説明

天井走行車システム

【課題】天井空間を利用して、多数の物品を保管できるようにし、物品載置台が水平面で傾いて設置されていても載置台に合わせた姿勢で受け渡し、ロードポート等との間の物品の受け渡しを簡単な制御で実行でき、昇降する横移動手段を提供する。
【解決手段】天井走行車8の走行レール6の側方にサイドバッファ40を設けて、棚41,42を多段に配置する。天井走行車8には、リニアガイド32とボールネジ26等からなる昇降手段を設けて、横移動部16を昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は天井走行車システムに関し、特にその物品の保管能力の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは、天井走行車の走行レールの側方の天井空間内に、バッファを設けることを提案した(特許文献1)。この天井走行車システムでは、天井走行車に横移動部を設けて、昇降駆動部を走行レールに対して横方向に移動させ、サイドのバッファとの間で物品を受け渡しする。発明者はここで、サイドのバッファの保管能力を更に増すことを検討して、この発明に到った。
【特許文献1】特願2004−186312号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、天井空間を利用してより多くの物品を保管できるようにすることにある。
請求項2の発明での課題は、物品載置台が水平面内で傾いて設置されている場合も、物品を載置台に合わせた姿勢で受け渡すことができるようにすることにある。
請求項3の発明での課題は、ロードポートなどとの間の物品の受け渡しを、簡単な制御で実行できるようにすることにある。
請求項4の発明での課題は、横移動手段を昇降させるための具体的な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、天井空間に設けた走行レールの側方に物品載置台を設けると共に、天井走行車には昇降駆動部を前記載置台と走行レールの下方との間で横移動させるための横移動手段を設けたシステムにおいて、前記載置台には物品載置用の棚を多段に設けると共に、天井走行車には前記横移動手段を昇降させるための昇降手段を設けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、前記昇降駆動部を水平旋回させるための手段を設ける。水平旋回手段は、好ましくは横移動手段と昇降駆動部との間に設ける。
【0006】
また好ましくは、走行レールの下方のロードポートとの間で物品を受け渡しする場合、前記昇降手段を動作させずに、昇降駆動部で昇降台を昇降させて受け渡しする。
【0007】
特に好ましくは、前記昇降手段を、天井走行車の走行方向の前後に設けた少なくとも一対の昇降ガイドと被ガイド体、及び横移動部の昇降を駆動するための駆動手段とを含むように構成する。昇降ガイドと被ガイド体は、一方を天井走行車本体側に、他方を横移動部等の昇降する部材の側に設ける。駆動手段には、ボールネジや、ベルト、ロープ、ワイヤなどの部材、あるいはリニアモータなどを用いる。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、走行レールの側方に設けた載置台に多段に物品を保管して、天井走行車との間で物品を受け渡しできるので、天井空間を利用してより多くの物品を保管できる。
【0009】
請求項2の発明では、昇降駆動部を水平旋回させることができるので、物品載置台の物品載置部が水平面内で傾いて設置されている場合も、物品の受け渡しができる。
【0010】
請求項3の発明では、走行レールの下方のロードポートとの間で物品を受け渡しする場合、昇降手段を動作させずに、昇降駆動部で昇降台を昇降させて受け渡しするので、制御が簡単になる。
【0011】
請求項4の発明では、昇降ガイドと被ガイド体とで横移動手段の昇降をガイドし、駆動手段で横移動手段を昇降駆動できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0013】
図1〜図5に、実施例とその変形とを示す。図において、2は天井走行車システムで、クリーンルームなどの内部に設けられ、3は天井空間で、4はその下方の地上空間である。走行レール6は天井空間3に設けられ、7はその支柱で、8は天井走行車である。天井走行車8の走行部10は走行レール6内を走行し、通信受電部12は走行レール6から非接触給電などにより受電すると共に、通信線を兼ねる給電線などを利用して通信を行う。14は天井走行車8の本体フレームで、16は横移動部、18はθドライブ、20は昇降駆動部、22は昇降台で、物品24を把持/解放自在にチャックする。物品24は例えば半導体基板のカセットである。
【0014】
26は本体フレーム14側に設けたボールネジで、28はその駆動モータで、本体フレーム14の例えば下部などに設ける。横移動部16にはナット30を設けて、ボールネジ26の回転により昇降するようにし、本体フレーム14の走行方向前後に例えば一対のリニアガイド32,32を設けて、横移動部16側の被ガイド体34をガイドする。ボールネジ26〜被ガイド体34により横移動部16の昇降手段を構成し、昇降手段で横移動部16〜昇降台22を昇降させる。36は天井走行車8の走行方向の前後に設けた落下防止カバーで、その下部の爪を出没させることにより物品24の落下を防止する。天井走行車8が図1の例えば右から左へと走行するとすると、前側の落下防止カバーに先入品センサ37を設けて、サイドバッファ40の上下の棚41,42の先入品の有無を検出する。好ましくは先入品センサ37は検出ビームの向きを回動自在にして、上側の棚41と下側の棚42について、それぞれ先入品の有無を検出できるようにする。
【0015】
サイドバッファ40は走行レールの側方下部にあり、例えば2段の棚41,42を備えて物品24を上下に重ねて配置できるようにし、図1の鎖線で示すように、3段以上の棚を設けてもよい。そして棚41では物品24の底面を、天井走行車8で搬送中の物品の底面よりやや低い高さとする。ここでボールネジ26やリニアガイド32による昇降手段の昇降ストロークを、物品24の高さ程度にすると、サイドバッファ40側で2段に配置した物品24を受け渡しできる。昇降ストロークを2物品分の高さ程度にすると、サイドバッファ40側で物品24を3段に配置しても受け渡しできる。
【0016】
44は走行レール6の直下に設けた下方バッファで、46は図示しない処理装置に設けたロードポートであり、図1では下方バッファ44とロードポート46を上下に重ねて示すが、これらは平面視で重なり合わない位置に設けて、互いの干渉を防止する。47はサイドバッファ40の支柱、48は下方バッファ44の支柱である。
【0017】
図2に示すように、リニアガイド32と被ガイド体34は、天井走行車の走行方向の前後に一対設けるが、より多数設けても良く、また横移動部16側にリニアガイド32を設け、本体フレーム14側に被ガイド体34を設けても良い。ボールネジ26やモータ28、ナット30は、実施例では走行方向の前後一方に設けるが、走行方向の前後双方に設けても良い。
【0018】
横移動部16の機構を説明すると、50はボールネジ、54はフレーム52に取り付けたナットである。ベルト56はフレーム52に取り付けたプーリーと噛み合い、ベルト56の固定部58は横移動部16に固定され、固定部60はθドライブに固定されている。この結果ボールネジ50を駆動して、ナット54を移動させると、フレーム52が移動し、これに伴って固定部60はナット54の2倍のストロークで移動する。この結果、θドライブ18が横移動部16に対して横移動される。
【0019】
図3に示すθドライブ18では、ギア付きのリング62の下側に昇降駆動部を取り付け、このリングを回動モータ64により回動させて、昇降駆動部の向きを回動させる。昇降駆動部は360°回動できる必要はなく、所定の角度範囲で回動できればよい。
【0020】
サイドバッファ40の下段の棚42との間の物品24の受け渡しでは、ボールネジ26等の昇降手段を用いて横移動部16を下降させ、次いで横移動部16によりθドライブ18〜昇降台22を棚42上へ横移動させ、さらに昇降台22を昇降して、物品24を受け渡しする。最後の昇降台の昇降は、昇降駆動部20で行っても、あるいはボールネジ26等からなる昇降手段で行っても良い。昇降台22の棚42からの復帰は、前記の逆の手順で行う。サイドバッファ40の上段の棚41との間の物品の移載では、例えば昇降手段を用いず、横移動部16によりθドライブ18〜昇降台22を棚42上へ横移動させ、次いで昇降台22を昇降して、物品24を受け渡しする。この手順に代えて、横移動部16によりθドライブ18〜昇降台22を棚42上へ横移動させた後に、ボールネジ26等の昇降手段で昇降台22を昇降させても良い。なお天井走行車8内への復帰は前記の逆の手順で行う。
【0021】
ロードポート46との間の物品の受け渡しでは、昇降手段を用いず、昇降駆動部20のみを用いて昇降台を昇降させる。このため制御が簡単になる。下方バッファ44との間の移載でも、昇降手段を用いず昇降駆動部20のみで受け渡しを行うと、制御が簡単である。ただし例えば下方バッファ44の物品の載置面を下側の棚42の載置面と揃えるような場合、ボールネジ26等の昇降手段のみを用いて移載を行うことも可能である。
【0022】
図4に示すように、棚41,42にはキネマチックピン49などを設けて、物品の底部の溝などと係合してガイドできるようにする。棚41,42にはこれ以外にIDリーダや、天井走行車側から先入品の有無を検出する際に、先入品無しを示すためのカラーテープ、あるいは天井走行車との通信用の通信端末やメモリなどを設けても良い。3本のキネマチックピン49の取り付け角度が標準値から外れていることに対しては、天井走行車8のθドライブ18で昇降駆動部20を介して昇降台22を回動させることで対処する。図4では、上下の棚41,42を共通の支柱47で支持したが、図5のサイドバッファ70のように、上側の棚71を支柱73で、下側の棚72を支柱74で、別々に支持しても良い。
【0023】
実施例ではボールネジ26を用いて横移動部16を昇降駆動したが、ベルトやロープ、ワイヤあるいはリニアモータなどで昇降駆動してもよい。実施例では横移動部16はθドライブ18を、走行レールの横方向の一方にのみ出没させる。そこで横移動部16の他方の側面はフリーで、この部分にリニアガイド32やボールネジ26などを設けてもよい。またθドライブ18は設けなくても良い。
【0024】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) サイドバッファ40に多段に物品を重ねて配置できるので、天井走行車システムでの物品の保管能力が増す。
(2) 昇降手段により横移動部を昇降させるので、サイドバッファの任意の段の棚と直接物品を受け渡しできる。
(3) θドライブで物品の向きを回動させることができるので、サイドバッファでのキネマチックピン49の配置などが傾いている場合でも、受け渡しに支障が生じない。
(4) ロードポート46との間の受け渡しでは、昇降手段を用いず、昇降駆動部20のみを用いて昇降台を昇降させる。このため制御が簡単になる。下方バッファ44との間の移載でも、昇降手段を用いず昇降駆動部20のみで受け渡しを行うと、制御が簡単である。ただし、例えば下方バッファ44の物品の載置面を下側の棚42の載置面と揃えるような場合、ボールネジ26等の昇降手段のみを用いて移載を行うことも可能である。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例の天井走行車システムの要部ブロック図
【図2】実施例で用いた天井走行車を、横移動部の上部で切り欠いて示す水平方向部分断面図
【図3】実施例で用いた天井走行車のθドライブの構造を示す図
【図4】実施例で用いたサイドバッファの斜視図
【図5】変形例のサイドバッファの斜視図
【符号の説明】
【0026】
2 天井走行車システム
3 天井空間
4 地上空間
6 走行レール
7 支柱
8 天井走行車
10 走行部
12 通信受電部
14 本体フレーム
16 横移動部
18 θドライブ
20 昇降駆動部
22 昇降台
24 物品
26 ボールネジ
28 モータ
30 ナット
32 リニアガイド
34 被ガイド体
36 落下防止カバー
37 先入品センサ
40 サイドバッファ
41,42 棚
44 下方バッファ
46 ロードポート
47,48 支柱
49 キネマチックピン
50 ボールネジ
52 フレーム
54 ナット
56 ベルト
58,60 固定部
62 ギア付きリング
64 回動モータ
70 サイドバッファ
71,72 棚
73,74 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井空間に設けた走行レールの側方に物品載置台を設けると共に、天井走行車には昇降駆動部を前記載置台と走行レールの下方との間で横移動させるための横移動手段を設けたシステムにおいて、
前記載置台には物品載置用の棚を多段に設けると共に、天井走行車には前記横移動手段を昇降させるための昇降手段を設けたことを特徴とする、天井走行車システム。
【請求項2】
前記昇降駆動部を水平旋回させるための手段を設けたことを特徴とする、請求項1の天井走行車システム。
【請求項3】
走行レールの下方のロードポートとの間で物品を受け渡しする場合、前記昇降手段を動作させずに、昇降駆動部で昇降台を昇降させて受け渡しするようにしたことを特徴とする、請求項1または2の天井走行車システム。
【請求項4】
前記昇降手段を、天井走行車の走行方向の前後に設けた少なくとも一対の昇降ガイドと被ガイド体、及び横移動部の昇降を駆動するための駆動手段とを含むように構成したことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの天井走行車システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−282382(P2006−282382A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108744(P2005−108744)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】