説明

大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン

【課題】タイ・ロッドをベース・プレートにしっかり固定する改良された工法を有する大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンを提供する。
【解決手段】スタンド5は、2つの隣り合うクロスヘッド用の摺動表面、及びシリンダを受けるためにスタンド5上に配置されるシリンダ・セクションを含む。単一壁で作られる横方向支持要素12が設けられたベース・プレート2は、クランクシャフト3をジャーナル支承するための少なくとも1つの軸受座13を有する。ベース・プレート2、スタンド5及びシリンダ・セクションは、スタンド5の2重壁支持本体6の内側を延びる少なくとも1本のタイ・ロッド11によって互いに連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は独立請求項1の前提記載による大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
好ましくは船舶建造又は例えば電気エネルギー発電用固定プラントに使用されるなどのクロスヘッド・タイプ大型ディーゼル・エンジンは、このエンジンのフレームを形成するための3つの大きなハウジング・セグメントを含む。いわゆるスタンドは、金属床板によって分離されて、クランクシャフトを受けるためのクランクシャフト主軸受を伴う軸受座に加えて、横方向支持要素を有するベース・プレート上に配置される。大型ディーゼル・エンジンのシリンダの数に従って、このスタンドは、コネクティング・ロッドによってクランクシャフトに連結される2つの隣り合うクロスヘッドの案内のための垂直に延びる摺動表面をそれぞれが有する、複数の対向して配設される支持本体を含む。いずれの場合にも、2つの対向して配設される垂直に延びる摺動表面はさらに中央壁によって支持される。この個々の支持本体は通常、互いに共通の金属カバー・プレートによって連結される。しばしばシリンダ・ジャケットとも呼ばれるシリンダ・セクションが次いで、スタンドの上方この金属カバー・プレート上に配置され、複数のシリンダ・ライナを受けるのに適している。ベース・プレート、スタンド及びシリンダ・セクションは、支持本体内側のスタンドの領域に通例延びる、相当なプレストレス(予応力)の下にベース・プレート内又は上にねじで取り付けられるタイ・ロッドによって互いに連結される。
【0003】
往復動ピストン機械のクロスヘッドすべり面用の支持部を有するスタンドは、特許文献1から知られており、そこではこの支持部は2重壁構造で作られている。シリンダ・ライナを受けるためにその上にシリンダ・ジャケットが配置されるこのスタンドは、ベース・プレート上の金属板床板上に配置され、この金属板床板は、斜めに配設される外壁及び垂直なすべり面と共に、共通の金属カバー・プレートによって互いに連結される台形の横断面の2つのフレームを形成する。この台形のフレームは、2重壁の構造の支持本体が結果として支持体になるように、外壁とすべり面間を横方向支持壁によって補充される。このベース・プレートは、下側軸受シェル及び軸受キャップを伴う上側軸受シェルを有する軸受座を含み、クランクシャフトはベース・プレートの軸受座内のこの軸受シェルに取り付けられる。エンジンのシリンダ・ジャケット、スタンド及びベース・プレートは、クランクシャフトの下の軸受座上に又は軸受座内に固定されるタイ・ロッドによって一緒に保持される。
【0004】
そのような既知の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンでは、2重壁構造のスタンドの支持本体は、同様に2重壁構造であるベース・プレートの支持要素上に支持される。すなわち、スタンド及びベース・プレートの両方が横方向支持壁を有する2重壁構造である。
【0005】
従来技術から知られている大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンのこの設計は、いくつかの重大な不都合を有する。この支持要素は、ベース・プレートに溶接継手で固定される。この支持要素が2つの対向して配置される壁を有する2重壁構造である場合、その結果ベース・プレートの2重壁支持要素を形成する2つの壁間の溶接シームは、反対側溶接(counter−weld)することができなく、したがって、ベース・プレートの強度及び/又は安定性に関して付随する問題点が発生する。ベース・プレートの支持要素の壁をスタンドの支持本体の支持壁と位置合わせしなければならないので、ベース・プレートのスタンドに対する位置合わせが困難である。さらにタイ・ロッドが、クランクシャフトの下にある座の下側端部のところに固定されており、したがって、タイ・ロッドは軸受座内の穴を通り、いわゆるタイ・ロッド・パイプを通り、軸受座の下側区域まで且つその中に案内されなければならない。このタイ・ロッドは、軸受座の下で相当なプレストレスの下で固定されなければならないので、これは軸受座の相当な歪及び軸受シェルの変形に繋がる。したがって、既知のベース・プレートは相対的に剛体であり、製作するのに相対的に複雑且つ/又は高価である。
【0006】
これらの問題点は、特許文献2で開示される組立体によってかなり解決されている。特許文献2で開示される大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンは、単一の壁で作られる横方向支持要素を含むベース・プレートを備える。すなわち、2重壁スタンドが初めて単一壁のベース・プレート上に配置された。大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンのこのベース・プレート、スタンド及びシリンダ・セクションは、タイ・ロッドによって互いに連結され、このタイ・ロッドは2重壁支持本体内のスタンドの区域内へ延び、単一の壁支持要素を有するベース・プレートの軸受座に固定される。
【0007】
特許文献2による発明の前は、スタンドが2重壁構造の支持本体として作られるとき、ベース・プレートの2重壁実施例は安定性の理由で絶対不可欠であると考えられていた。タイ・ロッドが相当なプレストレスの下にベース・プレートにしっかり固定されなければならないので、スタンドの2重壁支持本体とベース・プレートの単一壁支持要素の組合せは、スタンドの下側区域及び金属ベース・プレートの両方で、且つ軸受座の区域で許容できない機械的応力を有すると計算されていた。さらに、単一壁ベース・プレートと2重壁スタンドの組合せで予想されるべきいわゆる「フレッティング(fretting:擦過腐食)」の問題点は、今に至るも未解決のままである。当業者は、「フレッティング」はスタンドとベース・プレート間の接触表面のところに発生する特定の種類の摩擦腐蝕であることを理解する。前述の理由のために、2重壁支持部と単一壁ベース・プレートの組合せは非実用的であると考えられた。しかしながら、スタンド及びベース・プレートがタイ・ロッドの区域で適切に設計される場合は、この問題点は決められた力の流れによって避け得ることを示すことができた。
【0008】
特許文献2によるタイ・ロッドが、全軸受座を貫通する穴を通り案内され次いで軸受座に下に、例えばタイ・ロッド・ナットを使用してねじで止められるのではなく、タイ・ロッドがクランクシャフトの上すなわちクランクシャフトの中央軸とスタンドの間に設けられる軸受座内のねじ穴に固定されることが実際的には特に重要である。そのときまで不可避であった、軸受シェルの変形に繋がる軸受座に懸念された相当な応力は、初めてそれによって効果的に避けられた。すなわち、タイ・ロッドがクランクシャフトの軸の上方で、ベース・プレートに固定される場合は、タイ・ロッドが曝される相当な引っ張り応力は最早、変形の形態でクランクシャフトに伝達されない。
【0009】
単一壁ベース・プレートの別の利点は、ベース・プレートがクランクシャフトの動きに対して一層剛性的でなく、一層柔軟に反応することである。クランクシャフトの軸受及びクランクシャフト自体の歪は、それによって顕著に減少し、エンジンの動作特性も全体で顕著に改善される。
【0010】
これらの進歩にも関わらず、タイ・ロッドをベース・プレートに固定する方法が、いくつかの不都合を有する。タイ・ロッドをベース・プレートのねじ穴内にねじ込むことに起因して、このタイ・ロッドは、相対状に剛性状にベース・プレートに連結される。大型ディーゼル・エンジンの動作状態での多くの異なる応力に起因して、特に機械的応力によってタイ・ロッドに引き起こされる曲げ荷重、振動及び他の応力に起因して、特にねじ穴の近傍でタイ・ロッドに対する損傷が出てき、したがって例えば、最悪の場合相当なプレストレスの下でのタイ・ロッドの破断に繋がる危険なクラックがタイ・ロッドに発生する可能性がある。この危険は例えばタイ・ロッドがやや不ぞろいにプレストレスされることで、例えば、2つの隣り合うタイ・ロッドが異なるプレストレスに曝されるとき特に大きい。
【0011】
さらに、相当な努力によってのみ補修可能であり最悪の場合に全く補修不可能なねじ穴のねじに対する損傷が、例えば、ねじ込み中若しくはねじ外し中、又は動作状態での機械的荷重にも起因して発生する可能性があり、そのためベース・プレートの対応する部品は取り替えなければならず、それは、それに対応して大変で時間が掛り且つ高価である。
別の観点では、ねじ穴の導入は、特にねじ穴を最大の精度及び注意で金属ベース・プレート内に導入しなければならないので、ねじ穴の導入それ自体非常に困難且つ高価な手順であることが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ドイツ国特許第3512347号明細書
【特許文献2】欧州特許第1382829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の1つの目的は、前に論じた従来技術の不都合を回避できるように、タイ・ロッドをベース・プレートにしっかり固定する改良された工法を有する大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの問題点を解決する本発明の主題は、独立請求項1の特徴記載によって特徴づけられている。
【0015】
従属請求項は、本発明の特に有利な実施例に関する。
【0016】
したがって本発明は、クランクシャフトを受けるためのベース・プレートと、2枚の外壁を含み、ベース・プレート上に配置され、且つ横方向支持壁によって2重壁に作られる少なくとも1つの支持本体とを含むスタンドを有する大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンに関する。このスタンドは、2つの隣り合うクロスヘッド用のすべり面、及びシリンダを受けるためにスタンド上に配置されるシリンダ・セクションを含み、ベース・プレート、スタンド及びシリンダ・セクションは、スタンドの区域で、2重壁支持本体の内側を延びる少なくとも1本のタイ・ロッドによって互いに連結される。横方向支持要素がベース・プレートに設けられ、それは単一壁で作られ、且つベース・プレートはクランクシャフトをジャーナル支承するための少なくとも1つの軸受座を含む。本発明によれば、タイ・ロッドは、クランクシャフトの長手方向軸とスタンド間の区域の軸受座に、切欠部から脱着可能な保持要素を使用して切欠部内に固定される。
【0017】
このスタンドは、金属ベース・プレート、金属カバー・プレート及び2つの対向して配設されるすべり面の間に配置される中央壁を含むことができる。
【0018】
このタイ・ロッドは、クランクシャフトの長手方向軸とスタンド間の区域の軸受座に、切欠部から脱着可能な保持要素を使用して切欠部内に固定されるので、このタイ・ロッドは最早ねじ穴で軸受座に剛体的に連結されない。その軸受側の端部にねじ結合部を有するこのタイ・ロッドは、すなわち、ねじ結合なしに軸受座の穴を通り案内され、次いで例えば切欠部に解放可能に設けられるタイ・ロッド・ナットを使用して切欠部に固定される。タイ・ロッドのこの取付け型式によって、組み立てられた状態でタイ・ロッドが曝される巨大な引っ張り応力の下でさえ、タイ・ロッドと軸受座の間の高度な柔軟性が確実にされ、したがって、作動中に不可避的に起きる振動、曲げ荷重等などのタイ・ロッドの機械的荷重は柔軟にそらされ、結果としてタイ・ロッドによって、又はねじ結合によって、且つ/又はタイ・ロッド/ねじ穴のシステム単独で最早吸収する必要は無くなる。
【0019】
例えば、タイ・ロッドが製造上の欠陥を示すため、又は、例えば2本のタイ・ロッドが異なるプレストレスで設置された場合などのタイ・ロッドの設置が必要な注意を持って行われなかったために、例えばタイ・ロッドの破断又は亀裂が万一起こる場合でさえ、欠陥のある又は破壊されたタイ・ロッドを、例えば、タイ・ロッド用のねじ穴を根気よくタイ・ロッドの破断して離れた部分から取り除かなければならない、又はそのような穴を再度補修しなければならないことなしに特に簡単な方法で交換することができる。
【0020】
したがって、本発明によるタイ・ロッドの設置及び取り外しは非常に簡単であり、それによってコストを節約し、特に欠陥のあるタイ・ロッドの場合、船舶全体の動作安全性を増加させる。
【0021】
本発明による大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンの好ましい一実施例では、いずれの場合にも2つの隣り合うクロスヘッド用のすべり面がその上に配置される、支持本体の横方向支持壁は、シリンダ・セクションに向かう方向にV字形のスタンドに延びる、すなわち横方向支持壁は上向きにシリンダ・セクションの方向に増加する距離を有して延びる。さらに中央壁を2つの対向して配置されるすべり面の間を支持するために設けることができる。
【0022】
この出願の文脈で「横方向」の向きは、従来通りそれによって、大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンのクランクシャフト軸が延びる方向に本質的に垂直である向きとして理解されるべきである。
【0023】
ピストンが大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンのシリンダに既知の方法で往復動可能に配置されるとき、支持本体の支持壁によって担持されるクロスヘッドがすべり面に伝達する垂直力は、クロスヘッドに連結されるピストンの移動の上死点近くで最大になることが知られているので、それらは特にスタンドの上側区域において、支持本体のV字形設計によって特によく吸収され消散されることができる。支持本体の横方向支持壁は、特に設計の必要性の結果として当然互いに平行に配置することもできる。
【0024】
タイ・ロッドが好ましくは、ただし必ずしもではなく、スタンドの区域内で支持本体の横方向支持壁の間を中央に延び、ベース・プレートの単一壁支持要素はタイ・ロッドの長手方向軸と位置合わせして配置されることが好ましい。
【0025】
ベース・プレートはクランクシャフトを取り付けるための少なくとも1つの軸受座を有し、タイ・ロッドは好ましくは切欠部のタイ・ロッド・ナットのところで、この軸受座内に又はそれに対して固定される。既に述べたように、このタイ・ロッドは相当な事前張力の下でベース・プレート内に又はそれに対してしっかり固定しなければならないので、タイ・ロッドによる引っ張り荷重に起因する変形、特に既知の方法でクランクシャフトが取り付けられる軸受シェルにおける変形は、クランクシャフト軸とスタンドの間の区域でのタイ・ロッドのこの固定方法によってほとんど回避される。
【0026】
タイ・ロッドがスタンドの区域内で、支持本体の横方向支持壁の間を中央に延びる場合、且つ単一壁支持要素がタイ・ロッドの長手方向軸と位置合わせしてベース・プレートに配置され、且つタイ・ロッドがクランクシャフト軸とスタンドの間の区域に固定される場合が、特に有利であることが分かった。当然タイ・ロッドは必ずしも横方向支持壁の間を中央に延びる必要はなく、単一壁支持要素も全ての場合に、タイ・ロッドの長手方向軸と位置合わせして配置しなければならないわけではない。
【0027】
実際、別の実施例では、このタイ・ロッドは、支持本体の横方向支持壁の間を非対称に延びることもでき、タイ・ロッドは、好ましくはシリンダ軸に対してあらかじめ定めることができる角度で、且つクランクシャフトの長手方向軸に対して垂直に、好ましくは支持本体の横方向支持壁の間で0°から5°、特に1°から3°の角度で延びる。タイ・ロッドの傾きの適切な選択によって、ベース・プレート又は横方向支持要素の区域内で、その中にタイ・ロッドが固定される切欠部とクランクシャフト間の間隔の増加を得ることができ、したがって、ベース・プレート又は横方向支持要素内でのタイ・ロッドの取付け部のより高い強度が達成され得るように、クランクシャフトに向かう方向での大きな利益が達成される。
【0028】
このタイ・ロッドは、設置中にいわゆるディスエンゲージメント・アイ(disengagement eye)を使用して所定の傾きで横方向支持壁の間に導入することが好ましく、それによって支持アンカーの問題の無い設置が可能になる。
【0029】
好ましい実施例では、正確に2本のタイ・ロッドが2つの隣り合うクロスヘッド間を延びることが好ましく、複数のタイ・ロッドが、特に安定性の理由で2つの隣り合うクロスヘッド間を延びることも可能である。
別の実施例では、ベース・プレートに設けられる金属サイド・プレートは、金属サイド・プレートがクランクシャフトの下のベース・プレートの一部を形成するように、クランクシャフトのジャーナル支承の柔軟性を増加させるように広げられた金属サイド・プレートとして設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ベース・プレート、スタンド、及びシリンダ・セクションを有する大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンの断面図である。
【図2】2重壁支持本体及び単一壁支持要素を有する既知の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンの、図1による断面I−Iの図である。
【図3】それぞれが2つの隣り合うクロスヘッドの間にある、2つの2重壁支持本体を有する、本発明による大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンの、図1による横断面II−IIの図である。
【図4】本発明によるタイ・ロッド固定の図である。
【図4a】非対称に配置されるタイ・ロッドの図である。
【図5】広げられた金属サイド・プレートを有するベース・プレートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照して以下により詳細に本発明を説明する。図面は概略図で示されている。
【0032】
以下で参照番号1によって全体を示される本発明による大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンは特に、例えば、船舶の建造で広範に見られるような長手方向フラッシング(flushing)を有する大型2行程ディーゼル・エンジン1として設計されている。
【0033】
後段の説明では、本発明を分かり易く、且つ区別するために、従来技術から知られている大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンの設計を図2を参照して簡単に論じる。本出願から従来技術を区別するために、従来技術から知られているエンジンに関連するこれらの特徴をダッシュ付きで提供し、一方本発明による特徴はダッシュなしの参照番号によって指示する。
【0034】
図1は、既に従来技術から知られているが、本発明によるエンジン1によっても概ね実現されるような大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1、1’の一般的な設計の概略横断面を示す。本発明によるエンジン1は、特に軸受座13、13’内のタイ・ロッドの異なる固定方法によって、従来技術から知られていたエンジン1’と異なる。
【0035】
この大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1、1’は、ベース・プレート2、2’、スタンド5、5’、及びシリンダ・セクション10、10’をそれ自体既知の方法で含む。シリンダ・セクション10、10’は、図示しないシリンダを受けるためにそれ自体既知の方法で働く。例えば、2枚の鋼板を一緒に溶接することによって作り出されたスタンド5、5’は、金属ベース・プレート18、18’及び2つの外壁4、4’を有し、図で垂直に延びるすべり面8、8’と共に断面が台形である2つのフレームを形成し、共通の金属カバー・プレート16、16’によって互いに連結される。この2つの対向する垂直に延びるすべり面8、8’は、2つの台形フレームの間に配置される中央壁17、17’によって支持される。スタンド5、5’は、ベース・プレート2、2’上の金属床プレート18、18’を伴って配置され、前記ベース・プレートは、クランクシャフト3、3’をジャーナル支承するために軸受シェル131、131’を有する軸受座又はクレードル13、13’を含む。軸K、K’を有するクランクシャフト3、3’は、図1に示されていないコネクティング・ロッドを介して既知の方法でクロスヘッド9、9’に連結される。
【0036】
図2は、従来技術から知られている一実施例の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1’を通る、図1による断面線I−Iに沿った断面を示し、そこではタイ・ロッド11’はクランクシャフト3’とスタンド5’間の区域の穴に固定される。図2の例は、ベース・プレート2’上に配置されるスタンド5’、及びスタンド5’上に置かれるシリンダ・セクション10’を含む。金属カバー・プレート16’がスタンド5’とシリンダ・セクション10’の間に配置され、金属ベース・プレート18’がスタンド10’とベース・プレート2’の間に配置される。このシリンダ・セクション10’は、図示しない1つ又は複数のシリンダを既知の方法で受けるのに適している。シリンダの内側空間は、図示しないシリンダ・カバーと、ピストン・ロッド19’を使用してクロスヘッド9’に連結され、且つシリンダ内に往復動のために配置される、同じく図示しないピストンと共に、既知の方法で大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1’の燃焼チャンバを形成する。スタンド5’は、横方向の支持壁7’によって2重壁に作られる支持本体6’を含む。この支持壁7’は、コネクティング・ロッド181’を使用してクランクシャフト3’に、且つピストン・ロッド19’を介して大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1’のピストン(図示せず)に連結されるクロスヘッド9’を案内するためのすべり面8’を担持する。
【0037】
ベース・プレート2’は、軸受座13’及びクランクシャフト3’を受け且つジャーナル支承するための単一壁で作られる横方向支持要素12’を含む。シリンダ・セクション10’、スタンド5’及びベース・プレート2’は、張力の下でタイ・ロッド11’によって互いに連結される。タイ・ロッド11’は、2重壁支持本体6’の内部で横方向支持壁7’間のスタンド5’の区域を延び、図によればクランクシャフト3’の軸K’の上でねじ穴14’内にある、クランクシャフト3’の軸K’とスタンド5’の間の領域のベース・プレート2’の軸受座13’に固定される。
【0038】
したがって、本発明による大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1と図2に示す既知の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1’の間の本質的相違は、タイ・ロッド11が、本発明によるエンジン1の軸受座のねじ穴に固定されず、むしろ後に図4でより詳細に明らかになるように、タイ・ロッド11が好ましくはタイ・ロッド・ナット15を使用して、クランクシャフトの軸Kとスタンド5間の区域領域の軸受座13に、切欠部14から脱着可能な保持要素15を使用して切欠部14に固定されることである。
【0039】
図2に示す既知の実施例では、支持本体6’の横方向支持壁7’は、シリンダ・セクション10’の方向にV字形に延びる、すなわち支持本体6’の横方向支持壁7’の互いの空間がシリンダ・セクション10’に向かう方向で次第に増加する。クロスヘッド9’がすべり面8’を介して支持壁7’に、したがって、支持本体6’に伝達する垂直な力は、既知のようにピストンの往復動の上死点近くで最大である。支持本体6’のV字形の設計によって、支持本体は図のスタンド5’の上側区域で相対的に広く、したがって、クロスヘッド9’の垂直力を特によく吸収し、又はスタンド5’にそれらを供給することができる。
【0040】
図2に示す既知の実施例では、タイ・ロッド11’は、支持本体6’の横方向支持壁7’の間をその長手方向軸Z’を中心として中央に延び、ベース・プレート2’内でその上に支持本体6’が支持される、ベース・プレート2’の単一壁支持要素12’は、タイ・ロッド11’の長手方向軸Z’と位置合わせして配置される。このタイ・ロッド11’は、クランクシャフト3’の軸K’とスタンド5’の間の区域に固定される、すなわち、特に軸受シェル131’の変形を避けるために、図によればクランクシャフト3’の軸K’の上方で、軸受座13’内のねじ穴14’に固定される。単一壁の支持要素12’がタイ・ロッド11’の長手方向軸Z’と位置合わせして、したがって、ベース・プレート2’の剛性が強すぎることなく、支持本体6’の支持壁7’に対して対称的にベース・プレート2’に配置されるので、特に高い安定性が達成される。
【0041】
前の2つの段落で行った記述は、これらの特徴は原理的にタイ・ロッド1、1’の軸受座13、13’の固定形式及び方法に悪影響を及ぼさないので、類似した方法で本発明によるエンジン1にやはり完全に当てはまる。
【0042】
換言すると、本発明によるエンジン1の好ましい実施例は、図2に示す既知のエンジン1’の例と同じ様に基本的に設計され、本発明によるエンジン1ではタイ・ロッド11が軸受座13のねじ穴に固定されず、むしろ、以下で図4でより詳細に説明するように、タイ・ロッド11が好ましくはタイ・ロッド・ナット15を使用して、クランクシャフト3の軸Kとスタンド5間の区域の軸受座13に、切欠部14から脱着可能な保持器15を使用して切欠部14に固定されることが決定的な相違である。
【0043】
最後に図3は、本発明による大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1に対する線II−IIに沿った、図1による別の断面を示す。2つのそれぞれの、対向して配設されるスタンド5の支持本体6が示され、すべり面8の間の中央壁17によって互いに押し付けて支持される。クロスヘッド9は、いずれの場合にも2つの対向して配設されるすべり面8間の2つのそれぞれ隣り合う支持本体6によって案内される。正確に1つのタイ・ロッド11が支持壁7の間で、それぞれの支持本体6内を延びる。
【0044】
図4に、本発明による大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1の概略的な切欠部を軸受座13の区域に示す。長手方向軸Kを有するクランクシャフト3は、それ自体既知の方法で軸受座13に支持され、軸受カバー132によって固定される。本発明によれば、このタイ・ロッド11は、長手方向軸Kとスタンド5間の区域の軸受座13に、つまり図によれば、長手方向軸Kの上方で、切欠部14から脱着可能な保持器15を使用して切欠部14に固定される。図4に示す実施例では、タイ・ロッド11は切欠部14の区域内で組み立てられた状態でねじ111を有し、それによってタイ・ロッド11を、ここではタイ・ロッド・ナット15である、保持器15に固定してねじ込むことができる。このタイ・ロッド11は、従来技術から知られているように軸受座13に直接ねじ込まれず、むしろ軸受座を貫通する図4の穴(図示せず)を通り単に自由に、切欠部14まで且つその中に案内され、そこでタイ・ロッド11を固定するためにタイ・ロッド・ナット15にねじ込むことができる。
【0045】
図4aで、非対称に配置されるタイ・ロッド11を有する別の実施例を示す。この実施例ではタイ・ロッド11は、好ましくはシリンダ軸Zに対して所定の角度αで、クランクシャフト3の長手方向軸Kに対して垂直に支持本体6の横方向支持壁7の間を非対称に延びる。この実施例では、角度αは支持本体の横方向支持壁の間で0°から5°、特に1°から3°の値を有するのが有利である。タイ・ロッド11の傾きのそのような適切な選択によって、ベース・プレート2又は横方向支持要素12の区域内で、タイ・ロッド11がその中で支承ヨーク13に固定される切欠部14とクランクシャフト3間の間隔Bの増加が得られ、したがって、ベース・プレート2又は横方向支持要素12内のタイ・ロッド11の取付け部のより高い強度が達成され得るように、クランクシャフト3に向かう方向での大きな利益が達成される。
【0046】
このタイ・ロッド11は、既に述べたように、横方向支持壁7の間に設置中にいわゆるディスエンゲージメント・アイを使用して所定の傾きαで導入することが好ましく、それによって支持アンカー11の問題の無い設置が可能になる。
【0047】
図5に最後に、ベース・プレート2が支持要素12の区域に伸長する金属サイド・プレート22を有する軸受座13を含む、ベース・プレート2の特別な実施例を示す。
【0048】
図13に図示しないタイ・ロッド11は、図4で説明したようにタイ・ロッド・ナット15を使用して切欠部14で軸受座13に固定可能である。すなわち、組み立てた状態で、タイ・ロッド11は図に従って上向きに、大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン1のスタンド5内に延びる。
【0049】
図5に示す例では、長手方向軸Kを有するクランクシャフト3(図5に図示せず)が着座する軸受座13は、全体材料厚さ内で軸受座13として限られた区域にのみ形成されている。図に従って、軸受座13に対してより薄い金属サイド・プレート22が実際の軸受座13を右側に又は左側に隣接させ、且つ2枚の金属サイド・プレート22が互いに分離され、図に従って右側で且つ左側へ溶接される2枚の金属サイド・プレート22である図1の他に、実際の軸受座13がその中に埋め込まれた広げられた金属サイド・プレート22が図5の実施例で提供される。換言すると、金属サイド・プレート22より際立って厚い材料厚さを有する軸受座13が、すなわち軸受座13が、クランクシャフト3の長手方向軸Kの方向で、金属サイド・プレート2より同じ方向に対して際立って厚く作られ、線1300に沿って金属サイド・プレート22に溶接されている。
【0050】
図5による広げられた金属サイド・プレート22の活用によって、既にどの場合も良好な軸受動力学が、この単一壁横方向支持要素12に起因してさらに改善される、すなわちクランクシャフト3の軸受が動作状態の荷重に関してより柔軟に取り付けられ、したがって、際立って改善される作動特性が達成可能である。
【0051】
本発明によるクロスヘッド・ディーゼル・エンジンの上記で説明した実施例は、例示であるとして理解されるべきであり、本発明は特に説明した実施例のみではなくその適切な組合せ全てを含むことが理解されよう。
【0052】
要約すれば、本発明によりタイ・ロッドを軸受座へしっかり固定することに加え、本発明のクロスヘッド・ディーゼル・エンジンのベース・プレートは、エンジンの組立て品に問題なく反対側溶接することができる単一壁横方向支持要素を有し、したがって、従来技術から知られている2重壁支持要素に伴うベース・プレートに生じるような強度及び/又は安定性の問題が回避されることが再び強調されなければならない。このタイ・ロッドは、短いタイ・ロッドとして製造され、座の上側区域にすなわち、クランクシャフト軸とスタンドの金属ベース・プレートの間、切欠部内にタイ・ロッド・ナットによって固定される。軸受座の歪、及び相当なプレストレスの下で軸受座に固定されるタイ・ロッドによる軸受シェルの変形がそれによってできる限り避けられる。クランクシャフトのジャーナル支承の柔軟性と動力学は特に、短いタイ・ロッド及び単一壁支持要素、並びに特に広げられる金属サイド・プレートの使用によって最適化される。タイ・ロッドは相当なプレストレスの下でベース・プレートにしっかり固定されなければならないので、スタンドの2重壁支持本体とベース・プレートの単一壁支持要素との組合せは、以前は基本的に考慮することができなかった。何故ならスタンドの下側区域及び金属ベース・プレートの両方に、並びに軸受座の区域にも、不可避の曲げ荷重及び結果として材料に許容できない機械歪が予測されたためである。スタンド及び、軸受座の切欠部内でのタイ・ロッド・ナットによるその固定との組合せでのタイ・ロッド区域のベース・プレートの適切な設計によって、今まで恐れられていた曲げ荷重の問題点、及びそのような構造でやはり予想されていたフレッティングを回避することができた。特に、本発明による大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジンの金属ベース・プレートは、際立ってより簡単に設計されている。
【符号の説明】
【0053】
1 大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン
2 ベース・プレート
3 クランクシャフト
4 外壁
5 スタンド
6 支持本体
7 横方向支持壁
8 摺動表面
9 クロスヘッド
10 シリンダ・セクション
11 タイ・ロッド
12 横方向支持要素
13 軸受座
14 切欠部
15 保持要素
16 金属カバー・プレート
17 中央壁
18 金属ベース・プレート
22 金属サイド・プレート
K クランクシャフトの長手方向軸
Z タイ・ロッド長手方向軸
α 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフト(3)を受けるためのベース・プレート(2)と、2枚の外壁(4)を含むスタンド(5)と、該スタンドが、前記ベース・プレート(2)上に配置され、少なくとも1つの支持本体(6)を含むことと、該支持本体が横方向支持壁(7)によって2重壁に作られ、2つの隣り合うクロスヘッド(9)用の摺動表面(8)を有することと、シリンダを受けるためにスタンド(5)上に配置されるシリンダ・セクション(10)とを有し、前記ベース・プレート(2)、前記スタンド(5)及び前記シリンダ・セクション(10)が、前記スタンド(5)の区域で、前記2重壁支持本体(6)の内側を延びる少なくとも1本のタイ・ロッド(11)によって互いに連結され、且つ横方向支持要素(12)が前記ベース・プレート(2)に設けられ且つ単一壁で作られ、且つ、前記ベース・プレート(2)が前記クランクシャフト(3)をジャーナル支承するための少なくとも1つの軸受座(13)を有する大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン(1)であって、前記タイ・ロッド(11)が前記クランクシャフト(3)の長手方向軸(K)と前記スタンド(5)間の区域の前記軸受座(13)に、切欠部(14)から脱着可能な保持要素(15)を使用して前記切欠部に固定されることを特徴とする、大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの支持本体(6)の横方向支持壁(7)が互いに平行に配置される、請求項1に記載の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン。
【請求項3】
前記少なくとも1つの支持本体(6)の横方向支持壁(7)が前記シリンダ・セクション(10)の方向に、増加する間隔でV字形に延びる、請求項1又は2に記載の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン。
【請求項4】
前記タイ・ロッド(11)が前記支持本体(6)の前記横方向支持壁(7)の間を中央に延びる、請求項1から3までのいずれか一項に記載の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン。
【請求項5】
タイ・ロッド(11)が前記支持本体(6)の前記横方向支持壁(7)の間を非対称に延びる、請求項1から4までのいずれか一項に記載の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン。
【請求項6】
前記タイ・ロッド(11)が、シリンダ軸(Z)に対して所定の角度(α)で、且つ前記クランクシャフト(3)の前記長手方向軸(K)に対して垂直に、好ましくは前記支持本体(6)の前記横方向支持壁(7)の間で0°から5°、特に1°から3°の角度(α)で延びる、請求項1から5までのいずれか一項に記載の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン。
【請求項7】
前記支持要素(12)が前記タイ・ロッド(11)の前記長手方向軸(Z)と位置合わせして配置される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン。
【請求項8】
2本のタイ・ロッド(11)が2つの隣り合うクロスヘッド(9)の間を正確に延びる、請求項1から7までのいずれか一項に記載の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン。
【請求項9】
金属サイド・プレート(22)が前記ベース・プレート(2)に設けられ、好ましくは伸長するサイド・プレート(22)として前記ベース・プレート(2)の一部分を形成する、大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン。
【請求項10】
前記スタンド(5)が金属ベース・プレート(18)、金属カバー・プレート(16)及び2つの対向して配設される摺動表面(8)の間に配置される中央壁(17)を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の大型ディーゼル・クロスヘッド・エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−256874(P2011−256874A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150560(P2011−150560)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【分割の表示】特願2007−41788(P2007−41788)の分割
【原出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(501082602)ヴェルトジィレ シュヴァイツ アクチェンゲゼルシャフト (46)
【Fターム(参考)】