説明

太陽光電力変換装置

【課題】本発明では、従来の太陽光電力変換装置より低い歪率を有する、出力レベルの高い太陽光電力変換装置を提供する。
【解決手段】本発明による太陽光電力変換装置(10)は、光を受信して直流電源を生成する少なくとも一つの太陽光アレイ(11、12)と、生成された直流電源の大きさを変換するコンバータ(20)と、コンバータの直流を受信して複数レベルを有する交流電力を出力し、複数のマルチレベルインバータを含むマルチレベルインバータ部(30)と、マルチレベルインバータ部と系統を絶縁する交流フィルタ(40)と、コンバータ及びマルチレベルインバータ部に制御信号を印加する制御部(60)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は太陽光電力変換装置に関するものであり、特に中性点クランプ型マルチレベル方式をハイブリッド方式に応用し、従来の太陽光電力変換装置より低い歪率を有する、高い出力レベルを有する太陽光電力変換装置に関するものである。
【0002】
太陽光電力変換装置とは、太陽電池から生産される直流電気を交流電気に変換して系統に連繋する機器をいう。太陽光電力変換ハードウェア方式は、主にフル・ブリッジ方式を使用する。しかし、電力品質が悪く効率が低いため、現在マルチレベルを利用した電力変換装置に対する研究と製品の需要が増加しつつある。
【0003】
従来の太陽光電力変換装置は、太陽光発電システムの電力変換効率が低く、アレイ全体を一つの入力として使用するため電力変換効率が低いという短所がある。また、出力電圧レベルを2レベル又は3レベルで運転するため多様なレベルの電量を得ることができず、電力品質が低くてモジュール化が不可能であるという問題点がある。
【0004】
このような問題点を解決するために、マルチレベルを利用した電力変換装置が開発された。マルチレベルを利用した電力変換装置は、フル・ブリッジ方式より優れた効率と安定された品質を確保する。このようなマルチレベルを利用した電力変換装置トポロジには、3つのH−ブリッジ、中性点クランプ型(Neutral−Point−clamped)、フライングキャパシタ(Flying Capacitor)がある。
【0005】
しかし、このようなマルチレベル方式も、歪率が多少高く、出力レベルが低いという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、マルチレベルを利用した太陽光電力変換装置として、中性点クランプ型マルチレベル方式を応用して従来の太陽光電力変換装置より低い歪率を有する、出力レベルの高い太陽光電力変換装置を提供する。
【0007】
また、本発明では、太陽光電力変換装置の効率を高めるために、2つの太陽光アレイで生産される電気エネルギを太陽光電力変換装置の形態でモジュールに連結し、効率の高い太陽光電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による太陽光電力変換装置は、光を受信して直流電源を生成する少なくとも一つの太陽光アレイと、前記生成された直流電源の大きさを変換するコンバータと、前記コンバータの直流を受信して複数レベルを有する交流電力を出力し、複数のマルチレベルインバータを含むマルチレベルインバータ部と、前記マルチレベルインバータ部と系統を絶縁する交流フィルタと、前記コンバータ及び前記マルチレベルインバータ部に制御信号を印加する制御部と、を含む。
【0009】
また、前記コンバータは、前記少なくとも一つの太陽光アレイの個数に対応するようにそれぞれコンバータを連結するよう、少なくとも一つのコンバータを含んでもよい。
【0010】
また、前記マルチレベルインバータ部は、前記少なくとも一つのコンバータに対応するように連結された少なくとも一つのマルチレベルインバータを含んでもよい。
【0011】
また、前記マルチレベルインバータ部は、複数のスイッチング素子、前記スイッチング素子の間に連結された複数のクランピングダイオード、複数のバスキャパシタを含んでもよい。
【0012】
また、前記マルチレベルインバータ部は(m−1)×2個のスイッチング素子を含み、前記mは出力するレベルの個数であってもよい。
【0013】
また、前記マルチレベルインバータ部は(m−1)個のクランピングダイオードを含み、前記mは出力するレベルの個数であってもよい。
【0014】
また、前記マルチレベルインバータ部は、DC電圧リップルを制限する(m−1)/2個のDCバスキャパシタを含んでもよい。
【0015】
また、前記マルチレベルインバータは、複数個である場合それぞれ5レベルの電力を出力し、直接で連結された場合9レベルの電力を出力し得る。
【0016】
また、前記制御部は、前記コンバータにMPPT制御を行うためのゲーティング信号を印加するためのコンバータゲーティング部、前記マルチレベルインバータの動作を制御するためのゲーティング信号を印加するインバータゲーティング部を含み、前記ゲーティング信号はキャリア基板のPWM信号又は空間ベクタPWM信号であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による太陽光電力変換装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による太陽光電力変換装置の構成を詳細に示す図である。
【図3】本発明による一つの太陽光アレイ、直流−直流コンバータ及びマルチレベルインバータの動作を説明するための図である。
【図4】本発明による各出力レベルによるインバータのスイッチング素子の状態を示す図である。
【図5】本発明によるインバータに含まれたスイッチング素子のスイッチング順番を示す図である。
【図6】本発明による太陽光電力変換装置の出力信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は通常的である辞書的な意味に限って解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜に定義し得るという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。
【0019】
従って、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は本発明の最も好ましい一実施例に過ぎないものであり、本実施例の技術的思想を全て代弁するものではないため、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例が存在し得るということを理解するべきである。
【0020】
図1は、本発明による太陽光電力変換装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【0021】
図1を参照すると、太陽光電力変換装置10は、太陽光アレイ11,12、コンバータ20、マルチレベルインバータ30、交流フィルタ40、変圧器50及び制御部60を含む。
【0022】
太陽光アレイ11,12は、光を受信して直流電源を生成する。即ち、太陽光アレイ11,12はソーラーセルアレイであってもよく、ソーラーセルアレイは太陽光を受信して電力を発生させる多数のソーラーセルで配列されてもよい。
【0023】
コンバータ20は直流−直流コンバータであり、一つのコンバータで構成されてもよく、第1、第2太陽光アレイ11,12それぞれに対応するように複数のコンバータで構成されてもよい。
【0024】
マルチレベルインバータ30は、第1マルチレベルインバータ31と第2マルチレベルインバータ32で構成されてもよい。第1、第2マルチレベルインバータ31,32は、それぞれ5レベルの電力レベルを出力し得る。第1、第2マルチレベルインバータ31,32が直列に連結されて構成されると、出力可能な電力レベルは9レベルであってもよい。即ち、第1、第2マルチレベルインバータ31,32の出力可能な電力レベルは、マルチレベルインバータの構成によって異なり得る。
【0025】
また、第1、第2マルチレベルインバータは互いに直列に連結されており、正常作動の際には9レベルの電力を出力するが、第1又は第2マルチレベルインバータのうちいずれか一つにエラーが発生すると、エラーが発生しない一つのマルチレベルインバータが単独に作動して5レベルの電力を出力し得る。
【0026】
交流フィルタ40は、インバータ30と系統を絶縁させる機能を有してもよい。
【0027】
制御部60は、コンバータ20及びマルチレベルインバータ30に制御信号を印加し得る。
【0028】
図2は、本発明による太陽光電力変換装置の構成を詳細に示す図である。
【0029】
図2を参照すると、直流−直流コンバータ20の第1コンバータ21及び第2コンバータ22は、それぞれダイオードD1,D2,D3,D4、キャパシタC1,C2、インダクタL1,L2、スイッチング素子T1,T2で構成されてもよい。
【0030】
マルチレベルインバータ30は、複数個のスイッチング素子、IGBTとDC電圧リップルを制限するバスキャパシタで構成されてもよい。それぞれのインバータ31,32は、互いに直列に連結される。マルチレベルインバータ30の詳細な構成及び動作については後述する。
【0031】
制御部60は、コンバータゲーティング部61とインバータゲーティング部62を含んでもよい。
【0032】
コンバータゲーティング部61は、コンバータ20にMPPT制御を行うためのゲーティング信号を印加する。
【0033】
インバータゲーティング部62は、インバータ30の動作を制御するためのゲーティング信号を印加する。インバータゲーティング部62はインバータ30の動作制御のためのゲーティング信号であり、キャリア基板のPWM信号又は空間ベクタPWM信号を使用してもよい。
【0034】
図3は、本発明による一つの太陽光アレイ、直流−直流コンバータ及びマルチレベルインバータの動作を説明するための図である。図2の太陽光電力変換装置のインバータ31,32のうち一つにエラーが発生して動作できない場合、図3に示した状態で運転してもよい。
【0035】
太陽光アレイ11で生成された直流電源は、コンバータ21によって最大出力値を出力し得るためにMPPT制御され、マルチレベルインバータ31に伝達される。コンバータ21とインバータ31は、それぞれ制御部60のゲーティング信号によって制御されてもよい。
【0036】
インバータ31は、制御部60のゲーティング信号によって全5つのレベル電力を出力し得る。インバータ31は、多数のスイッチング素子とDC電圧リップルを制限する2つのバスキャパシタC3,C4で構成されてもよい。また、図3に示したように、スイッチング素子が4つずつ2列に配置され、スイッチング素子の間にはクランピングダイオードが配置されてもよい。スイッチング素子は、好ましくはIGBT(Insulated gate bipolar transistor)であってもよい。
【0037】
図4は、本発明による各出力レベルによるインバータのスイッチング素子の状態を示す図である。
【0038】
マルチレベルインバータ31は、(2E,E,0,−E,2E)の全5レベルを出力し得る。「2E」は、インバータ31に印加される電源の電圧を意味する。(2E,E,0,−E,−2E)レベルの電力を出力する際、オンされるスイッチング素子は図5の表のように整理され得る。
【0039】
図5は、本発明によるインバータに含まれたスイッチング素子のスイッチング順番を示す図である。
【0040】
図5に示したように、スイッチの状態が1であればスイッチング素子はオン状態になり得る。また、スイッチの状態が0であれば、スイッチング素子はオフ状態になる。このように、システムクロックによって順番にスイッチング素子をオンすることで、5つの電力レベルを生成し得る。
【0041】
図3又は図4において、マルチレベルインバータ31は互いに相互作用する4つのIGBTスイッチ対を有しており、スイッチ対は(TA11+、TA11−)、(TA22+、TA22−)、(TB11+、TB11−)、(TB22+、TB22−)として定義し得る。
【0042】
図4の(a)、(b)、(c)、(d)は、出力レベルによる各スイッチング素子のオン状態を示す例であり、(a)は出力レベルが2E、(b)は出力レベルがE、(c)は出力レベルが−E、(d)は出力レベルが−2Eである場合を示す。
【0043】
一方、出力されるマルチレベルの数(m)によって必要な素子の数は、下記表1のように整理され得る。
【0044】
【表1】

【0045】
表1において、ハイブリッドダイオードクランプ方式が本発明によるマルチレベルインバータを直列に連結した方式のインバータである。
【0046】
また、2つのマルチレベルインバータを図2に示した形態で直列連結した形態では、(4E,3E,2E,E,0,−E,−2E,−3E,−4E)の全9レベルの電力を出力し得る。
【0047】
図6は、本発明による太陽光電力変換装置の出力信号を示す図である。
【0048】
図6に示した形態の出力信号から必要な電力レベルの信号を抽出し、系統に提供し得る。
【0049】
以上で本発明についてその好ましい実施例を中心に説明したが、これはただの例示に過ぎないものであって本発明を限るものではなく、本発明の属する分野の通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲内で、以上に例示されていない様々な変形と応用が可能であるということが分かるはずである。例えば、本発明の実施例に具体的に示した各構成要素は変形して実施してもよいものである。そして、このような変形と応用に関する差は、添付した特許請求の範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を受信して直流電源を生成する少なくとも一つの太陽光アレイと、
前記生成された直流電源の大きさを変換するコンバータと、
前記コンバータの直流を受信して複数レベルを有する交流電力を出力し、複数のマルチレベルインバータを含むマルチレベルインバータ部と、
前記マルチレベルインバータ部と系統を絶縁する交流フィルタと、
前記コンバータ及び前記マルチレベルインバータ部に制御信号を印加する制御部と、を含む、
太陽光電力変換装置。
【請求項2】
前記コンバータは、
前記少なくとも一つの太陽光アレイの個数に対応するよう、それぞれコンバータを連結するように少なくとも一つのコンバータを含む、
請求項1に記載の太陽光電力変換装置。
【請求項3】
前記マルチレベルインバータ部は、
前記少なくとも一つのコンバータに対応するように連結された少なくとも一つのマルチレベルインバータを含む、
請求項2に記載の太陽光電力変換装置。
【請求項4】
前記マルチレベルインバータ部は、
複数のスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の間に連結された複数のクランピングダイオードと、
複数のバスキャパシタと、を含む、
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の太陽光電力変換装置。
【請求項5】
前記マルチレベルインバータ部は、
(m−1)×2個のスイッチング素子を含み、前記mは出力するレベルの個数である、
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の太陽光電力変換装置。
【請求項6】
前記マルチレベルインバータ部は、
(m−1)個のクランピングダイオードを含み、前記mは出力するレベルの個数である、
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の太陽光電力変換装置。
【請求項7】
前記マルチレベルインバータ部は、DC電圧リップルを制限する(m−1)/2個のDCバスキャパシタを含む、
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の太陽光電力変換装置。
【請求項8】
前記マルチレベルインバータは、
複数個である場合それぞれ5レベルの電力を出力し、直接で連結された場合9レベルの電力を出力する、
請求項1に記載の太陽光電力変換装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記コンバータにMPPT制御を行うためのゲーティング信号を印加するためのコンバータゲーティング部と、
前記マルチレベルインバータの動作を制御するためのゲーティング信号を印加するインバータゲーティング部と、を含み、
前記ゲーティング信号は、キャリア基板のPWM信号又は空間ベクタPWM信号である、
請求項1に記載の太陽光電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−257451(P2012−257451A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130982(P2012−130982)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(593121379)エルエス産電株式会社 (221)
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO., LTD
【Fターム(参考)】