説明

太陽熱吸収パネル、建築物の屋根構造

【課題】熱エネルギーを効率的に吸収可能であり、低コストでの製造が可能な太陽熱吸収パネルと、建築物の屋根に設置する際に屋根の表面からパネル表面がはみ出すことがなく、建築意匠の悪化や風きり音の発生等がない太陽光集熱が可能な建築物の屋根構造を提供する。
【解決手段】上面が透明な強化ガラス40により形成された中空構造の直方体状をなす筐体20と、筐体20の底面から所要間隔をあけた状態で保持具50によって保持され、内部空間に流通させた熱媒体が筐体20の内部と、筐体20の外部に設けられた吸熱槽60との間で循環可能に設けられた熱交換用管路30と、筐体20の底面および側面における内側表面に装着され、太陽光を熱交換用管路30に反射させるための反射22板と、を有していることを特徴とする太陽熱吸収パネル10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱吸収パネルとこれを装着してなる建築物の屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
無限エネルギーといえる太陽光を有効利用するために、建築物の屋根に配設して用いられる太陽光発電パネルや太陽熱吸収パネルが提供されている。このような太陽光発電パネルや太陽熱吸収パネルを用いることにより、発電や給湯が可能になるため、これら発電や給湯に要するエネルギーの消費を削除することができる。すなわち、化石燃料の消費量の削減および二酸化炭素の排出量の削減が可能になるため、広く好適に用いられている。
【0003】
このような太陽光発電パネルや太陽熱吸収パネルとしては、例えば特許文献1や非特許文献1に開示されているような構成が知られている。
特許文献1に開示されている集熱器は、建築物の屋根に設置して用いられ、太陽光を効率的に熱媒体供給管に吸収させるために焦点を有する放物線状の反射鏡を具備するものである。非特許文献1に開示されている太陽光発電パネルもまた建築物の屋根に設置して用いられ、太陽光により発電を行なうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−232524号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社ウエストホールディングス“太陽光発電で暮らしを支える〔ソーラーライフ〕太陽光発電・ソーラーパネル・オール電化の総合サイト”、[online]、[平成22年6月16日検索]、インターネット<URL:http://www.solarlife.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている集熱器は、図5に示すように、太陽光を集光する複数個の反射鏡3a〜3fと、それら反射鏡3a〜3fの焦点9a〜9fに設けられ、熱媒体が流通する集熱部1a〜1fと、これらの反射鏡3a〜3fと集熱部1a〜1fを収納する外装4とを具備し、それぞれの反射鏡3a〜3fの集熱部1a〜1fに集光する集光比を変化させて構成したものである。これよって、熱媒体の入口側の反射鏡3b〜3fは集熱部1b〜1fの表面積を拡大して多量の熱を収集し、出口側の反射鏡3aは集熱部1の表面積を縮小して太陽光をより集光して高温に加熱している。このため、集熱器の寸法は、一番大きな反射鏡3aの寸法により規制されることになり、非常に分厚い集熱器になってしまうという課題がある。
また、このような放物線曲面に形成された反射鏡3a〜3fは値段が高くなり、集熱器の製造コストが高くなってしまうという課題もある。
【0007】
また、非特許文献1に開示されている太陽光発電パネルは、建築物の屋根材の上に取付金具等を用いて載置した状態で用いられるため、建築意匠を損ねることが多く、設置後における外観の悪さや、強風時においては風きり音が発生する等といった住環境に対する悪影響の所在が知られている。
【0008】
本発明は、太陽光の熱エネルギーを効率的に吸収可能でありつつも、低コストでの製造が可能な太陽熱吸収パネルと、建築物の屋根に設置する際に屋根の表面からパネル表面がはみ出すことがなく、建築意匠の悪化や風きり音の発生等がない太陽光集熱が可能な建築物の屋根構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本願発明は、上面が透明な強化ガラスにより形成された中空構造の直方体状をなす筐体と、前記筐体の底面から所要間隔をあけた状態で保持具によって保持され、内部空間に流通させた熱媒体が前記筐体の内部と、前記筐体の外部に設けられた吸熱槽との間で循環可能に設けられた熱交換用管路と、前記筐体の底面および側面における内側表面に装着され、太陽光を前記熱交換用管路に反射させるための反射板と、を有していることを特徴とする太陽熱吸収パネルである。
【0010】
また、上面が透明な強化ガラスにより形成された中空構造の直方体状をなす筐体と、前記筐体の底面から所要間隔をあけた状態で保持具によって保持され、内部空間に流通させた熱媒体が前記筐体の内部と、前記筐体の外部に設けられた吸熱槽との間で循環可能に設けられた熱交換用管路と、前記筐体底面および側面における内側表面に装着され、太陽光を前記熱交換用管路に反射させるための反射板と、を有する太陽熱吸収パネルが、建築物の屋根の外周縁から所要間隔をあけた領域内において、前記屋根の表面高さ位置に前記強化ガラスの表面高さ位置を位置合わせした状態で配設されていることを特徴とする建築物の屋根構造としての発明もある。
【発明の効果】
【0011】
本発明における太陽熱吸収パネルの構成を採用することにより、平端面に反射板を配設しているため、反射板により太陽光を熱交換用管路に集中させる機能を有しつつも、製造コストを大幅に低減させることができる。また、建築物の屋根に太陽熱吸収パネルを設置する際は、太陽熱吸収パネルの上面である強化ガラスを屋根の表面と面一となるように設置しているので、太陽熱吸収パネルを装着しつつも建築意匠を損ねることはなく、風切り音の発生がないため、地球環境にやさしく快適な住環境を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態にかかる太陽熱吸収パネルの斜視図である。
【図2】図1中のA−A線における断面図である。
【図3】本実施形態にかかる太陽熱吸収パネルを屋根に装着した建築物の概略構造を示す正面図である。
【図4】図3中のB−B線における屋根部分のみの断面図である。
【図5】特許文献1にかかる集熱器の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる太陽熱吸収パネルの好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態における太陽熱吸収パネルの平面図である。図2は、図1中のA−A線における断面図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる太陽熱吸収パネル10は、上面が開口面をなした扁平な直方体形状に形成された筐体20と、筐体20の内部空間に一部が収容された熱交換用管路30と、筐体20の上面開口部に装着され採光面となる透明な強化ガラス40と、を有している。
【0014】
筐体20は、アルミニウム合金等からなる薄板により形成されている。筐体20の内表面(底面および側面の内側表面)には、反射板22が取り付けられている。このような反射板22としては、株式会社アイゼット社の製品名「リフラッシュ」なる反射板を好適に用いることができる。反射板22は平坦板状に形成されたものを筐体20の内表面に沿って単に取り付ける形態はもちろんのこと、筐体20の内部空間に収容されている熱交換用管路30に反射光を集中させるように、適宜曲折した曲折板に形成した反射板22を内表面に取り付ける形態とすることもできる。
【0015】
筐体20の内部空間には、熱媒体を流通させて、太陽光からの熱を吸収させるための熱交換用管路30が収容されている。熱交換用管路30は銅管もしくはステンレス管により形成されていて、流通させる熱媒体としてはエチレングリコール等のいわゆる不凍液が好適に用いられる。熱交換用管路30は、延長方向における所要範囲が図1に示すように、筐体20の内部空間にコイル状配列で収容されている。筐体20内に収容されている熱交換用管路30は、筐体20の底面に配設した保持具50により筐体20の底面との間に所要間隔をあけた状態で保持されている。熱交換用管路30は太陽熱吸収パネル10の外部に配設された吸熱槽60およびポンプ等の循環駆動源62(ともに図3参照)を通過することにより熱媒体による熱の吸収および放出(熱交換)を行なっている。このようにして熱交換用管路30は太陽熱吸収パネル10の内部と外部との間で熱媒体を循環させている。熱媒体に吸熱させた熱エネルギーを放出させるための吸熱槽60としては、給湯用水タンクや、蓄熱剤を収容した運搬可能なタンクや、熱交換用管路30に循環させている熱媒体よりも沸点が低い他の熱媒体を用いて、蒸発させた他の熱媒体により回転させる蒸気タービンを有する小規模発電装置等を用いることができる。
【0016】
筐体20の上面開口部分には強化ガラス40が取り付けられている。開口部に透明材料を用いることで、太陽熱吸収パネル10の採光面として機能させている。強化ガラス40の筐体20の内部空間側表面には、光拡散用フィルム42を取り付けることもできる。このように光拡散用フィルム42を用いることで、筐体20の内表面に配設されているそれぞれの反射板22に対して均等に光を照射することができるため好都合である。なお、強化ガラス40への光拡散用フィルム42の貼着は省略しても良い。
【0017】
次に、図1および図2で示した太陽熱吸収パネル10を配設した建築物の屋根構造について説明する。図3は、本実施形態にかかる太陽熱吸収パネルを屋根に装着した建築物の概略構造を示す正面図である。図4は、図3中のB−B線における屋根部分のみの断面図である。
図3に示すように、建築物の屋根100には、屋根100の外周縁領域よりも一回り小さい配設領域(配設領域の外周縁位置が屋根100の外周縁位置から内側領域に向かって所要距離離間した位置となる領域)に先の実施形態で説明した太陽熱吸収パネル10が配設されている。本実施形態では屋根100に5枚の太陽熱吸収パネル10を配設した形態について図示しているが、太陽熱吸収パネル10の配設枚数は特に制限されるものではない。また、各太陽熱吸収パネル10の熱交換用管路30は共通または各々の吸熱槽60を経由して、各熱交換用管路30の中途位置に配設されているポンプ等の循環駆動源62により太陽熱吸収パネル10と吸熱槽60との間で熱交換しながら循環している。
【0018】
太陽熱吸収パネル10は、上面の採光面である強化ガラス40の上面高さ位置を屋根100の表面高さ位置(屋根100を構成する屋根材101の表面高さ位置)と面一となるように配設されている。屋根材101の厚さ寸法と太陽光吸収パネル10の厚さ寸法が異なる場合には、本実施形態に示すように、屋根材101が載置される部位における第1の下地板(第1の野地板90)の高さ位置と太陽熱吸収パネル10が載置される部位における第2の下地板(第2の野地板92)の高さ位置をあらかじめずらしておけばよい。
このような配設形態を採用することで、屋根100の表面から太陽熱吸収パネル10の突出部分がなくなり、建築意匠の悪化を防ぐと共に、風切り音の発生を防ぐことができる。また、太陽熱吸収パネル10を屋根100への取り付ける際に必要であった取付金具を省略することができ点においても好都合である。
【0019】
本実施形態における太陽熱吸収パネル10を取り付けた建築物の屋根100の構成によれば、熱交換用管路30内を流通する熱媒体に吸熱させた熱エネルギーの熱交換を行なう吸熱槽60の種類を適宜選択することができる。これにより、太陽光エネルギーを利用した給湯設備として利用形態に加え、太陽光発電装置としての利用形態も可能であり、いわゆるハイブリッド型の太陽エネルギー利用装置として利用することが容易である点で使い勝手がきわめて良好である。
【符号の説明】
【0020】
10 太陽熱吸収パネル
20 筐体
22 反射板
30 熱交換用管路
40 強化ガラス
42 光拡散用フィルム
50 保持具
60 吸熱槽
62 循環駆動原
90 第1の野地板
92 第2の野地板
100 屋根
101 屋根材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が透明な強化ガラスにより形成された中空構造の直方体状をなす筐体と、
前記筐体の底面から所要間隔をあけた状態で保持具によって保持され、内部空間に流通させた熱媒体が前記筐体の内部と、前記筐体の外部に設けられた吸熱槽との間で循環可能に設けられた熱交換用管路と、
前記筐体の底面および側面における内側表面に装着され、太陽光を前記熱交換用管路に反射させるための反射板と、を有していることを特徴とする太陽熱吸収パネル。
【請求項2】
上面が透明な強化ガラスにより形成された中空構造の直方体状をなす筐体と、前記筐体の底面から所要間隔をあけた状態で保持具によって保持され、内部空間に流通させた熱媒体が前記筐体の内部と、前記筐体の外部に設けられた吸熱槽との間で循環可能に設けられた熱交換用管路と、前記筐体底面および側面における内側表面に装着され、太陽光を前記熱交換用管路に反射させるための反射板と、を有する太陽熱吸収パネルが、建築物の屋根の外周縁から所要間隔をあけた領域内において、前記屋根の表面高さ位置に前記強化ガラスの表面高さ位置を位置合わせした状態で配設されていることを特徴とする建築物の屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7420(P2012−7420A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145555(P2010−145555)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(303053459)株式会社エル・アイ・シー (6)
【Fターム(参考)】