説明

太陽電池モジュール一体型屋根材

【課題】屋根面への施工後に太陽電池モジュールを交換する際に、出力ケーブルの加工作業が容易で、該出力ケーブルの再接続作業を効率良く行うことができる太陽電池モジュール一体型屋根材を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール2の裏面に配設した端子ボックス40の軒側に出力ケーブル41を接続し、該出力ケーブル41を湾曲させながら端子ボックス40を迂回して接続部41aとは反対側の棟側に引き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根面に敷設される屋根材に太陽電池モジュールを搭載した太陽電池モジュール一体型屋根材に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、建物の屋根や窓などに取り付けて利用され、業務用のみならず、一般住宅用にも需要が拡大してきている。一般住宅用としては、種々の太陽電池付き屋根材が開発されている。
【0003】
従来、この種の太陽電池モジュール一体型屋根材では、図9及び図9のC−C’断面図である図10に示すように、屋根材102上に固定される太陽電池モジュール103の裏面に端子ボックス104が配設されており、通常、そのケーブル接続部104aは棟側へ向けて配置されている。太陽電池モジュール一体型屋根材101は、端子ボックス104のケーブル接続部104aに接続される出力ケーブル105を太陽電池モジュール103の棟側から引き出した状態で、屋根面に施工される。
【0004】
例えば、特許文献1には、太陽電池モジュールの裏面に配設される端子ボックス及びそのケーブル接続部に接続される出力ケーブルの引き回し構造が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−276084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記太陽電池モジュール一体型屋根材101を屋根面に施工した後に太陽電池モジュール103を交換する場合には、図11に示すように、屋根材102上から太陽電池モジュール103を持ち上げ、出力ケーブル105を切断して太陽電池モジュール103を取り外し、交換用の太陽電池モジュール103に切断した出力ケーブル105を再接続する必要がある。
【0007】
しかしながら、従来の太陽電池モジュール一体型屋根材101では、端子ボックス104のケーブル接続部104aに接続された出力ケーブル105を、上記接続部104aが臨む方向と同一方向から引き出した状態で屋根面に施工しているので、出力ケーブル105の長さに余裕がない。従って、太陽電池モジュール103を持ち上げた時に屋根材102との間のスペースが小さく、切断した出力ケーブル105の加工作業が困難であり、該出力ケーブル105の再接続作業の効率を低下させていた。
【0008】
本発明の目的は、屋根面への施工後に太陽電池モジュールを交換する場合に、出力ケーブルの加工作業が容易で、該出力ケーブルの再接続作業を効率良く行うことができる太陽電池モジュール一体型屋根材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、太陽電池モジュールをベース材上に重ね合わせて一体に固定してなる太陽電池モジュール一体型屋根材であって、
太陽電池モジュールの裏面に配設した端子ボックスの出力ケーブルの接続部を軒側に配置し、且つ、
端子ボックスに接続された出力ケーブルを湾曲させながら該端子ボックスを迂回して、棟側より外部に引き出したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、太陽電池モジュールの裏面に配設された端子ボックスの接続部を軒側に配置し、該接続部に接続した出力ケーブルを、湾曲させながら折り返して反対側の棟側より外部に引き出すようにしたので、出力ケーブルを湾曲させて折り返した分だけ出力ケーブルの長さに余裕を持たせることができる。従って、屋根面への施工後に太陽電池モジュールを交換する際に、太陽電池モジュールを持ち上げた状態で屋根材(ベース材)との間にスペースを大きくとることができ、出力ケーブルの切断、再接続作業等の加工作業が容易で、太陽電池モジュールの交換作業を効率良く行うことができる。
【0011】
また、本発明の太陽電池モジュール一体型屋根材の製造時や施工時に出力ケーブルを引っ張ってしまった場合でも、出力ケーブルの湾曲部分で引張り力が緩和されるため、端子ボックスと出力ケーブルとの接続部に該引張り力がかかりにくくなり、該接続部における損傷が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は当該実施形態に限るものではない。
【0013】
図1は本発明の好ましい一実施形態の太陽電池モジュール一体型屋根材を示す平面図、図2は図1のA−A’断面図である。図3は図1のB−B’断面図、図4は斜視図、図5、図6はそれぞれ、本実施形態の太陽電池モジュール一体型屋根材を屋根面に施工した状態の斜視図及び側断面図である。
【0014】
図1〜図4に示すように、本例の太陽電池モジュール一体型屋根材1は、屋根材としてのベース材10上に、固定部材20を介して、光電変換装置である太陽電池モジュール2を一体的に固定したものである。
【0015】
本例の太陽電池モジュール2は薄型太陽電池モジュールであって、扁平な直方体状を呈しており、封止材により光電変換素子が密閉されている。
【0016】
太陽電池モジュール2を搭載するベース材10は、例えば、セメント系の屋根材、粘土瓦または金属瓦等により形成されている。このベース材10は、単純な平板形状であっても構わないが、外観を屋根材に似せるために、モジュール搭載部分11の板厚が薄く形成され、その軒側端部に裏面側(設置面側)に向けて屈曲した低い高さの着座部12が形成されている。また、図2に示すように、モジュール搭載部分11の中央部には、後述する端子ボックス40を収容するための収容凹部11aが形成され、該収容凹部11aは端子ボックス40を下側から覆うように設置側に窪ませて形成されている。
【0017】
また、ベース板10の棟側端部の裏面側には屋根面に当接する側断面逆台形状の脚部13が形成されており、その表面側(非設置面側)には棟側に隣接するベース材10の着座部12が着座する縦方向ラップ部14が延設されている。縦方向ラップ部14は、上記モジュール搭載部分11よりも板厚を増大させて突設され、モジュール搭載部分11に太陽電池モジュール2を配置した場合にその上面と該縦方向ラップ部14の上面とが連続した平面となるように形成されている。この縦方向ラップ部14には、釘やビス等で固定する止着孔17が開設されている。この縦方向ラップ部14の長手方向中央部のモジュール搭載部分側には、太陽電池モジュール2の下部から後述する出力ケーブル41を引き出すための矩形の引き出し凹部19が形成されている。
【0018】
さらに、左右方向(軒棟方向に直交する方向)の一端部には、隣接するベース材10を上側に重ねる横方向ラップ部15が延設されている。横方向ラップ部15は、上記屈曲した着座部12によってベース材10の他端部に区画される下部空間16に該横方向ラップ部15が配置される。尚、本例では、横方向ラップ部15がベース材10の左端部に延設されているが、これに限るものではなく、ベース材10の右端部に延設してもよい。
【0019】
図5及び図6に示すように、太陽電池モジュール一体型屋根材1は、野地板3等の屋根面上に沿って、瓦等の屋根材を縦横に敷設するように施工される。即ち、野地板3上に太陽電池モジュール一体型屋根材1を配置し、縦方向ラップ部14の止着孔17に不図示の釘やビス等を止着して固定する。左右方向における太陽電池モジュール一体型屋根材1の配置は、図5に示すように、横方向ラップ部15上に左隣りの太陽電池モジュール一体型屋根材1の右端部が重なるように施工される。軒棟方向における太陽電池モジュール一体型屋根材1の配置は、図6に示すように、軒側の太陽電池モジュール一体型屋根材1の縦方向ラップ部14上に棟側の太陽電池モジュール一体型屋根材1の着座部12が着座して重なるように施工される。野地板3上には防水性のルーフ材が敷設される場合もあるが、本実施形態の太陽電池モジュール一体型屋根材1の施工法は基本的に変わらない。
【0020】
このようにして屋根面上に縦横に敷設された複数の太陽電池モジュール2は、後述する出力ケーブル41を接続して直列または/及び並列に電気的に接続される。
【0021】
本例の太陽電池モジュール一体型屋根材1では、固定部材20を介して、ベース材10上に太陽電池モジュール2が一体的に固定されている。図3、図4及び図7に示すように、本例の固定部材20は側断面形状がコ字状を呈しており、太陽電池モジュール2の長手方向(左右方向)または幅方向(軒棟方向)の端部を表裏面側から挟持する保持部21と、ベース材10上に当接するように配置される設置片22と、この設置片22に設けられ、ベース材10に固定するボルト23a及びナット23bとを備えている。本例では、太陽電池モジュール2の幅方向両端部を左右両側において2対の固定部材20で保持している。
【0022】
保持部21は、太陽電池モジュール2の表面側に対向する上水平部21aと、その裏面側に対向する下水平部21bと、その側面に対向し、上記上水平部21a及び下水平部21bを連結する垂直部21cとから構成され、これらは連続してコ字形を呈している。設置片22と保持部21の下水平部21bとは連結部24によって連結されている。
【0023】
ボルト23aは、設置片22にベース材10に向けて立設されており、ベース材10を貫通するように起立している。従って、図3及び図7に示すように、ベース材10の四隅近傍の4箇所には、上記ボルト23aを挿通させるための貫通孔18が開設されており、このボルト23aをベース材10の貫通孔18に挿通させて、ベース材10の裏面側に突き出したボルト23aにナット23bを締結することにより、屋根材としてのベース材10と太陽電池モジュール2とが固定部材20を介して一体的に固定される。
【0024】
固定部材20の材質としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミ合金、その他の金属または合成樹脂等が挙げられる。
【0025】
尚、ベース材10に開設した貫通孔18から漏水するのを防止するために、固定部材20の設置片22とベース材10との間に定形または不定形のシーリング材を介設したり、貫通孔18内にシーリング材を充填してもよい。
【0026】
本例の太陽電池モジュール一体型屋根材の固定構造は、上記固定部材20を用いたものに限るものではなく、ベース材10上に接着剤を用いて太陽電池モジュール2を固定してもよく、固定部材20と接着剤とを併用しても構わない。
【0027】
固定部材20の保持部21で太陽電池モジュール2を保持する場合には、太陽電池モジュール2の破損を防止するため、保持部21と太陽電池モジュール2との間に緩衝材30を介設することが好ましい。緩衝材30は、弾力性を有するものであればよく、例えば、ゴム、エラストマーまたは合成樹脂が挙げられる。
【0028】
また、図1に示すように、太陽電池モジュールの裏面、即ちベース材10に対向する面には、そのケーブル接続部40aを軒側へ向けて端子ボックス40が配設されている。この端子ボックス40は、太陽電池モジュール2の出力端子を密閉保護するボックスであり、該ケーブル接続部40aに接続された出力ケーブル41は、湾曲しながら反対側の棟側へ折り返され、ベース材10の棟側に位置する引き出し凹部19から外部へ引き出されている。
【0029】
図5及び図6に示すように、屋根面に太陽電池モジュール一体型屋根材1を施工した場合には、軒棟方向の太陽電池モジュール一体型屋根材1同士の重ね合わせ部分において出力ケーブル41の一部が日射側に露出するが、該出力ケーブル41の露出部分を不図示の保護カバーにより覆うように構成してもよい。即ち、ベース材10の引き出し凹部19の上方を覆うように保護カバーを設けることが考えられる。出力ケーブル41の露出部分を保護カバーで覆うことにより、紫外線によるケーブルの劣化を防ぐことができる。また、出力ケーブル41の被覆材の色が太陽電池モジュール2やベース材10の色と異なる場合には、太陽電池モジュール2やベース材10の色に合わせて着色した保護カバーを用いることにより、全体の美観を向上させることができる。保護カバーの材質としては、例えば、ゴム、エラストマー、合成樹脂または金属などを用いることができる。
【0030】
以上の如く構成された太陽電池モジュール一体型屋根材1を屋根面に施工した後、不具合のある太陽電池モジュール2を交換するには、上記固定部材20または接着剤を切除して太陽電池モジュール2をベース材10から持ち上げる必要がある。
【0031】
具体的には、本例のように、ベース材10上に固定部材20を介して太陽電池モジュール2を固定している場合には、太陽電池モジュール2の幅方向端部を表裏面側から挟持する固定部材20の保持部21における少なくとも上水平部21aを切除し、太陽電池モジュール2を持ち上げる。或いは、ベース材10上に接着剤により太陽電池モジュール2を固定している場合には、太陽電池モジュール2とベース材10との間に介在する接着剤を鋸やナイフ等の刃物を用いて切除し、太陽電池モジュール2を持ち上げる。
【0032】
すると、図8に示すように、ベース材10上から離間させて太陽電池モジュール2を持ち上げることができる。この太陽電池モジュール2を持ち上げた状態で、出力ケーブル41を切断して太陽電池モジュール2を取り外し、交換用の太陽電池モジュール2に切断した出力ケーブル41を再接続する。このように切断した出力ケーブル41の再接続作業を行った後、ベース材10上に接着剤などを用いて交換用の太陽電池モジュール2を再固定する。
【0033】
本例の太陽電池モジュール一体型屋根材1では、端子ボックス40のケーブル接続部40に接続された出力ケーブル41を湾曲させながら折り返して上記ケーブル接続部40aが臨む軒側とは反対の棟側から引き出している。従って、出力ケーブル41を湾曲させて折り返した分だけケーブル長さに余裕を持たせることができる。これにより、屋根面への施工後に太陽電池モジュール2を交換するに際して、太陽電池モジュール2を持ち上げた時に、該太陽電池モジュール2とベース材10との間にスペースを大きくとることができ、切断した出力ケーブルの加工作業が容易であり、該出力ケーブル41の再接続作業を効率良く行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態の太陽電池モジュール一体型屋根材を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】図1のB−B’断面図である。
【図4】図1の太陽電池モジュール一体型屋根材を示す斜視図である。
【図5】図1の太陽電池モジュール一体型屋根材を屋根面に施工した状態の斜視図である。
【図6】図1の太陽電池モジュール一体型屋根材を屋根面に施工した状態の側断面図である。
【図7】図1の太陽電池モジュール一体型屋根材における固定部材を示す側断面図である。
【図8】図1の太陽電池モジュール一体型屋根材における太陽電池モジュール交換時の状態を示す側断面図である。
【図9】従来の太陽電池モジュール一体型屋根材を示す平面図である。
【図10】従来の太陽電池モジュール一体型屋根材のC−C’断面図である。
【図11】従来の太陽電池モジュール一体型屋根材における太陽電池モジュール交換時の状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 太陽電池モジュール一体型屋根材
2 太陽電池モジュール
3 野地板
10 ベース材
11 モジュール搭載部分
11a 収容凹部
12 着座部
13 脚部
14 縦方向ラップ部
15 横方向ラップ部
16 下部空間
17 止着孔
18 貫通孔
19 引き出し凹部
20 固定部材
21 保持部
21a 上水平部
21b 下水平部
21c 垂直部
22 設置片
23a ボルト
23b ナット
24 連結部
30 緩衝材
40 端子ボックス
40a ケーブル接続部
41 出力ケーブル
101 太陽電池モジュール一体型屋根材
102 屋根材
103 太陽電池モジュール
104 端子ボックス
104a ケーブル接続部
105 出力ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールをベース材上に重ね合わせて一体に固定してなる太陽電池モジュール一体型屋根材であって、
太陽電池モジュールの裏面に配設した端子ボックスの出力ケーブルの接続部を軒側に配置し、且つ、
端子ボックスに接続された出力ケーブルを湾曲させながら該端子ボックスを迂回して、棟側より外部に引き出したことを特徴とする太陽電池モジュール一体型屋根材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−186905(P2007−186905A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5780(P2006−5780)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】