説明

大きな細孔容積を有するNU−85分子篩およびその製造方法

【課題】NU−85分子篩の結晶化時間を効果的に短縮し、調製コストを削減し、生産効率を増加させる。
【解決手段】臭化ノナメトニウム、臭化デカメトニウム、および、臭化ウンデカメトニウムはNU−85分子篩を合成するための従来からのテンプレートではないが、これらを用いることによりNU−85分子篩の合成を効果的に促進する、この動的結晶化から得られる生成物は大きな細孔容積および大きな比表面積を有する。この方法によって調製されたNU−85分子篩は、炭素数が8の芳香族化合物の異性化、トルエンの不均一化、および、トリメチルベンゼンのアルキル基転移反応、さらに、ベンゼンおよびエチレンを用いたエチルベンゼンの調製において使用可能であり、および、より良好な触媒効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示は、新規なNU−85分子篩およびその製造方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
NU−85分子篩は、二次元の微細孔構造を有する高シリコンゼオライト分子篩である。NU−85分子篩は、EU−1分子篩とNU−87分子篩との連晶(intergrowth)であり、内部ではEU−1分子篩およびNU−87分子篩の構造的バンドが相互に織り込まれ、密接に結合している。このような構造を有するので、NU−85分子篩は、元になるこれら2種類の分子篩の細孔チャネルに関する特徴と触媒特性とを有し得る。このため、NU−85分子篩は、炭化水素化合物の異性化およびアルキル化において触媒として広く使用できる。
【0003】
US5385718およびUS6784334には、まず、複数種類のNU−85分子篩およびその製造方法が開示されている。これらの文献で使用されるテンプレートはヘキサメトニウム臭化物(HexBr)であり、その合成は水熱結晶化によって実施される。具体的な合成プロセスについて次に記す。すなわち、アルミニウム源、塩基、および、無機塩をある分量の水に溶解させて溶液Aを形成し、テンプレートをある分量の別の水に溶解させて溶液Bを形成し、シリコン源を水に溶解させて溶液Cを形成し、まず溶液Bを溶液Aに添加して均質になるように攪拌し、次に溶液Cを溶液Aに添加して均質になるように攪拌する。添加した物質のモル比は、SiO/Al=25〜40、NaO/SiO=0.025〜0.5、R/SiO=0.02〜1、HO/SiO=5〜250、および、NaL/SiO=0〜1である。なお、Rはヘキサメトニウム臭化物(テンプレート)を表し、NaLはナトリウム塩を表す。結晶化温度は120℃〜180℃であり、結晶化時間は10日を超える。結晶の種(seed)を添加して結晶化時間を短縮してもよい。この場合、添加する結晶の種は、NU−85分子篩であっても、NU−87分子篩であっても、EU−1分子篩であってもかまわない。異なる条件下で合成したNU−85分子篩は、NU−87分子篩に対するEU−1分子篩の比が異なる。NU−85分子篩の合成に対しては、温度が大きな影響を及ぼす。結晶化温度が200℃である場合、合成によって得られる生成物はEU−1分子篩である。結晶化温度が180℃である場合、EU−1分子篩が生成されることが好ましいが、生成物はNU−85分子篩の特徴を示した。また、結晶化温度が160℃である場合、合成によって得られる生成物はNU−85分子篩である。結晶化温度の低下に伴って、生成物は、純粋なEU−1分子篩からEU−1分子篩およびNU−87分子篩とNU−85分子篩との連晶へと変化する性質がある。ただし、温度の低下につれて結晶化時間は長くなる。一般に、NU−85分子篩の結晶化時間は18日を超える。
【0004】
NU−85分子篩は、一般に、以下の表に示すようなXRDの固有スペクトルバンドを有する。
【0005】
【表1】

【0006】
このような相対的強度の尺度に基づいて、最も強い相対的強度の値を100と定義する。「弱い」は20未満の値を表し、「中程度」は20〜40の値を表し、「強い」は40〜60の値を表し、「非常に強い」は60より高い値を表す。上の表中で、「a」と記した固有スペクトル線の、その前の固有スペクトル線に対する強度比は0.5以下であり、「b」と記した固有スペクトル線の、その次の固有スペクトル線に対する強度比は1.0以下であり、「c」と記した固有スペクトル線の、その次の固有スペクトル線に対する強度比は1.0以下である。
【0007】
上述のプロセスに従って調製したNU−85分子篩は、一般に0.20cm/g未満の小さな細孔容積を有し、また、一般に400m/g未満の小さな比表面積を有する。
【0008】
〔発明の開示〕
ここでは、NU−85分子篩の結晶化時間を効果的に短縮する、NU−85分子篩の製造方法を開示する。この結果得られるNU−85分子篩は、大きな比表面積および大きな細孔容積を有する。
【0009】
本発明のNU−85分子篩は、約405m/g〜約470m/g、好ましくは約410m/g〜約460m/gの範囲の比表面積を有し、約0.27cm/g〜約0.35cm/g、好ましくは約0.28cm/g〜約0.32cm/gの範囲の細孔容積を有する。
【0010】
本発明のNU−85分子篩の製造方法は、結晶化物質の調合過程と、結晶化物質の結晶化過程と、結晶化生成物の回収過程とを含み、上記結晶化物質の調合過程は、アルミニウム源、シリコン源、塩基、テンプレート、無機塩、EU−1分子篩、および、水を、シリコン源中のSiOに対するEU−1分子篩の質量比が約2.5〜約8.5、好ましくは約3.0〜約7.0の範囲となるように混合することを含む。
【0011】
上記結晶化物質中のアルミニウム源(Alに基づいて算出)、シリコン源(SiOに基づいて算出)、塩基(NaOに基づいて算出)、テンプレート、無機塩(NaLに基づいて算出)、および、水のモル比は、
SiO/Al=約30:1〜約70:1、
R/SiO=約0.04:1〜約0.25:1、
NaO/SiO=約0.05:1〜約0.3:1、
O/SiO=約35:1〜約80:1、および、
NaL/SiO=約0.03:1〜約0.14:1、
好ましくは、
SiO/Al=約40:1〜約65:1、
R/SiO=約0.08:1〜約0.22:1、
NaO/SiO=約0.1:1〜約0.2:1、
O/SiO=約42:1〜約55:1、
NaL/SiO=約0.049:1〜約0.098:1である。
ただし、Rは臭化ノナメトニウム、臭化デカメトニウム、臭化ウンデカメトニウム、または、これらの混合物からなる群より選択されるテンプレートであって、好ましくは臭化デカメトニウムであり、NaLはナトリウム塩である。上記ナトリウム塩は、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、または、これらの混合物からなる群より選択されてもかまわない。いくつかの実施形態において、NaLは塩化ナトリウムである。
【0012】
上記調合後の結晶化物質の結晶化過程は、約300rpm〜約800rpmの範囲の攪拌速度および約100℃〜約160℃の範囲の結晶化温度における、約1日〜約2日の範囲の期間の高速攪拌によって実施される低温結晶化と、約40rpm〜約250rpmの範囲の攪拌速度および約170℃〜約190℃の範囲の結晶化温度における、約2日〜約6日の範囲の期間の低速攪拌によって実施される高温結晶化との2つの段階をこの順に実施することを含む動的結晶化を含む。上記動的結晶化過程全体が、上記結晶化温度において自己圧(autogenous pressure)下で実施される。
【0013】
上記アルミニウム源は、アルミニウム塩、アルミン酸、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、または、これらの混合物からなる群より選択される1つ以上のアルミニウム源であり、好ましくは、アルミン酸ナトリウムである。また、上記シリコン源は、ホワイトカーボンブラック、シリカゾル、水ガラス、テトラエチルオルトシリケート、または、これらの混合物からなる群より選択され、好ましくはシリカゾルである。ここで使用される塩基はNaOHなどを包含する。
【0014】
上記EU−1分子篩中のSiO/Alのモル比は、約20:1〜約35:1である。上記EU−1分子篩はか焼(calcine)されたEU−1分子篩であっても、か焼されていないEU−1分子篩であってもよく、好ましくはか焼されたEU−1分子篩である。
【0015】
本発明に従って調製されたNU−85分子篩は、例えば石油化学産業分野において適用可能であって、触媒物質として作用することができる。このような分子篩は、芳香族化合物のアルキル化、芳香族化合物の異性化、アルカンの水素異性化、および、例えば炭素数が1〜8のアルカンおよびアルケンなどの比較的軽い炭化水素の芳香環化において、良好な触媒特性を有し得る。
【0016】
本発明の方法において、EU−1分子篩は結晶化物質の調合過程において適用される。EU−1分子篩は、NU−85分子篩の構造に極めてよく似た構造を有する分子篩であり、同時にナノ結晶の特徴を併せ持っている。本発明の方法は、EUO型分子篩のナノ結晶の特徴を十分に利用して、EUO型分子篩を結晶化物質の調合過程において分解し、EUO型分子篩の複数の二次的な構造ユニットを形成する。なお、これらの構造ユニットは、この過程から得られるNU−85分子篩の構造ユニットでもある。これらの二次的な構造ユニットは、シリコンやアルミニウムをNU−85分子篩のフレームワークに組み込むための指向剤(directing agent)として使用される。本発明の方法は、NU−85分子篩の結晶化時間を効果的に短縮し、調製コストを削減し、生産効率を増加させる。臭化ノナメトニウム、臭化デカメトニウム、および、臭化ウンデカメトニウムはNU−85分子篩を合成するための従来からのテンプレートではないが、本発明の方法によるNU−85分子篩の合成を効果的に促進して、予想しなかった技術的効果を達成する。本発明は2段階の動的結晶化を含み、この動的結晶化から得られる生成物は大きな細孔容積および大きな比表面積を有する。
【0017】
本発明の方法によって調製されたNU−85分子篩は、炭素数が8の芳香族化合物の異性化、トルエンの不均一化、および、トリメチルベンゼンのアルキル基転移反応、さらに、ベンゼンおよびエチレンを用いたエチルベンゼンの調製において使用可能であり、および、より良好な触媒効果を有する。
【0018】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明の実施例1に従って調製したNU−85分子篩のX線回折(“XRD”;X−ray diffraction)パターンを示している。
【0019】
図2は、本発明の実施例1に従って調製したNU−85分子篩の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【0020】
〔実施形態〕
本発明について以下の例を用いてさらに説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0021】
本発明のNU−85分子篩の比表面積はASTM D3663−2003法によって測定した。また、その細孔容積はASTM D4222−2003法によって測定した。
【0022】
〔実施例1〕
調合溶液1: 2.61gのNaAlO、4.37gのNaOH、4.26gのNaCl、および、60.32gのDecBr(臭化デカメトニウム)を300mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0023】
調合溶液2: 125mlのシリカゾル(45gのSiOを含有する;以下同様)を267mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0024】
溶液2を溶液1に添加し、攪拌して均質に混合した。125gのEU−1分子篩(CN200880017305.6に記載の実施例1の方法に従って調製した;以下同様)を結晶の種として添加してゲルを調製した。
【0025】
このようにして得られたゲルを1Lの合成用ケットルに仕込み、100℃および450rpmで1日間結晶化させ、次に、190℃および150rpmで4日間結晶化させた。最後に、ゲルを室温まで冷却、濾過、洗浄し、さらに乾燥させて分子篩としての生成物を得た。結晶相分析の結果は、この生成物がNU−85分子篩であることを示していた。同生成物のXRDパターンおよび走査型電子顕微鏡スペクトルを、図1および図2に示す。
【0026】
このようにして得られたNU−85分子篩は比表面積が405m/g、細孔容積が0.35cm/gであった。
【0027】
〔実施例2〕
調合溶液1: 3.73gのNaAlO、6.48gのNaOH、3.82gのNaCl、および、44.67gのDecBrを350mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0028】
調合溶液2: 125mlのシリカゾルを250mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0029】
溶液2を溶液1に添加し、攪拌して均質に混合した。375gのEU−1分子篩を結晶の種として添加してゲルを調製した。
【0030】
このようにして得られたゲルを1Lの合成用ケットルに仕込み、120℃および450rpmで1日間結晶化させ、次に、180℃および100rpmで5日間結晶化させた。最後に、ゲルを室温まで冷却、濾過、洗浄し、さらに乾燥させて分子篩としての生成物を得た。結晶相分析の結果は、この生成物がNU−85分子篩であることを示していた。
【0031】
このようにして得られたNU−85分子篩は比表面積が470m/g、細孔容積が0.29cm/gであった。
【0032】
〔実施例3〕
調合溶液1: 2.98gのNaAlO、8.96gのNaOH、3.96gのNaCl、および、55.76gのDecBrを400mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0033】
調合溶液2: 125mlのシリカゾルを342mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0034】
溶液2を溶液1に添加し、攪拌して均質に混合した。268gのEU−1分子篩を結晶の種として添加してゲルを調製した。
【0035】
このようにして得られたゲルを1Lの合成用ケットルに仕込み、160℃および750rpmで1日間結晶化させ、次に、170℃および50rpmで4日間結晶化させた。最後に、ゲルを室温まで冷却、濾過、洗浄し、さらに乾燥させて分子篩としての生成物を得た。結晶相分析の結果は、この生成物がNU−85分子篩であることを示していた。
【0036】
このようにして得られたNU−85分子篩は比表面積が432m/g、細孔容積が0.31cm/gであった。
【0037】
〔実施例4〕
調合溶液1: 3.25gのNaAlO、7.23gのNaOH、2.13gのNaCl、および、34.89gのDecBrを350mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0038】
調合溶液2: 125mlのシリカゾルを250mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0039】
溶液2を溶液1に添加し、攪拌して均質に混合した。312gのEU−1分子篩を結晶の種として添加してゲルを調製した。
【0040】
このようにして得られたゲルを1Lの合成用ケットルに仕込み、140℃および650rpmで2日間結晶化させ、次に、170℃および100rpmで5日間結晶化させた。最後に、ゲルを室温まで冷却、濾過、洗浄し、さらに乾燥させて分子篩としての生成物を得た。結晶相分析の結果は、この生成物がNU−85分子篩であることを示していた。
【0041】
このようにして得られたNU−85分子篩は比表面積が428m/g、細孔容積が0.33cm/gであった。
【0042】
〔実施例5〕
調合溶液1: 3.73gのNaAlO、8.98gのNaOH、4.02gのNaCl、および、36.54gのDecBrを350mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0043】
調合溶液2: 125mlのシリカゾルを280mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0044】
溶液2を溶液1に添加し、攪拌して均質に混合した。345gのEU−1分子篩を結晶の種として添加してゲルを調製した。
【0045】
このようにして得られたゲルを1Lの合成用ケットルに仕込み、160℃および350rpmで1日間結晶化させ、次に、190℃および150rpmで3日間結晶化させた。最後に、ゲルを室温まで冷却、濾過、洗浄し、さらに乾燥させて分子篩としての生成物を得た。結晶相分析の結果は、この生成物がNU−85分子篩であることを示していた。
【0046】
このようにして得られたNU−85分子篩は比表面積が457m/g、細孔容積が0.27cm/gであった。
【0047】
〔実施例6〕
調合溶液1: 2.89gのNaAlO、6.36gのNaOH、3.94gのNaCl、および、69.01gのDecBrを400mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0048】
調合溶液2: 125mlのシリカゾルを250mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0049】
溶液2を溶液1に添加し、攪拌して均質に混合した。335gのEU−1分子篩を結晶の種として添加してゲルを調製した。
【0050】
このようにして得られたゲルを1Lの合成用ケットルに仕込み、100℃および450rpmで1日間結晶化させ、次に、185℃および150rpmで4日間結晶化させた。最後に、ゲルを室温まで冷却、濾過、洗浄し、さらに乾燥させて分子篩としての生成物を得た。結晶相分析の結果は、この生成物がNU−85分子篩であることを示していた。
【0051】
このようにして得られたNU−85分子篩は比表面積が463m/g、細孔容積が0.28cm/gであった。
【0052】
〔実施例7〕
調合溶液1: 2.88gのNaAlO、7.63gのNaOH、2.13gのNaCl、および、45.13gのDecBrを350mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0053】
調合溶液2: 125mlのシリカゾルを250mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0054】
溶液2を溶液1に添加し、攪拌して均質に混合した。364gのEU−1分子篩を結晶の種として添加してゲルを調製した。
【0055】
このようにして得られたゲルを1Lの合成用ケットルに仕込み、140℃および750rpmで1.5日間結晶化させ、次に、175℃および150rpmで6日間結晶化させた。最後に、ゲルを室温まで冷却、濾過、洗浄し、さらに乾燥させて分子篩としての生成物を得た。結晶相分析の結果は、この生成物がNU−85分子篩であることを示していた。
【0056】
このようにして得られたNU−85分子篩は比表面積が464m/g、細孔容積が0.29cm/gであった。
【0057】
〔実施例8〕
調合溶液1: 4.25gのNaAlO、9.34gのNaOH、4.26gのNaCl、および、25.09gのDecBrを400mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0058】
調合溶液2: 125mlのシリカゾルを340mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0059】
溶液2を溶液1に添加し、攪拌して均質に混合した。364gのEU−1分子篩を結晶の種として添加してゲルを調製した。
【0060】
このようにして得られたゲルを1Lの合成用ケットルに仕込み、100℃および300rpmで2日間結晶化させ、次に、170℃および40rpmで5日間結晶化させた。最後に、ゲルを室温まで冷却、濾過、洗浄し、さらに乾燥させて分子篩としての生成物を得た。結晶相分析の結果は、この生成物がNU−85分子篩であることを示していた。
【0061】
このようにして得られたNU−85分子篩は比表面積が453m/g、細孔容積が0.30cm/gであった。
【0062】
〔実施例9〕
(比較例)
調合溶液1: 6.8gのNaAlO、8.86gのNaOH、2.0gのNaCl、および、51.72gのHexBr(ヘキサメトニウム臭化物)を350mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0063】
調合溶液2: 143mlのシリカゾルを290mlのHOに添加し、攪拌して均質に混合した。
【0064】
溶液2を溶液1に添加し、攪拌して均質に混合し、モル組成がSiO:Al:NaO:HexBr:HO=60:1.7:10:10:3000となるゲルを調製した。
【0065】
このようにして得られたゲルを1Lの合成用ケットルに仕込み、160℃および350rpmで11日間結晶化させて、室温まで冷却した。最後に、ゲルを濾過、洗浄し、さらに乾燥させて分子篩としての生成物を得た。結晶相分析の結果は、この生成物がNU−85分子篩であることを示していた。
【0066】
このようにして得られたNU−85分子篩は比表面積が364m/g、細孔容積が0.19cm/gであった。
【0067】
〔実施例10〕
実施例1において調製したNU−85分子篩を550℃で6時間か焼して、テンプレートを除去した。そして、この分子篩を、液体に対する固体の比を50g/Lとなるように1Mの硝酸アンモニウム溶液と混合して、アンモニウム交換を70℃で5時間かけて2回実施した。混合物を550℃で6時間か焼して、水素型のNU−85分子篩であるNUZ−1を得た。
【0068】
実施例9(比較例)において調製したNU−85分子篩を同一条件の下で処理してNUZ−2を得た。
【0069】
〔実施例11〕
〔NU−85分子篩を用いた、ベンゼンおよびプロピレンからのクメンの調製〕
実施例10において得られたNUZ−1およびNUZ−2を使用して、ベンゼンおよびプロピレンからクメンを調製した。反応条件は、温度が110℃、圧力が3.0MPa、プロピレンの容積空間速度(volume space velocity)が15.0h−1、ベンゼン/プロピレンのモル比が4であった。反応の結果を表1に列挙する。
【0070】
【表2】

【0071】
〔実施例12〕
〔NU−85分子篩を用いた炭素数が8の芳香族化合物の異性化〕
アルミナ、実施例10において調製したNUZ−1分子篩、および、活性金属(例えば白金)を混合、混練し、押し出し成型して、触媒C1を調製した。EU−1分子篩を用いて、コントロールとして触媒C2を調製した。上記触媒は、30重量%の分子篩、0.3重量%の白金、および、69.7重量%のアルミナからなっていた。反応物質は、0.01mol%のベンゼン、0.13mol%のトルエン、12.16mol%のエチルベンゼン、0.4mol%のp−キシレン、55.23mol%のm−キシレン、および、22.58mol%のo−キシレンからなっていた。反応は、395℃の温度、1.0MPaの圧力、4.0h−1の容積空間速度、4.0の水素/炭化水素モル比で実施した。反応の結果を表2(モル百分率)に列挙する。
【0072】
【表3】

【0073】
〔実施例13〕
〔NU−85分子篩を用いた、トルエンの不均一化およびトリメチルベンゼンのアルキル基転移反応〕
実施例10において調製したNUZ−1分子篩を使用した。また、モルデナイト(“MOR”;Mordenite)(CN98110736.2に記載の実施例9の方法に従って調製した)を比較用分子篩として使用した。原料は60%のトルエンおよび40%の1,2,4−トリメチルベンゼンからなっていた。反応条件は、温度が400℃、圧力が2.4MPa、容積空間速度が1.2h−1、水素/炭化水素の体積比が13であった。反応の結果を表3(モル百分率)に列挙する。
【0074】
【表4】

【0075】
〔実施例14〕
〔ベンゼンを用いたエチルベンゼンの調製、および、NU−85分子篩を用いたエチレンの調製〕
実施例10において調製したNUZ−1分子篩を使用した。また、βゼオライト(CN01106040.9に記載の実施例1の方法に従って調製した)を比較用分子篩として使用した。反応条件は、温度が220℃、圧力が3.5MPa、エチレンの容積空間速度が2.0h−1、および、出発物質のベンゼンの/エチレンのモル比は12であった。反応の結果を表4(モル百分率)に列挙する。
【0076】
【表5】

【0077】
本開示のさらなる実施形態は、明細書およびここに開示した本発明の実施内容から、当業者は自ずから理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例1に従って調製したNU−85分子篩のX線回折(“XRD”;X−ray diffraction)パターンを示す図である。
【図2】本発明の実施例1に従って調製したNU−85分子篩の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約405m/g〜約470m/gの範囲の比表面積、および、約0.27cm/g〜約0.35cm/gの範囲の細孔容積を有する、NU−85分子篩。
【請求項2】
約410m/g〜約460m/gの範囲の比表面積を有する、請求項1に記載のNU−85分子篩。
【請求項3】
約0.28cm/g〜約0.32cm/gの範囲の細孔容積を有する、請求項1または2に記載のNU−85分子篩。
【請求項4】
アルミニウム源、シリコン源、塩基、テンプレート、無機塩、EU−1分子篩、および、水を、シリコン源中のSiOに対するEU−1分子篩の質量比が約2.5〜約8.5の範囲となり、かつ、得られる結晶化物質中のアルミニウム源(Alに基づいて算出)、シリコン源(SiOに基づいて算出)、塩基(NaOに基づいて算出)、テンプレート、無機塩(NaLに基づいて算出)、および、水のモル比が、
SiO/Al=約30:1〜約70:1、
R/SiO=約0.04:1〜約0.25:1、
NaO/SiO=約0.05:1〜約0.3:1、
O/SiO=約35:1〜約80:1、および、
NaL/SiO=約0.03:1〜約0.14:1
の範囲となるように混合し(ただし、Rは臭化ノナメトニウム、臭化デカメトニウム、臭化ウンデカメトニウム、および、これらの混合物からなる群より選択されるテンプレートであり、NaLはナトリウム塩である)、
約300rpm〜約800rpmの範囲の攪拌速度および約100℃〜約160℃の範囲の結晶化温度における、約1日〜約2日の範囲の期間の高速攪拌によって実施される低温結晶化と、約40rpm〜約250rpmの範囲の攪拌速度および約170℃〜約190℃の範囲の結晶化温度における、約2日〜約6日の範囲の期間の低速攪拌によって実施される高温結晶化との2つの段階をこの順に実施することを含む動的結晶化過程によって、上記結晶化物質を結晶化させることを含む、請求項1に記載のNU−85分子篩を製造する方法。
【請求項5】
上記結晶化物質中のアルミニウム源、シリコン源、塩基、テンプレート、無機塩、および、水のモル比が、
SiO/Al=約40:1〜約65:1、
R/SiO=約0.08:1〜約0.22:1、
NaO/SiO=約0.1:1〜約0.2:1、
O/SiO=約42:1〜約55:1、および、
NaL/SiO=約0.0049:1〜約0.098:1
となる範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記シリコン源中のSiOに対するEU−1分子篩の質量比が約3.0:1〜約7.0:1である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
結晶化過程の全体が、上記結晶化温度において自己圧(autogenous pressure)下で実施される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
ナトリウム塩NaLが、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、および、これらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
上記アルミニウム源が、アルミニウム塩、アルミン酸、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、および、これらの混合物からなる群より選択されるアルミニウム源である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
上記シリコン源が、ホワイトカーボンブラック、シリカゾル、水ガラス、テトラエチルオルトシリケート、および、これらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
EU−1分子篩中のSiO/Alのモル比が、約20:1〜約35:1の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載のNU−85分子篩を、芳香族化合物のアルキル化、芳香族化合物の異性化、および、アルカンの水素異性化において用いる使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−96983(P2012−96983A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−224844(P2011−224844)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(509020424)中國石油化工股▲フン▼有限公司撫順石油化工研究院 (2)
【Fターム(参考)】