクター対照(37℃でのCIMO)のcpmを各実験で100%に設定し各実験の他のカウントはすべてこの値に対して標準化した。示した結果は、それぞれ3つずつのウェルを用いた3回の独立した実験を併せたものである。
【0136】
これほど顕著ではないが有意ではある、細胞増殖の2倍の増加が、センスGDOX cDNAをトランスフェクトしたヒトU87膠芽腫細胞でも認められたが、U87細胞に対するアンチセンスGDOXのトランスフェクションは腫瘍細胞の増殖を野生型対照の17%に抑制した。図11は、インビトロでのヒト神経膠腫細胞株U87におけるGDOXの増殖調節作用(growth modulation effect)を示した棒グラフである。親U87細胞、またはU87細胞に対して空ベクター(U87-V)、ランダムアンチセンスを含むベクター(U87-asGFAP)、センスGDOX(U87-GDOX)もしくはアンチセンスGDOX(U87-asGDOX)をトランスフェクトしたものを、[3H]チミジン取り込みによってアッセイした。結果は対照野生型U87細胞の増殖の比率(これを100%に設定した)に対して標準化した。
【0137】
実施例6:インビトロでの多様なヒト癌に対する抗GDOX抗体の生物学的効果
本実施例では、GDOX遺伝子産物を標的とする抗体がインビトロでヒト癌細胞に対する抗腫瘍効果を有することを示す。継代早期の初代ヒト膠芽腫細胞を種々の濃度のGDOXポリクローナル抗体とともに4日間インキュベートし、トリパンブルーで染色した上で計数した。処理細胞および対照細胞の形態的な表現型を調べた。位相差顕微鏡検査により、GDOX抗体で処理した腫瘍細胞は対照細胞と同様に増殖および広がりを生じないことが示された。さらに、さまざまな種類のヒト癌(脳、肺、乳房、結腸および前立腺)由来する腫瘍細胞を抗GDOX抗体で処理したものは、標準的な[3H]チミジン取り込み解析による測定で、細胞増殖の用量依存的な低下を示した。
【0138】
図12A〜Dは、ヒト腫瘍細胞株における特異的な抗GDOX抗体の増殖抑制作用を示した棒グラフである:図12A、ES-UCLA(原発性膠芽腫);図12B、SKBR3(乳房腺癌);図12C、A549(肺癌);および図12D、Du145(前立腺癌)。結果は、熱失活させた抗GDOX抗体または対照抗体を等量用いた対照細胞による対照増殖の比率に対して標準化した。
【0139】
実施例7:癌患者の生存期間とGDOXの過剰発現との相関
本実施例では、GDOXの過剰発現がヒト膠芽腫患者の生存期間と相関することを示す。図13は、ヒト膠芽腫患者から得た試料をGDOX cDNAを用いてプロービングしたノーザンブロット解析の結果を示している。GDOX mRNA発現の相対量を、2年を越えて生存している患者(左図)および生存期間が1年未満である患者(右図)から得た試料間で比較した。生存期間の短い患者ではGDOXタンパク質のかなりの過剰発現が観察された。これらのデータは、GDOXおよびその産物の癌に対する診断標的および治療標的としての利用性をさらに裏づけるとともに、GDOX発現が予後判定ならびに疾患の進行および/または治療に対する反応のモニタリングにも有用な可能性があることを示している。
【0140】
実施例8:腫瘍細胞でGDOXが機能する分子経路の特徴付け
細胞内局在の検討
GDOXタンパク質は原形質膜に局在するように思われ、これはGDOXの一次配列のコンピュータ解析によって予想された膜貫通タンパク質としての構造と一致するとともに、GDOX抗体により誘導される到達可能な膜タンパク質の修飾という所見を裏づける(図12A〜D)。しかし、透過化処理を行った初代神経膠腫細胞の免疫蛍光共焦点顕微鏡検査(図5A〜B)およびヒト膠芽腫組織切片の免疫組織化学検査(図6A〜B)によって局在性をアッセイした場合には、GDOXは主として核小体に認められた。これらのデータはGDOXが、活性化によって核小体へと運ばれる原形質膜タンパク質である可能性を示唆している。GFPおよびHAで標識したGDOX構築物をヒト腫瘍細胞で一時的に発現させることにより、このタンパク質の腫瘍細胞における細胞内局在および定位をさらに明らかにしうると考えられる。
【0141】
プロテインキナーゼC(PKC)リン酸化の検討
上の図1Aに示されているように、コンピュータを用いたモチーフ解析により、予想されるGDOXタンパク質のNH2末端、アミノ酸139〜142にセリン/トレオニンPKCによるリン酸化部位が存在することが判明した。予想されるGDOXタンパク質がプロテインキナーゼC(PKC)に対する共通の認識モチーフを有するという観察所見からみて、タンパク質リン酸化が、GDOXがヒト脳腫瘍細胞において機能する調節機構ではないかと思われる。
【0142】
無細胞抽出物における内因性GDOXタンパク質のリン酸化
GDOXリン酸化の特徴を明らかにするために、U87無細胞抽出物における内因性GDOXタンパク質への[γ-32P]ATPの標識取り込みを検討する。32P取り込みを調べるには、細胞抽出物(100μl中にタンパク質150μg)をTGED緩衝液中に調製し、MgCl2(0〜10mM)の存在下または非存在下で[γ-32P]ATP(10μM;0.1μCi)を添加する。30℃で20分間インキュベートした後に、10mM EDTAを含む300μlの氷冷TBSを添加することによって反応を停止させ、抽出物に存在するGDOXタンパク質を免疫沈降させる。可溶化した免疫沈降物を12%ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動にかけた後にゲルを乾燥させ、32P標識GDOXタンパク質を可視化するためにX線フィルムに露光させる。50μgのタンパク質を用い、[γ-32P]ATPの代わりに10μMの非標識ATPを用いた点を除いて同じキナーゼアッセイ法を、対照として、GDOXタンパク質のウエスタンブロット解析のために行う。
【0143】
ヒト脳腫瘍細胞におけるGDOXタンパク質のリン酸化
GDOXのリン酸化に生理学的な意味があることを示すためには、本来のままの細胞でその修飾が起こっていることを確かめるとよい。この目的のためには、ヒト腫瘍細胞株を[32P]Piで代謝的に標識し、続いてGDOXタンパク質の免疫沈降、SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーを行う。腫瘍細胞を25cm2のフラスコ内で培養し、リン酸を含まないDMEM(Life Technologies, Inc.)で洗浄した上で、[32P]Pi(10μCi/ml)を含む培地とともに6時間インキュベートする。細胞を氷冷TBSで2回洗浄することによって放射性標識を停止させる。トリプシン処理の後に、0.5mMフェニルメタンスルホニルフルオリド、50mMフッ化ナトリウム、0.5mMバナジン酸ナトリウムおよび1%NP40を含む0.5mlのTBS中で細胞を溶解する。遠心処理によって回収した上清をGDOX抗体によって免疫沈降させる。この免疫複合体を12%SDS-PAGEゲルによって分離し、ゲルを乾燥させてオートラジオグラフィーにかける。
【0144】
精製された組換えGDOXタンパク質のリン酸化のためには、精製PKC(Calbiochem)を、発表されているプロトコール(Srivenugopal, K.ら、Cancer Research. 60: 282-287、2000)に従って用いる。
【0145】
実施例9:GDOXと相互作用する他のタンパク質の同定
ヒト神経膠腫組織におけるGDOXのウエスタンブロット解析では主として57kDのバンドが検出されたが(図3A)、GDOXの予想されるタンパク質サイズは19kDに過ぎない。これは翻訳後修飾、二量体化/三量体化、またはGDOXと他のタンパク質との密な会合によると考えられる。酵母ツーハイブリッドシステムを用いて、GDOXと相互作用しうる会合性タンパク質を同定することができる。
【0146】
酵母ツーハイブリッド解析
酵母ツーハイブリッドスクリーニング方法(Tiwari-Woodruff S. K.ら、J Cell Biology. 153: 295-305、2001)は、GDOXと相互作用するタンパク質の同定に用いうる。GDOXの全ORFをpGBT9(Matchmaker system;CLONTECH)中にサブクローニングする。酢酸リチウム法を用いて出芽酵母Hfc7コンピテント細胞をpGBT9-GDOXによって形質転換し、外科的切除時に採取したヒト膠芽腫組織由来のmRNAから作製したpGAD GH cDNAライブラリーをスクリーニングするための「ベイト」として用いる。Hfc7株には、相互作用タンパク質に対する2種類のレポーター遺伝子:HIS3およびβガラクトシダーゼ(β-gal)が含まれている。相互作用タンパク質を発現する形質転換体はヒスチジン-依存性培地(HIS-)で増殖すると考えられる。陽性クローンを無菌のWhatmanフィルターに移し、選択用Trp-/Leu-/His-最小SD寒天培地にプレーティングした上で30℃で1〜3時間インキュベートし、液体窒素により固定する。続いてフィルターを、50mMβ-メルカプトエタノールおよび0.07mg/ml 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(Sigma-Aldrich)を添加したバッファーZ中にあらかじめ浸漬した濾紙の上に乗せる。フィルターを30℃でインキュベートし、青色のコロニーの出現に関してモニタリングする。陽性酵母コロニーからYeastmakerキット(CLONTECH)を用いてプラスミドを単離する。
【0147】
陽性コロニーから単離したプラスミドの個々に対してGDOXベイトcDNAによる同時形質転換を行い、HIS3レポーター活性化に関する選択のためにHIS-SD培地上にプレーティングする。続いて、HIS-プレート上に再びプレーティングしたクローンを、上記の通りにβ-gal活性に関してアッセイする。救済されたクローンからpGAD GHプラスミドを大腸菌内に回収し、シークエンシングを行う。同時形質転換体を、HIS培地上での増殖能およびβ-gal活性に関してアッセイする(Ingley, E.ら、FEBS. 459: 69-74、1999)。
【0148】
免疫共沈
次に、GDOXと相互作用する候補タンパク質の会合を免疫共沈試験によって確かめる。免疫共沈のためには、腫瘍細胞を25mM トリス-HCl、pH 7.5、120mM NaCl、1%NP-40、5mM EDTA、25mm NaF、25mM-グリセロールリン酸、1mMバナデートおよび1mMベンザミジン中で溶解した後に、1000×gで5分間遠心する。上清をGDOX抗体とともにインキュベートし、プロテインAビーズによって収集した後に、抗GDOX抗体または酵母ツーハイブリッドスクリーニングによって検出された相互作用タンパク質に対する抗体を用いてイムノブロット法を行う。タンパク質シグナルを高感度化学発光法(Amersham)によって検出する。
【0149】
実施例10:エストロゲンアンタゴニストに対する感受性の決定
上の図1A〜Bに示されているように、GDOXと予想されるタンパク質は、ヒトエストロゲン受容体のものと相同性のあるリガンド結合領域と考えられる領域を有する。タモキシフェン((Z)-2[p[(1,2ジフェニル-1-ブテニル)フェノキシル]-N,N-ジメチルアミンシトレート)は、乳癌の治療に広く用いられている比較的毒性の弱い合成非ステロイド性抗エストロゲンであり、脳悪性腫瘍の治療における治療薬の候補として関心が向けられている。タモキシフェンの経口投与は、高用量では悪性神経膠腫の患者の一部で有益であることが示されている(Couldwell, W. T.ら、Clin Cancer Res. 2: 619-622、1996)。しかし、乳癌の場合とは異なり、タモキシフェンの細胞傷害性に反応するヒト膠芽腫細胞株(U87、U373およびU138)では検出可能なエストロゲン受容体の発現がみられず、エストラジオールに対する細胞分裂応答が示されなかったため、タモキシフェンはエストロゲン受容体を介した細胞増殖性シグナル伝達の競合的抑制によって作用するようには思われない。ヒト悪性神経膠腫におけるタモキシフェンによる増殖抑制の機序にはエストロゲン受容体を介した過程は含まれず、PKC活性を妨げることに起因すると思われる(Pollack, I. F.ら、Cancer Research. 50:7134-7138、1990)。興味深いことに、比較的選択性の高いPKC阻害薬であるスタウロスポリンは、神経膠腫細胞株に対する選択的な抑制作用がタモキシフェンよりも強いように思われ(Baltuch, G.ら、Neurosurgery. 33: 495-501、1993)、このことはタモキシフェンによって誘導されるヒト膠芽腫細胞の増殖抑制に直接的なPKC阻害に加えて別の機序が関与している可能性を示唆する。このことは、インビボでの悪性神経膠腫に対するタモキシフェン療法の感受性をエストロゲン受容体の発現およびPKC活性のいずれによっても予測できないことを説明する一助になると思われる(Puchner, M. J. A.ら、Acta Neurochir. 143: 563-573、2001)。
【0150】
GDOXにエストロゲン結合ドメインと推定されるドメインがあることからみて、タモキシフェンなどのエストロゲンアンタゴニストはGDOXを介した細胞機序によってヒト膠芽腫細胞に影響を及ぼすと考えられ、GDOXの過剰発現はタモキシフェン感受性または他のエストロゲンアンタゴニストに対する感受性の有用な予測因子である可能性がある。センスおよびアンチセンスGDOX cDNAが安定的にトランスフェクトされたU87ヒト膠芽腫細胞(図8参照)を、GDOXを過剰発現する腫瘍におけるタモキシフェン感受性の検査に用いることができる。これらの細胞株を、2%L-グルタミンを含み、15%FCS(Life Technologies)を添加したDMEMの入った25cm2フラスコ内で、37℃、最小相対湿度95%の空気および5%CO2の雰囲気下で維持する。アッセイ法のためには、指数増殖期にある細胞を培養フラスコからEDTA-トリプシンを用いて剥離し、細胞の生存度をトリパンブルー排除によって確かめる。各アッセイ法で検査する、タモキシフェンの各用量に関して3件ずつの培養物を96ウェルプレートに5×103個/100μl培地/ウェルの密度で接種する。培養物を24時間おいて安定させた後に、タモキシフェン(Sigma)の連続希釈物である0μM、5μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μMおよび40μMタモキシフェンに対して曝露させる:
【0151】
最終容量200μl/ウェルとした上でインキュベーションを合計4日間行う。このようにして、非処理試料またはタモキシフェンで4日間処理した試料を、以下の3組のアッセイ法のために用いる(各アッセイ当たり3ウェル)。通常、各アッセイを少なくとも3回ずつ行う。
【0152】
i. 親U87細胞およびトランスフェクトU87細胞における内因性GDOXの細胞内局在を上記のようにして決定する。細胞をさまざまな用量のタモキシフェンで処理した後にカバーガラスに播種する。発現されたGDOXを、抗GDOX抗体を用いた後にFITC結合二次抗体で染色する免疫蛍光法によって検出する。
【0153】
ii. [γ32P]ATPの取り込みをPKCリン酸化の指標として用いて、親U87細胞およびGDOXをトランスフェクトしたU87細胞におけるタモキシフェン処理後の細胞PKC活性を上記のように評価する。
【0154】
iii. 細胞増殖アッセイ法を以前の記載の通りの[3H]チミジン取り込みによって行う(Liau, L.ら、Cancer Res. 60: 1353-1360、2000;Lu, R.およびSerrero, G.、Proc Natl Acad Sci USA. 97: 3993-3998、2000)。簡潔に述べると、さまざまな用量のタモキシフェンで4日間処理した後に、細胞の培地を[3H]チミジン(1μCi/ml、比活性0.4Ci/mmol)を含む新たなDMEM培地に交換し、24時間インキュベートする。細胞を氷冷PBSで洗浄し、5%トリクロロ酢酸によってDNAを沈殿させた上で0.1%SDS中に溶解させる。取り込まれた放射能を液体シンチレーションカウンターによって定量する。
【0155】
タモキシフェンがGDOXを介した細胞シグナル伝達に影響を及ぼすならば、GDOXに対するリガンド結合により、GDOXタンパク質の細胞内局在またはリン酸化の差が生じると考えられる。さらに、タモキシフェン処理は、高レベルのGDOXを高レベルに発現するセンスGDOX-トランスフェクトU87細胞とGDOXを発現しないアンチセンスGDOX-トランスフェクト細胞との間で細胞増殖抑制応答の差を引き起こすと思われる。各々の処理用量での異なる細胞株間の結果の比較には反復測定分散分析が用いられる。
【0156】
実施例11:GDOXによる腫瘍形成促進の阻止
本実施例では、GDOXが腫瘍形成を促進する機構を明らかにするために用いうるアッセイ法について述べる。これらのアッセイ法を、GDOXまたはその遺伝子産物の1つに対する候補治療薬が、GDOX過剰発現の腫瘍形成作用を阻止する能力を検査するために用いることもできる。インビトロアッセイ法およびインビボアッセイ法のいずれを用いることもできる。
【0157】
前記の実施例で示されているように、U87ヒト膠芽腫細胞に対しては、センスおよびアンチセンスGDOX cDNAを安定的にトランスフェクトしうる(図8)。これらの細胞株を、GDOXがいかにして腫瘍形成を促進するかを解析するため、およびGDOXまたはその遺伝子産物の1つに対する治療薬の効率をアッセイするために用いることができる。野生型の親U87、U87-V(空ベクター対照)、U87-アンチセンスGFAP(ランダムアンチセンス対照)、U87-センスGDOXおよびU87-アンチセンスGDOXを以下のアッセイ法を用いて解析する:
【0158】
i. 細胞増殖アッセイ法
細胞(1×105個/ウェル)を血球計算器を用いて計数し、培地2mlおよび適切な選択薬(400μg/mlのG418)とともに6ウェルプレート(Costar)に入れる。細胞は3組ずつプレーティングし、さまざまな期間(1日、2日、4日、6日、8日および10日)にわたって増殖させる。各時点で、ウェルをPBSで2回洗浄し、0.1%クリスタルバイオレットで染色する。細胞数の計測は、細胞数計測ソフトウエアを顕微鏡とともに用いて、各細胞株に関して3組ずつ行う。続いて細胞数を培養時間に対してプロットする。
【0159】
それぞれの細胞株の細胞増殖を、MTTアッセイ法を製造元(Roche Diagnostics)による記載の通りに用いて行うこと、および上記の[3H]チミジン取り込みアッセイ法によって計測することもできる。
【0160】
ii. 細胞周期の解析
対数増殖期にあるGDOXセンス/アンチセンスをトランスフェクトした細胞および対照細胞に対する細胞周期分布に関するフローサイトメトリー分析を、以前の記載の通りに行う(Li, D. M.およびSun, H.ら、Proc Natl Acad Sci USA. 95: 15406-15411、1998;Ge, S.ら、Clin Cancer Res. 6: 1248-1254、2000;Huang, R. P.ら、Cancer Research. 58: 5089-5096、1998)。簡潔に述べると、親U87細胞およびGDOXトランスフェクト細胞を同じ密度(4×105個)でプレーティングし、DMEM+10%FBS中での培養下に3日間保つ。培地は毎日交換する。4日間培養した細胞を集密度が70〜80%に達した時点で回収する。細胞をトリプシン処理し、10%FBSを含むDMEMによって不活性化した上で、800rpmで5分間遠心し、PBS中に再懸濁して算定する。2×106個の細胞を収集し、3mlの氷冷70%エタノール中にて氷上で30分間固定し、4℃で保存する。フローサイトメトリー分析のためには、エタノールを室温での450×g、5分間の遠心処理によって除去し、上清をデカントして細胞ペレットを氷冷PBSで2回洗浄する。この細胞を、1mlのPI/RNアーゼ混合物(50μg/ml PT+5U/ml RNアーゼA、PBS中)中にて室温で30分間インキュベートすることにより、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色する。細胞内のDNA含有量をFACS(Becton-Dickinson)を用いて解析する。
【0161】
iii. 細胞接着アッセイ法
接着アッセイ法を以前の記載の通りに行う(Rempel, S. A.ら、J Neuro-Oncology. 53: 149-160、2001)。簡潔に述べると、平底96ウェルプレートに、PBS中に再懸濁した精製ECMタンパク質(コラーゲンIV、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸およびテネイシン)の1、10または100μg/mlを4℃で一晩コーティングする。タンパク質溶液を除去し、1%BSAを含むPBSによりウェルを室温で1時間ブロックする。集密に近い単層から、0.05%トリプシン-0.53mM EDTA(Ca/Mg非含有HBSS中)を用いて細胞を収集する。細胞を、5%フィブロネクチン非含有血清を含むDMEM中に再懸濁し、培地50μlを含むウェルに5×104個/50μl培地の密度でプレーティングする。96ウェルプレートを氷上に30分間置いた後、37℃に1時間保つ。プレートをオービタルシェーカーにより350rpmで6分間振盪する。培地および非接着細胞を吸引除去する。PBS 100μlを各ウェルに添加し、プレートを再び振盪して吸引する。付着細胞を1%グルタルアルデヒド中に30分間おいて固定し、PBSで3回洗浄して、0.1%クリスタルバイオレットで10分間染色した上でPBSで3回洗浄し、1%SDS中に溶解して、分光光度計により540nmの吸光度を読み取ることによって定量する。
【0162】
iv. 細胞遊走アッセイ法
細胞遊走をRempel, S. A.ら、J Neuro-Oncology. 53: 149-160、2001;およびMenon, P. M.ら、Int J Oncology. 17: 683-693、2000に記載された方法を用いて定量する。簡潔に述べると、テフロンでコーティングした10ウェルスライド(Creative Scientific Methods, Inc.)をオートクレーブ処理し、ウェルを100μg/mlのECM 45μlにより37℃で1時間コーティングする。ウェルをダルベッコ1×PBS(Life Technologies, Inc.)で3回洗浄し、45μlの1%BSAにより室温で30分間ブロックする。BSAを吸引し、PBS 50μlを各ウェルに添加する。スライドを、乾燥を防ぐために滅菌dH2Oを満たした35mmペトリ皿を入れて加湿した100mmペトリ皿に入れて4℃に一晩保つ。
【0163】
単層状態で増殖している野生型U87細胞およびGDOX-トランスフェクト細胞をT25フラスコから収集し、血球計数器を用いて計測する。5日間培養した後に細胞から馴化培地を採取し、DMEM+10%FBSにより1:4に希釈する。収集した細胞を25%馴化培地中に1×106個/mlの密度で再懸濁し、氷上に保つ。テフロンでコーティングしたスライドを4℃から取り出し、PBSをウェルから吸引して、25%馴化培地50μlを各ウェルに添加する。細胞沈殿管を製造元の指示に従って用いて、2×103個の細胞を各ウェルの中央に播く。スライドを氷上に1時間置いた後、37℃で1時間インキュベートする。インキュベーション中の蒸発を防ぐために、水を含ませた濾紙片を培養皿の中に入れておく。1時間のインキュベーション後に沈殿管をスライドから取り出し、新たな25%馴化培地(50μl)を各ウェルに添加する。テフロンスライドの両端に合致するシリコンカバースライドを、シリコンサスペンションパッドを用いてテフロンスライドの1mm上に載せる。ベースライン時の半径測定(0h)のために細胞の写真を撮影した上で、37℃のインキュベーターに戻して遊走を進行させる。
【0164】
各ウェル内の付着細胞によって占められた円形領域の連続画像を、0時間、24時間および48時間の時点で、Olympus 1X50顕微鏡に装着し、Macintosh G4コンピュータと接続したKODAKカメラを用いて撮影する。Adobe Photoshopソフトウエアを用いて画像を取り込み、細胞集団の直径を画像解析ソフトウエアプログラムを用いて測定する。定量的な遊走の測定値を、細胞集団の初期半径(0h)から上回った半径の増分として算出する。
【0165】
v. 細胞浸潤アッセイ法
親U87細胞ならびにベクター、ランダムアンチセンスGFAP、センスGDOXおよびアンチセンスGDOXをトランスフェクトしたU87クローンの浸潤性の測定には、マトリゲル(Matrigel)をコーティングしたトランスウェルインサート(Becton Dickinson)を製造元の指示に従って用いることによる、マトリゲル浸潤アッセイ法を用いる。簡潔に述べると、孔径8μmの孔のあるトランスウェルインサートを最終濃度1mg/mlの、マトリゲルでコーティングし、200μlの細胞浮遊液(1×106個/ml)を3組ずつのウェルに添加する。24時間のインキュベーション後に、フィルターを通過して下方のウェルに入った細胞を定量し、上方および下方のウェルにある細胞の総数に対するパーセンテージとして表す。以前の記載の通りに、膜の下側にある細胞を固定し、Hema-3で染色した上で写真を撮影する(Kondraganti, S.ら、Cancer Research. 60: 6851-6855、2000)。
【0166】
神経膠腫スフェロイドの浸潤性の計測のために、神経膠腫スフェロイドをラット胎仔脳凝集物と共培養する三次元スフェロイドコンフローテーション(confrontation)アッセイ法を以前に記載された手順に従って用いることもできる(Go, Y.ら、Clin Exp Metastasis. 15: 440-446、1997;Golembieski, W. A.ら、Int J Devi Neuroscience. 17: 463-472、1999;Vajkoczy, P.ら、Int J Cancer. 87: 261-268、2000)。腫瘍スフェロイドを25μg/mlの赤色蛍光色素DiI(1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩)で染色し、30μg/mlの緑色蛍光DiO色素(3,3'-ジオクタデシルオキサカルボ-シアニン過塩素酸塩)で染色したラット胎仔脳凝集物と一緒にする。
【0167】
親U87細胞またはベクター、ランダムアンチセンスGFAP、センスGDOXもしくはアンチセンスGDOXをトランスフェクトしたU87細胞のいずれかをラット胎仔脳スフェロイドと対合させた対を、個々の凝集物を滅菌針を用いてマイクロウェル培養皿に移すことによって作製する。さまざまな時間間隔で、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、共培養物の表面から中心に向かって1μm厚の連続切片を採取する。DiIおよびDiOの蛍光を、それぞれ488nmのアルゴンレーザーとFITCフィルター光学素子(522nm)および543nmのヘリウム/ネオンレーザーとTexas Redフィルター光学素子(585nm)の組み合わせを用いて同時に検出する。共培養中の残りの脳凝集物または腫瘍スフェロイドの体積を24、48および72時間の時点で画像化ソフトウエア(Laser Sharp)を用いて定量する。対照およびGDOX-センスクローンおよびアンチセンスクローンに関して観察された画像における浸潤性の差を定量的密度マッピングによって評価する。
【0168】
vi. アポトーシスアッセイ法
GDOXの低発現および過剰発現がアポトーシスに及ぼす影響は、対照およびトランスフェクションを行ったトU87ヒト膠芽腫細胞株でさまざまな方法を用いてアッセイすることができ、これには以下が含まれる:
【0169】
(a)アポトーシス細胞に関するDAPI染色を用いた細胞形態解析を、2×105個の親U87細胞、ならびにベクター、ランダムアンチセンスGFAP、センスGDOXおよびアンチセンスGDOXをトランスフェクトしたU87細胞をポリ-L-リシンをコーティングしたカバーガラスにプレーティングした上で一晩培養したものに対して行う。翌日に細胞をPBSで1回洗浄し、続いて3.7%パラホルムアルデヒドを含むPBSにより室温で30分間固定した後に、PBSで2回洗浄する。細胞を1%Triton X-100を含むPBS中に3分間おいて透過化し、PBSで2回洗浄する。細胞を核染色色素DAPI(10μg/ml、PBS中;Sigma)により室温で20分間染色し、その後にPBSで2回洗浄する。カバーガラスに載せた細胞をスライドガラスにマウントし、核の染色をOlympus蛍光顕微鏡を用いて可視化する(倍率400倍)。アポトーシス小体を有する細胞の数および核の総数を5つの高倍率視野で算定し、アポトーシスのパーセンテージを平均+SDとして算出する。
【0170】
(b)インサイチューでのDNA鎖切断に関するTUNEL染色を、製造元(APO-Direct TUNEL直接免疫蛍光キット;PharMingen)の推奨に従って行う。Olympus蛍光共焦点顕微鏡を用いて細胞を観察する。TUNEL陽性細胞を倍率400倍で算定する。アポトーシス指数を各視野におけるアポトーシス細胞数:総細胞数として算出する。
【0171】
(c)アガロースゲル電気泳動によるDNA断片化を、収集した上でPBSで1回洗浄した2×106個の細胞を用いて行う。細胞ペレットを0.5mlの可溶化バッファー[10mM トリス(pH 7.6)および0.6%SDS]で溶解した後に、4M NaClを最終濃度1Mとして添加し、十分に混合する。可溶化物を4℃、12,000rpmで30分間遠心する。上清を採取し、50μg/mlのRNアーゼAの存在下で37℃で60分間インキュベートし、その後にフェノール:クロロホルム(1:1)抽出を行う。ゲノムDNAを、0.01M MgCl2および25μg/mlのtRNAの存在下で、2倍容積の100%エタノールにより、80℃で少なくとも2時間かけて沈殿させる。DNAを4℃、12,000rpmで30分間遠心することによってペレット化する。ペレットを70%エタノールで2回洗浄した後に風乾させ、その後に25μlのTE[10mM トリスおよび1mM EDTA(pH 8.0)]緩衝液中に再懸濁して保存する。DNAの量はA260nm値によって定量する。等量のDNAを0.8%アガロースゲルにローディングし、0.5×TBE緩衝液[45mM トリス-ホウ酸および1mM EDTA 9pH 8.0)]中にて2V/cmで16時間かけて電気泳動を行う。DNA断片化はUV光による臭化エチジウム(0.54μg/ml)染色によって可視化する。Kodak DC120 Digital Access System(Kodak)を用いて画像を取り込み、Adobe Photoshopソフトウエアを用いて処理する。
【0172】
実施例12:インビボ腫瘍形成性アッセイ法および生存期間アッセイ法
本実施例では、GDOXが腫瘍形成を促進する機序を解明するために異種移植片モデルを用いるインビボアッセイ法に関して述べる。これらのアッセイ法を、GDOXまたはその遺伝子産物の1つに対する候補治療薬がGDOX過剰発現の腫瘍形成作用を阻止する能力を検査するために用いることもできる。
【0173】
インビボ腫瘍形成性試験および生存期間試験のためには、親U87細胞ならびにベクター、センスおよびアンチセンスを安定的にトランスフェクトした細胞をトリプシン処理し、無血清培地中に再懸濁する。免疫不全BALB/cヌード(nu/nu)マウス(Charles River)に麻酔を施す。細胞株クローンのそれぞれに由来するトリプシン処理細胞を、以前の記載の通りに、4〜5週齡雌性ヌードマウスの脇腹への皮下注入(1×107個 皮下、100μlの無血清培地中)または脳内への定位的頭蓋内接種(5×105個 皮内、10μlの無血清培地中)のいずれかによって投与する。以下のようなさまざまな群を用意する:
【0174】
各群のマウス10匹を腫瘍形成性アッセイ法に用いる。インビボの腫瘍を2〜4週間(皮内腫瘍の場合)または6〜8週間(皮下腫瘍の場合)増殖させる。皮下に腫瘍を注入したマウスは注入から42日後に屠殺し、皮内に腫瘍を移植したマウスは移植14日後に屠殺する。続いてマウスに灌流固定を行う。外科的解剖によって皮下腫瘍または脳を注意深く摘出する。標準的なプロトコールに従い、各標本を10%ホルマリン/PBSで固定し、パラフィン包埋した上でHEで染色する。
【0175】
免疫組織化学解析は、Vectastain ABCキット(Vector Laboratories)を製造元のプロトコールに従って用いた後に3,3'-ジアミノベンジジン四塩化物を発色団として用いてインキュベートする、標準的な手順に従って行う。
【0176】
腫瘍細胞の増殖の評価は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋を行った組織に対するKi-67およびMIB-1免疫組織化学法によって行う。Ki-67およびMIB-1標識指数を、4つの高倍率(400倍)視野における標識された核:核の総数の比として求める。
【0177】
壊死は、コンピュータ画像解析システムを用いるHE染色組織の組織学的解析によって評価する。4つのランダムな切片のデジタル画像を倍率200倍で記録し、壊死面積を各視野における総面積に対するパーセンテージとして算出する。
【0178】
血管新生は、抗CD31抗体(PharMingen)を対比染色をせずに用いる免疫組織化学法によって評価し、コンピュータ画像解析システムを用いて微小血管面積として定量化する。微小血管面積は、切片の4つのデジタル画像を倍率200倍で取り込み、各切片における染色の総量を測定することによって決定する。この値を各視野における総面積に対するパーセンテージとして表す。血管新生は、抗VEGF抗体(PharMingen)を用いた血管内皮増殖因子(VEGF)に対する免疫染色によっても評価される。
【0179】
腫瘍細胞のマウス脳内への浸潤は、以前に記載されたプロトコールを用いる、Blur-2ヒト特異的DNAプローブとのインサイチューハイブリダイゼーションによって評価するが、これはマウス細胞の背景下にあるすべてのヒト細胞を同定しうると考えられる(Rempel, S. A.ら、J Neuropathol Exp Neurol. 57: 1112-1121、1998)。
【0180】
皮下に腫瘍を注入した各群のマウス10匹を腫瘍増殖曲線の検討に用い、皮内に腫瘍を移植した各群のマウス10匹を生存期間に関して評価する。マウスを、目視しうる皮下の腫瘍、または皮内の腫瘍による神経学的症状の出現に関して1日おきに検査する。
【0181】
皮下腫瘍に関しては、キャリパーによる測定値を週2回ずつ計測する。腫瘍体積(mm3単位)は(長さ×幅2)/2の式を用いて求めるが、ここで長さは最長方向の直径であり、幅は長さに直交する測定値である。剖検時に外科的解剖によって腫瘍を注意深く摘出し、秤量する。データは各群に関して腫瘍体積または重量の平均±SEとして表す。
【0182】
皮内への腫瘍異種移植片に関しては、さまざまな群のマウスを生存期間に関して観測する。生存期間の推計値および平均生存期間をカプラン-マイヤー法を用いて決定し、ウィルコキソン分析によって分析する。
【0183】
実施例13:トランスジェニックマウスのアッセイ法
本実施例では、GDOXが腫瘍形成を促進する機序を解明するためにトランスジェニックマウスモデルを用いるインビボアッセイ法に関して述べる。これらのアッセイ法を、GDOXまたはその遺伝子産物の1つに対する候補治療薬がGDOX過剰発現の腫瘍形成作用を阻止する能力を検査するために用いることもできる。
【0184】
GDOX癌遺伝子と推定されるものの発現がインビボでの腫瘍形成のために十分であることを確かめるために、トランスジェニック技術を用いてマウス腫瘍モデルを開発する。Dingら(Cancer Research. 61: 3826-3836, 2001)に記載された方法の変法を用いて、GDOXトランスジェニックマウスを、アストロサイト特異的GFAPプロモーターの制御下にあるGDOX遺伝子の胚性幹(ES)細胞を介した移入によって作製する。
【0185】
プラスミドの構築
lacZ(β-ガラクトシダーゼ)遺伝子の発現を導くヒトGFAPプロモーターの2.2kb断片を含むプラスミドpGfa 2lac1を用いる(Holland, E. C.およびVarmus, H. E.、Proc Natl Acad Sci USA. 95: 1218-1223、1998)。lacZ遺伝子をBamH1による消化処理によって除去し、pBK-CMVからのGDOX cDNAを含む挿入断片と置き換える。GFAP-GDOX断片を、同じ向きにある2つのloxP部位によって挟まれたネオマイシン選択マーカーを含むPloxP-neoベクター中に挿入する。LacZ遺伝子を核局在シグナルおよびIRES配列と融合させたIRESLacZカセットをベクターに導入してトランスジェニック構築物:GFAP-GDOX-IRESLacZポリA-loxP-neo-loxPを形成させる。
【0186】
細胞培養物のトランスフェクションおよびインビトロ分化
NIHのHuman Embryonic Stem Cell Registryに記載された開発済みの幹細胞株であるES01細胞(ES Cell International)を、以前に記載されたプロトコール(Nagy, A. 「Production and analysis of ES-cell aggregation chimeras」、p. 177-206. New York:Oxford University Press, Inc.、1999)に従って増殖させる。トランスフェクションのためには、約5×105個のES01細胞を20μgの線状化DNAと混合し、Gene Pulser(Bio-Rad)を250V、500μFで用いて電気穿孔法を行う。200μg/mlのG418(Life Technologies)により7〜8日間かけて選択した後に、コロニーを取り出し、96ウェルプレートで増殖させる。ES細胞のアストロサイトへのインビトロ分化は以前の記載の通りに行う(Ding, H.ら、Cancer Research. 61: 3826-3836、2001;Fraichard,A.ら、J Cell Sci. 108: 3181-3188、1995)。
【0187】
陽性ESクローンを、記載されたプロトコールに従ってマウス胚との凝集に用いる。キメラ胚のいくつかを切開し、固定してX-Galで染色する。生きた状態のキメラを、C57B1/6雌との交配により、生殖系列移行に関して検査する。
【0188】
遺伝子型判定
GFAP-GDOXトランスジェニックマウスにおける遺伝子型および導入遺伝子のコピー数を明らかにするために、ゲノムDNAを尾部生検試料から調製してPCRおよびサザンブロット解析に用いる。
【0189】
脳切片の作成、組織学検査および免疫組織化学検査
マウスを屠殺し、脳を4%ホルムアルデヒド/0.4%グルタルアルデヒド/1×PBS中に36時間おいて固定し、続いて20%スクロース/2%グリセロール/1×PBS中で脱水する。標準的なプロトコールに従い、凍結切片(40μm)をクリオスタットのミクロトームを用いて作成し、HEで染色する。グリア腫瘍形成の所見を観察するために、GFAPに関する免疫組織化学染色をモノクローナル抗GFAP抗体(Boehringer)を用いて行う。トランスジェニックマウスの他の臓器を剖検時に検査することもできる。
【0190】
これらのトランスジェニックマウスに腫瘍が認められれば、腫瘍細胞の増殖(抗Ki67および抗MIB-1免疫染色を用いる)、壊死(HE)、血管新生(抗CD31、抗VEGF免疫染色)および浸潤(Blur-2とのインサイチューハイブリダイゼーション)の評価のために、組織学的検査をおよび免疫組織化学解析を上記の標準的なプロトコールに従って行う。
【0191】
超微細構造の解析のためには、腫瘍を四酸化オスミウムで後固定し、脱水した上でエポキシに包埋する。30nm切片を銅グリッドにマウントし、クエン酸鉛で染色した上で電子顕微鏡により観察する。
【0192】
実施例14:相同タンパク質の同定
図14〜16に示されているように、GDOXと相同性のある2種類のヒトタンパク質が同定されている。GTRAP3-18(グルタミン酸輸送体EAAC1関連タンパク質)は、細胞骨格と関連のあるビタミンA応答性タンパク質;JWA;jmx;HSPC127;ADPリボシル化様因子6相互作用タンパク質5としても知られている。GTRAP3-18はツーハイブリッドスクリーニングによって同定されたもので、多くの組織および細胞株で発現される。GTRAP3-18は細胞膜および細胞質に局在し、EAAC1のカルボキシ末端の細胞内ドメインと特異的に相互作用する。EAAC1は主な神経性グルタミン酸輸送体であり、グルタミン酸を細胞外環境から細胞内に輸送する。細胞におけるGTRAP3-18の発現増大はEAAC1を介したグルタミン酸輸送を減少させる(Linら、2001、Nature 410: 84-88)。
【0193】
PRA1(プレニル化Rabアクセプター1)はツーハイブリッドスクリーニングにより、Rab3AおよびRab1と相互作用するものとして同定された。これは多くの組織および細胞株で発現され、プレニル化Rab GTPアーゼとは結合するが他の低分子量Ras様GTPアーゼとは結合しない。Rab GTPアーゼは細胞内小胞輸送と関連付けられている。PRA1はシナプス小胞タンパク質VAMP2(またはシナプトブレビンII)とも特異的に結合する。PRA1の欠失解析により、RabおよびVAMP2と相互作用する重要な残基がアミノ末端残基30〜54およびカルボキシ最末端ドメインという2つの領域に存在することが示されている。このため、N末端領域およびC末端領域はいずれも細胞質中に存在すると考えられる(Martincicら、1997、J. Biol. Chem. 272(43): 26991-8)。
【0194】
本出願の全体にわたり、さまざまな刊行物を参照している。これらの刊行物の開示内容はそれらの全体が、本発明が属する技術分野の水準をより詳細に記載する目的で、参照として本出願に組み入れられる。
【0195】
本発明の特定の態様を例示の目的で説明してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなくさまざまな変更を加えうることは以上より理解されると考えられる。したがって、本発明は、添付した特許請求の範囲以外のものによっては制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】図1Aは、GDOXのヌクレオチド配列(配列番号:1)および推定されるアミノ酸配列(配列番号:2)を示している。下線を施した領域は、GDOXの予想されるオープンリーディングフレーム(ORF)を、対応するアミノ酸配列とともに示している。開始コドン(ATG)はヌクレオチド17で始まり、終止コドン(TAG)は553で終了する。プロテインキナーゼC(PKC)リン酸化部位と予想される部位(19〜21および139〜141)は枠で囲まれており、N-ミリストイル化部位と考えられる部位(53〜58および118〜123)は点線の枠で囲まれている。図1Bは、GDOX遺伝子産物の推定される構造を示した概略図である。
【図2】図2Aは、正常脳組織および腫瘍形成性脳組織におけるGDOX mRNAの発現を対比して示したノーザンブロット解析の結果を示している。レーン1〜3は、てんかんに対する外科的切除の例(レーン1)、外傷に対する外科的減圧術の例(レーン2)および剖検を行った正常脳(レーン3)から採取した非腫瘍形成性の脳組織である。レーン4〜24は、膠芽腫(レーン4〜15)、未分化星状細胞腫(レーン16〜21)または乏突起神経膠腫(レーン22〜24)であることが病理学的に確認された、外科的に切除された脳腫瘍組織である。ブロットは増感スクリーンを用いずに24時間露光させた。図2Bは、種々のヒト末梢臓器におけるGDOX mRNAの発現を示したノーザンブロット解析を示している。組織標本は剖検時に正常脳(レーン1)、肺(レーン2)、腎臓(レーン3)、骨格筋(レーン4)、精巣(レーン5)、肝臓(レーン6)、膵臓(レーン7)、脾臓(レーン8)、心臓(レーン9)および副腎(レーン10)から採取した。このブロットは増感スクリーンを用いて2週間露光させた。ローディング対照として、同じブロットを18S cDNAを用いて再びプロービングし、スクリーンを用いずに1時間露光させた。
【図3】図3Aは、正常脳組織および腫瘍形成性脳組織におけるGDOXタンパク質の発現に関するウエスタンブロット解析の結果を示している。レーン9および10は、外傷に対する外科的減圧術の例(レーン9)および剖検を行った正常脳標本(レーン10)から採取した非腫瘍形成性脳組織である。レーン1〜8は、乏突起神経膠腫(レーン1)、低悪性度星状細胞腫(レーン2)、未分化星状細胞腫(レーン3)または膠芽腫(レーン5〜8)であることが病理学的に確認された、外科的に切除された脳腫瘍組織である。図3Bは、種々のヒト末梢臓器におけるGDOXタンパク質の発現に関するウエスタンブロット解析の結果を示している。組織標本は剖検時に正常脳(レーン1)、肺(レーン2)、心臓(レーン3)、肝臓(レーン4)、腎臓(レーン5)、精巣(レーン6)および脾臓(レーン7)から採取した。主として57-kdタンパク質が検出され、これよりも弱い19-kdバンドもみられた。これらのタンパク質はノーザンブロット解析によってGDOX mRNAに関して認められたものと同じ組織分布で局在していた。
【図4】U87ヒト膠芽腫細胞におけるGDOX(図4A)およびGFAP(図4B)の細胞内局在を示した顕微鏡写真である。U87細胞はカバーガラス上に播いた。発現されたGDOXは、抗GDOXペプチド抗体を用いた後にFITC結合二次IgGで染色する免疫蛍光によって検出した。GFAPの発現は、抗GFAP抗体を用いた後にTRTTC結合二次抗体で染色することによって検出した。一次抗体の特異性は二次抗体のみによる染色がみられないことによって確かめた。元の倍率は400倍。
【図5】透過化処理を行っていない(図5A)または透過化処理を行った(図5B)初代ヒト膠芽腫細胞の免疫蛍光共焦点顕微鏡検査によってアッセイした、GDOXの細胞内局在を示した顕微鏡写真である。元の倍率は400倍。
【図6】ヒトの腫瘍性脳組織(図6A)および非腫瘍性脳組織(図6B)の比較解析のためのGDOX抗体を用いた免疫組織化学染色を示した顕微鏡写真である。膠芽腫組織におけるGDOXの核小体への細胞内局在が注目される。元の倍率は200倍。
【図7】体細胞ハイブリッドパネル中のヒト染色体DNAに対するGDOX cDNAのサザンブロット法の結果を示している。DNAハイブリダイゼーションにより、ヒトゲノムDNAおよび体細胞ハイブリッドNA10324由来のDNAとの間に予想されるサイズのバンドが示され、これがヒトX染色体を含むこのマッピングパネル(Coriell Cell Repositories)中に示された唯一のハイブリッドであった。このため、GDOX遺伝子はヒトX染色体上に存在するように思われる。
【図8】センスおよびアンチセンスGDOX cDNAをトランスフェクトしたヒト膠芽腫細胞(U87細胞株)におけるGDOXの発現の有無を確認するためのウエスタンブロット解析の結果を示している。
【図9】アンチセンスGDOX cDNAをトランスフェクトしたU87細胞における形態変化を示した位相差顕微鏡写真である。野生型対照U87細胞は屈折性が高く、細胞質突起を有する大きな斑状に成長していた(図9A)。アンチセンスGDOXをトランスフェクトした細胞は十分に成長せず、より丸みを帯びた形態であった(図9B)。
【図10】インビトロでのグリア細胞の増殖に対するGDOX過剰発現の影響を示したグラフである。pBK-CMV-GDOXをトランスフェクトしたマウスCIMO細胞および対照物をトランスフェクトしたマウスCIMO細胞のインビトロ増殖速度を[3H]チミジン取り込みアッセイ法で測定した。1分間当たりのカウント数(cpm)での結果を、空ベクター(pBK-CMV)をトランスフェクトした細胞の非許容条件(37℃)下での増殖の比率に対して標準化した。空ベクター対照(37℃でのCIMO)のcpmを各実験で100%に設定し各実験の他のカウントはすべてこの値に対して標準化した。示した結果は、それぞれ3つずつのウェルを用いた3回の独立した実験を併せたものである。バーは平均値+SDを表している。
【図11】インビトロでのヒト神経膠腫細胞株U87におけるGDOXの増殖調節作用(growth modulation effect)を示した棒グラフである。親U87細胞、またはU87細胞に対して空ベクター(U87-V)、ランダムアンチセンスを含むベクター(U87-asGFAP)、センスGDOX(U87-GDOX)もしくはアンチセンスGDOX(U87-asGDOX)をトランスフェクトしたものを、[3H]チミジン取り込みによてアッセイした。結果は対照野生型U87細胞の増殖の比率(これを100%に設定した)に対して標準化した。
【図12】ヒト腫瘍細胞株における特異的な抗GDOX抗体の増殖抑制作用を示した棒グラフである。図12A、ES-UCLA(原発性膠芽腫);図12B、SKBR3(乳房腺癌);図12C、A549(肺癌);および図12D、Du145(前立腺癌)。結果は、熱失活させた抗GDOX抗体または対照抗体を等量用いた対照細胞による対照増殖の比率に対して標準化した。
【図13】生存度とGDOX過剰発現との相関に関するノーザンブロット解析の結果を示している。ヒト膠芽腫患者から得た試料をGDOX cDNAを用いてプロービングし、GDOX mRNA発現の相対量を、2年を越えて生存している患者(左図)および生存期間が1年未満である患者(右図)から得た試料間で比較した。生存期間の短い患者ではGDOXタンパク質のかなりの過剰発現が観察された。
【図14】GDOX(配列番号:2)と、ヒト相同体GTRAP3-18(配列番号:5)およびPRA1(配列番号:6)とのアミノ酸配列アライメントである。GDOXはGTRAP3-18とは66%の類似性を示し、PRA1とは42%の類似性を示す。
【図15】GDOXのエクソン構造をGRAP3-18およびPRA1のものと比較した図である。
【図16】それぞれN末端およびC末端を内部に有する、GDOX(配列番号:2)、GTRAP3-18(配列番号:5)およびPRA1(配列番号:6)の膜貫通ドメインのアミノ酸配列アライメントである。
【図17】http://source.stanford.edu.にあるSOURCEから入手した、GDOX/JM4の発現プロファイルを示したチャートである。数字は組織型(59種のうち上位10種)に関して標準化された発現分布を示している。
【図1A】
【図1B】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年7月2日に提出された米国特許出願第10/188,840号(そのすべての内容は参照として本明細書に組み入れられる)に対する優先権を請求する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は一般に、癌の検出および治療法に関する。本発明はより詳細には、治療標的および診断標的としての新規遺伝子GDOXおよびGDOX関連分子に関する。GDOX抗体およびアンチセンスヌクレオチドは、GDOXを発現する種々の癌の治療のためのワクチンおよび薬学的組成物に、さらには、このような癌の検出および悪性度の評価のための方法に用いることができる。本発明はさらに、癌の治療および検出に有用な分子を同定するための方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌および感染症は全世界を通じて保健上の重大な問題である。これらの疾患の発見および治療法には進歩がみられるが、予防または治療のためのワクチンもその他の普遍的に奏功する方法も現時点では得られていない。現在の治療法は一般に化学療法または外科手術と放射線療法との併用を基盤としているが、多くの患者には不十分であることがますます明らかになっている。
【0004】
癌は、癌遺伝子の活性化および/または腫瘍抑制遺伝子の不活性化を引き起こす、累積的な多数の遺伝子変異の結果である。細胞に増殖制御を無効化させて発癌を起こさせるのは、これらの重要な遺伝子およびそれらの下流エフェクターの差異を伴う(differential)発現である。癌において生じる病的変化は、それが単一の遺伝子変異または多数の遺伝的変化のいずれに起因するかにかかわらず、本質的には遺伝子発現の変化によって引き起こされる。星状細胞腫の悪性プログレッションにおいては、多数の遺伝子障害の蓄積が腫瘍化プロセスの基礎をなすことが示されている。これらの障害には、遺伝子p53、p16、RBおよびPTENの変異、さらにはCDK4およびEGFRの増幅が含まれる(Furnari, F.ら、Cancer Surv.、25: 233-275、1995;Cavenee, W.、Cancer.、70: 1788-93、1992)。これらの既知の遺伝的異常は最も悪性度の高い脳腫瘍である膠芽腫の形成においても詳細に報告されているが、悪性腫瘍の基礎をなす遺伝子発現の差異の程度に関する最近の知見からは、正常細胞と腫瘍細胞との間では数百種もの遺伝子転写物が大きく異なるレベルで発現されている可能性があることが明らかになっている(Zhang, L.ら、Science.、276: 1268-72、1997)。このため、これらの癌の複雑な分子的基盤の解明の促進を目的とする、脳の癌細胞およびその他の癌細胞で差異を伴って発現される新規遺伝子の同定には大きな需要がある。さらに、この取り組みには、差異を伴って発現されるこれらの遺伝子産物を特異的な標的とする治療法と組み合わせれば、直接的な臨床上の意義もある。
【0005】
現在はさまざまな方法が、差異を伴う特定の表現型と関連付けられる遺伝子を単離するために用いられている。サブトラクティブハイブリダイゼーション(subtractive hybridazation)法、ディファレンシャルディスプレイ(differential display)法(DD)、レプレゼンテーショナルディファレンス解析(representational difference analysis)法(RDA)、連続的遺伝子発現解析法(SAGE)およびサプレッションサブトラクティブ(suppression subtractive)ハイブリダイゼーション法(SSH)はいずれも、差異を伴って発現される配列のクローニングおよび同定を可能にする。これらの技術はいずれも組織中に豊富に存在するmRNAを同定するが、組織特異的なタンパク質を選別するものは皆無である。タンパク質を合成する能力だけではなくタンパク質産物の存在も実際に確認されるディファレンシャルスクリーニング法によって同定された分子に対しては未だに需要が存在する。さらに、免疫系によって認識される抗原決定基を有しており、有効な免疫応答を誘発しうる腫瘍関連タンパク質に対しても需要が存在する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、多様な癌の治療および検出のための組成物および方法を提供することにより、上記およびその他の需要を満たす。より詳細には、本発明は、GDOX関連分子、GDOX関連分子を含む組成物およびキット、ならびにGDOX関連分子を癌の治療および検出のために用いる方法を提供する。1つの態様において、本発明は、発現制御配列と機能的に結合したGDOXタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターを提供する。核酸分子は、意図した用途に応じて、GDOXタンパク質をセンスまたはアンチセンスのいずれの向きでコードしてもよい。GDOX関連分子の生産のために用いうる、このような発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。いくつかの態様において、核酸分子は検出可能なマーカーによって標識される、または薬学的に許容される担体とともに組成物中にある状態で提供される。
【0007】
本発明はさらに、配列番号:2のアミノ酸62〜65、68〜83、113〜136、129〜178、137〜155および/または159〜178を含む免疫原性GDOXペプチドを含む、GDOXポリペプチドも提供する。GDOXポリペプチドは、個々の用途に適したさまざまな形態で、例えば可溶性の形態、基質上に固定化された状態、または薬学的に許容される担体と組み合わせた状態で提供することができる。このようなGDOXポリペプチドに対する抗体も提供する。いくつかの態様において、抗体は検出可能なマーカーによって標識される、または薬学的に許容される担体とともに組成物中にある状態で提供される。
【0008】
本発明によって提供される方法には、癌細胞をGDOX分子の生物活性を妨げる分子と接触させることを含む、癌細胞の増殖を抑制するための方法が含まれる。生物活性には一般に、GDOXとGDOX抗体との特異的結合、またはGDOXポリヌクレオチドの発現が含まれる。提供される他の方法には、GDOX分子の生物活性を妨げる分子を対象に投与することによって癌を治療するための方法、癌を検出するための方法、および、エストロゲンアンタゴニストに対する感受性のある癌を同定するための方法が含まれる。癌を検出するための方法は、組織標本を、GDOX分子と特異的に結合する検出可能な分子と接触させること、および検出可能な分子の結合を検出することを含む。検出可能な分子の結合によって癌が示される。エストロゲンアンタゴニストに対する感受性のある癌を同定するための方法は、癌標本を、GDOX分子と特異的に結合する検出可能な分子と接触させること、および検出可能な分子の結合を検出することを含む。検出可能な分子の結合により、エストロゲンアンタゴニストに対する感受性のある癌が示される。検出可能な分子の例には、GDOXタンパク質に対する抗体、またはGDOX核酸分子と特異的にハイブリダイズするアンチセンスヌクレオチドが含まれる。代表的には、癌細胞は、脳、肺、前立腺、結腸もしくは乳房、またはGDOXの過剰発現を伴う他の任意の癌に由来する。脳の癌細胞の例には、膠芽腫、星状細胞腫または乏突起神経膠腫の細胞が含まれる。代表的なエストロゲンアンタゴニストにはタモキシフェンがある。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、さまざまなヒト癌で過剰発現される遺伝子GDOXの発見に基づく。GDOXは癌の治療および検出のための新規標的を提供する。さらに、本明細書に記載したデータは、GDOXに対する抗体およびアンチセンスヌクレオチドが、脳、乳房、肺、結腸および前立腺を含むさまざまな組織に由来する癌細胞の増殖を抑制するのに有効であることを示している。したがって、本発明は、さまざまな癌の検出、モニタリングおよび治療のための診断薬および治療薬としてのGDOX関連分子を提供する。
【0010】
定義
別に指定する場合を除き、本出願において用いられるすべての科学用語および技術用語は、当技術分野で一般に用いられているものと同じ意味を有する。本出願において用いる場合、以下の用語および語句は指定された意味を有する。
【0011】
本明細書で用いる場合、「ポリペプチド」には、タンパク質、タンパク質の断片、およびペプチドが、天然の源から単離したもの、組換え法によって作製したもの、または化学合成したものかを問わずに含まれる。本発明のポリペプチドは一般に少なくとも約6アミノ酸を含む。
【0012】
本明細書で用いる場合、「GDOX関連分子」には、GDOXポリペプチド、GDOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、GDOXポリペプチドをコードするものに対して相補的なポリヌクレオチド、GDOXポリペプチドを特異的に認識して結合する抗体が含まれる。
【0013】
本明細書で用いる場合、「GDOXの生物活性」は、GDOXとGDOX結合パートナー(GDOX受容体または抗体など)との特異的結合、GDOXポリヌクレオチドの発現、およびGDOX関連分子の増殖調節作用のことを指す。
【0014】
本明細書で用いる場合、「ベクター」は、目的の1つまたは複数の遺伝子または配列を宿主細胞に送達することが可能な、好ましくは発現させることが可能な、構築物のことを意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、裸のDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、プラスミドベクター、コスミドベクターまたはファージベクター、陽イオン性凝縮剤と会合したDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞などの特定の真核生物細胞が非制限的に含まれる。
【0015】
本明細書で用いる場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を指令する核酸配列のことを意味する。発現制御配列は、構成性もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーターでもよく、またはエンハンサーでもよい。発現制御配列は、転写させようとする核酸配列と機能的に結合している。
【0016】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖の形態にあるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの重合体のことを指し、別に限定しない限り、天然ヌクレオチドと類似した様式で核酸とハイブリダイズする天然ヌクレオチドの既知の類似体も含まれる。
【0017】
本明細書で用いる場合、「抗原提示細胞」または「APC」とは、抗原を処理してリンパ球に対して提示することができる細胞のことを意味する。APCの例には、マクロファージ、ランゲルハンス-樹状細胞、濾胞樹状細胞、B細胞、単球、線維芽細胞および線維細胞が非制限的に含まれる。樹状細胞が好ましいタイプの抗原提示細胞である。樹状細胞は多くの非リンパ性組織で認められるが、これは輸入リンパ管または血流を介してリンパ系器官のT依存性領域に移動することができる。非リンパ系器官にある樹状細胞には、ランゲルハンス細胞および間質性樹状細胞が含まれる。リンパ液中および血液中のものには、それぞれ輸入リンパ管ベール細胞および血中樹状細胞が含まれる。リンパ系器官にあるものにはリンパ系樹状細胞および相互連結(interdigitating)細胞が含まれる。
【0018】
本明細書で用いる場合、エピトープを提示するために「改変された(modified)」とは、自然な方法または組換え法によってエピトープを提示するように操作された抗原提示細胞(APC)のことを指す。例えば、APCは、単離された抗原(単独または混合物の一部として)に対する曝露により、ペプチドローディング(peptide loading)により、または1つもしくは複数のエピトープを含むポリペプチドを発現するようにAPCを遺伝的に改変することにより、改変することができる。
【0019】
本明細書で用いる場合、「腫瘍タンパク質」とは、腫瘍細胞によって発現されるタンパク質のことである。また、腫瘍タンパク質であるタンパク質は、イムノアッセイ法(ELISAなど)でも、癌患者から得た抗血清と検出可能な形で反応する。
【0020】
本明細書で用いる「免疫原性ポリペプチド」は、B細胞および/またはT細胞の表面抗原受容体によって認識される(すなわち、特異的に結合される)タンパク質の一部分である。このような免疫原性ポリペプチドは一般に、癌または感染症と関連のあるタンパク質の少なくとも5アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも10アミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも20アミノ酸残基を含む。ある種の好ましい免疫原性ポリペプチドには、N末端リーダー配列および/または膜貫通ドメインが除去されたペプチドが含まれる。また別の好ましい免疫原性ポリペプチドは、成熟タンパク質に比して、N末端および/またはC末端にわずかな欠失(例えば、1〜30アミノ酸、好ましくは5〜15アミノ酸)を含むと考えられる。
【0021】
本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される担体」には、有効成分と組み合わせた場合に成分の生物活性を保たせるとともに、対象の免疫系との反応性はない、任意の材料が含まれる。その例には、リン酸緩衝食塩液、水、水中油型乳濁液などの乳濁液、および種々のタイプの湿潤剤といった標準的な医薬用担体のうち任意のものが非制限的に含まれる。エアロゾル投与または非経口的投与のために好ましい希釈剤は、リン酸緩衝食塩液または生理的(0.9%)食塩水である。
【0022】
このような担体を含む組成物は、よく知られた従来の方法によって製剤化される(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、A. Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990を参照されたい)。
【0023】
本明細書で用いる「アジュバント」には、免疫応答を促進する目的で当技術分野で一般的に用いられるアジュバントが含まれる。アジュバントの例には以下のものが非制限的に含まれる:ヘルパーペプチド;水酸化アルミニウムゲル(alum)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;フロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MT);Merckアジュバント65(Merck and Company, Inc.、Rahway、NJ);AS-2(Smith-Kline Beecham);QS-21(Aquilla Biopharmaceuticals);MPLまたは3d-MPL(Corixa Corporation、Hamilton、MT);LEIF;カルシウム、鉄または亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオン性または陰イオン性に誘導体化された多糖類;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびクワイルA(quil A);ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン、または、サイトカイン(例えば、GM-CSFまたはインターロイキン-2、インターロイキン-7もしくはインターロイキン-12)および免疫刺激性DNA配列を含む免疫刺激複合体が非制限的に含まれる。いくつかの態様においては、ポリヌクレオチドワクチンなどを用いることにより、ヘルパーペプチドまたはサイトカインなどのアジュバントを、アジュバントをコードするポリヌクレオチドによって提供することもできる。
【0024】
本明細書で用いる「1つの(a)」または「1つの(an)」は、別に明示する場合を除き、少なくとも1つであることを意味する。
【0025】
本発明のポリヌクレオチド
本発明は、配列番号:2のアミノ酸1〜178、19〜21、53〜58、62〜65、65〜85、68〜83、113〜136、105〜128、118〜123、129〜178、137〜155、139〜141もしくは159〜178を含むポリペプチド、またはそれらの一部分もしくは他のバリアントといった1つまたは複数のGDOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。好ましいポリヌクレオチドは、GDOXポリペプチドをコードする、少なくとも15個の連続したヌクレオチド、好ましくは少なくとも30個の連続したヌクレオチド、より好ましくは少なくとも45個の連続したヌクレオチドを含む。このような配列のいずれかに対して完全に相補的なポリヌクレオチドも本発明に含まれる。ポリヌクレオチドは一本鎖(コードまたはアンチセンス)でも二本鎖でもよく、DNA(ゲノム性、cDNAまたは合成性)分子でもRNA分子でもよい。RNA分子には、イントロンを含んでいてDNA分子と一対一に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含まないmRNA分子が含まれる。そのほかのコード配列または非コード配列が、必然的ではないものの、本発明のポリヌクレオチドの内部に存在してもよく、ポリヌクレオチドが、必然的ではないものの、他の分子および/または支持材料と結合していてもよい。このようなGDOXポリヌクレオチドの部分は、組織標本におけるGDOX関連分子の増幅および検出のためのプライマーおよびプローブとして有用と考えられる。
【0026】
ポリヌクレオチドは、天然の配列(すなわち、GDOXポリペプチドまたはその一部分をコードする内因性配列)を含んでもよく、またはこのような配列のバリアントを含んでもよい。ポリヌクレオチドのバリアントは、天然のGDOXタンパク質と対比して、コードされるポリペプチドの免疫原性が減じないような1つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含む。バリアントは、天然のGDOXタンパク質またはその一部分をコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、最も好ましくは少なくとも約90%の同一性を示すことが好ましい。
【0027】
2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、下記のように最も高度な合致が得られるようにアラインメントを行った時に、2つの配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が同じであれば「同一である」と言われる。2つの配列の比較は一般に、配列類似性を有する局所領域の同定および比較のための比較域(comparison window)にわたって配列を比較することによって行われる。本明細書で用いる「比較域」とは、2つの配列の最適なアラインメントを行った後に同数の連続した位置を有する参照配列と比較しうる、少なくとも約20個、通常は30〜約75個、40〜約50個の連続した位置を有するセグメントのことを指す。
【0028】
比較のための配列の最適なアラインメントは、Lasergeneスイート・バイオインフォマティクス用ソフトウエア(DNASTAR, Inc.、Madison、WI)に含まれるMegalignプログラムをデフォールトのパラメーターで用いて行うことができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されたいくつかのアライメント方式を組み入れている:Dayhoff M.O. (1978)「A model of evolutionary change in proteins Matrices for detecting distant relationships」、Dayhoff M.O.(編)、「Atlas of Protein Sequence and Structure」中、National Biomedical Research Foundation、Washington DC Vol. 5、Suppl. 3、pp. 345-358;Hein J. (1990)「Unified Approach to Alignment and Phylogenes」pp. 626-645 Methods in Enzymology vol. 183、Academic Press, Inc.、San Diego、CA;Higgins, D. G.およびSharp, P. M. (1989) CABIOS 5: 151-153;Myers, E. W.およびMuller W. (1988) CABIOS 4:11-17;Robinson, E. D. (1971) Comb. Theor. 11:105;Santou, N.、Nes, M. (1987) Mol. Biol. Evol. 4: 406-425;Sneath, P.H.A.およびSokal, R. R. (1973)「Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy」、Freeman Press、San Francisco、CA;Wilbur, W.J.およびLipman、D.J. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 726-730。
【0029】
「配列同一性のパーセンテージ」は、最適なアラインメントが行われた2つの配列を少なくとも20個の位置を有する比較域にわたって比較することによって決定されることが好ましく、この際、比較域におけるポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、2つの配列の最適なアラインメントのために参照配列(付加も欠失も含まないもの)の20%またはそれ未満、通常は5〜15%または10〜12%の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。パーセンテージは、同一な核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列に存在する位置の数を決定して一致する位置の数を求め、一致する位置の数を参照配列における位置の総数(すなわち、比較域のサイズ)で除算し、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。
【0030】
バリアントは追加的または代替的に、天然の遺伝子またはその一部分もしくは相補物に対して実質的に相同であってもよい。このようなポリヌクレオチドバリアントは、中程度にストリンジェントな条件下で、天然のGDOXタンパク質(または相補的配列)をコードする天然に存在するDNA配列とハイブリダイズしうる。
【0031】
適した「中程度にストリンジェントな条件」には、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH 8.0)溶液中での予洗;50℃〜65℃、5×SSCでの一晩のハイブリダイゼーション;その後に0. 1%SDSを含む2×SSC、0.5×SSCおよび0.2×SSCのそれぞれにより65℃で20分間の洗浄を2回行うこと、が含まれる。
【0032】
本明細書で用いる「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は以下のものである:(1)洗浄のために低イオン強度および高温を用いる、例えば、50℃の0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤を用いる、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液とともに含むもの、pH 6.5、42℃;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストランを42℃で用い、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)、42℃および50%ホルムアミド、55℃で洗浄した後に、EDTAを含む0.1×SSC、55℃による高ストリンジェンシー洗浄を行う。当業者は、プローブ長などの要因に対応させるために温度、イオン強度などを必要に応じて調整するやり方を認識していると考えられる。
【0033】
遺伝暗号の縮重性の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が数多く存在することは当業者に理解されると考えられる。これらのポリヌクレオチドの中には、どの天然の遺伝子のヌクレオチド配列に対してもわずかな相同性しか有していないものがある。しかし、コドンの使用法の違いが理由で異なるポリヌクレオチドは、本発明により明確に想定されている。さらに、本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子も本発明の範囲に含まれる。対立遺伝子とは、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換などの1つまたは複数の変異の結果として変化した内因性遺伝子のことである。その結果生じるmRNAおよびタンパク質は、必然的ではないが、構造または機能が変化することがある。対立遺伝子は、標準的な技術(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベースの配列の比較)を用いて同定することができる。
【0034】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で知られた種々の技術のうち任意のものを用いて調製しうる。GDOXタンパク質をコードするDNAを、GDOXタンパク質mRNAを発現する組織から調製したcDNAライブラリーを用いて入手することもできる。したがって、ヒトGDOX DNAは、ヒト組織から調製したcDNAライブラリーから首尾良く入手することができる。GDOXタンパク質をコードする遺伝子を、ゲノムライブラリーから、またはオリゴヌクレオチドの合成によって入手することもできる。ライブラリーを、目的の遺伝子またはそれによってコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(GDOXに対する抗体、または少なくとも約20〜80塩基のオリゴヌクレオチド)によってスクリーニングすることができる。選択したプローブによるcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーのスクリーニングは、Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載されたものなどの標準的な手順を用いて行える。GDOXをコードする遺伝子を単離するための代替的な手段の一つは、PCR法を用いることである(Sambrookら、前記;Dieffenbachら、「PCR Primer: A Laboratoy Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995))。
【0035】
プローブとして選択するオリゴヌクレオチド配列は、偽陽性物が最小限に抑えられるように十分に長くかつ十分に非多義的(unambiguous)である必要がある。オリゴヌクレオチドは、スクリーニング対象のライブラリー中のDNAとのハイブリダイゼーション後にそれを検出しうるように、標識しておくことが好ましい。標識の方法は当技術分野で周知であり、これには、32P標識ATPなどの放射性標識、ビオチン化または酵素標識の使用が含まれる。中程度のストリンジェンシーおよび高ストリンジェンシーを含むハイブリダイゼーション条件は、Sambrookら、前記に提示されている。
【0036】
ポリヌクレオチドバリアントは一般に、化学合成、例えば固相ホスホルアミダイト化学合成によるものを含む、当技術分野で知られた任意の方法によって調製しうる。オリゴヌクレオチド依存性部位特異的変異誘発法(Adelmanら、DNA 2: 183、1983を参照)などの標準的な変異誘発法を用いて、ポリヌクレオチド配列に改変を導入することもできる。または、DNAが適したRNAポリメラーゼプロモーター(T7またはSP6など)を有するベクターに組み入れられる条件下で、RNA分子を、GDOXタンパク質またはその一部分をコードするDNA配列のインビトロまたはインビボでの転写によって作製することもできる。本明細書に記載の通り、コードされるポリペプチドの調製のためにある特定の部分を用いることもできる。追加的または代替的に、コードされるポリペプチドがインビボで生成されるように、ある部分を患者に投与することもできる(例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞に対して、GDOXポリペプチドをコードするcDNA構築物をトランスフェクトし、そのトランスフェクト細胞を患者に投与することによる)。
【0037】
任意のポリヌクレオチドを、インビボでの安定性を高めるためにさらに改変することもできる。考えられる改変には、5'末端および/もしくは3'末端への隣接配列の付加;骨格にホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエートまたは2' O-メチルを用いること;ならびに/または、イノシン、キューオシンおよびウィブトシンといった通常のものとは異なる塩基、さらにはアデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジンのアセチル化形態、メチル化形態、チオ化形態および類似の修飾形態を含めること、が非制限的に含まれる。
【0038】
確立された組換えDNA法を用いて、ヌクレオチド配列をさまざまな他のヌクレオチド配列と連結することができる。例えば、ポリヌクレオチドを、プラスミド、ファージミド、λファージ派生物およびコスミドを含む、さまざまなクローニングベクターのうち任意のものの中にクローニングすることもできる。特に関心が持たれるベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシークエンシングベクターが含まれる。ベクターは一般に、少なくとも1つの生物において機能する複製起点、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択マーカーを含むと考えられる。その他の因子は所望の用途に依存すると考えられ、これは当業者には明らかであると考えられる。
【0039】
ある種の態様においては、ポリヌクレオチドを、哺乳動物細胞への進入を可能にするため、およびその中での発現を可能にするために製剤化することもできる。このような製剤は、以下に述べるように、治療の目的に特に有用である。当業者は、標的細胞におけるポリヌクレオチドの発現を実現するには多くのやり方があること、および任意の適した方法を用いうることを認識していると考えられる。例えば、ポリヌクレオチドを、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、またはワクシニアウイルスもしくは他のポックスウイルス(例えば、鶏痘ウイルス)などの(ただし、これらには限定されない)、ウイルスベクターに組み入れることもできる。DNAをこの種のベクターに組み入れるための技術は当業者に周知である。レトロウイルスベクターにはさらに、ベクターに標的特異性を付与するために、選択マーカー(形質導入を受けた細胞の同定または選択を補助するため)および/またはターゲティング部分(moiety)の遺伝子、例えば、特定の標的細胞上にある受容体に対するリガンドをコードする遺伝子を導入すること、または組み入れることができる。ターゲティングを、当業者に知られた方法により、抗体を用いて実現することもできる。
【0040】
治療目的のその他の製剤には、コロイド分散系が含まれる。高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに、水中油型乳濁液、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。インビトロおよびインビボでの送達媒体として用いるのに好ましいコロイド系には、リポソーム(すなわち、人工的な膜小胞)がある。この種の系の調製および用法は当技術分野で周知である。
【0041】
アンチセンス分子
本発明のアンチセンス分子は、GDOX遺伝子の全体または断片に対して、実質的に相補的な、または好ましくは完全に相補的な配列が含まれる。GDOX遺伝子のコード配列内のオリゴヌクレオチドの断片もこれに含まれる。特定の遺伝子の新たに生成された核RNA転写物が転写用のmRNAへと成熟するのを防止するために、イントロンとエクソンとの境界にある配列に対して相補的なDNAまたはRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることができる。特定の遺伝子に対して相補的なアンチセンスRNAは、その遺伝子のmRNAとハイブリダイズしてその翻訳を阻止することができる。アンチセンス分子は、DNA、RNA、またはそれらの誘導体もしくはハイブリッド体でありうる。このような誘導体分子の例には、ペプチド核酸(PNA)およびホスホロチオエートを基盤とする分子(デオキシリボ核酸性グアニジン(DNG)またはリボ核酸性グアニジン(RNG)など)が非制限的に含まれる。
【0042】
アンチセンスRNAは、インビトロで合成された「すぐ使用できる(ready-to-use)」RNAとして、または転写後にアンチセンスRNAが生成される、細胞内に安定的にトランスフェクトされたアンチセンス遺伝子として、細胞に与えることができる。mRNAとのハイブリダイゼーションにより、ハイブリダイズした分子のRNアーゼHによる分解および/または翻訳複合体の形成の阻害が起こる。これはいずれも、元の遺伝子の産物が産生されるのを障害させる。
【0043】
本発明のアンチセンスRNA分子およびアンチセンスDNA分子ならびにリボザイムはいずれも、RNA分子の合成を目的とする当技術分野で知られた任意の方法によって調製しうる。これらには、固相ホスホルアミダイト化学合成といったオリゴヌクレオチドの化学合成のための技術が含まれる。または、RNA分子を、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロまたはインビボでの転写によって生成させることもできる。このようなDNA配列を、T7またはSP6といった適したRNAポリメラーゼプロモーターを有する多岐にわたるベクター中に組み入れてもよい。または、アンチセンスRNAを構成性または誘導性に合成するアンチセンスcDNA構築物を、細胞系、細胞または組織に導入することもできる。
【0044】
細胞内での安定性および半減期を増大させるために、DNA分子を改変することもできる。考えられる改変には、5'末端および/もしくは3'末端への隣接配列の付加、または、分子の骨格内にホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエートまたは2' O-メチルを用いることが含まれる。その他の改変には、キメラ性アンチセンス化合物を用いることが含まれる。本発明のキメラ性アンチセンス化合物は、2つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/またはオリゴヌクレオチド模倣物による複合構造物として形成されうる。このような化合物は当技術分野でハイブリッド体またはギャップマー(gapmer)としても言及されている。この種のハイブリッド構造の調製について教示している代表的な米国特許には、米国特許第5,700,922号および同第6,277,603号が非制限的に含まれる。
【0045】
本発明に従って用いられるアンチセンス化合物は、固相合成のよく知られた技術により、首尾良くかつルーチン的に作製しうる。このような合成のための装置は、例えばApplied Biosystems(Foster City、Calif.)を含む、いくつかの製造元から販売されている。当技術分野で知られたこのような合成のための任意の他の手段を追加的または代替的に用いてもよい。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体といったオリゴヌクレオチドを調製するための同様の技術も周知である。
【0046】
本発明のアンチセンス組成物には、DNA二重らせんにおけるホモプリンの局所的な連鎖を認識し、主溝におけるものと結合して三重らせんを形成することができるホモピリミジンで構成されたオリゴヌクレオチドが含まれる。Helen, CおよびToulme, J J.「Specific regulation of gene expression by antisense, sense, and antigene nucleic acids」、Biochem. Biophys Acta、1049: 99-125、1990を参照のこと。三重らせんの形成は、その特定の遺伝子がRNAポリメラーゼによる転写を受ける能力を妨げると考えられる。myc特異的オリゴヌクレオチドを用いた三重らせん形成が観察されている。Cooney, Mら、Science 241: 456-459を参照のこと。
【0047】
DNAまたはRNAのアンチセンス配列を細胞に送達することができる。これらの分子が特異的配列を認識する能力を損なわずに、その安定性を長期にわたらせ、機能を向上させるための化学的修飾がいくつか開発されている。これらには、DNアーゼによる分解に対する抵抗性を高めること(ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、α-アノマーを含む)、ソラレンなどの種々のインターカレート剤との共有結合によって結合パートナーに対する親和性を高めること、および、ポリリシンを含む種々の基との結合によって細胞による取り込みを増加させることが含まれる。これらの分子はmRNA中にコードされている特定の配列を認識し、それらのハイブリダイゼーションはこれらのメッセージの翻訳を妨げるとともにその分解を増加させる。
【0048】
転写および翻訳の阻害のための、オリゴヌクレオチド、その誘導体および類似体を含むアンチセンス組成物、結合プロトコール、ならびにアンチセンス戦略の概要は以下に記載されている:「Antisense Research and Applications」、Crooke, S.およびB. Lebleu編、CRC Press, Inc. Boca Raton Fla. 1993;「Nucleic Acids in Chemistry and Biology」、Blackburn, G.およびM. J. Gait編、IRL Press at Oxford University Press, Inc. New York 1990;ならびに「Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach」、Eckstein, F.編、IRL Press at Oxford University Press, Inc. New York 1991;これらはそれぞれ、参照として本明細書に組み入れられる、そこに引用されたすべての参考文献を含め、参照として本明細書に組み入れられる。
【0049】
GDOXポリペプチド
本明細書に記載のGDOXポリペプチドは任意の長さでよく、一般的には少なくとも約6アミノ酸長である。天然タンパク質および/または異種配列に由来する付加的な配列が存在してもよく、このような配列が、必然的にではないものの、さらにリガンド結合性、免疫原性または抗原性を有してもよい。好ましいポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基1〜178、19〜21、53〜58、62〜65、65〜85、68〜83、113〜136、105〜128、118〜123、129〜178、137〜155、139〜141または159〜178を含む。当業者は、それらの他の部分またはバリアントも癌の治療および検出に有用であると考えられることを認識していると考えられる。
【0050】
免疫原性ポリペプチドは一般に、Paul、「Fundamental Immunology」、第4版、663-665(Lippincott-Raven Publishers、1999)およびそこに引用された参考文献にまとめられているような、よく知られた技術を用いて同定しうる。このような技術には、ポリペプチドを、抗原特異的な抗体、抗血清および/またはT細胞の細胞株もしくはクローンと反応する能力に関してスクリーニングすることが含まれる。本明細書で用いる場合、抗血清および抗体は、それらが抗原と特異的に結合するならば(すなわち、それらがELISAまたは他のイムノアッセイ法でそのタンパク質と反応し、関連性のないタンパク質とは反応しないならば)、抗原特異的である。このような抗血清および抗体はよく知られた技術を用いて調製しうる。免疫原性ポリペプチドは、このような抗血清および/またはT細胞と、完全長ポリペプチドの反応性を実質的に下回らないレベルで反応する(例えば、ELISAおよび/またはT細胞反応性アッセイ法において)、天然タンパク質の一部分でありうる。このような免疫原性部分は、このようなアッセイ法において、完全長ポリペプチドの反応性と同程度であるかそれを上回るレベルで反応すると考えられる。このようなスクリーニングは一般に、HarlowおよびLane、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、1988に記載されたもののような、当業者に周知の方法を用いて行われる。例えば、ポリペプチドを固体支持体上に固定化し、患者の血清と接触させて、血清内の抗体を固定化されたポリペプチドと結合させる。続いて、結合しなかった血清を除去し、結合した抗体を、例えば、125I標識したプロテインAを用いて検出する。
【0051】
本発明のGDOXポリペプチドには、天然のGDOXタンパク質のバリアントが含まれうる。ポリペプチドの「バリアント」とは、本明細書で用いる場合、ポリペプチドの免疫原性が実質的に減じないような1つまたは複数の置換、欠失、付加および/または挿入がある点で、天然のGDOXタンパク質と異なるポリペプチドのことである。言い換えれば、バリアントが抗原特異的な抗血清と反応する能力は、天然タンパク質に比して高くても不変でもよく、または天然タンパク質に比して50%未満、好ましくは20%未満の減少があってもよい。このようなバリアントは一般に、以上のポリペプチド配列の1つを改変し、改変されたポリペプチドと抗原特異的な抗体または抗血清との反応性を本明細書に記載した通りに評価することによって同定しうる。好ましいバリアントには、N末端リーダー配列などの1つまたは複数の部分が除去されたものが含まれる。その他の好ましいバリアントには、わずかな部分(例えば、1〜30アミノ酸、好ましくは5〜15アミノ酸)が成熟タンパク質のN末端および/またはC末端から除去されたバリアントが含まれる。ポリペプチドのバリアントは、同定されたポリペプチドに対して好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の同一性(上記ようにして決定される)を示す。
【0052】
好ましくは、バリアントには保存的置換物が含まれる。「保存的置換物」とは、ペプチド化学の当業者であればポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標の性質が実質的に変化しないと考えるような、あるアミノ酸が類似した特性を有する別のアミノ酸に置換されたもののことである。アミノ酸置換物は一般に、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいて作製される。例えば、負に荷電したアミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる;正に荷電したアミノ酸にはリシンおよびアルギニンが含まれる;ならびに、類似した親水性値を有する非荷電極性頭部基を持つアミノ酸には、ロイシン、イソロイシンおよびバリン;グリシンおよびアラニン;アスパラギンおよびグルタミン;ならびにセリン、トレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが含まれる。保存的変化に相当しうるアミノ酸の他の群には以下のものが含まれる:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gIn、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。バリアントが、追加的または代替的に、非保存的な変化を含んでもよい。1つの好ましい態様において、バリアントポリペプチドは、5つまたはそれ未満のアミノ酸の置換、欠失または付加のために、天然のアミノ酸と異なる。バリアントを、追加的(または代替的)に、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造および疎水性親水性指標の性質に対してわずかしか影響を及ぼさない、アミノ酸の欠失または付加によって改変することもできる。
【0053】
ポリペプチドが、翻訳と同時にまたは翻訳後にタンパク質の移動を導くシグナル(またはリーダー)配列を、タンパク質のN末端に含んでもよい。ポリペプチドを、リンカーまたはその他の配列と、ポリペプチドの合成、精製もしくは同定を容易にするため(例えば、ポリ-FE)またはポリペプチドと固体支持体との結合を増強するために結合させてもよい。例えば、ポリペプチドを免疫グロブリンFc領域と結合させることができる。
【0054】
いくつかの態様においては、ポリペプチドを、組成物を投与する予定の同じ対象から精製する。これらの態様においては、腫瘍細胞または感染細胞の数を増やすことが望ましい場合がある。細胞のこのような増加は、インビトロまたはインビボで、例えばSCIDマウス系を用いて行いうると考えられる。SCIDマウス宿主でヒト対象の腫瘍を増殖させることなどにより、細胞を非ヒト細胞の存在下で増加させる場合には、ヒト細胞を、腫瘍内に浸潤している可能性のあるすべての非ヒト(例えば、マウス)細胞から精製するように注意を払う必要がある。精製するポリペプチドを得た同じ対象に対して組成物を投与するこれらの態様においては、限られた量の出発材料の有効性を最適化するために、いくつかのGDOXポリペプチドを精製することが望ましい場合もある。
【0055】
上記のDNA配列によってコードされる組換えポリペプチドは、当業者に知られたさまざまな発現ベクターのうち任意のものを用いて、DNA配列から容易に調製することができる。発現は、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターによる形質転換またはトランスフェクションを受けた任意の適した宿主細胞に行わせることができる。適した宿主細胞には、原核細胞、酵母細胞および高等真核細胞が含まれる。用いる宿主細胞は、大腸菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、またはCOSもしくはCHOなどの哺乳動物細胞の細胞株であることが好ましい。組換えタンパク質またはポリペプチドを培地中に分泌する適した宿主/ベクター系による上清を、市販のフィルターを用いてまず濃縮する。濃縮後に、濃縮物をアフィニティーマトリックス(affinity matrix)またはイオン交換樹脂などの適した精製マトリックスに対して適用する。最後に、組換えポリペプチドをさらに精製するために、1回または複数回の逆相HPLC工程を行うことができる。
【0056】
約100アミノ酸未満のみ、一般には約50アミノ酸未満のみを有する部分およびその他のバリアントを、当業者に周知の技術を用いる合成手段によって作製することもできる。例えば、このようなポリペプチドを、成長過程にあるアミノ酸鎖に対してアミノ酸を逐次的に添加するメリフィールド(Merrifield)固相合成法などの、市販の固相法の任意のものを用いて合成してもよい。Merrifleld, J. Am. Chem. Soc. 85: 2149-2146、1963を参照のこと。ポリペプチドの自動合成のための装置は、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division(Foster City、CA)から市販されており、製造元の指示に従って動作させることができる。
【0057】
ポリペプチドは、Perkin Elmer/Applied Biosystems Division 430Aペプチド合成装置により、FMOC化学物質をHPTU(O-ベンゾトリアゾールN,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)による活性化とともに用いて合成することができる。結合、固定化された表面との結合、またはペプチドの標識の方法を得るために、Gly-Cys-Gly配列をペプチドのアミノ末端に結合させることもできる。固体支持体からのペプチドの切断は以下の切断用混合物を用いて行いうる:トリフルオロ酢酸:エタンジチオール:チオアニソール:水:フェノール(40:1:2:2:3)。切断から2時間後に、ペプチドを冷メチル-t-ブチル-エーテル中で沈殿させる。続いて、ペプチドのペレットを0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む水中に溶解させ、C18逆相HPLCによる精製の前に凍結乾燥を行う。ペプチドを溶出させるには、水との0%〜60%アセトニトリル勾配(0.1%TFAを含む)を用いるとよい。純粋な画分の凍結乾燥の後に、エレクトロスプレー法またはその他の種類の質量分析法およびアミノ酸分析により、ペプチドの特徴を調べることができる。
【0058】
融合タンパク質
いくつかの態様において、本ポリペプチドは、本明細書に記載の複数のポリペプチドを含む、または本明細書に記載の少なくとも1つのポリペプチドおよび関連性のない配列を含む、融合タンパク質である。いくつかの態様において、融合タンパク質は、GDOXポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチドを含む。免疫原性ポリペプチドには、例えば、別の腫瘍タンパク質の全体または一部分が含まれうる。
【0059】
そのほかの融合パートナーを加えることもできる。融合パートナーは例えば、Tヘルパーエピトープ、好ましくはヒトによって認識されるTヘルパーエピトープの提供を補助することにより、免疫学的融合パートナーとしての役割を果たす。もう1つの例として、融合パートナーは、そのままの組換えタンパク質よりも高率にタンパク質を発現させることにより、発現増強因子としての役割を果たす。ある種の好ましい融合パートナーは、免疫学的でしかも発現を増強する融合パートナーである。タンパク質の溶解性を高めるため、またはタンパク質を所望の細胞内区画に向かわせるために、他の融合パートナーを選択することもできる。さらに別の融合パートナーには、タンパク質の精製を容易にするアフィニティータグが含まれる。
【0060】
融合タンパク質は一般に、化学的結合を含む、標準的な技術を用いて調製しうる。融合タンパク質は、発現系において非融合タンパク質よりも高いレベルでの産生が可能となるように、組換えタンパク質として発現させることが好ましい。簡潔に述べると、ポリペプチド構成要素をコードするDNA配列を別個に構成した上で、適切な1つの発現ベクター中に連結する。1つのポリペプチド構成要素をコードするDNA配列の3'末端を、ペプチドリンカーの存在下または非存在下で、第2のポリペプチド構成要素をコードするDNA配列の5'末端と連結させ、配列のリーディングフレームが同相となるようにする。これにより、両方の構成要素ポリペプチドの生物活性を保っている単一の融合タンパク質としての翻訳が可能になる。
【0061】
ペプチドリンカー配列は、第1および第2のポリペプチド構成要素を、各ポリペプチドがフォールディングによってその二次構造および三次構造を確実に形成するために十分な距離にわたって隔てるために用いうる。このようなペプチドリンカー配列は、当技術分野で周知の標準的な技術を用いて融合タンパク質に組み入れられる。適したペプチドリンカー配列は以下の要因に基づいて選択しうる:(1)柔軟な伸長性コンフォメーションをとる能力があること;(2)第1および第2のポリペプチド上の機能性エピトープと相互作用しうる二次構造をとらないこと;ならびに(3)ポリペプチドの機能性エピトープと反応する可能性のある疎水性残基および荷電残基を有していないこと。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、AsnおよびSer残基を含む。ThrおよびAlaといったその他のほぼ中性のアミノ酸をリンカー配列中に用いてもよい。リンカーとして有用に用いうるアミノ酸配列には、Marateaら、Gene 40: 39-46、1985;Murphyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 8258-8262、1986;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に記載されたものが含まれる。リンカー配列は一般に1〜約50アミノ酸長である。リンカー配列は、第1および第2のポリペプチドが、機能性ドメインの分離および立体的干渉の防止のために用いうる非必須アミノ酸領域をN末端に有している場合には必要でない。
【0062】
連結されたDNA配列は、適した転写調節因子または翻訳調節因子と機能的に結合されている。DNAの発現の原因となる調節因子は、第1のポリペプチドをコードするDNA配列の5'側に位置する。同様に、翻訳および転写の終結シグナルを終了させるために必要な終止コドンは第2のポリペプチドをコードするDNA配列の3'側に位置する。
【0063】
本発明のポリペプチドを関連性のない免疫原性タンパク質とともに含む融合タンパク質も提供される。この免疫原性タンパク質は記憶応答を誘発しうることが好ましい。このようなタンパク質の例には、破傷風菌、結核菌および肝炎関連のタンパク質が含まれる(例えば、Stouteら、New Engl. J. Med. 336: 86-91、1997を参照)。
【0064】
好ましい態様において、免疫学的融合パートナーは、グラム陰性菌B型インフルエンザ菌の表面タンパク質であるプロテインDである(国際公開公報第91/18926号)。プロテインD誘導体はこのタンパク質のほぼ3分の1(例えば、N末端の最初の100〜110アミノ酸)を含むことが好ましく、プロテインD誘導体を脂質化してもよい。ある種の好ましい態様においては、補足的な外因性T細胞エピトープを有するポリペプチドを得るため、および大腸菌における発現レベルを高める(すなわち発現増強因子として機能させる)ために、リポプロテインD融合パートナーの最初の109残基をN末端に含める。この脂質尾部により、抗原が抗原提示細胞に対して確実に最適に提示されることになる。他の融合パートナーには、インフルエンザウイルスの非構造性タンパク質であるNS I(ヘマグルチニン)が含まれる。N末端の81アミノ酸が用いられることが代表的であるが、Tヘルパーエピトープを含む異なる断片を用いることもできる。
【0065】
もう1つの態様において、免疫学的融合パートナーは、LYTAとして知られるタンパク質またはその一部分(好ましくはC末端部分)である。LYTAは、アミダーゼLYTAとして知られるN-アセチル-L-アラニンアミダーゼを合成する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)に由来する(これはLytA遺伝子によってコードされる;Gene 43: 265-292、1986)。LYTAは、ペプチドグリカン骨格内のいくつかの特定の結合を特異的に分解する自己溶菌酵素である。LYTAタンパク質のC末端ドメインは、コリンまたはDEARなどのいくつかのコリン誘導体に対する親和性の原因となっている。この性質は、融合タンパク質の発現のために有用な大腸菌C-LYTA発現プラスミドの開発に利用されている。C-LYTA断片をアミノ末端に含むハイブリッドタンパク質の精製が記載されている(Biotechnology 10: 795-798、1992を参照)。好ましい態様においては、LYTAの反復部分を融合タンパク質に組み入れる。反復部分は残基178から始まるC末端領域に認められる。特に好ましい反復部分は残基188〜305を含むものである。
【0066】
一般に、本明細書に記載のポリペプチド(融合タンパク質を含む)およびポリヌクレオチドは単離された状態にある。「単離された」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとは、その本来の環境から取り出されたもののことである。例えば、天然のタンパク質は、それが天然の系において共存する材料の一部またはすべてから分離されていれば、単離されている。好ましくは、このようなポリペプチドの純度は少なくとも約90%であり、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約99%である。ポリヌクレオチドは、例えば、それが天然の環境の一部ではないベクター中にクローニングされていれば、単離されているとみなされる。
【0067】
抗体
「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、特に、単独の抗GDOXモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニストおよび中和抗体を含む)および多エピトープ特異性を有する抗GDOX抗体組成物を対象として含む。本明細書で用いる「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体のことを指し、すなわち、個々の集団を構成する抗体は、微量に存在する可能性のある天然の変異を例外として同一である。
【0068】
本発明は、GDOXタンパク質およびGDOXポリペプチドと結合する抗体を提供する。最も好ましい抗体は、GDOXタンパク質とは特異的に結合するが、GDOXでないタンパク質およびポリペプチドとは結合しない(または弱くしか結合しない)と考えられる。特に想定している抗GDOX抗体には、モノクローナルおよびポリクローナル抗体のほか、これらの抗体の抗原結合ドメインおよび/または1つもしくは複数の相補性決定領域を含む断片が含まれる。本明細書で用いる場合、抗体断片は、標的と結合する免疫グロブリン分子の可変領域、すなわち抗原結合領域の少なくとも一部分と定義される。本発明の好ましい抗体および抗体断片は、GDOXタンパク質の以下の部分のうち一方または両方と特異的に結合する:
。
【0069】
本発明のGDOX抗体は、癌の診断アッセイ法および予後判定アッセイ法、ならびに画像化法において特に有用と思われる。細胞内で発現される抗体(例えば、一本鎖抗体)は、GDOXの発現が関係している癌、例えば進行性および転移性の脳悪性腫瘍、さらには肺、乳房、結腸または前立腺の癌などの治療において治療的に有用と思われる。同じく癌の治療のための治療方法として有用なものには、GDOXの機能を妨げる、または毒素もしくは治療分子の送達のためにGDOXを発現する細胞を標的とする、全身投与性のGDOX抗体がある。毒素または治療分子のこのような送達は、第2の分子をGDOX抗体またはその断片と結合させる既知の方法を用いて行いうる。同様に、このような抗体は、他の種類の癌において同じくGDOXが発現または過剰発現される範囲で、他の癌の治療、診断および/または予後判定にも有用と思われる。
【0070】
本発明はまた、GDOXポリペプチドの検出および定量のために有用なさまざまな免疫学的アッセイ法も提供する。このようなアッセイ系は一般に、GDOXを認識して結合することが可能な1つまたは複数のGDOX抗体を含み、さまざまな種類のラジオイムノアッセイ法、固相酵素免疫アッセイ法(ELISA)、酵素結合免疫蛍光アッセイ法(ELIFA)などを非制限的に含む、当技術分野で周知のさまざまな免疫学的アッセイ形式で行える。さらに、標識したGDOX抗体を用いる放射性シンチグラフィー画像化法を非制限的に含む、GDOXを発現している癌を検出しうる免疫学的画像化法も本発明によって提供される。このようなアッセイ法は、GDOXを発現している癌の検出、モニタリングおよび予後判定において臨床的に有用であると思われる。
【0071】
抗体の調製のための方法はさまざまなものが当技術分野で周知である。例えば、単離された形態または免疫複合体の形態にあるGDOXタンパク質、ペプチドまたは断片を用いて適した哺乳動物宿主の免疫処置を行うことにより、抗体を調製することができる(「Antibodies: A Laboratory Manual」、CSH Press、HarlowおよびLane編(1988);Harlow、「Antibodies」、Cold Spring Harbor Press、NY (1989))。さらに、GDOX GST-融合タンパク質といったGDOXの融合タンパク質を用いることもできる。もう1つの態様において、GDOXペプチドを合成して免疫原として用いてもよい。
【0072】
抗体または断片を、組換え手段による現行の技術を用いて作製することもできる。GDOXタンパク質の所望の領域と特異的に結合する領域を、複数の種に由来するキメラ抗体またはCDRグラフト化抗体に関連して作製することもできる。ヒト化抗体またはヒトGDOX抗体を作製することもでき、これらは治療的状況で用いるのに好ましい。非ヒト抗体CDRの1つまたは複数を対応するヒト抗体配列によって置き換えることによってマウス抗体およびその他の非ヒト抗体をヒト化するための方法は周知である(例えば、Jonesら、1986、Nature 321: 522-525;Riechmannら、1988、Nature 332: 323-327;Verhoeyenら、1988、Science 239: 1534-1536を参照)。同じく、Carterら、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 4285およびSimsら、1993、J. Immunol. 151: 2296も参照されたい。完全ヒトモノクローナル抗体の作製のための方法には、ファージディスプレイ法およびトランスジェニック法が含まれる(総説については、Vaughanら、1998、Nature Biotechnology 16: 535-539を参照されたい)。
【0073】
完全ヒトGDOXモノクローナル抗体を、大規模なヒトIg遺伝子コンビナトリアルライブラリーを用いるクローニング技術(すなわち、ファージディスプレイ)を用いて作製することもできる(GriffithsおよびHoogenboom、「Building an in vitro immune system: human antibodies from phage display libraries」、「Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications in Man」中、Clark, M.(編)、Nottingham Academic、pp 45-64 (1993);BurtonおよびBarbas、「Human Antibodies from combinatorial libraries」、同上、pp 65-82)。また、1997年12月3日に公開されたKucherlapatiおよびJakobovitsらの国際公開公報第98/24893号に記載されたように、完全ヒトGDOXモノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたトランスジェニックマウスを用いて産生させることもできる(同じくJakobovits、1998、Exp. Opin. Invest. Drugs 7(4):607-614も参照されたい)。この方法では、ファージディスプレイ技術では必要なインビトロ操作が必要なく、信頼性のある高親和性ヒト抗体を効率的に産生させることができる。
【0074】
GDOX抗体のGDOXタンパク質との反応性は、GDOXタンパク質、ペプチド、GDOX発現細胞またはその抽出物を適宜用いる、ウエスタンブロット法、免疫沈降、ELISAおよびFACS解析を含む、よく知られた数多くの手段によって確認しうる。
【0075】
本発明のGDOX抗体またはその断片を、検出可能なマーカーによって標識すること、または第2の分子と結合させることもできる。適した検出可能なマーカーには、放射性同位体、蛍光性化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が非制限的に含まれる。GDOX抗体と結合させるための第2の分子は、意図する用途に応じて選択することができる。例えば、治療用途の場合、第2の分子は毒素または治療薬でありうる。さらに、2つまたはそれ以上のGDOXエピトープに対して特異的な二重特異性抗体を、当技術分野で一般的に知られた方法を用いて作製することもできる。ホモ二量体性抗体を当技術分野で知られた架橋法によって作製することもできる(例えば、Wolffら、Cancer Res. 53: 2560-2565)。
【0076】
T細胞
免疫治療的組成物は、追加的または代替的に、GDOXポリペプチドに対して特異的なT細胞を含みうる。このような細胞は一般に、標準的な手順を用いてインビトロまたはエクスビボで調製することができる。例えば、T細胞を、患者の骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分から、Nexell Therapeutics、Irvine、CA(米国特許第5,536,475号も参照のこと)から販売されているISOLEX(商標)磁気的細胞選別システム;またはPan T Cell Isolation Kit、CD4+ T Cell Isolation KitおよびCD8+ T Cell Isolation Kitを含む、Miltenyi Biotec社のMACS細胞分離技術などの、市販の細胞分離システムを用いて単離することもできる(米国特許第5,240,856号;米国特許第5,215,926号;国際公開公報第89/06280号;国際公開公報第91/16116号および国際公開公報第92/07243号も参照のこと)。または、T細胞を、関係があるかまたは関係のないヒト、非ヒト哺乳動物、細胞系または培養物から得ることもできる。
【0077】
T細胞を、GDOXポリペプチド、GDOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはこのようなGDOXポリペプチドを発現する抗原提示細胞(APC)によって刺激してもよい。刺激は、ポリペプチドに対して特異的なT細胞の生成が可能となるのに十分な条件下および時間にわたって行われる。GDOXポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、特異的T細胞の生成を容易にするためのミクロスフェアなどの送達媒体内に存在することが好ましい。
【0078】
T細胞は、GDOXポリペプチドでコートされた標的細胞、またはGDOXポリペプチドをコードする遺伝子を発現している標的細胞をT細胞が死滅させるならば、そのポリペプチドに対して特異的であるとみなされる。T細胞の特異性は、さまざまな標準的な技術の任意のものを用いて高めることができる。例えば、クロム遊離アッセイ法または増殖アッセイ法では、溶解および/または増殖に関する刺激指数が陰性対照との比較で2倍を上回ることにより、T細胞の特異性が示される。このようなアッセイ法は、例えば、Chenら、Cancer Res. 54: 1065-1070、1994に記載された通りに行うことができる。
【0079】
T細胞の増殖の検出はさまざまな既知の技術によって行える。例えば、DNA合成速度の上昇を測定することにより(例えば、T細胞の培養物をトリチウム標識チミジンでパルス的に標識し、DNAに取り込まれたトリチウム標識チミジンの量を測定することにより)、T細胞の増殖を検出することができる。GDOXタンパク質(100ng/ml〜100μg/ml、好ましくは200ng/ml〜25μg/ml)と3〜7日間接触させると、T細胞の増殖は少なくとも2倍に増大するはずである。上記のように2〜3時間の接触させると、サイトカイン(例えば、TNFまたはIFN-γ)遊離レベルが2倍に上昇することによってT細胞の活性化が示されるような標準的なサイトカインアッセイ法を用いた測定により、T細胞の活性化が引き起こされるはずである(Coliganら、「Current Protocols in Immunology」、vol. 1、Wiley Interscience(Greene 1998)を参照のこと)。GDOXポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはポリペプチド発現性APCに応じて活性化されるT細胞は、CD4陽性(CD4+)および/またはCD8陽性(CD8+)であってよい。T細胞は標準的な技術を用いて増殖させることができる。
【0080】
好ましい態様において、T細胞は、患者、または関係があるかもしくは無関係のないドナーから得られ、刺激および増殖の後に患者に対して投与される。治療目的の場合、GDOXポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはAPCに反応して増殖するCD4+またはCD8+ T細胞の数をインビトロまたはインビボで増やすことができる。このようなT細胞のインビトロでの増殖はさまざまな方式で行える。例えば、T細胞を、添加したT細胞増殖因子(インターロイキン-2など)および/または刺激細胞の存在下または非存在下で、GDOXポリペプチドに対して再び曝露させることができる。または、GDOXポリペプチドの存在下で増殖する1つまたは複数のT細胞の数をクローニングによって増やすこともできる。細胞のクローニングのための方法は当技術分野で周知であり、これには限界希釈法が含まれる。
【0081】
薬学的組成物およびワクチン
本発明は、免疫原性組成物(すなわち、ワクチン)を含む、薬学的組成物中に組み入れられた、GDOXポリペプチド、ポリヌクレオチド、T細胞および/または抗原提示細胞を提供する。薬学的組成物は1つまたは複数のこのような化合物を含み、選択的には、生理的に許容される担体も含む。ワクチンは、1つまたは複数のこのような化合物、および、非特異的な免疫応答増強物質としての役割を果たすアジュバントを含む。アジュバントは外因性抗原に対する免疫応答を増強する任意の物質であってよい。アジュバントの例には、従来のアジュバント、生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクトチド(polylactic galactide))、免疫賦活性オリゴヌクレオチドおよびリポソーム(内部に化合物が組み入れられる;例えば、Fullerton、米国特許第4,235,877号を参照)が含まれる。ワクチンの調製に関しては、例えば、M. F. PowellおよびM.J. Newman編、「(Vaccine Design (the subunit and adjuvant approach)」、Plenum Press(NY、1995)を参照されたい。本発明の範囲に含まれる薬学的組成物およびワクチンは他の化合物を含んでもよく、それは生物活性があってもなくてもよい。例えば、他の腫瘍抗原の1つまたは複数の免疫原性部分が、融合ポリペプチドに組み入れられた状態または単独の化合物として、組成物またはワクチンの内部に存在してもよい。
【0082】
薬学的組成物またはワクチンは、ポリペプチドがインサイチューで生成されるように、本明細書に記載のポリペプチドの1つまたは複数をコードするDNAを含みうる。上記の通り、DNAは、核酸発現系、細菌性およびウイルス性発現系を含む、当業者に知られたさまざまな発現系のうち任意のものの内部に存在しうる。Rolland、Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15: 143-198、1998およびそこに引用された参考文献に記載されたものなどの、数多くの遺伝子送達法が当技術分野で周知である。適切な核酸発現系は、患者における発現のために必要なDNA配列(適したプロモーターシグナルおよび終結シグナル)を含む。細菌送達系は、ポリペプチドの免疫原性部分を細胞表面に発現する、またはこのようなエピトープを分泌する細菌(カルメット・ゲラン菌(Bacillus-Calmette-Guerrin)など)の投与を伴う。
【0083】
1つの好ましい態様において、DNAはウイルス発現系(例えば、ワクシニアウイルスまたは他のポックスウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルス)を用いて導入することができ、これには非病原性(欠損性)で複製能のあるウイルスの使用が含まれうる。適した系は例えば以下のものに開示されている:Fisher-Hochら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 317-321、1989;Flexnerら、Ann. N. Y. Acad Sci. 569: 86-103、1989;Flexnerら、Vaccine 8: 17-21、1990;米国特許第4,603,112号、同第4,769,330号および同第5,017,487号;国際公開公報第89/01973号;米国特許第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;欧州特許第0,345,242号;国際公開公報第91/02805号;Berkner-Biotecbniques 6: 616-627、1988;Rosenfeldら、Science 252: 431-434、1991;Kollsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 215-219、1994;Kass-Eislerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 11498-11502、1993;Guzmanら、Circulation 88: 2838-2848、1993;およびGuzmanら、Cir. Res. 73: 1202-1207、1993。このような発現系にDNAを組み入れるための技術は当業者に周知である。DNAは「裸の(naked)」状態であってもよく、これは例えば、Ulmerら、Science 259: 1745-1749、1993に記載され、Cohen、Science 259: 1691-1692、1993に総説がある。裸のDNAの取り込みは、細胞内に効率的に輸送される生分解性ビーズの表面にDNAをコーティングすることによって増加させることができる。
【0084】
当業者に知られた任意の適切な担体を本発明の薬学的組成物に用いうるが、担体の種類は投与の様式に依存すると考えられる。本発明の組成物は、任意の適した投与様式のために製剤化しうると考えられ、これには例えば、局所外用、経口、経鼻、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下、皮内または筋肉内投与が含まれる。皮下注射などの非経口的投与のための担体には好ましくは水、食塩水、アルコール、脂肪、蝋状物質または緩衝液が含まれる。経口投与のためには、以上の担体または固体担体の任意のもの、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムを用いうる。生分解性ミクロスフェア(例えば、乳酸グリコール酸重合体)を、本発明の薬学的組成物のための担体として用いることもできる。適した生分解性ミクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号および同第5,075,109号に開示されている。
【0085】
さらに、担体は、製剤のpH、容量オスモル濃度、粘度、透明性、色調、無菌性、安定性、溶解速度または匂いを改変または維持するための他の薬学的に許容される添加剤を含みうる。同様に、担体は、GDOX関連分子の安定性、溶解速度、放出、または脳血液関門を介した吸収もしくは浸透を改変または維持するためのさらに別の薬学的に許容される添加剤も含みうる。このような添加剤は、単回投与もしくは多回投与の形態での非経口的投与のため、または植え込んだポンプからの連続的もしくは定期的な注入によるCSF中への直接注入のために通常および慣例的に用いられている物質である。
【0086】
このような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝食塩水またはリン酸緩衝食塩液)、糖質(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸(グリシンなど)、抗酸化物質、キレート剤(EDTAまたはグルタチオンなど)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)および/または保存料も含みうる。
【0087】
または、本発明の組成物を凍結乾燥物として製剤化することもできる。よく知られた技術を用いて化合物をリポソーム中に封入することもできる。
【0088】
さまざまなアジュバントのうち任意のものを本発明のワクチンに用いることができる。ほとんどのアジュバントは、抗原を急速な異化作用から防御するように意図した物質(水酸化アルミニウムまたは鉱油など)、および免疫応答の賦活物質(リピドA、百日咳菌(Bortadella pertussis)または結核菌由来(Mycobacterium tuberculosis)のタンパク質など)を含む。適したアジュバントは、例えば、フロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);Merckアジュバント65(MerckおよびCompany, Inc.、Rahway、NJ);水酸化アルミニウムゲル(alum)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄または亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオン性または陰イオン性に誘導体化された多糖類;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびクワイルA(quil A)として販売されている。GM-CSFまたはインターロイキン-2、インターロイキン-7もしくはインターロイキン-12などのサイトカインもアジュバントとして用いうる。
【0089】
本明細書に提供するワクチンにおいて、アジュバント組成物は、主としてTh1型の免疫応答を誘導するように設計されることが好ましい。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN-α、IL-2およびIL-12)は、投与された抗原に対する細胞性免疫応答の誘導を促す傾向がある。対照的に、高レベルのTh2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10およびTNF-β)は体液性免疫応答の誘導を促す傾向がある。本明細書中に提供するワクチンの適用後に、患者はTh1型応答およびTh2型応答を含む免疫応答を維持すると考えられる。応答が主としてTh1型である1つの好ましい態様において、Th1型サイトカインのレベルはTh2型サイトカインのレベルを上回る程度に上昇すると考えられる。これらのサイトカインのレベルは標準的なアッセイ法を用いて容易に評価しうる。サイトカインファミリーに関する総説については、MosmannおよびCoffman、1989、Ann. Rev. Immunol. 7: 145-173を参照されたい。
【0090】
本明細書に記載の組成物を、持続放出製剤(すなわち、投与後に化合物の緩徐な放出を生じるカプセルまたはスポンジなどの製剤)の一部として投与することもできる。このような製剤は公知の技術を用いて一般に調製され、例えば、経口的、直腸内もしくは皮下移植により、または所望の標的部位(腫瘍の外科的切除部位など)への移植により、投与される。持続放出製剤は、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体を、担体マトリックス中に分散された、および/または律速性の膜に囲まれた貯蔵部内に包含された状態で含みうる。このような製剤の内部に用いるための担体は生体適合性があり、さらに生分解性であってもよい;製剤により、有効成分の比較的一定したレベルの放出が得られることが好ましい。持続放出製剤内に含まれる活性化合物の量は、移植の部位、放出の速度および予想期間ならびに治療または予防しようとする状態の性質に依存する。
【0091】
抗原提示細胞
腫瘍細胞を標的とする抗原特異的な免疫応答の生成を促進するために、さまざまな送達媒体のうち任意のものを薬学的組成物およびワクチンに用いることができる。送達媒体には、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球などの抗原提示細胞(APC)、および効率的なAPCとなるように遺伝的に改変しうるその他の細胞が含まれる。このような細胞は、必然的にではないが、抗原の提示能力を高めるため、T細胞応答の活性化および/もしくは維持のため、それ自体に抗腫瘍作用もしくは抗感染症作用を持たせるため、ならびに/またはレシピエントと免疫学的に適合させるため(すなわち、BLAハプロタイプの一致)に、遺伝的に改変することができる。APCは一般に、腫瘍および腫瘍周囲組織を含む、さまざまな生物性液体および臓器のうち任意のものから単離することができ、これは自己細胞、同種細胞、同系細胞または異種細胞のいずれでもよい。
【0092】
本発明のある種の好ましい態様では、樹状細胞またはその前駆細胞を抗原提示細胞として用いる。樹状細胞は非常に作用の強いAPCであり(BanchereauおよびSteinman、Nature 392: 245-251、1998)、予防的または治療的な免疫を誘発させるための生理的アジュバントとして有効なことが示されている(TimmermanおよびLevy、Ann. Rev. Med. 50: 507-529、1999を参照のこと)。一般に、樹状細胞はその典型的な形態(インサイチューで星状であり、インビトロで顕著な細胞質突起(樹状突起)が認められる)、ならびに、標準的なアッセイ法を用いた評価でB細胞(CD19およびCD20)、T細胞(CD3)、単球(CD14)およびナチュラルキラー細胞(CD56)の分子マーカーが存在しないことに基づいて同定しうる。当然ながら、樹状細胞を、インビボまたはエクスビボの樹状細胞には一般に認められない特定の細胞表面受容体またはリガンドを発現するように操作することもでき、このような改変樹状細胞を本発明では考慮している。樹状細胞に代わるものとして、分泌小胞を含む樹状細胞(エキソソームと呼ばれる)をワクチンに用いることもできる(Zitvogelら、1998、Nature Med. 4: 594-600)。
【0093】
樹状細胞および前駆細胞は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周囲組織浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血または任意の他の適した組織または液体から入手しうる。例えば、末梢血から収集した単球の培養物にGM-CSF、IL4、IL-13および/またはTNFαなどのサイトカインの配合物を添加することにより、樹状細胞をエクスビボで分化させることもできる。または、GM-CSF、IL-3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンドならびに/または樹状細胞の成熟および増殖を誘導する他の化合物の配合物を培地に添加することにより、末梢血、臍帯血または骨髄から収集したCD34陽性細胞を樹状細胞に分化させることもできる。
【0094】
樹状細胞は「未熟」および「成熟」細胞として分類することが好都合であり、これは詳細に特徴が判明している2つの表現型を区別する簡単なやり方である。しかし、この命名法は、可能性のあるすべての中間的な分化段階を除外するものとみなされるべきではない。未熟樹状細胞は抗原の取り込みおよびプロセシングを行う能力が高いAPCとして特徴づけられ、この能力はFcγ受容体、マンノース受容体およびDEC-205マーカーの高発現と相関している。成熟表現型は一般にこれらのマーカーの低発現を特徴とするが、クラスIおよびクラスII MHC分子、接着分子(例えば、CD54およびCD11)および補助刺激分子(例えば、CD40、CD80およびCD86)などのT細胞活性化の原因となる細胞表面分子は高発現される。
【0095】
APCに対しては一般に、GDOXポリペプチドまたはその免疫原性部分が細胞表面に発現されるように、GDOXポリペプチド(またはその一部分もしくは他のバリアント)をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトすることができる。本明細書に記載したように、このようなトランスフェクションをエクスビボで行い、続いてこのようなトランスフェクト細胞を含む組成物またはワクチンを治療目的に用いることができる。または、樹状細胞またはその他の抗原提示細胞を標的とする遺伝子送達媒体を患者に投与して、インビボでトランスフェクションを生じさせてもよい。インビボおよびエクスビボでの樹状細胞のトランスフェクションは、例えば、国際公開公報第97/24447号に記載されたもの、またはMahviら、ImmunologyおよびCell Biology 75: 456-460、1997に記載された遺伝子銃アプローチなどの、当技術分野で知られた任意の方法を用いて一般に行われる。樹状細胞に対する抗原の投入は、樹状細胞または前駆細胞を、GDOXポリペプチド、DNA(裸状またはプラスミドベクター内にあるもの)もしくはRNA;または抗原を発現する組換え細菌もしくはウイルス(例えば、ワクシニアウイルス性、鶏痘ウイルス性、アデノウイルス性またはレンチウイルス性のベクター)とともにインキュベートすることによって行いうる。投入の前に、ポリペプチドをT細胞を補助する免疫学的パートナー(例えば、担体分子)と共有結合させることもできる。または、樹状細胞に対して、非結合状態の免疫学的パートナーによるパルス刺激を単独でまたはポリペプチドの存在下で行ってもよい。
【0096】
治療法および予防法
処置には予防法および治療法が含まれる。予防法または治療法は、単一時点の単回の直接注射により、または単一もしくは複数の部位へ複数回の時点に行うことができる。投与を複数の部位にほぼ同時に行ってもよい。患者または対象には、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタおよびヒツジなどの哺乳動物が含まれる。対象は好ましくはヒトである。
【0097】
癌は、悪性腫瘍の存在を含む、当技術分野で一般に認められている基準を用いて診断しうる。薬学的組成物およびワクチンは、原発性腫瘍の外科的切除および/または処置(放射線療法または従来の化学治療薬の投与など)の処置の前または後のいずれに投与することもできる。
【0098】
ある種の態様において、免疫療法は能動的免疫療法であり、この場合の処置は、免疫応答修飾物質(本明細書に開示されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドなど)の投与により、内因性宿主免疫系を腫瘍または感染細胞に対して反応させるためのインビボ刺激に依拠している。
【0099】
また別の態様において、免疫療法は受動的免疫療法であり、この場合の処置は、抗腫瘍効果を直接的または間接的に媒介しうる腫瘍免疫反応性が確立された作用物質(エフェクター細胞または抗体)の送達を伴い、完全な宿主免疫系には必ずしも依存しない。エフェクター細胞の例には、以上に考察したT細胞のほか、Tリンパ球(CD8+細胞傷害性Tリンパ球およびCD4+ Tヘルパー腫瘍浸潤性リンパ球など)、キラー細胞(ナチュラルキラー細胞およびリンホカイン活性化キラー細胞など)、本明細書に提供するポリペプチドを発現するB細胞および抗原提示細胞(樹状細胞およびマクロファージなど)が含まれる。1つの好ましい態様においては、ポリペプチドを提示するように樹状細胞をインビトロで改変し、これらの改変APCを対象に投与する。本明細書に列挙したポリペプチドに対して特異的なT細胞受容体および抗体受容体をクローニングし、発現させ、他のベクターまたは養子免疫療法のためのエフェクター細胞に移入することもできる。本明細書に提供するポリペプチドを、受動的免疫療法のための抗体または抗イディオタイプ抗体の作製のために用いることもできる(上記および米国特許第4,918,164号における記載のように)。
【0100】
投与および投与量
組成物は任意の適した様式で、しばしば、薬学的に許容される担体とともに投与される。本発明の状況における対象への細胞の投与には適した方法があり、特定の細胞組成物の投与には複数の経路を用いうるが、特定の経路によって他の経路よりも迅速かつ有効な反応を得ることができる。
【0101】
患者に対して投与される投与量は、本発明の状況下では、患者にある期間にわたって有益な治療反応を生じさせる、または疾患の進行を抑制するのに十分である必要がある。したがって、組成物は、特異的抗原に対する有効な免疫応答を誘発するのに十分な量、および/または、疾患もしくは感染による症状および/もしくは合併症を緩和、軽減、治癒もしくは少なくとも部分的に停止もしくは予防するのに十分な量として、対象に投与される。これを達成するのに十分な量は「治療的有効量」と定義される。
【0102】
本明細書に開示する治療用組成物の投与の経路および頻度ならびに投与量は個人によって異なると考えられ、これは標準的な技術を用いて容易に確定しうる。一般に、薬学的組成物およびワクチンは、注射により(例えば、皮内、腫瘍内、筋肉内、静脈内または皮下)、鼻腔内(例えば、吸引による)または経口的に投与しうる。1〜10回の投与を52週間にわたって行うことが好ましい。6回の投与を1カ月間隔で行い、その後に追加免疫処置を定期的に行うことが好ましい。個々の患者に対して代替的なプロトコールが適切な場合もある。1つの態様においては、組成物の皮内注射を2回、10日間隔で行う。
【0103】
適した用量とは、上記のように投与した場合に、抗腫瘍免疫応答を促し、基礎(すなわち、非投与)レベルよりも少なくとも10〜50%高くすることができる化合物の量のことである。このような応答は、例えば、患者における抗腫瘍抗体を測定することにより、または患者の腫瘍細胞をインビトロで死滅させうる細胞溶解性エフェクター細胞のワクチン依存的な生成により、モニタリングが可能である。このようなワクチンはまた、ワクチン接種患者におけるワクチン非接種患者に比しての臨床成績の向上(例えば、完全寛解もしくは部分寛解の頻度の上昇、または無病生存期間の延長)をもたらす免疫応答を生じさせることもできる。一般に、1つまたは複数のポリペプチドを含む薬学的組成物およびワクチンに関して、1回分の投与物に存在する各ポリペプチドの量は宿主体重1kg当たり約100μg〜5mgの範囲である。適した容積は患者の大きさによって異なるが、一般的には約0.1mL〜約5mLの範囲と考えられる。
【0104】
一般に、適した投与量および治療レジメンにより、治療的および/または予防的な利益を得るのに十分な量の有効化合物が得られる。このような応答は、投与患者における非投与患者に比しての臨床成績の向上(例えば、完全寛解もしくは部分寛解の頻度の上昇、または無病生存期間の延長)を確かめることにより、モニタリングが可能である。腫瘍タンパク質に対する既存の免疫応答の増大は、臨床成績の向上と一般に相関する。このような免疫応答は一般に、標準的な増殖アッセイ法、細胞傷害性アッセイ法またはサイトカインアッセイ法を用いて評価することができ、これらは投与前後の患者から得た試料を用いて行うことができる。
【0105】
診断方法
本発明は、組織中の癌を検出するための方法であって、組織を、GDOX分子を認識して結合する分子と接触させることを含む方法を提供する。分子は例えば、GDOXペプチドに対する抗体、またはGDOX核酸分子に対するオリゴヌクレオチドプローブもしくはアンチセンス分子でありうる。組織は、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタおよびヒツジ組織などのように哺乳動物に由来するものでよい。組織はヒトのものであることが好ましい。組織には腫瘍標本、脳脊髄液またはその他の適した標本が含まれる。1つの態様において、本方法は、標本中のGDOXの存在を検出するGDOX抗体を用いるELISA型アッセイ法の使用を含む。当業者は、標本中のGDOX分子の検出によって組織中の癌を検出する方法に関して適した変法をさらに認識していると考えられる。この方法を、癌に対する治療を受けている患者の組織中のGDOXレベルのモニタリングに用いることもできる。GDOXを標的とする治療レジメンの初期治療または継続的治療に対しての適切さは、この方法を用いてGDOXレベルをモニタリングすることによって判定しうる。
【0106】
本発明はさらに、癌細胞の増殖を抑制する分子を同定するための方法も提供する。本方法は、候補分子をGDOX分子と接触させること、および候補分子がGDOX分子の生物活性を妨げるか否かを判定することを含む。GDOX分子の生物活性の阻害により、癌細胞の増殖を抑制する分子が示される。代表的なGDOX分子には抗体、タンパク質およびヌクレオチドが含まれる。
【0107】
キット
本明細書に記載の診断的および治療的な用途に用いるためのキットも本発明の範囲に含まれる。このようなキットは、バイアル、チューブなどの1つまたは複数の容器(容器のそれぞれは本方法に用いるための別個の要素の1つを含む)を収容するための運搬容器、パッケージまたは容器を含みうる。例えば、容器は、検出可能な、または検出可能なように標識しうるプローブを含みうる。プローブは、GDOXタンパク質またはGDOX遺伝子もしくはmRNAのそれぞれに対して特異的な抗体またはポリヌクレオチドでありうる。キットはまた、標的核酸配列の増幅用のヌクレオチドを含む容器および/または検出可能な標識、例えば、酵素標識、蛍光標識もしくは放射性同位体標識と結合したビオチン結合タンパク質、例えばアビジンもしくはストレプトアビジンなどのレポーター手段を含む容器も含みうる。キットは図2のアミノ酸配列の全体もしくは一部またはこのようなアミノ酸配列をコードする核酸分子を含みうる。
【0108】
本発明のキットは通常、上記の容器、ならびに緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジおよび使用上の指示が記載された添付文書を含む、商業上および利用者の観点から望ましい材料を含む1つまたは複数の他の容器を含むと考えられる。さらに、本組成物が特定の治療的または非治療的な用途に用いられることを示すための標示を容器の表面に用意することもでき、これは上記のもののような、インビトロまたはインビボでの使用のための指示も示しうる。指示および/またはその他の情報を、キットに同封される挿入物に含めることもできる。
【0109】
実施例
以下の実施例は、本発明を例示するため、ならびに当業者がそれを実行および利用することを補助するために提示される。これらの実施例は決して本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0110】
実施例1:新たな神経膠腫関連cDNAの同定
本実施例では、膠芽腫腫瘍組織と正常脳組織との間で差異を伴って発現される遺伝子産物を同定するためのcDNAサブトラクティブハイブリダイゼーション、レプレゼンテーショナルディファレンス解析法(RDA)およびディファレンシャル免疫吸着法(DIA)の使用に関して述べる。続いて、サブトラクティブアプローチのそれぞれによる候補クローンを、多数の腫瘍組織および非腫瘍ヒト脳組織でcDNAマイクロアレイハイブリダイゼーションを用いてスクリーニングし(Liau, L.およびYang, I.、Current Genomics. 3: 33-41、2002)、正常脳に比して脳腫瘍の方が常に発現レベルが高かった(5倍を上回った)遺伝子を選択した。
【0111】
方法
組織標本
ヒトの腫瘍性および非腫瘍性の脳標本からの組織試料を、カリフォルニア大学ロサンゼルス校医療センター(University of California at Los Angeles Medical Center)にて、施設内審査委員会の承認を得た上で、外科手術を受けた時点または剖検時に患者から入手した。組織はすべて直ちに液体窒素により急速凍結し、使用時まで-80℃で保存した。周辺標本を神経病理学者が検査し、組織学的な確認を行った。
【0112】
レプレゼンテーショナルディファレンス解析
多形性膠芽腫(GBM)腫瘍組織および非腫瘍性脳組織を同じ1例の患者から異なる時点に採取した。腫瘍標本を外科的切除の時点で入手し、同じ患者から、この男性が疾患の進行のために9カ月後に死亡した時点で対側の正常白質を入手した。両方の標本を同じように液体窒素により凍結し、-80℃で保存した。300mgの各組織からトライゾール(Trizol)(Gibco-BRL)を製造元のプロトコールに従って用いて全RNAを抽出した。30μgの全RNAから、Superscript IIを製造元(Gibco-BRL)による推奨の通りに用いるオリゴ(dT)プライミングによってcDNAを合成した。このcDNAのレプレゼンテーショナルディファレンス解析(RDA)を、以前に発表された方法(Hubank, M.およびSchatz, D.、Nucleic Acids Research. 22: 5640-5648、1994;Welford, S.ら、Nucleic Acids Research. 26: 3059-3065、1998)と同様に行った。RDAを3回実施し、連続した各回のテスター(tester):ドライバー(driver)比をそれぞれ1:100、1:500および1:5000とした。サブトラクトされたRDA産物をDpnIIで消化処理し、pZErO(Invitrogen)のBamHI部位へのショットガンクローニングを行った。挿入断片を1.2%アガロースゲル電気泳動によって確認したところ、500〜1500塩基対であることが判明した。
【0113】
ディファレンシャル免疫吸着法
多形性膠芽腫(GBM)腫瘍組織を手術の時点に直ちに液体窒素により急速凍結した。非腫瘍性脳組織を外傷に対する外科的切除例から入手して同じように凍結した。これには別々の患者からの組織標本を用いた。ディファレンシャル免疫吸着法(DIA)を以前に記載された方法を用いて行った(Liau, L.ら、Cancer Res. 60: 1353-1360、2000)。簡潔に述べると、両方の組織標本を食塩水中でホモジネート化し、可溶性材料を除去した。次に不溶性材料を少量の1%SDSで再び抽出した。腫瘍ホモジネートおよび正常脳ホモジネートの一定量をそれぞれCNBr活性化を用いたセファロースに供した。食塩水溶解性GBM腫瘍ホモジネートの残りの部分は完全フロイントアジュバント(CFA)とともに乳化し、ウサギの免疫処置に用いた;さらに界面活性剤による画分を不完全フロイントアジュバント(IFA)とともに抗GBM抗血清を産生させるための追加免疫処置のために用いた。この抗血清をGBM-セファロースカラムに通し、抗GBM抗体を溶出させた。
【0114】
正常脳抗原と結合する抗体および非特異的抗体を除くために、次に溶出液を正常脳アフィニティーカラムおよび正常ヒト血漿に対して繰り返し交差吸着させた。続いて最終的な抗体調製物の中和、濃縮、透析およびビオチン化を行った。これらのビオチン化抗体を、以前の記載の通りに構築したGBM cDNA発現ライブラリーのスクリーニングに用いた(Liau, L.ら、Cancer Res. 60: 1353-1360、2000)。陽性クローンを単離し、インビボ切り出しによりpZL1プラスミドベクター(Gibco-BRL)中にサブクローニングした。挿入断片を1.2%アガロースゲル電気泳動により確認した。
【0115】
配列および構造の解析
RDAによる最終的なディファレンス産物をDpnIIで消化処理し、pZErO-2ベクター(Invitrogen)のBamH1部位にクローニングした。DIA法によるサブトラクティブクローンを、インビボ切り出しによりpZL1プラスミドベクター(Gibco-BRL)中にサブクローニングした。二本鎖プラスミドDNAを両方のセットのベクターからミニプレップカラム(Qiagen)を用いて調製し、M13およびT7汎用プライマー(Promega)とともにdsDNAサイクルシークエンシングキット(Gibco-BRL)を製造元のプロトコールに従って用いてシークエンシングを行った。これらのヌクレオチド配列をBLASTプログラム(Altschul, S.ら、Nucleic Acids Res. 25、3389-3402、1997)を用いてGenBank中の既知の配列と比較し、推定されたアミノ酸配列に対して、PROFILE検索(Fischer, D.およびEisenberg, D.、Protein Science 5、947-955、1996;Gribskov, M.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84、4355-4358、1987)およびPROSITE検索(Bairoch, A.ら、Nucl. Acids Res. 25、217-221、1997)を用いて構造解析を行った。
【0116】
結果
23種のサブトラクティブ産物がcDNAサブトラクティブライブラリーから選択され、21種の遺伝子がRDAを用いて同定され、差異を伴って発現される28種のクローンがDIAによって単離された。これらのクローンの配列解析により、GDOXと命名された、15残基のポリ(A)+尾部を有するある共通の1276bp cDNAが、3種類のサブトラクティブクローニング法のいずれを用いた場合にも独立して同定された。公開データベースの検索では、過去に特徴が決定されているどの遺伝子との核酸相同性も当初検出されなかったが、近位ヒトX染色体のポジショナルクローニングによってXp11.23に最近マッピングされた、公開されていなかったmRNA(別名JM4、GenBankアクセッション番号AJ005896)との配列同一性が明らかになった(Strausberg, R. L.、J Pathol. 195: 31-40,2001;Strom, T. M.ら、Nature Genetics. 19: 260-263、1998)。
【0117】
GDOXと命名されたこの新規クローンの推定されたアミノ酸配列は178アミノ酸残基を含み、分子質量は19kDと予想される。PROFILEおよびPROSITE解析を用いた、該当するデータベース(SwissProt、Brookhaven Protein Data Bank、ProDomおよびGenPept)におけるGDOXの予想されるタンパク質構造のアミノ酸配列解析では、どの既知のタンパク質とも明らかな相同性は見いだされなかった。しかし、予想されるGDOX構造は、ロドプシンの7本のαヘリックス束と24%のアミノ酸同一性(Z-スコアは5.3標準偏差単位)を有する膜貫通ドメイン、およびヒトエストロゲン受容体のものと27%の同一性(Z-スコア=5.1)を有するリガンド結合領域と考えられる領域を有していた。さらに、プロテインキナーゼCリン酸化部位の可能性のある部位が残基19〜21および139〜141に予想され、N-ミリストイル化部位が残基53〜58および118-123にあることが推定された(図1A〜B)。
【0118】
図1Aは、GDOXのヌクレオチド配列(配列番号:1)および推定されるアミノ酸配列(配列番号:2)を示している。下線を施した領域は、GDOXの予想されるオープンリーディングフレーム(ORF)を対応するアミノ酸配列とともに示している。開始コドン(ATG)はヌクレオチド17で始まり、終止コドン(TAG)は553で終了する。プロテインキナーゼC(PKC)リン酸化部位と予想される部位(19〜21および139〜141)は枠で囲まれており、N-ミリストイル化部位と考えられる部位(53〜58および118〜123)は点線の枠で囲まれている。
【0119】
図1Bは、GDOX遺伝子産物の推定される構造を示した概略図である。GDOXは、細胞膜の内部にN末端およびC末端を有するU字状の膜貫通タンパク質であると予想される。この配列には2つの強力な膜貫通性ヘリックスが認められる。顕著な膜貫通セグメントのみを用いて構造モデルを検討した。この構造解析の概要は以下の通りである(合計スコア4184):
【0120】
実施例2:ヒト脳腫瘍組織におけるGDOXの発現
本実施例では、放射標識したGDOX cDNAを用いるノーザンブロット解析およびインサイチューハイブリダイゼーション解析、ならびにGDOX抗体を用いるウエスタンブロット解析による、腫瘍形成性脳組織と正常脳組織との間でのGDOX遺伝子の差異を伴う発現を示す。これらの結果は、GDOXが種々の神経膠腫で過剰発現され、正常精巣での発現および正常腎臓での極めて低レベルの発現を除いて、GDOXが正常脳でも検討した他の正常組織でも発現されないことを示している。さらに、この発現亢進は実際に細胞での過剰発現に起因し、腫瘍細胞の過多によるものではない。過剰発現はタンパク質レベルおよびRNAレベルの両方で認められた。
【0121】
方法
ノーザンブロット解析
トライゾール試薬(Gibco-BRL)を製造元の指示に従って用いて組織の全RNAを抽出し、10μg/レーンを1.2%変性アガロースゲルで分離した上で、10×SSCを用いてハイボンド(Hybond)膜(Amersham)に一晩かけて移行させ、UV架橋により非可逆的に固定した。プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションはExpressHyb溶液(Clontech)中にて65℃で行った。ランダムプライマーを製造元(NEB)のプロトコールに従って用いて、GDOX cDNAを含むプラスミドDNAから32P標識cDNAプローブを作製した。ハイブリダイゼーション後に、膜を洗浄し(2×SSC+0.1%SDS、37℃で20分間、その後に0.2×SSC+0.1%SDS、61℃で20分間)、X線フィルム(Kodak)に80℃で露光させた。続いてブロットのストリッピングを100℃の0.1%SDSで15分間行い、ゲルローディングおよびRNA完全性に関する対照とする目的で32P標識リボソーム18S cDNAによるリプロービングを行った。
【0122】
インサイチューハイブリダイゼーション
インサイチューハイブリダイゼーションは、以前に発表されたプロトコールに従って35S標識リボプローブを用いて行った(Kornblum, H.ら、J Neurosci Res 53: 697-717、1998;Kornblum, H.ら、Mol Brain Res 21: 107-114、1994)。簡潔に述べると、外科的に切除したヒト脳組織(腫瘍および非腫瘍性)を手術室からそのまま入手してイソペンタンで急速凍結した。凍結組織をクリオスタットで20μm厚の切片にし、4%パラホルムアルデヒドで後固定し、洗浄して-75℃で保存した。切片を洗浄し、アセチル化し、脱脂した上で、35S標識したセンスまたはアンチセンスGDOX cRNAプローブ(107cpm/ml)とともに60℃で一晩(18〜24h)インキュベートした。45℃でRNアーゼA(20μg/ml)処理を行った後に、切片をSSCにより濃度を徐々に下げながら洗浄し、風乾させた上でKodak NTB2(1:1希釈)によるエマルションオートグラフィー法のために浸漬処理を行った。エマルションに5週間露光させた後、スライドを現像し、ヘマトキシリンおよびエオシンによる対比染色を行った。
【0123】
ウエスタンブロット解析
2種類の合成ペプチド(GDOX配列137〜155および159〜178;それぞれ配列番号:3および4)をKLH(Research Genetics、Huntsville、AL)と結合させたものに対してポリクローナル抗体を産生させた。抗GDOX IgG画分をセファロース結合ペプチドを用いて単離し、pH 2.7のホウ酸緩衝液を用いて溶出させた。ヒトの神経膠腫脳組織および正常脳組織を1%SDSを含むPBS中にてホモジネート化し、標準的なブラッドフォードアッセイ法を用いてタンパク質濃度を定量した。各レーン当たり30μgの細胞ホモジネートをSDS/PAGE 12%ゲルで分離し、電気泳動によりニトロセルロース膜(Bio-Rad)に移行させた。膜をすすぎ洗いし、5%BSAでブロックした後に、1:500および1:1000の抗体希釈度を用いてポリクローナルウサギ抗GDOX抗体(とともに室温で1時間インキュベートした。続いてブロットを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合させたヤギ抗ウサギ二次抗体(Vector Laboratories)によりプロービングを行った。Vector ABC Elite染色試薬(Vector Laboratories)を製造元のプロトコールに従って用いてタンパク質を可視化した。
【0124】
結果
GDOXの1.3kb転写物は解析した21例のヒト神経膠腫のうち19例で発現されたが、正常脳標本では発現されなかった(図2A)。GDOX発現レベルはグレードに関連するのではなく腫瘍依存的であることが判明した。他の一連のヒト組織をGDOX発現に関して調べたところ、ノーザンブロットの長期露光(2週間)を行った場合に精巣および腎臓で比較的低レベルのmRNAが検出されたが、検討した他の末梢臓器では発現が認められなかった(図2B)。
【0125】
線状化プラスミド-cDNAをテンプレートとして用いて両方のストランドから作製した35S-リボプローブとのインサイチューハイブリダイゼーションを、さまざまな腫瘍性および非腫瘍性の脳標本に対して用いた。GDOXアンチセンスリボプローブは主として腫瘍組織の細胞増多領域とハイブリダイズし、正常脳組織とはハイブリダイズしなかった。GDOXプローブによって染色された細胞が同一であったことは、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いた対比染色によって裏づけられた。高倍率では、個々の細胞で正常グリア細胞に比して腫瘍細胞の内部では著しく高度のGDOXハイブリダイゼーションが認められ、このことから神経膠腫でみられる発現亢進パターンは腫瘍細胞の過多ではなく実際に細胞での過剰発現に起因することが示された。アンチセンス鎖cDNAから作製したセンス鎖リボプローブによる特異的ハイブリダイゼーションは観察されず、このことからアンチセンスプローブで得られた細胞性ハイブリダイゼーションがGDOX mRNAに対して特異的であることが示された。
【0126】
ウエスタンブロット解析では、解析した神経膠腫組織の全例(8例中8例)で約57kdの単一のバンドが検出されたが、正常脳標本では対応するバンドは認められなかった(3例中0例)(図3A)。同じバンドはヒトの精巣組織および腎臓組織でも認められたが、スクリーニングした他の臓器では認められなかった(図3B)。このように、ウエスタンブロットの結果はノーザンブロット解析により認められたGDOXの発現パターンと一致した。
【0127】
実施例3:GDOXの細胞内局在およびGFAPとの共発現
本実施例ではGDOXの細胞内局在について述べるとともに、その発現をグリア線維酸性タンパク質(GFAP)と比較する。U87細胞および初代ヒト膠芽腫細胞におけるGDOX発現の細胞内局在を明らかにするために、GDOXのC末端の免疫蛍光染色を、上の実施例2に記載したGDOXペプチド抗体を用いて行った。GDOXタンパク質は主として原形質膜に局在し(図4A)、コンピュータで作成した予想される構造から推論されるように(図1A〜B)、それが膜貫通タンパク質であることが示唆された。神経膠腫細胞におけるGDOXとの共発現を評価するために、抗GFAPモノクローナル抗体の添加による二重免疫蛍光染色を行った。U87細胞はカバーガラス上に播いた。発現されたGDOXを、抗GDOXペプチド抗体を用いた後にFITC結合二次IgGで染色する免疫蛍光法によって検出した。GFAPの発現は、抗GFAP抗体を用いた後にTRTTC結合二次抗体で染色することによって検出した。一次抗体の特異性は、二次抗体のみでは染色がみられないことによって確認した。GDOXおよびGFAPはいずれも同じ細胞に共存していたが、GFAPの発現は主として細胞質に認められた(図4B)。
【0128】
別の実験では、免疫蛍光顕微鏡検査により、透過化処理を行った細胞および透過化処理を行っていない細胞での細胞内局在をアッセイした。図5A〜Bは、免疫蛍光共焦点顕微鏡検査によってアッセイした、透過化処理を行っていない(図5A)または透過化処理を行った(図5B)初代ヒト膠芽腫細胞のGDOX細胞内局在を示した顕微鏡写真である。透過化処理を行った細胞ではGDOXタンパク質は主として核小体に局在し、このことから原形質膜から核への細胞輸送が示唆された。この核小体への局在はヒト膠芽腫組織切片の免疫組織化学染色でも確かめられた。図6A〜Bは、ヒトの腫瘍性脳組織(図6A)と非腫瘍性脳組織(図6B)の比較解析のためのGDOX抗体を用いた免疫組織化学染色を示した顕微鏡写真である。膠芽腫組織におけるGDOXの核小体への細胞内局在が注目される。
【0129】
実施例4:GDOXの染色体局在
本実施例では、GDOXのゲノム上の位置を特定するために体細胞ハイブリッドマッピングを用いた。種々のマウス-ヒトハイブリッドおよびハムスター-ヒトハイブリッドからなる市販の体細胞ハイブリッドマッピングパネルをCoriell Cell Repositories社(Camden、NJ)から入手した。ランダムプライマーを製造元(NEB)のプロトコールに従って用いてGDOX cDNAを含むプラスミドDNAから作製した32P標識cDNAプローブを用いて、サザンブロット解析を行った。
【0130】
図7は、体細胞ハイブリッドパネル中のヒト染色体DNAに対するGDOX cDNAのサザンブロット法の結果を示している。DNAハイブリダイゼーションにより、ヒトゲノムDNAおよび体細胞ハイブリッドNA10324由来のDNAとの間に予想されるサイズのバンドが示され、これがヒトX染色体を含むこのマッピングパネル中に示された唯一のハイブリッドであった。このため、GDOX遺伝子はヒトX染色体上に存在するように思われる。
【0131】
実施例5:トランスフェクトされたグリア細胞におけるGDOX発現の生物学的効果
GDOXがグリア細胞の腫瘍形成および/または増殖に役割を果たすか否かを明らかにするために、センスおよびアンチセンスGDOX構築物を作製し、マウスおよびヒトのグリア細胞株にトランスフェクトした。条件的不死化マウスグリア細胞株(CIMO;Bronstein, J.ら、J. Neurochem. 70: 483-491、1998;Jat, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 88: 5096-5100、1991)を用いて、インビトロでGDOXの過剰発現によって非腫瘍形成性グリア細胞の悪性転換が誘導されるか否かを検討した。CIMO細胞は、H-2Kb-tsA58トランスジェニックマウスから得た脳の初代培養物に由来する。
【0132】
細胞培養およびトランスフェクション
条件的不死化グリア細胞株(CIMO)は、以前に記載された通り(Bronstein, J.ら、J Neurochem 70: 483-491、1998;Jat, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 5096-5100、1991)、H-2Kb-tsA58トランスジェニックマウス(Charles River Laboratories、Wilmington、MA)の脳の初代培養物に由来する。これらのグリア細胞はインターフェロン-γ誘導性プロモーターの制御下にある温度感受性SV40ラージT抗原癌遺伝子を含み、このため、許容条件下(33℃、インターフェロン-γ存在下)では急速に増殖させ、非許容条件下(37℃、インターフェロン-γ非存在下)ではそうさせないことが可能である。これらの細胞を、5%ウシ胎仔血清(FCS)を加えたDMEMを入れたT75フラスコ内で5%CO中にて、33℃、IFN-γ存在下(許容条件)または37℃、INF-γ非存在下(非許容条件)で継代して維持した。ヒト膠芽腫細胞株U87はAmerican Type Culture Collection(Rockville、MD)から入手し、5%FCS、2mM L-グルタミンおよび抗生物質(100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン)を加えたDMEM中にて5%CO2下、37℃で維持した。
【0133】
これらのマウスおよびヒトの細胞株の両方に対して、下記のようにpBK-CMV発現ベクター中にセンスまたはアンチセンスの向きにクローニングしたGDOX cDNA断片をトランスフェクトした。センスベクターの構築のためには、pZL1ベクター(Gibco-BRL)中の完全長1276bp GDOX cDNAをNotIおよびSalI酵素で消化処理し、pBK-CMV(Gibco-BRL)のNotI部位およびSalI部位にサブクローニングした。アンチセンスベクターの構築のためには、完全長GDOX cDNAを含むpZL1ベクターをSmaIおよびXbaI酵素で消化処理し、取り出された断片をpBK-CMTのXbaI部位およびSmaI部位にアンチセンスの向きにサブクローニングした。対照に関しては、pBK-CMVプラスミド(空ベクター)およびpBK-CMT-GFAPプラスミド(ランダム配列)を同じく細胞にトランスフェクトした。CIMO細胞およびU87細胞のトランスフェクションは、細胞が集密度80%に達した時点でDOTAPを製造元の指示に従って用いて行った。トランスフェクションから1日後に細胞を継代し、血清を加えた培地中にて400μg/mlのG-418(Gibco-BRL)の存在下で選別した。この培地を最初は2日後に交換し、その後は3〜4日毎に交換した。14日後に、G418耐性細胞のコロニーを、上記のノーザンブロット解析によってGDOX発現の存在に関して調べた。改変細胞におけるGDOX発現の有無をウエスタンブロット解析によって確かめた(図8)。センス、アンチセンスおよび対照物をトランスフェクトしたU87細胞の形態的な表現型を調べた。位相差顕微鏡検査により、アンチセンスGDOXをトランスフェクトしたグリア細胞は対照細胞と同様に広がりを生じず、比較的丸みを帯びた形態を保つことが示された(図9A〜B)。これに対して、センス-GDOXをトランスフェクトした細胞はより多くの細胞質突起を有し、対照細胞よりも大きな斑状に増殖することが観察された。野生型対照U87細胞は屈折性が高く、細胞質突起を有する大きな斑状に増殖した(図9A)。アンチセンスGDOXをトランスフェクトした細胞は十分に成長せず、より丸みを帯びた形態であった(図9B)。
【0134】
さまざまな種類のトランスフェクト細胞の増殖速度を、[3H]チミジン取り込みを用いて測定した。細胞を12ウェルプレート(Corning)に5×104個/ウェル(5%FCSを加えたDMEM 2ml中)の密度でプレーティングした。5日後に培地を[3H]チミジン(1μCi/ml、比活性0.4Ci/mmol)を含む新たなDMEM培地と交換し、24時間インキュベートした。続いて細胞を氷冷リン酸緩衝食塩液(PBS)で洗浄し、DNAを5%トリクロロ酢酸で沈殿させた上で0.1%SDS中に溶解させた。取り込まれた放射能を液体シンチレーションカウンターによって定量した。アッセイ法は3回行い、そのたびに1条件当たり4ウェルを用い、3組の計測を行った。スチューデントのt検定を用いて増殖速度の差を統計学的に分析した。
【0135】
図10に示されているように、GDOX cDNAをトランスフェクトしたCIMO細胞では許容条件(33℃)および非許容条件(37℃)のいずれの下でも増殖能が顕著に増加した。空ベクター対照をトランスフェクトし、同様の条件下で培養した細胞に比して、GDOXをトランスフェクトしたCIMO細胞の増殖速度は9.5倍(37℃、p=0.0006)〜15倍(33℃、p<0.0001)であった(図10)。1分間当たりのカウント数(cpm)での結果を、空ベクター(pBK-CMV)をトランスフェクトした細胞の非許容条件(37℃)下での増殖の比率に対して標準化した。空ベクター対照(37℃でのCIMO)のcpmを各実験で100%に設定し各実験の他のカウントはすべてこの値に対して標準化した。示した結果は、それぞれ3つずつのウェルを用いた3回の独立した実験を併せたものである。
【0136】
これほど顕著ではないが有意ではある、細胞増殖の2倍の増加が、センスGDOX cDNAをトランスフェクトしたヒトU87膠芽腫細胞でも認められたが、U87細胞に対するアンチセンスGDOXのトランスフェクションは腫瘍細胞の増殖を野生型対照の17%に抑制した。図11は、インビトロでのヒト神経膠腫細胞株U87におけるGDOXの増殖調節作用(growth modulation effect)を示した棒グラフである。親U87細胞、またはU87細胞に対して空ベクター(U87-V)、ランダムアンチセンスを含むベクター(U87-asGFAP)、センスGDOX(U87-GDOX)もしくはアンチセンスGDOX(U87-asGDOX)をトランスフェクトしたものを、[3H]チミジン取り込みによってアッセイした。結果は対照野生型U87細胞の増殖の比率(これを100%に設定した)に対して標準化した。
【0137】
実施例6:インビトロでの多様なヒト癌に対する抗GDOX抗体の生物学的効果
本実施例では、GDOX遺伝子産物を標的とする抗体がインビトロでヒト癌細胞に対する抗腫瘍効果を有することを示す。継代早期の初代ヒト膠芽腫細胞を種々の濃度のGDOXポリクローナル抗体とともに4日間インキュベートし、トリパンブルーで染色した上で計数した。処理細胞および対照細胞の形態的な表現型を調べた。位相差顕微鏡検査により、GDOX抗体で処理した腫瘍細胞は対照細胞と同様に増殖および広がりを生じないことが示された。さらに、さまざまな種類のヒト癌(脳、肺、乳房、結腸および前立腺)由来する腫瘍細胞を抗GDOX抗体で処理したものは、標準的な[3H]チミジン取り込み解析による測定で、細胞増殖の用量依存的な低下を示した。
【0138】
図12A〜Dは、ヒト腫瘍細胞株における特異的な抗GDOX抗体の増殖抑制作用を示した棒グラフである:図12A、ES-UCLA(原発性膠芽腫);図12B、SKBR3(乳房腺癌);図12C、A549(肺癌);および図12D、Du145(前立腺癌)。結果は、熱失活させた抗GDOX抗体または対照抗体を等量用いた対照細胞による対照増殖の比率に対して標準化した。
【0139】
実施例7:癌患者の生存期間とGDOXの過剰発現との相関
本実施例では、GDOXの過剰発現がヒト膠芽腫患者の生存期間と相関することを示す。図13は、ヒト膠芽腫患者から得た試料をGDOX cDNAを用いてプロービングしたノーザンブロット解析の結果を示している。GDOX mRNA発現の相対量を、2年を越えて生存している患者(左図)および生存期間が1年未満である患者(右図)から得た試料間で比較した。生存期間の短い患者ではGDOXタンパク質のかなりの過剰発現が観察された。これらのデータは、GDOXおよびその産物の癌に対する診断標的および治療標的としての利用性をさらに裏づけるとともに、GDOX発現が予後判定ならびに疾患の進行および/または治療に対する反応のモニタリングにも有用な可能性があることを示している。
【0140】
実施例8:腫瘍細胞でGDOXが機能する分子経路の特徴付け
細胞内局在の検討
GDOXタンパク質は原形質膜に局在するように思われ、これはGDOXの一次配列のコンピュータ解析によって予想された膜貫通タンパク質としての構造と一致するとともに、GDOX抗体により誘導される到達可能な膜タンパク質の修飾という所見を裏づける(図12A〜D)。しかし、透過化処理を行った初代神経膠腫細胞の免疫蛍光共焦点顕微鏡検査(図5A〜B)およびヒト膠芽腫組織切片の免疫組織化学検査(図6A〜B)によって局在性をアッセイした場合には、GDOXは主として核小体に認められた。これらのデータはGDOXが、活性化によって核小体へと運ばれる原形質膜タンパク質である可能性を示唆している。GFPおよびHAで標識したGDOX構築物をヒト腫瘍細胞で一時的に発現させることにより、このタンパク質の腫瘍細胞における細胞内局在および定位をさらに明らかにしうると考えられる。
【0141】
プロテインキナーゼC(PKC)リン酸化の検討
上の図1Aに示されているように、コンピュータを用いたモチーフ解析により、予想されるGDOXタンパク質のNH2末端、アミノ酸139〜142にセリン/トレオニンPKCによるリン酸化部位が存在することが判明した。予想されるGDOXタンパク質がプロテインキナーゼC(PKC)に対する共通の認識モチーフを有するという観察所見からみて、タンパク質リン酸化が、GDOXがヒト脳腫瘍細胞において機能する調節機構ではないかと思われる。
【0142】
無細胞抽出物における内因性GDOXタンパク質のリン酸化
GDOXリン酸化の特徴を明らかにするために、U87無細胞抽出物における内因性GDOXタンパク質への[γ-32P]ATPの標識取り込みを検討する。32P取り込みを調べるには、細胞抽出物(100μl中にタンパク質150μg)をTGED緩衝液中に調製し、MgCl2(0〜10mM)の存在下または非存在下で[γ-32P]ATP(10μM;0.1μCi)を添加する。30℃で20分間インキュベートした後に、10mM EDTAを含む300μlの氷冷TBSを添加することによって反応を停止させ、抽出物に存在するGDOXタンパク質を免疫沈降させる。可溶化した免疫沈降物を12%ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動にかけた後にゲルを乾燥させ、32P標識GDOXタンパク質を可視化するためにX線フィルムに露光させる。50μgのタンパク質を用い、[γ-32P]ATPの代わりに10μMの非標識ATPを用いた点を除いて同じキナーゼアッセイ法を、対照として、GDOXタンパク質のウエスタンブロット解析のために行う。
【0143】
ヒト脳腫瘍細胞におけるGDOXタンパク質のリン酸化
GDOXのリン酸化に生理学的な意味があることを示すためには、本来のままの細胞でその修飾が起こっていることを確かめるとよい。この目的のためには、ヒト腫瘍細胞株を[32P]Piで代謝的に標識し、続いてGDOXタンパク質の免疫沈降、SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーを行う。腫瘍細胞を25cm2のフラスコ内で培養し、リン酸を含まないDMEM(Life Technologies, Inc.)で洗浄した上で、[32P]Pi(10μCi/ml)を含む培地とともに6時間インキュベートする。細胞を氷冷TBSで2回洗浄することによって放射性標識を停止させる。トリプシン処理の後に、0.5mMフェニルメタンスルホニルフルオリド、50mMフッ化ナトリウム、0.5mMバナジン酸ナトリウムおよび1%NP40を含む0.5mlのTBS中で細胞を溶解する。遠心処理によって回収した上清をGDOX抗体によって免疫沈降させる。この免疫複合体を12%SDS-PAGEゲルによって分離し、ゲルを乾燥させてオートラジオグラフィーにかける。
【0144】
精製された組換えGDOXタンパク質のリン酸化のためには、精製PKC(Calbiochem)を、発表されているプロトコール(Srivenugopal, K.ら、Cancer Research. 60: 282-287、2000)に従って用いる。
【0145】
実施例9:GDOXと相互作用する他のタンパク質の同定
ヒト神経膠腫組織におけるGDOXのウエスタンブロット解析では主として57kDのバンドが検出されたが(図3A)、GDOXの予想されるタンパク質サイズは19kDに過ぎない。これは翻訳後修飾、二量体化/三量体化、またはGDOXと他のタンパク質との密な会合によると考えられる。酵母ツーハイブリッドシステムを用いて、GDOXと相互作用しうる会合性タンパク質を同定することができる。
【0146】
酵母ツーハイブリッド解析
酵母ツーハイブリッドスクリーニング方法(Tiwari-Woodruff S. K.ら、J Cell Biology. 153: 295-305、2001)は、GDOXと相互作用するタンパク質の同定に用いうる。GDOXの全ORFをpGBT9(Matchmaker system;CLONTECH)中にサブクローニングする。酢酸リチウム法を用いて出芽酵母Hfc7コンピテント細胞をpGBT9-GDOXによって形質転換し、外科的切除時に採取したヒト膠芽腫組織由来のmRNAから作製したpGAD GH cDNAライブラリーをスクリーニングするための「ベイト」として用いる。Hfc7株には、相互作用タンパク質に対する2種類のレポーター遺伝子:HIS3およびβガラクトシダーゼ(β-gal)が含まれている。相互作用タンパク質を発現する形質転換体はヒスチジン-依存性培地(HIS-)で増殖すると考えられる。陽性クローンを無菌のWhatmanフィルターに移し、選択用Trp-/Leu-/His-最小SD寒天培地にプレーティングした上で30℃で1〜3時間インキュベートし、液体窒素により固定する。続いてフィルターを、50mMβ-メルカプトエタノールおよび0.07mg/ml 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(Sigma-Aldrich)を添加したバッファーZ中にあらかじめ浸漬した濾紙の上に乗せる。フィルターを30℃でインキュベートし、青色のコロニーの出現に関してモニタリングする。陽性酵母コロニーからYeastmakerキット(CLONTECH)を用いてプラスミドを単離する。
【0147】
陽性コロニーから単離したプラスミドの個々に対してGDOXベイトcDNAによる同時形質転換を行い、HIS3レポーター活性化に関する選択のためにHIS-SD培地上にプレーティングする。続いて、HIS-プレート上に再びプレーティングしたクローンを、上記の通りにβ-gal活性に関してアッセイする。救済されたクローンからpGAD GHプラスミドを大腸菌内に回収し、シークエンシングを行う。同時形質転換体を、HIS培地上での増殖能およびβ-gal活性に関してアッセイする(Ingley, E.ら、FEBS. 459: 69-74、1999)。
【0148】
免疫共沈
次に、GDOXと相互作用する候補タンパク質の会合を免疫共沈試験によって確かめる。免疫共沈のためには、腫瘍細胞を25mM トリス-HCl、pH 7.5、120mM NaCl、1%NP-40、5mM EDTA、25mm NaF、25mM-グリセロールリン酸、1mMバナデートおよび1mMベンザミジン中で溶解した後に、1000×gで5分間遠心する。上清をGDOX抗体とともにインキュベートし、プロテインAビーズによって収集した後に、抗GDOX抗体または酵母ツーハイブリッドスクリーニングによって検出された相互作用タンパク質に対する抗体を用いてイムノブロット法を行う。タンパク質シグナルを高感度化学発光法(Amersham)によって検出する。
【0149】
実施例10:エストロゲンアンタゴニストに対する感受性の決定
上の図1A〜Bに示されているように、GDOXと予想されるタンパク質は、ヒトエストロゲン受容体のものと相同性のあるリガンド結合領域と考えられる領域を有する。タモキシフェン((Z)-2[p[(1,2ジフェニル-1-ブテニル)フェノキシル]-N,N-ジメチルアミンシトレート)は、乳癌の治療に広く用いられている比較的毒性の弱い合成非ステロイド性抗エストロゲンであり、脳悪性腫瘍の治療における治療薬の候補として関心が向けられている。タモキシフェンの経口投与は、高用量では悪性神経膠腫の患者の一部で有益であることが示されている(Couldwell, W. T.ら、Clin Cancer Res. 2: 619-622、1996)。しかし、乳癌の場合とは異なり、タモキシフェンの細胞傷害性に反応するヒト膠芽腫細胞株(U87、U373およびU138)では検出可能なエストロゲン受容体の発現がみられず、エストラジオールに対する細胞分裂応答が示されなかったため、タモキシフェンはエストロゲン受容体を介した細胞増殖性シグナル伝達の競合的抑制によって作用するようには思われない。ヒト悪性神経膠腫におけるタモキシフェンによる増殖抑制の機序にはエストロゲン受容体を介した過程は含まれず、PKC活性を妨げることに起因すると思われる(Pollack, I. F.ら、Cancer Research. 50:7134-7138、1990)。興味深いことに、比較的選択性の高いPKC阻害薬であるスタウロスポリンは、神経膠腫細胞株に対する選択的な抑制作用がタモキシフェンよりも強いように思われ(Baltuch, G.ら、Neurosurgery. 33: 495-501、1993)、このことはタモキシフェンによって誘導されるヒト膠芽腫細胞の増殖抑制に直接的なPKC阻害に加えて別の機序が関与している可能性を示唆する。このことは、インビボでの悪性神経膠腫に対するタモキシフェン療法の感受性をエストロゲン受容体の発現およびPKC活性のいずれによっても予測できないことを説明する一助になると思われる(Puchner, M. J. A.ら、Acta Neurochir. 143: 563-573、2001)。
【0150】
GDOXにエストロゲン結合ドメインと推定されるドメインがあることからみて、タモキシフェンなどのエストロゲンアンタゴニストはGDOXを介した細胞機序によってヒト膠芽腫細胞に影響を及ぼすと考えられ、GDOXの過剰発現はタモキシフェン感受性または他のエストロゲンアンタゴニストに対する感受性の有用な予測因子である可能性がある。センスおよびアンチセンスGDOX cDNAが安定的にトランスフェクトされたU87ヒト膠芽腫細胞(図8参照)を、GDOXを過剰発現する腫瘍におけるタモキシフェン感受性の検査に用いることができる。これらの細胞株を、2%L-グルタミンを含み、15%FCS(Life Technologies)を添加したDMEMの入った25cm2フラスコ内で、37℃、最小相対湿度95%の空気および5%CO2の雰囲気下で維持する。アッセイ法のためには、指数増殖期にある細胞を培養フラスコからEDTA-トリプシンを用いて剥離し、細胞の生存度をトリパンブルー排除によって確かめる。各アッセイ法で検査する、タモキシフェンの各用量に関して3件ずつの培養物を96ウェルプレートに5×103個/100μl培地/ウェルの密度で接種する。培養物を24時間おいて安定させた後に、タモキシフェン(Sigma)の連続希釈物である0μM、5μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μMおよび40μMタモキシフェンに対して曝露させる:
【0151】
最終容量200μl/ウェルとした上でインキュベーションを合計4日間行う。このようにして、非処理試料またはタモキシフェンで4日間処理した試料を、以下の3組のアッセイ法のために用いる(各アッセイ当たり3ウェル)。通常、各アッセイを少なくとも3回ずつ行う。
【0152】
i. 親U87細胞およびトランスフェクトU87細胞における内因性GDOXの細胞内局在を上記のようにして決定する。細胞をさまざまな用量のタモキシフェンで処理した後にカバーガラスに播種する。発現されたGDOXを、抗GDOX抗体を用いた後にFITC結合二次抗体で染色する免疫蛍光法によって検出する。
【0153】
ii. [γ32P]ATPの取り込みをPKCリン酸化の指標として用いて、親U87細胞およびGDOXをトランスフェクトしたU87細胞におけるタモキシフェン処理後の細胞PKC活性を上記のように評価する。
【0154】
iii. 細胞増殖アッセイ法を以前の記載の通りの[3H]チミジン取り込みによって行う(Liau, L.ら、Cancer Res. 60: 1353-1360、2000;Lu, R.およびSerrero, G.、Proc Natl Acad Sci USA. 97: 3993-3998、2000)。簡潔に述べると、さまざまな用量のタモキシフェンで4日間処理した後に、細胞の培地を[3H]チミジン(1μCi/ml、比活性0.4Ci/mmol)を含む新たなDMEM培地に交換し、24時間インキュベートする。細胞を氷冷PBSで洗浄し、5%トリクロロ酢酸によってDNAを沈殿させた上で0.1%SDS中に溶解させる。取り込まれた放射能を液体シンチレーションカウンターによって定量する。
【0155】
タモキシフェンがGDOXを介した細胞シグナル伝達に影響を及ぼすならば、GDOXに対するリガンド結合により、GDOXタンパク質の細胞内局在またはリン酸化の差が生じると考えられる。さらに、タモキシフェン処理は、高レベルのGDOXを高レベルに発現するセンスGDOX-トランスフェクトU87細胞とGDOXを発現しないアンチセンスGDOX-トランスフェクト細胞との間で細胞増殖抑制応答の差を引き起こすと思われる。各々の処理用量での異なる細胞株間の結果の比較には反復測定分散分析が用いられる。
【0156】
実施例11:GDOXによる腫瘍形成促進の阻止
本実施例では、GDOXが腫瘍形成を促進する機構を明らかにするために用いうるアッセイ法について述べる。これらのアッセイ法を、GDOXまたはその遺伝子産物の1つに対する候補治療薬が、GDOX過剰発現の腫瘍形成作用を阻止する能力を検査するために用いることもできる。インビトロアッセイ法およびインビボアッセイ法のいずれを用いることもできる。
【0157】
前記の実施例で示されているように、U87ヒト膠芽腫細胞に対しては、センスおよびアンチセンスGDOX cDNAを安定的にトランスフェクトしうる(図8)。これらの細胞株を、GDOXがいかにして腫瘍形成を促進するかを解析するため、およびGDOXまたはその遺伝子産物の1つに対する治療薬の効率をアッセイするために用いることができる。野生型の親U87、U87-V(空ベクター対照)、U87-アンチセンスGFAP(ランダムアンチセンス対照)、U87-センスGDOXおよびU87-アンチセンスGDOXを以下のアッセイ法を用いて解析する:
【0158】
i. 細胞増殖アッセイ法
細胞(1×105個/ウェル)を血球計算器を用いて計数し、培地2mlおよび適切な選択薬(400μg/mlのG418)とともに6ウェルプレート(Costar)に入れる。細胞は3組ずつプレーティングし、さまざまな期間(1日、2日、4日、6日、8日および10日)にわたって増殖させる。各時点で、ウェルをPBSで2回洗浄し、0.1%クリスタルバイオレットで染色する。細胞数の計測は、細胞数計測ソフトウエアを顕微鏡とともに用いて、各細胞株に関して3組ずつ行う。続いて細胞数を培養時間に対してプロットする。
【0159】
それぞれの細胞株の細胞増殖を、MTTアッセイ法を製造元(Roche Diagnostics)による記載の通りに用いて行うこと、および上記の[3H]チミジン取り込みアッセイ法によって計測することもできる。
【0160】
ii. 細胞周期の解析
対数増殖期にあるGDOXセンス/アンチセンスをトランスフェクトした細胞および対照細胞に対する細胞周期分布に関するフローサイトメトリー分析を、以前の記載の通りに行う(Li, D. M.およびSun, H.ら、Proc Natl Acad Sci USA. 95: 15406-15411、1998;Ge, S.ら、Clin Cancer Res. 6: 1248-1254、2000;Huang, R. P.ら、Cancer Research. 58: 5089-5096、1998)。簡潔に述べると、親U87細胞およびGDOXトランスフェクト細胞を同じ密度(4×105個)でプレーティングし、DMEM+10%FBS中での培養下に3日間保つ。培地は毎日交換する。4日間培養した細胞を集密度が70〜80%に達した時点で回収する。細胞をトリプシン処理し、10%FBSを含むDMEMによって不活性化した上で、800rpmで5分間遠心し、PBS中に再懸濁して算定する。2×106個の細胞を収集し、3mlの氷冷70%エタノール中にて氷上で30分間固定し、4℃で保存する。フローサイトメトリー分析のためには、エタノールを室温での450×g、5分間の遠心処理によって除去し、上清をデカントして細胞ペレットを氷冷PBSで2回洗浄する。この細胞を、1mlのPI/RNアーゼ混合物(50μg/ml PT+5U/ml RNアーゼA、PBS中)中にて室温で30分間インキュベートすることにより、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色する。細胞内のDNA含有量をFACS(Becton-Dickinson)を用いて解析する。
【0161】
iii. 細胞接着アッセイ法
接着アッセイ法を以前の記載の通りに行う(Rempel, S. A.ら、J Neuro-Oncology. 53: 149-160、2001)。簡潔に述べると、平底96ウェルプレートに、PBS中に再懸濁した精製ECMタンパク質(コラーゲンIV、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸およびテネイシン)の1、10または100μg/mlを4℃で一晩コーティングする。タンパク質溶液を除去し、1%BSAを含むPBSによりウェルを室温で1時間ブロックする。集密に近い単層から、0.05%トリプシン-0.53mM EDTA(Ca/Mg非含有HBSS中)を用いて細胞を収集する。細胞を、5%フィブロネクチン非含有血清を含むDMEM中に再懸濁し、培地50μlを含むウェルに5×104個/50μl培地の密度でプレーティングする。96ウェルプレートを氷上に30分間置いた後、37℃に1時間保つ。プレートをオービタルシェーカーにより350rpmで6分間振盪する。培地および非接着細胞を吸引除去する。PBS 100μlを各ウェルに添加し、プレートを再び振盪して吸引する。付着細胞を1%グルタルアルデヒド中に30分間おいて固定し、PBSで3回洗浄して、0.1%クリスタルバイオレットで10分間染色した上でPBSで3回洗浄し、1%SDS中に溶解して、分光光度計により540nmの吸光度を読み取ることによって定量する。
【0162】
iv. 細胞遊走アッセイ法
細胞遊走をRempel, S. A.ら、J Neuro-Oncology. 53: 149-160、2001;およびMenon, P. M.ら、Int J Oncology. 17: 683-693、2000に記載された方法を用いて定量する。簡潔に述べると、テフロンでコーティングした10ウェルスライド(Creative Scientific Methods, Inc.)をオートクレーブ処理し、ウェルを100μg/mlのECM 45μlにより37℃で1時間コーティングする。ウェルをダルベッコ1×PBS(Life Technologies, Inc.)で3回洗浄し、45μlの1%BSAにより室温で30分間ブロックする。BSAを吸引し、PBS 50μlを各ウェルに添加する。スライドを、乾燥を防ぐために滅菌dH2Oを満たした35mmペトリ皿を入れて加湿した100mmペトリ皿に入れて4℃に一晩保つ。
【0163】
単層状態で増殖している野生型U87細胞およびGDOX-トランスフェクト細胞をT25フラスコから収集し、血球計数器を用いて計測する。5日間培養した後に細胞から馴化培地を採取し、DMEM+10%FBSにより1:4に希釈する。収集した細胞を25%馴化培地中に1×106個/mlの密度で再懸濁し、氷上に保つ。テフロンでコーティングしたスライドを4℃から取り出し、PBSをウェルから吸引して、25%馴化培地50μlを各ウェルに添加する。細胞沈殿管を製造元の指示に従って用いて、2×103個の細胞を各ウェルの中央に播く。スライドを氷上に1時間置いた後、37℃で1時間インキュベートする。インキュベーション中の蒸発を防ぐために、水を含ませた濾紙片を培養皿の中に入れておく。1時間のインキュベーション後に沈殿管をスライドから取り出し、新たな25%馴化培地(50μl)を各ウェルに添加する。テフロンスライドの両端に合致するシリコンカバースライドを、シリコンサスペンションパッドを用いてテフロンスライドの1mm上に載せる。ベースライン時の半径測定(0h)のために細胞の写真を撮影した上で、37℃のインキュベーターに戻して遊走を進行させる。
【0164】
各ウェル内の付着細胞によって占められた円形領域の連続画像を、0時間、24時間および48時間の時点で、Olympus 1X50顕微鏡に装着し、Macintosh G4コンピュータと接続したKODAKカメラを用いて撮影する。Adobe Photoshopソフトウエアを用いて画像を取り込み、細胞集団の直径を画像解析ソフトウエアプログラムを用いて測定する。定量的な遊走の測定値を、細胞集団の初期半径(0h)から上回った半径の増分として算出する。
【0165】
v. 細胞浸潤アッセイ法
親U87細胞ならびにベクター、ランダムアンチセンスGFAP、センスGDOXおよびアンチセンスGDOXをトランスフェクトしたU87クローンの浸潤性の測定には、マトリゲル(Matrigel)をコーティングしたトランスウェルインサート(Becton Dickinson)を製造元の指示に従って用いることによる、マトリゲル浸潤アッセイ法を用いる。簡潔に述べると、孔径8μmの孔のあるトランスウェルインサートを最終濃度1mg/mlの、マトリゲルでコーティングし、200μlの細胞浮遊液(1×106個/ml)を3組ずつのウェルに添加する。24時間のインキュベーション後に、フィルターを通過して下方のウェルに入った細胞を定量し、上方および下方のウェルにある細胞の総数に対するパーセンテージとして表す。以前の記載の通りに、膜の下側にある細胞を固定し、Hema-3で染色した上で写真を撮影する(Kondraganti, S.ら、Cancer Research. 60: 6851-6855、2000)。
【0166】
神経膠腫スフェロイドの浸潤性の計測のために、神経膠腫スフェロイドをラット胎仔脳凝集物と共培養する三次元スフェロイドコンフローテーション(confrontation)アッセイ法を以前に記載された手順に従って用いることもできる(Go, Y.ら、Clin Exp Metastasis. 15: 440-446、1997;Golembieski, W. A.ら、Int J Devi Neuroscience. 17: 463-472、1999;Vajkoczy, P.ら、Int J Cancer. 87: 261-268、2000)。腫瘍スフェロイドを25μg/mlの赤色蛍光色素DiI(1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩)で染色し、30μg/mlの緑色蛍光DiO色素(3,3'-ジオクタデシルオキサカルボ-シアニン過塩素酸塩)で染色したラット胎仔脳凝集物と一緒にする。
【0167】
親U87細胞またはベクター、ランダムアンチセンスGFAP、センスGDOXもしくはアンチセンスGDOXをトランスフェクトしたU87細胞のいずれかをラット胎仔脳スフェロイドと対合させた対を、個々の凝集物を滅菌針を用いてマイクロウェル培養皿に移すことによって作製する。さまざまな時間間隔で、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、共培養物の表面から中心に向かって1μm厚の連続切片を採取する。DiIおよびDiOの蛍光を、それぞれ488nmのアルゴンレーザーとFITCフィルター光学素子(522nm)および543nmのヘリウム/ネオンレーザーとTexas Redフィルター光学素子(585nm)の組み合わせを用いて同時に検出する。共培養中の残りの脳凝集物または腫瘍スフェロイドの体積を24、48および72時間の時点で画像化ソフトウエア(Laser Sharp)を用いて定量する。対照およびGDOX-センスクローンおよびアンチセンスクローンに関して観察された画像における浸潤性の差を定量的密度マッピングによって評価する。
【0168】
vi. アポトーシスアッセイ法
GDOXの低発現および過剰発現がアポトーシスに及ぼす影響は、対照およびトランスフェクションを行ったトU87ヒト膠芽腫細胞株でさまざまな方法を用いてアッセイすることができ、これには以下が含まれる:
【0169】
(a)アポトーシス細胞に関するDAPI染色を用いた細胞形態解析を、2×105個の親U87細胞、ならびにベクター、ランダムアンチセンスGFAP、センスGDOXおよびアンチセンスGDOXをトランスフェクトしたU87細胞をポリ-L-リシンをコーティングしたカバーガラスにプレーティングした上で一晩培養したものに対して行う。翌日に細胞をPBSで1回洗浄し、続いて3.7%パラホルムアルデヒドを含むPBSにより室温で30分間固定した後に、PBSで2回洗浄する。細胞を1%Triton X-100を含むPBS中に3分間おいて透過化し、PBSで2回洗浄する。細胞を核染色色素DAPI(10μg/ml、PBS中;Sigma)により室温で20分間染色し、その後にPBSで2回洗浄する。カバーガラスに載せた細胞をスライドガラスにマウントし、核の染色をOlympus蛍光顕微鏡を用いて可視化する(倍率400倍)。アポトーシス小体を有する細胞の数および核の総数を5つの高倍率視野で算定し、アポトーシスのパーセンテージを平均+SDとして算出する。
【0170】
(b)インサイチューでのDNA鎖切断に関するTUNEL染色を、製造元(APO-Direct TUNEL直接免疫蛍光キット;PharMingen)の推奨に従って行う。Olympus蛍光共焦点顕微鏡を用いて細胞を観察する。TUNEL陽性細胞を倍率400倍で算定する。アポトーシス指数を各視野におけるアポトーシス細胞数:総細胞数として算出する。
【0171】
(c)アガロースゲル電気泳動によるDNA断片化を、収集した上でPBSで1回洗浄した2×106個の細胞を用いて行う。細胞ペレットを0.5mlの可溶化バッファー[10mM トリス(pH 7.6)および0.6%SDS]で溶解した後に、4M NaClを最終濃度1Mとして添加し、十分に混合する。可溶化物を4℃、12,000rpmで30分間遠心する。上清を採取し、50μg/mlのRNアーゼAの存在下で37℃で60分間インキュベートし、その後にフェノール:クロロホルム(1:1)抽出を行う。ゲノムDNAを、0.01M MgCl2および25μg/mlのtRNAの存在下で、2倍容積の100%エタノールにより、80℃で少なくとも2時間かけて沈殿させる。DNAを4℃、12,000rpmで30分間遠心することによってペレット化する。ペレットを70%エタノールで2回洗浄した後に風乾させ、その後に25μlのTE[10mM トリスおよび1mM EDTA(pH 8.0)]緩衝液中に再懸濁して保存する。DNAの量はA260nm値によって定量する。等量のDNAを0.8%アガロースゲルにローディングし、0.5×TBE緩衝液[45mM トリス-ホウ酸および1mM EDTA 9pH 8.0)]中にて2V/cmで16時間かけて電気泳動を行う。DNA断片化はUV光による臭化エチジウム(0.54μg/ml)染色によって可視化する。Kodak DC120 Digital Access System(Kodak)を用いて画像を取り込み、Adobe Photoshopソフトウエアを用いて処理する。
【0172】
実施例12:インビボ腫瘍形成性アッセイ法および生存期間アッセイ法
本実施例では、GDOXが腫瘍形成を促進する機序を解明するために異種移植片モデルを用いるインビボアッセイ法に関して述べる。これらのアッセイ法を、GDOXまたはその遺伝子産物の1つに対する候補治療薬がGDOX過剰発現の腫瘍形成作用を阻止する能力を検査するために用いることもできる。
【0173】
インビボ腫瘍形成性試験および生存期間試験のためには、親U87細胞ならびにベクター、センスおよびアンチセンスを安定的にトランスフェクトした細胞をトリプシン処理し、無血清培地中に再懸濁する。免疫不全BALB/cヌード(nu/nu)マウス(Charles River)に麻酔を施す。細胞株クローンのそれぞれに由来するトリプシン処理細胞を、以前の記載の通りに、4〜5週齡雌性ヌードマウスの脇腹への皮下注入(1×107個 皮下、100μlの無血清培地中)または脳内への定位的頭蓋内接種(5×105個 皮内、10μlの無血清培地中)のいずれかによって投与する。以下のようなさまざまな群を用意する:
【0174】
各群のマウス10匹を腫瘍形成性アッセイ法に用いる。インビボの腫瘍を2〜4週間(皮内腫瘍の場合)または6〜8週間(皮下腫瘍の場合)増殖させる。皮下に腫瘍を注入したマウスは注入から42日後に屠殺し、皮内に腫瘍を移植したマウスは移植14日後に屠殺する。続いてマウスに灌流固定を行う。外科的解剖によって皮下腫瘍または脳を注意深く摘出する。標準的なプロトコールに従い、各標本を10%ホルマリン/PBSで固定し、パラフィン包埋した上でHEで染色する。
【0175】
免疫組織化学解析は、Vectastain ABCキット(Vector Laboratories)を製造元のプロトコールに従って用いた後に3,3'-ジアミノベンジジン四塩化物を発色団として用いてインキュベートする、標準的な手順に従って行う。
【0176】
腫瘍細胞の増殖の評価は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋を行った組織に対するKi-67およびMIB-1免疫組織化学法によって行う。Ki-67およびMIB-1標識指数を、4つの高倍率(400倍)視野における標識された核:核の総数の比として求める。
【0177】
壊死は、コンピュータ画像解析システムを用いるHE染色組織の組織学的解析によって評価する。4つのランダムな切片のデジタル画像を倍率200倍で記録し、壊死面積を各視野における総面積に対するパーセンテージとして算出する。
【0178】
血管新生は、抗CD31抗体(PharMingen)を対比染色をせずに用いる免疫組織化学法によって評価し、コンピュータ画像解析システムを用いて微小血管面積として定量化する。微小血管面積は、切片の4つのデジタル画像を倍率200倍で取り込み、各切片における染色の総量を測定することによって決定する。この値を各視野における総面積に対するパーセンテージとして表す。血管新生は、抗VEGF抗体(PharMingen)を用いた血管内皮増殖因子(VEGF)に対する免疫染色によっても評価される。
【0179】
腫瘍細胞のマウス脳内への浸潤は、以前に記載されたプロトコールを用いる、Blur-2ヒト特異的DNAプローブとのインサイチューハイブリダイゼーションによって評価するが、これはマウス細胞の背景下にあるすべてのヒト細胞を同定しうると考えられる(Rempel, S. A.ら、J Neuropathol Exp Neurol. 57: 1112-1121、1998)。
【0180】
皮下に腫瘍を注入した各群のマウス10匹を腫瘍増殖曲線の検討に用い、皮内に腫瘍を移植した各群のマウス10匹を生存期間に関して評価する。マウスを、目視しうる皮下の腫瘍、または皮内の腫瘍による神経学的症状の出現に関して1日おきに検査する。
【0181】
皮下腫瘍に関しては、キャリパーによる測定値を週2回ずつ計測する。腫瘍体積(mm3単位)は(長さ×幅2)/2の式を用いて求めるが、ここで長さは最長方向の直径であり、幅は長さに直交する測定値である。剖検時に外科的解剖によって腫瘍を注意深く摘出し、秤量する。データは各群に関して腫瘍体積または重量の平均±SEとして表す。
【0182】
皮内への腫瘍異種移植片に関しては、さまざまな群のマウスを生存期間に関して観測する。生存期間の推計値および平均生存期間をカプラン-マイヤー法を用いて決定し、ウィルコキソン分析によって分析する。
【0183】
実施例13:トランスジェニックマウスのアッセイ法
本実施例では、GDOXが腫瘍形成を促進する機序を解明するためにトランスジェニックマウスモデルを用いるインビボアッセイ法に関して述べる。これらのアッセイ法を、GDOXまたはその遺伝子産物の1つに対する候補治療薬がGDOX過剰発現の腫瘍形成作用を阻止する能力を検査するために用いることもできる。
【0184】
GDOX癌遺伝子と推定されるものの発現がインビボでの腫瘍形成のために十分であることを確かめるために、トランスジェニック技術を用いてマウス腫瘍モデルを開発する。Dingら(Cancer Research. 61: 3826-3836, 2001)に記載された方法の変法を用いて、GDOXトランスジェニックマウスを、アストロサイト特異的GFAPプロモーターの制御下にあるGDOX遺伝子の胚性幹(ES)細胞を介した移入によって作製する。
【0185】
プラスミドの構築
lacZ(β-ガラクトシダーゼ)遺伝子の発現を導くヒトGFAPプロモーターの2.2kb断片を含むプラスミドpGfa 2lac1を用いる(Holland, E. C.およびVarmus, H. E.、Proc Natl Acad Sci USA. 95: 1218-1223、1998)。lacZ遺伝子をBamH1による消化処理によって除去し、pBK-CMVからのGDOX cDNAを含む挿入断片と置き換える。GFAP-GDOX断片を、同じ向きにある2つのloxP部位によって挟まれたネオマイシン選択マーカーを含むPloxP-neoベクター中に挿入する。LacZ遺伝子を核局在シグナルおよびIRES配列と融合させたIRESLacZカセットをベクターに導入してトランスジェニック構築物:GFAP-GDOX-IRESLacZポリA-loxP-neo-loxPを形成させる。
【0186】
細胞培養物のトランスフェクションおよびインビトロ分化
NIHのHuman Embryonic Stem Cell Registryに記載された開発済みの幹細胞株であるES01細胞(ES Cell International)を、以前に記載されたプロトコール(Nagy, A. 「Production and analysis of ES-cell aggregation chimeras」、p. 177-206. New York:Oxford University Press, Inc.、1999)に従って増殖させる。トランスフェクションのためには、約5×105個のES01細胞を20μgの線状化DNAと混合し、Gene Pulser(Bio-Rad)を250V、500μFで用いて電気穿孔法を行う。200μg/mlのG418(Life Technologies)により7〜8日間かけて選択した後に、コロニーを取り出し、96ウェルプレートで増殖させる。ES細胞のアストロサイトへのインビトロ分化は以前の記載の通りに行う(Ding, H.ら、Cancer Research. 61: 3826-3836、2001;Fraichard,A.ら、J Cell Sci. 108: 3181-3188、1995)。
【0187】
陽性ESクローンを、記載されたプロトコールに従ってマウス胚との凝集に用いる。キメラ胚のいくつかを切開し、固定してX-Galで染色する。生きた状態のキメラを、C57B1/6雌との交配により、生殖系列移行に関して検査する。
【0188】
遺伝子型判定
GFAP-GDOXトランスジェニックマウスにおける遺伝子型および導入遺伝子のコピー数を明らかにするために、ゲノムDNAを尾部生検試料から調製してPCRおよびサザンブロット解析に用いる。
【0189】
脳切片の作成、組織学検査および免疫組織化学検査
マウスを屠殺し、脳を4%ホルムアルデヒド/0.4%グルタルアルデヒド/1×PBS中に36時間おいて固定し、続いて20%スクロース/2%グリセロール/1×PBS中で脱水する。標準的なプロトコールに従い、凍結切片(40μm)をクリオスタットのミクロトームを用いて作成し、HEで染色する。グリア腫瘍形成の所見を観察するために、GFAPに関する免疫組織化学染色をモノクローナル抗GFAP抗体(Boehringer)を用いて行う。トランスジェニックマウスの他の臓器を剖検時に検査することもできる。
【0190】
これらのトランスジェニックマウスに腫瘍が認められれば、腫瘍細胞の増殖(抗Ki67および抗MIB-1免疫染色を用いる)、壊死(HE)、血管新生(抗CD31、抗VEGF免疫染色)および浸潤(Blur-2とのインサイチューハイブリダイゼーション)の評価のために、組織学的検査をおよび免疫組織化学解析を上記の標準的なプロトコールに従って行う。
【0191】
超微細構造の解析のためには、腫瘍を四酸化オスミウムで後固定し、脱水した上でエポキシに包埋する。30nm切片を銅グリッドにマウントし、クエン酸鉛で染色した上で電子顕微鏡により観察する。
【0192】
実施例14:相同タンパク質の同定
図14〜16に示されているように、GDOXと相同性のある2種類のヒトタンパク質が同定されている。GTRAP3-18(グルタミン酸輸送体EAAC1関連タンパク質)は、細胞骨格と関連のあるビタミンA応答性タンパク質;JWA;jmx;HSPC127;ADPリボシル化様因子6相互作用タンパク質5としても知られている。GTRAP3-18はツーハイブリッドスクリーニングによって同定されたもので、多くの組織および細胞株で発現される。GTRAP3-18は細胞膜および細胞質に局在し、EAAC1のカルボキシ末端の細胞内ドメインと特異的に相互作用する。EAAC1は主な神経性グルタミン酸輸送体であり、グルタミン酸を細胞外環境から細胞内に輸送する。細胞におけるGTRAP3-18の発現増大はEAAC1を介したグルタミン酸輸送を減少させる(Linら、2001、Nature 410: 84-88)。
【0193】
PRA1(プレニル化Rabアクセプター1)はツーハイブリッドスクリーニングにより、Rab3AおよびRab1と相互作用するものとして同定された。これは多くの組織および細胞株で発現され、プレニル化Rab GTPアーゼとは結合するが他の低分子量Ras様GTPアーゼとは結合しない。Rab GTPアーゼは細胞内小胞輸送と関連付けられている。PRA1はシナプス小胞タンパク質VAMP2(またはシナプトブレビンII)とも特異的に結合する。PRA1の欠失解析により、RabおよびVAMP2と相互作用する重要な残基がアミノ末端残基30〜54およびカルボキシ最末端ドメインという2つの領域に存在することが示されている。このため、N末端領域およびC末端領域はいずれも細胞質中に存在すると考えられる(Martincicら、1997、J. Biol. Chem. 272(43): 26991-8)。
【0194】
本出願の全体にわたり、さまざまな刊行物を参照している。これらの刊行物の開示内容はそれらの全体が、本発明が属する技術分野の水準をより詳細に記載する目的で、参照として本出願に組み入れられる。
【0195】
本発明の特定の態様を例示の目的で説明してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなくさまざまな変更を加えうることは以上より理解されると考えられる。したがって、本発明は、添付した特許請求の範囲以外のものによっては制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】図1Aは、GDOXのヌクレオチド配列(配列番号:1)および推定されるアミノ酸配列(配列番号:2)を示している。下線を施した領域は、GDOXの予想されるオープンリーディングフレーム(ORF)を、対応するアミノ酸配列とともに示している。開始コドン(ATG)はヌクレオチド17で始まり、終止コドン(TAG)は553で終了する。プロテインキナーゼC(PKC)リン酸化部位と予想される部位(19〜21および139〜141)は枠で囲まれており、N-ミリストイル化部位と考えられる部位(53〜58および118〜123)は点線の枠で囲まれている。図1Bは、GDOX遺伝子産物の推定される構造を示した概略図である。
【図2】図2Aは、正常脳組織および腫瘍形成性脳組織におけるGDOX mRNAの発現を対比して示したノーザンブロット解析の結果を示している。レーン1〜3は、てんかんに対する外科的切除の例(レーン1)、外傷に対する外科的減圧術の例(レーン2)および剖検を行った正常脳(レーン3)から採取した非腫瘍形成性の脳組織である。レーン4〜24は、膠芽腫(レーン4〜15)、未分化星状細胞腫(レーン16〜21)または乏突起神経膠腫(レーン22〜24)であることが病理学的に確認された、外科的に切除された脳腫瘍組織である。ブロットは増感スクリーンを用いずに24時間露光させた。図2Bは、種々のヒト末梢臓器におけるGDOX mRNAの発現を示したノーザンブロット解析を示している。組織標本は剖検時に正常脳(レーン1)、肺(レーン2)、腎臓(レーン3)、骨格筋(レーン4)、精巣(レーン5)、肝臓(レーン6)、膵臓(レーン7)、脾臓(レーン8)、心臓(レーン9)および副腎(レーン10)から採取した。このブロットは増感スクリーンを用いて2週間露光させた。ローディング対照として、同じブロットを18S cDNAを用いて再びプロービングし、スクリーンを用いずに1時間露光させた。
【図3】図3Aは、正常脳組織および腫瘍形成性脳組織におけるGDOXタンパク質の発現に関するウエスタンブロット解析の結果を示している。レーン9および10は、外傷に対する外科的減圧術の例(レーン9)および剖検を行った正常脳標本(レーン10)から採取した非腫瘍形成性脳組織である。レーン1〜8は、乏突起神経膠腫(レーン1)、低悪性度星状細胞腫(レーン2)、未分化星状細胞腫(レーン3)または膠芽腫(レーン5〜8)であることが病理学的に確認された、外科的に切除された脳腫瘍組織である。図3Bは、種々のヒト末梢臓器におけるGDOXタンパク質の発現に関するウエスタンブロット解析の結果を示している。組織標本は剖検時に正常脳(レーン1)、肺(レーン2)、心臓(レーン3)、肝臓(レーン4)、腎臓(レーン5)、精巣(レーン6)および脾臓(レーン7)から採取した。主として57-kdタンパク質が検出され、これよりも弱い19-kdバンドもみられた。これらのタンパク質はノーザンブロット解析によってGDOX mRNAに関して認められたものと同じ組織分布で局在していた。
【図4】U87ヒト膠芽腫細胞におけるGDOX(図4A)およびGFAP(図4B)の細胞内局在を示した顕微鏡写真である。U87細胞はカバーガラス上に播いた。発現されたGDOXは、抗GDOXペプチド抗体を用いた後にFITC結合二次IgGで染色する免疫蛍光によって検出した。GFAPの発現は、抗GFAP抗体を用いた後にTRTTC結合二次抗体で染色することによって検出した。一次抗体の特異性は二次抗体のみによる染色がみられないことによって確かめた。元の倍率は400倍。
【図5】透過化処理を行っていない(図5A)または透過化処理を行った(図5B)初代ヒト膠芽腫細胞の免疫蛍光共焦点顕微鏡検査によってアッセイした、GDOXの細胞内局在を示した顕微鏡写真である。元の倍率は400倍。
【図6】ヒトの腫瘍性脳組織(図6A)および非腫瘍性脳組織(図6B)の比較解析のためのGDOX抗体を用いた免疫組織化学染色を示した顕微鏡写真である。膠芽腫組織におけるGDOXの核小体への細胞内局在が注目される。元の倍率は200倍。
【図7】体細胞ハイブリッドパネル中のヒト染色体DNAに対するGDOX cDNAのサザンブロット法の結果を示している。DNAハイブリダイゼーションにより、ヒトゲノムDNAおよび体細胞ハイブリッドNA10324由来のDNAとの間に予想されるサイズのバンドが示され、これがヒトX染色体を含むこのマッピングパネル(Coriell Cell Repositories)中に示された唯一のハイブリッドであった。このため、GDOX遺伝子はヒトX染色体上に存在するように思われる。
【図8】センスおよびアンチセンスGDOX cDNAをトランスフェクトしたヒト膠芽腫細胞(U87細胞株)におけるGDOXの発現の有無を確認するためのウエスタンブロット解析の結果を示している。
【図9】アンチセンスGDOX cDNAをトランスフェクトしたU87細胞における形態変化を示した位相差顕微鏡写真である。野生型対照U87細胞は屈折性が高く、細胞質突起を有する大きな斑状に成長していた(図9A)。アンチセンスGDOXをトランスフェクトした細胞は十分に成長せず、より丸みを帯びた形態であった(図9B)。
【図10】インビトロでのグリア細胞の増殖に対するGDOX過剰発現の影響を示したグラフである。pBK-CMV-GDOXをトランスフェクトしたマウスCIMO細胞および対照物をトランスフェクトしたマウスCIMO細胞のインビトロ増殖速度を[3H]チミジン取り込みアッセイ法で測定した。1分間当たりのカウント数(cpm)での結果を、空ベクター(pBK-CMV)をトランスフェクトした細胞の非許容条件(37℃)下での増殖の比率に対して標準化した。空ベクター対照(37℃でのCIMO)のcpmを各実験で100%に設定し各実験の他のカウントはすべてこの値に対して標準化した。示した結果は、それぞれ3つずつのウェルを用いた3回の独立した実験を併せたものである。バーは平均値+SDを表している。
【図11】インビトロでのヒト神経膠腫細胞株U87におけるGDOXの増殖調節作用(growth modulation effect)を示した棒グラフである。親U87細胞、またはU87細胞に対して空ベクター(U87-V)、ランダムアンチセンスを含むベクター(U87-asGFAP)、センスGDOX(U87-GDOX)もしくはアンチセンスGDOX(U87-asGDOX)をトランスフェクトしたものを、[3H]チミジン取り込みによてアッセイした。結果は対照野生型U87細胞の増殖の比率(これを100%に設定した)に対して標準化した。
【図12】ヒト腫瘍細胞株における特異的な抗GDOX抗体の増殖抑制作用を示した棒グラフである。図12A、ES-UCLA(原発性膠芽腫);図12B、SKBR3(乳房腺癌);図12C、A549(肺癌);および図12D、Du145(前立腺癌)。結果は、熱失活させた抗GDOX抗体または対照抗体を等量用いた対照細胞による対照増殖の比率に対して標準化した。
【図13】生存度とGDOX過剰発現との相関に関するノーザンブロット解析の結果を示している。ヒト膠芽腫患者から得た試料をGDOX cDNAを用いてプロービングし、GDOX mRNA発現の相対量を、2年を越えて生存している患者(左図)および生存期間が1年未満である患者(右図)から得た試料間で比較した。生存期間の短い患者ではGDOXタンパク質のかなりの過剰発現が観察された。
【図14】GDOX(配列番号:2)と、ヒト相同体GTRAP3-18(配列番号:5)およびPRA1(配列番号:6)とのアミノ酸配列アライメントである。GDOXはGTRAP3-18とは66%の類似性を示し、PRA1とは42%の類似性を示す。
【図15】GDOXのエクソン構造をGRAP3-18およびPRA1のものと比較した図である。
【図16】それぞれN末端およびC末端を内部に有する、GDOX(配列番号:2)、GTRAP3-18(配列番号:5)およびPRA1(配列番号:6)の膜貫通ドメインのアミノ酸配列アライメントである。
【図17】http://source.stanford.edu.にあるSOURCEから入手した、GDOX/JM4の発現プロファイルを示したチャートである。数字は組織型(59種のうち上位10種)に関して標準化された発現分布を示している。
【図1A】
【図1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発現制御配列と機能的に結合した、配列番号:2に示されたアミノ酸配列を有するGDOXポリペプチドをコードする核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項2】
核酸分子が、配列番号:1に示された核酸配列を含む、請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
請求項1記載の発現ベクターによる形質転換を受けた宿主細胞。
【請求項4】
配列番号:3および/または配列番号:4に示されたアミノ酸配列を含む免疫原性GDOXポリペプチド。
【請求項5】
配列番号:2のアミノ酸1〜178を含む、請求項4記載の免疫原性GDOXポリペプチド。
【請求項6】
可溶性である、請求項4記載の免疫原性GDOXポリペプチド。
【請求項7】
請求項4記載の免疫原性GDOXポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項8】
GDOXポリペプチドと特異的に結合する抗体。
【請求項9】
配列番号:3または配列番号:4に示されたアミノ酸配列に対する、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
配列番号:2のアミノ酸62〜65および/または129〜178に対する、請求項8記載の抗体。
【請求項11】
検出可能なマーカーによって標識された、請求項8記載の抗体。
【請求項12】
請求項8記載の抗体および容器を含むキット。
【請求項13】
請求項8記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項14】
GDOXタンパク質をコードする核酸分子と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
検出可能なマーカーによって標識された、請求項14記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
請求項14記載のオリゴヌクレオチドおよび容器を含むキット。
【請求項17】
請求項14記載のオリゴヌクレオチドおよび薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項18】
癌細胞の増殖を抑制するための方法であって、癌細胞をGDOX分子の生物活性を妨げる分子と接触させることを含み、生物活性がGDOXとGDOX抗体との特異的結合またはGDOXポリヌクレオチドの発現を含むような方法。
【請求項19】
分子が、GDOXタンパク質に対する抗体である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
分子が、GDOX核酸分子と特異的にハイブリダイズするアンチセンス分子である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
癌細胞が脳、肺、前立腺、結腸または乳房に由来する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
癌細胞が膠芽腫、星状細胞腫または乏突起神経膠腫の細胞である、請求項18記載の方法。
【請求項23】
癌細胞が膠芽腫細胞を含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
細胞がヒト細胞である、請求項18記載の方法。
【請求項25】
対象における癌を治療するための方法であって、GDOX分子の生物活性を妨げる分子を対象に投与することを含み、生物活性がGDOXとGDOX抗体との特異的結合またはGDOXポリヌクレオチドの発現を含むような方法。
【請求項26】
癌を検出するための方法であって、組織標本を、GDOX分子と特異的に結合する検出可能な分子と接触させること、および検出可能な分子の結合を検出することを含み、検出可能な分子の結合によって癌が示されるような方法。
【請求項27】
検出可能な分子が、GDOX核酸分子と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
検出可能な分子が、GDOXタンパク質と特異的に結合する抗体である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
タモキシフェンに対する感受性のある癌を同定するための方法であって、癌標本をGDOX分子と特異的に結合する検出可能な分子と接触させること、および検出可能な分子の結合を検出することを含み、検出可能な分子の結合によってタモキシフェンに対する感受性のある癌が示されるような方法。
【請求項30】
検出可能な分子が、GDOX核酸分子と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
検出可能な分子が、GDOXタンパク質と特異的に結合する抗体である、請求項29記載の方法。
【請求項1】
発現制御配列と機能的に結合した、配列番号:2に示されたアミノ酸配列を有するGDOXポリペプチドをコードする核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項2】
核酸分子が、配列番号:1に示された核酸配列を含む、請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
請求項1記載の発現ベクターによる形質転換を受けた宿主細胞。
【請求項4】
配列番号:3および/または配列番号:4に示されたアミノ酸配列を含む免疫原性GDOXポリペプチド。
【請求項5】
配列番号:2のアミノ酸1〜178を含む、請求項4記載の免疫原性GDOXポリペプチド。
【請求項6】
可溶性である、請求項4記載の免疫原性GDOXポリペプチド。
【請求項7】
請求項4記載の免疫原性GDOXポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項8】
GDOXポリペプチドと特異的に結合する抗体。
【請求項9】
配列番号:3または配列番号:4に示されたアミノ酸配列に対する、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
配列番号:2のアミノ酸62〜65および/または129〜178に対する、請求項8記載の抗体。
【請求項11】
検出可能なマーカーによって標識された、請求項8記載の抗体。
【請求項12】
請求項8記載の抗体および容器を含むキット。
【請求項13】
請求項8記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項14】
GDOXタンパク質をコードする核酸分子と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
検出可能なマーカーによって標識された、請求項14記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
請求項14記載のオリゴヌクレオチドおよび容器を含むキット。
【請求項17】
請求項14記載のオリゴヌクレオチドおよび薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項18】
癌細胞の増殖を抑制するための方法であって、癌細胞をGDOX分子の生物活性を妨げる分子と接触させることを含み、生物活性がGDOXとGDOX抗体との特異的結合またはGDOXポリヌクレオチドの発現を含むような方法。
【請求項19】
分子が、GDOXタンパク質に対する抗体である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
分子が、GDOX核酸分子と特異的にハイブリダイズするアンチセンス分子である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
癌細胞が脳、肺、前立腺、結腸または乳房に由来する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
癌細胞が膠芽腫、星状細胞腫または乏突起神経膠腫の細胞である、請求項18記載の方法。
【請求項23】
癌細胞が膠芽腫細胞を含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
細胞がヒト細胞である、請求項18記載の方法。
【請求項25】
対象における癌を治療するための方法であって、GDOX分子の生物活性を妨げる分子を対象に投与することを含み、生物活性がGDOXとGDOX抗体との特異的結合またはGDOXポリヌクレオチドの発現を含むような方法。
【請求項26】
癌を検出するための方法であって、組織標本を、GDOX分子と特異的に結合する検出可能な分子と接触させること、および検出可能な分子の結合を検出することを含み、検出可能な分子の結合によって癌が示されるような方法。
【請求項27】
検出可能な分子が、GDOX核酸分子と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
検出可能な分子が、GDOXタンパク質と特異的に結合する抗体である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
タモキシフェンに対する感受性のある癌を同定するための方法であって、癌標本をGDOX分子と特異的に結合する検出可能な分子と接触させること、および検出可能な分子の結合を検出することを含み、検出可能な分子の結合によってタモキシフェンに対する感受性のある癌が示されるような方法。
【請求項30】
検出可能な分子が、GDOX核酸分子と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
検出可能な分子が、GDOXタンパク質と特異的に結合する抗体である、請求項29記載の方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2006−506050(P2006−506050A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519863(P2004−519863)
【出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/021013
【国際公開番号】WO2004/005530
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
Macintosh
【出願人】(505006585)ザ レジェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ カリフォルニア (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/021013
【国際公開番号】WO2004/005530
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
Macintosh
【出願人】(505006585)ザ レジェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ カリフォルニア (16)
【Fターム(参考)】
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