説明

子宮外妊娠の治療のためのアロマターゼ阻害薬の使用方法

子宮外妊娠の診断後、少なくとも1種のアロマターゼ阻害薬を単独で、あるいは他のアロマターゼ阻害薬または治療薬と組合せて、あるいは保存的外科的処置、例えば腹腔鏡検査のアジュバントとして患者に投与して子宮外妊娠の確立および/または継続を予防する。ある種の好ましい実施形態においては、アロマターゼ阻害薬をメトトレキセートと組み合せて投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、子宮外妊娠の内科的治療方法に、さらに詳細には子宮外妊娠が診断された後のアロマターゼ阻害薬(AI)の投与に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許仮出願第60/615,979号(2004年10月4日提出)(この開示内容は参照により本明細書中で援用される)の継続出願であり、そしてその利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
子宮外妊娠、即ち正常子宮内着床部位外の妊娠は、母体の罹患及び死亡の主因である。子宮外妊娠は、発生率増大を伴って、世界的に生じている。例えば米国では、子宮外妊娠の年間発生率は1948年における妊娠の0.37%から1992年における1.97%に、5倍以上に増大している。しかしながら発生率が継続して上昇しているにもかかわらず、1979年から1992年までの子宮外妊娠による死亡率はほぼ90%減少した。それでも、子宮外妊娠は依然として、米国における母体死亡の第三の最も一般的な原因であり、全てのこのような死亡の約9%を構成する。最も高頻度の直接死因は、出血、感染及び麻酔合併症である。
【0004】
子宮外妊娠の発生増大には、多数の因子、例えば骨盤内炎症性疾患、感染合併症、再建的卵管手術の広範な臨床的使用、子宮内用具の広範な使用、並びに子宮外妊娠それ自体の目下広範囲に実行されている保存的外科的処置が関与してきた。
【0005】
子宮外妊娠に関する最も重要な危険因子は、子宮外妊娠の既往歴である。この出来事は、さらなる子宮外妊娠の見込みを10倍増しにする。子宮外妊娠は、in vitro受精中の胚移植のレシピエントの10%程において起こる。実際、この技術を用いたヒトで報告された最初の妊娠は、子宮外妊娠であった。
【0006】
全子宮外妊娠のうち、97%がファロピウス管(卵管)で、2.5%が子宮角で起こり、そして残りは種々のその他の位置、例えば子宮頚部、腹腔及び卵巣で起こる。卵管妊娠の大多数は、卵管の膨大部に位置する。間質性及び非卵管性子宮外妊娠は稀であるが、しかしそれらは全致死率の約20%を占める。
【0007】
産婦人科学手術の父であるローソン・テートは、今世紀になる前に、子宮外妊娠のための外科治療の最初の成功例である腹腔鏡による卵管摘除術を報告した。しかしながらほんの10年前まで、子宮外妊娠の診断及び処置にはほとんど変化は生じてはいなかった。高感度妊娠検査、超音波検査並びに診断的腹腔鏡の臨床的使用は、この状態の早期診断に大きな影響を及ぼした。したがって子宮外破裂率は減少し、非破裂ファロピウス管の腹腔鏡による保存的外科的処置という選択肢が、目下、実行可能な代替方法である。
【0008】
腹腔鏡卵管摘除は、小非破裂子宮外妊娠のための処置として十分に許容されているが、しかし手術室費用、麻酔供給及び外科医の報酬に関連した高額な経費を依然として伴う。保存的外科的選択肢は、卵管の遠位端を通しての卵管流産の圧搾から、子宮峡部異所性妊娠の分節的切除及び二次吻合までの範囲である。しかしながら子宮外妊娠のための任意の外科的療法は、ファロピウス管の外科的操作のため、望ましくない術後癒着を引き起こし得る。もちろん、外科手術及び麻酔に固有の最小限度の罹患率は依然として認められる。
【0009】
外科的処置に関する最終決定は、将来的受精能に対する患者の欲求に依存する。患者が将来的受精能に関心がない場合、適切な外科的手法は卵管摘除である。しかしながら患者が将来的受精能を望む場合、過去数年からの大半のデータは、これらの場合の大多数における保存的外科手術の実施を支持する。実施される外科的手法に関係なく、子宮外妊娠後の妊娠率は40%〜70%低減される。したがって、外科手術に付随する経費及び危険を克服するために、子宮外妊娠の処置及びケアへの非外科的アプローチが必要とされる。
【0010】
子宮外妊娠を処置するための非外科的技法としては、観察/予測的ケアのための入院或いは薬剤、例えばメトトレキセートによる子宮外妊娠の内科的治療が挙げられる。観察/予測的ケアは、子宮外妊娠が自然流産を蒙り、したがって外科的又は内科的介入を必要としないか否かを観察するための連続超音波検査及び血清絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)測定を包含する厳格でそして経費のかかる病院プロトコールを包含する。妊娠が自然発生的に消散する場合、この技法は、最初の診断的腹腔鏡検査時の卵管摘除による子宮外妊娠を除去することにより達成されるよりも良好なその後の妊娠率を生じる。今のところ、入院の付加的費用、連続hCG検定及び二次腹腔鏡検査を回避するために、最初の腹腔鏡検査の時点で非破裂性子宮外妊娠を除去するのがより良好である、というのが大多数の意見である。現時点で、妊娠中の予測的処置は、外科的危険が非常に高い、hCG力価が低下している、或いは調査設定中である患者だけのための一選択肢であると考えられる。
【0011】
子宮外妊娠は、種々の作用物質、例えばメトトレキセート、プロスタグランジン、ダクチノマイシン、エトポシド、高浸透圧グルコース、抗hCG抗体、塩化カリウム及びミフェプリストン(RU486)を用いて、種々の成功率で処置されてきた。全身治療は最も実用的であるが、しかしこれらの作用物質のいくつかもまた、腹腔鏡又は超音波誘導装置下で、或いは子宮鏡卵管内カニューレ挿入により、異所性妊娠嚢中に局所的にも注入されてきた。
【0012】
現時点で、非経口的メトトレキセートは、子宮外妊娠の内科的治療のための最もよく研究されたそして最も許容された作用物質であると思われる。葉酸アンタゴニストであるメトトレキセートは、核酸合成に必要な酵素であるジヒドロフォレートレダクターゼを抑制し、それにより活発に分裂中の組織におけるDNA合成及び細胞増殖を妨げる。妊娠栄養膜疾患の治療におけるメトトレキセートの効力は、それを、子宮外妊娠における化学療法的使用、例えば持続性子宮外妊娠を治療するための保存的外科手術に対するアジュバントとしての使用のための魅力的な候補にした。
【0013】
しかしながらメトトレキセート治療に関連したいくつかの問題、例えば重篤な副作用、或る種の医学的状態における禁忌、並びに高レベルのβ−hCG(>10,000 IU/ml)及びプロゲステロン(>10 ng/ml)が存在する場合の高い失敗率といった問題が存在する。全身性メトトレキセート治療は、血行動態的に不安定であるか、或いはそれぞれ白血球減少及び/又は血小板減少、肝臓酵素増大又は血清クレアチニン増大により立証されるように、骨髄低下或いは肝臓又は腎臓機能不全の徴候を有する患者では禁忌である。
【0014】
しかしながら最も注目すべきは、妊娠の消散までには有意に長い(ほとんどの患者で3週間より長い)期間が存在し、長期追跡調査のため、内科的治療の経費のほとんどを占めるメトトレキセートの反復投与を時として必要とする。治療の経費に及ぼす明らかな影響のほかに、メトトレキセート治療に関連した長期追跡調査期間は、うつ病を引き起こすことを含めて、患者の生活の質に悪影響を及ぼすことが見出されている。
【0015】
したがって、メトトレキセートの欠点を克服するか、或いは特に初期高β−hCG及びプロゲステロンレベルを有する患者における成功率を増大することにより子宮外妊娠のメトトレキセート治療の効能に付加し得る、そして回復までの間隔を短くして治療経費を低減し、患者の生活の質を改善し得る薬剤に対する必要性が依然として存在する。
【0016】
ヒト妊娠を確立し、そして首尾よく維持することは、胎児、母体及び胎盤内及びそれらの間のホルモンの協調的分泌を必要とする。胎盤は、母体と胎児の両方における内分泌腺によるホルモン生成を調節するステロイド及びペプチドホルモンを合成し、分泌する。胎盤ホルモンも、傍分泌及び/又は自己分泌的に、胎盤の細胞栄養芽層及び合胞栄養芽層の成長及び分化、胎盤血管樹の成長及び分化、並びに絨毛外栄養膜細胞による子宮血管内侵襲を調節するよう作用する。さらに胎盤は、母体内分泌腺により産生される大量のステロイドホルモンを代謝して、胎児を保護し、そして胎児器官系、特に胎児下垂体−副腎皮質系の時機及び発達を調整する。明らかに、胎盤ホルモン生成及び代謝は、上首尾の妊娠の最も重要な決定因子の1つである。
【0017】
早期妊娠の確立及び維持におけるエストロゲンの役割は、論争の余地がある。同時エストロゲン投与の必要なしに、黄体除去後に妊娠を救出するためにはプロゲステロンのみが必要であるということ(Ghosh他)を、種々の研究が見出している。黄体期卵巣エストロゲンは、アカゲザルにおける代理胚移植からの着床及び妊娠の維持に不可欠というわけではない(Hum. Reprod., Vol. 9, No. 4, pages 629-37 (1994))。上首尾の妊娠は、非常に低いエストロゲンレベルに関連した状態、例えばアロマターゼ欠乏症で見出されている(Morishima他著「Aromatase deficiency in male and female siblings caused by a novel mutation and the physiological role of estrogens」J. Clin. Endocrinol. Metab., Vol. 80, page 3689 (1995);France, Steroid sulfatase deficiency, J. Steroid Biochem., Vol. 11, page 647 (1979);及びShozu他著「A new cause of female pseudohermaphroditism: Placental aromatase deficiency」J. Clin. Endocrinol. Metab., Vol. 72, page 560 (1991))。さらに栄養芽細胞及び早期妊娠胎盤におけるエストロゲン受容体を一貫して実証することはできなかった。(Rossmanith他著「The demonstration of progesterone, but not of estrogen, receptors in the developing human placenta」Horm. Metab. Res. Vol. 29, No. 12, pages 604-610 (1997))。
【0018】
それにもかかわらず、エストロゲンは早期妊娠の確立及び維持においてきわめて重要な役割を果たし、そしてエストロゲンの生成及び/又は機能の破壊は早期妊娠の失敗を生じて、妊娠低下をもたらす、と本発明者らは考える。妊娠を確立し、維持するに際してのエストロゲンの役割に反する知見は反論され得る、と本発明者らは考える。
【0019】
黄体が、胎盤の確立までは、早期妊娠におけるエストロゲン及びプロゲステロンの主供給源である、ということは既知である。黄体除去後の妊娠の維持のために必要なのはプロゲステロン補充だけ(エストロゲン無し)である、ということをGhosh他は見出した。しかしながら、エストロゲン産生の非黄体供給源、即ち胚並びに早期発達胎盤を彼等は考察しなかった。エストロゲンは、以下の2つのメカニズムにより、間接的に、早期妊娠においてその役割を果たす、と本発明者らは考える:即ち、先ず、プロゲステロン受容体を上向き調節することによりプロゲステロン作用を誘発すること、そして第二に、胎盤栄養芽細胞における受容体媒介性LDL取込みの増大並びにLDL受容体及びP450scc(128)mRNA発現を含めた種々のメカニズムにより胎盤及び黄体によるプロゲステロン産生を増強することである。
【0020】
要するに、早期妊娠の維持におけるエストロゲンの役割はプロゲステロンにより媒介される、と思われる。それゆえ、プロゲステロン単独の投与が、エストロゲン投与の必要なしに黄体除去後に妊娠を救出するのに十分である、ということは明らかである。さらに、エストロゲン投与単独は、その段階でのプロゲステロンの産生のための主要機構が妊婦に存在しないため、黄体除去後の妊娠の維持を生じない。見過ごされるべきでない別の重要な点は、投与プロゲステロンのエストロゲンへの転化の理論的可能性であって、その逆はない。ステロイド生成カスケードを考えると、エストロゲンは最終産物であるが、一方、プロゲステロンはステロイド生成カスケードにおける早期産物である。
【0021】
妊娠は、種々の胎盤酵素の欠乏症に起因する低エストロゲンレベルを有するほとんどの女性において維持されるが、しかし、母体エストラジオールレベルが顕著に低減されるがしかし濃度は、その受容体と結合しているエストラジオールの解離定数に近似する濃度である0.45 ng/mL又は10−9 mol/Lに近いことが見出される、ということに留意することは興味深い。エストロゲン欠乏を示す種々の女性における妊娠の結果における差は、エストラジオールの重要な生物学的作用が利用可能な受容体並びにそれと相互作用するのに十分なエストロゲンの濃度により達成され得る、ということを示唆する。ヒト及び非ヒト霊長類の両方の妊娠において、エストロゲンはかなり余分に産生される、ということは明らかである。ヒヒにおいて、プロゲステロン産生に及ぼすエストロゲン欠乏の影響を試験するために、2つのエストロゲンアンタゴニストが早期妊娠において投与され、プロゲステロン産物中でのエストロゲンに関する胎盤要件を示す血漿プロゲステロンの低下は、純エストロゲンアンタゴニストであるMER−25を用いて見出されたが、一方、他のアンタゴニストであるトリオキシフェンメシレートを用いた場合は、トリオキシフェンの固有のエストロゲン性のため、このような作用は明らかには見出されなかった。これは、このような最小エストロゲン活性でさえ、早期妊娠においてその役割を発揮するにはやはり十分である、ということを示す。
【0022】
さらに、アロマターゼ欠乏症の女性において、胎盤は、同様に父親からの遺伝子の相補体を依然として保有し、したがってエストロゲンを産生するため、影響を受けない。
【0023】
ヒト栄養芽細胞中のエストロゲン受容体を検出できなかったにもかかわらず、Rossmanith他は、彼等の知見がヒト栄養芽細胞中のこの受容体の存在を完全に妨げるというわけではないが、しかしこれらの細胞上の相対的に低い数及び密度のエストロゲン受容体に寄与し得る、と結論づけた。或いは異なる型のエストロゲン受容体は、例えば非古典的膜結合受容体により、胎盤に及ぼすエストロゲン作用を媒介し得る。ごく最近、Bukovsky他著「Expression and localization of estrogen receptor-alpha protein in normal and abnormal term placentae and stimulation of trophoblast differentiation by estradiol」Reprod. Biol. Endocrinol., Vol. 6, No. 1, page 12 (2003)は、正常及び異常期間胎盤中のエストロゲン受容体−アルファタンパク質の発現及び局在化、並びにエストラジオールによる栄養芽細胞分化の刺激を報告した。
【0024】
エストロゲンの役割に反する証拠の誤りを暴くほかに、エストロゲンが、特に以下の4つの事実に基づいて妊娠の確立及び維持において極めて重要な役割を果たす、ということを本発明者らは確信するようになった:
【0025】
−第一: エストロゲンシンターゼ酵素(アロマターゼ及び17HSD1)の存在並びに黄体、胚及び栄養芽細胞によるエストロゲン産生。正常エストロゲン産生は、早期妊娠の健常発達に関連する。
【0026】
ヒト胎盤は、妊娠の維持のための独特の器官である。その重要な機能としては、母体及び胎児発達のためのホルモン供給が挙げられる。胎盤特異的ホルモン、例えばヒト絨毛性性腺刺激ホルモン及び胎盤ラクトゲンの合成のほかに、胎盤は、妊娠期間中を通してプロゲステロン及びエストロゲンを産生するのに重要な役割を果たす)。栄養芽細胞は、プロゲステロンを分泌する;この産生は、純hCGの存在下でin vitroで倍増される。
【0027】
P450arom及び17HSD1はともに、内分泌機能における合胞栄養芽細胞の役割と一致して、合胞栄養芽細胞中で十分に発現される。サイトゾル17HSD1は、合胞栄養芽細胞の核中に見出されている。第1三半期胎盤から精製される培養細胞栄養芽層は、P450arom及び17HSD1の両方を発現し、そしてデヒドロエピアンドロステロン及びA−ジオンをEに転化し得る。
【0028】
ヒト妊娠中、17−β−エストラジオールの産生は、0.75nM 排卵前ピークから終了時の60nMに、8倍に上がり)、エストロゲンは、ヒト及び霊長類における胎盤機能及び胎児発達の種々の局面に影響を及ぼす。黄体は、妊娠の早期段階中のエストロゲン及びプロゲステロンの主供給源であり、この間中、hCGは黄体ホルモン救出並びに黄体エストラジオール及びプロゲステロン産生の維持に関与する。エストラジオールは、胚及び子宮内膜源から産生されることも見出されており、これは、胚着床における許容的役割を示唆する。さらに、胚盤胞は、着床のプロセスに活発に参加する。胚盤胞が着床を開始し得る(活性化と呼ばれるプロセス)メカニズムは、エストロゲン代謝産物の一クラスであるカテコールエストロゲンを包含する。
【0029】
ごく最近、Li他著「Expression of P450 aromatase and 17-β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1 at fetal-maternal interface during tubal pregnancy」J. Steroid Biochem. Mol. Biol., Vol. 87 (4-5), pages 241-6 (2003)は、卵管妊娠における、胎児−母体界面での、特に種々の栄養芽細胞におけるP450arom及び17HSD1の発現パターンを試験した。in situハイブリダイゼーションを用いて、妊娠中のホルモン産生に主に関与する合胞栄養芽細胞中にP450arom mRNAは局在化される。さらに17HSD1は、ファロピウス管の上皮細胞中に見出された。興味深いことに、卵管妊娠中のファロピウス管上皮細胞中の17HSD1の発現レベルは正常サイクル中のものより有意に高い、ということをLi他は見出した。この試験は、卵管妊娠が合胞栄養芽細胞中でP450arom及び17HSD1の同一の発現を、したがって胎盤中での類似のエストラジオール産生を保有する、という最初の証拠を提供した。17HSD1と絨毛外栄養膜細胞との関連が、17HSD1がおそらくは栄養芽細胞侵襲において役割を果たすことを示す、ということを著者等は示唆した。さらに、ファロピウス管の上皮細胞中の17HSD1の発現増大は、卵管妊娠の維持のために十分な局所的エストラジオール供給をもたらし得る。
【0030】
エストラジオールレベルは、異常妊娠、例えば子宮外妊娠及び流産においては低いことが既知である。第1三半期流産が切迫している女性では、異常エストラジオール濃度は、その後の妊娠喪失と大いに関連する(Nygren他著「Evaluation of the prognosis of threatened abortion from the peripheral plasma levels of progesterone, estradiol and human chorionic gonadotropin」Am. J. Obstet. Gynecol., Vol. 116, page 916 (1973))。
【0031】
エストラジオール濃度の低下は、子宮外妊娠において、HCGの異常倍増時間を伴って、そしてすべての流産において、観察された。子宮外妊娠が正常倍増時間を有した場合、エストラジオール及びプロゲステロン濃度は正常であった。これらの知見は、特に子宮外妊娠における黄体機能は、絶対値より多いHCGの適切な倍増時間によっており、そして正常栄養芽細胞組織に関しては、着床部位は黄体機能に影響を及ぼさない、ということを示唆する。流産では、エストラジオール及びプロゲステロン濃度の低下は、HCGの倍増時間によりあまり影響を受けなかった(Alam他著「Preliminary results on the role of embryonic human chorionic gonadotrophin in corpus luteum rescue during early pregnancy and the relationship to abortion and ectopic pregnancy」Hum. Reprod. Vol. 14, No. 9, pages 2375-8 (1999))。これらの知見は、子宮外妊娠で産生される低レベルのhCGのために、子宮外妊娠における黄体の機能が欠けると予測され、これは子宮外妊娠の維持における発達中の栄養芽細胞によるステロイド生成のための重要な役割を示す、ということを示唆する。
【0032】
−第二:栄養芽細胞分化及び侵襲に及ぼすその作用を媒介する栄養芽細胞組織中のエストロゲン受容体の存在
【0033】
ヒト胎盤はエストラジオールを結合する、ということをいくつかの研究は示している。しかしながら、パラフィン包埋又は即時凍結切片に関するさらに近年の免疫組織化学的研究、並びにその他の技法(ER−α mRNAのためのRT−PCR)は、妊娠中のヒト胎盤中の、又は分散胎盤細胞の培養中のエストロゲン受容体αを実証できなかった。しかしながらエストロゲン受容体α(ERα)の検出失敗は、ヒト栄養芽細胞中のこの受容体の存在を完全には排除しないが、しかしむしろこれらの細胞上の相対的に低い数及び密度の受容体に原因があると思われる。培養ヒト胎盤合胞栄養芽細胞の核中のエストロゲン受容体αの同定についての報告がある。近年、Bukovsky他がウエスタンブロット分析を用いて、正常胎盤中で、核エストロゲン受容体α発現は絨毛性栄養膜細胞に限定されるということを見出すまで、胎盤ERα発現のウエスタンブロット分析を適用した上記研究はなかった。異常胎盤において、ERαを発現する栄養膜細胞は検出されないことを、彼等は見出した。in vivoでの胎盤ERα発現は正常胎盤において高く、異常胎盤ではほとんど検出可能でない、と著者等は結論づけた。妊娠の進行に伴って生じるエストロゲン産生の有意の増大は、合胞体集合体への単核化栄養芽細胞の最終分化の刺激において、そして胎盤機能の促進において、ERαを介して、役割を果たし得る。しかしながらこのメカニズムは、ERα発現の欠如を示す異常胎盤においては作動し得ない。
【0034】
−第三:プロゲステロン受容体上向き調節に及ぼす効果並びに妊娠の早期におけるプロゲステロン産生に及ぼす効果の両方によるプロゲステロン作用におけるエストロゲンの有意の役割
【0035】
エストロゲン及びプロゲステロンは、着床プロセス中、並びに妊娠の確立及び維持中に、きわめて重要な役割を果たす。最初に黄体により、そして後に胎盤により分泌されるプロゲステロンは、進行中の妊娠を維持するのに不可欠である(Ghost, Another look at the issue of peri-implantation oestrogen, Hum. Reprod., Vol. 10, pages 1-2 (1995))。プロゲステロン支持がない場合、胚は、プロスタグランジン媒介性メカニズムにより追い出される。臨床的には、プロゲステロンの合成阻止、或いは受容体でのその作用の遮断は、プロゲステロン作用の抑制を成し遂げ得る。3β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬であるエポスタンは、プロゲステロンの合成を阻止し、そして妊娠終結に関して研究されてきたが、しかし流産を実行するためには7日間にわたって6時間毎に投与する必要がある。
【0036】
標的細胞に及ぼすエストロゲン及びプロゲステロン作用は、それぞれエストロゲン受容体及びプロゲステロン受容体により媒介される。プロゲステロン及びエストロゲン受容体はともに、ステロイド−レチノイド受容体スーパーファミリーの成員であり、ステロイド調節転写因子として機能する。
【0037】
プロゲステロン受容体及びエストロゲン受容体のレベルは、ステロイドに対する細胞応答性を確定するのに重要であると考えられ、したがって受容体調節が広範に研究されてきた。プロゲステロン受容体は、最も良く実証されたエストロゲン調節遺伝子のうちの1つである。多数の標的組織において、正常及び新生物の両方のプロゲステロン受容体がエストロゲンにより誘導され、そしてエストロゲン作用のためのマーカーとして広範囲に認識されている。
【0038】
ヒト、ラット及びウサギプロゲステロン受容体は、占有エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体遺伝子の5’−領域中の複数のエストロゲン応答性領域との結合により誘導される、ということをin vitro研究は示した。多くの種では、エストロゲンは、ほとんどすべての子宮細胞型、例えば上皮細胞中のプロゲステロン受容体を上向き調節する。これらの報告は、占有エストロゲン受容体がプロゲステロン受容体プロモーターと結合し且つプロゲステロン受容体遺伝子の転写を活性化する、プロゲステロン受容体のエストロゲン調節モデルと一致する。
【0039】
プロゲステロン受容体の発現、したがってプロゲスチンに対する感受性は、エストロゲン(ほとんどの標的組織中のプロゲステロン受容体発現を増大する)及びプロゲステロン(同じく低減する)の制御下にある。プロゲステロン受容体タンパク質は、発情前期中に、或いは哺乳類子宮中の外因性エストロゲン投与により増大される。
【0040】
エストラジオールがそれ自体の受容体の濃度を、並びに正常子宮内膜中のプロゲステロン受容体の濃度を増大し、同時に、プロゲステロンが、適量で、これらのエストロゲン作用を相殺する、ということは既知である。さらに、Chwalisz他著「Inhibition of the oestradiol mediated endometrial gland formation by the antigestagen onapristone in rabbits: relationship to uterine estrogen receptor」Endocrinology, Vol. 129, pages 312-2 (1991)により示唆されているように、非占有プロゲステロン受容体も霊長類子宮内膜におけるプロゲステロン受容体生合成の制御に役割を果たす。抗エストロゲンも、このようなエストロゲン効果/作用を相殺する。抗エストロゲンCDRI−85/287による処置は、両受容体の量を低減することが判明したが、これは、抗エストロゲンが霊長類子宮内膜における脱落膜化抑制活性を有し得る、ということを示唆する。
【0041】
エストロゲンは、栄養芽細胞によるプロゲステロン産生において重要な役割を果たすことが示されている。ラット及びウサギ妊娠中、エストロゲンは、黄体及びプロゲステロン産生を維持する主要な黄体刺激薬である。エストロゲンは、ラット及びウサギ黄体中の高密度リポタンパク質コレステロール基質の取込み並びにP450scc発現を刺激し、それによりプロゲステロン産生を促す。中−及び後期霊長類妊娠中、胎盤がプロゲステロンの主供給源である場合、エストロゲンは栄養芽細胞内で類似の調節的役割を有する。胎盤プロゲステロン形成及び血清プロゲステロン濃度は、ヒヒにおけるエストロゲン受容体アンタゴニスト・エタモキシトリフェトールの投与により低減される(その効果はジエチルスチルベストロールにより逆転され得る)。さらに、培養中のヒト栄養芽細胞による胎盤プロゲステロン産生は、アロマターゼ阻害薬による処理により抑制され、そしてエストラジオールにより回復される。エストロゲンレベルが上がるヒヒ妊娠の後半中に観察される胎盤栄養芽細胞中での受容体媒介性LDL取込み並びにLDL受容体及びP450scc mRNA発現の増大は、エストロゲンの作用又は形成を遮断することにより抑制され得る。これに対比して、胎盤3β−HSD及び副腎毒素mRNA発現並びに3β−HSD活性は、ヒヒにおける抗エストロゲン処置により発達的に調節又は変更されない。したがってエストロゲンの作用又はレベルの抑制は、特に、胎盤LDLコレステロール取込みの発達的増大並びにヒヒにおけるコレステロールのプレグネノロンへの代謝に不可欠なP450scc酵素の発現を遮断する。
【0042】
−第四:エストロゲン機能の崩壊は欠陥早期妊娠発達に関連する
【0043】
早期妊娠の確立及び維持におけるエストロゲンの重要な役割を支持するための強力な証拠が蓄積されつつある。転写に関与するエストロゲン受容体のアミノ末端領域における突然変異を有する女性の間で、50%の自然流産率が観察された(Lehrer他著「Oestrogen receptor B-region polymorphism and spontaneous abortion in women with breast cancer」Lancet, Vol 335, page 622 (1990))。ヒヒにおいて、胎盤エストロゲン合成の阻害薬の毎日投与による0.1 ng/mL未満への母体エストロゲンレベルの低減は、外因性エストラジオールを用いた処置により防止された早期妊娠中の流産発生率66%を結果として生じた(Albrecht他著「The role of estrogen in the maintenance of primate pregnancy」Am. J. Obstet. Gynecol., Vol. 182, page 432 (2000);Derfoul他著「Estrogenic endocrine disruptive components interfere with calcium handling and differentiation of human trophoblast cells」J. Cell Biochem., Vol. 89, No. 4, pages 755-770 (2003))が、栄養芽細胞Ca取り扱い機能が内分泌的に調節されること、そしてエストロゲン崩壊剤によるそれらの改質が胎児発達に及ぼす有害作用の考え得る経路を構成することを示唆した。
【0044】
エストロゲンが、早期妊娠の確立及び維持において実際に有意の役割を果たす場合には、エストロゲン形成及び/又は機能の崩壊は早期妊娠失敗を生じて、妊娠喪失をもたらす。
【0045】
しかしエストロゲンが早期妊娠の確立及び維持に大きな役割を有するという結論に至るために本発明人等により用いられるデータのほとんどは、子宮内妊娠を包含する試験から得られる。ステロイド生成、並びに早期妊娠期の支持におけるエストロゲン及びプロゲステロンに関する匹敵する役割に関して、子宮内及び子宮外妊娠間に類似性が認められる、という結論に本発明者らは達した。子宮外妊娠に対して子宮内妊娠からのこれらのデータの外挿は、子宮外妊娠における胎盤形成に関して利用可能なデータ(Randall他著「Placentation in the fallopian tube」Int J Gynecol Pathol., Vol. 6, No. 2. pages 132-9 (1987));並びに子宮外妊娠におけるステロイド生成に関する近年のデータ(Li他著「Expression of P450 aromatase and 17β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1 at fetal-maternal interface during tubal pregnancy」J Steroid Biochem Mol Biol., Vol. 87 (4-5), pages 241-6 (2003)及びapopotosis in extravillous trophoblast cells (von Rango他著「Apoptosis of extravillous trophoblast cells limits the trophoblast invasion in uterine but not in tubal pregnancy during first trimester」Placenta, Vol. 24, No. 10, pages 929-40 (2003)参照)により支持される。
【0046】
アロマターゼは、エストロゲンの産生における速度制限ステップ、即ち3つのヒドロキシル化ステップを介したアンドロステンジオン及びテストステロンのそれぞれエストロン及びエストラジオールへの転化を触媒するチトクロームP450ヘモタンパク質含有酵素複合体スーパーファミリー(P450arom、CYP19遺伝子の産物)のミクロソーム成員である。アロマターゼ活性は、多数の組織、例えば卵巣、脳、脂肪組織、筋肉、肝臓、乳房組織中に、そして悪性乳房腫瘍中に存在する。循環エストロゲンの主供給源は、閉経前女性の卵巣及び閉経後女性の脂肪組織である。
【0047】
エストロゲン産生は生合成列中の最終ステップであるため、アロマターゼは選択的抑制のための良好な標的である。主として乳癌の治療のために、過去20年間にわたって、多数のアロマターゼ阻害薬が開発され、そして臨床試験に利用されてきた。
【0048】
臨床的に用いられるべき第一のアロマターゼ阻害薬はアミノグルテチミドであったが、これは、ステロイド生合成に関与する他の酵素の多くを抑制することにより、内科的副腎摘出を誘導する。アミノグルテチミドは閉経後乳癌における有効なホルモン剤であるが、しかしその使用は、同時コルチコステロイド置換の必要性により複雑にされる。さらに、傾眠、発疹、悪心及び発熱のような副作用が患者の8〜15%に生じて、アミノグルテチミド治療を中止する。アミノグルテチミドの特異性の欠如及び好ましくない毒性プロフィールは、より特異的なアロマターゼ阻害剤の探索へと導いた。さらに、早期のアロマターゼ阻害薬は、閉経前患者におけるアロマターゼ活性を完全に抑制することはできなかった。したがってアロマターゼ阻害薬は、主に閉経後患者のために用いられてきた。
【0049】
エストロゲンの役割に関する論争のために、とりわけアロマターゼ阻害薬は今まで、子宮外妊娠の確立及び/又は継続の防止のために、或いは妊娠の内科的終結のために用いられたことはなかった。実際、アロマターゼ阻害薬は、着床及び/又は妊娠率を改善するために、in vitro受精(IVF)、配偶子卵管内移入手法(GIFT)、接合子卵管内移植手法(ZIFT)、細胞質内精子注入(ICSI)、子宮内精液注入(IUI)、治療的ドナー精液注入(TDI)及び卵巣刺激過敏制御(COH)のような補助生殖技法に近年用いられてきた。
【0050】
アロマターゼ阻害薬は、多数の異なる方法で分類されており、例としては第一、第二及び第三世代;ステロイド及び非ステロイド;並びに結合活性により、即ち可逆的(イオン結合)及び不可逆的(自殺阻害薬、共有結合)が挙げられる。最も上首尾の第三世代アロマターゼ阻害薬は、目下、乳癌治療のために市販されている。
【0051】
市販作用物質としては、2つの非ステロイド系製剤、アナストロゾール及びレトロゾール、並びにステロイド剤、エキセメスタンが挙げられる。エキセメスタンは、アロマシン(登録商標)の商標でPfizer Inc., New York, NYから入手可能であり、アナストロゾールは、アリミデックス(登録商標)(ZN 1033)の商標でAstraZenecaから入手可能であり、そしてレトロゾールは、フェマラ(登録商標)(CGS 20267)の商標でNovartis Pharmaceutical Corporationから入手可能である。アナストロゾール及びレトロゾールは選択的アロマターゼ阻害薬であり、閉経後乳癌の治療のために、北米、欧州及び世界のその他の地域で臨床的使用のために利用可能である。これらのトリアゾール(抗真菌)誘導体は、可逆的、競合的アロマターゼ阻害薬であり、これらは非常に強力且つ選択的である。それらの固有の効能は、アミノグルテチミドの効能よりかなり大きく、そして1〜5mg/日の用量で、それらはエストロゲンレベルを97%〜>99%抑制する。このレベルのアロマターゼ抑制は、最も高感度の免疫検定による検出より低いエストラジオール濃度を生じる。アロマターゼに対するアロマターゼ阻害薬の高親和性は、アロマターゼ酵素複合体のヘム鉄原子と配位結合するトリアゾール環の−4窒素に存在すると考えられる。アロマターゼ阻害薬は、約45時間(30〜60時間の範囲)の平均最終t1/2で、経口投与後に完全に吸収される。それらは、主に肝臓により全身循環から掃去される。胃腸障害は副作用のほとんどを説明するが、しかしこれらは両方をめったに制限しない。その他の副作用は、無力、のぼせ、頭痛及び背痛である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0052】
[発明の概要]
本発明は、子宮外妊娠の治療のための、さらに詳細には子宮外妊娠の確立及び/又は継続の予防のための、単独で、或いは他のアロマターゼ阻害薬及び/又は他の薬剤、例えばメトトレキセート(これに限定されない)と組合せたアロマターゼ阻害薬の使用を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0053】
方法の一実施の形態では、子宮外妊娠は当該技術分野で既知の技法により先ず診断される。子宮外妊娠を有することが臨床的に疑われる患者は、以下の2つの主要部類に分けられる:即ち、急性腹症を有し、そして即時外科手術が指示される者;並びに臨床的に安定しており、そして補助診断手法が実施され得る者。子宮外妊娠を有する疑いのある臨床的に安定した患者の評価の現代アプローチは、高感度妊娠試験(又はhCG試験)、腹部又は経膣超音波検査、並びに診断的腹腔鏡検査の併用を基礎とする。hCG試験は妊娠に関してスクリーニングするために用いられ、そして超音波検査はそれを位置決定するために用いられる。急性症例では、迅速子宮妊娠試験及びダグラス窩穿刺が用いられ得る。陽性妊娠試験結果を有する患者における陽性ダグラス窩穿刺は、99.2%の症例における子宮外妊娠と一致することが報告されている。
【0054】
単独での又は他の薬剤(単数又は複数)と組合せたアロマターゼ阻害薬の投与は、1日又は複数日の間の単一用量として、或いは1日又は複数日の間の複数回用量として施される。他の薬剤は、アロマターゼ阻害薬(単数又は複数)の投与を開始する前に、同時に、又は後に開始され得る。単独での又は他の薬剤と組合せたアロマターゼ阻害薬(単数又は複数)の投与は、子宮外妊娠の診断直後に開始し得るし、或いは保存的処置の数日後に開始され得るし、或いはアジュバント療法として外科的処置と同時に開始され得る。本明細書中で用いる場合、「保存的処置」という用語は、外科技法、例えば子宮外妊娠を治療するために一般的に用いられる既知の腹腔鏡検査技法を包含する。
【0055】
アロマターゼ阻害薬(単数又は複数)単独での或いは他の薬剤又は他の療法を一緒に組合せた、或いはそれらを伴う投与は、経口的に、非経口的に、或いは薬剤の他の既知の薬理学的投与経路により、例えば経膣的及び経直腸的投与経路(これらに限定されない)により、そして皮膚又は粘膜を通して、実行され得る。もちろん、経口投与が好ましい経路である。
【0056】
理論に縛られたくはないが、しかし妊娠の確立及び/又は継続を防止するに際してのアロマターゼ阻害薬の成功を説明するいくつかの考え得るメカニズムが存在する。主な仮説は、エストロゲン剥奪に派生する栄養芽細胞組織の萎縮及び死を誘導して、プロゲステロン作用の抑制をもたらすことによる早期子宮外妊娠の確立の防止である。エストロゲン及びプロゲステロンはともに、妊娠の維持のために必要である。プロゲステロン受容体は、エストロゲン・プライミングによっている。さらに、エストロゲンは、妊娠中のプロゲステロン産生を増強するために必要とされる。アロマターゼ阻害薬の使用はエストロゲン産生の抑制を生じて、エストロゲン剥奪をもたらし、これが、エストロゲン欠失の結果としてのプロゲステロン受容体の抑制並びにプロゲステロン産生の抑制により間接的にプロゲステロン作用を妨害する、と本発明者らは仮定した。したがって、アロマターゼ抑制による子宮外妊娠の確立の防止並びに早期栄養芽細胞組織の破壊は、以下の2つのメカニズムの結果である、と本発明者らは提唱する:第一のメカニズム;芽細胞及び栄養芽細胞アロマターゼの抑制による局所的エストロゲン撤退及び局所的エストロゲン産生を包含する直接的メカニズム:第二のメカニズム;循環エストロゲンレベルの低下を生じるAIにより誘導されるアロマターゼレベル低減によりエストロゲンに転化され得ないステロイド前駆体基質(即ちアンドロゲン及びプロゲスチン)に起因する直接的又は間接的卵巣内作用によるメカニズム。
【0057】
両「エストロゲン撤退」作用は、栄養芽細胞完全性の崩壊を生じる出来事のカスケードを生じて、その破壊とそして子宮外妊娠萎縮及び破壊の誘導をもたらすと予測される。したがって、アロマターゼ阻害薬が投与される子宮外妊娠の妊娠期間に関係なく、栄養芽細胞崩壊が起こる。したがって本発明は、アロマターゼ阻害薬の経口投与とその結果として起こるエストロゲン合成の遮断により女性における子宮外妊娠の確立及び/又は維持を防止するための方法を提供する。
【0058】
アロマターゼ阻害薬単独の使用は、子宮外妊娠の内科的処置のための有効な代替的用法であり得る。これは、有意に高い安全性、並びに低コスト、そして経口投与の便利性という利点を有する。別の実施の形態では、メトトレキセート治療を伴うアロマターゼ阻害薬の投与は、メトトレキセート治療の結果を改善し、これは目下、子宮外妊娠の内科的処置のための一般標準である。結果改善とは、治療の低失敗率、メトトレキセートの反復的二次又はそれ以上の用量の必要性の低減、治療開始及び完全消散(陰性血清β−hCGレベル)間の間隔短縮を意味する。さらに、妊娠の完全消散を達成するために必要とされるのは低用量のメトトレキセートであり、その結果、メトトレキセートの副作用は減少される。
【0059】
他の有用な利点としては、第三世代アロマターゼ阻害薬の優れた安全性プロフィール、並びにそれらの高耐容可能性が挙げられる。特に、第三世代アロマターゼ阻害薬は、内科的禁忌を有する一部の女性におけるメトトレキセートの成功を、或いはその使用をさえ制限した有意の禁忌を欠く。
【0060】
さらに、第三世代アロマターゼ阻害薬は、既知の有意のアレルギー反応、薬剤相互作用又は禁忌を伴わずに、経口的に投与される。したがってアロマターゼ阻害薬の使用は、子宮外妊娠の内科的治療の経費を有意に低減し、完全消散までの間隔を低減し、追跡調査期間を短縮し、並びに一般に利用可能な内科的治療の失敗率を低減する。これは、子宮外妊娠を有する患者に関する生活の質に及ぼす有意の正の影響も有する。
【0061】
単一アロマターゼ阻害薬が本発明に用いるために選択されるが、しかしアロマターゼ阻害薬の組合せ、特に異なる半減期を有するアロマターゼ阻害薬の組合せは、本発明の意図内である。アロマターゼ阻害薬は、好ましくは約8時間〜約4日の半減期を有するアロマターゼ阻害薬、さらに好ましくは約2日の半減期を有するアロマターゼ阻害薬から選択される。非ステロイド系及び可逆的アロマターゼ阻害薬から選択されるアロマターゼ阻害薬が、最も有益である。本発明の方法、使用及び調製物に用いられ得るアロマターゼ阻害薬の種類に関するさらなる詳細は、以下の本明細書中で明らかになる。
【0062】
市販の形態のうち最も有用であることが判明したアロマターゼ阻害薬は、経口形態のものである。この形態は、他の形態を上回る明らかな利点、例えば便利性及び患者コンプライアンスを提供する。目下市販されているものの中で好ましいアロマターゼ阻害薬としては、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール及びエキセメスタンが挙げられる。エキセメスタン(アロマシン(商標))は、本発明における使用のために特に意図されるステロイド系非可逆的アロマターゼ阻害薬の一例である。
【0063】
本発明に必要とされる日用量は、使用のために選択されるアロマターゼ阻害薬の種類によっている。いくつかの阻害薬は他のものより活性であり、それゆえ、より少ない量の前者阻害薬が用いられ得る。
【0064】
好ましい投薬量の例を以下に示す。アロマターゼ阻害薬がレトロゾールである場合、それは好ましくは、約2.5mg〜約30mgの日用量で投与される。アロマターゼ阻害薬がアナストロゾールである場合、好ましくはそれは約1mg〜約30mgの日用量で投与される。アロマターゼ阻害薬がボロゾールである場合、好ましい日用量は約4〜約30mgである。エキセメスタンは、好ましくは約25〜200mgの日用量で投与される。好ましいのは1〜10日用量のアロマターゼ阻害薬であり、最も好ましくはアロマターゼ阻害薬の日用量は5日用量から成る。
【0065】
本発明の特に好ましい形態では、上記の複数回日用量の代わりに、AIの単一用量が投与される。アロマターゼ阻害薬は、好ましくは、例えば約5mg〜60mgのレトロゾール又はアリミデックスから、約500〜2,000mgのエキセメスタンまでの範囲の量から選択される単一用量で投与される。投与されるAIの量は、子宮外妊娠萎縮及び破壊を誘導するのに有効であるべきである。
【0066】
本明細書中で用いる場合、「アロマターゼ阻害薬」という用語は、アンドロゲンをエストロゲンに添加するのに関与する酵素アロマターゼ(=エストロゲンシンセターゼ)を抑制する物質と理解されるべきである。
【0067】
アロマターゼ阻害薬は、非ステロイド系又はステロイド系化学構造を有し得る。本発明によれば、非ステロイド系アロマターゼ阻害薬及びステロイド系アロマターゼ阻害薬の両方が用いられ得る。
【0068】
「アロマターゼ阻害薬」とは、特に、アロマターゼ活性のin vitro抑制の決定において、10−5M又はそれ以下の、特に10−6M又はそれ以下の、好ましくは10−7M又はそれ以下の、最も特定的には10−8M又はそれ以下のIC50値を示す物質であると理解されるべきである。
【0069】
アロマターゼ活性のin vitro抑制は、例えばJ. Biol. Chem., Vol. 249, page 5364(1974)に、又はJ. Enzyme Inhib., Vol. 4, page 169 (1990)に記載された方法を用いることにより実証され得る。さらに、アロマターゼ抑制に関するIC50値は、例えばヒト胎盤ミクロソーム中での4−14C−アンドロステンジオンの4−14C−エストロンへの転化の抑制に関連した直接生成物単離方法により、in vitroで得られる。
【0070】
「アロマターゼ阻害薬」とは、最も特定的には、in vivoアロマターゼ抑制の場合の最小有効用量が10mg/kg又はそれ未満、特に1mg/kg又はそれ未満、好ましくは0.1mg/kg又はそれ未満、最も特定的には0.01mg/kg又はそれ未満である物質と理解されるべきである。
【0071】
in vivoアロマターゼ抑制は、例えばJ. Enzyme Inhib., Vol. 4, page 179 (1990)に記載されるような以下の方法により確定され得る:
【0072】
4日間の期間中、性的未成熟雌ラットに、アンドロステンジオン(30mg/kg、皮下的)を、単独で、又はアロマターゼ阻害薬(経口的又は皮下的)と一緒に投与する。4回投与後、ラットを屠殺し、子宮を単離して、計量する。アンドロステンジオン単独の投与により誘導される子宮の肥大がアロマターゼ阻害薬の同時投与により抑制又は低減される程度により、アロマターゼ抑制を確定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
以下の群の化合物を、アロマターゼ阻害薬の例として列挙する。各々の個々の群は、本発明に従って上首尾に用いられ得るアロマターゼ阻害薬の一群を形成する:
(a)欧州公開特許第165904号で定義されている式I及び式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0074】
【化1】

【0075】
(式中、Rは水素、低級アルキル;ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級アルカノイル、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ−低級アルキルアミノ、ハロゲン、スルホ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、又はシアノによって置換された低級アルキル;ニトロ、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、フェニルスルホニルオキシ、低級アルキルスルホニルオキシ、メルカプト、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、低級アルカノイルチオ、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ−低級アルキルアミノ、低級アルキレンアミノ、N−モルホリノ、−チノモルホリノ、非置換N−ピペラジノ又は4位で低級アルキル置換されたN−ピペラジノ、トリ低級アルキルアンモニオ、スルホ、低級アルコキシスルホニル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、ジ低級アルキルスルファモイル、ホルミル、非置換であるか又は窒素原子においてヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級アルキル、フェニル若しくはアミノにより置換されたイミノメチル;C〜Cのアルカノイル、ベンゾイル、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ジ低級アルキリカルバモイル、シアノ、5−テトラゾリル、非置換若しくは低級アルキル置換4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル又はヒドロキシカルバモイルであり、Rは水素、低級アルキル、フェニル低級アルキル、カルボキシ低級アルキル、低級アルコキシカルボニル低級アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、メルカプト、低級アルキルチオ、フェニル低級アルキルチオ、フェニルチオ、低級アルカノイルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル又は低級アルカノイル、その7,8ジヒドロ誘導体である)の化合物、及び式I
【0076】
【化2】

【0077】
(式中、nは、0、1、2、3、又は4であり、R及びRは式Iで上記のように定義されたものと同様であり、これは、フェニルスルホニルオキシ、フェニルイミノメチル、ベンゾイル、フェニル低級アルキル、フェニル低級アルキルチオ、及びフェニルチオのラジカル中のフェニル環を非置換又は低級アルキル、低級アルコキシ、若しくはハロゲンで置換することが可能であり、式Iの化合物で2つの置換基C−−R及びRが、飽和環の互いの飽和炭素原子、両者共に同じ炭素原子又は異なる炭素原子のどちらか一方、及びその薬学的に許容可能な塩と結合可能である)の化合物である。
【0078】
本明細書中で特に言及される個々の化合物は、
(1)5−(p−シアノフェニル)イミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(2)5−(p−エトキシカルボニルフェニル)イミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(3)5−(p−カルボキシフェニル)イミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(4)5−(p−tert−ブチルアミノカルボニルフェニル)イミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(5)5−(p−エトキシカルボニルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(6)5−(p−カルボキシルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(7)5−(p−カルバモイルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(8)5−(p−トリル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(9)5−(p−ヒドロキシメチルフェニル)イミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(10)5−(p−シアノフェニル)−7,8−ジヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(11)5−(p−ブロモフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(12)5−(p−ヒドロキシメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(13)5−(p−ホルミルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(14)5−(p−シアノフェニル)−5−メチルチオ−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(15)5−(p−シアノフェニル)−5−エトキシカルボニル−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(16)5−(p−アミノフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(17)5−(p−ホルミルフェニル)イミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(18)5−(p−カルバモイルフェニル)イミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(19)5H−5−(4−tert−ブチルアミノカルボニルフェニル)−6,7−ジヒドロピロロ[1,2−c]イミダゾール、
(20)5H−5−(4−シアノフェニル)−6,7−ジヒドロピロロ[1,2−c]イミダゾール、
(21)5H−5−(4−シアノフェニル)−6,7,8,9−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]アゼピン、
(22)5−(4−シアノフェニル)−6−エトキシカルボニルメチル−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(23)5−(4−シアノフェニル)−6−カルボキシメチル−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(24)5−ベンジル−5−(4−シアノフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(25)7−(p−シアノフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、
(26)7−(p−カルバモイルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、及び
(27)7−(p−シアノフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン(=ファドロゾール)である。
(b)欧州公開特許第236940号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0079】
【化3】

【0080】
(式中、R及びRは、互いに独立しており、それぞれ水素若しくは低級アルキルであり、又はベンゼン環で共に結合している隣接した炭素原子でのR及びRは、ナフタレン環若しくはテトラヒドロナフタレン環を形成する。Rは、水素、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル又は低級アルケニルであり、Rは、水素、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、(低級アルキル、アリール、又はアリール低級アルキル)−チオ若しくは低級アルケニル、又はR及びRは共に低級アルキリデン若しくはC〜Cのアルキレンを表す。Wは1−イミダゾリル、1−(1,2,4又は1,3,4)−トリアゾリル、3−ピリジル又は低級アルキルにより置換される上記の複素環ラジカルの1つである。上記定義の範囲内のアリールは、以下の意味を有している:非置換フェニル又は低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級アルカノイルオキシ、ニトロ、アミノ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、低級アルカノイル、ベンゾイル、低級アルキルスルホニル、スルファモイル、N−低級アルキルスルファモイル、及びN,N−ジ−低級アルキルスルファモイルの基、またチエニル、インドリル、ピリジル、又はフリル、又は低級アルキル、低級アルコキシ、シアノ、又はハロゲンによって一置換された最後に言及した4つの複素環ラジカルの1つからの1つ又は2つの置換基により置換されるフェニルであり、及びその薬学的に許容可能な塩である)の化合物である。
【0081】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)4−[α−(4−シアノフェニル)−1−イミダゾリルメチル]−ベンゾニトリル、
(2)4−[α−(3−ピリジル)−1−イミダゾリルメチル]−ベンゾニトリル、
(3)4−[α−(4−シアノベンジル)−1−イミダゾリルメチル]−ベンゾニトリル、
(4)1−(4−シアノフェニル)−1−(イミダゾリル)−エチレン、
(5)4−[α−(4−シアノフェニル)−1−(1,2,4−トリアゾリル)メチル]−ベンゾニトリル、及び
(6)4−[α−(4−シアノフェニル)−3−ピリジルメチル]−ベンゾニトリルである。
【0082】
(c)欧州公開特許第408509号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0083】
【化4】

【0084】
(式中、Tetrは非置換であるか低級アルキル、フェニル低級アルキル若しくは低級アルカノイルにより5位で置換された1−又は2−テトラゾリルであり、R及びRは互いに独立して、それぞれ水素、非置換であるかヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲン、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、(アミノ、低級アルキルアミノ又はジ低級アルキルアミノ)−カルボニル若しくはシアノにより置換された低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アリール低級アルキル、C〜Cのシクロアルキル、C〜Cのシクロアルキル低級アルキル、低級アルキルチオ、アリールチオ又はアリール低級アルキルチオを表し、或いはR及びRは、共に非置換であるか低級アルキルで置換されたC〜Cの直鎖アルキレン又は−−(CH−1,2−フェニレン−(CH基を表す。ここで、m及びnは、互い独立して、以下のアリールにおける定義でフェニルと同様に置換されないか又は置換される1又は2及び1,2−フェニレンを表し、また、非置換又はアリールにより一置換若しくは二置換された低級アルキリデンを表し、R及びRは、互いに独立して、それぞれ水素又は低級アルキルである。またはR及びRは、共にベンゼン環の隣接した炭素原子に位置し、以下のアリールにおける定義でフェニルと同様に置換されないか又は置換されるベンゾ基を表す。上記の定義におけるアリールとは、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級アルカノイルオキシ、ニトロ、アミノ、ハロゲン、トリフルオロメチル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、(アミノ、低級アルキルアミノ、又はジ低級アルキルアミノ)−カルボニル、シアノ、低級アルカノイル、ベンゾイル、低級アルキルスルホニル、及び(アミノ、低級アルキルアミノ、又はジ低級アルキルアミノ)−スルホニルから成る群からの1つ又は複数の置換基により置換されないか又は置換されるフェニルである。上記の定義におけるヘテロアリールとは、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、チエニル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル及び上記のアリールの定義におけるフェニルと同様に置換されないか又は置換されるイソキノリルから成る群からの芳香族複素環ラジカルであり、及びその薬学的に許容可能な塩である)の化合物である。
【0085】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)4−(2−テトラゾリル)メチル−ベンゾニトリル、
(2)4−[a−(4−シアノフェニル)−(2−トリアゾリル)メチル]−ベンゾニトリル、
(3)1−シアノ−4−(1−テトラゾリル)メチル]−ナフタレン、及び
(4)4−[a−(4−シアノフェニル)−(1−テトラゾリル)メチル]−ベンゾニトリルである。
【0086】
(d)欧州公開特許第91810110.6号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0087】
【化5】

【0088】
(式中、Xは、ハロゲン、シアノ、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N−シクロアルキル低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、N−アリールカルバモイル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリール低級アルコキシ又はアリールオキシを表し、アリールは、フェニル又はナフチルを表し、そのそれぞれは、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲン、及び/又はトリフルオロメチルにより置換されないか又は置換される。Yは、−CH−−A基を表し、ここで、Aは、1−イミダゾリル、1−(1,2,4−トリアゾリル)、1−(1,3,4−トリアゾリル)、1−(1,2,3−トリアゾリル)、1−(1,2,5−トリアゾリル)、1−テトラゾリル又は2−テトラゾリルを表す。又は、Yは、水素であり、R1及びRは、互いに独立しており、それぞれ水素、低級アルキル又はYで定義された−CH−−A基を表す。又は、R及びRは、共に−−(CHであり、ここで、nとは、3、4、又は5であるが、条件として、ラジカルY、R及びRの1つは、−CH−−A基であり、さらなる条件として、R又はRの意味するところは−CH−−A基である。ここで、Xが、臭素、シアノ、又はカルバモイルである場合、Aは、1−イミダゾリル以外を表し、条件として、Yの意味するところは、−CH−−A基である。Xが、ハロゲン又は低級アルコキシである場合、Aは、1−イミダゾリル以外を表す。Rは、水素であり、Rは、水素又は低級アルキル、及びその薬学的に許容可能な塩である)の化合物である。
【0089】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)7−シアノ−4−[1−(1,2,4−トリアゾリル)メチル]−2,3−ジメチルベンゾフラン、
(2)7−シアノ−4−(1−(イミダゾリルメチル)−2,3−ジメチルベンゾフラン、
(3)7−カルバモイル−4−(1−(イミダゾリルメチル)−2,3−ジメチルベンゾフラン、及び
(4)7−N−(シクロヘキシルメチル)カルバモイル−4−(1−イミダゾリルメチル)−2,3−ジメチルベンゾフランである。
【0090】
(e)スイス特許出願第1339/90−7号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0091】
【化6】

【0092】
(式中、破線は、追加結合又は非追加結合を表し、Azは、環窒素原子を介して結合したイミダゾリル、トリアゾリル又はテトラゾリルを表し、それらのラジカルのそれぞれは、低級アルキル若しくはアリール低級アルキルにより炭素原子で置換されないか又は置換される。Zは、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、N−アリールカルバモイル、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリール低級アルコキシ、アリールオキシ、低級アルキル、トリフルオロメチル又はアリール低級アルキルを表す。R及びRは、互いに独立しており、それぞれ水素、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、又はトリフルオロメチルを表す。ここで、アリールとは、それぞれが低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン及びトリフルオロメチルから成る群からの1つ又は2つの置換基により置換されないか又は置換されるフェニル又はナフチルであり、条件として、Z及びRはどちちらも8位のヒドロキシではない、及びその薬学的に許容可能な塩である)の化合物である。
【0093】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)6−シアノ−1−(1−イミダゾリル)−3,4−ジヒドロナフタレン、
(2)6−シアノ−1−[1−(1,2,4−トリアゾリル)]−3,4−ジヒドロナフタレン、
(3)6−クロロ−1−(1−イミダゾリル)−3,4−ジヒドロナフタレン、及び
(4)6−ブロモ−1−(1−イミダゾリル)−3,4−ジヒドロナフタレンである。
【0094】
(f)スイス特許出願第3014/90−0号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0095】
【化7】

【0096】
(式中、Zは、5−イソチアゾリル、5−チアゾリル、5−イソオキサゾリル、5−オキサゾリル、5−(1,2,3−チアジアゾリル)、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)、3−(1,2,5−チアジアゾリル)、3−(1,2,5−オキサジアゾリル)、4−イソチアゾリル、4−イソオキサゾリル、4−(1,2,3−チアジアゾリル)、4−(1,2,3−オキサジアゾリル)、2−(1,3,4−チアジアゾリル)、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)、5−(1,2,4−チアジアゾリル)、及び5−(1,2,4−オキサジアゾリル)基から選択される5員環窒素含有へテロ芳香環である。R及びRは、水素であるか、又はR及びRは、共に低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン若しくはトリフルオロメチルにより置換されないか又は置換されるベンゾ基を表す。Rは、水素、ヒドロキシ、塩素又はフッ素であり、Rは水素;Rは、水素、低級アルキル、又は低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル若しくはシアンにより置換されないか又は置換されるフェニルを表す。又は、R及びRは、共にメチリデンを表し;又はR及びRは、共に−−(CH−−基を表す。又は、R、R及びRは、共に=CH−−(CH−−基を表し、ここで、=CH−−(CH−の単結合は、ベンゼン環と結合する。Xは、シアノであり、R及びRが、共に−−(CH−−を表すか、又はR、R及びRが、共に=CH−−(CH−−基を表す場合、Xはまたハロゲンの可能性がある、及びその薬学的に許容可能な塩である)の化合物である。
【0097】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)4−[a−(4−シアノフェニル)−a−ヒドロキシ−5−イソチアゾリルメチル]−ベンゾニトリル、
(2)4−[a−(4−シアノフェニル)−5−イソチアゾリルメチル]−ベンゾニトリル、
(3)4−[a−(4−シアノフェニル)−5−チアゾリルメチル]−ベンゾニトリル、
(4)1−(4−シアノフェニル)−1−(5−チアゾリル)−エチレン、
(5)6−シアノ−1−(5−イソチアゾリル)−3,4−ジヒドロナフタレン、及び
(6)6−シアノ−1−(5−チアゾリル)−3,4−ジヒドロナフタレンである。
【0098】
(g)スイス特許出願第3014/90−0号で定義されている式VIの化合物。これらは、特に式VI:
【0099】
【化8】

【0100】
(式中、Zは、5−イソチアゾリル、5−チアゾリル、5−イソオキサゾリル、5−オキサゾリル、5−(1,2,3−チアジアゾリル)、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)、3−(1,2,5−チアジアゾリル)、3−(1,2,5−オキサジアゾリル)、4−イソチアゾリル、4−イソオキサゾリル、4−(1,2,3−チアジアゾリル)、4−(1,2,3−オキサジアゾリル)、2−(1,3,4−チアジアゾリル)、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)、5−(1,2,4−チアジアゾリル)、及び5−(1,2,4−オキサジアゾリル)基から選択される5員環窒素含有へテロ芳香環である。R及びRはそれぞれ、水素であるか;又はR及びRは、共に低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン若しくはトリフルオロメチルにより置換されないか又は置換されるベンゾ基を表す。Rは、水素、ヒドロキシ、塩素又はフッ素であり、Rは水素;Rは、水素、低級アルキル、又は低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、アリール低級アルコキシ、若しくはアリールオキシにより置換されないか又は置換されるフェニルを表す。又は、R及びRは、共にメチリデンを表し、Wは、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリール低級アルコキシ、又はアリールオキシを表す。それぞれの場合のアリールは、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン又はトリフルオロメチルにより置換されないか又は置換されるフェニルである、及びその薬学的に許容可能な塩である)の化合物である。
【0101】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)ビス(4,4’−ブロモフェニル)−(5−イソチアゾリル)メタノ−ル、
(2)ビス(4,4’−ブロモフェニル)−(5−イソチアゾリル)メタン、
(3)ビス(4,4’−ブロモフェニル)−(5−チアゾリル)メタノ−ル、及び
(4)ビス(4,4’−ブロモフェニル)−(5−チアゾリル)メタンである。
【0102】
(h)スイス特許出願第3923/90−4号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0103】
【化9】

【0104】
(式中、Zは、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、ピラゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キノリニル、又はイソキノリニルを表す。ここで、これらすべてのラジカルは、それらの複素環を介して結合し、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲン、若しくはトリフルオロメチルにより置換されないか、又は置換される。R及びRは、互いに独立しており、それぞれ水素又は低級アルキルである。又は、R及びRは、共にC〜Cのアルキレン又は以下に示すようにアリールに対して置換されないか又は置換されるベンゾ基を表す。ここで、Rは、水素、低級アルキル、アリール又はヘテロアリールであり、Xは、シアノ、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、N,N−低級アルキレンカルバモイル(ここで言う、N,N−低級アルキレンカルバモイルとは、−−O−−、−−S−−又は−−NR’’−−により遮られたものであり、R’’とは、水素、低級アルキル又は低級アルカノイルを表す。)、N−シクロアルキルカルバモイル、N−(低級アルキル−置換シクロアルキル)−カルバモイル、N−シクロアルキル−低級アルキルカルバモイル、N−(低級アルキル−置換シクロアルキル)−低級アルキルカルバモイル、N−アリール−低級アルキルカルバモイル、N−アリールカルバモイル、−ヒドロキシカルバモイル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリール低級アルコキシ又はアリールオキシを表す。ここで、Zが、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、ピラゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラゾリル又はベンゾトリアゾリルの場合、Xは、またハロゲンを表す。ここで、アリールは、フェニル又はナフチルであり、これらのラジカルは、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキレン(2つの隣接した炭素原子に結合される)、C〜Cのシクロアルキル、フェニル低級アルキル、フェニルから成る群からの1〜4の置換基により置換されないか又は置換されるものである。低級アルキルとは、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、ハロゲン、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ−低級アルキルアミノ、メルカプト、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル及び/又はシアノにより順々に置換されるものである。ヒドロキシとは、低級アルコキシ、ハロ−低級アルコキシ、フェニル低級アルコキシ、フェノキシ、低級アルケニルオキシ、ハロ低級アルケニルオキシ、低級アルキニルオキシ、低級アルキレンジオキシ(2つの隣接した炭素原子に結合される)、低級アルカノイルオキシ、フェニル−低級アルカノイルオキシ、フェニルカルボニルオキシ、メルカプト、低級アルキルチオ、フェニル低級アルキルチオ、フェニルチオ、低級アルキルスルフィニル、フェニル低級アルキルスルフィニル、フェニルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、フェニル低級アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、低級アルキルアミノ、C〜Cのシクロアルキルアミノ、フェニル低級アルキルアミノ、フェニルアミノ、ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルキル−N−フェニルアミノ、N−低級アルキル−N−フェニル−低級アルキルアミノである。低級アルキレンアミノ又は低級アルキレンアミノとは、−−O−−、−−S−−又は−−NR’’−−により遮られたものであり、R’’とは、水素、低級アルキル又は低級アルカノイルを表す。低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルカノイルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、低級アルカノイル、フェニル低級アルカノイル、フェニルカルボニル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、N,N−低級アルキレンカルバモイル、ここで言う、N,N−低級アルキレンカルバモイルとは、−−O−−、−−S−−又は−−NR’’−−により遮られたものであり、R’’とは、水素、低級アルキル又は低級アルカノイル、N−シクロアルキルカルバモイル、N−(低級アルキル−置換シクロアルキル)−カルバモイル、−シクロアルキル−低級アルキルカルバモイル、N−(低級アルキル−置換シクロアルキル)−低級アルキルカルバモイル、N−ヒドロキシカルバモイル、N−フェニル−低級アルキルカルバモイル、−フェニルカルバモイル、シアノ、スルホ、低級アルコキシスルホニル、スルファモイル、N−低級アルキルスルファモイル、N,N−ジ−低級アルキルスルファモイル及びN−フェニルスルファモイルを表す。フェニル基とは、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン及び/又はトリフルオロメチルにより順々に置換されないか又は置換されるフェニル及びナフチルの置換基により発生するものである。ここで、ヘテロアリールとは、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾキサゾリル又はベンゾチアゾリルであり、これらのラジカルは、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ及びトリフルオロメチルから選択される1〜3の同一若しくは異なる置換基により置換されないか又は置換されるものである、及びその薬学的に許容可能な塩である)の化合物である。
【0105】
これらの化合物は、特に式Iの化合物である。ここで、Zは、1−イミダゾリル、1−(1,2,4−トリアゾリル)、1−(1,3,4−トリアゾリル)、1−(1,2,3−トリアゾリル)、1−テトラゾリル、2−テトラゾリル、3−ピリジル、4−ピリジル、4−ピリミジル、5−ピリミジニル又は2−ピラジニルである。R及びRは、互いに独立しており、それぞれ水素又は低級アルキルである。又は、R及びRは、共に1,4−ブチレン又はベンゾ基を表す。ここで、Rは、低級アルキルであり、フェニルとは、シアノ、カルバモイル、ハロゲン、低級アルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、低級アルコキシ又はフェノキシにより置換されないか又は置換されるものである。又はベンゾトリアゾリル若しくはベンゾ[b]フラニルの2つのラジカルは、低級アルキル、ハロゲン及びシアノから選択される1〜3の同一若しくは異なる置換基により置換されないか又は置換されるものである。ここで、Xは、シアノ又はカルバモイルを表す。Zが、1−イミダゾリル、1−(1,2,4−トリアゾリル)、1−(1,3,4−トリアゾリル)、1−(1,2,3−トリアゾリル)、1−テトラゾリル、又は2−テトラゾリルである場合、Xは、またハロゲンを、及びその薬学的に許容可能な塩である。
【0106】
特に本明細書中で言及される基からの個々の化合物は、
(1)4−[a−(4−シアノフェニル)−a−フルオロ−(1,2,4−トリアゾリル)メチル]−ベンゾニトリル、
(2)4−[a−(4−シアノフェニル)−a−フルオロ−(2−テトラゾリル)メチル]−ベンゾニトリル、
(3)4−[a−(4−シアノフェニル)−a−フルオロ−(1−テトラゾリル)メチル]−ベンゾニトリル、
(4)4−[a−(4−シアノフェニル)−a−フルオロ−(1−イミダゾリル)メチル]−ベンゾニトリル、
(5)1−メチル−6−[a−(4−クロロフェニル)−a−フルオロ−1−(1,2,4−トリアゾリル)メチル]−ベンゾトリアゾール、
(6)4−[a−4−シアノフェニル)−a−フルオロ−1−(1,2,3−トリアゾリル)メチル]−ベンゾニトリル、
(7)7−シアノ−4−[a−(4−シアフェニル)−a−フルオロ−1−(1,2,4−トリアゾリル)メチル]−2,3−ジメチルベンゾ[b]フラン、
(8)4−[a−(4−ブロモフェニル)−a−フルオロ−1−(1,2,4−トリアゾリル)メチル]−ベンゾニトリル、
(9)4−[a−(4−シアノフェニル)−a−フルオロ−(5−ピリミジル)メチル]−ベンゾニトリル、
(10)4−[a−(4−ブロモフェニル)−a−フルオロ−(5−ピリミジル)メチル]−ベンゾニトリル、
(11)4−[a−(4−シアノフェニル)−a−フルオロ−(3−ピリジル)メチル]−ベンゾニトリル、
(12)7−ブロモ−4−[a−(4−シアノフェニル)−a−フルオロ−(1−イミダゾリル)メチル]−2,3−ジメチルベンゾ[b]フラン、
(13)7−ブロモ−4−[a−(4−シアノフェニル)−a−フルオロ−1−(1,2,4−トリアゾリル)メチル]−2,3−ジメチルベンゾ[b]フラン、
(14)4−[a−(4−シアノフェニル)−a−フルオロ−(5−ピリミジル)メチル]−ベンゾニトリル、
(15)4−[a−(4−ブロモフェニル)−a−フルオロ−(5−ピリミジル)メチル]−ベンゾニトリル、
(16)4−[a−(4−シアノフェニル)−1−(1,2,3−トリアゾリル)メチル]−ベンゾニトリル、
(17)2,3−ジメチル−4−[a−(4−シアノフェニル)−1−(1,2,4−トリアゾリル)メチル]−7−シアノ−ベンゾ[b]フラン、
(18)4−[a−(4−シアノフェニル)−(5−ピリミジル)メチル]−ベンゾニトリル、
(19)4−[a−(4−ブロモフェニル)−(5−ピリミジル)メチル]−ベンゾニトリル、
(20)2,3−ジメチル−4−[a−(4−シアノフェニル)−(1−イミダゾリル)メチル]−7−ブロモ−ベンゾ[b]フラン、及び
(21)2,3−ジメチル−4−[a−(4−シアノフェニル)−(1,2,4−トリアゾリル)メチル]−7−ブロモ−ベンゾ[b]フランである。
【0107】
(i)欧州公開特許第114033号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0108】
【化10】

【0109】
(式中、Rは、水素であり、Rは、水素、スルホ、C〜Cのアルカノイル又はC〜Cのアルカンスルホニルであり、Rは、水素である。又は、Rは、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルケニル、C〜Cのアルキニル、C〜C10のシクロアルキル、C〜C10のシクロアルケニル、C33〜Cのシクロアルキル−C〜Cのアルキル、C〜Cのシクロアルキル−C〜Cのアルケニル又はC〜Cのシクロアルキル−C〜Cのアルキルを表し、Rは、また、水素、C〜Cのアルキル、スルホ、C〜Cのアルカノイル又はC〜Cのアルカンスルホニル、及びRは、水素又はC〜Cのアルキル、及びそれら化合物の塩である)の化合物である。
【0110】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−3−アザビシクロ[3.1.0]へキサン−2,4−ジオン、
(2)1−(4−アミノフェニル)−3−n−プロピル−3−アザビシクロ[3.1.0]へキサン−2,4−ジオン、
(3)1−(4−アミノフェニル)−3−イソブチル−3−アザビシクロ[3.1.0]へキサン−2,4−ジオン、
(4)1−(4−アミノフェニル)−3−n−ヘプチル−3−アザビシクロ[3.1.0]へキサン−2,4−ジオン、及び
(5)1−(4−アミノフェニル)−3−シクロへキシルメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]へキサン−2,4−ジオンである。
【0111】
(j)欧州公開特許第166692号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0112】
【化11】

【0113】
(式中、Rは、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜10の低級アルキニル、シクロアルキル、若しくはシクロアルケニル、炭素数4〜10のシクロアルキル低級アルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル低級アルケニル、炭素数4〜10のシクロアルケニル低級アルキル又はそれぞれ低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ−低級アルキルアミノ、アシルアミノ若しくはハロゲンにより置換されない若しくは置換される炭素数6〜12のアリール若しくは炭素数7〜15のアリール低級アルキルを表す。Rは、水素、低級アルキル、スルホ、低級アルカノイル又は低級アルカンスルホニル、スルホニルを表し、Rは、水素又は低級アルキルを表し、Rは、水素、低級アルキル、フェニル又は−−N(R)(R)で置換されるフェニル及びそれらの塩、最大7つの炭素原子を含有する「低級」として記載されるラジカルを表す)の化合物である。
【0114】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)1−(4−アミノフェニル)−3−n−プロピル−3−アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2,4−ジオン、
(2)1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−3−アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2,4−ジオン、
(3)1−(4−アミノフェニル)−3−n−デシル−3−アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2,4−ジオン、
(4)1−(4−アミノフェニル)−3−シクロへキシル−3−アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2,4−ジオン、及び
(5)1−(4−アミノフェニル)−3−シクロへキシルメチル−3−アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2,4−ジオンである。
【0115】
(k)欧州公開特許第356673号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0116】
【化12】

【0117】
(式中、W(a)は、2−ナフチルラジカル又は1−アントリルラジカルである。ここで、それぞれのベンゼン環は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ及びニトロから選択される置換基により置換されないか又は置換されるものである。また、(.β.)は、4−ピリジル、2−ピリミジル又は2−ピラジニルあり、それぞれのラジカルはハロゲン、シアノ、ニトロ、C〜Cのアルコキシ及びC〜Cのアルコキシカルボニルから選択される置換基により置換されないか又は置換されるものであり、及びその薬学的に許容可能な塩である)の化合物である。
【0118】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)5−(2’−ナフチル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン、及び
(2)5−(4’−ピリジル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジンである。
【0119】
(l)欧州公開特許第337929号で定義されている式I又は式Iaの化合物。これらは、特に式I/Ia:
【0120】
【化13】

【0121】
(式中、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、プロペニル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル又はベンジルを表す。Rは、ベンジルオキシ、3−ブロモ−ベンジルオキシ、4−ブロモベンジルオキシ、4−クロロベンジルオキシ、2,3−ジクロロ−ベンジルオキシ、2,4−ジクロロ−ベンジルオキシ、4,5−ジクロロ−ベンジルオキシ、又は4,6−ジクロロ−ベンジルオキシを表し、Rは、シアノ、ハロゲン、メトキシ、アミノ、ヒドロキシ及び/又はシアノにより置換されないか又は一置換若しくは多置換されるC〜C10のアルカノイル、ハロゲン、C〜Cのアルキル、メトキシ、アミノ、ヒドロキシ及びシアノからの1つ又は複数の置換基により置換されないか又は置換されるベンゾイル、カルボキシ、(メトキシ、エトキシ又はブトキシ)−カルボニル、カルバモイル、N−イソプロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−ピロリジルカルバモイル、ニトロ又はアミノ、及びそれらの塩を表す)の化合物である。
【0122】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)−3−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−ベンゾニトリル、
(2)(4−(4−ブロモベンジルオキシ)−3−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−フェニルペンチルケトン、
(3)4−(4−ブロモベンジルオキシ)−3−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−ベンズアニリド、
(4)4−(4−ブロモベンジルオキシ)−3−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−安息香酸、
(5)3−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−ベンゾニトリル、
(6)3−(2,4−ジクロロブロモベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−安息香酸メチルエステル、
(7)3−(2,4−ジクロロブロモベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−安息香酸、
(8)3−(3−ブロモベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−ベンゾニトリル、
(9)4−(3−ブロモベンジルオキシ)−3−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−ベンゾニトリル、
(10)3−(4−ブロモベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−安息香酸、
(11)3−(4−ブロモベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−ベンズアニリド、
(12)3−(4−ブロモベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−フェニルペンチルケトン、
(13)4−(4−ブロモベンジルオキシ)−3−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−ベンゾニトリル、
(14)3−(4−ブロモベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−ベンゾニトリル、
(15)4−ニトロ−2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−フェニル−(2,4−ジクロロベンジル)エ−テル、
(16)4−アミノ−2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−フェニル−(2,4−ジクロロベンジル)エ−テル、及び
(17)(2,4−ジクロロベンジル)−[2−(1−イミダゾリル−メチル)−4−ニトロフェニル]エ−テルである。
【0123】
(m)欧州公開特許第337928号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0124】
【化14】

【0125】
(式中、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、プロペニル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル又はベンジルを表す。Rは、水素、ハロゲン、シアノ、メチル、ヒドロキシメチル、シアノメチル、メトキシメチル、ピロリジニルメチル、カルボキシ、(メトキシ、エトキシ又はブトキシ)−カルボニル、カルバモイル、−イソプロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−ピロリジニルカルボニル、ハロゲン、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシ及び/又はシアノにより置換されないか又は一置換若しくは多置換されるC〜C10のアルカノイル、ハロゲン、C〜Cのアルキル、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシ及びシアノからの1つ又は複数の置換基により置換されないか又は置換されるベンゾイルを表す。Rは、水素、ベンジルオキシ、3−ブロモ−ベンジルオキシ、4−ブロモベンジルオキシ、4−クロロベンジルオキシ、2,3−ジクロロベンジル、2,4−ジクロロベンジル、4,5−ジクロロベンジル、又は4,6−ジクロロベンジルを表し、Xは、−−CH=、−−CH=N(−−O)−−又は−−S−−であり、及びそれらの塩である)の化合物である。
【0126】
特に言及される基からの個々の化合物は、
(1)5−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−チオフェン−2−カルボニトリル、
(2)2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−チオフェン−4−カルボニトリル、
(3)2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−4−ブロモ−チオフェン、
(4)2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−5−ブロモ−チオフェン、
(5)5−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−2−チエニルペンチルケトン、
(6)5−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−2−チエニルエチルケトン、
(7)5−(4−クロロベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ペンチル]−ピリジン−2−カルボニトリル、
(8)3−(4−クロロベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ペンチル]−ピリジン−2−カルボニトリル、
(9)3−(4−クロロベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ペンチル]−ピリジン−N−オキシド、及び
(10)3−(4−クロロベンジルオキシ)−4−[1−(1−イミダゾリル)−ペンチル]−ピリジンである。
【0127】
(n)欧州公開特許第340153号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0128】
【化15】

【0129】
(式中、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、プロペニル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル又はベンジルを表す。Rは、ヒドロキシ、シアノ、メトキシ、ブトキシ、フェノキシ、アミノ、ピロリジニル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル又はカルバモイルにより置換されるメチル、エチル、プロピル、ベンジル、フェニル及びエテニルの基からのラジカルであるか、又は、Rは、ホルミル又はホルミル基とヒドロキシアミン、O−メチルヒドロキシルアミン、O−エチルヒドロキシルアミン、O−アリルヒドロキシルアミン、O−ベンジルヒドロキシルアミン、O−4−ニトロベンジルオキシヒドロキシルアミン、O−2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルオキシヒドロキシルアミン、セミカルバジド、チオセミカルバジド、エチルアミン及びアニリンの基からのアミン又はアミン誘導体との反応により得られる誘導体ホルミル;アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、カプロイル;ハロゲン、C〜Cのアルキル、メトキシ、アミノ、ヒドロキシ、及びシアノの基からの1つ又は複数の置換基により置換されないか又は置換されるベンゾイル;カルボキシ、(メトキシ、エトキシ又はブトキシ)カルボニル、カルバモイル、N−イソプロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、又はN−ピロリジルカルボニル、及びそれらの塩を表す)の化合物である。
【0130】
特に言及され得る基からの個々の化合物は、
(1)4−(1−(1−イミダゾリル)−ブチル)−安息香酸メチルエステル、
(2)4−(1−(1−イミダゾリル)−ブチル)−安息香酸ブチルエステル、
(3)4−(1−(1−イミダゾリル)−ブチル)−フェニル−アセトニトリル、
(4)4−(1−(1−イミダゾリル)−ブチル)−ベンズアルデヒド、
(5)4−(1−(1−イミダゾリル)−ブチル)−ベンジルアルコ−ル、
(6){4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−フェニル}−2−プロピルケトン、
(7)4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−フェニルプロピルケトン、
(8)4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−フェニルブチルケトン、
(9)4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−フェニルペンチルケトン、及び
(10)4−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−フェニルへキシルケトンである。
【0131】
(o)ドイツ公開特許第4014006号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0132】
【化16】

【0133】
(式中、Aは、N原子又はCHラジカルであり、Wは、下記式のラジカルである)
【0134】
【化17】

【0135】
(式中、Xは、酸素原子、硫黄原子又は−−CH=CH−−基であり、Yは、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子である。Zは、−−(CH基であり、ここで、nとは、1、2又は3である。a)W中のRは、水素原子であり、R及びRは、互いに独立しており、水素原子、C〜C10のアルキル基又はC〜Cのシクロアルキル基を表すか、又はb)Rは、a)で定義されたものであり、RはRと共に−−(CH基を形成し、ここで、mとは、2、3又は4である。及びその薬学的に許容可能な酸付加塩である)の化合物である。
【0136】
特に言及され得る基からの個々の化合物は、
(1)5−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−1−インダノン、
(2)7−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−1−インダノン、
(3)6−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−1−インダノン、
(4)6−(1−イミダゾリル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−1H−ベンズ[e]インデン−3(2H)−オン、
(5)2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−4,5−ジヒドロ−6−オキソ−シクロペンタ[b]−チオフェン、
(6)6−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン、
(7)2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]チオフェン−4−オン、
(8)6−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−2H−ベンゾ[b]フラン−3−オン、
(9)5−[シクロヘキシル−(1−イミダゾリル)−メチル]−1−インダノン、
(10)2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−4,5−ジヒドロ−6H−ベンゾ[b]−チオフェン−7−オン、
(11)5−[1−(1−イミダゾリル)−1−プロピル−ブチル]−1−インダノン、
(12)2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−4,5−ジヒドロ−6H−ベンゾ[b]チオフェン−7−オン、
(13)2−[1−(1−イミダゾリル)−ブチル]−4,5−ジヒドロ−6−オキソ−シクロペンタ[b]−チオフェン、
(14)5−(1−イミダゾリルメチル)−1−インダノン、及び
(15)5−[1−(1,2,4−トリアゾリル)−メチル]−1−インダノンである。
【0137】
(p)ドイツ特許出願第3926365号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0138】
【化18】

【0139】
(式中、W’は、シクロペンチリデンラジカル、シクロヘキシリデンラジカル、シクロへプチリデンラジカル又は2−アダマンチリデンラジカルであり、Xは、−−CH=CH−−基、酸素原子又は硫黄原子である。Y及びZは、互いに独立しており、それぞれメチン基(CH)又は窒素原子、及びその薬学的に許容可能な酸付加塩である)の化合物である。
【0140】
特に言及され得る基からの個々の化合物は、
(1)4−[1−シクロへキシリデン−1−(イミダゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、
(2)4−[1−シクロペンチリデン−1−(イミダゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、
(3)4−[1−シクロへプチリデン−1−(イミダゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、
(4)4−[2−アダマンチリデン−1−(イミダゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、
(5)4−[1−シクロヘキシリデン−1−(1,2,4−トリアゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、
(6)4−[1−シクロペンチリデン−1−(1,2,4−トリアゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、
(7)4−[1−シクロへプチリデン−1−(1,2,4−トリアゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、
(8)4−[2−アダマンチリデン−1−(1,2,4−トリアゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、
(9)4−[1−シクロヘキシリデン−1−(1,2,3−トリアゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、
(10)4−[1−シクロペンチリデン−1−(1,2,3−トリアゾリル)−メチル]−ベンゾニトリル、及び
(11)5−[シクロヘキシリデン−1−イミダゾリルメチル]−チオフェン−2−カルボニトリルである。
【0141】
(q)ドイツ公開特許第3740125号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0142】
【化19】

【0143】
(式中、Xは、CH又はNであり、R及びRは、同一又は異なっており、それぞれフェニル又はハロフェニルを表す。Rは、C〜Cのアルキル(ここで言う、1〜4の炭素原子を有するアルキルとは、CN、C〜Cのアルコキシ、ベンジルオキシ又はC〜Cのアルコキシ−(モノ−、ジ−又はトリ−)エチレンオキシにより置換されるものである)、C〜Cのアルコキシ、フェニル(ここで言う、フェニルは、ハロゲン又はシアノにより置換されるものである)、ベンゼンにより光学的に濃縮されるか、又は、チエニル、ピリジル、又は2−若しくは3−インドリルであるC〜Cのシクロアルキル基、及びそれらの酸付加塩である)の化合物である。
【0144】
特に言及され得る基からの個々の化合物は、
(1)2,2−ビス(4−クロロフェニル)−2−(1H−イミダゾール−1−イル)−1−(4−クロロベンゾリルアミノ)エタンである。
【0145】
(r)欧州公開特許第293978号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0146】
【化20】

【0147】
(式中、−−A=A−−A=A−−は、−−CH=N−CH=CH−−、−−CH=N−CH=N−−及び−−CH=N−N=CH−−から選択される二価のラジカルであり、Rは、水素又はC〜Cのアルキルであり、Rは、水素、C〜C10のアルキル、C〜Cのシクロアルキル、Ar、Ar、C〜Cのアルキル、C〜Cのアルケニル又はC〜Cのアルキニルであり、Rは、水素;Arにより置換されないか又は置換されるC〜C10のアルキル;C〜Cのシクロアルキル、ヒドロキシ、C〜Cのアルコキシ、Ar、C〜Cのアルケニル、C〜Cのアルキニル、C〜Cのシクロアルキル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル、2,3−ジヒドロ−1H−インデニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ヒドロキシ;Arにより置換されないか又は置換されるC〜Cのアルケニルオキシ;C〜Cのアルキニルオキシ;ピリミジルオキシ;ジ(Ar)メトキシ、(1−C−Cアルキル−4−ピペリジニル)オキシ、C〜C10のアルコキシ;又はハロゲン、ヒドロキシ、C〜Cのアルキルオキシ、アミノ、モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、C〜Cのアルコキシカルボニル、Ar、Ar−−O−−,Ar−−S−−、C〜Cのシクロアルキル、2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシニル、1H−ベンズイミダゾリル、C〜Cのアルキル置換1H−ベンズイミダゾリル、(1,1’−ビフェニル)−4−イル又は2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンズイミダゾリルにより置換されるC〜C10のアルコキシを表す。Rは、水素、ニトロ、アミノ、モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノ、ハロゲン、C〜Cのアルキル、ヒドロキシ又はC〜Cのアルコキシである。ここで、Arは、フェニル、置換フェニル、ナフチル、ピリジル、アミノピリジル、イミダゾリル、トリアゾリル、チエニル、ハロチエニル、フラニル、C〜Cのアルキルフラニル、ハロフラニル又はチアゾリルであり、Arは、フェニル、置換フェニル又はピリジルであり、ここで言う「置換フェニル」とは、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、トリフロオロメチル、C〜Cのアルキル、C〜Cのアルコキシ、C〜Cのアルコキシカルボニル、カルボキシ、ホルミル、ヒドロキシイミノメチル、シアノ、アミノ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ及びニトロである)の化合物であり、その薬学的に許容可能な塩及びその立体化学的異性体である。
【0148】
特に言及され得る基からの個々の化合物は、
(1)6−[(1H−イミダゾール−1−イル]−フェニルメチル]−1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、及び
(2)6−[(4−クロロフェニル)(1H−1,2,4−トリアゾール1−イル)メチル]−1−メチル−1H−ベンゾトリアゾールである。
【0149】
(s)欧州公開特許第250198号で定義されている式IIの化合物は、特に
(1)2−(4−クロロフェニル)−1,1−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)エタノ−ル、
(2)2−(4−フルオロフェニル)−1,1−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)エタノ−ル、
(3)2−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−1,1−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)エタノ−ル、
(4)2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)エタノ−ル、
(5)2−(4−クロロフェニル)−1,1−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−エタノ−ル、及び
(6)2−(4−フルオロフェニル)−1,1−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イル−メチル)エタノ−ルである。
【0150】
(t)欧州公開特許第281283号で定義されている式Iの化合物は、特に
(1)(1R,2R)−6−フルオロ−2−(4−フルオロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル−メチル)ナフタレン、
(2)(1R,2R)−6−フルオロ−2−(4−フルオロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−(1H−イミダゾリルメチル)−ナフタレン、
(3)(1R,2R)−及び(1R,2S)−2−(4−フルオロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ナフタレン−6−カルボニトリル、
(4)(1R,2R)−及び(1R,2S)−2−(4−フルオロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−(1H−イミダゾリルメチル)ナフタレン−6−カルボニトリル、
(5)(1R,2R)−及び(1R,2S)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−ナフタレン−2、6−ジカルボニトリル、
(6)(1R,2R)−及び(1R,2S)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−(1H−イミダゾール−1−イルメチル)ナフタレン−2,6−ジカルボニトリル、及び
(7)(1R,2S)−2−(4−フルオロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−(5−メチル−1H−イミダゾリルメチル)ナフタレン−6−カルボニトリルである。
【0151】
(u)欧州公開特許第296749号で定義されている式Iの化合物は、特に
(1)2,2’−[5−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−1,3−フェニレン]ジ(2−メチルプロピオノニトリル)、
(2)2,2’−[5−(イミダゾール−1−イルメチル)−1,3−フェニレン]ジ(2−メチルプロピオノニトリル)、
(3)2−[3−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−5−(5H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)フェニル]−2−メチルプロピオノニトリル)、
(4)2,2’−[5−ジジュウテリオ(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル−1,3−フェニレン]ジ(2−トリジュウテリオメチル−3,3,3−トリジュウテリオプロピオノニトリル)、及び
(5)2,2’−[5−ジジュウテリオ(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル−3−フェニレン]ジ(2−メチルプロピオノニトリル)である。
【0152】
(v)欧州公開特許第299683号で定義されている式Iの化合物は、特に
(1)(Z)−a−(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)スチルベン−4,4’−ジカルボニトリル、
(2)(Z)−4’−クロロ−a−(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)スチルベン−4−ジカルボニトリル、
(3)(Z)−a−(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−4’−(トリフルオロメチル)スチルベン−4−カルボニトリル、
(4)(E)−β−フルオロ−a−(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)スチルベン−4,4’−ジカルボニトリル、
(5)(Z)−4’−フルオロ−a−(イミダゾール−1−イルメチル)スチルベン−4−カルボニトリル、
(6)(Z)−2’,4’−ジクロロ−a−(イミダゾール−1−イルメチル)スチルベン−4−カルボニトリル、
(7)(Z)−4’−クロロ−a−(イミダゾール−1−イルメチル)スチルベン−4−カルボニトリル、
(8)(Z)−a−(イミダゾール−1−イルメチル)スチルベン−4,4’−ジカルボニトリル、
(9)(Z)−a−(5−メチルイミダゾール−1−イルメチル)スチルベン−4,4’−ジカルボニトリル、及び
(10)(Z)−2−[2−(4−シアノフェニル)−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロペニル]ピリジン−5−カルボニトリルである。
【0153】
(w)欧州公開特許第299684号で定義されている式Iの化合物は、特に
(1)2−(4−クロロベンジル)−2−フルオロ−1,3−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロパン、
(2)2−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−クロロベンジル)−1,3−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロパン、
(3)2−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチルベンジル)−1,3−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロパン、
(4)3−(4−クロロフェニル)−1−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ブタン−2−オール、
(5)2−(4−クロロ−a−フルオロベンジル)−1,3−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロパン−2−オール、
(6)2−(4−クロロベンジル)−1,3−ビス(1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロパン、
(7)4−[2−(4−クロロフェニル)−1,3−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)エトキシメチル]−ベンゾニトリル、
(8)1−(4−フルオロベンジル)−2−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−1,3−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロパン−2−オール、
(9)2−(4−クロロフェニル)−1−(4−フルオロフェノキシ)−1,3−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロパン−2−オール、
(10)1−(4−シアノベンジル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1,3−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロパン−2−オール、及び
(11)2−(4−クロロフェニル)−1−フェニル−1,3−ジ(1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロパン−2−オールである。
【0154】
(x)欧州公開特許第316097号の請求項1で定義されている化合物は、特に
(1)1,1−ジメチル−8−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−2(1H)−ナフト[2,1−b]フラノン、
(2)1,2−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2−オキソ−8−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ナフト[2,1−b]−フラン−7−カルボニトリル、
(3)1,2−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2−オキソ−8−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ナフト[2,1−b]−フラン−7−カルボサミド、及び
(4)1,2−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2−オキソ−8−[ジ(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]ナフト[2,1−b]−フラン−7−カルボニトリルである。
【0155】
(y)欧州公開特許第354689号で定義されている式Iの化合物は、特に
(1)4−[2−(4−シアノフェニル)−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロピル]ベンゾニトリル、
(2)4−[1−(4−クロロベンジル)−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)エチル]ベンゾニトリル、
(3)4−[2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−(4−トリフルオロメチル]ベンジル)エチル]ベンゾニトリル、及び
(4)4−[2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−(4−トリフルオロメトキシ]ベンジル)エチル]ベンゾニトリルである。
【0156】
(z)欧州公開特許第354683号で定義されている式Iの化合物は、特に
(1)6−[2−(4−シアノフェニル)−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロピル]ニコチノニトリル、及び
(2)4−[1−(1,2,4−トリアゾール−イル−メチル)−2−(5−[トリフルオロメチル]ピリド−2−イル)エチル]ベンゾニトリルである。
【0157】
言及され得るステロイドアロマタ−ゼ阻害剤の例は、
(aa)欧州公開特許第181287号で定義されている式Iの化合物。これらは、特に式I:
【0158】
【化21】

【0159】
(式中、Rは、水素、アセチル、ヘプタノイル又はベンゾイルである)の化合物である。
【0160】
特に言及され得るその基からの個々の化合物は、
(1)4−ヒドロキシ−4−アンドロステン−3,17−ジオンである。
【0161】
(ab)米国特許第4,322,416号の請求項で定義されている化合物、特に、10−(2−プロピニル)−エストル−4−エン−3,17−ジオンである。
【0162】
(ac)ドイツ特許出願第3622841号の請求項で定義されている化合物、特に、6−メチレンアンドロスタ−1,4−ジエン−3,17−ジオンである。
【0163】
(ad)英国特許出願第2171100号の請求項で定義されている化合物、特に、4−アミノ−アンドロスタ−1,4,6−トリエン−3,17−ジオンである。
【0164】
(ae)化合物、アンドロスタ−1,4,6−トリエン−3,17−ジオンである。
【0165】
(a)〜(z)及び(aa)〜(ad)に記載された特許出願の内容、特にそこに開示された化合物の亜群、並びに例としてそこに開示された個々の化合物は、参照により本願の開示に援用される。
【0166】
化合物を定義するために本明細書中で上記及び以下に用いられる一般用語は、以下の意味を有する:
【0167】
「低級」という用語により示される有機ラジカルは、7個以下の、好ましくは4個以下の炭素原子を含有する。
【0168】
アシルは、特に低級アルカノイルである。
【0169】
アリールは、例えばフェニル、或いは1−又は2−ナフチルであり、その各々は非置換であるか、或いは低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ−低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノにより、又はハロゲンにより置換される。
【0170】
上記の化合物の薬学的に許容可能な塩は、例えば薬学的に許容可能な酸付加塩、又は薬学的に許容可能な金属又はアンモニウム塩である。
【0171】
薬学的に許容可能な酸付加塩は、特に、適切な無機又は有機酸、例えば強無機酸、例えば塩酸、硫酸又はリン酸、或いは有機酸、特に脂肪族又は芳香族カルボン酸又はスルホン酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシコハク酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、4−アミノ安息香酸、アントラニル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、パモ酸、グルコン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ハロベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸又はシクロヘキシルスルファミン酸を有するもの;或いはその他の酸性有機物質、例えばアスコルビン酸を有するものである。
【0172】
薬学的に許容可能な塩は、例えばアミノ酸、例えばアルギニン又はリシンを用いても形成され得る。酸性基、例えば遊離カルボキシ又はスルホ基を含有する化合物も、薬学的に許容可能な金属又はアンモニウム塩、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウム塩、或いはアンモニア又は適切な有機アミン由来のアンモニウム塩を形成し得る。特に脂肪族、脂環式、脂環式−脂肪族又はアル脂肪族の第一級、第二級又は第三級モノ−、ジ−、又はポリ−アミン、例えば低級アルキルアミン、例えばジ−又はトリ−エチルアミン、ヒドロキシ低級アルキルアミン、例えば2−ヒドロキシエチルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン又はトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン、塩基性脂肪族エステル又はカルボン酸、例えば4−アミノ安息香酸2−ジエチルアミノエチルエステル、低級アルキレンアミン、例えば1−エチルピペリジン、シクロアルキルアミン、例えばジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、例えばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン;さらにまた複素環式塩基、例えばピリジン型複素環式塩基、例えばピリジン、コリジン又はキノリンも考慮される。いくつかの酸性又は塩基性基が存在する場合、モノ−又はポリ−塩が形成され得る。酸性及び塩基性基を有する本発明の化合物は、内部塩の形態、即ち両イオンの形態、及び正規塩の形態の分子の別の部分でもあり得る。
【0173】
上記の個々の化合物の場合、薬学的に許容可能な塩は、個々の化合物が塩形成をし得る限り、各場合に含まれる。
【0174】
列挙された化合物は、遊離形態及び塩形態の両方で記述された個々の化合物を含め、水和物の形態でもあり得るし、又はそれらの結晶は、例えば結晶化のために用いられる溶媒を含み得る。本発明は、それらの全形態にも関する。
【0175】
上記の化合物の多くは、上記の個々の化合物を含め、少なくとも1つの不斉炭素原子を含有する。したがってそれらは、R−又はS−エナンチオマーの形態で、そしてそのエナンチオマー混合物として、例えばラセミ化合物の形態で生じ得る。本発明は、それらすべての形態の使用に関し、また、さらなる異性体のすべての、そして少なくとも2つの異性体の混合物の、例えば分子中に1つ又は複数のさらなる不斉中心が存在する場合に生じ得るジアステレオマー又はエナンチオマーの混合物の使用に関する。例えば化合物が1つ又は複数の二重結合を含有する場合に生じ得るすべての幾何異性体、例えばシス−及びトランス−異性体も包含される。
【0176】
本発明の別の実施形態では、薬学的組成物は、適切な担体、充填剤及び/又は賦形剤とともに剤形のAI化合物を提供する。本発明に従って調製され得る薬学的組成物は、経腸的、例えば経口的又は直腸的投与のための、さらにまた経皮又は舌下投与のための、そして非経口的、例えば静脈内、皮下及び筋肉内投与のための組成物である。特に経口及び/又は舌下投与のための適切な単位用量形態、例えば糖衣丸、錠剤又はカプセルは、好ましくは約0.01mg〜約20mg、特に約0.1mg〜約10mgの1つ又は複数の上記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を、薬学的に許容可能な担体と共に含む。特に好ましい投与形態は、経口投与である。
【0177】
このような薬学的組成物中の活性成分の割合は、一般的には約0.001%〜約60%、好ましくは約0.1%〜約20%である。
【0178】
経口投与のための薬学的組成物に適切な賦形剤は、特に充填剤、例えば糖、例えばラクトース、サッカロース、マンニトール又はソルビトール、セルロース調製物及び/又はリン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウム又はリン酸水素カルシウム、並びに結合剤、例えばデンプン、例えばトウモロコシ、コムギ、コメ又はジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロース、崩壊剤、例えば上記のデンプン、さらにまたカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウム及び/又はセルロース(例えば結晶形態の、特に微晶質形態の)、及び/又は流動調節剤及び滑剤、例えばケイ酸、タルク、ステアリン酸又はその塩、例えばステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、セルロース及び/又はポリエチレングリコールである。
【0179】
糖衣丸コアは、適切な任意に腸溶性のコーティングを提供され、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及び/又はに酸化チタンを含み得る濃縮糖溶液、或いは、適切な溶媒若しくは溶媒混合物中の、又は腸溶性コーティングの調製のためのコーティング溶液、適切なセルロース調製物、例えばフタル酸アセチルセルロース又はフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースの溶液が特に用いられる。
【0180】
その他の経口投与可能な薬学的組成物は、ゼラチンから成る乾燥充填カプセル、さらにまたゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールから成る軟質密封カプセルである。乾燥充填カプセルは、顆粒形態の活性成分を、例えば充填剤、例えばラクトース、結合剤、例えばデンプン、及び/又は流動促進剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム、並びに所望により、安定剤との混合物中に含有し得る。軟質カプセルでは、活性成分は好ましくは、適切な油性賦形剤、例えば脂肪油、パラフィン油又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁され、それに安定剤及び/又は抗細菌剤も付加され得る。できるだけ迅速な作用を起こす活性成分の舌下摂取により達成されるために、容易に噛み砕かれるカプセルも用いられ得る。
【0181】
適切な直腸的又は経膣的投与可能な薬学的組成物は、例えば活性成分と座薬基剤との組合せから成る座薬である。適切な座薬基剤は、例えば天然又は合成トリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコール又は高級アルカノールである。活性成分と基剤物質の組合せを含有するゼラチン直腸投与カプセルも用いられ得る。適切な基剤物質は、例えば液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール又はパラフィン炭化水素である。
【0182】
経皮投与のための適切な処方物は、活性成分を担体と一緒に含む。有益な担体としては、宿主の皮膚通過を促すのに役立つ吸収性の薬理学的に許容可能な溶媒が挙げられる。経皮系は、通常は、支持体、活性成分を、必要な場合には担体と一緒に含有する供給容器、任意に相対的に長時間にわたって制御及び確定速度で宿主の皮膚上に活性成分を放出する分離装置、並びに皮膚に対して系を固定するための手段を含む包帯の形態である。
【0183】
非経口投与に適しているのは、特に水溶性形態の、例えば水溶性塩の形態の活性成分の水溶液、さらにまた活性成分の懸濁液、例えば対応する油状注射用懸濁液であり、適切な脂溶性溶媒又はビヒクル、例えば脂肪油、例えばゴマ油、又は合成脂肪油エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド、或いは、粘度増大物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストラン、並びに任意に安定剤を含む注射用水性懸濁液でもある。
【0184】
染料又は顔料は、例えば活性成分の同定目的のために、或いは異なる用量の活性成分を示すために、薬学的組成物に、特に錠剤又は糖衣丸コーティングに付加され得る。
【0185】
本発明の薬学的組成物は、それ自体既知の方法で、例えば慣用的混合、造粒、調合、溶解又は凍結乾燥プロセスにより、調製され得る。例えば経口投与のための薬学的組成物は、活性成分を固体担体と併合し、任意に、その結果生じた混合物を造粒し、そして混合物又は顆粒を加工処理して、所望により又は必要な場合、適切な賦形剤の付加後に、錠剤又は糖衣丸を形成することにより、生成され得る。
【0186】
子宮外妊娠における早期妊娠の確立及び維持の防止がアロマターゼ阻害薬により首尾よくなされれば、このクラスの薬剤及びアロマターゼ抑制の使用は妊娠の内科的終結(medical termination)のための妥当な新規のアプローチになる。これは、妊娠の外科的終結を禁忌とする、又は妊娠の内科的終結の一般に利用可能な方法の使用を禁忌とする際立った医学的問題を有する女性にとって特に、多大な利益となる。それらの女性は、このようなクラスの薬剤の幅広い安全性プロフィールから利益を得る。
【0187】
アロマターゼ阻害薬は、近年まで、子を産める年齢群の女性に用いられていなかった。アロマターゼ阻害薬による排卵の誘発又は増強後のエストロゲンレベルが、慣用的刺激プロトコールと比較して、有意に低い(特に血清E2濃度/成熟濾胞)、ということを本発明者らは見出した。
【0188】
典型的には、妊娠をもたらし得る非防護的性的遭遇に曝された女性における妊娠の達成及び/又は確立及び/又は維持を防止するためのアロマターゼ阻害薬の量は、エストロゲンレベルを下げて、子宮内膜の脱落及び月経誘発をもたらす子宮内膜の完全性(endometrial integrity)の崩壊を生じるか、或いは子宮内膜構造の完全性を少なくとも破壊する(受精卵の着床又は早期妊娠の維持のためには望ましくない)量から選択され得る。妊娠の内科的終結は、好ましくは、1〜10日間非防護的性交に曝した後1〜10日目のいずれかで開始する投与による1〜10日用量のアロマターゼ阻害薬から結果として生じ得る。最も好ましくは、アロマターゼ阻害薬の日用量は5日用量から成る。
【0189】
特定の実施形態及び用途に関して本発明を説明してきたが、この教示にかんがみて、特許請求された本発明の範囲を超えることなく又はその精神を逸脱することなく、付加的実施形態を当業者は生み出し得る。したがって、この開示中の図面及び説明は本発明の理解を促すために提供されるものであって、本発明の範囲を限定するものではない、と理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における妊娠の確立及び/又は子宮外妊娠の継続の防止方法であって、単数又は複数の用量の少なくとも1つのアロマターゼ阻害薬を単独で又は他の治療薬と組合せて該患者に投与するステップを包含する、防止方法。
【請求項2】
前記投与するステップの前に子宮外妊娠を診断するステップをさらに包含する請求項1記載の防止方法。
【請求項3】
外科的処置の前に、外科的処置と一緒に、外科的処置の後に、アジュバントとしてアロマターゼ阻害薬を投与するステップをさらに包含する請求項2記載の防止方法。
【請求項4】
外科的処置が腹腔鏡検査である請求項3記載の防止方法。
【請求項5】
別の治療薬がメトトレキセート、プロスタグランジン、ダクチノマイシン、エトポシド、高浸透圧グルコース、抗hCG抗体、塩化カリウム及びミフェプリストン(RU486)から成る群から選択される請求項1〜4記載の防止方法。
【請求項6】
該治療薬がメトトレキセートである請求項5記載の防止方法。
【請求項7】
1〜10日用量のアロマターゼ阻害薬が投与される請求項1記載の防止方法。
【請求項8】
約5日用量が投与される請求項7記載の防止方法。
【請求項9】
前記アロマターゼ阻害薬がステロイド又は非ステロイド化学構造を有する請求項1記載の防止方法。
【請求項10】
前記アロマターゼ阻害薬が非ステロイド性及び可逆的アロマターゼ阻害薬から選択される請求項9記載の防止方法。
【請求項11】
前記アロマターゼ阻害薬がアナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール及びエキセメスタンから成る群から選択される第三世代阻害薬である請求項1記載の防止方法。
【請求項12】
前記アロマターゼ阻害薬がレトロゾールであり、そして約2.5mg〜約30mgの日用量で投与される請求項11記載の防止方法。
【請求項13】
前記アロマターゼ阻害薬がアナストロゾールであり、そして約1mg〜約30mgの日用量で投与される請求項11記載の防止方法。
【請求項14】
前記アロマターゼ阻害薬がボロゾールであり、そして約4mg〜約30mgの日用量で投与される請求項11記載の防止方法。
【請求項15】
前記アロマターゼ阻害薬がエキセメスタンであり、そして約25mg〜約2,000mgの日用量で投与される請求項11記載の防止方法。
【請求項16】
前記アロマターゼ阻害薬が約8時間〜約4日の半減期を有するアロマターゼ阻害薬から選択される請求項1記載の防止方法。
【請求項17】
前記アロマターゼ阻害薬が約2日の半減期を有するアロマターゼ阻害薬から選択される請求項16記載の防止方法。
【請求項18】
前記アロマターゼ阻害薬が経口的に投与される請求項1記載の防止方法。
【請求項19】
前記アロマターゼ阻害薬の量が子宮外妊娠の萎縮及び破壊を誘導するのに有効な量から選択される請求項1記載の防止方法。
【請求項20】
前記アロマターゼ阻害薬の量が子宮内膜の完全性の破壊を生じて、子宮内膜の分断及び月経誘導をもたらすエストロゲンレベルを下げる量、或いは子宮内膜構造の完全性を破壊する量から選択される請求項1記載の防止方法。

【公表番号】特表2008−515811(P2008−515811A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534912(P2007−534912)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/035864
【国際公開番号】WO2006/041941
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(501030142)ウェイン ステイト ユニヴァーシティ (7)
【出願人】(307035125)マウント シナイ ホスピタル コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】