孔開き電解金属箔並びにキャリア基材付孔開き電解金属箔及びこれらの製造方法
【課題】 微細貫通孔のサイズ、形状、位置、深さ、及び微細貫通孔の単位面積あたりの個数等のパラメータを目的に合わせて設計可能な孔開き電解金属箔の提供を目的とする。
【解決手段】 上記課題を達成するため、当該孔開き電解金属箔の一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるよう、他面側に貫通した複数個の微細貫通孔7を備えることを特徴とする孔開き電解金属箔1等を採用する。また、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられた状態にあることを特徴とするキャリア基材付孔開き電解金属箔を採用する。そして、これらの製造のため、キャリア基材の表面に絶縁性突起部を形成し、前記キャリア基材の絶縁性突起部を形成した面に対し金属メッキを行い、キャリア基材表面に孔開き電解金属箔を形成することを特徴とする製造方法等を採用する。
【解決手段】 上記課題を達成するため、当該孔開き電解金属箔の一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるよう、他面側に貫通した複数個の微細貫通孔7を備えることを特徴とする孔開き電解金属箔1等を採用する。また、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられた状態にあることを特徴とするキャリア基材付孔開き電解金属箔を採用する。そして、これらの製造のため、キャリア基材の表面に絶縁性突起部を形成し、前記キャリア基材の絶縁性突起部を形成した面に対し金属メッキを行い、キャリア基材表面に孔開き電解金属箔を形成することを特徴とする製造方法等を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、複数の微細貫通孔を有する孔開き電解金属箔、キャリア基材付孔開き電解金属箔及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の微細貫通孔を持つ孔開き電解金属箔が様々な分野で使われている。例えば、孔開き電解金属箔には燃料電池や二次電池の集電体又は化学反応を促進する触媒の担持体としての用途がある。
【0003】
特に、近年、携帯用PCやビデオカメラ等のポータブル電子機器用電源若しくは電気自動車用の電源として高容量の二次電池の需要が高まっており、二次電池用の集電体として複数の微細貫通孔を持つ孔開き電解金属箔が使用されている。
【0004】
このような市場の需要に応えるべく、箔の厚み方向に通じる微細貫通孔が形成された多孔質の電解金属箔が種々提案されている(特許文献1、2、及び3参照)。
【0005】
しかし、これらの特許文献に開示されている各製造方法による多孔質電解金属箔(孔開き電解金属箔)の微細貫通孔は製造上制御ができずランダムに(無作為に)形成されている。すなわち、当該特許文献に開示されている各製造方法によれば、意図的に微細貫通孔のサイズ、形状、位置、深さ、及び微細貫通孔の単位面積あたりの個数等のパラメータを任意に制御することができない。
【特許文献1】特開平08−236120号公報
【特許文献2】特開昭50−141540号公報
【特許文献3】特開昭62−240787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、孔開き電解金属箔においては、ナノテクノロジー等の技術の急速かつ革新的進歩に伴う用途に応じて、当該微細貫通孔のサイズ、形状、位置、深さ、及び微細貫通孔の単位面積あたりの個数等のパラメータを合目的的に変化させたりすることで、より精度の高い微細貫通孔の形成が必要とされる場合が生じている。従って、この要求に合致した孔開き電解金属箔の提供及び提供手段が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本件発明者等は鋭意検討の結果、孔開き電解金属箔において、当該微細貫通孔のサイズ、形状、位置、深さ、及び微細貫通孔の単位面積あたりの個数等並びに当該孔開き電解金属箔の種類及び厚さを任意に制御可能な孔開き電解金属箔及び当該孔開き電解金属箔の製造方法を提供すべく、以下の発明に想到した。
【0008】
孔開き電解金属箔: 本件発明に係る孔開き電解金属箔は、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔であって、当該孔開き電解金属箔の一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるように、該金属面の他面側に貫通した複数個の微細貫通孔を備えることを特徴とするものである。
【0009】
そして、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成する成分は、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナ、又はこれらの合金、又は銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナのいずれかを組み合わせた積層構造のいずれかを備える物とすることが可能である。
【0010】
また、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成する電解金属箔上には、防錆層を備えるものとして、長期保存性を確保するための防食性能の向上を図ることも可能である。
【0011】
キャリア基材付孔開き電解金属箔: 本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられた状態であることを特徴とするものである。
【0012】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔においては、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層を設ける事が好ましい。この剥離層に関しては、後述する。
【0013】
また、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔においては、前記キャリア基材として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又はクラッド金属板を用いることで、孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるようにすることも出来る。
【0014】
更に、前記孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)のいずれかの層間に少なくとも一つの剥離層等を設ける事も好ましい。この剥離層等に関しては後述する。
【0015】
キャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法: 本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法は、以下の工程a及び工程bを含むことを特徴とするものである。
【0016】
工程a.キャリア基材の表面に絶縁性突起部を複数箇所に形成する突起部形成工程;
工程b.前記キャリア基材の絶縁性突起部を形成した面に対し金属メッキを行い、前記キャリア基材の絶縁性突起部以外の領域に金属メッキ層を析出形成させ、キャリア基材表面に孔開き電解金属箔を形成し、キャリア箔付孔開き電解金属箔とする電析工程;
【0017】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法において、前記工程aで用いるキャリア基材は、以下に示すキャリア基材(A)〜キャリア基材(F)のいずれかを用いることが好ましい。
【0018】
キャリア基材(A): 単一層の金属箔又は金属板。
キャリア基材(B): 第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(C): 第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(D): 剥離層を表面に設けた単一層の金属箔又は金属板。
キャリア基材(E): 剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(F): 剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
【0019】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法において、前記工程aで用いる基材に前記キャリア基材(A)〜キャリア基材(C)のいずれかを用いる場合であって、前記工程aと前記工程bとの間に剥離層形成工程を設ける事も好ましい。
【0020】
本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法で用いる前記剥離層は、銅、ニッケル、クロムを含む金属系剥離層又はトリアゾール化合物を含む有機系剥離層とすることが好ましい。
【0021】
そして、前記工程a(突起部形成工程)で形成する絶縁性突起部は、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、及び凹版印刷法のいずれかによって形成したものである事が好ましい。
【0022】
また、前記工程a(突起部形成工程)で形成する絶縁性突起部は、感光性フィルムを用いて形成したものであることも好ましい。
【0023】
そして、前記工程b.(電析工程)における金属メッキは、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナのいずれかの金属メッキ、又は、これらの合金メッキとすることが好ましい。
【0024】
また、前記工程b.(電析工程)における金属メッキは、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナのいずれかから選ばれる金属メッキ層を複数積層させる事も好ましい。
【0025】
孔開き電解金属箔の製造方法: 本件発明に係る孔開き電解金属箔の製造方法は、上述のいずれかのキャリア基材付孔開き電解金属箔のキャリア基材を除去するという概念を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0026】
本件発明に係る孔開き電解金属箔は、その微細貫通孔のサイズ、位置、形状等を任意に調整することが可能である。従って、当該微細貫通孔を透過させる対象として、気体、固体、又は液体のいずれに対しても適用可能であり、必要とされるあらゆる分野の用途に応ずることが可能となる。従って、電池等の集電体又は化学反応を促進する触媒の担持体、微粉分級用スクリーン装置、固液分離処理用のスクリーン装置、微生物保管用容器の酸素供給口に使用されるネット、クリーンルーム用防塵フィルター、液体抗菌フィルター、液体に金属イオンを付与し飲料水等の液体を改質するための液体改質用フィルター、電磁波シールド、服地用材料、磁性用材料、導電用材料、その他の広範囲な分野に使用可能なものである。
【0027】
また、キャリア基材付孔開き電解金属箔の構成を採用することにより、10μm未満の薄い孔開き電解金属箔に対する要求があっても対応可能である。孔開き電解金属箔を支持するキャリア基材の存在により、薄い孔開き電解金属箔のハンドリング性を容易に改善でき、工程内での孔開き電解金属箔の汚染、キズ発生を防止する。
【0028】
更に、本件発明に係る孔開き電解金属箔は、最初にキャリア基材表面に電析形成し、剥ぎ取ることにより容易に製造することが可能であり、工業的生産に適した確実な製造方法であるため、高い生産歩留まりを確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
<孔開き電解金属箔>
本件発明に係る孔開き電解金属箔の形態に関して説明する。上述のように、本件発明に係る孔開き電解金属箔は、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔であって、当該孔開き電解金属箔の一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるように、該金属面の他面側に貫通した複数個の微細貫通孔を備えることを特徴とするものである。ここで明記しておくが、後述の製造方法からも明らかなように、当該孔開き電解金属箔は、電解法で直接製造されるものであり、従来の無孔金属箔に対して事後的に開孔処理することにより得られる金属箔(例えばパンチングメタル)と区別されることに留意されたい。
【0030】
上記孔開き電解金属箔の厚さに関しては、特段の限定はない。しかしながら、電解法で製造するものであることを考えれば、厚さ1μm〜400μmの範囲というのが常識的である。次に、微細貫通孔について述べる。ここで言う微細貫通孔は、後述するように、金属の電析膜を形成する際に、電析障害となる絶縁性の突起を形成し、その突起部に電析を起こさせず、その突起箇所が微細貫通孔を形成するものである。従って、突起部の高さ、断面サイズ等の形成精度により、微細貫通孔のサイズが左右される。従って、工業的な生産安定性から見れば、微細貫通孔の径は1μm〜300μmの範囲で形成することが好ましい。そして、本件発明に係る孔開き電解金属箔の用途、要求品質に応じて、適宜微細貫通孔のサイズ、及び、箔厚の調整を行えばよいのである。例えば、孔開き銅箔の場合には、市場要求として3μm〜35μmの厚さの銅箔であって、当該銅箔の片面からもう一方の面に貫通する微細貫通孔の直径が10μm〜200μm程度の略円形である製品に対する要求がある。
【0031】
また、当該微細貫通孔は、一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるように、該金属面の他面側に貫通した複数個の微細貫通孔として存在することが好ましい。このような状態の微細貫通孔であることが、微細貫通孔経路が最も短く、リチウムイオン二次電池の負極形成材として用いた場合には、イオン移動を容易として好ましい。これに対し、例えば、電解金属箔の基準面から他面に到る微細貫通孔が、基準面から見て、ある程度斜めに形成された場合、またある程度の蛇行をした場合をも含む概念として記載している。また、金属箔の表面に現れる微細貫通孔の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、楕円形状、長方形状、菱形状、又はスリット状等の種々の形状で形成することができる。ただし、孔開き電解金属箔を金属板状キャリアから剥離する際に孔開き電解金属箔が剥離し易く、よって破損しにくいような円形、楕円形若しくは卵形の断面形状のように微細貫通孔形状の外縁に凸部がない滑らかな曲線で囲まれた断面形状であることが望ましい。
【0032】
更に、箔の面内における当該微細貫通孔の配置は、用途を考慮して、微細貫通孔密度(単位面積中にある微細貫通孔の個数)、微細貫通孔の配列の規則性又は不規則性が決定される。従って、この微細貫通孔は、一定のピッチ間隔で配置させたり、まったくランダムのピッチ間隔としても良い。また、電解金属箔のある一定領域において当該微細貫通孔密度を高くする又は低くする等の設計も可能である。
【0033】
そして、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成する成分は、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナ、又はこれらの合金、又は銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナのいずれかを組み合わせた積層構造のいずれかを備えるものとすることが可能である。即ち、i)銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナの群から選ばれる1種の単一の金属層からなる孔開き電解金属箔とするか、ii)銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナの群から選ばれる2種以上の銅−錫合金、ニッケル−銅合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−鉄合金、金−プラチナ合金、ニッケル−銀合金等の合金層からなる孔開き電解金属箔とするか、iii)銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナの群から選ばれる2種以上の成分を2層以上のクラッド状態とした孔開き電解金属箔とするかである。
【0034】
また、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成する電解金属箔上には、防錆層を備えるものとして、長期保存性を確保するための防食性能の向上を図ることも可能である。この防錆には有機防錆又は無機防錆を採用することが可能である。有機防錆には、ベンゾトリアゾール、イミダゾール等のトリアゾール化合物を用いることが、長期保存性及び電気的障害とならないことから好ましい。一方、無機防錆の場合には、銅に対する亜鉛等、孔開き電解金属箔の構成金属成分を考慮して、犠牲防食効果を発揮する金属成分を防錆成分として用いる。
【0035】
キャリア基材付孔開き電解金属箔: 本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられたことを特徴とするものである。このキャリア基材が存在し、孔開き電解金属箔を支持することで、孔開き電解金属箔が10μm未満の厚さで、折れ、シワの発生がしやすいものであっても、ハンドリング性が飛躍的に向上する。また、孔開き電解金属箔の層は、キャリア箔の片面のみでも、キャリア箔の両面に存在しても良い。
【0036】
本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔を、最も簡潔に言い表せば、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられた状態にあることを特徴とするものである。そして、前記キャリア基材付孔開き電解金属箔において、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層を設ける事も有用である。
【0037】
更に、前記キャリア基材として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又はクラッド金属板を用いることも可能で、孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあることを特徴とするキャリア基材付孔開き電解金属箔となる。そして、前記孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)のいずれかの層間に少なくとも一つの剥離層等を設ける事も可能である。
【0038】
ここで言う、キャリア基材とは、箔状態又は板状態のもので、孔開き電解金属箔を電解析出しようとしたときには陰極としての機能を果たすものである。そして、社会通念を考慮して、本件発明では、厚さが300μm未満のものを「箔」、厚さ300μm以上のものを「板」と称することとする。このキャリア基材を構成する材質は、孔開き電解金属箔の製造時にはキャリア基材自体を陰極に分極して、その表面に電析させて形成するため、導電性を備える限り特段の材質限定は必要ない。従って、銅、チタン、アルミニウム、ステンレス等の箔や板である金属素材、プラスチック材の表面を金属成分でコーティングした素材(例えば、プラスチックフィルムの両面若しくは片面に金属導電層を備える構成のもの等)等を使用することが可能である。しかしながら、このキャリア基材には、金属材質を用いるのが一般的である。このキャリア基材に関しては、以下のキャリア基材(A)〜キャリア基材(F)のいずれかを用いることが好ましい。
【0039】
キャリア基材(A)は、単一層の金属箔又は金属板である。キャリア基材(A)を用いることで、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、孔開き電解金属層(箔)/金属箔(又は金属板)の層構成を備えるものとなる。そして、このキャリア基材(A)の表面に孔開き電解金属箔を備えた状態を図1に示している。図1(a)はキャリア基材2の片面に孔開き電解金属箔1がある状態を模式的に示している。そして、図1(b)はキャリア基材2の両面に孔開き電解金属箔1がある状態を模式的に示している。図面中には、絶縁性突起部3を明示している。
【0040】
キャリア基材(B)は、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板である。そして、最も単純には、第1金属層と第2金属層とを積層した2層状態のクラッド金属箔又は金属板であり、この形態を図面を用いて説明する。キャリア基材(B)を用い、孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/第2金属層の層構成を備えるものとすると、このような2層状態のクラッド金属箔又は金属板は、いずれか一方の層を導電性に優れた銅又は銀等の層として電解時の通電用途に用い、他方の層を機械的強度の高いニッケル、コバルト又はこれらの合金とする等して、キャリア基材自体の導電性と強度を確保するために好ましい。そして、このキャリア基材(B)の表面に孔開き電解金属箔を備えた状態を図2に示している。図2(a)はキャリア箔の片面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。そして、図2(b)はキャリア箔の両面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。このときの第1金属層と第2金属層とは、同一材質でも異種金属材質であっても構わない。なお、明記しておくが、第1金属層〜第n金属層までの全て層は、微量元素量で構成したnmレベルのものではなく、少なくともμmオーダーの厚さを備える層である。
【0041】
キャリア基材(C)は、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板である。そして、最も単純には、第1金属層/キャリア基材内剥離層/第2金属層の3層状態のクラッド金属箔又は金属板であり、この構成を図面に用いて説明する。キャリア基材(C)を用い、孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/キャリア基材内剥離層/第2金属層の層構成を備えるものとした状態を図3に示している。図3(a)はキャリア箔の片面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。そして、図3(b)はキャリア箔の両面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。このときの第1金属層と第2金属層とは、同一材質でも異種金属材質であっても構わない。そして、当該キャリア基材内剥離層は、第1金属層と第2金属層との間で剥離するために用いるもので前記キャリア基材内剥離層から分離することで、2枚のキャリア基材付孔開き電解金属箔を得ることが出来る。なお、明記しておくが、第1金属層〜第n金属層までの全て層は、微量元素量で構成したnmレベルのものではなく、少なくともμmオーダーの厚さを備える層である。
【0042】
キャリア基材(D)は、剥離層を表面に設けた単一層の金属箔又は金属板である。キャリア基材(D)を用いることで、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、孔開き電解金属層(箔)/剥離層/金属箔(又は金属板)の層構成を備えるものとなる。即ち、キャリア基材(A)の表面に予め剥離層を設けたものであり、当該剥離層は、キャリア基材と孔開き電解金属箔とを引き剥がして剥離するために用いるものである。このキャリア基材(C)の表面に孔開き電解金属箔を備えた状態を図4に示している。図4(a)はキャリア箔の片面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。そして、図4(b)はキャリア箔の両面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。後者の場合は、2枚の孔開き電解金属箔を一度に得ることが出来る。
【0043】
キャリア基材(E)は、剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板である。そして、最も単純には、剥離層/第1金属層/第2金属層の3層状態のクラッド金属箔又は金属板である。このキャリア基材(E)を用いることで、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、孔開き電解金属層(箔)/剥離層/第1金属層/第2金属層の層構成を備えるものとなる。即ち、キャリア基材(B)の表面に予め剥離層を設けたものであり、当該剥離層は、キャリア基材と孔開き電解金属箔とを引き剥がして剥離するために用いるものである。
【0044】
キャリア基材(F)は、剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板である。そして、最も単純には、剥離層/第1金属層/キャリア基材内剥離層/第2金属層の4層状態のクラッド金属箔又は金属板である。キャリア基材(F)を用いることで、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、孔開き電解金属層(箔)/剥離層/第1金属層/キャリア基材内剥離層/第2金属層の層構成を備えるものとなる。即ち、キャリア基材(C)の表面に予め剥離層を設けたものであり、当該剥離層は、キャリア基材と孔開き電解金属箔とを引き剥がして剥離するために用いるものである。
【0045】
本件発明に於いて単に「剥離層」と称しているのは、キャリア基材と孔開き電解金属箔との間の剥離層であり、「キャリア基材内剥離層」というのはキャリア基材の内部に存在する剥離層のことである。従って、以上及び以下に於いて、「剥離層」及び「キャリア基材内剥離層」を含めて言う場合には「剥離層等」と称する。剥離層等は、無機系剥離層又は有機系剥離層のいずれかを用いることが好ましい。この剥離層等は、剥離層等を境にして層間での分離が可能なように設けるものである。剥離層等を無機系剥離層として用いるには、クロムメッキ、ニッケルメッキ、鉛メッキ、クロメート処理等を用いることが好ましい。そして、剥離層等を有機系剥離層として用いるには、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いて形成したものが好ましい。
【0046】
有機系剥離層を構成する成分を、より具体的に言えば、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のうち、窒素含有有機化合物には、置換基を有する窒素含有有機化合物を含んでいる。具体的には、窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等を用いることが好ましい。
【0047】
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール、チオシアヌル酸及び2−ベンズイミダゾールチオール等を用いることが好ましい。
【0048】
カルボン酸は、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。以上に述べてきた剥離層に関する概念は、本件発明で言う剥離層全てに適用できる。
【0049】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔においては、上述のキャリア基材(D)、キャリア基材(E)、キャリア基材(F)のいずれかを用いた場合のように、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層が位置するものとして、キャリア基材と孔開き電解金属箔とを引き剥がして剥離するために用いる事が好ましい。エッチング法でキャリア基材を溶解剥離することも可能であるが、製造コストの上昇に繋がるからである。
【0050】
以上に述べてきたいずれかのキャリア基材及び剥離層と孔開き電解金属箔とを一定の積層構造をもって、組み合わせたものが、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔である。
【0051】
キャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法: 本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法は、以下の工程a及び工程bを含むことを特徴とする。
【0052】
工程a.: この突起部形成工程は、キャリア基材の表面に絶縁性突起部を複数箇所に形成する工程である。キャリア基材とは、上述のように箔状若しくは板状のものである。このキャリア基材2の表面(片面若しくは両面)に、絶縁性突起部3を形成する。図7(a)にキャリア基材2の表面に絶縁性突起部3を形成した断面を模式的に示す。また、絶縁性突起部3の横断面形状は、円形、矩形、菱形、楕円形、スリット形状等の種々の形状の適用が可能である。また、絶縁性突起部3には、キャリア基材2の表面から上方に向かってやや先細りのテーパー付けが行われても良い。これによってキャリア基材2から孔開き電解金属箔1が剥離し易くなる。
【0053】
このときの絶縁性突起部3の形成方法には、複数の手段を採用することが可能である。その一つが印刷法を用いて絶縁性突起部を形成する方法である。例えば、熱硬化性樹脂インクを用いて、前記キャリア基材の表面に印刷法で絶縁性突起部を形成し、加熱硬化させれば、当該絶縁性突起部を形成することが可能となる。このような印刷法は、当該絶縁性突起部の形状や突起部の配置を自由自在に描くことが容易で、且つ、工程が簡素であり製造コストの削減に大きく寄与する。
【0054】
ここで言う印刷法は、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法のいずれを用いることも可能である。これらの印刷法による絶縁性突起部の形成は常法により行われる。中でも、インクジェット法を用いることが、設計の自由度及び対応能力の点から好ましい。インクジェット法は、キャリア基材の絶縁性突起部を形成する位置情報等をコンピュータ上で設計し、その設計情報をもってインクジェットプリンタを制御して、キャリア基材上の所望の位置に絶縁性突起部を描くことができる。なお、インクジェット法を用いる場合には、インクジェットノズルから噴射されるインクが金属板状キャリア箔1上に形成される際のワンジェット(一噴射)当たりのインク厚が薄いので、より凸部を高くしたい場合は同一パターンで複数回印刷することで所望の高さの絶縁性突起部を得るようにすることが好ましい。また、グラビア印刷法を用いる場合には、形成した絶縁性突起部の形状を安定化を図るためには、装置の持つ特性に合わせた微調整が必要となる点に留意すべきである。
【0055】
また、もう一つの絶縁性突起部3の形成方法に関して説明する。即ち、フォトリソグラフィー技術を利用した方法である。即ち、以下の手順で絶縁性突起部を形成するのである。図8を参照しつつ、以下に説明する。
【0056】
最初に、図8(a)に示すように、キャリア基材2の表面に絶縁性の感光性レジスト層4(以下、単に「レジスト層4」と称する。)を形成するのである。ここで言うレジスト層4には、プリント配線板製造に用いるドライフィルム、液体レジスト等の感光性レジスト材の使用が可能である。ドライフィルムの場合には、ラミネータを用いて、キャリア基材2の表面に貼り付ける。液体レジストの場合には、スピンコーター等を用いて、キャリア基材2の表面にレジスト層3として構成することが好ましい。特に、ドライフィルムは、レジスト材がポリエチレンフィルムとポリエステルフィルムとの間で挟持された構造を持つフィルムであり、プリント配線板のエッチングレジストとして広く使用されている。このドライフィルムは、厚さに種々のバリエーションを持たせることが容易で、最終製品である、孔開き電解金属箔の厚さ幅を広く採ることが容易である。
【0057】
次に、図8(b)に示すように、キャリア基材2の表面に形成したレジスト層4に、所望の絶縁性突起部を形成するため、絶縁性突起部を形成するためフォトマスク5を介して露光する。当該露光には、一般に紫外線(UV光)を用いる(図8(b)では「UV」と記載している。)。
【0058】
そして、前記露光処理されたレジスト層4を現像し、該レジスト層4の不要な部分を除去し前記絶縁性突起部3を形成する。この工程では、不要な部分のレジスト層3をアルカリ溶液(例えば1%〜5%程度の濃度の炭酸ナトリウム溶液等)で除去し、残留したレジスト部が前記絶縁性突起部3の形状を形成する。なお、図8に示した除去方法はネガタイプのレジストを使用した場合である。公知の現像処理を行うことによりポジタイプのレジストを使用した場合は、逆に露光処理されたレジスト層7が除去され、露光処理されていないレジスト層3がレジストマスクとして残存する。
【0059】
なお、絶縁性突起部の形成を行う前に、キャリア基材の表面を、希硫酸又は希硫酸と過酸化水素との混合液等の酸溶液で酸洗し、その後、純水やイオン交換水等の水で水洗し、乾燥させて用いることが好ましい。キャリア基材に対する絶縁性突起部の定着性を確実にするためである。
【0060】
工程b.この工程では、図7(b)として示したように、前記キャリア基材2の絶縁性突起部3を形成した面に対し、キャリア基材2をカソード分極して金属メッキを行い、前記キャリア基材2の絶縁性突起部3以外の領域に金属メッキ層を析出形成させ、キャリア基材2表面に孔開き電解金属箔1を形成し、キャリア箔付孔開き電解金属箔10とする。
【0061】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法において、キャリア基材は、上述のキャリア基材(A)〜キャリア基材(F)のいずれかを用いることが好ましい。ここでは、キャリア基材(A)〜キャリア基材(F)に関する説明は省略する。なお、キャリア基材は、そのキャリア基材自体を電極(陰極)として用いて、その表面に孔開き電解金属箔を構成する金属成分を析出させるように使用される。そして、必要に応じて、孔開き電解金属箔が基材に張り合わせられる等の加工が終了するまで、孔開き電解金属箔と一体として使用し、ハンドリング性の向上、孔開き電解金属箔の表面を汚染、傷発生から保護するのである。
【0062】
但し、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法において、前記工程aで用いる基材として、前記キャリア基材(A)〜キャリア基材(C)のいずれかを用いる場合には、前記工程aと前記工程bとの間に剥離層形成工程を設ける事も好ましい。この段階で剥離層形成工程を設けると、図7(a)の状態から図9(1)に示されるように、キャリア基材2の表面の絶縁性突起部の存在しない部位であって、金属メッキ層(孔開き電解金属箔)が形成される予定のキャリア基材表面に、上述したと同様の剥離層6(無機系若しくは有機系剥離層)を形成する。そして、このとき絶縁性突起部3とキャリア基材2との間に剥離層6は存在しない。しかし、厳密に考えれば、無機系剥離層を電解法で形成する場合を除き、有機系剥離層を形成しようとして有機剤をシャワーリング、浸漬法で吸着させようとすると、絶縁性突起部3の表面にも、当該有機剤が吸着する事もあり得る。
【0063】
そして、前記キャリア基材の絶縁性突起部3を形成した面に対し金属メッキを行うと、図9(2)に示すように、前記キャリア基材2の絶縁性突起部3以外の領域に金属メッキ層が析出し、キャリア基材2の表面に孔開き電解金属箔1となる層が形成され、キャリア基材付孔開き電解金属箔10となる。この剥離層6を設けることで、孔開き電解金属箔1をキャリア基材2から引き剥がすことが可能で、引き剥がすことによって図9(3)に示す如きように、微細貫通孔7を備える孔開き電解金属箔1が得られる。
【0064】
次に、孔開き電解金属箔となる層を形成するために用いるメッキ方法に関して説明する。孔開き電解金属箔の構成成分は、上述のように、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナ、又はこれらの合金、又は銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナのいずれかを組み合わせた積層構造のいずれかを備えるものであり、所望のメッキが出来る限り、浴組成、メッキ条件等を任意に変更することが可能であり、特段の限定は要さない。また、孔開き電解金属箔の厚さは、電解メッキの電析時間を変更することにより調整される。一例として、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成するメッキ操業に用いることの出来るメッキ液組成、条件等を以下に例示する。
【0065】
最初に、孔開き電解金属箔を単一の金属成分にて構成する場合に関して述べる。孔開き電解金属箔を金又は銀で構成する場合には、一般的に用いられるシアン浴、非シアン浴のいずれをも使用することが可能である。好ましくは、非シアン浴を用いることが好ましい。シアン浴では、剥離層として有機系剥離層を採用した場合、その損傷が大きく、予め厚めの有機剥離層を形成する等の製造上の留意点が増え、工程管理が煩雑化する傾向が有るからである。
【0066】
孔開き電解金属箔を銅で構成する場合には、銅メッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、浴組成を、CuSO4・5H2O濃度180g/L〜240g/L及びH2SO4濃度180g/L〜210g/L、15〜30A/dm2の電流密度、浴温を30〜50℃等をメッキ条件として設定する等である。その他、ピロリン酸カリウム浴等を用いる等である。
【0067】
孔開き電解金属箔をスズで構成する場合には、スズメッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、(i)硫酸第1スズを用いたスズ濃度が5〜30g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、(ii)硫酸第1スズを用いたスズ濃度が20〜40g/L、硫酸濃度70〜150g/L、液温20〜35℃、クレゾールスルホン酸濃度70〜120g/L、ゼラチン濃度1〜5g/L、ベータナフトール濃度0.5〜2g/L、電流密度0.3〜3A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0068】
孔開き電解金属箔をニッケルで構成する場合には、ニッケルメッキ液として用いられる溶液を広く使用することが可能である。例えば、(i)硫酸ニッケルを用いニッケル濃度が5〜30g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、(ii)硫酸ニッケルを用いたニッケル濃度5〜30g/L、ピロリン酸カリウム濃度50〜500g/L、液温20〜50℃、pH8〜11、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、(iii)硫酸ニッケルを用いたニッケル濃度10〜70g/L、ホウ酸濃度20〜60g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度1〜50A/dm2をメッキ条件として設定することが好ましい。またその他一般のワット浴等のメッキ条件として用いる等である。
【0069】
また、ニッケルの場合、リン酸系溶液を用いることで、ニッケル−リン合金メッキとすることも可能である。この場合、硫酸ニッケル濃度120〜180g/L、塩化ニッケル濃度35〜55g/L、H3PO4濃度30〜50g/L、H3PO3濃度20〜40g/L、液温70〜95℃、pH0.5〜1.5、電流密度5〜50A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0070】
孔開き電解金属箔をコバルトで構成する場合には、コバルトメッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、(i)硫酸コバルトを用い、コバルト濃度5〜30g/L、クエン酸三ナトリウム濃度50〜500g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度0.3〜10A/dm2を条件として、(ii)硫酸コバルトを用い、コバルト濃度5〜30g/L、ピロリン酸カリウム濃度50〜500g/L、液温20〜50℃、pH8〜11、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、(iii)硫酸コバルトを用いたコバルト濃度10〜70g/L、ホウ酸20〜60g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度1〜50A/dm2をメッキ条件として用いる等である。
【0071】
孔開き電解金属箔を鉛で構成する場合には、鉛メッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、ホウフッ化鉛濃度250〜400g/L、ホウフッ化水素酸濃度30〜50g/L、ホウ酸濃度10〜30g/L、膠濃度0.1〜0.5g/L、ベータナフトール濃度0.1〜1.0g/L、液温25〜50℃、電流密度1〜5A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0072】
孔開き電解金属箔を鉄で構成する場合には、鉄メッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、(i)硫酸第1鉄を用いた鉄濃度10〜60g/L、液温25〜50℃、pH2.5以下、電流密度1〜20A/dm2の条件、(ii)硫酸第1鉄濃度200〜300g/L、塩化第1鉄濃度35〜50g/L、液温40〜60℃、pH3.5〜5.5、電流密度1〜20A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0073】
孔開き電解金属箔を鉛で構成する場合には、プラチナメッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、6〜10g/L濃度の(NH4)2PtCl及び100〜140g/L濃度のNa2HPO4・12H2Oからなる溶液を用い、液温40〜70℃、電流密度0.2〜0.6A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0074】
次に、孔開き電解金属箔を合金メッキによって合金成分にて構成する場合に関して述べる。この合金メッキとしては、多くの合金組成を考えることが出来るため、以下には一例を示すのみとする。例えば、孔開き電解金属箔を銀−パラジウム合金で構成する場合には、銀−パラジウム合金メッキとして、シアン化銀カリウム、塩化パラジウム、酸性ピロリン酸カリウム、及びチオシアン酸カリウムを含む電解メッキ浴等の公知のメッキ浴及びメッキ条件を用いればよい。
【0075】
孔開き電解金属箔をニッケル−亜鉛合金で構成する場合には、硫酸ニッケルを用いニッケル濃度1〜2.5g/L、ピロリン酸亜鉛を用いて亜鉛濃度0.1〜1g/L、ピロリン酸カリウム濃度50〜500g/L、液温20〜50℃、pH8〜11、電流密度0.3〜10A/dm2等の条件が好ましい。
【0076】
孔開き電解金属箔をニッケル−コバルト合金で構成する場合には、硫酸コバルト濃度80〜180g/L、硫酸ニッケル濃度80〜120g/L、ホウ酸濃度20〜40g/L、塩化カリウム濃度10〜15g/L、リン酸2水素ナトリウム濃度0.1〜15g/L、液温30〜50℃、pH3.5〜4.5、電流密度1〜10A/dm2等の条件が好ましい。
【0077】
孔開き電解金属箔をニッケル−リン合金で構成する場合には、硫酸ニッケル120〜180g/l、塩化ニッケル35〜55g/l、H3PO430〜50g/l、H3PO320〜40g/l、液温70〜95℃、pH0.5〜1.5、電流密度5〜50A/dm2の条件等が好ましい。
【0078】
孔開き電解金属箔を鉛−スズ合金で構成する場合には、硫酸第1スズ20〜40g/l、酢酸鉛15〜25g/l、ピロリン酸ナトリウム100〜200g/l、EDTA・2ナトリウム15〜25g/l、PEG−3000 0.8〜1.5g/l、ホルマリン37%水溶液0.3〜1ml/l、液温45〜55℃、pH8〜10、電流密度5〜20A/dm2の条件等が好ましい。
【0079】
孔開き電解金属箔を鉄−ニッケル−コバルト合金で構成する場合には、硫酸コバルト50〜300g/l、硫酸ニッケル50〜300g/l、硫酸第1鉄50〜300g/l、ホウ酸30〜50g/l、液温45〜55℃、pH4〜5、電流密度1〜10A/dm2の条件等が好ましい。
【0080】
さらに、孔開き電解金属箔を複数の金属層で構成しようとする場合には、種々の金属メッキ、例えば、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、又はプラチナのいずれかを順序よくッキして、複数層の積層構造を構成する。このときのメッキ浴組成及び条件は、上述の単一層を構成するメッキ方法を順に採用すればよいため、ここでの説明は省略する。
【0081】
以上のようにして製造した孔開き電解金属箔は、その長期保存性を確保するため、最表面に防錆処理を施すことが好ましい。ここで言う防錆層は、クロメート、亜鉛、又はBTA等のトリアゾール化合物による層を適用することができる。この防錆層の形成に関しては、公知の手法の全てを用いる事が可能である。
【0082】
孔開き電解金属箔の製造方法: 本件発明に係る孔開き電解金属箔の製造方法は、上述のいずれかのキャリア基材付孔開き電解金属箔のキャリア基材を除去するという概念を特徴としたものである。キャリア基材は、そのキャリア基材自体を電極(陰極)として用いて、その表面に孔開き電解金属箔を構成する金属成分を析出させるように使用される。従って、電解法で孔開き電解金属箔の形成後にキャリア基材を除去すれば、孔開き電解金属箔となる。
【0083】
このときのキャリア基材の除去は、図9(e)に示すように、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層が存在すれば、孔開き電解金属箔とキャリア基材とを引き剥がして分離することが可能である。このとき、孔開き電解金属箔1の微細貫通孔7内に絶縁性突起部3が残留する場合には、アルカリ系溶液で膨潤して除去することが好ましい。これに対し、図7(b)に示すように、孔開き電解金属箔1とキャリア基材2との間に剥離層6が存在しない場合には、エッチング法によりキャリア基材2を溶解除去することで、図7(c)に示すように孔開き電解金属箔1を得ることが可能である。係る場合、孔開き電解金属箔1側の表面の全体をエッチングレジストで被覆して、キャリア基材2側からエッチングを行うことが好ましい。そして、孔開き電解金属箔1が銅で、キャリア基材2がニッケルの場合のように、銅を溶解させることなく、ニッケルのみを溶解させる選択エッチング液を採用することも好ましい。係る場合、孔開き電解金属箔の表面の全体をエッチングレジストで被覆する必要が無くなるからである。
【0084】
また、孔開き電解金属箔3をキャリア基材2から剥離する方法として、キャリア基材付孔開き電解金属箔10の状態で、アルカリ系溶液に浸漬し、孔開き電解金属箔1の微細貫通孔7内を埋設した絶縁性突起部3を膨潤除去し、その後、キャリア基材2を除去して、孔開き電解金属箔1とすることも可能である。
【0085】
また、孔開き電解金属箔がキャリア基材から引き剥がされた後に、防錆処理を施すことにより、当該孔開き電解金属箔の両面に防錆処理を施し、より確実な耐酸化性を得ることが出来長期保存性を確実なものとできる。なお、図面中では、防錆処理層の記述は省略している。
【実施例1】
【0086】
この実施例では、上記キャリア基材(A)として、単一層の金属箔(35μm厚の銅箔)を希硫酸で酸洗し、その後水洗し、乾燥して清浄化を行った。次に、酸洗後の当該銅箔の光沢面に、20μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。
【0087】
次に、当該レジスト膜上にフォトマスクを配置して、直径25μmの円形状で且つ当該円形状の中心間距離が50μmとなるよう格子状配置となるパターンが形成できるように露光し、現像し、絶縁性突起部を形成した。
【0088】
そして、上記絶縁性突起部が形成されたキャリア基材(銅箔)の、キャリア基材の露出部に、カルボキシベンゾトリアゾールを5g/1濃度で含む水溶液をシャワーリングして、剥離層を形成した。以上のようにして、キャリア基材の孔開き電解金属箔の析出面(以下、単に「析出面」と称する。)を形成した。
【0089】
前記析出面の形成が終了すると、表1に掲げる12種類の電解液及びメッキ条件で、10μm厚の孔開き電解金属箔を析出形成した。なお、アノード電極は不溶性電極(DSE)を使用し、電源は直流電源を使用した(以下同様)。
【0090】
【表1】
【0091】
以上のようにして、当該析出面に金属成分を電析させると、キャリア基材付孔開き電解金属箔となる。そして、その絶縁性突起部の存在位置には、銅電析は起こらず、電析した銅膜は20μm径の微細貫通孔を備える孔開き電解金属箔とキャリア基材とが張り合わせられたキャリア基材付孔開き電解金属箔となった。
【0092】
そこで、キャリア基材付孔開き電解金属箔を、3%濃度の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、孔開き電解金属箔の微細貫通孔内に残留していた絶縁性突起部のレジスト成分を膨潤させ除去し、孔開き電解金属箔を引き剥がした。その結果、図10の拡大模式図として示した如き微細貫通孔7を備える孔開き電解金属箔1を得た。
【0093】
更に、以上のようにして得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)1は、1g/L濃度のベンゾトリアゾール水溶液に10秒間浸漬し、引き上げることにより有機防錆処理を両面に施した。この防錆処理は、条件1、条件8、条件9、条件12の条件で孔開き電解金属箔を形成した場合にのみ行った。
【0094】
この実施例(条件1)により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真を示す。即ち、倍率500倍のSEM観察像を図11に示し、当該孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の微細貫通孔の倍率3000倍のSEM観察像を図12に示した。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。なお、孔開き電解金属箔は写真撮影の便宜上ゴム製のマット上に置いた。よって、あたかもバリや鱗のように見える孔開き電解金属箔の下地の当該ゴム製のマットのSEM写真像は本件発明とは全く無関係であり、箔に美麗な微細貫通孔が形成されていることが理解できる。
【実施例2】
【0095】
この実施例では、上記キャリア基材(B)として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔を用いた。ここで用いたクラッド金属箔をより具体的に言えば、20μm厚さの圧延ニッケル箔の表面に、電解で10μm厚さのコバルト層を設けたものを用いた。このクラッド箔を実施例1と同様に酸洗し、約25μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。そして、以下、実施例1の場合と同様に条件1〜条件12迄に適用したと同様に、表1に掲げる種々の電解液及びメッキ条件で、20μm厚の12種類の孔開き電解金属箔を析出形成した。
【0096】
以上のようにして、当該析出面に金属成分を電析させると、実施例1の場合と同様に、20μm径の微細貫通孔を備える孔開き電解金属箔とキャリア基材とが張り合わせられたキャリア基材付孔開き電解金属箔となり、そのキャリア基材付孔開き電解金属箔から、キャリア基材を除去し、孔開き電解金属箔を得た。なお、得られた孔開き電解金属箔に対する防錆処理は、条件1、条件8、条件9、条件12の条件で孔開き電解金属箔を形成した場合にのみ行った。
【0097】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【実施例3】
【0098】
この実施例では、上記キャリア基材(C)として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔を用いた。ここで用いたクラッド金属箔をより具体的に言えば、10μm厚さの圧延ニッケル箔の片面に、カルボキシベンゾトリアゾールを5g/1濃度で含む水溶液をシャワーリングしてキャリア基材内剥離層を形成し、そのキャリア基材内剥離層上に、条件5のニッケル電解液とメッキ条件とで10μm厚さのニッケル層を設けたものを用いた。このクラッド箔を実施例1と同様に酸洗し、約25μm厚のドライフィルムをラミネータにより、当該クラッド箔の両面に貼り付け、レジスト膜を形成した。そして、以下、実施例1の場合と同様に、クラッド箔の両面に絶縁性突起部を設け、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間の剥離層を形成し、条件1〜条件12迄に適用したと同様に、表1に掲げる種々の電解液及びメッキ条件で、当該クラッド箔の両面に20μm厚の12種類の孔開き電解金属箔をキャリア基材上に析出形成した。
【0099】
以上のようにして、当該析出面に金属成分を電析させると、20μm径の微細貫通孔を備える孔開き電解金属箔が、キャリア基材の両面に張り合わせられたキャリア基材付孔開き電解金属箔となる。そして、ニッケル層とニッケル層との中間にあるキャリア基材内剥離層から分離することにより、2枚の孔開き電解金属箔/剥離層(但し、絶縁性突起部とキャリア基材との間には剥離層は無い)/ニッケル層(キャリア基材として機能)が得られた。この実施例では、これをキャリア基材付孔開き電解金属箔と称する。
【0100】
そして、このキャリア基材付孔開き電解金属箔から、キャリア基材を除去し、孔開き電解金属箔を得た。なお、得られた孔開き電解金属箔に対する防錆処理は、条件1、条件8、条件9、条件12の条件で孔開き電解金属箔を形成した場合にのみ行った。
【0101】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【実施例4】
【0102】
この実施例では、上記キャリア基材(D)として、実施例1で用いた単一層の金属箔(35μm厚の銅箔)の片面に、予め剥離層を形成したものを用いた。従って、当該剥離層は、キャリア基材と絶縁性突起部との間にも存在する。そして、このキャリア基材(D)を用いる場合には、実施例1で用いた酸洗処理及び剥離層の事後的形成は省略した。即ち、その剥離層上に20μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。以下、実施例1と同様にして、絶縁性突起部を形成し、この表面を孔開き電解金属箔の析出面(以下、単に「析出面」と称する。)とした。
【0103】
そして、前記析出面の形成が終了すると、表1に掲げる12種類の電解液及びメッキ条件で、10μm厚の孔開き電解金属箔を析出形成した。以下、実施例1と同様にして、キャリア基材付孔開き電解金属箔を得て、更に孔開き電解金属箔を得た。
【0104】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【実施例5】
【0105】
この実施例では、上記キャリア基材(E)として、実施例2で用いた20μm厚さの圧延ニッケル箔の表面に、電解で10μm厚さのコバルト層を設け、そのコバルト層上に、予め剥離層を形成したものを用いた。従って、当該剥離層は、キャリア基材と絶縁性突起部との間にも存在する。そして、このキャリア基材(E)を用いる場合には、実施例1で用いた酸洗処理及び剥離層の事後的形成は省略した。即ち、その剥離層上に25μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。以下、実施例2と同様にして、絶縁性突起部を形成し、この表面を孔開き電解金属箔の析出面(以下、単に「析出面」と称する。)とした。
【0106】
そして、前記析出面の形成が終了すると、表1に掲げる12種類の電解液及びメッキ条件で、10μm厚の孔開き電解金属箔を析出形成した。以下、実施例2と同様にして、キャリア基材付孔開き電解金属箔を得て、更に孔開き電解金属箔を得た。
【0107】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【実施例6】
【0108】
この実施例では、上記キャリア基材(F)として、実施例3で用いた10μm厚さの圧延ニッケル箔の片面に、カルボキシベンゾトリアゾールを5g/1濃度で含む水溶液をシャワーリングしてキャリア基材内剥離層を形成し、そのキャリア基材内剥離層上に、条件5のニッケル電解液とメッキ条件とで10μm厚さのニッケル層を設けたものを用い、その両面に予め剥離層を形成したものを用いた。従って、当該剥離層は、キャリア基材と絶縁性突起部との間にも存在する。そして、このキャリア基材(F)を用いる場合には、実施例1で用いた酸洗処理及び剥離層の事後的形成は省略した。即ち、その両面の剥離層上に25μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。以下、実施例3と同様にして、両面に絶縁性突起部を形成し、この両面を孔開き電解金属箔の析出面(以下、単に「析出面」と称する。)とした。
【0109】
そして、前記析出面の形成が終了すると、表1に掲げる12種類の電解液及びメッキ条件で、10μm厚の孔開き電解金属箔を両面に析出形成した。以下、実施例3と同様にして、キャリア基材付孔開き電解金属箔を得て、更に孔開き電解金属箔を得た。
【0110】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本件発明に係る孔開き電解金属箔は、微細貫通孔を設計に応じた任意の形状、単位面積あたり任意の個数で作り込むことが可能である。従って、種々の広範な用途での使用が可能となる。例えば、電池等の集電体又は化学反応を促進する触媒の担持体、超微粉用のスクリーン装置、クリーンルーム用の防塵・気体用フィルター(特に導電性の孔開き金属箔にあっては静電気により集塵が可能)、浄水器用フィルター(特に強磁性体の孔開き電解金属箔にあっては磁力を当該金属箔に施されたフィルターを介した飲料水が作製可能)、抗菌用フィルター、電磁シールド(特に導電性の孔開き金属箔)、微生物保管用ボックスの通気孔用ネット、マット内部又は下部に孔開き金属箔が配置され当該箔がアース接続された静電気発生防止用マット、撥水性かつ通気性があるテフロン(登録商標)系素材等の服地間に孔開き金属箔が挟持された服地、その他広範囲の産業上の利用分野に適用可能である。
【0112】
そして、本件発明に係る孔開き電解金属箔は、キャリア基材付孔開き電解金属箔の形態で市場に提供することが可能で、孔開き電解金属箔が10μm未満の厚さとなっても良好なハンドリング性を確保することが出来、作業効率を大幅に改善することが可能である。しかも、用途によっては、キャリア基材付孔開き電解金属箔の状態そのままで製品に使用することも可能となる。
【0113】
更に、本件発明に係る孔開き電解金属箔及びキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法は、キャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法を基本として、そこからキャリア基材を除去することにより、孔開き電解金属箔が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(A)を用いた場合。)。
【図2】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(B)を用いた場合。)。
【図3】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(C)を用いた場合。)。
【図4】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(D)を用いた場合。)。
【図5】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(E)を用いた場合。)。
【図6】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(F)を用いた場合。)。
【図7】キャリア基材の表面に絶縁性突起部を形成し、孔開き電解金属箔を得るまでの手順を模式的に示した図である。
【図8】キャリア基材の表面に絶縁性突起部を形成する工程を概念的に説明するための図である(レジスト法)。
【図9】キャリア基材の表面に絶縁性突起部を形成し、孔開き電解金属箔を得るまでの手順を模式的に示した図である。
【図10】本件発明に係る孔開き電解金属箔の微細貫通孔の配置を理解するため、平面的に見た場合の概念模式図である。
【図11】本件発明に係る実施例により製造された孔開き電解金属箔の走査顕微鏡観察像の写真(倍率500倍)である。
【図12】本件発明に係る実施例により製造された孔開き電解金属箔に配置された複数の微細貫通孔の走査顕微鏡観察像の写真(倍率300倍)である。
【符号の説明】
【0115】
1 孔開き電解金属箔
2 キャリア基材
3 絶縁性突起部
4 レジスト層
5 フォトマスク
6 剥離層
7 微細貫通孔
10 キャリア基材付孔開き電解金属箔
11 第1金属層
12 第2金属層
20 キャリア基材内剥離層
【技術分野】
【0001】
本件発明は、複数の微細貫通孔を有する孔開き電解金属箔、キャリア基材付孔開き電解金属箔及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の微細貫通孔を持つ孔開き電解金属箔が様々な分野で使われている。例えば、孔開き電解金属箔には燃料電池や二次電池の集電体又は化学反応を促進する触媒の担持体としての用途がある。
【0003】
特に、近年、携帯用PCやビデオカメラ等のポータブル電子機器用電源若しくは電気自動車用の電源として高容量の二次電池の需要が高まっており、二次電池用の集電体として複数の微細貫通孔を持つ孔開き電解金属箔が使用されている。
【0004】
このような市場の需要に応えるべく、箔の厚み方向に通じる微細貫通孔が形成された多孔質の電解金属箔が種々提案されている(特許文献1、2、及び3参照)。
【0005】
しかし、これらの特許文献に開示されている各製造方法による多孔質電解金属箔(孔開き電解金属箔)の微細貫通孔は製造上制御ができずランダムに(無作為に)形成されている。すなわち、当該特許文献に開示されている各製造方法によれば、意図的に微細貫通孔のサイズ、形状、位置、深さ、及び微細貫通孔の単位面積あたりの個数等のパラメータを任意に制御することができない。
【特許文献1】特開平08−236120号公報
【特許文献2】特開昭50−141540号公報
【特許文献3】特開昭62−240787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、孔開き電解金属箔においては、ナノテクノロジー等の技術の急速かつ革新的進歩に伴う用途に応じて、当該微細貫通孔のサイズ、形状、位置、深さ、及び微細貫通孔の単位面積あたりの個数等のパラメータを合目的的に変化させたりすることで、より精度の高い微細貫通孔の形成が必要とされる場合が生じている。従って、この要求に合致した孔開き電解金属箔の提供及び提供手段が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本件発明者等は鋭意検討の結果、孔開き電解金属箔において、当該微細貫通孔のサイズ、形状、位置、深さ、及び微細貫通孔の単位面積あたりの個数等並びに当該孔開き電解金属箔の種類及び厚さを任意に制御可能な孔開き電解金属箔及び当該孔開き電解金属箔の製造方法を提供すべく、以下の発明に想到した。
【0008】
孔開き電解金属箔: 本件発明に係る孔開き電解金属箔は、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔であって、当該孔開き電解金属箔の一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるように、該金属面の他面側に貫通した複数個の微細貫通孔を備えることを特徴とするものである。
【0009】
そして、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成する成分は、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナ、又はこれらの合金、又は銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナのいずれかを組み合わせた積層構造のいずれかを備える物とすることが可能である。
【0010】
また、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成する電解金属箔上には、防錆層を備えるものとして、長期保存性を確保するための防食性能の向上を図ることも可能である。
【0011】
キャリア基材付孔開き電解金属箔: 本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられた状態であることを特徴とするものである。
【0012】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔においては、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層を設ける事が好ましい。この剥離層に関しては、後述する。
【0013】
また、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔においては、前記キャリア基材として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又はクラッド金属板を用いることで、孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるようにすることも出来る。
【0014】
更に、前記孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)のいずれかの層間に少なくとも一つの剥離層等を設ける事も好ましい。この剥離層等に関しては後述する。
【0015】
キャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法: 本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法は、以下の工程a及び工程bを含むことを特徴とするものである。
【0016】
工程a.キャリア基材の表面に絶縁性突起部を複数箇所に形成する突起部形成工程;
工程b.前記キャリア基材の絶縁性突起部を形成した面に対し金属メッキを行い、前記キャリア基材の絶縁性突起部以外の領域に金属メッキ層を析出形成させ、キャリア基材表面に孔開き電解金属箔を形成し、キャリア箔付孔開き電解金属箔とする電析工程;
【0017】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法において、前記工程aで用いるキャリア基材は、以下に示すキャリア基材(A)〜キャリア基材(F)のいずれかを用いることが好ましい。
【0018】
キャリア基材(A): 単一層の金属箔又は金属板。
キャリア基材(B): 第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(C): 第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(D): 剥離層を表面に設けた単一層の金属箔又は金属板。
キャリア基材(E): 剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(F): 剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
【0019】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法において、前記工程aで用いる基材に前記キャリア基材(A)〜キャリア基材(C)のいずれかを用いる場合であって、前記工程aと前記工程bとの間に剥離層形成工程を設ける事も好ましい。
【0020】
本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法で用いる前記剥離層は、銅、ニッケル、クロムを含む金属系剥離層又はトリアゾール化合物を含む有機系剥離層とすることが好ましい。
【0021】
そして、前記工程a(突起部形成工程)で形成する絶縁性突起部は、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、及び凹版印刷法のいずれかによって形成したものである事が好ましい。
【0022】
また、前記工程a(突起部形成工程)で形成する絶縁性突起部は、感光性フィルムを用いて形成したものであることも好ましい。
【0023】
そして、前記工程b.(電析工程)における金属メッキは、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナのいずれかの金属メッキ、又は、これらの合金メッキとすることが好ましい。
【0024】
また、前記工程b.(電析工程)における金属メッキは、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナのいずれかから選ばれる金属メッキ層を複数積層させる事も好ましい。
【0025】
孔開き電解金属箔の製造方法: 本件発明に係る孔開き電解金属箔の製造方法は、上述のいずれかのキャリア基材付孔開き電解金属箔のキャリア基材を除去するという概念を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0026】
本件発明に係る孔開き電解金属箔は、その微細貫通孔のサイズ、位置、形状等を任意に調整することが可能である。従って、当該微細貫通孔を透過させる対象として、気体、固体、又は液体のいずれに対しても適用可能であり、必要とされるあらゆる分野の用途に応ずることが可能となる。従って、電池等の集電体又は化学反応を促進する触媒の担持体、微粉分級用スクリーン装置、固液分離処理用のスクリーン装置、微生物保管用容器の酸素供給口に使用されるネット、クリーンルーム用防塵フィルター、液体抗菌フィルター、液体に金属イオンを付与し飲料水等の液体を改質するための液体改質用フィルター、電磁波シールド、服地用材料、磁性用材料、導電用材料、その他の広範囲な分野に使用可能なものである。
【0027】
また、キャリア基材付孔開き電解金属箔の構成を採用することにより、10μm未満の薄い孔開き電解金属箔に対する要求があっても対応可能である。孔開き電解金属箔を支持するキャリア基材の存在により、薄い孔開き電解金属箔のハンドリング性を容易に改善でき、工程内での孔開き電解金属箔の汚染、キズ発生を防止する。
【0028】
更に、本件発明に係る孔開き電解金属箔は、最初にキャリア基材表面に電析形成し、剥ぎ取ることにより容易に製造することが可能であり、工業的生産に適した確実な製造方法であるため、高い生産歩留まりを確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
<孔開き電解金属箔>
本件発明に係る孔開き電解金属箔の形態に関して説明する。上述のように、本件発明に係る孔開き電解金属箔は、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔であって、当該孔開き電解金属箔の一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるように、該金属面の他面側に貫通した複数個の微細貫通孔を備えることを特徴とするものである。ここで明記しておくが、後述の製造方法からも明らかなように、当該孔開き電解金属箔は、電解法で直接製造されるものであり、従来の無孔金属箔に対して事後的に開孔処理することにより得られる金属箔(例えばパンチングメタル)と区別されることに留意されたい。
【0030】
上記孔開き電解金属箔の厚さに関しては、特段の限定はない。しかしながら、電解法で製造するものであることを考えれば、厚さ1μm〜400μmの範囲というのが常識的である。次に、微細貫通孔について述べる。ここで言う微細貫通孔は、後述するように、金属の電析膜を形成する際に、電析障害となる絶縁性の突起を形成し、その突起部に電析を起こさせず、その突起箇所が微細貫通孔を形成するものである。従って、突起部の高さ、断面サイズ等の形成精度により、微細貫通孔のサイズが左右される。従って、工業的な生産安定性から見れば、微細貫通孔の径は1μm〜300μmの範囲で形成することが好ましい。そして、本件発明に係る孔開き電解金属箔の用途、要求品質に応じて、適宜微細貫通孔のサイズ、及び、箔厚の調整を行えばよいのである。例えば、孔開き銅箔の場合には、市場要求として3μm〜35μmの厚さの銅箔であって、当該銅箔の片面からもう一方の面に貫通する微細貫通孔の直径が10μm〜200μm程度の略円形である製品に対する要求がある。
【0031】
また、当該微細貫通孔は、一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるように、該金属面の他面側に貫通した複数個の微細貫通孔として存在することが好ましい。このような状態の微細貫通孔であることが、微細貫通孔経路が最も短く、リチウムイオン二次電池の負極形成材として用いた場合には、イオン移動を容易として好ましい。これに対し、例えば、電解金属箔の基準面から他面に到る微細貫通孔が、基準面から見て、ある程度斜めに形成された場合、またある程度の蛇行をした場合をも含む概念として記載している。また、金属箔の表面に現れる微細貫通孔の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、楕円形状、長方形状、菱形状、又はスリット状等の種々の形状で形成することができる。ただし、孔開き電解金属箔を金属板状キャリアから剥離する際に孔開き電解金属箔が剥離し易く、よって破損しにくいような円形、楕円形若しくは卵形の断面形状のように微細貫通孔形状の外縁に凸部がない滑らかな曲線で囲まれた断面形状であることが望ましい。
【0032】
更に、箔の面内における当該微細貫通孔の配置は、用途を考慮して、微細貫通孔密度(単位面積中にある微細貫通孔の個数)、微細貫通孔の配列の規則性又は不規則性が決定される。従って、この微細貫通孔は、一定のピッチ間隔で配置させたり、まったくランダムのピッチ間隔としても良い。また、電解金属箔のある一定領域において当該微細貫通孔密度を高くする又は低くする等の設計も可能である。
【0033】
そして、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成する成分は、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナ、又はこれらの合金、又は銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナのいずれかを組み合わせた積層構造のいずれかを備えるものとすることが可能である。即ち、i)銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナの群から選ばれる1種の単一の金属層からなる孔開き電解金属箔とするか、ii)銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナの群から選ばれる2種以上の銅−錫合金、ニッケル−銅合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−鉄合金、金−プラチナ合金、ニッケル−銀合金等の合金層からなる孔開き電解金属箔とするか、iii)銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナの群から選ばれる2種以上の成分を2層以上のクラッド状態とした孔開き電解金属箔とするかである。
【0034】
また、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成する電解金属箔上には、防錆層を備えるものとして、長期保存性を確保するための防食性能の向上を図ることも可能である。この防錆には有機防錆又は無機防錆を採用することが可能である。有機防錆には、ベンゾトリアゾール、イミダゾール等のトリアゾール化合物を用いることが、長期保存性及び電気的障害とならないことから好ましい。一方、無機防錆の場合には、銅に対する亜鉛等、孔開き電解金属箔の構成金属成分を考慮して、犠牲防食効果を発揮する金属成分を防錆成分として用いる。
【0035】
キャリア基材付孔開き電解金属箔: 本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられたことを特徴とするものである。このキャリア基材が存在し、孔開き電解金属箔を支持することで、孔開き電解金属箔が10μm未満の厚さで、折れ、シワの発生がしやすいものであっても、ハンドリング性が飛躍的に向上する。また、孔開き電解金属箔の層は、キャリア箔の片面のみでも、キャリア箔の両面に存在しても良い。
【0036】
本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔を、最も簡潔に言い表せば、厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられた状態にあることを特徴とするものである。そして、前記キャリア基材付孔開き電解金属箔において、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層を設ける事も有用である。
【0037】
更に、前記キャリア基材として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又はクラッド金属板を用いることも可能で、孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあることを特徴とするキャリア基材付孔開き電解金属箔となる。そして、前記孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)のいずれかの層間に少なくとも一つの剥離層等を設ける事も可能である。
【0038】
ここで言う、キャリア基材とは、箔状態又は板状態のもので、孔開き電解金属箔を電解析出しようとしたときには陰極としての機能を果たすものである。そして、社会通念を考慮して、本件発明では、厚さが300μm未満のものを「箔」、厚さ300μm以上のものを「板」と称することとする。このキャリア基材を構成する材質は、孔開き電解金属箔の製造時にはキャリア基材自体を陰極に分極して、その表面に電析させて形成するため、導電性を備える限り特段の材質限定は必要ない。従って、銅、チタン、アルミニウム、ステンレス等の箔や板である金属素材、プラスチック材の表面を金属成分でコーティングした素材(例えば、プラスチックフィルムの両面若しくは片面に金属導電層を備える構成のもの等)等を使用することが可能である。しかしながら、このキャリア基材には、金属材質を用いるのが一般的である。このキャリア基材に関しては、以下のキャリア基材(A)〜キャリア基材(F)のいずれかを用いることが好ましい。
【0039】
キャリア基材(A)は、単一層の金属箔又は金属板である。キャリア基材(A)を用いることで、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、孔開き電解金属層(箔)/金属箔(又は金属板)の層構成を備えるものとなる。そして、このキャリア基材(A)の表面に孔開き電解金属箔を備えた状態を図1に示している。図1(a)はキャリア基材2の片面に孔開き電解金属箔1がある状態を模式的に示している。そして、図1(b)はキャリア基材2の両面に孔開き電解金属箔1がある状態を模式的に示している。図面中には、絶縁性突起部3を明示している。
【0040】
キャリア基材(B)は、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板である。そして、最も単純には、第1金属層と第2金属層とを積層した2層状態のクラッド金属箔又は金属板であり、この形態を図面を用いて説明する。キャリア基材(B)を用い、孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/第2金属層の層構成を備えるものとすると、このような2層状態のクラッド金属箔又は金属板は、いずれか一方の層を導電性に優れた銅又は銀等の層として電解時の通電用途に用い、他方の層を機械的強度の高いニッケル、コバルト又はこれらの合金とする等して、キャリア基材自体の導電性と強度を確保するために好ましい。そして、このキャリア基材(B)の表面に孔開き電解金属箔を備えた状態を図2に示している。図2(a)はキャリア箔の片面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。そして、図2(b)はキャリア箔の両面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。このときの第1金属層と第2金属層とは、同一材質でも異種金属材質であっても構わない。なお、明記しておくが、第1金属層〜第n金属層までの全て層は、微量元素量で構成したnmレベルのものではなく、少なくともμmオーダーの厚さを備える層である。
【0041】
キャリア基材(C)は、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板である。そして、最も単純には、第1金属層/キャリア基材内剥離層/第2金属層の3層状態のクラッド金属箔又は金属板であり、この構成を図面に用いて説明する。キャリア基材(C)を用い、孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/キャリア基材内剥離層/第2金属層の層構成を備えるものとした状態を図3に示している。図3(a)はキャリア箔の片面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。そして、図3(b)はキャリア箔の両面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。このときの第1金属層と第2金属層とは、同一材質でも異種金属材質であっても構わない。そして、当該キャリア基材内剥離層は、第1金属層と第2金属層との間で剥離するために用いるもので前記キャリア基材内剥離層から分離することで、2枚のキャリア基材付孔開き電解金属箔を得ることが出来る。なお、明記しておくが、第1金属層〜第n金属層までの全て層は、微量元素量で構成したnmレベルのものではなく、少なくともμmオーダーの厚さを備える層である。
【0042】
キャリア基材(D)は、剥離層を表面に設けた単一層の金属箔又は金属板である。キャリア基材(D)を用いることで、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、孔開き電解金属層(箔)/剥離層/金属箔(又は金属板)の層構成を備えるものとなる。即ち、キャリア基材(A)の表面に予め剥離層を設けたものであり、当該剥離層は、キャリア基材と孔開き電解金属箔とを引き剥がして剥離するために用いるものである。このキャリア基材(C)の表面に孔開き電解金属箔を備えた状態を図4に示している。図4(a)はキャリア箔の片面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。そして、図4(b)はキャリア箔の両面に孔開き電解金属箔がある状態を模式的に示している。後者の場合は、2枚の孔開き電解金属箔を一度に得ることが出来る。
【0043】
キャリア基材(E)は、剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板である。そして、最も単純には、剥離層/第1金属層/第2金属層の3層状態のクラッド金属箔又は金属板である。このキャリア基材(E)を用いることで、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、孔開き電解金属層(箔)/剥離層/第1金属層/第2金属層の層構成を備えるものとなる。即ち、キャリア基材(B)の表面に予め剥離層を設けたものであり、当該剥離層は、キャリア基材と孔開き電解金属箔とを引き剥がして剥離するために用いるものである。
【0044】
キャリア基材(F)は、剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板である。そして、最も単純には、剥離層/第1金属層/キャリア基材内剥離層/第2金属層の4層状態のクラッド金属箔又は金属板である。キャリア基材(F)を用いることで、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔は、孔開き電解金属層(箔)/剥離層/第1金属層/キャリア基材内剥離層/第2金属層の層構成を備えるものとなる。即ち、キャリア基材(C)の表面に予め剥離層を設けたものであり、当該剥離層は、キャリア基材と孔開き電解金属箔とを引き剥がして剥離するために用いるものである。
【0045】
本件発明に於いて単に「剥離層」と称しているのは、キャリア基材と孔開き電解金属箔との間の剥離層であり、「キャリア基材内剥離層」というのはキャリア基材の内部に存在する剥離層のことである。従って、以上及び以下に於いて、「剥離層」及び「キャリア基材内剥離層」を含めて言う場合には「剥離層等」と称する。剥離層等は、無機系剥離層又は有機系剥離層のいずれかを用いることが好ましい。この剥離層等は、剥離層等を境にして層間での分離が可能なように設けるものである。剥離層等を無機系剥離層として用いるには、クロムメッキ、ニッケルメッキ、鉛メッキ、クロメート処理等を用いることが好ましい。そして、剥離層等を有機系剥離層として用いるには、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いて形成したものが好ましい。
【0046】
有機系剥離層を構成する成分を、より具体的に言えば、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のうち、窒素含有有機化合物には、置換基を有する窒素含有有機化合物を含んでいる。具体的には、窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等を用いることが好ましい。
【0047】
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール、チオシアヌル酸及び2−ベンズイミダゾールチオール等を用いることが好ましい。
【0048】
カルボン酸は、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。以上に述べてきた剥離層に関する概念は、本件発明で言う剥離層全てに適用できる。
【0049】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔においては、上述のキャリア基材(D)、キャリア基材(E)、キャリア基材(F)のいずれかを用いた場合のように、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層が位置するものとして、キャリア基材と孔開き電解金属箔とを引き剥がして剥離するために用いる事が好ましい。エッチング法でキャリア基材を溶解剥離することも可能であるが、製造コストの上昇に繋がるからである。
【0050】
以上に述べてきたいずれかのキャリア基材及び剥離層と孔開き電解金属箔とを一定の積層構造をもって、組み合わせたものが、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔である。
【0051】
キャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法: 本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法は、以下の工程a及び工程bを含むことを特徴とする。
【0052】
工程a.: この突起部形成工程は、キャリア基材の表面に絶縁性突起部を複数箇所に形成する工程である。キャリア基材とは、上述のように箔状若しくは板状のものである。このキャリア基材2の表面(片面若しくは両面)に、絶縁性突起部3を形成する。図7(a)にキャリア基材2の表面に絶縁性突起部3を形成した断面を模式的に示す。また、絶縁性突起部3の横断面形状は、円形、矩形、菱形、楕円形、スリット形状等の種々の形状の適用が可能である。また、絶縁性突起部3には、キャリア基材2の表面から上方に向かってやや先細りのテーパー付けが行われても良い。これによってキャリア基材2から孔開き電解金属箔1が剥離し易くなる。
【0053】
このときの絶縁性突起部3の形成方法には、複数の手段を採用することが可能である。その一つが印刷法を用いて絶縁性突起部を形成する方法である。例えば、熱硬化性樹脂インクを用いて、前記キャリア基材の表面に印刷法で絶縁性突起部を形成し、加熱硬化させれば、当該絶縁性突起部を形成することが可能となる。このような印刷法は、当該絶縁性突起部の形状や突起部の配置を自由自在に描くことが容易で、且つ、工程が簡素であり製造コストの削減に大きく寄与する。
【0054】
ここで言う印刷法は、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法のいずれを用いることも可能である。これらの印刷法による絶縁性突起部の形成は常法により行われる。中でも、インクジェット法を用いることが、設計の自由度及び対応能力の点から好ましい。インクジェット法は、キャリア基材の絶縁性突起部を形成する位置情報等をコンピュータ上で設計し、その設計情報をもってインクジェットプリンタを制御して、キャリア基材上の所望の位置に絶縁性突起部を描くことができる。なお、インクジェット法を用いる場合には、インクジェットノズルから噴射されるインクが金属板状キャリア箔1上に形成される際のワンジェット(一噴射)当たりのインク厚が薄いので、より凸部を高くしたい場合は同一パターンで複数回印刷することで所望の高さの絶縁性突起部を得るようにすることが好ましい。また、グラビア印刷法を用いる場合には、形成した絶縁性突起部の形状を安定化を図るためには、装置の持つ特性に合わせた微調整が必要となる点に留意すべきである。
【0055】
また、もう一つの絶縁性突起部3の形成方法に関して説明する。即ち、フォトリソグラフィー技術を利用した方法である。即ち、以下の手順で絶縁性突起部を形成するのである。図8を参照しつつ、以下に説明する。
【0056】
最初に、図8(a)に示すように、キャリア基材2の表面に絶縁性の感光性レジスト層4(以下、単に「レジスト層4」と称する。)を形成するのである。ここで言うレジスト層4には、プリント配線板製造に用いるドライフィルム、液体レジスト等の感光性レジスト材の使用が可能である。ドライフィルムの場合には、ラミネータを用いて、キャリア基材2の表面に貼り付ける。液体レジストの場合には、スピンコーター等を用いて、キャリア基材2の表面にレジスト層3として構成することが好ましい。特に、ドライフィルムは、レジスト材がポリエチレンフィルムとポリエステルフィルムとの間で挟持された構造を持つフィルムであり、プリント配線板のエッチングレジストとして広く使用されている。このドライフィルムは、厚さに種々のバリエーションを持たせることが容易で、最終製品である、孔開き電解金属箔の厚さ幅を広く採ることが容易である。
【0057】
次に、図8(b)に示すように、キャリア基材2の表面に形成したレジスト層4に、所望の絶縁性突起部を形成するため、絶縁性突起部を形成するためフォトマスク5を介して露光する。当該露光には、一般に紫外線(UV光)を用いる(図8(b)では「UV」と記載している。)。
【0058】
そして、前記露光処理されたレジスト層4を現像し、該レジスト層4の不要な部分を除去し前記絶縁性突起部3を形成する。この工程では、不要な部分のレジスト層3をアルカリ溶液(例えば1%〜5%程度の濃度の炭酸ナトリウム溶液等)で除去し、残留したレジスト部が前記絶縁性突起部3の形状を形成する。なお、図8に示した除去方法はネガタイプのレジストを使用した場合である。公知の現像処理を行うことによりポジタイプのレジストを使用した場合は、逆に露光処理されたレジスト層7が除去され、露光処理されていないレジスト層3がレジストマスクとして残存する。
【0059】
なお、絶縁性突起部の形成を行う前に、キャリア基材の表面を、希硫酸又は希硫酸と過酸化水素との混合液等の酸溶液で酸洗し、その後、純水やイオン交換水等の水で水洗し、乾燥させて用いることが好ましい。キャリア基材に対する絶縁性突起部の定着性を確実にするためである。
【0060】
工程b.この工程では、図7(b)として示したように、前記キャリア基材2の絶縁性突起部3を形成した面に対し、キャリア基材2をカソード分極して金属メッキを行い、前記キャリア基材2の絶縁性突起部3以外の領域に金属メッキ層を析出形成させ、キャリア基材2表面に孔開き電解金属箔1を形成し、キャリア箔付孔開き電解金属箔10とする。
【0061】
そして、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法において、キャリア基材は、上述のキャリア基材(A)〜キャリア基材(F)のいずれかを用いることが好ましい。ここでは、キャリア基材(A)〜キャリア基材(F)に関する説明は省略する。なお、キャリア基材は、そのキャリア基材自体を電極(陰極)として用いて、その表面に孔開き電解金属箔を構成する金属成分を析出させるように使用される。そして、必要に応じて、孔開き電解金属箔が基材に張り合わせられる等の加工が終了するまで、孔開き電解金属箔と一体として使用し、ハンドリング性の向上、孔開き電解金属箔の表面を汚染、傷発生から保護するのである。
【0062】
但し、本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法において、前記工程aで用いる基材として、前記キャリア基材(A)〜キャリア基材(C)のいずれかを用いる場合には、前記工程aと前記工程bとの間に剥離層形成工程を設ける事も好ましい。この段階で剥離層形成工程を設けると、図7(a)の状態から図9(1)に示されるように、キャリア基材2の表面の絶縁性突起部の存在しない部位であって、金属メッキ層(孔開き電解金属箔)が形成される予定のキャリア基材表面に、上述したと同様の剥離層6(無機系若しくは有機系剥離層)を形成する。そして、このとき絶縁性突起部3とキャリア基材2との間に剥離層6は存在しない。しかし、厳密に考えれば、無機系剥離層を電解法で形成する場合を除き、有機系剥離層を形成しようとして有機剤をシャワーリング、浸漬法で吸着させようとすると、絶縁性突起部3の表面にも、当該有機剤が吸着する事もあり得る。
【0063】
そして、前記キャリア基材の絶縁性突起部3を形成した面に対し金属メッキを行うと、図9(2)に示すように、前記キャリア基材2の絶縁性突起部3以外の領域に金属メッキ層が析出し、キャリア基材2の表面に孔開き電解金属箔1となる層が形成され、キャリア基材付孔開き電解金属箔10となる。この剥離層6を設けることで、孔開き電解金属箔1をキャリア基材2から引き剥がすことが可能で、引き剥がすことによって図9(3)に示す如きように、微細貫通孔7を備える孔開き電解金属箔1が得られる。
【0064】
次に、孔開き電解金属箔となる層を形成するために用いるメッキ方法に関して説明する。孔開き電解金属箔の構成成分は、上述のように、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナ、又はこれらの合金、又は銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナのいずれかを組み合わせた積層構造のいずれかを備えるものであり、所望のメッキが出来る限り、浴組成、メッキ条件等を任意に変更することが可能であり、特段の限定は要さない。また、孔開き電解金属箔の厚さは、電解メッキの電析時間を変更することにより調整される。一例として、本件発明に係る孔開き電解金属箔を構成するメッキ操業に用いることの出来るメッキ液組成、条件等を以下に例示する。
【0065】
最初に、孔開き電解金属箔を単一の金属成分にて構成する場合に関して述べる。孔開き電解金属箔を金又は銀で構成する場合には、一般的に用いられるシアン浴、非シアン浴のいずれをも使用することが可能である。好ましくは、非シアン浴を用いることが好ましい。シアン浴では、剥離層として有機系剥離層を採用した場合、その損傷が大きく、予め厚めの有機剥離層を形成する等の製造上の留意点が増え、工程管理が煩雑化する傾向が有るからである。
【0066】
孔開き電解金属箔を銅で構成する場合には、銅メッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、浴組成を、CuSO4・5H2O濃度180g/L〜240g/L及びH2SO4濃度180g/L〜210g/L、15〜30A/dm2の電流密度、浴温を30〜50℃等をメッキ条件として設定する等である。その他、ピロリン酸カリウム浴等を用いる等である。
【0067】
孔開き電解金属箔をスズで構成する場合には、スズメッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、(i)硫酸第1スズを用いたスズ濃度が5〜30g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、(ii)硫酸第1スズを用いたスズ濃度が20〜40g/L、硫酸濃度70〜150g/L、液温20〜35℃、クレゾールスルホン酸濃度70〜120g/L、ゼラチン濃度1〜5g/L、ベータナフトール濃度0.5〜2g/L、電流密度0.3〜3A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0068】
孔開き電解金属箔をニッケルで構成する場合には、ニッケルメッキ液として用いられる溶液を広く使用することが可能である。例えば、(i)硫酸ニッケルを用いニッケル濃度が5〜30g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、(ii)硫酸ニッケルを用いたニッケル濃度5〜30g/L、ピロリン酸カリウム濃度50〜500g/L、液温20〜50℃、pH8〜11、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、(iii)硫酸ニッケルを用いたニッケル濃度10〜70g/L、ホウ酸濃度20〜60g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度1〜50A/dm2をメッキ条件として設定することが好ましい。またその他一般のワット浴等のメッキ条件として用いる等である。
【0069】
また、ニッケルの場合、リン酸系溶液を用いることで、ニッケル−リン合金メッキとすることも可能である。この場合、硫酸ニッケル濃度120〜180g/L、塩化ニッケル濃度35〜55g/L、H3PO4濃度30〜50g/L、H3PO3濃度20〜40g/L、液温70〜95℃、pH0.5〜1.5、電流密度5〜50A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0070】
孔開き電解金属箔をコバルトで構成する場合には、コバルトメッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、(i)硫酸コバルトを用い、コバルト濃度5〜30g/L、クエン酸三ナトリウム濃度50〜500g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度0.3〜10A/dm2を条件として、(ii)硫酸コバルトを用い、コバルト濃度5〜30g/L、ピロリン酸カリウム濃度50〜500g/L、液温20〜50℃、pH8〜11、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、(iii)硫酸コバルトを用いたコバルト濃度10〜70g/L、ホウ酸20〜60g/L、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度1〜50A/dm2をメッキ条件として用いる等である。
【0071】
孔開き電解金属箔を鉛で構成する場合には、鉛メッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、ホウフッ化鉛濃度250〜400g/L、ホウフッ化水素酸濃度30〜50g/L、ホウ酸濃度10〜30g/L、膠濃度0.1〜0.5g/L、ベータナフトール濃度0.1〜1.0g/L、液温25〜50℃、電流密度1〜5A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0072】
孔開き電解金属箔を鉄で構成する場合には、鉄メッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、(i)硫酸第1鉄を用いた鉄濃度10〜60g/L、液温25〜50℃、pH2.5以下、電流密度1〜20A/dm2の条件、(ii)硫酸第1鉄濃度200〜300g/L、塩化第1鉄濃度35〜50g/L、液温40〜60℃、pH3.5〜5.5、電流密度1〜20A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0073】
孔開き電解金属箔を鉛で構成する場合には、プラチナメッキ液として用いられる溶液を使用することが可能である。例えば、6〜10g/L濃度の(NH4)2PtCl及び100〜140g/L濃度のNa2HPO4・12H2Oからなる溶液を用い、液温40〜70℃、電流密度0.2〜0.6A/dm2等をメッキ条件として用いる等である。
【0074】
次に、孔開き電解金属箔を合金メッキによって合金成分にて構成する場合に関して述べる。この合金メッキとしては、多くの合金組成を考えることが出来るため、以下には一例を示すのみとする。例えば、孔開き電解金属箔を銀−パラジウム合金で構成する場合には、銀−パラジウム合金メッキとして、シアン化銀カリウム、塩化パラジウム、酸性ピロリン酸カリウム、及びチオシアン酸カリウムを含む電解メッキ浴等の公知のメッキ浴及びメッキ条件を用いればよい。
【0075】
孔開き電解金属箔をニッケル−亜鉛合金で構成する場合には、硫酸ニッケルを用いニッケル濃度1〜2.5g/L、ピロリン酸亜鉛を用いて亜鉛濃度0.1〜1g/L、ピロリン酸カリウム濃度50〜500g/L、液温20〜50℃、pH8〜11、電流密度0.3〜10A/dm2等の条件が好ましい。
【0076】
孔開き電解金属箔をニッケル−コバルト合金で構成する場合には、硫酸コバルト濃度80〜180g/L、硫酸ニッケル濃度80〜120g/L、ホウ酸濃度20〜40g/L、塩化カリウム濃度10〜15g/L、リン酸2水素ナトリウム濃度0.1〜15g/L、液温30〜50℃、pH3.5〜4.5、電流密度1〜10A/dm2等の条件が好ましい。
【0077】
孔開き電解金属箔をニッケル−リン合金で構成する場合には、硫酸ニッケル120〜180g/l、塩化ニッケル35〜55g/l、H3PO430〜50g/l、H3PO320〜40g/l、液温70〜95℃、pH0.5〜1.5、電流密度5〜50A/dm2の条件等が好ましい。
【0078】
孔開き電解金属箔を鉛−スズ合金で構成する場合には、硫酸第1スズ20〜40g/l、酢酸鉛15〜25g/l、ピロリン酸ナトリウム100〜200g/l、EDTA・2ナトリウム15〜25g/l、PEG−3000 0.8〜1.5g/l、ホルマリン37%水溶液0.3〜1ml/l、液温45〜55℃、pH8〜10、電流密度5〜20A/dm2の条件等が好ましい。
【0079】
孔開き電解金属箔を鉄−ニッケル−コバルト合金で構成する場合には、硫酸コバルト50〜300g/l、硫酸ニッケル50〜300g/l、硫酸第1鉄50〜300g/l、ホウ酸30〜50g/l、液温45〜55℃、pH4〜5、電流密度1〜10A/dm2の条件等が好ましい。
【0080】
さらに、孔開き電解金属箔を複数の金属層で構成しようとする場合には、種々の金属メッキ、例えば、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、又はプラチナのいずれかを順序よくッキして、複数層の積層構造を構成する。このときのメッキ浴組成及び条件は、上述の単一層を構成するメッキ方法を順に採用すればよいため、ここでの説明は省略する。
【0081】
以上のようにして製造した孔開き電解金属箔は、その長期保存性を確保するため、最表面に防錆処理を施すことが好ましい。ここで言う防錆層は、クロメート、亜鉛、又はBTA等のトリアゾール化合物による層を適用することができる。この防錆層の形成に関しては、公知の手法の全てを用いる事が可能である。
【0082】
孔開き電解金属箔の製造方法: 本件発明に係る孔開き電解金属箔の製造方法は、上述のいずれかのキャリア基材付孔開き電解金属箔のキャリア基材を除去するという概念を特徴としたものである。キャリア基材は、そのキャリア基材自体を電極(陰極)として用いて、その表面に孔開き電解金属箔を構成する金属成分を析出させるように使用される。従って、電解法で孔開き電解金属箔の形成後にキャリア基材を除去すれば、孔開き電解金属箔となる。
【0083】
このときのキャリア基材の除去は、図9(e)に示すように、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層が存在すれば、孔開き電解金属箔とキャリア基材とを引き剥がして分離することが可能である。このとき、孔開き電解金属箔1の微細貫通孔7内に絶縁性突起部3が残留する場合には、アルカリ系溶液で膨潤して除去することが好ましい。これに対し、図7(b)に示すように、孔開き電解金属箔1とキャリア基材2との間に剥離層6が存在しない場合には、エッチング法によりキャリア基材2を溶解除去することで、図7(c)に示すように孔開き電解金属箔1を得ることが可能である。係る場合、孔開き電解金属箔1側の表面の全体をエッチングレジストで被覆して、キャリア基材2側からエッチングを行うことが好ましい。そして、孔開き電解金属箔1が銅で、キャリア基材2がニッケルの場合のように、銅を溶解させることなく、ニッケルのみを溶解させる選択エッチング液を採用することも好ましい。係る場合、孔開き電解金属箔の表面の全体をエッチングレジストで被覆する必要が無くなるからである。
【0084】
また、孔開き電解金属箔3をキャリア基材2から剥離する方法として、キャリア基材付孔開き電解金属箔10の状態で、アルカリ系溶液に浸漬し、孔開き電解金属箔1の微細貫通孔7内を埋設した絶縁性突起部3を膨潤除去し、その後、キャリア基材2を除去して、孔開き電解金属箔1とすることも可能である。
【0085】
また、孔開き電解金属箔がキャリア基材から引き剥がされた後に、防錆処理を施すことにより、当該孔開き電解金属箔の両面に防錆処理を施し、より確実な耐酸化性を得ることが出来長期保存性を確実なものとできる。なお、図面中では、防錆処理層の記述は省略している。
【実施例1】
【0086】
この実施例では、上記キャリア基材(A)として、単一層の金属箔(35μm厚の銅箔)を希硫酸で酸洗し、その後水洗し、乾燥して清浄化を行った。次に、酸洗後の当該銅箔の光沢面に、20μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。
【0087】
次に、当該レジスト膜上にフォトマスクを配置して、直径25μmの円形状で且つ当該円形状の中心間距離が50μmとなるよう格子状配置となるパターンが形成できるように露光し、現像し、絶縁性突起部を形成した。
【0088】
そして、上記絶縁性突起部が形成されたキャリア基材(銅箔)の、キャリア基材の露出部に、カルボキシベンゾトリアゾールを5g/1濃度で含む水溶液をシャワーリングして、剥離層を形成した。以上のようにして、キャリア基材の孔開き電解金属箔の析出面(以下、単に「析出面」と称する。)を形成した。
【0089】
前記析出面の形成が終了すると、表1に掲げる12種類の電解液及びメッキ条件で、10μm厚の孔開き電解金属箔を析出形成した。なお、アノード電極は不溶性電極(DSE)を使用し、電源は直流電源を使用した(以下同様)。
【0090】
【表1】
【0091】
以上のようにして、当該析出面に金属成分を電析させると、キャリア基材付孔開き電解金属箔となる。そして、その絶縁性突起部の存在位置には、銅電析は起こらず、電析した銅膜は20μm径の微細貫通孔を備える孔開き電解金属箔とキャリア基材とが張り合わせられたキャリア基材付孔開き電解金属箔となった。
【0092】
そこで、キャリア基材付孔開き電解金属箔を、3%濃度の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、孔開き電解金属箔の微細貫通孔内に残留していた絶縁性突起部のレジスト成分を膨潤させ除去し、孔開き電解金属箔を引き剥がした。その結果、図10の拡大模式図として示した如き微細貫通孔7を備える孔開き電解金属箔1を得た。
【0093】
更に、以上のようにして得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)1は、1g/L濃度のベンゾトリアゾール水溶液に10秒間浸漬し、引き上げることにより有機防錆処理を両面に施した。この防錆処理は、条件1、条件8、条件9、条件12の条件で孔開き電解金属箔を形成した場合にのみ行った。
【0094】
この実施例(条件1)により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真を示す。即ち、倍率500倍のSEM観察像を図11に示し、当該孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の微細貫通孔の倍率3000倍のSEM観察像を図12に示した。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。なお、孔開き電解金属箔は写真撮影の便宜上ゴム製のマット上に置いた。よって、あたかもバリや鱗のように見える孔開き電解金属箔の下地の当該ゴム製のマットのSEM写真像は本件発明とは全く無関係であり、箔に美麗な微細貫通孔が形成されていることが理解できる。
【実施例2】
【0095】
この実施例では、上記キャリア基材(B)として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔を用いた。ここで用いたクラッド金属箔をより具体的に言えば、20μm厚さの圧延ニッケル箔の表面に、電解で10μm厚さのコバルト層を設けたものを用いた。このクラッド箔を実施例1と同様に酸洗し、約25μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。そして、以下、実施例1の場合と同様に条件1〜条件12迄に適用したと同様に、表1に掲げる種々の電解液及びメッキ条件で、20μm厚の12種類の孔開き電解金属箔を析出形成した。
【0096】
以上のようにして、当該析出面に金属成分を電析させると、実施例1の場合と同様に、20μm径の微細貫通孔を備える孔開き電解金属箔とキャリア基材とが張り合わせられたキャリア基材付孔開き電解金属箔となり、そのキャリア基材付孔開き電解金属箔から、キャリア基材を除去し、孔開き電解金属箔を得た。なお、得られた孔開き電解金属箔に対する防錆処理は、条件1、条件8、条件9、条件12の条件で孔開き電解金属箔を形成した場合にのみ行った。
【0097】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【実施例3】
【0098】
この実施例では、上記キャリア基材(C)として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔を用いた。ここで用いたクラッド金属箔をより具体的に言えば、10μm厚さの圧延ニッケル箔の片面に、カルボキシベンゾトリアゾールを5g/1濃度で含む水溶液をシャワーリングしてキャリア基材内剥離層を形成し、そのキャリア基材内剥離層上に、条件5のニッケル電解液とメッキ条件とで10μm厚さのニッケル層を設けたものを用いた。このクラッド箔を実施例1と同様に酸洗し、約25μm厚のドライフィルムをラミネータにより、当該クラッド箔の両面に貼り付け、レジスト膜を形成した。そして、以下、実施例1の場合と同様に、クラッド箔の両面に絶縁性突起部を設け、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間の剥離層を形成し、条件1〜条件12迄に適用したと同様に、表1に掲げる種々の電解液及びメッキ条件で、当該クラッド箔の両面に20μm厚の12種類の孔開き電解金属箔をキャリア基材上に析出形成した。
【0099】
以上のようにして、当該析出面に金属成分を電析させると、20μm径の微細貫通孔を備える孔開き電解金属箔が、キャリア基材の両面に張り合わせられたキャリア基材付孔開き電解金属箔となる。そして、ニッケル層とニッケル層との中間にあるキャリア基材内剥離層から分離することにより、2枚の孔開き電解金属箔/剥離層(但し、絶縁性突起部とキャリア基材との間には剥離層は無い)/ニッケル層(キャリア基材として機能)が得られた。この実施例では、これをキャリア基材付孔開き電解金属箔と称する。
【0100】
そして、このキャリア基材付孔開き電解金属箔から、キャリア基材を除去し、孔開き電解金属箔を得た。なお、得られた孔開き電解金属箔に対する防錆処理は、条件1、条件8、条件9、条件12の条件で孔開き電解金属箔を形成した場合にのみ行った。
【0101】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【実施例4】
【0102】
この実施例では、上記キャリア基材(D)として、実施例1で用いた単一層の金属箔(35μm厚の銅箔)の片面に、予め剥離層を形成したものを用いた。従って、当該剥離層は、キャリア基材と絶縁性突起部との間にも存在する。そして、このキャリア基材(D)を用いる場合には、実施例1で用いた酸洗処理及び剥離層の事後的形成は省略した。即ち、その剥離層上に20μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。以下、実施例1と同様にして、絶縁性突起部を形成し、この表面を孔開き電解金属箔の析出面(以下、単に「析出面」と称する。)とした。
【0103】
そして、前記析出面の形成が終了すると、表1に掲げる12種類の電解液及びメッキ条件で、10μm厚の孔開き電解金属箔を析出形成した。以下、実施例1と同様にして、キャリア基材付孔開き電解金属箔を得て、更に孔開き電解金属箔を得た。
【0104】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【実施例5】
【0105】
この実施例では、上記キャリア基材(E)として、実施例2で用いた20μm厚さの圧延ニッケル箔の表面に、電解で10μm厚さのコバルト層を設け、そのコバルト層上に、予め剥離層を形成したものを用いた。従って、当該剥離層は、キャリア基材と絶縁性突起部との間にも存在する。そして、このキャリア基材(E)を用いる場合には、実施例1で用いた酸洗処理及び剥離層の事後的形成は省略した。即ち、その剥離層上に25μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。以下、実施例2と同様にして、絶縁性突起部を形成し、この表面を孔開き電解金属箔の析出面(以下、単に「析出面」と称する。)とした。
【0106】
そして、前記析出面の形成が終了すると、表1に掲げる12種類の電解液及びメッキ条件で、10μm厚の孔開き電解金属箔を析出形成した。以下、実施例2と同様にして、キャリア基材付孔開き電解金属箔を得て、更に孔開き電解金属箔を得た。
【0107】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【実施例6】
【0108】
この実施例では、上記キャリア基材(F)として、実施例3で用いた10μm厚さの圧延ニッケル箔の片面に、カルボキシベンゾトリアゾールを5g/1濃度で含む水溶液をシャワーリングしてキャリア基材内剥離層を形成し、そのキャリア基材内剥離層上に、条件5のニッケル電解液とメッキ条件とで10μm厚さのニッケル層を設けたものを用い、その両面に予め剥離層を形成したものを用いた。従って、当該剥離層は、キャリア基材と絶縁性突起部との間にも存在する。そして、このキャリア基材(F)を用いる場合には、実施例1で用いた酸洗処理及び剥離層の事後的形成は省略した。即ち、その両面の剥離層上に25μm厚のドライフィルムをラミネータにより貼り付け、レジスト膜を形成した。以下、実施例3と同様にして、両面に絶縁性突起部を形成し、この両面を孔開き電解金属箔の析出面(以下、単に「析出面」と称する。)とした。
【0109】
そして、前記析出面の形成が終了すると、表1に掲げる12種類の電解液及びメッキ条件で、10μm厚の孔開き電解金属箔を両面に析出形成した。以下、実施例3と同様にして、キャリア基材付孔開き電解金属箔を得て、更に孔開き電解金属箔を得た。
【0110】
この実施例により得られた孔開き電解金属箔(孔開き電解銅箔)の代表的観察写真は、前述の倍率500倍のSEM観察像(図11)、倍率3000倍のSEM観察像(図12)と同様であるため掲載を省略する。この観察結果は、表1に示す孔開き電解金属箔の製造条件が変わっても同じである。観察の結果、実施例1と同様に、孔開き電解金属箔には美麗な微細貫通孔が形成されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本件発明に係る孔開き電解金属箔は、微細貫通孔を設計に応じた任意の形状、単位面積あたり任意の個数で作り込むことが可能である。従って、種々の広範な用途での使用が可能となる。例えば、電池等の集電体又は化学反応を促進する触媒の担持体、超微粉用のスクリーン装置、クリーンルーム用の防塵・気体用フィルター(特に導電性の孔開き金属箔にあっては静電気により集塵が可能)、浄水器用フィルター(特に強磁性体の孔開き電解金属箔にあっては磁力を当該金属箔に施されたフィルターを介した飲料水が作製可能)、抗菌用フィルター、電磁シールド(特に導電性の孔開き金属箔)、微生物保管用ボックスの通気孔用ネット、マット内部又は下部に孔開き金属箔が配置され当該箔がアース接続された静電気発生防止用マット、撥水性かつ通気性があるテフロン(登録商標)系素材等の服地間に孔開き金属箔が挟持された服地、その他広範囲の産業上の利用分野に適用可能である。
【0112】
そして、本件発明に係る孔開き電解金属箔は、キャリア基材付孔開き電解金属箔の形態で市場に提供することが可能で、孔開き電解金属箔が10μm未満の厚さとなっても良好なハンドリング性を確保することが出来、作業効率を大幅に改善することが可能である。しかも、用途によっては、キャリア基材付孔開き電解金属箔の状態そのままで製品に使用することも可能となる。
【0113】
更に、本件発明に係る孔開き電解金属箔及びキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法は、キャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法を基本として、そこからキャリア基材を除去することにより、孔開き電解金属箔が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(A)を用いた場合。)。
【図2】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(B)を用いた場合。)。
【図3】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(C)を用いた場合。)。
【図4】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(D)を用いた場合。)。
【図5】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(E)を用いた場合。)。
【図6】本件発明に係るキャリア基材付孔開き電解金属箔の断面模式図である(キャリア基材(F)を用いた場合。)。
【図7】キャリア基材の表面に絶縁性突起部を形成し、孔開き電解金属箔を得るまでの手順を模式的に示した図である。
【図8】キャリア基材の表面に絶縁性突起部を形成する工程を概念的に説明するための図である(レジスト法)。
【図9】キャリア基材の表面に絶縁性突起部を形成し、孔開き電解金属箔を得るまでの手順を模式的に示した図である。
【図10】本件発明に係る孔開き電解金属箔の微細貫通孔の配置を理解するため、平面的に見た場合の概念模式図である。
【図11】本件発明に係る実施例により製造された孔開き電解金属箔の走査顕微鏡観察像の写真(倍率500倍)である。
【図12】本件発明に係る実施例により製造された孔開き電解金属箔に配置された複数の微細貫通孔の走査顕微鏡観察像の写真(倍率300倍)である。
【符号の説明】
【0115】
1 孔開き電解金属箔
2 キャリア基材
3 絶縁性突起部
4 レジスト層
5 フォトマスク
6 剥離層
7 微細貫通孔
10 キャリア基材付孔開き電解金属箔
11 第1金属層
12 第2金属層
20 キャリア基材内剥離層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔であって、
当該孔開き電解金属箔の一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるように、該金属面の他面側に貫通した複数個の微細貫通孔を備えることを特徴とする孔開き電解金属箔。
【請求項2】
前記孔開き電解金属箔の金属が、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナ、又はこれらの合金、又は金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナのいずれかを組み合わせた積層構造のいずれかを備えることを特徴とする請求項1に記載の孔開き電解金属箔。
【請求項3】
当該孔開き電解金属箔上に防錆層が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の孔開き電解金属箔。
【請求項4】
厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられた状態にあることを特徴とするキャリア基材付孔開き電解金属箔。
【請求項5】
前記キャリア基材付孔開き電解金属箔において、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層を設けた請求項4に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔。
【請求項6】
前記キャリア基材として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又はクラッド金属板を用いることで、
孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあることを特徴とする請求項4に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔。
【請求項7】
前記孔開き電解金属層(箔)/第1金属層・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)のいずれかの層間に少なくとも一つの剥離層等を設けた請求項6に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔。
【請求項8】
請求項4〜請求項7のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法であって、
以下の工程a及び工程bを含むことを特徴とするキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
工程a.キャリア基材の表面に絶縁性突起部を複数箇所に形成する突起部形成工程;
工程b.前記キャリア基材の絶縁性突起部を形成した面に対し金属メッキを行い、前記キャリア基材の絶縁性突起部以外の領域に金属メッキ層を析出形成させ、キャリア基材表面に孔開き電解金属箔を形成し、キャリア基材付孔開き電解金属箔とする電析工程;
【請求項9】
前記工程aで用いるキャリア基材は、以下に示すキャリア基材(A)〜キャリア基材(F)のいずれかである請求項8に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
キャリア基材(A): 単一層の金属箔又は金属板。
キャリア基材(B): 第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(C): 第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(D): 剥離層を表面に設けた単一層の金属箔又は金属板。
キャリア基材(E): 剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(F): 剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
【請求項10】
前記工程aで用いる基材に前記キャリア基材(A)〜キャリア基材(C)のいずれかを用いる場合であって、前記工程aと前記工程bとの間に剥離層形成工程を設ける請求項8又は請求項9に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項11】
前記剥離層は、銅、ニッケル、クロムを含む金属系剥離層又はトリアゾール化合物を含む有機系剥離層である請求項9又は請求項10に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項12】
前記工程aで形成する絶縁性突起部は、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、及び凹版印刷法のいずれかによって形成したものである請求項8〜請求項11のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項13】
前記工程aで形成する絶縁性突起部は、感光性フィルムを用いて形成したものである請求項8〜請求項11のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項14】
前記工程b.(電析工程)における金属メッキは、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナのいずれかの金属メッキ、又は、これらの合金メッキである請求項8〜請求項13のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項15】
前記工程b.(電析工程)における金属メッキは、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナのいずれかから選ばれる金属メッキ層を複数積層させる請求項8〜請求項13のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の孔開き電解金属箔の製造方法であって、
前記請求項8〜請求項15のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔のキャリア基材を除去することを特徴とした孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項1】
厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔であって、
当該孔開き電解金属箔の一面側を基準面とし、その基準面に対し略垂直となるように、該金属面の他面側に貫通した複数個の微細貫通孔を備えることを特徴とする孔開き電解金属箔。
【請求項2】
前記孔開き電解金属箔の金属が、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナ、又はこれらの合金、又は金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、若しくはプラチナのいずれかを組み合わせた積層構造のいずれかを備えることを特徴とする請求項1に記載の孔開き電解金属箔。
【請求項3】
当該孔開き電解金属箔上に防錆層が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の孔開き電解金属箔。
【請求項4】
厚さ方向に複数の微細貫通孔を備えた孔開き電解金属箔のハンドリング性を向上させるためキャリア基材と孔開き電解金属箔とが張り合わせられた状態にあることを特徴とするキャリア基材付孔開き電解金属箔。
【請求項5】
前記キャリア基材付孔開き電解金属箔において、孔開き電解金属箔とキャリア基材との間に剥離層を設けた請求項4に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔。
【請求項6】
前記キャリア基材として、第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又はクラッド金属板を用いることで、
孔開き電解金属層(箔)/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあることを特徴とする請求項4に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔。
【請求項7】
前記孔開き電解金属層(箔)/第1金属層・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)のいずれかの層間に少なくとも一つの剥離層等を設けた請求項6に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔。
【請求項8】
請求項4〜請求項7のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法であって、
以下の工程a及び工程bを含むことを特徴とするキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
工程a.キャリア基材の表面に絶縁性突起部を複数箇所に形成する突起部形成工程;
工程b.前記キャリア基材の絶縁性突起部を形成した面に対し金属メッキを行い、前記キャリア基材の絶縁性突起部以外の領域に金属メッキ層を析出形成させ、キャリア基材表面に孔開き電解金属箔を形成し、キャリア基材付孔開き電解金属箔とする電析工程;
【請求項9】
前記工程aで用いるキャリア基材は、以下に示すキャリア基材(A)〜キャリア基材(F)のいずれかである請求項8に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
キャリア基材(A): 単一層の金属箔又は金属板。
キャリア基材(B): 第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(C): 第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(D): 剥離層を表面に設けた単一層の金属箔又は金属板。
キャリア基材(E): 剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
キャリア基材(F): 剥離層/第1金属層/・・・・/第n金属層(nは、2以上の整数)の第1金属層/・・・・/第n金属層のいずれかの層間に少なくとも一つのキャリア基材内剥離層を備え複数層が積層状態にあるクラッド金属箔又は金属板。
【請求項10】
前記工程aで用いる基材に前記キャリア基材(A)〜キャリア基材(C)のいずれかを用いる場合であって、前記工程aと前記工程bとの間に剥離層形成工程を設ける請求項8又は請求項9に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項11】
前記剥離層は、銅、ニッケル、クロムを含む金属系剥離層又はトリアゾール化合物を含む有機系剥離層である請求項9又は請求項10に記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項12】
前記工程aで形成する絶縁性突起部は、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、及び凹版印刷法のいずれかによって形成したものである請求項8〜請求項11のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項13】
前記工程aで形成する絶縁性突起部は、感光性フィルムを用いて形成したものである請求項8〜請求項11のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項14】
前記工程b.(電析工程)における金属メッキは、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナのいずれかの金属メッキ、又は、これらの合金メッキである請求項8〜請求項13のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項15】
前記工程b.(電析工程)における金属メッキは、銅、金、銀、錫、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、プラチナのいずれかから選ばれる金属メッキ層を複数積層させる請求項8〜請求項13のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の孔開き電解金属箔の製造方法であって、
前記請求項8〜請求項15のいずれかに記載のキャリア基材付孔開き電解金属箔のキャリア基材を除去することを特徴とした孔開き電解金属箔の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−193825(P2006−193825A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225740(P2005−225740)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]