説明

太陽光発電システム

【課題】一部のアレイの発電特性が低下した場合でも、システム全体としての発電特性は最適な状態に維持する。
【手段】複数のアレイを有する太陽光発電装置1と、複数の二次電池を有する蓄電装置2を有する。太陽光発電装置1と蓄電装置2のそれぞれにDC/DC変換器3,4を設け、これらのDC/DC変換器3,4を接続すると共に、各DC/DC変換器をAC/DC変換器5に接続して、1つの発電・蓄電ユニットを構成する。前記ユニットを複数用意し、各ユニットU1〜UnをそれぞれのAC/DC変換器を介して配電系統7に接続する。各ユニットの太陽光発電装置1には、その出力特性が最大になるように最大電力点追従制御を行う制御部32を設ける。各ユニットの蓄電装置2には、蓄電池側の電圧を検出して、その充放電制御を行う制御部42を設ける。各ユニットの制御部32,42と接続され、その充放電及び出力制御を行う統括制御装置6を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置と蓄電装置とを有する太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
メガソーラー等の大規模な太陽光発電装置において、その出力変動の抑制をバッテリで行う場合、一般には、大規模の太陽光発電装置と大規模のバッテリに対してそれぞれ対応した出力容量のAC/DC変換器を用意し、太陽光発電装置とバッテリ間は交流で接続する。
【0003】
一方、従来から、太陽光発電装置においては、日照の変化などによる電力特性の変化に対し、太陽電池の出力電力が常に最大になるよう、電圧と電流の最適動作点に追従して、制御する技術が採用されている。
この技術は、MPPT (Maximum Power Point Tracking)と呼ばれる。このMPPT技術では、電力はセンサで得られた電流・電圧値から発電特性のピークを計算し、発電特性のピークにおいて電力の傾きがゼロになる方向へ、発電装置の動作点を微小に制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−5543号公報
【特許文献2】特開平11−214735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、太陽光発電装置のアレイ全体を対象としてMPPT制御を行うため、ゴミ、汚れ、日陰などにより一部のアレイで発電電力が下がると、発電特性が複数のピークを持つようになる。その結果、動作点の基準となる発電特性のピークを正しく特定できなくなり、システム全体の電力損失に繋がる。
【0006】
また、従来技術では、1台の変換器にすべてのバッテリが接続されていたため、バッテリは一種類しか利用できず、特性の異なるバッテリは接続できない。そのため、従来技術では、発電装置の出力特性、電力の使用状況に合わせたバッテリ特性の最適化が難しい。
【0007】
このように、従来技術では、1つの太陽光発電装置と1組のバッテリ装置をそれぞれの装置に設けたAC/DC変換器を利用して接続している。そのため、発電量とバッテリの充放電を協調しながら、しかも交流系統で出力変動の抑制を行うという、困難な制御が要求されていた。
【0008】
本実施形態の目的は、日陰等の影響で一部のアレイの発電特性が低下した場合でも、システム全体としての発電特性は最適な状態に維持することが可能な太陽光発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の太陽光発電システムは、次の構成を有することを特徴とする。
(1) 複数のアレイを有する太陽光発電装置と、複数の二次電池を有する蓄電装置を有する。
(2) 前記太陽光発電装置と蓄電装置のそれぞれにDC/DC変換器を設け、これらのDC/DC変換器を接続すると共に、各DC/DC変換器をAC/DC変換器に接続して、1つの発電・蓄電ユニットを構成する。
(3) 前記ユニットを複数用意し、各ユニットをそれぞれのAC/DC変換器を介して配電系統に接続する。
(4) 各ユニットの太陽光発電装置には、その出力特性が最大になるように最大電力点追従制御を行う制御部を設ける。
(5) 各ユニットの蓄電装置には、太陽光発電装置と接続される直流配線の電圧を検出し、その電圧を所定の範囲に制御するための充放電制御を行う制御部を設ける。
(6) 各ユニットの制御部と通信によって接続され、各ユニットの充放電及び出力制御を行う統括制御装置を設ける。
(7) 統括制御装置は、各ユニットの太陽光発電装置の出力値に基づいて、システム全体の出力目標値を算出し、これを各ユニットのAC/DC変換器に送信する。
(8) 各ユニットのAC/DC変換器には、統括制御装置から受信した出力目標値に基づいて系統連係を行うために、AC/DC変換器を制御する制御部を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態の概略を示す配線図である。
【図2】第1実施形態における各部の詳細を示す配線図である。
【図3】太陽電池発電装置におけるMPPT制御の動作を示すグラフである。
【図4】太陽電池発電装置において出力目標値を算出する方法の一例を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態を示す配線図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す配線図である。
【図7】本発明の第4実施形態を示す配線図である。
【図8】本発明の第5実施形態を示す配線図である。
【図9】本発明の第6実施形態を示す配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
1.第1実施形態
(1)実施形態の構成
(a) 全体構成
【0013】
図1に示すように、本実施形態の太陽光発電システムは、複数の発電・蓄電ユニット(以下、ユニットという)U1〜Unから構成されている。各ユニットU1〜Unは、複数のアレイ1a〜1nを有する太陽光発電装置1と、複数のバッテリパック2a〜2nを有する蓄電装置2を有する。
【0014】
太陽光発電装置1と蓄電装置2のそれぞれにDC/DC変換器3,4を設け、これらのDC/DC変換器3,4同士を接続する。このDC/DC変換器3,4を、同じユニット内に設けたAC/DC変換器5に接続する。
【0015】
前記複数のユニットU1〜Unは、それぞれのAC/DC変換器5の出力側から延長された交流系統の配線によって並列に接続され、その配線が変圧器7aを介して配電系統7に接続されている。
【0016】
各ユニットU1〜UnのDC/DC変換器3,4及びAC/DC変換器5には、ユニット外部に設けられた統括制御装置6が接続されている。すなわち、各ユニットU1〜UnのDC/DC変換器3,4及びAC/DC変換器5には、太陽光発電装置1と蓄電装置2の運転を制御するための制御部が設けられ、これらの制御部は、通信部を介し通信線により前記統括制御装置6と接続され、制御情報の送受信が行われる。
【0017】
(b) 各部の詳細な構成
以下、本実施形態の各装置について、その詳細を図2により説明する。
【0018】
各ユニットの太陽光発電装置1のDC/DC変換器3は、変換器本体31と、太陽光発電装置1の出力特性が最大になるように最大電力点追従制御を行う制御部32を有する。この制御部32は、統括制御装置6、蓄電装置側のDC/DC変換器4及びAC/DC変換器5との間で通信を行う通信部33を有する。また、DC/DC変換器3は、各アレイ1a〜1nの出力電流及び電圧を計測するセンサ34を有する。
【0019】
各ユニットの蓄電装置2の各バッテリパック2a〜2nは、それぞれ複数のバッテリを接続して成る二次電池列21を有する。各バッテリパック2a〜2nは、二次電池列21を構成する各バッテリの充放電を制御する制御部22と、この制御部22とDC/DC変換器4との間で制御情報を送受信する通信部23を有する。この通信部23には、二次電池列21を構成する各バッテリの出力電流及び電圧が入力される。
【0020】
各バッテリパック2a〜2nは、管理部24を有する。この管理部24は、前記制御部22及び通信部23と接続され、DC/DC変換器4からの充放電指令並びに個々のバッテリの充放電状態を基に、二次電池列21を構成する個々のバッテリの充放電制御及びバッテリパック全体の充放電制御を行う。すなわち、これら制御部22、通信部23及び管理部24が、各バッテリパック2a〜2nのバッテリマネージメントユニット(BMU)を構成している。
【0021】
各ユニットの蓄電装置2に設けられたDC/DC変換器4は、変換器本体41による入出力電圧の変換と、各バッテリパック2a〜2nの充放電を行う制御部42を有する。この制御部42は、統括制御装置6、太陽光発電装置側のDC/DC変換器3及びAC/DC変換器5との間で、各バッテリパック2a〜2nの充放電情報や制御情報を送受信する通信部43を有する。
【0022】
そのため、通信部43は、DC/DC変換器4の入出力電流や電圧を検出するセンサ44、及び各バッテリパック2a〜2nのバッテリマネージメントユニットに設けられた通信部23にも接続されている。
【0023】
各ユニットにおけるAC/DC変換器5の制御部52は、系統連係を行うように、統括制御装置6から送信された出力目標値となるようにAC/DC双方向インバータ51を制御する。
【0024】
AC/DC双方向インバータ51は、制御部52に出力値を制御され、太陽光発装置1側のDC/DC変換器4ならびにバッテリパック2側のDC/DC変換器4から出力された直流電圧を交流電圧に変換し出力する。
【0025】
また、AC/DC変換器5は、統括制御装置6、太陽光発電装置側のDC/DC変換器3及び蓄電装置側のDC/DC変換器4との間で、充放電情報や制御情報を送受信する通信部53を有する。
【0026】
統括制御部6は、管理部61と通信部63を有する。管理部61は、各ユニットU1〜UnのAC/DC変換器5の通信部と通信部63を経由して接続され、各ユニットU1〜Unの充放電及び出力制御と、各ユニットU1〜Unと配電系統7に対する出力制御を行う。
【0027】
そのため、管理部61は、各ユニットの太陽光発電装置の出力値に基づいて、システム全体から送電系統7に対する出力目標値を算出する演算部(図示せず)を有する。この管理部61は、演算部において算出した出力目標値Pを、通信部63を経由して、各ユニットU1〜UnのAC/DC変換器5に送信する。
【0028】
統括制御部6は、各ユニットU1〜Unを構成する各太陽光発電装置1の出力情報、及び各蓄電装置2に関する充放電情報を監視し、管理部61に保存及び表示する。これにより、各バッテリパック2a〜2nに設けられた二次電池列を構成する各電池のSOC(State Of Charge)や寿命の管理を行う。
【0029】
また、管理部61は各ユニットU1〜Unから取得した情報に基づいて、各バッテリパック2a〜2nの中から、充放電を行うバッテリパックを決定し、直流系統安定化に利用できるバッテリパックを把握する。すなわち、管理部61は、各ユニットU1〜UnのDC/DC変換器4から受信した直流電圧変動の早さに応じて、バッテリパック2a〜2nを使い分ける。
【0030】
(3)実施形態の作用
【0031】
(a) 太陽光発電装置の作用
各ユニットU1〜Unの太陽光発電装置1では、各太陽光発電装置1が有するアレイ1a〜1nの発電した電力を、そのユニットのDC/DC変換器3に出力する。
【0032】
この場合、太陽光発電装置1のDC/DC変換器3は、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行う。このMPPT制御は、最大電力点追従制御と呼ばれ、公知の技術である。図3は、MPPT制御の動作原理を示すグラフである。このグラフの縦軸は太陽光発電装置1の出力電圧を、横軸はDC/DC変換器3の出力電圧を示す。このグラフに示すように、日射強度が低い場合と高い場合とでは、最適動作点となる出力電圧が異なる。そこで、DC/DC変換器3の制御部32は、日射強度に合わせて太陽光発電装置1からの出力電圧を制御する。
【0033】
このようにして、DC/DC変換器3の制御部32はMPPT制御により太陽光発電装置1からの出力電圧を制御する。その後、DC/DC変換器3の変換器本体31は、制御部32の指令に基づいて、前記のようにして得られた太陽光発電装置1からの出力電圧を、所定の直流電圧に変換する。
【0034】
また、各ユニットU1〜UnのDC/DC変換器3は、センサ34等から得られた各ユニットU1〜Unの太陽光発電装置1の出力値を、通信部33を経由して、統括制御装置6及び各ユニットU1〜UnのAC/DC変換器4へ送信する。なお、出力値などのデータの送受信は、各機器間で直接行ってもよいし、統括制御装置6を経由しても良い。
【0035】
(b) 蓄電装置の作用
蓄電装置2は、太陽光発電装置1が発電した電力の貯蔵と安定供給を行うためのものである。太陽光発電装置1の出力は、太陽光発電装置のDC/DC変換器3及び蓄電装置2のDC/DC変換器4を経由して、直流系統により蓄電装置2の各バッテリパック2a〜2nに送られる。
【0036】
蓄電装置2のDC/DC変換器4は、直流系統の電圧をセンサ44で検出し、AC/DC変換器5側に接続された直流系統の電圧が一定範囲内に収まるよう、各バッテリパック2a〜2nの充放電制御を行う。
【0037】
すなわち、各バッテリパック2a〜2nの管理部24は、統括制御装置6から二次電池列を構成する各電池のSOC(State Of Charge)や寿命に関する情報を受信し、その受信データに基づいて、個々の二次電池の充放電を制御する。これにより、各バッテリパック2a〜2nは、構成する二次電池の性質、容量などに応じて、異なる充放電特性を示すことになる。
【0038】
このように、各バッテリパック2a〜2nの充放電特性は異なるため、各バッテリパック2a〜2nからの出力電圧も異なる。これらの出力電圧に関する情報は、通信部23及び43を経由してDC/DC変換器4の制御部42に送信される。制御部42では、各バッテリパック2a〜2nからの情報とDC/DC変換器4の出力側に設けたセンサ44からの情報(DC/DC変換器4の出力電圧)に基づいて、各バッテリパック2a〜2nからの出力電圧を変換し、センサ44によって検出した直流系統の電圧が一定範囲内に収まるように制御する。
【0039】
なお、前記のようにバッテリパック側の直流電圧は個々のパックで異なるが、本実施の形態では、個々のバッテリパック2a〜2nの電圧を検出したり、利用することはない。すなわち、太陽光発電装置1に接続される側の直流配線には規定の範囲があり、蓄電装置2のDC/DC変換器4は各パックで異なる直流電圧と前記直流配線側の電圧との間の変換を、パックごとに独立して行う。
【0040】
このように本実施の形態では、太陽光発電装置1の発電量とAC/DC変換器5で交流に返す電力量の割合により、前記直流配線電圧が変動してしまうが、その変動が規定の範囲に収まるよう、蓄電装置2のDC/DC変換器4がバッテリパック2a〜2nとの間で充放電を行う。
【0041】
この場合、各バッテリパックを構成する二次電池の充放電及び各バッテリパック2a〜2nからAC/DC変換器5に対する出力電圧の制御は、各ユニットU1〜UnのDC/DC変換器4にて、ユニットごとに独立して制御が可能である。
【0042】
(c) AC/DC変換器の作用
蓄電装置2のDC/DC変換器4は、前記のようにAC/DC変換器5に接続されている。そのため、DC/DC変換器4の出力は、直流系統を経由して、AC/DC変換器5に送られ、AC/DC変換器5において、系統連係のための交流に変換される。なお、蓄電装置2の放電時には、前記太陽光発電装置1のDC/DC変換器3からの電力も、AC/DC変換器5に送られ、AC/DC変換器5において、系統連係のための交流に変換される。
【0043】
AC/DC変換器5の制御部52は、統括制御装置6から指示された出力目標値Pを受け取り、その指示に従ってAC/DC変換器本体51を制御し、系統連係を行う。この場合、各ユニットU1〜Unは、変圧器7aを介して配電系統7に並列に接続されているため、各ユニットU1〜Unは独立して系統連係を行う。
【0044】
(d) 統括制御装置6の作用
統括制御装置6の管理部61に設けられた演算部は、太陽光発電装置1のDC/DC変換器3から送信された出力観測データを用いて、システムとしての出力目標値Pを算出する。この出力目標値Pは、前記のようにAC/DC変換器5の制御部52に送られ、制御部52によって制御されたAC/DC変換器本体51が、直流系統の電力を系統の規格にあった交流に変換し、系統連係を行う。
【0045】
この出力目標値の算出方法には、移動平均法(特許文献1を参照)や変動幅中心法などが良く知られている。図4は、移動平均法の原理を示すグラフである。このグラフの縦軸は太陽光発電装置の出力電圧、横軸は時間の経過を示すものである。このグラフに示すように、移動平均法では、一定の間隔(t−5〜t)で太陽光発電装置(PV)の出力を計測し、その計測値の平
均値Pを算出することで、出力目標値を得ている。
【0046】
この統括制御装置6は、その通信部63を経由して、各ユニットU1〜Unの太陽光発電装置1、蓄電装置2及びそれらのDC/DC変換器3,4に接続されている。そして、統括制御装置6の管理部61により、前記のような各機器の情報の取得、充放電の制御等を行う。
【0047】
(4)実施形態の効果
本実施形態は、次のような効果を有する。
(a) 太陽光発電装置1と蓄電装置2を、DC/DC変換器3,4を介して小規模なユニットU1〜Unで接続し、全体のシステムを交流で連携することにより、直流側のリアルタイムの状態を見ながら制御する必要がなく、従来技術に比べて充放電及び系統連係に関する制御が容易である。
【0048】
(b) 太陽光発電装置1が複数のユニットU1〜Unに分散配置されているので、局所的なゴミ、汚れ、日陰に対し、従来技術に比較して小規模なユニットごとにMPPTによる最適化を実施できる。その結果、日陰などに起因する運転効率の低下を局所的なものに抑えることができ、システム全体の効率への影響を低減することができる。
【0049】
(c) ユニットU1〜Unごとに、蓄電装置21として、コスト、充放電特性等の種類の異なる二次電池を利用でき、蓄電特性の最適化が可能である。
【0050】
(d) 個々のユニットU1〜Unにおいては、太陽光発電装置1と蓄電装置2とを直流系統で接続することで、各DC/DC変換器3,4が個々の独立した制御を分担でき、ユニットU1〜Unごとに統括制御部を設けて制御する必要がなく、ユニットU1〜Un内での通信線を介した複雑な制御が不要である。
【0051】
2.第2実施形態
図5は、本発明の第2実施形態を示すものである。図5に示すように、第2実施形態は、複数のユニットU1〜Unを有する太陽光発電システムを複数システム並列に配電系統7に接続したものである。各太陽光発電システムは、それぞれ異なる地域に設置され、専用の変圧器7a,7b……を介して配電系統7に接続されている。
【0052】
この第2実施形態においても、各ユニットU1〜Unは第1実施形態に示したとおり、個々のユニット内で制御が完結しているため、複数の太陽光発電システム全体での複雑な制御は必要ない。そのため、個々のユニットU1〜Unごとに交流系統に接続することで、大規模な太陽光発電システムが実現可能である。
【0053】
例えば、近い地域にあるユニットU1〜Un同士は200Vで接続し、地域単位ごとに変圧器7a,7b……を介して6.6kV等で接続すると、送電効率も良い。
【0054】
3.第3実施形態
図6は、本発明の第3実施形態を示すものである。第3実施形態は、蓄電装置として、小型揚水発電機10と可変速インバータ11の組み合わせを使用したものである。この第3実施形態では、蓄電装置2として二次電池を使用した場合と同じく、直流系統を安定化するように汲み上げと発電を制御することが可能である。
【0055】
すなわち、蓄電時には、太陽光発電装置1からの電力を直流系統を通じて可変速インバータ(第1実施形態のDC/DC変換器3に相当する)11に供給し、この可変速インバータ11によって変換された電力によって小型揚水発電機10を揚水機として駆動する。
【0056】
一方、放電時には、揚水した水のエネルギーを使用して小型揚水発電機10によって発電を行い、その電力を可変速インバータ11によって直流系統に出力する。出力された直流電力は、第1実施形態と同様に、AC/DC変換器5によって出力目標値Pに合わせて、交流系統に出力される。
【0057】
この第3実施形態においては、全てのユニットU1〜Unの蓄電装置2を小型揚水発電機10と可変速インバータ11としても良いが、ユニットU1〜Unのいずれかに小型揚水発電機10と可変速インバータ11を使用することができる。
【0058】
この第3実施形態によれば、全てユニットU1〜Unの蓄電装置2を二次電池から構成する場合に比較して、より安価にシステムを構築できる。また、既設のタンクなどに貯留されている水を利用するなど、小型の揚水発電機を設置できる環境にあっては、特に有利である。
【0059】
4.第4実施形態
図7は、本発明の第4実施形態を示すものである。この第4実施形態では、モータ12と可変速インバータ11の組み合わせにより、おもり13の位置エネルギーを利用して蓄電するものである。
【0060】
すなわち、例えば、地中深くに縦坑を穿ち、その内部に、モータ12によって昇降するおもり13を配置する。このおもり13は、蓄電時には、太陽光発電装置1からの電力により駆動されるモータ12により、縦坑の上部にまで引き上げられる。一方、放電時には、おもり13を重力により縦坑の底に向かって降下させ、その位置エネルギーを利用してモータ12を発電機として駆動する。
【0061】
このように、第4実施形態においては、蓄電装置2としておもりの位置エネルギーを利用することにより、地中に設けた縦坑などのスペースを有効に利用して、蓄電を行うことができる。
【0062】
なお、この第4実施形態においても、全てのユニットU1〜Unの蓄電装置2をモータ12とおもり13としても良いが、ユニットU1〜Unのいずれかにモータ12とおもり13を使用することができる。
【0063】
5.第5実施形態
図8は、本発明の第5実施形態を示すものである。この第5実施形態は、蓄電装置2に二次電池を使用した場合に、その二次電池自体を、前記第4実施形態のおもり13としたものである。
【0064】
この第5実施形態は、二次電池の蓄電エネルギーと、おもり13の位置エネルギーを同時に利用することができる。その結果、地中を利用することによるスペースの有効利用が図れるだけでなく、温度変化の少ない地中に二次電池が配置されることから、その周囲温度を一定に保つことができ、二次電池の寿命低下を防止することができる。
【0065】
この第5実施形態でも、ユニットU1〜Unの一部にのみ、二次電池をおもりとして使用する構成を採用することが可能である。
【0066】
6.第6実施形態
図9は、本発明の第6実施形態を示す。この第6実施形態は、圧縮空気を利用したエネルギー貯蔵を蓄電装置2として使用したものである。
【0067】
第6実施形態では、直流系統に接続された可変インバータ11に電動のコンプレッサ20を接続し、充電時においては、太陽光発電装置1からの電力により、このコンプレッサ20を駆動し、タンク21内に圧縮空気を貯蔵する。一方、放電時には、タンク21に接続されたエンジン又はタービン22に、タンク21内の圧縮空気を吹き付けることによって、エンジン又はタービンに接続された発電機を駆動する。
【0068】
この第6実施形態においても、太陽光発電装置1の発電電力を充放電することが可能である。この実施形態でも、前記各実施形態と同様に、各ユニットU1〜Un内の直流系統によって、しかも、他のユニットとは独立して蓄電装置の充放電制御を行うことができる。
【0069】
この第6実施形態でも、ユニットU1〜Unの一部にのみ、圧縮空気のエネルギーを使用する構成を採用し、他のユニットU1〜Unは二次電池を蓄電装置2として使用できる。
【0070】
7.他の実施形態
前記の実施形態は、本明細書において一例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図するものではない。すなわち、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
U1〜Un…発電・蓄電ユニット
1…太陽光発電装置
2…蓄電装置
3,4…DC/DC変換器
5…AC/DC変換器
6…統括制御装置
21…二次電池列
31,41…DC/DC変換器
51…AC/DC変換器
61…管理部
22,32,42,52…制御部
23,33,43,53,63…通信部
10…可変速インバータ
11…モータ
12…おもり
20…コンプレッサ
21…圧縮空気タンク
22…エンジンまたはタービン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアレイを有する太陽光発電装置と、複数の二次電池を有する蓄電装置を有する太陽光発電システムであって、
前記太陽光発電装置と蓄電装置のそれぞれにDC/DC変換器を設け、これらのDC/DC変換器を接続すると共に、各DC/DC変換器をAC/DC変換器に接続して、1つの発電・蓄電ユニットを構成し、
前記ユニットを複数用意し、各ユニットをそれぞれのAC/DC変換器を介して配電系統に接続し、
各ユニットの太陽光発電装置には、その出力特性が最大になるように最大電力点追従制御を行う制御部を設け、
各ユニットの蓄電装置には、蓄電池側の電圧を検出して、その充放電制御を行う制御部を設け、
各ユニットの制御部と通信によって接続され、各ユニットの充放電及び出力制御を行う統括制御装置を設け、
統括制御装置は、各ユニットの太陽光発電装置の出力値に基づいて、システム全体の出力目標値を算出し、これを各ユニットのAC/DC変換器に送信し、
各ユニットのAC/DC変換器には、統括制御装置から受信した出力目標値に基づいて系統連係を行うために、AC/DC変換器を制御する制御部を設けたことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
複数のユニットを有する太陽光発電システムを、複数システム並列に送配電系統に接続したことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
各ユニットの少なくとも1つについて、その蓄電装置として、揚水発電機を使用したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
各ユニットの少なくとも1つについて、その蓄電装置として、モータによって昇降するおもりと、おもりの位置エネルギーによって発電する発電機を使用したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記おもりとして、蓄電装置の二次電池を使用したことを特徴とする請求項4に記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
各ユニットの少なくとも1つについて、その蓄電装置として、コンプレッサによって圧縮される空気を貯蔵する圧縮空気タンクと、圧縮空気タンクからの空気によって駆動される発電機を使用したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽光発電システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−38826(P2013−38826A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170246(P2011−170246)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】