説明

多相燃焼システムのための光学式検出方法及び装置

【課題】多相流燃焼システム用の多重検出システムを提供する。
【解決手段】光を送る段階と、光を第1の波長(40)に調整する段階と、第2の位置において光を受ける段階と、第1の周期の間に光を第1の波長(40)から第2の波長(42)まで変化させる段階と、第1の周期の間に第1の吸収線(32)と第1の非吸収ベースライン信号(34)とを測定する段階と、光を第3の波長(44)に切り替える段階と、第2の周期にわたって光を第3の波長(44)から第4の波長(46)まで変化させる段階と、第2の周期の間に第2の吸収線(36)と第2の非吸収ベースライン信号(35)とを測定する段階とを含む。波長可変光源からの光は、第1の位置から送られ、第2の位置において受けられる、第1の位置と第2の位置との間で、エミッション生成物を通過する。第1の波長はエミッション生成物の第1の吸収線に対応し、第3の波長は第1及び第2の波長とは異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式検出システムに関し、より具体的には多相流燃焼システムで使用するための光学式検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業プロセスプラントの運転を効率、エミッション、信頼性及び安全性の領域で改善しようとする趨勢がある。上述の領域での成功を実現するには、センサ技術が従来に増してより重要なものとなってきている。オンライン又はオフライン最適化、エミッション監視、システム又はコンポーネントの健全性監視及び切迫した突発故障の予告徴候の検出において、リアルタイムの、現場でのかつ空間分解の測定から得られた高品質センサデータは、極めて重要である。
【0003】
従来の抽出型の測定を実行するサンプリングシステムでは、擬似現場での空間分解データが得られるが、サンプリングシステムに関連する固有の遅れのためにリアルタイムデータを得ることはできない。さらに、サンプルガスを抽出すると、サンプルガスは別の流路に沿って進み、その元の性質が変化する可能性がある。従って、高品質センサデータのためには、従来の抽出型のサンプリングシステムは適切ではなく、別の型のセンサが求められる。
【0004】
多数の工業プロセスに関して、例えば石炭燃焼炉のような多相流燃焼システムは、センサ技術の適用に対して極めて厳しい環境を与える。例えば石炭燃焼炉の火炎域内部でのような高温に耐えて存続することができるセンサは、殆ど無い。存続するセンサは、法外に高価であるか、又は高度な保守を必要とするか、又は限られた寿命を有するかのいずれかである場合が多い。石炭燃焼炉のような多相流燃焼システムの場合に、現場測定用の貫入型センサは、さらに一層困難な問題に直面する。煤塵(粒子)が、センサの表面に付着してプローブを塞ぐ可能性がある。還元性又は酸化性環境もまた、センサ表面上に望ましくない反応を引き起こしてセンサの損傷をもたらす可能性がある。
【0005】
これまで非貫入型ガス検知の形態で光学式センサを使用して、上述の問題を回避してきた。光学式検知法は一般的に、多相流から放射される光を検出するか又は多相流が外部光源と相互作用した時の多相流の応答を検出するかのいずれかを含む。大規模な反応型多相流で使用する場合、光学式センサはまた、実施上の問題を受ける。多相流内の粒子は、光を大幅に遮断するか又は散乱する可能性がある。HOのような分子による広帯域吸収は、光を大きく減弱させる可能性がある。特に、多相流場が大規模であるか、粒子負荷が高いか又は広帯域吸収可能種の濃度が高い場合には、限られた強度の測定光ビームは、多相流場を完全に貫通透過しない可能性がある。同様に、視線の遠い側からの光の放射は、その光の放射が検出器に到達できる前に、遮断されるか、散乱されるか又は吸収される可能性がある。粒子はしばしば、光学面を汚染する。乱流でありかつ不均一な熱的及び化学的特性を有する多相流に共通の他の問題点は、ビームステアリングと視線に沿った空間変動を解析(デコンボリューション)することが不能であることとである。
【0006】
センサは、多くの場合、ただ1つの種類の測定に対して専用になっている。従って、複数の検知ニーズを満たすためには、異なる種類のセンサを含む多重検出システムが必要となる。多重検出システムを設置することのコスト及び複雑さは、多重検出システムの幅広い使用に対する障害となっている。1つ以上の種類の測定を実行することができるセンサは、限られているが、コスト及び単純さに関して確かに魅力的である。
【0007】
複数の位置での検知は、空間変動を求めかつ反応型多相流の異なる位置で起こる異なる現象を捕捉するのに望ましい。これには、複数のセンサが必要となる。幾つかのケースでは、異なる種類のセンサが必要となる場合さえある。システムのコストは通常、設置するセンサの数に比例する。
【特許文献1】米国特許第4010048号
【特許文献2】米国特許出願2005/0009081A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の問題に対しては、1つのセンサ内に複数の測定種類を組み込むことができるコンポーネントを設計するのが望ましい。また、広範に変化する作動環境の複数の位置、すなわちバーナから始まり排気筒で終わる位置において検知するためのコスト効果がある方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の例示的な実施形態は、エミッション生成物を現場監視する方法を含む。本方法は、光を送る段階と、光を第1の波長に調整する段階と、第2の位置において光を受ける段階と、第1の周期の間に光を第1の波長から第2の波長まで変化させる段階と、第1の周期の間に第1の吸収線と第1の非吸収ベースライン信号とを測定する段階と、光を第3の波長に切り替える段階と、第2の周期にわたって光を第3の波長から第4の波長まで変化させる段階と、第2の周期の間に第2の吸収線と第2の非吸収ベースライン信号とを測定する段階とを含む。光は、波長可変光源によって第1の位置から送られ、第2の位置において受けられる。光は、第1の位置と第2の位置との間で光路に沿ってエミッション生成物を通過する。第1の波長は、エミッション生成物の第1の吸収線に対応する。第3の波長は、第1及び第2の波長とは異なる。
【0010】
本発明の別の例示的な実施形態は、エミッション生成物を現場監視するための分光式感知システムを含む。本システムは、波長可変光源と、検出器と、光ネットワークとを含む。波長可変光源は、レーザビームを約80ナノメートルの範囲にわたり10ナノメートル/秒の調整速度で調整することができる。検出器は、レーザビームを受けるように構成される。光ネットワークは、流れ場内に配置される。光ネットワークは、波長可変光源と検出器との間で光通信を行う。
【0011】
本発明の上述及び他の目的、特徴及び利点は、同一の参照符号が同様の要素を示している添付の図面と併せて以下の説明を読むことにより、明らかになるであろう。
【0012】
次に、幾つかの図において同様な要素に同じ番号を付した図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、多相燃焼システムにおける多数の作動及びエミッションパラメータの空間分解のかつ現場での監視を実行するのに適した光学式検出システムのブロック図を示す。光学式検出システムは、レーザ吸収分光学の一般的原理に基づいて作動する。分子は、離散的エネルギー状態間での固有の遷移を有する。この固有の遷移は、特定の分子と分子が保有する分子結合の種類との関数である。分子が、例えば離散的エネルギー状態間での固有の遷移を引き起こすのに必要なエネルギーに対応するエネルギー準位を保有するフォトンと相互作用した場合、分子は、フォトンを吸収し、より高いエネルギー状態に励起される。
【0014】
図1を参照すると、本光学式検出システムは、波長可変ダイオードレーザ(TDL)10と、光ネットワーク20と、検出器30とを含む。本光学式検出システムは、例示的な実施形態ではTDL10を含むが、あらゆる適切な波長可変光源で置き換えることができることを想定している。TDL10は、検出対象の特定の分子の離散的エネルギー状態間での固有の遷移を引き起こすのに必要なエネルギー準位に対応するエネルギー準位を有するレーザビーム12の形態でフォトン又は光を出力するように周波数調整することができる。レーザビーム12は次に、光ネットワーク20に送られる。光ネットワーク20は、レーザビーム12を多相燃焼システムの流れ場100(図7を参照)を通る光路上に向ける。レーザビーム12が流れ場100を通過した後に、検出器30は、流れ場100を通過する間に分子によって吸収されなかったレーザビーム12からの光を受ける。Beer−Lambertの法則が適用されると仮定すると、吸収線強度としても知られる吸収された光の量を使用して、光路に沿って存在する検出対象の特定の分子の濃度を得ることができる。TDL10はまた、分子の2つ又はそれ以上の別個の吸収線強度を測定するように調整することができる。2つの吸収線強度の比率は、流れ場100の温度に関係する。
【0015】
多相燃焼システム内の多くの分子は、例えば発電プラントのオペレータにとって関心のあるガスである。存在する分子の濃度は、発電プラントが規制限界値を満たしているか否かを判定するのに使用することができ、或いは多相燃焼システム内での切迫した故障を検出するのに役立てることができる。多相燃焼システム内での分子の多くについての吸収線強度は、約650ナノメートル(nm)〜約2000ナノメートル(nm)の波長範囲によって容易にカバーされる近赤外線(IR)域で検出される。近IR域は、多くの市販のTDLによってカバーされる。しかしながら、市販のTDLには、優れた精度、安定性及び再現性を備えた状態で広範な調整範囲にわたって極めて高速の調整を提供できるものは、現在のところ殆ど無い。
【0016】
例示的な実施形態では、TDL10は、最大約80ナノメートルまでの範囲にわたって連続的に極めて高速の(最大約10ナノメートル/秒までの)調整を行うことができる。TDL10は、1つ又はそれ以上のレーザダイオードを作動させ、手の平サイズの装置と同じくらい小さい単一の筺体内にパッケージすることができる。TDL10は、可動部品を全く有しておらず、堅牢な全電子装置である。TDL10は、最大約80ナノメートルまでの範囲にわたって連続的に極めて高速の(最大約10ナノメートル/秒までの)調整を行うために、電流注入を使用する。特定の吸収線の典型的な線幅が約0.1ナノメートル又はそれ以下のオーダであることを考慮すると、TDL10が吸収線全体にわたって調整するには約100ナノ秒(ns)を要することになる。
【0017】
図2は、例示的な実施形態による、第1の特定の分子の2つの別個の吸収線に対する調整プロセスを示す。TDL10は、約100ナノ秒かけて第1の吸収線32をスキャンする。TDL10は次に、別の約100ナノ秒の間に第1の吸収線32の外側を引き続きスキャンして第1の非吸収ベースライン信号34をスキャンする。TDL10は、別の波長に切り替える(モードホップする)ために約100ナノ秒を要し、その後さらに別の約100ナノ秒を費やして第2の吸収線36をスキャンし、その次に、第2の非吸収ベースライン信号35をスキャンするさらに別の約100ナノ秒が続く。TDL10は次に、約100ナノ秒以内に第1の吸収線32に戻るように切り替わることができる。2つの線をスキャンするための全調整サイクルは、全体で約600ナノ秒すなわち線当たり約300ナノ秒を要する。第1の特定の分子の温度を測定するためには、少なくとも第1及び第2の吸収線32及び36をスキャンすべきである。この例示的な実施形態では、第1の特定の分子の第1及び第2の吸収線32及び36のみをスキャンしたが、複数の特定の分子の各々に対してTDL10を順次調整することによって複数の特定の分子をスキャンすることができることは、当業者には分かるであろう。従って、5つの線をスキャンした場合には、最大4つまでの分子濃度と流れ場100の温度とを得ることができる。
【0018】
図2を参照すると、TDL10は、第1の波長40で開始し、第2の波長42に到達するまで、第1の吸収線32と第1の非吸収ベースライン信号34との測定の波長を徐々に増加させることによってスキャンを実行する。TDL10は、第2の波長42から第3の波長44に急速に切り替わる。TDL10は次に、第4の波長46に到達するまで、第2の吸収線36と第2の非吸収ベースライン信号35との測定の波長を徐々に増加させる。第4の波長46において、TDL10は、第1の波長40か又は別の分子に対応する異なる波長かのいずれかに、再び急速に切り替わる。
【0019】
多相燃焼システムの流れ場100内の流速が一般的に約20メータ/秒に達することを考慮しかつ平均乱流強度の300%の乱流強度であると仮定すると、局所的乱流速度は、約60メートル/秒に達する。600ナノ秒の周期が経過した時、流れの最大移動量は、わずかに約36マイクロメートル(0.036ミリメートル)だけである。この移動量は、一般的に約1mm又はそれよりも大きいレーザビーム12の直径と比較するとわずかに約3.6%又はそれ以下でしかない。従って、TDL10によって送られたレーザビーム12の基準枠からすれば、流れ場100は、全調整サイクルの間に事実上停滞又は動かない状態である。TDL10の高速調整特性のために、流れ場100の流速の変動による誤差は、無視できる程度である。流れ変動により持ち込まれる誤差の実例には、1)レーザビーム12に流入しまたレーザビーム12から流出する粒子による散乱及び消滅量の変化と2)レーザビーム12に流入しまたレーザビーム12から流出する吸収種による吸収量の変化とが含まれることに注目されたい。
【0020】
上述の調整速度が不足したTDL10では、流れ場100がもはやレーザビーム12に対して動かない状態とは見なせず、また流れの変動、従って誤差がもはや無視できる程度ではないので、測定値に関係する誤差が増大する。従って、極めて高速の調整速度は、測定値における流れ誤差を排除する上で極めて重要である。
【0021】
図3は、例えば第1の吸収線32のような例示的な吸収信号の表現を示す。y軸上の数字は、元のレーザビーム強度50に対する割合を表わす単に基準としてのものである。レーザビーム12が図1の光ネットワーク20(例えば、光ファイバ、コリメータレンズ及び汚れた光学面)を通過すると、レーザビーム12は、強度の或る部分を失う。光損失後強度52は、光ネットワーク20による損失を差引いた時の残存強度である。何らかの特定の分子による吸収に加えて、レーザビーム12は、レーザビーム12が流れ場を横断する時に散乱(レーザビーム12よりも小さな又は同程度の寸法の粒子による)及び消滅((レーザビーム12よりも大きい粒子による)によって更なる損失を受ける。消滅及び散乱による損失後の残存強度は、流れ場損失後強度54である。検出器において、レーザビーム12とは別の光源からの迷光がまた、流れ場からの光放射に起因して感知される場合がある。しかしながら、狭帯域バンドパスフィルタを使用して、迷光を最小限にすることができる。流れ場100からの光放射を含む測定信号強度は、光放射後強度56である。流れ場100からの迷光が無視される場合には、粒子による散乱及び消滅に起因する損失は高信頼度で測定され、流れの不透過率が導き出される。
【0022】
例示的な実施形態では、光ネットワーク20は、送光器又は送光用光ファイバ70と、レーザビーム12を受けるための受光器又は受光用光ファイバ72とを有する光ファイバネットワークを含む(図6を参照)。レーザビーム12を送りかつ受ける最も単純な方法は、レーザビーム12を流れ場100の一方側から送り、流れ場100を横断してレーザビーム12を移動させて流れ場の反対側で受けるようにすることであり、これは、視線測定法として知られている。例えば大規模公共事業用ボイラのような大型の多相燃焼システムの場合には、ボイラを横断する単一パスが、約30〜約40フィートとなる。ボイラのバーナに接近した高粒子流領域では、レーザビーム12は、粒子散乱及び消滅による損失に起因して、そのような巨大長さを貫通透過できない場合がある。粒子散乱及び消滅による損失を低減するために、図1の光ネットワーク20は、プローブ60(図4を参照)を含む。プローブ60は、流れ場を通るより短い光路を可能にする。光路は、プローブ60の設計に基づいてその長さが調節できる。プローブ60を流れ場100の高粒子領域内に挿入することによって、レーザビーム12が流れ場全体を横断して移動する場合には不可能であった高粒子領域の正確な測定が可能となる。
【0023】
プローブ60を使用することに関連する他の重要な観点は、局所化又は高空間分解能測定をもたらす能力である。長い光路全体にわたる視線測定法と比較すると、より短い光路を備えたプローブ60は、はるかに高い空間分解能を有する。従って、プローブ60は、流れパラメータの局所的不均一性を正確に特定する高い能力を有する。また、プローブ60は格納式であり、このことにより、局所化測定のために流れ場100内部の異なる位置にプローブ60を挿入することが可能になる。プローブ60は、手動で又は自動的に流れ場100内に挿入することができる。例示的な実施形態では、プローブ60は、測定時に流れ場100内に挿入され、不使用時には流れ場100から引き出される。
【0024】
例示的な実施形態では、プローブ60は、最大約2500°Fまでの温度環境で作動可能である。プローブ60は、高温使用の場合には、プローブ60を通して例えば空気のみ、空気及び水などのような冷却流体を流すことによって冷却される。必要な冷却流の量は、以下に説明する3つの方法の何らかの組合せを使用して最小限にされる。第1に、プローブ60は、耐熱材料を使用して、流れ場100の高温ガスとプローブ60との間の温度差を最小限にする。第2に、プローブ60の外面を断熱皮膜(TBC)で覆ってプローブ60への熱伝達を最小限にする。TBCはまた、プローブ60の金属部を腐食性侵食から防護する。第3に、プローブ60の直径を最小限にし、従って熱伝達に対する表面積を最小限にする。例えば、プローブの直径は、約2.6センチメートルよりも小さい。
【0025】
図4を参照すると、例示的な実施形態では、プローブ60は、プローブ本体62、冷却及びパージ流体入り口64、冷却及びパージ流体出口66、パージノズル68、送光用光ファイバ70、受光用光ファイバ72(図5を参照)、レンズ74及びプリズム76を含む。プローブ本体62は、耐熱材料、TBCを用いた皮膜及び最小直径を含む。冷却及びパージ流体入り口64は、熱を除去するために冷却流体がプローブ本体62に接触するのを可能にする。例示的な実施形態では、冷却流体はパージ流体と同一であるが、これら流体は、別個のものとすることもできる。別個の冷却及びパージ流体を使用する場合には、任意選択的に別個の対応する入口及び出口を使用する。冷却及びパージ流体出口66は、冷却及びパージ流体のための戻り通路を提供する。例示的な実施形態では、冷却及びパージ流体出口66は省略され、冷却及びパージ流体は、流れ場100に放出される。パージノズル68は、送光用光ファイバ70、レンズ74及びプリズム76を覆うようにパージ空気を向ける。この例示的な実施形態では、第1のパージノズル67は、パージ流体の流れを送光用光ファイバ70及びレンズ74の表面に対してほぼ直角に矢印78で示す第1の方向に向ける。第2のパージノズル69は、パージ流体の流れをプリズム76の表面に対してほぼ直角に矢印80で示す第2の方向に向ける。第2の方向は、第1の方向とほぼ反対方向である。この例示的な実施形態では、第1及び第2の方向78及び80は反対方向であるが、方向78及び80は必ずしも反対方向である必要はない。冷却流体はプローブ本体62を冷却し、またパージ流体は、プローブ60の光学面(例えば、レンズ74、プリズム76及び送光用光ファイバ70)を覆って流れて、粒子が光学面に堆積しない状態に保つ。パージ流体の流量は、冷却流体の最大流量に等しいのが理想的である。
【0026】
図5は、例示的な実施形態による、プローブ60を含む光ネットワーク20の概略図である。図6は、プローブ60の光学面の拡大図である。図5及び図6を参照すると、最大約1300°Fまで作動可能な2つの高温用金メッキ全シリカ光ファイバケーブルが、プローブ60に接続される。1つの光ファイバケーブルは、送光用光ファイバ70として機能し、流れ場100を通して第1の方向84にレーザビーム12を発射し、他の光ファイバケーブルは、受光用光ファイバ72として機能する。レーザビーム12は、90度プリズムの内部で2回反射した後に、第1の方向84と反対の第2の方向86にレンズ74に向かって進む。レンズ74は、レーザビーム12の直径の約5〜約10倍であり、レーザビーム12を受光用光ファイバ72上に集束させるために使用される。レーザビーム12の直径よりも大きい直径を有するレンズ74は、ビームステアリングを行って、流れ場100での乱流を補正する。例示的な実施形態では、プリズム76及びレンズ74は、高耐熱性及び耐化学物質性のサファイアで作られるが、他の適切な材料もまた想定される。パージノズル68があるにも拘わらず、プローブ60の光学面は、粒子によって被覆されてレーザビーム12の減弱を引き起こす場合がある。しかしながら、この光学面が被覆されることは、吸収のピークにおける検出信号がノイズレベルに接近するまでは、全く影響が無い。非吸収ベースライン信号は、光学面が被覆されたことの徴候を示す。従って、非吸収ベースライン信号34は、時間の経過による下方ドリフトのために監視される。下方ドリフトがプローブ60の清掃を提示した時に、警報が発せられる。
【0027】
上で説明したように、複数の分子濃度、温度及び不透過率を含む多重測定が、実施可能となる。さらに他の種類の測定もまた、組み込むことができる。例えば、流れ場100からの光放射の収集に基づいた測定は、同一の光学式アクセスを利用する利点を生かして、送光用及び受光用光ファイバ70及び72の両方を使用して光を収集することによって、或いは別個の光ファイバを送光用又は受光用光ファイバ70又は72のいずれかに束ねることによって達成される。従って、1つのプローブ60において、異なる測定のために複数のセンサをパッケージすることができる。収集した光は次に、分光計又はフォトダイオードのいずれかと選択バンドパスフィルタとの組合せに接続されて、スペクトル的に分解した測定値を得ることができる。UV域での光放射は、温度及び燃空比情報を得るのに使用することができる。IR域での光放射は、高温測定に対して使用することができる。個々のスペクトル線はまた、アルカリ金属を監視するのに使用することができる。従って、光学式検出システムへの最小限の改良でしかも追加の光学式アクセスを必要とせずに、全く新しい種類の測定を付加することができる。
【0028】
上で述べたように、プローブ60は、任意選択的に格納式とし、厳しい流れ場100環境で使用するようになっている。プローブ60の特性により、流れ場100全体にわたって複数のプローブ60を配置すること(図8を参照)が可能である。複数のプローブ60は、多重センサ法を使用して2次元(2−D)又はさらに3次元(3−D)情報を生成するためのグリッドを形成するように構成可能である。各プローブ60が流れ場100内で同一平面上に位置するように複数のプローブ60を配置することによって、測定パラメータの2次元表現が可能になる。各プローブ60が流れ場100全体にわたって非同一平面上に位置するように複数のプローブ60を配置することによって、測定パラメータの3次元表現が可能になる。3次元表現はまた、プローブ60が1つ以上の平面内に位置するように複数のプローブ60を配置した場合に得られる。(2−D)及び(3−D)測定はまた、図7に示すように複数の視線測定を実行するような例示的な実施形態において可能となる。測定パラメータの(2−D)表現は、流れ場100を通る光路87の第1の平面を使用することによって得られる。測定パラメータの(3−D)表現は、光路88の第2の平面と組合せて光路87の第1の平面を使用することによって得られる。
【0029】
複数のプローブ60又は複数の視線測定を使用することは、複数のTDL10及び検出器30の両方、又はTDL10及び検出器30の資源共用を可能にするためのマルチプレックス装置(光スイッチ)を使用することを必要とする。図7は、複数の視線測定の構成を使用して資源共用するようになった光ネットワーク20を示す。複数のプローブ60又は複数の視線測定を使用することにより、流れ場のレーザトモグラフィーが実行される。
【0030】
単純な多重センサ法は、図8に示すように、ただ1つのTDL10と、1つの検出器30と、マルチプレクサ90及びデマルチプレクサ92を備えた光ネットワーク20とを含む。マルチプレクサ90は、レーザビーム12を多重化して複数のプローブ60に供給する。デマルチプレクサ92は、複数のプローブ60の各プローブ60の出力を逆多重化して単一の検出器30を使用することを可能にする。例示的な実施形態では、検出器30は、下方ドリフトがプローブ60の清掃を提示した時に警報を発するアラーム94を備えている。
【0031】
加えて、例示的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲から離れることなく、本発明の要素に様々な変更を加えることができまた本発明の要素を均等物で置き換えることができることは、当業者には明らかであろう。さらに、本発明の本質的な技術的範囲から離れることなく、特定の状況又は物的要件を本発明の教示に適合させるように多くの修正を加えることができる。従って、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、特許請求の範囲内に属する全ての実施形態を含むことになることを意図している。さらに、第1の、第2のなどの用語の使用は、いかなる順序又は重要性を示すものではなくて、第1の、第2のなどの用語は、1つの要素を他と区別するために使用している。さらに、数詞のない用語の使用は、数量の限定を示すものではなく、記載したアイテムの少なくとも1つが存在することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】例示的な実施形態による光学式検出システムのブロック図。
【図2】例示的な実施形態による、特定の分子の2つの吸収線に対する調整プロセスを示す図。
【図3】例示的な吸収信号の構造を示す図。
【図4】例示的な実施形態によるプローブの斜視図。
【図5】例示的な実施形態による、光ネットワークが図4のプローブを含む光学式検出システムの概略図。
【図6】図5のプローブの検知面の拡大概略図。
【図7】例示的な実施形態による、多重センサ法を使用して流れ場内のパラメータを測定する光学式検出システムの概略図。
【図8】例示的な実施形態による、光ネットワーク内に複数のプローブを含む多重センサ法を使用する光学式検出システムのブロック図。
【符号の説明】
【0033】
12 レーザビーム
20 光ネットワーク
30 検出器
60 プローブ
70 送光用光ファイバ
72 受光用光ファイバ
74 レンズ
76 90度プリズム
100 流れ場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッション生成物を現場監視する方法であって、
波長可変光源を使用して第1の位置から光を送る段階と、
前記光をエミッション生成物の第1の吸収線(32)に対応する第1の波長(40)に調整する段階と、
第2の位置において、前記第1の位置と該第2の位置との間で光路に沿ってエミッション生成物を通過した前記光を受ける段階と、
第1の周期の間に前記光を前記第1の波長(40)から第2の波長(42)まで変化させる段階と、
前記第1の周期の間に前記第1の吸収線(32)と第1の非吸収ベースライン信号(34)とを測定する段階と、
前記光を前記第1及び第2の波長(40、42)とは異なる第3の波長(44)に切り替える段階と、
第2の周期にわたって前記光を前記第3の波長(44)から第4の波長(46)まで変化させる段階と、
前記第2の周期の間に第2の吸収線(36)と第2の非吸収ベースライン信号(35)とを測定する段階と、を具備する監視方法
【請求項2】
前記光を前記第3の波長(44)に切り替える段階が、約100ナノ秒よりも短い時間内に切り替わることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の吸収線(32、36)を測定する段階が、各々が約100ナノ秒の長さである前記第1及び第2の周期をさらに含み、前記第1及び第2の吸収線(32、36)が、それぞれ前記第1及び第2の周期の第1の半分の間に測定され、また前記第1及び第2の非吸収ベースライン信号が、それぞれ前記第1及び第2の周期の第2の半分の間に測定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
プローブ内に前記第1及び第2の位置を配置する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記プローブが、前記第1及び第2の位置間の光通信路内に配置されて前記光を反射するようになった90度プリズム(76)を含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記エミッション生成物のパラメータの2次元表現を生成するための流れ場(100)内での同一平面配置、
前記エミッション生成物のパラメータの3次元表現を生成するための流れ場(100)内での非同一平面配置、及び
前記エミッション生成物のパラメータの3次元表現を生成するための流れ場(100)の複数の平面内配置、
のうちの少なくとも1つの形態で複数のプローブ(60)を配置する段階をさらに含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記第1の吸収線(32)を使用して前記エミッション生成物の濃度を計算する段階、
前記第1及び第2の吸収線(32、36)を使用して前記エミッション生成物の温度を計算する段階、及び
前記エミッション生成物の不透過率を計算する段階、
のうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
同一の第1の波長(40)及び異なるエミッション生成物の第1の吸収線(32)に対応する異なる第1の波長(40)のうちの1つのを使用して請求項1の方法を反復する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
エミッション生成物を現場監視するための分光式感知システムであって、
レーザビーム(12)を約80ナノメートルの範囲にわたり10ナノメートル/秒の調整速度で調整することができる波長可変光源と、
前記レーザビーム(12)を受けるように構成された検出器(30)と、
流れ場(100)内に配置され、前記波長可変光源と前記検出器(30)との間で光通信を行う光ネットワーク(20)と、を備えた光式感知システム。
【請求項10】
前記光ネットワーク(20)が、
前記波長可変光源からレーザビーム(12)を送るように構成された送光器と、
前記波長可変光源からのレーザビーム(12)を受け、前記流れ場(100)を通る光路を介して前記送光器と光通信を行うように構成された受光器と、を含むことを特徴とする請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−227003(P2006−227003A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29528(P2006−29528)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】