説明

天端位置決め具

【課題】生コンクリート内への挿入が簡単にできて、コンクリートの固化時にも安定状態を維持することができ、しかも基礎等のコンクリート構造物の天端出しが簡単に行える天端位置決め具を提供すること。
【解決手段】三角形状の翼体11の複数を一体化して、各翼体11が一体化されている中心部の上端にネジ溝12を形成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを打設して構築される土台や基礎等のコンクリート構造物を施工する際に利用されて、このコンクリート構造物の天端面を規定するために使用される天端位置決め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、完全に水平な天端上面が必要な基礎をコンクリートによって構築する場合、コンクリートが固化する際の収縮や骨材の存在等によって、打設面が完全な平面にはならないことに注意が必要である。そこで、一般的には、図1にも示すように、まずコンクリートによって設計天端よりも少し低い天端のコンクリート構造物を施工し、その上に、モルタルを打設してコテで均して天端面を形成するか、流動性に優れて完全な平面が形成できる「レベリング材」を流し込み、このレベリング材によって完全水平な天端面を形成するようにしている。なお、レベリング材は、生コンクリートの流動性を良くしたものと考えればよいものであるが、コンクリート程の収縮がないものである。
【0003】
このようなモルタルのコテ均しは勿論、レベリング材の流し込みにあたっては、当然にその流し量が問題であり、設計された通りの水平面(天端面)を形成するようにしなければならない。そこで、従来では、特許文献1〜特許文献3に記載されているような位置決め具が採用されてきているのである。
【特許文献1】特開平10−252278号公報、要約、代表図
【特許文献2】特開平07−189489号公報、要約、代表図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された「柱脚・土台のレベル調整金具」は、「柱脚や土台を基礎コンクリート上へ設置する際のレベル出しが容易で、しかも安価なレベル出し金具を提供する」ことを目的としてなされたもので、図6に示すように、「基礎コンクリート11へ埋設される高ナット1の下端へ、その高ナット1のネジ穴3を塞ぐとともに沈下防止用の底板2を固着し、かつ、高ナット1の上端から、廻り止めナット5を螺合した調整ボルト4をねじ込むようにしたもの」といった構成を有したものである。
【0005】
この特許文献1の「柱脚・土台のレベル調整金具」は、「沈下防止用の底板2」を有するものであって、この「沈下防止用の底板2」によって「高ナット1」を垂直に支持するようにしたものである。つまり、この特許文献1の「レベル調整金具」は、「沈下防止用の底板2」を打設された直後のコンクリート内に挿入するものであり、この挿入は「底板2」がコンクリート内の骨材に邪魔されて非常に困難になると考えられる。
【0006】
また、特許文献2に記載された「天端出し補助具」は、「基礎工事での基礎の天端ならしに際して利用される天端出し装置の補助具において天端出し補助具の、コンクリートないしはモルタルへの埋入を容易にし、天端出し作業の簡易化ないしは天端ならしの高精度を実現する」ことを目的として、図6に示すように、「長手棒状の補助具本体に、その上端部に開口する受ネジ穴を具備させ、この受ネジ穴に調整ネジ体を進退可能に螺合させると共に、補助具本体1の上部に、補助具本体に対し直角方向、水平に延びる上羽根部2が付設され、補助具本体の下部に、補助具本体に対し直角方向、垂直に延び且つ下向きに先鋭に設けられた下羽根部が付設されてなる」構成を有したものである。
【0007】
しかしながら、この特許文献2に記載された「天端出し補助具」では、「補助具本体の下部に、補助具本体に対し直角方向、垂直に延び且つ下向きに先鋭に設けられた下羽根部3」が付設してあるため、この「下羽根部3」が、上述した特許文献1の「底板2」と同様に、当該補助具のコンクリート内への挿入を非常に困難にするものと思われる。
【0008】
そこで、本発明者等は、簡単に構成できて、生コンクリート内への挿入が簡単でコンクリートの固化時にも安定しており、基礎等のコンクリート構造物の天端出しが簡単に行えるような治具とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0009】
すなわち、本発明の目的とするところは、生コンクリート内への挿入が簡単にできて、コンクリートの固化時にも安定状態を維持することができ、しかも基礎等のコンクリート構造物の天端出しが簡単に行える天端位置決め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良の形態の説明中において使用する符号を付して説明すると、
「コンクリート20を打設して形成されるコンクリート構造物の天端面を決めるための天端位置決め具10であって、
三角形状の翼体11の複数を一体化して、各翼体11が一体化されている中心部の上端にネジ溝12を形成したことを特徴とする天端位置決め具10」
である。
【0011】
すなわち、この請求項1に係る天端位置決め具10は、図1〜図4に示すように、複数(後述する最良形態では2枚または4枚)の翼体11を一体化し、これらの翼体11の中心上端に位置決めネジ13をネジ込むためのネジ溝12を形成したという単純な形状のものであり、打設直後のコンクリート20内に押し込むものであるから、その下端が尖ったものとなるようにしたものである。なお、当該天端位置決め具10はコンクリート20内に差し込まれるものであるから、「下端」とは、図2にも示すように、この差し込まれていく部分をいうものであり、「上端」とはその反対側を言うものである。
【0012】
図1及び図2に示す天端位置決め具10では、2枚の翼体11を一体化した全体形状が板状となるようにしたものであり、その中心上部に位置決めネジ13をネジ込むためのネジ溝12を形成したものである。このネジ溝12については、図1中の仮想線にて示すように、各翼体11から上方に突出させた補助溝12aを追加することもなされるものである。この補助溝12aは、これによって位置決めネジ13の螺進螺退操作の安定化を図るものである。
【0013】
また、各翼体11の上面については、図1及び図2中の実線にて示すように、水平状態の水平面11aとなるようにしたり、あるいは、図1及び図2中の仮想線にて示すように、外側下方に傾斜した傾斜面11bとなるようにして実施される。水平面11aとしたときには、コンクリート20の中に完全に挿入されたか否か、つまり図2中の埋設面22b下になったか否かが明確に分かるし、傾斜面11bとしたときには、各翼体11がコンクリート20内に埋設される部分を多くして、コンクリート20内での当該天端位置決め具10の安定化を確実にすることができる。
【0014】
さらに、図4に示す天端位置決め具10では、各翼体11の厚さを厚くして、ネジ溝12が各翼体11内に形成できるようにしたものである。このようにすれば、各翼体11が厚くなるけれども、位置決めネジ13のためのネジ溝12の形成が確実にでき、位置決めネジ13の螺進螺退操作を安定して行うことができるものとすることができるのである。
【0015】
図3に示す天端位置決め具10では、直角三角形状の翼体11の複数を、その直角部分が上端となり直角を挟む二辺が垂直部分及び水平部分となるようにしながら一体化したものであるが、これは最終的に出来上がった形状を表現したものであり、別個独立して形成された直角三角形状の翼体11の複数を接着剤を利用して一体化するという意味ではない。
【0016】
つまり、この天端位置決め具10の製造を行うには、所謂プラスチックスを材料として一体成形するのであるから、最終成型物として見たときに、複数の直角三角形状の翼体11が存在したようになっているのである。
【0017】
そして、図3に示した天端位置決め具10においても、上述したような翼体11を複数一体化した形状を有している結果、その下端部が尖ったものとなっている。この下端が尖っていることは、打設直後の生コンクリート20内に当該天端位置決め具10を挿入する際に、挿入の邪魔になる骨材を押し退ける作用を発揮するのであり、挿入を容易にするという重要な機能を発揮するのである。
【0018】
この天端位置決め具10、あるいはこれを構成している各翼体11の下端が尖っているということは、各翼体11の上端は、文字通り「翼」として広がっているということを意味し、挿入直後においては、各翼体11が当該天端位置決め具10の生コンクリート20内で傾くのを防止する。また、各翼体11は薄いものとして形成してあるため、生コンクリート20から浮いてしまう程の浮力を受けるものでもない。
【0019】
さらに、各翼体11は、鉛直方向を軸とする回転力(ネジ溝12に位置決めネジ13をネジ込む場合に発生する)に対する抵抗力を発揮し、打設されたコンクリート20が固化すればこれに対する一体化を確実にできる表面積を有するから、位置決めネジ13の回転調整操作を安定して行うことができる。
【0020】
なお、この請求項1の天端位置決め具10は、位置決めネジ13を有してはいないが、ネジ溝12の形状を一般的に市販されている位置決めネジ13に合う物としておけば、別に用意したネジを使用することができる。
【0021】
従って、この請求項1の天端位置決め具10は、生コンクリート20内への挿入が簡単にできて、コンクリート20の固化時にも安定状態を維持することができ、しかも基礎等のコンクリート構造物の天端出しが簡単に行えるものとなっているのである。
【0022】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の天端位置決め具10について、
「ネジ溝12に位置決めネジ13を取り付けたこと」
である。
【0023】
すなわち、この請求項2の天端位置決め具10は、上述したネジ溝12に位置決めネジ13を取り付けたものであり、この位置決めネジ13のネジ溝12に対する進退量を調整することにより、設計されたレベリング材21の表面位置をその上端で示すようにするものである。
【0024】
従って、この請求項2の天端位置決め具10も、生コンクリート20内への挿入が簡単にできて、コンクリート20の固化時にも安定状態を維持することができ、しかも基礎等のコンクリート構造物の天端出しが簡単に行えるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0025】
以上、詳述した通り、本発明においては、
「コンクリート20を打設して形成されるコンクリート構造物の天端面を決めるための天端位置決め具10であって、
三角形状の翼体11の複数を一体化して、各翼体11が一体化されている中心部の上端にネジ溝12を形成したこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、生コンクリート20内への挿入が簡単にできて、コンクリート20の固化時にも安定状態を維持することができ、しかも基礎等のコンクリート構造物の天端出しが簡単に行える天端位置決め具10を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、上記のように構成した各発明を、図面に示した最良の形態である天端位置決め具10について説明すると、図1には、本発明に係る天端位置決め具10の斜視図が示してある。
【0027】
この天端位置決め具10は、その全体をプラスチックスを材料として一体成形したものであり、複数(2枚あるいは4枚)の翼体11と、これらの翼体11の上端に位置する部分に形成したネジ溝12とを備えたものである。勿論、ネジ溝12としては、これと同様な機能を有した金属製のナットのようなメネジ部材を使用して実施してもよいものであり、このようなメネジ部材を使用する場合には、これを当該天端位置決め具10の上端中心にインサート成形すればよい。
【0028】
図1及び図2に示した天端位置決め具10では、2枚の翼体11を一体化した全体形状が板状となるようにしたものであり、その中心上部に位置決めネジ13をネジ込むためのネジ溝12を形成したものである。このネジ溝12については、図1中の仮想線にて示したように、各翼体11から上方に突出させた補助溝12aを追加することもなされる。
【0029】
また、各翼体11の上面については、図1及び図2中の実線にて示したように、水平状態の水平面11aとなるようにしたり、あるいは、図1及び図2中の仮想線にて示すように、外側下方に傾斜した傾斜面11bとなるようにして実施される。
【0030】
さらに、図4に示す天端位置決め具10では、各翼体11の厚さを厚くして、ネジ溝12が各翼体11内に形成できるようにしたものである。このようにすれば、位置決めネジ13のためのネジ溝12の形成が確実にでき、位置決めネジ13の螺進螺退操作を安定して行うことができる。
【0031】
図3に示した天端位置決め具10の各翼体11は、これを独立して見た場合直角三角形状のものであり、図1及び図2に示したように、その直角部分が上端中央となり、この直角部分を挟む二辺が垂直部分及び水平部分となる状態で、その複数が一体化されることになるものである。そして、各翼体11が一体化されている中心部の上端に、上述したネジ溝12を形成したのである。
【0032】
また、各翼体11の上下方向の長さは、5cm〜10cm程度であり、各翼体11の横方向の最大部分は、1cm〜3cm程度であり、天端位置決め具10全体としてみた場合、上端の幅が2cm〜7cm程度となるものである。各翼体11の厚さについては、0.1mm〜1mm程度と薄く形成したものである。
【0033】
位置決めネジ13については、市販されているものを使用したもので、深さ2cm〜5cm程度のネジ溝12に対して螺合できるものである。勿論、この位置決めネジ13のネジ溝12に対するネジ込み量によってその上端の位置調整を行い、この調整された位置決めネジ13の上端により、コンクリート20上に打設されるレベリング材21の面位置の指示を行うのであるから、十分長いものを使用すると有利である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る天端位置決め具の拡大斜視図である。
【図2】同天端位置決め具の2つをコンクリート内に挿入して、その上にレベリング材を打設した状態の断面図である。
【図3】本発明に係る別の天端位置決め具の拡大斜視図である。
【図4】本発明に係るさらに別の天端位置決め具の正面図である。
【図5】従来の技術を示す斜視図である。
【図6】従来の他の技術を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 天端位置決め具
11 翼体
11a 水平面
11b 傾斜面
12 ネジ溝
12a 補助溝
13 位置決めネジ
20 コンクリート
21 レベリング材
22a 上面
22b 埋設面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設して形成されるコンクリート構造物の天端面を決めるための天端位置決め具であって、
全体形状が三角形状の翼体の複数を互いに一体化したものとなるようにするとともに、各翼体が一体化されている中心部の上端にネジ溝を形成したことを特徴とする天端位置決め具。
【請求項2】
前記ネジ溝に位置決めネジを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の天端位置決め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−328788(P2006−328788A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153594(P2005−153594)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000128038)株式会社エヌ・エス・ピー (33)
【Fターム(参考)】