大型表示盤の発光表示素子監視装置
【課題】大型表示盤を構成するLEDランプの故障状態を、運用中においても監視できるようにする。
【解決手段】発光表示素子監視装置7のアラーム監視装置4は、映像制御装置3がLED表示盤1に送出する映像・面輝度信号を受けてLED表示盤1の各LEDランプが点灯したときの輝度を計算し、LED表示盤1が映像・面輝度信号に基づいて表示しているときの各LEDランプの輝度を測定した輝度測定データを発光表示素子監視装置7の輝度測定装置5から受け、計算による輝度と測定による輝度とをLEDランプ毎に比較し、計算による輝度が測定による輝度よりも十分大きいとき、LEDランプの球切れと判断でき、逆の場合は、LEDランプを常時点灯させてしまう駆動部の故障と判断できる。運用中の映像を利用してLEDランプの故障を監視でき、しかも、運用の間に故障箇所を特定できることから、運用後の点検作業を迅速に行うことができる。
【解決手段】発光表示素子監視装置7のアラーム監視装置4は、映像制御装置3がLED表示盤1に送出する映像・面輝度信号を受けてLED表示盤1の各LEDランプが点灯したときの輝度を計算し、LED表示盤1が映像・面輝度信号に基づいて表示しているときの各LEDランプの輝度を測定した輝度測定データを発光表示素子監視装置7の輝度測定装置5から受け、計算による輝度と測定による輝度とをLEDランプ毎に比較し、計算による輝度が測定による輝度よりも十分大きいとき、LEDランプの球切れと判断でき、逆の場合は、LEDランプを常時点灯させてしまう駆動部の故障と判断できる。運用中の映像を利用してLEDランプの故障を監視でき、しかも、運用の間に故障箇所を特定できることから、運用後の点検作業を迅速に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大型表示盤の発光表示素子監視装置に関し、特に屋外、公営競技場、スタジアム等に設置して動画等の映像情報を提供する大型表示盤の発光表示素子監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型表示盤は、複数の発光表示素子を平面上にそれぞれ交換可能に並べて構成されている。発光表示素子としては、発光ダイオード(以下、LEDと略記する)のランプが使用されている。LEDランプは、画面の1画素を構成するため、寿命等によって球切れを起こすと、その部分の画像にドットの抜けが生じる。また、LEDランプを駆動しているドライバが故障してLEDランプが点灯しなくなったり、逆に、点灯しっ放しの状態になったりすることもある。大型表示盤は、これを運用する前または後に点検作業が行われるが、そのときに、そのような不具合を発見した場合には、該当箇所のLEDランプを交換するなどの処置がとられる。
【0003】
LEDランプに球切れが起きているかどうかは、白の映像を表示させてすべてのLEDランプを最大輝度で点灯させ、そのとき、それぞれのLEDランプに流れる電流をドライバ側で監視し、正常時の消費電流と比較することで判断できる(たとえば、特許文献1参照)。また、LEDランプが点灯しっ放しかどうかは、全画面に黒の映像を表示させるようにしてすべてのLEDランプを消灯状態にし、そのときの表示画面を観察することで発見することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−116040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大型表示盤の点検作業は、点検用の映像を表示させることによって行うので、運用している最中に行うことはできないことから、非運用時の時間帯に作業員の数および作業時間を十分に確保しておく必要があり、その結果、保守のコストが高くなってしまうという問題点があった。
【0006】
また、LEDランプの常時点灯の故障に関しては、たとえそのようなLEDランプを発見しても、そのLEDランプを受け持つドライバを特定するために、広い表示画面を観察しながら制御装置側で表示パターンを変更して絞り込む作業が必要になるため、部品交換までの事前調査に時間がかかるという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、大型表示盤の運用中にも、特殊な点検用の画像を表示させることなくLEDランプの動作状態を調査できる大型表示盤の発光表示素子監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記の課題を解決するために、複数の発光表示素子により構成された大型表示盤と、前記大型表示盤に表示させる映像を編集する映像編集装置と、編集された映像を前記大型表示盤に送り出す映像制御装置とを備えた映像表示システムにおける前記大型表示盤の発光表示素子監視装置において、前記大型表示盤を構成するすべての前記発光表示素子の輝度を個別に測定し、輝度測定データを出力する輝度測定装置と、前記大型表示盤に送られる映像データから前記大型表示盤に表示したときの輝度を計算により求めた計算値と前記輝度測定データから得られた測定値とを比較し、前記計算値と前記測定値との誤差の大きさに応じて前記発光表示素子の故障状態を判定するアラーム監視装置と、を備えていることを特徴とする大型表示盤の発光表示素子監視装置が提供される。
【0009】
このような大型表示盤の発光表示素子監視装置によれば、発光表示素子の監視を、映像表示システムの運用時の映像データを利用して行うことができるので、保守作業を行う前の運用中の段階で、発光表示素子の故障状態をあらかじめ特定することができる。これにより、実際の保守作業を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の大型表示盤の発光表示素子監視装置は、大型表示盤に表示しようとしている映像データと実際にその映像データを表示させている大型表示盤の映像を測定した輝度測定データとを利用して発光表示素子が故障しているかどうかを判断しているので、従来不可能であった運用中の故障発光表示素子の発見が可能になるという利点がある。
【0011】
映像データから計算した輝度と輝度測定データの輝度とを比較したときの誤差の大きさで発光表示素子の故障を判断しているので、発光表示素子の球切れのみならず常時点灯の故障をも検出することが可能になる。
【0012】
運用後の保守点検前に発光表示素子の不具合箇所が事前に特定できているので、不具合箇所の調査工数が不要になり、実質的に交換作業工数のみであるので、点検作業員の人数を減らすことができ、作業時間も大幅に短縮できることから保守コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】映像表示システムの全体構成を示す図である。
【図2】LED表示盤の構成例を示す図である。
【図3】LED表示盤のドット配列例を示す図である。
【図4】映像制御装置の構成例を示す図である。
【図5】輝度測定装置の構成例を示す図である。
【図6】アラーム監視装置の構成例を示す図である。
【図7】アラーム監視装置の映像・輝度演算器の構成例を示す図である。
【図8】故障判定部にて比較される輝度データの構成例を示す図である。
【図9】故障判定部の比較処理の一例を示す説明図である。
【図10】画面表示例を示す図であって、(A)は起動時の画面表示例を示し、(B)は判定結果の画面表示例を示している。
【図11】映像表示システムの故障検知動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、大型表示盤に映像を表示させる映像表示システムに適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
図1は映像表示システムの全体構成を示す図である。
【0015】
映像表示システムは、大画面のLED表示盤1と、このLED表示盤1に表示させる映像を編集する映像編集装置2と、LED表示盤1に編集された映像を送り出す映像制御装置3とを備えている。映像表示システムは、また、LED表示盤1を構成するLEDランプの動作状態を監視するアラーム監視装置4と、LED表示盤1の全体を撮像するよう設置され、個々のLEDランプの輝度を測定してその輝度測定データを出力することができる輝度測定装置5と、LED表示盤1が設置される場所の周囲の明るさを監視する照度センサ6とを備えている。ここで、アラーム監視装置4および輝度測定装置5は、発光表示素子監視装置7を構成している。
【0016】
映像表示システムは、映像編集装置2にて、外部から入力された入力映像信号を編集して表示すべき映像情報が用意され、映像制御装置3へ出力される。映像制御装置3は、映像編集装置2から出力された映像信号を入力し、映像制御装置3で編集された映像信号および表示画面の明るさを指定する面輝度信号をLED表示盤1に送出し、LED表示盤1は、受けた映像信号および面輝度信号を基に映像を表示する。面輝度信号は、照度センサ6が検出した照度データをアラーム監視装置4が受けて変換した輝度段階信号に基づいており、LED表示盤1を設置環境の明るさに応じた明るさに制御するのに使用される。
【0017】
発光表示素子監視装置7において、アラーム監視装置4は、LED表示盤1からアラーム信号を受け、照度センサ6から照度データを受け、映像制御装置3から映像信号および面輝度信号を受け、輝度測定装置5から輝度測定データを受けるよう構成されている。輝度測定装置5は、LED表示盤1のLEDランプ光源の輝度、照度および色度を2次元で測定できるもので、LEDランプ毎の輝度測定データを取得することができる。LED表示盤1では、LEDランプの取り付けピッチが比較的広いため、高解像度の2次元受光素子を用いることで、LEDランプ毎の測定を可能にしている。LED表示盤1が超巨大な画面を有する場合には、画面を複数に分割し、複数台の輝度測定装置5を用いることで全画面の測定をカバーすることができる。
【0018】
発光表示素子監視装置7は、アラーム監視装置4が映像制御装置3からLED表示盤1に送った映像信号および面輝度信号と同じ信号を受けると、輝度測定装置5に測定開始信号を出力し、輝度測定装置5から輝度測定データを受ける。アラーム監視装置4は、LED表示盤1に送った映像信号および面輝度信号からLEDランプが出力するはずの輝度を算出した計算データと、輝度測定装置5による輝度測定データを照度データで補正した測定データとを同期させて比較し、表示のために送ったデータと実際に表示された画像の測定データとが一致するかどうかをLEDランプ毎に判断する。この比較により、一致していなければ、そのLEDランプが球切れまたは常時点灯の故障状態にあると判断することができる。
【0019】
このLEDランプの監視は、運用中に提供されている映像信号を用いて行っているので、運用の最中に不具合のあるLEDランプおよびそのドライバを特定しておくことができるので、運用後に行われる保守点検の作業時間を大幅に短縮することができる。
【0020】
図2はLED表示盤の構成例を示す図、図3はLED表示盤のドット配列例を示す図である。
LED表示盤1は、分配器11と、複数の表示制御基板12と、マトリクス状に配置して1つの画面を構成する複数のLEDランプ13と、アラーム監視基板14とを備えている。LEDランプ13は、本実施の形態では、1個に赤色LED(R)、緑色LED(G)および青色LED(B)を組み込んだもので、1個でフルカラーを表現でき、表示画面の1画素(ドット)分を構成する。したがって、たとえば図3のように、256×256ドットの表示盤を構成する場合は、単純に65536個のLEDランプ13をマトリクス状に配置することによって構成することができる。
【0021】
分配器11は、映像制御装置3から受けた映像信号および面輝度信号を分配し、複数の表示制御基板12のそれぞれに供給する。表示制御基板12は、表示画面を部分的に構成する複数のLEDランプ13のそれぞれを点灯制御する。この点灯制御は、LEDランプ13が表示すべき映像信号の輝度を面輝度信号の値で補正し、その補正値に対応した電流をLEDランプ13に流している。
【0022】
アラーム監視基板14は、LEDランプ13に給電する電源の異常、LEDランプ13の温度の異常等が検出されたときのアラーム信号を受け、それをアラーム監視装置4に送出する。
【0023】
図4は映像制御装置の構成例を示す図である。
映像制御装置3は、映像編集装置2からの映像信号を受ける映像受信機器21と、映像受信機器21が受けた映像信号および輝度段階信号として受けた面輝度信号をLED表示盤1に送出する映像送出機器22とを備えている。映像送出機器22は、アラーム監視装置4に接続されていて、アラーム監視装置4から輝度段階信号を受け、アラーム監視装置4には、LED表示盤1に送出した映像信号および面輝度信号と同じ信号を比較用に計算されるデータの元データとして送出する。
【0024】
図5は輝度測定装置の構成例を示す図である。
輝度測定装置5は、LED表示盤1の輝度をドット毎に測定することができる輝度測定部31と、輝度測定部31が測定したLED表示盤1の表示盤輝度データを取り込んで一時保存しておくデータ蓄積部32とを有している。輝度測定部31は、高解像度で高精度に測定が可能なたとえば2次元色彩輝度計とすることができる。データ蓄積部32は、アラーム監視装置4から所定の周期で送られる輝度測定開始信号の受信に同期して、輝度測定部31の測定および測定した表示盤輝度データの取り込みを開始し、取り込んだ表示盤輝度データを蓄積する。データ蓄積部32は、たとえば1画面分の輝度測定データが蓄積した後、輝度測定データとしてアラーム監視装置4に送出する。
【0025】
図6はアラーム監視装置の構成例を示す図、図7はアラーム監視装置の映像・輝度演算器の構成例を示す図である。
アラーム監視装置4は、照度−輝度段階変換部41、映像・輝度演算器42、アラーム信号受信部43、故障判定部44およびモニタ45を有し、映像・輝度演算器42は、受信部46、演算部47および測定間隔設定部48を有している。
【0026】
照度−輝度段階変換部41は、照度センサ6が検出したLED表示盤1の周辺の輝度を表す照度データを受け、それを輝度段階データに変換する。輝度段階データは、映像制御装置3に送信され、LED表示盤1の画面全体の明るさを調節する面輝度信号の基になるデータである。
【0027】
映像・輝度演算器42では、受信部46が照度センサ6からの照度データを受け、表示盤周辺輝度データとして故障判定部44に送出する。受信部46は、また、映像制御装置3からの映像信号および面輝度信号を受け、映像信号の映像データおよび面輝度信号の輝度段階を演算部47に送出する。演算部47では、映像データおよび輝度段階を基にLEDランプ13が発光したときの理論上の輝度を計算し、比較用輝度データとして故障判定部44に送出する。
【0028】
映像・輝度演算器42では、測定間隔設定部48が輝度測定装置5による測定間隔を設定することができ、受信部46は、測定間隔設定部48によって設定された測定間隔の周期で輝度測定開始信号を輝度測定装置5に送出する。
【0029】
故障判定部44は、映像・輝度演算器42から表示盤周辺輝度データと、計算値である比較用輝度データとを受け、輝度測定装置5から測定値である輝度測定データを受ける。故障判定部44は、また、アラーム信号受信部43からLED表示盤1の電源異常等のアラーム信号を受ける。
【0030】
故障判定部44は、まず、輝度測定データを表示盤周辺輝度データで補正して表示盤周辺の明るさを考慮した測定データを算出し、次に、比較用輝度データを測定データと比較する。この比較は、LEDランプ13毎に行われる。故障判定部44は、計算上の輝度データと測定データとの比較の結果、両データの値がほぼ一致していれば、そのLEDランプ13は正常であると判断する。もし、両データの値の差が大きい場合、故障判定部44は、アラーム信号受信部43からのアラーム信号が対応するLEDランプ13に関するアラームであるかどうかを調べる。該当するLEDランプ13に関するアラームが発生していなければ、LEDランプ13自体の球切れと判断し、モニタ45に故障表示し、アラームが該当のLEDランプ13に関するものであれば、電源異常をモニタ45に表示する。
【0031】
図8は故障判定部にて比較される輝度データの構成例を示す図である。
故障判定部44において比較される計算上の輝度データおよび輝度測定データは、輝度段階データと、赤色映像データと、緑色映像データと、青色映像データとからなり、各色は、たとえば8ビットで構成され、それぞれクロックに従ってシリアルに伝送される。輝度データにおいて、輝度段階データは、フレームの始まりを合わせるための垂直同期信号に同期され、次に1ドット目の赤色映像データR1、1ドット目の緑色映像データG1、1ドット目の青色映像データB1、2ドット目の赤色映像データR2・・・と続き、nドット目の青色映像データBnがフレームの最後の輝度データとなる。そして、次の垂直同期信号に同期して輝度段階データと次のフレームを構成する3色の輝度データがシリアルに続いていくことになる。
【0032】
ここで、故障判定部44において行われる計算上の輝度データおよび輝度測定データの比較は、対応するドットの対応する色映像データ毎に行われ、これにより、LEDランプ13のそれぞれについて異常かどうかを判定することができる。
【0033】
図9は故障判定部の比較処理の一例を示す説明図である。
一例として、最初の2つのLEDランプ13を表示したときの故障判定の例を示す。なお、階調は、各色8ビット(0〜255)とし、輝度段階は、0〜31の32段階(0が最大、31が最小)あって、ここでは、変換された輝度段階は、0であったとしている。階調−輝度変換は、使用するLEDランプ13により異なる。また、表示盤周辺輝度は、150カンデラ毎平方メートルであったとしている。そして、故障判定は、比較用の計算値と測定値との差が±70%以上で故障と判断するとしている。
【0034】
図示の例では、映像編集装置2から送り出された映像信号の階調の値に対して輝度段階を考慮した輝度が演算部47において計算される。一方、輝度測定装置5が測定した輝度測定データに対しては、LED表示盤1の周辺の輝度を考慮した輝度が故障判定部44において計算される。これらの計算結果は、LEDランプ13の色毎に比較され、その差が±70%以上あるかどうかが故障判定部44において判断される。この例では、比較結果で誤差が±70%以上あるのは、1ドット目の赤色LED(R1)であることから、この1ドット目の赤色LED(R1)が故障と判断することができる。他のLED(G1、B1、R2、G2、B2)は、誤差が70%以内であるため、正常と判断することができる。
【0035】
1ドット目のLEDランプ13のように、実際に測定した輝度値が計算上の輝度値よりも十分小さい場合、LEDランプの球切れと判断される。また、実際に測定した輝度値が計算上の輝度値よりも十分大きい逆の場合には、当該LEDランプを駆動している回路がLEDランプを常時点灯状態にしてしまうような故障をしていると判断することができる。
【0036】
図10は画面表示例を示す図であって、(A)は起動時の画面表示例を示し、(B)は判定結果の画面表示例を示している。
起動したときのモニタ45の画面には、LED表示盤1に配置されたLEDランプ13のアドレスを示すマップ51と、運転履歴を表示するログ画面52とが表示されている。マップ51は、この例では、説明のために、5×4ドットの大きさの画面にしてあるが、実際の画面は、非常に大きく、1画面に収めることはできないので、幾つかの小領域に分割し、それを切り換えて表示するようにしている。たとえば、あるLEDランプ13の故障事象の発生に応答して、そのLEDランプ13を含む小領域に切り換えて表示することになる。また、LEDランプ13のどの色のLEDが故障したかは、マップ51上のアドレス表示部を故障したLEDの色で表示することにより、視認性を向上させることができる。LEDランプ13の電源に故障がある場合には、マップ51上のアドレス表示部を、たとえば点滅表示させることによって、色別の故障表示と区別して表示することができる。
【0037】
モニタ45の画面表示例では、図10の(A)に示した正常動作をしている表示のときに、LEDランプ13の故障が見つかると、図10の(B)に示したように、その故障したLEDランプ13の位置およびその故障したLEDの色がマップ51上に表示され、同時に、ログ画面52に、その詳細が文字情報によって表示される。図示の例では、故障したのは、LEDランプアドレスがB2のLEDランプ13であり、その中の赤色LEDが故障していることを通知している。これにより、点検作業員は、この映像表示システムの運用中に、どの表示位置にあるLEDランプ13が故障しているのかをあらかじめ知ることができるので、運用後に行われるLEDランプ13の交換作業を迅速に行うことができるようになる。
【0038】
図11は映像表示システムの故障検知動作を示すフローチャートである。
まず、アラーム監視装置4の故障判定部44において、故障判定は、1回の故障事象の検出によって故障と判定されることはないので、その故障事象が連続して何回発生したら故障と判断するかの回数が設定される(ステップS1)。次に、測定間隔設定部48によって設定された輝度測定間隔が経過したかどうかが判断され(ステップS2)、輝度測定間隔が経過していない場合は、経過するまで待つ。輝度測定間隔が経過した場合には、映像・輝度演算器42より輝度測定開始信号が出力される(ステップS3)。
【0039】
輝度測定開始信号の出力に応じて、一方では、映像・輝度演算器42が映像信号および面輝度信号から比較用輝度データを計算し(ステップS4)、照度データから表示盤周辺輝度データを計算する(ステップS5)。他方では、輝度測定装置5が輝度測定を開始するとともにデータ蓄積部32が輝度測定部31の測定した表示盤輝度データの取り込みを開始し(ステップS6)、データ蓄積部32に取り込まれた輝度測定データをアラーム監視装置4へ送信する(ステップS7)。
【0040】
次に、アラーム監視装置4では、故障判定部44から受けた比較用輝度データおよび表示盤周辺輝度データと、輝度測定装置5から受けた輝度測定データとを基に計算値と測定値との比較をドット単位で行う(ステップS8)。
【0041】
計算値と測定値との比較の結果、誤差が所定の値より大きくて故障と思われる箇所があるかどうかが判定される(ステップS9)。ここで、故障箇所がなければ、ステップS2に戻る。
【0042】
ステップS9において、故障箇所が見つかれば、故障判定部44は、その故障箇所を記憶する(ステップS10)。次に、その故障箇所における故障の連続発生回数がステップS1にて設定された回数以内かどうかが判定される(ステップS11)。故障箇所の連続発生回数が所定回数以内であれば、ステップS2に戻る。故障箇所の連続発生回数が所定回数を超えていれば、LED表示盤1の該当箇所からアラーム信号が来ているかどうかが判断される(ステップS12)。ここで、アラーム信号が来ていれば、故障箇所のLEDランプ13を駆動する電源の故障と確定され(ステップS13)、アラーム信号が来ていなければ、故障箇所のLEDランプ13の故障と確定される(ステップS14)。このようにして、LEDランプ13またはその電源の故障と確定されると、アラームがモニタ45に通知されて表示される。
【符号の説明】
【0043】
1 LED表示盤
2 映像編集装置
3 映像制御装置
4 アラーム監視装置
5 輝度測定装置
6 照度センサ
7 発光表示素子監視装置
11 分配器
12 表示制御基板
13 LEDランプ
14 アラーム監視基板
21 映像受信機器
22 映像送出機器
31 輝度測定部
32 データ蓄積部
41 照度−輝度段階変換部
42 映像・輝度演算器
43 アラーム信号受信部
44 故障判定部
45 モニタ
46 受信部
47 演算部
48 測定間隔設定部
51 マップ
52 ログ画面
【技術分野】
【0001】
本発明は大型表示盤の発光表示素子監視装置に関し、特に屋外、公営競技場、スタジアム等に設置して動画等の映像情報を提供する大型表示盤の発光表示素子監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型表示盤は、複数の発光表示素子を平面上にそれぞれ交換可能に並べて構成されている。発光表示素子としては、発光ダイオード(以下、LEDと略記する)のランプが使用されている。LEDランプは、画面の1画素を構成するため、寿命等によって球切れを起こすと、その部分の画像にドットの抜けが生じる。また、LEDランプを駆動しているドライバが故障してLEDランプが点灯しなくなったり、逆に、点灯しっ放しの状態になったりすることもある。大型表示盤は、これを運用する前または後に点検作業が行われるが、そのときに、そのような不具合を発見した場合には、該当箇所のLEDランプを交換するなどの処置がとられる。
【0003】
LEDランプに球切れが起きているかどうかは、白の映像を表示させてすべてのLEDランプを最大輝度で点灯させ、そのとき、それぞれのLEDランプに流れる電流をドライバ側で監視し、正常時の消費電流と比較することで判断できる(たとえば、特許文献1参照)。また、LEDランプが点灯しっ放しかどうかは、全画面に黒の映像を表示させるようにしてすべてのLEDランプを消灯状態にし、そのときの表示画面を観察することで発見することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−116040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大型表示盤の点検作業は、点検用の映像を表示させることによって行うので、運用している最中に行うことはできないことから、非運用時の時間帯に作業員の数および作業時間を十分に確保しておく必要があり、その結果、保守のコストが高くなってしまうという問題点があった。
【0006】
また、LEDランプの常時点灯の故障に関しては、たとえそのようなLEDランプを発見しても、そのLEDランプを受け持つドライバを特定するために、広い表示画面を観察しながら制御装置側で表示パターンを変更して絞り込む作業が必要になるため、部品交換までの事前調査に時間がかかるという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、大型表示盤の運用中にも、特殊な点検用の画像を表示させることなくLEDランプの動作状態を調査できる大型表示盤の発光表示素子監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記の課題を解決するために、複数の発光表示素子により構成された大型表示盤と、前記大型表示盤に表示させる映像を編集する映像編集装置と、編集された映像を前記大型表示盤に送り出す映像制御装置とを備えた映像表示システムにおける前記大型表示盤の発光表示素子監視装置において、前記大型表示盤を構成するすべての前記発光表示素子の輝度を個別に測定し、輝度測定データを出力する輝度測定装置と、前記大型表示盤に送られる映像データから前記大型表示盤に表示したときの輝度を計算により求めた計算値と前記輝度測定データから得られた測定値とを比較し、前記計算値と前記測定値との誤差の大きさに応じて前記発光表示素子の故障状態を判定するアラーム監視装置と、を備えていることを特徴とする大型表示盤の発光表示素子監視装置が提供される。
【0009】
このような大型表示盤の発光表示素子監視装置によれば、発光表示素子の監視を、映像表示システムの運用時の映像データを利用して行うことができるので、保守作業を行う前の運用中の段階で、発光表示素子の故障状態をあらかじめ特定することができる。これにより、実際の保守作業を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の大型表示盤の発光表示素子監視装置は、大型表示盤に表示しようとしている映像データと実際にその映像データを表示させている大型表示盤の映像を測定した輝度測定データとを利用して発光表示素子が故障しているかどうかを判断しているので、従来不可能であった運用中の故障発光表示素子の発見が可能になるという利点がある。
【0011】
映像データから計算した輝度と輝度測定データの輝度とを比較したときの誤差の大きさで発光表示素子の故障を判断しているので、発光表示素子の球切れのみならず常時点灯の故障をも検出することが可能になる。
【0012】
運用後の保守点検前に発光表示素子の不具合箇所が事前に特定できているので、不具合箇所の調査工数が不要になり、実質的に交換作業工数のみであるので、点検作業員の人数を減らすことができ、作業時間も大幅に短縮できることから保守コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】映像表示システムの全体構成を示す図である。
【図2】LED表示盤の構成例を示す図である。
【図3】LED表示盤のドット配列例を示す図である。
【図4】映像制御装置の構成例を示す図である。
【図5】輝度測定装置の構成例を示す図である。
【図6】アラーム監視装置の構成例を示す図である。
【図7】アラーム監視装置の映像・輝度演算器の構成例を示す図である。
【図8】故障判定部にて比較される輝度データの構成例を示す図である。
【図9】故障判定部の比較処理の一例を示す説明図である。
【図10】画面表示例を示す図であって、(A)は起動時の画面表示例を示し、(B)は判定結果の画面表示例を示している。
【図11】映像表示システムの故障検知動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、大型表示盤に映像を表示させる映像表示システムに適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
図1は映像表示システムの全体構成を示す図である。
【0015】
映像表示システムは、大画面のLED表示盤1と、このLED表示盤1に表示させる映像を編集する映像編集装置2と、LED表示盤1に編集された映像を送り出す映像制御装置3とを備えている。映像表示システムは、また、LED表示盤1を構成するLEDランプの動作状態を監視するアラーム監視装置4と、LED表示盤1の全体を撮像するよう設置され、個々のLEDランプの輝度を測定してその輝度測定データを出力することができる輝度測定装置5と、LED表示盤1が設置される場所の周囲の明るさを監視する照度センサ6とを備えている。ここで、アラーム監視装置4および輝度測定装置5は、発光表示素子監視装置7を構成している。
【0016】
映像表示システムは、映像編集装置2にて、外部から入力された入力映像信号を編集して表示すべき映像情報が用意され、映像制御装置3へ出力される。映像制御装置3は、映像編集装置2から出力された映像信号を入力し、映像制御装置3で編集された映像信号および表示画面の明るさを指定する面輝度信号をLED表示盤1に送出し、LED表示盤1は、受けた映像信号および面輝度信号を基に映像を表示する。面輝度信号は、照度センサ6が検出した照度データをアラーム監視装置4が受けて変換した輝度段階信号に基づいており、LED表示盤1を設置環境の明るさに応じた明るさに制御するのに使用される。
【0017】
発光表示素子監視装置7において、アラーム監視装置4は、LED表示盤1からアラーム信号を受け、照度センサ6から照度データを受け、映像制御装置3から映像信号および面輝度信号を受け、輝度測定装置5から輝度測定データを受けるよう構成されている。輝度測定装置5は、LED表示盤1のLEDランプ光源の輝度、照度および色度を2次元で測定できるもので、LEDランプ毎の輝度測定データを取得することができる。LED表示盤1では、LEDランプの取り付けピッチが比較的広いため、高解像度の2次元受光素子を用いることで、LEDランプ毎の測定を可能にしている。LED表示盤1が超巨大な画面を有する場合には、画面を複数に分割し、複数台の輝度測定装置5を用いることで全画面の測定をカバーすることができる。
【0018】
発光表示素子監視装置7は、アラーム監視装置4が映像制御装置3からLED表示盤1に送った映像信号および面輝度信号と同じ信号を受けると、輝度測定装置5に測定開始信号を出力し、輝度測定装置5から輝度測定データを受ける。アラーム監視装置4は、LED表示盤1に送った映像信号および面輝度信号からLEDランプが出力するはずの輝度を算出した計算データと、輝度測定装置5による輝度測定データを照度データで補正した測定データとを同期させて比較し、表示のために送ったデータと実際に表示された画像の測定データとが一致するかどうかをLEDランプ毎に判断する。この比較により、一致していなければ、そのLEDランプが球切れまたは常時点灯の故障状態にあると判断することができる。
【0019】
このLEDランプの監視は、運用中に提供されている映像信号を用いて行っているので、運用の最中に不具合のあるLEDランプおよびそのドライバを特定しておくことができるので、運用後に行われる保守点検の作業時間を大幅に短縮することができる。
【0020】
図2はLED表示盤の構成例を示す図、図3はLED表示盤のドット配列例を示す図である。
LED表示盤1は、分配器11と、複数の表示制御基板12と、マトリクス状に配置して1つの画面を構成する複数のLEDランプ13と、アラーム監視基板14とを備えている。LEDランプ13は、本実施の形態では、1個に赤色LED(R)、緑色LED(G)および青色LED(B)を組み込んだもので、1個でフルカラーを表現でき、表示画面の1画素(ドット)分を構成する。したがって、たとえば図3のように、256×256ドットの表示盤を構成する場合は、単純に65536個のLEDランプ13をマトリクス状に配置することによって構成することができる。
【0021】
分配器11は、映像制御装置3から受けた映像信号および面輝度信号を分配し、複数の表示制御基板12のそれぞれに供給する。表示制御基板12は、表示画面を部分的に構成する複数のLEDランプ13のそれぞれを点灯制御する。この点灯制御は、LEDランプ13が表示すべき映像信号の輝度を面輝度信号の値で補正し、その補正値に対応した電流をLEDランプ13に流している。
【0022】
アラーム監視基板14は、LEDランプ13に給電する電源の異常、LEDランプ13の温度の異常等が検出されたときのアラーム信号を受け、それをアラーム監視装置4に送出する。
【0023】
図4は映像制御装置の構成例を示す図である。
映像制御装置3は、映像編集装置2からの映像信号を受ける映像受信機器21と、映像受信機器21が受けた映像信号および輝度段階信号として受けた面輝度信号をLED表示盤1に送出する映像送出機器22とを備えている。映像送出機器22は、アラーム監視装置4に接続されていて、アラーム監視装置4から輝度段階信号を受け、アラーム監視装置4には、LED表示盤1に送出した映像信号および面輝度信号と同じ信号を比較用に計算されるデータの元データとして送出する。
【0024】
図5は輝度測定装置の構成例を示す図である。
輝度測定装置5は、LED表示盤1の輝度をドット毎に測定することができる輝度測定部31と、輝度測定部31が測定したLED表示盤1の表示盤輝度データを取り込んで一時保存しておくデータ蓄積部32とを有している。輝度測定部31は、高解像度で高精度に測定が可能なたとえば2次元色彩輝度計とすることができる。データ蓄積部32は、アラーム監視装置4から所定の周期で送られる輝度測定開始信号の受信に同期して、輝度測定部31の測定および測定した表示盤輝度データの取り込みを開始し、取り込んだ表示盤輝度データを蓄積する。データ蓄積部32は、たとえば1画面分の輝度測定データが蓄積した後、輝度測定データとしてアラーム監視装置4に送出する。
【0025】
図6はアラーム監視装置の構成例を示す図、図7はアラーム監視装置の映像・輝度演算器の構成例を示す図である。
アラーム監視装置4は、照度−輝度段階変換部41、映像・輝度演算器42、アラーム信号受信部43、故障判定部44およびモニタ45を有し、映像・輝度演算器42は、受信部46、演算部47および測定間隔設定部48を有している。
【0026】
照度−輝度段階変換部41は、照度センサ6が検出したLED表示盤1の周辺の輝度を表す照度データを受け、それを輝度段階データに変換する。輝度段階データは、映像制御装置3に送信され、LED表示盤1の画面全体の明るさを調節する面輝度信号の基になるデータである。
【0027】
映像・輝度演算器42では、受信部46が照度センサ6からの照度データを受け、表示盤周辺輝度データとして故障判定部44に送出する。受信部46は、また、映像制御装置3からの映像信号および面輝度信号を受け、映像信号の映像データおよび面輝度信号の輝度段階を演算部47に送出する。演算部47では、映像データおよび輝度段階を基にLEDランプ13が発光したときの理論上の輝度を計算し、比較用輝度データとして故障判定部44に送出する。
【0028】
映像・輝度演算器42では、測定間隔設定部48が輝度測定装置5による測定間隔を設定することができ、受信部46は、測定間隔設定部48によって設定された測定間隔の周期で輝度測定開始信号を輝度測定装置5に送出する。
【0029】
故障判定部44は、映像・輝度演算器42から表示盤周辺輝度データと、計算値である比較用輝度データとを受け、輝度測定装置5から測定値である輝度測定データを受ける。故障判定部44は、また、アラーム信号受信部43からLED表示盤1の電源異常等のアラーム信号を受ける。
【0030】
故障判定部44は、まず、輝度測定データを表示盤周辺輝度データで補正して表示盤周辺の明るさを考慮した測定データを算出し、次に、比較用輝度データを測定データと比較する。この比較は、LEDランプ13毎に行われる。故障判定部44は、計算上の輝度データと測定データとの比較の結果、両データの値がほぼ一致していれば、そのLEDランプ13は正常であると判断する。もし、両データの値の差が大きい場合、故障判定部44は、アラーム信号受信部43からのアラーム信号が対応するLEDランプ13に関するアラームであるかどうかを調べる。該当するLEDランプ13に関するアラームが発生していなければ、LEDランプ13自体の球切れと判断し、モニタ45に故障表示し、アラームが該当のLEDランプ13に関するものであれば、電源異常をモニタ45に表示する。
【0031】
図8は故障判定部にて比較される輝度データの構成例を示す図である。
故障判定部44において比較される計算上の輝度データおよび輝度測定データは、輝度段階データと、赤色映像データと、緑色映像データと、青色映像データとからなり、各色は、たとえば8ビットで構成され、それぞれクロックに従ってシリアルに伝送される。輝度データにおいて、輝度段階データは、フレームの始まりを合わせるための垂直同期信号に同期され、次に1ドット目の赤色映像データR1、1ドット目の緑色映像データG1、1ドット目の青色映像データB1、2ドット目の赤色映像データR2・・・と続き、nドット目の青色映像データBnがフレームの最後の輝度データとなる。そして、次の垂直同期信号に同期して輝度段階データと次のフレームを構成する3色の輝度データがシリアルに続いていくことになる。
【0032】
ここで、故障判定部44において行われる計算上の輝度データおよび輝度測定データの比較は、対応するドットの対応する色映像データ毎に行われ、これにより、LEDランプ13のそれぞれについて異常かどうかを判定することができる。
【0033】
図9は故障判定部の比較処理の一例を示す説明図である。
一例として、最初の2つのLEDランプ13を表示したときの故障判定の例を示す。なお、階調は、各色8ビット(0〜255)とし、輝度段階は、0〜31の32段階(0が最大、31が最小)あって、ここでは、変換された輝度段階は、0であったとしている。階調−輝度変換は、使用するLEDランプ13により異なる。また、表示盤周辺輝度は、150カンデラ毎平方メートルであったとしている。そして、故障判定は、比較用の計算値と測定値との差が±70%以上で故障と判断するとしている。
【0034】
図示の例では、映像編集装置2から送り出された映像信号の階調の値に対して輝度段階を考慮した輝度が演算部47において計算される。一方、輝度測定装置5が測定した輝度測定データに対しては、LED表示盤1の周辺の輝度を考慮した輝度が故障判定部44において計算される。これらの計算結果は、LEDランプ13の色毎に比較され、その差が±70%以上あるかどうかが故障判定部44において判断される。この例では、比較結果で誤差が±70%以上あるのは、1ドット目の赤色LED(R1)であることから、この1ドット目の赤色LED(R1)が故障と判断することができる。他のLED(G1、B1、R2、G2、B2)は、誤差が70%以内であるため、正常と判断することができる。
【0035】
1ドット目のLEDランプ13のように、実際に測定した輝度値が計算上の輝度値よりも十分小さい場合、LEDランプの球切れと判断される。また、実際に測定した輝度値が計算上の輝度値よりも十分大きい逆の場合には、当該LEDランプを駆動している回路がLEDランプを常時点灯状態にしてしまうような故障をしていると判断することができる。
【0036】
図10は画面表示例を示す図であって、(A)は起動時の画面表示例を示し、(B)は判定結果の画面表示例を示している。
起動したときのモニタ45の画面には、LED表示盤1に配置されたLEDランプ13のアドレスを示すマップ51と、運転履歴を表示するログ画面52とが表示されている。マップ51は、この例では、説明のために、5×4ドットの大きさの画面にしてあるが、実際の画面は、非常に大きく、1画面に収めることはできないので、幾つかの小領域に分割し、それを切り換えて表示するようにしている。たとえば、あるLEDランプ13の故障事象の発生に応答して、そのLEDランプ13を含む小領域に切り換えて表示することになる。また、LEDランプ13のどの色のLEDが故障したかは、マップ51上のアドレス表示部を故障したLEDの色で表示することにより、視認性を向上させることができる。LEDランプ13の電源に故障がある場合には、マップ51上のアドレス表示部を、たとえば点滅表示させることによって、色別の故障表示と区別して表示することができる。
【0037】
モニタ45の画面表示例では、図10の(A)に示した正常動作をしている表示のときに、LEDランプ13の故障が見つかると、図10の(B)に示したように、その故障したLEDランプ13の位置およびその故障したLEDの色がマップ51上に表示され、同時に、ログ画面52に、その詳細が文字情報によって表示される。図示の例では、故障したのは、LEDランプアドレスがB2のLEDランプ13であり、その中の赤色LEDが故障していることを通知している。これにより、点検作業員は、この映像表示システムの運用中に、どの表示位置にあるLEDランプ13が故障しているのかをあらかじめ知ることができるので、運用後に行われるLEDランプ13の交換作業を迅速に行うことができるようになる。
【0038】
図11は映像表示システムの故障検知動作を示すフローチャートである。
まず、アラーム監視装置4の故障判定部44において、故障判定は、1回の故障事象の検出によって故障と判定されることはないので、その故障事象が連続して何回発生したら故障と判断するかの回数が設定される(ステップS1)。次に、測定間隔設定部48によって設定された輝度測定間隔が経過したかどうかが判断され(ステップS2)、輝度測定間隔が経過していない場合は、経過するまで待つ。輝度測定間隔が経過した場合には、映像・輝度演算器42より輝度測定開始信号が出力される(ステップS3)。
【0039】
輝度測定開始信号の出力に応じて、一方では、映像・輝度演算器42が映像信号および面輝度信号から比較用輝度データを計算し(ステップS4)、照度データから表示盤周辺輝度データを計算する(ステップS5)。他方では、輝度測定装置5が輝度測定を開始するとともにデータ蓄積部32が輝度測定部31の測定した表示盤輝度データの取り込みを開始し(ステップS6)、データ蓄積部32に取り込まれた輝度測定データをアラーム監視装置4へ送信する(ステップS7)。
【0040】
次に、アラーム監視装置4では、故障判定部44から受けた比較用輝度データおよび表示盤周辺輝度データと、輝度測定装置5から受けた輝度測定データとを基に計算値と測定値との比較をドット単位で行う(ステップS8)。
【0041】
計算値と測定値との比較の結果、誤差が所定の値より大きくて故障と思われる箇所があるかどうかが判定される(ステップS9)。ここで、故障箇所がなければ、ステップS2に戻る。
【0042】
ステップS9において、故障箇所が見つかれば、故障判定部44は、その故障箇所を記憶する(ステップS10)。次に、その故障箇所における故障の連続発生回数がステップS1にて設定された回数以内かどうかが判定される(ステップS11)。故障箇所の連続発生回数が所定回数以内であれば、ステップS2に戻る。故障箇所の連続発生回数が所定回数を超えていれば、LED表示盤1の該当箇所からアラーム信号が来ているかどうかが判断される(ステップS12)。ここで、アラーム信号が来ていれば、故障箇所のLEDランプ13を駆動する電源の故障と確定され(ステップS13)、アラーム信号が来ていなければ、故障箇所のLEDランプ13の故障と確定される(ステップS14)。このようにして、LEDランプ13またはその電源の故障と確定されると、アラームがモニタ45に通知されて表示される。
【符号の説明】
【0043】
1 LED表示盤
2 映像編集装置
3 映像制御装置
4 アラーム監視装置
5 輝度測定装置
6 照度センサ
7 発光表示素子監視装置
11 分配器
12 表示制御基板
13 LEDランプ
14 アラーム監視基板
21 映像受信機器
22 映像送出機器
31 輝度測定部
32 データ蓄積部
41 照度−輝度段階変換部
42 映像・輝度演算器
43 アラーム信号受信部
44 故障判定部
45 モニタ
46 受信部
47 演算部
48 測定間隔設定部
51 マップ
52 ログ画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光表示素子により構成された大型表示盤と、前記大型表示盤に表示させる映像を編集する映像編集装置と、編集された映像を前記大型表示盤に送り出す映像制御装置とを備えた映像表示システムにおける前記大型表示盤の発光表示素子監視装置において、
前記大型表示盤を構成するすべての前記発光表示素子の輝度を個別に測定し、輝度測定データを出力する輝度測定装置と、
前記大型表示盤に送られる映像データから前記大型表示盤に表示したときの輝度を計算により求めた計算値と前記輝度測定データから得られた測定値とを比較し、前記計算値と前記測定値との誤差の大きさに応じて前記発光表示素子の故障状態を判定するアラーム監視装置と、
を備えていることを特徴とする大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項2】
前記アラーム監視装置は、前記大型表示盤から前記発光表示素子の異常を検出したときのアラーム信号を受けるよう構成され、前記発光表示素子が故障と判定されたときに、前記アラーム信号が故障と判定された前記発光表示素子の異常を表す信号かどうかを判断することによって前記発光表示素子の駆動部の故障状態を判定することを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項3】
前記アラーム監視装置は、大型表示盤の周辺の輝度を測定する照度センサから照度データを受けて前記測定値を前記照度データで補正するとともに、照度−輝度段階変換部を備え、前記照度データを対応する輝度段階データに変換して前記映像制御装置に送出することにより、前記計算値を求める前記映像データは、前記輝度段階データに基づいて生成された面輝度信号と一緒に前記映像制御装置から取得していることを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項4】
前記アラーム監視装置は、前記輝度測定装置に対して輝度測定開始信号を送出する間隔を設定する測定間隔設定部を備え、定期的に前記輝度測定データを取得して前記発光表示素子を監視するようにしたことを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項5】
前記アラーム監視装置は、連続発生回数を設定する手段を備え、同一の前記発光表示素子の故障が連続して前記連続発生回数を超えて発生した場合に、当該発光表示素子が故障している旨のアラーム通知をすることを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項6】
前記輝度測定装置は、前記大型表示盤の表示画面を2次元測定することによりすべての前記発光表示素子の輝度を表す輝度測定データを出力する輝度測定部と、前記アラーム監視装置からの測定開始信号に応じて前記輝度測定データの取り込みを開始して蓄積するとともに蓄積された前記輝度測定データを前記アラーム監視装置に送出するデータ蓄積部とを有していることを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項1】
複数の発光表示素子により構成された大型表示盤と、前記大型表示盤に表示させる映像を編集する映像編集装置と、編集された映像を前記大型表示盤に送り出す映像制御装置とを備えた映像表示システムにおける前記大型表示盤の発光表示素子監視装置において、
前記大型表示盤を構成するすべての前記発光表示素子の輝度を個別に測定し、輝度測定データを出力する輝度測定装置と、
前記大型表示盤に送られる映像データから前記大型表示盤に表示したときの輝度を計算により求めた計算値と前記輝度測定データから得られた測定値とを比較し、前記計算値と前記測定値との誤差の大きさに応じて前記発光表示素子の故障状態を判定するアラーム監視装置と、
を備えていることを特徴とする大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項2】
前記アラーム監視装置は、前記大型表示盤から前記発光表示素子の異常を検出したときのアラーム信号を受けるよう構成され、前記発光表示素子が故障と判定されたときに、前記アラーム信号が故障と判定された前記発光表示素子の異常を表す信号かどうかを判断することによって前記発光表示素子の駆動部の故障状態を判定することを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項3】
前記アラーム監視装置は、大型表示盤の周辺の輝度を測定する照度センサから照度データを受けて前記測定値を前記照度データで補正するとともに、照度−輝度段階変換部を備え、前記照度データを対応する輝度段階データに変換して前記映像制御装置に送出することにより、前記計算値を求める前記映像データは、前記輝度段階データに基づいて生成された面輝度信号と一緒に前記映像制御装置から取得していることを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項4】
前記アラーム監視装置は、前記輝度測定装置に対して輝度測定開始信号を送出する間隔を設定する測定間隔設定部を備え、定期的に前記輝度測定データを取得して前記発光表示素子を監視するようにしたことを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項5】
前記アラーム監視装置は、連続発生回数を設定する手段を備え、同一の前記発光表示素子の故障が連続して前記連続発生回数を超えて発生した場合に、当該発光表示素子が故障している旨のアラーム通知をすることを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【請求項6】
前記輝度測定装置は、前記大型表示盤の表示画面を2次元測定することによりすべての前記発光表示素子の輝度を表す輝度測定データを出力する輝度測定部と、前記アラーム監視装置からの測定開始信号に応じて前記輝度測定データの取り込みを開始して蓄積するとともに蓄積された前記輝度測定データを前記アラーム監視装置に送出するデータ蓄積部とを有していることを特徴とする請求項1記載の大型表示盤の発光表示素子監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−209637(P2011−209637A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79531(P2010−79531)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】
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