説明

太陽電池の裏面反射層形成用ポリイミド樹脂組成物及びそれを用いた太陽電池の裏面反射層形成方法

【課題】耐熱性や各種耐久性に優れ、太陽電池の変換率及び長期使用時の信頼性の向上に寄与することができる、太陽電池の裏面反射層を簡便で低コストに形成することができる太陽電池の裏面反射層の形成方法及びそれに用いられる組成物並びに該方法により形成された裏面反射層を持つ太陽電池を提供すること。
【解決手段】太陽電池の裏面反射層形成用ポリイミド樹脂組成物は、有機溶媒と、該有機溶媒に溶解されたポリイミド樹脂と、該有機溶媒に分散された光反射性粒子とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の裏面反射層形成用ポリイミド樹脂組成物及びそれを用いた太陽電池の裏面反射層形成方法並びに該方法により形成された裏面反射層を持つ太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン太陽電池において、その高効率化および低価格化は重要な課題となっている。
図1は、現在主に用いられている結晶シリコン太陽電池の構造を示す図面である。現在主に用いられている結晶シリコン太陽電池は、結晶シリコン基板1、拡散層2、表面反射防止膜3、BSF(back surface field)層4、第一電極5(受光面側の電極)、第二電極6(裏面側の電極)を備える。
各電極の形成について、受光面側の電極(図1の第一電極5)は銀(Ag)ペーストを、裏面側の電極(図1の第二電極6)はアルミニウム(Al)ペーストを塗布し、焼成することにより形成される。
【0003】
しかしながら、現在主に用いられている結晶シリコン太陽電池は、特に裏面側において、シリコンとアルミニウムとの熱膨張係数の違いから、焼成後に基板が反ってしまうこと、キャリアの再結合が大きいこと、反射率が小さいことといった問題点を抱えている。これらの問題点は太陽電池の高効率化の障害となる。また、太陽電池の厚さを薄くしようとする場合、これらの問題点は太陽電池の高効率化のより顕著な障害となる。
【0004】
これらの問題点を解決する手法として、結晶シリコン太陽電池の裏面側の構造をAlペーストによる全面電極ではなく、裏面の一部分に電極を形成し、そのほかの部分をシリコン酸化膜やシリコン窒化膜(SiN膜)といった裏面パッシベーション膜(裏面反射層とも呼ばれる)で覆うようにした構造のバックコンタクトソーラーセル(back side contact solar cell structures)が提案されている(非特許文献1, 2)。しかしながら、非特許文献1および2において提案されている手法では、裏面にシリコン酸化膜やSiN膜を形成した後、フォトリソグラフィとエッチングとを用いて膜に孔をあけることで、コンタクトが形成されているため、コストの観点からは望ましくない。また、コンタクトを形成する方法に関して、特許文献1では、ダイシングソーを用いる方法や、レーザを用いる方法が提示されている。しかしながら、膜を全面に堆積してから、コンタクトの孔をあける方法では、作製行程が複雑となる問題があった。
【0005】
ポリイミド樹脂に代表される耐熱性樹脂は、耐熱性及び機械的性質が優れていることから、エレクトロニクスの分野における半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜としてすでに広く使われている。一方、特許文献3及び4で太陽電池素の表面に形成する1次パッシベーション層、2次パッシベーション層の製造法が詳細に示されている。 太陽電池は、太陽の照射を電気エネルギーに変換する公知の装置である。太陽電池は、半導体プロセス技術を使用して、半導体ウェハ上に製造することができる。
【0006】
また、裏面側の反射率の向上は、裏面パッシベーション膜とアルミニウムや銀で形成された電極からの反射を増加させることにより行われている。例えば、特許文献1では、裏面側に形成したSiN膜(特許文献1における「窒化シリコン膜」)の膜厚を限定することで裏面での反射を増加させている。しかしながら、裏面側に用いるSiN膜は、主に化学気相堆積法(CVD法)で作製されるため、作製コストが高いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−172279号公報
【特許文献2】米国特許第5,053,083号明細書
【特許文献3】米国特許第4,927,770号明細書
【特許文献4】WO00/41884
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.S.Brugler、他、”Integrated Electronics for a Reading Aid for the Blind”, IEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol. SC-4, No.6, p.304~312, December, 1969.
【非特許文献2】P.K.Weimer,他、著 “Phototransistor Array of Simplified Design”, p.135, IEEE Journal of Solid-State Circuits, June 1971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐熱性や各種耐久性に優れ、太陽電池の変換率及び長期使用時の信頼性の向上に寄与することができる、太陽電池の裏面反射層を簡便で低コストに形成することができる太陽電池の裏面反射層の形成方法及びそれに用いられる組成物並びに該方法により形成された裏面反射層を持つ太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、光反射性粒子が分散された溶媒可溶性ポリイミド樹脂組成物で太陽電池の裏面反射層を形成することにより、耐熱性や各種耐久性に優れた太陽電池の裏面反射層、とりわけ、太陽電池の裏面上に電極が部分的に形成され、また、部分コンタクトホールを有する部分コンタクト構造バックコンタクトソーラーセル(back side contact solar cell structures)の裏面反射層を簡便かつ低コストで形成できることを見出し本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
【0012】
(1) 有機溶媒と、該有機溶媒に溶解されたポリイミド樹脂と、該有機溶媒に分散された光反射性粒子とを含む、太陽電池の裏面反射層形成用ポリイミド樹脂組成物。
(2) 前記光反射性粒子が白色顔料粒子である(1)記載の組成物。
(3) 前記白色顔料粒子がシリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、5酸化タンタル(Ta2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO2)及び二酸化バナジウム(VO2)から成る群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物である(2)記載の組成物。
(4) 前記光反射性粒子の含量が、前記ポリイミド樹脂100重量部に対して1〜80重量部である(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5) 第一の有機溶媒(A)及び第二の有機溶媒(B)の混合溶媒に可溶な耐熱性ポリイミド樹脂であって、ポリイミドの繰り返し単位中にアルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基を含み、チクソトロピー性を有するポリイミド樹脂を、前記混合溶媒中に含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6) 前記アルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基中の炭素原子数が1〜4である(5)記載の組成物。
(7) 前記ポリイミドが、下記一般式[I]:
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Ar1は任意の4価の有機基であり、Ar2は任意の2価の有機基であり、Ar1及びAr2の少なくともいずれか一方が前記アルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有する)
で表される繰返し単位を含む(5)又は(6)記載の組成物。
(8) 前記Ar1が下記一般式[II]:
【0015】
【化2】

[II]
【0016】
(式中、Tは-C(CH3)2-又は-C(CF3)2-を表す)
で表される(7)記載の組成物。
(9) 前記Ar2が下記一般式[III]:
【0017】
【化3】

[III]
【0018】
(式中、R1、R2、R3及びR4は互いに独立して、水素、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、F、Cl及びBrから選択されるものを表し(ただし、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1個は炭素数1〜4のアルキル基)、n及びmは互いに独立して1〜10の整数を表す
一般式[IV]:
【0019】
【化4】

[IV]
【0020】
(式中、Wは、-C(CH3)2-又は-C(CF3)2-を表す)、
又は
下記一般式[V]:
【0021】
【化5】

[V]
【0022】
(式中、X及びYは互いに独立して-C(=O)-、-SO2-、-O-、-S-、-(CH2)a-(aは1〜5の整数を表す)、-NHCO-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-C(=O)O-及び単結合から成る群より選ばれ、R5、R6及びR7は互いに独立して水素、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、F、Cl及びBrから選択されるもの(ただし、R5、R6及びR7の少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基)を表し、p1、p2及びp3は互いに独立して1〜4の整数を表す)
で示される基である(7)又は(8)記載の組成物。
(10) 1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンを全ジアミン成分量に対して0〜20モルパーセント含有し、ガラス転移温度が150℃以上である(5)〜(9)のいずれかに記載の組成物。
(11) 前記有機溶媒(A)と有機溶媒(B)に蒸発速度の差があり、蒸発速度が遅い溶剤に対してポリイミドの溶解性が低い(5)〜(10)のいずれか1項に記載の組成物。
(12) 前記有機溶媒(A)は、疎水性溶媒であり、室温における蒸気圧が1mmHg以下の溶剤であり、前記有機溶媒(B)は親水性溶媒であり、室温における蒸気圧が1mmHg以下の溶剤である(5)〜(11)のいずれか1項に記載の組成物。
(13) せん断速度1〜100s-1の範囲における粘度が20000〜200000mPa・sである(5)〜(12)のいずれかに記載の組成物。
(14) チクソトロピー係数が、1.5〜10.0である(5)〜(13)のいずれかに記載の組成物。
(15) (1)〜(14)のいずれか1項に記載の組成物を太陽電池裏面の基層上に塗布、乾燥してポリイミド膜を形成することを含む、太陽電池の裏面反射層の形成方法。
(16) 前記ポリイミド膜を、スクリーン印刷法、インクジェット法又はディスペンス法により形成する、(15)記載の方法。
(17) 1回の塗布で、乾燥後の厚みが1μm以上のポリイミド膜を形成する(15)又は(16)記載の方法。
【0023】
(18) 前記太陽電池が、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンからなる第一導電型の結晶シリコン基板と、
該結晶シリコン基板の受光面側に形成された第二導電型の不純物拡散層と、
該結晶シリコン基板の受光面側の不純物拡散層表面に形成された第一電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側に形成された第二電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側表面に形成された裏面反射層と、を備え、
該第二電極が該結晶シリコン基板の裏面側表面と該ポリイミドインクの複数の開口部を通してコンタクトを形成している太陽電池である(14)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19) 前記太陽電池が、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンからなる第一導電型の結晶シリコン基板と、
該結晶シリコン基板の受光面側に形成された第二導電型の不純物拡散層と、
該結晶シリコン基板の受光面側の不純物拡散層の表面に形成された第一電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側に形成された第二電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側の一部または全部に該結晶シリコン基板より高濃度に不純物が添加された第一導電型の不純物拡散層と、
該第一導電型の不純物拡散層の表面に形成された裏面反射層と、を備え、
該第二電極が該結晶シリコン基板の裏面側の不純物拡散層表面と該複数の開口部を通してコンタクトを形成していることを特徴とする太陽電池である(14)〜(17)のいずれか1項に記載の方法。
(20) (14)〜(19)のいずれか1項に記載の方法により形成された裏面反射層を含む太陽電池。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の太陽電池の断面構造の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の太陽電池の断面構造の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 結晶シリコン基板
2 拡散層
3 表面反射防止膜
4 BSF層
5 第一電極
6 第二電極
7 裏面反射層
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、太陽電池の裏面反射層を形成するためのものであり、有機溶媒と、該有機溶媒に溶解されたポリイミド樹脂と、該有機溶媒に分散された光反射性粒子とを含む。溶媒可溶性ポリイミドは、例えば特許文献4に記載されているように公知であり、有機溶媒に可溶性のポリイミドであれば特に限定されないが、好ましいポリイミド及び有機溶媒については後述する。
【0027】
本発明の樹脂組成物中には、有機溶媒に分散された光反射性粒子が含まれる。光反射性粒子としては白色顔料粒子が好ましく、白色顔料粒子としては、シリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、5酸化タンタル(Ta2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO2)及び二酸化バナジウム(VO2)から成る群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子を好ましい例として挙げることができる。これらのうち、白色性やコストの観点から酸化チタンが特に好ましい。
【0028】
光反射性粒子の含量は、前記ポリイミド樹脂100重量部に対して1〜80重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、10〜50重量部である。
【0029】
本発明の樹脂組成物としては、第一の有機溶媒(A)及び第二の有機溶媒(B)の混合溶媒に可溶な耐熱性ポリイミド樹脂であって、ポリイミドの繰り返し単位中にアルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基(好ましくはアルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基中の炭素原子数が1〜4)を含み、チクソトロピー性を有するポリイミド樹脂を、前記混合溶媒中に含むものが特に好ましい。このポリイミド樹脂組成物の場合、スクリーン印刷法又はディスペンス法による塗布が可能であり、優れたレオロジー特性を有し、基板に対して濡れ性、パターン形状性及び連続印刷性の優れたポリイミド樹脂組成物であり、該樹脂組成物から得られる塗膜は、基板との密着性が優れ、電気的特性、耐熱性、耐薬品性の優れた膜となるという顕著な効果が得られる。
【0030】
特に、上記各効果の観点から、以下のものが好ましい。
すなわち、前記ポリイミドが、下記一般式[I]:
【0031】
【化6】

【0032】
(式中、Ar1は任意の4価の有機基であり、Ar2は任意の2価の有機基であり、Ar1及びAr2の少なくともいずれか一方が前記アルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有する)
で表される繰返し単位を含むものが好ましい。
【0033】
一般式[I]で示されるポリイミドのうち、特に前記Ar1が下記一般式[II]:
【0034】
【化7】

[II]
【0035】
(式中、Tは-C(CH3)2-又は-C(CF3)2-を表す)
で表されるものが好ましい。
【0036】
さらに、前記Ar2が下記一般式[III]:
【0037】
【化8】

[III]
【0038】
(式中、R1、R2、R3及びR4は互いに独立して、水素、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、F、Cl及びBrから選択されるものを表し(ただし、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1個は炭素数1〜4のアルキル基)、n及びmは互いに独立して1〜10の整数を表す)
一般式[IV]:
【0039】
【化9】

[IV]
【0040】
(式中、Wは、-C(CH3)2-又は-C(CF3)2-を表す)、
又は
下記一般式[V]:
【0041】
【化10】

[V]
【0042】
(式中、X及びYは互いに独立して-C(=O)-、-SO2-、-O-、-S-、-(CH2)a-(aは1〜5の整数を表す)、-NHCO-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-C(=O)O-及び単結合から成る群より選ばれ、R5、R6及びR7は互いに独立して水素、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、F、Cl及びBrから選択されるもの(ただし、R5、R6及びR7の少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基)を表し、p1、p2及びp3は互いに独立して1〜4の整数を表す)
で示される基であるものが好ましい。
【0043】
具体的には、上記式[II]で表わされる構造を含むテトラカルボン酸二無水物の好ましい例として、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物及び4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物を挙げることができる。
【0044】
上記式[III]中のR1〜R4は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれでもよい。また、これらは同一でも異なっていてもよい。R1〜R4の具体例は、脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。脂環式炭化水素基としてはシクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等のアラルキル基等が挙げられる。また、R1〜R4は炭素数1〜4のアルコキシ基、アルケノキシ基、又はシクロアルキル基であってもよく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクトキシ基、ビニロキシ基、アリロキシ基、プロペニノキシ基、イソプロペニノキシ基等が挙げられる。これらのうちでより好ましいR1〜R4は、メチル基及びフェニル基である。
【0045】
上記式[IV]で表わされる構造を含むジアミンの好ましい例として、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,α−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,4−ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
【0046】
上記式[V]で表わされる構造を含むジアミンの好ましい例として、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジヘキサフルオロイソプロピリデンベンゼン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジヘキサフルオロイソプロピリデンベンゼン、を挙げることができる。
【0047】
本発明で用いられるポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとしては、通常、上記したアルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物及び/又はジアミンと共に、耐熱性、電気的特性、膜物性、密着性など様々な機能性を付与するために他のテトラカルボン酸二無水物及び/又はジアミンが併用される。
【0048】
このようなテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、特に溶解性の問題からビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0049】
ジアミンとしては、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジトリフルオロメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジトリフルオロメチル−1,1’−ビフェニル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、9,9’−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン 5,5−ジオキシド、ビス(3−カルボキシー4−アミノフェニル)メチレン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,5−ジアミノ安息香酸、2,6−ジアミノピリジン、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1、3−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)ベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)ベンゼン等を挙げることができる。これらのジアミンは、単独又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0050】
本発明で用いられるポリイミドは、上記した、アルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物及び/又はジアミン並びに、通常、これら以外の上記したテトラカルボン酸二無水物及び/又はジアミンを組み合わせて得られる。ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分のうち、アルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有する成分の割合は、通常、10〜80モル%、好ましくは、20〜60モル%である。アルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有する成分の割合がこの範囲内にあると優れたファインパターン形成性、密着性が発揮される。
【0051】
また、基板が窒化膜などのような場合、芳香族ポリイミドと基板との密着性が低くなる傾向があることから、ジアミン成分の1つとして1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンを用いることが好適である。このジアミンは、信越化学工業(株)の製品名PAM−E、東レ・ダウコーニング(株)の製品名BY16−871として市販されているため、最も好ましい。添加量は、全アミン量に対して好ましくは1〜20モル%、さらに好ましくは3〜15モル%である。20モル%以上になるとポリイミド樹脂のガラス転移温度が低くなりすぎる傾向があり、半導体基板の高温での連続稼動において問題が生じる場合がある。
【0052】
また、耐薬品性の向上のためポリイミドの末端部分に反応性基を導入することができる。例えば、ポリイミドの末端が酸無水物となるようにテトラカルボン酸の量を僅かに多く添加、合成し、次いで3−エチニルアニリンや4−エチニルアニリンに代表されるアミン化合物を添加することでポリマー末端にアセチル基を導入できる。また、アミン末端になるようにジアミン化合物量を僅かに多く添加し、合成、次いで無水マレイン酸や無水エチニルフタル酸や無水フェニルエチニルフタル酸に代表される酸無水物を添加することによっても同様に反応性基を導入できる。これらの末端基同士は、150℃以上の加熱により反応し、ポリマー主鎖が架橋する。
【0053】
本発明のポリイミド樹脂組成物に含まれるポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを有機溶媒に溶解させて、酸触媒の存在下、直接イミド化する、公知の合成法により製造することができ、更にはテトラカルボン酸二無水物とジアミンを有機溶媒中で溶解反応させ、続いてテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの少なくとも一方を添加してイミド化することによっても製造することができる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合比は、酸二無水物の合計量1モル%に対して、ジアミンの合計量0.9〜1.1モル%とするのが好ましい。ここで、酸触媒としては、無水酢酸/トリエチルアミン系、バレロラクトン/ピリジン系などの触媒を用いた化学的イミド化が好適に用いることができる。反応温度は、80〜250℃とすることが好ましく、反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件などにより適宜選択することができる。また、イミド化反応を、2段階以上に分けて行い、かつ、各段階において異なるテトラカルボン酸二無水物及び/又はジアミンを反応させることにより得られるブロック共重合ポリイミドを好ましく用いることができる。なお、溶剤可溶性ブロック共重合ポリイミドの製造方法自体は、例えば、特許文献7に記載されるように公知であり、本発明に好適に用いられるポリイミドは、上記したテトラカルボン酸二無水物及び/又はジアミンを用いて、公知の方法により合成することができる。
【0054】
このようにして得られたポリイミド樹脂の数平均分子量は、6000〜60000であることが好ましく、7000〜40000であることがより好ましい。数平均分子量が6000未満であると、破断強度などの膜物性が低下する傾向があり、60000を超えると粘度が高くなり、糸引きの問題が発生し、印刷、塗布に適したワニスが得がたくなる。ここで、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置により標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を基礎としたポリスチレン換算値である。
【0055】
本発明の組成物に含まれる溶媒は、第一の有機溶媒(A)及び第二の有機溶媒(B)からなる混合溶媒である。両溶媒間で蒸発速度に差があり、なおかつ蒸発速度の遅い溶剤に対しての方がポリイミドの溶解性が低いことが最も好ましい。こうすることにより、乾燥時のパターンダレがなく、塗布直後のパターンを保持することができる。なお、ポリイミドの組成により各種溶剤との溶解性が異なることから有機溶媒(A)と有機溶媒(B)は、どちらの蒸気圧が低いかについては限定されない。また、溶媒の蒸発速度は、市販の示差熱・熱重量同時測定装置を使用し、減少した重量を観察することで測定することができる。なお、下記実施例ではMAC. Science Co., Ltd.製TG-DTA 2000Sを使用し、N流量150ml/min、温度40度、サンプル量20μlを開口部が5mmφのカップに滴下した条件で測定を行なっている。
【0056】
第一の有機溶媒(A)は、疎水性溶媒(すなわち、水に難溶な溶媒)であることが好ましく、かつ、室温における蒸気圧が1mmHg以下の溶剤であることが好ましい。具体的には、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の安息香酸エステル類やベンジルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類やジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類が挙げられる。水に難溶な溶媒を用いることにより、特にスクリーン印刷において吸湿により、白化(ポリイミドの析出現象)や粘度変化を起こりにくくすることができる。また、室温における蒸気圧が1mmHg以上となってくると、スクリーン印刷において版渇き等が起こりやすくなり、連続印刷性が劣る傾向にある。
【0057】
第二の有機溶媒(B)は、親水性溶媒(すなわち、水と混和可能な溶媒)であることが好ましく、かつ、室温における蒸気圧が1mmHg以下の溶剤であることが好ましい。具体的には、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類やトリグライム、テトラグライム等のグライム類やトリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルエーテル等のエーテル類、スルホラン等が挙げられる。なお、水に混和可能であるとの記載は、第一の有機溶媒(A)と異なる蒸気圧、性質を持っている溶剤を併用するということを明確に示すためであり、必ず水と混和しなければならないわけではない。ただし、使用する各種原料、合成したポリイミド組成により、それぞれ良溶媒は異なることから水に難溶な有機溶媒(A)と組み合わせるのは、水に混和できる溶媒の方が、選択肢が広がるという点で好ましい。また、室温における蒸気圧が1mmHg以下である理由は第一の有機溶媒(A)の時と同じ理由である。
【0058】
第一の有機溶媒(A)と第二の有機溶媒(B)の混合割合は、混合溶媒全体に対し、第一の有機溶媒(A)が30重量%〜80重量%であることが好ましい。有機溶媒(A)の割合が30重量%未満になると溶剤の疎水性が十分に発揮されず、スクリーン印刷時の白化や粘度変化を引き起こす原因となりやすい。
【0059】
また、蒸発速度の調整のためや樹脂組成物作製時の粘度調整のために希釈剤として、γ−ブチロラクトンのようなラクトン系溶剤、シクロヘキサノンのようなケトン系溶剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートのようなカーボネート系溶剤を用いることもできる。特に形成するパターンが十分大きいときや連続印刷性がそれ程必要ない場合には、ポリイミドの溶解性が増し、保存安定性が向上するという点で有効な方法である。最も推奨される溶剤はγ−ブチロラクトンであり、ポリイミド合成の時にも使用できる。
【0060】
本発明の組成物中のポリイミド樹脂固形分の割合は、15〜60重量%であることが好ましく、25〜50重量%であることが更に好ましい。15重量%未満であると1回の印刷、塗布で生成できる膜厚が薄くなり複数回の印刷、塗布が必要となる傾向があり、60重量%を超えると樹脂組成物の粘度が高すぎてしまう傾向がある。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、後述のとおりチクソトロピー性を有する。チクソトロピー性は、無機フィラーを添加することにより付与することができるので、本発明の樹脂組成物に無機フィラーを含有させることも有効な手段である。チクソトロピー性を付与するための無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、チタニアのうち、少なくとも1種類からなる無機フィラーを挙げることができる。具体的には、0.01〜0.03μmの無定形シリカ及び/又は粒径0.1〜0.3μmの球状シリカ又はアルミナ又はチタニアを挙げることができる。また、保存安定性などを高める目的でトリメチルシリル化剤などにより表面処理された無機フィラーを使用することがより好ましい。組成物中の無機フィラーの含有量は、通常、0〜50重量%、好ましくは2〜30重量%である。無機フィラーの含有量がこの範囲にあると、適切なチクソトロピー性が付与される。
【0062】
また、本発明のポリイミド樹脂組成物には、光を反射させる効果を持つ白色顔料とし金属酸化物フィラーを加することができる。使用する酸化物としてはシリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、5酸化タンタル(Ta2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO2)、二酸化バナジウム(VO)等が挙げることができる。具体的には、0.01〜0.3μm粒径の金属酸化物を挙げることができる。また、分散性、保存安定性などを高める目的でトリメチルシリル化剤などにより表面処理された無機金属酸化物フィラーを使用することがより好ましい。組成物中の無機フィラーの含有量は、通常、2〜100重量%、好ましくは10〜50重量%である。無機フィラーの含有量がこの範囲にあると、適切な光を反射させる効果が付与される。
【0063】
また、本発明のポリイミド樹脂組成物には、製品に影響がなければ必要に応じて、着色剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の添加剤を添加することができる。着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等が挙げられる。消泡剤は、印刷、塗工時及び硬化時に生じる泡を消すために用いられ、アクリル系、シリコーン系等の界面活性剤が適宜用いられる。具体的には、BYK Chemi社のBYK−A501、ダウコーニング社のDC−1400、シリコーン系泡消剤として、日本ユニカー社のSAG−30、FZ−328、FZ−2191、FZ−5609等が挙げられる。レベリング剤は、印刷、塗工時に生じる皮膜表面の凹凸を失くすために用いられる。具体的には、約100ppm〜約2重量%の界面活性剤成分を含有させることが好ましく、アクリル系、シリコーン系等のレベリング剤により、発泡を抑えるとともに、塗膜を平滑にすることができる。好ましくは、イオン性不純物を含まない非イオン性のものである。適当な界面活性剤としては、例えば、3M社のFC−430、BYK Chemi社のBYK−051、日本ユニカー社のY-5187、A−1310、SS−2801〜2805が挙げられる。密着性付与剤としては、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これら上記の添加剤は、ポリイミド樹脂成分100重量部に対して、10重量部以下の配合量にすることが好ましい。上記添加剤の配合量が10重量部を超えると、得られる塗膜物性が低下する傾向があると共に揮発成分による汚染の問題も生じるようになる。このため、上記の添加剤を添加しないことが最も好ましい。
【0064】
本発明のポリイミド樹脂組成物の25℃における粘度は、3500〜30000mPa・sが好ましく、4000mPa・s〜20000mPa・sがより好ましく、6000〜18000mPa・sが特に好ましい。これは、3500mPa・s未満となるとダレ等が起こりやすくなり充分な膜厚と解像度を得ることができず、40000mPa・sを超えると転写性、印刷作業性が劣る傾向がある。なお、本発明の粘度数値はレオメーターを用いて回転数333rad/sの条件で得られる、みかけ粘度で表すこととする。
【0065】
この粘度数値は、塗布直後の形状保持性と共に、スクリーン印刷時にスキージにより容易に変形して流動するという流動性についても重要な因子である。スクリーン印刷においては、粘度が高くなると樹脂組成物のローリングが悪くなるため、スクレッパーでのコートが不十分になり、塗布ムラ又はクズレ等が発生し易くなる傾向がある。
【0066】
また、インクにおいてスクリーン印刷等で所望のパターン形状に塗布した直後に印刷された形状を保持しようとする形状保持性がないと、パターン外周部ににじみやダレが発生するため、解像度良く厚膜を得ることができない。単純に粘度を高くすればダレ等は抑えられるが、スクリーン印刷において版離れの問題や塗布膜の平坦性の問題が生じてしまう。従って、にじみやダレが発生しないようにするためには、チクソトロピー係数が重要である。通常、レオメーターによる測定ではヒステリシスカーブ(粘度の回転数依存性の測定)により得られた面積から定量化及び評価が可能であるが、より一般的な粘度計を用いたTI値で評価する方法が最も簡便である。本発明においてチクソトロピー係数は、せん断速度が33(rad/s)と333(rad/s)における樹脂組成物のみかけ粘度、η33とη333の比η33/η333として表すこととする。
【0067】
周波数33rad/sで測定した樹脂ワニスの複素粘度としては、14000〜120000mPa・sであることが好ましい。120000mPa・sを超えると、スクリーン印刷した場合に版のメッシュ部分にペーストが残ってしまい、版離れが悪くなる傾向がある。
【0068】
従って、本発明のポリイミド樹脂組成物は、25℃におけるチクソトロピー係数(η33/η333)が1.5〜4.0の範囲になるようにすることが好ましく、1.8〜3.5がより好ましく、2.5〜3.2が特に好ましい。チクソトロピー係数が1.5以上であれば、スクリーン印刷により充分な解像性が得られやすく、一方、4.0以下であれば、印刷時の作業性が向上するためである。
【0069】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、シリコンウェハ、セラミック基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、Ni、Cu、Al基板を代表とする金属基板、PIコーティング基板との濡れ性が高いことが好ましい。すなわち、シリコン、SiO膜、ポリイミド系樹脂、セラミック、金属表面上のいずれにおいても室温での接触角が20〜90°であることが好ましい。90°以下であれば、ワキ、ハジキ、ピンホールがなく均一な塗膜が得られる。90°を超えると基板上で樹脂ペーストが弾いてしまい、ピンホール、パターニング不良等が発生する。逆に、20°以下なると塗布後のレベリング時にダレが発生してしまい、パターン精度が低下する傾向があるため好ましくない。なお、上記の接触角度は、耐熱性樹脂ペーストの液滴を各種基板上に落とした際、液滴と基板の接点から接線を引き、この接線と基板との角度を接触角とする。なお「室温」とは、主に25℃前後の温度を指す。なお、組成物の接触角は、ポリイミド樹脂組成、溶剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤により調整することができる。
【0070】
上記本発明のポリイミド組成物を、太陽電池の裏面に塗布、乾燥することにより、太陽電池の裏面反射層を形成することができる。本発明のポリイミド樹脂組成物の塗布方法は、スクリーン印刷法、ディスペンス法、インクジェット法が好適であり、特に大面積を短時間で塗布できるという点でスクリーン印刷法が最適である。1回の塗布で、乾燥後の厚みが1μm以上、好ましくは2μm以上の膜を安定して形成することが可能である。絶縁信頼性を考慮すると1回の塗布で少なくとも5μm厚を得ることが望ましいため、スクリーン印刷法においては、線径50μm以下かつ420メッシュ以上のメッシュ版及びゴム硬度70度以上90度以下の樹脂製スキージを用いてスクリーン印刷することが望ましい。メッシュ径、メッシュ数などのスクリーン版の仕様は、所望の膜厚、パターンサイズにより適宜選択することができる。また、ディスペンス法にて細線描写が可能であり、塗布直後の線幅と比較してウェット塗膜の線幅が1日室温放置しても+20%以内であることを達成することが可能である。さらに、インクジェット法にて細線描写が可能であり、塗布直後の線幅と比較してウェット塗膜の線幅が1日室温放置しても+100%以内であることを達成することが可能である。
【0071】
上記ポリイミド樹脂組成物は、印刷後にレベリング、真空乾燥、最終のキュアプロセスを行なうことで、電気的特性、耐熱性、耐薬品性の優れた絶縁膜、保護膜を得ることができる。レベリングは、10分以上行なうことが好ましい。真空乾燥は、塗膜の仕上がりが良くなるため行なうことが好ましいが、レベリング剤や消泡剤を添加している場合には必ずしも必要とはしない場合がある。最終のキュア温度や時間は、ポリイミド樹脂組成物の溶剤や塗布した膜厚により適宜選択することができる。
【0072】
上記本発明の方法を適用する太陽電池は裏面反射層を有するものであれば特に限定されないが、本発明の方法によれば、スクリーン印刷法、インクジェット法又はディスペンス法により、パターン化ポリイミド膜を簡便に形成することができるという本発明の利点を生かすためには、太陽電池の裏面上に電極が部分的に形成され、また、部分コンタクトホールを有する部分コンタクト構造バックコンタクトソーラーセルに適用することが特に有利である。
【0073】
すなわち、太陽電池としては、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンからなる第一導電型の結晶シリコン基板と、
該結晶シリコン基板の受光面側に形成された第二導電型の不純物拡散層と、
該結晶シリコン基板の受光面側の不純物拡散層表面に形成された第一電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側に形成された第二電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側表面に形成された裏面反射層と、を備え、
該第二電極が該結晶シリコン基板の裏面側表面と該ポリイミドインクの複数の開口部を通してコンタクトを形成している太陽電池が好ましい。
【0074】
また、太陽電池としては、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンからなる第一導電型の結晶シリコン基板と、
該結晶シリコン基板の受光面側に形成された第二導電型の不純物拡散層と、
該結晶シリコン基板の受光面側の不純物拡散層の表面に形成された第一電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側に形成された第二電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側の一部または全部に該結晶シリコン基板より高濃度に不純物が添加された第一導電型の不純物拡散層と、
該第一導電型の不純物拡散層の表面に形成された裏面反射層と、を備え、
該第二電極が該結晶シリコン基板の裏面側の不純物拡散層表面と該複数の開口部を通してコンタクトを形成している太陽電池も好ましい。以下、好ましい太陽電池についてさらに詳細に説明する。
【0075】
好ましい太陽電池の構造について図2、3を元に説明する。図2は、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と表記する)における太陽電池の断面構造の一例を示す断面図である。
【0076】
本発明で用いる結晶シリコン基板1は、単結晶シリコン、多結晶シリコンのどちらを用いてもよい。また、本発明で用いる結晶シリコン基板1は、導電型がp型の結晶シリコン、または、導電型がn型の結晶シリコンのどちらを用いてもよい。以下、本実施形態における結晶シリコン基板1は、p型単結晶シリコンを用いた例について説明する。なお、当該結晶シリコン基板1に用いる単結晶シリコンまたは多結晶シリコンは、任意のものでよいが、抵抗率が0.5-10Ω・cmである単結晶シリコンまたは多結晶シリコンが望ましい。
【0077】
p型の結晶シリコン基板1の受光面側に、リンなどのV族の元素をドーピングしたn型の拡散層2が形成される。そして、結晶シリコン基板1と拡散層2との間でpn接合が形成される。拡散層2の表面には、SiN膜などの表面反射防止膜3(パッシベーション膜とも呼ばれる)および、Agなどを用いた第一電極5(受光面側の電極)が形成される。
【0078】
なお、本発明は、表面反射防止膜3の有無にかかわらず適用することが可能である。また、太陽電池の受光面は、表面での反射率を低減するため、凹凸構造(テクスチャー構造)が形成されることが望ましいが、本発明は、テクスチャー構造の有無にかかわらず適用することが可能である。
【0079】
一方、結晶シリコン基板1の裏面側には、アルミニウムやボロンなどのIII族の元素をドーピングした層であるBSF層4が形成される。ただし、本発明は、BSF層4の有無にかかわらず適用することができる。
【0080】
この結晶シリコン基板1の裏面側には、BSF層4(BSF層が無い場合は結晶シリコン基板1の裏面側表面)とコンタクトをとるために、アルミニウムなどからなる第二電極6(裏面側の電極)が形成されている。
【0081】
さらに本実施形態では、BSF層4(BSF層が無い場合は結晶シリコン基板1の裏面側表面)と第二電極6とのコンタクト領域をのぞいた部分に、ポリイミドまたはポリアミドイミドの裏面反射層7が形成されている。受光面側から入射した光は、この裏面反射層7で反射されるため、図1のセルに比べ、より多くの少数キャリアを基板内に閉じ込めることができる。このため、短絡電流が増加し、効率が向上することが期待される。
【0082】
また、本発明の図2に示す太陽電池構造の別形態として、図3に示すようにBSF層4が第二電極6とのコンタクト領域を含む裏面側の一部のみに形成され、裏面全面に形成がなされていない太陽電池においても同様の効果が得られる。図3に示される太陽電池は、BSF層4の高濃度層の領域が少ないため、図2に示される太陽電池より高い効率を得ることが可能である。
【0083】
さらに、図2、3では、裏面電極6は、コンタクト領域と裏面反射層7上の全面に形成されているが、コンタクト領域のみあるいは、コンタクト領域とポリイミド層上の一部のみに裏面電極6が形成されている太陽電池構造であっても同様の効果を得ることができる。
【0084】
次に、上記構成をもつ本発明の太陽電池について、その作製方法の一例について述べる。ただし、本発明は、以下に述べる方法で作製した太陽電池に限るものではない。
【0085】
まず、結晶シリコン基板1(以下、「基板1」とも表記する。)の表面にテクスチャー構造を形成する。テクスチャー構造の形成は、基板1の両面に形成しても、片面(受光面側)のみに形成してもかまわない。テクスチャー構造を形成するため、まず、基板1を、加熱した水酸化カリウムあるいは、水酸化ナトリウム溶液に浸して、基板1のダメージ層を除去する。その後、水酸化カリウム/イソプロピルアルコールを主成分とする溶液に浸すことで、基板1の両面または片面(受光面側)にテクスチャー構造を形成する。なお、上述したとおり、本発明は、当該テクスチャー構造の有無にかかわらず適用が可能であるため、本工程は省略してもよい。
【0086】
続いて、上記の基板1を塩酸・フッ酸などの溶液で洗浄後、結晶シリコン基板1にPOCl3などの熱拡散により、リン拡散層(n+層)(拡散層2)を形成する。リン拡散層は、リンを含んだ溶液を塗布し、熱処理をすることによっても形成できる。周知の方法で任意にこのリン拡散層を形成してよいが、リン拡散層の深さを0.2-0.5μmの範囲に、シート抵抗を40-100Ω/□(ohm/square)の範囲に形成することが望ましい。
【0087】
なお、上述した、基板1の両面又は片面(受光面側)にテクスチャー構造を形成しない場合、本実施形態の太陽電池の作製は、当該基板1を、加熱した水酸化カリウムあるいは、水酸化ナトリウム溶液に浸して、基板1のダメージ層を除去した後、当該リン拡散層(n+層)(拡散層2)を形成することから開始する。
【0088】
その後、拡散層2の上に、表面反射防止膜3である窒化シリコン膜を形成する。周知の方法で任意に表面反射防止膜3を形成してよいが、厚さを60-100nmの範囲に、屈折率を1.9-2.2の範囲に形成することが望ましい。表面反射防止膜3は、窒化シリコン膜に限らず、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタンなどが用いられる。窒化シリコン膜は、プラズマCVD、熱CVDなどの方法で作製できるが、350-500℃の温度範囲で形成できるプラズマCVDで作製することが望ましい。なお、上述したとおり、本発明は、表面反射防止膜3の有無にかかわらず適用が可能であるため、本工程は省略してもよい。
【0089】
その後、基板1の裏面側にアルミニウムを主成分とするペーストなどの溶液を塗布し、熱処理を行うことで、裏面側のBSF層4を形成する。塗布には、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンス、スピンコートなどの方法を用いることができる。熱処理後、裏面に形成されたアルミニウム層を塩酸等によって除去することでBSF層4が形成される。周知の方法で任意に当該BSF層4を形成してよいが、望ましくは、濃度の範囲が1018-1022cm-3であるアルミニウムを用い、ドット状またはライン状にBSF層4を形成することが望ましい。なお、上述したとおり、本発明は、BSF層4の有無にかかわらず適用することができるため、本工程は省略してもよい。
【0090】
次に、受光面側の電極である第一電極5を形成する。第一電極5は、表面反射防止膜3上に銀を主成分とするペーストをスクリーン印刷により形成し、熱処理(ファイアースルー)を行うことで形成される。当該第一電極5の形状は、任意の形状でよく、例えば、フィンガー電極とバスバー電極とからなる周知の形状でよい。なお、BSF層4と第一電極5の作製における熱処理を同時に行ってもよい。この場合、当該熱処理の後に、裏面に形成されたアルミニウム層を塩酸等によって除去する。
【0091】
その後、裏面反射層7を形成する。裏面反射層7は、例えば、裏面に形成された酸化膜をフッ酸で除去後、請求項1〜7記載のポリイミド組成物をスクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェットによる印刷、あるいは、ディスペンサーによる印刷などの印刷法により、コンタクト用の孔を含んだ所定のパターンに塗布することによって形成される。なお請求項1〜9記載のポリイミド組成物を塗布後、100−400℃の範囲でアニールし、溶媒を蒸発させることが望ましい。また、請求項1〜9記載のポリイミド組成物には酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ケイ素、硫酸バリウムなどの光を反射させる効果を持つ白色顔料を含むことが望ましい。更に、コンタクト用の孔の形状は、BSF層4の形状と同じであることが望ましい。
【0092】
最後に、裏面側の電極である第二電極6を形成する。第二電極6は、アルミニウム、銀などをスクリーン印刷、ディスペンス、蒸着することによって形成できるが、100−350℃の低温で焼成できるアルミニウムあるいは、銀を主成分としたペーストを用いることが望ましい。また、第二電極6の形状は、BSF層4の形状と同じであるか、裏面全面、櫛型状、格子状であることが望ましい。
【0093】
なお、上記説明では、結晶シリコン基板1にp型結晶シリコンを用いた構造例及び作製例を示したが、結晶シリコン基板1にはn型結晶シリコン基板も用いることができる。この場合は、拡散層2は、ボロンなどのIII族の元素をドーピングした層で形成され、BSF層4は、リンなどのV属をドーピングした層で形成される。
【0094】
また、上記説明では、結晶シリコン基板1に単結晶シリコンを用いた構造例及び作製例を示したが、結晶シリコン基板1には多結晶シリコンを用いることができる。この場合における変更点は特にない。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0096】
1. ポリイミドの合成
合成実施例1
ステンレス製の碇型攪拌器を取り付けた2リットルのセパラブル3つ口フラスコに、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)148.91g(480ミリモル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(PAM−E)23.86g(96ミリモル)、4,4'−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン(Bisaniline−M)70.28g(204ミリモル)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)73.89g(180ミリモル)、γ−バレロラクトン4.8g、ピリジン7.6g、安息香酸メチル(BAME)385g、テトラグライム385g、トルエン100gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、180rpmで30分攪拌した後、180℃に昇温して5時間攪拌した。反応中、トルエン−水の共沸分を除いた。還流物を系外に除くことにより28%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0097】
合成実施例2
合成実施例1と同様の装置を用いた。ODPA148.91g(480ミリモル)、PAM−E29.82g(120ミリモル)、Bisaniline−M74.41g(216ミリモル)、BAPP59.11g(144ミリモル)、γ−バレロラクトン4.8g、ピリジン7.6g、安息香酸エチル(BAEE)303g、テトラグライム455gトルエン100gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、180rpmで30分攪拌した後、180℃に昇温して5時間攪拌した。反応中、トルエン−水の共沸分を除いた。還流物を系外に除くことにより28%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0098】
合成実施例3
合成実施例1と同様の装置を用いた。3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)71.66g(200ミリモル)、PAM−E24.85g(100ミリモル)、BAME65g、テトラグライム98g、γ−バレロラクトン4.0g、ピリジン6.3g、トルエン50gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、180rpmで30分攪拌した後、180℃に昇温して1時間攪拌した。反応中、トルエン−水の共沸分を除いた。ついで、室温に冷却しDSDA71.66g(200ミリモル)、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジトリフルオロメチル−1,1’−ビフェニル(TFMB)48.04g(150ミリモル)、BAPP:61.58g(150ミリモル)、BAME130g、テトラグライム196g、トルエン50gを加え、180℃、180rpmで攪拌しながら4時間反応させた。還流物を系外に除くことにより35%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0099】
2. ポリイミドインク組成物の調製
上記のとおり得られた各ポリイミドをそれぞれ含む組成物を調製した。上記の方法で合成した共重合体ポリイミド(合成例1〜3の溶液(28重量%)の溶液を50g取り(この場合の共重合体ポリイミド樹脂成分は14gである)、酸化チタン(テイカ株式会社SJR−600M)を(ポリイミド樹脂に対して15重量%)添加し、これに有機溶媒(A)としてはメチル(エチル)ベンゾエート、有機溶媒(B)としてはテトラグライムを添加した。有機溶媒(A)及び(B)の室温での蒸気圧はそれぞれ0.38mmHg(25℃)、0.01mmHg以下(20℃)である。蒸発速度は、それぞれ2256.3mg/(min・m)及び71.6mg/(min・m)である。また、本発明におけるポリイミドの溶解度は、有機溶媒(A)>(B)である。従って、蒸発速度の遅い溶剤に対してポリイミドの溶解性が低いため好適である。混練方法としては、特殊機化工業社製TK Hivis Disper Mix 3D−5型を使用し混練を行った。酸化チタンの添加量はポリイミド樹脂部100部に対して40部、安息香酸メチル19.3部、テトラグライム23.6部を使用した。調製した組成物の具体的な組成を以下に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
3. 成膜
上記組成物を用いて、基板上に成膜した。基板はシリコンウェハであり、スクリーン印刷法により各組成物を塗布した。具体的な塗布条件は、ポリエステルメッシュ#420を用い、スキージ硬度80度、アタック角70度、クリアランス2.5mm、実印圧0.15MPa、印刷速度260mm/secで印刷を行った。次に、塗布膜を乾燥させて、ポリイミド膜を形成した。乾燥条件は、10分レベリングを行い、140℃で10分、そのまま昇温して250℃で30分を窒素雰囲気下で行った。乾燥後の膜厚は、5μmであった。
【0102】
4. 評価
上記したポリイミド、組成物又は形成した膜の性質を評価した。評価は次の通り行った。
【0103】
(a)分子量:変性ポリイミド樹脂の数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーGPC(東ソー社製、HLC−8220GPC)により測定した。カラムは東ソー社製TSKgel GMHHR−Hを使用し、キャリア溶媒としては、DMFにLiBrを0.1Nの濃度で溶解したものを使用した。分子量は、標準ポリスチレン(TSK標準ポリスチレン)を用いて計算した換算値である。
【0104】
(b)熱特性:ポリイミド樹脂の熱分解開始温度は、デュポン951熱重量測定装置で測定した。
【0105】
(c)機械特性:ポリイミド樹脂の機械物性は、古河サーキットフォイル(株)製の銅箔F2−WS(18μm)上に、乾燥後に厚さ15±2μmのフィルムなるようにスクリーン印刷にて塗布、その薄膜を、120℃で10分、次いで180℃で30分間、乾燥および熱処理し、銅箔をエッチングして取り除くことにより作製した。そのポリイミド樹脂フィルムについて、万能型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン UTM−11−20)で、破断強度、伸び率、初期弾性率を測定した。
【0106】
(d)粘度、チクソトロピー係数はThermo Haake社製レオメーターRS300を使用し測定した。具体的には以下のように行なった。プレート(固定部分)を25±0.1℃に調整後、試料量1.0〜2.0gを載せる。コーン(可動部分)を所定の位置まで移動させ、樹脂溶液がプレートとコーンに挟まれた状態で、温度が25±0.1℃になるまで保持する。コーンの回転を始め、10秒間でせん断速度が33rad/sになるよう回転速度を徐々に上げ、その速度を保持、1分後の粘度を読み取る。次に、せん断速度が333rad/sに10秒間で到達するように回転速度を上げ、333rad/s時の粘度を読み取る。このようにして得られた33rad/s時の数値を粘度、323rad/s時の数値の比をチクソトロピー係数とした。
【0107】
(f)印刷性は、ニューロング精密工業株式会社製印刷機LS−34TVAおよびNBC株式会社製スクリーン版ポリエステルメッシュ#420−27、L−Screenを用いて印刷を行った。6インチシリコンウエハ全面に印刷を行い、目視でハジキの数を調べた。
【0108】
(g)連続印刷性は、(f)で使用した装置を用いて印刷を行い、3回印刷後に20分間印刷を止める。再度印刷を行い、3回までに膜厚が止める前と同じになった物を○とした。
【0109】
(h)基板との密着性は、JIS K5600−5−6クロスカット法に基づき評価を行った。
【0110】
【表2】

【0111】
以下、本発明のポリイミド樹脂組成物を太陽電池中の膜形成に適用した、太陽電池への適用例を説明する。
【0112】
太陽電池の製造
ボロンをドーパンとした多結晶シリコン基板(結晶シリコン基板1)を用いて、図2の構造の多結晶シリコン太陽電池を作製した。基板表面をテクスチャー処理した後、POCl3を用いたリン拡散層(拡散層2)を形成した。次に、反射防止膜(表面反射防止膜3)として、プラズマCVDで作製したSiN膜を形成した。AgペーストによるパターンをSiN膜上に、アルミニウムペーストによるパターンを裏面側にスクリーン印刷し、焼成を行い、受光面側の電極(第一電極5)を形成した。そして、裏面側の金属層を塩酸により除去し、裏面BSF層(BSF層4)のみを残した。その後、上記記載のポリイミド組成物実施例1〜3をスクリーン印刷により所定のパターンに塗布し、裏面パッシベーション膜(裏面反射層7)を形成した。裏面側の電極(第二電極6)は、アルミニウムを蒸着することで形成した。
【0113】
比較のために、上記作製工程のうち、ポリイミドの印刷を行わず、裏面BSF層上にアルミニウムを全面に蒸着したサンプルを作製した。結果を表3に示す。
【0114】
【表3】

【0115】
裏面反射層の効果を示す短絡電流を比較すると、ポリイミド層があることにより0.5 mA/cm2 増加しており、本発明の効果が示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と、該有機溶媒に溶解されたポリイミド樹脂と、該有機溶媒に分散された光反射性粒子とを含む、太陽電池の裏面反射層形成用ポリイミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記光反射性粒子が白色顔料粒子である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記白色顔料粒子がシリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、5酸化タンタル(Ta2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO2)及び二酸化バナジウム(VO2)から成る群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記光反射性粒子の含量が、前記ポリイミド樹脂100重量部に対して1〜80重量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
第一の有機溶媒(A)及び第二の有機溶媒(B)の混合溶媒に可溶な耐熱性ポリイミド樹脂であって、ポリイミドの繰り返し単位中にアルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基を含み、チクソトロピー性を有するポリイミド樹脂を、前記混合溶媒中に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基中の炭素原子数が1〜4である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリイミドが、下記一般式[I]:
【化1】

(式中、Ar1は任意の4価の有機基であり、Ar2は任意の2価の有機基であり、Ar1及びAr2の少なくともいずれか一方が前記アルキル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有する)
で表される繰返し単位を含む請求項5又は6記載の組成物。
【請求項8】
前記Ar1が下記一般式[II]:
【化2】

[II]
(式中、Tは-C(CH3)2-又は-C(CF3)2-を表す)
で表される請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記Ar2が下記一般式[III]:
【化3】

[III]
(式中、R1、R2、R3及びR4は互いに独立して、水素、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、F、Cl及びBrから選択されるものを表し(ただし、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1個は炭素数1〜4のアルキル基)、n及びmは互いに独立して1〜10の整数を表す
一般式[IV]:
【化4】

[IV]
(式中、Wは、-C(CH3)2-又は-C(CF3)2-を表す)、
又は
下記一般式[V]:
【化5】

[V]
(式中、X及びYは互いに独立して-C(=O)-、-SO2-、-O-、-S-、-(CH2)a-(aは1〜5の整数を表す)、-NHCO-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-C(=O)O-及び単結合から成る群より選ばれ、R5、R6及びR7は互いに独立して水素、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、F、Cl及びBrから選択されるもの(ただし、R5、R6及びR7の少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基)を表し、p1、p2及びp3は互いに独立して1〜4の整数を表す)
で示される基である請求項7又は8記載の組成物。
【請求項10】
1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンを全ジアミン成分量に対して0〜20モルパーセント含有し、ガラス転移温度が150℃以上である請求項5〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記有機溶媒(A)と有機溶媒(B)に蒸発速度の差があり、蒸発速度が遅い溶剤に対してポリイミドの溶解性が低い請求項5〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記有機溶媒(A)は、疎水性溶媒であり、室温における蒸気圧が1mmHg以下の溶剤であり、前記有機溶媒(B)は親水性溶媒であり、室温における蒸気圧が1mmHg以下の溶剤である請求項5〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
せん断速度1〜100s-1の範囲における粘度が20000〜200000mPa・sである請求項5〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
チクソトロピー係数が、1.5〜10.0である請求項5〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物を太陽電池裏面の基層上に塗布、乾燥してポリイミド膜を形成することを含む、太陽電池の裏面反射層の形成方法。
【請求項16】
前記ポリイミド膜を、スクリーン印刷法、インクジェット法又はディスペンス法により形成する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
1回の塗布で、乾燥後の厚みが1μm以上のポリイミド膜を形成する請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
前記太陽電池が、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンからなる第一導電型の結晶シリコン基板と、
該結晶シリコン基板の受光面側に形成された第二導電型の不純物拡散層と、
該結晶シリコン基板の受光面側の不純物拡散層表面に形成された第一電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側に形成された第二電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側表面に形成された裏面反射層と、を備え、
該第二電極が該結晶シリコン基板の裏面側表面と該ポリイミドインクの複数の開口部を通してコンタクトを形成している太陽電池である請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記太陽電池が、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンからなる第一導電型の結晶シリコン基板と、
該結晶シリコン基板の受光面側に形成された第二導電型の不純物拡散層と、
該結晶シリコン基板の受光面側の不純物拡散層の表面に形成された第一電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側に形成された第二電極と、
該結晶シリコン基板の裏面側の一部または全部に該結晶シリコン基板より高濃度に不純物が添加された第一導電型の不純物拡散層と、
該第一導電型の不純物拡散層の表面に形成された裏面反射層と、を備え、
該第二電極が該結晶シリコン基板の裏面側の不純物拡散層表面と該複数の開口部を通してコンタクトを形成していることを特徴とする太陽電池である請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法により形成された裏面反射層を含む太陽電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−69592(P2012−69592A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211179(P2010−211179)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】