説明

太陽電池セル

【課題】接続側基板へのセル単体の着脱が容易な電極取出構造を有する太陽電池セルを提供する。
【解決手段】太陽電池セル10は、透光性の基板主面12Aに形成された透明電極14,集電極18,発電層36からなる発電電極11と、基板主面20Aに金属電極24と触媒層26を形成した対向電極28とを、発電層36を挟むように対向させた構造となっている。基板12の略中央部には貫通孔16が形成され、その周囲は、対向電極28と重ならない環状の露出部となっている。露出部には、集電極18の取出部(環状部分18A)を形成する。他方の基板20には、貫通孔16よりも大きい貫通孔22を形成し、その内壁面に形成された金属薄膜24Cを介して、基板主面20A,20Bに形成された金属薄膜24A,24Bを接続し、前記金属薄膜24Bを取出部とすることで、正極と負極の電極取出方向を同一とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルに関し、更に具体的には、取出電極の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は光吸収層(発電層)の材料の違いにより、シリコン系,化合物系,有機系等に大別される。このうち、色素増感型太陽電池(Dye-sensitized solar cells(以下「DSC」とする))は、増感色素が担持された半導体層(例えばTiO)を形成した発電電極(負極)と、触媒金属が形成された対向電極(正極)とで、ヨウ素レドックス等を含有した電解液を挟んだ構造となっている(例えば、下記特許文献1の第13図参照)。このDSCの発電機構は、以下の(1)〜(4)のサイクルの通りである。
(1)受光面に太陽光が入射すると、色素中ではエネルギーの吸収により電子が励起される。
(2)励起された電子は、半導体層であるTiOに移動し、更に透明電極を通して、外部に取り出される(負極側)。
(3)電子を失った色素は、電解液から電子を奪う。
(4)色素に電子を奪われた電解質は、正極から電子をもらう。
【0003】
上述した色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池(シリコン系,化合物系など)に比べ、入射光の角度依存性が小さく、また、屋内光などの弱い光においても発電が可能であるといった利点がある。ところで、色素増感型太陽電池に限らず、太陽電池全体にいえることであるが、実用的な太陽電池パネルは、複数の太陽電池セルを直並列接続して電力を供給している。この際個々の太陽電池セルの一部が劣化した場合でも、パネル全体の特性が大きく劣化してしまう為、その劣化した太陽電池セルのみを交換できればパネル全体の特性維持のために好都合である。
【0004】
下記特許文献1には、第1薄膜電極を有した第1基板と、第2薄膜電極を有した第2基板と、前記第1薄膜電極または前記第2薄膜電極のどちらかに接触しており色素が吸着する半導体層と、対向して配置された前記第1薄膜電極と前記第2薄膜電極の間に配置された絶縁スペーサと、前記第1薄膜電極と前記第2薄膜電極と前記絶縁スペーサにより囲まれた空間に充填された電解質とを有する色素増感太陽電池において、正極の基板を加工して加工孔(スルーホール)を設けることで、外部への取出し電極の向きを同一方向にし、取出しを容易にすることが開示されている。また、下記特許文献2には、色素増感型太陽電池の二つの電極をプラグ形状に引き出し、更に、モジュール化のための接続基板側は、コンセント受け口形状に工夫し、単体セルの接続性を向上させることが記載されており、使用者の必要に応じて取り付けるユニットの数や配列を選ぶことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−211971号公報
【特許文献2】特開2005−222995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1では、正極基板を加工し、電極金属を露出させ、その加工孔を導電性ペーストなどで充填し、取出し方向を同一方向にしているため、電極の導電性ペーストの密着性などを考慮する必要があり、サイクル試験等における電極剥離等の信頼性の観点からも不利である。また、前記特許文献2の構造では、設置側の構造が複雑になるという不都合がある。
【0007】
更に、従来のシリコン系及び化合物系太陽電池においては、例えば屋根置きのパネルに適用した場合、接続用基板側に取り付けてしまうと、一部の太陽電池セルが劣化した場合であっても、その構造からパネル全体を交換する必要があり、セル単体での交換が困難であるという不都合があった。このため、劣化部分が一部であるにも関わらず、パネル全体の稼動を停止させる必要があり、交換までの時間によって積算発電時間が減少してしまい、太陽光発電システムの利用効率(ないし稼働率)が低下するといった不都合が発生している。そこで、接続用基板側への太陽電池セルの着脱や交換が容易で、パネル化した際に、一部分における太陽電池セルの交換を容易に行うことが可能な接続構造を実現することができれば好都合である。
【0008】
本発明は、以上のような点に着目したもので、接続用基板に対する着脱が容易な電極取出構造を有する太陽電池セルを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の太陽電池セルは、第1の電極と第2の電極との間に発電層が配置されており、前記第1又は第2の電極の少なくとも一方が透光性を有する太陽電池セルであって、前記第1の電極を貫通する第1の貫通孔が形成され、前記第1の貫通孔と対応する位置に、該第1の貫通孔と大きさが異なり、前記第2の電極を貫通する第2の貫通孔が形成されており、前記第1又は第2の貫通孔の周囲は、前記発電層と重ならずに露出し、前記第1の貫通孔の周囲に、前記第1の電極を外部に取り出すための第1電極取出端子を有し、前記第2の貫通孔の周囲に、前記第2の電極を、前記第1の電極と同一方向に取り出すための第2電極取出端子を有することを特徴とする。
【0010】
主要な形態の一つは、透光性を有する第1の基板の一方の主面に、透光性を有する前記第1の電極が形成され、前記第2の貫通孔は、前記第1の貫通孔よりも大きく、前記第1の貫通孔の周囲が前記発電層と重ならずに露出し、前記第2の貫通孔に対応する位置に貫通孔を有する第2の基板の一方の主面に、前記第2の電極が形成されており、前記第2電極取出端子は、前記第2の基板の他方の主面に形成されており、前記第2の基板の貫通孔の内部壁面を通じて前記第2の電極と接続されていることを特徴とする。
【0011】
他の形態は、前記第1の基板と第2の基板の間であって、これらの基板の外周側と内周側にそれぞれ封止材が配置され、該封止材と前記第1及び第2の基板によって形成される空間内に電解液が封止されており、前記発電層が、前記空間内において、前記第1の電極に接触するとともに、表面に色素が担持された多孔質の半導体層であって、色素増感型の光発電層であることを特徴とする。
【0012】
更に他の形態は、前記第2電極取出端子が、前記第2の基板の他方の主面側において、少なくとも前記第2の基板の貫通孔の周囲に形成された導体薄膜であって、前記第2の基板の貫通孔の内部壁面を被覆する導体薄膜を介して前記第2の電極と接続していることを特徴とする。あるいは、前記第1の電極上に集電極が形成されており、該集電極が、前記第1の貫通孔の周囲の露出部分に形成されており前記第1電極取出端子をなす環状部分と、該環状部分から外縁にかけて放射状に形成された放射状部分と、を有することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の電極と第2の電極との間に発電層が配置されており、前記第1又は第2の電極の少なくとも一方が透光性を有する太陽電池セルにおいて、前記第1の電極を貫通する第1の貫通孔が形成され、前記第1の貫通孔と対応する位置に、該第1の貫通孔と大きさが異なり、前記第2の電極を貫通する第2の貫通孔が形成されており、前記第1又は第2の貫通孔の周囲は、前記発電層と重ならずに露出し、前記第1の貫通孔の周囲に、前記第1の電極を外部に取り出すための第1電極取出端子を設け、前記第2の貫通孔の周囲に、前記第2の電極を、前記第1の電極と同一方向に取り出すための第2電極取出端子を設けることとした。このため、前記第2の貫通孔を利用して、前記第1及び第2の電極を同一方向から取り出すことが可能となり、接続用基板等への着脱も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1の色素増感型の太陽電池セルを示す図であり、(A)は平面図,(B)は集電極の形状を示す平面図,(C)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図2】前記実施例1の太陽電池セルの製造工程の一例を示す図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
最初に、図1及び図2を参照しながら本発明の実施例1を説明する。本実施例は、本発明を、発電層として色素増感型の光発電層を用いた色素増感型太陽電池セルに適用した例である。図1(A)は本実施例の太陽電池セルの平面図,(B)は集電極の電極形状を示す平面図,(C)は前記#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。なお、図1(A)では、後述のように基板が透光性を有する場合、その下側(紙面奥側)に配置されている集電極の形状が透視できる場合があるが、ここではその表示を省略し、図1(B)に集電極の電極形状を示している。また、図1(B)は、図1(C)を#B−#B線に沿って矢印方向に見た平面に相当する。図2は、本実施例の太陽電池セルの製造工程の一例を示す図である。
【0017】
図1(C)に示すように、本実施例の太陽電池セル10は、発電電極11と対向電極28が対向した構成となっている。前記発電電極11は、負極側の基板12,負極側の透明電極14,集電極18,発電層36により構成されている。前記基板12は略円形であって透光性を有し、略中央部に略円形の貫通孔16が形成されている。前記貫通孔16の周囲の一定範囲は、図1(C)に示すように、発電層36及び対向電極28とは重ならずに露出している。また、一方の主面12A側には、前記貫通孔16を除く全面に透明電極14が形成され、更に、該透明電極14上に、集電極18が形成されている。該集電極18は、後述する色素から発生した電子を効率的に外部取出端子に集めるためのものであり、基板12及び透明電極14を透過した光が、発電層36に入射するのを妨げることがないように、光が透過可能な形状に形成されている。本実施例では、図1(B)に示すように、集電極18は、前記貫通孔16の周囲部分16Aに形成された環状部分18Aと、該環状部分18Aから外縁にむかって放射状に形成された放射状部分18Bとから構成されており、前記環状部分18Aが、負極側の電極取出端子として利用される。前記基板12及び透明電極14としては、例えば、ITOなどの透明電極付きのプラスチック基板が利用され、前記集電極18としては、例えば、Ti薄膜などが用いられる。
【0018】
前記対向電極28は、基板20と、正極側の金属電極24と触媒層26により構成されている。前記基板20は略円形であって、略中央部に略円形の貫通孔22が形成されている。該貫通孔22は、発電電極11側の基板12の貫通孔16よりも径が大きくなるように形成されている。すなわち、前記発電電極11と対向電極28を対向させたときに、前記貫通孔16の周囲部分16Aが露出し、そこに集電極18の環状部分18Aを形成することで、該環状部分18Aを電極取出端子として利用可能となっている。前記基板20の一方の主面20A側には、金属電極24の一部を構成する金属薄膜24A及び触媒機能を有する触媒層26が、前記貫通孔22と外縁の所定幅部分を除いて設けられている。該触媒層26は、後述する電解液34中のヨウ化物イオンに電子を渡しやすくするためのものである。前記金属薄膜24Aは、前記貫通孔22の内壁面を被覆する金属薄膜24Cによって、他方の主面20B側であって貫通孔22の周囲に形成された金属薄膜24Bに電気的に接続されている。すなわち、本実施例では、主面20B側の金属薄膜24Bが、正極の電極取出端子として利用される。このように貫通孔22を利用することで、発電電極11側の電極の取り出しと、対向電極28側の電極の取り出しを同一方向に揃えることができ、図示しない接続用基板等への脱着が容易となる。なお、前記基板20としては、例えば、プラスチック基板などを用い、前記金属電極24は、前記集電極18と同様にTi薄膜などによって形成されている。また、前記触媒層26としては、例えば、Pt薄膜やカーボン膜が用いられる。
【0019】
前記発電電極11と対向電極28の間には、前記貫通孔22の周囲に沿って設けられる絶縁性の封止材(ないしスペーサ)30と、前記基板12及び20の外周に沿って設けられる絶縁性の封止材(ないしスペーサ)32が配置されている。そして、これら封止材30及び32と前記基板12及び20によって形成される空間40(図2(C-2)参照)には電解液34が封止され、該電解液34中において前記透明電極14及び集電極18に接触するように、表面に色素が担持された多孔質の半導体からなる発電層36が設けられている。すなわち、負極側の透明電極14及び集電極18と、正極側の金属電極24との間に、発電層36が配置された構成となっている。このような色素増感型の光発電層の構成は公知であり、例えば前記電解液34としては、ヨウ素レドックスを含有したものが利用され、前記発電層36としては、例えば、TiOが利用される。以上のような構成の太陽電池セル10は、図1(C)に示すように、貫通孔22を通って発電電極11側の集電極18の環状部分18Aに導電接続した電極引出部42と、対向電極28側の金属薄膜24Bに導電接続した電極引出部44とによって、正極及び負極の双方を、同一方向に取り出すことが可能となっている。
【0020】
次に、図2も参照して、本実施例の太陽電池セル10の製造方法の一例について説明する。まず、対向電極(正極)28側の作製について説明する。図2(A-1)に示すように、略中央に略円形の貫通孔22を有する基板20を用意する。基板20は、厚さ125μm,外径120mmのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムを用い、貫通孔22の径は25mmとした。そして、基板主面20A側に、外周部を除いて金属電極(正極)24を構成する金属薄膜24Aを形成する(図2(A-2)参照)。このとき、前記貫通孔22内において、後に形成する他方の主面20B側の金属薄膜24Bと接続するように、金属薄膜が貫通孔22内に入り込んでその内壁の一部を被覆するよう(図2(A-2)の金属薄膜24C参照)、成膜条件を設定する。本実施例では、スパッタリングによって1μm厚さの導体薄膜24Aを作製した。次に、該金属薄膜24A上に、触媒層26をスパッタリングによって形成する(図2(A-3)参照)。本実施例では、前記触媒層26として、50nm厚さのPt薄膜を作製した。
【0021】
このようにして基板主面20A上に、Tiの金属薄膜24AとPtの触媒層26を形成したら、次に、基板20Aを裏返し、前記金属薄膜24Aの成膜と同条件で、他方の主面20Bの貫通孔22の周囲部分に、0.5μm厚さの金属薄膜24Bを形成する。このとき、金属薄膜の一部が前記貫通孔22内に入り込むように成膜条件が設定されているため、図2(A-2)に示す工程によって貫通孔22内に一部形成された金属薄膜24Cと、図2(A-4)に示す本工程によって貫通孔22内に入り込んだ金属薄膜が接続し、金属薄膜24Cが貫通孔22の内壁面を全て被覆する。すなわち、金属電極24は、貫通孔22の内壁面の金属薄膜24Cを介して、基板20の両主面20A,20Bの間で電気的に接続されている。なお、金属薄膜24Bは、主面20Bの全面に設ける必要はなく、前記貫通孔22の周囲に、外径35mm程度となるように設けるようにすればよい。テスターを用いて表面と裏面の電気的接続を確認したところ、それぞれのシート抵抗は、主面20A側で5Ω/□、主面20B側で15Ω/□、主面20Aと主面20Bの接続部(貫通孔22の内壁面部)で20Ω/□であった。
【0022】
次に、発電電極11側の作製について説明する。図2(B-1)に示すように、略中央に略円形の貫通孔16を有するとともに、主面12A側にITOなどの透明電極14が形成された基板12を用意する。該基板12としては、厚さ125μmであって、外径が120mmのITO(透明電極)付きPENフィルムを用いた。なお、貫通孔16は、その周囲部分16Aが、対向電極28側と貼り合わせたときに重ならないように、前記貫通孔22よりも径が小さくなるように設定した。本実施例では、前記貫通孔16の径を15mmに設定した。次に、前記基板12の主面12Aに、図2(B-2)に示すように、Tiのスパッタリングにより、厚さ1μmの集電極18を形成する。
【0023】
そして、図2(B-3)に示すように、前記基板12の集電極18の上に、発電層36を形成する。本実施例では、前記発電層36として、ナノポーラスTiOペーストを用い、スクリーン印刷により、厚さ10μmのTiO膜を作製した。なお、印刷したTiO膜の膜密度向上のため、所定の表面改質を行った。次に、前記発電層36に色素を吸着させる。本実施例では、Ru系色素N719,アセトニトリル,t−ブタノールを混合して色素溶液を調整し、色素吸着を行った。具体的には、前記図2(B-3)の工程で作製されたTiO層/フィルム基板を図示しない試料容器に入れ、前記色素溶液に浸し、室温,20時間で色素吸着を行った。その後、発電層36が十分に色素を吸着したことを確認した。
【0024】
以上のようにして集電極18と発電層36が形成された基板12は、前記図2(A-1)〜(A-4)に示す工程で金属電極24を形成した対向電極28と組み合わされる。組み合わせの手順としては、例えば、図2(A-5)に示すように、基板20の内周(貫通孔22の縁部)に沿って絶縁性の封止材(ないしスペーサ)30を設け、基板20の外周に沿って絶縁性の封止材(ないしスペーサ)32を設けておく。そして、これら封止材30及び32と基板20によって形成された空間に、図2(C-1)に示すように電解液34を満たし、前記図2(B-3)の工程で作製した発電電極11を反転させて貼り合わせ、図2(D)に示す太陽電池セル10を得る。あるいは、図2(C-2)に示すように、前記発電電極11と対向電極28を、前記封止材30及び32を介して組み合わせ、これらによって形成された空間40に、基板20に設けられた電解液注入用の孔38から電解液34を封入した後、前記孔38を樹脂で封止して図2(D)に示す太陽電池セル10を得るようにしてもよい。
【0025】
前記基板12と基板20の接合方法は、公知の各種の方法が利用可能であるが、例えば、前記図2(A-5)→図2(C-2)→図2(D)の順にセルを作製する場合には、基板20の外周及び内周に熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂が封止材30,32に相当)を配置する。そして、集電極18と金属電極24が向き合うように基板12を合わせて、熱圧着装置を用いて150℃以下で加熱圧着し、全面を封止した。このように作製された太陽電池セル10は、例えば、図1(C)に示すように、負極側は集電極18の環状部分18Aに電極引出部42を接続し、正極側は金属薄膜24Bに電極引出部44を接続することにより、同一方向から外部へ電極を取り出すことが可能となる。
【0026】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)透光性を有する基板12の主面12Aに形成された透明電極14及び集電極18と、基板20の主面20Aに形成された金属電極24との間に、発電層36が配置された太陽電池セル10において、基板12に設けた貫通孔16よりも大きい貫通孔22を、前記基板20に形成する。そして、前記貫通孔22の内壁面を通じて金属電極24を基板20の表裏で接続することで、負極と正極の双方を同一方向から外部に取出可能となる。これにより、接続用基板等への太陽電池セル10の着脱も容易となる。
(2)太陽電池セル10を略円形としているため、接続用基板等に対して向きを合わせる必要がなく、接続性を大幅に向上させることができる。また、複雑な基板加工プロセスが不要であるため、製造工程の簡略化と低コスト化を図ることができる。
(3)太陽電池セル10の略中央部において、正極用の電極取出部(金属薄膜24B)と、負極用の電極取出部(環状部分18A)の位置が隣接しているため、取出位置の設計及び取出後の集電の設計が容易になる。
【0027】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例1では、色素増感型の太陽電池セルに本発明を適用することとしたが、本発明は、第1の電極と第2の電極の間に発電層が配置されている構造であれば、シリコン系や化合物系の他の公知の各種の太陽電池セルに適用可能である。例えば、図3(A)に示す太陽電池セル50は、a−Si,CIGS,CdTeなどの薄膜を用いた薄膜系の太陽電池であって、ガラス基板52の主面に透明電極56(第1の電極)が形成され、その上に、発電層62及び絶縁層64と、金属電極58(第2の電極)が形成されている。前記絶縁層64は、発電層62の内周側に設けられている。前記ガラス基板52及び透明電極56の略中央部には、貫通孔54が形成されており、前記金属電極58の略中央部には、前記貫通孔54よりも径が大きい貫通孔60が形成されている。すなわち、透明電極56は、前記貫通孔54の周囲部分が発電層62及び金属電極58とは重ならずに露出し、その露出部分56Aが電極取出端子として用いられる。該露出部分56Aには、電極引出部66が接続される。また、金属電極58は、その主面のいずれの部分から電極を引き出してもよいが、本実施例では、前記貫通孔60の周囲部分を電極取出端子として用い、電極引出部68を接続している。このような構成においても、正極及び負極の外部への取り出しを同一方向から行うことができる点については、上述した実施例1と同様である。
【0028】
(2)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例1では、太陽電池セル10の外形及び貫通孔16及び22を円形にすることとしたが、これも一例であり、セルの外形や貫通孔の形状は必要に応じて適宜変更可能である。例えば、図3(B)に示す太陽電池セル70のように、四角形の基板72に設けた貫通孔74と、前記基板72に対向する図示しない基板に設けた貫通孔76の形状を双方とも四角としてもよいし、図3(C)に示す太陽電池セル80のように、基板82は四角とし、貫通孔84及び86を円形としてもよい。セルの外形を方形とすることにより、パネル化したときに、隙間が少なくなり発電効率の向上を図ることができる。一方、セルが円形の場合には、取付時の方向性を選ばないという利点があるため、用途に応じてセルの形状や貫通孔の形状を決定すればよい。
(3)前記実施例では、一つの基板に対して貫通孔を一つ形成することとしたが、これも一例であり、一つの基板に複数の貫通孔を設けることを妨げるものではない。また、貫通孔を設ける位置も、略中央部に限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更してよい。
(4)前記実施例で示した材料も一例であり、同様の効果を奏するものであれば、公知の各種の材料を利用してよい。例えば、前記実施例では、集電極18及び金属電極24としてTi薄膜を用いることとしたが、これも一例であり、例えば、電解液中の色素と反応しにくい公知の金属を用いてもよいし、これらの金属薄膜に金をコーティングして電極として用いてもよい。
(5)前記集電極18の形状も一例であり、光の透過が可能な形状であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、第1の電極と第2の電極との間に発電層が配置され、前記第1又は第2の電極の少なくとも一方が透光性を有しており、前記第1の電極を貫通する第1の貫通孔が形成され、前記第1の貫通孔と対応する位置に、該第1の貫通孔と大きさが異なり、前記第2の電極を貫通する第2の貫通孔が形成されており、前記第1又は第2の貫通孔の周囲は、前記発電層と重ならずに露出し、前記第1の貫通孔の周囲に、前記第1の電極を外部に取り出すための第1電極取出端子を設け、前記第2の貫通孔の周囲に、前記第2の電極を、前記第1の電極と同一方向に取り出すための第2電極取出端子を設けることとした。このため、前記第2の貫通孔を利用して、前記第1及び第2の電極を同一方向から取り出すことが可能となり、太陽電池セルの用途に適用できる。特に、セル単体の着脱や、セルの交換や並び替えが容易であるため、複数のセルを接続した発電パネルの用途や、仮設の太陽光発電装置の用途に好適である。
【符号の説明】
【0030】
10:太陽電池セル
11:発電電極
12:基板
12A,12B:主面
14:透明電極
16:貫通孔
16A:周囲部分
18:集電極
18A:環状部分
18B:放射状部分
20:基板
20A,20B:主面
22:貫通孔
24:金属電極(正極)
24A〜24C:金属薄膜
26:触媒層(Pt薄膜)
28:対向電極
30,32:封止材(スペーサ)
34:電解液
36:発電層(色素担持TiO層)
38:孔
40:空間
42,44:電極引出部
50:太陽電池セル
52:ガラス基板
54:貫通孔
56:透明電極
56A:露出部分
58:金属電極
60:貫通孔
62:発電層
64:絶縁層
66,68:電極引出部
70,80:太陽電池セル
72,82:基板
74,76,84,86:貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と第2の電極との間に発電層が配置されており、前記第1又は第2の電極の少なくとも一方が透光性を有する太陽電池セルであって、
前記第1の電極を貫通する第1の貫通孔が形成され、
前記第1の貫通孔と対応する位置に、該第1の貫通孔と大きさが異なり、前記第2の電極を貫通する第2の貫通孔が形成されており、
前記第1又は第2の貫通孔の周囲は、前記発電層と重ならずに露出し、
前記第1の貫通孔の周囲に、前記第1の電極を外部に取り出すための第1電極取出端子を有し、
前記第2の貫通孔の周囲に、前記第2の電極を、前記第1の電極と同一方向に取り出すための第2電極取出端子を有することを特徴とする太陽電池セル。
【請求項2】
透光性を有する第1の基板の一方の主面に、透光性を有する前記第1の電極が形成され、
前記第2の貫通孔は、前記第1の貫通孔よりも大きく、前記第1の貫通孔の周囲が前記発電層と重ならずに露出し、
前記第2の貫通孔に対応する位置に貫通孔を有する第2の基板の一方の主面に、前記第2の電極が形成されており、
前記第2電極取出端子は、前記第2の基板の他方の主面に形成されており、前記第2の基板の貫通孔の内部壁面を通じて前記第2の電極と接続されていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池セル。
【請求項3】
前記第1の基板と第2の基板の間であって、これらの基板の外周側と内周側にそれぞれ封止材が配置され、
該封止材と前記第1及び第2の基板によって形成される空間内に電解液が封止されており、
前記発電層が、前記空間内において、前記第1の電極に接触するとともに、表面に色素が担持された多孔質の半導体層であって、色素増感型の光発電層であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池セル。
【請求項4】
前記第2電極取出端子が、前記第2の基板の他方の主面側において、少なくとも前記第2の基板の貫通孔の周囲に形成された導体薄膜であって、前記第2の基板の貫通孔の内部壁面を被覆する導体薄膜を介して前記第2の電極と接続していることを特徴とする請求項3記載の太陽電池セル。
【請求項5】
前記第1の電極上に集電極が形成されており、
該集電極が、
前記第1の貫通孔の周囲の露出部分に形成されており前記第1電極取出端子をなす環状部分と、
該環状部分から外縁にかけて放射状に形成された放射状部分と、
を有することを特徴とする請求項3記載の太陽電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−77459(P2013−77459A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216948(P2011−216948)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構最先端研究開発支援プログラム(低炭素社会に資する有機系太陽電池の開発)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】