説明

太陽熱利用廃棄物発電装置

【課題】廃棄物発電設備の廃熱回収発電設備能力を有効に活用することができ、また、太陽熱を廃棄物発電に利用する際に発電効率を高めることができる太陽熱利用廃棄物発電装置を提供する。
【解決手段】焼却炉から排出される排ガスから熱回収して蒸気を生成する輻射ボイラ2と、輻射ボイラ2で生成した蒸気を飽和蒸気温度より高い温度に加熱して過熱蒸気を生成する管群ボイラ3と、太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置19と、集熱された太陽熱を受熱し、受熱した太陽熱との熱交換により、該管群ボイラ3で生成した過熱蒸気をさらに加熱して高温過熱蒸気を生成する太陽熱受熱装置20と、生成された高温過熱蒸気により発電する蒸気タービン発電機15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を焼却またはガス化溶融する廃棄物処理炉施設に設けられる廃棄物発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物発電設備は、供給する廃棄物の種類によって、廃棄物の燃焼により発生する熱量が変動する(例えば、1200kcal/kg〜2800kcal/kg−湿ベース)ことを考慮して、高カロリー廃棄物に対応した廃熱回収発電設備を備えている。近年は、廃棄物の分別収集が進行し、高カロリーのプラスチックごみが分別され、焼却炉へ供給される廃棄物のカロリーが低下しているため、廃熱回収発電設備能力に相当余裕ができており、換言すれば、廃熱回収発電設備能力が有効に利用されていない。このような事情から、既設の廃棄物発電設備の廃熱回収発電設備能力を有効に活用することが要望されている。さりとて、化石燃料を燃焼して過熱蒸気量を増大させ、発電量を増大させることは、地球温暖化への対応に反するので望ましくない。
【0003】
廃棄物発電設備の一例として、廃棄物焼却炉にボイラを備え、焼却炉から排出される排ガスの廃熱を回収し該ボイラにて水を加熱して蒸発させて飽和蒸気を生成し、燃焼式過熱器にて該飽和蒸気をさらに加熱して過熱蒸気を生成し、該過熱蒸気を蒸気タービンに供給して発電することが行われている。(特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1に開示されている発電装置は、例えば、図7に示される構成で実施される。すなわち、まず、内部に蒸発管が配された輻射ボイラ2において、廃棄物焼却炉(図示せず)から排出された排ガスによって蒸発管内の水が加熱されて飽和蒸気が生成された後、蒸気溜り12において気水分離される。そして、飽和蒸気は、過熱管が配された管群ボイラ3にてさらに過熱されて過熱蒸気となる。一方、上記蒸気溜り12で分離された水は上記輻射ボイラ2に戻される。上記過熱蒸気は、過熱蒸気ヘッダ14を通った後、蒸気タービン発電機15へ供給され、該蒸気タービン発電機15を駆動することにより発電に寄与する。上記蒸気タービン発電機15を駆動した過熱蒸気は復水器16で凝縮されて水に戻り、給水予熱エコノマイザ17にて予熱された後、上記輻射ボイラ2へ送られる。また、上記給水予熱エコノマイザ17には、軟水器18によって軟水化された補給水が供給されている。
【0005】
一方、発電装置の他の形態として、太陽熱を利用した発電装置が用いられることもある。このような太陽熱利用発電装置として、特許文献2に開示されたものが知られている。特許文献2には、太陽熱で液体熱媒体を加熱し、該熱媒体を介して水を加熱蒸発することにより飽和蒸気を生成した後、ガスタービンの駆動に使用された燃焼ガスによって該飽和蒸気をさらに加熱して過熱蒸気を生成し、該過熱蒸気を蒸気タービンに供給して発電を行う発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−035311
【特許文献2】特開2008−039367
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の発電装置では、太陽熱で加熱された熱媒体によって水を加熱して飽和蒸気を生成し、燃焼ガスによって該飽和蒸気をさらに加熱して過熱蒸気を生成するので、太陽熱の大部分が水の蒸発潜熱に消費される。この結果、発電に対する太陽熱の寄与が小さくなってしまう。例えば、廃棄物発電施設の発電装置として上記特許文献2の発電装置を適用しても、発電に寄与するのは受熱した太陽熱の10%程度であり、効率が低く望ましくない。
【0008】
また、熱媒体を用いることにより設備が過大となってしまう。さらに、熱媒体により蓄熱機能を保有させようとすると、該熱媒体を貯留するタンクや循環ポンプ、それらの装置の断熱材、熱媒体流量制御装置等の高価な設備が必要となり、その分、コストが増大してしまう。
【0009】
本発明は上記の問題に鑑み、廃棄物発電設備の廃熱回収発電設備能力を有効に活用することができ、また、太陽熱を廃棄物発電に利用する際に発電効率を高めることができる太陽熱利用廃棄物発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
廃熱回収蒸気を用いた蒸気タービンによる発電に有効な熱エネルギーについて図8を用いて説明する。図8は、40気圧に加圧された温水が249℃で蒸発して飽和蒸気となった後、さらに加熱されて過熱蒸気状態となる場合における温度とエンタルピーとの関係を示す水−蒸気エンタルピー線図である。
【0011】
図8に示されているように、蒸気タービンでの発電に有効な蒸気のエンタルピーは、過熱蒸気部分が主体となっている。これは、蒸気タービンのタービンブレードの強度と耐久性の制約より、湿り蒸気を使うことが困難なためである。ここで、復水器の適用により、図8の加圧条件下における飽和蒸気温度の蒸気エンタルピー部分も一部活用できる。
【0012】
発電効率向上のため、復水器を設けてタービン出口圧力を低減させ、蒸気の湿り度を低減することにより、より多くの蒸気のエンタルピーを電力に変換できるが、それでも蒸気の保有するエンタルピーのうち電力に変換できるのは、その20%前後である。
【0013】
発明者は、廃棄物発電においては燃焼炉又はガス化溶融炉からの排ガスによって既に飽和蒸気が発生していることに着目し、該飽和蒸気から過熱蒸気を得る過程及び過熱蒸気量を増大させる過程に太陽熱を活用することにより、従来のような、太陽熱によって飽和蒸気を生成した後に、燃焼ガスによって過熱蒸気を生成して発電する場合よりも、倍以上高い効率で太陽熱の受熱熱量を電力へ変換できることを見出した。
【0014】
この太陽熱の利用による効果は、太陽熱の集熱による熱量を蒸気の直接加熱に利用すること、そして、少なくとも飽和蒸気温度を超える温度の熱供給が可能であることを条件として得られる。
【0015】
本発明に係る太陽熱利用廃棄物発電装置は、廃棄物を焼却またはガス化溶融する廃棄物処理炉施設に設ける廃棄物発電装置であって、廃棄物処理炉から排出される排ガスから熱回収して蒸気を生成するボイラと、太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置と、集熱された太陽熱を受熱し、受熱した太陽熱との熱交換により、ボイラで生成した蒸気を飽和蒸気温度より高い温度に加熱して過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成及びボイラで生成した過熱蒸気をさらに加熱する過熱蒸気加熱のうち少なくとも一つを行う太陽熱受熱装置と、生成された過熱蒸気により発電する蒸気タービン発電装置とを備えることを特徴としている。
【0016】
本発明では、ボイラで飽和蒸気又は過熱蒸気を生成し、該ボイラで飽和蒸気が生成される場合には過熱蒸気の生成そして加熱に太陽熱を活用し、該ボイラで過熱蒸気が生成される場合には該過熱蒸気の加熱に太陽熱を活用する。このように、太陽熱を過熱蒸気の生成あるいは加熱に活用することにより、該太陽熱の電気変換効率が大幅に高められる。
【0017】
本発明によれば、既存の廃棄物発電設備に太陽熱を利用する装置を付加することで発電設備能力を有効活用できるばかりでなく、新規の廃棄物発電設備においてもさらに発電効率を向上できる効果がある。
【0018】
太陽熱受熱装置にて受熱した太陽熱と過熱蒸気との熱交換を行う機構が、ボイラで生成した過熱蒸気を蒸気タービンに供給する流路に設置されていることが好ましい。上記機構が該流路に設置されることにより、太陽熱が過熱蒸気の生成あるいは加熱に確実に活用されるので、発電効率をさらに高めることができる。
【0019】
太陽熱利用廃棄物発電装置は、太陽熱受熱装置での太陽熱の受熱を検知するセンサと、上記センサが太陽熱の受熱を検知しているとき又は該センサが検知した太陽熱受熱量が所定値以上であるときに太陽熱受熱装置へ蒸気を供給する蒸気供給制御手段とを備えることが好ましい。
【0020】
太陽熱受熱装置が太陽熱を受熱していなかったり、受熱していたとしても受熱量が十分でなかったりするときに蒸気や水を太陽熱受熱部分に流すと熱ロスが生じてしまうので、太陽熱を受熱しているときあるいは受熱量が十分であるときにのみ蒸気や水を太陽熱受熱部分に流すことにより熱ロスの発生を回避できる。また、受熱量が十分であるときに過熱蒸気を太陽熱受熱装置に供給することにより該太陽熱受熱装置の過熱による損傷を回避できる。
【0021】
太陽熱受熱装置での太陽熱の受熱を検知するセンサを備え、太陽熱受熱装置は、上記センサが太陽熱の受熱を検知していないとき又は該センサが検知した太陽熱受熱量が所定値以下であるときに、太陽熱受熱装置の受熱面からの熱放散を抑制する保熱材又は断熱材により受熱面を覆う機構を有していることが好ましい。
【0022】
日中、天候の変化(例えば、曇りやにわか雨等)の影響で日射量が低減して、太陽熱受熱装置の太陽熱受熱部分に太陽光が十分に入射しないとき、すなわち、太陽熱を受熱していないときあるいは受熱量が十分でないときであっても、上記機構を設けることにより上記受熱面からの熱放散を抑制して熱ロスを低減することができる。この結果、太陽熱の受熱を再開したときあるいは受熱量が十分な量に戻ったときに、過熱蒸気生成や過熱蒸気加熱の加熱熱量を短時間で所定のレベルに戻すことができ、太陽熱による加熱熱量の変動を小さく抑制することができる。
【0023】
太陽熱受熱装置が太陽熱を受熱していないとき又は太陽熱受熱量が所定値以下のとき、過熱蒸気生成及び過熱蒸気加熱のうち少なくとも一つを行う燃焼機器を備えることが好ましい。これによって、太陽熱受熱装置が太陽熱を受熱していない場合や、受熱していたとしても受熱量が十分でない場合であっても、上記燃焼機器によって過熱蒸気生成や過熱蒸気加熱を行うことができる。
【0024】
太陽熱受熱装置は、過熱蒸気を生成する過熱蒸気配管が受熱面側に設けられているとともに、加圧温水配管又は蒸発管が該過熱蒸気配管の背面に接触して設けられていることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、太陽熱は、まず、受熱面側に位置する過熱蒸気配管においてその大部分が過熱蒸気の生成又は加熱に活用されて消費される。そして、過熱蒸気配管で消費されなかった太陽熱は、該過熱蒸気配管から、飽和蒸気温度で維持されている加圧温水配管又は蒸発管(加圧水配管)側へ熱伝導する。この結果、太陽熱受熱面は、太陽熱入射量が大幅に増大しても過熱されることがなく損傷が防止される。また、該加圧温水配管又は蒸発管では、熱伝導した太陽熱は水の加熱及び蒸発に消費される。飽和蒸気温度は一定であり、蒸気の比熱・顕熱と比べて蒸発潜熱が大きいので、該加圧温水配管又は蒸発管では蒸気が飽和蒸気温度で維持される。
【0026】
太陽熱受熱装置は、過熱蒸気を生成する過熱蒸気配管が受熱面側に設けられているとともに、加圧温水配管又は蒸発管が該過熱蒸気配管の背面に間隙をもって設けられていてもよい。
【0027】
このような構成によれば、過熱蒸気配管の温度が所定温度以下で太陽熱受熱を行うときには、間隙により過熱蒸気配管と加圧温水配管又は蒸発管とが断熱されている。そして、過熱蒸気配管の温度が所定温度を超えると、過熱蒸気配管の熱膨張により上記間隙が無くなり過熱蒸気配管が加圧温水配管又は蒸発管に接触して抜熱される。この結果、過熱蒸気配管が所定温度より高く加熱され損傷することを防止するとともに、過熱蒸気配管から加圧温水配管又は蒸発管に伝熱された太陽熱を加圧温水加熱又は蒸発熱として利用できる。上記過熱蒸気配管の所定温度は、該過熱蒸気配管の高温強度が低下する限界温度などに基づき設定される。
【0028】
太陽熱受熱装置は、該太陽熱受熱装置の内部に蓄熱材を有していることが好ましい。このように、太陽熱受熱装置の内部に蓄熱材を設けることにより、太陽熱の受熱量が変化しても該太陽熱を該蓄熱材に蓄熱できるので、液体熱媒体を循環したり貯留する装置等を用いずに受熱量を平滑化できる。また、熱媒体を用いない分、設備の小型化そして低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、太陽熱を廃棄物発電に利用する際に発電効率を高めることができ、その結果、廃棄物発電設備の廃熱回収発電設備能力を有効に活用することができる。また、既存の廃棄物発電設備に太陽熱を利用する装置を付加することで発電設備能力を有効活用できるばかりでなく、新規の廃棄物発電設備においてもさらに発電効率を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第一実施形態における廃棄物処理炉施設の概略を示す図である。
【図2】図1の廃棄物処理炉施設に設けられる発電装置の構成を示すブロック図である。
【図3】(A)は図2の発電装置における太陽熱集熱装置及び太陽熱受熱装置の構成を示す図であり、(B)は該太陽熱受熱装置の拡大図である。
【図4】第二実施形態に係る発電装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第三実施形態に係る発電装置における太陽熱受熱装置を示す図である。
【図6】第四実施形態に係る発電装置における太陽熱受熱装置を示す図である。
【図7】従来の発電装置の構成を示すブロック図である。
【図8】水温とエンタルピーとの関係を示す水−蒸気エンタルピー線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る太陽熱利用廃棄物発電装置の実施形態を説明する。
【0032】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態における廃棄物処理炉施設の概略を示す図である。図2は、図1の廃棄物処理炉施設に設けられる発電装置の構成を示すブロック図である。図3(A)は、図2の発電装置における太陽熱集熱装置及び太陽熱受熱装置の構成を示す図であり、図3(B)は、該太陽熱受熱装置の拡大図である。該図3(A),(B)では、過熱蒸気配管及び加圧温水配管はその軸線に対して直角な断面で示されている。
【0033】
図1に示されているように、上記廃棄物処理炉施設は、廃棄物を焼却する焼却炉1と、該焼却炉1の下流側に設置された輻射ボイラ2及び管群ボイラ3を一部に含む後述の太陽熱利用廃棄物発電装置10(以下、単に「発電装置10」という)と、該管群ボイラ3の下流側に設置された排ガス処理装置4とを有している。なお、上記焼却炉1に代えて、ガス化溶融炉が設けられていてもよい。
【0034】
図1に見られるように、発電装置10は、蒸気溜り12の上流側で該蒸気溜り12に接続される蒸発管11と、該蒸気溜り12の下流側で該蒸気溜り12に接続される過熱管13とを一部に有している。また、蒸発管11は輻射ボイラ2内に配され、過熱管13は管群ボイラ3内に配されている。
【0035】
上記発電装置10は、図2に示されているように、図7における従来の発電装置に太陽熱集熱装置19及び太陽熱受熱装置20を付加した構成となっている。ここでは、該太陽熱集熱装置19及び太陽熱受熱装置20を中心に説明し、上記従来の発電装置と同一の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
上記太陽熱集熱装置19は、廃棄物処理炉施設の屋根上又は敷地内に複数設置されている。該太陽熱集熱装置19は、反射鏡と、該反射鏡の方向や傾きを太陽の動きに合わせて制御する方向制御装置(図示せず)とを有している。
【0037】
図1に示されるように、上記太陽熱受熱装置20は、管群ボイラ3内に配される過熱管13で生成した過熱蒸気を蒸気タービン発電機15に供給する流路に設置されている。また、該太陽熱受熱装置20は、図3に示されるように、互いに平行して延びる過熱蒸気配管21および加圧温水配管22の二つの配管を内部に有している。該過熱蒸気配管21は、太陽熱集熱装置19の反射鏡で反射した太陽光を受けて受熱するための受熱面側に位置している。図3(B)によく見られるように、上記加圧温水配管22は、過熱蒸気配管21の背面(受熱面と反対側)にて該過熱蒸気配管21に接触して配されており、その内部には温水が通っている。
【0038】
本実施形態では、図2に示されているように、管群ボイラ3で生成された過熱蒸気は過熱蒸気ヘッダ14を経て太陽熱受熱装置20の過熱蒸気配管21へ送られる。上述したように、該過熱蒸気配管21は上記受熱面にて太陽光を受けて受熱しているので、上記過熱蒸気は該過熱蒸気配管21内にて太陽熱によってさらに加熱される。そして、該太陽熱で加熱された過熱蒸気(以下「高温過熱蒸気」という)は、蒸気タービン発電機15へ供給され、該蒸気タービン発電機15を駆動することにより発電に寄与する。
【0039】
本実施形態では、上記太陽熱受熱装置20の受熱面で受熱された太陽熱は、まず、受熱面側に位置する過熱蒸気配管21においてその大部分が過熱蒸気の加熱による高温過熱蒸気の生成に活用されて消費される。そして、過熱蒸気配管21で消費されなかった太陽熱は、該過熱蒸気配管21から、該過熱蒸気配管21に接触して配される加圧温水配管22へ熱伝導する。したがって、太陽熱受熱装置20の受熱面が受熱する太陽熱が大幅に増大しても、上記過熱蒸気配管21は過大に過熱されることがなく損傷が防止される。
【0040】
また、加圧温水配管22において、熱伝導した太陽熱は水の加熱及び蒸発に消費される。飽和蒸気温度は一定であり、蒸気の比熱・顕熱と比べて蒸発潜熱が大きいので、該加圧温水配管22内では蒸気が飽和蒸気温度で維持される。
【0041】
本実施形態では、焼却炉1からの排ガスの回収廃熱によって飽和蒸気そして過熱蒸気を生成し、太陽熱によって該過熱蒸気を加熱して高温過熱蒸気を生成する。このように、高温過熱蒸気の生成にのみ太陽熱を活用することにより、該太陽熱の電気変換効率が大幅に高められ、廃棄物発電設備の廃熱回収発電設備能力を有効に活用することができる。具体的には、本実施形態に係る発電装置によって、太陽熱の電力変換効率を従来の4倍以上、すなわち、40%以上にまで高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、太陽熱受熱装置20が、管群ボイラ3内に配される過熱管13で生成した過熱蒸気を蒸気タービン発電機15に供給する流路に設置されており、太陽熱を高温過熱蒸気の生成に確実に活用できるので、発電効率をさらに高めることができる。
【0043】
従来の廃棄物発電設備における廃熱回収ボイラは、ハロゲン化合物や硫黄化合物やその他の腐食性成分が排ガスに含まれるため、ボイラの腐食が発生しない温度で廃熱回収することが行われており、得られる蒸気温度は400℃が限界であった。本実施形態によれば、太陽熱受熱装置20では、排ガス中の腐食成分に対する対策が不要であるので、集熱を効率的に行うことにより、過熱蒸気を450℃〜550℃まで高めることができ、さらに高い発電効率を得ることができる。
【0044】
本実施形態では、太陽熱を高温過熱蒸気の生成に活用したが、これに代えて、該太陽熱を過熱蒸気および高温過熱蒸気の両方の生成に活用してもよい。すなわち、過熱蒸気配管21内へ飽和蒸気を供給して、該過熱蒸気配管21にて太陽熱によって該飽和蒸気を過熱して、過熱蒸気、さらには高温過熱蒸気を生成することができる。
【0045】
本実施形態では、過熱蒸気配管の背面に加圧温水配管が配されたが、これに代えて、蒸発管が設けられていてもよい。
【0046】
<第二実施形態>
本実施形態に係る発電装置は、太陽熱受熱装置での太陽熱の受熱量を検知するセンサと、該センサにより検知された受熱量に応じて太陽熱受熱装置及び蒸気タービン発電機への蒸気の供給を制御する蒸気供給制御手段としての蒸気供給制御装置とを有している点で、該センサ及び蒸気供給制御装置を有していない第一実施形態の発電装置と相違している。ここでは、上記センサ及び蒸気供給制御装置を中心に説明し、第一実施形態と同一の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
図4は、本実施形態に係る発電装置の構成を示すブロック図である。図4に示されるように、本実施形態に係る発電装置10’には、太陽熱受熱装置20での太陽熱の受熱量を検知するセンサ23と、センサ23により検知された受熱量に応じて太陽熱受熱装置20及び蒸気タービン発電機15への蒸気の供給を制御する蒸気供給制御装置24とを有している。
【0048】
また、本実施形態では、過熱蒸気ヘッダ14と太陽熱受熱装置20とを接続する配管にバルブ25が設けられ、該過熱蒸気ヘッダ14と蒸気タービン発電機15とを接続する配管にバルブ26が設けられている。そして、上記蒸気供給制御装置24がバルブ25,26の作動を制御することにより蒸気の供給量を調整できるようになっている。
【0049】
上記蒸気供給制御装置24は、上記センサ23が検知した受熱量が、予め設定された閾値以上であるときにバルブ25を開き、太陽熱受熱装置20へ過熱蒸気を供給する。
【0050】
太陽熱受熱装置20への受熱量が十分でない場合、過熱蒸気を太陽熱受熱装置20に供給すると熱ロスが生じてしまうが、本実施形態では、予め受熱量の閾値を設定しておき、受熱量が該閾値以上であるときのみ過熱蒸気を太陽熱受熱装置20に供給するので、上記熱ロスの発生を回避できる。また、受熱量が十分であるときに過熱蒸気を太陽熱受熱装置20に供給することにより該太陽熱受熱装置20の過熱による損傷を回避できる。
【0051】
蒸気供給制御装置24は、バルブ26の開閉を以下のように制御する。太陽熱受熱装置20へ供給される過熱蒸気の温度(Ti)を計測する温度センサ(図示せず)、太陽熱受熱装置から払い出される過熱蒸気の温度(To)を計測する温度センサ(図示せず)及び太陽熱受熱装置20内の過熱蒸気の温度(Ts)を計測する温度センサ(図示せず)を設け、太陽熱受熱装置20へ過熱蒸気を供給する際に、Ti≧ToとTi≧Tsのうち少なくとも一つの場合には、バルブ26を閉じ過熱蒸気ヘッダ14から払い出される全ての過熱蒸気を太陽熱受熱装置20へ供給し、Ti<ToとTi<Tsのうち少なくとも一つの場合に、バルブ26を適切な開度で開き過熱蒸気ヘッダ14から払い出される過熱蒸気の一部を太陽熱受熱装置20を介さず蒸気タービン発電機15へ供給するようにして、太陽熱受熱装置20へ供給される過熱蒸気量を調整して太陽熱受熱装置20の過熱による損傷を回避する。バルブ26の開度は、太陽熱受熱装置20内の過熱蒸気の温度(Ts)を所定の範囲とするように調整される。
【0052】
なお、本実施形態では、上記蒸気供給制御装置24は、受熱量が所定の閾値以上であるときに過熱蒸気を供給するように制御を行うが、これに代えて、単に太陽熱受熱装置20が太陽熱を受熱しているとき、すなわちセンサ23が受熱を検知したときに過熱蒸気を太陽熱受熱装置20に供給するように制御することとしてもよい。
【0053】
太陽熱受熱装置20は、センサ23に検知された受熱量を検知した太陽熱受熱量が予め設定された閾値以下であるときに、太陽熱受熱装置20の受熱面を保熱材あるいは断熱材によって覆う機構を有していてもよい。例えば、上記センサ23に検知された受熱量に基づいて、上記蒸気供給制御装置24により上記機構の作動を制御するような構成にすることが可能である。
【0054】
このような機構を設けることにより、日中、天候の変化(例えば、曇りやにわか雨等)の影響で日射量が低減して、太陽熱受熱装置20の受熱面に太陽光が十分に入射しないた場合であっても、上記機構によって上記受熱面を保熱材あるいは断熱材で覆って該受熱面からの熱放散を抑制して熱ロスを低減することができる。この結果、太陽熱の受熱を再開したときあるいは受熱量が十分な量に戻ったときに、過熱蒸気生成や過熱蒸気加熱の加熱熱量を短時間で所定のレベルに戻すことができ、太陽熱による加熱熱量の変動を小さく抑制することができる。また、上記センサ23が太陽熱の受熱を全く検知していないときに上記受熱面が保熱材あるいは断熱材で覆われるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0055】
また、太陽熱受熱装置20は、センサ23に検知された受熱量を検知した太陽熱受熱量が予め設定された閾値以下であるときに過熱蒸気加熱を行う燃焼バーナ等の燃焼機器を有していていもよい。例えば、上記センサ23に検知された受熱量に基づいて、上記蒸気供給制御装置24によって、上記燃焼機器への燃料の供給そして該燃焼機器の作動を制御するような構成にすることが可能である。
【0056】
このような燃焼機器を設けることにより、受熱量が十分でない場合であっても、該燃焼機器によって過熱蒸気加熱を行うことができる。また、上記センサ23が太陽熱の受熱を全く検知していないときに上記燃焼機器による過熱蒸気加熱が行われるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0057】
<第三実施形態>
本実施形態に係る発電装置は、太陽熱受熱装置の内部に蓄熱材が設けられている点で、該蓄熱材が設けられていない第一実施形態に係る発電装置と異なっている。本実施形態では、該太陽熱受熱装置を中心に説明し、第一実施形態と同一の部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
図5は、本実施形態における太陽熱受熱装置を示す図である。図5に見られるように、該太陽熱受熱装置20の内部において、過熱蒸気配管21における受熱面側部分を除く部分(図5にて右半部)及び加圧温水配管22の全体の周囲が蓄熱材27で覆われている。
【0059】
蓄熱材27は、例えば、固体金属酸化物や熱媒油類や、好ましくは熱容量の大きい相変態物質としての溶融塩類(NaNO、KNO、NaCl、NaCO等)や、さらに好ましくは、金属水酸化物(水酸化鉄(蓄熱温度300〜400℃))、アルカリ土類炭酸塩(MgCO(蓄熱温度450℃))、アルカリ土類水酸化物(Ca(OH)(蓄熱温度540℃))等、化学反応による吸熱反応が得られる蓄熱物質で形成されている。
【0060】
本実施形態では、このように過熱蒸気配管21及び加圧温水配管22を蓄熱材27で覆うことにより、太陽熱の受熱量が変化しても該太陽熱を該蓄熱材27に蓄熱できるので、液体熱媒体を循環したり貯留する装置を用いずに受熱量を平滑化できる。
【0061】
<第四実施形態>
本実施形態に係る発電装置は、太陽熱受熱装置において過熱蒸気配管と加圧温水配管とが互いに間隙をもって配されている点で、第三実施形態に係る発電装置と異なっている。
【0062】
図6は、本実施形態に係る発電装置における太陽熱受熱装置を示す図である。図6に見られるように、加圧温水配管22は過熱蒸気配管21の背面に間隙をもって設けられている。また、該加圧温水配管22の周囲には蓄熱材27が設けられている。
【0063】
本実施形態における太陽熱受熱装置20では、過熱蒸気配管21の温度が所定温度以下であるときには、上記間隙により過熱蒸気配管21と加圧温水配管22とが断熱されている。そして、太陽熱を受熱したことにより該過熱蒸気配管21の温度が所定温度を超えると、過熱蒸気配管21の熱膨張により上記間隙が無くなり該過熱蒸気配管21が加圧温水配管22接触して抜熱される。この結果、過熱蒸気配管21が所定温度より高く加熱されて損傷することを防止するとともに、過熱蒸気配管21から加圧温水配管22に伝熱された太陽熱を加圧温水の加熱に利用できる。上記過熱蒸気配管21の所定温度は、過熱蒸気配管21の高温強度が低下する限界温度などに基づき設定される。
【0064】
本発明は、廃棄物発電装置に関するものであるが、廃棄物と同様の低カロリー燃料といえる汚泥やバイオマス、泥炭等を焼却又はガス化溶融する処理炉からの廃熱を利用する発電装置に適用することができ、廃棄物発電装置と同様に、発電効率向上効果を得ることができる。
【実施例】
【0065】
第一実施形態に係る発電装置を実施した実施例を説明する。該発電装置の太陽熱集熱装置の敷地面積は10000mである。敷地有効面積率が50%、面積当りの受熱量が68.32w/mであることを前提とすると太陽熱受熱装置の受熱量は341kwであり、受熱効率を75%とすると受熱した太陽熱で加熱された過熱蒸気による発電量は256kwである。
【0066】
上述の太陽熱受熱装置を有する発電装置を焼却炉能力が200t/日のごみ焼却炉に適用した場合について述べる。ここで、ごみ発熱量が2200kcal/kgであることを前提にすると、ごみ焼却により発生するごみ熱量は21300kwとなり、廃熱回収による発電量は3200kwであり、発電量の入熱量に対する比である発電効率は15.0%である。上記太陽熱受熱装置を有する発電装置を適用した結果、ごみ熱量と太陽熱受熱量との合計入熱量が21641kwであり、合計発電量が3456kwであるので、発電効率は16.0%となり、太陽熱受熱装置を有するごみ発電装置とすることにより、発電効率を1.0%増加させることができた。
【符号の説明】
【0067】
1 焼却炉(廃棄物処理炉)
2 輻射ボイラ
3 管群ボイラ
10,10’ 発電装置(廃棄物発電装置)
15 蒸気タービン発電機(蒸気タービン発電装置)
19 太陽熱集熱装置
20 太陽熱受熱装置
21 過熱蒸気配管
22 加圧温水配管
23 センサ
24 蒸気供給制御装置(蒸気供給制御手段)
26 蓄熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却またはガス化溶融する廃棄物処理炉施設に設ける廃棄物発電装置であって、
廃棄物処理炉から排出される排ガスから熱回収して蒸気を生成するボイラと、
太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置と、
集熱された太陽熱を受熱し、受熱した太陽熱との熱交換により、ボイラで生成した蒸気を飽和蒸気温度より高い温度に加熱して過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成及びボイラで生成した過熱蒸気をさらに加熱する過熱蒸気加熱のうち少なくとも一つを行う太陽熱受熱装置と、
生成された過熱蒸気により発電する蒸気タービン発電装置と、
を備えることを特徴とする太陽熱利用廃棄物発電装置。
【請求項2】
太陽熱受熱装置にて受熱した太陽熱と過熱蒸気との熱交換を行う機構が、ボイラで生成した過熱蒸気を蒸気タービンに供給する流路に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽熱利用廃棄物発電装置。
【請求項3】
太陽熱受熱装置での太陽熱の受熱を検知するセンサと、
上記センサが太陽熱の受熱を検知しているとき又は該センサが検知した太陽熱受熱量が所定値以上であるときに太陽熱受熱装置へ蒸気を供給する蒸気供給制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽熱利用廃棄物発電装置。
【請求項4】
太陽熱受熱装置での太陽熱の受熱を検知するセンサを備え、
太陽熱受熱装置は、上記センサが太陽熱の受熱を検知していないとき又は該センサが検知した太陽熱受熱量が所定値以下であるときに、太陽熱受熱装置の受熱面からの熱放散を抑制する保熱材又は断熱材により受熱面を覆う機構を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の太陽熱利用廃棄物発電装置。
【請求項5】
太陽熱受熱装置が太陽熱を受熱していないとき又は太陽熱受熱量が所定値以下のとき、過熱蒸気生成及び過熱蒸気加熱のうち少なくとも一つを行う燃焼機器を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載の太陽熱利用廃棄物発電装置。
【請求項6】
太陽熱受熱装置は、過熱蒸気を生成する過熱蒸気配管が受熱面側に設けられているともに、加圧温水配管又は蒸発管が該過熱蒸気配管の背面に接触して設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれかに記載の太陽熱利用廃棄物発電装置。
【請求項7】
太陽熱受熱装置は、過熱蒸気を生成する過熱蒸気配管が受熱面側に設けられているとともに、加圧温水配管又は蒸発管が該過熱蒸気配管の背面に間隙をもって設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれかに記載の太陽熱利用廃棄物発電装置。
【請求項8】
太陽熱受熱装置は、該太陽熱受熱装置の内部に蓄熱材を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちいずれかに記載の太陽熱利用廃棄物発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−169186(P2011−169186A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32242(P2010−32242)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】