説明

太陽電池およびその製造方法

【課題】光電変換層が薄膜で形成される太陽電池において、光の利用効率を低下させることなく、光入射側電極の導電率を高めることができる太陽電池を得ること。
【解決手段】透光性絶縁基板1上に、透明電極層4と、光電変換を行う光電変換層5と、裏面電極層6と、が順に積層され、第1の辺が第2の辺よりも長く形成される矩形状の複数の単位太陽電池セル2が、第2の辺の方向に沿って直列に接続されるように形成される太陽電池において、透光性絶縁基板1上の単位太陽電池セル2が形成される領域に、三角形状の断面を有して第2の辺の方向に延在し、第1の辺の方向に所定の間隔で形成される金属電極層3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電変換層が薄膜で形成された太陽電池およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池では発電層となる半導体層により多くの光を導入するための工夫がなされている。たとえば、光電材料からなる光電基板と、基板受光面の一部に取り付けられた入射側金属電極と、裏面電極からなる太陽電池において、入射側金属電極を入射光に対して斜面または曲面を有するように形成して、入射光の少なくとも一部を光電基板の受光面へと反射させて光利用効率を高める構造のものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このほかに、薄膜太陽電池で、発電層となる半導体層を透光性絶縁基板上に形成し、半導体層へ光を導入するために、透光性絶縁基板上に形成される光入射側電極に透明電極を使用している。しかし、この透明電極を形成する透明導電性薄膜は導電率が低く、透明電極中に長い距離電流が流れるとジュール損失によるエネルギ変換効率の低下が無視できなくなる。そこで、従来では、透光性絶縁基板に断面形状が台形状を有する溝を形成し、この溝に導電性電極またはリードを埋置し、この導電性電極またはリードを埋置した透光性絶縁基板上に、透明電極、PIN接合を有する半導体層、および裏面電極を形成し、光入射側電極の導電率を高めた構造の薄膜太陽電池が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】実開昭62−74349号公報
【特許文献2】特開昭58−14873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、太陽電池の表面に、入射側金属電極が露出する構造となるため、外力による変形や表面腐食の影響を受け、その結果、受光面に到達する反射光が減少してしまうという問題点があった。また、入射側金属電極部の形状は、表面が平滑でかつその断面形状が鋭利な頂角を持つ三角であることが理想的であるが、印刷法によってこのような理想的な形状を有する入射側金属電極を形成することは困難であるという問題点もあった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の技術では、透光性絶縁基板に埋置された金属電極の断面形状は、側壁がテーパ形状の台形状であり、この金属電極に入射した光の大部分は上辺で反射されてしまい、発電層である半導体層へと導入されることがないため、光利用効率が低下し、薄膜太陽電池のエネルギ変換効率を低下させてしまうという問題点があった。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、光電変換層が薄膜で形成される太陽電池において、光の利用効率を低下させることなく、光入射側電極の導電率を高めることができる太陽電池とその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明にかかる太陽電池は、透光性絶縁基板上に、透明電極層と、光電変換を行う光電変換層と、裏面電極層と、が順に積層された複数の単位太陽電池セルが、所定の方向に直列に接続される太陽電池において、前記透光性絶縁基板は前記単位太陽電池セルが形成される領域にV溝を有し、 前記V溝に前記透明電極層と接する金属電極層が埋め込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、透光性絶縁基板に、断面がV字形状の金属電極層を埋め込み、この上に透明電極層、光電変換層および裏面電極層を含む単位太陽電池セルを形成したので、金属電極部層に入射した光もその傾斜した表面で反射されて光電変換層へと導入されるため、光利用効率が低下することなく、光入射側電極の導電率を高めることができる。また、光電変換層で生じた光電流は、透明電極層から金属電極層を通るので、従来の光入射側電極が透明電極層からなる場合に比して、ジュール損失を低減することができ、薄膜太陽電池のエネルギ変換効率を高めることができる。さらに、金属電極部が透光性基板内の溝部に形成されるため、大気中に露出せず、外力などによる変形や表面腐食の影響を抑えることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる太陽電池およびその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施の形態で用いられる太陽電池の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる。
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明にかかる太陽電池の実施の形態1の構成の一例を示す平面図であり、図2は、図1のA−A断面図であり、図3は、図1のB−B断面図である。なお、図1において、紙面の左右方向をX軸方向とし、紙面内のX軸に垂直な方向をY軸とする。
【0012】
この太陽電池は、透光性絶縁基板1上に短冊状(矩形状)の単位太陽電池セル2を、その長軸方向をY軸方向に一致させ、X軸方向に所定の距離をおいて複数配置した構造を有する。また、これらのX軸方向に配列された単位太陽電池セル2を直列に接続することで薄膜太陽電池モジュールを構成している。
【0013】
単位太陽電池セル2は、透光性絶縁基板1上に透明電極層4と、光電変換層5と、裏面電極層6と、が順に積層された構成を有する。ここで、透明電極層4は、ZnO、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2などの透明導電性酸化膜や、これらの透明導電性酸化膜にAlなどの金属材料を添加した膜などによって構成される。
【0014】
光電変換層5は、PN接合またはPIN接合を有し、入射する光によって発電を行う薄膜半導体層が1層または複数層積層された構造を有する。薄膜半導体層として、水素化アモルファスシリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコンゲルマニウム、微結晶シリコンゲルマニウム、アモルファス炭化シリコン、微結晶炭化シリコンなどを用いることができる。さらに、光電変換層5が、複数の薄膜半導体層の積層膜からなる場合には、異なる薄膜半導体層間に、ITOやZnOなどの透明導電性膜や、不純物をドーピングして導電性を向上させたSiO2やSiNなどの珪素化合物膜を中間層として挿入してもよい。
【0015】
裏面電極層6として、導電率が高くかつ光反射率の高い材料を用いることが望ましく、銀とアルミニウムの積層膜や、金、クロム、チタン、ニッケルなどの金属を用いることができる。
【0016】
この太陽電池は、隣接する単位太陽電池セル2間で透明電極層4と裏面電極層6とを接続した構造となっているため、単位太陽電池セル2において、透明電極層4の形成位置と光電変換層5と裏面電極層6の形成位置とが、X方向にずれて形成されている。図2を用いて具体的に説明すると、単位太陽電池セル2−1は、溝8よって隣接する透明電極層4−2と分離された構造を有する透明電極層4−1上に、光電変換層5−1と裏面電極層6−1との積層体が形成されるが、この積層体は、自身の属する単位太陽電池セル2−1の透明電極層4−1とX軸方向の右側に隣接する単位太陽電池セル2−2の透明電極層4−2の一部とにまたがるように形成される。また、光電変換層5−1の隣接する単位太陽電池セル2−2の透明電極層4−2と重なる位置には、隣接する単位太陽電池セル2−2の透明電極層4−2と自身の属する単位太陽電池セル2−1の裏面電極層6−1とを接続するための接続溝9が形成されている。そして、この接続溝9に裏面電極層6−1を形成する導電性材料と同じ材料を埋め込むことで、単位太陽電池セル2−1の裏面電極層6−1が、隣接する単位太陽電池セル2−2の透明電極層4−2と電気的に接続された構造となる。
【0017】
このような構造を有する太陽電池において、この実施の形態1では、単位太陽電池セル2が形成される透光性絶縁基板1上の所定の位置に、金属電極層3が形成される構成を有する。この金属電極層3は、各単位太陽電池セル2の光電変換層5が形成されるX軸方向の長さとほぼ等しい長さで、Y軸方向に所定の間隔をおいて、透光性絶縁基板1に形成されたV溝7に埋め込まれて形成される。また、X軸方向に垂直な方向の断面はV字形状を有している。この金属電極層3として、Alなどの太陽光に対する反射率が高く、透明電極層よりも導電率の高い金属膜を用いることができる。そして、この実施の形態1では、各単位太陽電池セル2の透明電極層4と透光性絶縁基板1に埋置された金属電極層3とを組み合わせて、光入射側電極としている。
【0018】
図4は、断面がV字形状の金属電極の一例を示す一部断面図である。ここでV字形状の断面とは、図4に示すように透光性絶縁基板1の主表面に対してなす角度αが45度よりも大きく傾斜する2つの斜面から構成された断面と定義する。2つの斜面同士は鋭角に交差して、断面の先端は鋭角となっている。このような断面形状を持つ金属電極層3は透光性絶縁基板1に対して45度より急な斜面を有するので、透光性絶縁基板1側から垂直に入射した光をこの斜面で光電変換層5側に反射することができる。またV溝7は断面が厳密に三角形の溝でなくてもよく、多少湾曲した斜面からなる溝であってもよいし、先端がわずかに丸くなっていても構わない。
【0019】
また太陽電池に入射する太陽光の角度は太陽の位置により変動する。図5は、断面がV字形状の金属電極と南中時の太陽との位置関係を示す一部断面図である。この図5を用いて具体的に説明すると、太陽電池を春分の日と秋分の日の南中時の太陽15aと正対するように設置した場合、春分の日と秋分の日の南中時は太陽光が透光性絶縁基板1に対して垂直に入射する。しかし、太陽の南中高度は季節により変動し、夏至の日に太陽15bの南中高度は最も高くなり、冬至の日で太陽15cの南中高度は最も低くなり、その変動幅は、春分の日と秋分の日の太陽15aの南中高度に対して±23.4度となる。そこで、季節にかかわらず南中時の太陽光を光電変換層5側に反射するためには、V字形状の金属電極層3の斜面の絶縁性透光基板1の主表面に対してなす角度αを56.7度以上することが望ましい。
【0020】
金属電極層3を、入射面側を頂点とするV字形状の断面形状を有し、X軸方向に延在した構造とすることで、入射光Lが、この金属電極層3に入射したとしてもV字形状の金属電極層3の表面で光電変換層5側へと反射することができる。また、光電変換層5のバンドギャップ以上のエネルギを有する光で、光電変換層5を通過した光は裏面電極層6で再び光電変換層5へと反射される。なお、金属電極層3の頂点に入射する光の割合は非常に少ないので、上記特許文献2の断面形状が台形の電極層を形成する場合に比して、入射光の光利用効率の低下を防止することができる。
【0021】
ここで、この実施の形態1の太陽電池による動作について説明する。光電変換層5に光が入射すると光電流が発生し、光入射側電極と裏面電極層6に収集される。このとき、光電変換層5で生じた光電流は、透明電極層4に収集され、さらにその下部に帯状に埋置されたより導電率の高い金属電極層3中を単位太陽電池セルの短辺方向(X軸方向)に流れ、隣接する単位太陽電池セル2の裏面電極層6へと流れていく。このように光入射側電極に高導電率の金属電極層3を用いることで、光電流は透明電極層4よりも導電率の高い金属電極層3を経由することになり、透明電極層4が電流経路となる従来の構造の薄膜太陽電池と比較して、光入射側電極中でのジュール損失が低減され、薄膜太陽電池のエネルギ変換効率を高めることができる。
【0022】
図6は、単位太陽電池セルの形成位置に埋め込まれる金属電極層の間隔と単位太陽電池セルの短辺の長さとの関係を模式的に示す図である。この図6に示されるように、単位太陽電池セル2に埋置される金属電極層3間の間隔(隣接する金属電極層3間の対向する辺間の距離)をdとし、単位太陽電池セル2の短辺(X軸方向に平行な辺)の長さをWとすると、次式(1)の関係となるように、金属電極層3の間隔dを設定することが望ましい。
d≦2W ・・・(1)
【0023】
このような関係とすることにより、光電変換層5で発生した電流が透明電極層4を流れ金属電極層3に到達するまでの電流経路は最長でもW以下となる。金属電極層3を埋置しなかった場合の単位太陽電池セル2内の最長の電流経路はWであるから、上記のように金属電極層3を配置することにより、金属電極層3よりも導電率の低い透明電極層4中の電流経路を短縮し、発生するジュール損失を低減することができる。
【0024】
また、従来の光入射側電極が透明電極層4のみである太陽電池では、透明電極層4中のジュール損失を低減するために、単位太陽電池セル2の短辺(X軸に平行な辺)の長さを最大でも20mm程度に制限する必要があった。しかし、この実施の形態1のように、金属電極層3と組み合わせることにより、ジュール損失による制限が緩和され、単位太陽電池セル2の形状をより幅広とすることもできる。
【0025】
つぎに、このような構造の太陽電池の製造方法について説明する。図7−1〜図7−6は、図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図であり、図8−1〜図8−9は、図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である。
【0026】
まず、ここでは、透光性絶縁基板1として平板状の白板ガラスを用いる(図7−1、図8−1)。この透光性絶縁基板1上に、Y軸に垂直な断面がV字形状のV溝7を、Y軸方向に間隔dで帯状に形成する(図7−2、図8−2)。ただし、このV溝7は、X軸方向には長さWとなるように区切られている。つまり、X軸方向の長さWのV溝7がY軸方向に間隔dで形成された単位太陽電池セル形成領域が、X軸方向に所定の間隔をおいて複数配置される。
【0027】
図9−1〜図9−2は、V溝の形成方法の一例を示す図である。図9−1に示されるように、透光性絶縁基板1上に幅Wの開口部11aを有するステンシルマスク11を配置し、これを開口部11aの幅Wと同じ幅で揺動させながらプラズマ中でドライエッチングを行う。透光性絶縁基板1に加工されるエッチング溝の深さはプラズマに露出される時間によってほぼ決定されるため、図9−2に示されるように、底辺(幅)2WのV溝7が形成される。さらに、V溝7の形成後に、ライトエッチングを施すによってV溝7の表面を平滑にすることが望ましい。また、このV溝7の他の加工方法としては、V字ブレードを用いた精密切削加工を用いてV溝7を形成してもよいし、ポリイミドフィルムなどのより軟質な材料を透光性絶縁基板1として使用する場合には、インプリント法によってV溝7を形成してもよい。
【0028】
その後、V溝7内に銀粒子を拡散させたインクを印刷した後に焼成して、V溝7を満たすように金属電極層3を形成する(図7−3、図8−3)。なお、金属電極層3を構成する電極材料として、銀のほかに、アルミニウム(Al)や金、クロム、ニッケル、チタンなどの金属を用いてもよい。また、V溝7内の表面にのみ高光反射率を有する金属膜を形成し、V溝7の中心部(金属電極層3の中心部)には半田などの光反射率の低い導電性材料を形成してもよい。さらに、金属電極層3の形成方法としては、このほかに無電解めっき法や溶融金属を直接V溝7内に注入する方法を用いてもよい。また、金属電極層3を形成後、透光性絶縁基板1と金属電極層3との段差を低減するため、研磨などの処理を行うことが望ましい。
【0029】
ついで、透明電極層4としてAlを添加したZnO膜をスパッタリング法によって、金属電極層3を形成した透光性絶縁基板1上に成膜する(図7−4、図8−4)。透明電極層4を構成する電極材料として、ZnO膜のほかにITO,SnO2の導電性酸化膜や、導電率向上のためにこれらの導電性酸化膜にAlなどの金属を添加した膜を用いることができる。また、成膜方法としてCVD法などの他の成膜方法を用いてもよい。さらに、この例では透光性絶縁基板1に金属電極層3を形成後に透明電極層4を成膜しているが、透光性絶縁基板1上に透明電極層4を成膜した後に金属電極層3を形成してもよい。
【0030】
その後、レーザスクライブ法によって透明電極層4をX軸方向に間隔Wで切断し、透明電極層4を単位太陽電池セル2ごとに使用される長さに分離する(図8−5)。これによって、透明電極層4は、Y軸方向に延在する溝8によって分離される。ついで、透明電極層4上に、薄膜半導体層をCVD法によって堆積し、光電変換層5を形成する(図7−5、図8−6)。なお、薄膜半導体層としては、水素化アモルファスシリコン膜や微結晶シリコン膜、アモルファスシリコンゲルマニウム膜、微結晶シリコンゲルマニウム膜、アモルファス炭化シリコン、微結晶炭化シリコン膜などや、これらの積層膜を用いてもよい。また、複数の薄膜半導体層を積層して光電変換層5を形成してもよい。この場合には、異なる薄膜半導体層間にITO、ZnOなどの透明導電膜や、不純物を添加して導電性を向上させたSiO2膜やSiN膜の珪素化合物膜を中間層として挿入してもよい。
【0031】
ついで、レーザスクライブ法によって光電変換層5をX軸方向に間隔Wで切断し、光電変換層5を単位太陽電池セル2ごとに分離する(図8−7)。この場合、下層の透明電極層4が露出するように分離する。これによって、光電変換層5には、裏面電極層6と隣接する単位太陽電池セル2の透明電極層4とを電気的に接続する際に使用する接続溝9が形成される。
【0032】
その後、接続溝9を形成した光電変換層5上に、銀とAlの積層膜からなる裏面電極層6をスパッタリング法によって形成する(図7−6、図8−8)。このとき、光電変換層5中に形成した接続溝9内を裏面電極層6が満たすような条件で、裏面電極層6を形成する。裏面電極層6の材料として、ほかに金、クロム、チタン、ニッケルなどの金属を用いてもよい。また、裏面電極層6の成膜方法として、CVD法や塗布法などを用いてもよい。
【0033】
そして、レーザクスライブ法によって裏面電極層6と光電変換層5をX軸方向に所定の長さで切断することによって、隣接する単位太陽電池セル2とを分離する分離溝10を形成し、単位太陽電池セル2が形成される(図8−9)。これによって、隣接する単位太陽電池セル2間で透明電極層4と裏面電極層6とが直列に接続される構造の太陽電池が得られる。
【0034】
この実施の形態1によれば、透光性絶縁基板1の単位太陽電池セル2の形成領域に合わせて、光入射側に鋭角の頂角をもつV溝を形成し、このV溝に金属電極層3を埋め込み、その上に透明電極層4、光電変換層5および裏面電極層6を含む単位太陽電池セル2を形成するようにしたので、金属電極層3の位置に入射した光は、金属電極層3の表面によって光電変換層5へと反射され、金属電極層3の頂点に入射する光はほとんどない。また、光電変換層5で発電された光電流が、透明電極層4に到達した後、透明電極層4よりも導電率の高い金属電極層3を経由して隣接する単位太陽電池セル2の裏面電極層6へと流れる。これによって、透明電極層4が電流経路となる従来の構造の薄膜太陽電池と比較して、光入射側電極中でのジュール損失が低減され、光の利用効率を落とすことなく、薄膜太陽電池のエネルギ変換効率を高めることができるという効果を有する。さらに、光入射側電極に金属電極層3を用いることによって、導電率を高めることができ、単位太陽電池セルの配列方向における単位太陽電池セルの長さを、透明電極層4が電流経路となる従来の構造の薄膜太陽電池と比較して、長くすることができるという効果も有する。また、金属電極層3が透光性絶縁基板1に埋め込まれる構造であるので、外力による変形や表面腐食の影響を受け難いという効果も有する。
【0035】
実施の形態2.
図10−1〜図10−5は、図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の他の例を示す一部断面図である。なお、ここでは、太陽電池の製造方法のうち、金属電極層の形成方法について示している。
【0036】
この実施の形態2でも、透光性絶縁基板1には白板ガラスを用いる(図10−1)。この透光性絶縁基板1に紫外線レーザを用いた加工によって、X軸方向に延在した加工溝12をY軸方向に所定の間隔で形成する(図10−2)。この加工溝12は、実施の形態1の場合とは異なり、断面形状が略三角形である必要はなく、またその表面も平滑でなくともよい。また、ここでは紫外線レーザによる加工法を用いて加工溝12を形成したが、機械的な切削加工や、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術(ウエットエッチング、ドライエッチング)による加工などの方法を用いて加工溝12を形成してもよい。
【0037】
ついで、加工溝12にポリイミドなどの透光性樹脂13を注入する(図10−3)。透光性樹脂13は、透光性絶縁基板1(ガラス基板)の屈折率に近い値を有する材料であることが望ましい。透光性絶縁基板1としてガラス基板を用いる場合には、ポリカーボネートなどの透光性樹脂を用いてもよい。
【0038】
その後、三角形状の断面を有し、X軸方向に延在した突起部14aがY軸方向に所定の間隔で形成された金型14を、透光性絶縁基板1に形成した透光性樹脂13に押し付けるインプリント法によって、透光性樹脂13にその断面形状がV字形状となるV溝7を形成する(図10−4)。このように透光性樹脂13に形成されるV溝7の表面は平滑となり、その頂角もより鋭角なものとなる。なお、このV溝7のX軸方向の長さが、単位太陽電池セル2のX軸方向の長さWと等しくなるように、V溝7がX軸方向に所定の間隔をおいて形成される。
【0039】
そして、このV溝7内に金属電極層3を形成する(図10−5)。これ以降は実施の形態1の図7−4以降および図8−4以降に説明したものと同様の工程によって太陽電池が製造されるので、その説明を省略する。
【0040】
この実施の形態2によれば、透光性絶縁基板1に硬質なガラス材料を使用した場合でも、断面形状が略三角形となる溝を容易に加工することができる。またその断面の表面がより平滑で、かつその形状も頂角がより鋭利な三角形に近い形状とできるため光の利用効率を高めることができるという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、この発明にかかる太陽電池の製造方法は、光電変換層が薄膜で構成される薄膜太陽電池を製造する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明による太陽電池の実施の形態1の構成の一例を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】断面がV字形状の金属電極の一例を示す一部断面図である。
【図5】断面がV字形状の金属電極と南中時の太陽との位置関係を示す一部断面図である。
【図6】単位太陽電池セルの形成位置に埋め込まれる金属電極層の間隔と単位太陽電池セルの短辺の長さとの関係を模式的に示す図である。
【図7−1】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その1)。
【図7−2】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その2)。
【図7−3】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その3)。
【図7−4】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その4)。
【図7−5】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その5)。
【図7−6】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その6)。
【図8−1】図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その1)。
【図8−2】図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その2)。
【図8−3】図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その3)。
【図8−4】図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その4)。
【図8−5】図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その5)。
【図8−6】図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その6)。
【図8−7】図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その7)。
【図8−8】図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その8)。
【図8−9】図1のB−B断面における太陽電池の製造方法の一例を示す一部断面図である(その9)。
【図9−1】断面がV字形状のV溝の形成方法の一例を示す図である(その1)。
【図9−2】断面がV字形状のV溝の形成方法の一例を示す図である(その2)。
【図10−1】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の他の例を示す一部断面図である(その1)。
【図10−2】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の他の例を示す一部断面図である(その2)。
【図10−3】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の他の例を示す一部断面図である(その3)。
【図10−4】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の他の例を示す一部断面図である(その4)。
【図10−5】図1のA−A断面における太陽電池の製造方法の他の例を示す一部断面図である(その5)。
【符号の説明】
【0043】
1 透光性絶縁基板
2 単位太陽電池セル
3 金属電極層
4 透明電極層
5 光電変換層
6 裏面電極層
7 V溝
8 溝
9 接続溝
10 分離溝
11 ステンシルマスク
11a 開口部
12 加工溝
13 透光性樹脂
14 金型
14a 突起部
15a 南中時の太陽(春分の日、秋分の日時)
15b 南中時の太陽(夏至時)
15c 南中時の太陽(冬至時)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性絶縁基板上に、透明電極層と、光電変換を行う光電変換層と、裏面電極層と、が順に積層された複数の単位太陽電池セルが、所定の方向に直列に接続される太陽電池において、
前記透光性絶縁基板は前記単位太陽電池セルが形成される領域にV溝を有し、
前記V溝に前記透明電極層と接する金属電極層が埋め込まれていることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記V溝は、前記透光性絶縁基板の主表面に対して56.7度より大きな角度で傾斜する2つの斜面から構成された溝であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記単位太陽電池セルは、第1の辺が第2の辺よりも長く形成された矩形状を有し、前記第2の辺の方向に沿って直列に前記透光性絶縁基板上に複数接続され、
前記金属電極層は、前記第2の辺の方向に延在し、前記第1の辺の方向に所定の間隔で形成されることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記透光性絶縁基板の前記金属電極層が形成される領域の周辺部は、前記透光絶縁基板の屈折率に近い透光性樹脂で形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の太陽電池。
【請求項5】
前記金属電極層の前記第1の辺の方向の間隔は、前記単位太陽電池セルの前記第2の辺の長さの2倍以下であることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項6】
透光性絶縁基板上に、後に単位太陽電池セルを形成する領域の所定の方向に、V字形状の断面を有する溝形成工程と、
前記溝内を金属で埋め、金属電極層を形成する金属電極層形成工程と、
前記透光性絶縁基板の前記金属電極層形成面側の前記単位太陽電池セルの形成領域上に、透明電極層、光電変換層および裏面電極層を含む単位太陽電池セルを形成するセル形成工程と、
を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記溝形成工程では、
前記透光性絶縁基板上に、後に単位太陽電池セルを形成する領域の所定の方向に溝を形成する第1の工程と、
前記透光性絶縁基板と屈折率の近い透明性樹脂で前記溝を埋める第2の工程と、
前記太陽電池の形成領域の所定の方向に延在し、V字形状の断面を有する突起が形成された金型を用いて、前記透光性絶縁基板上の前記透明樹脂部に前記所定の方向に延在する断面がV字形状の溝を形成する第2の工程と、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【図8−6】
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【図8−7】
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【図8−8】
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【図8−9】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図10−5】
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