説明

多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法

【課題】従来は、圃場に立設したポールに、一基の防霜ファンを設け(建柱式防霜ファン)を利用し、暖気及び/又は空気を茶樹に対して送風する防霜方法・装置がある。しかし、この防霜方法・装置は一長一短があり、暖気が十分に活用されていない。
【構成】本発明は、圃場に立設した多頭式防霜ファンの多数基の防霜ファンには、一基又は数基の中心の防霜ファンを固定方式とし、また固定方式の防霜ファンの両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンを首振り方式とし、固定方式の防霜ファンを介して、圃場の中心領域に、常時かつ一定方向に、暖気を吹き降ろし、また首振り方式の防霜ファンを介して、圃場の左右領域に、常時かつ広角方向に、暖気を吹き降ろし凍霜害防止を図る圃場用防霜方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多頭式防霜ファン及び逆転層の空気(暖気)を利用した圃場用防霜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、茶園(茶畠)、桑畠、果樹園、果菜類、野菜類等圃場(農場)の凍霜害防止方法として、設置・使用・管理の簡便性と、低コスト等の面より、主として、逆転層の空気(暖気)及び防霜ファンを利用した防霜ファン方法・装置(防霜ファン方法とする)が重宝されている。この防霜ファン方法としては、次のような構造がある。
【0003】
「1」 圃場の枕地に設置した建柱に防霜ファンを設置する送風方法であり、有効である反面、茶園の近代化、及び高齢化、人手不足等の見地から、乗用式、又はレール式、クローラー式等の大型の茶刈機、大型の防除機等の大型の茶園管理装置が導入される傾向から、圃場内に立設する建柱が邪魔となり、作業の障害となることが問題の一例となっている。
【0004】
「2」 圃場の中に、起伏型の防霜ファン、又は走行(移動)型の防霜ファンによる送風方法がある。しかし、この送風方法は、大型の茶園管理装置の導入には有効である反面、暖気を捉えて、圃場に広範囲に送風するには、少しパワー不足が問題の一例となっている。
【0005】
これら現場における問題の一例を解決するための手段として、本出願人は、多年の経験則から次の特許出願を提案している。その一例を説明する。
【0006】
文献「イ」 特開2004−162557の「多頭式防霜ファンと低所式防霜ファンとを利用した圃場用防霜方法と、その装置」がある。この発明は、圃場に多頭式防霜ファンを一基、また低所式防霜ファンを数基設ける構成であって、この一基の多頭式防霜ファンを介して逆転層の空気を吹き降ろし、この吹き降ろした空気を、数基の各低所式防霜ファンを介して圃場の作物に送風し、作物の防霜を図る圃場用防霜方法である。従って、暖気の有効利用と、防霜が図れる。
【0007】
文献「ロ」 特開2004−190629の「多頭方式の低所式防霜ファン装置」がある。この発明は、圃場の埋設ポールに昇降自在に設けたポールと、このポールに設けた数基の防霜ファンとで構成した多頭方式の低所式防霜ファンであって、この数基の防霜ファンは、筒体に設けた渦状の整流板、防霜用のファンとで構成した首振り及び/又は俯角調整とする構成であり、この低所式防霜ファンは、茶樹内への収容と、作物の防霜を図る送風距離が確保できる。さらに低所式防霜ファン等の利点を最大限に発揮できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
処で、農業を取巻く気象環境の変化(急激な気象条件の変化と、又は寒暖の差が激しいこと等)と、合理化の促進(資源の価格の高騰と、高品質・高価格の達成)等から、農業関係者の強い要望が上がっている。
【0009】
これらの要望に応えるには、従来の建柱に一基の防霜ファンを設置し、暖気を利用した防霜ファン方法では、有効でないことが考えられる。
【0010】
また前記の要望と、市場における他の要望に応えるには、前述した文献「イ」、「ロ」は、それなりに対応可能であり、かつ実用性と、有益性とを備えた発明である。しかし、この農業を取巻く気象環境の変化と、合理化の促進等を、確実かつスムーズに達成するには、さらなる改良が要望される処である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1・2の発明は、逆転層の空気を多頭式防霜ファンで捉え、この空気を圃場の所用する方向に、確実に送風すること、また着霜が発生しない間隔での送風(間欠送風)を確保すること等を達成し、防霜効果を発揮すること、又は吹き降ろした空気を送風し、この空気を有効利用すること、等を意図する。そして、圃場の地形・面積、気象条件等に順応できる防霜方法を提供し、作物の防霜・生育環境維持を図ること、又は昨今の農業環境に対応すること、人的手段の不足と、労力の軽減化等を図ること、等を目的とする。
【0012】
請求項1は、圃場に立設した多数基の防霜ファンを装備した多頭式防霜ファンであって、
この多頭式防霜ファンの多数基の防霜ファンには、一基又は数基の中心の防霜ファンを固定方式とし、またこの固定方式の防霜ファンの両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンを首振り方式とし、
前記固定方式の防霜ファンを介して、前記圃場の中心領域に、常時かつ一定方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
また前記首振り方式の防霜ファンを介して、前記圃場の左右領域に、常時かつ広角方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
前記圃場の作物の凍霜害防止を図る構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法である。
【0013】
請求項2は、圃場に立設した多数基の防霜ファンを装備した多頭式防霜ファンであって、
この多頭式防霜ファンの多数基の防霜ファンは、一基又は数基の中心の防霜ファンと、この一基又は数基の中心の防霜ファンの両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンとし、
この一基又は数基の中心の防霜ファンと、この両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンとは、それぞれ調節手段を介して固定方式、又は首振り方式に変更可能とし、
前記固定方式の防霜ファンを介して、前記圃場の所定の領域に、常時かつ一定方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
また前記首振り方式の防霜ファンを介して、前記圃場の他の所定の領域に、常時かつ広角方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
前記圃場の作物の凍霜害防止を図る構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法である。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の目的を達成すること、この目的を達成するのに最適な防霜ファンの首振り角度を提供すること等を意図する。
【0015】
請求項3は、請求項1又は請求項2に記載の多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法であって、
その首振り方式の防霜ファンの首振り角度が、略1°〜60°とする構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法である。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2の目的を達成すること、この目的を達成するのに最適な防霜ファンの首振り角度及び/又は俯角調整手段を提供すること等を意図する。
【0017】
請求項4は、請求項1又は請求項2に記載の多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法であって、
その固定方式及び/又は首振り方式の防霜ファンは、それぞれ個別及び/又はそれぞれ一度に、俯角調整可能とする構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明は、圃場に立設した多数基の防霜ファンを装備した多頭式防霜ファンであって、
多頭式防霜ファンの多数基の防霜ファンには、一基又は数基の中心の防霜ファンを固定方式とし、また固定方式の防霜ファンの両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンを首振り方式とし、
固定方式の防霜ファンを介して、圃場の中心領域に、常時かつ一定方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
また首振り方式の防霜ファンを介して、圃場の左右領域に、常時かつ広角方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
圃場の作物の凍霜害防止を図る構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法である。
【0019】
請求項2の発明は、圃場に立設した多数基の防霜ファンを装備した多頭式防霜ファンであって、
多頭式防霜ファンの多数基の防霜ファンは、一基又は数基の中心の防霜ファンと、一基又は数基の中心の防霜ファンの両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンとし、
一基又は数基の中心の防霜ファンと、両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンとは、それぞれ調節手段を介して固定方式、又は首振り方式に変更可能とし、
固定方式の防霜ファンを介して、圃場の所定の領域に、常時かつ一定方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
また首振り方式の防霜ファンを介して、圃場の他の所定の領域に、常時かつ広角方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
圃場の作物の凍霜害防止を図る構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法である。
【0020】
従って、請求項1・2の発明は、逆転層の空気を多頭式防霜ファンで捉え、この空気を圃場の所用する方向に、確実に送風できること、また着霜が発生しない間隔での送風(間欠送風)を確保すること等を介して、防霜効果を発揮できること、又は吹き降ろした空気を送風し、この空気を有効利用できること、等の特徴がある。そして、圃場の地形・面積、気象条件等に順応できる防霜方法を提供し、作物の防霜・生育環境維持が図れること、又は昨今の農業環境に対応できること、人的手段の不足と、労力の軽減化等が図れること、等の特徴がある。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法であって、
首振り方式の防霜ファンの首振り角度が、略1°〜60°とする構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法である。
【0022】
従って、請求項3は、請求項1又は請求項2の目的を達成できること、この目的を達成するのに最適な防霜ファンの首振り角度を提供できること等の特徴を有する。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法であって、
固定方式及び/又は首振り方式の防霜ファンは、それぞれ個別及び/又はそれぞれ一度に、俯角調整可能とする構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法である。
【0024】
従って、請求項4の発明は、請求項1又は請求項2の目的を達成できること、この目的を達成するのに最適な防霜ファンの首振り角度及び/又は俯角調整手段を提供できること等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施態様を、茶園の圃場において、地形(地形の凹凸、又は形状等)及び/又は気象(例えば、風の流れ/強さ等)を考慮し、一基又は数基の中心の防霜ファン(中心の防霜ファンとする)が、固定又は首振り方式か、また固定方式の防霜ファンの両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファン(左右の防霜ファンとする)が、首振り又は固定方式かを選択する。以下、その一例と、好ましい一例とを説明する。
[あ] 図7−1、図7−2は、圃場を平坦地とした一例であって、気象条件により、中心・左右の防霜ファンの構造を選択するので、区分して説明する。先ず、図7−1は、平坦地であって、圃場が無風状態の場合には、中心の防霜ファン(A)が固定方式で、図面に向って左右の防霜ファン(B)、(C)が首振り方式とする。この例では、中心の防霜ファン(A)を介して、送風範囲を一定方向に設定し、固定方式で集中方式に、連続的に送風(W1)する。また左右の防霜ファン(B)、(C)を介して、送風範囲をワイドに設定し、首振り方式で広域的、かつ間欠的に送風(W2)、(W3)する。この首振り範囲及び/又は間欠送風は、適宜設定する。そして、この左右の防霜ファン(B)、(C)の送風方向を想像線で示す。この送風(W1)〜(W3)で、例えば、効率的な防霜効果を達成し、結果的に、多頭式防霜ファンの台数の減少と、コスト又はランニングコスト等の軽減化、削減化が図れる。そして、この例では、連続的な送風(W1)と、広域的、かつ間欠的な送風(W2)、(W3)とが重畳する送風空気の重畳部(W4)、(W5)の送風距離の拡大が利用でき、かつ一部の防霜効果面積を、略1.2〜1.5倍程度拡大できることを実験で確認しており、大きな防霜効果の拡充が期待できる。また、この左右の防霜ファン(B)、(C)の送風方向を原則として同じ方向に往復する構造を基本とするが、対峙方向に往復する構造も可能である。次に図7−2は、平坦地であって、圃場の略一方側に微風が吹いている場合(矢印「あ」)には、中心・右の防霜ファン(A)、(C)が固定方式で、左の防霜ファン(B)が首振り方式とする。この例では、中心・右の防霜ファン(A)、(C)を介して、送風範囲を一定方向に設定し、固定方式で集中方式に、連続的に送風(W1)、(W3)する。また左の防霜ファン(B)を介して、送風範囲をワイドに設定し、首振り方式で広域的、かつ間欠的に送風(W2)する。そして、この固定方式の送風と、首振り方式の送風とは、前述の例に準ずる。
[い] 図8−1、図8−2は、圃場を平坦地で、かつ平面視して、略台形状とした一例であって、気象条件により、中心・左右の防霜ファンの構造を選択するので、区分して説明する。先ず、図8−1は、平坦地であって、圃場が無風状態の場合には、中心の防霜ファン(A)が首振り方式で、図面に向って左右の防霜ファン(B)、(C)が固定方式とする。この例では、中心の防霜ファン(A)を介して、送風範囲をワイドに設定し、首振り方式で広域的、かつ間欠的に送風(W1)する。そして、この中心の防霜ファン(A)の送風方向を想像線で示す。この首振り範囲及び/又は間欠送風は、適宜設定する。また左右の防霜ファン(B)、(C)を介して、送風範囲を一定方向に設定し、固定方式で集中方式に、連続的に送風(W2)、(W3)する。この構成における特徴は前述の通りである。次に図8−2は、平坦地であって、圃場の略一方側に微風が吹いている場合(矢印「い」)には、中心・左の防霜ファン(A)、(B)が固定方式で、右の防霜ファン(C)が首振り方式とする。この例では、中心・左の防霜ファン(A)、(B)を介して、送風範囲を一定方向に設定し、固定方式で集中方式に、連続的に送風(W1)、(W2)する。また右の防霜ファン(C)を介して、送風範囲をワイドに設定し、首振り方式で広域的、かつ間欠的に送風(W3)する。そして、この固定方式の送風と、首振り方式の送風とは、前述の例に準ずる。
[う] 図9−1、図9−2は、圃場を傾斜地とした一例であって、気象条件により、中心・左右の防霜ファンの構造を選択するので、区分して説明する。先ず、図9−1は、傾斜地であって、圃場が無風状態の場合には、中心の防霜ファン(A)が首振り方式で、図面に向って左右の防霜ファン(B)、(C)が固定方式とする。この例では、中心の防霜ファン(A)を介して、送風範囲をワイドに設定し、首振り方式で広域的、かつ間欠的に送風(W1)する。そして、この中心の防霜ファン(A)の送風方向を想像線で示す。この首振り範囲及び/又は間欠送風は、適宜設定する。また左右の防霜ファン(B)、(C)を介して、送風範囲を一定方向に設定し、固定方式で集中方式に、連続的に送風(W2)、(W3)する。この構成における特徴は前述の通りである。次に図9−2は、傾斜地であって、圃場に上昇気流(微風)が吹いている場合(矢印「う」)には、左の防霜ファン(B)が固定方式で、中心・右の防霜ファン(A)、(C)が首振り方式とする。この例では、左の防霜ファン(B)を介して、送風範囲を一定方向に設定し、固定方式で集中方式に、連続的に送風(W2)する。また中心・右の防霜ファン(A)、(C)を介して、送風範囲をワイドに設定し、首振り方式で広域的、かつ間欠的に送風(W1)、(W3)する。そして、この固定方式の送風と、首振り方式の送風とは、前述の例に準ずる。
[え] 図10は、圃場Hを長方形の平坦地とした一例であって、中心・右の防霜ファン(A)、(C)を固定方式とし、左の防霜ファン(B)を首振り方式とした場合の一例である。この例では、中心・右の防霜ファン(A)、(C)を固定方式とすることで、圃場Hの長手方向にまっすぐ送風(W1)、(W3)する。また、左の防霜ファン(B)を首振り方式とし、圃場Hの短手方向に広範囲に送風(W2)することができる。尚、首振り角度を略1°〜60°とすることで、圃場Hの長距離の送風に有効な小さい範囲の首振りから、短距離で幅広な送風に有効な大きい範囲の首振りまで、あらゆる条件に対応することができる。そして、この固定方式の送風と、首振り方式の送風とは、前述の例に準ずる。
【0026】
そして、中心・右の防霜ファン(A)、(C)を介して、送風する際に、送風が重なり合い送風の効果が重畳して示される範囲を、(W4)、(W5)として示す。また首振りスピードは、着霜の条件によって適宜調整する。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例を説明する。尚、本発明では、同じ構造の部品は、同じ番号及び名称を使用する。
【0028】
1は圃場Hの枕地H1(大型の茶園管理装置の走行に障害とならない箇所)に立設した多頭式防霜ファンで、この多頭式防霜ファン1は、枕地H1に立設したポール2に設けた平面視して、略山形形状を呈する基板3に適宜間隔で設けられており、この一例では、三基である。
【0029】
そして、この多頭式防霜ファン1の好ましい一例を、図1〜図6に基づいて説明する。
【0030】
この多頭式防霜ファン1は、固定・首振り方式として機能を担う担持機構4(詳細は後述する)と、この担持機構4に設けた支持手段5と、この支持手段5に設けた防霜ファン6とで構成される。以下、各構成を詳細に説明するが、一例であり、本発明の目的を達成できる構造であれば、下記の例に限定されない。
【0031】
先ず、担持機構4は、図1〜図5に示した防霜ファン6の首振り方式と、図6に示した防霜ファン6の固定方式とが一例として挙げられる。以下、個別に各一例を説明する。
【0032】
先ず、首振り方式は、図1〜図3に示した構成では、基板3に枢軸40を介して支持手段5を設け、この支持手段5をリンク板41で連繋し、またこの支持手段5には揺動板42を枢着する。そして、この揺動板42にはモータ43に枢着した可動板44が設けられている。従って、この例では、モータ43の駆動で可動板44が時計回りに回転し、この回転を介して揺動板42が揺動する。この揺動を介してリンク板41が、図3において、矢印「イ」と矢印「ロ」の左右方向に移動する。この左右方向への移動で、支持手段5が枢軸40を支点とし、左右方向に首振りを行う構造である。そして、この構成では、対の防霜ファン6を一度に制御できることと、コストの削減化と、構造の簡素化等が図れて有益である。またこの装置を介して簡易な送風と、防霜効果が図れる特徴がある。
【0033】
また、首振り方式は、図1、図2、図4、図5に示した構成では、基板3に設けた首振り用のモータ45と、この首振り用のモータ45に設けた駆動側リンク46と、この駆動側リンク46に連結するリンクアーム47と、このリンクアーム47に連結する従動側リンク48と、この従動側リンク48で回転する回転軸49と、この回転軸49に設けた首振り用の架台50とで構成されている。そして、この構成を採用する首振り方式の作用を説明する。首振り用のモータ45は、電力等の動力源を介して回転し、この回転で駆動側リンク46が回転する。この駆動側リンク46の回転に伴って、リンクアーム47が図5において、矢印「ハ」と矢印「ニ」の左右方向に動き、このリンクアーム47の左右方向への動きに伴って従動側リンク48が所定角度回転する。この従動側リンク48の回転により、回転軸49が所定範囲(例えば、小さい範囲)において動く(首振り動作する)。この動きは、首振り用の架台50に伝達され、この架台50の動きを介して支持手段5が左右方向に首振りを行う構造である。そして、この構成では、防霜ファン6に個別に設置できる。この個別設置を介してより精緻な送風と、防霜効果が図れる特徴がある。尚、図中52はケースを示す。
【0034】
また固定方式は、図1、図6に示した構成であって、基板3又は支持手段5、ポール2等に設けた箱形、板状等のベース51を介して防霜ファン6を支持する。
【0035】
尚、図示しないが、首振り方式は、中心・左右の防霜ファン(A)、(B)、(C)の中で、複数の防霜ファン6の首振りを行う場合には、この防霜ファン6の一基を駆動し、リンク機構を介して他の防霜ファン6を連動動作することも可能であり、この例では、省電力と、構造の簡略化等が図れる。例えば、前記左右の防霜ファン(B)、(C)が首振り方式では、この左右の防霜ファン(B)、(C)をリンク機構で連繋する。
【0036】
次に、遠方に向ってストレートの風を送る防霜ファン6の一例を説明すると、この防霜ファン6は、筒状のケーシング60と、このケーシング60に設けたファン61及びファン用のモータ62と、またこのケーシング60の吐出側に設けた整流板63とで構成されている。従って、モータ62の駆動を介して、このモータ62の出力軸が回転し、同時にファン61が回転する構造である。そして、整流板63を介して、吹き降ろした空気(送風)の到達距離の拡充と、吹き降ろし空気の整流とを図る。また騒音の減少化、茶葉間への最適な送風及び/又は防霜効果を図ることを意図する。そして、この防霜ファン6が俯角調節可能であることは勿論である。尚、この防霜ファン6は、図示しないが、従来のファンのみの構造、またガードを備えたファン等の他の構造でも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、首振り方式と、固定方式の防霜ファンを備えた多頭式防霜ファンの一例を示した一部を断面にした正面図
【図2】図2は、図1に示した首振り方式の防霜ファンを備えた多頭式防霜ファンの一例を示した平面図
【図3】図3は、図1に示した首振り方式の防霜ファンを備えた多頭式防霜ファンの他の一例を示した平面図
【図4】図4は、図1の側面図
【図5】図5は、図1の一部を断面にした側面図
【図6】図6は、図1に示した固定方式の防霜ファンを備えた多頭式防霜ファンの一例を示した側面図
【図7−1】図7−1は、圃場を平坦地とした一例であって、圃場が無風状態の場合の一例を示した俯瞰模式図
【図7−2】図7−2は、圃場を平坦地とした一例であって、圃場の略一方側に微風が吹いている場合の一例を示した俯瞰模式図
【図8−1】図8−1は、圃場を平坦地で、かつ平面視して、略台形状とした一例であって、圃場が無風状態の場合の一例を示した俯瞰模式図
【図8−2】図8−2は、圃場を平坦地で、かつ平面視して、略台形状とした一例であって、圃場の略一方側に微風が吹いている場合の一例を示した俯瞰模式図
【図9−1】図9−1は、圃場を傾斜地とした一例であって、圃場が無風状態の場合の一例を示した俯瞰模式図
【図9−2】図9−2は、圃場を傾斜地とした一例であって、傾斜地で、圃場に上昇気流(微風)が吹いている場合の一例を示した俯瞰模式図
【図10】図10は、圃場を長方形の平坦地とした一例であって、中心・右の防霜ファンを固定方式とし、左の防霜ファンを首振り方式とした場合の一例を示した俯瞰模式図
【符号の説明】
【0038】
1 多頭式防霜ファン
2 ポール
3 基板
4 担持機構
40 枢軸
41 リンク板
42 揺動板
43 モータ
44 可動板
45 モータ
46 駆動側リンク
47 リンクアーム
48 従動側リンク
49 回転軸
50 架台
51 ベース
52 ケース
5 支持手段
6 防霜ファン
60 ケーシング
61 ファン
62 モータ
63 整流板
A 中心の防霜ファン
B 左の防霜ファン
C 右の防霜ファン
H 圃場
H1 枕地
W1〜W3 送風
W4、W5 重畳部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に立設した多数基の防霜ファンを装備した多頭式防霜ファンであって、
この多頭式防霜ファンの多数基の防霜ファンには、一基又は数基の中心の防霜ファンを固定方式とし、またこの固定方式の防霜ファンの両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンを首振り方式とし、
前記固定方式の防霜ファンを介して、前記圃場の中心領域に、常時かつ一定方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
また前記首振り方式の防霜ファンを介して、前記圃場の左右領域に、常時かつ広角方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
前記圃場の作物の凍霜害防止を図る構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法。
【請求項2】
圃場に立設した多数基の防霜ファンを装備した多頭式防霜ファンであって、
この多頭式防霜ファンの多数基の防霜ファンは、一基又は数基の中心の防霜ファンと、この一基又は数基の中心の防霜ファンの両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンとし、
この一基又は数基の中心の防霜ファンと、この両側に設けた一基又は数基の左右の防霜ファンとは、それぞれ調節手段を介して固定方式、又は首振り方式に変更可能とし、
前記固定方式の防霜ファンを介して、前記圃場の所定の領域に、常時かつ一定方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
また前記首振り方式の防霜ファンを介して、前記圃場の他の所定の領域に、常時かつ広角方向に、逆転層の暖気を、吹き降ろし、
前記圃場の作物の凍霜害防止を図る構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法であって、
その首振り方式の防霜ファンの首振り角度が、略1°〜60°とする構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法であって、
その固定方式及び/又は首振り方式の防霜ファンは、それぞれ個別及び/又はそれぞれ一度に、俯角調整可能とする構成とした多頭式防霜ファンを利用した圃場用防霜方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9−1】
image rotate

【図9−2】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−113556(P2008−113556A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291614(P2006−291614)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(391008294)フルタ電機株式会社 (176)
【Fターム(参考)】