説明

多色LEDおよび関連半導体デバイス

【課題】多色、白色または近白色光を放射可能なLEDデバイスの提供。
【解決手段】pn接合10内に位置する第1のポテンシャル井戸12と、pn接合内に位置しない第2のポテンシャル井戸4とを備える半導体デバイスが提供される。ポテンシャル井戸は量子井戸であり得る。半導体デバイスは通常、LEDであるとともに、白色または近白色光LEDであり得る。半導体デバイスはpn接合内に位置しない第3のポテンシャル井戸8をさらに備え得る。半導体デバイスは第2または第3の量子井戸の周囲の、または近接するまたは直接隣接する吸収層3,5,7,9をさらに備え得る。さらに半導体デバイスを備えるグラフィックディスプレイおよび照明装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は「白色」または多色LEDを始めとするLEDであり得る、ポテンシャル井戸構造、通常、量子井戸構造を備える半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は電流がアノードとカソードとの間に通された場合に発光する固体状態半導体デバイスである。従来のLEDは単一pn接合を含む。pn接合は中間非ドープ領域を含み得る。このタイプのpn接合はpin接合とも称され得る。非発光半導体ダイオードと同様に従来のLEDは一方向、すなわち電子がn領域からp領域に移動する方向により容易に電流を通す。電流がLED内を「順」方向に通る場合、n領域からの電子はp領域からのホールと再結合して光の光子を生成する。従来のLEDにより放射された光は外見が単色である、すなわち波長の単一の狭帯域で生成される。放射された光の波長は、電子−ホール対の再結合と関連するエネルギーに相当する。最も簡単な場合、そのエネルギーは再結合が発生する半導体のほぼバンドギャップエネルギーである。
【0003】
従来のLEDはpn接合において、高濃度の電子およびホールを両方とも捕獲する、1つまたは複数の量子井戸をさらに含み、光生成再結合を増強し得る。
【0004】
何人もの研究者が白色光、または人間の目の3色知覚に白色に見える光を放射するLEDデバイスを作製しようとしてきた。
【0005】
何人もの研究者が、多数の量子井戸が異なる波長で光を放射することを目的とした、pn接合内に多数の量子井戸を有するLEDの意図的設計および製造を報告している。以下の参照文献はこのような技術に関連し得るが、それは米国特許第5,851,905号明細書、米国特許第6,303,404号明細書、米国特許第6,504,171号明細書、米国特許第6,734,467号明細書、ダミラノ(Damilano)ら著、InGaN/GaN多数の量子井戸によるモノリシック白色光発光ダイオード(Monolithic White Light Emitting Diodes Based on InGaN/GaN Multiple−Quantum Wells)日本、日本応用物理学会誌、第40巻(2001年)pp.L918〜L920、山田ら著、InGaN多数量子井戸で構成された蛍光体のない高発光効率白色発光ダイオード(Phosphor Free High−Luminous−Efficiency White Light−Emitting Diodes Composed of InGaN Multi−Quantum Well)日本、日本応用物理学会誌、第41巻(2002年)pp.L246〜L248、ダルマッソ(Dalmasso)ら著、蛍光体のないGaNによる白色発光ダイオードのエレクトロルミネッセンス・スペクトルの注入依存性(Injection Dependence of the Electroluminescence Spectra of Phosphor Free GaN−Based White Light Emitting Diodes)、phys.stat.sol.(a)192、第1号、139−142(2003年)である。
【0006】
何人かの研究者が単一の装置内で異なる波長での独立発光を目的とする、2つの従来のLEDを結合したLEDデバイスの意図的設計および製造を報告している。以下の参照文献はこのような技術に関連し得るが、それは米国特許第5,851,905号明細書、米国特許第6,734,467号明細書、米国特許出願公開第2002/0041148A1号明細書、米国特許出願公開第2002/0134989A1号明細書、およびルオ(Luo)ら著、フルカラーおよび白色発光体用パターン化3色ZnCdSe/ZnCdMgSe量子井戸構造(Patterned three−color ZnCdSe/ZnCdMgSe quantum−well strutures for full−color and white light emitters)、応用物理学術誌、第77巻、第26号、4259〜4261頁(2000年)である。
【0007】
何人かの研究者が、LED素子によって放射された光の一部分を吸収するとともにより長い波長の光を再放射することを目的とした、従来のLED素子をイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)などの化学蛍光体と結合した、LEDデバイスの意図的設計および製造を報告している。米国特許第5,998,925号明細書および米国特許第6,734,467号明細書はこのような技術に関連し得る。
【0008】
何人かの研究者が、LED素子によって放射された光の一部分を吸収するとともにより長い波長の光を再放射することを目的とした、基板内に蛍光発光中心を生成するためにI、Al、Cl、Br、GaまたはInでnドープされたZnSe基板上に成長したLEDデバイスの意図的設計および製造を報告している。米国特許第6,337,536号明細書および日本特許出願公開第2004−072047号公報はかかる技術に関連し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
簡単に言えば本発明は、pn接合内に位置する第1のポテンシャル井戸と、pn接合内に位置しない第2のポテンシャル井戸とを備える半導体デバイスを提供する。ポテンシャル井戸は通常、量子井戸である。半導体デバイスは通常、LEDである。半導体デバイスはpn接合内に位置しない第3のポテンシャル井戸をさらに備え得る。半導体デバイスは第2の量子井戸の周囲のまたは近接するまたは直接隣接する吸収層をさらに備え得る。通常、吸収層は第1のポテンシャル井戸の遷移エネルギー以下であるとともに第2のポテンシャル井戸の遷移エネルギーより大きい吸収層バンドギャップエネルギーを有する。半導体デバイスは第3の量子井戸の周囲のまたは近接するまたは直接隣接する他の吸収層をさらに備え得る。通常、第2の吸収層は第1のポテンシャル井戸の遷移エネルギー以下であるとともに第3のポテンシャル井戸の遷移エネルギーより大きい吸収層バンドギャップエネルギーを有する。
【0010】
一実施形態において、第1のポテンシャル井戸の遷移エネルギーは緑色、青色または紫色の可視光、より典型的には青色または紫色可視光に相当し、第2のポテンシャル井戸の遷移エネルギーは黄色、緑色または青色可視光、より典型的には黄色または緑色可視光に相当し、さらに第3のポテンシャル井戸の遷移エネルギーは赤色、橙色または黄色可視光、より典型的には赤色または橙色に相当する。他の実施形態において第1のポテンシャル井戸の遷移エネルギーは紫外光に相当するとともに、第2のポテンシャル井戸の遷移エネルギーは可視光に相当する。他の実施形態において第1のポテンシャル井戸の遷移エネルギーは可視光に相当するとともに、第2のポテンシャル井戸の遷移エネルギーは赤外光に相当する。
【0011】
他の態様において本発明は、本発明による半導体デバイスを備えるグラフィックディスプレイを提供する。
【0012】
他の態様において本発明は、本発明による半導体デバイスを備える照明装置を提供する。
【0013】
本出願において、
半導体デバイス内の層のスタックに関して、「直接隣接する」とは介在層がなく連続して隣接することを意味し、「近接する」とは数層の介在層を有して連続して隣接することを意味し、さらに「周囲の」とは連続の前後両方を意味するものであり、
「ポテンシャル井戸」とは、周囲層より低いバンドギャップエネルギー、または周囲層より高い価電子帯エネルギー、もしくはその両方を有する半導体デバイス内の半導体層を意味し、
「量子井戸」とは、量子化効果が井戸内の電子−ホール対の遷移エネルギーを増加させるために十分に薄い、通常、100nm以下の厚さを有するポテンシャル井戸を意味し、
「遷移エネルギー」とは電子−ホール再結合エネルギーを意味し、
「格子整合する」とは、基板上のエピタキシャルフィルムなどの2つの結晶材料に関して、分離して考えた場合、各材料が格子定数を有すること、およびこれらの格子定数が実質的に同等、通常、互いに0.2%以下異なる、より典型的には互いに0.1%以下異なる、さらに最も典型的には互いに0.01%以下異なることを意味し、
「擬似格子整合する(pseudomorphic)」とは、エピタキシャルフィルムと基板のような、所与の厚さの第1の結晶層と第2の結晶層に関して、分離して考えた場合、各層が格子定数を有すること、およびこれらの格子定数が実質的に同じであり、所与の厚さの第1の層が、実質的に不整合欠陥を生成することなく、層の平面内に第2の層の格子間隔を採用することができることを意味する。
【0014】
nドープおよびpドープ半導体領域を備える、本明細書で説明する、本発明のいずれの実施形態に対しても、nドーピングをpドーピングおよびその逆のさらなる実施形態が本明細書に開示されたものとして考えられるということが理解できよう。
【0015】
「ポテンシャル井戸」、「第1のポテンシャル井戸」、「第2のポテンシャル井戸」および「第3のポテンシャル井戸」の各々が本明細書で引用される場合、単一ポテンシャル井戸を設け得る、または通常、同様な特性を共有する多数のポテンシャル井戸を設け得るということは理解できよう。同様に「量子井戸」、「第1の量子井戸」、「第2の量子井戸」および「第3の量子井戸」の各々が本明細書で引用される場合、単一量子井戸を設け得る、または通常、同様な特性を共有する多数の量子井戸を設け得るということは理解できよう。
【発明の効果】
【0016】
本発明のある実施形態の利点は、多色、白色または近白色光を放射可能なLEDデバイスを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による構成の半導体の伝導帯および価電子帯のフラット・バンド図である。層厚さは一定の縮尺で表わされてはいない。
【図2】様々なII−VI族二元化合物およびその合金に対する格子定数とバンドギャップエネルギーとを示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態によるデバイスから放射する光のスペクトルを表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明はpn接合内に位置する第1のポテンシャル井戸とpn接合内に位置しない第2のポテンシャル井戸とを備える半導体デバイスを提供する。ポテンシャル井戸は通常、量子井戸である。半導体デバイスは通常、LEDである。LEDは通常、2つの波長の光、第1のポテンシャル井戸の遷移エネルギーに相当する1つの光および第2のポテンシャル井戸の遷移エネルギーに相当する第2の光を放射可能である。典型的な動作において第1のポテンシャル井戸は、pn接合を流れる電流に応じて光子を放射するとともに、第2のポテンシャル井戸は、第1のポテンシャル井戸から放射された光子の一部分の吸収に応じて光子を放射する。半導体デバイスは第2のポテンシャル井戸の周囲のまたは近接するまたは直接隣接する1つまたは複数の吸収層をさらに備え得る。吸収層は通常、第1のポテンシャル井戸の遷移エネルギー以下であるとともに第2のポテンシャル井戸より大きいバンドギャップエネルギーを有する。典型的な動作において吸収層は第1のポテンシャル井戸から放射された光子の吸収を助ける。半導体デバイスは、pn接合内に位置するまたはpn接合内に位置しないさらなるポテンシャル井戸と、さらなる吸収層とを備え得る。
【0019】
本発明による半導体デバイスは、SiまたはGe(発光層内以外)などのIV族元素、InAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、およびそれらの合金などのIII−V族化合物、ZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgSおよびそれらの合金などのII−VI族化合物、または上記のうちのいずれかの合金を始めとする任意の適当な半導体で構成され得る。必要に応じて半導体は任意の適当な方法によりまたは任意の適当なドーパントの含有により、nドープまたはpドープされ得る。
【0020】
本発明による半導体デバイスは基板を含み得る。任意の適当な基板を本発明の実施で用い得る。典型的な基板材料には、Si、Ge、GaAs、InP、サファイア、SiC、ZnSe、CdSe、ZnTe、GaSbおよびInAsがある。最も典型的には基板はInPである。基板は任意の適当な方法によりまたは任意の適当なドーパントの含有により達成し得る、nドープ、pドープ、または半絶縁性であり得る。代替的には本発明による半導体デバイスは基板がなくてもよい。一実施形態において本発明による半導体デバイスを基板上に形成した後、基板から分離し得る。
【0021】
本発明の一実施形態において、半導体デバイスの様々な層の組成は以下のことを考慮して選択される。各層は通常、その層の所与の厚さにおいて基板に擬似格子整合するか、または基板に格子整合する。代替的には各層は直接隣接する層に擬似格子整合または格子整合し得る。量子井戸層材料および厚さは通常、量子井戸から放射される光の波長に対応する所望の遷移エネルギーを提供するように選択される。例えば図2内に460nm、540nmおよび630nmと標識付けされた点は、InP基板のものに近い格子定数(5.8687オングストロームまたは0.58687nm)と、460nm(青色)、540nm(緑色)および630nm(赤色)に相当するバンドギャップエネルギーとを有するCd(Mg)ZnSe合金を表わす。量子化が井戸内のバルクバンドギャップエネルギーを超えて遷移エネルギーを上昇させるようにポテンシャル井戸層が十分に薄い場合、ポテンシャル井戸は量子井戸としてみなされ得る。各量子井戸層の厚さは、量子井戸内の遷移エネルギーを決定するためにバルクバンドギャップエネルギーに追加される量子井戸内の量子化エネルギー量を決定する。このように各量子井戸に関連する波長は量子井戸層厚さの調節により調整することができる。通常、量子井戸層の厚さは1nm〜100nmであり、より典型的には2nm〜35nmである。通常、量子化エネルギーは、バンドギャップエネルギーのみに基づいて予期されるものに対して20〜50nmの波長の低減になる。発光層の歪みは、擬似格子整合層間の格子定数の不完全な整合に起因する歪みを始めとする、ポテンシャル井戸および量子井戸の遷移エネルギーも変化し得る。pn接合を構成する層を始めとする、ポテンシャル井戸または吸収層を備えていない半導体デバイスの追加のnドープ、pドープ、または非ドープ(真性)層を備える材料は、通常、LEDにより生成される光に対して透明であるように選択される。これらの追加層の厚さは通常、ポテンシャル井戸に対する厚さより大幅に大きく、通常、少なくとも50nm且つ100μmまでである。
【0022】
歪みまたは非歪みポテンシャル井戸または量子井戸の遷移エネルギーを算出する技術は当該技術、例えばヘルベルト・クレーマー(Herbert Kroemer)著、工業量子力学、材料科学および応用物理(Quantum Mechanics for Engineering,Materials Science and Applied Physics)(ニュージャージー州イングルウッド・クリフス(Englewood Cliffs, New Jersey,1994年)のプレンティス・ホール(Prentice Hall))、54〜63頁、およびゾリ(Zory)編集、量子井戸レーザ(Quantum Well Lasers)(カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,California,1993年)のアカデミック(Academic)出版)72〜79頁で既知である。
【0023】
赤外、可視、および紫外帯域の波長を始めとする任意の適当な発光波長が選択され得る。本発明の一実施形態において発光波長は、デバイスにより放射された光の合成出力が、白色または白色に近い色、パステルカラー、マゼンタ、シアン等を始めとする2つ、3つ、またはそれより多くの単色光源の組み合わせにより生成することができる任意の色の外観を生成するように選択される。他の実施形態において本発明による半導体デバイスは、デバイスが作動中であることの表示として不可視赤外または紫外波長および可視波長の光を放射する。通常、第1のポテンシャル井戸は最も高い遷移エネルギー(最も短い波長)に関連しているため、第1のポテンシャル井戸から放射された光子は他のポテンシャル井戸を駆動するための十分なエネルギーを有する。
【0024】
図1は本発明の一実施形態による構成の半導体の伝導帯および価電子帯を表わすバンド図である。層厚さは一定の縮尺で表わされてはいない。表Iはこの実施形態の層1〜14の組成と、その組成のバンドギャップエネルギー(Eg)とを示す。
【0025】
【表1】

【0026】
層10、11、12、13および14はpn接合、より具体的には、中間非ドープ(「真性」ドーピング)層11、12、および13がnドープ層10とpドープ層14との間に介在するため、pin接合を表わす。層12は約10nmの厚さを有する量子井戸であるpn接合内の単一のポテンシャル井戸を表わす。代替的にはデバイスはpn接合内に多数のポテンシャルまたは量子井戸を備え得る。層4および8は各々約10nmの厚さを有する量子井戸である、pn接合内にはない第2および第3のポテンシャル井戸を表わす。代替的にはデバイスはpn接合内にはないさらなるポテンシャルまたは量子井戸を備え得る。さらなる代替例においてデバイスはpn接合内にはない単一のポテンシャルまたは量子井戸を備え得る。層3、5、7および9は各々約1000nmの厚さを有する吸収層を表わす。図示しない電気コンタクトはpn接合に電流を供給する経路を提供する。電気コンタクトは電気を伝導するとともに、通常、導電性金属で構成されている。正の電気コンタクトは、直接的にまたは中間構造を介して間接的に層14に電気的に接続されている。負の電気コンタクトは、直接的にまたは中間構造を介して間接的に層1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のうちの1つまたは複数に電気的に接続されている。
【0027】
理論に制約されるものではないが、本発明のこの実施形態は以下の原理により動作すると思われる。電流が層14から層10へ流れる場合、青色波長光子がpn接合内の量子井戸(12)から放射される。層14の方向に進行する光子はデバイスを離れる。反対方向に進行する光子は吸収されるとともに、緑色波長の光子として第2の量子井戸(8)から、または赤色波長光子として第3の量子井戸(4)から放射され得る。青色波長光子の吸収は電子−ホール対を生成し、それらは第2および第3の量子井戸で再結合し、その後光子を放射し得る。層14の方向に進行する緑色または赤色波長光子はデバイスを離れ得る。デバイスから放射された青色、緑色および赤色波長光の多色組み合わせは、色が白色または近白色に見え得る。デバイスから放射された青色、緑色および赤色波長の強度は、各タイプのポテンシャル井戸の数の操作およびフィルタまたは反射層の使用を始めとする、任意の適当な方法でバランスを取り得る。図3は本発明によるデバイスの一実施形態から放射する光のスペクトルを表わす。
【0028】
再度図1により表わされた実施形態を参照すると、吸収層3、5、7および9は、第1の量子井戸(12)の遷移エネルギーと第2および第3の量子井戸(8および4)の遷移エネルギーとの間の中間であるバンドギャップエネルギーを有するため、第1の量子井戸(12)から放射された光子を吸収するのに特に適当であり得る。吸収層3、5、7および9内の光子の吸収により生成された電子−ホール対は通常、第2および第3の量子井戸8および4により捕獲された後、光子の付随放射を伴って再結合する。吸収層は場合によっては通常、周囲層と同様にドープされ得るが、本実施形態においてn−ドーピングであることもある。吸収層は場合によってはそれらの厚さのすべてまたは一部分にわたって組成の傾斜を有し、電子および/またはホールをポテンシャル井戸に向かって注ぎ込むまたは指向し得る。
【0029】
本発明による半導体デバイスは追加の導体、半導体、または非導体層を備え得る。電気コンタクト層を追加してLEDのpn接合への電流供給の経路を提供してもよい。pn接合へ供給された電流がpn接合内にはないポテンシャル井戸にも流れるように、または電流がpn接合内にはないポテンシャル井戸には流れないように、電気コンタクト層を配置し得る。光フィルタ層を追加して、デバイスにより放射された光の波長のバランスを変更または修正し得る。輝度および効率を改善するために、ミラーまたは反射体を備える層をLED素子の背後、例えば基板とLED素子との間、基板およびLED素子の背後、基板内にまたは備えて、または基板の除去後にLEDの背後に配置し得る。
【0030】
一実施形態において本発明による半導体デバイスは、青色、緑色、黄色、および赤色帯域の4つの主な波長で発光する白色または近白色LEDである。一実施形態において本発明による半導体デバイスは、青色および黄色帯域の2つの主な波長で発光する白色または近白色LEDである。
【0031】
本発明による半導体デバイスは、レジスタ、ダイオード、ツェナーダイオード、従来のLED、キャパシタ、トランジスタ、バイポーラトランジスタ、FETトランジスタ、MOSFETトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、光トランジスタ、光検出器、SCR、サイリスタ、トライアック(登録商標)、電圧調整器、および他の回路要素などのアクティブまたはパッシブ構成要素を備えるさらなる半導体素子を備え得る。本発明による半導体デバイスは集積回路を備え得る。本発明による半導体デバイスはディスプレイパネルまたは照明パネルを備え得る。
【0032】
本発明による層構造は、分子ビームエピタキシ(MBE)、化学蒸着、液相エピタキシおよび気相エピタキシを含み得る任意の適当な方法により製造され得る。
【0033】
本発明による半導体デバイスは、大型または小型画面ビデオモニタ、コンピュータモニタまたはディスプレイ、テレビ、電話装置または電話装置ディスプレイ、携帯情報端末または携帯情報端末ディスプレイ、携帯無線呼出し器または携帯無線呼出し器ディスプレイ、計算機または計算機ディスプレイ、ゲームまたはゲームディスプレイ、玩具または玩具ディスプレイ、大型または小型器具もしくは大型または小型器具ディスプレイ、自動車ダッシュボードまたは自動車ダッシュボード・ディスプレイ、自動車室内または自動車室内ディスプレイ、船舶ダッシュボードまたは船舶ダッシュボード・ディスプレイ、船舶室内または船舶室内ディスプレイ、航空機ダッシュボードまたは航空機ダッシュボード・ディスプレイ、航空機室内または航空機室内ディスプレイ、交通制御装置または交通制御装置ディスプレイ、広告ディスプレイ、看板等などのグラフィックディスプレイの構成要素または重要な構成要素であり得る。
【0034】
本発明による半導体デバイスは、ディスプレイへのバックライトとして液晶ディスプレイ(LCD)または同様なディスプレイの構成要素または重要構成要素であり得る。一実施形態において本発明による半導体デバイスは、本発明による半導体デバイスによって放射された色をLCDディスプレイのカラーフィルタと整合させることにより、液晶ディスプレイ用のバックライトとしての使用に特に向いている。
【0035】
本発明による半導体デバイスは、自立または内蔵照明器具またはランプ、庭園または建造物照明器具、手持ち式または車両搭載ランプ、自動車ヘッドライトまたはテールライト、自動車室内照明器具、自動車または非自動車信号装置、道路照明装置、交通制御歩信号装置、船舶ランプまたは信号装置または室内照明器具、航空機ランプまたは信号装置または室内照明器具、大型または小型器具または大型または小型器具ランプ等、もしくは赤外、可視、または紫外線源として用いられる任意のデバイスまたは構成要素などの照明装置の構成要素または重要構成要素であり得る。
【0036】
当業者には本発明の範囲と原理とから逸脱することなく、本発明の様々な変形例および変更例が明らかになるであろうとともに、本発明は以上に説明した例示的実施形態に必要以上に限定されないことは理解できよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pn接合内に位置する第1のポテンシャル井戸と、pn接合内に位置しない第2のポテンシャル井戸とを備える半導体デバイス。
【請求項2】
前記第2のポテンシャル井戸に近接する吸収層をさらに備える請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記第2のポテンシャル井戸に直接隣接する吸収層をさらに備える請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記第1のポテンシャル井戸が第1の遷移エネルギーを有し、前記第2のポテンシャル井戸が第2の遷移エネルギーを有し、さらに前記吸収層が前記第1の遷移エネルギー以下であるとともに前記第2の遷移エネルギーより大きい吸収層バンドギャップエネルギーを有する請求項2に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記第1のポテンシャル井戸が第1の遷移エネルギーを有し、前記第2のポテンシャル井戸が第2の遷移エネルギーを有し、さらに前記吸収層が前記第1の遷移エネルギー以下であるとともに前記第2の遷移エネルギーより大きい吸収層バンドギャップエネルギーを有する請求項3に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
pn接合内に位置しない第3のポテンシャル井戸をさらに備える請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記第2のポテンシャル井戸に直接隣接する第1の吸収層と、前記第3のポテンシャル井戸に直接隣接する第2の吸収層とをさらに備える請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記第1のポテンシャル井戸が第1の遷移エネルギーを有し、前記第2のポテンシャル井戸が第2の遷移エネルギーを有し、前記第3のポテンシャル井戸が第3の遷移エネルギーを有し、前記第1の吸収層が前記第1の遷移エネルギー以下であるとともに前記第2の遷移エネルギーより大きい第1の吸収層バンドギャップエネルギーを有し、さらに前記第2の吸収層が前記第1の遷移エネルギー以下であるとともに前記第3の遷移エネルギーより大きい第2の吸収層バンドギャップエネルギーを有する請求項7に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記第1のポテンシャル井戸が量子井戸であるとともに、前記第2のポテンシャル井戸が量子井戸である請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
前記第1のポテンシャル井戸が量子井戸であるとともに、前記第2のポテンシャル井戸が量子井戸である請求項2に記載の半導体デバイス。
【請求項11】
前記第1のポテンシャル井戸が量子井戸であるとともに、前記第2のポテンシャル井戸が量子井戸である請求項3に記載の半導体デバイス。
【請求項12】
前記第1のポテンシャル井戸が量子井戸であるとともに、前記第2のポテンシャル井戸が量子井戸である請求項4に記載の半導体デバイス。
【請求項13】
前記第1のポテンシャル井戸が量子井戸であるとともに、前記第2のポテンシャル井戸が量子井戸である請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項14】
前記第1のポテンシャル井戸が量子井戸であり、前記第2のポテンシャル井戸が量子井戸であり、前記第3のポテンシャル井戸が量子井戸である請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
前記第1のポテンシャル井戸が量子井戸であり、前記第2のポテンシャル井戸が量子井戸であり、前記第3のポテンシャル井戸が量子井戸である請求項7に記載の半導体デバイス。
【請求項16】
前記第1のポテンシャル井戸が量子井戸であり、前記第2のポテンシャル井戸が量子井戸であり、前記第3のポテンシャル井戸が量子井戸である請求項8に記載の半導体デバイス。
【請求項17】
LEDである請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項18】
LEDである請求項2に記載の半導体デバイス。
【請求項19】
LEDである請求項3に記載の半導体デバイス。
【請求項20】
LEDである請求項4に記載の半導体デバイス。
【請求項21】
LEDである請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項22】
LEDである請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項23】
LEDである請求項7に記載の半導体デバイス。
【請求項24】
LEDである請求項8に記載の半導体デバイス。
【請求項25】
LEDである請求項9に記載の半導体デバイス。
【請求項26】
LEDである請求項10に記載の半導体デバイス。
【請求項27】
LEDである請求項11に記載の半導体デバイス。
【請求項28】
LEDである請求項12に記載の半導体デバイス。
【請求項29】
LEDである請求項13に記載の半導体デバイス。
【請求項30】
LEDである請求項14に記載の半導体デバイス。
【請求項31】
LEDである請求項15に記載の半導体デバイス。
【請求項32】
LEDである請求項16に記載の半導体デバイス。
【請求項33】
前記第1の遷移エネルギーが緑色、青色または紫色可視光に相当し、前記第2の遷移エネルギーが黄色、緑色または青色可視光に相当し、前記第3の遷移エネルギーが赤色、橙色または黄色可視光に相当する請求項24に記載の半導体デバイス。
【請求項34】
前記第1の遷移エネルギーが青色または紫色可視光に相当し、前記第2の遷移エネルギーが黄色または緑色可視光に相当し、前記第3の遷移エネルギーが赤色または橙色可視光に相当する請求項24に記載の半導体デバイス。
【請求項35】
前記第1の遷移エネルギーが紫外光に相当するとともに、前記第2の遷移エネルギーが可視光に相当する請求項21に記載の半導体デバイス。
【請求項36】
前記第1の遷移エネルギーが可視光に相当するとともに、前記第2の遷移エネルギーが赤外光に相当する請求項21に記載の半導体デバイス。
【請求項37】
前記第1の遷移エネルギーが緑色、青色または紫色の可視光に相当し、前記第2の遷移エネルギーが黄色、緑色または青色可視光に相当し、前記第3の遷移エネルギーが赤色、橙色または黄色可視光に相当する請求項32に記載の半導体デバイス。
【請求項38】
前記第1の遷移エネルギーが青色または紫色可視光に相当し、前記第2の遷移エネルギーが黄色または緑色可視光に相当し、前記第3の遷移エネルギーが赤色または橙色可視光に相当する請求項32に記載の半導体デバイス。
【請求項39】
前記第1の遷移エネルギーが紫外光に相当するとともに、前記第2の遷移エネルギーが可視光に相当する請求項29に記載の半導体デバイス。
【請求項40】
前記第1の遷移エネルギーが可視光に相当するとともに、前記第2の遷移エネルギーが赤外光に相当する請求項29に記載の半導体デバイス。
【請求項41】
請求項1に記載の半導体デバイスを備えるグラフィックディスプレイ。
【請求項42】
請求項1に記載の半導体デバイスを備える照明装置。
【請求項43】
請求項21に記載の半導体デバイスを備えるグラフィックディスプレイ。
【請求項44】
請求項21に記載の半導体デバイスを備える照明装置。
【請求項45】
請求項24に記載の半導体デバイスを備えるグラフィックディスプレイ。
【請求項46】
請求項24に記載の半導体デバイスを備える照明装置。
【請求項47】
請求項29に記載の半導体デバイスを備えるグラフィックディスプレイ。
【請求項48】
請求項29に記載の半導体デバイスを備える照明装置。
【請求項49】
請求項32に記載の半導体デバイスを備えるグラフィックディスプレイ。
【請求項50】
請求項32に記載の半導体デバイスを備える照明装置。
【請求項51】
マゼンタ発光LEDである請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項52】
シアン発光LEDである請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項53】
請求項1に記載の半導体デバイスを備える液晶ディスプレイ。
【請求項54】
前記第1、第2および第3の遷移エネルギーが液晶ディスプレイのカラーフィルタに整合されている、請求項33に記載の半導体デバイスを備える液晶ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−187977(P2011−187977A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111294(P2011−111294)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2007−545439(P2007−545439)の分割
【原出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】