説明

孔版印刷用紫外線硬化型インク、及びそれを用いた孔版印刷方法

【課題】輪転式の孔版印刷に適するとともに、印刷部分の光沢を高めることのできる孔版印刷用紫外線硬化型インク、及びそれを用いた孔版印刷方法を提供する。
【解決手段】孔版印刷用紫外線硬化型インクは、非水系として構成されている。このインクの20℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で1.5〜20000の範囲であるとともに、せん断速度γ(1/s)=100の条件で0.5〜20の範囲である。また、このインクの55℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で0.5〜1500の範囲であるとともに、せん断速度γ(1/s)=100の条件で0.2〜8の範囲である。孔版印刷方法は、被印刷物における孔版印刷用紫外線硬化型インクの転写された面を50℃〜75℃の範囲に加熱した後に、その転写された面に紫外線を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪転式の孔版印刷に用いられる孔版印刷用紫外線硬化型インク、及びそれを用いた孔版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、孔版原紙を装着したドラム内から孔版原紙を通過させて被印刷物にインクを転写する輪転式の孔版印刷が知られている。輪転式の孔版印刷に用いられるインクとしては、エマルジョンインク、溶剤型インク、及び紫外線硬化型インクが知られている。例えば、特許文献1は、輪転式の孔版印刷に用いられるエマルジョンインクとして所定のレオロジー特性を有するものを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−244597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輪転式の孔版印刷に用いられるエマルジョンインクは、被印刷物への浸透により乾燥されるため、エマルジョンインクの印刷適性は、被印刷物におけるインクの浸透性に依存することになる。この点、非水系の紫外線硬化型インクの印刷適性では、被印刷物におけるインクの浸透性に依存され難いという利点がある。また、輪転式の孔版印刷において、溶剤型インクを用いた場合、孔版印刷装置を停止すると、溶剤の揮発により印刷用ドラムの外面や内部でインクが硬化してしまう。このため、印刷の終了後には印刷用ドラムの清掃が必要になる。この点、非水系の紫外線硬化型インクでは、孔版印刷装置の停止中に硬化し難いことから、印刷用ドラムを清掃する頻度を低めることができるようになる。また、非水系の紫外線硬化型インクの紫外線による硬化は、例えばエマルジョンインクの乾燥を通じた硬化よりも、硬化時間が短い。従って、非水系の紫外線硬化型インクを用いた印刷では、その効率を高めることができるという利点がある。
【0005】
このように非水系の紫外線硬化型インクは、エマルジョンインク及び溶剤型インクに対して利点を有するものの、次のような課題が生じている。すなわち、非水系の紫外線硬化型インクは、上述したように硬化時間が短いため、孔版原紙の凹凸やドラムの外周面のパターンが転写された状態で硬化され易くなる。その結果、印刷物では、表面の平滑性が低下することで印刷部分の表面の光沢が得られ難くなる。もっとも、非水系の紫外線硬化型インクを低粘度化することで、表面の平滑性は改善される傾向となるものの、印刷を停止させた場合に孔版原紙を通じてインクが漏れ出し易くなるなど、輪転式の孔版印刷に対する適性が得られないおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、輪転式の孔版印刷に適するとともに、印刷部分の光沢を高めることのできる孔版印刷用紫外線硬化型インク、及びそれを用いた孔版印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の孔版印刷用紫外線硬化型インクは、孔版原紙を装着したドラム内から前記孔版原紙を通じて被印刷物にインクを転写する輪転式の孔版印刷に用いられる孔版印刷用紫外線硬化型インクであって、非水系として構成され、20℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で1.5〜20000の範囲であるとともに、せん断速度γ(1/s)=100の条件で0.5〜20の範囲であり、55℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で0.5〜1500の範囲であるとともに、せん断速度γ(1/s)=100の条件で0.2〜8の範囲であることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の孔版印刷用紫外線硬化型インクにおいて、前記20℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で4〜12000の範囲であるとともにせん断速度γ(1/s)=100の条件で0.5〜18の範囲であり、55℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で0.8〜500の範囲であるとともにせん断速度γ(1/s)=100の条件で0.2〜5の範囲であることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の孔版印刷用紫外線硬化型インクを用いて前記孔版印刷を行う孔版印刷方法であって、前記被印刷物における前記孔版印刷用紫外線硬化型インクの転写された面を50℃〜75℃の範囲に加熱した後に、前記転写された面に紫外線を照射することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、輪転式の孔版印刷に適するとともに、印刷部分の光沢を高めることのできる孔版印刷用紫外線硬化型インク及び孔版印刷方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態における孔版印刷方法を示すフロー図。
【図2】孔版印刷装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
孔版印刷用紫外線硬化型インクは、孔版原紙を装着したドラム内から孔版原紙を通じて被印刷物にインクを転写する輪転式の孔版印刷に用いられる。
【0013】
孔版印刷用紫外線硬化型インクは、非水系として構成されている。孔版印刷用紫外線硬化型インクの20℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件(以下、「条件A」という。)で1.5〜20000の範囲であるとともに、せん断速度γ(1/s)=100の条件(以下、「条件B」という。)で0.5〜20の範囲である。孔版印刷用紫外線硬化型インクの55℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件(以下、「条件C」という。)で0.5〜1500の範囲であるとともに、せん断速度γ(1/s)=100の条件(以下、「条件D」という。)で0.2〜8の範囲である。
【0014】
条件Aの粘度η(Pa・s)が1.5以上であることにより、印刷停止時にドラムからのインクの漏れを抑制することができる。一方、条件Aの粘度η(Pa・s)が、20000を超える場合、インクがドラムの内部から孔版原紙を通じる際の抵抗が大きくなることで、印刷ムラが発生し易くなる。
【0015】
条件Bの粘度η(Pa・s)が、0.5〜20の範囲であることにより、輪転式の孔版印刷に対する適性が得られ易くなる。
条件Cの粘度η(Pa・s)が、0.5以上であり、かつ、条件Dの粘度η(Pa・s)が、0.2以上であることにより、印刷部分の輪郭が不鮮明となることを抑制することができる。一方、条件Cの粘度η(Pa・s)が、1500以下であり、かつ、条件Dの粘度η(Pa・s)が、8以下であることにより、印刷面の光沢を高めることができる。
【0016】
孔版印刷用紫外線硬化型インクでは、条件Aの粘度η(Pa・s)は、4〜12000の範囲であるとともに条件Bの粘度η(Pa・s)は、0.5〜18の範囲であり、条件Cの粘度η(Pa・s)は、0.8〜500の範囲であるとともに条件Dの粘度η(Pa・s)は、0.2〜5の範囲であることが好ましい。この場合、印刷部分の光沢を高めるととともに、輪転式の孔版印刷に対する適性がさらに得られ易くなる。
【0017】
孔版印刷用紫外線硬化型インクのせん断速度に対する粘度は、ストレス制御式レオメータにより測定することができる。上記の特定のせん断速度に対する粘度は、せん断速度γ(1/s)が0.01〜100の範囲における粘度η(Pa・s)の測定値から下記近似式を求めた後、その近似式から算出される値である。
【0018】
近似式:η=A×γ
(但し、Aは、正の定数であり、nは、負の定数である)
上述した孔版印刷用紫外線硬化型インクは、紫外線硬化樹脂、紫外線重合開始剤、及びゲル化剤を含んで構成される。
【0019】
紫外線硬化樹脂としては、(メタ)アクリル酸のモノマー又はオリゴマーが好適に用いられる。紫外線硬化樹脂の具体例としては、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド(PO)変性アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性トリメチロールプロパントリアクリレート、アミン変性ポリエーテルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびウレタンアクリレート系オリゴマー、ビニルエステル系オリゴマー、及びポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0020】
使用される紫外線硬化樹脂は一種類のみであってもよいし、二種類以上の紫外線硬化樹脂を組み合わせて使用してもよい。なお、紫外線硬化型樹脂は、具体例として例示したものに限定されず、粘度特性、ゲル化剤との相溶性等を考慮して適宜選択することができる。
【0021】
孔版印刷用紫外線硬化型インク中における紫外線硬化樹脂の含有量は、好ましくは60〜95質量%、より好ましくは70〜95質量%、さらに好ましくは80〜95質量%である。
【0022】
紫外線重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパンー1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンー1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチループロパン−1−オン等が挙げられる。
【0023】
使用される紫外線重合開始剤は一種類のみであってもよいし、二種類以上の紫外線重合開始剤を組み合わせて使用してもよい。
孔版印刷用紫外線硬化型インク中における紫外線重合開始剤の含有量は、好ましくは1〜20質量%である。
【0024】
ゲル化剤は、孔版印刷用紫外線硬化型インクのレオロジー特性を調整する働きを有する。ゲル化剤としては、例えば、ひまし硬化油、12−ヒドロキシステアリン酸、セバシン酸、ジベンジリデン−D−ソルビトール、ヒドロキシステアリン酸系エステルワックス、及びヒドロキシ脂肪酸アミドが挙げられる。ヒドロキシステアリン酸系エステルワックスとしては、例えば、ステアリル−12−ヒドロキシステアレート、及びメチル−12−ヒドロキシステアレートが挙げられる。ヒドロキシ脂肪酸アミドとしては、例えば、N−ヒドロキシエチル−12−ヒドロキシステアリルアミドが挙げられる。
【0025】
使用されるゲル化剤は一種類のみであってもよいし、二種類以上のゲル化剤を組み合わせて使用してもよい。
孔版印刷用紫外線硬化型インク中におけるゲル化剤の含有量は、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0026】
孔版印刷用紫外線硬化型インクには、必要に応じて着色剤を含有させることができる。なお、着色剤を含有させない場合、すなわち孔版印刷用紫外線硬化型インクをクリアーインクとして構成する場合には、被印刷物に対して、例えば立体感、光沢等を付与することができる。
【0027】
着色剤としては、公知の顔料及び染料を使用することができる。顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、ペリノン、ペリレン系顔料等の有機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタン、カドミウムレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、群青、紺青等の無機顔料が挙げられる。また、有機質又は無機質の蛍光顔料を使用してもよい。染料としては、例えば、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料、造塩染料、アジン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、及びトリフェニルメタン染料が挙げられる。
【0028】
使用される着色剤は一種類のみであってもよいし、二種類以上の着色剤を組み合わせて使用してもよい。なお、着色剤の粒径は、印刷部位の光沢及び孔版原紙の穿孔の通過性を良好にする観点から、10μm以下であることが好ましい。
【0029】
孔版印刷用紫外線硬化型インクに着色剤を含有させる場合には、その分散性を高めるという観点から、さらに分散剤を含有させることが好ましい。
分散剤としては、例えば、低分子型界面活性剤、高分子型界面活性剤、及び樹脂分散剤として公知のものを使用することができる。こうした分散剤の中でも、ロジン系樹脂、アルキッド系樹脂が好適に使用される。使用される分散剤は一種類のみであってもよいし、二種類以上の分散剤を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
孔版印刷用紫外線硬化型インクには、必要に応じて、高分子材料、油性成分、及び上記レオロジー調整剤を含有させることもできる。高分子材料としては、例えば、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、及びポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0031】
油性成分としては、例えば、植物性油脂及び石油系油が挙げられる。植物性油脂としては、例えば、大豆油、ひまし油、トール油、及びナタネ油が挙げられる。石油系油としては、例えば、パラフィン系油、及びナフテン系油が挙げられる。
【0032】
レオロジー調整剤としては、例えば、ベントナイト、シリカ、クレー、ホワイトカーボン、沈降性硫酸バリウム、アルミニウムシリケート、及びカオリンが挙げられる。このレオロジー調整剤は、体質顔料として構成されていてもよい。
【0033】
孔版印刷用紫外線硬化型インクには、さらに消泡剤、濡れ剤、レベリング剤、及びハジキ防止剤を含有させることもできる。
孔版印刷用紫外線硬化型インクを用いて印刷される被印刷物としては、特に限定されず、例えば、コート紙、アート紙等の紙製品、樹脂製品、及び金属製品が挙げられる。
【0034】
次に、孔版印刷用紫外線硬化型インクを用いた孔版印刷方法について説明する。
図1は、孔版印刷方法のフローを示している。転写工程では、孔版印刷用紫外線硬化型インクが、ドラムの内部から孔版原紙を通じて被印刷物に転写される(ステップ1)。この転写工程において、孔版原紙を通じる孔版印刷用紫外線硬化型インクの温度は、インクの特性を十分に発揮させるという観点から、5℃〜40℃の範囲であることが好ましく、15℃〜35℃の範囲であることがより好ましく、20℃〜30℃の範囲であることがさらに好ましい。その温度が5℃未満の場合、印刷ムラが発生し易くなるおそれがある。一方、40℃を超える場合、印刷部分の輪郭が不鮮明になり易くなるおそれがある。
【0035】
次に、加熱工程では、被印刷物における孔版印刷用紫外線硬化型インクの転写された面(以下、転写面という。)が、50℃〜75℃の範囲に加熱される(ステップ2)。ここで、孔版印刷用紫外線硬化型インクの55℃における粘度ηは、上述したように規定されている。このため、加熱工程により、被印刷物上の孔版印刷用紫外線硬化型インクの表面は、インクの流動性により滑らかな状態となるとともに過剰な流動が抑制される。
【0036】
続いて、紫外線照射工程では、被印刷物における孔版印刷用紫外線硬化型インクの転写された面に紫外線が照射される(ステップ3)。この紫外線照射工程により、孔版印刷用紫外線硬化型インクが硬化して被印刷物に定着される。
【0037】
図2には、孔版印刷装置の概略を示している。孔版印刷装置は、孔版印刷機11、加熱装置12、及び紫外線照射装置13を備えている。孔版印刷機11としては、例えばインクローラー式、スキージーブレード式等の周知の輪転式孔版印刷機を用いることができる。輪転式の孔版印刷機は、例えば特開2009−000940号公報、特開2009−018564号公報、及び特開2001−030604号公報に開示されている。このような孔版印刷機11の有するドラムの外周はメッシュ状支持体によって形成されることで、ドラムの内部からドラムの外周面に孔版印刷用紫外線硬化型インクが流出可能となっている。ドラムの外周面には、必要に応じて、メッシュ状のシート、すなわちスクリーンが積層される。
【0038】
ドラムに装着される孔版原紙(製版済みの原紙)としては、例えば、手書き製版、感熱製版、及び感光製版により得られた周知のものを用いることができる。こうした孔版原紙は、一般に、孔版層と、それを支持することで補強する支持層とを有している。例えば、感熱製版により得られた孔版原紙の孔版層は、例えば、ポリエステル系の熱可塑性フィルムから構成され、同原紙の支持層は、例えば、天然繊維と合成繊維とを混抄した薄葉紙、合成繊維よりなる不織布、ポリエステル又はポリアミドのメッシュ状シートから構成されている。こうした支持層の中でも、インクの通過性が良好であることから、例えば120〜300メッシュ程度のメッシュ状シートが好ましい。
【0039】
加熱装置12は、被印刷物の転写面を50℃〜75℃の範囲に加熱する。加熱装置12の加熱源としては、例えば、赤外線ランプ、蒸気配管、温風等が挙げられるが、孔版印刷用紫外線硬化型インクの転写された面の清浄性を維持することが容易であることから、赤外線ランプであることが好ましい。加熱装置12には、被印刷物の搬入及び搬出するための搬送部を設けることができる。
【0040】
紫外線照射装置13は、紫外線ランプを備えてなり、紫外線ランプにより発生する紫外線を転写面に紫外線を照射する。紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀灯及びメタルハライドランプが挙げられる。紫外線照射装置13には、被印刷物を搬入するとともに印刷物を搬出する搬送部を設けることができる。上記加熱装置12の搬送部及び紫外線照射装置13の搬送部としては、例えば、ベルトコンベア、及び搬送用ローラが挙げられる。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)孔版印刷用紫外線硬化型インクの条件Aの粘度η(Pa・s)は、1.5〜20000の範囲であるとともに、条件Bの粘度η(Pa・s)は、0.5〜20の範囲である。また、孔版印刷用紫外線硬化型インクの条件Cの粘度η(Pa・s)は、0.5〜1500の範囲であるとともに、条件Dの粘度η(Pa・s)は、0.2〜8の範囲である。これにより、印刷部分の光沢を高めることができる。また、印刷停止時においてドラムからのインクの漏れを抑制することができる。また例えば、印刷ムラ及びかすれの発生や印刷部分の輪郭が不鮮明になることを抑制することができる。このように、上記構成によれば、輪転式の孔版印刷に適するとともに、印刷部分の光沢を高めることのできる孔版印刷用紫外線硬化型インクが提供される。
【0042】
(2)孔版印刷用紫外線硬化型インクの条件Aの粘度η(Pa・s)は、4〜12000の範囲であるとともに条件Bの粘度η(Pa・s)は、0.5〜18の範囲であり、条件Cの粘度η(Pa・s)は、0.8〜500の範囲であるとともに条件Dの粘度η(Pa・s)は、0.2〜5の範囲であることが好ましい。この場合、印刷部分の光沢、及び印刷適性をさらに高めることができる。
【0043】
(3)孔版印刷方法においては、転写面が50℃〜75℃の範囲に加熱される。次に、その転写面には紫外線が照射される。この方法よれば、上記孔版印刷用紫外線硬化型インクの性能を十分に発揮させることができる。
【0044】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記孔版原紙を通じる孔版印刷用紫外線硬化型インクの温度は5℃〜40℃の範囲である請求項3に記載の孔版印刷方法。
【0045】
(ロ)前記転写された面は、赤外線ランプにより加熱される請求項3又は上記(イ)に記載の孔版印刷方法。
【実施例】
【0046】
次に、実施例、比較例、及び試験例を挙げて前記実施形態を具体的に説明する。
各実施例及び各比較例では、条件A〜Dにおいて表1に示される粘度の値を有する孔版印刷用紫外線硬化型インクを調製した。
【0047】
【表1】

インクの粘度の測定の詳細は、以下のとおりである。
【0048】
測定装置:ストレス制御式レオメータ(CSL100:Carri−Med社製)
測定条件:フローカーブ
コーン:φ40mm、ギャップ49μm
この粘度の測定においては、測定前のインクに50Paで1分間プレシェアを加えた後に5分間放置してから測定を開始した。せん断速度は、0.01〜100(1/s)とし、せん断応力を100Pa/minの条件で1Paから300Paまで増加させながら、温度20℃及び55℃の粘度を測定した。そして、上述した近似式から、条件A〜Dの粘度を算出した。
【0049】
表2には、各例の孔版印刷用紫外線硬化型インクの配合を示している。
【0050】
【表2】

表2中に示される“モノマー”の詳細は以下のとおりである。
【0051】
モノマー1は、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートDCP−A)である。
モノマー2は、トリプロピレングリコールジアクリレート(東亞合成株式会社製、商品名:アロニックスM−220)である。
【0052】
モノマー3は、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社製、商品名:アロニックスM−309)である。
モノマー4は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートDPE−6A)である。
【0053】
表2中に示される“オリゴマー”は、無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ウレタンアクリレートUF8001G)である。
表2中に示される“ポリマー”は、熱可塑性アクリルレジン(三菱レーヨン株式会社製、商品名:ダイヤナールBR105)である。
【0054】
表2中に示される“ゲル化剤”は、12−ヒドロキシステアリン酸である。
表2中に示される“体質顔料”は、微粉末シリカである。
表2中に示される“添加剤”は、消泡剤である。
【0055】
表2中に示される“光重合開始剤”の詳細は以下のとおりである。
光重合開始剤1は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE184(商品名)である。
【0056】
光重合開始剤2は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE907(商品名)である。
<孔版印刷用紫外線硬化型インクの評価>
(印刷条件)
各例の孔版印刷用紫外線硬化型インクを用いて印刷を行った。転写工程に用いる孔版印刷機としては、株式会社デュプロ製のデュープリンターDP−440(商品名)を用いた。この孔版印刷機のドラムに装着されていたスクリーンを除去して、ドラムに孔版原紙を装着した。孔版原紙としては、感熱スクリーン原紙(アジア原紙株式会社製、120メッシュのメッシュ状シートを支持層とする原紙)を株式会社デュプロ製のデュープリンターDP−440(商品名)にて製版したものを用いた。被印刷物としては、コート紙を用いた。転写工程におけるインクの温度は、室温(25℃)である。
【0057】
加熱工程では、ドライヤー(消費電力:1200W)を使用して温風により、転写面を55℃まで加熱した。転写面の温度は、タスコジャパン製の非接触ハンディ型表面温度計により測定した。
【0058】
紫外線照射装置としては、1.5kWの水銀ランプを使用したUV照射装置(アイグラフィックス株式会社製のUV装置「model UE 0151-225.04C」、及びアイグラフィックス株式会社製の電源装置「UBX01.51-3L1」)を用いた。この紫外線照射工程では、積算照射量が90mJ/cmとなるように調整してインクを硬化させた。
【0059】
(インクの漏れの評価)
ドラムからのインクの漏れの有無について、インクをドラムに供給した直後の印刷開始前、及び、室温(25℃)の環境下で孔版印刷機を24時間放置した後に目視にて確認した。表3には、ドラムからインクの漏れが無かったものを良好(○)とし、ドラムからインクの漏れが確認されたものを不可(×)と判定した。この結果を表3に示している。
【0060】
(印刷ムラ及びかすれの評価)
印刷開始時の印刷物について、ベタ印刷部分の印刷ムラ及びかすれの状態を目視にて確認した。さらに、室温(25℃)の環境下で孔版印刷機を24時間放置した後に、同様に印刷を行い、ベタ印刷部分の印刷ムラ及びかすれの状態を目視にて確認した。確認した結果に基づき、以下に示す評価基準により印刷ムラ及びかすれを評価した。
【0061】
評価基準は以下のとおりである。
優れる(◎):印刷ムラ及びかすれが無く、均一に印刷できている。
良好(○):印刷ムラが若干有るものの、かすれが無く、概ね均一に印刷できている。
【0062】
劣る(△):印刷ムラが有り、印刷の一部がかすれている。
不可(×):印刷ムラが多く、印刷の全体がかすれている。
この評価結果を表3に示している。
【0063】
(印刷鮮明度の評価)
印刷開始時の印刷物について、印刷面の光沢、及び字画の鮮明度合いを目視にて確認した。さらに、室温25℃の環境下で孔版印刷機を24時間放置した後に、同様に印刷を行い、印刷面の光沢、及び字画の鮮明度合いを目視にて確認した。確認した結果に基づき、以下に示す評価基準により印刷鮮明度を評価した。
【0064】
優れる(◎):印刷面の光沢に優れ、かつ、字画がシャープで原稿との差が認められない。
良好(○):印刷面に光沢があり、かつ、字画がシャープで原稿と大差は認められない。
【0065】
劣る(△):印刷面の光沢感が低く、かつ、字画が少し崩れて原稿より劣るが判読できる。
不可(×):印刷面の光沢感が無く、かつ、字画が崩れて判読できない。
【0066】
この結果を表3に示している。
【0067】
【表3】

各実施例では、24時間後であっても、インクの漏れ、印刷ムラ及びかすれ、並びに印刷鮮明度の評価のいずれも優れる又は良好であった。
【0068】
比較例1〜3では、インクの漏れの評価は良好であったが、印刷ムラ及びかすれ、並びに印刷鮮明度の評価は不可であった。
比較例4及び5では、インクの漏れ、並びに印刷ムラ及びかすれの評価については、いずれも良好であるものの、印刷鮮明度の評価は不可であった。
【0069】
比較例6〜8では、印刷開始前におけるインク漏れの評価は良好であるものの、孔版印刷機を1時間放置した時点でインクの漏れが発生した。また、比較例6〜8では、印刷ムラ及びかすれ、並びに印刷鮮明度の評価は各実施例よりも劣るか、又は不可であった。
【0070】
比較例9及び10では、インク漏れ、並びに印刷ムラ及びかすれの評価のいずれも良好であるものの、印刷鮮明度は各実施例よりも劣っている。
<加熱工程の変更>
表4に示されるように、試験例1〜15では、実施例1〜15の孔版印刷用紫外線硬化型インクを用いて、加熱工程における加熱温度を、40℃、50℃、及び75℃の各温度に変更した。それ以外は、上記の印刷条件と同様にして印刷を行い、上記の印刷鮮明度について評価を行った。その結果を表4に示している。
【0071】
【表4】

表4に示される各試験例の結果から、各実施例の孔版印刷用紫外線硬化型インクは、加熱工程において転写面を50℃〜75℃に加熱することで、印刷鮮明度、すなわち、印刷面の光沢、及び字画の鮮明度合いのいずれも良好な印刷物が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔版原紙を装着したドラム内から前記孔版原紙を通じて被印刷物にインクを転写する輪転式の孔版印刷に用いられる孔版印刷用紫外線硬化型インクであって、
非水系として構成され、
20℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で1.5〜20000の範囲であるとともに、せん断速度γ(1/s)=100の条件で0.5〜20の範囲であり、
55℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で0.5〜1500の範囲であるとともに、せん断速度γ(1/s)=100の条件で0.2〜8の範囲であることを特徴とする孔版印刷用紫外線硬化型インク。
【請求項2】
前記20℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で4〜12000の範囲であるとともにせん断速度γ(1/s)=100の条件で0.5〜18の範囲であり、
55℃における粘度η(Pa・s)は、せん断速度γ(1/s)=0.01の条件で0.8〜500の範囲であるとともにせん断速度γ(1/s)=100の条件で0.2〜5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の孔版印刷用紫外線硬化型インク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の孔版印刷用紫外線硬化型インクを用いて前記孔版印刷を行う孔版印刷方法であって、
前記被印刷物における前記孔版印刷用紫外線硬化型インクの転写された面を50℃〜75℃の範囲に加熱した後に、前記転写された面に紫外線を照射することを特徴とする孔版印刷方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−82318(P2012−82318A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229721(P2010−229721)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(391001505)アジア原紙株式会社 (16)
【Fターム(参考)】