説明

多重液圧バルブ駆動装置および方法

マイクロ流体装置は、多重液圧バルブ作動装置を含む。マイクロ流体装置のアクチュエータは、不揮発性で物質透過性の低い液体をもたらす制御チャネル、およびアクチュエータを収容する。アクチュエータは制御チャネルと作用し合う。制御チャネルは、流体が制御チャネルを通って移動し流体チャネルを圧縮するように、流体チャネルと作用し合う。流体チャネルを圧縮する作用が、流体チャネルを通して流体を移動させ得る。装置はまた、制御チャネルおよびアクチュエータと作用し合うピストンを含んでもよい。装置を、コンピューターシステム、制御ソフトウェア、撮像装置、インキュベーターまたは細胞操作システムに連結することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国陸軍研究所よって与えられた助成金DAAD19-03-1-0168号、国立科学財団によって与えられた助成金BES-0238625号、ならびに国立衛生研究所によって与えられた助成金HL084370-01号およびGM65934-01号によって援助された。政府は、本発明について一定の権利を有する。
【0002】
本出願は、2006年8月2日に出願された、出願番号60/834,949号の仮出願、および2006年12月27日に出願された出願番号60/877,262号の仮出願について優先権を主張する。それらのそれぞれは、参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の技術分野
本発明は、マイクロ流体装置およびそれらを用いるための方法に関する。特に本発明は、多重液圧バルブ駆動装置、その装置を利用するシステム、およびそのような装置を用いる方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
本発明の背景
マイクロ流体装置は、ユーザーがナノ〜マイクロリットル体積の流体を扱うことを可能にし、試薬の消費を減少させ、インビボでの流体対細胞容積比によく一致する生理学的細胞培養環境を創り出し、また細胞を多層流により細胞レベル以下で処理するなどの、低レイノルズ数現象の長所を利用する実験を行なうために役立つ。多くのマイクロ流体システムが、好ましい機械的性質、光学的透明性および生体親和性のために、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で作られる。
【0005】
多くのマイクロ流体システムは、多層ソフトリソグラフィー(MSL)を用いる空気駆動を利用した。それは、はるかに少数の制御ラインを用いて、数千までのバルブを並列して操作することを可能にする。しかしそれは、脆弱な相互接続を必要とし、マイクロ流体装置の持ち運び易さを制限する、巨視的スイッチおよび外部の圧力源に依存している。必要なのは、マイクロ流体装置のバルブ操作およびポンプ輸送のための、強健で安価なシステムである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、マイクロ流体装置およびそれらを用いるための方法に関する。特に本発明は、多重液圧バルブ駆動装置、および構成部品としてそのような装置を利用する装置およびシステムを用いる方法を提供する。
【0007】
例えばいくつかの態様では、本発明は、以下を含むマイクロ流体装置を提供する:不揮発性で物質透過性の低い液体(例えばイオン性流体)を収納するように構成された、一つまたは複数の制御チャネル;一つまたは複数のアクチュエータ(例えば触覚ブライユアクチュエータ)(ここで、アクチュエータのうち一つまたは複数は、制御チャネルのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う);および一つまたは複数の流体チャネル(ここで、流体チャネルのうち一つまたは複数は、一つまたは複数の制御チャネルとアクティブに作用し合う)。いくつかの態様では、装置はさらに、一つまたは複数のピストン(ここで、ピストンのうち一つまたは複数は、一つまたは複数の制御チャネルおよびアクチュエータのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う)を含む。いくつかの態様では、制御チャネルおよび/または流体チャネルの少なくとも一部分が、可撓性物質から構成される。いくつかの態様では、流体チャネルは制御チャネルと接触すると、変形しうる。いくつかの態様では、制御チャネルの各々は、流体チャネルのうち二つ以上とアクティブに作用し合う。いくつかの態様では、一つまたは複数の制御チャネルは閉じている。いくつかの態様では、一つまたは複数の流体チャネルは閉じている。
【0008】
本発明はさらに、不揮発性で物質透過性の低い液体(例えばイオン性液体)を収納するように構成された一つまたは複数の制御チャネル;一つまたは複数のアクチュエータ(例えば触覚ブライユアクチュエータ)(ここで、アクチュエータのうち一つまたは複数は、制御チャネルのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う);および一つまたは複数の流体チャネル(ここで、流体チャネルのうち一つまたは複数は、流体が制御チャネルを通って移動して流体チャネルを圧縮する条件下で、一つまたは複数の制御チャネルのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う)を含むマイクロ流体装置のアクチュエータを作動させる工程を含む方法を提供する。いくつかの態様では、流体チャネルを圧縮する作用によって流体チャネルを通る流体の移動が生ずる。いくつかの態様では、装置は、一つまたは複数のピストン(ここで、ピストンのうち一つまたは複数は、一つまたは複数の制御チャネルおよびアクチュエータのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う)をさらに含む。いくつかの態様では、流体チャネルは細胞を含む。いくつかの態様では、流体チャネルは、診断アッセイ成分(例えば核酸、ポリペプチド、抗体、緩衝液、または検出成分)で満たされる。
【0009】
追加の態様では、本発明は、不揮発性で物質透過性の低い液体(例えばイオン性液体)を収納するように構成された一つまたは複数のピストン;一つまたは複数のアクチュエータ(ここで、アクチュエータのうち一つまたは複数は、ピストンのうち一つまたは複数と作用し合い、ここで、アクチュエータのうち一つまたは複数は、ピストンのうち一つまたは複数を加圧するように構成される)を含むマイクロ流体装置を提供する。本発明は、さらに上述の装置または方法を使用するシステムを提供する。いくつかの態様では、装置は、コンピューターシステム、制御ソフトウェア、撮像装置、連絡システム、インキュベーター、液体操作システム、細胞操作システムなどのうち一つまたは複数と直接的または間接的に連結される。
【0010】
本発明のさらなる態様について以下に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)例示的な液圧バルブの模式図、および開いたバルブを上から見下ろした図を示す。透明な物質全体はPDMSであり、制御チャネルと流体チャネルの交差部の可撓性の膜を含む。模式図は縮尺通りに描かれてはいないが、ピストンは、約910μmの平均直径および152μmの高さを有する。それに対し、バルブ交差部は通常100×100μmであり、流体チャネルの高さは9μmおよび制御チャネルの高さは約16μmである。バルブとピストンは数センチメートル離れていてよい。(b)圧電駆動されたブライユピンが垂直移動した同じ模式図、ならびに閉じたバルブおよび加圧された制御チャネルを上から見下ろした図を示す。(c)加圧された制御チャネルおよび流体チャネルの四つの交差部を上から見下ろした図を示す。すべてのチャネルは、幅が40μmの右下の制御チャネルを除いて、高さが9μmであり、幅が100μmである。
【図2】(a)異なる制御チャネル流体によって時刻0に駆動されたとき、バルブが、閉じたままに留まる能力のグラフ。イオン性液体充填制御チャネルは、観察期間全体に亘り一貫してバルブ閉鎖を維持する。y軸は、最低値および初期値(バルブを閉じる前)に規格化されている。(b)反復して駆動された、イオン性液体で満たされたバルブのグラフ。ここでのチャネルの寸法は、制御チャネルおよび流体チャネルについて、それぞれ幅150μmおよび100μmである。
【図3】液圧バルブのシミュレーションを示す。両方の等価回路は、市販のソフトウェアSimulink (The MathWorks Inc., MA)によって、区分的線形電気回路シミュレーション(PLECS)(Plexim, Zurich, Switzerland)ツールボックスを用いて、数値的に解かれている。(a)および(b)イオン性液体で満たされた、および空気で満たされた制御ラインの等価回路モデル。(c)制御ラインの長さおよび液圧流体に基づいた、異なる応答時間のシミュレーション。応答時間の長さが、記録された応答時間の長さと一致している。(d)イオン性液体についてのシミュレーション結果を実験結果と対比させている。
【図4】例示的な液圧駆動装置の製作を示す。
【0012】
定義
本発明の理解を容易にするために、多くの用語および句を以下のように定義する。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲中の用語「試料」を、その最も広い意味で用いる。一方で、それは標本または培養物を含むものとする。他方で、それは生物学的試料および環境試料の両方を含むものとする。試料は、合成物起源の標本を含んでもよい。
【0014】
生物学的試料は、ヒトを含む動物、体液、固形物(例えば糞便)または組織、ならびに液体、固体食物、飼料製品、および酪農品目、野菜、肉および肉副産物などの原料、ならびに廃棄物であってよい。生物学的試料を、家畜の様々なファミリーの全て、ならびに、非限定的に、有蹄動物、クマ、魚、ウサギ目、げっ歯動物などを含む、自然のままの、または野生の動物から得てもよい。
【0015】
環境試料には、表層物質、土、水および産業試料などの環境物質、ならびに食物および乳製品の加工用の機器、装置、設備、器具、使い捨て物品、および非使い捨て物品から得られる試料が含まれる。これらの例を、本発明に適用可能な試料の型を限定するものと解釈するべきではない。
【0016】
本明細書で用いられる用語「細胞」とは、インビトロに存在するか、またはインビボに存在するかに関わらず、任意の真核細胞または原核細胞(例えば、大腸菌などの細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚細胞、および昆虫細胞)を指す。
【0017】
本明細書で用いられる用語「細胞培養物」とは、任意のインビトロの細胞の培養物を指す。この用語に含まれるのは、継代細胞株(例えば不死表現型を備えた)、一次細胞培養物、形質転換細胞系統、有限の細胞系統(例えば非形質転換細胞)、およびインビトロで維持される任意の他の細胞集団である。
【0018】
本明細書で用いられる用語「真核生物」とは、「原核生物」から区別することができる生物を指す。この用語は、真核生物の通常の特性(例えば、核膜によって境界が定められ、その中に染色体が位置する真の核の存在;膜結合型細胞小器官の存在;および真核生物中で一般に観察される他の特性など)を示す細胞を備えた生物をすべて包含するものとする。したがって、この用語には、非限定的に、菌類、原生動物、および動物(例えばヒト)などの生物が含まれる。
【0019】
本明細書で用いられる用語「インビトロ」とは、人工環境、および人工環境内に生じるプロセスまたは反応を指す。インビトロの環境は、非限定的に、試験管および細胞培養で構成されることが可能である。用語「インビボ」とは、自然環境(例えば動物または細胞)、および自然環境内に生じるプロセスまたは反応を指す。
【0020】
用語「被験化合物」および「候補化合物」とは、疾患、疾病、病気、または身体機能の障害を治療するかまたは予防するために使用する候補である、任意の化学的実体、調合薬、薬物などを指す。被験化合物は、公知の治療化合物および見込みのある治療化合物の両方を含む。被験化合物は、本発明のスクリーニング方法を用いてスクリーニングすることにより、治療薬であると決定することができる。本発明のいくつかの態様では、被験化合物はアンチセンス化合物を含む。
【0021】
本明細書で用いられる用語「プロセッサー」とは、プログラムにしたがって、一組の工程を行なう装置を指す(例えばデジタルコンピューター)。プロセッサーには、例えば、プログラム制御下でデータを受取り、送信し、記憶し、および/または操作するための中央処理装置(「CPU」)、電子装置またはシステムが含まれる。
【0022】
本明細書で用いられる用語「記憶装置」または「コンピューターメモリー」とは、非限定的に、ランダムアクセスメモリー、ハードディスク、磁気(フロッピー)ディスク、コンパクトディスク、DVD、磁気テープ、フラッシュメモリーなどを含む、コンピューターによって読取可能な任意のデータ記憶装置を指す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、マイクロ流体装置およびそれらを用いるための方法に関する。特に本発明は、多重液圧バルブ駆動装置、ならびにそのような装置、およびそのような装置を構成部品として採用するシステムを用いる方法を提供する。
【0024】
特に本発明の態様は、多重液圧バルブ駆動装置、その装置を用いる方法、およびその装置を採用するシステムを提供する。現在利用できる装置とは対照的に、本発明の液圧駆動の装置は携帯型にすることができ、低費用で作製することができる。
【0025】
化学的および生物学的実験の自動化、小型化および集積化が、マイクロ流体装置によって本質的な進歩を遂げた(Bums et al., Science 282,484 (1998); Shaikh et al., Proc.Natl. Acad. Sci U.S.A. 102, 9745 (2005))。マイクロ流体システムの開発にとって重要なのは、マイクロスケールチャネルのネットワーク内の流体流の調節が強固であることである。一般的な種類の流体制御は、変形可能な境界を用いて、機械的に液体を押し、引き、また方向を変える。その例には、多層ソフトリソグラフィー(MSL)に基づく空気圧バルブ(Unger et al., Science 288, 113 (2000))、熱空気圧バルブ(Yang et al., Sens.Actuators A Phys. 64, 101 (1998))、電気流動学的流体に基づくバルブ(Niu et al., Appl. Phys. Lett. 87,243501 (2005))、および変形可能なハイドロゲル(Beebe et al., Nature 404, 588 (2000))、が含まれる。別の機械的な戦略は、間がおよそ100〜150μmの可撓性の障壁によって分離されている、チャネルの下に整列された突出したピンの格子を使用する。ピンの動きが、マイクロ流体チップの表面を変形し、バルブが隣接チャネルを閉じる。外部の駆動部品は、それぞれが独立して駆動される能力を有する16〜1500本のピンを保持する市販のブライユ(Braille)ディスプレイアクチュエータ部品(KGS America, Metec AG in Germany)を用いて、手のひらサイズにして携帯型にすることができる(Futai et al., Lab Chip 6, 149 (2006))。
【0026】
流れを制御するためにブライユピンを使用することには限界がある。ピンは、PDMS上におよそ0.8mmの一定の接触直径を有し、規則的にグリッド中に配列されるので、バルブおよびポンプとしてのピンの組織された配置には、柔軟性がほとんどない。さらに、各ピンが一つのバルブを操作するので、そのような配置は多重化能力を欠き、それが次には、チップ上のバルブの数をブライユピンの数に制限する。別の機械的制御戦略は、調節される液体を保持する圧縮可能な「流体」チャネルのすぐ上の「制御」チャネル内の動的な空気圧を用いることである(Shaikh et al.、前記; Unger et al.、前記)。MSLおよび空気圧バルブの使用によって、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)などの軟質材の使用、設計可能な構成中にマイクロバルブをより密に詰め合わせる能力(Urbanski et al., Lab Chip 6, 96 (2006))、および多くのバルブを平行してスケールアップすることが可能になる(Hansen et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 99, 16531 (2002))。
【0027】
いくつかの態様では、本発明は、イオン性液体を含む液圧駆動の制御チャネルというさらなる利点を提供する。これにより、例えば低価格で携帯型のチップ中のマイクロ流体チャネルの迅速で確かな多重化が可能になる。
【0028】
I. マイクロ流体装置
本発明の態様の装置を、任意の適当な方法を用いて構成することができる。いくつかの態様では、本発明の態様のマイクロ流体装置は、液圧で駆動される駆動部品およびマイクロ流体部品を含む。本発明の態様の例示的装置を図1Aに示す。装置(1)は、制御チャネル(2)、流体チャネル(4)、ピストン(3)およびアクチュエータ(ブライユピンの任意の態様として図1Aに示す)(5)を含む。制御チャネル(2)は、液圧流体(6)で満たされる。制御チャネルおよび流体チャネルの少なくとも一部(例えば変形される部分)は、好ましくは可撓性物質で構成される。制御チャネルおよび流体チャネルは、好ましくは閉じたチャネルである。液圧流体は、好ましくは、不揮発性であり低い透過性を有するイオン性液体または他の液体である。イオン性液体は、それらが不揮発性であり、非常に低い透過性を有するので、他の液体と比較して非常に長時間制御チャネル内の圧力を保持することができるため、液圧流体として特に有用である。
【0029】
図1Aは、開いた配置にある装置(1)を示す。アクチュエータ(5)が「下」の位置にあり、液圧流体は制御チャネル(2)を通って移動しない。図1(b)は、閉じた配置にある装置を示す。アクチュエータ(5)が「上」の位置にあり、液圧流体(6)が制御チャネル(2)を通って流れ、流体チャネル(4)の上を押して、流体チャネル(4)を通る流れを制限する。このようにして、装置はそのような駆動を利用して、流体チャネル(4)を通る流体および生体物質の流れを制御する。
【0030】
いくつかの態様では、本発明の態様の装置(1)を利用して、多重液圧駆動システムを提供する。例えば、いくつかの態様では、単一の制御チャネル(2)を用いて、1つより多い流体チャネル(4)を制御する。いくつかの態様では、本発明の態様の装置およびシステムは、1つより多い制御チャネル(例えば、5より多い、10より多い、50より多いまたは100より多い)を含む。いくつかの態様では、本発明の態様の装置およびシステムは、1より多い流体チャネル(例えば、5より多い、10より多い、50より多いまたは100より多い)を含む。
【0031】
いくつかの態様では、装置の制御チャネル(2)は、イオン性液体である液圧流体(6)で満たされる。イオン性液体の使用は、揮発性液体または気体のような蒸発または漏れがないという長所を提供する。イオン性液体の使用は、粘性流体よりも、変形するのがより速く、そのためにより迅速なバルブ操作およびポンプ輸送を可能にするというさらなる長所を提供する。イオン性流体に満たされたチャネルは、少量の流体での使用にさらに適しており、長期に亘り圧力を維持することができる。本発明のこれらの態様の装置は、したがって長期に亘る使用に適している。液圧機器の使用はさらに、携帯型で、小さく、低価格の装置をもたらす。
【0032】
A. 装置の構築
いくつかの態様では、流体装置の構築は、好ましくは例えばDuffy et al (Analytical Chem 70 4974- 4984 1998; さらに Anderson et al, Analytical Chem 72 158-64 2000 および Unger et al., Science 288 113-16 2000も参照のこと)によって記述されるソフトリソグラフィー技術による。SYLGARD.RTM 184 Dow Corning Coのような、付加硬化性RTV-2シリコーンエラストマーを、この目的に用いることができる。様々な流路の寸法は、体積および流量特性などによって、容易に決定される。完全に閉じるように設計されるチャネルは、好ましくは、マイクロチャネルとアクチュエータとの間のエラストマー層がチャネルの底に接近することができるような深さを有する。エラストマー物質で基板を作製することによって、一般に、完全な閉鎖が容易になり、また、丸みのある断面、特にアクチュエータから最も遠い隅が丸くなっている断面も、完全な閉鎖を容易にする。深さはまた、例えばアクチュエータの伸長可能な突出部が伸長できる程度に依存する。したがって、チャネルの深さは、好ましくは100μm未満から、より好ましくは50μm未満と、様々でよい。10μm〜40μmの範囲のチャネルの深さが、大部分の用途に好ましいが、非常に浅いチャネルの深さ(例えばnm)さえも可能であって、適当なアクチュエータを用いると、特に部分的閉鎖、部分的バルブ操作で十分な場合には、500μmの深さが可能である。
【0033】
基板は1層または複数の層であってよい。個々の層を、レーザー切除、プラズマエッチング、湿式化学法、射出成形、プレス成形などを含む多数の技術によって調製することができる。特に光学的性質が重要な場合は、硬化性シリコーンから成形するのが最も好ましい。全てが当業者に周知である多数の方法によって、ネガ鋳型を生成することができる。次に、鋳型にシリコーンを注ぎ、必要または所望ならガス抜きし、硬化させる。複数層の相互接着を、従来技術によって遂行できる。
【0034】
いくつかの装置の好ましい作製方法は、ネガ型フォトレジストである、Micro Chem Corp Newton MassのSU-8 50フォトレジストを用いて、マスターを調製する工程を採用する。フォトレジストをガラス基板に塗布し、被覆されていない側から適当なマスクを通して露光する。硬化の深さは、露光時間および光源の強度などの因子に依存するので、非常に薄いものからフォトレジストの深さに至る範囲の形状を作成できる。ガラス基板に雄型を残して、露光されていないレジストを除去する。このマスター上に硬化性エラストマーを流し込み、次に取り出す。SU-8フォトレジストの材質特性および安価な光源からの拡散光を採用して、微細構造、および端部の角は丸く滑らかであるが、上部は平ら、即ち鐘形の断面輪郭を有するチャネルを生成することができる。短い露光は丸みのある上部を生成する傾向があり、一方長い露光は隅が丸い平らな上部を生成する傾向がある。長い露光はまた、幅広いチャネルを生成する傾向がある。これらの断面形状は、Unger et al., (Science (2000) 288: 113)によって開示されているように、流体流を止めるためにチャネル構造が完全につぶれることが必要な、圧縮変形に基づくバルブとして使用するのに理想的である。そのようなチャネルを用いて、ブライユ型アクチュエータがマイクロチャネルの完全な閉鎖をもたらし、それにより非常に有用なバルブ操作可能なマイクロチャネルを生成した。そのような形状はまた、一様な流れ場を生成し、良好な光学的性質を持つためにも役立つ。通常の手順では、フォトレジスト層を、紫外線UV透過照射器で生成された拡散光によって、マスク、例えばフォトプロットフィルムを通して基板の後ろ側から露光させる。鐘形の断面は、拡散光によって生成された球状の波面がネガ型フォトレジストに浸透する様式によって生成される。SU-8の吸収係数の照射線量に依存する変化は、365nmで、露光されていない場合の3985m-1から、端部の限界露光深度まで露光された場合の9700m-1までである。製作される構造の正確な横断面の形状および幅は、フォトマスク形状、露光20時間/強度、レジスト膜の厚み、およびフォトマスクとフォトレジストとの間の距離の組合せにより決定される。
【0035】
後ろ側からの露光は、フォトマスクによって定義された大きさより幅広く、またある場合には高さが元のフォトレジスト被覆の厚さと比較して小さい形状を作るが、転移されるパターンの寸法変化は、マスクの寸法および露光時間から容易に予測される。フォトマスクパターンの幅と得られたフォトレジストパターンの幅との関係は、フォトマスクの開口の一定の大きさを越える部分が実質的に直線的勾配になっている。この直線的関係により、単純な定数の減算によるフォトマスクの開口の大きさの簡単な補正が可能になる。露光時間が一定に保持される場合は、開口サイズの閾値が存在し、その開口サイズ以下では、不完全な露光によりマイクロチャネルの高さが元のフォトレジストの厚さより低くなる。低い照射線量は、より滑らかでより丸い断面形状のチャネルを作ることになろう。しかし低くすぎる照射線量または大きすぎるフォトレジストの厚さでは、フォトレジストへの浸透が不十分であって、その結果、元のフォトレジストの厚さより薄い断面が生じる。
【0036】
B. アクチュエータ
いくつかの態様では、装置の液圧ピストンを作動させるために必要な圧力を、リフレッシュ可能なブライユディスプレイに用いられるような、外部の触覚装置が供給する。触覚アクチュエータが、装置の作動部分と接触しており、エネルギーを与えられた時に伸長して変形可能なエラストマーを圧迫し、作動部分の形状を制限するかまたは閉鎖する。
【0037】
触覚アクチュエータは、エネルギーを与えられることにより形状を閉鎖するか制限するのではなく、伸長した位置にあるように作製されて、それがエネルギーを与えられると後退してもよいし、あるいはエネルギーを与えられた状態では流路を閉鎖するか制限し、エネルギーを除去されるとさらに通路を開くマイクロ流体装置に適用されてもよい。いくつかの態様では、アクチュエータは、画面の文字をブライユコードに直接翻訳するGATEWAYのソフトウェアを備えた、NAVIGATORブライユディスプレイとしてTelesensoryから市販されている装置などの、プログラム可能なブライユディスプレイ装置である。ブライユディスプレイは、他の供給業者では、Handy Tech Blazieおよび Alvaから入手することができる。これらの装置は、一般に、8ドットセルの直線的アレイを提供する。その各セルおよび各セルドットは個々にプログラム可能である。そのような装置は、視覚障害者によって用いられ、例えば文字メッセージの本などを読むために、文字列をブライユ記号に一度に一列ずつ変換する。追加の市販のブライユ装置、または他の方法で構築されたブライユ装置を、装置の中で用いてもよい。
【0038】
上述のように、マイクロ流体装置の作動部分は、ブライユ表示器上の各作動可能なドット、即ち伸長部位の下に、それぞれ位置することができるように設計される。しかし、柔軟性を高めるために、複数のマイクロ流体装置を用いて使用可能な定型的長方形アレイを提供することができる。プログラム可能な伸長可能突出部の、間隔がより近接し、数がより多いほど、マイクロ装置の設計における柔軟性がより大きくなる。
【0039】
アドレスで呼び出しできることも、従来の方法と同様である。組込型でない使用に適している適当なブライユディスプレイ装置が、24×16の触覚ピンアレイを有するGraphic Window Professional GWPとして、Handy Tech Electronik GmbH Horb Germany から入手可能である。マイクロバルブによって操作される空気圧ディスプレイが、Orbital Research Incによって開示されており、ブライユ触覚セルのコストを70米ドル/セルから5〜10ドル/セルへ低下させると称している。圧電アクチュエータも使用でき、その場合圧電素子が電気流体力学的流体に取って代わり、従って電極の配置も変わる。さらなるアクチュエータ装置を本発明の方法中で用いることができ、それは当業者に公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許公報20070090166号を参照のこと)。
【0040】
II. マイクロ流体装置の使用
本発明のマイクロ流体装置は多くの用途を有する。マイクロ流体装置の小型化および携帯性が、様々な研究、診断、産業および臨床応用において、用途を見出している。いくつかの態様では、本発明の態様のマイクロ流体装置は、細胞選別、細胞増殖(例えば、その各々が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願20070090166号および20070084706号を参照のこと)、および細胞培養における用途がある。他の用途には、非限定的に、ラボチップ型アッセイ(例えば、診断用または研究用アッセイ)、電気泳動、エレクトロスプレーイオン化、小体積の生物学的試料調製(例えば、細胞溶解、DNA抽出、DNA精製、オンチップPCR)またはそれらの組合せ、DNAまたは薬剤の分析、患者のスクリーニングおよびコンビナトリアル合成が含まれる。
【0041】
実験
次の実施例は、本発明の一定の好ましい態様および局面を示し、さらに説明するために提供されるのであって、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【0042】
実施例1
A. 方法
装置の製作および調製
製作過程の模式図を図4に示す。シリコン鋳型(iおよびiii)を、先述のフォトリソグラフィ技術(Unger et al.、前記)によって製作する。制御チャネルおよび流体チャネル用のフォトレジストAZ9260 (Microchem Co., Newton, MA)を、シリコンウェーハ上で、それぞれ2000rpmおよび3500rpmで35秒間回転させ硬化させる。シリコン(i)上の最初の制御チャネルの薄い(厚さ約150μm)レプリカ(a)中に孔を打ち抜き、打ち抜いた孔の空間をピストンとして組み込むことによって、最終制御層鋳型(ii)を作る。本発明者らは、最初のPDMSレプリカ(b)を上下逆に置き、光硬化性エポキシ(Epoxy Technology, Billerica, MA)を第2の鋳型(ii)として用いて、この鋳型を成型した。
【0043】
最終制御鋳型(ii)、流体鋳型(iii)、および別の水平基板(ガラス、またはペトリ皿の外側)に由来する3層(c)を用いて、3つのすべてを、プラズマ酸化(50W、300mTorr、30秒間)により、次々と結合させる。(d)に、制御ピストンおよび制御チャネルの上層、流体チャネルの中間層、および流体チャネルを密閉する下層の3層の側面図を示す。制御チャネルを、プラズマ酸化の直後、その液圧液で満たし、次に、強力瞬間接着剤で密閉する。液体は自然に入るが、正圧をかけて導入した後に、強力瞬間接着剤または他の適当な封入剤(シリコーン)によってチャネルを永久に密閉することもできる。
【0044】
多層PDMSマイクロ流体システムにおける液圧制御ラインの等価回路モデル
等価回路モデルを開発する目的は、MSLマイクロ流体システムにおける液圧制御ライン内の圧力伝達を評価することである。基本となる流体モデルは、ナビエ-ストークスの式に基づく。モデルを導くために用いられる3つの基本的要素:流体抵抗、キャパシタンスおよびインダクタンスが存在する。
【0045】
流体抵抗
電気抵抗と同様に、流体抵抗は、圧力低下の流量に対する比として定義され、

であり、式中、ΔPは圧力差(N/m2)であり、Qは体積流量(m3/s)である。幅wおよび深さhの長方形断面を有するパイプについて、層流およびニュートン流体の両方を仮定すると、抵抗は、

である。
透過性物質を通るガス拡散について、一定の拡散係数および一定の流束を仮定すると、定常状態についての一次元のフィックの第1法則は、

であり、これは、次の様に単純化することができる。

線形近似については、濃度cを、

と書くことができ、式中、ΔXは空気が拡散して通る透過性物質の厚さである。したがって、フィックの法則は、

となる。
【0046】
流体キャパシタンス
流体システムのコンプライアントエレメント(compliant element)は、キャパシタンスの流体当量(fluidic equivalent)を、圧力依存性体積変化として示す。

正方形膜の流体キャパシタンスを、プレート理論によって、

と導くことができ、式中、aは膜幅(m)、Eは膜のヤング率(N/m2)であり、tは膜厚(m)であり、またνは膜のポアソン比(無次元)である。
【0047】
液体それ自身が圧縮可能な場合は、それを、一定体積V中の分子数nの変化として定義することができるキャパシタンスで表わしてもよく、理想気体の圧力変化については、

である。
【0048】
流体インダクタンス
電気的インダクタンスと同様の様式で、流体系は、流体インダクタンスH (kg/m4)中に運動エネルギーを保存することができる。

【0049】
一定の断面積Aのチューブの中の非圧縮性かつ不活性な流体については、流体インダクタンスが、次式によって与えられる。

【0050】
圧縮性気体については、流体インダクタンスを実験的に決定することができる。第1に、イオン性溶液を、閉鎖端の酸素プラズマ処理された、親水性の壁を有するPDMSマイクロ流体チャネルに充填した。チャネル中に閉じ込められていた空気は、表面張力(ΔP)によって、PDMSを通って押し出されることになろう。充填過程を通じて空気の体積流は直線的に変化すること、およびチャネルがイオン性液体によって充填された後は、空気体積流は残存しない(Q=0)ことと仮定すると、ある位置で体積流量を測定し、その位置からチャネルを充填するまでに用いられた時間を知ることによって、dQ/dtを評価することができる。その結果、流体インダクタンスは、H=ΔP/(dQ/dt)によって計算することができる。
【0051】
寸法および物質特性
チャネルの幅に対する高さの比が低いことにより、流体チャネルおよび制御チャネルの横断面の寸法は長方形に近似した。表1は、シミュレーション中で用いられる寸法および物質特性を示す。
【0052】
(表1)流体の等価回路シミュレーションに用いられる装置寸法および物質特性

【0053】
B. 結果
本明細書に記述される実験は、外部から供給され切り替えられる高圧気体からの圧力ではなく、動くことができるブライユピンからの圧力によって機械的に加圧される液圧バルブの開発を目指す(図1)。各ピンの動きが、オンチップピストンを圧縮し、接続されている制御チャネルを加圧する(図1B)。制御チャネルは、可逆的に加圧されると、すぐ下にある流体チャネルの領域を閉鎖することができる。各ピンは、接触面積がおよそ0.49mm2であり、ピストンに0.18Nの力を供給する。機械的なピンによって圧縮されたピストンは、面積がおよそ0.83mm2であり、高さが150μmである。典型的な横断面の寸法は、制御チャネルでは、高さおよそ16μmで幅95μm、および流体チャネルでは、高さ8.5μmで幅95μmであり、バルブ交差部はおよそ100×100μmになる。MLS空気圧バルブと同様に、液圧バルブは並列した複数の流体チャネルに作用することができ、制御チャネルの幅を減少させる(100μmから40μmまで)ことにより、流体チャネルを飛び越すことができる(図1C)。十分に光学的にアクセスできるように、液圧バルブの位置をブライユピンおよびピストンの部位から遠ざけてしまうことができる。このようにして、MLS空気圧駆動方式が提供するバルブ配置の多重化能力および柔軟性が維持され、一方でブライユピン駆動を用いる相互接続のない液圧駆動の長所が実現される。
【0054】
各装置は、3つの貼り合わされたPDMS層から成り、上部制御層はピストンおよび制御チャネルの両方の形状を備えた鋳型として働く。中間層は、流体チャネルの鋳型として、ならびに制御チャネルと流体チャネルを分離する膜として働く。下部シートは、流体チャネルの第4の側面を閉鎖し、また中間層と共に、ピストンおよび対応する作動ブライユピンの間を分離するものとして働く。
【0055】
液圧流体の体積が小さいため、PDMSを通した液圧流体の蒸発および浸透による液圧流体のいかなる体積変化も排除することが好ましかった。気体のPDMSを通る透過または直接の蒸発が、駆動チャネルの圧力の急速な低下を引き起こすので、空気または水は、駆動流体としてあまり適当ではない(図2A)。流体の喪失を克服するために、非圧縮性ピストン流体として1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸(イオン性液体)を用いた。イオン性液体の使用は、ひとつには、それらが検知できる蒸気圧を有しないため(Rogers and Seddon, Science 302, 792 (2003))、特に環境にやさしい化学溶媒として近年増加している。空気および気化性の水などの気体と異なり、イオン性液体では、マイクロ流体チャネル内で、または環境に対して開かれている場合に、>10日間に亘って減少が観察されなかった。空気および水とは対照的に、イオン性液体は、かなりの期間に亘ってバルブを閉じたままで保持することができた、唯一の液圧液である(図2A)。
【0056】
このシステムは、層の製作中に、PDMS装置とブライユピンとの間の位置合わせを手作業で行うために、異なる液圧ラインの間で、応答時間が様々となる。ばらつきを改善するために、マーカーと位置合わせを用いる。このシステムはまた、空気圧バルブと比較して、より遅い開閉応答時間(約0.3〜2秒)を示す(図2B)。さらに理解するために、等価回路モデルを開発して、装置の液圧制御ライン内の圧力伝達をシミュレーションした(Bourouina and Grandchamp, Journal of Micromechanics and Microengineering 6,398 (1996); Aumeerally and Sittem, Simulation Modeling Practice and Theory 14, 82 (2006))。基礎となる流体モデルは、ナビエ-ストークスの式に基づき、3つの基本的要素:流体抵抗、キャパシタンス、およびインダクタンスを用いてモデルを構築する(Kovacs, Micromachined Transducers Sourcebook, the McGraw-Hill Companies, Inc., 1998; Zengerle and Richter, Journal of Micromechanics and Microengineering 4, 192 (1994))。図3Aおよび3Bは、それぞれイオン性液体および空気で満たされた制御ラインを備えた装置をシミュレーションするための等価回路モデルを示す。溶液で満たされたマイクロ流体チャネルおよびPDMSを通る空気拡散の両方を、流体がチャネルを流れるときに受ける慣性力および抵抗力を表わす一連のインダクターおよび抵抗器を用いてシミュレーションした。対照的に、空気で満たされたマイクロ流体チャネルは、空気の圧縮性により、コンデンサーと抵抗の並列の組合せによってシミュレーションした。制御チャネルと流体チャネルとの間の膜は、そのコンプライアンスに対応するコンデンサーによってシミュレーションした。シミュレーション結果は、実験で観察されるように、制御ラインを満たすためにイオン性液体を用いた装置と空気を用いた装置との間で、異なる挙動を示す(図2A)。
【0057】
長い制御チャネルの応答時間は、短い制御チャネルのものより大きい。モデルは、長さ38.6mmおよび11.9mmのイオン性液体充填制御チャネルが、バルブ操作をするためにおよそ0.5秒および0.3秒を要することを示しており、それらは観察された応答時間に一致する(図3C)。これらの一致は、構成された等価流体回路モデルが装置の応答を合理的によく予測できることを示している。それはまた、速い駆動が必要な場合には、制御チャネルの長さを最小にすることが望ましいことも示している。
【0058】
MLS空気圧バルブ戦略の現在の限界は、それぞれ独立して制御されるオンチップバルブが、個別に加圧されるチューブに依存し、それにより潜在的に多数の防漏相互接続が必要になることである。さらに、外部の巨視的な圧縮機およびバルブが必要なことが、自宅での、ポイントオブケアでの、または第三世界の田舎の環境での診断などの、いくつかの用途に役立つシステムの可搬性を減少させる(Jiang et al., J. Am. Chem. Soc. 125, 5294 (2003))。記述された液圧バルブ制御戦略は、並列して任意に並べられたバルブ(潜在的に多数の携帯型で利用可能な独立したアクチュエータにより駆動される)を利用することができるために、MLS空気圧バルブおよび機械的バルブの両方の共通の長所を有する。MLS空気圧バルブと同様に、液圧制御チャネルは、複数の流体チャネルをバルブ操作するが、他のバルブを操作しないでおくことができる。以前に報告されたブライユバルブ(Gu et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 101, 15861 (2004))およびポンプの機能を、液圧制御バルブと共に容易に使用することもできる。
【0059】
上記の明細書中で言及された全ての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明の上述の方法およびシステムの様々な改変および変更が、本発明の範囲および精神から外れることがないのは、当業者には明白であろう。本発明を、具体的な好ましい態様に関連して説明したが、特許請求した本発明が、そのような具体的態様に過度に限定されるべきではないことは当然に理解されるべきである。確かに、電気工学、光学、物理学および分子生物学、または関連分野の当業者にとって明白である、本発明を実施するための記述された様式の様々な改変は、添付の特許請求の範囲内に入るものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)不揮発性で物質透過性の低い液体を収容するように構成された、一つまたは複数の制御チャネルと;
b)一つまたは複数のアクチュエータであって、該アクチュエータのうち一つまたは複数が、制御チャネルのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う、アクチュエータと;
c)一つまたは複数の流体チャネルであって、該流体チャネルのうち一つまたは複数が、一つまたは複数の制御チャネルとアクティブに作用し合う、流体チャネルと
を含む、マイクロ流体装置。
【請求項2】
液体がイオン性液体である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
一つまたは複数のピストンをさらに含み、
該ピストンのうち一つまたは複数が、一つまたは複数の制御チャネル、およびアクチュエータのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う、
請求項1記載の装置。
【請求項4】
アクチュエータが触覚ブライユアクチュエータである、請求項1記載の装置。
【請求項5】
制御チャネルの少なくとも一部分が可撓性物質から構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項6】
流体チャネルの少なくとも一部分が可撓性物質から構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項7】
流体チャネルが、制御チャネルと接触した際に変形しうる、請求項1記載の装置。
【請求項8】
制御チャネルの各々が、流体チャネルのうち二つ以上とアクティブに作用し合う、請求項1記載の装置。
【請求項9】
一つまたは複数の制御チャネルが閉じている、請求項1記載の装置。
【請求項10】
一つまたは複数の流体チャネルが閉じている、請求項1記載の装置。
【請求項11】
a)不揮発性で物質透過性の低い液体を収容するように構成された一つまたは複数の制御チャネルと;一つまたは複数のアクチュエータであって、該アクチュエータのうち一つまたは複数が、制御チャネルのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う、アクチュエータと;一つまたは複数の流体チャネルであって、流体が制御チャネルを通って移動して流体チャネルを圧縮する条件下で、該流体チャネルのうち一つまたは複数が、一つまたは複数の制御チャネルのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う、流体チャネルと
を含むマイクロ流体装置のアクチュエータを作動させる工程を含む、方法。
【請求項12】
流体チャネルを圧縮する作用が、流体チャネルを通る流体の移動をもたらす、請求項11記載の方法。
【請求項13】
液体がイオン性液体である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
装置が、一つまたは複数のピストンをさらに含み、
該ピストンのうち一つまたは複数が、一つまたは複数の制御チャネル、およびアクチュエータのうち一つまたは複数とアクティブに作用し合う、
請求項11記載の方法。
【請求項15】
流体チャネルが細胞を含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
流体チャネルが診断アッセイ成分で満たされている、請求項11記載の方法。
【請求項17】
診断アッセイ成分が、核酸、ポリペプチド、抗体、緩衝液および検出成分からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
アクチュエータが、触覚ブライユアクチュエータである、請求項11記載の方法。
【請求項19】
制御チャネルの少なくとも一部分が可撓性物質から構成されている、請求項11記載の方法。
【請求項20】
流体チャネルの少なくとも一部分が可撓性物質から構成されている、請求項9記載の方法。
【請求項21】
制御チャネルの各々が、流体チャネルのうち二つ以上とアクティブに作用し合う、請求項11記載の方法。
【請求項22】
一つまたは複数の制御チャネルが閉じている、請求項11記載の方法。
【請求項23】
一つまたは複数の流体チャネルが閉じている、請求項11記載の方法。
【請求項24】
a)不揮発性で物質透過性の低い液体を収容するように構成された一つまたは複数のピストンと;
b)一つまたは複数のアクチュエータであって、該アクチュエータのうち一つまたは複数が、ピストンのうち一つまたは複数と作用し合い、該アクチュエータのうち一つまたは複数が、ピストンのうち一つまたは複数を加圧するように構成されている、アクチュエータと
を含む、マイクロ流体装置。
【請求項25】
液体がイオン性液体である、請求項24記載のマイクロ流体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−545748(P2009−545748A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522885(P2009−522885)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/017352
【国際公開番号】WO2008/016703
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(509031822)ザ レジェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (1)
【Fターム(参考)】