説明

多環式縮合環化合物の製造法

本発明は、式(I):


に相当する多環式縮合環化合物の製造法を提供する。多環式縮合環化合物は、架橋珪素に基づく保護基により、多環式縮合環化合物を保護し、適当な側鎖を結合することにより製造される。新規な多環式縮合環化合物および中間体化合物も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、多環式縮合環化合物の製造法に関する。より具体的には、本発明は、タキサン四環核を有する多環式縮合環ポリオールのC(7)およびC(10)ヒドロキシ基を同時に保護することを含む多環式縮合環化合物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
セイヨウイチイ(taxus baccata L.)の針葉から抽出される10-DAB(I)は、両方とも強力な抗癌剤であるタキソール(パクリタキセルとしても既知)およびドセタキセル(Taxotere(登録商標))の製造における重要な出発物質である。
【化1】

【0003】
細胞毒的に活性なタキサンへの10-DABの変換は、C(13)エステル側鎖を形成するための、C(13)ヒドロキシ基の選択的誘導体化を必要とする。10-DABはポリオールであり、かつこれらのヒドロキシ基はそれぞれ、所定の条件下に等しい反応性でないが故に、10-DABからのタキソールまたはドセタキセルの製造には、C(13)側鎖を結合させる前にC(7)およびC(10)ヒドロキシ基の選択的保護および/または誘導体化が典型的には必要である。
【0004】
10-DABからタキソール、ドセタキセルおよび他のタキサンを製造する初期の方法は、ピリジン中での無水酢酸に対する10-DABの4つのヒドロキシ基の相対的反応性がC(7)-OH>C(10)-OH>C(13)-OH>C(1)-OHであるというSenilhらの観察(C.R. Acad. Sci. Paris, IT, 1981, 293, 501)に基づいていた。Denisら(J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 5917)は、ピリジン中で塩化トリエチルシリルを使用して10-DABのC(7)ヒドロキシ基を選択的にシリル化して、7-トリエチルシリル-10-デアセチルバッカチン(III)を85%の収率で得ることを報告している。
【0005】
最近、Holtonらは、米国特許第6191287号において、塩基の存在下よりルイス酸の存在下において、C(7)とC(10)との酢酸に対する相対的反応性が異なることを開示している。Holtonらは、10-DABおよび他のタキサンのC(7)またはC(10)ヒドロキシ基の選択的誘導体化の方法を記載し、該方法において、C(7)ヒドロキシ基より先にC(10)ヒドロキシ基を保護または誘導体化しうる。具体的には、Holtonらは、C(7)ヒドロキシ基をアシル化、シリル化またはケタール化する前に、C(10)ヒドロキシ基をアシル化またはシリル化する方法を記載している。
【0006】
米国特許第5763477号において、Duvvuriらは、14-β-ヒドロキシ-10-DAB(II)を出発物質として使用して、種々のタキサンを調製する方法を開示している:
【化2】

細胞毒的活性タキサンの調製に必要な工程であるC(13)ヒドロキシ基の誘導体化の前に、Duvvuriらは、適切なアルデヒドまたはケトンのジメチルアセタール、またはエノール-エーテルを使用して、C(1)、C(7)、C(10)およびC(14)ヒドロキシ基を保護して、C(14)およびC(1)において、かつC(7)およびC(10)において、縮合環を形成している:
【化3】

例えば、Duvvuriらの米国特許第5763477号、第7欄、第23〜52行を参照。C(1)、C(7)、C(10)およびC(14)ヒドロキシ基を保護して、化合物(III)を生成した後に、Duvvuriらは、C(13)ヒドロキシ基を誘導体化して、側鎖を結合させ、次に、C(1)およびC(14)ヒドロキシ基、および任意にC(7)およびC(10)ヒドロキシ基を脱保護している。しかし、不都合なことに、Duvvuriらは、保護および脱保護工程に関して転化率が比較的低いことを報告している(例えば、Duvvuriらの実施例1および11〜14参照)
【0007】
米国特許第6825365号において、Chanteloupらは、立体障害イソプロピル基で置換されたジシロキサンを使用して、バッカチンIIIのC(7)およびC(10)ヒドロキシ基を保護して、C(7)およびC(10)において縮合環を形成することを開示している:
【化4】

例えば、Chanteloupらの米国特許第6825365号、第9欄、第1行〜第10欄、第44行および実施例22参照。
【0008】
Chanteloupらは、C(7)およびC(10)ヒドロキシ基を保護して化合物(IV)を生成した後に、保護化合物をイソセリンまたはオキサゾリン側鎖先駆物質で処理して、C(13)ヒドロキシ基を誘導体化している。オキサゾリン側鎖先駆物質を使用した場合、オキサゾリン環を、保護バッカチンIIIのC(13)位置における側鎖結合後に、加水分解によって任意に開環してもよい。例えば、Chanteloupらの米国特許第6825365号、第10〜14欄参照。不都合なことに、Chanteloupらは、保護工程の転化率が比較的低いことを報告しており、どのような非立体障害二官能価保護基も開示しておらず、かつ、二官能価保護基の除去法を報告していない(例えば、Chanteloupら、実施例14〜22および29参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の種々の態様において、多環式縮合環ポリオールの少なくとも2個のヒドロキシ基を選択的に保護することによって多環式縮合環化合物を製造する方法であって、この保護、およびその後の脱保護段階を比較的高い収率で行う方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、簡潔に言えば、本発明は、式(10)に対応する多環式縮合環化合物の製造法に関し:
【化5】

該方法は、多環式縮合環ポリオールを、架橋珪素ベースの保護基、および側鎖先駆物質で処理することを含み、この方法において
多環式縮合環ポリオールは、式(3)に対応し:
【化6】

架橋珪素ベースの保護基は、式(4)に対応し:
【化7】

側鎖先駆物質は、式(6)に対応し:
【化8】

X2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、-OX6、-SX7、または-NX8X9であり;
X3は、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、またはヘテロシクロであり;
X5は、-COX10、-COOX10、または-CONHX10であり;
X6は、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、水素、またはヒドロキシ保護基であり;
X7は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはスルフヒドリル保護基であり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
X9は、アミノ保護基であり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
G1、G2、G3およびG4は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アルコキシ、またはヘテロシクロであり;
L1およびL2は、独立して、アミン、ハライドまたはスルホネート脱離基であり;
Zは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロシクロ、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-、または-O-であり;
Z10およびZ11は、ヒドロカルビルであり;
nは、1または2であり;
破線は、多環式縮合環ポリオールの骨格構造を表す。
【0011】
本発明は、式(12)に対応する多環式縮合環化合物の製造法にも関し:
【化9】

この方法は、多環式縮合環ポリオールを、架橋珪素ベースの保護基で処理することを含み、この方法において、
多環式縮合環ポリオールは、式(3)に対応し:
【化10】

かつ、架橋珪素ベースの保護基は、式(4)に対応し:
【化11】

式中、G1、G2、G3、G4、L1、L2およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり、破線は、多環式縮合環ポリオールの骨格構造を表し、但し、Zが-O-のとき、G1、G2、G3およびG4は分岐鎖アルキルでないものとする。
【0012】
本発明は、式(20R)に対応する多環式縮合環化合物の製造法にも関し:
【化12】

この方法は、式(9R)に対応する多環式縮合環化合物:
【化13】

を、アルコールおよび塩基で処理することを含み、この方法において、
アルコールは、式R10AOHで示され;
R10Aは、ヒドロカルビルであり;
R13は、水素であるか、または下記の構造を有し:
【化14】

G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり、X2、X3、X4およびX5は、式(6)に関して定義したとおりであり、破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表す。
【0013】
本発明は、式(9R13)に対応する多環式縮合環化合物にも関する:
【化15】

[式中、G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり、R13は、水素、ヒドロキシ保護基、金属であるか、アンモニウムを含むか、または下記の構造を有し:
【化16】

破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表し、但し、Zが-O-のときG1、G2、G3およびG4は分岐鎖アルキルでないものとする]。
【0014】
本発明は、式(20R10)に対応する多環式縮合環化合物にも関する:
【化17】

[式中、G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;R10は、水素またはアシルであり;R10Aはヒドロカルビルであり;R13は、式(9R)および(20R)に関して定義したとおりであり;破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表す]。
【0015】
他の目的および特徴は、一部は明らかであり、一部は以下に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、特に、多環式縮合環ポリオールの少なくとも2個のヒドロキシ基を、架橋珪素ベースの保護基で、同時かつ選択的に保護することを可能にする。本発明は、式(1)に一般に対応する多環式縮合環ポリオールの保護において特定の利点を与える:
【化18】

[式中、Mは、水素、金属またはアンモニウムであり;破線は、多環式縮合環ポリオールの骨格構造を示す]。
言い換えれば、多環式縮合環ポリオールは、縮合環系における置換パターンを考慮しなければ、式(2)の縮合四環式タキサン構造のA、B、CおよびD環を有し:
【化19】

但し、このポリオールは、C(7)およびC(10)位置にヒドロキシ基、C(9)にケト(=O)、C(13)にMO-(ここで、Mは、水素、金属またはアンモニウムである)を有する。従って、例えば、C(1)、C(2)、C(4)、C(6)およびC(14)位置において、ポリオールは、天然化合物に見出されるように置換されていてもよい(即ち、例えば、C(1)はヒドロキシ置換され、C(2)はベンゾイルオキシ置換され、C(4)はアセトキシ置換され、C(14)は任意にヒドロキシ置換されていてよい)。または、これらの位置のいずれかを誘導体化して、Holtonらの米国特許第5399726号(C(2)および/またはC(4)におけるヒドロキシまたは選択的エステル)またはDuvvuriらの米国特許第5763477号(C(14)ヒドロキシ、C(14)/C(1)アセタール、ケタールまたはカーボネート)に記載されているような、非天然置換基または非天然置換基組合せを与えてもよい。
【0017】
一つの実施態様において、多環式縮合環ポリオールは式(3)に対応する:
【化20】

[式中、破線は、多環式縮合環ポリオールの骨格構造を表す]。
【0018】
別の実施態様において、多環式縮合環ポリオールは式(13)に対応する:
【化21】

[式中、R1、R2およびR4は、独立して、水素またはアシルであり;R14は、水素、ヒドロキシまたはアシルである]。
R1、R2、R4およびR14のそれぞれのアシル基の例には、エステル、カーボネートおよびカルバメートが挙げられる。さらに、近位の置換基と組み合わせて、カーボネート、アセタールおよびケタールのような環構造を形成してもよい。例えば、Holtonらの米国特許第5399726号に記載されているように、-OR1および-OR2を組み合わせて、-OC(O)O-を形成してもよく、それにおいて、2個の酸素原子がそれぞれC(1)およびC(2)炭素原子に結合して、C(1)/C(2)カーボネートを形成する。同様に、Duvvuriらの米国特許第5763477号に記載されているように、R14および-OR1を組み合わせて、(i)-OC(Ra)(Rb)O-を形成してもよく、それにおいて、2個の酸素原子がそれぞれC(1)およびC(14)炭素原子に結合して、C(1)/C(14)ケタールまたはアセタールを形成し、RaおよびRbは、水素、低級アルキル、フェニル、置換フェニル、低級アルコキシ、アミノ、置換アミノ、ケト(=O)またはチオカルボニル(=S)である。他の例において、Duvvuriらの米国特許第5763477号に記載されているように、R14および-OR1を組み合わせて、-OC(O)O-を形成してもよく、それにおいて、2個の酸素原子がそれぞれC(1)およびC(14)炭素原子に結合して、C(1)/C(14)カーボネートを形成する。多環式縮合環ポリオールが式(13)に対応し、R1が水素であり、R2がベンゾイルであり、R4がアセチルであり、R14が水素である場合、縮合環ポリオールは10-DABである。多環式縮合環ポリオールが式(13)に対応し、R1が水素であり、R2がベンゾイルであり、R4がアセチルであり、R14がヒドロキシである場合、縮合環ポリオールは14-β-ヒドロキシ-10-DABである。
【0019】
1つの好ましい実施態様において、多環式縮合環ポリオールは10-DABであり、式(23)に対応する:
【化22】

【0020】
本発明の方法によれば、多環式縮合環ポリオールを架橋珪素ベースの保護基で処理することによって、多環式縮合環ポリオールの少なくとも2個のヒドロキシ基を選択的かつ同時に保護し得る(他のヒドロキシ基に対して)ことが見出された。例えば、ポリオールが式(13)に対応する場合、架橋珪素ベースの保護基を使用して、C(7)およびC(10)ヒドロキシ置換基を同時に置換し得る。これは、以下に詳しく記載するように、例えば好適な側鎖の結合によって、保護多環式縮合環ポリオールを、多環式縮合環化合物における他の位置の、次の保護または誘導体化のための合成中間体として使用することを可能にする。
【0021】
ポリオールが式(13)に対応する場合、かつ、置換基の残り、即ち、R1、R2、R4およびR14の組成によって、架橋珪素ベースの保護基は、他の位置も誘導体化し得る。例えば、架橋珪素ベースの保護基での14-β-ヒドロキシ-10-DABの処理は、C(1)および/またはC(14)ヒドロキシ基の保護(誘導体化)も生じ得る。
【0022】
架橋珪素ベースの保護基:
一般的に言えば、架橋珪素ベースの保護基は、2つの末端のそれぞれに近位の2個のシリル原子を含む主鎖を有する。シリル原子に結合し得る種々の置換基は、一般に、架橋珪素ベースの保護基が保護基として有効に機能する能力を妨げない任意の置換基に相当する。特に、シリル原子に結合した種々の置換基は、架橋珪素ベースの保護基が多環式縮合環ポリオールを有効に同時に保護する能力を妨げない置換基に相当する。
【0023】
主鎖の各末端におけるシリル原子に結合した置換基の少なくとも1つは、脱離基である。一般的に言えば、脱離基は、架橋珪素ベースの保護基での多環式縮合環ポリオールの処理の間に脱離し、それによって、架橋珪素ベースの保護基主鎖に2つの官能的に反応性の部位を生じる。これらの官能的に反応性の部位は、架橋珪素ベースの保護基を、多環式縮合環ポリオール上の2個のヒドロキシ基に結合させ、それらを保護することを可能にする。一般に、脱離基は、安定種として容易に転位でき、それと共に結合電子を取り、かつ、架橋珪素ベースの保護基主鎖の各末端のシリル原子に比較的弱く結合している任意の原子または原子団に相当する。
【0024】
好ましい実施形態において、一般的に言えば、架橋珪素に基づく保護基は、式(4)に相当する:
【化23】

[式中、
G1、G2、G3およびG4は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アルコキシまたはヘテロシクロであり;
L1およびL2は、独立して、アミン、ハライドまたはスルホネート脱離基であり;
Zは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロシクロ、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-または-O-であり;
各Z10およびZ11は、独立して、ヒドロカルビルであり;
nは、1または2である]。
【0025】
架橋珪素に基づく保護基が式(4)に相当する一実施形態において、Zはヒドロカルビルである。そのような一実施形態において、Zは-(CH2)y-であり、ここで、yは1〜約8の正の整数である。より好ましくは、この実施形態において、yは1〜約4である。
【0026】
架橋珪素に基づく保護基が式(4)に相当する他の実施形態において、Zは置換ヒドロカルビルである。1つの特定の実施形態において、Zは-[(Z12)-(Z13)]k-[(Z14)]m-であり、ここで、Z12、Z13およびZ14は、それぞれ独立して、-(CH2)y-、-O-、-S-または-N-であり、但し、Z12およびZ13の少なくとも1つは-O-、-S-または-N-であるものとし、kは1〜約4の正の整数であり、mは0または1であり、yは1〜約4の正の整数である。
【0027】
架橋珪素に基づく保護基が式(4)に相当する他の実施形態において、Zは-O-である。架橋珪素に基づく保護基が式(4)に相当するさらに他の実施形態において、Zは-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-であり、ここで、nは1または2である。即ち、nが1のとき、Zは-O-Si(Z10)(Z11)-O-であり;nが2のとき、Zは-O-Si(Z10)(Z11)-O-Si(Z10)(Z11)-O-である。nが1または2のとき、各Z10および各Z11は独立してヒドロカルビルである(即ち、2個のZ10置換基は同じヒドロカルビル基である必要はなく、2個のZ11置換基は同じヒドロカルビル基である必要はない)。いくつかの実施形態において、Z10およびZ11はアルキルである。他の実施形態において、Z10およびZ11は約1〜約4個の炭素原子を有する低級アルキルである。さらに他の実施形態において、Z10およびZ11はメチルである。
【0028】
前記の種々の実施形態のいずれか1つにおいて(即ち、Zが、-(CH2)y-、-[(Z12)-(Z13)k-[(Z14)]m-、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-、または-O-である場合)、G1、G2、G3およびG4は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アルコキシまたはヘテロシクロである。いくつかの実施形態において、G1、G2、G3およびG4は、独立して、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはシクロアルキルである。他の実施形態において、G1、G2、G3およびG4は、独立して、約1〜約4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキルまたはアルケニル、約1〜約6個の炭素原子を有するシクロアルキル、またはフェニルである。さらに他の実施形態において、G1、G2、G3およびG4は、独立して、メチル、エチル、エテニル、イソプロピル、フェニルまたはシクロペンチルである。いくつかの実施形態において、G1、G2、G3およびG4は、Zが-O-であるときに分岐鎖アルキルではない。G1、G2、G3およびG4のいずれか1つまたはそれ以上がアルコキシである場合、それは好ましくはC1〜C6アルコキシである。
【0029】
前記の実施形態のいずれか1つまたそれ以上において、L1およびL2は、それぞれ独立して、アミン、ハライドまたはスルホネート脱離基である。一実施形態において、L1およびL2は、ハライド脱離基である。例えば、L1およびL2は、独立して、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨードであってよい。または、L1およびL2はアミン脱離基であってよい。例えば、L1およびL2は、独立して、環状アミンまたはジアルキルアミン、例えば、イミダゾール、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミンなどであってよい。他の実際形態において、L1およびL2はスルホネート脱離基であってよい。例えば、L1およびL2は、独立して、トシレート、トリフレート、メシレートなどであってよい。
【0030】
従って、1つの特定の実施形態において、L1およびL2はハライド脱離基であり;G1、G2、G3およびG4は、独立して、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはシクロアルキルであり;Zは、-(CH2)y-であり;yは1〜約8の正の整数である。
【0031】
他の特定の実施形態において、L1およびL2はクロロ脱離基であり;G1、G2、G3およびG4は、独立して、約1〜約4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキルまたはアルケニル、約1〜約6個の炭素原子を有するシクロアルキル、またはフェニルであり;Zは、-(CH2)y-であり;yは1〜約4の正の整数である。
【0032】
第三の特定の実施形態において、L1およびL2はハライド脱離基であり;G1、G2、G3およびG4は、独立して、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはシクロアルキルであり;Zは、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-または-O-であり;nは1または2であり;Z10およびZ11はアルキルである。
【0033】
第四の特定の実施形態において、L1およびL2はクロロ脱離基であり;G1、G2、G3およびG4は、独立して、約1〜約4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキルまたはアルケニル、約1〜約6個の炭素原子を有するシクロアルキル、またはフェニルであり;Zは、-O-である。
【0034】
4つの前記特定の実施形態のいずれか1つにおいて、L1およびL2は、ハライド(または、特にクロロ)である代わりに、任意の他の好適な官能性反応性脱離基であってよい。例えば、L1はクロロであってよく、L2は異なる脱離基、例えば、異なるハライド、アミンまたはスルホネート脱離基であってよい。または、L1およびL2のそれぞれが、独立して、アミン、ハライドまたはスルホネート脱離基の任意の他の組合せであってよい。
【0035】
いくつかの特に好ましい架橋珪素に基づく保護基が表1に記載されている(本発明の方法に使用される各々および他の好適な架橋珪素に基づく保護基は、Gelest, Inc., Morrisville, PAから商業的に入手可能である)。
【表1】

【0036】
表1に示されている架橋珪素に基づく保護基のそれぞれは、クロロの代わりに、架橋珪素に基づく保護基の各端におけるシリル原子に結合した他の好適な官能性反応性脱離基を有しうることが、当業者には理解される。例えば、一方の端における脱離基はクロロであってよく、他方の端における脱離基は異なる脱離基、例えば異なるハライド、アミンまたはスルホネート脱離基であってよい。または、2個の脱離基のそれぞれが、独立して、アミン、ハライドまたはスルホネート脱離基の任意の他の組合せであってよい。
【0037】
多環式縮合環化合物への、適切に置換された側鎖の結合、および/または以下に詳しく記載する他の誘導体化の際に、側鎖のエステル結合(存在する場合)、および/または多環式縮合環および/または側鎖(存在する場合)上の他の種々の置換基を妨げないように、緩い条件下の加水分解によって種々の保護基を脱保護し得る。
【0038】
保護反応混合物および工程条件:
一般に、反応混合物は、多環式縮合環ポリオール、架橋珪素ベースの保護基化合物、溶媒および塩基を含む。好適な溶媒は、例えば、極性非プロトン溶媒またはエーテル溶媒である。好適な極性非プロトン溶媒には、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアニリン、ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリジノン、アセトニトリル、2,2,2-トリフルオロエタノール、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、ヘキサメチルホスホラミドなど、およびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましい極性非プロトン溶媒は、ジメチルホルムアミドである。好適なエーテル溶媒には、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチル-tert-ブチルエーテル、テトラヒドロフランなど、およびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいエーテル溶媒はテトラヒドロフランである。
【0039】
本発明の方法を実施する温度は、狭い範囲に限定されない。しかし、一般に、架橋保護反応を充分に早い速度で進めるために、室温またはそれより高い温度で行うのが好ましい。
【0040】
一般に、反応混合物に含有される塩基は、有機塩基(例えば、アミン塩基)または無機塩基であってよい。好ましくは、塩基はアミン塩基である。好適なアミン塩基は、例えば下記に挙げられるアミン塩基である:トリエチルアミン;トリブチルアミン;トリエチレンジアミン;N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン;ジイソプロピルアミン;N,N-ジイソプロピルメチルアミン;N,N-ジイソプロピルエチルアミン;N,N-ジイソプロピル-2-エチルブチルアミン;N,N-ジイソプロピル-3-ペンチルアミン;N,N,N’,N’-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン;トリス(トリメチルシリル)アミン;N,N-ジエチルアニリン;N,N-ジメチルアニリン;1,1,3,3-テトラメチルグアニジン;2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン;イミダゾールおよびイミダゾール誘導体;2,6-ルチジン;1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン(PMP);2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TMP);ピリジン;N,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP);2,4,6-トリメチルピリジン;2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルピリジン;2,4,6-トリ-tert-ブチルピリジン;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN);1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(TED);7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ(4.4.0)デカ-5-エン(MTBD);3,3,6,9,9-ペンタメチル-2,10-ジアザビシクロ-(4.4.0)デカ-1-エン(PMDBD);1,5,7-トリアザビシクロ(4.4.0)デカ-5-エン;キヌクリジンなど、およびそれらの混合物。特に好ましいアミン塩基は、N,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)である。
【0041】
しかしながら、いくつかの適用において、無機塩基が望ましい場合もある。そのような塩基は、例えば、アンモニウムまたはアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩など、およびそれらの混合物である。好適な無機塩基には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0042】
前述のように、本明細書に記載する方法を、天然または合成源から得られる広範囲の多環式縮合環ポリオールと共に使用して、広範囲の保護多環式縮合環化合物および中間体化合物を生成することができ、次に、この化合物をさらに誘導体化し得る。例えば、本発明の方法を有効に使用して、C(13)側鎖をタキサンに導入するC(13)側鎖先駆物質とタキサンとのカップリング反応の前に、タキサンのC(7)およびC(10)ヒドロキシ官能基を保護し得る。
【0043】
脱保護:
保護多環式縮合環化合物の脱保護は、保護多環式縮合環化合物を加水分解剤で処理することを一般に含む。好ましくは、加水分解剤は、側鎖のエステル結合(存在する場合)、および/または多環式縮合環化合物および/または側鎖上の他の種々の置換基を妨げない任意の緩い加水分解剤である。好適な加水分解剤は、有機および無機酸、塩基およびアルコールを包含する。
【0044】
有機酸の例には、下記から選択される有機酸が挙げられる:脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸種の有機酸、例えば、酢酸、アジピン酸、アルゲン(algenic)酸、アミノ安息香酸、アントラニル酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、硼酸、酪酸、クエン酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、エンボン(embonic)酸(パモ酸)、エタンスルホン酸、蟻酸、フマル酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリコール酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ヒドロキシプロピオン酸、乳酸、レブリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メシル(mesylic)酸、メタンスルホン酸、メチル安息香酸、ニトロ安息香酸、ナフタレンスルホン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、ホスホン酸、フィチン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ソルビン酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など、およびそれらの混合物。
【0045】
無機酸の例には、ハロゲン化水素(例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、弗化水素酸、沃化水素酸およびテトラフルオロ硼酸)、炭酸、硝酸、過塩素酸、燐酸、硫酸など、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
一つの実施態様において、保護多環式縮合環化合物を、極性非プロトン溶媒の存在下に加水分解剤で処理し得る。好適な極性非プロトン溶媒には、例えば、下記の溶媒が挙げられる:ジメチルホルムアミド;ジメチルアニリン;ジメチル-2-イミダゾリジノン;N-メチルピロリジノン;アセトニトリル;2,2,2-トリフルオロエタノール;ジメチルスルホキシド;ジオキサン;アセトン;酢酸エチル;ヘキサメチルホスホラミドなど、およびそれらの混合物。特に好ましい極性非プロトン溶媒は、トリメチルホルムアミドおよびアセトニトリルを包含する。
【0047】
別の実施態様において、保護多環式縮合環化合物を、エーテル溶媒の存在下に加水分解剤で処理し得る。好適なエーテル溶媒には、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチル-tert-ブチルエーテル、テトラヒドロフランなど、およびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいエーテル溶媒はテトラヒドロフランである。
【0048】
架橋珪素ベースの保護基は、架橋珪素ベースの保護基が保護している多環式縮合環化合物上の2個のヒドロキシ基から、完全に除去(即ち、脱保護)し得る。または、保護多環式縮合環化合物を、架橋珪素ベースの保護基が保護している2個のヒドロキシ基の1個だけを選択的に脱保護してもよい。例えば、7,10-保護多環式縮合環化合物を、C(10)においてのみ選択的に脱保護し、C(7)は珪素ベースの保護基で保護したままにしてもよく、その逆でもよい。次に、非保護ヒドロキシ基は、以下に詳しく記載する付加的誘導体化を受け得る。
【0049】
架橋珪素ベースの保護基を選択的に脱保護するために、保護多環式縮合環化合物を、塩基の存在下にアルコールまたはアルコール混合物で処理するのが好ましい。好ましくは、アルコールは、R10AはヒドロカルビルであるR10AOHに対応する。より好ましくは、R10Aはアルキルである。さらに好ましくは、アルコールはメタノールである。好適な塩基には、トリエチルアミン、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムを包含する。特に好ましい塩基は、トリエチルアミンおよび炭酸水素ナトリウムが挙げられる。選択的脱保護用の溶媒は、アルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、またはそれらの組合せであってよく、好ましくは、溶媒はメタノールである。
【0050】
保護多環式縮合環化合物の脱保護工程を行う温度は、狭い範囲に限定されない。しかし、一般に、脱保護反応を充分に速い速度で進めるために、室温またはそれより高い温度で行うのが好ましい。
【0051】
さらなる誘導体化:
保護多環式縮合環化合物へのC(13)側鎖先駆物質の結合は、種々の既知の方法を用いて行い得る。例えば、適切に置換されたβ-ラクタム、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物、またはイソセリン誘導体のような側鎖先駆物質を、C(13)ヒドロキシ、金属酸化物または酸化アンモニウム置換基を有する保護多環式縮合環化合物と反応させて、例えば、β-アミドエステル置換基をC(13)に有する化合物を生成し得る。
【0052】
保護多環式縮合環化合物のC(13)に結合し得る例示的な側鎖先駆物質は、式(5)、(6)、(7A)、(7B)、(7C)および(8)のいずれかに対応する化合物を包含する:
【化24】

[式中、
X1は、ヒドロキシ、チオ、またはSX10であり;
X2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、-OX6、-SX7、または-NX8X9であり;
X3は、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、またはヘテロシクロであり;
X4は、水素、またはアミノ保護基であり;
X5は、-COX10、-COOX10、または-CONHX10であり;
X6は、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、水素、またはヒドロキシ保護基であり;
X7は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはスルフヒドリル保護基であり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
X9は、アミノ保護基であり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
X11は、非置換または置換アリールであり;
X21およびX22は、ヒドロカルビルであり;
X23は、アリールであり;
X51は、アミノ保護基であり;
X52は、水素、-COX10、-COOX10、または-CONHX10である]。
【0053】
多環式縮合環化合物への好適な側鎖先駆物質の結合の一例は、Denisらの米国特許第4924011号(参照として本明細書に組み込まれる)に示されている。そこでは、縮合剤、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、および活性化剤、例えばN,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMPA)の存在下に、芳香族溶媒中で操作して、式(5)に一般に対応するイソセリン側鎖先駆物質を、保護バッカチンIIIのC(13)ヒドロキシ基に結合している。例えば、Denisらの米国特許第4924011号、第2欄、第5〜68行参照。
【0054】
多環式縮合環化合物への好適な側鎖先駆物質の結合の別の例は、Holtonらの米国特許第5466834号(参照として本明細書に組み込まれる)に示されている。そこでは、テトラヒドロフラン(THF)のような溶媒の存在下に、保護バッカチンIII、または10-DAB、または他の10-DAB誘導体を、C(13)脱プロトン剤、例えば有機金属化合物(例えば、n-ブチルリチウムまたはn-ヘキシルリチウム)またはジシラジド(例えば、NaHMDSまたはLHMDS)と反応させて、金属アルコキシド(例えば、13-O-リチウム-7-O-トリエチルシリルバッカチンIII)を生成し、次に、THFの存在下に、式(6)に一般に対応するβ-ラクタム側鎖先駆物質と反応させている。例えば、Holtonらの米国特許第5466834号、第12〜14欄参照。
【0055】
多環式縮合環化合物への好適な側鎖先駆物質の結合の他の例は、Holtonらの米国特許第5430160号(参照として本明細書に組み込まれる)に示されている。そこでは、テトラヒドロフラン(THF)のような溶媒の存在下に、保護バッカチンIII、または10-DAB、または他の10-DAB誘導体を、アンモニウム含有化合物(例えば、テトラアルキルアンモニウムハライド)と反応させて、アンモニウムアルコキシドを生成し、次に、THFの存在下に、式(6)に一般に対応するβ-ラクタム側鎖先駆物質と反応させている。例えば、Holtonらの米国特許第5430160号、第11〜14欄参照。
【0056】
あるいは、有機金属化合物、ジシラジド、またはアンモニウム含有化合物を使用せずに、例えばHoltonらの米国特許第5175315号(参照として本明細書に組み込まれる)によって記載されている方法によって、好適な側鎖を結合し得る。そこでは、活性化剤、好ましくは第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、N-メチルイミダゾール、およびN,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下に、保護バッカチンIII、または10-DABまたは10-DAB誘導体を、式(6)に一般に対応するβ-ラクタム側鎖先駆物質と反応させている。例えば、Holtonらの米国特許第5175315号、第10〜11欄参照。
【0057】
多環式縮合環化合物への好適な側鎖先駆物質の結合のさらに別の例は、Commerconら(Tetrahedron Letters, 1992, 33, 36, 5185-5188)によって示されている。そこでは、N,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびトルエンの存在下に、保護バッカチンIIIまたは10-DABまたは10-DAB誘導体を、式(7A)に一般に対応するオキサゾリン側鎖先駆物質でエステル化している。例えば、Tetrahedron Letters, 1992, 33, 36, 5187参照。
【0058】
好適な側鎖先駆物質の結合のさらに他の例は、Chanteloupらの米国特許第6825365号(参照として本明細書に組み込まれる)によって示されている。そこでは、N,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびトルエンの存在下に、保護バッカチンIIIまたは10-DABまたは10-DAB誘導体を、式(7B)または(7C)に一般に対応するオキサゾリン側鎖先駆物質でエステル化している。式(7B)および(7C)に対応するオキサゾリン側鎖先駆物質が、オキサゾリン環を開環せずに、C(13)位置に結合している。結合の後に、オキサゾリン環を、酸性または塩基性媒体中での加水分解によって開環し得る。例えば、Chanteloupらの米国特許第6825365号、第10〜16欄参照。
【0059】
好適な側鎖先駆物質の結合のさらに他の例は、Holtonの米国特許第5015744号(参照として本明細書に組み込まれる)によって示されている。そこでは、N,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)およびピリジンの存在下に、保護バッカチンIIIまたは10-DABまたは10-DAB誘導体を、式(8)に一般に対応するオキサジノン側鎖先駆物質と反応させている。例えば、Holtonの米国特許第5015744号、第10〜11欄参照。
【0060】
好適な側鎖が結合されると、架橋珪素ベースの保護基を、本明細書に記載する方法によって除去してよく、多環式縮合環上の種々の置換基をさらに保護および/または誘導体化し得る。例えば、本明細書に記載する方法を使用して、タキサンのC(7)およびC(10)ヒドロキシ基を同時に保護し、タキサンのC(13)位置に好適な側鎖を結合し、架橋珪素ベースの保護基を多環式縮合環ポリオール上のヒドロキシ置換基から除去し、さらに、以下に詳しく記載するように、タキサン核上の種々の位置、例えば、C(1)、C(2)、C(4)、C(6)、C(7)、C(9)、C(10)またはC(14)位置、またはC(13)側鎖上の種々の位置、例えば、1’、2’、3’、4’または5’位置に選択的置換基を有するタキサンを生成し得る。
【0061】
あるいは、架橋珪素ベースの保護基によって保護されたヒドロキシ置換基の1つを、タキサンのC(13)位置への好適な側鎖の結合の前または後に、選択的に脱保護してよく、次に、以下に詳しく記載するように、タキサン核および/または側鎖上の種々の置換基をさらに誘導体化し得る。
【0062】
反応スキーム1は、架橋珪素ベースの保護基での多環式縮合環ポリオールの同時保護、次の側鎖結合を示す。保護多環式縮合環化合物に側鎖を結合したら、架橋珪素ベースの保護基を部分的または完全に除去してよく、多環式縮合環化合物および/または側鎖をさらに保護および/または誘導体化し得る。
【化25】

【0063】
反応スキーム1の段階1は、架橋珪素ベースの保護基(4)での多環式縮合環ポリオール(3)の同時保護を示す。多環式縮合環ポリオール(3)における破線は、多環式縮合環ポリオールの骨格構造を表す。本明細書に記載するいずれかの多環式縮合環ポリオールを、段階1に使用し得る。例えば、一つの実施態様において、多環式縮合環ポリオールは式(13)に対応する:
【化26】

[式中、
R1は、水素またはアシルであるか、またはR2またはR14と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R2は、水素またはアシルであるか、またはR1またはR4と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R4は、水素またはアシルであるか、またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R14は、水素またはヒドロキシであるか、またはR1またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成する]。
【0064】
1つの好ましい実施態様において、反応スキーム1の多環式縮合環ポリオール(3)は10-DABであり、即ち、多環式縮合環ポリオールは、R1が水素であり、R2がベンゾイルであり、R4がアセチルであり、R14が水素である式(13)に対応する。他の好ましい実施態様において、反応スキーム1の多環式縮合環ポリオール(3)は14-β-ヒドロキシ-10-DABであり、即ち、多環式縮合環ポリオールは、R1が水素であり、R2がベンゾイルであり、R4がアセチルであり、R14がヒドロキシである式(13)に対応する。
【0065】
特に好ましい実施態様において、多環式縮合環ポリオールは10-DABであり、式(23)に対応する:
【化27】

【0066】
本明細書に記載するいずれかの架橋珪素ベースの保護基を、反応スキーム1の段階1に使用し得る。例えば、一つの実施態様において、G1、G2、G3およびG4は、独立して、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはシクロアルキルであり;Zは、-(CH2)y-であり;yは、約1〜約8の正の整数である。他の実施態様において、G1、G2、G3およびG4は、独立して、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはシクロアルキルであり;Zは、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-、または-O-であり;nは、1または2であり;Z10およびZ11は、アルキルである。これら2つの実施態様のいずれにおいても、L1およびL2は、独立して、アミン、ハライドまたはスルホネート脱離基である。
【0067】
反応スキームの段階1は、好ましくは、塩基および溶媒の存在下に行われる。好適な塩基の例は、アミン塩基、例えばN,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)であり、好適な溶媒の例は、極性非プロトン溶媒、例えばジメチルホルムアミドである。または、他の実施態様において、他の塩基および溶媒、例えば、無機塩基および/またはエーテル溶媒が好ましい場合もある。
【0068】
反応スキーム1の段階2は、7,10-保護多環式縮合環化合物(9)のC(13)位置における側鎖結合を示す。一般に、様々な側鎖先駆物質を段階2に使用し得る。
【0069】
一つの実施態様において、側鎖先駆物質は、β-ラクタム(例えば、式(6))またはオキサジノン(例えば、式(8))である。この実施態様において、7,10-保護多環式縮合環化合物(9)のC(13)位置が、MO-(ここで、Mは金属またはアンモニウムである)で置換されるのが一般に好ましい[即ち、本明細書に詳しく記載するように、多環式縮合環化合物を、脱プロトン剤(例えば、有機金属化合物(例えば、n-ブチルリチウムまたはn-ヘキシルリチウム)またはジシラジド(例えば、NaHMDSまたはLHMDS)またはアミンまたはアンモニウム含有化合物(例えば、テトラアルキルアンモニウムハライドまたはアルカリ金属ジアルキルアミン))と反応させる]。または、7,10-保護多環式縮合環化合物(9)のC(13)位置がヒドロキシであってよく(即ち、Mが水素である)、化合物(9)を、第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、N-メチルイミダゾールおよびN,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下に、β-ラクタムと反応させてもよい。
【0070】
他の実施態様において、側鎖先駆物質は、イソセリン誘導体(例えば、式(5))またはオキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸またはオキサゾリンカルボン酸無水物(例えば、式(7A)、(7B)または(7C))である。この実施態様において、7,10-保護多環式縮合環化合物(9)のC(13)位置がヒドロキシである(即ち、Mが水素である)のが一般に好ましく、イソセリン誘導体またはオキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸またはオキサゾリンカルボン酸無水物との反応の前に、多環式縮合環化合物(9)を、アミン塩基触媒、例えばN,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMPA)またはピリジンの存在下に、活性化剤、例えばジ(2-ピリジル)カーボネートまたはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)で処理する。または、7,10-保護多環式縮合環化合物(9)のC(13)位置を、MO-(ここで、Mは金属またはアンモニウムである)で置換してもよい[即ち、本明細書に詳しく記載するように、多環式縮合環化合物を、脱プロトン剤(例えば、有機金属化合物(例えば、n-ブチルリチウムまたはn-ヘキシルリチウム)またはジシラジド(例えば、NaHMDSまたはLHMDS)またはアミンまたはアンモニウム含有化合物(例えば、テトラアルキルアンモニウムハライドまたはアルカリ金属ジアルキルアミン))と反応させる]。
【0071】
上記の2つの実施態様のいずれにおいても[即ち、側鎖先駆物質が、β-ラクタム(例えば式(6))、オキサジノン(例えば式(8))、イソセリン誘導体(例えば式(5))、またはオキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸またはオキサゾリンカルボン酸無水物(例えば、式(7A)、(7B)または(7C))である場合]、7,10-保護多環式縮合環化合物(9)のC(13)位置がMO-で置換されている場合に、多環式縮合環化合物は式(9M)に対応する:
【化28】

[式中、Mは、金属、アンモニウムまたは水素であり;G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表す]。
【0072】
種々の実施態様において、式(9R)に対応する7,10-保護誘導体を調製できる:
【化29】

[式中、R13は、水素であるかまたは下記の構造:
【化30】

を有し;G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;X2、X3、X4およびX5は、式(5)、(6)、(7A)、(7B)、(7C)および(8)に関して定義した通りであり;破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表す]。
式9Rを、C(13)位置でさらに誘導体化して、式9R13に対応する化合物を生成することができ、ここで、R13は、水素、ヒドロキシ保護基、金属であるか、アンモニウムを含むか、または下記の構造を有する:
【化31】

[式中、X2、X3、X4およびX5は、式(5)、(6)、(7A)、(7B)、(7C)および(8)に関して定義した通りである]。
【0073】
反応スキーム1の段階3において、7,10-保護多環式縮合環化合物(10)を脱保護して、最終生成物を得るか、またはさらに誘導体化し、次に、脱保護して、最終生成物を得る。例えば、C(13)エステル結合、および/または多環式縮合環および/または側鎖上の他の加水分解性置換基を妨げないように、比較的緩い条件下に、加水分解によって、7,10-保護基を除去し得る。有機および無機酸、塩基およびアルコールを包含する様々な加水分解剤をこの目的に使用し得る。一つの実施態様において、例えば、弗化水素酸(HF)または塩酸(HCl)を使用して、C(13)、C(2)またはC(4)エステル結合を妨げずに、全てのヒドロキシ保護基を除去し得る。または、C(7)、C(10)、または多環式縮合環化合物および/または側鎖上の任意の他の位置をさらに保護し、かつ/または誘導体化するために、特定の保護基を選択的に除去し(例えば、C(7)および/またはC(10)において架橋珪素ベースの保護基を脱保護または選択的に脱保護し)、他の保護基(例えば、C(13)側鎖上の保護基)を残すことが望ましい場合もある。
【0074】
多環式縮合環化合物(9)によって担持された置換基の種類、および側鎖先駆物質(例えば、式(5)、(6)、(7A)、(7B)、(7C)および(8)の1つ)によって担持された置換基の種類によって、種々のタキサン誘導体を、段階3における脱保護および/または選択的脱保護および誘導体化の際に生成し得る。例えば、R1が水素であり、R2がベンゾイルであり、R4がアセチルであり、R14が水素であり、X2が-OX6であり、X3がフェニルであり、X4が水素であり、X5がtert-ブトキシカルボニルであり、X6がヒドロキシ保護基(例えば、2-メトキシ-2-プロピル)である場合、反応スキーム1の段階3における、C(2’)ヒドロキシ基およびC(7)およびC(10)における架橋珪素ベースの保護基の脱保護の際に、多環式縮合環化合物(10)からドセタキセルが生成される。他の例において、R1が水素であり、R2がベンゾイルであり、R4がアセチルであり、R14が水素であり、X2が-OX6であり、X3がフェニルであり、X4が水素であり、X5がベンゾイルであり、X6がヒドロキシ保護基である場合、反応スキーム1の段階3における、C(2’)ヒドロキシ基およびC(7)およびC(10)における架橋珪素ベースの保護基の脱保護の際に、多環式縮合環化合物(10)から1,10-デアセチルタキソール(10-デアセチルパクリタキセル)が生成される。
【0075】
本発明の1つの好ましい実施態様を反応スキーム1Aに示すが、ここで、G1、G2、G3、G4、L1、L2およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;R1、R2、R4およびR14は、式(13)に関して定義したとおりであり;X2、X3、X4およびX5は、式(6)の側鎖先駆物質に関して定義した通りである。
【化32】

【0076】
反応スキーム1Aにおいて、多環式縮合環ポリオール(13)を、架橋珪素ベースの保護基(4)で処理して、7,10-保護縮合環化合物(19)を生成する。示されているように、本明細書に記載されるβ-ラクタム(6)を使用して、側鎖を化合物(19)のC(13)位置に結合するか、または、それの代わりに、他の側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物、またはイソセリン誘導体を使用し得る。本明細書に記載されているように、多環式縮合環化合物(19)のC(13)位置を、側鎖結合段階において、MO-で置換するのが好ましく、その場合は、多環式縮合環化合物は式(19M)に対応する:
【化33】

[式中、Mは、金属、アンモニウムまたは水素であり;G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;R1、R2、R4およびR14は、式(13)に関して定義したとおりである]。
【0077】
反応スキーム1Aの段階3において、7,10-保護多環式縮合環化合物(110)を脱保護して、最終生成物を得るか、またはさらに誘導体化し、次に、脱保護して、最終生成物を得る。例えば、C(13)エステル結合および/または多環式縮合環化合物上の他の加水分解性置換基を妨げないように、比較的緩い条件下の加水分解によって7,10-保護基を除去し得る。または、C(7)、C(10)、または多環式縮合環化合物および/または側鎖上の任意の他の位置をさらに保護し、かつ/または誘導体化するために、特定の保護基を選択的に除去し(例えば、C(7)および/またはC(10)において架橋珪素ベースの保護基を脱保護または選択的に脱保護し)、他の保護基(例えば、C(13)側鎖上の保護基)を残すことが望ましい場合もある。
【0078】
反応スキーム1および1Aの段階3において、全てのヒドロキシ保護基を同時に除去せずに、特定のヒドロキシ保護基を選択的に脱保護し、多環式縮合環化合物に結合した他のヒドロキシ保護基を残すことが望ましい場合もある。そうして、当分野で既知の種々の方法を用いて、非保護ヒドロキシ保護基を、付加的誘導体化に付すことができる。例えば、C(13)側鎖を結合した後に、C(10)位置を選択的に脱保護し誘導体化することが望ましい場合もある。または、C(13)側鎖を結合する前に、C(10)位置を選択的に脱保護し誘導体化することが望ましい場合もある。この方法は、反応スキーム2に一般的に示され、ここで、G1、G2、G3、G4、L1、L2およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;X2、X3、X4、X5およびX51は、式(5)、(6)、(7A)、(7B)、(7C)および(8)から選択される側鎖先駆物質に関して定義した通りであり;多環式縮合環ポリオール(3)における破線は、多環式縮合環ポリオールの骨格構造を表す。
【化34】

【0079】
反応スキーム2の段階1は、架橋珪素ベースの保護基(4)での、多環式縮合環ポリオール(3)の同時保護を示す。例えば式(13)または(23)に対応するポリオールを包含する本明細書に記載するいずれかの多環式縮合環ポリオールを、反応スキーム2の段階1における出発物質として使用し得る。同様に、本明細書に記載するいずれかの架橋珪素ベースの保護基を使用でき、架橋珪素ベースの保護基を多環式縮合環ポリオールに結合するための試薬および条件は、反応スキーム1および1Aの段階1に関して記載したのと同じである。架橋珪素ベースの保護基(4)でC(7)およびC(10)を保護した後に、7,10-保護化合物(9)をいくつかの合成経路によって誘導体化し得る。
【0080】
反応スキーム2の段階2aにおいて、式(5)、(6)、(7A)、(7B)、(7C)および(8)から選択される側鎖先駆物質を使用して、7,10-保護化合物(9)のC(13)位置に側鎖を結合する。本明細書に記載されているように、側鎖結合段階において、化合物(9)のC(13)位置をMO-で置換するのが好ましく、その場合は、化合物(9)は式(9M)に対応する。段階3aにおいて、塩基の存在下に、アルコール(例えば、R10Aはヒドロカルビルであり、好ましくはアルキルであるR10AOH)またはアルコールの混合物を使用して、化合物(10)をC(10)において選択的に脱保護して、7-保護誘導体(11)を生成し得る。好ましくは、C(10)脱保護に使用されるアルコールはメタノールである。C(10)脱保護に好適な塩基は、トリエチルアミン、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムであり;好ましくは、塩基はトリエチルアミンまたは炭酸水素ナトリウムである。C(10)脱保護用の溶媒は、アルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、またはそれらの組合せであってよく;好ましくは、溶媒はメタノールである。C(10)脱保護の後に、段階4aにおいてC(10)でアシル化して、10-アシル-7-保護誘導体(21)を生成する(即ち、R10はアシルである)。反応スキーム1および1Aに一般的に記載し、反応スキーム2の段階3cに示すように、選択的経路によって、化合物(10)を脱保護して最終生成物を得るか、またはさらに誘導体化し、次に、脱保護して、C(10)を選択的に脱保護せずに最終生成物を得る。
【0081】
反応スキーム2の段階2bにおいて、C(13)における側鎖結合の前に、化合物(9)をC(10)で選択的に脱保護して、7-保護誘導体(12)を生成する。選択的脱保護の試薬および条件は、前述の段階3aに関して記載したのと同じである。C(10)脱保護の後に、段階3bにおいてC(10)をアシル化して、10-アシル-7-保護誘導体(20)を生成する(即ち、R10はアシルである)。次に、段階4bにおいて、式(5)、(6)、(7A)、(7B)、(7C)および(8)から選択される側鎖先駆物質を使用して、側鎖を誘導体(20)のC(13)位置に結合して、10-アシル-7-保護誘導体(21)を生成する。本明細書に記載されているように、化合物(13)のC(13)位置を、側鎖結合段階においてMO-で置換するのが好ましく、その場合は、化合物(20)は式(20M)に対応する:
【化35】

[式中、Mは、金属、アンモニウムまたは水素であり;G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表す]。
【0082】
上記の方法を使用して、式(20R)に対応する10-ヒドロキシ-7-保護化合物を調製することができ:
【化36】

次に、化合物(20R)をC(10)位置でアシル化して、式(20R10)に対応する10-アシル-7-保護化合物を生成し得る:
【化37】

[式中、R10は、アシルであり;R10Aは、ヒドロカルビルであり;R13は、水素であるか、または下記の構造:
【化38】

を有し;G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;X2、X3、X4およびX5は、式(5)、(6)、(7A)、(7B)、(7C)および(8)に関して定義したとおりであり;破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表す]。
好ましい実施態様において、式(30R)に対応する化合物は、C(7)、C(9)、C(10)およびC(13)において(20R)の構造、および構造(13)に類似の構造を有し、ここで、多環式縮合環の骨格構造を表す破線が、R1、R2、R4およびR14によって置換されている。さらに、より好ましくは、式(40R)に対応する化合物は、式(30R)の構造を有し、ここで、R1、R2、R4およびR14は10-DABの置換基と一致する。
【0083】
反応スキーム2の段階5において、誘導体(21)(段階4aにおける誘導体(11)または段階4bにおける誘導体(20)から生成)を、脱保護して、最終生成物を得るか、またはさらに誘導体化し、次に、脱保護して、最終生成物を得る。例えば、C(13)エステル結合、および/または多環式縮合環化合物および/または側鎖上の他の加水分解性置換基を妨げないように、比較的緩い条件下の加水分解によって、種々の保護基を除去し得る。
【0084】
本発明の1つの好ましい実施態様を反応スキーム2Aに例示するが、ここで、G1、G2、G3、G4、L1、L2およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;R1、R2、R4およびR14は、式(13)に関して定義したとおりであり;X2、X3、X4およびX5は、式(6)の側鎖先駆物質に関して定義したとおりである。
【化39】

【0085】
反応スキーム2Aにおいて、多環式縮合環ポリオール(13)を、本明細書に記載する方法によって架橋珪素ベースの保護基(4)で処理して、7,10-保護化合物(19)を生成する。C(7)およびC(10)を架橋珪素ベースの保護基(4)で保護した後に、7,10-保護化合物(19)を、いくつかの合成経路によって誘導体化し得る。
【0086】
反応スキーム2Aの段階2aにおいて、本明細書に記載されているように、β-ラクタムを使用して、側鎖を化合物(19)のC(13)位置に結合するか、または、他の側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物、またはイソセリン誘導体を代わりに使用し得る。本明細書に記載されているように、化合物(19)のC(13)位置を、側鎖結合段階においてMO-で置換するのが好ましく、その場合は、化合物(19)は式(19M)に対応する。段階3aにおいて、塩基の存在下に、アルコール(例えば、R10AOH、ここで、R10Aはアルキルである)またはアルコールの混合物を使用して、C(10)において化合物(110)を選択的に脱保護して、7-保護誘導体(111)を生成することができる。選択的脱保護の試薬および条件は、反応スキーム2の段階3aに関して記載したのと同様である。C(10)脱保護の後に、C(10)においてアシル化して、10-アシル-7-保護誘導体(121)を生成する(即ち、R10はアシルである)。反応スキーム1および1Aに一般的に記載し、反応スキーム2Aの段階3cに示すように、選択的経路によって、化合物(10)を脱保護して最終生成物を得るか、またはさらに誘導体化し、次に、脱保護して、C(10)を選択的に脱保護せずに最終生成物を得る。
【0087】
反応スキーム2Aの段階2bにおいて、C(13)における側鎖結合の前に、化合物(19)をC(10)で選択的に脱保護して、7-保護誘導体(112)を生成する。選択的脱保護の試薬および条件は、前述の段階3aに関して記載したのと同様である。C(10)脱保護の後に、段階3bにおいてC(10)をアシル化して、10-アシル-7-保護誘導体(120)を生成する(即ち、R10はアシルである)。次に、本明細書に記載されているように、β-ラクタム(6)を使用して、側鎖を誘導体(120)のC(13)位置に結合するか、または、他の側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物、またはイソセリン誘導体を代わりに使用し得る。本明細書に記載されているように、化合物(120)のC(13)位置を、側鎖結合段階においてMO-で置換するのが好ましく、その場合は、化合物(120)は式(120M)に対応する。
【化40】

[式中、Mは、金属、アンモニウムまたは水素であり;G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり;R1、R2、R4およびR14は、式(13)に関して定義したとおりである]。
【0088】
反応スキーム2Aの段階5において、誘導体(121)(段階4aにおける誘導体(111)または段階4bにおける誘導体(120)のいずれかから生成)を脱保護して最終生成物を得るか、または、さらに誘導体化し、次に、脱保護して、最終生成物を得る。例えば、C(13)エステル結合、および/または多環式縮合環および/または側鎖上の他の加水分解性置換基を妨げないように、比較的緩い条件下に、加水分解によって、種々の保護基を除去し得る。
【0089】
有利なことに、反応スキーム1、1A、2および2Aに示す種々の中間化合物(例えば、式(9)、(19)、(10)、(110)、(11)、(111)、(12)、(112)、(20)、(120)、(21)および(121))を生成するために架橋珪素ベースの保護基を使用して、種々のタキサン化合物を調製し得る。例えば、多環式縮合環ポリオール(例えば、式(3)または(13))および/または側鎖先駆物質(例えば、式(5)、(6)、(7A)、(7B)、(7C)または(8))によって担持された置換基の種類に依存し、かつ、多環式縮合環ポリオールおよび/または側鎖上の特定の位置の誘導体化によって、パクリタキセルおよびドセタキセルのようなタキサン化合物を生成し得る。
【0090】
本発明の1つの好ましい実施態様を反応スキーム2B(これは、パクリタキセルの製造を記載する)に示すが、ここで、G1、G2、G3、G4、L1、L2およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり、P2は、ヒドロキシ保護基である。例えば、P2は、アセタール、例えば、テトラヒドロピラニル(THP)、メトキシメチル(MOM)、1-エトキシエチル(EE)、2-メトキシ-2-プロピル(MOP)、2,2,2-トリクロロエトキシメチル、2-メトキシエトキシメチル(MEM)、2-トリメチルシリルエトキシメチル(SEM)、およびメチルチオメチル(MEM)であってよい。または、P2は、嵩高いアルキル基を有するシリル保護基、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジメチルフェニルシリルなどであってよい。
【化41】

【0091】
反応スキーム2Bにおいて、本明細書に記載する方法によって、先ず、10-DAB(23)を架橋珪素ベースの保護基(4)と反応させて、7,10-保護10-DAB(29)を生成する。本明細書に記載するいずれかの架橋珪素ベースの保護基を、この段階で使用してよく、同時保護は、一般に、塩基および溶媒の存在下に行われる。この段階に使用し得る適切な塩基および溶媒は先に詳しく記載されている。架橋珪素ベースの保護基(4)でC(7)およびC(10)を保護した後に、7,10-保護10-DAB(29)を、いくつかの合成経路によって誘導体化して、パクリタキセルを生成し得る。
【0092】
一経路において、本明細書に記載されているように、適切に置換されたβ-ラクタム(16)(即ち,N-ベンゾイル-4-フェニル-3-保護ヒドロキシ-アゼチジン-2-オン)を使用して、7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置に側鎖を結合するか、または、他の適切に置換された側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物、またはイソセリン誘導体を代わりに使用し得る。本明細書に記載されているように、側鎖結合段階において、7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置を、MO-で置換するのが好ましく、その場合は、7,10-保護10-DAB(29)は式(29M)に対応する:
【化42】

[式中、Mは、金属、アンモニウムまたは水素であり;G1、G2、G3、G4およびZは、式(4)に関して定義したとおりである]。
【0093】
側鎖を結合して化合物(210)を生成した後に、化合物(210)を、塩基の存在下に、アルコール(例えば、R10AはアルキルであるR10AOH)またはアルコールの混合物で処理して、C(10)位置において架橋珪素ベースの保護基を選択的に開いて、7-保護誘導体(211)を生成する。選択的脱保護の試薬および条件は、反応スキーム2の段階3aに関して記載したのと同様である。C(10)脱保護の後に、アセチル化剤(例えば、塩化アセチル)で処理して、C(10)位置をアセチル化し、10-アセトキシ-7-保護誘導体(221)を生成する。
【0094】
選択的経路において、この反応スキームおよび他の反応スキームにおける他の選択的脱保護段階に関して記載したのと同じ試薬および条件を使用して、7,10-保護10-DAB(29)を、塩基の存在下に、アルコールまたはアルコールの混合物で先ず処理して、C(10)位置において架橋珪素ベースの保護基を選択的に開いて、7-保護誘導体(212)を生成することによって、誘導体(221)を生成することができる。アセチル化剤(例えば、塩化アセチル)を使用して、誘導体(212)をC(10)においてアセチル化して、10-アセトキシ-7-保護誘導体(220)を生成する。次に、本明細書に記載されているように、適切に置換されたβ-ラクタム(16)(即ち,N-ベンゾイル-4-フェニル-3-保護ヒドロキシ-アゼチジン-2-オン)を使用して、誘導体(220)に側鎖を結合するか、または、他の適切に置換された側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物、またはイソセリン誘導体を代わりに使用し得る。本明細書に記載されているように、側鎖結合段階において、誘導体(220)のC(13)位置を、MO-で置換するのが好ましく、その場合は、誘導体(220)は、式(220M)に対応する:
【化43】

【0095】
これら2つの経路のいずれか(即ち、(29)→(210)→(211)→(221)、または(29)→(212)→(220)→(221))によって誘導体(221)を生成した後に、誘導体(221)を加水分解剤で処理して、C(7)およびC(2’)ヒドロキシ基を脱保護し、それによってパクリタキセルを生成する。
【0096】
反応スキーム2Bに示す他の経路において、誘導体(210)を塩基(例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3))で処理して、架橋珪素ベースの保護基を完全に除去し、誘導体(222)を生成することによって、パクリタキセルを生成する。この経路によれば、C(2’)ヒドロキシ保護基(例えば、P2)を、アセチル化剤での反応の条件下にC(2’)酸素に結合したまま留まるように選択する。次に、誘導体(222)を、ルイス酸(例えば、CeCl3)の存在下に、アセチル化剤(例えば、酢酸無水物)で処理して、C(10)ヒドロキシ基を選択的にアセチル化し、次に、加水分解剤での処理によってC(2’)ヒドロキシ保護基を脱保護して(例えば、P2の除去)、パクリタキセルを生成する。
【0097】
本発明の他の好ましい実施態様を反応スキーム2C(これは、パクリタキセルの製造を記載する)に示すが、ここで、G1、G2、G3、G4、L1、L2およびZは、式(4)に関して定義したとおりである。
【化44】

【0098】
反応スキーム2Cにおいて、本明細書に記載する方法によって、10-DAB(23)を、架橋珪素ベースの保護基(4)と先ず反応させて、7,10-保護10-DAB(29)を生成する。本明細書に記載するいずれかの架橋珪素ベースの保護基をこの段階に使用でき、同時保護は、一般に、塩基および溶媒の存在下に行われる。この段階に使用し得る適切な塩基および溶媒は、先に詳しく記載されている。次に、一経路において、β-ラクタム側鎖先駆物質(26)を使用して、本明細書に記載されているように7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置に側鎖を結合し、ここで、X3およびX5は先に定義したとおりであり、X61はアシルである。1つの好ましい実施態様において、X61はtert-ブトキシカルボニルまたはベンゾイルである。または、同様に置換された他の側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物またはイソセリン誘導体を代わりに使用してもよい。本明細書に記載されているように、7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置は、側鎖結合段階において、MO-で置換されているのが好ましく、その場合は、化合物(29)は式(29M)に対応する。
【0099】
側鎖を結合して化合物(310)を生成した後に、化合物(310)を塩基の存在下に、アルコール(例えば、R10AはアルキルであるR10AOH)またはアルコールの混合物で処理して、C(10)位置において架橋珪素ベースの保護基を選択的に開いて、7-保護誘導体(311)を生成する。選択的脱保護の試薬および条件は、反応スキーム2の段階3aに関して記載したのと同様である。C(10)脱保護の後に、アシル化剤(例えば、塩化アセチル)で処理して、C(10)位置をアシル化して、10-アシルオキシ-7-保護誘導体(321)を生成する(即ち、R10はアシルである)。
【0100】
選択的経路において、この反応スキームおよび他の反応スキームにおける他の選択的脱保護段階に関して記載したのと同じ試薬および条件を使用して、7,10-保護10-DAB(29)を、塩基の存在下に、アルコールまたはアルコールの混合物で先ず処理して、C(10)位置において架橋珪素ベースの保護基を選択的に開いて、7-保護誘導体(212)を生成することによって、誘導体(321)を生成することができる。アセチル化剤(例えば、塩化アセチル)を使用して、誘導体(212)をC(10)においてアシル化して、10-アシルオキシ-7-保護誘導体(220)を生成する。次に、β-ラクタム側鎖先駆物質(26)を使用して、本明細書に記載されているように、誘導体(220)に側鎖を結合し、ここで、X3およびX5は先に定義したとおりであり、X61はアシルである。1つの好ましい実施態様において、X61はtert-ブトキシカルボニルまたはベンゾイルである。または、他の適切に置換された側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物、またはイソセリン誘導体を代わりに使用し得る。本明細書に記載されているように、側鎖結合段階において、誘導体(220)のC(13)位置を、MO-で置換するのが好ましく、その場合は、誘導体(220)は式(220M)に対応する。
【0101】
これら2つの経路のいずれか(即ち、(29)→(310)→(311)→(321)、または(29)→(212)→(220)→(321))によって誘導体(321)を生成した後に、誘導体(321)を、X5およびC(7)ヒドロキシ基において選択的に脱保護し;即ち、X5基およびC(7)ヒドロキシ位置に結合したままの架橋珪素ベースの保護基を、X61が除去されない条件下に除去する。X5基が3’窒素位置から除去されると、C(2’)酸素に結合したX61アシル基が3’窒素に移動し、それによって、誘導体(334)を生成する。側鎖によって担持された置換基、およびC(10)位置をアシル化するために使用されたアシル化剤によって、種々の10-DAB誘導体を生成し得る。例えば、X3がフェニルであり、X5が、X61を除去しない条件下に除去できる保護基であり、X61がベンゾイルであり、R10がアセチルであり、C(2’)酸素に結合したベンゾイル基(即ち、X61)が3’窒素位置に移動する場合に、パクリタキセルが生成される。
【0102】
反応スキーム2Cに示す他の経路において、誘導体(310)を塩基(例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3))で処理して、架橋珪素ベースの保護基を誘導体(322)から完全に除去することができる。次に、誘導体(322)を、ルイス酸(例えば、CeCl3)の存在下に、アシル化剤(例えば、酢酸無水物)で処理して、C(10)ヒドロキシ基を選択的にアシル化することができる。次に、X61を除去しない条件下に、X5基を3’窒素位置から選択的に除去することができる。X5基が3’窒素位置から除去されると、C(2’)酸素に結合したX61アシル基が3’窒素に移動し、それによって、誘導体(334)を生成する。前述のように、側鎖先駆物質よって担持された置換基、およびC(10)位置をアシル化するために使用されたアシル化剤によって、種々の10-DAB誘導体を生成し得る。例えば、X3がフェニルであり、X5が、X61を除去しない条件下に除去できる保護基であり、X61がベンゾイルであり、R10がアセチルであり、C(2’)酸素に結合したベンゾイル基が3’窒素位置に移動する場合に、パクリタキセルが生成される。
【0103】
または、C(10)ヒドロキシ基を選択的にアシル化せずに、誘導体(322)のX5基を、選択的に除去し得る。X5基が前述のように除去されると、C(2’)酸素に結合したX61アシル基が3’窒素に移動して、誘導体(333)を生成する。側鎖よって担持された置換基によって、種々の10-ヒドロキシ誘導体を生成し得る。例えば、X3がフェニルであり、X5が、X61を除去しない条件下に除去できる保護基であり、X61がtert-ブトキシカルボニルである場合、C(2’)酸素に結合したtert-ブトキシカルボニル基が3’窒素位置に移動して、ドセタキセルを生成する。
【0104】
本発明の他の好ましい実施態様を、反応スキーム2D(これは、ドセタキセルの製造を記載する)に示すが、ここで、G1、G2、G3、G4、L1、L2およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり、P2は本明細書に記載するヒドロキシ保護基である。
【化45】

【0105】
反応スキーム2Dにおいて、本明細書に記載する方法によって、先ず、10-DAB(23)を架橋珪素ベースの保護基(4)と反応させて、7,10-保護10-DAB(29)を生成する。本明細書に記載するいずれかの架橋珪素ベースの保護基を、この段階に使用してよく、同時保護は、一般に、塩基および溶媒の存在下に行われる。この段階に使用し得る適切な塩基および溶媒は先に詳しく記載されている。次に、本明細書に記載されているように、適切に置換されたβ-ラクタム(36)(即ち、N-t-ブトキシカルボニル-4-フェニル-3-保護ヒドロキシ-アゼチジン-2-オン)を使用して、7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置に側鎖を結合するか、または、他の適切に置換された側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物またはイソセリン誘導体を代わりに使用してもよい。本明細書に記載されているように、側鎖結合段階において、7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置をMO-で置換するのが好ましく、その場合は、化合物(29)は式(29M)に対応する。
【0106】
側鎖を結合して化合物(410)を生成した後に、化合物(410)を本明細書に記載する方法によって脱保護して、ドセタキセルを生成する。例えば、C(13)、C(2)またはC(4)エステル結合を妨げずに、弗化水素酸(HF)または塩化水素酸(HCl)のような加水分解剤によって、C(7)、C(10)およびC(2’)保護基を完全に除去し得る。または、本明細書に記載されているように、塩基の存在下にアルコールまたはアルコールの混合物を使用して、C(10)位置を選択的に脱保護し、次に、加水分解剤を使用して残りの保護基を除去して、ドセタキセルを生成してもよい。
【0107】
反応スキーム1、1A、2および2Aに記載されているように、架橋珪素ベースの保護基(4)での多環式縮合環化合物(3)または(13)の処理は、中間化合物(9)および(19)を生成し、それらは種々の生成物および中間体の生成に有用である。同様に、反応スキーム2A、2B、2Cおよび2Dにおいて、架橋珪素ベースの保護基(4)での10-DAB(23)の処理は、共通の中間体7,10-保護10-DAB(29)を生成し、これは、タキサン化合物、例えばパクリタキセルおよびドセタキセルの生成に有用である。
【0108】
反応スキーム2Dにおいて生成され、ドセタキセルの生成に使用される化合物(410)は、パクリタキセルの生成における共通の中間体としても使用でき;即ち、本発明は、下記の工程によって行われるパクリタキセルおよびドセタキセルの両方を生成するのに有用な共通の中間体の生成を可能にする:架橋珪素ベースの保護基で10-DABを同時に保護して、第一中間化合物(7,10-保護10-DAB(29))を生成し、適切に置換された側鎖を結合して、第二中間化合物(化合物(410))を生成し、第二中間化合物を種々の脱保護、選択的脱保護および/または誘導体化反応に付して、ドセタキセルまたはパクリタキセルを生成する。この方法は反応スキーム2Eに示され、ここで、G1、G2、G3、G4、L1、L2およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり、P2は本明細書において定義されるヒドロキシ保護基である。
【化46】

【0109】
反応スキーム2Eに示すように、本明細書に記載する方法によって、10-DAB(23)を架橋珪素ベースの保護基(4)と反応させることによって、共通中間体7,10-保護10-DAB(29)を生成する。本明細書に記載するいずれかの架橋珪素ベースの保護基を、この段階に使用してよく、同時保護は、一般に、塩基および溶媒の存在下に行われる。この段階に使用し得る適切な塩基および溶媒は先に詳しく記載されている。次に、本明細書に記載されているように、適切に置換されたβ-ラクタム(36)(即ち、N-t-ブトキシカルボニル-4-フェニル-3-保護ヒドロキシ-アゼチジン-2-オン)を使用して、7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置に側鎖を結合することによって、パクリタキセルおよびドセタキセルの両方の生成における第二共通中間体を生成するか、または、他の側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物またはイソセリン誘導体を代わりに使用してもよい。本明細書に記載されているように、側鎖結合段階において、7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置をMO-で置換するのが好ましく、その場合は、7,10-保護10-DAB(29)は、式(29M)に対応する。
【0110】
側鎖を結合して共通中間化合物(410)を生成した後に、化合物(410)を反応スキーム2Dに記載する方法によって脱保護して、ドセタキセルを生成し得る;即ち、C(13)、C(2)またはC(4)エステル結合を妨げずに、弗化水素酸(HF)または塩化水素酸(HCl)のような加水分解剤によって、C(7)、C(10)およびC(2’)保護基を完全に除去し得る。または、本明細書に記載されているように、塩基の存在下にアルコールまたはアルコールの混合物を使用して、C(10)位置を選択的に脱保護し、次に、加水分解剤を使用して残りの保護基を除去して、ドセタキセルを生成してもよい。
【0111】
化合物(410)からパクリタキセルを生成するために、化合物(410)の側鎖の3’窒素にベンゾイル基を導入して、誘導体(510)を生成する。種々の実施態様において、側鎖結合段階のワークアップの間にベンゾイル基を結合することができ、それは、合成のその時点におけるワークアップ中の窒素上の陰電荷による。次に、反応スキーム2B、2Cおよび2Dに記載した2つの経路のいずれかによって、誘導体(510)をパクリタキセルに変換することができる。例えば、1つの経路において、誘導体(510)を、塩基の存在下にアルコールまたはアルコールの混合物で処理して、C(10)位置において架橋珪素ベースの保護基を選択的に開いて、7-保護誘導体(411)を生成する。C(10)脱保護の後に、アセチル化剤(例えば、塩化アセチル)および加水分解剤で処理して、種々の保護基(3’窒素におけるtert-ブトキシカルボニル基を包含する)を除去して、パクリタキセルを生成する。
【0112】
第二経路において、誘導体(510)を、塩基(例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3))で処理して、架橋珪素ベースの保護基を完全に除去して、誘導体(422)を生成し、次に、ルイス酸(例えば、CeCl3)の存在下にアセチル化剤(例えば、無水酢酸)でC(10)位置を選択的にアセチル化し、加水分解剤で種々の保護基(3’窒素上のtert-ブトキシカルボニル基を包含する)を脱保護して、パクリタキセルを生成する。
【0113】
化合物(410)を生成せずにパクリタキセルを生成する選択的経路において、本明細書に記載されているように、適切に置換されたβ-ラクタム(16)(即ち,N-ベンゾイル-4-フェニル-3-保護ヒドロキシ-アゼチジン-2-オン)を使用して、7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置に側鎖を結合することによって、中間化合物(510)を生成してもよく;または、他の側鎖先駆物質、例えば、オキサジノン、オキサゾリン、オキサゾリンカルボン酸、オキサゾリンカルボン酸無水物、またはイソセリン誘導体を代わりに使用してもよい。本明細書に記載されているように、側鎖結合段階において、7,10-保護10-DAB(29)のC(13)位置を、MO-で置換するのが好ましく、その場合は、7,10-保護10-DAB(29)は式(29M)に対応する。
【0114】
側鎖を結合して中間化合物(210)を生成した後に、化合物(210)を、極性非プロトン溶媒(例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、またはジメチルホルムアミド(DMF))の存在下に、例えばジ-tert-ブチルジカーボネート(即ち、Boc2O)と反応させることによって、tert-ブトキシカルボニル基を側鎖の3’窒素に導入して、誘導体(510)を生成する。
【0115】
他の選択的経路において、パクリタキセルをドセタキセル(前述のように生成)から生成し得る。化合物(410)を脱保護してドセタキセルを生成した後に、アミン(例えば、ピリジン)の存在下に塩化ベンゾイル(または他のハロゲン化ベンゾイル)を使用して、ドセタキセルのC(2’)ヒドロキシ位置にベンゾイル基を選択的に導入して、誘導体(433)を生成し得る。次に、ルイス酸(例えば、CeCl3)の存在下にアセチル化剤(例えば、無水酢酸)を用いて、誘導体(433)のC(10)位置を選択的にアセチル化し、次に、加水分解剤で3’窒素tert-ブトキシカルボニル基を脱保護し得る。2’-tert-ブトキシカルボニル基が除去されると、C(2’)酸素に結合したベンゾイル基が3’窒素に移動し、それによってパクリタキセルを生成する。
【0116】
反応スキーム3は、7,10-保護多環式縮合環化合物上の種々の位置の誘導体化を示すが、ここで、G1、G2、G3、G4、L1、L2およびZは、式(4)に関して定義したとおりであり、P13は本明細書に記載するヒドロキシ保護基である。例えば、C(13)位置における側鎖結合の前に、多環式縮合環化合物上のC(1)、C(2)および/またはC(4)位置を誘導体化することが望ましい場合がある。水素化アルミニウムリチウム(LAH)またはRed-Alのような還元剤を使用して、多環式縮合環誘導体のC(2)および/またはC(4)エステルを、対応するアルコールに還元することができ、次に、一般的アシル化剤、例えば無水物および酸塩化物と、アミン、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、N,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)またはジイソプロピルエチルアミンとを組み合わして使用して、新しいエステルに置き換えることができる。または、LDAのような好適な塩基、次に、酸塩化物のようなアシル化剤でのアルコールの処理によって、対応するアルコキシドの生成を経て、C(2)および/またはC(4)アルコールを新しいC(2)および/またはC(4)エステルに変換し得る。反応スキーム3における記載を簡単化するために、10-DAB(23)を出発物質として使用する。しかし、他の多環式縮合環ポリオールを出発物質として使用し得るものと理解すべきである。
【0117】
【化47】

【0118】
反応スキーム3に示すように、架橋珪素ベースの保護基(4)を用いた10-DAB(23)のC(7)およびC(10)ヒドロキシ基の同時保護の後、かつ好適な保護基(例えば、トリエチルアミンのようなアミン塩基の存在下のトリメチルシリルクロリド(TMSCl))を用いたC(13)ヒドロキシ基の保護の後に、7,10,13-保護化合物(39)が、還元剤(例えば、水素化アルミニウムリチウム(LAH))を用いてトリオール(49)に変換される。次に、ピリジン中の酸ハロゲン化物(例えば、Cl2CO)のようなカルボニル化剤を用いて、トリオール(49)を1,2-カーボネート誘導体(59)に変換する。次に、1,2-カーボネート誘導体(59)を、激しい標準条件下に、C(4)においてアシル化して、1,2-カーボネート-4-アシル誘導体(69)を生成し得る。誘導体(59)および/または(69)をそれぞれ、求核剤、例えば、グリニャール試薬(例えば、R2aMgBr)またはアルキルリチウム試薬(例えば、R2aLi)で処理して、C(2)エステル(79)および/または(89)を生成し得る。または、トリオール(49)を脱プロトン剤(例えば、リチウムジイソプロピルアミド(LDA))で脱プロトンし、次に、アシル化剤を導入して、選択的にC(4)エステル(99)を得る。
【0119】
大括弧で囲まれた誘導体(49)、(59)、(69)、(79)、(89)および(99)は、それらの各生成後に、次の合成段階に進まずに、C(7)およびC(10)架橋珪素ベースの保護基を妨げない加水分解剤(例えば、ピリジン中の弗化水素酸(HF))を用いて、これらの誘導体をそれぞれC(13)において脱保護し得ることを示す。C(13)における脱保護時に、誘導体化化合物を、反応スキーム1、1A、2および2Aに記載した種々の合成経路のいずれかに付し得る。言い換えれば、反応スキーム1および2の出発物質(即ち、多環式縮合環ポリオール(3))における破線は、破線によって表される位置で担持された置換基、例えば、式(49)、(59)、(69)、(79)、(89)および(99)によって担持された置換基に対応し得る置換基を考慮せずに、多環式縮合環化合物の骨格構造を表す。同様に、反応スキーム1Aおよび2Aの出発物質(即ち、多環式縮合環ポリオール(13))の出発物質においてR1、R2、R4およびR14として表される位置で担持された置換基は、例えば式(49)、(59)、(69)、(79)、(89)および(99)によって担持された置換基に対応し得る。さらに、反応スキーム2B、2C、2Dおよび2Eに示すように、破線は、10-DABによって担持された置換基に対応し得る。
【0120】
略語および定義:
下記の定義および方法は、本発明をよりよく規定し、本発明の実施において当業者を導くために記載する。他に記載しないかぎり、用語は、当業者による一般的使用に従って理解されるものとする。
【0121】
本明細書に記載される用語「炭化水素」および「ヒドロカルビル」は、元素炭素および水素のみから成る有機化合物または基を意味する。これらの基は、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を包含する。これらの基は、他の脂肪族または環状炭化水素基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基、例えば、アルカリール、アルケナリールおよびアルキナリールも包含する。他に規定しない限り、これらの基は、好ましくは1〜20個の炭素原子を有する。
【0122】
本明細書に記載される「置換ヒドロカルビル」基は、少なくとも1個の炭素以外の原子で置換されたヒドロカルビル基であり、炭素鎖原子が、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、珪素、燐、硼素、硫黄またはハロゲン原子で置換された基を包含する。これらの置換基は、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステル、エーテルおよびチオエーテルを包含する。
【0123】
用語「ヘテロ原子」は、炭素および水素以外の原子を意味する。
【0124】
他に指定しなければ、本明細書に記載されるアルキル基は、主鎖に1〜8個の炭素原子、および20個までの炭素原子を含有する低級アルキルであるのが好ましい。それらは、直鎖または分岐鎖または環状であってよく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、へキシルなどを包含する。
【0125】
他に指定しなければ、本明細書に記載されるアルケニル基は、主鎖に2〜8個の炭素原子、および20個までの炭素原子を含有する低級アルケニルであるのが好ましい。それらは、直鎖または分岐鎖または環状であってよく、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、へキセニルなどを包含する。
【0126】
他に指定しなければ、本明細書に記載されるアルキニル基は、主鎖に2〜8個の炭素原子、および20個までの炭素原子を含有する低級アルキニルであるのが好ましい。それらは、直鎖または分岐鎖または環状であってよく、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、へキシニルなどを包含する。
【0127】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「アリール」または「アル(ar)」は、任意に置換された単素環式芳香族基、好ましくは環部分に6〜12個の炭素を有する単環式または二環式基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルを意味する。フェニルおよび置換フェニルがより好ましいアリールである。
【0128】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「ハライド」、「ハロゲン」または「ハロ」は、塩素、臭素、弗素および沃素を意味する。
【0129】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「ヘテロシクロ」または「複素環式」は、任意に置換され、完全に飽和されているかまたは不飽和の、単環式または二環式、芳香族または非芳香族基であって、少なくとも1個の環に少なくとも1個のヘテロ原子を有し、各環に好ましくは5または6個の原子を有する基を意味する。ヘテロシクロ基は、1または2個の酸素原子、1または2個の硫黄原子、および/または1〜4個の窒素原子を環に有するのが好ましく、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りに結合しうる。例示的なへテロシクロは、複素環式芳香族、例えば、フリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニルなどである。例示的な置換基は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ケト、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルの1つまたはそれ以上である。
【0130】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「複素環式芳香族」(または複素芳香環)は、少なくとも1個の環に少なくとも1個のヘテロ原子を有し、各環に好ましくは5または6個の原子を有する任意に置換された芳香族基を意味する。複素環式芳香族基は、1または2個の酸素原子、1または2個の硫黄原子、および/または1〜4個の窒素原子を環に有するのが好ましく、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りに結合しうる。例示的な複素環式芳香族、例えば、フリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニルなどである。例示的な置換基は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ケト、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルの1つまたはそれ以上である。
【0131】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「アシル」は、有機カルボン酸の-COOH基からヒドロキシ基を除去することによって生成される基、例えばRC(O)-を意味し、ここで、Rは、R1、R1O-、R1R2N-またはR1S-であり、R1は、ヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R2は、水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。
【0132】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「アシルオキシ」は、酸素結合(-O-)を介して結合した前記のアシル基、例えばRC(O)O-を意味し、ここで、Rは用語「アシル」に関して定義したとおりである。
【0133】
他に指定しないかぎり、本明細書に記載されるアルコキシカルボニルオキシ基は、低級炭化水素または置換炭化水素または置換炭化水素基を含んで成る。
【0134】
他に指定しないかぎり、本明細書に記載されるカルバモイルオキシ基は、カルバミン酸の誘導体であり、それにおいて、1個または両方のアミン水素が、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロ基によって任意に置換されている。
【0135】
本明細書において使用される用語「ヒドロキシ保護基」は、遊離ヒドロキシ基を保護することができる基を意味し(「保護ヒドロキシ」)、該基は、保護の対象となる反応の後に、分子の残りを妨害せずに除去しうる。ヒドロキシ保護基の例は、次のような基である:エーテル(例えば、アリル、トリフェニルメチル(トリチルまたはTr)、ベンジル、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP))、アセタール(例えば、メトキシメチル(MOM)、β-メトキシエトキシメチル(MEM)、テトラヒドロピラニル(THP)、エトキシエチル(EE)、メチルチオメチル(MTM)、2-メトキシ-2-プロピル(MOP)、2-トリメチルシリルエトキシメチル(SEM))、エステル(例えば、ベンゾエート(Bz)、アリルカーボネート、2,2,2-トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2-トリメチルシリルエチルカーボネート)、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリフェニルシリル(TPS)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))など。ヒドロキシ基の種々の保護基、およびそれらの合成は、「Protective Gropus in Organic Synthesis」, T.W. GreeneおよびP.G.M Wuts, John Wiley & Sons, 1999に見出される。
【0136】
本明細書に記載される「アミノ保護基」は、保護されたアミノ基において反応を遮断する部分であって、さまざまな化合物の他の置換基を損なわないよう、充分穏やかな条件下に容易に除去されるものである。例えば、アミノ保護基は、ベンジル、ベンゾイル、カルボベンジルオキシ(Cbz)、t-ブトキシカルボニル(t-Boc)、アリルオキシカルボニルなどを包含する。アミノ基の種々の保護基、およびそれらの合成は、「Protective Gropus in Organic Synthesis」, T.W. GreeneおよびP.G.M Wuts, John Wiley & Sons, 1999に見出される。
【0137】
本明細書に記載される用語「スルフヒドリル保護基」は、保護されたスルフヒドリル基において反応を遮断する部分であって、さまざまな化合物の他の置換基を損なわないよう、充分穏やかな条件下に容易に除去されるものである。スルフヒドリル保護基の例は、シリルエステル、ジスルフィドなどである。スルフヒドリル基の種々の保護基、およびそれらの合成は、「Protective Gropus in Organic Synthesis」, T.W. GreeneおよびP.G.M Wuts, John Wiley & Sons, 1999に見出される。
【0138】
本明細書において使用される「Ac」は、アセチル(即ち、CH3C(O)-)を意味し;「Bz」は、ベンゾイル(即ち、C6H5C(O)-)を意味し;「Ph」はフェニルを意味し;「TMSCl」は、トリメチルシリルクロリドを意味し;「LAH」は、水素化リチウムアルミニウムを意味し;「LDA」は、リチウムジイソプロピルアミドを意味し;「10-DAB」は、10-デアセチルバッカチンIIIを意味し;「-OP」は、保護ヒドロキシを意味し、ここでPはヒドロキシ保護基であり;「t-Boc」および「Boc」は、tert-ブトキシカルボニルを意味し;「DMF」は、ジメチルホルムアミドを意味し;「THF」は、テトラヒドロフランを意味し;「DMAP」は、N,N-4-ジメチルアミノピリジンを意味し;「LHMDS」は、リチウムヘキサメチルジシラジドを意味し;「NaHMDS」は、ナトリウムヘキサメチルジシラジドを意味し;「TEA」は、トリエチルアミンを意味し;「TsOH」は、p-トルエンスルホン酸を意味する。
【0139】
本明細書において使用される用語「タキサン」は、A、BおよびC環を有する化合物を意味する(環位置の番号を下記に示す):
【化48】

【実施例】
【0140】
以下の実施例により、本発明を説明する。
【0141】
実施例1:トリメチルシリル2-(トリメチルシリルオキシ)アセテートの製造
【化49】

トリメチルシリル2-(トリメチルシリルオキシ)アセテートは、多くの供給業者から入手可能である。しかし、それは、2当量のピリジンの存在下に、低価格のグリコール酸(75ドル($)/Kg、Aldrichより)およびトリメチルシリルクロリド(80ドル/Kg、Aldrichより)から容易に生成できる。典型的には、グリコール酸(76.05g、1mol)を、乾燥ピリジン(164mL、2mol)に溶解し、次に、混合物を氷水浴中で攪拌しながら0〜5℃に冷却した。純トリメチルシリルクロリド(108.64g、1mol)を滴下して、発熱を40℃未満に調節した。塩化ピリジニウムが易流動性固形物として沈殿した。ヘプタン(500mL)を添加して、攪拌を補助した。第二当量の純トリメチルシリルクロリドを添加し、反応が終了するまで混合物を周囲温度22〜40℃で30分間攪拌した。混合物をヘプタン(1L)でさらに希釈し、塩を沈殿させた。ヘプタン層を、中孔質インラインフィルターを経て回転蒸発器に吸い入れ、濃縮して、トリメチルシリル2-(トリメチルシリルオキシ)アセテートの透明油状物(215g、0.98mol)を得た。それを回転蒸発器において70〜75℃で、6〜8mmHgの真空下に蒸留した。
【0142】
実施例1A
【化50】

Hartら(Chem. Rev. 1989, 89, 1447-1465)によって報告されているリチウムエノラート(トリメチルシリル(トリメチルシリルオキシ)アセテートをリチウムヘキサメチルジシラジドで処理することによって生成)と、トリメチルシリルベンズアルジミン(アルデヒド(下記の1a-f)およびリチウムヘキサメチルジシラジドからインサイチュで生成)との反応を試験した場合、エノラートの分解が、0〜5℃におけるそれとイミンとの反応より速く生じた。この問題は、エノラートの反応の温度を-25℃に下げ、過剰量(例えば2当量)のエノラートを使用することによって解決された。
【0143】
従って、ベンズアルデヒド(5.3g、0.05mol)を、0℃で、THF中のLHMDSの1.0M溶液(150mL、0.15mol)に添加し、混合物を30分間攪拌し、次に、-30〜-25℃に冷却した。反応温度が-30℃になると、THF中のトリメチルシリル2-(トリメチルシロキシ)アセテートエステル(22.0g、0.1mol、2当量)の1M溶液を滴下して、発熱を調節し、反応温度を-25℃未満に維持した。混合物をこの温度で1時間攪拌し、次に、-5〜0℃に温めた。混合物をこの温度で18時間攪拌した。混合物を炭酸水素ナトリウム飽和溶液(100mL)で鎮め、1-ブタノール(500mL)で抽出した。1-ブタノールを真空蒸発させ、残渣を、メタノール(75mL)および炭酸ナトリウム(0.5g、0.005mol)に周囲温度にて約1時間で取った。次に、反応混合物を、酢酸(0.6g、0.010mol)、トリエチルアミン(2g、0.02mol)で鎮め、酢酸エチル100mLで希釈した。混合物をシリカゲル(50g)のパッドで濾過し、結晶が形成されるまで、濾液を回転蒸発器において40℃で濃縮した。混合物を0℃の氷浴で30分間冷却し、結晶を真空濾過によって収集し、冷酢酸エチルで洗浄し、4.13g(収率50%)の恒量になるまで乾燥し、白色粉末を得た。
【0144】
実施例2:3-ヒドロキシ-4-置換-アゼチジン-2-オンの製造
THF中のLHMDSの1M溶液(100mL、0.1mol)を0℃に冷却し、実施例1のように調製したTHF中のトリメチルシリル2-(トリメチルシリルオキシ)アセテート(22.0g、0.1mol)の1M溶液を滴下して、発熱を調節し、温度を0℃〜5℃に維持した。この溶液に、1当量のトリメチルシリルクロリドを添加し、次に、1当量のLHMDSおよび1当量のベンズアルデヒドを攪拌しながら0〜15℃で14時間にわたって添加した。3-トリメチルシリルオキシ-β-ラクタム生成物が、5:1のシス:トランス比において定量的収量で観察された(反応混合物のHNMRによる)。この方法は下記の式4に示されている。
【化51】

【0145】
シリルエーテルのメタノリシスは、触媒量の炭酸ナトリウムを使用して、周囲温度において15分間で容易に行われ、所望の生成物シス-ヒドロキシ-4-置換-β-ラクタムが、酢酸エチルからの濃縮後に48%の単離収率で晶出した。
【0146】
実施例3:3-ヒドロキシ-4-チエニル-アゼチジン-2-オンの製造
典型には、リチウムヘキサメチルジシラジドの1.0M THF溶液(140mL、0.14mol)を窒素下に、THF(140mL)で希釈し、氷水浴で0〜5℃に冷却した。トリメチルシリル2-(トリメチルシリルオキシ)アセテート(33.4g、0.14mol)を20分間にわたって滴下した。このエノラート溶液に、トリメチルシリルクロリド(17.7mL、0.14mol)を添加し、5分間攪拌した後、第二部分のTHF中のLHMDS溶液(100mL、0.10mol)を10分間にわたって添加した。この溶液に2-チオフェンカルボキシアルデヒド(11.2g、0.1mol)を15〜20分間にわたって滴下して、発熱を5℃未満に調節した。この溶液を0〜5℃で14時間攪拌して、イミンを完全に消失させた。
【0147】
反応物を氷酢酸(6g、0.10mol)で中和し、酢酸エチル(400mL)で希釈し、2Lの分液漏斗に移した。混合物を、水(100mL)および塩水(100mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、シリカゲルのパッドで濾過し、濃縮して、黄色固形物を得た。固形物をメタノール(300mL)および固体Na2CO3(1.0g)に取り、混合物を周囲温度で15分間攪拌した。2:1の酢酸エチル:ヘキサンで溶離するTLCモニタは、非極性TMS-エーテル(Rf=0.7)から極性生成物(Rf=0.25)への完全な変換を示した。反応を氷酢酸(0.6mL)で鎮め、混合物を濃縮して、固形物を得た。固形物を熱い酢酸エチル(500mL)に溶解し、不溶性塩をシリカゲルのパッドでの濾過によって除去した。濾液を40℃で回転蒸発下に約40mLの量に濃縮して、結晶形成を誘発した。混合物を周囲温度に冷却し、結晶(8.13g、0.048mol、収率48%)を白色粉末として収集した。さらに、実施例4に記載されるように、反応を炭酸水素ナトリウムで鎮め、1-ブタノールおよび酢酸エチルで抽出する場合に、工程をワンポット操作で好都合に行った。
【0148】
実施例4:種々のアゼチジン-2-オンの製造
ケテンアセタールトリス(トリメチルシリルオキシ)エテンは、市販製品であり、下記の反応式7に示されているように、種々のアルデヒドから出発するβ-ラクタムの合成に使用することができる。従って、ベンズアルデヒドをリチウムヘキサメチルジシラジドのTHF溶液で0℃において処理した場合、N-トリメチルシリルベンズアルジミンが、当量のリチウムトリメチルシラノレートと共に同時に生成した。この混合物をケテンアセタールと共に10〜15℃で14時間攪拌して、反応式5における反応と同様にβ-ラクタムを生成した。このケテンアセタール反応は、我々が試験した種々の芳香族およびエノール化可能脂肪族化合物に一般的であることが見出され(表2参照)、あらゆる場合に、主にシス-β-ラクタムを生成した。
【化52】

【0149】
【表2】

【0150】
反応条件を最適化するために、ケテンアセタールを添加する前に、0.8当量のトリメチルシリルクロリドを添加した。この変更によって、生成物β-ラクタムaの単離収率が66%に増加した(式6)。従って、容易に入手できるベンズアルデヒドおよびトリス(トリメチルシリルオキシ)エテンで開始する単一操作において、我々は、タキサン合成の重要な中間体であるβ-ラクタムaを高純度で得た。
【化53】

【0151】
1つの実験において、THF中のLHMDSの0.5M溶液を、-10〜0℃に冷却し、次に、1.0当量のベンズアルデヒドを15分間にわたって添加して、発熱性イミン反応温度を15℃未満に調節した。反応温度が-10〜-5℃になったら、純トリス(トリメチルシリル)エテン(1.2当量)を添加した。混合物をこの温度で14時間攪拌した。反応の終了を、イミンの消失に関するHNMRによってモニタした。終了した時点で、トリメチルシリルクロリド(1当量)を添加して、リチウムトリメチルシラノレートを揮発性ヘキサメチルジシロキサンに変換した。反応混合物の1/10の量の水で、反応物を2回洗浄して、塩化リチウム塩を除去した。THF溶液に触媒量の1.0M HClを添加し、2時間攪拌して、TLC分析(EtOAc:ヘプタン、3:1)によってモニタされる中間体(Rf=0.8)の完全脱シリル化を行って、生成物(Rf=0.2)を得た。反応物中の塩酸をトリエチルアミンで鎮め、混合物をシリカゲルのパッドで濾過し、次に、回転蒸発下にTHFを酢酸エチルと交換した。結晶を白色固形物として収集し、冷酢酸エチルで洗浄した。β-ラクタムa: 融点140〜145℃;1H NMR(400MHz、CDCl3)(ppm):2.26(d, J=9.4Hz, 1H), 4.96(d, J=4.96Hz, 1H), 5.12(m, 1H), 4.15(bm, 1H), 7.41(m, 5H)
【0152】
別の試験において、ベンズアルデヒドをLHMDSの1.0M THF溶液(100mL、0.1mol)に0℃で添加し、混合物を15分間攪拌し、次に、TMSCl(10mL、0.08mol)を添加した。この溶液に、トリス(トリメチルシリルオキシ)エチレン(40mL、0.12mol)を添加し、混合物を-10〜-5℃で24時間攪拌した。混合物を周囲温度に2時間温め、炭酸水素ナトリウム飽和溶液(25mL)で鎮め、周囲温度で30分間攪拌し、相を分離した。水性相を1-ブタノール(200mL)で逆抽出し、有機相を合わせ、塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、シリカゲルのパッドで濾過し、濃縮して、固形物を得た。固形物を熱い酢酸エチル(800mL)に取り、不溶性固形物をシリカゲルのパッドでの濾過によって除去した。濾液を40℃で回転蒸発下に約15mLの量に濃縮して、結晶形成を誘発した。混合物を周囲温度に冷却し、結晶(10.73g、0.025mL、収率66%)を白色粉末として収集した。β-ラクタムa:融点140〜145℃;1H NMR(400MHz、CDCl3)(ppm):2.26(d, J=9.4Hz, 1H), 4.96(d, J=4.96Hz, 1H), 5.12(m, 1H), 4.15(bm, 1H), 7.41(m, 5H)
【0153】
実施例5:トリメチルシリル2-(トリメチルシロキシ)アセテート
【化54】

グリコール酸(91.2g、2.4mol)を、窒素下の機械攪拌および還流冷却器によって、ピリジン(194g、2.45mol)およびアセトニトリル(600mL)に溶解した。トリメチルシリルクロリド(TMSCl、260g、2.4mol)を、添加漏斗から30分間にわたって添加した。混合物を30分間攪拌し、ヘキサン(250mL)を添加し、相を分離した。底相に2回目のヘキサン(100mL)を添加し、5分間激しく攪拌した。次に、相を分離し、ヘキサン相を合わせ、30℃で回転蒸発下に濃縮して、240g(収率91%)の既知のアセテートを得た。
【0154】
実施例6:トリス(トリメチルシロキシ)エタン
【化55】

LHMDSの0.5M THF溶液(200mL、0.1mol)に、0℃で、トリメチルシリル-2-(トリメチルシロキシ)アセテート(23.9mL、0.1mol)を15分間にわたって滴下し、混合物をこの温度でさらに15分間攪拌して、リチウムエノラートを生成した。トリメチルシリルクロリド(12.5mL、0.1mol)を15分間にわたって添加して、エノラートをトリス(トリメチルシロキシ)エテン生成物として捕捉した。混合物を周囲温度に温め、THF溶媒を40℃で真空回転蒸発によって除去して、塩化リチウムを沈殿させた。混合物をヘキサン300mLおよびトリエチルアミン5mLに取り、5分間攪拌し、塩を沈降させた。上澄みを珪藻土のパッドで2回濾過して、透明溶液を得た。溶液を回転蒸発下に濃縮して、淡黄色油状物を得た。溶液を回転蒸発下に濃縮して、市販製品と同じ淡黄色油状物を得た。沸点:1mmHgにおいて90℃
【0155】
実施例7:N-トリメチルシリル-3-トリメチルシロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化56】

以前に報告されていないN-トリメチルシリルβ-ラクタムをトリメチルシリル-2-トリメチルシロキシ-アセテートから合成するワンポット法は、低温冷却を必要としない有効な経済的方法であることが分かった。発熱反応温度を30℃未満に調節する速度で、乾燥1,2-ジメトキシエタン(505mL)中のヘキサメチルジシラザン(390g、2.42mol)の磁気攪拌溶液に、窒素下に循環冷却機を使用して0℃で、n-ブチルリチウムの2.5M溶液(840mL、2.1mol)を添加して(45分間)、必要とされるLHMDS塩基をインサイチュで生成した。LHMDS溶液温度が10℃未満に達した時に、TMSCl(119.5g、1.1mol)とトリメチルシリル-2-(トリメチルシロキシ)アセテート(240g、1.1mol)との正味混合物を15分間にわたって添加して、トリス(トリメチルシロキシ)エテンをインサイチュで得た。次に、発熱反応温度を25℃未満に調節する速度で、純ベンズアルデヒド(106.12g、1.0mol)を添加して、N-トリメチルシリル-ベンズアルジミンをインサイチュで得た。5.4ppm(CDCl3)におけるケテンアセタール共鳴の消失が12時間の反応時間で生じたことが1HNMRモニタにより示されるまで、混合物を周囲温度(22℃)で反応させた。発熱反応温度を22℃未満に維持しながら、反応混合物を、トリメチルクロロシラン(TMSCl、108.64g、1.0mol)、トリエチルアミン(25.3g、0.25mol)、次に、酢酸(6.0g、0.1mol)で鎮めた。混合物をヘキサン(500mL)で希釈し、得られた塩化リチウム塩を、セライト(200g)のパッドでの濾過によって除去し、次に、フィルターケーキをヘキサン(250mL)で洗浄した。濾液を回転真空蒸発下に濃縮して残渣を得た。残渣をヘキサン(500mL)に取り、-25℃で静置して、結晶形成を誘発した。白色結晶を真空濾過によって収集し、-20℃の冷ヘキサン(200mL)で洗浄し、152gの恒量になるまで乾燥した。濾液を濃縮して残渣を得、ヘキサン(200mL)に取り、前記のように再結晶して、第二収集物32gを得た。HNMR分析によって純粋なシス-N-トリメチルシリル-3-トリメチルシロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンであることを確認した後に、収集物を合わせた(184g、収率60%)。融点:53〜55℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):0.11(s, 9H), 0.14(s, 9H), 4.63(d, J=5.01Hz, 1H), 5.06(d, J=5.01Hz, 1H), 7.31(m, 5H)
【0156】
実施例8:シス-3-トリメチルシロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化57】

ヘキサン(600mL)中のN-トリメチルシリル-3-トリメチルシロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(140g、0.46mol)の溶液に、周囲温度で、トリエチルアミン(101g、1mol)、メタノール(22g、0.7mol)を添加し、混合物を15分間攪拌して、N-脱シリル化生成物の結晶を形成した。混合物を0℃に15分間冷却し、白色結晶を真空濾過によって収集し、冷ヘキサンで洗浄し、94g(収率87%)の恒量になるまで乾燥した。融点:118〜120℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):-0.08(s, 9H), 4.79(d, J=4.4Hz, 1H), 5.09(dd、J=4.4, 2.7Hz, 1H), 6.16(bm, 1H), 7.3〜7.4(m, 5H)
【0157】
実施例9:シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化58】

メタノール(500mL)中のN-トリメチルシリル-3-トリメチルシロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(150g、0.49mol)の不均質溶液に、触媒量のトリメチルクロロシラン(1.08g、1mmol)を添加し、混合物を周囲温度で攪拌して、透明溶液を得た。反応の薄層クロマトグラフィー(TLC)モニタ(酢酸エチルおよびヘキサン(3:1)で溶離)は、15分後に完全な変換が行われたことを示した。反応混合物をトリエチルアミン(10.1g、0.1mol)で鎮め、結晶が形成されるまでメタノールを40℃で回転蒸発下に除去した。酢酸エチル(300mL)を添加し、蒸発を継続して、残留メタノールを除去して、濃厚スラリーを得、次に、0〜5℃で20分間冷却した。白色結晶を真空濾過によって収集し、次に、0℃の冷酢酸エチル(75mL)で洗浄し、前記の所望生成物の恒量75g(収率94%)に乾燥した。
【0158】
実施例10:1-(トリエチルシリルオキシ)-1,2-ビス(トリメチルシリルオキシ)エタン
【化59】

THF(100mL)中のジイソプロピルアミン(15.5mL、0.11mol)の溶液に、-78℃で、n-ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液(70mL、0.11mol)を15分間にわたって添加した。この温度でさらに15分間攪拌した後、トリエチルシリルクロリド(16.7mL、0.1mol)を10分間にわたって添加し、次に、トリメチルシリル-2-(トリメチルシロキシ)アセテート(24.4mL、0.1mol)を30分間にわたって添加した。反応物を-78℃で30分間攪拌し、低温浴を除去することによって周囲温度に温めた。THF溶媒を40℃で真空回転蒸発によって除去して、塩化リチウムを沈殿させた。混合物をヘキサン300mLおよびトリエチルアミン5mLに取り、5分間攪拌し、塩を沈降させた。上澄みを珪藻土のパッドで2回濾過して、透明溶液を得た。溶液を回転蒸発下に濃縮して、淡黄色油状物を、幾何異性体の混合物(4:1)として得た。
【0159】
実施例11:トリエチルシリル-2-(トリエチルシリルオキシ)アセテート
【化60】

グリコール酸(76.05g、1mol)を、乾燥ピリジン(164mL、2mol)に溶解し、混合物を攪拌しながら氷水浴で冷却した。純トリエチルシリルクロリド(115g、1mol)を滴下して、発熱を40℃未満に調節した。塩化ピリジニウムが易流動性固形物として沈殿した。ヘプタン(500mL)を添加して、攪拌を補助した。第二当量の純トリエチルシリルクロリドを添加し、反応が終了するまで混合物を周囲温度(22〜40℃)で30分間攪拌した。混合物をヘプタン(1L)でさらに希釈し、塩を沈殿させた。ヘプタン層を、中孔質インラインフィルターを経て回転蒸発器に吸い入れ、濃縮して、トリエチルシリル-2-(トリエチルシリルオキシ)アセテートエステルの透明油状物(215g、0.98mol)を得た。油状物を真空蒸留によってさらに精製した。沸点:128〜130℃、1.5mmHg
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):0.64(q, J=8.04Hz, 6H), 0.78(q, J=8.04, 6H), 0.97 (t, J=8.04, 2x9H), 4.2(s, 2H)
【0160】
実施例12:トリス(トリエチルシロキシ)エタン
【化61】

エステルを、0.5M THF(200mL、0.1mol)溶液に15分間にわたって添加し、混合物をこの温度でさらに15分間攪拌して、リチウムエノラートを生成した。トリエチルシリルクロリド(16.7mL、0.1mol)を15分間にわたって添加して、エノラートをトリス(トリエチルシロキシ)エテン生成物として捕捉した。混合物を周囲温度に温め、THF溶媒を40℃で真空回転蒸発によって除去して、塩化リチウムを沈殿させた。混合物をヘキサン300mLおよびトリエチルアミン5mLに取り、5分間攪拌し、その間に塩を沈降させた。上澄みを珪藻土のパッドで2回濾過して、透明溶液を得た。溶液を回転蒸発下に濃縮して、淡黄色油状物を得た。
【0161】
実施例13:1,2-ビス(トリエチルシリルオキシ)-1-(トリメチルシリルオキシ)エテン
【化62】

THF(100mL)中のジイソプロピルアミン(15.5mL、0.11mol)の溶液に、-78℃で、n-ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液(70mL、0.11mol)を15分間にわたって添加した。この温度でさらに15分間攪拌した後、トリエチルシリルクロリド(16.7mL、0.1mol)を10分間にわたって添加し、次に、トリエチルシリル-2-(トリエチルシロキシ)アセテート(37.6g、0.1mol)を30分間にわたって添加した。反応物を-78℃で30分間攪拌し、低温浴を除去することによって周囲温度に温め、THF溶媒を40℃で真空回転蒸発によって除去して、塩化リチウムを沈殿させた。混合物をヘキサン300mLおよびトリエチルアミン5mLに取り、5分間攪拌し、塩を沈降させた。上澄みを珪藻土のパッドで2回濾過して、透明溶液を得た。溶液を回転蒸発下に濃縮して、淡黄色油状物を幾何異性体の1:1混合物として得た。
【0162】
実施例14:シス-3-トリエチルシロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化63】

発熱反応温度を30℃未満に調節する速度で、乾燥1,2-ジメトキシエタン(50mL)中のヘキサメチルジシラザン(39g、0.242mol)の磁気攪拌溶液に、窒素下に循環冷却機を使用して0℃で、n-ブチルリチウムの2.5M溶液(84.0mL、0.21mol)を添加して(15分間)、必要とされるLHMDS塩基をインサイチュで生成した。LHMDS溶液温度が-30℃未満に達した時に、TMSCl(12g、0.11mol)の正味溶液を添加し、トリエチルシリル-2-(トリエチルシロキシ)アセテート(33.5g、0.11mol)を15分間にわたって添加して、1,2-ビス(トリエチルシリルオキシ)-1-(トリメチルシリルオキシ)エテンを、幾何異性体の混合物(6:1)としてインサイチュで得た。次に、発熱反応温度を-25℃未満に調節する速度で、純ベンズアルデヒド(10.6g、0.10mol)を添加して、N-トリメチルシリル−ベンズアルジミンをインサイチュで得た。ヘキサン溶媒を真空除去し、5.43ppm(CDCl3)におけるケテンアセタール共鳴の消失が14時間の反応時間後に生じたことが1HNMRモニタにより示されるまで、混合物を周囲温度(22℃)で反応させた。発熱反応温度を22℃未満に維持しながら、反応混合物を、トリメチルクロロシラン(TMSCl、10.8g、1.0mol)、トリエチルアミン(2.53g、0.025mol)および酢酸(0.60g、0.01mol)で鎮めた。混合物をヘキサン(50mL)で希釈し、得られた塩化リチウム塩を、セライト(20g)のパッドでの濾過によって除去し、次に、フィルターケーキをヘキサン(25mL)で洗浄した。濾液を回転真空蒸発下に濃縮して残渣を得た。残渣を、ヘキサン(50mL)、トリエチルアミン(5mL)およびメタノールに周囲温度で取り、15分間攪拌した。混合物のTLC分析(酢酸エチル:ヘキサン(2:1)で溶離)は、10分間の反応時間後に所望生成物(Rf=0.45)への完全な変換を示した。次に、混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、シリカゲル(25g)のパッドで濾過し、結晶が形成されるまで濃縮した。結晶を真空濾過によって収集し、ヘキサンで洗浄し、7.68gの恒量の白色易流動性粉末に乾燥した。周囲温度で2時間静置した後に、濾液から第二収集物2.8gを得た。合わせた収率は38%であった。融点:98〜100℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):0.44(m, 6H), 0.78(t, J=8.0Hz, 9H), 4.80(d, J=4.80, 1H), 5.08(dd, 4.80, 2.80, 2H), 6.18(bs, 1H), 7.28〜7.38(m, 5H)
【0163】
実施例15:シス-N-t-ブトキシカルボニル-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化64】

ラセミシス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(100g、0.61mol)を、THF(2.7L)に、周囲温度において約25mL/gで溶解し、次に、-10〜-15℃に冷却した。TsOH一水和物触媒(3.5g、0.018mol、3mol%)を添加し、次に、2-メトキシ-2-プロペン(65mL、1.1〜1.2当量)を滴下して、発熱反応を調節した。反応をTLCによってモニタし、2-メトキシ-2-プロペン(2.9mL)を、出発物質が消失するまで必要に応じて添加した。トリエチルアミン(85mL、0.612mol)を添加して、TsOH触媒を鎮めた。ジ-tert-ブチルジカーボネート(160.5g、0.735mol、1.2当量)をDMAP(2.25g、0.018mol、3mol%)と共に添加し、反応を、周囲温度で、終了するまで進めた。混合物を、使用したTHFとほぼ同量のヘプタン(1.97L)で希釈し、シリカゲル(100g)床で濾過して、極性触媒を除去した。フィルターケーキを酢酸エチル:ヘプタンの1:1混合物1Lで洗浄して、完全な生成物回収を確実にした。結晶形成が生じるまで濾液を濃縮した。結晶を収集し、2%トリエチルアミンを含有する氷冷ヘプタンで洗浄した。粉末を、真空下に(0.1mmHg)、周囲温度(22℃)で161.0g(0.48mol、78%)の恒量になるまで乾燥した。融点:90〜92℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):0.92(s, 3H), 1.21(s,3H), 1.37(s, 9H), 1.58(s, 3H), 3.12(s, 3H), 5.03(d, J=5.69Hz, 1H), 5.17(d, J=5.69Hz, 1H), 7.33(m, 5H)
【0164】
実施例16:ラセミシス-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化65】

無水ジメトキシエタン(200mL)中のヘキサメチルジシラザン(HMDS、460mL、2.2mol)の溶液に、0℃で、n-ブチルリチウムの2.5M溶液(nBuLi、800mL、2.0mol)を45分間にわたって添加して、反応温度を40℃未満に維持した。添加後に、ベンズアルデヒドを反応混合物に1時間にわたって添加して、反応温度を40℃未満に維持した。添加後に、混合物を0℃に冷却し、トリス(トリメチルシロキシ)エタン(643g、2.2mol)を添加し、混合物を、反応が終了するまで(12時間)攪拌し、反応の終了は、エテン出発物質の消失によって確認した。反応混合物を、トリメチルシリルクロリド(TMSCl、217.28g、1.0当量)、トリエチルアミン(50mL)および酢酸(20mL)で鎮め、酢酸エチル(1.0L)で希釈した。リチウム塩を、焼結漏斗での濾過によって除去した。濾液を濃縮乾固した。固形物をヘプタン(1.0L)に取り、メタノール(96g、1.5当量)で20〜40℃において処理して、生成物の結晶を得た。固体生成物をブフナー漏斗での真空濾過によって収集し、ヘプタン中15%の冷酢酸エチルで洗浄した。固形物を酢酸エチル(1.5L)に取り、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム(200g)で乾燥し、濃縮して、白色粉末を得た。融点:118〜120℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):-0.08(s, 9H), 4.79(d, J=4.4Hz, 1H), 5.09(dd, J=4.4、2.7Hz, 1H), 6.16(bm, 1H)、7.3〜7.4(m,5H)
【0165】
実施例17:ラセミシス-N-t-ブトキシカルボニル-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化66】

ラセミシス-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(11.5g、48.9mmol)を、テトラヒドロフラン(THF、250mL)に、周囲温度で窒素下に溶解し、ジ-tert-ブチルジカーボネートをN,N-4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.185g、1.5mmol)と共に添加し、混合物を、ガスの発生が止むまで磁気攪拌した。混合物をシリカゲル(10g)床で濾過し、回転蒸発器で濃縮して、白色固体生成物を得た。生成物を冷ヘプタン(50mL)で洗浄し、真空濾過によって収集し、周囲温度で真空下に(0.2mmHg)、12.3g(収率75%)の恒量になるまで乾燥した。融点:75〜77℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):-0.07(s, 9H), 1.38(s, 9H), 5.01(d, J=5.6Hz, 1H), 5.06(d, J=5.6Hz, 1H), 7.26〜7.38(m, 5H)
【0166】
実施例18:ラセミ(±)-シス-N-t-ブトキシカルボニル-3-ジフェニルメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化67】

THF(70mL)中のラセミ(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(4.5g、27.8mmol)の溶液に、窒素下に、トリエチルアミン(8.4g、83.4mmol)、DMAP(100mg、0.83mmol)を添加し、0℃に冷却した。ジフェニルメチルシリルクロリド(7.1g、30.6mmol)を滴下し、TLC(酢酸エチルとヘキサンとの3:1混合物で溶離)によって示される出発物質の完全消失まで、混合物を0℃で30分間攪拌した。ジ-tert-ブチルジカーボネート(Boc2O、6.68g、30.6mmol)を添加し、混合物を周囲温度で3時間攪拌して、TLC(3:1 酢酸エチル:ヘプタン)によって示される所望生成物への完全な変換を得た。混合物をヘプタン(150mL)で希釈し、シリカゲル(20g)で濾過し、濾液を濃縮して固形物を得た。固形物をヘプタン(150mL)から再結晶して、白色粉末(9.5g、74%)を得た。融点:98℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):0.46(s, 3H), 1.39(s, 9H), 4.94(d, J=5.5Hz, 1H), 5.04(d, J=5.5Hz, 1H), 7.2〜7.4(m 15H)
【0167】
実施例19:(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-(2-フリル)-アゼチジン-2-オンの分離
(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-(2-フリル)-アゼチジン-2-オン(500g、3.265mol)を、0.5当量のp-トルエンスルホニルクロリド(335.53g、1.76mol)および1-メチルイミダゾール(303.45g、3.7mol)の存在下に、-78℃で12時間にわたってN-t-Boc-L-プロリン(378.83g、1.76mol)で処理した。混合物をシリカゲル5kgで濾過した。t-Boc-L-プロリンエステルの望ましくない(-)-β-ラクタムエナンチオマーを、水でのトリチュレーションによって除去した。2-メチル-1-プロパノールを用いた水の共沸除去によって所望のエナンオマーを回収し、酢酸エチルから再結晶して、所望の(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-(2-フリル)-アゼチジン-2-オンを得た。酢酸エチルからの再結晶後の光学純度は98%超であった。融点:133〜135℃。[α]20D=+109.5(MeOH, c=1.0)、1H NMR(400MHz、CDCl3)(ppm):2.69(bs, 1H), 4.91(d, J=4.96Hz, 1H), 5.12(bs, 1H), 6.10(bs, 1H), 6.34(dd, J=3.32, 3.32Hz, 1H), 6.47(d, J=3.32Hz, 1H), 7.49(m, 1H)
【0168】
実施例20:(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンの分離
(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(60g、0.368mol)を、0.5当量のp-トルエンスルホニルクロリド(35g、0.184mol)および1-メチルイミダゾール(45mL、0.56mol)の存在下に、-78℃で12時間にわたってN-cBz-L-プロリン(45g、0.184mol)で処理した。反応混合物を濃縮し、シリカゲルで濾過して、1-メチルイミダゾリウムトシラート塩を除去した後に、所望のジアステレオマーを酢酸エチルから結晶化して、白色固形物14.5g(48%)を得た。このプロトコールはエナンチオマー混合物の動的分離を生じて、所望の(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンを与えた。酢酸エチルからの再結晶後の光学純度は98%超であった。融点:175〜180℃;[α]57820=+202(MeOH, c=1.0)、1H NMR(400MHz、CDCl3)(ppm):2.26(d, J=9.4Hz, 1H), 4.96(d, J=4.96Hz, 1H), 5.12(m, 1H), 4.15(bm, 1H), 7.41(m, 5H)
【0169】
実施例21:(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンの動的分離
【化68】

乾燥250mL丸底フラスコに、アセトニトリル(50mL)および1-メチル-イミダゾール(28g、0.2mol)を窒素下に添加し、混合物を0〜5℃に冷却した。メタンスルホニルクロリド(MsCl、17.44g、0.1mol)を混合物にゆっくり添加して、発熱反応を調節した。反応温度が0〜-5℃に低下した後に、N-cBz-L-プロリン(25g、0.1mol)を添加し、混合物をこの温度で30分間攪拌した。分離3Lフラスコにおいて、窒素下に、ラセミ(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(16.3g、0.1mol)をアセトン(1L)に溶解し、-65〜-78℃に冷却し、機械的に攪拌した。温度が-65℃未満に達したら、プロリン試薬を含有するフラスコの含有物を、ラセミ出発物質のアセトン溶液に添加した。混合物をこの温度で最低6時間維持し、白色沈殿物が観察された。沈殿物を沈降させ、上澄みを、真空吸引によって浸漬フィルターを経て冷溶液(約-45℃)として回転蒸発器に移した。アセトンを除去し、酢酸エチル(500mL)およびトリエチルアミン(50g、5当量)塩基と交換した。得られた塩を濾過によって除去し、濾液を約100mLに濃縮し、結晶形成を生じさせた。結晶をブフナー漏斗での真空濾過によって収集し、冷酢酸エチルで洗浄し、真空下(0.1mmHg)に周囲温度で7.5g(収率46%)の恒量になるまで乾燥した。
【0170】
式7に従って、1H NMRによって、Boc-L-プロリンを使用して、β-ラクタムのジアステレオマーエステルの比率(SSS:RRS)によって、動的分離の有効性を確認した。表3において、TsClはトシルクロリドであり、Boc2Oはジ-tert-ブチルジカーボネートであり、MsClはメシルクロリドであり、MstClはメシチルクロリドである。
【化69】

【0171】
【表3】

【0172】
実施例22:(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンの古典的分離
【化70】

前記の動的分離の代替法として、プロリンエステルのジアステレオマー混合物を、酢酸エチルからの再結晶によって分離した。次にプロリンエステルを別々に加水分解して、β-ラクタムの両方のエナンチオマーを得、キラルアミノ酸を回収する。従って、アセトニトリル(80mL)中のN-メチル-イミダゾール(12g、150mmol)の溶液に、0℃で、メタンスルホニルクロリド(MsCl、5.7g、50mmol)を添加し、発熱反応温度が0℃で安定するまで15分間攪拌した。この溶液に、N-Boc-L-プロリン(11g、50mmol)を少しずつ添加し、0℃で30分間攪拌した。ラセミ(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(8.2g、50mmol)を少しずつ添加し、TLCモニタ(3:1 酢酸エチル:ヘキサン)が1時間後にエステル生成物への完全な変換を示すまで、混合物をこの温度で攪拌した。アセトニトリル溶媒を40℃で回転蒸発下に除去し、残渣を酢酸エチル(500mL)に取り、水(100mL)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を真空濾過によって除去し、濾液を濃縮して固形物18gを得た。混合物の一部(7g)を40℃の酢酸エチル(60mL)に取り、結晶(1.5g)を40℃で形成し、結晶を収集し、該結晶は(2S)-tert-ブチル(3R,4S)-2-オキソ-4-フェニルアゼチジン-3-イルピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの所望の3R,4S-ジアステレオマーであることが示された。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):このジアステレオマーは、5.12ppm低磁場における多重項から、エステル化生成物における二重項の二重項対(J=4.68, 2.57Hz)としての5.8ppmへの出発物質C(3)-カルビノールプロトンの特徴的化学シフト変化によって典型的に表されるようなNMR時間スケールにおいて1.7:1(δ(ppm)5.84:5.87)ジアステレオマー対として存在する。
【0173】
濾液を周囲温度で5時間静置して、第二結晶形を得(2.4g)、該結晶は(2S)-tert-ブチル(3S,4R)-2-オキソ-4-フェニルアゼチジン-3-イルピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの3S,4R-ジアステレオマーであることが示された。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):このジアステレオマーは、5.12ppm低磁場における多重項から、エステル化生成物における二重項の二重項対(J=4.68, 2.57Hz)としての5.9ppmへの出発物質C(3)-カルビノールプロトンの特徴的化学シフト変化によって典型的に表されるようなNMR時間スケールにおいて1:1.9(δ(ppm)5.90:5.94)ジアステレオマー対として存在する。
【0174】
古典的熱力学支配分離が動的分離と異なる点は、理論量の試薬が使用され、注意深い低温調節が不可欠でないことである。しかし、古典的分離は、所望のC3-ヒドロキシ置換β-ラクタムを回収するために、ジアステレオマーエステルを脱エステル化する1つの付加的工程を必要とする。
【0175】
実施例23:光学活性(+)-シス-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化71】

光学活性(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(3.4g、20.8mmol)を、トリエチルアミン(5.8g、57.4mmol)およびDMAP(76mg、0.62mmol)と共に、0℃でTHF(30mL)に溶解した。トリメチルシリルクロリド(2.4g、22mmol)を滴下し、混合物を30分間攪拌した。TLC(3:1 酢酸エチル:ヘプテン)は、より低い極性の生成物への完全な変換を示した。混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(15mL)、塩水(15mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(5g)で乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、濾液を濃縮し、溶媒をヘプタン(50mL)と交換して、白色粉末を得た。粉末を、ブフナー漏斗での真空濾過によって収集し、真空下に(<1mmHg)周囲温度で乾燥して、3.45g(収率72%)の恒量になるまで乾燥した。融点:120〜122℃。[α]22578=+81.9(MeOH, 1.0)、1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm):-0.08 (s, 9H), 4.79 (d, J= 4.4 Hz, 1H), 5.09 (dd, J=4.4, 2.7 Hz, 1H), 6.16 (bm, 1H), 7.3 to 7.4 (m, 5H)
【0176】
実施例24:光学活性(+)-シス-N-t-ブトキシカルボニル-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化72】

THF(10mL)中の光学活性(+)-シス-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(0.95g、4mmol)の溶液に、トリエチルアミン(1.1g、5mmol)、DMAP(15mg、0.12mmol)およびジ-tert-ブチルジカーボネート(Boc2O、5.04g、5mmol)を添加した。混合物を、ガスの発生が止むまで周囲温度で攪拌し、より低い極性の生成物への完全な変換が、TLC(2:1 酢酸エチル:ヘプタン)によって観察された。反応混合物をヘプタン(20mL)で希釈し、シリカゲル(10g)のパッドで濾過し、結晶形成が生じるまで30℃で回転蒸発器において濃縮した。結晶をブフナー漏斗での真空濾過によって収集し、冷ヘプタンで洗浄し、真空下に(<1mmHg)周囲温度で乾燥して、0.87g(65%)の恒量になるまで乾燥した。融点:85〜88℃。[α]22578=+106.9(MeOH, 1.0)、1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm):-0.07 (s, 9H), 1.38 (s, 9H), 5.01 (d, J=5.6 Hz, 1H), 5.06 (d, J=5.6 Hz, 1H), 7.26 to 7.38 (m, 5H)
【0177】
実施例25:(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンからの(+)-シス-N-ベンゾイル-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化73】

(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(13.67g、83.8mmol)を、無水THF(275mL)に、窒素下に20mL/gの濃度で溶解し、-15〜-10℃に冷却し、TsOH一水和物(0.340g、1.8mmol)を添加した。この温度で、2-メトキシ-2-プロペン(6.49g、90mmol)を反応に滴下した。反応混合物の試料を酢酸エチル中の5%TEAで鎮め、中間体への変換をTLC(3:1 酢酸エチル:ヘプタン)によってモニタした。反応が終了した時点で、トリエチルアミン(25.5g、251mmol)およびDMAP(0.220g、1.8mmol)を添加した。塩化ベンゾイル(12.95g、92.18mmol)を反応混合物に添加し、次に、周囲温度に温め、(+)-シス-N-ベンゾイル-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-4-フェニル-アゼチジン-2-オンへの変換が終了するまで(3〜5時間)攪拌した。混合物を、THFと同量のヘプタンで希釈した。固体塩を濾過によって除去し、混合物を、水、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液および塩水で洗浄した。有機相をシリカゲルで濾過し、結晶が形成されるまで濾液を濃縮した。固形物を真空濾過によって収集し、ヘプタン:トリエチルアミン(95:5)で洗浄して白色固形物(21.0g、61.9mmol、収率74%)を得た。融点:98〜100℃。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.99 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 3.15 (s, 3H), 5.27 (d, J=6.3 Hz, 1H), 5.41 (d, J=6.3 Hz, 1H), 7.30 to 7.43 (m, 5H), 7.47 (t, J=7.54 Hz, 2H), 7.59 (m, J=7.54 Hz, 1H)), 8.02 (m, J=7.54 Hz, 2H)
【0178】
実施例26:7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-10-DAB
【化74】

典型的には、10-DAB(108.96g、0.20mol)を、約20〜25mL/g(2.2L)のTHFに、2.5当量のDMAP(61.08g、0.5mol)と共に溶解した。TLC(3:1 酢酸エチル/ヘプタン)により生成物への変換が終了するまで、この溶液に、1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(42.67g、0.21mol)を周囲温度で添加した。次に、反応混合物をヘプタン(2L)で希釈して、DMAP-HCl塩を沈殿させ、シリカゲル(104.5g)で濾過した。フィルターケーキを、酢酸エチルおよびヘプタンの1:1混合物(800mL)で洗浄して、完全な生成物回収を確実にした。濾液をトリエチルアミン(14mL)で安定化し、結晶が形成されるまで濃縮した。混合物を0℃に30分間冷却し、白色固形物をブフナー漏斗によって収集し、ヘプタン(500mL)中の氷冷20%酢酸エチルで洗浄した。フィルターケーキを真空下(0.1mmHg)に50℃で109gの恒量になるまで乾燥した。濾液をシリカゲルで濾過し、濃縮して、第二収集の結晶13.2gを得た。合計収量は、99.2%HPLC純度において122.2g(0.18mol、90%)であった。融点:220〜223℃。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.07 (s, 3H), 0.11 9 (s, 3H), 0.14 (s, 3H), 0.41 (s, 3H), 1.09 (s, 6H), 1.51 (s, 1H), 1.89 (ddd, J=13.9, 12.4,2.2 Hz, 1H), 1.99 (d, J=4.6 Hz) 1.56 (s, 3H), 2.04 (bs, 3H), 2.27 (m, 1H), 2.29 (s, 3H), 2.33 (m, 1H), 3.92 (d, 7.5 Hz, 1H), 4.19 (d, J=8.5 Hz, 1H), 4.3 (d, J=8.5 Hz, 1H), 4.51 (dd, J=10.6,6.7 Hz, 1H), 4.87 (bm, 1H), 4.95 (dd, J=9.4, 1.7 Hz, 1H), 5.60 (d, J=7.5, 1H), 5.61 (s, 1H), 7.48 (dd, J=7.8,7.7 Hz, 2H), 7.6 (dd, J=7.8, 7.7 Hz, 1H)8.1 (d J=7.8, 2H)
【0179】
実施例27:7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-エタンジイル)-10-DAB
【化75】

10-DAB(0.544g、1mmol)を、約20〜25mL/g(10mL)のTHFに、2.5当量のDMAP(0.3g、2.5mmol)と共に溶解した。TLC(3:1 酢酸エチル/ヘプタン)により生成物への変換が終了するまで、この溶液に、1,2-ビス(クロロジメチルシリル)エタン(0.215g、1mol)を周囲温度で添加した。次に、反応混合物をヘプタン(20mL)で希釈して、DMAP-HCl塩を沈殿させ、シリカゲル(10g)で濾過した。フィルターケーキを、酢酸エチルおよびヘプタンの1:1混合物(20mL)で洗浄して、完全な生成物回収を確実にした。濾液をトリエチルアミン(0.5mL)で安定化し、結晶が形成されるまで濃縮した。混合物を0℃に30分間冷却し、白色固形物をブフナー漏斗によって収集し、ヘプタン(10mL)中の氷冷20%酢酸エチルで洗浄した。フィルターケーキを真空下(0.1mmHg)に50℃で0.58g(収率85%)の恒量になるまで乾燥した。融点:191〜193℃。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.05 (s, 3H), 0.9 (s, 3H), 0.17 (s, 3H), 0.33 (s, 3H), 0.43 (m, 1H), 0.57 (dd, J=11.8, 5.6 Hz, 2H), 0.78 (m, 1H), 1.05 (s, 3H), 1.10 (s, 3H), 1.54 (s, 1H), 1.69 (s, 3H), 1.87 (m, J=14.1, 12.6, 4.2, 1.9 Hz, 1H), 2.06 (d, J=1.2 Hx, 3H), 2.11 (d, J=5.0 Hz, 1H), 2.26 (m 1H), 2.27, (s, 3H), 2.32 (m, 1H), 3.92 (d, J=6.8 Hz, 1H), 4.15 (d, J=8.5), 4.28 (d, J=8.5 Hz), 4.31 (dd, J=10.1, 6.5 Hz, 1H), 4.84 (m, 15.2, 5.4, 7.7 Hz), 4.92 (dd, J=9.7, 2.0 Hz, 1H), 5.46 (s, 1H), 5.57 (d, J=7.3, 1H), 7.48 (dd, J=7.8,7.7 Hz, 2H), 7.6 (dd, J=7.8, 7.7 Hz, 1H)8.1 (d J=7.8, 2H)
【0180】
実施例28:7,10-O-(1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,3,5-トリシロキサンジイル)-10-DAB
【化76】

10-DAB(0.544g、1mmol)を、約20〜25mL/g(10mL)のTHFに、2.5当量のDMAP(0.3g、2.5mmol)と共に溶解した。TLC(3:1 酢酸エチル/ヘプタン)により生成物への変換が終了するまで、この溶液に、1,5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサン(0.277g、1mol)を周囲温度で添加した。次に、反応混合物をヘプタン(20mL)で希釈して、DMAP-HCl塩を沈殿させ、シリカゲル(10g)で濾過した。フィルターケーキを、酢酸エチルおよびヘプタンの1:1混合物(20mL)で洗浄して、完全な生成物回収を確実にした。濾液をトリエチルアミン(0.5mL)で安定化し、結晶が形成されるまで濃縮した。混合物を0℃に30分間冷却し、白色固形物をブフナー漏斗によって収集し、ヘプタン(10mL)中の氷冷20%酢酸エチルで洗浄した。フィルターケーキを真空下(0.1mmHg)に50℃で0.65g(収率87%)の恒量になるまで乾燥した。融点:240〜242℃。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.06 (s, 6H), 0.09 (1, 3H), 0.15 (s, 3H), 0.16 (s, 3H), 0.29 (s, 3H), 1.05 (s, 3H),1.19 (s, 3H), 1.56 (s, 1H), 1.70 (s, 3H), 1.89 (m, 1H), 1.96 (d, J=5.3 Hz, 1H), 2.10 (d, J=1.0 Hz, 3H), 2.27 (m, 1H), 2.29 (s, 3H), 2.42 (m, 1H), 3.96 (d, J=7.1 Hz, 1H), 4.17 (d, J=8.1 Hz, 1H), 4.29 (d, J=8.1 Hz, 1H), 4.49 (dd, J=10.0, 6.9 Hz, 1H), 4.85 (m, 1H), 4.94 (dd, J=9.6, 1.9 Hz, 1H), 5.63 (s, 1H), 5.64 (d, 6.75 Hz, 1H), 7.47 (dd, J=7.8,7.7 Hz, 2H), 7.59 (dd, J=7.8, 7.7 Hz, 1H)8.11 (d J=7.8, 2H)
【0181】
実施例29:ドセタキセル
【化77】

10-DABから開始して、C(7)およびC(10)ヒドロキシ基を、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン(即ち、式(4)の架橋珪素に基づく保護基;ここで、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、L1およびL2はクロロであり、Zは-O-である)で保護し;環状中間体(29)(ここで、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、Zは-O-である)を、酢酸エチルおよびヘプタンからの再結晶後に収率95%で得た。中間体(29)とβ-ラクタム側鎖先駆物質(36)(ここで、P2はMOPである)とのカップリングを、LHMDSおよび3当量のラセミ(36)を使用して動的分離下に行い;中間体(410)(ここで、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、P2はMOPであり、Zは-O-である)を、ジクロロメタンおよびヘプタンからの再結晶後に収率90%で得た。簡単な希塩酸脱保護によって、イソプロパノールおよびヘプタンからの再結晶後にドセタキセルを収率75%で得た。
【0182】
実施例30:2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセル
【化78】

7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-10-DAB(0.67g、0.99mmol)およびシス-N-t-ブトキシ-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(1.0g、3当量)を、窒素下に無水THF(5mL)に溶解し、次に、-45℃に冷却した。THF中1.0MのLHMDS(1.2mL、1.1当量)を滴下して、発熱を調節した。反応を-35℃未満で2〜5時間進めた。反応を、酢酸エチル(25mL)中の酢酸(1.2当量)の溶液で鎮め、炭酸水素ナトリウム(5mL)および塩水(5mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(7g)で乾燥し、シリカ(7g)で濾過し、濃縮した。1%トリエチルアミンを含有する最少量のジクロロメタン(1mL)に残渣を取り、ヘプタン(15mL)に添加し、過剰のβ-ラクタムをすりつぶした。単一ジアステレオマーとしての生成物(0.88g、88%)をブフナー漏斗によって収集し、ヘプタンで洗浄した。融点:235〜238℃。1H NMR (MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.07 (s, 3H), 0.08 (s, 3H), 0.12 (s, 3H), 0.41 (s, 3H), 1.08 (s, 3H), 1.12 (s, 3H), 1.25 (s, 3H), 1.30 (s, 3H), 1.32 (s, 9H), 1.53 (s, 1H), 1.67 (s, 3H), 1.90 (bs, 3H), 1.92 (m, 1H), 2.07 (m, 1H), 2.30 (m, 2H), 2.50 (s, 3H), 2.66 (bs, 3H), 3.84 (d, J=6.9 Hz, 1H), 4.22 (d, J=8.7 Hz, 1H), 4.32 (d, J=8.7 Hz, 1H), 4.48 (dd, J=9.9, 6.4 Hz, 1H), 4.50 (d, J=3.3 Hz, 1H), 4.95 (m, J=8.6, 1H), 5.22 (bm, 1H), 5.49 (bm,1H), 5.57 (s, 1H), 5.65 (d, J=6.9 Hz, 1H), 6.24 (bm, 1H), 7.24 (m, 1H), 7.30 (d, J=7.2, 2H), 7.37 (dd, J=7.2, 7.2, 2H), 7.51 (dd, J=8.0, 7.5 Hz, 2H), 7.60 (dd,J=8.0, 7.2 Hz, 1H), 8.11 (d, J=7.5 Hz, 2H)
フレキシブル側鎖プロトン化学シフトは、CDCl3溶媒中の水レベルに依存して変動を示す。
【0183】
実施例31:ドセタキセル
【化79】

アセトニトリル(580mL)中の2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセル(38.38g、38.2mmol)、次に、0.2M HCl(115mL)を添加し、混合物を周囲温度(22℃〜25℃)で2〜3時間、TLC(3:1 酢酸エチル:ヘプタン)により生成物(Rf=0.15)への完全な変換が観察されるまで攪拌した。次に、生成物混合物を酢酸エチル(580mL)で希釈し、水(290mL)、塩水(150mL)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(290mL)、塩水(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(60g)で乾燥した。混合物をシリカゲル(30g)で濾過し、フィルターケーキを酢酸エチル(350mL)で濯いだ。合わせた濾液を約192mLに濃縮し、次に、ヘプタン(550mL)を添加して、結晶化を誘導した。混合物をさらに濃縮して、約200mLの溶媒を除去した。混合物を周囲温度に冷却し、結晶をブフナー漏斗での真空濾過によって収集し、結晶を、98.3%HPLC純度において30.57g(収率99.3%)の恒量になるまで乾燥した。融点:186〜188℃、元素分析:%C:理論値63.93、実測値63.38、%H:理論値6.61、実測値6.59
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.13 (s, 3H, H-17), 1.24 (s, 3H, H-16), 1.34 (s, 9H, H-t-Boc), 1.64 (s, 1H, HO-1), 1.76 (s, 3H, H-19), 1.85 (s, 3H, H-18), 1.79 to 1.88 (m, 1H, H-6), 2.27 (m, J=8.8 Hz, 2H, H-14), 2.38 (s, 3H, Ac-4), 2.60(m, 1H, H-6), 3.32 (bd, J=4.8 Hz, 1H, HO-2’), 3.92 (d, J=6.9 Hz, 1H, H-3), 4.18 (d, J=8.5 Hz, 1H, H-20), 4.19 (bs, 1H, HO-10), 4.23 (m, 1H, H-7), 4.32 (d, J=8.5 Hz, 1H, H-20), 4.62 (bm, 1H, H-2’), 4.94 (m, 1H, H-5), 5.20 (bd, J=1.7 Hz, H-10), 5.26 (bm, 1H, H-3’), 5.40 (bd, J=9.6 Hz, H-N), 5.68 (d, J=6.9 Hz, 1H, H-2), 6.22 (bm, 1H, H-13), 7.29 to 7.4 (m, 5H, H-Ph), 7.50 (dd, J=7.9, 7.6 Hz, 2H, H-mBz), 7.62 (dd, J=7.25, 7.6 Hz, 1H-pBz), 8.10 (d, J=7.9 Hz, 2H, H-oBz)
文献と一致:(a) Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals, 2004;47:763-777、および(b) Tetrahedron, 1989, 45:13, p.4177-4190
【0184】
実施例32:2’-(トリメチルシリルオキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセル
【化80】

7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-10-DAB(4.29g、6.4mmol)およびN-t-ブトキシカルボニル-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(6.4g、19.1mmol)を、窒素下に無水THF(43mL)に溶解し、次に、-45℃に冷却した。LHMDS(1.2mL、1.1当量、THF中1.0M)を滴下して、発熱を調節した。反応を-45℃未満で5時間進めた。反応を、酢酸エチル(50mL)中の酢酸(1.2当量)の溶液で鎮め、炭酸水素ナトリウム(10mL)および塩水(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(10g)で乾燥し、シリカ(10g)で濾過し、濃縮して、固形物を得た。固形物をメタノールから再結晶し、真空下に(<1mmHg)周囲温度で乾燥した後に、白色粉末3.6g(55%)を単一ジアステレオマーとして得た。融点:248〜250℃。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: -0.12 (s, 9H), 0.08 (s, 3H), 0.09 (s, 3H), 0.12 (s, 3H), 0.42 (s, 3H), 1.12 (s, 3H), 1.27 (s, 3H), 1.31 (s, 9H), 1.54 (s, 1H), 1.68 (s, 3H), 1.88 (s, 3H), 1.86 to 1.96 (m, 1H), 2.08 to 2.18 (m, 1H), 2.26 to 2.43 (m, 2H), 2.54 (s, 3H), 3.85 (d, J=7.2 Hz, 1H), 4.24 (d, J=8.5 Hz, 1H), 4.32 (d, J=8.5 Hz, 1H), 4.45 (bs, 1H), 4.50 (dd, J=6.8, 10.3 Hz, 1H), 4.96 (m, J=8.5 Hz, 1H), 5.29 (m, J=8.5 Hz, 1H), 5.52 (bm, J= 8.5 Hz, 1H), 5.57 (s, 1H), 5.66 (d, J=7.5 Hz, 1H), 6.31 (bt, J=8.6 Hz, 1H), 7.3 to 7.41 (m, 5H), 7.48 (dd, J=6.9, 8.4 Hz, 2H,) 7.59 (dd, J=6.9, 7.5, 1H), 8.12 (d, J=7.5 Hz, 2H)
【0185】
実施例33:2’-(トリメチルシリルオキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセル
THF(10mL)中の7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-10-DAB(0.84g、1.24mmol)の溶液に、-45℃で窒素下に、ヘキサン中の1.0Mブチルリチウム(0.93mL)を添加した。この温度で30分後、THF(2mL)中の(+)-N-t-ブトキシカルボニル-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(0.5g、1.5mmol)の溶液を添加し、混合物を攪拌し、0℃に4時間温めた。反応を、トリエチルアミン(1当量)および酢酸(1当量)で鎮め、ヘプタン25mLで希釈し、シリカゲル(30g)で濾過した。濾液を回転蒸発によって濃縮して、白色結晶(0.69g、55%)を得た。粗生成物の1HNMRは、2’-(トリメチルシリルオキシ)-7,10-O- (1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセルの構造と一致していた。
【0186】
実施例34:2’-(トリメチルシリルオキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセルの脱保護
アセトニトリル(2.5mL)中の2’-(トリメチルシリルオキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセル(0.5g、0.495mmol)の溶液に、周囲温度で、0.2M HClの溶液を添加し、生成物(Rf=0.15)への完全な変換がTLC(3:1 酢酸エチル:ヘプタン)によって観察されるまで、混合物を周囲温度(22℃〜25℃)で2〜3時間攪拌した。次に、混合物を酢酸エチル(5mL)で希釈し、水(2mL)、塩水(2mL)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(2mL)、塩水(2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(6g)で乾燥した。混合物をシリカゲル(5g)で濾過し、フィルターケーキを酢酸エチル(5mL)で濯いだ。合わせた濾液を約1mLに濃縮し、ヘプタン(5mL)を添加して、結晶化を誘発した。次に、混合物を濃縮して、約1〜2mLの溶媒を除去した。混合物を周囲温度に冷却し、次に、結晶をブフナー漏斗での真空濾過によって収集し、ドセタキセルと一致するHNMRスペクトルを有する結晶性生成物の0.399g(収率93%)の恒量になるまで乾燥した。
【0187】
ドセタキセルの回収を最大にするために、光学純粋(+)-N-t-ブトキシカルボニル-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンを使用した場合、中間体2’-(トリメチルシリルオキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセルの精製が必要でないことが見出された。
【0188】
実施例35:ドセタキセル
【化81】

磁石攪拌機を取り付けた炉乾燥25mL丸底フラスコ(RBF)に、窒素下に、ジイソプロピルアミン(0.83mL、5.86mmol)およびTHF(1.5mL)を添加した。混合物を-45℃に冷却し、n-ヘキシルリチウムの溶液(2.33mL、2.30M、5.37mmol)を滴下して、発熱を調節し、反応器温度を-40℃未満に維持した。添加を終了した後、冷却浴温度を使用前に0〜5℃に上げた。
【0189】
カップリング反応:磁石攪拌機を取り付けた炉乾燥した250mLのRBFに、7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-1-DAB(3.29g、4.88mmol)およびTHF(30mL)を添加した。混合物を-45℃に冷却した。既に調製したLDAを、反応混合物に注射器で5分間にわたって添加し、その温度で45分間攪拌した。次に、この混合物に、(+)-N-t-ブトキシカルボニル-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(THF(8mL)中1.80g(5.37mmol))を添加した。反応混合物を-15℃まで温め、-15〜-10℃で1時間攪拌した。1時間後の反応のTLCモニタ(1:3 酢酸エチル:ヘプタン)は、2’-(トリメチルシリルオキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセルへの完全な変換を示した。
【0190】
ワークアップ:反応フラスコに、反応温度で、1mLの飽和炭酸水素ナトリウムを添加し、5分間攪拌した。次に、それを酢酸エチル(50mL)で希釈し、塩水50mLで洗浄した。有機相を分離し、MgSO4で乾燥し、濃縮して、5.10gの粗2’-(トリメチルシリルオキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセルを得、それを直接に脱保護に使用した。前記の粗混合物をアセトニトリル(50mL)に溶解し、0.2N HCl(25mL)を添加し、室温で4時間攪拌した。TLCモニタ(3:1 EtOAc:ヘプタン)が反応の終了を示した。反応混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、蒸留水(50mL)、飽和炭酸水素ナトリウム(50mL)および塩水(50mL)で2回洗浄した。得られた有機相をMgSO4で乾燥し、濃縮して、96.5%HPLC純度のドセタキセル3.76g(収率95.3%)を得た(主要不純物は、C(7)-ヒドロキシ基における非脱シリル化(1.6%)中間体であった)。
【0191】
実施例36:パクリタキセル
10-DABで開始して、C(7)およびC(10)ヒドロキシ基を、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン(即ち、式(4)の架橋珪素に基づく保護基;ここで、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、L1およびL2はクロロであり、Zは-O-である)で保護し;環状中間体(29)(ここで、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、Zは-O-である)を、酢酸エチルおよびヘプタンからの再結晶後に収率95%で得た。中間体(29)を、(+)-N-ベンゾイル-4-フェニル-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-アゼチジン-2-オン(即ち、β-ラクタム(16)、ここで、P2はMOPである)(1.1当量)で、LHMDS(1.1当量)の存在下に、-45℃〜-10℃で3時間処理して、化合物(210)を生成した(ここで、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、Zは-O-であり、P2はMOPである)。化合物(210)を酢酸エチルから結晶化した(収率85%、純度98%)。化合物(210)を、メタノールおよび触媒量のNaHCO3で、室温で20時間処理して、化合物(211)を得(ここで、P2はMOPである)、次に、これをイソプロピルアルコールとヘプテンとの混合物から結晶化した(収率75〜80%、純度97%)。化合物(211)を、塩化アセチル(1.05当量)およびLHMDS(1.1当量)で、-45℃で30分間処理して、純度96%の粗混合物を得た。イソプロパノールからの結晶後に、C(10)-アセチル化化合物が収率85〜90%および純度97%で生成された。次に、その化合物をアセトニトリル中0.2MのHClで、室温で2時間処理し、メタノールから結晶化してパクリタキセルを得た。
【0192】
実施例37:パクリタキセルの製造
10-DAB(23)で開始して、C(7)およびC(10)ヒドロキシ基を、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン(即ち、式(4)の架橋珪素に基づく保護基;ここで、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、L1およびL2はクロロであり、Zは-O-である)で保護し;環状中間体(29)(ここで、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、Zは-O-である)を、酢酸エチルおよびヘプタンからの再結晶後に収率95%で得た。中間体(29)を、メタノールおよび触媒量のNa2CO3で、室温で20分間処理して、化合物(212)を得た(ここで、R10A、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、Zは-O-である)。化合物(212)を、酢酸エチルから結晶化した(収率75%、純度97%)。次に、化合物(212)を、塩化アセチル(1.02当量)およびLHMDS(1.1当量)で30分間処理した。中間体を分離せずに、10-アセチル誘導体(220)(ここで、R10A、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、Zは-O-である)を、(+)-N-ベンゾイル-4-フェニル-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-アゼチジン-2-オン(即ち、β-ラクタム(16)、ここで、P2はMOPである)(1.1当量)で、LHMDS(1.1当量)の存在下に、-45℃〜-10℃で3時間処理して、収率85%および純度94%で化合物(221)を生成した(ここで、G1、G2、G3およびG4はメチルであり、Zは-O-であり、P2はMOPである)。次に、化合物(221)をアセトニトリル中0.2MのHClで、室温で2時間処理し、酢酸エチルおよびヘプタンから結晶化してパクリタキセルを得た。
【0193】
実施例38:2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-パクリタキセル
【化82】

7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-10-DAB(12.1g、17.93mmol)および(+)-シス-N-ベンゾイル-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(6.69g、19.7mmol)のTHF(200mL)溶液に、窒素および磁気攪拌下に-45℃で、LHMDS 1.0M THF溶液(19.7mL、19.7mmol)を15分間にわたって添加した。反応の温度を-10℃に温め、TLC分析(1:1 酢酸エチル:ヘキサン)が7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-10-DABの完全消失を示すまで、この温度で攪拌した。反応混合物を酢酸(1.182g、19.7mmol)で鎮め、酢酸エチル(200mL)で希釈し、周囲温度に温めた。混合物を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を真空濾過によって除去し、濾液を濃縮して固形物を得た。固形物を熱酢酸エチル(450mL)に溶解し、25〜30℃で回転蒸発下に半量に減少させて、結晶形成を誘発し、次に、0℃浴で1時間冷却した。白色結晶を真空濾過によって収集し、1:1の酢酸エチル:ヘキサンの冷溶液で洗浄し、15.2g(収率84%)の恒量になるまで乾燥した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.07 (s, 3H), 0.08 (s, 3H), 0.12 9 (s,3H), 0.42 (s, 3H), 1.11(s, 3H), 1.13 (s, 3H), 1.23 (s, 3H), 1.34 (s, 3H), 1.61 (s, 1H), 1.68 (s, 3H), 1.91 (d, J=1.10 Hz), 1.92 (m, 1H), 2.07 (dd, 15.1, 8.92 Hz. 1H), 2.24 to 2.36 (m, 2H), 2.53 (s, 3H), 2.78 (s, 3H), 3.84 9d, J=7.0 Hz), 4.25 (d, J=8.75 Hz, 1H), 4.23 (d, J=8.75 Hz), 4.49 (dd, J=10.48, 6.72 Hz, 1H), 4.65 (d, J=3.23 Hz), 1H), 4.95 (dd, J=9.56, 2.47 Hz, 1H), 5.56 (s, 1H), 5.62 (dd, J=8.01, 3.08 Hz, 1H), 5.66 (d, J=7.23 Hz, 1H), 6.24 (t, J=8.60, 1H), 7.18 (d, J=8.03 Hz), 7.24 to 7.54 (m, 10H), 7.60 (m, 1H), 7.78 (d, J=7.88 Hz, 2H), 8.12 m, 2H)
【0194】
実施例39:2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7-O-(1-メトキシ-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサニル)-10-ヒドロキシパクリタキセル
【化83】

炭酸水素ナトリウムメタノリシス:無水メタノール(250mL)中の2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-パクリタキセル(5.0g、4.93mmol)の溶液に、炭酸水素ナトリウム(0.5g、5.95mmol)を添加し、混合物を周囲温度(22〜25℃)で窒素下に2日間攪拌した;TLC分析(30:70 酢酸エチル:ヘキサン)は、より高い極性の生成物への変換が終了したことを示した。トリエチルアミン(2g、19.7mmol)および酢酸(0.4g、6.7mmol)を添加し、メタノールを減圧回転蒸発下に除去して、固体残渣を得た。固形物をイソプロパノール(75mL)に取り、次に、ヘプタン(75mL)を添加した。次に、混合物を、減圧回転蒸発下に、ほぼ半量に濃縮して、40℃での結晶形成を誘発した。混合物を周囲温度(20〜22℃)に冷却し、結晶(3.6g、収率70%)を収集した。
【0195】
トリエチルアミン-メタノリシス:無水メタノール(5mL)中の2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-パクリタキセル(100mg、0.1mmol)の溶液に、トリエチルアミン(0.014mL)を窒素下に添加し、TLC(30:70 酢酸エチル:ヘキサン)分析が、より低いRf生成物への完全な変換を示すまで、混合物を周囲温度(22〜25℃)で12時間攪拌した。ヘプタン(5mL)を添加し、混合物を40℃で減圧蒸発下にほぼ半量に濃縮して、結晶形成を誘発した。混合物を周囲温度(22〜25℃)に冷却し、結晶90mg(収率88%)を収集した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.083 (s, 3H), 0.088 (s, 3H), 0.11 (s, 3H), 0.12 (s, 3H), 1.11 (s, 3H), 1.12 (s, 3H), 1.22 (s, 3H), 1.34 (s, 3H), 1.70 (s, 1H), 1.76 (s, 3H), 1.96 (d, J=1.10 Hz), 1.98 (m, 1H), 2.07 (dd, J=14.68, 8.66, 1H), 2.29 (dd, J=15.05, 9,41, 1H), 2.49 (m, 1H), 2.52 (s, 3H), 2.79 (m,3H), 3.47 (s, 3H), 3.91 (d, J=7.52, 1H), 4.23 (d, J=8.97, 1H), 4.27 (d, J=1.95 Hz, 1H), 4.33 (d, J=8.97, 1H), 4.47 (dd, J=10.51, 6.6 Hz, 1H), 4.65 (d, J=3.13 Hz, 1H), 4.95 (dd, J=9.8, 1.75 Hz, 1H), 5.13 (d, J=1.95 Hz, 1H), 5.60 (dd, J=7.99, 3.19 Hz, 1H), 5.68 (d, J=7.19 Hz, 1H), 6.25 (t, J=9.27 Hz, 1H), 7.18 (d, J=8.03 Hz), 7.24 to 7.54 (m, 10H), 7.60 (m, 1H), 7.78 (d, J=7.88 Hz, 2H), 8.12 m, 2H)
【0196】
実施例40:7-O-(1-メトキシ-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサニル)-10-DAB
【化84】

トリエチルアミン-メタノリシス:7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-10-DAB(1g、1.48mmol)に、無水メタノール20mLを添加した。溶液を均一になるまで攪拌した(約10分間)。フラスコに1当量のトリエチルアミン(TEA、1.48mmol、206mL)を添加し、約23時間攪拌した。反応の終了を、TLC(1:1 酢酸エチル:ヘキサン)でモニタした。終了した際に、溶液をヘプタン約15mLで希釈し、全てのメタノールが除去されるまで蒸発させた。結晶が蒸発時に形成され、2時間攪拌した。結晶を濾過し、ヘプタンで洗浄して、白色固形物948mg(収率90.6%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.085 (s, 3H), 0.099 (s, 3H), 0.120 (s, 3H), 0.0123 (s, 3H), 1.09 (overlap, 2-s (6H), 1.75 (s, 3H), 1.93 (m, 1H), 1.97 (d, J=5.07 Hz, 1H), 2.09 (d, J=1.22 Hz, 3H), 2.27 (m, 1H), 2.28 (s, 3H), 2.55 (m, 1H), 3.48 (s, 3H), 3.98 (d, J=6.86 Hz, 1H), 4.18 (d, J=8.14 Hz, 1H), 4.25 (d, J=2.03 Hz, 1H), 4.31 (d, J=8.14 Hz, 1H), 4.49 (dd, J=10.91, 6.71 Hz, 1H), 4.88 (dd, 17.60 , 7.48 Hz, 1H), 4.95 (dd, J=9.49, 1.79 Hz, 1H), 5.18 (d, J=2.03, 1H), 5.62 (d, J=6.94 Hz, 1H),7.48(t, J=7.7- Hz, 2H), 7.60 (m, J=7.7 Hz, 1H), 8.11 (m, 2H)
【0197】
実施例41:2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7-O-(1-メトキシ-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサニル)-パクリタキセル
【化85】

無水THF(22mL)中の2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7-O-(1-メトキシ-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキシ)-10-ヒドロキシパクリタキセル(2.62g、2.5mmol)の溶液に、-45℃で磁気攪拌および窒素下に、LHMDSのTHF 1.0M溶液(2.9mL、2.9mmol)、次に、塩化アセチル(0.275mL、2.88mmol)を添加した。混合物を-45℃で1時間攪拌し、その際に、TLC分析(30:70 酢酸エチル:ヘキサン)が、より低い極性の生成物(Rf=0.5)への変換を示した。反応を酢酸(0.173g、2.88mmol)で鎮め、酢酸エチル(50mL)で希釈し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去し、濾液を濃縮して、固形物2.6gを得た(HPLC純度95%)。
【0198】
ワンポットC(10)-ヒドロキシアセチル化およびC(13)側鎖カップリング:無水THF(40mL)中の7-O-(1-メトキシ-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキシ)-10-DAB(3.24g、4.58mmol)の溶液に、-45℃で磁気攪拌および窒素下に、THF中のLHMDSの1.0M溶液(5mL、5mmol)、次に、塩化アセチル(AcCl、0.335mL、4.7mmol)を添加した。反応の進行を1HNMR分析によってモニタし、15分後にCDCl3中5.18ppmにおけるC(10)-カルビノール共鳴の消失が観察された。アセチル化の終了が示されたら、第二当量のTHF中のLHMDSの1.0M溶液(5mL、5mmol)、次に、固体(+)-シス-N-ベンゾイル-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-4-フェニル-アゼチジン-2-オンを添加した。温度を-10℃に上げ、より低い極性の生成物2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7-O-(1-メトキシ-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサニル)-パクリタキセルへの変換をTLC(30:40 酢酸エチル:ヘキサン)によってモニタした。3時間後に、反応混合物を酢酸(0.3g、5mmol)で鎮め、酢酸エチル(200mL)で希釈し、周囲温度に温めた。混合物を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を真空濾過によって除去し、濾液を濃縮して、固体残渣を得た。残渣をヘプタン(100mL)ですりつぶして、生成物4.2gを得た(HPLC純度94%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm):0.059 (s, 3H), 0.092 (s, 6H), 0.20 (s, 3H), 1.13 (s 3H), 1.20 (s, 3H), 1.22 (s, 3H), 1.33 (s, 3H), 1.71 (s, 3H), 1.96 (m, 1H), 1.98 (d, J=1.0), 2.10 (dd, J=15.74, 9.18 Hz, 1H), 2.17 (s, 3H), 2.31 (dd, J=15.57, 9.36 Hz, 1H), 2.53 (s, 3H), 2.58 (m, 1H), 2.78 (s, 3H), 3.46 (s, 3H), 3.88 (d, J=7.06 Hz, 1H), 4.21 (d, J=8.53, 1H), 4.32 (d, J=8.53, 1H), 4.54 (dd, J=10.23, 6.62 Hz, 1H), 4.66 (d, J=3.19 Hz, 1H), 4.96 (bd, J=9.80 Hz, 1H), 5.31 (bs, 1H), 5.62 (dd, J=8.28, 3.20 Hz, 1H), 5.71 (d, J=6.99 Hz, 1H), 6.20 (bt, J=9.03 Hz, 1H), 6.41 (s, 1H), 7.17 (d, J=8.12Hz, 1H), 7.24 to 7.54 (m, 10H), 7.60 (m, 1H), 7.78 (d, J=7.88 Hz, 2H), 8.12 m, 2H)
【0199】
実施例42:パクリタキセル
アセトニトリル(12mL)中の2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7-O-(1-メトキシ-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサニル)-パクリタキセル(1.6g、純度97%、1.47mmol)の溶液に、周囲温度(22〜25℃)で磁気攪拌および窒素下に、HClの0.2M溶液(3mL、0.6mmol)を添加した。3時間後に、TLCモニタ(3:1 酢酸エチル:ヘキサン)が、所望生成物パクリタキセルへの完全な変換を示した。混合物をトリエチルアミン(0.121g、1.2mmol)で鎮め、溶媒を回転蒸発下に除去した。残渣を酢酸エチル(20mL)に取り、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過によって除去し、濾液を濃縮し、溶媒をヘプタン(20mL)と交換して、白色粉末を得た。その粉末を真空濾過によって収集し、ヘプタンで洗浄し、1.2g(1.40mmol、収率95%、純度97%)の恒量になるまで乾燥した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.14 (s, 3H), 1.24 (s, 3H), 1.68 (s, 3H), 1.79 (d, J=0.9 Hz, 3H), 1.88 (m, 1H), 2.23 (s, 3H), 2.28 (m, 1H), 2.35 (m, 1H), 2.38 (s, 3H), 2.48 (d, J=3.31, 1H), 2.54 (m, 1H), 2.79 (d, J=7.13 Hz, 1H), 4.19 (d, J=8.53, 1H), 4.30 (d, J=8.53 Hz, 1H), 4.40 (m, 1H), 4.78 (dd, J=5.29, 2.65 Hz, 1H), 4.94 (dd, J=9.45, 2.3 Hz, 1H), 5.16 (bs, 1H), 5.67 (d, J=7.02 Hz, 1H), 5.78 (dd, J=8.78, 2.50 Hz, 1H), 6.22 (bt, J=9.0 Hz, 1H) 6.26 (s, 3H), 6.97 (d, J=8.68, 1H), 7.32 to 7.53 (m, 10H), 7.61 (m,1H), 7.73 (m, 2H), 8.12 (m, 2H)
【0200】
実施例43:2’-(ベンゾイルオキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセル
【化86】

無水THF(25mL)中の2’-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセル(5.0g、4.95mmol)の溶液に、窒素および磁気攪拌下に、三塩化セリウム七水和物(CeCl3・7H2O、0.274g、0.735mmol)を添加した。混合物を周囲温度(22〜25℃)で30分間攪拌し、その際に、TLC(40:60 酢酸エチル:ヘキサン)分析が、2-メトキシ-2-プロピル(MOP)保護基の完全消失を示し、出発物質(Rf=0.5)と比較してより高い極性の中間体(Rf=0.4)を得た。反応混合物に無水安息香酸(1.6g、7.4mmol)を添加し、周囲温度で12時間にわたって攪拌し、その際に、TLC(40:60 酢酸エチル:ヘキサン)分析が、より低い極性の生成物(Rf=0.6)への完全な変換を示した。混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(2x50mL)、次に塩水(25mL)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、回転蒸発によって濃縮して、残渣を得た。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:2 酢酸エチル:ヘキサン)によってさらに精製して、未反応無水安息香酸を除去した。清浄画分を抜き取り、濃縮して、所望生成物(4.91g、収率95%)を得た。
【0201】
7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-10-DAB(1.66g、2.47mmol)を、無水THF(35mL)に取り、均一になるまで攪拌した。溶液を、アセトニトリル/ドライアイス浴において-45℃に冷却した。次に、溶液を、2.27mLのLHMDS(THF中1M、1.1当量)で脱プロトン化し、約15分間攪拌した。(+)-シス-N-t-ブトキシカルボニル-3-ベンゾイルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(1.0g、2.72mmol)を固形物として、混合物に添加し、5時間攪拌した。温度を5時間にわたって-30℃に温めた。約3.5時間後に、さらなるβ-ラクタム(10%、100mg)を、さらなるLHMDS(10%、272mL)と共に添加して、反応を終了させた。約5%の未反応7,10-保護10-DABを残して、反応が停止した。THF(10mL)中で前もって混合した1.2当量の酢酸(169mL)および1.5当量のトリエチルアミン(515mL)で、反応を鎮めた。有機層を約30mLの酢酸エチルで希釈し、塩水15mLで2回洗浄した。溶媒を回転蒸発器で除去し、粗泡状物2.9gを回収した。フラッシュカラムを使用して、1:1 酢酸エチル/ヘキサンの溶媒系を用いて生成物を清浄にした。2.11g(収率82.1%)の清浄生成物を回収した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.073 (s, 3H), 0.085 (s, 3H), 0.13 (s, 3H), 0.41 (s, 3H), 1.11 (s, 3H), 1.23 (s, 3H), 1.35 (s, 9H), 1.66 (s, 3H), 1.91 (m, 1H), 1.97 (s, 3H), 2.08 (m, 1H), 2.29(m, 2H), 2.44 (s, 3H), 3.84 (d, J=6.93, 1H), 4.21 (d, J=8.53, 1H), 4.30 (d, J=8.53), 4.50 (dd, J=10.58, 6.58 Hz, 1H), 4.95 (dd, J=9.78, 2.38 Hz, 1H), 5.43 (bd, J=9.26 Hz, 1H), 5.49 (bd, J=3.09 Hz, 1H), 5.57 (bs, 1H), 5.59 (s, 1H), 5.65 (d, J=7.22 Hz, 1H), 6.27 (bt, J=8.97 Hz, 1H), 7.28 (m, 1H), 7.35 to 7.54 (m, 8H), 7.60 (m, 2H), 7.99 (d, J=7.68 Hz, 2H), 8.10 (d, 7.68, 2H)
【0202】
(+)-シス-N-t-ブトキシカルボニル-3-ベンゾイルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンを、(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンと、無水安息香酸およびt-ブトキシカルボニル無水物との反応によって得、結晶性固形物として分離した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.44 (s, 9H), 5.37 (d, J=5.42 hz, 1H), 6.18 (s, J=5.42 Hz, 1H), 7.18 to 7.34 (m, 7H), 7.49 (bt, 1H), 7.66 (bd, 2H)
【0203】
実施例44:2’-ベンゾイルオキシドセタキセル
ドセタキセルのベンゾイル化が、塩化ベンゾイル-ピリジン条件下に、C(2’)ヒドロキシ位置において選択性であることが分かった。ピリジン(10mL)中のドセタキセル(1.62g、2mmol)の溶液に、塩化ベンゾイル(0.394g、2.8mmol)を添加し、混合物を攪拌し、-25℃未満で12時間維持した。TLC分析(75:25 酢酸エチル:ヘキサン)は、出発物質(Rf=0.3)と比較してより低い極性の主要生成物(Rf=0.5)への約80%の変換を示した。混合物を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で鎮め、酢酸エチル(50mL)で抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、残渣を得た。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(60:40 酢酸エチル:ヘキサンで溶離)によって精製して、出発物質を除去し、清浄画分を収集し、濃縮および乾燥後に1.28g(71%)の2’-ベンゾイルオキシ-ドセタキセルを得た。
【0204】
アセトニトリル(3mL)中の2’-(ベンゾイルオキシ)-7,10-O-(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサンジイル)-ドセタキセル(1.0g、0.95mmol)の溶液に、周囲温度22〜25℃で、HClの0.2M溶液(2mL、0.2mmol)を添加した。2時間攪拌した後に、TLC分析(1:1 酢酸エチル:ヘキサン)が、出発物質(Rf=0.45)と比較してより高い極性の生成物(Rf=0.15)への完全な変換が行われたことを示した。反応を、トリエチルアミン(0.5g、0.49mmol)で鎮め、濃縮して、アセトニトリル溶媒を除去した。残渣を酢酸エチル(20mL)に取り、飽和炭酸水素ナトリウム、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を濃縮し、溶媒をヘプタンと交換して、生成物0.78g(収率90%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.12 (s, 3H), 1.22 (s, 3H), 1.35 (s, 9H), 1.75 (s, 3H), 1.85 (m, 1H), 1.98 (bs, 3H), 2.12 (m, 1H), 2.28 (m, 1H), 2.43 (s, 3H), 2.60 (m, 1H), 3.95 (d, J=7.06, 1H), 4.17 (d, J=1.46 Hz, 1H), 4.19 (d, J=8.61 hz, 1H), 4.26 (m, 1H), 4.32 (d, J=8.61 Hz, 1H), 4.96 (bdd, J=9.68, 2.27 Hz, 1H), 5.21 (bd, J=1.46 hz, 1H), 5.43 (bd, J=9.45 Hz, 1H), 5.54 (m, 2H), 5.69 (d, J=7.07, 1H), 6.25 (bt, J=8.91, 1H), 7.28 (m, 1H), 7.35 to 7.54 (m, 8H), 7.60 (m, 2H), 7.99 (d, J=7.68 Hz, 2H), 8.10 (d, 7.68, 2H)
【0205】
実施例45:2’-ベンゾイルオキシ-10-アセトキシドセタキセル
無水THF(7mL)中の2’-ベンゾイルオキシドセタキセル(1.28g、1.4mmol)の溶液に、窒素下に、三塩化セリウム七水和物(CeCl3・7H2O、0.128g、0.344mmol)、無水酢酸(0.285g、2.8mmol)を添加し、混合物を周囲温度(22〜25℃)で12時間攪拌した。TLC分析(60:40 酢酸エチル:ヘキサン)が、出発物質2’-ベンゾイルオキシドセタキセル(Rf=0.15)と比較してより低い極性の生成物(Rf=0.25)への完全な変換を示した。混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、塩水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、固体残渣1.42gを得た。フラッシュシリカゲル精製(酢酸エチル:ヘキサン(45:55)で溶離)によって所望の2’-ベンゾイルオキシ-10-アセトキシドセタキセル1.2g(収率90%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.14 (s, 3H), 1.25 (s, 3H), 1.34 (s, 9H), 1.67 (s, 3H), 1.89 (m, 1H), 1.97 (bs, 3H), 2.12 (m, 1H), 2.24 (s, 3H), 2.28 (m, 1H), 2.44 (s, 3H), 2.51 (d, 4.10 Hz, 1H), 2.57 (m, 1H), 3.82 (d, J=7.12 Hz, 1H), 4.17 (d, J=8.50 Hz, 1H)), 4.31 (d, J=8.50, 1H), 4.46 (m, 1H), 4.98 (dd, J=9.65, 2.16 Hz, 1H), 5.42 (bd, J=9.79, 1H), 5.50 (d,J=3.76 Hz, 1H), 5.57 (bm, 1H), 5.67 (d, J=7.10, 1H), 6.26 (bt, J=8.73 hz, 1H), 6.30 9s, 1H), 7.28 (m, 1H), 7.35 to 7.54 (m, 8H), 7.60 (m, 2H), 7.99 (d, J=7.68 Hz, 2H), 8.10 (d, 7.68, 2H)
【0206】
実施例46:パクリタキセル
アセトニトリル(1mL)中の2’-ベンゾイルオキシ-10-アセトキシドセタキセル(0.50g、0.524mmol)の溶液に、90%の蟻酸水溶液(2mL)を添加し、混合物を周囲温度22〜25℃で16時間攪拌し、その際に、TLC分析(90:10 酢酸エチル:メタノール)が、出発物質(Rf=0.75)と比較してより高い極性の中間体(Rf=0.35)への完全な変換を示した。溶媒および過剰の酸を、ヘプタン(15mL)との共沸蒸発によって除去した。油状残渣をジクロロメタン(2mL)およびヘプタン(15mL)に取り、濃縮して、白色粉末を得た。粉末をジクロロメタン(5mL)およびトリエチルアミン(2mL)に取り、C2’における酸素から3’Nへのベンゾイル移動を誘発して、粗パクリタキセルを得た。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(60:40 酢酸エチル:ヘキサン)によって精製し、清浄画分を抜き取り、蒸発して、パクリタキセル0.277gを得た。精製パクリタキセルの1HNMRは、先の既知試料と同じであった。さらに、光学活性エナンチオマーではなくラセミβ-ラクタムを使用し、それによって高コストの酵素試薬を必要としなかった。
【0207】
前記実施例に示したように、10-DABおよびβ-ラクタム側鎖先駆物質を使用して、パクリタキセルおよびドセタキセルが高収率で製造された。これは、他の保護基と比較して容易に除去された架橋珪素に基づく保護基の新規使用によるものである。表4に列記したものを包含する他の類似の架橋珪素に基づく保護基は、同様の収率の7,10-保護10-DAB誘導体を与える。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(10):
【化1】

に対応する多環式縮合環化合物の製造法であって、該方法は、多環式縮合環ポリオールを、架橋珪素ベースの保護基、および側鎖先駆物質で処理することを含み、この方法において
多環式縮合環ポリオールは、式(3)に対応し:
【化2】

架橋珪素ベースの保護基は、式(4)に対応し:
【化3】

側鎖先駆物質は、式(6)に対応し:
【化4】

X2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、-OX6、-SX7、または-NX8X9であり;
X3は、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、またはヘテロシクロであり;
X5は、-COX10、-COOX10、または-CONHX10であり;
X6は、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、水素、またはヒドロキシ保護基であり;
X7は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはスルフヒドリル保護基であり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
X9は、アミノ保護基であり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
G1、G2、G3およびG4は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アルコキシ、またはヘテロシクロであり;
L1およびL2は、独立して、アミン、ハライドまたはスルホネート脱離基であり;
Zは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロシクロ、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-、または-O-であり;
Z10およびZ11は、ヒドロカルビルであり;
nは、1または2であり;
破線は、多環式縮合環ポリオールの骨格構造を表す、
方法。
【請求項2】
式(12):
【化5】

に対応する多環式縮合環化合物の製造法であって、この方法は、多環式縮合環ポリオールを、架橋珪素ベースの保護基で処理することを含み、この方法において、
多環式縮合環ポリオールは、式(3)に対応し:
【化6】

かつ、架橋珪素ベースの保護基は、式(4)に対応し:
【化7】

式中、G1、G2、G3およびG4は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アルコキシ、またはヘテロシクロであり;
L1およびL2は、独立して、アミン、ハライドまたはスルホネート脱離基であり;
Zは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロシクロ、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-、または-O-であり;
Z10およびZ11は、ヒドロカルビルであり;
nは、1または2であり;
破線は、多環式縮合環ポリオールの骨格構造を表し、但し、Zが-O-のとき、G1、G2、G3およびG4は分岐鎖アルキルでないものとする、
方法。
【請求項3】
式(20R):
【化8】

に対応する多環式縮合環化合物の製造法であって、この方法は、式(9R)に対応する多環式縮合環化合物:
【化9】

を、アルコールおよび塩基で処理することを含み、この方法において、
アルコールは、式R10AOHで示され;
G1、G2、G3およびG4は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アルコキシ、またはヘテロシクロであり;
R10Aは、ヒドロカルビルであり;
R13は、水素であるか、または下記の構造を有し:
【化10】

X2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、-OX6、-SX7、または-NX8X9であり;
X3は、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、またはヘテロシクロであり;
X4は、水素、またはアミノ保護基であり;
X5は、-COX10、-COOX10、または-CONHX10であり;
X6は、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、水素、またはヒドロキシ保護基であり;
X7は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはスルフヒドリル保護基であり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
X9は、アミノ保護基であり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
Zは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロシクロ、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-、または-O-であり;
Z10およびZ11は、ヒドロカルビルであり;
nは、1または2であり;
破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表す、
方法。
【請求項4】
式(20R)に対応する多環式縮合環化合物をアシル化剤で処理して、式(20R10):
【化11】

[式中、R10は、アシルである]
に対応する化合物を生成することをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(9R13)に対応する多環式縮合環化合物:
【化12】

[式中、G1、G2、G3およびG4は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アルコキシ、またはヘテロシクロであり;
R13は、水素、ヒドロキシ保護基、金属であるか、アンモニウムを含むか、または下記の構造を有し:
【化13】

X2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、-OX6、-SX7、または-NX8X9であり;
X3は、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、またはヘテロシクロであり;
X4は、水素、またはアミノ保護基であり;
X5は、-COX10、-COOX10、または-CONHX10であり;
X6は、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、水素、またはヒドロキシ保護基であり;
X7は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはスルフヒドリル保護基であり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
X9は、アミノ保護基であり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
Zは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロシクロ、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-、または-O-であり;
Z10およびZ11は、ヒドロカルビルであり;
nは、1または2であり;
破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表し、但し、Zが-O-のときG1、G2、G3およびG4は分岐鎖アルキルでないものとする]。
【請求項6】
式(20R10)に対応する多環式縮合環化合物:
【化14】

[式中、G1、G2、G3およびG4は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アルコキシ、またはヘテロシクロであり;
R10は、水素またはアシルであり;
R10Aはヒドロカルビルであり;
R13は、水素であるか、または下記の構造を有し:
【化15】

X2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、-OX6、-SX7、または-NX8X9であり;
X3は、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、またはヘテロシクロであり;
X4は、水素、またはアミノ保護基であり;
X5は、-COX10、-COOX10、または-CONHX10であり;
X6は、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、水素、またはヒドロキシ保護基であり;
X7は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはスルフヒドリル保護基であり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
X9は、アミノ保護基であり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;
Zは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロシクロ、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-、または-O-であり;
Z10およびZ11は、ヒドロカルビルであり;
nは、1または2であり;
破線は、多環式縮合環化合物の骨格構造を表す]。
【請求項7】
Zは、-(CH2)y-、-[O-Si(Z10)(Z11)-]nO-、または-O-であり;
nは、1または2であり;
yは、約1〜約4の正の整数であり;
Z10およびZ11は、アルキルである、
請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法または化合物。
【請求項8】
G1、G2、G3およびG4が、独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたはシクロアルキルである、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法または組成物。
【請求項9】
G1、G2、G3およびG4が、独立して、メチル、エチル、エテニル、フェニル、またはシクロペンチルである、請求項8に記載の方法または組成物。
【請求項10】
L1およびL2が、ハライド脱離基である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法または組成物。
【請求項11】
架橋珪素に基づく保護基が、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン;1,5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサン;1,7-ジクロロオクタメチルテトラシロキサン;1,3-ジクロロ-1,3-ジフェニル-1,3-ジメチルジシロキサン;1,3-ジクロロテトラフェニルジシロキサン;1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジクロロジシロキサン;1,1,3,3-テトラシクロペニルジクロロジシロキサン;1,2-ビス(クロロジメチルシリル)エタン;1,3-ビス(クロロジメチルシリル)プロパン;1,6-ビス(クロロジメチルシリル)ヘキサン;および1,8-ビス(クロロジメチルシリル)オクタンから成る群から選択される、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法または組成物。
【請求項12】
架橋珪素ベースの保護基で処理される多環式縮合環ポリオールは式(13):
【化16】

[式中、
R1は、水素またはアシルであるか、またはR2またはR14と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R2は、水素またはアシルであるか、またはR1またはR4と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R4は、水素またはアシルであるか、またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R14は、水素、ヒドロキシまたはアシルであるか、またはR1またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成する]
に対応する、請求項1〜2および7〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
架橋珪素ベースの保護基で処理される多環式縮合環ポリオールは式(23):
【化17】

に対応する10-DABである、請求項1〜2および7〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
アルコールおよび塩基で処理される多環式縮合環化合物は式(19):
【化18】

[式中、
R1は、水素またはアシルであるか、またはR2またはR14と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R2は、水素またはアシルであるか、またはR1またはR4と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R4は、水素またはアシルであるか、またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R14は、水素、ヒドロキシまたはアシルであるか、またはR1またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成する]
に対応する、請求項3〜4および7〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
アルコールおよび塩基で処理される多環式縮合環化合物は式(29):
【化19】

に対応する、請求項3〜4、7〜9および14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
多環式縮合環化合物は式(19):
【化20】

[式中、
R1は、水素またはアシルであるか、またはR2またはR14と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R2は、水素またはアシルであるか、またはR1またはR4と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R4は、水素またはアシルであるか、またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R14は、水素、ヒドロキシまたはアシルであるか、またはR1またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成する]
に対応する、請求項5および7〜9のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項17】
多環式縮合環化合物は式(29):
【化21】

に対応する、請求項5、7〜9および16のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項18】
多環式縮合環化合物は式(30R):
【化22】

[式中、
R1は、水素またはアシルであるか、またはR2またはR14と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R2は、水素またはアシルであるか、またはR1またはR4と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R4は、水素またはアシルであるか、またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成し;
R14は、水素、ヒドロキシまたはアシルであるか、またはR1またはR2と共に、カーボネート、アセタールまたはケタールを形成する]
に対応する、請求項6〜9のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項19】
多環式縮合環化合物は式(40R):
【化23】

に対応する、請求項6〜9および18のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項20】
X2は-OX6であり;
X3はフェニルであり;
X5は-COOX10または-COX10であり;
X6は水素、またはヒドロキシ保護基であり;
X10はtert-ブチルまたはフェニルである、
請求項1および3〜19のいずれか1つに記載の方法または組成物。
【請求項21】
多環式縮合環ポリオールを、アミン塩基の存在下に架橋珪素ベースの保護基で処理する、請求項1〜2、7〜13および20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
アミン塩基がジメチルアミノピリジン(DMAP)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アルコールがメタノールである、請求項3〜4、7〜11、14〜15および20〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
塩基がトリエチルアミンまたは炭酸水素ナトリウムである、請求項3〜4、7〜11、14〜15および20〜23のいずれか1つに記載の方法。

【公表番号】特表2008−545791(P2008−545791A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515899(P2008−515899)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/022213
【国際公開番号】WO2006/135655
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(501304467)フロリダ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Florida State University Research Foundation, Inc.
【Fターム(参考)】