説明

多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物及び方法

【課題】多分化能幹細胞から所望の細胞タイプに分化させた後、患者の体内に移植する際に、患者の体内で未分化状態の多分化能幹細胞が増殖することを防止する技術であって、前記多分化能幹細胞に突然変異を誘発するおそれのない技術を開発する。
【解決手段】本発明は、多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物を提供する。本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物は、p16及びp53のタンパク質等を含む。本発明は、p16及びp53のタンパク質の発現を誘導できるポリヌクレオチドを含む多能性幹細胞を提供する。本発明は、本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物を多能性幹細胞中に導入するステップを含む、多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物及び方法に関し、具体的には、p16及び/又はp53のタンパク質等を含む、多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物と、該組成物を用いることを含む、多能性幹細胞の増殖を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の多分化能幹細胞を用いる再生医療技術の課題のひとつは、多分化能幹細胞から所望の細胞タイプに分化させた後、患者の体内に移植する際に、前記多分化能幹細胞が未分化状態のまま残存し、分化した細胞とともに前記患者の体内に移植され、患者の体内で増殖する危険を如何に防止するかである(非特許文献1)。前記課題の解決策として、安全弁として提唱されている方策(非特許文献2、3)は、ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子を前記多分化能幹細胞に安定的に導入しておくことである。すなわち、前記多分化能幹細胞由来の細胞が患者に移植された後望ましくない細胞増殖を起こすときには、ガンシクロビルを投与する。ガンシクロビルは、前記ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ酵素には基質として認識されるが、ヒトのチミジンキナーゼ酵素には基質として認識されない。そこで、前記患者の細胞に影響を与えることなく、前記ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子が導入された移植細胞の増殖だけを阻害することができる。しかし、今度は、前記ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子が前記多分化能幹細胞に導入されることにより、該多分化能幹細胞に挿入突然変異が誘発される危険が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Lowry, W.E.及びQuan, W.L.、J.Cell Sci.、123:643(2010)
【非特許文献2】Ciceri、F.ら、Lancet Oncol.、10:489(2009)
【非特許文献3】Menzel、O.ら、Mol. Ther.、17:1754(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、患者の体内で未分化状態の多分化能幹細胞が増殖することを防止する技術であって、前記多分化能幹細胞に突然変異を誘発するおそれのない技術を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物を提供する。本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物は、
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に1個又は2個以上か、数個かのアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとの相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであるポリヌクレオチドによってエンコードされ、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成するポリヌクレオチドによってエンコードされ、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(f)特異的結合タグペプチドが前記(a)ないし(e)のいずれか1つに連結された融合タンパク質と、
(g)細胞膜透過性ペプチドが前記(a)ないし(f)のいずれか1つに連結された融合タンパク質とからなるグループから選択される、少なくとも1種類のタンパク質を含む。
【0006】
本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物は、
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に、1個又は2個以上か、数個かのアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとの相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(f)特異的結合タグペプチドをエンコードするポリヌクレオチドが前記(a)ないし(e)のいずれか1つに連結された融合ポリヌクレオチドと、
(g)細胞膜透過性ペプチドをエンコードするポリヌクレオチドが前記(a)ないし(f)のいずれか1つに連結された融合ポリヌクレオチドとからなるグループから選択される少なくとも1種類のポリヌクレオチドを含む。
【0007】
本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物において、前記ポリヌクレオチドは、恒常型又は誘導型プロモーターに発現可能に連結される場合がある。
【0008】
本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物において、前記誘導型プロモーターは、テトラサイクリン誘導型プロモーターの場合がある。
【0009】
本発明は、多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物を含む、該多能性幹細胞の生体内での腫瘍化を防止するための医薬品組成物を提供する。
【0010】
本発明の多能性幹細胞の生体内での腫瘍化を防止するための医薬品組成物において、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)又は胚性幹細胞(ES細胞)の場合がある。
【0011】
本発明は多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法を提供する。本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法は、
(1)
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に1個又は2個以上か、数個かのアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとの相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであるポリヌクレオチドによってエンコードされ、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成するポリヌクレオチドによってエンコードされ、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(f)特異的結合タグペプチドが前記(a)ないし(e)のいずれか1つに連結された融合タンパク質と、
(g)細胞膜透過性ペプチドが前記(a)ないし(f)のいずれか1つに連結された融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質を用意するステップと、
(2)
ステップ(1)で用意されたタンパク質を多能性幹細胞中に導入するステップとを含む。
【0012】
本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法は、
(1)
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に1個又は2個以上か、数個かのアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列との相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであるヌクレオチド配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、
(f)特異的結合タグペプチドをエンコードするポリヌクレオチドが前記(a)ないし(e)のいずれか1つに連結された融合ポリヌクレオチドと、
(g)細胞膜透過性ペプチドをエンコードするポリヌクレオチドが前記(a)ないし(f)のいずれか1つに連結された融合ポリヌクレオチドとからなるグループから選択される少なくとも1種類のポリヌクレオチドを用意するステップと、
(2)
ステップ(1)で用意されたポリヌクレオチドを多能性幹細胞に導入するステップと、
(3)
ステップ(2)で導入されたポリヌクレオチドがエンコードするタンパク質を発現するステップとを含む。
【0013】
本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法において、前記ポリヌクレオチドは、恒常型又は誘導型プロモーターに発現可能に連結される場合がある。
【0014】
本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法において、前記誘導型プロモーターは、テトラサイクリン誘導型プロモーターの場合がある。
【0015】
本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法において、前記幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)又は胚性幹細胞(ES細胞)の場合がある。
【0016】
本発明は多能性幹細胞を提供する。本発明の多能性幹細胞は、
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に1個又は2個以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列からなり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとの相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成するポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(f)特異的結合タグペプチドが前記(a)ないし(e)のいずれかに連結された融合タンパク質と、
(g)細胞膜透過性ペプチドが前記(a)ないし(f)のいずれかに連結された融合タンパク質と
からなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質を誘導可能に発現するポリヌクレオチドを含む。
【0017】
本発明の多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)又は胚性幹細胞(ES細胞)の場合がある。
【0018】
本発明は、多能性幹細胞由来の分化細胞を含む細胞医薬組成物に混在する未分化多能性幹細胞を除去するための方法を提供する。前記方法は、
(1)
多能性幹細胞を用意するステップと、
(2)
前記多能性幹細胞を試験管内で分化させて、細胞医薬組成物を製造するステップと、
(3)
本発明の多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物を用意するステップと、
(4)
前記細胞医薬組成物に前記多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物を曝露するステップとを含む。
【0019】
本発明は、多能性幹細胞由来の分化細胞を含む細胞医薬組成物に混在する未分化多能性幹細胞を除去するための方法を提供する。前記方法は、
(1)
本発明の多能性幹細胞を用意するステップと、
(2)
前記多能性幹細胞を試験管内で分化させて、細胞医薬組成物を製造するステップと、
(3)
ステップ(2)の後、本発明の多能性幹細胞に含まれるポリヌクレオチドの発現を誘導するステップとを含む。
【0020】
本明細書において、p16とはサイクリン依存性キナーゼ4インヒビター(p16−INK4又はp16INK4a)をいい、p53とは腫瘍タンパク質p53(TP53)をいい、p21とはサイクリン依存性キナーゼ・インヒビター1A(Cip1)をいう。ヒトp16、p53及びp21タンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、2及び5に列挙され、ヒトp16、p53及びp21タンパク質をエンコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号3、4及び6に列挙される。
【0021】
本発明において、ヒトp16及びp53のタンパク質は、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有することを条件として、配列番号1及び2に列挙されるアミノ酸配列に1個ないし数個のアミノ酸の欠失、置換又は挿入を含んでもかまわない。あるいは、前記ヒトp16及びp53のタンパク質は、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有することを条件として、配列番号1及び2に列挙されるアミノ酸配列との同一性が、80%又はこれ以上か、90%又はこれ以上か、95%又はこれ以上かであってもかまわない。前記ヒトp16及びp53のポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドにエンコードされるタンパク質が多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有することを条件として、配列番号3及び4に列挙されるヌクレオチド配列に1個ないし数個のヌクレオチドの欠失、置換又は挿入を含むヌクレオチド配列でもかまわない。前記ヒトp16及びp53のポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドにエンコードされるタンパク質が多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有することを条件として、配列番号3及び4に列挙されるヌクレオチド配列との同一性が、80%又はこれ以上か、90%又はこれ以上か、95%又はこれ以上のヌクレオチド配列でもかまわない。
【0022】
本発明のp16及びp53のポリヌクレオチド及びタンパク質は、配列を特定せずに言及される場合には、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有することを条件として、該多能性幹細胞と同一の生物種であっても、異なる生物種であってもかまわない。前記生物種は、ヒトの他、サル、ブタ、マウス等の実験動物を含むが、これらに限られない。
【0023】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、Sambrook、J.及びRussell、D.W.、Molecular Cloning A Laboratory Manual 3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に説明されるサザンブロット法で以下の実験条件で行うことを指す。比較対象のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドをアガロース電気泳動によりバンドを形成させた上で毛管現象又は電気泳動によりニトロセルロースフィルターその他の固相に不動化する。6× SSC及び0.2% SDSからなる溶液で前洗浄する。本発明のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを放射性同位元素その他の標識物質で標識したプローブと前記固相に不動化された比較対象のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーション反応を6× SSC及び0.2% SDSからなる溶液中で65°C、終夜行う。その後前記固相を1× SSC及び0.1% SDSからなる溶液中で65°C、各30分ずつ2回洗浄し、0.2× SSC及び0.1% SDSからなる溶液中で65°C、各30分ずつ2回洗浄する。最後に前記固相に残存するプローブの量を前記標識物質の定量により決定する。本明細書において「ストリンジェントな条件」でハイブリダイゼーションをするとは、比較対象のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを不動化した固相に残存するプローブの量が、本発明のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを不動化した陽性対照実験の固相に残存するプローブの量の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%以上であることを指す。
【0024】
本発明において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の相同性は、当業者に周知の配列整列プログラムCLUSTALWを使用することにより算出することができる。
【0025】
本発明において、p16及びp53のタンパク質は、本発明のタンパク質のアミノ酸配列をエンコードするDNA又はRNAを、無生物発現系か、宿主生物及び発現ベクターを使用する発現系かで発現させることにより産生される場合がある。前記宿主生物は、大腸菌、枯草菌等のような原核生物と、酵母、菌類、植物、動物等のような真核生物とを含む。本発明の宿主生物及び発現ベクターを使用する発現系は、細胞や組織のような生物の一部か、生物の個体全体かの場合がある。
【0026】
本明細書において、「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合で連結された化合物を指す。「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」は、メチル基を含むアルキル基、リン酸基、糖鎖、及び/又は、エステル結合その他の共有結合による修飾を含む場合がある。
【0027】
本明細書において、「DNA」、「RNA」、「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」とは、2個以上のヌクレオチドがホスフォジエステル結合で連結された化合物を指す。「DNA」、「RNA」、「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」は、メチル基を含むアルキル基、リン酸基、糖鎖、及び/又は、エステル結合その他の共有結合による修飾を含む場合がある。
【0028】
本明細書において、特異的結合タグとは、所望の機能を有するポリペプチドを遺伝子組み換えによって調製する際に、前記所望の機能を有するポリペプチドとペプチド結合で連結した融合タンパク質として発現させることにより、形質転換体からの発現タンパク質の分離、精製又は検出をより容易に行うことを可能にするために、他のタンパク質、多糖類、糖脂質、核酸及びこれらの誘導体、樹脂、シリコン等と特異的に結合するポリペプチドをいう。前記特異的結合タグは、水溶液中に溶解した物質又は固体支持体と結合する場合がある。前記特異的結合タグには、Hisタグ、Mycタグ、HAタグ、インテインタグ、MBP、GSTその他これらに類するポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。前記特異的結合タグは、Hisタグ、mycタグ、HAタグ、インテインタグ、MBP又はGSTからなるグループから選択される場合がある。
【0029】
本明細書において、細胞膜透過ペプチドとは、他のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質との融合タンパク質を細胞外に添加すると、細胞膜を透過して前記融合タンパク質を細胞内に移行させることができるペプチドをいい、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)のTatタンパク質RNA 結合領域(48−60位)由来のアルギニンに富む塩基性ペプチド(TATペプチド)、アルギニン残基が6ないし12個連続したオリゴホモペプチド、ショウジョウバエ由来の転写因子Antennapediaタンパク質のDNA 結合領域由来の塩基性両親媒性ヘリックス構造を有するペプチド(penetratin)が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書において、「多能性幹細胞」とは、外胚葉、中胚葉及び内胚葉に由来する少なくとも2種類の細胞タイプに分化することができ、かつ、未分化状態で増殖する細胞を指し、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell、iPS細胞)、胚性幹細胞(embryonic stem cell、ES細胞)を含むが、これらに限定されない。iPS細胞は、主要組織適合遺伝子複合体(HLA)が、患者に移植された細胞が治療に利用できる程度に適合する細胞から作成されることが好ましく、移植される患者本人の細胞から作成されることが最も好ましい。
【0031】
前記ポリヌクレオチドは、2本鎖DNA又はRNAとして細胞に導入されてもかまわない。また、前記ポリヌクレオチドは、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリアデニル化部位、クローニング部位、薬剤耐性遺伝子等を有するベクターに挿入されたコンストラクトとして細胞に導入されてもかまわない。前記ベクターは、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター等の場合がある。前記プロモーターは、構成型プロモーター又は誘導型プロモーターを用いることができる。前記誘導型プロモーターは、プロモーターの活性を促進又は抑制する誘導因子の存在下で、前記プロモーターに連結された所望のポリヌクレオチドの転写を制御できる配列をいう。前記誘導因子は、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、IPTG等の化合物等を含むが、これらに限定されない。前記誘導型プロモーターは、前記誘導因子と特異的な相互作用を行うトランスアクチベータータンパク質によって転写が制御される。そこで、本発明のp16又はp53を発現する誘導型プロモーターを含むコンストラクトは、該誘導型プロモーターの転写制御に関与するトランスアクチベータータンパク質を発現するベクターが発現する宿主細胞に導入される必要がある。前記誘導型プロモーターの転写制御に関与するトランスアクチベータータンパク質を発現するコンストラクトは、前記p16又はp53を発現する誘導型プロモーターを含むコンストラクトの導入前か、あるいは、導入と同時に、前記宿主細胞に導入される。前記誘導型プロモーターの転写制御に関与するトランスアクチベータータンパク質を発現するコンストラクトは、前記トランスアクチベータータンパク質をエンコードするポリヌクレオチドが、構成型プロモーター又は誘導型プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリアデニル化部位、クローニング部位、薬剤耐性遺伝子等を有するベクターに挿入されて作出される。
【0032】
本発明のp16又はp53を発現するコンストラクトは、当業者に周知な方法を用いて多能性幹細胞に導入される。前記コンストラクトが誘導型プロモーターを含む場合、その転写制御に関与するトランスアクチベータータンパク質を発現するコンストラクトも、当業者に周知な方法を用いて前記多能性幹細胞に導入される。前記遺伝子の導入方法は、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、微量注入法、電気穿孔法、パーティクル・ガン法等を含むが、これらに限定されない。前記コンストラクトが、レトロウイルス、アデノウイルス等の感染性粒子を産生する場合には、ヘルパーウイルス等を用いて培養液中に放出された前記感染性粒子が回収されて、多能性幹細胞に添加される。
【0033】
本発明において、多能性幹細胞の培養方法は、浮遊凝集培養法、フィーダー細胞を用いた共培養法等を含むが、これらに限定されない。多能性幹細胞から所望の細胞タイプへの分化誘導方法は、当業者に周知のいかなる方法を用いて実施されてもかまわない。本発明の多能性幹細胞に由来する分化細胞を患者に適用する経路は、目的の生体組織に送達されることを条件として特に問わない。前記細胞は、移植、静脈注射、皮下注射及び筋肉注射を含むが、これらに限定されない手段によって患者に適用される場合がある。
【0034】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞におけるドキシサイクリンによる発現誘導の実験結果を示すウェスタンブロット図。
【図2−1】p16の継続的な発現誘導が201B7細胞の増殖に与える効果を調べた実験結果を示すグラフ。
【図2−2】p21の継続的な発現誘導が201B7細胞の増殖に与える効果を調べた実験結果を示すグラフ。
【図2−3】p53の継続的な発現誘導が201B7細胞の増殖に与える効果を調べた実験結果を示すグラフ。
【図3】p16の一過性の発現誘導による201B7細胞の増殖への影響を調べた実験結果を示すグラフ。
【図4】マウス脳内に移植された201B7細胞の増殖に対するドキシサイクリン添加飲水によるp53誘導の影響を調べた実験結果を示す棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【0037】
以下の実施例に説明される研究は、「ヘルシンキ宣言(2002年10月改定)」、「疫学研究に関する倫理指針(平成14年6月17日文部科学省、厚生労働省)」、「臨床研究に関する倫理指針(平成15年7月30日厚生労働省)」、「実験動物の適正な実施に向けたガイドライン(平成18年6月1日日本学術会議)」、「研究機関における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年6月1日文部科学省)」及び「厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年6月1日厚生労働省)」の趣旨に則り公立大学法人名古屋市立大学の倫理委員会によって承認された後に実施された。承認番号等は以下のとおりである。
(1)H21M−65
マウス胎児線維芽細胞初代培養フィーダーの作成
承認日 平成22年2月10日
(2)H21M−72
老化誘導カセット導入iPSおよびE細胞のNOD−SCIDマウスにおける造腫瘍性の検討
承認日 平成22年4月6日
【実施例1】
【0038】
p16、p21又はp53の遺伝子を誘導可能に発現するiPS細胞の樹立
1.材料及び方法
(1)iPS細胞培養用フィーダー細胞の調製
マウス胎仔線維芽細胞(以下、「MEF細胞」という。)が、iPS細胞培養用フィーダー細胞として用いられた。胎齢13.5〜14.5日のマウス(C57BL/6J、日本エスエルシー株式会社)の胎仔が、内臓及び頭部以外の胴体をハサミで細かく切断された後、0.25%のトリプシン及び1mMのEDTAを含む、カルシウム及びマグネシウムイオン不含生理食塩水(0.25% Trypsin−EDTA、GIBCO、25200、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)中で、37°C、10分間インキュベーションされた。10% ウシ胎仔血清、1% ピルビン酸ナトリウム、1% 非必須アミノ酸(NEAA)、100units/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン(Pen Strep(GIBCO、15140、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)の1%)、及び、50μM 2−メルカプトエタノールを添加した高グルコースダルベッコ変法イーグル培地(12699−013、Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社、以下、「MEF細胞用培地」という。)が調製された。前記マウス胎仔線維芽細胞は、培養ディッシュ(145.0/20mm、639160、株式会社 グライナー・ジャパン)に1枚あたり2×10個播種され、前記MEF細胞用培地を用いて、37°C、5%CO及び飽和水蒸気雰囲気下で培養された。
【0039】
(2)iPS細胞培養用フィーダー細胞の凍結保存
継代3回までのMEFは、1μg/mL マイトマイシン−C(MO503、シグマアルドリッチジャパン株式会社)を添加したMEF細胞用培地で2時間培養された後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄され、0.25% トリプシン及び1mMのEDTAを含む、カルシウム及びマグネシウムイオン不含生理食塩水(0.25% Trypsin−EDTA、GIBCO、25200、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)で処理された。その後、前記MEFは細胞凍結保存液バンバンカー(CS−02−001、日本ジェネティクス株式会社)に3×10個/mLの濃度で懸濁され、1mLずつ凍結保存用チューブに移され、−150°Cで凍結保存された。
【0040】
(3)ヒトiPS細胞の培養
ヒトiPS細胞201B7株(Takahashi,K.ら、Cell、131:861(2007))は、山中伸弥教授(国立大学法人京都大学 iPS細胞研究所)から供与された。201B7細胞が培養される前日に、MEF細胞は、解凍後、ゼラチンコートされた培養ディッシュ(353003、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に1枚あたり1×10個播種され、前記MEF細胞用培地を用いて、37°C、5%CO及び飽和水蒸気雰囲気下で終夜培養された。201B7細胞は、前記MEF細胞上にディッシュ1枚あたり約1×10個播種された。その後、ヒトiPS細胞培養用培地を用いて、前記201B7細胞は、37°C、5%CO及び飽和水蒸気雰囲気下で培養された。前記ヒトiPS細胞培養用培地は、20% ノックアウト血清代替添加物(KSR、10828、Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)と、1% 非必須アミノ酸(NEAA)と、1% L−グルタミンと、50units/mL ペニシリン、50μg/mL(Pen Strep(GIBCO、15140、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)の0.5%)と、100μM 2−メルカプトエタノールと、5μg/mL FGF−2(PeproTech、東洋紡績(株)ライフサイエンス事業部)とが添加されたDMEM/F12培地(D6421、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)である。前記ヒトiPS細胞培養用培地は、毎日交換された。
【0041】
(4)ヒトiPS細胞の継代培養
細胞分離溶液(RCHETP002、コスモ・バイオ株式会社)を用いて前記ディッシュから解離された201B7細胞が前記ディッシュ1枚あたり約1×10個に希釈されて継代培養に用いられた。
【0042】
(5)レンチウイルスベクターの作成
テトラサイクリン誘導型cDNA発現プラスミド(CSIV−TRE−RfA−UbC−KT)と、パッケージングプラスミド(pCAG−HIVgp及びpCMV−VSV−G−RSV−Rev)とは、三好浩之氏(理化学研究所バイオリソースセンター細胞運命情報解析技術開発サブチーム)から供与された。Mycタグとp16との融合タンパク質(以下、「p16−myc」という。)と、Flagタグとp53との融合タンパク質(以下、「Flag−p53」という。)と、HAタグとp21との融合タンパク質(以下、「p21−HA」という。)とをエンコードするポリヌクレオチドが、それぞれ、プラスミド(pENTR(商標)1A)にクローニングされた。前記ポリヌクレオチドは、Gateway LR Clonase(商標)II Enzyme Mix(11791−020、Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて、それぞれ、前記テトラサイクリン誘導型cDNA発現プラスミド(CSIV−TRE−RfA−UbC−KT)のRfA(Gateway Reading Frame Cassette A (Invitrogen)、クロラムフェニコール耐性遺伝子をコードするポリヌクレオチド)を置換するように挿入された。構築されたプラスミドは、それぞれ、「p16−myc誘導発現ベクター」、「Flag−p53誘導発現ベクター」及び「p21−HA誘導発現ベクター」と命名された。
【0043】
(6)宿主細胞の培養
前記誘導発現ベクターの挿入配列を含む自己不活性化レンチウイルス粒子を放出させるための宿主細胞として、継代回数の少ない293T細胞が用いられた。前記293T細胞は、0.01% ポリ−L−リジン溶液(P4832、シグマアルドリッチジャパン株式会社)で10分間コーティングされた培養ディッシュ(353003、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)にディッシュ1枚あたり5×10個播種された。前記細胞は、10% ウシ胎仔血清を添加したダルベッコ変法イーグル培地(以下、「293T細胞用培地」という。)を用いて、37°C、10%CO及び飽和水蒸気雰囲気下で24時間培養された。
【0044】
(7)宿主細胞への感染
p16−myc誘導発現ベクター、Flag−p53誘導発現ベクター又はp21−HA誘導発現ベクターは、リン酸カルシウム法によって293T細胞に2種類のパッケージングプラスミドpCAG−HIVgp及びpCMV−VSV−G−RSV−Revと同時にトランスフェクションされた。前記細胞は、37°C、3%COで12〜18時間培養された。p16−myc誘導発現ベクター、Flag−p53誘導発現ベクター及びp21−HA誘導発現ベクターがトランスフェクションされた前記細胞から放出される自己不活性化レンチウイルスは、それぞれ、「p16−myc誘導発現ウイルス」、「Flag−p53誘導発現ウイルス」及び「p21−HA誘導発現ウイルス」という。その後、前記293T細胞用培地から、10μMフォルスコリン(D4546、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)と、10% ウシ胎仔血清とを添加したダルベッコ変法イーグル培地に切り換えられ、前記細胞は、37°C、10%COで2日間培養された。
【0045】
(8)レンチウイルスの濃縮
2日間培養後の前記培養液は、0.45μmのフィルターでろ過された後、超遠心分離用チューブに回収された。超遠心分離機(himac SCP 85G、日立製作所)を用いて20°C、50000×gで2時間の超遠心分離が行われた。沈殿物の懸濁液は限外濾過フィルター(Amicon ultra centrifugal filter units、分画分子量100,000、UFC510096、日本ミリポア株式会社)を用いて濃縮され、濃縮ウイルス液が調製された。
【0046】
(9)ヒトiPS細胞への遺伝子導入
前記細胞分離溶液を用いて解離された201B7細胞は、前記ヒトiPS細胞培養用培地に懸濁された。この細胞懸濁液に対して体積比0.05倍量のレンチウイルス液が添加され、37°C、3%COで3時間静置された後、前記フィーダー細胞上に播種された。前記201B7細胞は終夜培養された後、培地が交換された。
【0047】
(10)遺伝子導入されたヒトiPS細胞の選択
p16−myc誘導発現ウイルス、Flag−p53誘導発現ウイルス又はp21−HA誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞は、クサビラ−オレンジ蛍光タンパク質の赤色蛍光を指標として蛍光顕微鏡(Biozero、株式会社キーエンス)により同定され、赤色蛍光陽性の細胞の分離、解離、及びコロニー形成を繰り返して、安定的にクサビラ−オレンジ蛍光タンパク質を発現するクローンが選択された。
【0048】
(11)アルカリフォスファターゼ染色
アルカリフォスファターゼ染色は、アルカリフォスファターゼキット(86L3R、シグマアルドリッチジャパン株式会社)を用いて製造者の指示書に従って行われた。観察には、顕微鏡(Biozero、株式会社キーエンス)が用いられた。
【0049】
(12)ドキシサイクリンによる遺伝子発現誘導
201B7細胞に導入された外来遺伝子の発現誘導は、1μg/mL、2μg/mL、5μg/mL又は10μg/mLのドキシサイクリン(D9891、シグマアルドリッチジャパン株式会社)を添加したヒトiPS細胞培養用培地を用いて行われた。陰性対照には、ドキシサイクリンと同じ体積の水を添加したヒトiPS細胞培養用培地が用いられた。
【0050】
(13)ウェスタンブロット解析
ウェスタンブロット解析は、当業者に周知の標準的な方法に従って行われた。1次抗体には、マウス抗c−myc抗体(9E10 Sc40、Santa Cruz Biotechnology、コスモ・バイオ株式会社)、マウス抗HA抗体(12CA5 11583816001、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)、及び、マウス抗Flag抗体(M2 F3165、シグマアルドリッチジャパン株式会社)が用いられた。2次抗体には、HRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(GE Healthcare)が用いられた。検出は、ECLウェスタンブロッティング検出試薬(RPN2209、GEヘルスケア・ジャパン株式会社)を用いて行われた。
【0051】
2.結果
(1)遺伝子導入されたヒトiPS細胞
p16−myc、p21−HA及びFlag−p53のそれぞれの誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞から、クサビラ−オレンジ蛍光タンパク質の赤色蛍光陽性、かつ、未分化細胞の形態を示す細胞のクローンが単離された。これらの細胞は、アルカリフォスファターゼ染色で陽性であった(図示されない)ことから、p16−myc、p21−HA及びFlag−p53の誘導発現ベクターの挿入配列が安定的にインテグレーションされた201B7細胞は、生化学的なマーカーからも未分化状態を維持していることが示された。
【0052】
(2)ドキシサイクリンによる遺伝子発現誘導
図1は、前記誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞におけるドキシサイクリンによる発現誘導の実験結果を示すウェスタンブロット図である。p16−myc、p21−HA又はFlag−p53の誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞が播種されて24時間後から48時間後までの間ドキシサイクリンを含む培地に切り替えられ、その後、細胞は解離され、SDS−PAGE用サンプルバッファーで溶解され、ウェスタンブロッティング法に供された。p16、p53及びp21は、それぞれ、連結されたmycタグ、HAタグ及びFlagタグに特異的な抗体で検出された。その結果、図に示すとおり、1p16、p53及びp21は、いずれも、陰性対照(cont)では全く発現が認められなかったが、1μg/mL、2μg/mL、5μg/mL及び10μg/mLのドキシサイクリン存在下の24時間の培養では発現が十分に認められた。なお、最大限の誘導活性は、ドキシサイクリン濃度1μg/mLで得られた。
【実施例2】
【0053】
継続的に発現が誘導された遺伝子による未分化iPS細胞の増殖抑制
1.材料及び方法
p16−myc、p21−HA及びFlag−p53のそれぞれの誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞の培養及び遺伝子発現誘導は、実施例1で説明された方法に従って行われた。遺伝子発現誘導による細胞増殖への影響を調べるためには、12ウェルの培養プレート(353048、ファルコン、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に5×10個/ウェルのMEF細胞が播種された。翌日、201B7細胞は、1×10個/ウェルとなるように前記培養プレートに播種された。24時間の培養後、1μg/mLのドキシサイクリンか、同体積の水かを添加したヒトiPS細胞培養用培地に切り換えられ、培地交換は毎日行われた。毎日それぞれの実験条件ごとに2個のウェルの201B7細胞が細胞分離溶液によって解離され、細胞数が算出された。
【0054】
2.結果
図2−1、図2−2及び図2−3は、それぞれ、p16、p21又はp53の継続的な発現誘導が201B7細胞の増殖に与える効果を調べた実験結果を示すグラフである。図2−1、図2−2及び図2−3において、縦軸は、ウェルあたりの細胞数で、単位は1×10個である。横軸は、培養日数で、横軸の下の帯は培養1日目以後ドキシサイクリンによる誘導が継続されたことを示す。実線は培養1日目以後ドキシサイクリンによる誘導が継続された細胞の増殖曲線を示し、破線は全く誘導されなかった細胞の増殖曲線を示す。図2−1、図2−2及び図2−3に示されるとおり、p16及びp53は201B7細胞の増殖をほぼ完全に抑制したが、p21は201B7細胞の増殖にはほとんど影響を与えなかった。本実施例の結果から、201B7細胞の増殖は、p16及びp53によって顕著に抑制されるが、p21によっては抑制されないことが示された。なお、p16及びp53の誘導開始から48時間までの培養では、単離細胞の浮遊が観察された。
【実施例3】
【0055】
p16の一過性の発現誘導による未分化iPS細胞の増殖抑制
1.材料及び方法
p16−mycの誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞の培養、遺伝子発現誘導及び細胞数測定は、実施例2で説明された方法に従って行われた。24時間培養後、培地は1μg/mLのドキシサイクリンを添加したヒトiPS細胞培養用培地に切り換えられた。さらに24又は48時間培養後、培地はドキシサイクリンを含まないヒトiPS細胞培養用培地に切り換えられた。その後、ドキシサイクリンを含まないヒトiPS細胞培養用培地が毎日交換された。
【0056】
2.結果
図3は、p16の一過性の発現誘導による201B7細胞の増殖への影響を調べた実験結果を示すグラフである。図3のグラフはそれぞれ2回の実験結果の平均値がプロットされた。図3において、縦軸は、ウェルあたりの細胞数で、単位は1×10個である。横軸は、培養日数で、横軸の下の帯は培養1日目から24時間だけドキシサイクリンによる誘導が行われたことを示す。実線は培養1日目から24時間だけドキシサイクリンによるp16発現誘導が行われた細胞の増殖曲線を示し、破線は全く誘導されなかった細胞の増殖曲線を示す。図3に示されるとおり、p16が24時間発現誘導されただけで、201B7細胞の増殖は顕著に抑制された。また、発現誘導終了後も少なくとも5日間201B7細胞は増殖しなかった。p16が48時間発現誘導された際に、ヒトiPS細胞の形態は扁平状に肥大化した(図示されない)。
【0057】
以上の実験結果から、ヒトiPS細胞は、p16の一過的発現誘導によって、増殖抑制されること、及び、老化した細胞と同様の形態となることが示された。したがって、p16は、細胞分化を誘導ことによって幹細胞の増殖を抑制できることが示唆された。
【実施例4】
【0058】
in vivoにおける未分化細胞の増殖抑制
1.材料及び方法
(1)ヒトiPS細胞
Flag−p53の誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞の培養は、実施例1で説明された方法に従って行われた。
【0059】
(2)マウス
NOD/SCIDマウス(6〜15週齢、チャールズ・リバー)が移植実験に用いられた。
【0060】
(3)マウスへのヒトiPS細胞の移植
NOD/SCIDマウスは麻酔下で開頭され、Flag−p53の誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞(2×10個/2μL)が、ブレグマ(矢状縫合と冠状縫合との交点)から前方1mm、右側2mm、及び、深さ3mmの線条体に移植された。
【0061】
(4)p53の発現誘導
2mg/mLのドキシサイクリンを添加した飲水が、遮光した給水瓶で、実験群のマウスに移植日から3週間投与された。前記給水瓶の飲水は3日毎に交換された。陰性対照群のマウスには、ドキシサイクリンを添加しない飲水が投与された。
【0062】
(5)組織学的解析
2mg/mLのドキシサイクリンを添加した飲水投与3週間後、マウスは屠殺され、4%パラホルムアルデヒドを添加したリン酸緩衝生理食塩水で潅流固定された脳組織がビブラトームで薄切され、50μm厚の連続切片が作成された。360μm間隔の切片が共焦点レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社)で観察され、脳内に移植されたiPS細胞塊の最大径が測定された。
【0063】
2.結果
図4は、マウス脳内に移植された201B7細胞の増殖に対するドキシサイクリン添加飲水によるp53誘導の影響を調べた実験結果を示す棒グラフである。縦軸はマウス脳内移植後3週間目の細胞塊の最大径の相対値を示す。各実験条件の誤差棒は、陰性対照群及び実験群のマウスそれぞれ3匹の細胞塊の最大径相対値の標準偏差を示す。アステリスク(*)は、スチューデントのt検定においてp値が0.21%であることを示す。なお、陰性対照群の細胞塊の最大断面積の平均値は8.024mmであったのに対し、実験群の細胞塊の最大断面積の平均値は0.207mmであった。図4に示されるとおり、陰性対照群では3週間で201B7細胞がマウス脳内で増殖して大きな細胞塊を形成するのに対し、実験群では生体内に移植された201B7細胞でもドキシサイクリンにより細胞増殖が抑制された。
【0064】
以上の実験結果から、本発明の誘導発現ウイルスが導入された201B7細胞は、生体内に移植されても、体外からの遺伝子発現操作によって腫瘍化を有効に防止できることが示された。
【0065】
p16、p21又はp53は、いずれも、細胞の早期老化(senescence)や、活性酸素種等に対するゲノム安定性に関係するタンパク質をエンコードする遺伝子である。p53遺伝子は多くの悪性腫瘍で突然変異を起こしており、p53遺伝子に欠失その他の突然変異がある細胞に野生型p53遺伝子を強制発現させるとアポトーシスによる細胞死が誘発される(Blagosklonny、M.V.及びEl−Deiry、W.S.、Int. J. Cancer、67:386(1996))。そこで、野生型p53遺伝子を発現するウイルスベクターを含む制がん剤が提案されている(WO01/083710)。しかし、ヒトES細胞(Miura、T.ら、Aging Cell、3:333(2004))及びiPS細胞(Ghosh、Z.ら、PLoS ONE、5:e8975)ではp53の発現が知られており、単純にp53遺伝子を強制発現してもアポトーシスを起こすとは考えられてはいなかった。最近、p16、p21及びp53は、いずれも、体細胞をiPS細胞に変換するリプログラミングを阻害する作用があることが報告された(Hong, H.ら、Nature, 460:1132(2009), Li, H.ら、Nature, 460:1136(2009)、Kawamura,T.ら、Nature、460:1140(2009)、Utikal, J.ら、Nature、460:1145(2009)、Marion、R.M.ら、Nature、460:1149(2009))。しかし、p53及びp16だけが本発明のiPS細胞の増殖抑制効果を奏し、p21は本発明の効果を奏さない。したがって、本発明は、従来のp16、p21及びp53に関する知見から当業者が予測することができない異質な作用効果を奏する発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物であって、
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に1個又は2個以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとの相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであるポリヌクレオチドによってエンコードされ、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成するポリヌクレオチドによってエンコードされ、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(f)特異的結合タグペプチドが前記(a)ないし(e)のいずれか1つに連結された融合タンパク質と、
(g)細胞膜透過性ペプチドが前記(a)ないし(f)のいずれか1つに連結された融合タンパク質とからなるグループから選択される、少なくとも1種類のタンパク質を含むことを特徴とする、多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物。
【請求項2】
多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物であって、
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に1個又は2個以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとの相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(f)特異的結合タグペプチドをエンコードするポリヌクレオチドが前記(a)ないし(e)のいずれか1つに連結された融合ポリヌクレオチドとからなるグループから選択される少なくとも1種類のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドは、恒常型又は誘導型プロモーターに発現可能に連結されることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記誘導型プロモーターは、テトラサイクリン誘導型プロモーターであることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の組成物を含むことを特徴とする、前記多能性幹細胞の生体内での腫瘍化を防止するための医薬品組成物。
【請求項6】
前記多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)又は胚性幹細胞(ES細胞)であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法であって、
(1)
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に1個又は2個以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとの相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであるポリヌクレオチドによってエンコードされ、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成するポリヌクレオチドによってエンコードされ、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(f)特異的結合タグペプチドが前記(a)ないし(e)のいずれか1つに連結された融合タンパク質と、
(g)細胞膜透過性ペプチドが前記(a)ないし(f)のいずれか1つに連結された融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質を用意するステップと、
(2)
ステップ(1)で用意されたタンパク質を多能性幹細胞中に導入するステップと
を含むことを特徴とする、多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法。
【請求項8】
多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法であって、
(1)
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に1個又は2個以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列との相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであるヌクレオチド配列を有し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドと、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成し、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、
(f)特異的結合タグペプチドをエンコードするポリヌクレオチドが前記(a)ないし(e)のいずれか1つに連結された融合ポリヌクレオチドとからなるグループから選択される少なくとも1種類のポリヌクレオチドを用意するステップと、
(2)
ステップ(1)で用意されたポリヌクレオチドを多能性幹細胞に導入するステップと、
(3)
ステップ(2)で導入されたポリヌクレオチドがエンコードするタンパク質を発現するステップと
を含むことを特徴とする、多能性幹細胞の増殖を抑制するための方法。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドは、恒常型又は誘導型プロモーターに発現可能に連結されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記誘導型プロモーターは、テトラサイクリン誘導型プロモーターであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)又は胚性幹細胞(ES細胞)であることを特徴とする、請求項7ないし10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
(b)配列番号1又は2のアミノ酸配列に1個又は2個以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列との相同性が、80%、90%又は95%か、それ以上かであるアミノ酸配列からなり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(d)配列番号3又は4のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとの相同性が、70%、80%、85%、90%又は95%か、それ以上かであるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(e)配列番号3又は4のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で雑種形成するポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、多能性幹細胞の増殖を抑制する活性を有するタンパク質と、
(f)特異的結合タグペプチドが前記(a)ないし(e)のいずれかに連結された融合タンパク質と
からなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質を誘導可能に発現するポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、多能性幹細胞。
【請求項13】
前記多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)又は胚性幹細胞(ES細胞)であることを特徴とする、請求項12に記載の多能性幹細胞。
【請求項14】
多能性幹細胞由来の分化細胞を含む細胞医薬組成物に混在する未分化多能性幹細胞を除去する方法であって、
(1)
多能性幹細胞を用意するステップと、
(2)
前記多能性幹細胞を分化させて、細胞医薬組成物を製造するステップと、
(3)
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の組成物を用意するステップと、
(4)
前記細胞医薬組成物に前記組成物を曝露するステップと
を含むことを特徴とする、多能性幹細胞由来の分化細胞を含む細胞医薬組成物に混在する未分化多能性幹細胞を除去する方法。

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−9742(P2013−9742A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143202(P2011−143202)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(506218664)公立大学法人名古屋市立大学 (48)
【Fターム(参考)】